(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133416
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】タービンの静止した部品間のシール
(51)【国際特許分類】
F01D 11/00 20060101AFI20170515BHJP
F02C 7/28 20060101ALI20170515BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20170515BHJP
F01D 25/24 20060101ALI20170515BHJP
F16J 15/08 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
F01D11/00
F02C7/28 Z
F01D25/00 M
F01D25/24 P
F16J15/08 G
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-517711(P2015-517711)
(86)(22)【出願日】2013年6月17日
(65)【公表番号】特表2015-522745(P2015-522745A)
(43)【公表日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】EP2013062509
(87)【国際公開番号】WO2013189883
(87)【国際公開日】20131227
【審査請求日】2016年6月10日
(31)【優先権主張番号】12172408.2
(32)【優先日】2012年6月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ハリハラン ハヌマンサン
(72)【発明者】
【氏名】クリストス ゲオルガキス
【審査官】
稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第2530251(EP,A2)
【文献】
特開2012−52950(JP,A)
【文献】
特表2003−525381(JP,A)
【文献】
米国特許第5158305(US,A)
【文献】
特開2005−16324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 11/00−11/24
F01D 25/00−25/36
F02C 7/28
F16J 15/00−15/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンの静止した構成要素(2,3)間のシール(1)であって、
少なくとも1つの中間部(6)を備え、
該中間部(6)の互いに反対側の端部に末端部(7,8)が設けられており、該末端部(7,8)は、前記静止した構成要素(2,3)に設けられたそれぞれの溝(4,5)内に配置されて、該溝(4,5)の内表面に隣接するようになっており、
前記中間部(6)は、少なくとも2つの部分(6′,6″)からなり、該中間部の部分(6′,6″)は、ピボット(9)を介して互いに回動自在に連結されている、
シールにおいて、
前記ピボット(9)は、同軸的に嵌合され、互いに相対的に摺動可能な少なくとも2つの柱体状の要素により形成される断面環状のリングであり、かつ
前記ピボット(9)の内表面は、金属製の布帛材料(10)により被覆されている、
ことを特徴とする、タービンの静止した構成要素間のシール。
【請求項2】
前記末端部(7,8)は、中実の円形の膨らみ部である、請求項1記載のシール。
【請求項3】
前記末端部(7,8)の少なくとも一方は、円形の弾性的なフック形状を有する、請求項1記載のシール。
【請求項4】
前記末端部(7,8)の両方は、円形の弾性的なフック形状を有し、両フックは、互いに反対方向に曲げられている、請求項3記載のシール。
【請求項5】
前記末端部(7,8)の第2の末端部は、真っ直ぐな固定端部を有する、請求項3記載のシール。
【請求項6】
前記末端部(7,8)の第2の末端部は、真っ直ぐな摺動端部を有する、請求項3記載のシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンの静止した構成要素間のシールに係り、特に、中間部を備え、中間部の互いに反対側の2つの側部にそれぞれ膨らみ部が設けられており、膨らみ部は、静止した構成要素に設けられた溝内に密着するように配置されている、いわゆる「ドッグボーン型シール」に関するものである。
【0002】
従来技術
このようなシールは、例えばガスタービンの分野においてよく知られている。シールは、タービンのそれぞれの静止した構成要素の接合面においてこれらの構成要素間をシールするために使用され、例えば、案内羽根内の冷却空気流路をシールするために使用されたり、案内羽根列の個々のセグメント間をシールするために使用されたり、タービンのケーシング部分と案内羽根列との間の周方向のシールとして使用されたり、燃焼器とタービンとの間の構成要素の接合面をシールするために使用されたりする。
【0003】
この型式のシールは、例えば米国特許第5743708号明細書に記載されており、当該明細書の特に
図17及び
図18に示されている。この公知のシールは、単一部分のみからなっており、互いに反対側の2つの側部にそれぞれ中実の膨らみ部を有するフラットな金属製の部材である。シールは、断面で見て細長い中央部分を有している。この中央部分は、各端部に円形の膨らみ部を有している。その断面形状に由来して、この形式のシールは、「ドッグボーン型シール」と称呼される。シールは、上述の明細書では第1の案内羽根列において隣り合う案内羽根プラットフォーム間にそれぞれ配置されており、案内羽根プラットフォームにおいて、案内羽根の内外のプラットフォームを冷却するようになった冷却空気流路をシールするために用いられる。
【0004】
中実の円形の膨らみ部は、それぞれ、隣り合う案内羽根プラットフォームの溝内に配置されており、溝の延在方向に沿って溝の内表面に密着している。シールは、それぞれプラットフォームの側面の長さにわたって延在している。シール作用は、主として圧力差によりもたらされ、円形の膨らみ部が溝の平たんな内面に接触することとなる溝の側面上の線に沿って得られる。この場合、シールは、両溝内に膨らみ部により確保されねばならない。
【0005】
この典型的な従来慣用のドッグボーン型シールは、頑強な設計となってはいるものの、残念ながらタービンの構成要素の軸方向/半径方向の相対運動に対して低い柔軟性あるいは順応性を有するにすぎない。さらに従来慣用のドッグボーン型シールは、付加的な欠点として、ときとして発生する場合のある過度の摩耗と、劣化を伴うシール性能の低下(漏れの増加はシール自体の劣化に至る。)とを有している。
【0006】
このドッグボーン型シールの型式の一態様は、米国特許第5868398号明細書に開示されている。この明細書に記載のドッグボーン型シールも、隣り合う案内羽根セグメント間をシールするために用いられる。しかし、このシールの側部の膨らみ部は、中実に設計されているのではなく、むしろフラットな金属製の部材の湾曲により実現されている。この湾曲した部分が溝内に設置される。
【0007】
このシールも、圧力差が不十分である場合には、膨らみ部が十分に密着せず、結果的に漏れが生じるという欠点を有している。さらにこのシールは、タービンの一方又は両方の静止した部品が軸方向又は半径方向で移動し、溝が互いに相対的に移動してしまうと、十分に確保されているとは言い難い。このことは、シールが十分に柔軟でないことを意味する。
【0008】
タービンの2つの静止した部品間の改良されたシールは、米国特許第6431825号明細書において公知である。このシールは、圧力差のレベルに影響されない。このシールは、担体部分を備え、担体部分は、1つの中間部と、それぞれがタービンの静止した部品に設けられた溝内に配置される末端部とを有するフラットな金属製の部材を有している。やはりフラットな金属製の部材を有し、中間部と、やはり溝内に配置される末端部とを有する第2の部分は、担体部分の中間部に取り付けられている。末端部は、弾性的に構成されており、溝が相対的に移動したとしても、溝の内表面と末端部との間のシール接触を保証する。
【0009】
加えて、タービンの静止した構成要素間をシールする異なる型式のフレキシブルシール、例えばダイヤフラムシール又はクロスシールも公知であるが、このようなシールは、頑強とは言い難い。
【0010】
欧州特許出願公開第2530251号明細書は、容器の異なる熱成長を吸収するヒンジシールを記載している。ヒンジシールは、中間ピアノヒンジ部を有している。中間ピアノヒンジ部は、容器間に相対的な並進運動があるとき、折れたり、曲がったり、平らになったりの少なくともいずれかを実施する。
【0011】
米国特許出願公開第2005/0179215号明細書は、「ドッグボーン」の形態のシール装置を記載している。このシール装置は、シート材料から製造され、少なくとも1つの連結ロッド又は連結バーを介して連結される複数のシールストリップからなっている。連結ロッドは、シールストリップに設けられた貫通孔に挿入され、ロッドの両端がシールストリップに溶接される。この連結ロッドは、シールストリップの層を両端において結合して、これにより結合部を形成することができる。
【0012】
発明の概要
本発明の課題は、特にタービン用の静止した構成要素間をシールするドッグボーン型式の頑強なシールであって、タービンの構成要素の相対運動に関して、かつエンジン構造により良好に適合するために、従来技術において公知のドッグボーン型シールと比較してより高い柔軟性あるいは順応性を示すシールを開示することである。さらに、劣化を伴う摩耗が、低減されるとともに、運転中、良好なシール性能が維持されることが望ましい。
【0013】
この課題及びその他の課題は、本発明の請求項1に係るシールにより解決される。
【0014】
タービンの静止した部品/構成要素間の上記シールは、ドッグボーン型式のシールである。このシールは、少なくとも1つの中間部を備え、中間部の互いに反対側の端部に末端部が設けられており、末端部は、静止した部品/構成要素のそれぞれの溝内に配置されて、溝の内表面に隣接するようになっている。シールの中間部は、少なくとも2つの部分からなり、中間部の部分は、ピボットを介して互いに回動自在に連結されている。これに対して従来慣用のドッグボーン型シールは、断面で見て細長くてフラットな金属部材である1つの中間部を有している。本発明は、ピボットが、同軸的に嵌合され、互いに相対的に摺動可能な少なくとも2つの柱体状の要素により形成される断面環状のリングであり、かつピボットの内部が、金属製の布帛材料により被覆されていることを特徴とする。
【0015】
このような適応型のドッグボーン設計を有する開示したシールの利点は、中間部の個々の回動可能な2つの部分のため、エンジン運転中の構成要素間の大きな相対運動に適応するように、タービンの構成要素の接合面により高い柔軟性を提供することができる点にある。加えて劣化を伴う摩耗は、低減され、良好なシール性能は、維持される。金属製の布帛材料は、シール自体とタービンの構成要素との間のあらゆる漏れを防止する。
【0016】
第1の態様において、末端部は、中実の円形の膨らみ部である。これは、極めて頑強な設計である。
【0017】
シールの第2の態様において、末端部の少なくとも一方は、円形の弾性的なフック形状を有する。末端部の弾性的な特性は、末端部に溝の表面に対する圧力ばめを引き起こし、結果的に末端部と溝との間の接触線に沿ったシールに至らしめる。強制接触及びシールは、実質的に圧力差に影響されない。
【0018】
他の態様において、シールの末端部の両方は、円形の弾性的なフック形状を有し、両フックは、互いに反対方向に曲げられている。
【0019】
択一的な態様として、シールは、真っ直ぐな固定端部を有する第2の末端部を有する。付加的な態様において、第2の末端部は、真っ直ぐな摺動端部を有する。真っ直ぐな摺動端部は、一方の構成要素の運動が大きいときでさえ、良好なシール性能を維持することができる。
【0020】
以下に、本発明について好ましい実施の形態に基づいてかつ添付図面を参照しながら詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】従来技術において公知の典型的なドッグボーン設計の概略断面図である。
【0022】
全図において、同一の技術的特徴には、同一の参照符号を付した。
【0023】
発明の様々な実施の形態の詳細な説明
本発明は、タービンの静止した構成要素間のシールに係り、特に、従来技術において公知であり、そのための適応設計が提案されるいわゆる「ドッグボーン型シール」に関するものである。
【0024】
図1は、タービンの技術分野において公知の典型的なドッグボーン型シールの設計の概略断面図である。このドッグボーン型シール1は、1つのフラットな金属製の中間部6を有している。中間部6は、中間部6の互いに反対側の2つの端部に、末端部7,8としてそれぞれ中実の円形の膨らみ部を有している。ドッグボーン型シール1は、タービンの隣り合う静止した構成要素2,3間、例えば隣り合う案内羽根プラットフォーム間に配置されており、案内羽根プラットフォーム間において、案内羽根の内外のプラットフォームを冷却するようになった冷却空気流路をシールするために用いられる。
【0025】
中実の円形の膨らみ部7,8の各々は、隣り合う案内羽根プラットフォームの溝4,5内に配置されている。膨らみ部7,8は、溝4,5の延在方向に沿って溝4,5の内表面に密着している。
【0026】
この典型的な従来慣用のドッグボーン型シール1は、頑強な設計となってはいるものの、残念ながらタービンの構成要素2,3の軸方向/半径方向の相対運動(
図1の矢印a,rにより図示)に対して低い柔軟性を示すにすぎない。さらに従来慣用のドッグボーン型シール1は、付加的な欠点として、ときとして発生する場合のある過度の摩耗と、劣化を伴うシール性能の低下(漏れの増加はシール自体の劣化に至る。)とを有している。
【0027】
図2は、本発明の第1の実施の形態の断面図である。
図2に示したシール1は、
図1に示したシール(従来技術)とは異なる中間部6を有している。本発明によりシール1の中間部6は、少なくとも2つの部分6′,6″からなっている。部分6′,6″は、ピボット9を介して互いに接続されている。ピボット9は、図示のように環状のリングである。ピボット9は、リングの形状をなした2つの円柱体の類である。ピボット9の内側の部分は、金属製の布帛材料により被覆されている。
【0028】
本発明の第1の実施の形態における中間部6′,6″も、中間部6′,6″の互いに反対側の端部にそれぞれ1つの中実の膨らみ部7,8を有しており、膨らみ部7,8は、静止した構成要素2,3に設けられた互いに対向する溝4,5内に密着するように配置されている。これも頑強な設計である。
【0029】
旋回によってエンジン運転中のタービン構成要素の大きな相対運動に適応あるいは順応することができるので、本開示のシールは、タービン構成要素の接合面に比較的高い柔軟性を提供する。例えば燃焼器とガスタービン、例えば高圧タービン又は低圧タービンとの間の構成要素接合面は、本発明に係るシールを適用するのに好適な箇所といえる。さらに、劣化を伴う摩耗は低減され、良好なシール性能は維持される。適応型のシールは、高温ガス流路に対する漏れを低減する一方、タービン構成要素の相対運動を許容し、このことは、結果的にタービン効率の改善に至る。
【0030】
図3は、本発明の第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態は、第1の実施の形態(
図2参照)とは、構成要素2,3の溝4,5内にそれぞれ配置されている両中間部6′,6″の末端部7,8が、円形の弾性的なフック形状(円形にされた端部)を有する点と、ピボット9の形状が異なる点とにおいて相違している。両フック(=末端部7,8)は、互いに反対方向に曲げられている。ピボット9は、2つの円柱体として摺動可能及び回動可能なアッセンブリを形成している。円柱体は、隣接する構成要素の溝に連結される柔軟性のある薄い腕により支持されている。末端部7,8の弾性的な特性は、末端部7,8に溝4,5の表面に対する圧力ばめを引き起こし、結果的に末端部7,8と溝4,5との間の接触線に沿ったシールに至らしめる。強制接触及びシールは、実質的に圧力差に影響されない。
【0031】
図4は、本発明の第3の実施の形態を示している。第3の実施の形態は、
図3に示した第2の実施の形態とは、本実施の形態のシール1が、中間部の部分6″の、真っ直ぐな摺動端部を有する第2の末端部8を有している点において相違する。この技術的解決手段は、シール性能が容易に維持可能であるので、構成要素2,3のうちの一方の極めて大きな半径方向運動が存在する場合に特に有益である。
【0032】
付加的な実施の形態(
図6参照)では、中間部の部分6″の第2の末端部8が、真っ直ぐな固定端部を有している。
【0033】
図5及び
図6は、シール1自体とタービン構成要素の溝4,5との間の漏れを回避するように、金属製の布帛材料10がドッグボーン型シールの端部に被覆されている(ピボット9の内側部分が金属製の布帛材料10により被覆されている)実施の形態を示している。
【0034】
本発明に係るシールは、例えばガスタービンにおいて、稼働中のガスタービンのアップグレードのために、かつ将来的なガスタービンの開発のために使用可能であり、さらに、柔軟性のあるシールが所望されている蒸気タービンその他のエンジンでも使用可能である。
【0035】
本発明について、本発明の例示的な実施の形態を参照しながら詳述したが、当業者にとって、発明の範囲を逸脱することなく様々な変更が実施可能であり、かつ均等物が採用可能であることは自明である。
【符号の説明】
【0036】
1 シール
2,3 タービンの静止した構成要素
4,5 溝
6 中間部
6′,6″ 中間部の部分
7,8 中間部又は中間部の部分の互いに反対側の端部に設けられた末端部
9 ピボット
10 金属製の布帛
a 軸方向
r 半径方向