(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133436
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】自動車充電コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
H01R13/52 301E
H01R13/52 301H
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-548206(P2015-548206)
(86)(22)【出願日】2013年10月21日
(65)【公表番号】特表2016-504733(P2016-504733A)
(43)【公表日】2016年2月12日
(86)【国際出願番号】DE2013100359
(87)【国際公開番号】WO2014094726
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2015年8月14日
(31)【優先権主張番号】102012112353.5
(32)【優先日】2012年12月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502435786
【氏名又は名称】ハルティング エレクトリック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HARTING Electric GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン グリーペンシュトロー
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス ロスケ
【審査官】
高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−207726(JP,A)
【文献】
特開平08−078087(JP,A)
【文献】
特開平08−148219(JP,A)
【文献】
特開平04−206179(JP,A)
【文献】
英国特許第00891169(GB,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
差込み接続器であって、
当該差込み接続器(1)が、コンタクト支持部(2)を有し、該コンタクト支持部(2)内に少なくとも1つのコンタクトエレメント(3)が配置されており、該コンタクトエレメント(3)が、接続されたケーブル(6)の導体に接続されており、
前記コンタクト支持部(2)が、周方向に延びるつば(7)を有し、該つば(7)が、前記コンタクト支持部(2)を接続範囲(AB)と差込み範囲(SB)とに分離しており、
接続されたケーブル(6)が、当該差込み接続器(1)のハウジング(8)内に突入している、
差込み接続器において、
当該差込み接続器(1)が、シール部材(10)を有し、該シール部材(10)が、当該差込み接続器(1)の前記ハウジング(8)内に配置されており、
前記シール部材(10)が、前記コンタクト支持部(2)の前記接続範囲(AB)と、当該差込み接続器(1)の前記ハウジング(8)内に突入した前記ケーブル(6)の一部分とを同時に密に取り囲んでおり、
前記シール部材(10)が、ホース形に形成されていて、第1の端部と第2の端部とを有し、
前記シール部材(10)が、前記つば(7)の端面にまで前記コンタクト支持部(2)に押し被せられており、前記差込み接続器(1)の前記ハウジング(8)が、前記つば(7)の端面に力を加えており、前記シール部材(10)が、前記つば(7)と前記ハウジング(8)との間でプレスされている、
ことを特徴とする差込み接続器。
【請求項2】
前記シール部材(10)の一方の端部が、位置固定手段によって、前記ケーブル(6)の、当該差込み接続器(1)の前記ハウジング(8)内に突入した部分に位置固定されている、請求項1記載の差込み接続器。
【請求項3】
前記シール部材(10)の前記第1の端部が、前記コンタクト支持部(2)と当該差込み接続器(1)の前記ハウジング(8)との間に締付け固定されており、前記シール部材(10)の前記第2の端部が、前記位置固定手段によって前記ケーブル(6)に密に押圧されている、請求項1または2記載の差込み接続器。
【請求項4】
前記位置固定手段が、ケーブルバインダである、請求項2または3記載の差込み接続器。
【請求項5】
前記位置固定手段が、緊締ゴムである、請求項2または3記載の差込み接続器。
【請求項6】
前記コンタクト支持部(2)が、2つ以上のコンタクトエレメント(3)を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の差込み接続器。
【請求項7】
両側で位置固定されたホース形の前記シール部材(10)によって取り囲まれている内室が、熱伝導性の材料で、少なくとも部分的に充填されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の差込み接続器。
【請求項8】
前記シール部材(10´)が、凹部(18)を有し、
前記凹部(18)が、ケーブル(20)のための少なくとも1つの貫通案内部(19)を含む、請求項1から7までのいずれ1項記載の差込み接続器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の差込み接続器(プラグイン式コネクタ)、特に自動車充電コネクタに関する。
【0002】
このような差込み接続器は、高い電流が伝送されなければならない場合に使用される。このことは、たとえば自動車充電コネクタに該当する。
【0003】
背景技術
欧州特許第2362495号明細書には、自動車充電コネクタが開示されている。この場合、絶縁体内に配置されたコンタクトエレメントと、これらのコンタクトエレメントに接続された導体と、ハウジングとが個々にシールされている。
【0004】
自動車充電コネクタのこのようなシールは手間がかかり、かつ高価である。
【0005】
独国特許出願公開第2625648号明細書には、ホース形のシール部材を備えた差込み接続器が開示されている。ホース形のシール部材の一方の端部は、接続されたケーブルをシールしている。ホース形のシール部材の他方の端部は、袋ナットを用いてコンタクト支持部の端面壁に密に押圧される。このようなシール部材は特に振動の激しい使用領域においては十分に信頼性が良いとは云えない。
【0006】
課題設定
本発明の課題は、簡単にかつ廉価に製造可能である差込み接続器を提供することにある。
【0007】
この課題は、請求項1の特徴部に記載の特徴により解決される。
【0008】
本発明の有利な構成は、従属項形式の各請求項に記載されている。
【0009】
提案された差込み接続器は、高い電流を永続的に伝送するために設計されている。この差込み接続器は、たとえば自動車充電コネクタである。
【0010】
差込み接続器のハウジング内には、コンタクト支持部が配置されており、このコンタクト支持部内には、少なくとも1つのコンタクトエレメントが配置されている。一般に、特に差込み接続器が自動車充電コネクタである場合には、コンタクト支持部内に複数のコンタクトエレメントが配置される。当業者においては、コンタクト支持部は、しばしば絶縁体とも呼ばれる。なぜならば、コンタクト支持部が、導電性ではない材料から製作されているからである。
【0011】
各コンタクトエレメントは、接続されたケーブルの導体に接続されている。コンタクトエレメントが2つまたは2つよりも多い場合には、差込み接続器に多芯ケーブルが接続されている。差込み接続器の、以下に説明する特徴は、単極式(唯1つのコンタクトエレメント)の差込み接続器にも、多極式(2つまたはそれ以上のコネクタエレメント)の差込み接続器にも、同様に使用され得る。
【0012】
コンタクト支持部は、2つの端面を有するほぼ円筒状の形状を有する。コンタクト支持部内に配置されたコンタクトエレメントは、これらの端面に対して直交して配置されている。コンタクトエレメントと、このコンタクトエレメントに接続された導体の一部分とは、完全にコンタクト支持部内に位置している。
【0013】
コンタクトエレメントのコンタクト先端が向いている方の端面は、差込み側とも呼ばれる。反対の側に位置する端面は、接続側とも呼ばれる。
【0014】
差込み接続器のハウジングは開口を有し、この開口を貫いて、接続されたケーブルがハウジング内部へ突入している。この開口は、ケーブル進出開口とも呼ばれる。ケーブルは、ハウジングの他方の端部に(やはり内部で)配置されているコンタクト支持部にまで延びている。ハウジング内部に延びるケーブルの一部では、ケーブルシースが除去されているので、個々の導体が見えている。
【0015】
本発明によれば、差込み接続器がシール部材を有し、このシール部材は、コンタクト支持部の第2の端面と、差込み接続器のハウジング内に突入したケーブルの一部分とを同時にシールしている。
【0016】
このシール部材は、ほぼホース形に形成されていて、第1の端部と第2の端部とを有する。シール部材の第1の端部は、コンタクト支持部の、個々の導体が突出している方の端面を取り囲んでいる。シール部材の第2の端部は、ハウジング内に突入したケーブルを取り囲んでいる。コンタクトエレメントに接続された導体は、シール部材によってシールされた領域に位置している。
【0017】
コンタクトエレメントは、コンタクト支持部内で個々のシール部材を介してシールされているので、差込み側では、たとえばダストまたは水(湿分)のような媒体がハウジング内に侵入する恐れはない。
【0018】
有利には、コンタクト支持部は、周方向に延びるつばを有し、このつばには、差込み接続器ハウジングの一方の端面が隣接している。組み立てられた差込み接続器においては、シール部材の一方の端部が前記つばと前記端面との間でプレスされ、これによりシール機能が達成される。このシール変化形は、「軸方向プレス」とも呼ばれる。なぜならば、前記端面が軸方向で前記つばにプレス(押圧)されているからである。
【0019】
択一的な構成では、コンタクト支持部が、周方向に延びる溝を有し、この溝内に、シール部材の第1の端部が係合する。その場合、差込み接続器ハウジングは上方からシール部材に力を加えるので、シール部材は前記溝内にプレスされる。この変化形は「半径方向プレス」とも呼ばれる。なぜならば、圧力が半径方向でシール部材に加えられるからである。
【0020】
シール部材は、有利には弾性的な材料、たとえばEPDM、NBR、ポリウレタンまたは前で挙げた材料の混合物から成っている。
【0021】
シール部材の一方の端部が、位置固定手段によって、ケーブルの、差込み接続器ハウジング内に突入した部分に位置固定されていると有利である。シール部材は、たとえばいわゆるケーブルバインダもしくはケーブルタイを用いてケーブルのケーブルシースを取り囲むように緊締されるので、シール機能が達成される。
【0022】
ケーブルバインダに対して択一的な別の手段としては、いわゆる緊締ゴムを使用することもできる。重要となるのは、シール部材が半径方向でケーブルシースにプレスされることだけである。
【0023】
本発明におけるシール部材の第1の端部は、コンタクト支持部と差込み接続器ハウジングとの間に締付け固定されている。シール部材の第2の端部は、上記位置固定手段によって、接続されたケーブルに密に位置固定されている。
【0024】
本発明の特に好適な実施態様では、両側で位置固定されたホース形のシール部材により取り囲まれた内室が、熱伝導性の材料、たとえば熱伝導性のゲルで、少なくとも部分的に充填されている。
【0025】
熱伝導性のゲルは、高電流運転時に熱を一層良好に導出するために使用される。これにより、差込み接続器の電流容量は改善される。
【0026】
差込み接続器の特に好適な実施態様では、シール部材が、差込み接続器のハウジング内に配置されており、前記シール部材が、コンタクト支持部の接続範囲と、差込み接続器のハウジング内に突入したケーブルの一部分とを同時に密に取り囲んでいる。または言い換えれば、シール部材の一方の端部はコンタクト支持部を部分的に取り囲んでおり、つまり好ましくは上で述べた、周方向に延びるつばによって画定されている接続範囲のみを取り囲んでいる。シール部材の他方の端部は、接続されたケーブルの一部分を取り囲んでいる。
【0027】
さらに別の好適な実施態様では、シール部材が凹部を有する。この凹部内には、ケーブル用の少なくとも1つの貫通案内部が含まれている。前記凹部は、好ましくは電子構成素子のために正確に嵌合するように形成されている。1つまたは複数の貫通案内部は、電子構成素子のケーブルのために設けられている。前記貫通案内部は、電子構成素子の1つまたは複数のケーブルを密に取り囲むように形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図3】差込み接続器を、ハウジングが開放された状態で示す斜視図である。
【
図5】本発明による差込み接続器の別の実施形態を示す分解図である。
【
図6】本発明におけるシール部材の別の実施形態を示す斜視図である。
【0029】
実施形態
以下に、本発明の実施形態を図面につき詳しく説明する。
【0030】
図1には、本発明による差込み接続器1の斜視図が図示されている。この差込み接続器1は、電気自動車の充電過程のために使用される自動車充電コネクタである。
【0031】
差込み接続器1はコンタクト支持部2を有する。このコンタクト支持部2内には、複数のコンタクトエレメント3が配置されている。
図2に示した断面図には、1つのコンタクトエレメント3しか見えていない。コンタクト支持部2は、内方に向けられた保持アーム4を有し、これらの保持アーム4はコンタクトエレメント3をコンタクト支持部2内の所定の位置に保持する。
【0032】
コンタクト支持部2は、ほぼ円筒状の形状を有する。コンタクトエレメント3は厚肉成形部5によって取り囲まれる。厚肉成形部5には、このために設けられた複数の孔が形成されている。差込み方向において、コンタクト支持部2は中空室を形成しており、この中空室内にコンタクトエレメント3が突入している。接続方向において、コンタクト支持部2は同じく中空室を形成しており、この中空室内にはコンタクトエレメント3の接続部分3aが突入している。コンタクトエレメント3の接続部分3aには、多芯式のケーブル6の導体14が接続されている。接続部分3aは、たとえばクリンプ接続部として形成されていてよい。
【0033】
コンタクト支持部2は、外側に周方向に延びる環状のつば7を有する。この環状のつば7は、視覚的に接続範囲ABと差込み範囲SBとを互いに分離している。コンタクト支持部2の接続範囲ABは、シール部材10によって取り囲まれる。シール部材10は、つば7の端面にまでコンタクト支持部2に押し被せられている。差込み接続器1のハウジング8は、つば7の端面に力を加えており、これによりシール部材10は、つば7とハウジング8との間でプレスされている。これにより、コンタクト支持部2はハウジング8に対してシールされる。
【0034】
シール部材10は、ほぼホース形の形状を有する。この場合、ホース形状は、接続されたケーブル6の方向に狭隘もしくは減径している。コンタクト支持部2の方向では、シール部材10が、周方向に延びる環状のリップ9を有する。リップ9はシール部材10の一部であり、リップ9はコンタクト支持部2のつば7とハウジング8の端面との間でプレスされている。
【0035】
狭隘もしくは減径の方向において、シール部材10は、互いに平行な2つの環状のウェブ11,12を有する。両ウェブ11,12は、これら両ウェブ11,12の間に位置固定領域13を取り囲んでいる。位置固定領域13を取り囲むように、たとえばケーブルバインダがしっかりと固定され、これによりシール部材10はケーブル6のケーブルシースに押圧される。これにより、ケーブルシールが実現される。
【0036】
コンタクト支持部2内のコンタクトエレメント3は、一般になお個々にシールされている。しかし、差込み接続器の主シールは、シール部材10の第1の端部がコンタクト支持部2と差込み接続器1のハウジング8との間にクランプ固定されていて、シール部材10の第2の端部が位置固定手段によって、接続されたケーブル6に密に位置固定されていることにより達成される。これにより、ハウジング8を引き続き別個にシールする必要はなくなる。
【0037】
既に上で説明したように、両側で位置固定されたホース形のシール部材10により取り囲まれている内室は、熱伝導性の材料、たとえば熱伝導性のゲルで、少なくとも部分的に充填されていてよい。これにより、同時に2つの利点が得られる。第1に、充電過程の際に必然的に生じる熱が、一層良好に導出される。これにより、充電過程は場合によってはそれどころか促進され得る。第2に、閉鎖された領域内のコンポーネントはゲルによって機械的に保護される。ゲルにより、ゴムシール部材は軽度に膨出されるので、差込み接続器を誤って落下させたしまった場合に、いわばエアバッグとして働く。
【0038】
図5には、自動車充電コネクタ1の別の変化形の分解図が示されている。差込み接続器に接続されたケーブル6は、ハウジング入口の領域でシール部材15を介してシールされ、これによりハウジング8は、媒体の侵入、たとえばダストや水の浸入に対して防護される。
【0039】
シール部材10´のリップ9は、コンタクト支持部2の周方向に延びるつば7に押圧され、これによってコンタクト支持部2の接続範囲ABを取り囲む。差込み範囲SBはハウジング8から突出する。したがって、コンタクト支持部2は部分的にのみハウジング8内に位置している。
【0040】
シール部材10´は他方の端部に別のリップ16を有する。この別のリップ16は、ハウジング8に配置された位置固定手段17と協働して、この端部が、接続されたケーブル6を密に取り囲むようにする。位置固定手段17は、たとえばいわゆるホースクランプである。位置固定手段17は、単純にケーブル引張負荷軽減手段としても使用され得る。
【0041】
シール部材10´には、凹部18が加工成形されている。この凹部18内には2つの孔19が設けられている。これらの孔19は、それぞれマイクロスイッチ21のケーブル20のための貫通案内部として使用される。凹部18はマイクロスイッチ21の形状に適合されている。マイクロスイッチ21は同じく差込み接続器ハウジング8内に配置されている。マイクロスイッチ21自体は、本発明にとって重要ではないので、マイクロスイッチ21の機能についてはこれ以上説明しない。マイクロスイッチ21の代わりに、別の電子構成素子が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 差込み接続器
2 コンタクト支持部
3 コンタクトエレメント
3a 接続部分
4 保持アーム
5 厚肉成形部
6 ケーブル
7 つば
8 ハウジング
9 リップ
10,10´ シール部材
AB 接続範囲
SB 差込み範囲
11 ウェブ
12 ウェブ
13 位置固定領域
14 導体
15 シール部材
16 リップ
17 位置固定手段
18 凹部
19 孔
20 ケーブル
21 マイクロスイッチ