特許第6133478号(P6133478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニチレイバイオサイエンスの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6133478
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】着色粒子
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/22 20060101AFI20170515BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20170515BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20170515BHJP
   C09B 31/14 20060101ALN20170515BHJP
   C09B 31/068 20060101ALN20170515BHJP
   C09B 1/28 20060101ALN20170515BHJP
   C09B 29/15 20060101ALN20170515BHJP
【FI】
   C09B67/22 C
   C09B67/22 A
   C09B67/22 D
   C09B67/22 B
   G01N33/531 B
   G01N33/543 521
   !C09B31/14
   !C09B31/068
   !C09B1/28
   !C09B29/15
【請求項の数】9
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2016-140773(P2016-140773)
(22)【出願日】2016年7月15日
【審査請求日】2016年7月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505145149
【氏名又は名称】株式会社ニチレイバイオサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100188651
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 広介
(72)【発明者】
【氏名】松 本 真 二
(72)【発明者】
【氏名】小久保 悟
【審査官】 福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−180842(JP,A)
【文献】 特開2000−178309(JP,A)
【文献】 特開平10−206428(JP,A)
【文献】 特開平09−143410(JP,A)
【文献】 特開平06−306108(JP,A)
【文献】 特開2015−194495(JP,A)
【文献】 特開2009−120901(JP,A)
【文献】 特開2014−149422(JP,A)
【文献】 特開2013−124867(JP,A)
【文献】 特開平09−062202(JP,A)
【文献】 特開2004−075818(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/121263(WO,A1)
【文献】 特開2010−189460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00− 2/60
C09B 1/00−69/10
C09C 1/00− 3/12
C09D 11/00−13/00
C09D 15/00−17/00
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料およびラテックス粒子を含んでなる着色粒子であって、
前記黒色油溶性染料が、ジスアゾ染料、アゾ染料、および金属錯塩アゾ染料から選択される一種以上の染料であり、
前記黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料が、ジスアゾ染料またはアントラキノン染料である赤色油溶性染料、ジスアゾ染料またはアントラキノン染料である黄色油溶性染料、およびアントラキノン染料である青色油溶性染料から選択される一種以上の染料であり、
全ての油溶性染料に対する前記黒色油溶性染料の割合が、2.0〜60.0質量%であり、
ラテックス粒子に対する全ての油溶性染料の割合が、16.0質量%以上である、
着色粒子。
【請求項2】
全ての油溶性染料に対する前記黒色油溶性染料の割合が、5.0〜60.0質量%である、請求項1に記載の着色粒子。
【請求項3】
前記黒色油溶性染料が、C.I.ソルベント・ブラック−3、C.I.ソルベント・ブラック−27およびC.I.ソルベント・ブラック−29からなる群から選択される一種以上の染料である、請求項1または2に記載の着色粒子。
【請求項4】
前記黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料が、C.I.ソルベント・レッド−27およびC.I.ソルベント・ブルー−35から選択される一種以上の染料である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の着色粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の着色粒子を含んでなる、免疫測定用組成物。
【請求項6】
前記免疫測定がイムノクロマトグラフィーである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の着色粒子を含んでなる、診断キット。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の着色粒子を用いる、免疫測定法(ただし、人間を対象とする診断行為を除く)
【請求項9】
黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料およびラテックス粒子を配合することを含んでなる着色粒子の製造方法であって、
前記黒色油溶性染料が、ジスアゾ染料、アゾ染料、および金属錯塩アゾ染料から選択される一種以上の染料であり、
前記黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料が、ジスアゾ染料またはアントラキノン染料である赤色油溶性染料、ジスアゾ染料またはアントラキノン染料である黄色油溶性染料、およびアントラキノン染料である青色油溶性染料から選択される一種以上の染料であり、
全ての油溶性染料に対する前記黒色油溶性染料の配合割合が、2.0〜60.0質量%であり、
ラテックス粒子に対する全ての油溶性染料の配合割合が、16.0質量%以上である、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色粒子およびそれを用いた測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
妊娠検査やインフルエンザウイルス等の感染症の診断においてイムノクロマトグラフィー等の免疫測定法の原理を用いた簡易診断薬(POCT)が広く用いられている。POCTは、その性質上、目視にて迅速に結果が判定することが必要とされることから、高い視認性が求められている。
【0003】
イムノクロマトグラフィーは、毛細管現象により検体がメンブレン上を移動する際、検体中の抗原、粒子に結合させた標識抗体、およびメンブレンに塗布された捕捉抗体の三者により免疫複合体が形成され、その標識物の集積を目視で確認する測定方法である。イムノクロマトグラフィーでは標識抗体を結合させる粒子として金属コロイドや着色ラテックスを用いることが多い。
【0004】
イムノクロマトグラフィー等の免疫測定法に用いられる様々な着色粒子が知られている。特許文献1には、表面を構成する成分としてπ共役化合物を含む高分子を含有することを特徴とするイムノクロマト用着色粒子が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、着色ラテックス粒子群の粒子表面の着色剤の含有率が12体積%以内に限定される場合に、ラテックス粒子群中の着色剤含有率があまりに小さくなると、着色ラテックス自体の色調が薄くなるので、それを防ぐために、青や赤の着色剤に黒の着色剤を混ぜて色調の濃さを維持したままラテックス粒子表面の着色剤存在量を減らす方法が記載されている。
【0006】
また、特許文献3には、着色ラテックス粒子の製造方法であって、着色剤としてValifast Red、Valifast Yellow等の分散染料等が用いることができ、2種以上を混合して用いてもよいことが記載されている。
【0007】
しかしながら、従来の着色粒子を用いる場合には、目視による判定の正確性や迅速性において十分とは言い難い。このような技術状況下、簡便で迅速に、視認性を向上する手段が依然として求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014−209117号公報
【特許文献2】特開平10−206428号公報
【特許文献3】特開平06−306108号公報
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、今般、ラテックス粒子とともに、黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料を含んでなることで、視認性を向上すること、具体的には、迅速にバックグラウンドを消失することを見出した。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0010】
したがって、本発明は、着色粒子であって、イムノクロマトグラフィーに使用された際に、視認性を向上すること、具体的には、迅速にバックグラウンドを消失することを目的としている。
【0011】
本発明には、以下の発明が包含される。
(1)黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料、およびラテックス粒子を含んでなる着色粒子であって、
前記黒色油溶性染料がジスアゾ染料、アゾ染料、および含金属染料からなる群から選択される一種以上の染料である、着色粒子。
(2)黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料、およびラテックス粒子を含んでなり、
全ての油溶性染料に対する上記黒色油溶性染料の割合が、2.0〜60.0質量%である、着色粒子。
(3)上記黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料が、赤色、青色、またはそれらの組み合わせから選択される一種以上の油溶性染料である、(1)または(2)に記載の着色粒子。
(4)黒色油溶性染料および該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料の、ラテックス粒子に対する割合が、16.0質量%以上である、(2)または(3)に記載の着色粒子。
(5)(1)〜(4)のいずれか一項に記載の着色粒子を含んでなる、免疫測定用組成物。
(6)上記免疫測定がイムノクロマトグラフィーである、(5)に記載の組成物。
(7)(1)〜(4)のいずれか一項に記載の着色粒子を含んでなる、診断キット。
(8)(1)〜(4)のいずれか一項に記載の着色粒子を用いる、免疫測定法。
(9)黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料、およびラテックス粒子を配合することを含んでなり、
全ての油溶性染料に対する上記黒色油溶性染料の配合割合が、2.0〜60.0質量%である、着色粒子の製造方法。
(10)黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料、およびラテックス粒子を含んでなる着色粒子であって、
水1mLに対して上記着色粒子50〜60μgを分散させた着色粒子含有液の透過率ピークが530nm以上550nm以下である、着色粒子。
【0012】
本発明によれば、上記着色粒子を用いることにより、イムノクロマトグラフィーにおいて、視認性を向上すること、具体的には、迅速にバックグラウンドを消失することができる。また、本発明によれば、検出感度を向上することができる。また、本発明によれば、非特異反応を低減することができる。また、本発明によれば、検出ラインの色調を変えることなく上記効果を示すことができる。また、本発明によれば、目視により観察する際の標的物質検出の判定時間を短くすることができる。
【発明の具体的説明】
【0013】
着色粒子
本発明の着色粒子は、黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料、およびラテックス粒子を含んでなる。本発明の着色粒子は、黒色油溶性染料および該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料により着色された、ラテックス粒子であってもよい。また、本発明の着色粒子は、黒色油溶性染料および該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料がラテックス粒子の表面に担持されてなる着色粒子であってもよい。
【0014】
ラテックス粒子
本発明において使用可能なラテックス粒子の平均粒径は、特に限定されるものではないが、例えば 100〜1000nm、好ましくは300〜500nmである。かかる平均粒径は、レーザ回折法により測定され、例えば、レーザ回折式粒子径分布測定装置SALD-2300(株式会社島津製作所)が用いられる。
【0015】
上記ラテックス粒子は、従来から免疫測定に広く使用されてきたラテックス粒子であれば、特に限定されず、種々のモノマーを重合又は共重合させることによって得ることができる。例えば、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体、ポリエチレンメタアクリレート(PMMA)、ポリビニルトルエン等を用いることができ、好ましくは、ポリスチレンである。上記ラテックス粒子としては、種々のものが市販されている。
上記重合の方法は、特に限定されるものではないが、公知の方法で重合でき、例えば、分散重合法、懸濁重合法、乳化重合法が挙げられ、好ましくは、乳化重合法である。
【0016】
また、後述する、抗体、その抗原結合性断片または抗原等の標的物質に特異的に結合する結合部位は、物理吸着または化学結合等の公知の方法を用いて、着色粒子に担持することができる。より安定にまたは大量に担持させるために、共有結合等の化学結合で着色粒子に担持させることが好ましい。このような目的のために、ラテックス粒子上にカルボキシル基、アミノ基、スルホン基等の官能基を有するものを用いることができ、好ましい官能基は、カルボキシル基である。カルボキシル基等の官能基を有するラテックス粒子も市販されており、市販品を好ましく用いることができる。
【0017】
油溶性染料
本発明において使用可能な黒色油溶性染料および該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料とは、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、常温常圧の環境下で水以外の有機溶剤に対して良好に溶解することが挙げられ、水に実質的に不溶な染料でもよい。上記油溶性染料は、25℃での水への溶解度(水100gに溶解できる染料の重量)が1g以下であるものを用いることができる。また、上記油溶性染料の分子量としては、低分子量が挙げられ、例えば、分子量200以上1000以下、好ましくは、200以上800以下である。上記有機溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、ノルマルヘキサン、ノルマルブタノール、アセトン、シクロヘキサン、キシレン、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、ベンゼン、ジエチルエーテル等が上げられ、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0018】
本発明の着色粒子における全ての油溶性染料に対する黒色油溶性染料の割合は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、2.0〜60.0質量%とすることができ、好ましくは、5.0〜60.0質量%、より好ましくは、10.0〜50.0質量%、さらにより好ましくは15.0〜50.0質量%である。また、ラテックス粒子に対する全ての油溶性染料の割合は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、16.0質量%以上とすることができ、好ましくは、20.0質量%以上、より好ましくは、24.0質量%以上である。
【0019】
本発明における黒色とは、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、黒色、青味の黒色、黄味の黒色が挙げられ、厳密に真っ黒な色に限られず、おおよその色合いとして黒と視認される程度の色を含む(油溶性染料の濃度が3%の時)。
【0020】
黒色油溶性染料としては、例えば、アジン染料、アゾ染料、ジスアゾ染料、トリアゾ染料、テトラアゾ染料、含金属染料、アントラキノン染料等を挙げることができる。ここで、含金属染料としては、クロム、コバルト、ニッケル、銅、鉄等の金属が錯塩化されてなる金属錯塩染料が挙げられ、例えば、金属錯塩アゾ染料であってもよい。黒色油溶性染料として、好ましくは、ジスアゾ染料、アゾ染料、および含金属染料からなる群から選択される一種以上の染料であり、より好ましくは、ジスアゾ染料および金属錯塩アゾ染料から選択される一種以上の染料である。
黒色油溶性染料の具体例としては、スーダンブラックX60(BASF社製)、Nubian Black PC−0850、C.I.ソルベント・ブラック−3(ジスアゾ染料;化合物名:2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチル−6−[4−(フェニルアゾ)−1−ナフチルアゾ]−1H−ペリミジン、例えば、オリエントオイルブラックHBB、スーダンブラック B、Fat Black HBともいう)、−7、−22:1、−27(金属錯塩アゾ染料;例えば、VALIFAST BLACK 3820ともいう)、−29(金属錯塩アゾ染料;例えば、VALIFAST BLACK 3810ともいう)、−34、−50等のカラーインデックス名でのソルベント・ブラックが挙げられ、好ましくは、C.I.ソルベント・ブラック、より好ましくは、C.I.ソルベント・ブラック−3、−27、−29である。
【0021】
本発明における、黒色油溶性染料以外の油溶性染料は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、有彩色油性染料が挙げられる。
以下の具体例では、有彩色油性染料としての油性染料の色を青色、赤色、および黄色に大別して記載する。また中間色すなわち緑色や紫色についても上記分類のいずれかに含めて記載する。
【0022】
本発明における青色とは、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、厳密に真っ青な色に限られず、おおよその色合いとして青と視認される程度の色を含む(油溶性染料の濃度が3%の時)。
青色油溶性染料としては、例えばインドアニリン染料、インドフェノール染料、カップリング成分としてピロロトリアゾール類を有するアゾメチン染料、シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料等のポリメチン染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料、フタロシアニン染料、アントラキノン染料、カップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類を有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料、インジゴ・チオインジゴ染料等を挙げることができ、好ましくは、アントラキノン染料である。
青色油溶性染料の具体例としては、マクロレックスブルーRR、FR(バイエル社製)、スミプラストグリーンG(住友化学社製)、Vali Fast Blue 2606、Oil BlueBOS(オリエント化学(株)製)、Aizen Spilon Blue GNH(保土ヶ谷化学(株)製)、Neopen Blue 808、Neopen Blue FF4012、Neopen Cyan FF4238(BASF社製)、オイルバイオレット#730(オリエント化学社製)、C.I.ソルベント・ブルー−2、−11、−25、−35(アントラキノン染料;化合物名:1,4−ビス(ペンチルアミノ)アントラキノン、例えば、オイルブルー2Nともいう)、−38、−43、−67、−70、−134等のC.I.ソルベント・ブルー、C.I.ソルベント・グリーン−1、−3、−7、−20、−33等のソルベント・グリーン、C.I.ソルベント・バイオレット−2、−3、−11、−47等のソルベント・バイオレット等が挙げられ、好ましくは、C.I.ソルベント・ブルー、より好ましくは、C.I.ソルベント・ブルー−35である。
【0023】
本発明における赤色とは、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、厳密に真っ赤な色に限られず、おおよその色合いとして赤と視認される程度の色を含む(油溶性染料の濃度が3%の時)。
赤色油溶性染料としては、例えば、ジスアゾ染料、カップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類を有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料、カップリング成分としてピラゾロン類、ピラゾロトリアゾール類を有するアゾメチン染料、アリーリデン染料、スチリル染料、メロシアニン染料、オキソノール染料のようなメチン染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料、ナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドンなどのようなキノン系染料、ジオキサジン染料等のような縮合多環系染料等を挙げることができ、好ましくは、ジスアゾ染料である。
赤色油溶性染料の具体例としては、オイルレッド5303(有本化学社製)、オイルレッド5B、Oil Pink 312、Oil Scarlet 308(オリエント化学社製)、オイルレッドXO(カントー化学社製)、Neopen Mazenta SE1378(BASF社製)、オイルブラウンGR(オリエント化学社製)、C.I.ソルベント・レッド−1、−3、−8、−18、−24、−27(ジスアゾ染料;化合物名:1−(2,5−ジメチル−4−(2,5−ジメチルフェニルアゾ)フェニルアゾ)−2−ナフトール、例えば、オイルレッド5B、スーダンレッド 5Bともいう)、−43、−49、−51、−72、−73、−109、−111、−229、−122、−132、−219等のC.I.ソルベント・レッド、C.I.ソルベント・ブラウン−1、−12、−58等のC.I.ソルベント・ブラウン、ORASET RED BG(チバ・スペシャルティケミカル社製)等が挙げられ、好ましくは、C.I.ソルベント・レッド、より好ましくは、C.I.ソルベント・レッド−27である。
【0024】
本発明における黄色とは、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、厳密に真っ黄色な色に限られず、おおよその色合いとして黄色と視認される程度の色を含む。
黄色油溶性染料としては、例えば、カップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロン類、ピリドン類、開鎖型活性メチレン化合物類を有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料、カップリング成分として開鎖型活性メチレン化合物類を有するアゾメチン染料、ベンジリデン染料やモノメチンオキソノール染料等のようなメチン染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料等のようなキノン系染料、ジスアゾ染料、キノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料等を挙げることができる。
黄色油溶性染料の具体例としては、Oil Yellow 3G、Oil Yellow 129、Oil Yellow 105(オリエント化学社製)、ファーストオレンジG、Neopen Yellow 075(BASF社製)、ORASET YELLOW 3GN(チバ・スペシャルティケミカル社製)、C.I.ソルベント・イエロー−1、−14、−16、−19、−25:1、−29、−30、−56、−82、−93、−162、−172等のC.I.ソルベント・イエロー、C.I.ソルベント・オレンジ−1、−2、−40:1、−99等のC.I.ソルベント・オレンジ等が挙げられる。
【0025】
本発明の着色粒子において、黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料は、2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、黒色油溶性染料以外の油溶性染料として、青色と赤色との組み合わせ、青色と黄色との組み合わせ、赤色と黄色との組み合わせ、または、青色、赤色および黄色の組み合わせ等が挙げられる。
【0026】
標的物質に特異的に結合する結合部位を担持している着色粒子
本発明の別の態様によれば、上記着色粒子は、標的物質に特異的に結合する結合部位を担持している着色粒子であってよい。ここで、着色粒子を標識物質として用いる場合には、上記結合部位は着色粒子により標識化されるともいう。
【0027】
上記結合部位としては、抗体、その抗原結合性断片または抗原等が挙げられ、好ましくは、抗体、その抗原結合性断片または抗原である。上記結合部位が抗体である場合には、該抗体は免疫測定しようとする標的物質と抗原抗体反応する抗体であり、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。ここで、抗体に代え、または抗体と共に、該抗体の抗原結合性断片を上記結合部位として用いてもよい。抗原結合性断片は、例えば、抗体のFabまたはF(ab')2断片等のように、対応抗原と抗原抗体反応可能な断片である。これらの抗原結合性断片は、周知の通り、抗体をパパインやペプシンのようなタンパク質分解酵素で処理することにより得られてもよい。また、上記結合部位が抗原である場合には、標的物質としては抗体が挙げられる。また、上記結合部位として、遺伝子工学的に生産した抗体、その抗原結合性断片または抗原を用いることもできる。
【0028】
標的物質としては、何ら限定されるものではなく、各種病原体、各種臨床マーカー等、抗体または抗原と抗原抗体反応することが可能ないかなる物質であってもよい。具体例として、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、HAV、HBs、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトT細胞向性ウイルス1型(HTLV−1)、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、ノーウオーク様ウイルス等のウイルス抗原およびそれらに対する抗体、MRSA、A群溶連菌、B群溶連菌、レジオネラ属菌、結核菌、大腸菌O-157等の細菌抗原およびそれに対する抗体、細菌等が産生する毒素、マイコプラズマ、クラミジア・トラコマティス、ヒト絨毛性ゴナドトロピン等のホルモン、癌胎児性抗原(CEA)、C反応性タンパク質(CRP)、PSA、CYFRA、ProGRP、梅毒トレポネーマ(TP)抗体、CA19−9、CA125、CA15−3、トロポニン、α1−アンチトリプシン、α1−ミクログロブリン、β2−ミクログロブリン、TPAb、TgAb、TPOAb、TRAb、ハプトグロブリン、トランスフェリン、セルロプラスミン、フェリチン、アルブミン、ヘモグロビンA1、ヘモグロビンA1C、ミオグロビン、ミオシン、デュパン−2、α−フェトプロテイン(AFP)、組織ポリペプチド抗原(TPA)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、アポリポタンパクA1、アポリポタンパクE、リウマチ因子、抗ストレプトリジンO(ASO)、アンチトロンビンIII(AT−III)、プラスミン・α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)、トロンビン・アンチトロンビンIII複合体(TAT)、トロンボモジュリン(TM)、組織プラスミノゲンアクチベーター・プラスミノゲンアクチベーターインヒビターI複合体(tPAI・C)、甲状腺ホルモン(サイロキシン(T3)、遊離サイロキシン(FT3)、トリオードサイロニン(T4)、遊離トリオードサイロニン(FT4))、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、インスリン、SP−A、HCG、プロラクチン(PRL)、E2、プロゲステロン、各種腫瘍マーカー、農薬、環境ホルモン等が挙げられる。
【0029】
着色粒子含有液の透過率スペクトル
本発明の着色粒子含有液の透過率スペクトルは、後述のように、試験例8の方法にしたがい、分光光度計を用いて測定される。上記測定方法により得られた500nm以上600nm以下における透過率スペクトルにおいて、透過率のピーク(透過率が最大となる波長)を示すことが好ましい。黒色油溶性染料および該黒色以外の一種の油溶性染料を含む着色粒子である場合には、かかるピークが530nm以上550nm以下の範囲に存在することが好ましく、より好ましくは、530nm超過550nm以下、さらに好ましくは、532nm以上550nm以下、さらにより好ましくは、534nm以上550nm以下である。
上述の、黒色以外の一種の油溶性染料は、好ましくは、青色油溶性染料である。
また、着色粒子含有液は、検出キットからコンジュゲートパッド0.4cm×0.8cmを取り出し、純水200 μLに浸潤させ、80℃で10分間の湯浴をした後、14000×gで5分間遠心分離し、完全に上澄みを捨て、純水200 μLで懸濁して得ることができる。
【0030】
免疫測定用組成物
また、本発明によれば、上記着色粒子と免疫測定に許容される成分とを含んでなる組成物が提供される。かかる組成物は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、上記着色粒子と共に、糖、アルブミン等の添加剤、緩衝液、界面活性剤、抗菌剤、防腐剤、タンパク質類を含んでもよい。また、上記組成物はコンジュゲートパッド中に存在してもよく、またはテストプレートや抽出液中に存在してもよい。
【0031】
また、上記組成物は、標的物質検出の点から、2種以上の本発明の着色粒子を含んでもよい。また、上記2種以上の本発明の着色粒子は混合物として存在してもよい。ここで、各着色粒子における黒色油溶性染料以外の油溶性染料の色は異なることが好ましい。上記着色粒子の組み合わせとしては、例えば、青色油溶性染料および黒色油溶性染料を含む着色粒子と赤色油溶性染料および黒色油溶性染料を含む着色粒子との組み合わせ等が挙げられる。2種以上の着色粒子の組み合わせとすることは、例えば、同時に異なる標的物質を検出する点で有利である。
【0032】
また、本発明の別の態様によれば、標的物質検出の点から、上記組成物に、本発明の着色粒子と共に、黒色油溶性染料を含まず黒色以外の油溶性染料を含む着色粒子を組み合わせて用いてもよい。また、上記着色粒子の組み合わせは混合物として存在してもよい。ここで、上記の各着色粒子における黒色以外の油溶性染料の色は異なることが好ましい。上記着色粒子の組み合わせとしては、例えば、青色油溶性染料および黒色油溶性染料を含む着色粒子と赤色油溶性染料を含む着色粒子との組み合わせ等が挙げられる。2種以上の着色粒子の組み合わせとすることは、例えば、同時に異なる標的物質を検出する点で有利である。
【0033】
キット
本発明は、別の態様において、上記で説明した本発明の着色粒子を用いて標的物質を検出するためのキットに関するものである。本発明のキットは、標的物質に特異的に結合する結合部位を担持している着色粒子を必須構成要素として含むことが好ましい。本発明のキットは、好ましくは、イムノクロマトグラフィー用キットである。
本発明の好ましい態様によれば、本発明のキットは診断キットである。上記診断キットは、標的物質を検出することにより、該標的物質の感染、罹患、または該標的物質に関連する疾患について診断することができる。本発明のキットは、例えば、イムノクロマトグラフィー用のパーツ、または試料処理のための試薬等を含んでいてもよい。
イムノクロマトグラフィー用のパーツとしては、例えば、標的物質が抗原である場合、該抗原に特異的に結合する抗体を担持している着色粒子を含むコンジュゲートパッド、上記抗体と抗原が同一である抗体が固相化されたメンブレン、吸収パッド等を含んでなるイムノクロマトグラフィー装置、フィルターチップ、検体採取用具、抽出液、スクイズチューブ、色見本等が挙げられる。構成要素は、これらのものには限定されず、当業者に公知である。また、本発明のキットはハイスループット検査用であってもよい。通常、キットには取扱説明書が添付される。
【0034】
着色粒子の製造方法
本発明の着色粒子の製造方法は、黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料、およびラテックス粒子を配合することを含んでなる。上記製造方法において、全ての油溶性染料に対する上記黒色油溶性染料の配合割合は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、2.0〜60.0質量%とすることができ、好ましくは、5.0〜60.0質量%、より好ましくは、10.0〜50.0質量%、さらにより好ましくは、15.0〜50.0質量%である。さらに、上記製造方法において、ラテックス粒子に対する全ての油溶性染料の配合割合は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、16.0質量%以上とすることができ、好ましくは、20.0質量%以上、より好ましくは、24.0質量%以上である。
また、本発明は、黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料、およびラテックス粒子が配合されてなる着色粒子を含んでなる。上記着色粒子における、全ての油溶性染料に対する上記黒色油溶性染料の配合割合は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、2.0〜60.0質量%であることが挙げられ、好ましくは、5.0〜60.0質量%、より好ましくは、10.0〜50.0質量%、さらにより好ましくは、15.0〜50.0質量%である。さらに、上記粒子において、ラテックス粒子に対する全ての油溶性染料の配合割合は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、16.0質量%以上であることが挙げられ、好ましくは、20.0質量%以上、より好ましくは、24.0質量%以上である。
また、本発明は、ラテックス粒子に黒色油溶性染料および該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料を配合することにより得られる着色粒子を含んでなる。ここで、それら配合割合は、上記着色粒子の製造方法と同様である。
また、本発明は、黒色油溶性染料および該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料を含有するラテックス粒子からなる着色粒子を含んでなる。ここで、それら配合割合は、上記着色粒子の製造方法と同様である。
【0035】
本発明の製造方法において、配合の手法は特に限定されないが、例えば、ラテックス粒子および各染料を混合する等の公知の手法を用いてもよく、より具体的には、後述する実施例1の方法に準じて製造することができる。
【0036】
また、本発明の着色粒子が、標的物質に特異的に結合する結合部位を担持している着色粒子である場合、上記結合部位の着色粒子への担持は、周知の方法により行うことができ、例えば、物理吸着または共有結合により担持することができる。さらに、上記担持は、直接的であってもよく、リンカー等を用いることにより間接的であってもよい。上記の通り、例えばカルボキシル基を表面に有する着色粒子におけるカルボキシル基を抗体又はその抗原結合性断片のアミノ基と結合させることにより、抗体またはその抗原結合性断片を共有結合により着色粒子に結合することができる。
【0037】
免疫測定法
本発明の免疫測定法は、本発明の着色粒子を用いる免疫測定であれば、特に制限されない。本発明の免疫測定法として、例えば、凝集法による免疫測定の場合には、標的物質を含む検体を検体浮遊/抽出用緩衝液に浮遊/抽出させた検体試料と上記結合部位を担持している着色粒子とを混合し、反応させ、それによって生じる着色粒子の凝集の程度を、肉眼的に観察して検出、測定、あるいは専用の分析機器を用いて測光することによって測定する。より具体的な測定法としては平板を用いて行うスライド法、マイクロプレートを用いて行うプレート法、専用分析機器を用いて行う自動分析法等が挙げられる。また、本発明の上記結合部位を担持している着色粒子は、フロースルー免疫測定、イムノクロマトグラフィー等において、標識化された上記結合部位として用いることができ、特にイムノクロマトグラフィーにおいて好適に用いることができる。
【0038】
イムノクロマトグラフィー
本発明のイムノクロマトグラフィーは、本発明の着色粒子を用いるイムノクロマトグラフィーであれば、特に制限されない。本発明の着色粒子を標識物質として用いるイムノクロマトグラフィーとしては、例えば、標的物質が抗原である場合、検体がメンブレン上を移動する際、検体中の抗原、該抗原に特異的に結合する抗体を担持している着色粒子、および該抗原に特異的に結合するメンブレンの固相化された抗体の三者のサンドイッチ法により免疫複合体が形成され、その着色粒子の集積を検出または定量することができる。
また、イムノクロマトグラフィーにおけるバックグラウンドの消失の確認は目視により行う。具体的には、試験例1の方法にしたがい、その消失を確認できる。なお、バックグラウンドは、イムノクロマトグラフィー装置における判定部において、テストラインまたはコントロールライン等の検出ライン以外のメンブレンに存在するコンジュゲートの残留等により生じるものである。なお、上記「コンジュゲート」としては、上記抗体を担持している着色粒子と該抗体が特異的に結合する抗原とのコンジュゲート、または上記抗体を担持している着色粒子と該抗体が特異的に結合する抗原以外の非特異的物質とのコンジュゲートのみならず、未反応の上記抗体を担持している着色粒子またはそれら組み合わせも包含する。
さらに、迅速なバックグラウンド消失とは、着色粒子において、油溶性染料として黒色油溶性染料以外の油溶性染料と共に黒色油溶性染料を含む場合のバックグラウンドの消失時間が、黒色油溶性染料を含まない場合のバックグラウンドの消失時間に比して、例えば、0.4分、好ましくは、0.6分、より好ましくは0.9分早まることをいう。
【0039】
また、本発明の別の態様によれば、イムノクロマトグラフィーにおける視認性を向上するための、黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料、およびラテックス粒子を含んでなる着色粒子を含んでなる組成物が提供される。本発明の組成物の好ましい一つの態様によれば、イムノクロマトグラフィーにおいて、迅速にバックグラウンドを消失するための、黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料、およびラテックス粒子を含んでなる着色粒子を含んでなる組成物が提供される。本発明の組成物の好ましい別の一つの態様によれば、検出感度を向上するための、黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料およびラテックス粒子を含んでなる着色粒子を含んでなる組成物が提供される。本発明の組成物の好ましい別の一つの態様によれば、非特異反応を低減させるための、黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料、およびラテックス粒子を含んでなる着色粒子を含んでなる組成物が提供される。本発明の組成物の好ましい別の一つの態様によれば、標的物質検出の判定時間を短くするための、黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料、およびラテックス粒子を含んでなる着色粒子を含んでなる組成物が提供される。上記組成物は、免疫測定用組成物であってよい。
【0040】
また、本発明の別の態様によれば、イムノクロマトグラフィーにおける視認性を向上する方法であって、黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料、およびラテックス粒子を含んでなる着色粒子を用いることを含んでなる方法が提供される。本発明の方法の好ましい一つの態様によれば、イムノクロマトグラフィーにおいて、迅速にバックグラウンドを消失する方法であって、黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料、およびラテックス粒子を含んでなる着色粒子を用いることを含んでなる方法が提供される。本発明の方法の好ましい別の一つの態様によれば、検出感度を向上する方法であって、黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料およびラテックス粒子を含んでなる着色粒子を用いることを含んでなる方法が提供される。本発明の方法の好ましい別の一つの態様によれば、非特異反応を低減させる方法であって、黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料、およびラテックス粒子を含んでなる着色粒子を用いることを含んでなる方法が提供される。本発明の方法の好ましい別の一つの態様によれば、標的物質検出の判定時間を短くする方法であって、黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料、およびラテックス粒子を含んでなる着色粒子を用いることを含んでなる方法が提供される。
【0041】
また、本発明の別の態様によれば、イムノクロマトグラフィーにおける視認性を向上するための、黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料、およびラテックス粒子を含んでなる着色粒子の使用が提供される。本発明の使用の好ましい一つの態様によれば、イムノクロマトグラフィーにおいて、迅速にバックグラウンドを消失するための、黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料、およびラテックス粒子を含んでなる着色粒子の使用が提供される。本発明の使用の好ましい別の一つの態様によれば、検出感度を向上するための、黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料、およびラテックス粒子を含んでなる着色粒子の使用が提供される。本発明の使用の好ましい別の一つの態様によれば、非特異反応を低減させるための、黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料、およびラテックス粒子を含んでなる着色粒子の使用が提供される。本発明の使用の好ましい別の一つの態様によれば、標的物質検出の判定時間を短くするための、黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料、およびラテックス粒子を含んでなる着色粒子の使用が提供される。
【0042】
上記の組成物、方法、使用の態様はいずれも、本発明の着色粒子、その製造方法、免疫測定法、および免疫測定用組成物に関する記載に準じて実施することができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
実施例1:検討に用いた着色粒子(粒子番号1〜43)の作製
表1〜3に記載されているように、青色油溶性染料(ソルベント・ブルー−35) (以下、青染料ともいう)、赤色油溶性染料(ソルベント・レッド−27) (以下、赤染料ともいう)、黒色油溶性染料(ソルベント・ブラック−3) (以下、黒染料ともいう)またはそれらの組み合わせをメタノール100gに溶解させ、染料溶液を得た。
市販の白色カルボキシルラテックス粒子(ポリスチレン、粒径400nm、Thermo Fisher Scientific社)の水懸濁液をその乾燥重量が1gとなるように秤量し、遠心分離機により沈降させた。沈降させたラテックス粒子を染料溶液により超音波処理で再分散させてメタノールへと溶媒置換した。45℃で加温・攪拌し、24時間後に再び水へと溶媒置換し着色粒子を得た。
【0045】
【表1】
【表2】
【表3】
【0046】
実施例2:キットの作製(インフルエンザウイルス検出キット)
実施例2−1:標的物質に特異的に結合する結合部位を担持している着色粒子
(着色粒子標識抗インフルエンザウイルスA型抗体、着色粒子標識抗インフルエンザウイルスB型抗体)の作製
実施例1で得られた着色粒子の10%水分散液 30μLと50mM MES緩衝液(pH6.0) 270μLを混合し、次にEDC(水溶性カルボジイミド)を最終濃度1% になるように添加し室温で3時間活性化した。その後、遠心分離し、洗浄した後、1mg/mLに濃度調整した抗インフルエンザウイルスA型抗体100μLを添加し、室温で一晩反応させた。次に遠心分離し、洗浄した後、10%BSA/PBS溶液でブロッキングした。次に遠心分離し、10% スクロース、1% BSAを含むPBS溶液 5000μL中に懸濁した後、超音波分散装置にかけ、着色粒子分散液を得た。
その後、網の上に並べたコンジュゲートパッド(メルクミリポア社)に着色粒子分散液を45μL/cmの割合で塗布し、均一に塗り広げた後、オーブンで一晩乾燥し、コンジュゲートパッド(着色粒子標識抗インフルエンザウイルスA型抗体)を得た。
着色粒子標識抗インフルエンザウイルスB型抗体に関しては、抗体として抗インフルエンザウイルスB型抗体を用いる以外は、着色粒子標識抗インフルエンザウイルスA型抗体と同様に作製した。
【0047】
実施例2−2:抗インフルエンザA型抗体固相化メンブレン(A型抗体のみ) 、抗インフルエンザB型抗体固相化メンブレン(B型抗体のみ)の作製
ニトロセルロースメンブレン(メルクミリポア社)に、リン酸緩衝液で1.0mg/mLに濃度調整した上記の着色粒子標識抗インフルエンザA型抗体とはエピトープが異なる抗インフルエンザウイルスA型抗体、およびリン酸緩衝液で1.0mg/mLに調整したヤギ抗マウスIgG抗体を幅1mmのライン状に塗布した。塗布は、イムノクロマトグラフィー用ディスペンサー XYZ3050(バイオドット社)を用い、1μL/cmとなるように設定した。ライン塗布後のニトロセルロースメンブレンを30℃で一晩乾燥した。ニトロセルロースメンブレン上の抗インフルエンザウイルスA型抗体を塗布したラインをAライン、ヤギ抗マウスIgG抗体を塗布したラインをコントロールラインとした。
抗体を塗布したメンブレンを10% スキムミルクを含むPBS溶液で60分間ブロッキングし、オーブンで一晩乾燥し、抗インフルエンザA型抗体固相化メンブレンを得た。
抗インフルエンザB型抗体固相化メンブレンに関しては、抗体として着色粒子標識抗インフルエンザB型抗体とはエピトープが異なる抗インフルエンザウイルスB型抗体を用いる以外は、抗インフルエンザA型抗体固相化メンブレンと同様に作製した。
【0048】
実施例2−3:イムノクロマトグラフィー装置(テストプレート)の作製
実施例2−2に次いで、支持材となるバッキングシート(Adhesives Research,Inc)に対して、作製したメンブレンを貼り合わせた後、同じく作製したコンジュゲートパッドをメンブレンと数ミリ重なり合うように貼り合わせた。さらに、展開方向の上流側には、サンプルパッドとして、コンジュゲートパッドに数ミリ重なるようにしてグラスファイバー(メルクミリポア社)を貼り合わせた。そして、メンブレンの下流側には、過剰な試薬を受け止めるための吸収パッド(メルクミリポア社)をメンブレンと数ミリ重なるように配置した後、4mm幅に裁断してテストストリップを作製した。作製されたテストストリップをハウジングに収納しテストプレートを作製した。
【0049】
試験例1:青・黒色着色粒子、インフルエンザウイルスA型検出
粒子量1g当たりの染料量(mg)を280mgにした粒子番号11〜20の着色粒子を用いて作製したインフルエンザウイルスA型検出キットについて、以下の事項に関して試験を行った。
(1)ライン色調
(2)最小検出感度
(3)反応開始後5分時点の判定部の視認性(バックグラウンド消失の程度)
(4)非特異反応の有無
(1)に関しては、粒子番号11〜20の着色粒子を用いて作製したインフルエンザウイルスA型検出キットについて、Aラインの色調を色見本により調べた。色見本として「2015年H版 塗料用標準色(ポケット版)、一般社団法人 日本塗料工業会」を用いた。抗原としてA/Hiroshima/52/2005(H3N2)を使用し、濃度が500 U/mLとなるように抗原を抽出液(150mM リン酸緩衝液、 0.5% Triton X-100、 0.1% BSA、 0.09% アジ化ナトリウム)に添加し混合した後、テストプレートの検体滴下部に50μL滴下し反応させた。測定開始後5分時点のAラインの色調に最も近いものを色見本から選び出した。
(2)に関しては、粒子番号11〜20の着色粒子を用いて作製したインフルエンザウイルスA型検出キットの最小検出感度の比較を実施した。抗原としてA/Hiroshima/52/2005(H3N2)を使用し、下記表の濃度となるように抗原を抽出液(150mM リン酸緩衝液、 0.5% Triton X-100、 0.1% BSA、 0.09% アジ化ナトリウム)に添加し、混合した後、テストプレートの検体滴下部に50μL滴下し反応させた。測定開始後5分でAラインの有無を目視により判定した。
なお、判定基準は下記である。
−:ラインなし(陰性)
±:ごくかすかなラインあり
+:ラインあり(陽性)
(3)に関しては、粒子番号11〜20の着色粒子を用いて作製したインフルエンザウイルスA型検出キットについて、反応開始後5分時点の判定部の視認性(バックグラウンド消失の程度)を比較した。テストプレートの検体滴下部に抽出液(150mM リン酸緩衝液、 0.5% Triton X-100、 0.1% BSA、 0.09% アジ化ナトリウム)50μL滴下し、測定開始後5分時点でのバックグラウンドの程度を調べた(N=5)。バックグラウンドの測定は、健常な視力を有する者(視力0.3以上)が、照度300〜2000ルクスの光の下、判定部と目との距離を垂直方向で20cm離して行った(目視の方法に関しては、以下の試験でも同様である)。
また、バックグラウンドが消失するまでに要する時間を調べた(N=5)。バックグラウンドの消失の確認は目視によって行った。
なお、視認性の評価基準は下記である。
○:バックグラウンドなし(メンブレン上にコンジュゲートの残りがない)
△:バックグラウンドが少し残る(メンブレン上にコンジュゲートが少し残る)
×:バックグラウンドが強く残る(メンブレン上にコンジュゲートが強く残る)
(4)に関しては、粒子番号11〜20の着色粒子を用いて作製したインフルエンザウイルスA型検出キットについて、臨床検体を用いて非特異反応の有無について調べた。試料としてウイルス分離培養陰性症例の鼻腔吸引液を用いた。綿棒で鼻腔吸引液の検体を採取し、抽出液(150mM リン酸緩衝液、 0.5% Triton X-100、 0.1% BSA、 0.09% アジ化ナトリウム)で抽出した後、テストプレートの検体滴下部に50μL滴下し、測定開始後10分時点での非特異反応の有無を調べた。
なお、非特異反応基準は下記である。
−:非特異反応なし
±:ごくわずかなラインあり
+:非特異反応あり
【0050】
【表4】
【0051】
結果
(1)ライン色調
粒子番号11〜19の青色着色粒子を用いて作製したインフルエンザウイルスA型検出キットのAラインの色調は、いずれも青系統色であり、青色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含んでも青色の色調が維持されることがわかった。
(2)最小検出感度
粒子番号11と粒子番号12〜19を比較すると、青色油溶性染料単独の青色着色粒子(粒子番号11)よりも青色油溶性染料と共に黒色油溶性染料を含む青色着色粒子(粒子番号12〜19)の方が明らかに高い検出感度を示した。
(3)反応開始後5分時点の判定部の視認性(バックグラウンド消失の程度)
測定開始後5分時点で粒子番号11〜19は全てメンブレン上にコンジュゲートが残ることなくバックグラウンドが消失していた。また、青色油溶性染料のみの青色着色粒子(粒子番号11)と比較して、青色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む青色着色粒子(粒子番号12〜18)はバックグラウンドの消失が明らかに早かった。一方で、黒色油溶性染料のみの着色粒子(粒子番号20)は、青色油溶性染料のみの青色着色粒子(粒子番号11)と比較してもバックグラウンドの消失が遅く、5分経過時点でメンブレン上にコンジュゲートが少し残っていた。
(4)非特異反応の有無
青色油溶性染料単独の青色着色粒子を使用したキットではごくかすかな非特異反応が散見されたのに対して、青色油溶性染料と共に黒色油溶性染料を含む青色着色粒子を使用したキット(粒子番号12〜19)および黒色油溶性染料のみを使用したキット(粒子番号20)では非特異反応は認められなかった。
【0052】
試験例2:赤・黒色着色粒子、インフルエンザウイルスB型検出
粒子量1g当たりの染料量(mg)を280mgにした粒子番号29〜36の着色粒子を用いて作製したインフルエンザウイルスB型検出キットについて、以下の事項に関して試験を行った。
(1)ライン色調
(2)最小検出感度
(3)反応開始後5分時点の判定部の視認性(バックグラウンド消失の程度)
(4)非特異反応の有無
試験方法は、測定するラインとしてBライン、抗原としてB/Shanghai/361/2002を使用する以外は試験例1と同様である。
【0053】
【表5】
【0054】
結果
(1)ライン色調
粒子番号29〜35の赤色着色粒子を用いて作製したインフルエンザウイルスB型検出キットのBラインの色調は、いずれも赤系統色であり、赤色油溶性染料と共に黒色油溶性染料を含んでも赤色の色調が維持されることがわかった。
一方で、黒色油溶性染料/全油溶性染料が57.1%の赤色着色粒子(粒子番号36)を用いて作製したインフルエンザウイルスB型検出キットのBラインの色調は、色見本上は赤系統色であったが、赤色としての認識は困難であった。
(2)最小検出感度
粒子番号29と粒子番号30〜36を比較すると、赤色油溶性染料単独の赤色着色粒子(粒子番号29)よりも赤色油溶性染料と共に黒色油溶性染料を含む赤色着色粒子(粒子番号30〜36)の方が明らかに高い検出感度を示した。
(3)反応開始後5分時点の判定部の視認性(バックグラウンド消失の程度)
測定開始後5分時点で粒子番号30〜36は全てメンブレン上にコンジュゲートが残ることなくバックグラウンドが消失していた。また、赤色油溶性染料のみの赤色着色粒子(粒子番号29)と比較して、赤色油溶性染料と共に黒色油溶性染料を含む赤色着色粒子(粒子番号30〜36)はバックグラウンドの消失が明らかに早かった。
(4)非特異反応の有無
赤色油溶性染料単独の赤色着色粒子(粒子番号29)を使用したキットでは非特異反応が散見されたのに対して、赤色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む赤色着色粒子(粒子番号30〜36)を使用したキットでは非特異反応は認められなかった。
【0055】
試験例3:青・黒色着色粒子、インフルエンザウイルスA型検出
粒子番号1〜11、15、21、22の着色粒子を用いて作製したインフルエンザウイルスA型検出キットについて、以下の事項に関して試験を行った。
(1)ライン色調
(2)最小検出感度
(3)反応開始後5分時点の判定部の視認性(バックグラウンド消失の程度)
(4)臨床検体を用いた非特異反応の有無
なお、試験方法は試験例1と同様である。
【0056】
【表6】
【0057】
結果
(1)ライン色調
試験例1と同様の結果であった。
(2)最小検出感度
染料量が同一の場合(粒子番号1と2、3と4、5と6、7と8、9と10、11と15、21と22)、青色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む青色着色粒子を使用したキットの方が青色油溶性染料単独の青色着色粒子を使用したキットよりも検出感度が明らかに高くなった。
(3)反応開始後5分時点の判定部の視認性(バックグラウンド消失の程度)
試験例1と同様、測定開始後5分時点で粒子番号1〜11、15、21、22の粒子は全てメンブレン上にコンジュゲートが残ることなくバックグラウンドが消失していた。一方で、バックグラウンドが消失するまでに要する時間は、青色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む青色着色粒子を使用したキットの方が青色油溶性染料単独の青色着色粒子を使用したキットよりも明らかに早い結果となった。
(4)非特異反応の有無
試験例1と同様の結果であった。
【0058】
試験例4:赤・黒色着色粒子、インフルエンザウイルスB型検出
粒子番号23、25〜29、32、37〜40の着色粒子を用いて作製したインフルエンザウイルスB型検出キットについて、以下の事項に関して試験を行った。
(1)ライン色調
(2)最小検出感度
(3)反応開始後5分時点の判定部の視認性(バックグラウンド消失の程度)
(4)臨床検体を用いた非特異反応の有無
なお、試験方法は試験例2と同様である。
【0059】
【表7】
【0060】
結果
(1)ライン色調
試験例2と同様、粒子番号23、25〜29、32、37〜40の赤色着色粒子を用いて作製したインフルエンザウイルスB型検出キットのBラインの色調は、いずれも赤系統色であり、赤色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含んでも赤色の色調が維持されることがわかった。
(2)最小検出感度
染料量が同一の場合(粒子番号25と26、27と28、29と32、37と38、39と40)、赤色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む赤色着色粒子を使用したキットの方が赤色油溶性染料単独の赤色着色粒子を使用したキットよりも検出感度が明らかに高くなった。
(3)反応開始後5分時点の判定部の視認性(バックグラウンド消失の程度)
粒子番号26、28、32、38、40の赤色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む赤色着色粒子を用いたキットでは測定開始後5分時点で全てメンブレン上にコンジュゲートが残ることなくバックグラウンドが消失していた。一方で、赤色油溶性染料単独の赤色着色粒子を用いたキットでは粒子番号29、37、39で反応開始後5分時点でもメンブレン上にコンジュゲートが残っており、視認性において著しく劣っていた。
また、バックグラウンドが消失するまでに要する時間についても、赤色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む赤色着色粒子を使用したキットの方が赤色油溶性染料単独の赤色着色粒子を使用したキットよりも明らかに早い結果となった。
(4)非特異反応の有無
試験例2と同様の結果であった。
【0061】
試験例5:青・赤・黒色着色粒子、インフルエンザウイルスA・B型検出
粒子番号9、10、23、24、41〜43の着色粒子を用いて作製したインフルエンザウイルスA型及びB型検出キットについて、以下の事項に関して試験を行った。
(1)ライン色調
(2)最小検出感度
(3)反応開始後5分時点の判定部の視認性(バックグラウンド消失の程度)
(4)非特異反応の有無
なお、試験方法は試験例1または2と同様である。
【0062】
【表8】
【表9】
【0063】
結果
インフルエンザウイルスA型キットの結果を表8に、インフルエンザウイルスB型検出キットの結果を表9に示す。
(1)ライン色調
Aライン及びBラインの色調は粒子番号9と10は青系統色、23と24は赤系統色、42と43は紫系統色であり、それぞれ黒色油溶性染料を含んでも元の色調が維持されていた。
(2)最小検出感度
インフルエンザウイルスA型及びB型検出キットについて、染料量が同一の場合(粒子番号9と10、23と24、42と43)、黒色油溶性染料を含む各着色粒子を使用したキットの方が各色の油溶性染料単独の着色粒子を使用したキットよりも検出感度が明らかに高くなった。
また、粒子番号42と43の実験結果は、青色油溶性染料とともに赤色油溶性染料を含む紫色着色粒子と、青色油溶性染料、赤色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む紫色着色粒子との感度差を見ており、黒色油溶性染料を含むことによりこれまでと同様の増感効果が認められた。
また、インフルエンザウイルスA型検出キットについて、黒色油溶性染料単独の黒色粒子(粒子番号41)を用いたキットと、青色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む青色着色粒子(粒子番号10)および赤色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む赤色着色粒子(粒子番号24)、青色油溶性染料、赤色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む紫色着色粒子(粒子番号43)では検出感度に差は認められなかった。
また、インフルエンザウイルスB型検出キットについて、粒子番号41の黒色油溶性染料単独の黒色着色粒子を用いたキットと、青色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む青色着色粒子(粒子番号10)および青色油溶性染料、赤色油溶性染料および黒色油溶性染料を含む紫色着色粒子(粒子番号43)では検出感度に差は認められなかった。
(3)反応開始後5分時点の判定部の視認性(バックグラウンド消失の程度)
粒子番号41以外の各着色粒子を用いたキットは測定開始後5分時点でメンブレン上にコンジュゲートが残ることなくバックグラウンドが消失していた。一方で、粒子番号41の黒色油溶性染料単独の黒色着色粒子を用いたキットは反応開始後5分時点でもメンブレン上にコンジュゲートが残っており、視認性において他よりも劣っていた。
また、バックグラウンドが消失するまでに要する時間は、各色の油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む着色粒子を使用したキットの方が各色の油溶性染料単独の着色粒子を使用したキットよりも明らかに早い結果となった。
(4)非特異反応の有無
青色油溶性染料単独の青色着色粒子、赤色油溶性染料単独の赤色着色粒子、青色油溶性染料とともに赤色油溶性染料を含む紫色着色粒子を使用したキットではごくかすかな非特異反応が散見されたのに対して、青色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む青色着色粒子、赤色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む赤色着色粒子、黒色油溶性染料単独の黒色着色粒子、赤色油溶性染料と青色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む紫色着色粒子を使用したキットでは非特異反応は認められなかった。
【0064】
実施例3:検討に用いた着色粒子(粒子番号44〜49)の作製
粒子番号44、45、48
黒色油溶性染料として、ソルベント・ブラック−29を用いること以外は、実施例1と同様の方法で行った。
粒子番号46、47、49
黒色油溶性染料として、ソルベント・ブラック−27を用いること以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0065】
【表10】
【0066】
【表11】
【0067】
試験例6:青・黒色着色粒子、インフルエンザウイルスA型検出
粒子番号11、44、46の青色着色粒子および粒子番号45、47の黒色着色粒子を用いて作製したインフルエンザウイルスA型検出キットについて、以下の事項に関して試験を行った。
(1)ライン色調
(2)最小検出感度
(3)反応開始後5分時点の判定部の視認性(バックグラウンド消失の程度)
(4)非特異反応の有無
なお、試験方法は試験例1と同様である。
【0068】
【表12】
【0069】
結果
(1)ライン色調
試験例1と同様、粒子番号11、44、46の青色着色粒子を用いて作製したインフルエンザウイルスA型検出キットのAライン色調は、いずれも青系統色であり、青色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含んでも青色の色調が維持されることがわかった。
(2)最小検出感度
試験例1と同様、粒子番号11と粒子番号44、46の着色粒子を比較すると、青色油溶性染料単独の青色着色粒子(粒子番号11)よりも青色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含んだ青色着色粒子(粒子番号44、46)の方が明らかに高い検出感度を示した。
また、黒色油溶性染料のみの黒色着色粒子(粒子番号45、47)は、青色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む青色着色粒子(粒子番号44、46)と比較してメンブレン上のバックグラウンドの残りが強かったため、ラインが見づらく検出感度が一段劣る結果となった。
(3)反応開始後5分時点の判定部の視認性(バックグラウンド消失の程度)
試験例1と同様、測定開始後5分時点で粒子番号11、44、46の着色粒子は全てメンブレン上にコンジュゲートが残ることなくバックグラウンドが消失していた。また、青色油溶性染料のみの青色着色粒子(粒子番号11)と比較して、青色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む着色粒子(粒子番号44、46)はバックグラウンドの消失が明らかに早かった。一方で、黒色油溶性染料のみの黒色着色粒子(粒子番号45、47)は、青色油溶性染料のみの青色着色粒子(粒子番号11)および青色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む青色着色粒子(粒子番号44、46)と比較してバックグラウンドの消失が遅く、5分経過時点でメンブレン上にコンジュゲートが少し残っていた。
(4)非特異反応の有無
試験例1と同様の結果であった。
【0070】
試験例7:赤・黒色着色粒子、インフルエンザウイルスB型検出
粒子番号29、48、49の赤色着色粒子および粒子番号45、47の黒色着色粒子を用いて作製したインフルエンザウイルスB型検出キットについて、以下の事項に関して試験を行った。
(1)ライン色調
(2)最小検出感度
(3)反応開始後5分時点の判定部の視認性(バックグラウンド消失の程度)
(4)非特異反応の有無
なお、試験方法は試験例2と同様である。
【0071】
【表13】
【0072】
結果
(1)ライン色調
試験例2と同様、粒子番号29、48、49の赤色着色粒子を用いて作製したインフルエンザウイルスB型検出キットのBラインの色調は、いずれも赤系統色であり、赤色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含んでも赤色の色調が維持されることがわかった。
(2)最小検出感度
試験例2と同様、粒子番号29と粒子番号48、49の着色粒子を比較すると、赤色油溶性染料単独の赤色着色粒子(粒子番号29)よりも赤色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む赤色着色粒子(粒子番号48、49)の方が明らかに高い検出感度を示した。
また、黒色油溶性染料のみの黒色着色粒子(粒子番号45、47)は、赤色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む赤色着色粒子(粒子番号48、49)と比較してメンブレン上のバックグラウンドの残りが強かったため、ラインが見づらく検出感度が一段劣る結果となった。
(3)反応開始後5分時点の判定部の視認性(バックグラウンド消失の程度)
試験例2と同様、測定開始後5分時点で粒子番号48、49は全てメンブレン上にコンジュゲートが残ることなくバックグラウンドが消失していた。また、赤色油溶性染料のみの赤色着色粒子(粒子番号29)と比較して、赤色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む赤色着色粒子(粒子番号48、49)はバックグラウンドの消失が明らかに早かった。また、黒色油溶性染料のみの黒色着色粒子(粒子番号45、47)は、赤色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む赤色着色粒子(粒子番号48、49)と比較してバックグラウンドの消失が遅く、5分経過時点でメンブレン上にコンジュゲートが少し残っていた。
(4)非特異反応の有無
試験例2と同様の結果であった。
【0073】
実施例4:キットの作製(RSウイルス検出キット)
実施例4−1:標的物質に特異的に結合する結合部位を担持している着色粒子(着色粒子標識抗RSウイルス抗体)の作製
抗体としてRSウイルス抗体を用いる以外は、実施例2−1と同様に作製した。
【0074】
実施例4−2:抗RSウイルス抗体固相化メンブレンの作製
抗体として着色粒子標識抗RSウイルス抗体とはエピトープが異なる抗RSウイルス抗体を用いる以外は、実施例2−2と同様に作製した。
【0075】
実施例4−3:イムノクロマトグラフィー装置(テストプレート)の作製
実施例2−3と同様に作製した。
【0076】
試験例8:青・黒色着色粒子、RSウイルス検出
粒子番号1〜11、15、21、22の着色粒子を用いて作製したRSウイルス検出キットについて、以下の事項に関して試験を行った。
(1)ライン色調
(2)最小検出感度
(3)着色粒子含有液の透過率
(1)に関しては、色見本として「2015年H版 塗料用標準色(ポケット版)、一般社団法人 日本塗料工業会」を用いた。抗原としてRSウイルスCF試薬「生研」を使用し、40倍希釈となるように抗原溶液を抽出液(150mM リン酸緩衝液、 0.5% Triton X-100、 0.1% BSA、 0.09% アジ化ナトリウム)に添加し混合した後、テストプレートの検体滴下部に50μL滴下し反応させた。測定開始後10分時点のテストラインの色調に最も近いものを色見本から選び出した。
(2)に関しては、抗原としてRSウイルスCF試薬「生研」を使用し、下記表の各抗原希釈倍率となるように抗原溶液を抽出液(150mM リン酸緩衝液、 0.5% Triton X-100、 0.1% BSA、 0.09% アジ化ナトリウム)に添加し、混合した後、テストプレートの検体滴下部に50μL滴下し反応させた。測定開始後10分でテストラインの有無を目視により判定した。
(3)に関しては、粒子番号1〜11、15、21、22の着色粒子を用いて作製したRSウイルス検出キットからコンジュゲートパッド0.4cm×0.8cmを取り出し、純水200 μLに浸潤させ、80℃で10分間の湯浴をした。14000×gで5分間遠心分離し、完全に上澄みを捨て、純水200 μLで懸濁した。ここで、上澄みを捨てた後に得られた着色粒子の質量を量り、濃度を計算すると、純水1mLに対し54μgであった。対照品として、市販されている青色着色粒子を用いたRSウイルス検出キットからコンジュゲートパッドを取り出し、同様の操作で着色粒子含有液を調製した。そして、測定分光光度計(UV-1800、島津製作所)で500 nmから600 nmの2nm毎の各着色粒子溶液の透過率スペクトルを測定した。透過率は、純水を100%としている。
【0077】
【表14】
【0078】
結果
(1)ライン色調
試験例3と同様、RSウイルス検出キットのテストラインの色調は、いずれも青系統色であり、青色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含んでも青色の色調が維持されることがわかった。
(2)最小検出感度
試験例3と同様、染料量が同一の場合、青色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む青色着色粒子を使用したキットの方が青色油溶性染料単独の青色着色粒子を使用したキットよりも検出感度が明らかに高くなった。
(3)着色粒子含有液の透過率
青色単色の着色粒子を用いた検出キットではピークの波長が570nm以上590nm以下の間だったのに対して、黒色油溶性染料を含む場合ではピークの位置が530nm以上550nm以下の間へと移動した。
【0079】
試験例9:青・赤・黒色着色粒子、RSウイルス検出
粒子番号9、10、41〜43の着色粒子を用いて作製したRSウイルス検出キットについて、以下の事項に関して試験を行った。
(1)ライン色調
(2)最小検出感度
(3)反応開始10分時点の視認性(バックグラウンド消失の程度)
なお、試験方法は試験例8と同様である。
【0080】
【表15】
【0081】
結果
(1)ライン色調
試験例5と同様、テストラインの色調は粒子番号9と10は青系統色、42と43は紫系統色であり、それぞれ黒色油溶性染料を含んでも元の色調が維持されていた。
(2)最小検出感度
試験例5と同様、染料量が同一の場合、黒色油溶性染料を含む各色着色粒子を使用したキットの方が各色の油溶性染料単独の着色粒子を使用したキットよりも検出感度が明らかに高くなった。
また、粒子番号42と43の実験結果は、青色油溶性染料とともに赤色油溶性染料とを含む紫色着色粒子と、青色油溶性染料、赤色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む紫色着色粒子との感度差を見ており、黒色油溶性染料を含むことによりこれまでと同様の増感効果が認められた。
(3)反応開始10分時点の視認性(バックグラウンド消失の程度)
試験例5と同様、粒子番号41以外の各色着色粒子を用いたキットは測定開始後10分時点でメンブレン上にコンジュゲートが残ることなくバックグラウンドが消失した。一方で、粒子番号41の黒色油溶性染料単独の黒色着色粒子を用いたキットは反応開始後10分時点でもメンブレン上にコンジュゲートが残っており、視認性において他よりも劣っていた。また、バックグラウンドが消失するまでに要する時間は、各色の油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む着色粒子を使用したキットの方が各色の油溶性染料単独の着色粒子を使用したキットよりも明らかに早かった。
【0082】
実施例5:キットの作製(アデノウイルス検出キット)
実施例5−1:標的物質に特異的に結合する結合部位を担持している着色粒子(着色粒子標識抗アデノウイルス抗体)の作製
抗体として抗アデノウイルス抗体を用いる以外は、実施例2−1と同様に作製した。
【0083】
実施例5−2:抗アデノウイルス抗体固相化メンブレンの作製
抗体として着色粒子標識抗アデノウイルス抗体とはエピトープが異なる抗アデノウイルス抗体を用いる以外は、実施例2−2と同様に作製した。
【0084】
実施例5−3:イムノクロマトグラフィー装置(テストプレート)の作製
実施例2−3と同様に作製した。
【0085】
試験例10:青・黒色着色粒子、アデノウイルス検出
粒子番号1〜11、15、21、22の着色粒子を用いて作製したアデノウイルス検出キットについて、以下の事項に関して試験を行った。
(1)ライン色調
(2)最小検出感度
(1)に関しては、抗原としてアデノウイルス3型CF抗原(デンカ生研)を使用し、80倍希釈となるように抗原溶液を抽出液(150mM リン酸緩衝液、 0.5% Triton X-100、 0.1% BSA、 0.09% アジ化ナトリウム)に添加すること以外は、試験例8と同様に試験を行った。
(2)に関しては、抗原としてアデノウイルス3型CF抗原(デンカ生研)を使用し、各抗原希釈倍率となるように抗原溶液を抽出液(150mM リン酸緩衝液、 0.5% Triton X-100、 0.1% BSA、 0.09% アジ化ナトリウム)に添加すること以外は、試験例9と同様に試験を行った。
【0086】
【表16】
【0087】
結果
(1)ライン色調
試験例5と同様、粒子番号1〜11、15、21、22の青色着色粒子を用いて作製したアデノウイルス検出キットのテストラインの色調は、いずれも青系統色であり、青色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含んでも青色の色調が維持されることがわかった。
(2)最小検出感度
試験例5と同様、染料量が同一の場合、青色油溶性染料とともに黒色油溶性染料を含む青色着色粒子を使用したキットの方が青色油溶性染料単独の青色着色粒子を使用したキットよりも検出感度が明らかに高くなった。
【0088】
試験例11:青・赤・黒色着色粒子、アデノウイルス検出
粒子番号9、10、41〜43の着色粒子を用いて作製したアデノウイルス検出キットについて、以下の事項に関して試験を行った。
(1)ライン色調
(2)最小検出感度
(3)反応開始10分時点の視認性(バックグラウンド消失の程度)
なお、試験方法は試験例10と同様である。
【0089】
【表17】
【0090】
結果
(1)ライン色調
試験例9と同様の結果であった。
(2)最小検出感度
試験例9と同様の結果であった。
(3)反応開始10分時点の視認性(バックグラウンド消失の程度)
試験例9と同様の結果であった。
【要約】
【課題】イムノクロマトグラフィーに使用された際に、視認性を向上すること、具体的には、迅速にバックグラウンドを消失する新規な着色粒子を提供することを目的としている。
【解決手段】黒色油溶性染料、該黒色油溶性染料以外の一種以上の油溶性染料、およびラテックス粒子を含んでなる着色粒子を好適に用いることができる。
【選択図】なし