【実施例】
【0043】
ここで、本発明の実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であることは言うまでもない。
【0044】
実施例1〜4
まず、紅藻類から抽出された寒天粉末を、60、100、200、300%加水した場合について、調べた。寒天粉末((株)タイショーテクノス TS寒天ISP-9)に所定量の水を加えて湿潤混和した後、二軸同方向回転の押出機に供給し、発泡させないように熱処理した。熱処理条件は170℃、スクリュー回転数は200rpmとした。熱処理した寒天はカッターなどにより切断することなく、本実施例に係る空隙を含まず弾力性を有する球状の寒天を得た。出来上がった本実施例に係る球状の寒天は、押出機から吐出後、直ちに乾燥粉砕機で乾燥粉砕を行った。乾燥粉砕条件は乾燥温度80℃とした。乾燥粉砕した寒天は振動篩機で篩別し、180μm以下となるように調製した。寒天又は寒天粉末を溶解した。前記溶解した寒天又は寒天粉末を気流粉砕乾燥機で粉末化した。上記寒天乾燥粉砕物について、下記[寒天乾燥粉砕物の溶解性評価基準]に従って評価を行った。比較例1としてTS寒天ISP−9も試験した。これらの結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
なお、表1中の溶解性I及びIIについては以下の通りである。
【0047】
[寒天乾燥粉砕物の溶解性評価基準]
(1)溶解性I
評価対象である寒天5gを濃度1重量%となるように調製し、100℃に達するまで、ならびに80℃で10分間溶解する。次にステンレスカップ5つに分注し、時計皿をのせて20℃の水槽中で2時間冷却する。その後、20℃の恒温槽で15時間保管し、凝固させたゲルについて、レオメーターを用い、表面積1cm
2のプランジャーにて破断強度(ゲル強度)を測定する。即ち、寒天の溶解性は、上記ゲル強度(g/cm
2)から下記の式に従って算出した。
【0048】
溶解性I(%)=(80℃、10分間溶解時のゲル強度)/(100℃に達するまで溶解時のゲル強度)×100
【0049】
(2)溶解性II
評価対象である寒天0.7gをデキストリン2.8gと混合し、ポットのお湯を想定した73℃のお湯37.5gに加え、20秒間攪拌する。次に室温(25℃)の牛乳107gを加えて再び20秒間攪拌し、ステンレスカップ2つに分注し、20℃の水槽中で20分間冷却する。凝固させたゲルについて、レオメーターを用い、表面積1cm
2のプランジャーにて破断強度(ゲル強度)を測定する。
【0050】
表1に示した実施例1〜4、比較例1について、溶解性IIでゲル化した実施例2〜4に関して、ゲル化物を試食した結果、いずれも多少のざらつきを感じた。
【0051】
また、表1から、前述の押出条件においては、加水率については、寒天に対して60%加水(寒天100に水60)して押出機で処理して易溶性化しなかった(実施例1)のに対して、100、200、300%加水した寒天を押出機で処理した結果、すべて易溶性化し、そのなかでも100%加水が最良であった。
【0052】
次に、前記の実施例2〜4について追加試験データを表2に示す。即ち、実施例2〜4の寒天について、150μm、120μm、100μmの篩網で篩別し、篩網パス品について溶解性IIを再度試験し、ゲル化物を試食してざらつき感が残るかを確認した。
【0053】
【表2】
【0054】
表2の結果、180μmパスではざらつきが感じられたが、150μmパス、より好ましくは100μmパスとすることで、ざらつきは殆ど感じられなくなり、また、溶解性IIについても良好な強度が得られた。
【0055】
次に、前記の実施例2〜4について追加データを
図1〜3に示す。
まず、吐出物の特徴について調べた。実施例2〜4のように製造した吐出物について、加水100%、200%、及び300%の様子を、
図1〜
図3に示す。
図1は、本発明の一実施態様における吐出物を示す。加水100%の場合である。
図2は、本発明の一実施態様における吐出物を示す。加水200%の場合である。
図3は、本発明の一実施態様における吐出物を示す。加水300%の場合である。
図1〜3から、実施例1〜3のように製造した本発明の吐出物は、球状で弾力性を有する。また、いずれの吐出物の比重も、1g/cm
3であり、水に浮かない性質を有していた。
【0056】
また、
図4は、吐出物の断面を示す図である。空隙は認められないのが分かる。これは、本発明においては、発泡処理を行わないためである。上記の水に浮かない性質はこのためである。
【0057】
次に、前記の実施例2〜4について追加データを示す。前記の表2に示した180μmパスと100μmパスの寒天について、かさ比重を測定した。かさ比重とは、単位見かけ容積当たりの寒天の重量のことをいい、容積がわかる容器に寒天を自然落下により投入して重量を測定し、その重量を容積により割ることによって求めることができる。篩別して得られた180μmパスの本発明の寒天乾燥物のかさ比重は、0.54〜0.73g/cm
3であり、篩別して得られた100μmパスの本発明の寒天乾燥物のかさ比重は、0.52〜0.60g/cm
3であった。よって、粒度を小さくすることで、かさ比重の値も小さくなる傾向が確認された。一方、従来文献によると、かさ比重が0.45g/cm
3よりも大きい場合は吸水により寒天が容易に沈むと記載されており、本発明の寒天乾燥物は、水に沈みやすい性質であると類推され、
図4に示したとおり、発泡処理による空隙が形成していないことがこの要因であると考える。
【0058】
また、本発明の寒天乾燥物について、液面の粉末消失時間と粉末の粒度との関係について調べた。
図6は、一実施態様における本発明の寒天乾燥物(粉末化したもの)3gを200mlの室温の水に投入後、液面の粉末消失時間と粉末の粒度との関係を示す図である。その結果、本発明の寒天乾燥物は、溶解性IIでざらつきを感じない100μm程度までは液面の粉末が消失する時間も短時間であるが、100μm以下になると液面の粉末が消失する時間が急激に長くなる傾向(水に浮きやすい傾向)が確認できる。従って、粒度は100μmパスが最も望ましく、水に沈みやすい性質を保持するためには、かさ比重が0.5g/cm
3以下とならないようにすることが望ましい。
【0059】
また、吐出後、連続的に粉砕乾燥しない場合は、吐出物の品温が低下し、水分が蒸発して粉砕しにくくなる虞があることが判明した。これは加水100、200、300%の試験のときに、微粉の割合が100<200<300の順に多くなっており、保水量が多ければ球状寒天が柔らかくなり、粉砕されやすい、と考えられる。吐出物を乾燥させた(かなり硬化した)後に同じ粉砕機で粉砕すると、粉砕効率が悪化することも判明した。
【0060】
実施例5
また、紅藻類から抽出された寒天粉末と、本発明の寒天乾燥物(加水100%)との、性状の違いについて調べた。
図5は、紅藻類から抽出された寒天粉末と、本発明の寒天乾燥物(加水100%)との、性状の違いを示す図である。
図5(a)は、紅藻類から抽出された寒天粉末、(b)は本発明の寒天乾燥物を、それぞれ示す。本発明の寒天乾燥物の寒天乾燥物は、同じメッシュパスを通して条件を同じくしても、前記紅藻類から抽出された寒天又は寒天粉末と比較して、サイズばらつきが大きいことが分かる。
【0061】
実施例6
また、寒天((株)タイショーテクノス TS寒天ISP−9)に300%の水を加えて湿潤混和した後、単軸タンデム型の押出機に供給し、発泡させないように熱処理した。熱処理条件は170℃、スクリュー回転数は200rpmとした。熱処理した寒天はカッターなどにより切断することなく、本実施例に係る空隙を含まず弾力性を有する球状の寒天を得た。出来上がった本実施例に係る球状の寒天は、押出機から吐出後、直ちに乾燥粉砕機で乾燥粉砕を行った。乾燥粉砕条件は乾燥温度80℃とした。乾燥粉砕した寒天は振動篩機で篩別し、180μm以下となるように調製した。上記寒天乾燥粉砕物について、下記[寒天乾燥粉砕物の溶解性評価基準]に従って評価を行った結果、溶解性Iが93%、溶解性IIが18g/cm
2であった。よって、押出機のタイプによらず、本発明の易溶性寒天が得られることが分かった。
【0062】
また、寒天乾燥物の粒度は前述の水に浮く、或は、かさ比重に関係するほか、ポットのお湯で溶かす嚥下食、流動食プディング材のような用途において、ポットのお湯の温度が低下しすぎた場合に、寒天の粒度が粗いと溶け残りやすく、しかも、口の中でざらつきを感じる場合がある。
【0063】
このように、本発明の一実施態様によれば、乾燥粉末寒天を加水後、押出成形機で発泡させないように熱処理する工程と、粉砕乾燥機で微粉末化する工程を連続的に行い、粉砕品の粒度を100μm以下、かさ比重を0.5g/cm
3以上に管理することで、水に沈みやすく、ポットのお湯(73℃付近)にも容易に溶解し、寒天を含む対象物が良好にゲル化する寒天乾燥物であって、仮にポットのお湯の温度が低下しすぎた場合でも、溶け残った寒天が口の中でざらつきを感じることのない、易溶性寒天、ならびにその製造方法を提供することが可能であることが判明した。