(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6133390
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】コネクタ内蔵プラグ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/36 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
G02B6/36
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-244223(P2015-244223)
(22)【出願日】2015年12月15日
【審査請求日】2016年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】是枝 雄一
(72)【発明者】
【氏名】片木山 直幹
【審査官】
廣崎 拓登
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−197834(JP,A)
【文献】
特開2012−141392(JP,A)
【文献】
米国特許第06065779(US,A)
【文献】
特開平07−287143(JP,A)
【文献】
米国特許第06604760(US,B1)
【文献】
特開2002−040287(JP,A)
【文献】
特開平06−074382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
6/255− 6/27
6/30 − 6/34
6/36 − 6/43
H01R 13/56 −13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をなすバレル内にコネクタが内蔵され、前記バレルの前端側の外周に、前記バレルの軸心方向に移動可能とされてカップリングが取り付けられているコネクタ内蔵プラグであって、
前記バレルの外周に形成された溝に着脱自在に装着されて前記バレルの後端方向への前記カップリングの移動を規制するCリングを備え、
前記Cリングは樹脂材よりなり、
前記CリングのC字の中間部の外周側部分は厚さ方向前後に突出されて厚さが厚くされ、
前記CリングのC字の両端の外周側部分はそれぞれ厚さ方向前後に突出されて厚さが厚くされ、
前記Cリングの外周がなす円弧の中心は、前記Cリングの内周がなす円弧の中心に対し、前記中間部の中央方向にずらされており、
前記Cリングは内周がなす円弧の中心と前記中間部の中央とを通る中心線を回転軸として2回対称性を有することを特徴とするコネクタ内蔵プラグ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタ内蔵プラグにおいて、
前記中間部の外周側部分に、厚さ方向に貫通する貫通穴が形成されていることを特徴とするコネクタ内蔵プラグ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のコネクタ内蔵プラグにおいて、
前記コネクタは光コネクタであることを特徴とするコネクタ内蔵プラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はコネクタを内蔵したコネクタ内蔵プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
図5はこの種のコネクタ内蔵プラグの従来例として特許文献1に記載されている構成を示したものであり、
図5中、11はバレルを示し、12はカップリングを示す。
図5では隠れて見えないが、筒状をなすバレル11内には光コネクタが内蔵されている。カップリング12はバレル11の前端側の外周に、バレル11の軸心方向に移動可能とされて取り付けられている。
【0003】
このコネクタ内蔵プラグ10はプッシュプル接続タイプのものであり、相手方レセプタクルとの接続時にはバレル11を掴んで押し込むことにより1動作で接続することができ、相手方レセプタクルからの取り外し時にはカップリング12を掴んで後方に引っ張ることで1動作で引き抜くことができるものとなっている。
【0004】
バレル11の外周には、カップリング12が所定位置まで前進してコネクタ内蔵プラグ10が正しく相手方レセプタクルと接続されていることを目視で確認することができるように、カップリング12が所定位置まで前進した際に露出する溝13が目印として形成されている。
【0005】
なお、このようにカップリングが所定位置まで前進した際に露出する溝をバレルの外周に設け、溝の視認によりコネクタ内蔵プラグが相手方レセプタクルと正しく接続されていることを確認することは特許文献2にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】意匠登録第1524499号公報
【特許文献2】特開2013−235193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、光コネクタをバレル内に内蔵して防水構造をなすコネクタ内蔵プラグは例えば携帯電話の基地局などの屋外設備で使用されており、
図5に示したコネクタ内蔵プラグ10もそのような用途に使用されるものとなっている。
【0008】
携帯電話の基地局でのコネクタ内蔵プラグ10の使用は、高所での接続作業が余儀なくされ、また一般にコネクタ内蔵プラグ10を垂直方向、上向きにして基地局側のレセプタクルと接続する形態となっている。そして、このような屋外での使用環境からコネクタ内蔵プラグ10を保護し、また基地局側のレセプタクルとの接続状態を確実に維持するために、接続した後にテープ巻きを行って保護、固定するといったことが行われている。
【0009】
しかるに、このようなテープ巻きを行う際、上述したようにコネクタ内蔵プラグ10はプッシュプル接続タイプであって、なおかつ上向きに接続されるため、テープ巻き作業を行っている際に、力が下向きにかかり、誤ってカップリング12を引っ張ってしまうといったことが起きやすく、これによりコネクタ内蔵プラグ10が不完全な接続状態でテープ巻きを行ってしまうといったことが生じうる。
【0010】
このため、従来においては
図6Aに示したように基地局側のレセプタクル20にコネクタ内蔵プラグ10を接続した後、バレル11に形成されている目印用の溝13を利用して
図6Bに示したように結束バンド14を装着し、結束バンド14によってカップリング12の移動を規制するといったことを行っていた。
【0011】
図7は結束バンド14によってカップリング12の移動を規制した後、コネクタ内蔵プラグ10がテープ巻きされた状態を示す。
図7中、15は巻かれたテープを示し、30は基地局を示す。レセプタクル20は基地局30の底面に取り付けられている。
【0012】
このように結束バンド14をカップリング12の後端側に装着すれば、カップリング12の移動を規制することができるものの、高所での結束バンド14の装着作業は煩わしく、また例えばコネクタ内蔵プラグ10をレセプタクル20から取り外す必要が生じた場合、結束バンド14を取り外さなければならないが、取り外しも容易ではないといった問題がある。
【0013】
この発明の目的はこのような問題に鑑み、カップリングの移動を簡単に規制することができるようにし、かつ規制の解除も簡単に行うことができるようにしたコネクタ内蔵プラグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明によれば、筒状をなすバレル内にコネクタが内蔵され、バレルの前端側の外周に、バレルの軸心方向に移動可能とされてカップリングが取り付けられているコネクタ内蔵プラグは、バレルの外周に形成された溝に着脱自在に装着されてバレルの後端方向へのカップリングの移動を規制するCリングを備え、Cリングは樹脂材よりなり、CリングのC字の中間部の外周側部分は厚さ方向前後に突出されて厚さが厚くされ
、CリングのC字の両端の外周側部分はそれぞれ厚さ方向前後に突出されて厚さが厚くされ、Cリングの外周がなす円弧の中心は、Cリングの内周がなす円弧の中心に対し、前記中間部の中央方向にずらされ、Cリングは内周がなす円弧の中心と前記中間部の中央とを通る中心線を回転軸として2回対称性を有するものとされる。
【0018】
請求項
2の発明では請求項
1の発明において、前記中間部の外周側部分に、厚さ方向に貫通する貫通穴が形成されているものとされる。
請求項
3の発明では請求項1
又は2の発明において、コネクタは光コネクタとされる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によるコネクタ内蔵プラグによれば、Cリングによってカップリングの移動を簡単に規制することができ、また規制の解除も簡単に行うことができる。
【0020】
よって、例えば携帯電話の基地局などの屋外設備でコネクタ内蔵プラグが使用され、屋外での使用環境からコネクタ内蔵プラグを保護し、かつ相手方レセプタクルとの接続状態を確実に維持するために、コネクタ内蔵プラグにテープ巻きを行って保護、固定する際、カップリングを誤って引っ張ってしまい、コネクタ内蔵プラグが不完全な接続状態となってしまうことを防止するための作業を、従来の結束バンドを用いていた作業に比し、簡易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】Aはこの発明によるコネクタ内蔵プラグの一実施例において、Cリングが装着されていない状態の平面図、Bはその斜視図。
【
図2】Aはこの発明によるコネクタ内蔵プラグの一実施例が具備するCリングの正面図、Bはその側面図、C,Dはその斜視図。
【
図3】Aはレセプタクルに接続されたコネクタ内蔵プラグにCリングが装着される様子を示す斜視図、Bは相手方のレセプタクルに接続されたコネクタ内蔵プラグにCリングが装着された状態を示す斜視図。
【
図4】Aはこの発明によるコネクタ内蔵プラグの一実施例を示す平面図、Bはその側面図、Cはその部分拡大断面斜視図。
【
図6】Aは
図5に示したコネクタ内蔵プラグがレセプタクルに接続された状態を示す図、BはAの状態のコネクタ内蔵プラグに結束バンドが装着された状態を示す図。
【
図7】基地局のレセプタクルに接続されたコネクタ内蔵プラグにテープ巻きが施された状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
【0023】
図1は筒状をなすバレル41内に光コネクタ42が内蔵され、バレル41の前端側の外周に、バレル41の軸心方向に移動可能とされてカップリング43が取り付けられているコネクタ内蔵プラグ40を示したものであり、
図1では図示を省略しているが、この例ではこのコネクタ内蔵プラグ40はカップリング43の移動を規制するCリング50を具備するものとされる。なお、バレル41、カップリング43等の構成は
図5に示したコネクタ内蔵プラグ10と同じであり、コネクタ内蔵プラグ40はプッシュプル接続されるものとなっている。
図1中、60は光ケーブルを示す。
【0024】
Cリング50は
図2に示したような形状を有するものとされ、内周がなす円弧の中心C1と、C字の中間部51の中央とを通る中心線CLを回転軸としてCリング50は2回対称性を有するものとされる。Cリング50の外周がなす円弧の中心C2は、内周がなす円弧の中心C1に対し、中心線CL上、中間部51の中央方向にずらされており、これによりCリング50は中間部51の中央からC字の両端に向かって徐々に幅が狭くなるようにされている。
図2A中、d1はCリング50の内径を示し、d2はCリング50の外径を示す。
【0025】
Cリング50は上記のように中間部51の中央から両端に向かって徐々に幅が狭くされていることに加え、中間部51の外周側部分52及びC字の両端の外周側部分53の厚さが厚さ方向前後に突出されてそれぞれ厚くされている。また、C字の両端の厚さが厚くされている外周側部分53におけるCリング50の外周面には外周面より突出する突部54がそれぞれ形成されており、突部54の厚さは外周側部分53の厚さと等しくされている。
【0026】
一方、中間部51の厚さが厚くされている外周側部分52には厚さ方向に貫通する貫通穴55が形成されている。貫通穴55は矩形状をなし、中心線CL上に位置して厚さが薄い内周側部分にわずかにかかるように形成されている。
【0027】
厚さがそれぞれ厚くされた中間部51の外周側部分52及びC字の両端の外周側部分53の内周がなす円弧は、中心C1を中心とする同一円周上に位置されている。
図2A中、d3はこれら肉厚とされた外周側部分52,53の内径を示す。
【0028】
上記のような形状を有するCリング50は樹脂材よりなるものとされる。Cリング50はバレル41の外周に形成された溝44に着脱自在に装着されるものとなっており、Cリング50を溝44に装着することによりバレル41の後端方向へのカップリング43の移動を規制することができるものとなっている。
【0029】
図3Aは相手方のレセプタクル20に接続されたコネクタ内蔵プラグ40にCリング50が装着される様子を示したものである。バレル41の外周にはカップリング43が所定位置まで前進した際に露出する溝44が形成されており、この溝44にCリング50がはめ込まれる。
図3B及び
図4はCリング50がバレル41の溝44に装着された状態を示す。なお、
図4C中、45はカップリング43を前方(バレル41の前端方向)に押すコイルばねを示す。
【0030】
Cリング50の肉厚とされた外周側部分52,53の内径d3はバレル41の外径に対応する寸法とされており、これら外周側部分52,53は溝44にはまり込むことなく、バレル41の外周面上に位置される。カップリング43はCリング50の中間部51の肉厚とされた外周側部分52によって後端が押さえられ、バレル41の後端方向への移動が規制される。なお、Cリング50はカップリング43の外周面より外側に突出しないように(はみ出さないように)大きさが選定されている。
【0031】
上述したように、この例ではCリング50によってバレル41の後端方向へのカップリング43の移動が規制されるものとなっている。よって、コネクタ内蔵プラグ40が例えば携帯電話の基地局等、屋外で使用され、屋外での使用環境からコネクタ内蔵プラグ40を保護し、またレセプタクルとの接続状態を確実に維持するために、前述したようにテープ巻きを行う際、誤ってカップリング43を引っ張ってしまい、カップリング43が所定位置からずれ、コネクタ内蔵プラグ40が不完全な接続状態でテープ巻きを行ってしまうといったことを防止することができる。
【0032】
以上説明したように、この例では従来用いていた結束バンドに替え、Cリング50によってカップリング43の移動を規制するものとなっており、樹脂材よりなり、
図2に示したような形状を有するCリング50を用いることによって、以下に列記したような特徴、利点を有するものとなっている。
(1)結束バンドに比べ、容易に装着することができ、また取り外しも容易に行うことができる。
(2)中間部51の外周側部分52は肉厚となっているため、持ち易く、また両端間の間隔(C字の開放部の大きさ)は一般的なCリングに比べ、
図2に示したように広げてあるので、装着し易い。
(3)両端の外周側部分53は肉厚となっており、さらに突部54が一体形成されているため、両端を手で容易に押し広げることができ、取り外す際も手で容易に取り外すことができる。
(4)樹脂材よりなるため、軽く、例えば高所作業時に誤って落としてしまって人に当たったとしても危険度は極めて小さく、安全である。
(5)樹脂製のため、安価に生産することができる。
(6)肉厚とされた外周側部分52,53以外は肉薄であって、溝44に入れ易く、また所要の弾性も得ることができる。
(7)肉厚の外周側部分52によってカップリング43のガタツキを抑えることができる。
(8)中間部51は幅広となっているため、その分、強度を向上させることができる。
(9)中心軸CLを回転軸として2回対称性を有し、裏表がないため、向き(裏表)を気にすることなく、容易に装着することができる。
(10)貫通穴55を有するため、取り外す際、ドライバなどの先端を貫通穴55に挿入することによって簡単に取り外すこともできる。
【0033】
以上、Cリングを備えるこの発明によるコネクタ内蔵プラグについて説明したが、内蔵するコネクタは光コネクタに限るものではなく、例えば電気コネクタであってもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 コネクタ内蔵プラグ 11 バレル
12 カップリング 13 溝
14 結束バンド 15 テープ
20 レセプタクル 30 基地局
40 コネクタ内蔵プラグ 41 バレル
42 光コネクタ 43 カップリング
44 溝 45 コイルばね
50 Cリング 51 中間部
52,53 外周側部分 54 突部
55 貫通穴 60 光ケーブル
【要約】
【課題】カップリングの移動を簡単に規制することができ、また規制の解除も簡単に行うことができるコネクタ内蔵プラグを提供する。
【解決手段】筒状をなすバレル41内にコネクタが内蔵され、バレル41の前端側の外周に、バレル41の軸心方向に移動可能とされてカップリング43が取り付けられているコネクタ内蔵プラグ40は、バレル41の外周に形成された溝44に着脱自在に装着されてバレル41の後端方向へのカップリング43の移動を規制するCリング50を備える。Cリング50は樹脂材よりなり、Cリング50のC字の中間部51の外周側部分52は厚さ方向前後に突出されて厚さが厚くされている。
【選択図】
図3