特許第6133485号(P6133485)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6133485
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】金属屑処理装置
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/00 20060101AFI20170515BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   C22B1/00 601
   B09B3/00 303A
   B09B3/00ZAB
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-227292(P2016-227292)
(22)【出願日】2016年11月22日
【審査請求日】2016年12月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】313009877
【氏名又は名称】環境エネルギー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095603
【弁理士】
【氏名又は名称】榎本 一郎
(72)【発明者】
【氏名】野田修嗣
(72)【発明者】
【氏名】竹之内秀樹
(72)【発明者】
【氏名】中山正則
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−179592(JP,A)
【文献】 特開2006−022346(JP,A)
【文献】 特開2008−024388(JP,A)
【文献】 特開2013−046882(JP,A)
【文献】 特開2011−012326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00
C22B 7/00
B09B 1/00−5/00
B01F 7/00−7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属屑の付着物を飽和蒸気及び/又は過熱蒸気で加熱分解する金属屑処理装置であって、
金属屑搬送部と、前記金属屑搬送部の上流側に連設された金属屑供給部と、前記金属屑搬送部の下流側に連設された金属屑排出部と、前記金属屑搬送部の搬送路の一側部に配設され前記飽和蒸気及び/又は前記過熱蒸気を供給する蒸気供給部と接続された蒸気供給管と、前記蒸気供給管と連通し前記搬送路の側壁に孔をあけて形成された複数の蒸気噴射口と、を有し、前記金属屑搬送部が、筒状の搬送路と、前記搬送路に内挿された撹拌部と、前記搬送路の周壁の上面側に形成された1以上のガス排出口と、前記搬送路の前記周壁の外側で前記ガス排出口と連通し前記金属屑の付着物が加熱分解されて発生する分解ガスを前記金属屑搬送部から排出するガス導通路と、を備えたことを特徴とする金属屑処理装置。
【請求項2】
前記撹拌部が、回転軸の外周に配設された螺旋状の羽根と、前記回転軸の長手方向と平行に配設され前記羽根の外周側を連結補強する連結撹拌部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の金属屑処理装置。
【請求項3】
前記金属屑搬送部の前記ガス排出口が、螺旋状の前記羽根のピッチと同等の間隔で複数配置されていることを特徴とする請求項に記載の金属屑処理装置。
【請求項4】
前記蒸気噴射口が、前記撹拌部の螺旋状の前記羽根のピッチと同等の間隔で複数形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属屑処理装置。
【請求項5】
前記金属屑搬送部の前記ガス導通路の出口が前記金属屑供給部と連結されていることを特徴とする請求項1、3又は4の内いずれか1項に記載の金属屑処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム、亜鉛、銅、鉄等の金属や真鍮、アルミニウム、ステンレス等の合金の加工時或いはこれらの金属製品の廃棄時に発生する金属屑に付着した切削油や研削油等の切削油剤、塗料、防錆剤等の各種付着物を飽和蒸気及び/又は過熱蒸気で加熱分解する金属屑処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属加工で発生する金属切粉は、溶融炉で溶融再生され各金属資源として再利用されている。しかし、切削加工や研削加工等の金属加工時に発生する金属切粉の表面には、切削油剤や金属加工の際に発生した金属の微粉、バイト屑等が付着している。このため、このような金属切粉を地金として再生する場合には、その前工程として、金属切粉に付着した切削油剤を乾燥させて取り除く必要がある。その乾燥方法として400℃〜600℃の熱風により切削油剤を蒸発させる単純な乾燥方法が主に用いられている。
しかし、このような単純な乾燥方法では切削油剤の油分は完全に乾燥せず、切削油剤由来の油分や炭素成分(コーク等)が金属切粉表面に残留し、金属切粉を溶解炉へ投入した際に、黒煙や発火が発生し易いという問題があった。
また、乾燥中に金属切粉を撹拌することにより発生する粉塵や金属切粉の表面に付着している金属の微粉やバイト屑が原因で粉塵爆発をおこす危険性もあった。
そこで、これらの金属切粉を高効率で再利用できる環境負荷の少ない乾燥方法及び乾燥装置が求められていた。
本願出願人が鋭意研究を行い出願した(特許文献1)には、切削油、金属屑、バイト屑が付着した金属切粉を乾燥炉内で多孔質材や、固体酸触媒、固体塩基触媒の内いずれか1以上を含有する乾燥処理材と混合し、乾燥処理材で切削油剤に由来する油分を乾燥させる金属切粉の乾燥方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−42936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(1)(特許文献1)の金属切粉の乾燥方法は、切削油剤が付着した金属切粉と、乾燥処理材とを乾燥炉内で混合し、金属切粉に付着した切削油剤を乾燥、接触分解することにより、乾燥後の金属切粉における残留炭素が著しく少なく、金属切粉を溶融炉へ投入した際の黒煙や発火の発生を防ぐことができ、安全性に優れると共に、乾燥後の金属切粉の酸化度が低く、金属の再生歩留まりに優れるものであった。
(2)しかし、乾燥処理材の供給量を管理しなければならず、また、乾燥済みの金属切粉と乾燥処理材を完全に分離することが困難であるため、乾燥処理材を使用することなく、簡単な制御で各種金属屑に付着した切削油剤、塗料、防錆剤等の各種付着物を短時間で確実かつ効率的に加熱分解して取り除くことができ、高歩留まりで省資源性、省エネルギー性に優れると共に、コンパクトで安全性、取扱い性、省スペース性に優れた金属屑処理装置の開発が強く望まれていた。
【0005】
本発明は上記要望に応えるものであり、金属屑に付着した切削油剤、塗料、防錆剤等の各種付着物を短時間で確実かつ効率的に加熱分解して取り除くことができ、酸化を防ぎ、高歩留まりで処理能力が高く、省資源性、省エネルギー性に優れると共に、コンパクトで安全性、取扱い性、省スペース性に優れた金属屑処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段及びそれによって得られる作用、効果】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の金属屑処理装置は、以下の構成を有する。
本発明の請求項1に記載の金属屑処理装置は、金属屑の付着物を飽和蒸気及び/又は過熱蒸気で加熱分解する金属屑処理装置であって、
金属屑搬送部と、前記金属屑搬送部の上流側に連設された金属屑供給部と、前記金属屑搬送部の下流側に連設された金属屑排出部と、前記金属屑搬送部の搬送路の一側部に配設され前記飽和蒸気及び/又は前記過熱蒸気を供給する蒸気供給部と接続された蒸気供給管と、前記蒸気供給管と連通し前記搬送路の側壁に孔をあけて形成された複数の蒸気噴射口と、を有し、前記金属屑搬送部が、筒状の搬送路と、前記搬送路に内挿された撹拌部と、前記搬送路の周壁の上面側に形成された1以上のガス排出口と、前記搬送路の前記周壁の外側で前記ガス排出口と連通し前記金属屑の付着物が加熱分解されて発生する分解ガスを前記金属屑搬送部から排出するガス導通路と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用、効果を有する。
(1)金属屑搬送部の上流側に連設された金属屑供給部と、金属屑搬送部の下流側に連設された金属屑排出部と、金属屑搬送部に飽和蒸気及び/又は過熱蒸気を供給する蒸気供給部を有することにより、金属屑供給部から供給された金属屑が金属屑搬送部で搬送されて金属屑排出部から排出されるまでの間に、金属屑に付着した切削油剤、塗料、防錆剤等の各種付着物を、蒸気供給部から供給される飽和蒸気及び/又は過熱蒸気によって短時間で加熱分解して取り除くことができ、省エネルギー性に優れる。
(2)金属屑搬送部が、筒状の搬送路と、搬送路に内挿された撹拌部を有することにより、撹拌部で金属屑を搬送しながら、蒸気供給部から供給される飽和蒸気及び/又は過熱蒸気と金属屑を確実に接触させて、金属屑の表面に付着した付着物を効率的に加熱分解することができ、付着物除去の効率性、確実性に優れる。
(3)金属屑搬送部が、搬送路の周壁の上面側に形成された1以上のガス排出口と、搬送路の周壁の外側でガス排出口と連通し金属屑の付着物が加熱分解されて発生する分解ガスを金属屑搬送部から排出するガス導通路を有することにより、金属屑の付着物が加熱分解されて発生する分解ガスをガス排出口から確実かつ効率的に排出させ、ガス導通路に沿ってスムーズに移動させて金属屑搬送部から系外に排出することができ、分解ガスの排出性に優れる。
(4)筒状の搬送路に撹拌部が内挿されることにより、ロータリーキルン等に比べて無駄な空間が少なく、装置をコンパクト化することができ、省スペース性に優れると共に、放熱ロスも少なく、加熱の効率性に優れる。
(5)乾燥処理材等を使用することなく飽和蒸気及び/又は過熱蒸気のみで金属屑の付着物を加熱分解して除去することができ、省資源性に優れると共に、金属屑に乾燥処理材等が付着することがなく、乾燥処理材等を分離する機構や工程が不要で、付着物のない金属屑を得ることができ、また酸化による劣化も防ぐことができるため、高歩留まりで金属屑のリサイクル性に優れる。
(6)撹拌部の回転数を制御するだけで搬送路内の金属屑の滞留時間をコントロールすることができるので、金属屑の大きさ、形状、嵩比重或いは付着物の種類等に応じて、必要な滞留時間を設定することにより、金属屑の付着物を確実に加熱分解することができ、操作性、汎用性、処理効率性に優れる。
(7)金属屑搬送部が、蒸気供給部と連結され金属屑搬送部の搬送路の周壁に形設された蒸気噴射口を有するので、蒸気噴射口から搬送路の内部に確実に飽和蒸気及び/又は過熱蒸気を噴射して金属屑の付着物を効率的に加熱分解することができ、加熱分解の効率性、安定性に優れる。
(8)搬送路の長手方向に沿って複数の蒸気噴射口を配置した場合、搬送路の全長にわたって効率的に飽和蒸気及び/又は過熱蒸気を行き渡らせることができ、金属屑との接触効率を高めることができるので、飽和蒸気及び/又は過熱蒸気の供給量を低減することが可能で、省エネルギー性に優れる。また、蒸気噴射口を搬送路の下流端側に配置した場合、搬送路に沿って搬送される金属屑に対して飽和蒸気及び/又は過熱蒸気の流れが向流になるため、金属屑の付着物と飽和蒸気及び/又は過熱蒸気を確実に接触させて加熱分解することができ、加熱分解処理の効率性に優れる。
【0007】
ここで、金属屑供給部がスクレーパーコンベアやスクリューコンベア等を備えることにより、多量の金属屑を連続的に処理することができ、装置の自動化が容易で操作性、作業効率性に優れる。尚、金属屑供給部にはシャッター式の計量ダンパー等を備えてもよい。
尚、金属屑供給部に予備加熱部を設けることにより、金属屑搬送部における処理時間を短縮することができる。また、搬送路内で発生する分解ガスや蒸気を利用して予備加熱を行ってもよい。
尚、金属屑供給部の前後にスライドゲート等を設けることが好ましい。これにより、金属屑搬送部の気密性を上げ、酸素濃度を制御することができ、金属屑の酸化を防ぐことができるためである。
金属屑搬送部の撹拌部は、金属屑を撹拌しながら搬送路に沿って搬送できるものであればよく、羽根の形状や配置等は適宜、選択することができる。
【0008】
金属屑のサイズを調整するために、金属屑の破断や切断等を行う剪断式(一軸剪断破砕機等)や衝撃式(ハンマークラッシャー等)の前処理装置を金属屑供給部の上流側に設けてもよい。金属屑のサイズを調整することで、撹拌部を回転させるモーターの回転数の調整が容易になり作業性を向上させることができる。
金属屑処理装置の乾燥の対象となる金属屑としては、アルミニウム、亜鉛、銅、鉄等の金属や、真鍮、アルミニウム、ステンレス等の合金類を切削加工や研削加工等で金属加工する際に発生する金属屑や切削屑、シュレッダー屑のほか、各種缶等の金属製品の使用済み屑、金属切粉等を固めたブリケット、ダイカストのバリの塊等の様々な形状の金属屑を用いることができ、特に材質や形状を限定するものではない。
金属加工で使用される切削油剤として、日本工業規格(JIS K2241)における不水溶性切削油剤(N1種、N2種、N3種、N4種)や、水溶性切削油剤(A1種、A2種、A3種)及び、これらの混合物が挙げられる。また、一般的に切削油剤には、添加剤として、極圧添加剤、乳化剤(潤滑剤)、防錆剤、防食剤、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等が添加されているがこれらを含んでいてもよい。水溶性切削油剤は、水で希釈して使用するが、このように水を含んでいてもよい。尚、切削油剤には切削油の他研削油も含まれる。
【0009】
飽和蒸気の温度は100℃〜200℃、過熱蒸気の温度は150℃〜600℃が好ましく、飽和蒸気及び/又は過熱蒸気の供給圧力は50kPa〜500kPaが好ましい。蒸気供給部としては、ボイラー等により発生する乾き飽和蒸気をさらに加熱し、飽和蒸気の圧力に相当するより高い温度の過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生装置が好適に用いられる。バルブの開閉により、飽和蒸気及び/又は過熱蒸気を選択的に金属屑搬送部に供給することができる。
蒸気供給部は金属屑搬送部の搬送路と接続され、搬送路の内部に飽和蒸気及び/又は過熱蒸気を供給する。蒸気供給部と搬送路の接続位置は適宜、選択することができ、搬送路の所望の位置から搬送路の内部へ飽和蒸気及び/又は過熱蒸気を噴射させることができる。特に、搬送路の長手方向に沿って複数の蒸気噴射口を設けた場合、蒸気噴射口1箇所当りの蒸気圧力を下げて効率的に蒸気を供給することができ、蒸気が過剰に供給されて搬送路から排出されることを防止でき、省エネルギー性に優れる。また、蒸気噴射口から噴射される蒸気圧力を下げることにより、粉塵爆発の危険性があるアルミニウム等の微粉の飛散を防ぐことができ、安全性に優れる。尚、過熱蒸気中では極低酸素雰囲気となるため、金属屑の酸化劣化が少なく、金属回収の歩留りを高めることができ、高品質性、リサイクル性に優れる。
【0010】
金属屑搬送部は加熱炉内に横架してもよい。金属屑搬送部の搬送路の外周が加熱炉で囲まれるため、加熱炉と搬送路との間に熱風を吹き込むことにより、搬送路を外部から加熱することができ、搬送路内部の温度低下を防いで付着物を短時間で加熱分解することができ、効率性に優れる。尚、熱風を発生させるための加熱源としては、バーナーや電気ヒーター等を用いてもよいし、過熱蒸気を生成した後の排熱や付着物を加熱分解した際に発生する分解ガスを回収して燃焼させた後の排熱等を利用してもよい。搬送路を外部から加熱する際の温度は300℃〜650℃が好ましい。外部加熱の温度が300℃より低くなるにつれ、搬送路内の温度も低くなり、金属屑に付着した油分等の分解に必要な熱エネルギーを飽和蒸気及び/又は過熱蒸気で賄うことになって、加熱分解の効率、省エネルギー性が低下し易くなる傾向があり、好ましくない。また、外部加熱の温度が650℃より高くなるにつれ、搬送路内の温度も高くなり、搬送している金属屑が溶融して搬送路や撹拌部等に付着し易くなる傾向があり、機器の破損等につながるおそれがあるため好ましくない。
尚、搬送路の外周をウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、グラスウール等の保温材(断熱材)で覆ってもよい。
【0011】
搬送路内の圧力は、大気圧又は僅かに正圧に維持することが好ましい。付着物の加熱分解によって搬送路の内部で分解ガス(可燃性ガス)が生成されており、負圧にした場合、外気を吸い込んで酸素濃度が上昇し、装置内で着火して爆発する可能性があるためである。
尚、付着物の加熱分解によって発生する分解ガスは、熱交換器で冷却した後、湿式スクラバーで捕集することにより、未燃ガスの爆発や分解ガスに同伴して排出されるアルミニウム等の微粉による粉塵爆発を防ぐことができ、安全性に優れる。また、分解ガスを冷却して得られる油分と水分は、エマルジョン化して燃料として再利用することもできる。
尚、付着物の加熱分解によって発生する分解ガスの安全な処理、脱臭等の目的で、燃焼処理してもよい。
ガス排出口の数、形状、大きさ、配置等は適宜、選択することができる。金属屑が搬送路の内部を上流から下流に向かって移動するにつれ、付着物の加熱、分解が進行し、分解ガスが発生するので、ガス排出口は搬送路の少なくとも下流側に配置することが好ましい。尚、搬送路の全長に渡って複数のガス排出口を設けた場合、搬送路全体から斑無く効率的に分解ガスを排出することができる。
また、ガス導通路は搬送路の周壁の外側でガス排出口と連通して分解ガスを金属屑搬送部から排出することができればよく、その出口の位置は適宜、選択することができる。
蒸気噴射口の数や配置は、適宜、選択することができる。
尚、搬送路の周壁に孔をあけて蒸気噴射口を形成し、搬送路の周壁の外周面側で蒸気供給部と連結することにより、搬送路の内部に突起物がなく、撹拌部との干渉を防ぐことができ、撹拌部と搬送路の内周面との隙間を小さくして飽和蒸気及び/又は過熱蒸気のショートパスを防止できる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の金属屑処理装置であって、前記撹拌部が、回転軸の外周に配設された螺旋状の羽根と、前記回転軸の長手方向と平行に配設され前記羽根の外周側を連結補強する連結撹拌部と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1の作用、効果に加え、以下の作用、効果を有する。
(1)撹拌部が、回転軸の外周に配設された螺旋状の羽根と、回転軸の長手方向と平行に配設され羽根の外周側を連結補強する連結撹拌部を有することにより、搬送路と近接する羽根の外周側において連結撹拌部で金属屑を掻き上げるようにして撹拌することができ、金属屑と飽和蒸気及び/又は過熱蒸気を確実に接触させて金属屑の表面に付着した付着物を効率的に加熱分解しながら搬送することができ、省エネルギー性、付着物除去の効率性に優れる。
(2)撹拌部が、螺旋状の羽根を有することにより、様々な形状や嵩比重の金属屑に対して、撹拌部を回転させるモーターの回転数を制御するだけで、搬送路内の金属屑の滞留時間を正確にコントロールして付着物を確実に加熱分解することができ、加熱分解処理の確実性、安定性に優れる。
(3)撹拌部が、回転軸の外周に配設された螺旋状の羽根と、回転軸の長手方向と平行に配設され羽根の外周側を連結補強する連結撹拌部を有することにより、スクリューフィーダーと同等の剛性と搬送効率、金属屑の搬送の定量性を保つことができ、付着物の加熱分解の効率性に優れる。
(4)撹拌部が、回転軸の長手方向と平行に配設され羽根の外周側を連結補強する連結撹拌部を有することにより、撹拌部の強度を向上させることができるので、羽根の厚みを薄くして撹拌部の軽量化を図り、羽根の外周部と搬送路内表面との摩擦を軽減することができ、金属屑搬送部の耐久性、長寿命性に優れる。
(5)撹拌部が、回転軸の長手方向と平行に配設され羽根の外周側を連結補強する連結撹拌部を有することにより、撹拌部の剛性を保つことができ、ブリケットやダイカストのバリ等の塊状の金属屑或いは様々な形状や比重の金属屑に対しても、羽根の変形や破損等の発生を効果的に防止して、金属屑を確実に搬送することができ、金属屑の搬送の信頼性、確実性に優れる。
(6)撹拌部の螺旋状の羽根が回転軸の外周に配設されているので、十分な剛性を確保して撓みや変形を防止して撹拌部を確実に回転させることができ、動作の安定性に優れる。
【0013】
ここで、連結撹拌部は螺旋状の羽根の外周側を固定できるものであればよく、形状や配置等は、適宜、選択することができる。例えば、角鋼や丸鋼等の棒材或いは角パイプや丸パイプ等の筒状部材を用いてもよいが、平鋼(フラットバー)等の板状部材を用いることにより、金属屑との接触面積を確保することができ、金属屑を効率的に掻き上げて撹拌効果を高めることができる。連結撹拌部は螺旋状の羽根の外周側で隣接する羽根同士を回転軸の長手方向に沿うように連結補強することにより、剛性を確保することができる。尚、連結撹拌部の数は適宜、選択することができるが、円周方向に間隔を空けて2箇所乃至8箇所設けることが好ましい。連結撹拌部の数が1箇所だけになると、羽根が変形し易くなり、撹拌部全体の剛性が低下して撓みが発生し易くなると共に撹拌効果が低下し易くなる傾向があり、8箇所より多くなるにつれ、撹拌に寄与しない連結撹拌部が増え、撹拌部全体の重量が増加して撹拌部の回転に必要なエネルギーが増大し、金属屑の撹拌効率性、省エネルギー性が低下し易くなる傾向があり、いずれも好ましくない。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項に記載の金属屑処理装置であって、前記金属屑搬送部の前記ガス排出口が、螺旋状の前記羽根のピッチと同等の間隔で複数配置された構成を有している。
この構成により、請求項の作用、効果に加え、以下の作用、効果を有する。
(1)金属屑搬送部のガス排出口が、螺旋状の羽根のピッチと同等の間隔で複数配置されているので、撹拌部の回転中に、螺旋状の羽根の間に形成された各々の空間とガス排出口を確実に連通させ、金属屑の付着物が加熱分解されて発生する分解ガスを確実かつ効率的に排出することができ、分解ガスの排出の確実性、効率性に優れる。
【0015】
ここで、複数のガス排出口を螺旋状の羽根のピッチと同等の間隔で配置することにより、撹拌部の回転中に、螺旋状の羽根の間に形成された各々の空間が必ずガス排出口の位置と重なって連通するので、各々のガス排出口から確実かつ効率的に分解ガスを排出することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の金属屑処理装置であって、前記蒸気噴射口が、前記撹拌部の螺旋状の前記羽根のピッチと同等の間隔で複数形成された構成を有している。
この構成により、請求項1又は2の作用、効果に加え、以下の作用、効果を有する。
蒸気噴射口を螺旋状の羽根のピッチと同等の間隔で配置した場合、撹拌部の回転中に、螺旋状の羽根の間に形成された各々の空間が必ず蒸気噴射口の位置と重なって連通するので、各々の蒸気噴射口から空間に確実かつ効率的に飽和蒸気及び/又は過熱蒸気を供給することができる。
【0018】
請求項に記載の発明は、請求項1、3又は4の内いずれか1項に記載の金属屑処理装置であって、前記金属屑搬送部の前記ガス導通路の出口が前記金属屑供給部と連結された構成を有している。
この構成により、請求項1、3又は4内いずれか1項の作用、効果に加え、以下の作用、効果を有する。
(1)金属屑搬送部のガス導通路の出口が金属屑供給部と連結されることにより、搬送路内で金属屑の付着物が加熱分解されて発生する分解ガスを金属屑供給部から系外に確実に排出することができると共に、分解ガスの熱を有効に利用して、金属屑供給部から供給される金属屑を予備加熱することができ、金属屑搬送部における処理時間を短縮することが可能で省エネルギー性に優れる。
【0019】
ここで、金属屑搬送部のガス導通路の出口が金属屑供給部に連結されていればよく、ガス導通路から金属屑供給部までの経路は適宜、選択することができるが、ガス導通路を搬送路の長手方向と平行に配置し、ガス導通路の端部の出口を金属屑供給部と連結することが好ましい。これにより、ガス導通路から金属屑供給部までの経路を最短にして分解ガスを効率的に排出することができ、分解ガスから周囲への放熱を押え、金属屑供給部での予備加熱に効率的に利用することができる。尚、ガス導通路の出口と金属屑供給部との連結位置を金属屑供給部の下流側に配置することにより、分解ガスを金属屑と確実に接触させることができ、排熱を有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態1の金属屑処理装置の構成を示す模式正面図
図2】(a)実施の形態1の金属屑処理装置の金属屑搬送部を示す要部断面模式正面図 (b)図2(a)のA−A線矢視模式端面断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の金属屑処理装置について、以下図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1の金属屑処理装置の構成を示す模式正面図である。
図1中、1はアルミニウム、亜鉛、銅、鉄等の金属や真鍮、アルミニウム、ステンレス等の合金の加工時或いはこれらの金属製品の廃棄時に発生する金属屑に付着した切削油や研削油等の切削油剤、塗料、防錆剤等の各種付着物の加熱分解に用いられる実施の形態1における金属屑処理装置、2は金属屑処理装置1の金属屑搬送部、3は金属屑搬送部2の筒状の搬送路、3aは搬送路3の周壁、4は搬送路3の上流側に連設された金属屑処理装置1の金属屑供給部、5は搬送路3の下流側に連設された金属屑処理装置1の金属屑排出部、6はボイラー等により発生する乾き飽和蒸気を加熱して過熱蒸気を発生させ金属屑搬送部2に飽和蒸気及び/又は過熱蒸気を供給する金属屑処理装置1の蒸気供給部である。
【0022】
金属屑供給部4は連続的又は間欠的に金属屑を供給できるものであればよい。金属屑供給部4がスクレーパーコンベアやスクリューコンベア等を備える場合は、多量の金属屑を連続的に処理することができ、装置の自動化が容易で操作性、作業効率性に優れる。また、金属屑供給部4にシャッター式の計量ダンパー等を備えてもよい。
尚、金属屑供給部4の前後にスライドゲート等を設けた場合、金属屑搬送部2の搬送路3内の気密性を上げ、酸素濃度を制御することができ、金属屑の酸化を防ぐことができる。
また、金属屑のサイズを調整するために、金属屑の破断や切断等を行う剪断式(一軸剪断破砕機等)や衝撃式(ハンマークラッシャー等)の前処理装置を金属屑供給部4の上流側に設けた場合、金属屑のサイズを調整することができ、加熱分解の効率性を向上させることができる。
【0023】
次に、実施の形態1の金属屑処理装置の金属屑搬送部の詳細について説明する。
図2(a)は実施の形態1の金属屑処理装置の金属屑搬送部を示す要部断面模式正面図であり、図2(b)は図2(a)のA−A線矢視模式端面面図である。
図2(a)中、10は搬送路3に内挿された撹拌部、11は撹拌部10の回転軸、12は回転軸11の外周に配設された撹拌部10の螺旋状の羽根、12aは螺旋状の羽根12の間に形成された搬送路3内の空間、13は回転軸11の長手方向と平行に配設され羽根12の外周側を180度間隔で連結補強する2箇所の連結撹拌部、14は搬送路3の周壁3aの上面側に形成された複数のガス排出口、15は搬送路3の周壁3aの外側で複数のガス排出口14と連通し搬送路3内で金属屑の付着物が加熱分解されて発生する分解ガスを金属屑搬送部2から排出するガス導通路、15aはガス導通路15の端部に形成され金属屑供給部4の下流端部に連結されるガス導通路15の出口、16は撹拌部10の回転軸11の一端部に連結された金属屑搬送部2の駆動モーターである。
【0024】
ガス排出口14の形状や大きさは適宜、選択することができるが、ガス排出口14を螺旋状の羽根12のピッチと同等の間隔で配置した場合、撹拌部10の回転中に、螺旋状の羽根12の間に形成された各々の空間12aが必ずガス排出口14の位置と重なって連通するので、各々のガス排出口14から確実かつ効率的に分解ガスを排出することができる。
撹拌部10の連結撹拌部13は螺旋状の羽根12の外周側を固定できるものであればよいが、平鋼(フラットバー)等の板状部材が好適に用いられる。連結撹拌部13により、螺旋状の羽根12の外周側で隣接する羽根同士を回転軸の長手方向に沿うように連結補強することにより、剛性を確保して羽根12の変形を防止することができる。また、連結撹拌部13が平板状であることにより、金属屑との接触面積を確保することができ、金属屑を効率的に掻き上げて撹拌効果を高めることができる。本実施の形態では、連結撹拌部13を円周方向に180度の間隔を空けて2箇所に配置したが、連結撹拌部13の数は、2箇所乃至8箇所の範囲で選択することが好ましい。連結撹拌部13の数が1箇所だけになると、羽根12が変形し易くなり、撹拌部10全体の剛性が低下して撓みが発生し易くなると共に撹拌効果が低下し易くなる傾向があり、8箇所より多くなるにつれ、撹拌に寄与しない連結撹拌部13が増え、撹拌部10全体の重量が増加して撹拌部10の回転に必要なエネルギーが増大し、金属屑の撹拌効率性、省エネルギー性が低下し易くなる傾向があることがわかったためである。
【0025】
図2(b)中、17は金属屑搬送部2の搬送路3の一側部に配設され蒸気供給部6(図1参照)と接続される蒸気供給管、18は蒸気供給管17と連通し搬送路3の長手方向に沿って配置された複数の蒸気噴射口である。
蒸気噴射口18の形状や配置は適宜、選択することができるが、搬送路3の長手方向に沿って複数の蒸気噴射口18を設けることにより、搬送路3の全長にわたって効率的に飽和蒸気及び/又は過熱蒸気を行き渡らせることができ、金属屑との接触効率を高めることができるので、飽和蒸気及び/又は過熱蒸気の供給量を低減することが可能で、省エネルギー性に優れる。また、蒸気噴射口18の1箇所当りの蒸気圧力を下げて効率的に蒸気を供給することができ、蒸気が過剰に供給されてショートパスすることを防止でき、省エネルギー性に優れる。さらに、蒸気噴射口18から噴射される蒸気圧力を下げることにより、粉塵爆発の危険性があるアルミニウム等の微粉の飛散を防ぐことができ、安全性に優れる。
尚、搬送路3の周壁3aに孔をあけて蒸気噴射口18を形成し、搬送路3の周壁3aの外周面側で蒸気供給管17と連通させることにより、搬送路3の内部に突起物がなく、撹拌部10の羽根12との干渉を防ぐことができ、羽根12の外周面と搬送路3の内周面との隙間を小さくして飽和蒸気及び/又は過熱蒸気のショートパスを防止できる。また、蒸気噴射口18を螺旋状の羽根12のピッチと同等の間隔で配置した場合、撹拌部10の回転中に、螺旋状の羽根12の間に形成された各々の空間12aが必ず蒸気噴射口18の位置と重なって連通するので、各々の蒸気噴射口18から空間12aに確実かつ効率的に飽和蒸気及び/又は過熱蒸気を供給することができる。
【0026】
以上のように構成された実施の形態1の金属屑処理装置の動作について説明する。
図1の蒸気供給部6から供給される飽和蒸気及び/又は過熱蒸気は、蒸気供給管17を通り、各々の蒸気噴射口18から金属屑搬送部2の搬送路3の内部に噴射される。
また、図1の金属屑供給部4から供給された金属屑は搬送路3の上流側に投入される。
図2において駆動モーター16で撹拌部10を回転させることにより、金属屑は搬送路3に沿って下流側(図2(a)の右側から左側)に搬送される。金属屑が搬送路3を通過する間に、蒸気噴射口18から噴射される100℃〜200℃の飽和蒸気及び/又は150℃〜600℃の過熱蒸気により、金属屑に付着した水分が蒸発し、切削油剤、塗料、防錆剤等の付着物が加熱分解され、除去される。
付着物が除去された金属屑は搬送路3の下流側の金属屑排出部5から排出され、回収されて金属資源として再利用される。
【0027】
図2において金属屑供給部4にはブロワ(図示せず)が接続されており、付着物の加熱分解によって搬送路3の内部で発生した分解ガスや蒸気は吸引され、ガス排出口14からガス導通路15を通り、金属屑供給部4を経由して系外に排出される。このとき、分解ガスの熱を有効に利用して、金属屑供給部4から供給される金属屑を予備加熱することができ、金属屑搬送部2における処理時間を短縮することができる。排出された分解ガスは、熱交換器で冷却した後、湿式スクラバーで捕集することにより、未燃ガスの爆発や分解ガスに同伴して排出されるアルミニウム等の微粉による粉塵爆発を防ぐことができる。このとき、分解ガスを冷却して得られる油分と水分は、エマルジョン化して燃料として再利用することもできる。尚、付着物の加熱分解によって発生する分解ガスの安全な処理、脱臭等の目的で、燃焼処理してもよく、さらにその排熱を金属屑の予備加熱に利用してもよい。
尚、金属屑が搬送路3の内部を上流から下流に向かって移動するにつれ、付着物の加熱、分解が進行し、分解ガスが発生するので、搬送路3の少なくとも下流側に1乃至複数のガス排出口14は設ければよいが、本実施の形態のように搬送路3のほぼ全長に渡って複数のガス排出口14を設けることにより、搬送路3の内部で発生した分解ガスを搬送路3全体から効率的に排出させることができる。
また、本実施の形態では、ガス導通路15の出口15aを金属屑供給部4に接続することにより、分解ガスの熱を利用して金属屑の予備加熱を行ったが、必ずしもガス導通路15の出口15aを金属屑供給部4に接続する必要はなく、ガス導通路15から排出される分解ガスを直接、熱交換器で冷却してもよいし、過熱蒸気発生装置等の加熱に利用してもよい。
【0028】
実施の形態1における金属屑処理装置によれば、以下の作用を有する。
(1)金属屑搬送部の上流側に連設された金属屑供給部と、金属屑搬送部の下流側に連設された金属屑排出部と、金属屑搬送部に飽和蒸気及び/又は過熱蒸気を供給する蒸気供給部を有することにより、金属屑供給部から供給された金属屑が金属屑搬送部で搬送されて金属屑排出部から排出されるまでの間に、金属屑に付着した切削油剤、塗料、防錆剤等の各種付着物を、蒸気供給部から供給される飽和蒸気及び/又は過熱蒸気によって短時間で加熱分解して取り除くことができ、省エネルギー性に優れる。
(2)金属屑搬送部が、筒状の搬送路と、搬送路に内挿された撹拌部を有することにより、撹拌部で金属屑を搬送しながら、蒸気供給部から供給される飽和蒸気及び/又は過熱蒸気と金属屑を確実に接触させて、金属屑の表面に付着した付着物を効率的に加熱分解することができ、付着物除去の効率性、確実性に優れる。
(3)金属屑搬送部が、搬送路の周壁の上面側に形成された1以上のガス排出口と、搬送路の周壁の外側でガス排出口と連通し金属屑の付着物が加熱分解されて発生する分解ガスを金属屑搬送部から排出するガス導通路を有することにより、金属屑の付着物が加熱分解されて発生する分解ガスを各々のガス排出口から確実かつ効率的に排出させ、ガス導通路に沿ってスムーズに移動させて金属屑搬送部から系外に排出することができ、分解ガスの排出性に優れる。
(4)筒状の搬送路に撹拌部が内挿されることにより、ロータリーキルン等に比べて無駄な空間が少なく、装置をコンパクト化することができ、省スペース性に優れると共に、放熱ロスも少なく、加熱の効率性に優れる。
(5)乾燥処理材等を使用することなく飽和蒸気及び/又は過熱蒸気のみで金属屑の付着物を加熱分解して除去することができ、省資源性に優れると共に、金属屑に乾燥処理材等が付着することがなく、乾燥処理材等を分離する機構や工程が不要で、付着物のない金属屑を得ることができ、また酸化による劣化も防ぐことができるため、高歩留まりで金属屑のリサイクル性に優れる。
(6)撹拌部の回転数を制御するだけで搬送路内の金属屑の滞留時間をコントロールすることができるので、金属屑の大きさ、形状、嵩比重或いは付着物の種類等に応じて、必要な滞留時間を設定することにより、金属屑の付着物を確実に加熱分解することができ、操作性、汎用性、処理効率性に優れる。
(7)撹拌部が、回転軸の外周に配設された螺旋状の羽根と、回転軸の長手方向と平行に配設され羽根の外周側を連結補強する連結撹拌部を有することにより、搬送路と近接する羽根の外周側において連結撹拌部で金属屑を掻き上げるようにして撹拌することができ、金属屑と飽和蒸気及び/又は過熱蒸気を確実に接触させて金属屑の表面に付着した付着物を効率的に加熱分解しながら搬送することができ、省エネルギー性、付着物除去の効率性に優れる。
(8)撹拌部が、螺旋状の羽根を有することにより、様々な形状や嵩比重の金属屑に対して、撹拌部を回転させるモーターの回転数を制御するだけで、搬送路内の金属屑の滞留時間を正確にコントロールして付着物を確実に加熱分解することができ、加熱分解処理の確実性、安定性に優れる。
(9)撹拌部が、回転軸の外周に配設された螺旋状の羽根と、回転軸の長手方向と平行に配設され羽根の外周側を連結補強する連結撹拌部を有することにより、スクリューフィーダーと同等の剛性と搬送効率、金属屑の搬送の定量性を保つことができ、付着物の加熱分解の効率性に優れる。
(10)撹拌部が、回転軸の長手方向と平行に配設され羽根の外周側を連結補強する連結撹拌部を有することにより、撹拌部の強度を向上させることができるので、羽根の厚みを薄くして撹拌部の軽量化を図り、羽根の外周部と搬送路内表面との摩擦を軽減することができ、金属屑搬送部の耐久性、長寿命性に優れる。
(11)撹拌部が、回転軸の長手方向と平行に配設され羽根の外周側を連結補強する連結撹拌部を有することにより、撹拌部の剛性を保つことができ、ブリケットやダイカストのバリ等の塊状の金属屑或いは様々な形状や比重の金属屑に対しても、羽根の変形や破損等の発生を効果的に防止して、金属屑を確実に搬送することができ、金属屑の搬送の信頼性、確実性に優れる。
(12)撹拌部の螺旋状の羽根が回転軸の外周に配設されているので、十分な剛性を確保して撓みや変形を防止して撹拌部を確実に回転させることができ、動作の安定性に優れる。
(13)金属屑搬送部のガス排出口が、螺旋状の羽根のピッチと同等の間隔で複数配置されている場合、撹拌部の回転中に、螺旋状の羽根の間に形成された各々の空間とガス排出口を確実に連通させ、金属屑の付着物が加熱分解されて発生する分解ガスを確実かつ効率的に排出することができ、分解ガスの排出の確実性、効率性に優れる。
(14)金属屑搬送部が、蒸気供給部と連結され金属屑搬送部の搬送路の周壁に形設された蒸気噴射口を有するので、蒸気噴射口から搬送路の内部に確実に飽和蒸気及び/又は過熱蒸気を噴射して金属屑の付着物を効率的に加熱分解することができ、加熱分解の効率性、安定性に優れる。
(15)金属屑搬送部のガス導通路の出口が金属屑供給部と連結されることにより、搬送路内で金属屑の付着物が加熱分解されて発生する分解ガスを金属屑供給部から系外に確実に排出することができると共に、分解ガスの熱を有効に利用して、金属屑供給部から供給される金属屑を予備加熱することができ、金属屑搬送部における処理時間を短縮することが可能で省エネルギー性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、金属屑に付着した切削油剤、塗料、防錆剤等の各種付着物を短時間で確実かつ効率的に加熱分解して取り除くことができ、高歩留まりで処理能力が高く、省資源性、省エネルギー性に優れると共に、コンパクトで安全性、取扱い性、省スペース性に優れた金属屑処理装置の提供を行い、金属屑の有効利用を促進して環境保護、省資源化に貢献することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 金属屑処理装置
2 金属屑搬送部
3 搬送路
3a 周壁
4 金属屑供給部
5 金属屑排出部
6 蒸気供給部
10 撹拌部
11 回転軸
12 羽根
12a 空間
13 連結撹拌部
14 ガス排出口
15 ガス導通路
15a 出口
16 駆動モーター
17 蒸気供給管
18 蒸気噴射口
【要約】
【課題】金属屑に付着した切削油剤、塗料、防錆剤等の各種付着物を短時間で確実かつ効率的に加熱分解して取り除くことができ、酸化を防ぎ、高歩留まりで処理能力が高く、省資源性、省エネルギー性に優れると共に、コンパクトで安全性、取扱い性、省スペース性に優れた金属屑処理装置の提供。
【解決手段】金属屑搬送部と、金属屑搬送部の上流側に連設された金属屑供給部と、金属屑搬送部の下流側に連設された金属屑排出部と、金属屑搬送部に飽和蒸気及び/又は過熱蒸気を供給する蒸気供給部と、を有し、金属屑搬送部が、筒状の搬送路と、搬送路に内挿された撹拌部と、搬送路の周壁の上面側に形成された1以上のガス排出口と、搬送路の周壁の外側でガス排出口と連通し金属屑の付着物が加熱分解されて発生する分解ガスを金属屑搬送部から排出するガス導通路と、を備えている。
【選択図】図2
図1
図2