(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1(a)は、本発明を適用可能なインクジェット記録装置(液体吐出装置)100の概略構成を説明するための要部の斜視図、
図1(b)は、記録装置100の制御系のブロック図である。記録装置100には、本発明の液体吐出ヘッドの一実施形態として、インク(液体)を吐出するインクジェット記録ヘッド20が交換可能に備えられている。
【0012】
本例の記録装置100は、いわゆるフルラインタイプの記録装置であり、搬送系(搬送機構)110によって記録媒体Pを矢印A方向に連続的に搬送しつつ、記録ヘッド20からインクを吐出することにより、記録媒体Pに画像を記録することができる。本例の搬送系110は、搬送ベルト110Aを用いて記録媒体Pを搬送する。しかし、搬送系110の構成は限定されず、搬送ローラなどを用いて記録媒体Pを搬送するものであってもよい。また本例の場合は、記録ヘッド20として、後述するインク供給系(インク供給機構)120によって供給されたイエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(Bk)を吐出する記録ヘッド20Y,20M,20C,20Bkが備えられている。これにより、カラー画像を記録することができる。
【0013】
記録装置100には、記録ヘッド20におけるインクの吐出状態を良好に維持するための回復処理に用いられる回復処理系130が備えられている。回復処理としては、画像の記録に寄与しないインクを吐出口からキャップ内に吐出する予備吐出動作、および、記録ヘッド内のインクを加圧して、それを吐出口からキャップ内に強制的に排出させる加圧回復動作などを含むことができる。さらに、吐出口からキャップ内にインクを吸引排出させる吸引回復動作、吐出口が形成される記録ヘッドの吐出口面をワイピングするワイピング動作などを含むことができる。
【0014】
記録装置100のCPU(制御部)101は、本記録装置の動作の制御処理やデータ処理等を実行する。ROM102には、それらの処理手順等のプログラムが格納され、RAM103は、それらの処理を実行するためのワークエリアなどとして用いられる。CPU101は、記録ヘッド20、搬送系110、インク供給系120、および回復処理系130をそれらに対応するドライバ20A,110A,120A,130Aを介して制御する。CPU101は、ホストコンピュータなどのホスト装置200から入力した画像データに基づいて、記録ヘッド20からインクを吐出させることにより、記録媒体Pに画像を記録させる。CPU101は、記録ヘッド20、搬送系110、インク供給系120、および回復処理系130を動作させることにより、後述する「記録ヘッドの清掃時」、「インク攪拌時」及び「インクの供給開始時」の制御を実行する。
【0015】
図2は、インク供給系120および回復処理系130の説明図であり、
図3は、
図2におけるインクタンク30の拡大断面図、
図4は、
図2における記録ヘッド20の拡大断面図である。
【0016】
液体収納容器としてのインクタンク30の内部にはインクを収容するインク室(液室)31が形成されており、そのインク室31は、ジョイント部32のみにおいて外部と連通可能な閉空間となっている。インクタンク30は、記録ヘッド20に対して着脱可能に構成されている。また、インクタンク30は、記録ヘッド20の上部に備えられている。インク室31は柔軟性のある部材により形成されており、その内部には負圧発生用のバネ33−1に接続された圧力板33−2が内蔵されている。このバネ33−1は、圧力板33−2を介してインク室31の内部空間を拡大させるように、インク室31を内部から外部に向かって付勢している。これによって、バネ33−1はインク室31の内部に所定の負圧を発生させる。これらバネ33−1、圧力板33−2及びインク室31によって負圧発生部が構成される。ジョイント部32には不織布のフィルタ34が備えられている。
【0017】
記録ヘッド20には、インク室21内のインクI(液室内の液体)を吐出口20Aから吐出するための不図示の吐出エネルギー発生素子が備えられている。吐出エネルギー発生素子としては、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などを用いることができる。電気熱変換体を用いた場合には、その発熱によりインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用して吐出口20Aからインクを吐出することができる。インク室21には、インクIと共に空気(気体)が存在する。したがって、インク室21内には、インクIを収容するインク収容部(液体収容部)と、空気(気体)を収容する空気収容部(気体収容部)と、が形成されることになる。
【0018】
インク室21の上部には、インクタンク(液体タンク)30との連通するためのインク供給部(液体供給部)22が設けられており、その供給部22の開口部にはフィルタ部材23が備えられている。本例の場合、そのフィルタ部材23は、SUS製のメッシュにより形成されている。そのメッシュは金属繊維を織り込んだ構成であり、また、供給部22の平均的な幅は10mm程度である。フィルタ部材23が細かい目を持つことにより、外部から記録ヘッド内へのゴミの侵入が防止される。フィルタ部材23の下面は、インクを保持可能なインク保持部材(液体保持部材)24に圧接されている。
図5のように、インク保持部材24の内部には断面円形の流路24Aが複数形成されている。それぞれの流路24Aの口径は1.0mm程度である。
【0019】
また、インク室21の上部には、外部の流路として気体又及び/又は液体を移送するための移送部51に接続可能な開口部25が設けられており、その開口部25にはフィルタ26が備えられている。この開口部25は、インク室21内の液体(インク)又は気体を外部に流出可能に構成されている。開口部25は、インク室21内の液体(インク)と気体とを一緒に流出させることも可能である。また、この開口部25は、記録ヘッド20の外部の液体(インク)又は気体を流入可能に構成されている。さらに、開口部25は、記録ヘッド20の外部の液体(インク)と気体とを流入させることも可能である。
【0020】
記録ヘッド20とインクタンク30は
図2のように連結される。すなわち、記録ヘッド20側のフィルタ部材23とインクタンク30側のフィルタ34とが上下に圧接するように、記録ヘッド20の供給部22とインクタンク30のジョイント部32とが連結される。このような記録ヘッド20とインクタンク30との連結部は、その周囲がゴム製の弾性キャップ部材50によって囲まれることにより、密閉性が維持される。本例においては、このように記録ヘッド20とインクタンク30が直接的に接続されることにより、それらの間のインク供給路(液体供給路)は極めて短い。
【0021】
記録ヘッド20の開口部25に接続される移送部51は二股に分かれており、一方は、開閉可能な弁52を介して外気と連通し、他方は、開閉可能な弁53を介してバッファ室54に連通している。バッファ室54には10mL程度の空間が形成されており、ポンプ55を通して廃インクタンク56に連通している。ポンプ55は、液体(インク)及び/又は気体(空気)を記録ヘッド20に流入させたり、液体(インク)及び/又は気体(空気)を記録ヘッド20から流出させたりする、液体(インク)及び/又は気体(空気)を移送させる手段としての移送部である。本例の場合は、ポンプ55として正逆回転可能なチューブポンプが用いられる。
【0022】
バッファ室54には、キャップ60が開閉可能な弁61を介して接続されている。キャップ60は、記録ヘッド20における吐出口20Aの形成面(吐出口形成面)に密着可能である。キャップ60が吐出口形成面に密着して、吐出口20Aをキャッピングした状態において、キャップ60の内部をポンプ55によって吸引することにより、吐出口20Aからキャップ60内にインクを吸引排出(吸引回復動作)させることができる。また、画像の記録に寄与しないインクを吐出口20Aからキャップ60内に吐出する予備吐出動作、および、記録ヘッド20内のインクを加圧して、それを吐出口20Aからキャップ60内に強制的にインクを排出させる加圧回復動作を実施することもできる。その加圧回復動作においては、バッファ室54および弁53を通して、ポンプ55によって発生させた加圧力を記録ヘッド20内に作用させることができる。このような回復処理によりキャップ60内に受容されたインクは、ポンプ55によって発生させた吸引力によって廃インクタンク56(
図2参照)に排出することができる。
【0023】
次に、記録装置の状態をインクの静止時、記録動作時、記録ヘッドの清掃時、インクの攪拌時、およびインクの供給開始時に分けて説明する。
【0024】
(インクの静止時)
記録装置の停止時等におけるインクの静止時は、
図6(a)のように弁52,53が閉じている。インク保持部材24の流路24A内にはインクが充填されている。記録ヘッド20のインク室21内は所定の負圧状態にあり、吐出口20Aに形成されているインクのメニスカスは維持されている。インク保持部材24の流路24Aには、
図6(b)のようにインクのメニスカスが形成され、そのメニスカスに対しては、力Pt,Ph,Pk,Pgが作用する。力Ptは、インクタンク30内の負圧によりメニスカスをインクタンク側へ引き込む力であり、力Phは、記録ヘッド20内の負圧によりメニスカスを記録ヘッド内へ引き込む力である。力Pkは、インクの表面張力によってインクがインクタンク側へ引き込むメニスカス力であり、力Pgは、インクの自重によりインクが下方へ移動しようとする力である。これらの力が釣り合うことによって、インク保持部材24に形成されるメニスカスが維持され、記録ヘッド20内のインクは静止状態が保たれる。
【0025】
(記録動作時)
記録装置の記録動作時は、
図7のように弁52,53が閉じられている。
図7(a)のように吐出口20Aからインクを吐出することにより、インク室21内のインクIが消費されて、
図7(b)のようにインク室21内がさらに減圧される。このように増大するインク室21内の負圧は、インク保持部材24の流路24A内のインクをインクタンク30内に引き込む方向に力として作用する。インク室21内の負圧が所定以上に増大したときに、インク保持部材24の流路24Aに形成されているインクのメニスカスが破れて、
図7(c)のように、インクタンク30内のインクが記録ヘッド20に供給される。そして、このようなインクの供給によってインク室21内の負圧が低下することにより、再び、
図7(a)のようにインク保持部材24の流路24Aにメニスカスが形成されて、インクの供給が止まる。このように、記録ヘッド20のインク室21内には、インクの消費量に応じてインクタンク30からインクが供給される。
【0026】
インク保持部材24の流路24Aに形成されるメニスカスのメニスカス力Pkは、インクタンク30から記録ヘッド20に供給されるインクの流れに抗する力として作用する。そのため、そのメニスカス力Pkが大き過ぎた場合には、インクが供給しにくくなって、インクの供給性能が低下する。液体流路の開口部に形成される液体のメニスカスのメニスカス力Pは、液体の表面張力をγ、開口部の半径をr、液体流路内におけるインクの接触角度をθとした場合、下式1によって表すことができる。
【0028】
また、流路の開口部が円でない場合、開口部のメニスカス力Pは周長Lと開口面積Sに対して下式2の関係である(メニスカス力Pは、L/Sに比例する)。仮に開口部が真円でない場合でも、その開口部と同じ面積を有する半径rの円形管に換算すると、式1の理論式が形状によらず適用される。
P∝L/S ・・・(式2)
【0029】
したがって、液体流路の開口部の半径rが大きい程、メニスカス力Pは小さくなる。
本実施形態におけるインク保持部材24には、内径が1mm程度の流路24Aが複数貫通形成されている。この流路24Aの内径は、その流路24Aにおけるインクのメニスカス力がフィルタ部材23,34におけるメニスカス力よりも小さくなるように設定されている。記録動作に伴うインクの供給時には、フィルタ部材23,34にインクのメニスカスが形成されないため、インクの供給性能を高めて、高速記録にも対応することができる。
【0030】
仮に、インク保持部材24を備えなかった場合には、フィルタ部材23または34にメニスカスが形成されることになり、インクの供給性能が低下する。具体的には、フィルタ部材23,34に形成されるインクの流路の内径がインク保持部材24の流路24Aの内径の1000分の1程度であるため、前者のインクの流路におけるメニスカス力は、後者の流路24Aにおけるメニスカス力の1000倍程度となる。したがって、インク保持部材24を備えなかった場合には、インクの供給性能が大幅に低下することになる。
【0031】
(記録ヘッドの清掃時)
記録ヘッド20の吐出口形成面をワイピングして清掃する際には、記録ヘッド20内を加圧して、インク室21内のインクIを吐出口20Aから外部に押し出すことにより、吐出口形成面の潤滑性をよくする。
【0032】
まずは、
図8(a)のように弁52を開けて、記録ヘッド20内に外気を流入させることにより、インク室21内の負圧を解消させる。次に、
図8(b)のように、弁52,53を閉じた状態でポンプ55を一方向に回転させることにより、バッファ室54内に空気を送り込んでバッファ室54内を加圧する。次に、
図8(c)のように弁53を開けることにより、バッファ室54内の加圧された空気を記録ヘッド20内に流入させてインク室21内を加圧する。この際、バッファ室54や移送部51に液体(インク)が混入している場合などでは、液体(インク)及び/又は気体(空気)を記録ヘッド20に流入させることとなる。
【0033】
このようにインク室21内を加圧することにより、インク保持部材24の流路24A内のインク、およびインク室21内のインクには、
図9(a),(b)のように移動する。
【0034】
記録ヘッド側のフィルタ部材23に形成されるインクの流路の内径Df、インク保持部材24の流路24Aの内径Dk、および吐出口20Aの内径Dnは、次のような関係に設定されている。
Df<Dn<Dk
【0035】
したがって、記録ヘッド側のフィルタ部材23におけるメニスカス力Pf、インク保持部材24の流路24Aにおけるメニスカス力Pk、および吐出口20Aにおけるメニスカス力Pnは、次のような関係となる。
Pf>Pn>Pk
【0036】
インク室21内が加圧された場合には、
図9(a)のように、インク保持部材24の流路24Aにおけるメニスカスが同図中の上方に後退し、そのメニスカスがフィルタ部材23に達してから、
図9(b)のようにインクが吐出口20Aから押し出される。より具体的には、まずは、
図10(a)のように、メニスカス力Pkが小さいインク保持部材24のメニスカスが後退し、流路24A内のインクがインクタンク30内に逆流する。
図10(b)のように、流路24A内のインクが全てインクタンク30内に戻されることにより、フィルタ部材23にメニスカスが形成される。フィルタ部材23のメニスカス力Pfよりも吐出口20Aのメニスカス力Pnが小さいため、
図10(b)のように、インク室21内のインクが吐出口20Aから押し出される。
【0037】
インク室21内は圧力Pcまで加圧する。その圧力Pcがメニスカス力Pkを上回るとインク保持部材24のメニスカスをインクタンク30側へ移動させ、かつメニスカス力Pfのフィルタ部材23のメニスカスを移動させることなく、吐出口20Aからインクを押し出す。したがって、フィルタ部材23のメニスカスを移動させることなく、つまり記録ヘッド内の空気をインクタンク内に押し込むことなく、吐出口20Aからインクを押し出すことができる。
【0038】
このようにして押し出されたインクによって吐出口形成面を充分に濡らした後、あるいは、吐出口20Aからインクを押し出しつつ、
図9(c)のように、板状の清掃部材57によって吐出口形成面をワイピングする。これにより、吐出口形成面の清掃能力を高めることができる。清掃部材57は例えばウレタンゴム製であり、吐出口形成面に接触したまま
図9(c)中の左右方向に移動する。このような移動は、清掃部材57と記録ヘッド20の少なくとも一方の移動を伴って実施することができる。
【0039】
清掃部材57によるワイピング動作後は、ポンプ55を逆方向に回転させて記録ヘッド20内に負圧を導入することにより、液体(インク)及び/又は気体(空気)を記録ヘッド20の外部に流出させることにより
図6のような状態に戻すことができる。
【0040】
(インクの攪拌時)
インクタンク30が長期間放置された場合、その内部のインクの成分が不均一となることがある。特に、インクタンク30内のインクが顔料インクの場合には、インクタンク30内の下方に色材が沈降して、記録画像の濃度が変化するおそれがある。本実施形態においては、インクタンク30内のインクの成分を均一化するために、インクタンク30内に対して、インク保持部材24の流路24A内のインクを出し入れする。
【0041】
まずは、
図11(a)のように弁52を開いて、記録ヘッド20のインク室21を大気に開放する。次に、
図11(b)のように、弁52を閉じかつ弁53を開いてから、ポンプ55を一方向に回転させてインク室21内を加圧する。インク室21を圧力Psまで加圧し、その圧力Psは、吐出口20Aからインクを押し出すことなく、かつメニスカス力Pfのフィルタ部材23のメニスカスを移動させることなく、メニスカス力Pkのインク保持部材24のメニスカスを移動させる大きさとする。このような圧力Psにより、
図11(b)のようにインク保持部材24の流路24A内のインクがインクタンク30に戻り、そのインクによって、インクタンク30内の下層に沈降したインク成分が巻き上げられる。この結果、インクタンク30内のインクを攪拌することができる。
【0042】
その後、ポンプ55を逆方向に回転させて記録ヘッド20内を減圧することにより、
図11(c)のように、インクタンク30内のインクを再びインク保持部材24の流路24A内に入れる。これにより、インクタンク30内の上層に位置するインクを下方に引き寄せて、インクタンク30内のインクを攪拌することができる。
【0043】
このような記録ヘッド20内の加圧および減圧を繰り返して、インク保持部材24の流路24A内のインクをインクタンク30内に所望回数出し入れすることにより、インクタンク30のインクを充分に攪拌して、インク成分を均一化することができる。
【0044】
また、インク室21内のインクIの液面がインク保持部材24の底面よりも高くなるまで、インクタンク30からインク室21内にインクを供給して、そのインク室21内のインクIをインク保持部材24の流路24Aを通してインクタンク30に戻してもよい。これにより、インクタンク30内に出し入れするインクの量を増大させて、インクタンク30内のインクをより効果的に攪拌することができる。このようなインクの攪拌動作の具体例を
図12および
図13を用いて説明する。
【0045】
まず、
図12(a)のように、弁52を閉じかつ弁53を開いた状態でポンプ55を他方向に回転させてインク室21内の気体を排出し、そのインク室21内を減圧して負圧を発生させることにより、インクタンク30からインク室21内にインクを供給する。そして、インク室21内のインクIの量を検知する不図示のインク量センサによって、インク室21内のインクIの液面がインク保持部材24の底面よりも高くなったことが検出されるまで、インクタンク30からインク室21内にインクを供給する。インク量センサとしては、例えば、インク室21内に複数の電極を備えた液面センサを用いることができる。その液面センサは、インクの液面が所定位置に達したときに、電極同士がインクによって電気的に導通あるいは不導通となることによって、インクの液面を検出する構成となっている。また、インク量センサは、インク室21内のインクIの量を検知することができればよく、インクの液面を検知する構成のみに特定されない。
【0046】
インクIの液面がインク保持部材24の底面よりも高くなるまでインクを供給した後は、
図12(b)のように、ポンプ55を一方向に回転させてインク室21内に気体を導入し、そのインク室21内を加圧する。これにより、インク室21内のインクはインク保持部材24の流路24Aを通してインクタンク30に戻される。その後、
図13(a)のように、インク室21内のインクIの液面がインク保持部材24の底面から離れてから、
図13(b)のように、インク保持部材24の流路24A内のインクがインクタンク30に戻される。
【0047】
このように、インクタンク30に対してインクを出し入れするインクを攪拌動作は、所定回数繰り返してもよい。また、このようなインクの攪拌動作は、インク保持部材24の流路24A内のインクをインクタンク30内に出し入れする
図11の場合と比較して、1回の攪拌動作においてインクタンク30に対してインクを出し入れするインクを増大させることができる。この結果、インクタンク30内のインクをより効果的に攪拌することができる。
【0048】
また、ポンプ55によってインク室21内のインクIをインクタンク30に戻す際に、インク室21内を断続的に加圧したり、インク室21内に加圧力を変化(強弱)させてもよい。さらに、インクタンク30の放置期間の長さに応じて、インクタンク30に対するインクの出し入れの量を変更してもよい。例えば、インクタンク30の放置期間が長いほど、インクタンク30からインク室21内に供給するインク量を多くして、その後に、インク室21からインクタンク30に戻すインクの量を多くすることができる。また、インクタンク30の放置期間に応じて、
図11のようなインクの攪拌動作と、
図12および
図13のようなインクの攪拌動作と、を切換えて実行するようにしてもよい。また、インクタンク30に対するインクの出し入れの量は、1回の攪拌動作において変更するだけではなく、攪拌動作の実行回数に応じて変更することもできる。
【0049】
(インクの供給開始時)
インクが存在していない記録ヘッド20にインクタンク30を接続したときには、キャップ60を記録ヘッド20の吐出口形成面に密着させたキャッピング状態としてから、そのキャップ60の内部をポンプ55によって吸引する。これにより、
図6(a)のように、記録ヘッド20にインクタンク30内のインクを供給することができる。また、ポンプ55によって負圧を発生させて、その負圧をバッファ室54、弁53、および開口部25を通してインク室21内に作用させることによって、記録ヘッド20にインクタンク30内のインクを供給することもできる。前者のキャップ60を用いて吸引する場合には、吸引回復動作時と同様に、キャップ60内に画像の記録に寄与しないインクが排出されることになる。一方、後者のように開口部25を通して吸引する場合には、記録に寄与しないインクの排出させることなく記録ヘッド20内にインクを供給して、インクの消費を抑えることができる。
【0050】
記録ヘッド20のインク室21内に供給する供給量は、インク室21内のインク量を検知する不図示のインク量センサ(インクの液面センサなど)を用いることにより、最適な量に調整することができる。吐出口20Aにおけるインクのメニスカスは、キャッピング状態のキャップ60の内部をポンプ55によって吸引する吸引回復動作によって形成することができる。
【0051】
また、記録ヘッド20に接続されているインクタンク30内のインク残量がなくなって記録ヘッド20内のインク量が減少した後、その記録ヘッド20に新たなインクタンク30を接続した場合には、記録ヘッド20内のインク量を最適な量まで増やす必要がある。この場合には、ポンプ55によって発生した負圧を開口部25から導入して、新たに接続されたインクタンク30内のインクを記録ヘッド20内に供給することができる。また、記録ヘッド20内のインク量がインク量センサによって検知できない程度にまで減少したときには、開口部25を通して記録ヘッド20内に負圧を導入することにより、インクタンク30内のインクを記録ヘッド20内に供給することができる。
【0052】
このように、開口部25を通して、記録ヘッド20内に負圧(記録ヘッド20内を減圧するための吸引力)を導入することにより、インクを無駄に消費することなく、記録ヘッド20内にインクを供給することができる。このようなインクの供給時には、キャップ60をキャッピング状態としてもよい。
【0053】
上述した実施形態においては、インク保持部材24を記録ヘッド20側に備えている。しかし、そのインク保持部材24はインクタンク30側に備えてもよく、あるいは記録ヘッド20が装着される記録装置側の記録ヘッド装着部に備えてもよい。同様に、フィルタ部材23はインクタンク30側に備えてもよく、あるいは記録ヘッド20が装着される記録装置側の記録ヘッド装着部に備えてもよい。
【0054】
また、記録動作時における記録ヘッド20内の負圧変動を小さく抑えるために、開口部25を通して記録ヘッド20内の圧力を制御してもよい。記録ヘッド20内に加圧力を供給するときには、開口部25は気体及び/又は液体の導入により加圧力の導入を許容する加圧力導入部として機能し、移送部51は加圧力を供給可能な加圧力供給路として機能する。また、記録ヘッド20内に吸引(減圧)力を作用させるときには、開口部25は気体及び/又は液体の排出による吸引力の導入を許容する吸引力導入部として機能し、移送部51は吸引力を供給可能な吸引力供給路として機能する。開口部25は、このような加圧を行う導入部と吸引を行う排出部とに分けて備えてもよい。また、それらの加圧力および吸引力は、記録ヘッド20内を加圧する圧力および減圧する圧力であればよく、必ずしも大気圧を基準とする正圧および負圧に限定されない。
【0055】
本発明は、フルラインタイプの記録装置の他、記録ヘッドの移動と、記録媒体の搬送動作と、を伴って画像を記録するシリアルスキャンタイプの記録装置等、種々の記録方式の記録装置に対して適用することができる。
【0056】
また、本発明の液体吐出ヘッドは、インクを吐出可能なインクジェット記録ヘッドの他、種々の液体を吐出するためのヘッドとして広く適用することができる。例えば、液流路内に供給される種々の処理液や薬剤などを吐出するためのヘッドとして用いることもできる。また、本発明の液体吐出装置は、インクジェット記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置の他、種々の処理液や薬剤などを処理部材に付与するための装置として、広く適用することができる。