(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電気加熱層(3)は、少なくともn=3の分離線(9.1,9.2,9.3)、又は、n=7から25までの分離線(9.n)を有している、請求項1に記載のガラス板(100)。
前記バスバー(5.1,5.2)は、焼き付けられた印刷ペーストとして形成されており、該印刷ペーストは、金属製の粒子、金属粒子及び/又は炭素粒子、若しくは銀粒子を含有しており、0.8μΩ・cmから7.0μΩ・cmまで、若しくは1.0μΩ・cmから2.5μΩ・cmまでの比抵抗ρaを有している、及び/又は、4mmから30mmまで、若しくは4mmから20mmまで、若しくは10mmから20mmまでの最大幅を有している、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のガラス板(100)。
少なくとも二つのバスバー(5)が前記電気加熱層(3)の領域に配置されている、及び/又は、前記第1のガラス板(1)の前記表面(III)は、熱可塑性の中間層(4)を介して、第2のガラス板(2)と面状に結合されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のガラス板(100)。
前記電気加熱層(3)は、透明な導電性のコーティング部である、及び/又は、0.4Ω毎スクエアから10Ω毎スクエアまで、若しくは0.5Ω毎スクエアから1Ω毎スクエアまでのシート抵抗を有している、及び/又は、銀(Ag)、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素がドープされた酸化スズ(SnO2:F)若しくはアルミニウムがドープされた酸化亜鉛(ZnO:Al)を含有している、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のガラス板(100)。
地上、空中又は水中における交通のための移動手段、若しくは自動車における、フロントガラス、リアガラス、サイドガラス及び/又はガラスルーフ、機能的な単一部品、家具、器具及び建物における取り付け部材、又は、電気ヒータである、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のガラス板(100)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気加熱層を備えているガラス板、その種のガラス板を製造するための方法及びその種のガラス板の使用に関する。
【0002】
車両ガラス、特にウィンドシールドガラスの視界は、氷が付着しないように、また曇らないように維持されなければならない。内燃機関を備えている自動車では、例えば、エンジンの熱を用いて加熱された空気流をガラス板へと誘導することができる。
【0003】
それとは異なり、ガラス板に電気的な加熱機能を備えることもできる。つまり、複数ある単一ガラス板のうちの一つの内側表面に透明な導電性のコーティング部から成る電気加熱層を有している合わせガラスが公知である。外部の電圧源によって、その導電性のコーティング部に電流を流し、その電流によってコーティング部、ひいてはガラス板を加熱することができる。例えば、国際公開第2012/052315号(WO2012/052315 A1)には、金属をベースとしたその種の加熱可能な導電性のコーティング部が開示されている。
【0004】
電気加熱層の電気的な接触接続は、米国特許出願公開第2007/0020465号明細書(US 2007/0020465 A1)から既知であるように、一般的にバスバーを介して行われる。バスバーは例えば、印刷されて焼き付けられた銀ペーストから形成されている。バスバーは、一般的に、ガラス板の上縁及び下縁に沿って延在している。バスバーは、電気加熱層に流れる電流を蓄え、その電流を、電圧源と接続されている外部の給電線へと誘導する。
【0005】
電気加熱層を備えているガラス板の工業的な連続生産からは、通常は曲がっている電流経路を形成するために、分離線又は分離ゾーンによって電気加熱層をパターニングすることが公知である。このことは、電気抵抗を高めることができ、また電流経路を比較的小さい接続電極を介して電気的に接触接続させることができるという利点を有している。特許文献、例えば独国特許出願公開第19860870号明細書(DE 19860870 A1)には、その種の加熱可能なガラス板が記載されている。
【0006】
電気加熱層を備えているガラス板によって、電磁放射が比較的強く遮蔽されるので、その結果、特に加熱可能なウィンドシールドガラスを備えている自動車においては、無線データ通信に著しい悪影響が及ぼされる可能性がある。従って、加熱可能なウィンドシールドガラスには、少なくとも電磁スペクトルの特定の範囲に対して良好な透過性を示す未コーティングゾーン、つまりコーティングが施されていないゾーン(「通信窓」)が設けられていることが多い。そのようにして、円滑なデータトラフィックが実現される。センサ及びカメラ等の電子装置がしばしば設けられている未コーティングゾーンは、ガラス板の上縁近くに配置されることが多く、その位置ではそれらを上側のマスキングストリップによって容易に隠すことができる。
【0007】
しかしながら、未コーティングゾーンは加熱層の電気的な特性に悪影響を及ぼし、このことは、加熱層を流れる加熱電流の電流密度分布に少なくとも局所的に作用する。実際のところ、この未コーティングゾーンによって極めて不均一な加熱電力分布が生じ、そのような不均一な加熱電力分布では、未コーティングゾーンよりも下の領域及び未コーティングゾーンの周囲において加熱電力が大きく低下している。その一方で、非常に高い電流密度を有している個所が発生し、それらの個所では加熱電力が著しく高まっている。その結果、非常に高いガラス板温度が局所的に生じ、それによって火傷する危険が生じ、またガラス板には高い熱応力が掛かる。更には、そのような高いガラス板温度によって、取り付け部分の接着個所が溶融する可能性もある。
【0008】
本発明の課題は、未コーティングゾーンを備えており、また少なくともほぼ均一な加熱電力分布を有しており、更には簡単且つ廉価に製造することができる、改良されたガラス板を提供することである。
【0009】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載されている電気加熱層を備えているガラス板によって解決される。有利な実施の形態は縦続請求項に記載されている。
【0010】
電気加熱層を備えている本発明によるガラス板は、少なくとも以下の特徴を備えている:
−表面を有している第1のガラス板、
−前記の表面の少なくとも一部に配置されており、少なくとも一つの未コーティングゾーンを含んでおり、且つ、導電性の材料から成る、第1のガラス板を加熱するための少なくとも一つの電気加熱層、
−電圧源と接続される少なくとも二つのバスバーであって、それらのバスバー間に加熱電流のための電流経路が形成されるように電気加熱層に接続されているバスバー、
−電気加熱層をm個のセグメントに電気的に分割するn本の分離線、ここで、nは1以上の数であり、且つ、m=n+1である、
但し、加熱電流のための電流経路が、未コーティングゾーンを少なくとも部分的に取り囲むように案内されており、且つ、セグメントの各幅bが等しくなり、且つ、セグメントの幅bの和が電気加熱層の幅Bに等しくなるように、セグメントは未コーティングゾーンを取り囲むように帯状に配置されている。
【0011】
このことは、セグメントが未コーティングゾーン8を少なくとも部分的に取り囲むように帯状に配置されており、その結果、加熱電流のための電流経路が未コーティングゾーンを少なくとも部分的に取り囲むように案内されており、且つ、各セグメントの幅bが、バスバーに平行な線に沿った電気加熱層の幅Bのm番目の部分に等しいことを意味している。
【0012】
バスバーは有利には、電気加熱層にわたり均一な電流密度分布を得るために、相互に平行に又はほぼ平行に配置されている。例えば電気加熱層の特定の領域をより強く加熱するために、バスバーが相互に平行に配置されていない場合、電気加熱層の幅を決定するための線は、未コーティングゾーンを有していない電気加熱層の等ポテンシャル線に沿っていると解される。
【0013】
電気加熱層は少なくとも一つの未コーティングゾーンを含んでいる。このことは、未コーティングゾーンが完全に、又は部分的に電気加熱層によって包囲されていることを意味している。未コーティングゾーンを、特に、電気加熱層の縁部領域に接するように配置することができるか、又は、コーティングされていないストライプを介して電気加熱層の縁部領域に向かって拡張させることができる。
【0014】
セグメントの幅bは、バスバーに平行に延びる各線における電気加熱層の幅Bに依存する。セグメントの幅bは、電気加熱層の幅Bをセグメントの数で除算することによって得られる。電気加熱層が一つ又は複数の未コーティングゾーンを有している場合、電気加熱層の幅Bは未コーティングゾーンの幅を含めずに求められる。
【0015】
本発明の一つの有利な実施の形態では、個々のセグメントの幅bの相互の偏差は10%までである。つまり、個々のセグメントの幅bの、加熱層の幅Bをセグメントの数で除算した商からの偏差は10%までである。有利には、偏差は5%以下、特に有利には2%以下である。
【0016】
本発明によれば、電気加熱層は分離線によって個々のセグメントに分割され、各セグメントは加熱電流の電流経路を未コーティングゾーンを取り囲むように案内する。その際、加熱電流は特に未コーティングゾーンの上方及び下方の領域にも誘導される。ここで、下方及び上方とは、未コーティングゾーンを備えていないガラス板のバスバー間を結ぶ最短の線の方向に関連付けられていることを意味している。
【0017】
加熱電力分布の均一性は、分離線の数及び加熱電流が誘導される個々のセグメントの数と共に上昇する。一つの有利な実施の形態では、電気加熱層が少なくともn=3の分離線、有利にはn=7〜25の分離線を有している。分離線は有利には、未コーティングゾーンを少なくとも部分的に取り囲むように帯状に配置されているセグメントを形成する。7本から25本までの分離線を備えている本発明によるガラス板は、加熱電力分布において非常に良好な均一性を示し、またそれと同時に、分離線の形成に掛かる費用及び時間に関するコストについても経済的である。
【0018】
本発明によるガラス板の一つの別の有利な実施の形態では、分離線が、30μmから200μmまで、有利には70μmから140μmまでの幅dを有している。このことは、そのような細い幅を有している分離線によって、ガラス板を通して見る視界が損ねられないか、又は損ねられたとしても僅かなものであるという優れた利点を有している。
【0019】
本発明によるガラス板の一つの別の有利な実施の形態では、未コーティングゾーンが、0.5dm
2から15dm
2まで、有利には2dm
2から8dm
2までの面積を有している。本発明による分離線を備えていないが、そのような大きさの未コーティングゾーンを備えている、従来技術によるガラス板は、非常に不均一な加熱電力分布を示し、また天候状態が悪い場合には、氷、雪及び曇りを不十分にしか除去できない。本発明による分離線を使用することによって、そのような大きさの未コーティングゾーンであっても、ガラス板の加熱特性を非常に大幅に大きく改善することができる。
【0020】
バスバーは、有利には、側縁に沿って、電気加熱層の導電性のコーティング部に配置されている。バスバーの長さは一般的には、電気的な導電性のコーティング部の側縁の長さにほぼ等しいが、しかしながら、それよりも僅かに長いか、又は僅かに短くても良い。二つより多くのバスバーを導電性のコーティング部に配置することもでき、有利には、導電性のコーティング部の相互に対向する二つの側縁に沿って縁部領域に配置することもできる。また例えば、二つ又はそれ以上の独立した加熱フィールドを電気的に加熱可能なコーティング部に形成するために、若しくは、バスバーが一つ又は複数の未コーティングゾーンによって中断されているか又はずらされている場合には、二つより多くのバスバーを電気加熱層に配置することができる。この場合、本発明による教示は、複数の加熱フィールドのうちの少なくとも一つの加熱フィールド、有利には全ての加熱フィールドについても当てはまる。
【0021】
一つの有利な実施の形態では、本発明によるバスバーが、印刷されて焼き付けられた構造体として形成されている。印刷されたバスバーは有利には少なくとも、金属、金属合金、金属化合物及び炭素のうちの少なくとも一つ、特に有利には貴金属、とりわけ銀を含有している。印刷ペーストは有利には金属製の粒子、金属粒子及び/又は炭素を含有しており、また特に、銀粒子のような貴金属粒子を含有している。電気伝導は有利には、導電性の粒子によって達成される。粒子はペースト又はインクのような有機及び/又は無機のマトリクス内に存在することができる。有利にはガラスフリットを含む印刷ペーストとして存在する。
【0022】
第1のバスバー及び第2のバスバーは、有利には2mmから30mmまで、特に有利には4mmから20mmまで、とりわけ10mmから20mmまでの幅を有している。それよりも細いバスバーでは、過度に高い電気抵抗が生じ、それに伴って、動作時にバスバーが過度に高い温度に加熱される。更に、そのような細いバスバーを、スクリーン印刷のような印刷技術による作製することは困難である。それよりも太いバスバーでは、使用する材料の量が多くなるので望ましくない。更に、そのような太いバスバーは板ガラスを通して見る視界領域にとって過度に大きい見栄えの悪い障害物となる。バスバーの長さは、電気加熱層の寸法に即している。一般的にストライプの形に形成されているバスバーでは、長い方の寸法を長さと称し、短い方の寸法を幅と称する。第3のバスバー又は付加的なバスバーを比較的狭く形成することもでき、有利には、0.6mmから5mmまでの幅で形成することもできる。
【0023】
印刷されたバスバーは、有利には5μmから40μmまで、特に有利には8μmから20μmまで、とりわけ有利には8μmから12μmまでの層厚を有している。このような厚さの印刷されたバスバーは、技術的に簡単に実現することができ、また有利な許容電流を有している。
【0024】
バスバーは、有利には0.8μΩ・cmから7.0μΩ・cmまで、特に有利には1.0μΩ・cmから2.5μΩ・cmまでの比抵抗ρ
aを有している。この範囲にある比抵抗を有しているバスバーは、技術的に簡単に実現することができ、また有利な許容電流を有している。
【0025】
しかしながら択一的に、バスバーを導電性のシートのストリップとして形成することもできる。その場合バスバーは、例えば少なくとも、アルミニウム、銅、スズめっきされた銅、金、銀、亜鉛、タングステン及び/又はスズ、若しくはそれらの合金を含有している。ストリップは有利には10μmから500μmまで、特に有利には30μmから300μmまでの厚さを有している。この厚さを有している導電性のシートから成るバスバーは、技術的に簡単に実現することができ、また有利な許容電流を有している。ストリップを、例えば、はんだ材料又は導電性接着剤を介して、若しくは、直接的な載着を介して導電性の構造体と導電的に接続させることができる。
【0026】
本発明によるガラス板は、電気加熱層が配置されている第1のガラス板を含んでいる。電気加熱層の種類に応じて、加熱層を保護層によって、例えばラッカ、ポリマーフィルム及び/又は第2のガラス板によって保護することが有利である。
【0027】
本発明によるガラス板の一つの有利な実施の形態では、導電性のコーティング部が配置されている第1のガラス板の表面が、熱可塑性の中間層を介して、第2のガラス板と面状に結合されている。
【0028】
基本的には、第1のガラス板として、また場合によっては第2のガラス板として、本発明によるガラス板の製造及び使用に関する条件下で、熱的安定性及び化学的安定性を有しており、更には寸法安定性も有している絶縁性の基材であれば、いずれのものも適している。
【0029】
第1のガラス板及び/又は第2のガラス板は、有利には、ガラス、特に有利には、平板ガラス、フロートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラスを含むか、若しくは、透明なプラスチック、有利には硬質の透明なプラスチック、特にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルクロライド及び/又はそれらの混合物を含んでいる。第1のガラス板及び/又は第2のガラス板は有利には透明であり、特に、車両のフロントガラス又はリアガラスとしてガラス板を使用するために、又は高い光透過率が望まれる他の用途において使用するために透明である。本明細書において透明とは、ガラス板の、可視スペクトル領域における透過率が70%よりも高いことを意味する。しかしながら、ドライバの運転に関係する視界内に存在しないガラス板、例えばガラスルーフに関しては、透過率が遙かに低くても良く、例えば5%より高い程度のものでもよい。
【0030】
ガラス板の厚さを広範に変えることができ、また特に、個々のケースの要求に合わせることができる。有利には、車両ガラスに関しては1.0mmから25mmまで、有利には1.4mmから2.5mmまでの標準的な厚さを有するガラス板が使用され、また家具、器具及び建物に関しては、特に電気ヒータに関しては、有利には4mmから25mmまでの厚さを有するガラス板が使用される。ガラス板の大きさも広範に変えることができ、また本発明による使用の大きさに合わせることができる。第1のガラス板、また場合によっては第2のガラス板は、例えば車両製造及び建築物の分野において通常は200cm
2から20m
2までの面積を有している。
【0031】
ガラス板は任意の三次元の形状を有することができる。有利には、三次元の形状は影部を有しておらず、従って、例えば陰極スパッタリングによってコーティングすることができる。有利には、基材は平坦であるか、若しくは、一つ又は複数の空間方向に僅かに又は大きく湾曲している。特に、平坦な基材が使用される。ガラス板を無色にすることができるか、又は着色することができる。
【0032】
複数のガラス板が、少なくとも一つの中間層によって相互に結合されている。中間層は有利には、少なくとも一つの熱可塑性プラスチック、有利には、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)及び/又はポリエチレンテレフタレート(PET)を含有している。しかしながら、熱可塑性の中間層は例えば、ポリウレタン(PU)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリラート、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルクロロイド、ポリアセテート樹脂、注型樹脂、アクリラート、フッ化エチレン−プロピレン、ポリビニルフルオロイド及び/又はエチレン−テトラフルオロエチレン、若しくはそれらの混合物又はコポリマーを含有することもできる。熱可塑性の中間層を一枚の熱可塑性シートによって形成することができるが、しかしながら、相互に重なって配置されている複数の熱可塑性シートによって形成することもできる。熱可塑性シートは、有利には0.25mmから1mmまで、一般的には0.38mm又は0.76mmの厚さを有している。
【0033】
第1のガラス板、中間層及び第2のガラス板から成る本発明による合わせガラスでは、電気加熱層を、第1のガラス板に直接的に被着させることができるか、若しくは、支持体フィルム又は中間層自体に被着させることができる。第1のガラス板及び第2のガラス板は、それぞれ内側表面及び外側表面を有している。第1のガラス板の内側表面と第2のガラス板の内側表面は相互に対向しており、且つ、熱可塑性の中間層を介して相互に結合されている。第1のガラス板の外側表面と第2のガラス板の外側表面は相互に背中合わせであり、且つ、熱可塑性の中間層側とは反対側の表面である。電気加熱層は有利には、第1のガラス板の内側表面に被着されている。勿論、第2のガラス板の内側表面にも、別の導電性のコーティング部を被着させることができる。ガラス板の外側表面もコーティング部を有することができる。「第1のガラス板」及び「第2のガラス板」という術語は、本発明による合わせガラスにおいて、二つのガラス板を区別するために用いられている。これらの術語に幾何学的な配置構成についての意味は関連付けられていない。本発明によるガラス板が例えば、開口部、例えば車両又は建物の開口部において、外部の周囲空間に対して内室を離隔するために設けられている場合には、第1のガラス板は内室又は外部の周囲空間に対向していると考えられる。
【0034】
電気加熱層は導電性のコーティング部を含んでおり、また有利には、透明な導電性のコーティング部を含んでいる。ここで透明とは、電磁放射に対して透過性であること、有利には、300nmから1,300nmまでの波長の電磁放射に対して、特に可視光に対して透過性であることを意味している。
【0035】
本発明による導電性のコーティング部は例えば、独国実用新案第202008017611号(DE 20 2008 017 611 U1)、欧州登録特許第0847965号(EP 0 847 965 B1)又は国際公開第2012/052315号(WO2012/052315 A1)から公知である。それらの刊行物に開示されている導電性のコーティング部は、一般的に、一つ又は複数の、例えば二つ、三つ又は四つの導電性の機能層を含んでいる。それらの機能層は、有利には少なくとも一つの金属、例えば銀、金、銅、ニッケル及び/又はクロム、若しくは金属合金を含有している。機能層は特に有利には、金属の少なくとも90重量%、特に金属の少なくとも99.9重量%を有している。機能層を金属又は金属合金から形成することができる。機能層は特に有利には銀又は銀を含む合金を含有している。その種の機能層は、非常に有利な導電率を有しており、それと同時に、可視スペクトル領域において高い透過率を有している。機能層は、有利には5nmから50nmまで、特に有利には8nmから25nmまでの厚さを有している。機能層の厚さに関するその範囲では、可視スペクトル領域において優れた高い透過率、また非常に良好な導電率が達成される。
【0036】
一般的には、加熱可能なコーティング部の隣接する二つの機能層の間にはそれぞれ、少なくとも一つの誘電層が配置されている。有利には、第1の機能層の下及び/又は最後の機能層の上に、別の誘電層が配置されている。誘電層は、例えば窒化ケイ素のような窒化物又は酸化アルミニウムのような酸化物を含む誘電材料から成る、少なくとも一つの個別層を含んでいる。しかしながら、誘電層は複数の個別層を含むこともでき、例えば誘電材料から成る個別層と、平滑化層、適合化層、遮断層及び/又は反射防止層を含むことができる。誘電層は、例えば10nmから200nmまでの厚さを有している。
【0037】
この層構造は一般的に、磁気反応性の陰極スパッタリングのような真空法によって実施される一連の析出プロセスによって得られる。
【0038】
別の適切な導電性のコーティング部は、有利には酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素がドープされた酸化スズ(SnO
2:F)又はアルミニウムがドープされた酸化亜鉛(ZnO:Al)を含有している。
【0039】
原則として、導電性のコーティング部は、電気的に接触接続できるものであればどのようなコーティング部であってもよい。本発明によるガラス板が、例えば窓ガラスの分野におけるガラス板のような視界を実現すべき場合には、導電性のコーティング部は有利には透明である。一つの有利な実施の形態では、導電性のコーティング部が、一つの層であるか、又は、2μm以下、特に有利には1μm以下の総厚を有している複数の個別層から成る層構造体である。
【0040】
一つの有利な本発明による電気加熱層は、0.4Ω毎スクエアから10Ω毎スクエアまでのシート抵抗を有している。一つの特に有利な実施の形態では、本発明による電気加熱層は、0.5Ω毎スクエアから1Ω毎スクエアまでのシート抵抗を有している。その種のシート抵抗を有しているコーティング部は、特に、12Vから48Vまでの一般的な車両電源電圧において、又は、500Vまでの一般的な車両電源電圧を有する電気自動車において、車両ガラスの加熱に特に適している。
【0041】
電気加熱層を、第1のガラス板の表面全体にわたり延在させることができる。しかしながら択一的には、電気加熱層を、第1のガラス板の表面の一部にのみ延在させることもできる。電気加熱層は、有利には、第1のガラス板の内側表面の少なくとも50%にわたり、特に有利には少なくとも70%にわたり、極めて有利には少なくとも90%にわたり延在している。電気加熱層は一つ又は複数の未コーティングゾーンを有することができる。それらのゾーンは、電磁放射に対して透過性であり、また例えば、データ伝送窓又は通信窓として公知である。
【0042】
合わせガラスとしての本発明によるガラス板の一つの有利な実施の形態では、第1のガラス板の内側表面が、電気加熱層の導電性のコーティング部が設けられていない環状の縁部領域を有しており、この縁部領域は2mmから50mmまで、有利には5mmから20mmまでの幅を有している。導電性のコーティング部は、周囲雰囲気とは接触しておらず、ガラス板の内部において、熱可塑性の中間層によって有利には破損及び腐食から保護されている。
【0043】
給電線は有利には可撓性の箔導体(平形導体、リボン状導体)として形成されている。箔導体とは、厚さよりも幅の方が著しく大きい電気伝導体であると解される。その種の箔導体は例えば、銅、スズめっきされた銅、アルミニウム、銀、金又はそれらの合金を含むか、若しくはそれらのものから成るストリップ又はバンドである。箔導体は例えば2mmから16mmまでの幅及び0.03mmから0.1mmまでの厚さを有している。箔導体は、例えばポリイミドベースの絶縁性の被覆部、有利にはポリマー被覆部を有することができる。ガラス板における導電性のコーティング部の接触接続に適している箔導体は、例えば僅か0.3mmの層厚しか有していない。その種の薄い箔導体は、個々のガラス板間において熱可塑性の中間層に容易に埋設することができる。箔導体バンドには、相互に電気的に絶縁されている複数の導電層を設けることができる。
【0044】
択一的に、薄い金属ワイヤを給電線として使用することもできる。金属ワイヤは特に、銅、タングステン、金、銀又はアルミニウム又は、それらの金属のうちの少なくとも二つから成る合金を含有している。合金はモリブデン、レニウム、オスミウム、イリジウム、パラジウム又は白金を含んでいてもよい。
【0045】
本発明の一つの有利な実施の形態では、給電線が、例えばはんだ材料又は導電性接着剤によって、コンタクトストリップに接続される。コンタクトストリップはバスバーと接続されている。コンタクトストリップは、有利には、バスバーの許容電流を高める。更に、コンタクトストリップによって、バスバーと給電線との間の接触個所の不所望な加熱を低減することができる。また、コンタクトストリップは給電線によるバスバーの電気的な接触接続を簡略化する。何故ならば、給電線は既に形成されているバスバーと接続する必要はなく、例えばはんだ付けする必要がないからである。
【0046】
コンタクトストリップは有利には、少なくとも一つの金属、特に有利には、銅、スズめっきされた銅、銀、金、アルミニウム、亜鉛、タングステン及び/又はスズを含有している。このことはコンタクトストリップの電気伝導に関して特に有利である。コンタクトストリップは、有利には上述の元素のうちの一つ又は複数、また必要に応じて別の元素を含む合金、例えば黄銅又は青銅を含有することができる。
【0047】
コンタクトストリップは有利には、薄い導電性のシートのストリップとして形成されている。コンタクトストリップは有利には10μmから500μmまで、特に有利には15μmから200μmまで、とりわけ有利には50μmから100μmまでの厚さを有している。この厚さを有しているシートは技術的に簡単に製造することができ、また取り扱いが容易であり、更には、有利な低い電気抵抗を有している。
【0048】
コンタクトストリップは有利には10mmから400mmまで、特に有利には10mmから100mmまで、とりわけ20mmから60mmまでの長さを有している。このことは、コンタクトストリップの取り扱い易さに関して、また電気的な接触接続にとって十分な大きさの、バスバーとコンタクトストリップとの間の接触面に関して特に有利である。
【0049】
コンタクトストリップは有利には2mmから40mmまで、特に有利には5mmから30mmまでの幅を有している。このことは、コンタクトストリップとバスバーとの間の接触面に関して、またコンタクトストリップの給電線への簡単な接続に関して特に有利である。コンタクトストリップの長さ及び幅という語句は、それぞれ、バスバーの長さ又は幅によって表されている同一の広がり方向における寸法を意味している。
【0050】
一つの有利な実施の形態では、コンタクトストリップは面全体がバスバーと直接的に接触している。このために、コンタクトストリップがバスバーに載着される。特に有利には、ガラス板を簡単に製造することができ、またコンタクトストリップの面全体を接触面として使用できる。
【0051】
コンタクトストリップを簡単にバスバーに載着させることができ、またコンタクトストリップは、積層化されたガラス板の内部において所定の位置に永続的に固定される。
【0052】
更に本発明は、電気的な接触接続部を備えているガラス板を製造するための方法にも関し、この方法は少なくとも以下のステップを備えている:
(a)少なくとも一つの未コーティングゾーン(8)を備えている電気加熱層を、第1のガラス板の表面(III)に被着させるステップ、
(b)電圧源と接続される、相互に実質的に平行な少なくとも二つのバスバーを設け、それらのバスバーを電気加熱層に接続し、バスバー間に加熱電流のための電流経路を形成するステップ、
(c)電気加熱層をm個のセグメントに電気的に分割するn本の分離線を形成する、但し、nは1以上の数であり、且つ、m=n+1である、ステップであって、加熱電流のための電流経路が未コーティングゾーンを少なくとも部分的に取り囲むように案内され、且つ、全てのセグメントの幅bが等しくなり、且つ、各セグメントの幅bの和が電気加熱層の幅Bに等しくなるように、セグメントを、未コーティングゾーンを少なくとも部分的に取り囲むように帯状に配置するステップ。
【0053】
バスバーが相互に平行又はほぼ平行に延在している場合、幅Bは有利には、バスバーに平行な線に沿って決定される。電気加熱層が未コーティングゾーンを有している場合、幅Bは、未コーティングゾーンを包囲している電気加熱層の幅の和である。つまり、幅Bの決定の際には、平行な線に沿った未コーティングゾーンの幅は考慮されない。
【0054】
方法ステップ(a)における電気加熱層の被着は、それ自体公知の方法によって行うことができ、有利には、磁気反応性の陰極スパッタリングによって行うことができる。このことは、第1のガラス板の、簡単、迅速、廉価且つ均一なコーティングに関して特に有利である。しかしながらまた、電気加熱層を例えば蒸着、化学気相成長法(CVD:chemical vapour deposition)、プラズマ化学気相成長法(PECVD)又は湿化学式の方法によって被着させることができる。
【0055】
方法ステップ(a)の後に、第1のガラス板に熱処理を施すことができる。その際に、導電性のコーティング部を備えている第1のガラス板は、少なくとも200℃、有利には少なくとも300℃の温度に加熱される。この熱処理を、電気加熱層の透過率を高めるため、及び/又は、シート抵抗を低減するために使用することができる。
【0056】
方法ステップ(a)の後に、典型的には500℃から700℃までの温度において、第1のガラス板を湾曲させることができる。平坦なガラス板をコーティングすることは技術的に比較的簡単なので、第1のガラス板が湾曲されるべき場合にはこの順序は有利である。しかしながら択一的に、例えば電気加熱層が損傷なく湾曲プロセスに耐えることに適していない場合には、第1のガラス板を方法ステップ(a)の前に湾曲させてもよい。
【0057】
方法ステップ(b)において、バスバーは、有利にはスクリーン印刷法又はインクジェット法での導電性ペーストの印刷及び焼き付けによって設けられる。択一的に、バスバーを導電性のシートのストリップとして導電性のコーティング部に設けることができ、有利には載着、はんだ付け又は接着させることができる。
【0058】
スクリーン印刷法では、金属粒子を有する印刷ペーストが印刷時に通過するメッシュのマスキングによって、横方向の成形が行われる。マスキングの適切な成形によって、例えば、バスバーの幅bを非常に簡単に予め設定することができ、また変更することができる。
【0059】
導電性のコーティング部のデコーティングによる個々の分離線の形成は有利にはレーザビームによって行われる。薄い金属シートをパターニングするための方法は、例えば、欧州公開特許第2200097号(EP 2 200 097 A1)又は欧州公開特許第2139049号(EP 2 139 049 A1)から公知である。デコーティングの幅は有利には10μmから1,000μmまで、特に有利には30μmから200μmまで、またとりわけ70μmから140μmまでである。この範囲では、非常に優れた残留物のないデコーティングがレーザビームによって行われる。レーザビームを用いるデコーティングは特に有利である。何故ならば、そのようにしてデコーティングされた線は光学的に非常に目立たないものであり、外観及び視界が損なわれることは殆ど無いからである。レーザ切断線の幅よりも広い幅を有する線のデコーティングは、レーザビームによって何度も線を走らせることにより行われる。従って、プロセス時間及びプロセスコストは、線の幅が太くなるにつれ上昇する。択一的に、機械的な除去並びに、化学的又は物理的なエッチングによってデコーティングを行うこともできる。
【0060】
本発明による方法の有利な発展形態は、少なくとも、以下の更なるステップを備えている:
(d)熱可塑性の中間層を、第1のガラス板のコーティングされた表面に配置し、第2のガラス板を、熱可塑性の中間層に配置するステップ、
(e)第1のガラス板を、熱可塑性の中間層を介して第2のガラス板に結合させるステップ。
【0061】
方法ステップ(d)において、第1のガラス板は、導電性のコーティング部が設けられている側の表面が熱可塑性の中間層に対向するように配置される。これによって、その表面は第1のガラス板の内側表面になる。
【0062】
熱可塑性の中間層を、単一の熱可塑性のシートによって形成することができるか、又は、面状に上下に重ねて配置される二つ以上の熱可塑性のシートによって形成することができる。
【0063】
方法ステップ(e)における第1のガラス板と第2のガラス板の結合は、有利には、熱、真空及び/又は圧力の作用下で行われる。それ自体公知の方法をガラス板の製造に使用することもできる。
【0064】
例えば、いわゆるオートクレーブ法を、約10barから15barまでの高圧下において、また130℃から145℃までの温度において、約2時間にわたり実施することができる。それ自体公知の真空バッグ法又は真空リング法は、例えば、約200mbarにおいて80℃から110℃までの温度で行われる。第1のガラス板、熱可塑性の中間層及び第2のガラス板を、カレンダにおいて少なくとも一組のロール間でプレスして一つのガラス板にすることもできる。この種の設備はガラス板の製造に関して公知であり、通常の場合、プレス機構の上流側に少なくとも一つの加熱用トンネルを有している。プレス過程の間の温度は例えば40℃から150℃までである。カレンダリング法とオートクレーブ法の組み合わせは実際のところに非常に有効であることが分かった。択一的に、真空ラミネート法を使用することもできる。この方法では、加熱可能且つ真空可能な一つ又は複数のチャンバが使用され、そのチャンバにおいて第1のガラス板及び第2のガラス板が例えば、0.01mbarから800mbarまでの低圧下において80℃から170℃までの温度で、約60分以内の時間にわたり積層化される。
【0065】
更に本発明は、本発明による電気的なコンタクトを備えている本発明によるガラス板の、建物における、特に出入り口の領域、窓の領域、屋根の領域又はファサードの領域における使用、取り付け部材としての家具及び器具における使用、並びに、地上、空中又は水中における交通のための移動手段、特に電車、船舶及び自動車における、例えばフロントガラス、リアガラス、サイドガラス及び/又はガラスルーフとしての使用に関する。
【0066】
以下では、添付の図面及び複数の実施例に基づき、本発明を詳細に説明する。図面は概略的に描かれたものであり、縮尺通りではない。図面の記載は本発明を制限することを意図したものではない。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1には、電気加熱層3を備えている、本発明によるガラス板100の一つの実施例が平面図で示されている。ガラス板100は、第1のガラス板1を含んでおり、また例えばソーダ石灰ガラスから成る。第1のガラス板1の表面IIIには、導電性のコーティング部から成る電気加熱層3が被着されている。電気加熱層3は、例えば、3つの導電性銀層と、それらの導電性銀層を相互に離隔させる誘電層とを含んでいる層系である。電気加熱層3に電流が流れると、電気加熱層3自体の電気抵抗及びジュール熱の発生に起因して、電気加熱層3が加熱される。従って、電気加熱層3をガラス板100の能動的な加熱に使用することができる。ガラス板100は例えば1m×1mの寸法を有している。
【0069】
電気加熱層3は例えば、環状に延びる、各辺が1cmの幅のフレーム状の未コーティング領域を除いて、第1のガラス板1の表面III全体にわたり延在している。
【0070】
電気加熱層3の電気的な接触接続を行うために、第1のバスバー5.1が下側の縁部領域内で、また別の第2のバスバー5.2が上側の縁部領域内でそれぞれ電気加熱層3に配置されている。それらのバスバー5.1,5.2は、例えば銀粒子を含有しており、また、スクリーン印刷法で塗布され、その後に焼き付けられたものである。各バスバー5.1,5.2の長さは、電気加熱層3の寸法にほぼ一致している。二つのバスバー5.1,5.2はほぼ並行に延在している。
【0071】
バスバー5.1,5.2に電圧が印加されると、バスバー5.1,5.2間では、均一な電流が電気加熱層3を通る電流経路11に沿って流れる。各バスバー5.1,5.2のほぼ中央には給電線7が配置されており、この給電線7はバスバー5.1,5.2と導電的に接続されている。給電線7を介して、バスバー5.1,5.2は電圧源に接続されている。
【0072】
ガラス板100の中央には、未コーティングゾーン8が配置されている。未コーティングゾーン8は、電気加熱層3の導電性材料を有していない。ここで、未コーティングゾーン8は、例えば、電気加熱層3によって完全に包囲されている。未コーティングゾーン8は例えば円形に形成されており、10cmの直径を有している。
【0073】
電気加熱層3は、ここではn=3の分離線9.1,9.2,9.3を有している。分離線9.1,9.2,9.3の領域において、電気加熱層3は電気的に遮断されている。分離線9.1,9.2,9.3は未コーティングゾーン8を取り囲むように帯状に配置されており、また、電気加熱層3に4つのセグメント10.1,10.2,10.3,10.4を形成している。電流経路11は、未コーティングゾーン8を取り囲むように、電気加熱層3におけるセグメント10.1,10.2,10.3,10.4を通って案内される。特に、未コーティングゾーン8に一番近いセグメント10.1,10.3における電流経路11は、未コーティングゾーン8の上下にそれぞれ位置する領域12に向かって案内される。この領域においては、分離線が設けられていない従来技術による電気加熱層3では、弱い加熱電力しか達成されない(
図2を参照されたい)。
【0074】
分離線9.1,9.2,9.3は、例えば僅か100μmの幅しか有しておらず、例えばレーザパターニングによって電気加熱層3に形成されている。そのような細い幅の分離線9.1,9.2,9.3は、目では殆ど認識できず、従って、ガラス板100を通して見る視界を極僅かにしか妨げない。このことは、特に自動車における用途に関して、ドライバの安全性にとって非常に重要である。
【0075】
セグメント10.1,10.2,10.3,10.4の幅bは、バスバー5.1,5.2に平行に延びる各線6における電気加熱層3の幅Bに依存し、また、幅Bをセグメントの数で除算することによって得られる。
図1には一例として3本の平行な線6.1,6.2,6.3が示されている。電気加熱層3は線6.1に沿って例えば98cmの幅B
1を有している。従って、セグメント10.1,10.2,10.3,10.4の幅b
1は、B
1/4=24.5cmである。分離線は例えば100μmの非常の細い幅しか有していないので、幅b
1を計算する際には、この分離線の幅を無視することができる。この実施例におけるガラス板100は矩形に形成されているので、線6.3に沿った幅B
3も同様に98cmであり、従って幅b
3も同様に24.5cmである。
【0076】
未コーティングゾーン8の領域における線6.2に沿った電気加熱層3の幅B
2は、幅B
21と幅B
22の和である。つまり、未コーティングゾーン8における線6.2に沿った区間は幅B
2の一部を成さない。ここでは、幅B
2は例えば88cmであり、従って、セグメント10.1,10.2,10.3,10.4の幅b
2は22cmである。
【0077】
図2には、従来技術によるガラス板100が示されている。第1のガラス板1、バスバー5.1,5.2、電気加熱層3並びに未コーティングゾーン8は、
図1に示したガラス板100に対応する。従来技術によるガラス板100は分離線を有しておらず、従って、未コーティングゾーン8を取り囲むように電流経路11を案内するセグメントも有していない。従来技術によるガラス板100の加熱電力分布は非常に不均一である。未コーティングゾーン8の上下にそれぞれ位置する領域12には僅かな電流しか流れないので、従来技術によるガラス板100はそれらの領域12において極僅かにしか加熱されない。
【0078】
図3には、電気加熱層を備えている、本発明によるガラス板100の一つの別の実施例が平面図で示されている。ガラス板100は、第1のガラス板1及び第2のガラス板2を含んでおり、それら二つのガラス板1,2は熱可塑性の中間層4を介して相互に結合されている。ガラス板100は例えば車両ガラスであり、特に乗用車のウィンドシールドガラスである。第1のガラス板1は例えば、取り付けられた位置において内室に対向することが予定されている。第1のガラス板1及び第2のガラス板2はソーダ石灰ガラスから成る。第1のガラス板1は例えば1.6mmの厚さを有しており、また第2のガラス板2は2.1mmの厚さを有している。熱可塑性の中間層4は、ポリビニルブチラール(PVB)から成り、また0.76mmの厚さを有している。第1のガラス板1の内側表面IIIには、導電性のコーティング部から成る電気加熱層3が被着されている。電気加熱層3は、例えば、3つの導電性銀層と、それらの導電性銀層を相互に離隔させる誘電層とを含んでいる層系である。電気加熱層3に電流が流れると、電気加熱層3自体の電気抵抗及びジュール熱の発生に起因して、電気加熱層3が加熱される。従って、電気加熱層3をガラス板100の能動的な加熱に使用することができる。
【0079】
電気加熱層3は例えば、環状に延びるフレーム状の8mmの幅の未コーティング領域を除いて、第1のガラス板1の表面III全体にわたり延在している。未コーティング領域は、電圧が印加される電気加熱層3と車両ボディとの間の電気的な絶縁に使用される。また未コーティング領域は、電気加熱層3を損傷及び腐食から保護するために、中間層4に接着されることによって気密に封止されている。
【0080】
電気加熱層3の電気的な接触接続を行うために、第1のバスバー5.1が下側の縁部領域内で、また別の第2のバスバー5.2が上側の縁部領域内でそれぞれ導電性のコーティング部3に配置されている。それらのバスバー5.1,5.2は、例えば銀粒子を含有しており、また、スクリーン印刷法で塗布され、その後に焼き付けられたものである。各バスバー5.1,5.2の長さは、電気加熱層3の寸法にほぼ一致している。
【0081】
バスバー5.1,5.2に電圧が印加されると、バスバー5.1,5.2間では、均一な電流が電気加熱層3を通って流れる。各バスバー5.1,5.2のほぼ中央には給電線7が配置されている。給電線7はそれ自体公知の箔導体である。給電線7は接触面を介してバスバー5.1,5.2と導電的に接続されており、例えばはんだ材料、導電性接着剤を用いて導電的に接続されているか、又は、単純に載着させてガラス板100内で圧着させることによって導電的に接続されている。箔導体は例えば、10mmの幅及び0.3mmの厚さを有している、スズめっきされた銅箔を含む。バスバー5.1,5.2は電気的な給電線7を介して、更には接続ケーブル13を介して電圧源14に接続されており、この電圧源14は自動車にとって一般的な車両電源電圧、有利には12Vから15Vまでの電圧、例えば約14Vの電圧を供給する。それとは異なり、電圧源14がより高い電圧、例えば35Vから45Vまでの電圧、特に42Vの電圧を有していることも考えられる。
【0082】
ガラス板100においては、その幅のほぼ中央に、未コーティングゾーン8が配置されている。未コーティングゾーン8は、電気加熱層3の導電性材料を有していない。ここで、未コーティングゾーン8は、例えば、電気加熱層3によって完全に包囲されている。それとは異なり、未コーティングゾーン8を電気加熱層3の縁部に配置することもできる。未コーティングゾーン8は例えば1.5dm
2の面積を有している。未コーティングゾーン8は例えば10cmの長さを有している。ここで長さとは、ガラス板を通る電流経路の方向、即ち二つのバスバー5.1,5.2を結ぶ最短の線が延びる方向の寸法を意味している。
図1に示した自動車ガラスの例では、未コーティングゾーン8の長さは垂直方向に配列されており、また幅はバスバー5.1,5.2に平行な水平方向に配列されている。未コーティングゾーン8の上端部はバスバー5.3に接している。
【0083】
図示されている例において、バスバー5.1,5.2,5.3は、例えば約10μmの一定の厚さを有しており、また、例えば2.3μΩ・cmの一定の比抵抗を有している。
【0084】
電気加熱層3は、ここではn=7の分離線9.1〜9.7を有している。分離線9.1〜9.7の領域において、電気加熱層3は電気的に遮断されている。分離線9.1〜9.7は未コーティングゾーン8を取り囲むように帯状に配置されており、また、電気加熱層3に8個のセグメント10.1〜10.8を形成している。バスバー5.1,5.2に電圧が印加されると、未コーティングゾーン8を取り囲むように、電気加熱層3におけるセグメント10.1〜10.8を通って電流が誘導される。
【0085】
分離線9.1〜9.7は、例えば僅か100μmの幅しか有しておらず、例えばレーザパターニングによって電気加熱層3に形成されている。そのような細い幅の分離線9.1〜9.7は、目では殆ど認識できず、従って、ガラス板100を通して見る視界を極僅かにしか妨げない。このことは、特に自動車における用途に関して、走行の安全性にとって非常に重要である。
【0086】
セグメント10.1〜10.8の幅bは、バスバー5.1,5.2に平行に延びる各線6における電気加熱層3の幅Bに依存する。セグメント10.1〜10.8の幅bは、幅Bをセグメントの数で除算することによって得られる。
図2には一例として3本の平行な線6.1,6.2,6.3が示されている。電気加熱層3は線6.1に沿って例えば幅B
1を有している。セグメント10.1〜10.8の幅b
1は、B
1/8である。この実施例における電気加熱層3は台形に形成されているので、線6.3に沿ったセグメント10.1〜10.8の幅b
3はB
3/8である。
図1と同様に、線6.2に沿った幅B
2には未コーティングゾーン8の幅は含まれない。
【0087】
図4には、本発明によるガラス板100の別の実施の形態が平面図で示されている。第1のガラス板1、バスバー5.1,5.2及び電気加熱層3は
図1に示したガラス板100に対応する。未コーティングゾーン8は、例示的に、ガラス板100の左上の角に配置されている。
【0088】
電気加熱層3は、ここではn=1の分離線9.1を有している。分離線9.1の領域において、電気加熱層は二つのセグメント10.1,10.2に分割されている。電気加熱層3は線6.1に沿って例えば98cmの幅B
1を有している。従って、セグメント10.1,10.2の幅b
1は、B
1/2=49cmである。
【0089】
未コーティングゾーン8の領域における線6.2に沿った電気加熱層3の幅B
2は例えば93cmであり、従って、セグメント10.1,10.2の幅b
2は46.5cmである。
【0090】
図5には、本発明によるガラス板100の別の実施の形態が平面図で示されている。第1のガラス板1、バスバー5.1,5.2及び電気加熱層3は
図1に示したガラス板100に対応する。未コーティングゾーン8は、例示的に、ガラス板100の左上の角に配置されている。未コーティングゾーン8は例えば、一つの角が丸められた矩形の形状を有している。電気加熱層3における丸められた角は非常に有利である。何故ならば、それによって、局所的な熱集中部、いわゆるホットスポットが回避されるからである。
【0091】
電気加熱層3は、ここではn=1の分離線9.1を有している。分離線9.1の領域において、電気加熱層は二つのセグメント10.1,10.2に分割されている。電気加熱層3は線6.1に沿って例えば98cmの幅B
1を有している。従って、セグメント10.1,10.2の幅b
1は、B
1/2=49cmである。
【0092】
未コーティングゾーン8の領域における線6.2に沿った電気加熱層3の幅B
2は例えば93cmであり、従って、セグメント10.1,10.2の幅b
2は46.5cmである。
【0093】
図6には、合わせガラスを例にした、電気加熱層3を備えているガラス板100を製造するための本発明による方法の一つの実施例のフローチャートが示されている。
【0094】
図1及び
図3から
図5に示した本発明によるガラス板100は、特に未コーティングゾーン8の下方におけるクリティカルな領域12において、改善された加熱特性、例えば均一な加熱電力分布及び均一な温度分布を示す。レーザパターニングされた分離線9の幅が細いことによって、ガラス板を通して見る視界は最小限にしか妨げられないので、従って車両ガラスに対する要求は満たされている。
【0095】
この結果は当業者にとって予想を超える驚くべきものであった。