特許第6133481号(P6133481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6133481火災延焼抑制装置およびこれを備えた塵芥収集車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6133481
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】火災延焼抑制装置およびこれを備えた塵芥収集車
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/10 20060101AFI20170515BHJP
   B65F 3/00 20060101ALI20170515BHJP
   B65F 3/20 20060101ALI20170515BHJP
   B60P 3/00 20060101ALI20170515BHJP
   A62C 3/04 20060101ALI20170515BHJP
   A62C 3/07 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   A62C35/10
   B65F3/00 L
   B65F3/20 A
   B60P3/00 Q
   A62C3/04
   A62C3/07 Z
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-167730(P2016-167730)
(22)【出願日】2016年8月30日
【審査請求日】2016年9月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】304022355
【氏名又は名称】浜崎商工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100195327
【弁理士】
【氏名又は名称】森 博
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼崎 純裕
【審査官】 大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−340956(JP,A)
【文献】 特開平10−118209(JP,A)
【文献】 特許第5956046(JP,B2)
【文献】 特開2009−160382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 35/10
A62C 3/04、3/07
B60P 3/00
B65F 3/00、3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
延焼抑制用液体を収容する伸縮自在な蛇腹状であって密閉式のタンクと、弾性部材を復元力が発生する状態に保持するストッパーであり、所定の温度で解除されるストッパーと、前記弾性部材の復元力を利用して前記タンクの下部を一部開放した際に前記蛇腹状のタンクが縮小することで前記タンク内の負圧が解除されて前記延焼抑制用液体をスムーズに放出させる開放機構とを備えた火災延焼抑制装置。
【請求項2】
前記開放機構は、前記弾性部材の復元力により移動して前記タンクの下部を一部切り取るカッターである請求項1記載の火災延焼抑制装置。
【請求項3】
前記カッターは、前記タンクの下部側方に沿うように設けられた左右に延びるレールに沿って左右にスライド可能に設けられたものである請求項2記載の火災延焼抑制装置。
【請求項4】
前記ストッパーは、高密度ポリエチレン製である請求項1から3のいずれか1項に記載の火災延焼抑制装置。
【請求項5】
車体上に搭載され、後方開口部を有する塵芥収容箱と、前記塵芥収容箱の後方開口部に連設される塵芥投入箱であり、塵芥投入口から投入された塵芥を前記塵芥収容箱内へ押し込む塵芥積込装置を備えた塵芥投入箱とを有する塵芥収集車であって、
前記塵芥投入箱内に請求項1から4のいずれか1項に記載の火災延焼抑制装置を備えた塵芥収集車。
【請求項6】
前記塵芥積込装置の機械室と前記塵芥収容箱の後方開口部側とを仕切る仕切板を備え、前記火災延焼抑制装置は、前記開放機構により下部が一部開放された前記タンクから放出される前記延焼抑制用液体が前記仕切板と前記塵芥積込装置との間に流入する位置に設けられたものである請求項5記載の塵芥収集車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災の延焼を抑制する火災延焼抑制装置およびこれを備えた塵芥収集車に関する。
【背景技術】
【0002】
収集した塵芥が火種となって発生する塵芥収集車の火災が問題となっている。従来、この塵芥収集車の火災の延焼を抑制するため、例えば特許文献1,2に記載のように、塵芥収容箱の内部天井に噴射ノズルを設け、センサーにより火災を検知した場合に、塵芥収容箱の下に設けられた水タンクから水をポンプにより吸い上げて、噴射ノズルから噴射するようにした塵芥収集車が知られている。
【0003】
また、例えば特許文献3には、塵埃を回収するホッパ室の上部に、火災時の熱で破裂して消火薬剤を散布するアンプル型消化器を取り付けた清掃車が開示されている。このアンプル型消化器は、火災時の熱で消火薬剤を膨張させ、その膨張圧でガラス容器を破裂させて、消火薬剤をホッパ室に散布するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5683869号公報
【特許文献2】特開2003−95404号公報
【特許文献3】特開平10−317338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1,2に記載のようにセンサーにより火災を検知した場合にポンプを動作させて噴射するものでは、センサーやポンプが故障した場合に消火が遅れることになり、延焼を抑制することができなくなってしまうという問題がある。また、特許文献3に記載のアンプル型消化器は、火災時の熱がガラス容器内の消火薬剤に伝わって、消火薬剤を分解、膨張させて拡散のための力を蓄えた上でガラス容器を破裂させるものであるため、ガラス容器の破裂までに時間を要する。また、消火薬剤の膨張圧がガラス容器の耐圧限度を超えた際に破裂するため、ガラス容器が破裂する際の温度を設定することが難しいという問題がある。
【0006】
そこで、本発明においては、火災発生時に素早く延焼抑制用液体を放出して延焼を抑制することが可能な火災延焼抑制装置およびこれを備えた塵芥収集車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の火災延焼抑制装置は、延焼抑制用液体を収容するタンクと、弾性部材を復元力が発生する状態に保持するストッパーであり、所定の温度で解除されるストッパーと、弾性部材の復元力を利用してタンクの下部を一部開放して延焼抑制用液体を放出させる開放機構とを備えたものである。
【0008】
本発明の火災延焼抑制装置によれば、火災発生時に所定の温度に達するとストッパーが解除され、弾性部材の復元力を利用してタンクの下部が一部開放されることにより、延焼抑制用液体が放出されるので、素早く延焼を抑制することが可能となる。
【0009】
ここで、開放機構は、弾性部材の復元力により移動してタンクの下部を一部切り取るカッターであることが望ましい。これにより、火災発生時に所定の温度に達するとストッパーが解除され、弾性部材の復元力を利用してタンクの下部がカッターにより切り取られ、タンクの下部が一部開放されることにより、延焼抑制用液体が放出され、素早く延焼を抑制することが可能となる。
【0010】
また、ストッパーは、高密度ポリエチレン製であることが望ましい。高密度ポリエチレン(HDPE)は5kgf/cm2程度以下の弾性部材の復元力がかかった状態における荷重たわみ温度(JIS K 7191)が66〜110℃であり、火災発生時に66〜110℃以上に熱せられた際に軟化することにより、ストッパーが解除される。また、一般用ポリプロピレンは、5kgf/cm2以下の弾性部材の復元力がかかった状態における荷重たわみ温度(JIS K 7191)が90〜140℃であるため、これも使用可能である。なお、低密度ポリエチレンでは荷重たわみ温度が低すぎて、誤作動する可能性がある。
【0011】
また、タンクは伸縮自在な蛇腹状であることが望ましい。これにより、タンクが一部開放されてタンク内の延焼抑制用液体が放出される際、タンクが縮小することでタンク内の負圧が解除され、タンク内の延焼抑制用液体がスムーズに放出される。
【0012】
また、本発明の塵芥収集車は、車体上に搭載され、後方開口部を有する塵芥収容箱と、塵芥収容箱の後方開口部に連設される塵芥投入箱であり、塵芥投入口から投入された塵芥を塵芥収容箱内へ押し込む塵芥積込装置を備えた塵芥投入箱とを有する塵芥収集車であって、塵芥投入箱内に上記火災延焼抑制装置を備えたものである。これにより、塵芥投入箱内に収集した塵芥が火種となって火災が発生した際、所定の温度に達するとストッパーが解除され、弾性部材の復元力を利用してタンクの下部が一部開放されることにより、延焼抑制用液体が放出されるので、素早く延焼を抑制することが可能となる。
【0013】
また、本発明の塵芥収集車は、塵芥積込装置の機械室と塵芥収容箱の後方開口部側とを仕切る仕切板を備え、火災延焼抑制装置は、開放機構により下部が一部開放されたタンクから放出される延焼抑制用液体が仕切板と塵芥積込装置との間に流入する位置に設けられたものであることが望ましい。これにより、タンクから放出される延焼抑制用液体が、火元となる可能性が最も高い仕切板と塵芥積込装置との間に流入するため、塵芥収容箱内に塵芥が満載されている場合であっても素早く延焼を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
(1)延焼抑制用液体を収容するタンクと、弾性部材を復元力が発生する状態に保持するストッパーであり、所定の温度で解除されるストッパーと、弾性部材の復元力を利用してタンクの下部を一部開放して延焼抑制用液体を放出させる開放機構とを備えた構成により、火災発生時に素早く延焼抑制用液体を放出して延焼を抑制することが可能となる。
【0015】
(2)開放機構が弾性部材の復元力により移動してタンクの下部を一部切り取るカッターであることにより、簡易な構成で、素早く延焼抑制用液体を放出して延焼を抑制することが可能となり、低コストである。
【0016】
(3)ストッパーが高密度ポリエチレン製であることにより、誤作動を防止して、火災発生時に素早く延焼抑制用液体を放出して延焼を抑制することが可能となる。
【0017】
(4)タンクが伸縮自在な蛇腹状であることにより、タンクが縮小することでタンク内の負圧が解除され、タンク内の延焼抑制用液体がスムーズに放出されるので、効果的に素早く延焼抑制用液体を放出して延焼を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態における火災延焼抑制装置を備えた塵芥収集車の内部構造を示す側面図である。
図2図1の火災延焼抑制装置の拡大側面図である。
図3図2のIII部拡大図である。
図4図3のIV矢視図である。
図5図4の背面図である。
図6図1の塵芥投入箱内に設置された火災検知装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の実施の形態における火災延焼抑制装置を備えた塵芥収集車の内部構造を示す側面図、図2図1の火災延焼抑制装置の拡大側面図、図3図2のIII部拡大図、図4図3のIV矢視図、図5図4の背面図である。なお、以下の説明において、前後左右の各方向は、塵芥収集車の進行(前進)方向を基準とする。
【0020】
図1において、本発明の実施の形態における塵芥収集車1は、車体2上に塵芥収容箱3が搭載されたものである。塵芥収容箱3の後端の後方開口部3Aには、塵芥投入箱4が連設されている。塵芥投入箱4の後部には、塵芥を投入する塵芥投入口4Aが開口されている。塵芥投入箱4の内部には、塵芥投入口4Aから投入された塵芥を、後方開口部3Aを通じて塵芥収容箱3に積み込む回転式の塵芥積込装置5が備えられている。
【0021】
塵芥積込装置5は、車体2の前後方向に揺動する押込板20と、この押込板20の下端付近に回転中心を有して正逆転する回転板21とを備える。押込板20は、塵芥投入箱4の幅方向全体に亘って延設され、かつ塵芥収容箱3の後方開口部3Aに対向するように配設されている。この押込板20の上部は、塵芥投入箱4の左右両側壁の中央付近の中心軸20Aよりも上方に延びる延設部20Bが設けられている。延設部20Bの先端には、左右一対の押込シリンダ22の先端が連設されている。この押込シリンダ22の伸縮動作により、押込板20が中心軸20A周りに車体2の前後方向に揺動するようになっている。
【0022】
回転板21は、押込板20の下側に設けられている。回転板21は、押込板20の下端付近に回転中心としての回転軸21Aを有し、塵芥投入箱4の断面略半円弧状に形成された底壁4Dに沿って回転軸21A周りに回転するように構成されている。
【0023】
また、塵芥投入箱4内には、塵芥積込装置5の上部の押込シリンダ22の下側と塵芥収容箱3の後方開口部3A側とを仕切る仕切板6が設けられている。仕切板6は、塵芥投入箱4の幅方向全体に亘って設けられている。この仕切板6によって、塵芥投入箱4内は、塵芥積込装置5の押込シリンダ22が収容される側である機械室4Bと、塵芥収容箱3の後方開口部3Aへ塵芥が投入される側である塵芥室4Cとに区分されている。
【0024】
また、本実施形態における塵芥収集車1は、塵芥投入箱4内に図2に示す火災延焼抑制装置7を備えている。火災延焼抑制装置7は、塵芥投入箱4の機械室4Bの仕切板6上の左右にそれぞれ設けられている。火災延焼抑制装置7は、水や不燃性液等の延焼抑制用液体Wを収容するタンク70と、弾性部材としてのバネ71を復元力が発生する状態に保持するストッパー72と、バネ71の復元力を利用してタンク70の下部を一部開放して延焼抑制用液体Wを放出させる開放機構73とを備えている。
【0025】
タンク70は低密度ポリエチレン(LDPE)製の蛇腹状であり、伸縮自在となっている。また、タンク70は半透明であり、内部の延焼抑制用液体Wを外部から確認可能となっている。タンク70の上部には延焼抑制用液体を補充するための液体補充口を備えており、この液体補充口には脱着可能なキャップ70Aが設けられている。
【0026】
開放機構73は、図3および図4に示すように、バネ71の復元力により移動してタンク70の下部を一部切り取るカッター73Aを有する。タンク70の下部側方には、このタンク70の下部側面に沿うように左右に延びるコの字状断面のレール73Bが設けられている。カッター73Aは、このレール73Bに沿って左右にスライド可能に設けられたコの字状断面のスライダー73Cの内側の上下に互いに干渉しない位置に設けられている。
【0027】
バネ71はスライダー73Cとレール73Bの端部との間に設けられている。スライダー73Cは、図4に示すようにバネ71を伸ばした状態、すなわちバネ71に復元力(本実施形態においては5kgf/cm2程度)が発生した状態を初期位置とする。ストッパー72は、ワイヤー72Aを介してスライダー73Cに接続されており、バネ71をこの復元力が発生した状態に保持するものである。ストッパー72は、高密度ポリエチレン(HDPE)製の線材である。
【0028】
この火災延焼抑制装置7では、火災発生時に66〜110℃を超える温度に達すると、高密度ポリエチレン製の線材であるストッパー72が軟化して破断することにより解除され、バネ71の復元力によりレール73Bに沿ってカッター73Aが移動し、タンク70の下部が一部切り取られる。これにより、タンク70の下部が一部開放され、延焼抑制用液体Wが放出される。
【0029】
火災延焼抑制装置7は、このタンク70から放出される延焼抑制用液体Wが仕切板6と塵芥積込装置5の押込板20との間に流入する位置に設けられており、延焼抑制用液体Wは、押込板20の表面を伝って塵芥積込装置5の下部の塵芥収容箱3の後方開口部3A付近に流れ落ちる。これにより、タンク70から放出される延焼抑制用液体Wが、火元となる可能性が最も高い位置に流入するため、塵芥収容箱3内に塵芥が満載されている場合であっても素早く延焼を抑制することが可能となっている。
【0030】
また、本実施形態における火災延焼抑制装置7では、タンク70が伸縮自在な蛇腹状であるため、タンク70が一部開放されてタンク70内の延焼抑制用液体Wが放出される際、タンク70が縮小することでタンク70内の負圧が解除され、タンク70内の延焼抑制用液体Wがスムーズに放出されるようになっている。なお、タンク70が密閉式でなく、空気抜き孔を有する場合には、蛇腹状でなくても良い。
【0031】
また、本実施形態においては、開放機構73はカッター73Aによりタンク70の下部を一部切り取る構成であるが、タンク70の下部に栓付きの開口部を設けて、この栓をバネ71の復元力を利用して抜くことにより、タンク70の下部を一部開放する構成とすることも可能である。また、タンク70の下部に止水ファスナーを設けて、この止水ファスナーをバネ71の復元力を利用して開く構成とすることも可能である。また、開放機構73を動作させるために復元力を発揮するものとして、バネ71に代えてその他の弾性部材を用いることも可能である。
【0032】
また、本実施形態においては、火災延焼抑制装置7は、塵芥投入箱4の機械室4Bの仕切板6上の左右にそれぞれ設けているが、適宜増減することも可能である。
【0033】
また、本実施形態における塵芥収集車1には、塵芥収容箱3の上壁および仕切板6の下面に、延焼抑制用液体Wを噴射する火災延焼抑制装置としてのノズル8が設けられている。また、仕切板6の機械室4B側の上方にも、仕切板6の上面に向けて水や不燃性液等の延焼抑制用液体Wを噴射する火災延焼抑制装置としてのノズル9が設けられている。ノズル9は、仕切板6の幅方向全体に亘って満遍なく延焼抑制用液体Wが散布されるように、水平方向に複数設けられている。
【0034】
また、本実施形態における塵芥収集車1は、塵芥投入箱4の内部の後方上部領域に設置された火災検知装置10を備えている。図6は火災検知装置10の断面図である。火災検知装置10は、図6に示すように、パッシブセンサー11と、パッシブセンサー11への入射経路の周囲を覆う筒状部12と、パッシブセンサー11の入射経路を覆うポリエチレン製のカバー13とを有する。
【0035】
パッシブセンサー11は、主に人感センサーとして用いられる公知のものであり、筐体内に設けられた焦電体(感熱素子)11Aと、遠赤外線を選択する干渉フィルター11Bとを備える。パッシブセンサー11は、干渉フィルター11Bを透過した遠赤外線を焦電体11Aにより受けて信号を発するセンサーである。また、本実施形態において、パッシブセンサー11は、遠赤外線の波長領域に対する吸収率が0.1以下の素材(本実施形態においては、アルミニウムシート14)により包まれている。
【0036】
筒状部12は、パッシブセンサー11への遠赤外線の入射経路の周囲を覆い、塵芥積込装置5により塵芥が圧縮される部位に向けて開口したものである。塵芥が圧縮される部位とは、主に押込板20の揺動範囲および回転板21の回転範囲である。なお、本実施形態において筒状部12はポリ塩化ビニール製であるが、熱伝導率が同程度より低いものであれば良い。
【0037】
カバー13は、遠赤外線の透過率を調整するためのものであり、本実施形態においては、厚さ2mmのポリエチレンカバーを二重に設けたものである。このカバー13の厚さはパッシブセンサー11の感度に応じて適宜調整する。また、カバー13の先端は平面となっているが、曲面など他の形状でも良い。
【0038】
上記構成の火災検知装置10では、人感センサーとしても用いられるパッシブセンサー11を、その入射経路をポリエチレン製のカバー13により覆うことで低感度化し、塵芥積込装置5により塵芥が圧縮される部位から発生した火災により発せられる遠赤外線を瞬時に検知することが可能となっている。そして、火災検知装置10により火災が検知された際には、ノズル8やノズル9から延焼抑制用液体Wを噴射して、火災の延焼を抑制する。なお、本実施形態の塵芥収集車1においては、図2に示すように、火災延焼抑制装置7の近傍に、煙センサー30も備えており、この煙センサー30によっても火災を検知するようになっている。
【0039】
また、本実施形態における火災検知装置10では、パッシブセンサー11が、遠赤外線の波長領域に対する吸収率が0.1以下の素材であるアルミニウムシート14により包まれているため、パッシブセンサー11が火災とは無関係の周囲の遠赤外線、すなわち、塵芥積込装置5により塵芥が圧縮される部位から発生した火災により発せられる遠赤外線以外の遠赤外線を検知しないようにしており、誤検知が防止されている。
【0040】
さらに、本実施形態における火災検知装置10は、パッシブセンサー11への入射経路の周囲を覆い、塵芥積込装置5により塵芥が圧縮される部位に向けて開口した筒状部12を有するため、パッシブセンサー11により検知する遠赤外線を、塵芥積込装置5により塵芥が圧縮される部位に限定して、より誤検知が防止されている。
【0041】
なお、上記実施形態においては、回転式の塵芥積込装置5を備えた塵芥収集車1について説明したが、圧縮式の塵芥積込装置を備えた塵芥収集車にも同様に適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の火災延焼抑制装置は、塵芥等が火種となって発生する火災を延焼する装置として有用である。
【符号の説明】
【0043】
1 塵芥収集車
2 車体
3 塵芥収容箱
3A 後方開口部
4 塵芥投入箱
4A 塵芥投入口
4B 機械室
4C 塵芥室
4D 底壁
5 塵芥積込装置
6 仕切板
7 火災延焼抑制装置
8,9 ノズル
10 火災検知装置
11 パッシブセンサー
11A 焦電体
11B 干渉フィルター
12 筒状部
13 カバー
20 押込板
21 回転板
22 押込シリンダ
30 煙センサー
70 タンク
70A キャップ
71 バネ
72 ストッパー
72A ワイヤー
73 開放機構
73A カッター
73B レール
73C スライダー
【要約】
【課題】火災発生時に素早く延焼抑制用液体を放出して延焼を抑制することが可能な火災延焼抑制装置およびこれを備えた塵芥収集車の提供。
【解決手段】延焼抑制用液体を収容するタンク70と、バネ71を復元力が発生する状態に保持するストッパー72であり、所定の温度で解除されるストッパー72と、バネ71の復元力を利用してタンク70の下部を一部開放して延焼抑制用液体を放出させる開放機構73とを備える。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6