(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2は、細口プリフォームの口部にコアを挿入して、細口プリフォームの口部を内外から加熱している。特許文献1では、口部を外部から加熱する第1加熱源(12)に加えて、口部の外部に延在されたコアの一部である熱導体(21)を加熱する第2加熱源(22)を設け、第2加熱源(22)からの熱をコアに伝達して口部を内側からも加熱している(
図7参照)。特許文献2は、特許文献1の第2加熱源(22)を排除し、特許文献1の熱導体(21)の部分をフィン(12a)に変更して、外部から口部を加熱すると共に、フィン(12a)を介して内部加熱用コアの保有熱を放熱させて、内外加熱を調和させている(
図4参照)。
【0008】
しかし、コアに熱を供給する方式(特許文献1)でもコアからの放熱を促進する方式(特許文献2)でも、コアによる内側加熱は従属的であって、口部結晶化温度は口部の外側の加熱源の温度に支配的に依存することに他ならない。特許文献1では口部の内外壁間の温度勾配に関心があり(
図5,6参照)、特許文献2では外側からの急速加熱とフィンによる放熱を組み合わせて内外壁間の温度を一定としている(0058参照)。しかし、室温から結晶化温度維持に至る温度の経時的変化については、特許文献1,2共に無関心である。
【0009】
本発明の幾つかの態様は、結晶化時の口部変形が低減されて蓋体との密着シール性を高めることができ、しかも搬送時にチャックとの位置ずれを防止できる広口容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、
口部、胴部及び底部を有するプリフォームの前記口部を結晶化する方法であって、
前記口部内にコアを挿入する工程と、
前記コアが前記口部に挿入された前記プリフォームを、自転させると共に搬送方向に沿って搬送しながら、前記搬送方向に沿って配置されたヒーター群により、前記口部を加熱する工程と、
前記プリフォームの前記口部を、前記コアを挿入した状態で冷却する工程と、
を有し、
前記加熱工程は、
前記ヒーター群のうち、前記搬送方向の上流側に位置する第1のヒーター群を第1のパワーで駆動する第1工程と、
前記ヒーター群のうち、前記第1のヒーター群よりも下流側に位置する第2のヒーター群を、前記口部が結晶化温度帯域に達するまで、前記第1のパワーよりも小さい第2のパワーで駆動する第2工程と、
を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様によれば、急加熱の第1工程と緩加熱の第2工程とを組み合わせることで、結晶化時間を短縮すると共に、口部が結晶化温度帯域を超えて過加熱とならないようにすることができる。第1工程のみでは、結晶化時間は短縮できても加熱工程の後半で過加熱となってしまう。一方、第2工程のみでは、結晶化温度は制御可能であっても結晶化時間が延長されてしまう。特に、投入された直後のプリフォームの口部は室温の常温であるので、第1工程により結晶化温度帯域に至らない温度まで急加熱することで、結晶化時間を短縮できる。
【0012】
本発明の一態様では、前記第1工程と前記第2工程との間に、前記プリフォームを非加熱で搬送する工程を含むことができる。
【0013】
こうすると、プリフォームの口部の温度は、一旦は降下する傾向となる。よって、第2工程の開始時には、第1工程の急加熱の影響を抑制できる。これにより、第2工程の開始時から直ちに、プリフォームの口部の温度上昇特性を、第1工程よりも緩傾斜にさせ易くなる。
【0014】
本発明の一態様では、前記ヒーター群のうち、前記第2のヒーター群よりも下流側に位置する第3のヒーター群を、前記第2のパワーよりも小さい第3のパワーで駆動して、前記口部の温度を前記結晶化温度帯域に維持する第3工程をさらに有することができる。
【0015】
このように、口部の温度が一旦は結晶化温度帯域に到達した後は、ヒーター電力をさらにパワーダウンすることで、口部の温度を結晶化温度帯域に維持し易くなる。こうして、口部の過加熱を抑制できる。
【0016】
本発明の一態様では、前記第3工程にて、前記第3のヒーター群の第3パワーを、前記搬送方向の上流側よりも下流側にてさらにパワーダウンすることができる。
【0017】
このように、第3工程では下流側ほどパワーダウンすることで、昇温速度を維持するか、あるいは昇温速度をダウンさせるかして、口部の温度を結晶化温度帯域に維持させることができる。
【0018】
本発明の一態様では、前記口部に前記コアを挿入する前に、前記コアを予備加熱する工程をさらに有することができる。
【0019】
こうすると、第2工程の開始時には、口部の外表面温度とコアの温度とを実質的に等しくして、口部の内外温度差を充分に緩和することができ、第1工程の時間の短縮にも寄与する。
【0020】
本発明の他の態様は、口部、胴部及び底部を有し、前記口部に取り付けられる蓋体によって前記口部の天面がシールされる合成樹脂製の広口容器において、
前記口部は、
口筒部と、
前記口筒部より外方に突出形成され、前記蓋体が係合される被係合部と、
前記天面側にて前記口筒部より外方に突出形成され、前記口筒部からの突出高さが前記被係合部よりも低いフランジと、
を含み、
前記口部の天面は、前記口筒部の第1天面と、前記第1天面と面一である前記フランジの第2天面とで面積が拡大形成され、
前記フランジの厚さは、前記口筒部の厚さよりも薄く、
前記口部は結晶化されていることを特徴とする。
【0021】
本発明の他の態様では、拡大された天面によりシール面積が増大される上に、射出成形時の樹脂流れ方向の樹脂圧に起因して、フランジは、その天面側の樹脂の密度を高められる。よって、拡大された天面は、結晶化時の変形が低減されて、蓋体との密着シール性を高めることができる。また、このフランジは、プリフォームまたは広口容器を搬送するチャックと係合されて、プリフォームまたは広口容器の軸方向への位置ずれを防止する部材として利用することができる。
【0022】
本発明の他の態様では、前記フランジは、前記第2天面と対向する対向面を有し、前記第2天面側での樹脂密度を前記対向面側での樹脂密度よりも高くすることができる。
【0023】
こうして、口部結晶化時には密度の低い対向面側を変形させることで、シールに用いられるフランジ天面の変形を抑制できる。
【0024】
本発明のさらに他の態様は、口部、胴部及び底部を有し、前記口部に取り付けられる蓋体によって前記口部の天面がシールされる合成樹脂製の広口容器において、
前記口部は、
口筒部と、
前記口筒部より外方に突出形成され、前記蓋体が係合される被係合部と、
前記被係合部よりも前記胴部側にて、前記口筒部に形成されたリング状凹部と、
を含み、
前記口部は結晶化されていることを特徴とする。
【0025】
本発明のさらに他の態様では、リング状凹部は口筒部よりも窪んで形成されるのでプリフォーム樹脂量を少なくできる。口部の体積が減少すれば、口部結晶化時の体積収縮量も減少するので、口部の天面の変形を抑制でき、天面シール性が向上する。また、このリング状凹部は、プリフォームまたは広口容器を搬送するチャックと係合されて、プリフォームまたは広口容器の軸方向への位置ずれを防止する部材として利用することができる。
【0026】
上述した各態様の広口容器において、前記被係合部はN(Nは2以上の整数)個のねじ山を有し、前記N個のねじ山は、前記口筒部の周方向にてN分割された領域に各一列で配置され、前記N分割領域の各々にて360゜/N未満の範囲に形成することができる。
【0027】
こうすると、口筒部の全周において、被係合部は一列のみ配置され、軸方向で2列以上とならないので、口筒部から突出される被係合部の体積は縮小される。口部の体積が減少すれば、口部結晶化時の体積収縮量も減少するので、口部の天面の変形を抑制でき、天面シール性が向上する。
【0028】
上述した各態様の広口容器において、前記N個のねじ山の各々は、前記口筒部の軸方向にて、第1の高さ位置の始端から前記口部の天面側に向けて傾斜して延びた先の第2の位置を終端として有することができる。
【0029】
このように、一列N個のねじ山はらせん状に繋がるのではなく、N分割領域の各々にて、それぞれ同一高さの始端及び終端を有するので、口筒部の高さを低くでき、よってその体積を縮小できる。口部結晶化時の体積収縮量も減少するので、口部の天面の変形を抑制でき、天面シール性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0032】
1.第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る広口容器の正面図であり、
図2は
図1の広口容器の口部に装着される蓋体の断面図であり、
図3及び
図4は口部とそれを支持するチャックの断面図である。
図1において、合成樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート)製の広口容器10Aは、口部20A、胴部30及び底部40を有し、口部20Aに取り付けられる蓋体90(
図2参照)によって口部20Aの天面21Aがシールされる。
【0033】
広口容器10Aの口部20Aに装着される蓋体90は、例えばツイスト・オフ・キャップまたはラグキャップと称されるキャップを用いることができる。このキャップ90は、
図2に示すように有底筒状に形成され、筒部の内周面91より突起する複数例えば4個の係合部(ラグ)92と、底面に位置するシール部93とを備えることができる。シール部93は、例えば
図2に示すように薄肉として弾性を有するにしてもよく、あるいは弾性を有するシール材を貼付して形成しても良い。
【0034】
口部20Aは、口筒部22と、口筒部22より外方に突出形成され、蓋体90の複数の係合部92がそれぞれ係合される複数の被係合部23を有する。被係合部23は例えばねじ山で形成することができる。口部20Aにはさらに、天面21A側にて口筒部22より外方に突出形成され、口筒部22からの突出高さが被係合部23よりも低いフランジ24を有している。口部20Aはさらにサポートリング(ネックリングとも称される)25を有することができるが、後述の通りサポートリング25は必須の構成ではない。
【0035】
口部20Aの天面21Aは、口筒部22の第1天面22Aと、第1天面22Aと面一であるフランジ24の第2天面24Aとで面積が拡大形成されている。なお、フランジ24の第2天面24Aと対向する面(下面)を対向面24Bと称する。フランジ24の第2天面24Aと対向面24Bとの間の厚さT2は、口筒部22の厚さT1よりも薄い(T1>T2)。また、口部20Aは白化結晶化されている。結晶化方法の一例については後述する。
【0036】
この広口容器10Aの口部20Aは、細口容器には必要なロッキングリング(ビードリングとも称される)を不要とするので、天面21Aからサポートリング25の下面までの口部20Aの全高を例えば15mm以下に低くでき、その分、容器10Aをブロー成形するためのプリフォーム樹脂量を少なくできる。口部20Aの体積が減少すれば、白化結晶化時の体積収縮量も減少するので、口部20Aの天面21Aの変形を抑制できる。また、口筒部22から突出するロッキングリングは、白化結晶化の際に収縮し易く、その収縮が天面21Aの変形を及ぼす可能性があるが、本実施形態ではロッキングリングによる悪影響を排除できる。
【0037】
広口容器10Aの口部20Aは、天面21A側にフランジ24を有しているので、天面シール性が改善される。天面シール性は、天面の平滑度と面積に依存するが、本実施形態ではその両者の特性を改善している。
【0038】
先ず、天面21Aは、口筒部22の第1天面22Aと、第1天面22Aと面一であるフランジ24の第2天面24Aとで面積が拡大形成されている。これにより、
図2に示す蓋体90が装着されると、拡大された天面21Aによりシール面積が増大され、蓋体90のシール部93との密着シール性を高めることができる。これが、天面シール性が改善される第1の理由である。
【0039】
次に、フランジ24は、天面21A側の樹脂の密度を高め、天面21Aの変形を低減するのに寄与している。
図5は、射出コア型50とネックキャビティ型51との間に形成されるキャビティに樹脂を流入させて口部20Aを射出成形する過程を示している。樹脂は、容器10Aをブロー成形するためのプリフォームの底部側から矢印A方向に沿って所定の樹脂圧により流入される。この際、広い天面21Aの成形面には樹脂流れ方向Aに沿った樹脂圧Bが直接作用するのに対して、狭い対向面24Bの成形面に作用する樹脂圧Cは、樹脂流れ方向Aとは逆向きとなるので、樹脂圧Bより小さいことが分かる。
【0040】
さらに、天面21Aは広い面積にて射出コア型50と接触するので冷却効率が高いのに対して、対向面24Bは狭く、かつ、ネックキャビティ型51の凸部と接触して冷却されるので、冷却効率は低い。
【0041】
以上のことから、第2天面24A(天面21A)側での樹脂密度が対向面24B側での樹脂密度よりも高くなる。口部20Aを結晶化すると樹脂密度はさらに高まるが、第2天面24A(天面21A)側での樹脂密度が対向面24B側での樹脂密度よりも高いことに変わりはない。樹脂密度が高まると、天面21Aが収縮変形しにくく、天面21Aの平滑度が高まる。逆に、結晶化前の非晶質時にて密度が小さいと、熱処理時に収縮が大きい。本実施形態では、収縮変形を対向面24B側にて許容しても、第2天面24A(天面21A)側では収縮変形を抑制するようにしている。これが、天面シール性が改善される第2の理由である。
【0042】
フランジ24のさらに他の用途は、
図3及び
図4に示すようにチャック部材60A,60Bに対する軸方向での位置ずれ防止部材としての用途である。広口容器10Aまたはそのプリフォームは、口部20Aを上向きとした正立状態にて、ネックキャビティ型を用いない搬送時では、サポートリング25の下面を支えるのが、それ以外では
図3に示すチャック部材60Aまたは
図4に示すチャック部材60Bが用いられる。チャック部材60は、被係合部(ねじ山)23を両側から挟んで保持するが、容器10Aの軸方向へのずれを防止するために、被係合部(ねじ山)23とフランジ24との間に入り込む凸部61を有することができる。
図3の例では、サポートリング25の代わりにフランジ24を支えて容器10Aを正立状態で搬送するか、あるいは正立搬送せずに倒立搬送すれば、サポートリング25を不要とすることができる。一方、
図4に示すチャック部材60Bは、容器10Aの軸方向へのずれを防止するために、フランジ24に当接可能な凸62と、サポートリング25に当接可能な凸部63を有することができる。
【0043】
2.第2実施形態
図6は本発明の第2実施形態に係る広口容器の正面図であり、
図7は口部の断面図である。
図6において、合成樹脂製の広口容器10Bは、口部20B、胴部30及び底部40を有し、口部20Bに取り付けられる蓋体90(
図2参照)によって口部20Bの天面21Bがシールされる。口部20Bは、第1実施形態と同様に口筒部22、被係合部(ねじ山)23及びサポートリング25を有するが、フランジ24を有していない。ただし、第2実施形態でもフランジ24を設けても良い。口部20Bは、被係合部23よりも胴部30側にて、口筒部22に形成されたリング状凹部26を有する。なお、サポートリング25が必須の構成ではない点は、第1実施形態と同じである。
【0044】
この広口容器10Bの口部20Bもまた、細口容器には必要なロッキングリングを不要とし、代わりにロッキングリングの高さよりも縦幅を小さくできるリング状凹部26を有する。そのため、天面21Bからサポートリング25の下面までの口部20Bの全高を低くでき、その分、容器10Bをブロー成形するためのプリフォーム樹脂量を少なくできる。口部20Bの体積が減少すれば、白化結晶化時の体積収縮量も減少するので、口部20Bの天面21Bの変形を抑制できる。また、口筒部22から突出するロッキングリングは、白化結晶化の際に収縮し易く、その収縮が天面21Bの変形を及ぼす可能性があるが、本実施形態では口筒部22にて窪むリング状凹部26を有するので、体積収縮の影響は小さい。
【0045】
リング状凹部26のさらに他の用途は、
図7に示すようにチャック部材70の被係合部としての用途である。広口容器10Bまたはそのプリフォームは、口部20Bを上向きとした正立状態にて、ネックキャビティ型を用いない搬送時では、サポートリング25の下面を支えるのが、それ以外ではチャック部材70が用いられる。チャック部材70は、被係合部(ねじ山)23を両側から挟んで保持するが、容器10Bの軸方向へのずれを防止するために、リング状凹部26に入り込む凸部71を設けることができる。また、正立搬送せずに倒立搬送すれば、サポートリング25を不要とすることができる。
【0046】
3.口部天面の変形を抑えるねじ山形状
図8は、
図1及び
図6に示す容器10A,10Bの被係合部(ねじ山)23を示す、天面21A,21B側から見た端面図である。ただし、
図1の例に対しては、
図8ではフランジ24を省略している。
【0047】
本発明の第1,第2実施形態では、
図1、
図6及び
図8に示すように、被係合部23はN(Nは2以上の整数で、好ましくは4≦N≦6であり、実施形態ではN=4)個のねじ山23A〜23D(
図1及び
図6では3つを図示)を有する。N=4個の多条のねじ山23A〜23Dは、口筒部22の周方向にてN分割された領域(θ1=90゜の領域)に各一列で配置され、N分割領域の各々に形成範囲θ2が360゜/N未満の範囲に形成されている。N=4の本実施形態では、4個のねじ山23A〜23Dの各々の形成範囲は90゜未満である(θ2<90゜)。また、N=4個のねじ山23A〜23Dの各々は、口筒部22の軸方向にて、第1の高さ位置H1の始端23−1から口部20A(20B)の天面21A(21B)側に向けて傾斜して延びた先の第2の高さ位置H2を終端23−2として有する。
【0048】
多条のねじ山23A〜23Dを備えた口部20A(20B)に、
図2に示すキャップ90を装着する際には、キャップ90の4個の係合部(ラグ)92を、多条のネジ山23A〜23Dに(4〜6条)のびんにキャッピングするもので、例えばキャップ90を1/4〜1/6回転することで広口容器10A(10B)を開閉できる。
【0049】
図1及び
図6に示す容器10A,10Bの被係合部(ねじ山)23は、口筒部22より突出形成されるため、その体積が大きいほど、結晶化の熱処理時に被係合部(ねじ山)23の収縮天面21A(21B)に及ぶ悪影響が大きくなる。
【0050】
ここで、本実施形態では、被係合部(ねじ山)23は、4個のねじ山23A〜23Dが口筒部22の周方向にてN分割された領域(θ1=90゜の領域)に各一列で配置されている。従って、口筒部22の軸方向にてねじ山列が2以上設けられるものと比較して、被係合部(ねじ山)23の体積は充分に小さく、天面21A(21B)が変形する要因となることを抑制できる。
【0051】
次に、本実施形態では、被係合部(ねじ山)23は、4個のねじ山23A〜23Dの各々の形成範囲は90゜未満である(θ2<90゜)。つまり、周方向にて不連続である4個のねじ山23A〜23Dの隣接間には必ず隙間が形成される。こうして、被係合部(ねじ山)23の体積をさらに小さくすることができ、天面21A(21B)が変形する要因となることを抑制できる。
【0052】
次に、特に第2実施形態に係る広口容器10Bとの関係で奏することができる被係合部(ねじ山)23の作用について説明する。
図7に示すように、チャック部材70の凸部71は口部20Bのリング状凹部26に嵌って、チャック部材70に挟まれた口部20Bが落下しないようになっている。
【0053】
ここで、リング状凹部26の深さは、口筒部22の肉厚との関係で上限が存在する。リング状凹部26の深さを、その上限を超えて大きくすると、プリフォームの射出成形時に口筒部22を成形する樹脂の流れが、リング状凹部26の領域で阻害され、ショートショット等の不良が生ずるからである。樹脂量を少なくする意味からも口筒部22の厚さにも上限があり、例えば口筒部22の厚さを1.5mmとすると、リング状凹部26の深さ0.5mmが限界である。このようにリング状凹部26の深さに上限があるため、プリフォームの自重等により、
図7に示すチャック部材70がリング状凹部26から外れる可能性が考えられる。
【0054】
本実施形態では、N=4個のねじ山23A〜23Dの各々は、口筒部22の軸方向にて、第1の高さ位置H1の始端23−1から口部20A(20B)の天面21A(21B)側に向けて傾斜して延びた先の第2の高さ位置H2を終端23−2として有する。つまり、4個のねじ山23A〜23Dの各々は、口筒部22の周方向にて離れた位置にて、しかもリング状凹部26の直上にて、第1の高さ位置H1に突出にて始端23−1を有する。
【0055】
従って、
図7に示すチャック部材70がリング状凹部26から外れることがあっても、チャック部材70の凸部71は、第1の高さ位置H1にて口筒部22の周方向の4箇所にて突出している4つの始端23−1に引っ掛り、チャック部材70から口部20Bが落下することを防止できる。このように、複数の始端23−1をストッパーとして機能させることができる。
【0056】
4.口部の結晶化方法
次に、上述した第1,第2実施形態に係る広口容器10A(10B)や、他の広口容器及び細口容器にも適用できる口部の結晶化方法について説明する。
図9(A)〜
図9(D)は口部の結晶化方法の主要工程を示す図であり、
図10は口部の表面温度とコアの温度の一サイクル中での推移を示す特性図である。
【0057】
図9(A)において、例えば広口容器のためのプリフォーム100が予め射出成形され、口部結晶化装置に搬入される。なお、口部結晶化装置は、ブロー成形前のプリフォームでなくブロー成形後の容器の口部を対象とすることもできるが、プリフォームよりも大型の容器の搬送は装置の大型化を招く。
【0058】
プリフォーム100は、口部101、胴部102及び底部103を有する。口部101はブロー成形されないので、プリフォーム100の口部101は、
図1に示す口部20Aまたは
図6に示す口部20Bのいずれか一方の構造としても良いし、それら以外の口部構造であってもよい。
【0059】
図9(A)は、プリフォーム100の口部101内にコア110を挿入する工程を示している。コア110の挿入前では、プリフォーム100は筒体120上に、倒立されて搬送される。コア110は、昇降ロッド130の途中に固定され、昇降ロッド130の上端にはパッド132が固定されている。
図9(A)では、昇降ロッド130が上昇され、プリフォーム100の口部101内にコア110が配置されると共に、パッド132によりプリフォーム100が僅かに押し上げられて筒体120と非接触となる。
【0060】
コア110は、断熱体112の周面に、赤外線吸収、赤外線反射あるいはその両機能を持つ材質からなる外層体114を配置して形成される。外層体114は例えば金属であり、本実施形態ではアルミニウム(Al)にて形成している。このように、コア110はそれ自体が加熱源を待たず、後述するヒーター例えば赤外線ヒーター140からの赤外線を反射させて、あるいはコア110の保有熱により、口部101を内側から加熱するものである。コア110からの内側加熱と、赤外線ヒーター140からの外側加熱とを併用することで、口部101の内外温度差を緩和させると共に、結晶化時間を短縮することができる。しかも、プリフォーム100と共に搬送されるコア110は加熱源を持たずに済むため、装置が複雑化することもない。
【0061】
コア110は、上面に反射などにより遮熱する遮熱板116を有することができる。遮熱板116により、胴部102側に熱が伝達されることを防止できる。
【0062】
図9(B)は、加熱工程を示している。
図9(B)では、コア110が口部101に挿入されたプリフォーム100を、自転させると共に搬送方向に沿って搬送しながら、口部101を赤外線ヒーター140にて加熱している。赤外線ヒーター140は、
図11に示すプリフォーム搬送方向A1,A2に沿って複数設けられて、これらを赤外線ヒーター群200と称する。
図9(B)では、赤外線ヒーター140は例えば搬送路を挟んで対向配置され、自転されるプリフォーム100の口部101を外側から均一加熱する。この加熱工程は、
図9(B)に示すように、プリフォーム100の胴部102を遮熱のための筒体150により包囲して、赤外線ヒーター140から遮熱することができる。
【0063】
図9(C)は、プリフォーム100の口部101を、コア110を挿入した状態で冷却する工程を示している。冷却工程は、プリフォーム100を自転させた自然空冷であっても良いし、あるいは冷媒を用いた強制冷却であっても良い。冷却工程での口部101の収縮変形は、コア110により規制される。
【0064】
図9(D)は、プリフォーム100の口部101内からコア110を離脱する工程を示している。その後、口部結晶化されたプリフォーム100が筒体120上から取り出されることで、口部結晶化方法の一サイクルが終了する。
【0065】
本実施形態の加熱工程を、
図10及び
図11を用いて説明する。
図11は、プリフォーム100の搬送路と赤外線ヒーター群200と模式的に示す平面である。位置P1にてプリフォームが投入され、搬送方向A1,A2に沿って連続または間欠搬送されて加熱され、さらに冷却ゾーン220にて冷却処理され、位置P2にて口部結晶化されたプリフォーム100が搬出される。
【0066】
加熱工程は、
図11に示す赤外線ヒーター群200のうち、搬送方向の上流側に位置する第1の赤外線ヒーター群200−1を第1のパワーで駆動する第1工程を有する。
図10に示す第1工程では、第1の赤外線ヒーター群200−1を駆動する第1のパワーを、フルパワーの例えば70%に設定している。
図10に示すプリフォーム100の口部101の表面温度T
Sは、単位時間あたりの温度上昇特性が比較的急傾斜となって昇温される。
【0067】
加熱工程はさらに、
図11に示す赤外線ヒーター群200のうち、第1の赤外線ヒーター群200−1よりも下流側に位置する第2のヒーター群200−2を、第1のパワーよりも小さい第2のパワーで駆動して、口部101が白化結晶化温度帯域(例えば170〜190°C)に達するまで、口部101を赤外線ヒーター群200−2とコア110とで加熱する第2工程とを含むことができる。
図10に示す第2工程では、第2の赤外線ヒーター群200−2〜200−4を駆動する第2のパワーを、フルパワーの例えば60%に設定している。
図10に示すプリフォーム100の口部101の表面温度T
Sは、単位時間あたりの温度上昇特性が第1工程よりも緩傾斜となって昇温される。
【0068】
ここで、急加熱の第1工程と緩加熱の第2工程とを組み合わせた理由は、結晶化時間を短縮すると共に、口部101が過加熱とならないようにするためである。第1工程のみでは、結晶化時間は短縮できても加熱工程の後半で過加熱となってしまう。一方、第2工程のみでは、結晶化温度は制御可能であっても結晶化時間が延長されてしまう。特に、投入された直後のプリフォーム100の口部101は室温の常温であるので、第1工程により結晶化温度帯域に至らない温度まで急加熱することで、結晶化時間を短縮できる。
【0069】
図10に示すように、第1工程と第2工程との間に、プリフォームを非加熱で搬送する工程を含むことができる。
図11には、第1のヒーター群200−1と第2のヒーター群200−2との間に、ヒーター群を設けないか、あるいは駆動停止されるヒーター群が配置される非加熱ゾーン210が設けられている。こうすると、
図10に示すようにプリフォーム100の口部101の表面温度T
Sは、一旦は降下する傾向となる。よって、第2工程の開始時には、第1工程の急加熱の影響を抑制できる。これにより、第2工程の開始時から直ちに、プリフォーム100の口部101の表面温度T
Sの温度上昇特性を、第1工程よりも緩傾斜にさせ易くなる。
【0070】
加熱工程はさらに、
図11に示す赤外線ヒーター群200のうち、第2の赤外線ヒーター群200−2よりも下流側に位置する第3のヒーター群200−3,200−4を、第2のパワーよりも小さい第3のパワーで駆動して、口部101を白化結晶化温度帯域に維持して、口部101を赤外線ヒーター群200−3,200−4とコア110とで加熱する第3工程とを含むことができる。
図10に示す第3工程では、第3の赤外線ヒーター群200−3,200−4を駆動する第3のパワーを、フルパワーの例えば50〜55%に設定している。このように、口部101の温度が一旦は結晶化温度帯域に到達した後は、ヒーター電力をさらにパワーダウンすることで、口部101の温度を結晶化温度帯域に維持し易くなる。こうして、口部101の過加熱を抑制できる。
【0071】
また、第3工程では、
図11に示す第3の赤外線ヒーター群200−3,200−4の第3パワーを、搬送方向の上流側よりも下流側にてさらにパワーダウンすることができる。
図10の例では、第3の赤外線ヒーター群200−3,200−4の各パワーを、上流側の赤外線ヒーター群200−3ではフルパワーの55%、下流側の赤外線ヒーター群200−4ではフルパワーの50%としている。このように、第3工程では下流側ほどパワーダウンすることで、
図10に示すように昇温速度を維持するか、あるいは昇温速度をダウンさせるかして、口部101の温度を結晶化温度帯域に維持させることができる。こうして、第3工程にて口部101が過加熱となることを防止できる。なお、第3工程は赤外線ヒーター群200−3,200−4の2分割でなく、パワーダウン分割を3分割以上に多分割してもよい。
【0072】
ここで、赤外線ヒーター群200−1にて複数のプリフォーム100が通過している時間をT1とし、赤外線ヒーター群200−2〜200−4の各々にて複数のプリフォーム100が通過している時間をT2とする。本実施形態では、T1>T2とすることができる。なお、複数のプリフォーム100は例えば連続搬送されるので、時間T1,T2の相違は、加熱ゾーンの長さの相違である。
図11では赤外線ヒーター群200−1〜200−4の加熱ゾーンの長さを一定にしているが、加熱ゾーンの長さを異ならせることで、各加熱ゾーンでの加熱時間を変更できる。なお、プリフォームを間欠搬送する場合も、同様に各過熱ゾーンの長さを異ならせることで、各加熱ゾーンでの加熱時間を変更できる。例えば、時間T1を連続搬送の3ステップ分としたとき、時間T2は2ステップ分とすることができる。第1工程の時間T1を長くすることで、室温から例えば100℃を超える温度まで昇温するのに、過度に昇温スピードが速い赤外線ヒーターを用いることがない。逆に、第1工程の時間T1を時間T2より短くすると、第1工程での急速加熱が第2工程に悪影響して、結晶化温度帯域に維持する制御が困難となるか、あるいは結晶化温度帯域までに到達する時間が長くなる。
【0073】
図11には、コア110の温度T
Cが示されている。
図11では、コア110は口部101に挿入される前に、例えば
図11に示す位置P1,P2間にてコア110が予備加熱されている例を示している。つまり、この口部結晶化方法は、口部101にコア110を挿入する前に、コア110を予備加熱する工程をさらに有することができる。
【0074】
図11の第1工程では、コア110は、赤外線ヒーター140からの赤外線が口部101を介して入射されるが、常温の口部101と接触することで温度が降下している。第1工程またはその後の非加熱工程(第2工程開示時)では、コア110の温度と、口部101の表面温度とが実質的に等しくなるようにしている。つまり、口部101の内外温度が実質的に等しくなるまで、第1工程またはその後の非加熱工程が継続される。第2工程では、口部101よりも熱容量が大きいコア110の昇温速度は低いが、プリフォーム100の口部101の表面温度T
Sの昇温と共にコア110の温度T
Cが緩やかに昇温しているので、口部101の内外温度差は所定の範囲に収まっている。なお、コア110の予備加熱工程は必ずしも要しないが、予備加熱によって第1工程時間の短縮にも寄与できる。
【0075】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例は全て本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。