(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133375
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】ズーム回転部の回転角を対物レンズに依存して制限する顕微鏡
(51)【国際特許分類】
G02B 7/10 20060101AFI20170515BHJP
G02B 21/00 20060101ALI20170515BHJP
G02B 7/04 20060101ALI20170515BHJP
G02B 7/16 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
G02B7/10 C
G02B21/00
G02B7/04 C
G02B7/04 D
G02B7/16
【請求項の数】15
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-198584(P2015-198584)
(22)【出願日】2015年10月6日
(65)【公開番号】特開2016-75906(P2016-75906A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2015年10月6日
(31)【優先権主張番号】10 2014 114 465.1
(32)【優先日】2014年10月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500519563
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ (シュヴァイツ) アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems (Schweiz) AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ルヴァン ヘープ
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト シュニッツラー
【審査官】
登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−192895(JP,A)
【文献】
特開2004−302404(JP,A)
【文献】
特開2002−267939(JP,A)
【文献】
米国特許第05497267(US,A)
【文献】
特開2014−174185(JP,A)
【文献】
特許第5126367(JP,B2)
【文献】
独国特許出願公開第102010030637(DE,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102011114336(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/10
G02B 7/04
G02B 7/16
G02B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡であって、
光路に選択的に配置可能な、焦点距離がそれぞれ異なる少なくとも2つの対物レンズ(44,52)と、当該光路に配置されている対物レンズ(44,52)を受容するための受容領域(102)とを備えた対物レンズシステム(30)と、
総ズーム範囲(90)を有するズームシステム(32)であって、顕微鏡観察対象の実際の総倍率は、選択されている対物レンズ(44,52)の焦点距離と、前記総ズーム範囲(90)内で設定されている前記ズームシステム(32)の倍率とから得られる、ズームシステム(32)と、
前記ズームシステム(32)の倍率を調整するための、手動で回転可能な回転部(108)であって、予め定められている最大回転範囲内で前記顕微鏡(10)の回転不能なハウジングに対して相対回転可能であり、前記最大回転範囲によって、前記総ズーム範囲が決定される、回転部(108)と、
を備え、
前記回転部(108)は第1の係合エレメント(162,164)を含み、
前記ハウジング(100)に、少なくとも1つの第2の係合エレメント(130乃至136、142乃至148)が可動に取り付けられており、
前記第2の係合エレメント(130乃至136,142乃至148)は、
非作動位置では前記第1の係合エレメント(162,164)に係合せず、
作動位置では前記第1の係合エレメント(162,164)に係合することにより、前記回転部(108)の回転範囲が、前記最大回転範囲の一部の範囲である部分回転範囲に制限され、
前記第2の係合エレメント(130乃至136,142乃至148)の位置は、前記受容領域(102)に受容されている対物レンズ(44,52)によって定められる
ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項2】
前記第2の係合エレメント(130乃至136,142乃至148)の位置は、前記受容領域(102)に受容されている対物レンズ(44,52)の接触面との接触を介して調整される、
請求項1記載の顕微鏡(10)。
【請求項3】
それぞれ接触面(154)を有する第1の対物レンズおよび第2の対物レンズ(44,52)が設けられており、
前記第1の対物レンズ(44,52)の接触面(154)は、当該第1の対物レンズ(44,52)が前記受容領域(102)に受容されているときに前記第2の係合エレメント(130乃至136,142乃至148)が前記作動位置に配置されるように構成されており、
前記第2の対物レンズ(44,52)の接触面(154)は、当該第2の対物レンズ(44,52)が前記受容領域(102)に受容されているときに前記第2の係合エレメント(130乃至136,142乃至148)が前記非作動位置に配置されるように構成されている、
請求項2記載の顕微鏡(10)。
【請求項4】
前記第2の係合エレメント(130乃至136,142乃至148)は弾性部材(140)を用いて前記作動位置に付勢されており、これによって前記受容領域(102)に受容されている対物レンズ(44,52)に応じて場合によっては、前記第2の係合エレメント(130乃至136,142乃至148)は前記弾性部材(140)の復元力に抗して前記非作動位置に保持される、
請求項1から3までのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【請求項5】
前記弾性部材(140)はバネである、
請求項4記載の顕微鏡(10)。
【請求項6】
それぞれ接触面(154)を有する第1の対物レンズおよび第2の対物レンズ(44,52)が設けられており、
前記第1の対物レンズ(44,52)の接触面(154)は、当該第1の対物レンズ(44,52)が前記受容領域に配置されるときに前記第2の係合エレメント(130乃至136,142乃至148)に当該第1の対物レンズ(44,52)の接触面(154)を接触させないように構成されており、
前記第2の対物レンズ(44,52)の接触面(154)は、当該第2の対物レンズ(44,52)が前記受容領域(102)に配置されるときに前記第2の係合エレメント(130乃至136,142乃至148)に当該第2の対物レンズ(44,52)の接触面(154)が接触し、当該接触により、前記弾性部材(140)の復元力に抗して前記作動位置から前記非作動位置へ移動するように構成されている、
請求項4または5記載の顕微鏡(10)。
【請求項7】
それぞれ接触面(154)を有する第1の対物レンズおよび第2の対物レンズ(44,52)が設けられており、
前記第1の対物レンズ(44,52)の接触面(154)および/または前記第2の対物レンズ(44,52)の接触面(154)は階段状である、
請求項1から6までのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【請求項8】
前記第1の係合エレメント(162,164)は少なくとも1つの係合リンク(162,164)を備え、かつ、前記第2の係合エレメント(130乃至136,142乃至148)はピン(130乃至136)を備えており、
前記ピン(130乃至136)は、前記作動位置では前記係合リンク(162,164)に係合する、
請求項1から7までのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【請求項9】
前記第2の係合エレメント(130乃至136,142乃至148)は、前記ピン(130乃至136)に結合された接続部材(142乃至148)を備え、
対物レンズ(44,52)の接触面(154)の形態に応じて、前記接続部材(142乃至148)に当該接触面(154)が接触することにより当該接続部材(142乃至148)は移動する、
請求項8記載の顕微鏡(10)。
【請求項10】
複数の前記第2の係合エレメント(130乃至136,142乃至148)が設けられており、
前記複数の第2の係合エレメント(130乃至136,142乃至148)は、
非作動位置では、前記第1の係合エレメント(162,164)に係合せず、
作動位置では、前記第1の係合エレメント(162,164)に係合することにより、前記回転部(108)の回転範囲は常に、前記最大回転範囲の一部の範囲である部分回転範囲に制限され、
前記受容領域(102)内に位置している対物レンズ(44,52)によって、前記第2の係合エレメント(130乃至136,142乃至148)のうちどれが前記作動位置にあり、どれが前記非作動位置にあるかが特定される、
請求項1から9までのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【請求項11】
前記第1の係合エレメント(162,164)は2つの係合リンク(162,164)を備えており、
前記第2の係合エレメント(130乃至136,142乃至148)として4つのピン(130乃至136)が設けられており、
前記ピン(130乃至136)のうち2つは、前記作動位置では第1の係合リンク(162)に係合し、他の2つのピン(130,136)は、当該作動位置では第2の係合リンク(164)に係合する、
請求項10記載の顕微鏡(10)。
【請求項12】
複数の前記対物レンズ(44,52)が設けられており、
各対物レンズ(44,52)が前記受容領域(102)に受容されているとき、前記作動位置または前記非作動位置における前記ピン(130乃至136)の配置の異なる組合せが決定される、
請求項11記載の顕微鏡(10)。
【請求項13】
第1の対物レンズ(44,52)が前記受容領域(102)に受容されているとき、第1のピン(132)は前記作動位置に位置し、かつ、第2,第3および第4のピン(130,134,136)は前記非作動位置に位置し、
第2の対物レンズ(44,52)が前記受容領域(102)に受容されているとき、前記第2および前記第3のピン(130,136)は前記作動位置に位置し、かつ、前記第1および前記第4のピン(132,134)は前記非作動位置に位置し、
第3の対物レンズ(44,52)が前記受容領域(102)に受容されているとき、前記第4のピン(134)は前記作動位置に位置し、かつ、前記第1,前記第2および前記第3のピン(130,132,136)は前記非作動位置に位置する、
請求項10または11記載の顕微鏡(10)。
【請求項14】
前記最大回転範囲を制限するための、定位置の第1のストッパおよび第2のストッパ(172,174)が設けられている、
請求項1から13までのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【請求項15】
前記第2の係合エレメント(130乃至136,142乃至148)は、前記作動位置と前記非作動位置との間で直線的に移動可能である、
請求項1から14までのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対物レンズシステムを含む顕微鏡に関し、当該対物レンズシステムは、選択的に光路に配置可能である少なくとも2つの対物レンズと、当該光路に配置された対物レンズを受容するための受容領域とを有し、当該少なくとも2つの対物レンズはそれぞれ異なる焦点距離を有する。当該顕微鏡はさらに、ズームシステムの倍率を調整するための、手動で回転可能な回転部も有し、前記回転部は、当該顕微鏡の相対回転不能のハウジングに対して、予め定められた最大回転領域の範囲内において、第1の方向と、当該第1の方向とは逆方向である第2の方向とに相対回転可能であり、当該最大回転領域によって総ズーム範囲が定められる。
【背景技術】
【0002】
デジタル顕微鏡ではしばしば、対物レンズシステムとズームシステムとの双方を備えた拡大システムが用いられることが多く、このズームシステムは、顕微鏡観察対象の像を、当該デジタル顕微鏡の画像検出ユニットに直接結像させる。この倍率は、ズームシステムの設定された焦点距離と、光路上にある対物レンズの焦点距離との商として求められる。よって、可能な限り大きな倍率を実現するためには、ズームシステムにおいて焦点距離を可能な限り大きく設定し、かつ、焦点距離が小さい対物レンズを使用しなければならない。逆に、倍率を小さくするためには、ズームシステムによる焦点距離を可能な限り小さく設定し、かつ、焦点距離が可能な限り大きい対物レンズを使用しなければならない。
【0003】
公知の顕微鏡では、可能な限り大きなズーム率を実現するため、すなわち、設定可能な倍率範囲を可能な限り大きくするために、ズーム範囲をその都度限界まで使用し、かつ、これに応じて、焦点距離が非常に異なる複数の対物レンズを用いていた。よって、最大倍率および最小倍率の調整は、対物レンズをズームシステムに合わせて調整することにより行われていた。
【0004】
よって、倍率範囲を可能な限り大きくするためには、焦点距離が非常に短い対物レンズと、焦点距離が非常に長い対物レンズとの双方を使用しなければならない。しかし、焦点距離が非常に短い対物レンズは好適でない。というのも、倍率を高くするために必要な開口数を実現するため、対物レンズの複雑な構成が必要となるからである。このような複雑な構成の対物レンズにより実現できる視野角は、大抵は非常に小さくなってしまう。というのも、そうしないと光学補正が実現できなくなるからである。よって、高開口数の複合対物レンズでは、ズームシステムを後置接続することができず、口径食によって切り取られる視野角が大きくなってしまうのが一般的である。
【0005】
逆に、倍率を小さくするために必要な、対物レンズの長い焦点距離を実現するためには、これに応じて、対物レンズ境界面と観察対象面との間の距離を大きくしなければならない。よって、このような対物レンズを光路に配置する際には、たいてい、観察対象面との間に必要な大きな距離をおくため、観察対象からズームシステムを離す必要がある。焦点距離が長い対物レンズの他の欠点は、対物レンズ側の分解能が同じである場合、対物レンズの長い焦点距離に応じて瞳径を大きくしなければならないことであり、このことによってコストが高くなり、対物レンズの所要寸法が大きくなってしまう。
【0006】
その上、焦点距離が大きく異なる複数の対物レンズを用いることは、これらの対物レンズの同焦点距離も大きく異なってくるという欠点を有する。この同焦点距離は、対物レンズの取付面から観察対象面までの距離であり、対物レンズの面間寸法と作動距離とを合わせたものである。このことにより、システムの同焦点構成が非常に複雑になってしまうか、または完全に実現不可能となってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、倍率範囲が大きく、かつ、構成が簡単でコンパクトである顕微鏡を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、請求項1に記載の特徴を有する顕微鏡により解決される。従属請求項に、本発明の有利な実施形態が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明では、回転部は第1の係合エレメントを有する。さらに、顕微鏡のハウジングには少なくとも1つの第2の係合エレメントが可動に取り付けられており、当該第2の係合エレメントは、非作動位置では第1の係合エレメントに係合せず、作動位置では第1の係合エレメントと係合する。これら双方の係合エレメントが相互に係合しているときは、この係合によって手動回転部の回転範囲は、当該手動回転部の最大回転領域の一部の領域である部分回転領域に限定される。とりわけ、この係合により、第1の方向または第2の方向への回転部の回転は、前記最大回転領域以内の所定の限界回転角までしか行うことができなくなり、この所定の限界回転角は、当該最大回転領域の両限界回転角のうち一方とは一致しない。第2の係合エレメントの位置は、目下実際に受容領域に受容されている対物レンズによって、ひいては、光路上にある対物レンズによって定められる。
【0010】
このような構成により、対物レンズが光路上に配置されているときに第1の係合エレメントと第2の係合エレメントとが係合しているように当該対物レンズが構成されていれば、回転部の回転範囲を、当該第2の係合エレメントによって定められた部分回転領域に制限することが可能になる。よって、当該対物レンズが光路に配置されているときには、ズームシステムは総ズーム範囲全体にわたって移動できなくなり、この総ズーム範囲内のズーム部分範囲でしか移動することができなくなる。倍率を調整できる総ズーム範囲は最大回転領域によって定められ、回転部の回転位置に応じて別の倍率に調整することができる。
【0011】
したがって、上記の第2の制限エレメントにより、特に第1の対物レンズと総ズーム範囲内の第1のズーム部分範囲とに割り当てられる。
【0012】
所望のズーム率に本来必要とされる寸法より大きな寸法のズームシステムを用いることにより、使用される複数の対物レンズの焦点距離差が従来の顕微鏡の焦点距離差ほど大きくならないようにすることができる。とりわけ、複数のズーム部分範囲の割り当てにより、倍率が大きい対物レンズの場合でも、ズームシステムによる倍率を可能な限り高くすることができ、これにより、総倍率を高くするようにズームシステムが協働することができる。それに対し、倍率が低い対物レンズの場合には、上記ズーム部分範囲が低いズーム率にも対応したものとなり、大きな視野角を実現するように、当該ズーム部分範囲を総ズーム範囲内で選択する。このようにして、割り当てたズーム部分範囲により、各対物レンズの個別要求にその都度応じてズームシステムを調整することにより、当該対物レンズの構成に課される要求を小さくすることができ、特に、焦点距離がより近い複数の対物レンズを用いることが可能になる。このことにより、対物レンズをよりコンパクトに構成することができ、この構成のコンパクト化によって対物レンズを低コスト化することができる。
【0013】
このようにして特に、使用される複数の対物レンズの寸法をより近づけることができ、このことによって特に、同焦点の対物レンズシステムを実現することができる。このように対物レンズシステムを同焦点構成とすることによっても、対物レンズの交代時に改めて焦点合わせを行うのを不要にすることができる。さらに、比較的高いズーム率を実現することもできる。このことにより、とりわけどのような対物レンズでも、オペレータに対して実際に確保されるズーム率の大きさが等しくなるという利点が奏される。
【0014】
ズームシステムの「総ズーム範囲」とは、とりわけ、構造により定まる最大使用可能ズーム範囲を指す。この総ズーム範囲によってとりわけ、ズームシステムによって設定可能である複数の異なる焦点距離が規定される。よって総ズーム範囲の限界は、ズームシステムの最小焦点距離と最大焦点距離とによって与えられる。
【0015】
機械的な係合エレメントを成す2つの係合エレメントを用いることにより、各対物レンズへのズーム部分範囲の割り当てを特に簡単かつ確実に行うことができる。特に、このような割り当てを行うために複雑な電気的駆動制御部を用いる必要はなく、このことにより構造が簡素化され、エラーが発生しにくくなる。
【0016】
本発明の1つの有利な実施形態では、受容領域に受容されている対物レンズの接触面と接触させることにより、第2の係合エレメントの位置を設定する。とりわけ、対物レンズシステムの複数の各対物レンズがそれぞれ異なる形状の接触面を有することができ、このことにより、第2の係合エレメントは対物レンズと接触面の形状とに応じて、作動位置または非作動位置に配置され、場合によってはこの配置に応じて、当該対物レンズの場合におけるズームシステムの位置調整範囲が、第2の係合エレメントによって規定された部分回転範囲に制限され、これにより、当該部分回転範囲に対応する各ズーム部分範囲に制限される。その際には、第2の係合エレメントをとりわけ作動位置または非作動位置に付勢しておき、前記接触面との接触により当該位置にて留まるか、または目下の位置とは異なる位置に移動することができる。とりわけ、その移動は、各対物レンズが受容領域に入るときに行われる。
【0017】
前記対物レンズはとりわけ、受容領域にスライド進入することができる。このスライド進入中に、第2の部分領域と、対物レンズの、当該第2の部分領域に対して設けられた接触面とが接触することにより、第2の係合エレメントの位置の調整を行うことができる。第2の係合エレメントを付勢位置に留める場合には、前記接触面はとりわけ、第2の係合エレメントに全く接触しないように構成されるか、または、接触は生じるが第2の係合エレメントを現在付勢されている位置から別の位置へ完全に移動させるのに十分でないように構成される。
【0018】
本発明の特に有利な実施形態では、それぞれ接触面を有する第1の対物レンズと第2の対物レンズとを設ける。第1の対物レンズの接触面は、当該第1の対物レンズが受容領域に受容されて光路上に位置しているときに第2の係合エレメントを作動位置に配置するように構成されている。このような構成により、第1の対物レンズの場合には、回転部の回転範囲が第2の係合エレメントと第1の係合エレメントとの係合によって制限されることにより、割り当てられたズーム部分範囲しか用いることができなくなる。逆に、第2の対物レンズの接触面は、当該第2の対物レンズが受容領域に受容されているときに第2の係合エレメントを非作動位置に配置するように構成される。このようにして、第2の対物レンズのときには、第2の係合エレメントは第1の係合エレメントに係合しないので、少なくともこの係合エレメントによっては、回転部の回転角が制限されることはない。
【0019】
本発明の特に有利な実施形態では、第2の係合エレメントは弾性部材によって作動位置に付勢されており、当該第2の係合エレメントを非作動位置に配置しようとするときの対物レンズによって、これに対応した構成の、当該対物レンズの接触面との接触により、当該対物レンズが挿入されるときの当該弾性部材の復元力に抗して、当該第2の係合エレメントは作動位置から非作動位置へ移動する。
【0020】
対物レンズを受容領域から離して戻すと、弾性部材は第2の係合エレメントを作動位置に戻す。作動位置に付勢しておくことの利点は、受容領域に挿入されている対物レンズが無い限り、第1の係合エレメントと第2の係合エレメントとは常に係合しており、この係合により、回転部の回転範囲が制限されることである。
【0021】
本発明の他の1つの実施形態では、弾性部材を介して前記第2の係合エレメントを非作動位置に付勢しておき、必要なときに限り対物レンズを介して、接触面の形態に応じて作動位置に動かすことも可能である。
【0022】
本発明の他の1つの択一的な実施形態では、上述の両位置のいずれにおいても付勢を行わず、いずれの位置でも第2の係合エレメントを目下の対物レンズによって能動的に動かすことも可能である。
【0023】
さらに、上述の実施形態に代えて択一的に、前記「付勢」を弾性部材によって行わずに、重力によって行うことも可能である。この実施形態はとりわけ、第2の係合エレメントを上記2つの位置に位置調整するために縦方向に移動させる場合に実施可能である。上述のように付勢すると、対応する接触面を有する対物レンズが受容領域に受容されていない場合、第2の係合エレメントは下方位置に位置することとなり、対応する接触面を有する対物レンズが挿入されると、当該対物レンズの接触面と接触することにより上昇することができる。
【0024】
前記弾性部材はとりわけバネであり、有利には圧縮バネである。このようなバネにより、特に簡単かつ確実な構成を実現することができる。
【0025】
本発明の特に有利な実施形態では、前記第1の対物レンズの接触面は、当該第1の対物レンズが受容領域に挿入されるときに第2の係合エレメントに当該第1の対物レンズの接触面が接触しないように構成されている。このような構成により、第2の係合エレメントが付勢位置に、すなわち作動位置に留まるようにすることができる。さらに、前記第2の対物レンズの接触面はとりわけ、当該第2の対物レンズが受容領域に挿入されるときに第2の係合エレメントが当該第2の対物レンズの接触面に接触し、この接触によって、弾性部材の復元力に抗して付勢位置から非付勢位置へ、すなわち特に、作動位置から非作動位置へ移動するようにも構成される。
【0026】
第1の対物レンズおよび第2の対物レンズの接触面は、特に階段状に形成されている。その際には、対物レンズのスライド進入時に第2の係合エレメントが当該接触面の段まで摺動し、これにより、規定通りに作動位置と非作動位置との間を移動できるように、当該段は傾斜した側壁を有する。このような側壁により、特に角形成を回避することができる。さらに、上述の構成により、第2の係合エレメントを純粋に機械的にのみ確実に位置調整することが保証される。
【0027】
本発明の特に有利な実施形態では、前記第1の係合エレメントは少なくとも1つの係合リンク(エキスパンションリンク、溝)を有し、前記第2の係合エレメントはピンを有し、前記作動位置では前記ピンは係合リンクに係合する。よって、ピンが係合リンクの片側において当該係合リンクの端部分にぶつかるまでしか当該係合を回転させることができないので、少なくともこの方向では、当該係合によって回転範囲が制限される。このような構成によってとりわけ、係合リンクの両端によって、2方向での回転範囲を制限することもできる。こうすることにより、各対物レンズのときに、各対応する部分回転範囲のいずれの限界も最大回転範囲の限界と一致しないように、当該部分回転領域が当該最大回転範囲内にあるようにすることができる。それに対し、ピンが係合リンクとの係合によって、1方向でしか回転範囲を制限しない場合(これはたとえば、最大回転範囲を制限するために回転部がまず最初に、他方向にストッパにぶつかってから、その後にピンが係合リンクの他端にぶつかることに起因する)、部分回転範囲の少なくとも当該一方の限界は、最大回転範囲の限界と一致する。
【0028】
さらに、前記第2の係合エレメントが、前記ピンと固定的に結合された接続部材を備えており、対物レンズの接触面の構成に応じて当該接触面が当該接続部材に接触し、その接触によって当該接続部材が動くように構成すると有利である。この接続部材を適切に動かすと、当該接続部材に固定的に結合されたピンが当該接続部材の動きに応じて連動する。このような構成により、ピンを確実にガイドしながらハウジング内に収容することができ、なおかつ、特に同様にピンとして構成されるこの接続部材を介して、挿入されている対物レンズの接触面との接触を確立することも可能になる。こうするためには、前記接続部材はとりわけ、前記受容領域内に突出している。
【0029】
本発明の特に有利な実施形態では、前記第2の係合エレメントは複数設けられており、非作動位置では、当該複数の第2の係合エレメントはそれぞれ第1の係合エレメントに係合せず、作動位置では第1の係合エレメントに係合する。作動位置におけるこの係合により、回転部の回転範囲は常に、最大回転範囲の一部である各部分範囲に制限される。各部分範囲は最大回転範囲の一部であるから、それぞれ、総ズーム範囲内の1ズーム部分範囲に相当する。目下受容領域内にある対物レンズによって、前記複数の第2の係合エレメントのどれが作動位置にあり、どれが非作動位置にあるかが特定される。このようにして、対物レンズが多数存在していても、回転部の回転範囲が、各ズーム部分範囲に対応する部分回転範囲に制限されることにより、各対物レンズごとにそれぞれ最適なズーム部分範囲を設定することができる。
【0030】
前記1つの第1の係合エレメントは、特に2つの係合リンクを有する。さらに、前記第2の係合エレメントとして特に4つのピンが設けられ、これらのピンのうち2つが、前記2つの係合リンクのうち第1の係合リンクに係合し、他の2つのピンが両係合リンクのうち第2の係合リンクに係合する。当該係合はそれぞれ、作動位置に位置していることを前提とする。
【0031】
本発明の特に有利な実施形態では、前記対物レンズは複数設けられており、各対物レンズが、受容領域にて受容されている場合には、作動位置ないしは非作動位置における前記ピンの配置の他の組合せを規定する。このようにして、各対物レンズごとに別の回転範囲が設定され、これにより別のズーム部分範囲が設定される。
【0032】
本発明の特に有利な実施形態では3つの対物レンズが設けられており、第1の対物レンズが受容領域内に受容されているときには第1のピンが作動位置に来て、他の3つのピンが非作動位置に来るようにする。このようにして、第1の対物レンズのときには、これに割り当てられた回転部分範囲は、互いに対応するピンと係合リンクとの係合によって定まり、かつ、他方向では最大回転範囲の限界によって定まる。
【0033】
それに対して第2の対物レンズが受容領域に受容されているときには、第2のピンおよび第3のピンは作動位置に位置しており、かつ、第1のピンおよび第4のピンは非作動位置に位置している。その際には、第2の対物レンズに対応する部分回転範囲は双方向にて前記2つのピンによって制限され、この双方向での制限により、対応するズーム部分範囲は、総ズーム範囲との共通の限界を有することなく、総ズーム範囲内にある。
【0034】
それに対して第3の対物レンズが受容領域に受容されているときは、第4のピンのみが作動位置に位置しており、他の3つのピンは非作動位置に位置している。このようにして第3の対物レンズのときには、これに対応する部分回転範囲は、第4のピンと、これに対応する係合リンクとの係合によって、最大回転範囲の制限により規定される。
【0035】
さらに、前記最大回転範囲を制限するために、固定位置の第1のストッパおよび第2のストッパを設けると有利である。これら2つのストッパは特に、顕微鏡のハウジングに対して相対的に固定位置に取り付けられ、複数の位置の間において移動不能とされることにより、両ストッパが回転部の回転範囲を常に制限する。
【0036】
さらに、1つまたは複数の第2の係合エレメントが作動位置と非作動位置との間で直線移動可能ことも有利である。このようにして、作動位置と非作動位置との間にて前記1つまたは複数の第2の係合エレメントを、特に簡単に、低エラー率で移動できるのが保証される。
【0037】
上記にて1つの第2の係合エレメントについて説明した構成は、当該第2の係合エレメントを複数用いる場合にも同様に実施することが可能である。とりわけ、すべての第2の係合エレメントについてそれぞれ弾性部材を用いて、当該第2の係合エレメントを作動位置に付勢しておくことができる。
【0038】
対物レンズを受容領域に入れる前において、回転部の設定が、当該対物レンズに対して予め定められた部分回転範囲外になっている場合には、当該予め定められた部分回転範囲内に最初に回転して挿入されるときに、第2の係合エレメントは第1の係合エレメントにスナップ係合し、これにより、この時点から回転範囲は当該回転部分領域に制限される。こうするためには、第2の係合エレメントが第1の係合エレメントに達したときに弾性部材によって自動的に当該第1の係合エレメントに押入されるように、当該第2の係合エレメントを、特に当該第1の係合エレメントが挿入されている表面において案内する。
【0039】
第1の係合エレメントの1つまたは複数の係合リンクは、特に円弧状に形成されている。
【0040】
有利には第2の対物レンズにも、前記総ズーム範囲内の第2のズーム部分範囲を割り当てる。
【0041】
1つの有利な実施形態では、少なくとも1つの対物レンズのズーム部分範囲は総ズーム範囲より小さい。特に好適なのは、すべての対物レンズの各ズーム部分範囲を、ズームシステム全体の総ズーム範囲より小さくすることである。よって、総ズーム範囲のうち、各対物レンズに使用される部分範囲は、各対物レンズの特性に適合した特性を有する1つのみとなる。
【0042】
このようにして、前記対物レンズの総ズーム範囲は、各対物レンズに用いられる各ズーム部分範囲より大きくなるので、ズームシステムは「オーバーサイズ」または「オーバーサイジング」ズームシステムとも称される。
【0043】
上記実施形態において、各対物レンズのズーム部分範囲は少なくとも部分的に互いに重複することも可能である。これに代えて択一的に、重複が生じないように各ズーム部分範囲を選択することも可能である。各ズーム部分範囲が重複することにより、ズームシステムの焦点距離を適宜調整することによって各対物レンズの位置調整範囲を可能な限り大きくすることができ、これによって倍率を大きく変化させることが可能になる。
【0044】
本発明の1つの有利な実施形態では、ズーム部分範囲の下限と上限との間においてズーム部分範囲が異なっても常に、ズーム率が予め定められた通り一定であるように、当該ズーム部分範囲の下限および上限を選択する。「ズーム率」とはとりわけ、目下のズーム部分範囲の上限と下限との商すなわち最大焦点距離と最小焦点距離との商を指す。上述の構成により、どの対物レンズであっても、オペレータが使用できるズーム率を等しくすることができ、これによってオペレータは、どの対物レンズを用いるかに依存せずに一定の倍率範囲を得ることができ、なおかつ、使用されている対物レンズに応じて総倍率を変えることももちろん可能である。というのもこの総倍率は、ズームシステムの焦点距離を対物レンズの焦点距離で除算することにより得られるものだからである。
【0045】
特に、少なくとも1つのズーム部分範囲の下限が総ズーム範囲の下限と一致し、かつ、少なくとも1つのズーム部分範囲の上限が当該総ズーム範囲の上限と一致すると有利である。このような構成により、ズームシステムの総ズーム範囲を最大限利用することができ、これにより、顕微鏡全体における総ズーム率も可能な限り大きくすることができる。
【0046】
特に好適なのは、焦点距離が他の対物レンズの焦点距離より大きい対物レンズのズーム部分範囲は、当該他の対物レンズのズーム部分範囲の最小倍率ないしは最小焦点距離より小さい倍率ないしは焦点距離を有するように、各ズーム部分範囲を事前設定しておくことである。当該1つの対物レンズが、前記他の対物レンズの焦点距離より大きい焦点距離を有する場合には、当該対物レンズにより、当該他の対物レンズの倍率より小さい倍率になる、ということになる。よって、低倍率の場合に対物レンズおよびズームシステムの特性を、特に所望の大きな視野角になるように最大限補填するため、このズーム部分範囲がカバーする、当該ズーム部分範囲の焦点距離が、総ズーム範囲に対して小さくなるように、当該ズーム部分範囲を選択する。
【0047】
逆に、焦点距離が他の対物レンズの焦点距離より小さい対物レンズのズーム部分範囲が、他の対物レンズのズーム部分範囲の最大倍率ないしは最大焦点距離より大きい倍率ないしは焦点距離を有するように、各ズーム部分範囲を事前設定しておく。このような構成により、倍率が高い対物レンズの場合には、ズーム部分範囲も総ズーム範囲の大きな焦点距離をカバーし、これにより、総倍率を大きくするのに寄与することができる。
【0048】
本発明の特に有利な実施形態では、前記対物レンズシステムは、第1の焦点距離を有する第1の対物レンズと、当該第1の焦点距離より長い第2の焦点距離を有する第2の対物レンズとを有する。このような実施形態により、第2の対物レンズにより実現される倍率は、第1の対物レンズにより実現される倍率より小さくなる。総ズーム範囲は、下限を第3の焦点距離とし、上限を第4の焦点距離とする。第1の対物レンズに割り当てられる第1のズーム部分範囲は、上限を前記第4の焦点距離とし、第2の対物レンズに割り当てられる第2のズーム部分範囲は、下限を前記第3の焦点距離とする。このようにして、前記第4の焦点距離に設定するとき、前記2つの対物レンズのうち倍率が高い方である第1の対物レンズはズームシステムと共に、総倍率を最大限に大きくすることができる。逆に、第2の対物レンズと第3の焦点距離とを選択すると、倍率を可能な限り小さくすることができる。
【0049】
特に、各焦点距離に応じた設定時に総倍率が1未満となるように、すなわち、観察対象の像が縮小されて結像されるように、各焦点距離を選択することも可能である。
【0050】
さらに、ズームシステムの位置調整範囲を、現在選択されている対物レンズに割り当てられたズーム部分範囲に、すなわち、光路に現在配置されている対物レンズに割り当てられたズーム部分範囲に制限するための制限手段を設けると有利である。
【0051】
本発明の特に有利な実施形態では、前記制限手段として各対物レンズそれぞれに、ズームシステムの位置調整範囲を、各対物レンズに現在割り当てられているズーム部分範囲に制限するための少なくとも1つのストッパを設ける。このような構成によって特に、どの対物レンズでも、割り当てられたズーム部分範囲内でしかズームシステムの位置調整を行えなくなるのを、純粋に機械的に保証することができる。
【0052】
特に有利な実施形態では、各対物レンズにそれぞれ、ズームシステムの位置調整を制限するためのストッパを少なくとも2つずつ設ける。ズーム部分範囲の限界が、構造により定まる最大可能総ズーム範囲の限界によって与えられているのであれば、この側においてストッパを省略することができる。
【0053】
本発明の特に有利な実施形態では、電気的な駆動ユニットを設けることにより、特にモータを設けることにより、前記ズームシステムの位置調整を電気的に行うことができる。さらに、前記駆動ユニットを駆動制御するための制御ユニットも設けられ、各対物レンズに割り当てられた部分領域をこの制御ユニットに記憶する。前記制御ユニットは、常に現在のズーム部分範囲内でしか位置調整を行うことができないように、前記駆動ユニットを駆動制御する。とりわけ、どの対物レンズが光路に配置されているかを前記制御ユニットが自動的に判定するためのセンサ系を設ける。この自動判定により、制御ユニットは、オペレータにより設定可能なズーム部分範囲を自動的に選択し、これに応じて、前記電気的な駆動ユニットを駆動制御する。この場合には、ズーム部分範囲を制限するための機械的なストッパを省略することができる。というのも、前記制限手段として、電気的な駆動ユニットの駆動制御が機能するからである。
【0054】
さらに、ズームシステムの倍率を手動設定するための操作エレメントを前記顕微鏡が備えていると有利である。この操作エレメントは、回転ノブとすることができる。
【0055】
また、現在選択されている対物レンズと、ズームシステムの現在設定されている焦点距離とに依存して、光透過を調整するためのシャッタを、前記顕微鏡が備えていると有利である。このシャッタは特に、ズームシステムの設定されている焦点距離と対物レンズとに依存して開口形状を制御する、制御式のアイリスシャッタである。このことが必要であるのは、特に、対物レンズの倍率が高い場合、一般的には瞳径が小さくなるからである。対物レンズの倍率が高い場合、倍率は典型的には、開口の増大より大きく増大する。というのもそうしないと、対物レンズの口径比が過度に大きくなり、収差の補正が非常に面倒になってしまうからである。上記実施形態に代わる択一的な実施形態では、上記シャッタに応じて非常に高い開口を有する対物レンズを用いる場合、シャッタを省略することができる。
【0056】
さらに、ズームシステムが少なくとも2つのレンズ群を有し、これらのレンズ群のうち1つは、当該ズームシステムの焦点距離を光軸の方向に調整するために可動に構成すると有利である。1つの有利な実施形態では、前記ズームシステムは3つまたは4つのレンズ群を有し、これらのレンズ群のうち2つは光軸の方向に可動に構成する。
【0057】
前記顕微鏡は特に、顕微鏡観察対象の像を取得する画像検出ユニットを備えたデジタル顕微鏡である。このデジタル顕微鏡では顕微鏡観察対象の像は、特にズームシステムを介して前記画像検出ユニットに直接結像される。
【0058】
上記実施形態に代わる択一的な実施形態では、可視顕微鏡とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図2】
図1に示された顕微鏡の拡大システムの概略図である。
【
図3】第1の対物レンズを使用した場合の、
図2に示された拡大システムの概略図である。
【
図4】第2の対物レンズを使用した場合の、
図2に示された拡大システムの概略図である。
【
図5】第1の対物レンズおよび第2の対物レンズの各ズーム部分範囲と総ズーム範囲とを示す概略図である。
【
図6】
図1に示された顕微鏡の一部の概略的な斜視図である。
【
図7】
図6に示された一部を示す別の概略的な斜視図である。
【
図9】
図8に示されたハウジングを示す別の概略的な斜視図である。
【
図10】顕微鏡の一部を示す概略的な細部図である。
【
図11】対物レンズハウジングおよび対物レンズの一部の概略図である。
【
図12】第1の回転位置にあるときのズームシステムの操作エレメントの概略的な斜視図である。
【
図13】第2の回転位置にあるときの、
図12に示した操作エレメントの概略的な斜視図である。
【
図14】第1の動作モードにおいて第1の対物レンズが使用されているときの操作エレメントの概略図である。
【
図15】第2の動作モードにおいて第1の対物レンズが使用されているときの操作エレメントの概略図である。
【
図16】第3の動作モードにおいて第2の対物レンズが使用されているときの操作エレメントの概略図である。
【
図17】第4の動作モードにおいて第2の対物レンズが使用されているときの操作エレメントの概略図である。
【
図18】第5の動作モードにおいて第3の対物レンズが使用されているときの操作エレメントの概略図である。
【
図19】第6の動作モードにおいて第3の対物レンズが使用されているときの操作エレメントの概略図である。
【0060】
以下の記載から、本発明の他の特徴および利点が明らかである。以下、添付の図面を参照して実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0061】
図1は、デジタル顕微鏡の概略的な斜視図である。この顕微鏡10は、定置のスタンド基体12と、当該スタンド基体12に対して相対旋回可能な旋回ユニット14とを含む。
【0062】
旋回ユニット14は、顕微鏡観察対象の像を撮像するための少なくとも1つの画像検出ユニットを有する。とりわけ、この画像検出ユニットによって、個々の画像だけでなくビデオも撮像することができ、このビデオにより、顕微鏡観察対象を複数の異なる視角から観察することができる。
【0063】
さらに前記旋回ユニットは、顕微鏡観察対象の倍率を変えて調整するための対物レンズおよびズームシステムも有する。この対物レンズシステムは多数の対物レンズを有し、これらの対物レンズのうちその都度1つが選択的に光路に配置される。
【0064】
図1では、画像検出ユニット、対物レンズシステムおよびズームシステムは旋回ユニット14のハウジング16に隠れているので見えない。
【0065】
以下、
図2から
図4までを参照して、対物レンズシステムおよびズームシステムの構成について詳細に説明する。
【0066】
対物レンズシステムの対物レンズをとりわけ同焦点とすることにより、対物レンズの交代時にオペレータが改めて焦点合わせしなくてもよいようにする。この対物レンズはとりわけ、旋回軸14の回転軸と対物レンズの境界面との間の距離に合わせて調整されているので、ユーセントリックシステムとなり、これにより、旋回ユニット14の旋回時に改めて焦点合わせを行う必要がなくなる。
【0067】
スタンド基体にはさらに対象物ステージ18も取り付けられており、この対象物ステージ上に顕微鏡観察対象が載置される。回転調整部20を用いてこの対象物ステージ18をスタンド基体12に対して相対的に双方向矢印P1の方向に移動することにより、顕微鏡観察対象の焦点合わせを行うことができる。
【0068】
図2に、旋回ユニット14内に配置された、3つの異なる設定状態にある拡大システムを、単なる概略図として示す。この拡大システムは、対物レンズシステム30とズームシステム32とを含み、これらが協働することにより、所望の総倍率が実現される。対物レンズシステム30は、焦点距離が異なる少なくとも2つの対物レンズ44,52を有し、顕微鏡10の光路には、これらの対物レンズ44,52のうちその都度1つが旋回によって配置される。
【0069】
ズームシステム32は3つのレンズ群34乃至38を有し、これらのうち2つのレンズ群36,38が光軸50の方向に位置調整可能となっている。本発明の他の択一的な実施形態では、ズームシステムが2つのレンズ群34乃至38のみを含み、これらのレンズ群34乃至38のうち1つのレンズ群34乃至38のみが軸方向に位置調整可能とすることも可能である。また、3つより多くのレンズ群34乃至38を含むズームシステムを用いることも可能である。
【0070】
図2に示された実施形態では、観察対象の像はズームシステム32を介して画像検出ユニット40に直接結像される。この画像検出ユニット40はとりわけカメラとすることができる。
【0071】
図2には、ズームシステム32の3つの設定を示しており、左側の設定では、ズームシステム32は最大焦点距離をとり、これによって倍率が最大となるように、当該ズームシステム32は設定されている。これに応じて、対物レンズシステム30との境界面の領域における光軸50に対する主光線の角度である視野角42は、最小になるように構成される。
【0072】
それに対し、
図2の右側に示された設定は、ズームシステム32の他方の最端設定、すなわち、当該ズームシステム32が最小焦点距離をとることにより拡大作用が最小になる設定を示している。この場合、視野角42は最大になるように構成されている。
【0073】
図2の中央に示した事例は、ズームシステム32による焦点距離が最小焦点距離より大きくかつ最大焦点距離より小さくなる中間的な設定である。この設定では、視野角42は他の2つの事例の視野角42の間になる。
【0074】
顕微鏡10全体の実際の総倍率は、ズームシステム32の設定された焦点距離と、対物レンズシステム30の、光路に配置された対物レンズ44,52の焦点距離との商である。
【0075】
ズームシステム32の総ズーム範囲が、当該ズームシステム32により設定可能である、当該ズームシステム32の焦点距離を決定する。この総ズーム範囲の一例を、
図5において矢印90により示している。下限92は、
図2の右側に示された設定により実現される、ズームシステム32の最小焦点距離を定めるものである。よって、総ズーム範囲90の上限94は、
図2の左側に示された設定により実現される、ズームシステム32の最大焦点距離を定めるものである。したがって、総ズーム範囲90は構造型式によって予め定まるものであり、ズームシステム32の倍率の最大可能範囲を定める。
【0076】
既に説明したように、対物レンズシステム32は、焦点距離が異なる複数の対物レンズ44,52を有している。これらの各対物レンズ44,52にそれぞれ、総ズーム範囲90内のズーム部分範囲が割り当てられている。
図5では、第1の対物レンズ44に対応する第1のズーム部分範囲96と、第2の対物レンズ52に対応する第2のズーム部分範囲98とが示されている。これら2つのズーム部分範囲96,98はそれぞれ、総ズーム範囲90の一部のみをカバーしており、特に、互いに少なくとも部分的に重複するように構成されている。
【0077】
ズームシステム32が常に、旋回によって光路に目下配置されている対物レンズ44,52に割り当てられているズーム部分範囲96,98以内でしか位置調整できないように、顕微鏡10は構成されている。
【0078】
図5に示された実施例では、ズーム部分範囲96に割り当てられている第1の対物レンズ44は、第2の対物レンズ52と比較して大きな焦点距離を有するので、当該第1の対物レンズ44の拡大作用は第2の対物レンズ52より小さい。これに応じて第1のズーム部分範囲96も、総ズーム範囲90のうち当該第1のズーム部分範囲96がカバーする倍率が、第2のズーム部分範囲98より小さく、当該総ズーム範囲90のうち第2のズーム部分範囲98の倍率がより大きくなるように選択される。
【0079】
よって、倍率が大きく焦点距離が小さい対物レンズ52の場合、ズームシステムによる倍率も大きくすることができるので、全体的に高い総倍率を実現できる。
【0080】
逆に、倍率が小さく視野角が大きい対物レンズ44には、ズームシステム32の倍率も小さくなることにより当該ズームシステム32の視野角が大きくなるズーム部分範囲96が割り当てられている。
【0081】
このようにして、ズームシステム32の使用される部分範囲は常に、目下の対物レンズ44,52の特性に合ったものとなる。
【0082】
図3は、2つの状態にある
図2の拡大システムの概略図であり、同図では、対物レンズシステム30の第1の対物レンズ44が光路に配置されている。焦点距離が比較的大きく倍率が小さい第1の対物レンズ44の場合には、制限エレメント46,48によって、
図2に示した最大位置調整範囲とは対照的に、最小焦点距離までは位置調整可能であるが(
図3右側)最大焦点距離までは位置調整できないようにズームシステム32の位置調整範囲が制限される。これにより、ズームシステム32の位置調整は第1のズーム部分範囲96内でしかできなくなる。制限エレメント46,48によって、レンズ群36,38の相互接近は、
図3の左側に示された状態に制限される。この制限エレメント46,48はとりわけ、第1の対物レンズ44が光路に配置されたときに自動的に連動するように当該第1の対物レンズ44に結合されたストッパ46,48である。よって、ストッパ46,48はレンズ群34乃至38の可動領域内に配置される。
【0083】
図4に、第2の対物レンズ52が旋回によって光路に配置される事例を示す。この対物レンズ52も、ズームシステム32の位置調整を第2のズーム部分範囲98に制限するためのストッパ54,56を有する。この第2の対物レンズ52の場合には、ストッパ54,56によって、レンズ群36,38が互いに離れていく距離が、
図4の右側に示された状態よりも大きくなるのを阻止することにより、最小倍率に調整されるのが阻止される。
【0084】
制限エレメント46,48,54,56は、
図3および
図4では単に概略的に示されているに過ぎない。
図6から
図19までに示したような、その具体的な実施形態では、制限エレメント46,48,54,56を特にズームシステム32内に配置するのではなく、対物レンズシステム30とズームシステム32との境界面に設けられる位置調整可能なピン130乃至136として設けている。これについては、以下詳細に説明する。
【0085】
よって、
図5に示しているように、ズームシステム32が動作する各ズーム部分範囲96,98は最大総ズーム範囲90より小さくされるので、ズームシステム32は「オーバーサイジング」または「オーバーサイズ」ズームシステムとも称される。
【0086】
総倍率範囲が同じである場合、常にズーム範囲全部を使用して対物レンズを適宜選択することにより最大倍率と最小倍率とに設定する公知の顕微鏡と比較して、使用される対物レンズの焦点距離差は、以下の数値例により示されるものほど大きくなることはなくなる。
【0087】
従来技術の顕微鏡において、2つの対物レンズを用いて0.15xから30xまでの間の倍率範囲を実現するためには、たとえば、焦点距離が20である第1の対物レンズと、焦点距離が250である第2の対物レンズとを使用する。ズームシステムの設定可能な焦点距離は、38から600までの間となる。30の最大倍率は、前記第1の対物レンズを使用し、かつ、ズームシステムを最大焦点距離に設定することにより実現される。この事例の倍率は、計算式b=f zoom/f objektiv により、600/20=30となる。
【0088】
第2の対物レンズを使用してズームシステムの焦点距離を最小焦点距離とした場合、同様にして、最小倍率は38と250との商である0.15となる。
【0089】
本発明の本実施形態の顕微鏡において、0.15xから30xまでの同じ倍率範囲を実現するためには、21から600までの間の設定可能な焦点距離を有するズームシステム32を設ける。第1の対物レンズ44のズーム部分範囲は38から600までであり、第2の対物レンズのズーム部分範囲は21から336までである。第1の対物レンズ44の焦点距離は140であり、第2の対物レンズ52の焦点距離は20である。
【0090】
30の最大倍率を実現するためには、本実施形態では第2の対物レンズ52を使用し、かつ、ズームシステム32を最大焦点距離とする。最小焦点距離を実現するためには、第1の対物レンズ44を使用し、かつ、ズームシステム32を最小焦点距離とする。その際にも、倍率は21と140との商である0.15となる。
【0091】
このようにして同じ総倍率範囲を実現することができ、なおかつ、使用される対物レンズ44,52間の焦点距離差を格段に小さくすることができる。
【0092】
このことの利点は、対物レンズ44,52の構成を格段にコンパクトかつ簡素化できることである。特に、対物レンズ44,52の焦点距離の開きが小さくなることにより、同焦点対物レンズシステム30を実現することができる。さらに、各対物レンズ44,52について、オペレータによって選択されるズーム率が同じになる。つまり上記実施例では、ズーム率は16になる(336/21ないしは600/38)。
【0093】
複数の対物レンズに対するズーム部分範囲の上述の割り当ては、デジタル顕微鏡だけでなく択一的に、対物レンズシステムとズームシステムとを備えた他のどの顕微鏡においても使用することができる。
【0094】
図6および
図7の各図は、
図1に示された顕微鏡10の一部の細部を示す概略的な斜視図である。同図では、ズームシステム32および対物レンズシステム30の一部を示している。
図6ならびに
図7およびそれ以降の各図の重要な点は、ズームシステム32の位置調整範囲を複数の各対物レンズ44,52のズーム部分範囲96,98に制限することを純粋に機械的にどのように行うかを解明しようとしている、という点にある。
【0095】
対物レンズシステム30はハウジング100を有し、このハウジング100内に、光路に目下配置されている対物レンズ44を受容する受容領域102が設けられている。
図7では、この受容領域102内には対物レンズが入っていない。それに対して
図6では、対物レンズ44が受容領域102内にスライド挿入されている。この対物レンズ44はプレート104に支持されており、ハウジング106によって包囲されている。プレート104は、対物レンズシステム30のハウジング100に固定することができる。
【0096】
対物レンズシステム32は、顕微鏡10のオペレータによって回転することができる回転ホイール108を備えている。操作性をより向上させるため、回転ホイール108の周面にとりわけギザギザ110が設けられている。回転ホイール108はこのギザギザ110とは反対側に、歯車システム114を用いて当該回転ホイール108をスピンドル116に係合させるための歯列112を有する。このような構成により、回転ホイール108が回転するとスピンドル116が回転する。
【0097】
スピンドル116には、ホルダ118,120を介してレンズ群36,38が支持されている。このような構成により、スピンドル116が回転するとレンズ群96,38が互いに接近したり離れたりする。
【0098】
図8および
図9の各図は、対物レンズシステム30のハウジング100の概略的な斜視図である。ハウジング100内には総じて4つのピン130乃至136が、双方向矢印P2の方向に、特に縦方向に可動に配置されている。これらのピン130乃至136は作動位置と非作動位置との間で移動することができ、ピン130,134は
図8では作動位置にあり、ピン132,136は非作動位置にあるのが示されている。作動位置では、ピン130乃至136はハウジング100の表面138から回転ホイール108の方向に、予め定められた距離だけ突出する。非作動位置では、ピン130乃至136はハウジング100内に位置しており、特に、当該ハウジング100内からは突出しない。これに代えて択一的に、非作動位置ではピン130乃至136はハウジング100内から僅かに突出するが、作動位置の場合ほどは突出しないようにすることも可能である。
【0099】
図10に示しているように、各ピン130乃至136は作動位置では、それぞれバネ140によって付勢されている。
【0100】
さらに、各ピン130乃至136はそれぞれ、ピン142乃至148に接続されている。これらのピン142乃至148は、
図9に示されているように受容領域102内にまで突出しており、各ピンがそれぞれ、ハウジング100の長孔内に案内されて挿入されている。
【0101】
ピン142乃至148が動くことにより、ピン130乃至136はバネ140の復元力に抗して、作動位置から非作動位置に移動することができる。こうするためには、ピン142乃至148を下方に向かって矢印P3の方向に動かさなければならない。
図9では、ピン144,148は各バネの復元力に抗して下方に向かって移動し、これにより、
図8に示されているように、これらのピンに対応するピン132,136が非作動位置に来る。
【0102】
ピン142,148は、受容領域102内に目下挿入されている対物レンズ44によって、対応するハウジング106と接触することにより移動する。
図11に、第1の対物レンズ44の一部を概略的に示している。対物レンズ44のハウジング106には、ハウジング102の互いに対向する両面に2つの接触部150,152が設けられている。これら2つの各接触部150,152はそれぞれ、段部が設けられた接触面154を有する。接触部150,152が各ピン142乃至148の領域において前記接触面154に、対応する段部を有するならば、対物レンズ44が受容領域102内にスライドして入り込むと、
図10に示されているようにピン142乃至148が下方に向かって移動し、当該段部が、各対応するピン142乃至148を下方に向かって動かしてこの位置に受容する。このようにして、ピン142乃至148介してピン130乃至136は、作動位置と非作動位置との間にて位置調整される。
【0103】
接触部150,152は、他のピン130乃至136が作動位置ないしは非作動位置に来るように、対物レンズ44に応じてそれぞれ異なった構成となっている。
【0104】
図12および
図13の各図は、ズームシステム32の概略的な斜視図であり、同図には複数の異なる回転位置を示している。
【0105】
回転ホイール106の、対物レンズシステム30側ひいては当該対物レンズシステム30のハウジング100側の面に、係合リンクディスク(エキスパンションリンク、溝)160が相対回転不能に取り付けられている。この係合リンクディスク160には2つの円弧状の溝162,164が設けられている。ピン130乃至136がそれぞれ作動位置に位置していれば、この係合リンク162,164に係合することができる。係合リンクディスク160はさらに、回転ホイール106の回転範囲を最大回転領域に制限するための突起166も有する。こうするために、回転ホイール106と連動して回転しない相対回転不能のハウジング部170に、2つのストッパ172,174が設けられている。
【0106】
図12に示された回転位置では、突起166は第1のストッパ172に当接しているので、手動ホイールは矢印P4の方向にしか回転させることができない。この位置はとりわけ、0°回転位置と称される。
【0107】
それに対して
図13では、突起166は第2のストッパ174に当接しているので、手動ホイールは、回転方向P4と逆方向である矢印P5の方向にしか回転させることができない。この第2の状態では回転ホイール160は、
図12に示された0°位置から最大限に回転移動している。これはとりわけ、角度130°の回転に相当する。よって、手動ホイールの最大回転範囲は約130°である。この最大回転範囲によって、総ズーム範囲が定められる。
【0108】
ピン130乃至136が作動位置に位置し、これによって両係合リンク162,164のうちいずれか1つに係合することにより、回転ホイール106の回転範囲を、使用されている対物レンズ44に応じて制限することができ、これにより、対物レンズ44に応じて手動ホイール106を、最大回転領域の一部の領域である部分回転領域内でしか回転させることができなくなる。よって、この部分回転領域を介してズーム部分範囲が調整される。というのも、手動ホイールの回転領域が制限されると、自動的に、使用可能なズーム範囲の制限になるからである。
【0109】
図14から
図19に一例として、3つの異なる対物レンズを備えた対物レンズシステム30の場合に、ピン130,132がそれぞれ作動位置ないしは非作動位置のいずれか異なった位置にあることにより、異なる対物レンズの接触部150,152のそれぞれ異なる構成によって、どのようにして3つの各対物レンズごとに回転ホイール106の異なる部分回転領域が規定されるか、ひいては、どのように各対物レンズにそれぞれ異なるズーム部分範囲が割り当てられるかを示す。
【0110】
図14および
図15に、第1の対物レンズが受容領域102内に挿入されたときの状況を示しており、この第1の対物レンズの場合、ピン132は作動位置にあり、ピン130乃至136は非作動位置にある。よって、
図14および
図15に示されているように、ピン132は係合リンク162に係合している。その際には、手動ホイール106を、
図14に示された0°回転位置と、
図15に示された回転位置112°との間で回転させることができる。ピン132は係合リンク162の端部分にぶつかるので、112°を超えて回転させることはできない。
【0111】
これに代えて択一的に、他のピン130,134,136を作動位置に配置することも可能である。この場合には、ピン134,136がまず最初に係合リンクディスク160の表面上に載置され、0°位置から僅かに回転させると、当該ピン134,136は係合リンク164に係止することになる。その際には、初期位置に戻すことはできなくなる。
【0112】
図16および
図17に、第1の対物レンズではなく第2の対物レンズが受容領域102内に挿入されたときの状況を示しており、この第2の対物レンズの場合、ピン130,136が作動位置にあり、ピン132,134が非作動位置にある。ピン136が係合リンク164に係合しているので、第2の対物レンズの場合、回転ホイール106の回転範囲は9°の最小回転角に制限される。方向P5の方向に、すなわち0°回転位置に向かって更に回転させることはできなくなる。
【0113】
逆の方向P4の回転は、作動位置にあるピン130が係合リンク164に係合していることにより、121°の回転角に制限される。
【0114】
図18および
図19に、第3の対物レンズが受容領域102内に挿入されたときの状況を示す。この第3の対物レンズの場合、ピン134が作動位置にあり、かつ、ピン130,132,134が非作動位置にあるように、接触部150および152は構成されている。ピン134が係合リンク164に係合することにより、回転ホイール106の方向P5の回転範囲は、最小回転角である18°に制限される。それに対して方向P4には、突起166が第2のストッパ174に当接するまで、すなわち130°の最大回転角に達するまで、回転ホイール106を回転させることができる。
【0115】
よって、対応する係合リンク162,164に係合するピン130乃至136を備えた上記の構成により、回転ホイール106の回転範囲を対物レンズ44に応じて、簡単に、かつ純粋に機械的に制限することができ、これにより、各対物レンズ44にそれぞれ、総ズーム範囲内のズーム部分範囲を簡単かつ確実に割り当てることができる。
【0116】
上記構成に代わる他の択一的な構成では、設けられるピン130,136を4つより多くするか、または4つより少なくすることも可能である。これに代えて択一的に、設けられる係合リンク162,164を2つより多くするか、または2つより少なくすることも可能である。ピンおよび係合リンクの数はとりわけ、使用される複数の対物レンズの数に応じて調整することができ、これにより、必要な複数のズーム部分領域の数に応じて調整することができる。
【符号の説明】
【0117】
10 顕微鏡
12 スタンド基体
14 旋回ユニット
16 ハウジング
18 観察対象テーブル
20 回転調整部
30 対物レンズシステム
32 ズームシステム
34,36,38 レンズ群
40 画像検出ユニット
42 視野角
44,52 対物レンズ
46,48,54,56 制限エレメント
50 光軸
90 総ズーム範囲
92 下限
94 上限
96,98 ズーム部分範囲
100 ハウジング
102 受容領域
104 プレート
106 対物レンズハウジング
108 回転ホイール
110 ギザギザ
112 歯列
114 歯車装置
116 スピンドル
118,120 ホールド部材
130乃至136 ピン
138 表面
140 バネ
142,148 ピン
150,152 接触部
154 接触面
160 係合リンクディスク
162,164 係合リンク(エキスパンションリンク、溝)
166 突起
170 ハウジング部
172,174 ストッパ
P1乃至P5 方向