特許第6133501号(P6133501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133501
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】ポリエチレン物品
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/00 20060101AFI20170515BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20170515BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   C08J5/00CES
   C08L23/04
   C08K5/20
【請求項の数】34
【全頁数】54
(21)【出願番号】特願2016-516544(P2016-516544)
(86)(22)【出願日】2014年9月23日
(65)【公表番号】特表2016-531958(P2016-531958A)
(43)【公表日】2016年10月13日
(86)【国際出願番号】US2014056932
(87)【国際公開番号】WO2015042569
(87)【国際公開日】20150326
【審査請求日】2016年5月23日
(31)【優先権主張番号】61/881,251
(32)【優先日】2013年9月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/492,585
(32)【優先日】2014年9月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599060788
【氏名又は名称】ミリケン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Milliken & Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】ドットソン、ダリン・エル.
(72)【発明者】
【氏名】サイ、チー−チュン
(72)【発明者】
【氏名】チン、ハイフ
(72)【発明者】
【氏名】ミリー、ジョン・ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】クーリー、メアリー・アンジェラ
(72)【発明者】
【氏名】デイ、サンジーブ・ケー.
(72)【発明者】
【氏名】トーレス、エデュアード
(72)【発明者】
【氏名】アルバレズ、フランシスコ
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−044740(JP,A)
【文献】 特表2009−508995(JP,A)
【文献】 特開2010−111761(JP,A)
【文献】 特開2006−225576(JP,A)
【文献】 特開2009−019401(JP,A)
【文献】 特開2000−143832(JP,A)
【文献】 特開2002−031213(JP,A)
【文献】 特表2002−538255(JP,A)
【文献】 特開2008−179779(JP,A)
【文献】 特開2013−116938(JP,A)
【文献】 特開平07−256751(JP,A)
【文献】 特開平09−194650(JP,A)
【文献】 特開平08−197640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00−5/02;5/12−5/22
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
B29C 45/00−45/84
B29C 47/00−47/96
B29C 55/00−55/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ポリエチレンポリマーから生成されたポリエチレン物品であって、前記物品は、ある厚さを有し、前記物品は、前記物品が生成されたとき、前記溶融ポリエチレンポリマーが前記物品中の領域内を流れた方向に対応する少なくとも1つのローカル機械方向(MDローカル)を有し、前記物品は、前記物品内の各ローカル機械方向に対して直角である対応するローカル横断方向(TDローカル)を有し、前記物品は、各ローカル機械方向および対応するローカル横断方向に対して直角であり、かつ前記物品の前記厚さを通り抜けるラインに対して平行であるローカル法線方向(NDローカル)を有し、前記ポリエチレンポリマーは、複数のラメラを含み、各ラメラは、結晶ポリエチレンを含み、前記結晶ポリエチレンは、b軸を有し、前記ラメラ中の前記結晶ポリエチレンの前記b軸は、各ローカル機械方向においてヘルマン配向インデックス(F(MDローカル、020))、各対応するローカル横断方向においてヘルマン配向インデックス(F(TDローカル、020))、および各対応するローカル法線方向においてヘルマン配向インデックス(F(NDローカル、020))を有し、前記ラメラ中の前記結晶ポリエチレンの前記b軸は、F(MDローカル、020)>0、F(MDローカル、020)>F(TDローカル、020)、およびF(MDローカル、020)>F(NDローカル、020)であるように、前記物品内で配向している、ポリエチレン物品。
【請求項2】
F(MDローカル、020)>0.01、F(MDローカル、020)−F(TDローカル、020)>0.01、F(MDローカル、020)−F(NDローカル、020)>0.01である、請求項1に記載のポリエチレン物品。
【請求項3】
F(MDローカル、020)>0.05、F(MDローカル、020)−F(TDローカル、020)>0.05、F(MDローカル、020)−F(NDローカル、020)>0.05である、請求項1に記載のポリエチレン物品。
【請求項4】
前記物品が、前記ポリエチレンポリマーのための成核剤をさらに含む、請求項1から3のいずれかに記載のポリエチレン物品。
【請求項5】
前記成核剤が、式(I)の構造に従う化合物を含み、
【化1】
式中、R1は、ヒドロキシ、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アリール基、および置換アリール基からなる群から選択され、nは、0または1〜4の正の整数であり、Lは、2個以上の原子、および連結基中の2個の原子の間の少なくとも1つの二重結合を含む連結基であり、vは、1〜3の正の整数であり、R2は、(i)Lが二価連結基であり、vが1であるとき、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され、(ii)Lが三価連結基であり、vが1であるとき、アルカンジイル基、置換アルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、置換シクロアルカンジイル基、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基からなる群から選択され、(iii)Lが二価連結基であり、vが2であるとき、アルカンジイル基、置換アルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、置換シクロアルカンジイル基、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基からなる群から選択され、(iv)Lが二価連結基であり、vが3であるとき、アルカントリイル基、置換アルカントリイル基、シクロアルカントリイル基、置換シクロアルカントリイル基、アレーントリイル基、置換アレーントリイル基、ヘテロアレーントリイル基、および置換ヘテロアレーントリイル基からなる群から選択され、xは、正の整数であり、各M1は、金属カチオンであり、yは、前記カチオンの原子価であり、zは、正の整数であり、bは、0または正の整数であり、bが正の整数であるとき、各Q1は、負に帯電している対イオンであり、aは、前記負に帯電している対イオンの原子価であり、v、x、y、z、a、およびbの値は、等式(vx)+(ab)=yzを満足させ、Lが二価連結基であり、vが1であり、R2がシクロアルキル基または置換シクロアルキル基であるとき、前記シクロアルキル基または置換シクロアルキル基の環状ポーションは、一緒に縮合している2個以下の環の構造を含む、請求項4に記載のポリエチレン物品。
【請求項6】
前記成核剤が、式(CX)の構造に従う化合物を含み、
【化2】
式中、R111は、シクロペンチル基および式(CXI)の構造に従う部分からなる群から選択され、R112は、水素およびヒドロキシからなる群から選択され、式(CXI)は、
【化3】
であり、R115は、水素、ハロゲン、メトキシ、およびフェニルからなる群から選択され、xは、正の整数であり、各M1は、金属カチオンであり、yは、前記カチオンの原子価であり、zは、正の整数であり、bは、0または正の整数であり、bが正の整数であるとき、各Q1は、負に帯電している対イオンであり、aは、前記負に帯電している対イオンの原子価であり、x、y、z、a、およびbの値は、等式x+(ab)=yzを満足させる、請求項5に記載のポリエチレン物品。
【請求項7】
111が、式(CXI)の前記構造に従う部分である、請求項6に記載のポリエチレン物品。
【請求項8】
115が、ハロゲンである、請求項7に記載のポリエチレン物品。
【請求項9】
115が、塩素である、請求項8に記載のポリエチレン物品。
【請求項10】
112が、水素である、請求項9に記載のポリエチレン物品。
【請求項11】
xが、1であり、M1が、ナトリウムカチオンであり、yが、1であり、zが、1であり、bが、0である、請求項10に記載のポリエチレン物品。
【請求項12】
前記成核剤が、前記ポリエチレンポリマーの全重量に対して1005,000百万分率(ppm)の量で前記物品中に存在する、請求項4から11のいずれかに記載のポリエチレン物品。
【請求項13】
前記成核剤が、前記ポリエチレンポリマーの全重量に対して2503,000百万分率(ppm)の量で前記物品中に存在する、請求項12に記載のポリエチレン物品。
【請求項14】
前記成核剤が、複数の粒子の形態で存在し、前記粒子は、ある長さおよびある幅を有し、前記長さ対前記幅の比が、2:1またはそれ超である、請求項4から13のいずれかに記載のポリエチレン物品。
【請求項15】
前記ポリエチレンポリマーが、直鎖状低密度ポリエチレンである、請求項1から14のいずれかに記載のポリエチレン物品。
【請求項16】
前記ポリエチレンポリマーが、高密度ポリエチレンである、請求項1から14のいずれかに記載のポリエチレン物品。
【請求項17】
溶融ポリエチレンポリマーをオリフィスを通してある方向で押し出すことによって生成されるポリエチレン物品であって、前記物品は、ある厚さを有し、前記物品は、前記溶融ポリエチレンポリマーが前記オリフィスを出る前記方向に対応する機械方向(MD)を有し、前記物品は、前記機械方向に対して直角であり、かつ前記物品の前記厚さを通り抜けるラインに対して直角である横断方向(TD)を有し、前記物品は、前記機械方向および前記横断方向に対して直角であり、かつ前記物品の前記厚さを通り抜けるラインに対して平行である法線方向(ND)を有し、前記ポリエチレンポリマーは、複数のラメラを含み、各ラメラは、結晶ポリエチレンを含み、前記結晶ポリエチレンは、b軸を有し、前記ラメラ中の前記結晶ポリエチレンの前記b軸は、前記機械方向においてヘルマン配向インデックス(F(MD、020))、前記横断方向においてヘルマン配向インデックス(F(TD、020))、および前記法線方向においてヘルマン配向インデックス(F(ND、020))を有し、前記ラメラ中の前記結晶ポリエチレンの前記b軸は、F(MD、020)>0、F(MD、020)>F(TD、020)、およびF(MD、020)>F(ND、020)であるように、前記物品内で配向している、物品。
【請求項18】
F(MD、020)>0.01、F(MD、020)−F(TD、020)>0.01、F(MD、020)−F(ND、020)>0.01である、請求項17に記載のポリエチレン物品。
【請求項19】
F(MD、020)>0.05、F(MD、020)−F(TD、020)>0.05、F(MD、020)−F(ND、020)>0.05である、請求項18に記載のポリエチレン物品。
【請求項20】
前記物品が、前記ポリエチレンポリマーのための成核剤をさらに含む、請求項17に記載のポリエチレン物品。
【請求項21】
前記成核剤が、式(I)の構造に従う化合物を含み、
【化4】
式中、R1は、ヒドロキシ、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アリール基、および置換アリール基からなる群から選択され、nは、0または1〜4の正の整数であり、Lは、2個以上の原子、および連結基中の2個の原子の間の少なくとも1つの二重結合を含む連結基であり、vは、1〜3の正の整数であり、R2は、(i)Lが二価連結基であり、vが1であるとき、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され、(ii)Lが三価連結基であり、vが1であるとき、アルカンジイル基、置換アルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、置換シクロアルカンジイル基、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基からなる群から選択され、(iii)Lが二価連結基であり、vが2であるとき、アルカンジイル基、置換アルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、置換シクロアルカンジイル基、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基からなる群から選択され、(iv)Lが二価連結基であり、vが3であるとき、アルカントリイル基、置換アルカントリイル基、シクロアルカントリイル基、置換シクロアルカントリイル基、アレーントリイル基、置換アレーントリイル基、ヘテロアレーントリイル基、および置換ヘテロアレーントリイル基からなる群から選択され、xは、正の整数であり、各M1は、金属カチオンであり、yは、前記カチオンの原子価であり、zは、正の整数であり、bは、0または正の整数であり、bが正の整数であるとき、各Q1は、負に帯電している対イオンであり、aは、前記負に帯電している対イオンの原子価であり、v、x、y、z、a、およびbの値は、等式(vx)+(ab)=yzを満足させ、Lが二価連結基であり、vが1であり、R2がシクロアルキル基または置換シクロアルキル基であるとき、前記シクロアルキル基または置換シクロアルキル基の環状ポーションは、一緒に縮合している2個以下の環の構造を含む、請求項20に記載のポリエチレン物品。
【請求項22】
前記成核剤が、式(CX)の構造に従う化合物を含み、
【化5】
式中、R111は、シクロペンチル基および式(CXI)の構造に従う部分からなる群から選択され、R112は、水素およびヒドロキシからなる群から選択され、式(CXI)は、
【化6】
であり、R115は、水素、ハロゲン、メトキシ、およびフェニルからなる群から選択され、xは、正の整数であり、各M1は、金属カチオンであり、yは、前記カチオンの原子価であり、zは、正の整数であり、bは、0または正の整数であり、bが正の整数であるとき、各Q1は、負に帯電している対イオンであり、aは、前記負に帯電している対イオンの原子価であり、x、y、z、a、およびbの値は、等式x+(ab)=yzを満足させる、請求項21に記載のポリエチレン物品。
【請求項23】
111が、式(CXI)の前記構造に従う部分である、請求項22に記載のポリエチレン物品。
【請求項24】
115が、ハロゲンである、請求項23に記載のポリエチレン物品。
【請求項25】
115が、塩素である、請求項24に記載のポリエチレン物品。
【請求項26】
112が、水素である、請求項25に記載のポリエチレン物品。
【請求項27】
xが、1であり、M1が、ナトリウムカチオンであり、yが、1であり、zが、1であり、bが、0である、請求項26に記載のポリエチレン物品。
【請求項28】
前記成核剤が、前記ポリエチレンポリマーの全重量に対して1005,000百万分率(ppm)の量で前記物品中に存在する、請求項20から27のいずれかに記載のポリエチレン物品。
【請求項29】
前記成核剤が、前記ポリエチレンポリマーの全重量に対して2503,000百万分率(ppm)の量で前記物品中に存在する、請求項28に記載のポリエチレン物品。
【請求項30】
前記成核剤が、複数の粒子の形態で存在し、前記粒子が、ある長さおよびある幅を有し、前記長さ対前記幅の比が、2:1またはそれ超である、請求項20から29のいずれかに記載のポリエチレン物品。
【請求項31】
前記ポリエチレンポリマーが、直鎖状低密度ポリエチレンである、請求項17から30のいずれかに記載のポリエチレン物品。
【請求項32】
前記ポリエチレンポリマーが、高密度ポリエチレンである、請求項17から30のいずれかに記載のポリエチレン物品。
【請求項33】
前記物品が、フィルムである、請求項17から32のいずれかに記載のポリエチレン物品。
【請求項34】
前記物品が、押出パイプである、請求項17から32のいずれかに記載のポリエチレン物品。
【発明の詳細な説明】
【発明の技術分野】
【0001】
本出願は、熱可塑性ポリマーのための成核剤、このような成核剤を含むポリマー組成物、このようなポリマー組成物から作製した物品、ならびにこのようなポリマー組成物を作製および成形する方法に関する。
【背景】
【0002】
ポリエチレンポリマーは、通常条件下で、アモルファス領域と共に散在している結晶領域を含有する半結晶性ポリマーである。特に、ポリエチレンポリマーはポリエチレン鎖の折畳みによって結晶化し、これによってアモルファスポリエチレン相と共に散在している結晶ラメラが生成される。溶融ポリマーを相対的に少ないひずみに供する条件下でポリエチレンポリマーを処理するとき、溶融ポリマー中のポリマー鎖はランダムコイル配置で緩和する。不均質な核(不純物または意図的に添加した薬剤)の非存在下で、十分な鎖間の相互作用が起こり、鎖の折畳みおよびそれに続く結晶ラメラの成長が自発的に開始するまで、溶融ポリマー(たとえば、溶融ポリエチレン)は冷却する。このラメラの成長は典型的には球顆状であり、もしあったとしても、三次元においてポリエチレンの結晶学的a、b、およびc軸の非常に少ない優先配向を示す。
【0003】
しかし、伸びひずみプロセス、たとえば、インフレートフィルムにおいて、および正確なひずみレベルによって、より多いまたはより少ない程度の溶融鎖が流れ方向に伸びてもよい。これらの伸びた鎖のいくらかの整列および誘引はフィブリルの結晶化をもたらすことができ、これは初晶のバルクより高い温度にて形成され、かつ流れ方向に配向されている。これらのフィブリルは、さらなる核生成のための非常に有効な部位であり得、それに続く最も速い成長の方向(ポリエチレン斜方晶系単位格子のb軸)はフィブリル長さに対して直角である。b軸(またはラメラの速い成長方向)は、これらのフィブリルの周りにある程度放射状に分布している(したがって、b軸は、流れ方向に対して直角である)。この形態は、列の核生成、または「シシカバブ」形態と称され、フィブリルは「シシ」を形成し、鎖が折り畳まれたラメラは、「シシ」に対して直角に成長する「カバブ」を形成する。溶融物の伸びひずみの程度および緩和の潜在的な程度が、正確な最終の形態を決定する。中間のひずみにおいて、および/または中程度の可能な緩和、すなわち、結晶化温度に近づく中程度の捕捉された流れ方向配向を伴って、フィブリル核生成密度は中程度である。広範に受け入れられている文献のモデルに基づいて、Keller/Machin1(KM1)形態が結果として生じ、ここでb軸はフィブリルに対して主に直角であり、かつフィブリルの周りに放射状に分布しており(したがって、b軸は、流れ方向に対して直角である)、a軸は、フィブリルまたは流れ方向に対して平行である少なくともいくらかのネットレベルの配向を示す。伸びひずみ、および溶融緩和の欠如のより極端な組合せ下で、フィブリル核生成密度は相対的により高い。Keller/Machin2(KM2)形態が結果として生じ、ここでb軸配向は、フィブリル長さに対して直角である強いネット配向を示し、かつフィブリルの周りに放射状に分布している(したがって、b軸は、流れ方向に対して直角である)。ラメラのねじれは非常に高いフィブリル核生成密度によって可能でなく、c軸は、フィブリルまたは流れ方向に対して平行である有意なネット配向を示す。
【0004】
KM1およびKM2形態は、物品において特定の望ましくない特性をもたらし得る。たとえば、KM1またはKM2形態を示すポリエチレンフィルムは、機械方向および横断方向の間でバランスのとれていない引裂き強度を示す。このバランスの欠如は、特定の物品および用途について問題のあるものではなくてもよい一方、これは引裂き可能なフィルムについて厄介であると証明し得る。引裂き強度においてバランスの欠如を示す引裂き可能なフィルムは、引裂きがフィルムを通って伝播する方向を突然変化させる引裂きを有することができる。これは、包装の内容物がこぼれることを回避するために制御された引裂きが望ましい食品包装において使用される引裂き可能なフィルムについて特に問題があり得る。
【0005】
成核剤の添加は結晶化の特定の側面を変化させることができる一方、これらの添加によって、斜方晶系ポリエチレン単位格子のb軸がポリエチレン物品の機械方向に対して優先的に平行であるポリエチレンを生成することはまだ観察されてこなかった。このような形態が望ましく、独特の物理的特性、たとえば、機械および横断方向においてよりバランスのとれた引裂き強度、より高い機械方向の剛直性、より良好なバリア、ならびにより高い加熱たわみ温度(HDT)、ならびに他の有益な特性を有するポリエチレン物品を生成することができると出願人等は考える。
【発明の概要】
【0006】
本出願は一般に、ポリエチレンポリマーから作製した物品に関する。物品中の結晶ポリエチレンは物品内で独特の配向を示し、この独特の配向は、物品に対して高度に望ましい特性を与えると考えられる。たとえば、物品がフィルムの形態であるとき、結晶ポリエチレンの独特の配向は、フィルムに対してバランスのとれた引裂き強度(引裂き抵抗)を与える。
【0007】
第1の態様において、本発明は、溶融ポリエチレンポリマーから生成されたポリエチレン物品を提供し、物品は、ある厚さを有し、物品は、物品が生成されたとき、溶融ポリエチレンポリマーが物品中の領域内を流れた方向に対応する少なくとも1つのローカル機械方向(MDローカル)を有し、物品は、物品内の各ローカル機械方向に対して直角である対応するローカル横断方向(TDローカル)を有し、物品は、各ローカル機械方向および対応するローカル横断方向に対して直角であり、かつ物品の厚さを通り抜けるラインに対して平行であるローカル法線方向(NDローカル)を有し、ポリエチレンポリマーは、複数のラメラを含み、各ラメラは、結晶ポリエチレンを含み、結晶ポリエチレンは、b軸を有し、ラメラ中の結晶ポリエチレンのb軸は、各ローカル機械方向においてヘルマン配向インデックス(F(MDローカル、020))、各対応するローカル横断方向においてヘルマン配向インデックス(F(TDローカル、020))、および各ローカル法線方向においてヘルマン配向インデックス(F(NDローカル、020))を有し、ラメラ中の結晶ポリエチレンのb軸は、F(MDローカル、020)>0、F(MDローカル、020)>F(TDローカル、020)、およびF(MDローカル、020)>F(NDローカル、020)であるように、物品内で配向している。
【0008】
第2の態様において、本発明は、オリフィスを通して溶融ポリエチレンポリマーをある方向で押し出すことによって生成されるポリエチレン物品を提供し、物品は、ある厚さを有し、物品は、溶融ポリエチレンポリマーがオリフィスを出る方向に対応する機械方向(MD)を有し、物品は、機械方向に対して直角であり、かつ物品の厚さを通り抜けるラインに対して直角である横断方向(TD)を有し、物品は、機械方向および横断方向に対して直角であり、かつ物品の厚さを通り抜けるラインに対して平行である法線方向(ND)を有し、ポリエチレンポリマーは、複数のラメラを含み、各ラメラは、結晶ポリエチレンを含み、結晶ポリエチレンは、b軸を有し、ラメラ中の結晶ポリエチレンのb軸は、機械方向においてヘルマン配向インデックス(F(MD、020))、横断方向においてヘルマン配向インデックス(F(TD、020))、および法線方向においてヘルマン配向インデックス(F(ND、020))を有し、ラメラ中の結晶ポリエチレンのb軸は、F(MD、020)>0、F(MD、020)>F(TD、020)、およびF(MD、020)>F(ND、020)であるように、物品内で配向している。
【発明の詳細な説明】
【0009】
下記の定義を提供して、本出願を通して使用する用語のいくつかを定義する。
【0010】
ここにおいて使用する場合、用語「置換アルキル基」とは、アルカンの炭素原子からの水素原子の除去によって置換アルカンに由来する一価官能基を指す。この定義において、用語「置換アルカン」とは、(1)炭化水素の水素原子の1つ以上が、非水素原子(たとえば、ハロゲン原子)または非アルキル官能基(たとえば、ヒドロキシ基、アリール基、もしくはヘテロアリール基)で置きかえられており、かつ/あるいは(2)炭化水素の炭素−炭素鎖が、酸素原子(エーテルにおけるように)、窒素原子(アミンにおけるように)、または硫黄原子(スルフィドにおけるように)で中断されている、非環式の枝分かれしていないおよび分枝状炭化水素に由来する化合物を指す。
【0011】
ここにおいて使用する場合、用語「置換シクロアルキル基」とは、シクロアルカンの炭素原子からの水素原子の除去によって置換シクロアルカンに由来する一価官能基を指す。この定義において、用語「置換シクロアルカン」とは、(1)炭化水素の水素原子の1つ以上が、非水素原子(たとえば、ハロゲン原子)または非アルキル官能基(たとえば、ヒドロキシ基、アリール基、もしくはヘテロアリール基)で置きかえられており、かつ/あるいは(2)炭化水素の炭素−炭素鎖が、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子で中断されている、飽和した単環式および多環式炭化水素(側鎖を有する、または有さない)に由来する化合物を指す。
【0012】
ここにおいて使用する場合、用語「置換アルコキシ基」とは、ヒドロキシ基からの水素原子の除去によって置換ヒドロキシアルカンに由来する一価官能基を指す。この定義において、用語「置換ヒドロキシアルカン」とは、置換アルカンに結合した1個以上のヒドロキシ基を有する化合物を指し、用語「置換アルカン」は、置換アルキル基の定義において上記で定義されるように定義される。
【0013】
ここにおいて使用する場合、用語「置換アリール基」とは、環炭素原子からの水素原子の除去によって置換アレーンに由来する一価官能基を指す。この定義において、用語「置換アレーン」とは、炭化水素の水素原子の1つ以上が、非水素原子(たとえば、ハロゲン原子)または非アルキル官能基(たとえば、ヒドロキシ基)で置きかえられている、単環式および多環式芳香族炭化水素に由来する化合物を指す。
【0014】
ここにおいて使用する場合、用語「置換ヘテロアリール基」とは、環原子からの水素原子の除去によって置換ヘテロアレーンに由来する一価官能基を指す。この定義において、用語「置換ヘテロアレーン」とは、(1)炭化水素の水素原子の1つ以上が、非水素原子(たとえば、ハロゲン原子)または非アルキル官能基(たとえば、ヒドロキシ基)で置きかえられており、(2)炭化水素の少なくとも1個のメチン基(−C=)が、三価ヘテロ原子で置きかえられており、かつ/あるいは炭化水素の少なくとも1個のビニリデン基(−CH=CH−)が、二価ヘテロ原子で置きかえられている、単環式および多環式芳香族炭化水素に由来する化合物を指す。
【0015】
ここにおいて使用する場合、用語「アルカンジイル基」とは、アルカンからの2個の水素原子の除去によってアルカンに由来する二価官能基を指す。これらの水素原子は、アルカン上の同じ炭素原子から(エタン−1,1−ジイルにおけるように)または異なる炭素原子から(エタン−1,2−ジイルにおけるように)除去することができる。
【0016】
ここにおいて使用する場合、用語「置換アルカンジイル基」とは、アルカンからの2個の水素原子の除去によって置換アルカンに由来する二価官能基を指す。これらの水素原子は、置換アルカン上の同じ炭素原子から(2−フルオロエタン−1,1−ジイルにおけるように)または異なる炭素原子から(1−フルオロエタン−1,2−ジイルにおけるように)除去することができる。この定義において、用語「置換アルカン」は、置換アルキル基の定義における上記と同じ意味を有する。
【0017】
ここにおいて使用する場合、用語「シクロアルカンジイル基」とは、シクロアルカンからの2個の水素原子の除去によってシクロアルカンに由来する二価官能基を指す。これらの水素原子は、シクロアルカン上の同じ炭素原子から、または異なる炭素原子から除去することができる。
【0018】
ここにおいて使用する場合、用語「置換シクロアルカンジイル基」とは、アルカンからの2個の水素原子の除去によって置換シクロアルカンに由来する二価官能基を指す。この定義において、用語「置換シクロアルカン」は、置換シクロアルキル基の定義における上記と同じ意味を有する。
【0019】
ここにおいて使用する場合、用語「アレーンジイル基」とは、環炭素原子からの2個の水素原子の除去によってアレーン(単環式および多環式芳香族炭化水素)に由来する二価官能基を指す。
【0020】
ここにおいて使用する場合、用語「置換アレーンジイル基」とは、環炭素原子からの2個の水素原子の除去によって置換アレーンに由来する二価官能基を指す。この定義において、用語「置換アレーン」とは、炭化水素の水素原子の1つ以上が、非水素原子(たとえば、ハロゲン原子)または非アルキル官能基(たとえば、ヒドロキシ基)で置きかえられている、単環式および多環式芳香族炭化水素に由来する化合物を指す。
【0021】
ここにおいて使用する場合、用語「ヘテロアレーンジイル基」とは、環原子からの2個の水素原子の除去によってヘテロアレーンに由来する二価官能基を指す。この定義において、用語「ヘテロアレーン」とは、炭化水素の少なくとも1個のメチン基(−C=)が、三価ヘテロ原子で置きかえられており、かつ/または炭化水素の少なくとも1個のビニリデン基(−CH=CH−)が、二価ヘテロ原子で置きかえられている、単環式および多環式芳香族炭化水素に由来する化合物を指す。
【0022】
ここにおいて使用する場合、用語「置換ヘテロアレーンジイル基」とは、環原子からの2個の水素原子の除去によって置換ヘテロアレーンに由来する二価官能基を指す。この定義において、用語「置換ヘテロアレーン」は、置換ヘテロアリール基の定義における上記と同じ意味を有する。
【0023】
ここにおいて使用する場合、用語「アルカントリイル基」とは、アルカンからの3個の水素原子の除去によってアルカンに由来する三価官能基を指す。これらの水素原子は、アルカン上の同じ炭素原子から、または異なる炭素原子から除去することができる。
【0024】
ここにおいて使用する場合、用語「置換アルカントリイル基」とは、アルカンからの3個の水素原子の除去によって置換アルカンに由来する三価官能基を指す。これらの水素原子は、置換アルカン上の同じ炭素原子から、または異なる炭素原子から除去することができる。この定義において、用語「置換アルカン」は、置換アルキル基の定義における上記と同じ意味を有する。
【0025】
ここにおいて使用する場合、用語「シクロアルカントリイル基」とは、シクロアルカンからの3個の水素原子の除去によってシクロアルカンに由来する三価官能基を指す。
【0026】
ここにおいて使用する場合、用語「置換シクロアルカントリイル基」とは、アルカンからの3個の水素原子の除去によって置換シクロアルカンに由来する三価官能基を指す。この定義において、用語「置換シクロアルカン」は、置換シクロアルキル基の定義における上記と同じ意味を有する。
【0027】
ここにおいて使用する場合、用語「アレーントリイル基」とは、環炭素原子からの3個の水素原子の除去によってアレーン(単環式および多環式芳香族炭化水素)に由来する三価官能基を指す。
【0028】
ここにおいて使用する場合、用語「置換アレーントリイル基」とは、環炭素原子からの3個の水素原子の除去によって置換アレーンに由来する三価官能基を指す。この定義において、用語「置換アレーン」は、置換アレーンジイル基の定義における上記と同じ意味を有する。
【0029】
ここにおいて使用する場合、用語「ヘテロアレーントリイル基」とは、環原子からの3個の水素原子の除去によってヘテロアレーンに由来する三価官能基を指す。この定義において、用語「ヘテロアレーン」は、ヘテロアレーンジイル基の定義における上記と同じ意味を有する。
【0030】
ここにおいて使用する場合、用語「置換ヘテロアレーントリイル基」とは、環原子からの3個の水素原子の除去によって置換ヘテロアレーンに由来する三価官能基を指す。この定義において、用語「置換ヘテロアレーン」は、置換ヘテロアリール基の定義における上記と同じ意味を有する。
【0031】
第1の態様において、本発明は、溶融ポリエチレンポリマーから生成されるポリエチレン物品を提供する。物品はある厚さを有し、これは一般に物品の三次元のうち最も小さいものである(すなわち、厚さは、物品の長さおよび幅より小さい)。たとえば、フィルムとの関連で、厚さは、フィルムの2つの主要な表面の間の距離である。パイプとの関連で、厚さは、パイプの内壁および外壁の間の距離である。
【0032】
ポリエチレン物品は、溶融ポリエチレンポリマーから生成される。ポリエチレンポリマーは、新たに生成したポリマー、ポリマーリグラインド、消費財廃棄物、または産業廃棄物から作製した、粉末、ダスト、フレーク、プリル、またはペレットの形態で提供することができる。ポリマーをその溶融温度超で加熱して、流れることが可能な溶融した塊を生じさせ、次いで、これを処理して、物品を生成することができる。物品の生成において、溶融ポリマーを、オリフィスもしくはダイに通過させ(フィルムブローイングプロセスにおけるように)、またはモールド中に導入する(射出成形プロセスにおけるように)。いずれの場合にも、物品が形成されるとき、溶融ポリマーは流れる。相対的に単純な物品、たとえば、インフレートフィルムにおいて、溶融ポリマーは、物品の生成の間に単一の方向に流れ、これはポリマーがダイを出る方向である。このような場合、この方向(すなわち、ダイを出るときポリマーが流れる方向)は、機械方向と称される。このような物品の横断方向は、機械方向に対して直角であり、かつ物品の厚さを通り抜けるラインに対して直角である。このような物品の法線方向は、機械方向および横断方向に対して直角であり、かつ物品の厚さを通り抜けるラインに対して平行である。
【0033】
より複雑な物品、たとえば、射出成形によって生成された複雑な幾何学的形状を有する物品において、ポリマーは、モールドキャビティ中の空隙を満たすために複数の方向に流れる。このような物品中の流れパターンは複雑であり得る一方、ポリマーが物品内の個々の領域中を流れる方向を決定することがまだ可能である。この流れ方向(すなわち、物品が生成されるとき、領域内でポリマーが流れる方向)は、ローカル機械方向と称することができる。さらに、物品全体の流れパターンを決定して、ポリマー流れが異なる物品内の各領域について1つ、複数のローカル機械方向を定義することができる。各ローカル機械方向は、その領域中のローカル機械方向に対して直角であり、かつ物品の厚さを通り抜けるラインに対して直角である、対応するローカル横断方向を有する。各ローカル機械方向はまた、その領域中のローカル機械方向に対して直角であり、かつ物品の厚さを通り抜けるラインに対して平行である、対応するローカル法線方向を有する。
【0034】
上で述べたように、物品は、ポリエチレンポリマーを含む。ポリエチレンポリマーは、アモルファス相中に散在している結晶ドメインを含有する半結晶性ポリマーである。結晶ポリエチレンの少なくともいくらかは、ポリマー中のラメラ内に含有されている。結晶ポリエチレンは、a軸、b軸、およびc軸を有する、体心斜方晶系単位格子を想定する。単位格子の寸法は、a×b×c=0.740nm×0.493nm×0.254nmであると決定されてきた。
【0035】
本発明の物品において、ラメラにおける結晶ポリエチレンのb軸は好ましくは、物品の機械方向と実質的に整列している。複数のローカル機械方向を含む物品の場合、各領域(すなわち、別個の流れ方向を示す各領域)内のラメラにおける結晶ポリエチレンのb軸は好ましくは、物品のその領域におけるローカル機械方向と実質的に整列している。上で述べたように、結晶ポリエチレンのb軸のこの整列は、ポリエチレン物品において独特であると考えられる。公知の物品は、機械方向に対して直角である方向でのb軸の等方性の整列または優先的整列のみを示してきた。本発明の物品によって示される機械方向に沿った伸長したラメラの配向は、多くの理由のために有益である。たとえば、インフレートポリエチレンフィルムにおける引裂き抵抗は典型的には、結晶ラメラを一緒に「とじる」アモルファスの鎖状のタイが引裂き伝播経路中に直接位置しているため、ラメラの成長の方向(b軸方向)において最も高い。インフレートポリエチレンフィルムは、Keller−MachinタイプIおよびIIモデルにおいて記載されているようにかなりの横断(TD)ラメラの成長を殆ど常に示すため、引裂き抵抗は、TD方向において非常に高く、一方、MD方向において非常に低い。本発明の物品は、MD引裂きを有意に変化させない一方で、実質的により低いTD引裂きを示す。結果的に、バランスのとれた引裂き特性を有する物品が結果として生じ、このような物品についての当業界で長い間の切実な要求を満足させる。バランスのとれた引裂き特性はまた、フィルムにおける改善された落下衝撃と関連付けされてきており、この新規な配向によって実際示される。ラメラは二次元のフィルム面においてのみ位置するため、全マトリックスの総結晶化度はこの面内に局在化している。その結果、気体(水蒸気、二酸化炭素、酸素、炭化水素)および移動種(脂肪、油、スリップ剤)への浸透速度は、フィルムの法線方向にかけて有意に減少することができる。最後に、インフレートフィルムのMD方向におけるラメラの配向は、この方向において極度に高い引張弾性率を誘起することができ、これは通常観察されるものと反対である。より高いMD引張弾性率は、キャストおよびインフレートフィルムライン上でのより速い屈曲速度を可能とし、かつ固有の弱さで知られている方向においてより大きな強さを有する最終物品を生成することができる。
【0036】
成形プロセスにおいて、ラメラの実質的なMD配向は、この方向に渡る例外的な屈曲(曲げ)弾性率、および極度に高い加熱たわみ温度(HDT)をもたらす。b軸方向は一般に最も低い成形後収縮の方向であるとみなされるため、MD収縮における実質的な低減を実現することができ、等方性の(バランスのとれた)収縮をもたらすことができる。異形押出物品、たとえば、パイプにおいて、機械方向に亘る弾性率の上昇は、たわみおよび壁厚さの分布バリエーションの低減をもたらすことができる。このような配向を有する押出ブロー成形(EBM)または射出圧縮成形(ICM)した物品は、高さまたは体積収縮の低減に加えて、改善されたトップロード剛直性から利益を得ることができ、このように市販装置におけるサイクル時間の低減を可能とする。
【0037】
任意の1つの用途に限定されない一方、このような独特の結晶配向から実現することができる利点によって、今日のポリエチレン物品において観察される現在の配向によって限定される領域において新たなマーケットを生じさせることができる。
【0038】
結晶ポリエチレンの配向は、任意の適切な技術を使用して決定することができる。好ましくは、結晶ポリエチレンの配向は、広角X線極点図分析を使用して決定される。広角X線極点図分析を使用した配向を評価するための適切な技術は、たとえば、論文「Quantitative Pole Figure Analysis of Oriented Polyethylene Films」、Butler et al.(Advances in X−ray Analysis, Vol. 43 (1991)、pp.141〜150)において示されているように当業者には公知である。ヘルマン配向インデックスを使用して、配向の程度を定量化することができる。ヘルマン配向インデックス(F)は、下記の等式を使用して計算される。
【0039】
【化1】
【0040】
等式において、Xは、物品中の方向、たとえば、機械方向、横断方向、または法線方向であり、yは、結晶学的方向である。結晶学的方向は、いずれかの軸(a、b、もしくはc)、または軸に対して直角である回折面(002、020、もしくは002)によって特徴付けることができる。200回折面は、a軸の方向を示し、020回折面は、b軸の方向を示し、002回折面は、c軸の方向を示す。φは、対象とする結晶学的軸(y)および物品における対象とする方向(X)の間の角度である。X線回折結果から計算することができる関数<cos2φ>は、測定される試料中の全ての結晶単位のcos2φ値の平均である。このように、ヘルマン配向インデックスを使用して、ポリエチレン格子単位の任意の軸が物品のプロセス方向のいずれか(すなわち、機械方向、横断方向、または法線方向)に整列している程度を定量化することができる。試料中の全ての結晶単位の対象とする軸が対象とする方向と完全に整列しているとき、<cos2φ>は1と等しく、Fは1と等しい。試料中の全ての結晶単位の対象とする軸が対象とする方向に対して垂直に配向しているとき、<cos2φ>は、0と等しく、Fは、−0.5と等しい。試料中の全ての結晶単位の対象とする軸が、対象とする方向に関してランダムに配向しているとき、<cos2φ>は、1/3と等しく、Fは、0と等しい。
【0041】
上で述べたように、結晶ポリエチレンのb軸は好ましくは、物品の機械方向と実質的に整列している。機械方向におけるこの優先的整列は、機械方向におけるb軸のヘルマン配向インデックス(F(MD、020))および横断方向におけるb軸のヘルマン配向インデックス(F(TD、020))および法線方向(F(ND、020))を比較することによって定量化することができる。好ましくは、機械方向におけるb軸のヘルマン配向インデックスは、0超であり、かつ横断方向および法線方向の両方における配向インデックス超である。これは下記の不等式で表すことができる。F(MD、020)>0;F(MD、020)>F(TD、020);およびF(MD、020)>F(ND、020)。別の好ましい態様において、ヘルマン配向インデックスは、下記の不等式を満足させる。F(MD、020)>0.01;F(MD、020)−F(TD、020)>0.01;およびF(MD、020)−F(ND、020)>0.01。さらに別の好ましい態様において、ヘルマン配向インデックスは、下記の不等式を満足させる。F(MD、020)>0.05;F(MD、020)−F(TD、020)>0.05;およびF(MD、020)−F(ND、020)>0.05。上で述べたように、この優先的配向は、複数のローカル機械方向を有する物品によってさえも示される。このような場合において、ローカル機械方向におけるb軸のヘルマン配向インデックスは、0超であり、かつローカル横断方向およびローカル法線方向の両方において配向インデックス超である。これは下記の不等式で表すことができる。F(MDローカル、020)>0;F(MDローカル、020)>F(TDローカル、020);およびF(MDローカル、020)>F(NDローカル、020)。別の好ましい態様において、ヘルマン配向インデックスは、下記の不等式を満足させる。F(MDローカル、020)>0.01;F(MDローカル、020)−F(TDローカル、020)>0.01;およびF(MDローカル、020)−F(NDローカル、020)>0.01。さらに別の好ましい態様において、ヘルマン配向インデックスは、下記の不等式を満足させる。F(MDローカル、020)>0.05;F(MDローカル、020)−F(TDローカル、020)>0.05;およびF(MDローカル、020)−F(NDローカル、020)>0.05。
【0042】
物品は、任意の適切なポリエチレンポリマーを含むことができる。適切なポリエチレンには、これらに限定されないが、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、およびこれらの組合せが含まれる。ある特定の好ましい態様において、ポリエチレンポリマーは、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、およびこれらの混合物からなる群から選択される。別の好ましい態様において、ポリエチレンポリマーは、高密度ポリエチレンである。
【0043】
本発明における使用に適した高密度ポリエチレンポリマーは一般に、約0.940g/cm3超の密度を有する。ポリマーの適切な密度に対する上限は存在しないが、高密度ポリエチレンポリマーは典型的には、約0.980g/cm3未満(たとえば、約0.975g/cm3未満)の密度を有する。
【0044】
本発明における使用に適した高密度ポリエチレンポリマーは、1個以上のα−オレフィンを有するエチレンのホモポリマーまたはコポリマーでよい。適切なα−オレフィンには、これらに限定されないが、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、および4−メチル−1−ペンテンが含まれる。コモノマーは、コポリマー中に任意の適切な量、たとえば、約5重量%以下(たとえば、約3mol%以下)の量で存在することができる。当業者が理解するように、コポリマーに適したコモノマーの量は、コポリマーについての最終使用、およびこの最終使用によって決定される、必要とされるまたは所望のポリマー特性によって大部分は決定される。
【0045】
本発明における使用に適した高密度ポリエチレンポリマーは、任意の適切なプロセスによって生成することができる。たとえば、ポリマーは、たとえば、米国特許第2,816,883号(Larcharら)に記載されているようにフリーラジカルプロセスによって非常に高い圧力を使用して生成することができるが、ポリマーは典型的には、「低圧力」触媒作用プロセスにおいて生成される。この文脈において、用語「低圧力」は、6.9MPa(たとえば、1,000psig)未満、たとえば、1.4〜6.9MPa(200〜1,000psig)の圧力で行われるプロセスを示すために使用される。適切な低圧力触媒作用プロセスの例には、これらに限定されないが、溶液重合プロセス(すなわち、ポリマーのための溶媒を使用して重合が行われるプロセス)、スラリー重合プロセス(すなわち、その中でポリマーが溶解もしくは膨潤しない炭化水素液を使用して重合が行われるプロセス)、気相重合プロセス(たとえば、液体媒体もしくは希釈剤を使用せずに重合が行われるプロセス)、または多段階反応器重合プロセスが含まれる。適切な気相重合プロセスはまた、いわゆる、「凝縮モード」または「超凝縮モード」プロセスを含み、ここでは液体炭化水素が流動床中に導入され、重合プロセスの間に生じた熱の吸収を増加させる。これらの凝縮モードおよび超凝縮モードプロセスにおいて、液体炭化水素は典型的にはリサイクルストリーム中で凝縮され、反応器において再使用される。多段階反応器プロセスは、触媒(たとえば、クロム触媒)は、複数のセットの反応条件に曝露されるように、直列、平行、または、直列もしくは平行の組合せで接続されているスラリープロセス反応器(タンクまたはループ)の組合せを利用することができる。多段階反応器プロセスはまた、直列の2つのループを合わせ、直列の1つ以上のタンクおよびループを合わせ、直列の複数の気相反応器、またはループ−気相のアレンジを使用することによって行うことができる。触媒を異なるセットの反応器条件に曝露させるこれらの能力によって、多段階反応器プロセスを使用して、マルチモーダルポリマー、たとえば、下記で考察するものを生成することが多い。適切なプロセスはまた、プレ重合工程が行われるものを含む。このプレ重合工程において、触媒は典型的には、より小さな別々の反応器において穏やかな条件下にて共触媒およびエチレンに曝露され、重合反応は、触媒が相対的に少量(たとえば、総重量の約5%〜約30%)のこのように得られた組成物を含むまで進行させることができる。次いで、このプレ重合した触媒を、重合が行われる大規模な反応器に導入する。
【0046】
本発明における使用に適した高密度ポリエチレンポリマーは、任意の適切な触媒または触媒の組合せを使用して生成することができる。適切な触媒は、遷移金属触媒、たとえば、担持された還元された酸化モリブデン、アルミナ上のモリブデン酸コバルト、酸化クロム、および遷移金属ハロゲン化物を含む。酸化クロム触媒は典型的には、クロム化合物を多孔質の高表面積のオキシド担体、たとえば、シリカ上に含浸させ、次いで、これを500〜900℃にて乾燥した空気中でか焼することによって生成される。これによって、クロムは、六価の表面クロム酸エステルまたは二クロム酸エステルに変換される。酸化クロム触媒を、金属アルキル共触媒、たとえば、アルキルホウ素、アルキルアルミニウム、アルキル亜鉛、およびアルキルリチウムと併せて使用することができる。酸化クロムのための担体は、シリカ、シリカ−チタニア、シリカ−アルミナ、アルミナ、およびアルミノホスフェートを含む。酸化クロム触媒のさらなる例は、より低い価数の有機クロム化合物、たとえば、ビス(アレーン)Cr0、アリルCr2+およびCr3+、Cr2+およびCr4+のベータ安定化アルキル、ならびにビス(シクロペンタジエニル)Cr2+を上述したものなどの酸化クロム触媒上に堆積させることによって生成されたこれらの触媒を含む。適切な遷移金属触媒はまた、担持されたクロム触媒、たとえば、クロモセンまたはシリルクロメート(たとえば、ビ(トリスフェニルシリル)クロメート)をベースとするものを含む。これらのクロム触媒は、酸化クロム触媒のための上述したものなどの任意の適切な高表面積担体上に担持されることができ、シリカが典型的には使用される。担持されたクロム触媒はまた、共触媒、たとえば、酸化クロム触媒について上で列挙した金属アルキル共触媒と併せて使用することができる。適切な遷移金属ハロゲン化物触媒は、チタン(III)ハロゲン化物(たとえば、塩化チタン(III))、チタン(IV)ハロゲン化物(たとえば、塩化チタン(IV))、バナジウムハロゲン化物、ジルコニウムハロゲン化物、およびこれらの組合せを含む。これらの遷移金属ハロゲン化物は、高表面積の固体、たとえば、塩化マグネシウム上に担持されることが多い。遷移金属ハロゲン化物触媒は典型的には、アルミニウムアルキル共触媒、たとえば、トリメチルアルミニウム(すなわち、Al(CH33)またはトリエチルアルミニウム(すなわち、Al(C253)と併せて使用される。これらの遷移金属ハロゲン化物はまた、多段階反応器プロセスにおいて使用されてもよい。適切な触媒はまた、メタロセン触媒、たとえば、シクロペンタジエニルチタンハロゲン化物(たとえば、シクロペンタジエニルチタンクロリド)、シクロペンタジエニルジルコニウムハロゲン化物(たとえば、シクロペンタジエニルジルコニウムクロリド)、シクロペンタジエニルハフニウムハロゲン化物(たとえば、シクロペンタジエニルハフニウムクロリド)、およびこれらの組合せを含む。インデニルまたはフルオレニルリガンドと複合体を形成した遷移金属をベースとするメタロセン触媒はまた公知であり、本発明における使用に適した高密度ポリエチレンポリマーを生成するために使用することができる。触媒は典型的には、複数のリガンドを含有し、リガンドは、様々な基(たとえば、n−ブチル基)で置換することができ、または架橋基、たとえば、−CH2CH2−または>SiPh2と連結させることができる。メタロセン触媒は典型的には、共触媒、たとえば、メチルアルミノキサン(すなわち、(Al(CH3xynと併せて使用される。他の共触媒は、米国特許第5,919,983号(Rosenら)、米国特許第6,107,230号(McDanielら)、米国特許第6,632,894号(McDanielら)、および米国特許第6,300,271号(McDanielら)に記載されているものを含む。高密度ポリエチレンの生成において使用するのに適した他の「単一部位」触媒は、ジイミン錯体、たとえば、米国特許第5,891,963号(Brookhartら)に記載されているものを含む。
【0047】
本発明における使用に適した高密度ポリエチレンポリマーは、任意の適切な分子量(たとえば、重量平均分子量)を有することができる。たとえば、高密度ポリエチレンの重量平均分子量は、20,000g/mol〜約1,000,000g/mol以上でよい。当業者が理解するように、高密度ポリエチレンの適切な重量平均分子量は、少なくとも部分的に、ポリマーについて前もって定められた特定の用途または最終使用によって決まる。たとえば、ブロー成形用途のための高密度ポリエチレンポリマーは、約100,000g/mol〜約1,000,000g/molの重量平均分子量を有することができる。パイプ用途またはフィルム用途のための高密度ポリエチレンポリマーは、約100,000g/mol〜約500,000g/molの重量平均分子量を有することができる。射出成形用途のための高密度ポリエチレンポリマーは、約20,000g/mol〜約80,000g/molの重量平均分子量を有することができる。電線絶縁用途、ケーブル絶縁用途、テープ用途、またはフィラメント用途のための高密度ポリエチレンポリマーは、約80,000g/mol〜約400,000g/molの重量平均分子量を有することができる。回転成形用途のための高密度ポリエチレンポリマーは、約50,000g/mol〜約150,000g/molの重量平均分子量を有することができる。
【0048】
本発明における使用に適した高密度ポリエチレンポリマーはまた、任意の適切な多分散性を有することができ、これはポリマーの重量平均分子量をポリマーの数平均分子量で割ることによって得られる値として定義される。たとえば、高密度ポリエチレンポリマーは、2超から約100の多分散性を有することができる。当業者が理解するように、ポリマーの多分散性は、ポリマーを生成するために使用される触媒系によって大いに影響され、メタロセンおよび他の「単一部位」触媒は一般に、相対的に低い多分散性および狭い分子量分布を有するポリマーを生成し、他の遷移金属触媒(たとえば、クロム触媒)は、より高い多分散性およびより広範な分子量分布を有するポリマーを生成する。本発明における使用に適した高密度ポリエチレンポリマーはまた、マルチモーダル(たとえば、バイモーダル)分子量分布を有することができる。たとえば、ポリマーは、相対的に低い分子量を有する第1の画分および相対的に高い分子量を有する第2の画分を有することができる。ポリマー中の画分の重量平均分子量の間の差異は、任意の適切な量でよい。実際は、重量平均分子量の間の差異は、2つの別個の分子量画分がゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して分解することができるように十分に大きい必要はない。しかし、特定のマルチモーダルポリマーにおいて、画分の重量平均分子量の間の差異は、2つ以上の別個のピークがポリマーについてのGPC曲線から分解することができるほど十分に大きくあり得る。この文脈において、用語「別個の」とは、各画分に対応するGPC曲線のポーションが重複しないことを必ずしも意味しないが、各画分についての別個のピークがポリマーについてのGPC曲線から分解することができることを示すことを単に意味する。本発明における使用に適したマルチモーダルポリマーは、任意の適切なプロセスを使用して生成することができる。上で述べたように、マルチモーダルポリマーは、多段階反応器プロセスを使用して生成することができる。1つの適切な例は、一連の撹拌タンクを組み込んだ多段階溶液プロセスである。代わりに、マルチモーダルポリマーは、これらのそれぞれが異なる重量平均分子量を有するポリマーを生成するように設計されている触媒の組合せを使用して単一の反応器において生成することができる。
【0049】
本発明における使用に適した高密度ポリエチレンポリマーは、任意の適切なメルトインデックスを有することができる。たとえば、高密度ポリエチレンポリマーは、約0.01dg/分〜約40dg/分のメルトインデックスを有することができる。重量平均分子量と同様に、高密度ポリエチレンポリマーについての適切なメルトインデックスは、少なくとも部分的に、ポリマーについて前もって定められた特定の用途または最終使用によって決まることを当業者は理解する。このように、たとえば、ブロー成形用途のための高密度ポリエチレンポリマーは、約0.01dg/分〜約1dg/分のメルトインデックスを有することができる。インフレートフィルム用途のための高密度ポリエチレンポリマーは、約0.5dg/分〜約3dg/分のメルトインデックスを有することができる。キャストフィルム用途のための高密度ポリエチレンポリマーは、約2dg/分〜約10dg/分のメルトインデックスを有することができる。パイプ用途のための高密度ポリエチレンポリマーは、約2dg/分〜約40dg/分のメルトインデックスを有することができる。射出成形用途のための高密度ポリエチレンポリマーは、約2dg/分〜約80dg/分のメルトインデックスを有することができる。回転成形用途のための高密度ポリエチレンポリマーは、約0.5dg/分〜約10dg/分のメルトインデックスを有することができる。テープ用途のための高密度ポリエチレンポリマーは、約0.2dg/分〜約4dg/分のメルトインデックスを有することができる。フィラメント用途のための高密度ポリエチレンポリマーは、約1dg/分〜約20dg/分のメルトインデックスを有することができる。ポリマーのメルトインデックスは、ASTM標準D1238−04cを使用して測定する。
【0050】
本発明における使用に適した高密度ポリエチレンポリマーは一般に、多量の長鎖分枝を含有しない。用語「長鎖分枝」は、ポリマー鎖に付着している分枝を指すために使用され、ポリマーのレオロジーに影響を与えるのに十分な長さのものである(たとえば、長さが約130個以上の炭素の分枝)。ポリマーが使用される用途のために望ましい場合、高密度ポリエチレンポリマーは、少量の長鎖分枝を含有することができる。しかし、本発明における使用に適した高密度ポリエチレンポリマーは典型的には、非常に少ない長鎖分枝(たとえば、10,000個の炭素当たり約1未満の長鎖分枝、10,000個の炭素当たり約0.5個未満の長鎖分枝、10,000個の炭素当たり約0.1個未満の長鎖分枝、または10,000個の炭素当たり約0.01個未満の長鎖分枝)を含有する。
【0051】
本発明における使用に適した中密度ポリエチレンポリマーは一般に、約0.926g/cm3〜約0.940g/cm3の密度を有する。用語「中密度ポリエチレン」は、高密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンの密度の間の密度を有し、かつ少なくとも高圧下でエチレンのフリーラジカル重合によって生成される低密度ポリエチレンポリマー中に存在する長い分枝と比較して、相対的に短い分枝を含有する、エチレンのポリマーを指すために使用される。
【0052】
本発明における使用に適した中密度ポリエチレンポリマーは一般に、エチレンおよび少なくとも1個のα−オレフィン、たとえば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、および4−メチル−1−ペンテンのコポリマーである。α−オレフィンコモノマーは、任意の適切な量で存在することができるが、典型的には約8重量%未満(たとえば、約5mol%未満)の量で存在する。当業者が理解するように、コポリマーに適したコモノマーの量は、コポリマーについての最終使用、およびこの最終使用によって決定される、必要とされるまたは所望のポリマー特性によって大部分は決定される。
【0053】
本発明における使用に適した中密度ポリエチレンポリマーは、任意の適切なプロセスによって生成することができる。高密度ポリエチレンポリマーと同様に、中密度ポリエチレンポリマーは典型的には、「低圧力」触媒作用プロセス、たとえば、本発明における使用に適した高密度ポリエチレンポリマーに関連して上で記載したプロセスのいずれかにおいて生成される。適切なプロセスの例には、これらに限定されないが、気相重合プロセス、溶液重合プロセス、スラリー重合プロセス、および多段階反応器プロセスが含まれる。適切な多段階反応器プロセスは、上記の気相、溶液、およびスラリー重合プロセスの任意の適切な組合せを組み込むことができる。高密度ポリエチレンポリマーと同様に、多段階反応器プロセスを使用して、マルチモーダルポリマーを生成することが多い。
【0054】
本発明における使用に適した中密度ポリエチレンポリマーは、任意の適切な触媒または触媒の組合せを使用して生成することができる。たとえば、ポリマーは、チーグラー触媒、たとえば、有機アルミニウム化合物(たとえば、トリエチルアルミニウム)と組み合わせて使用される遷移金属(たとえば、チタン)ハロゲン化物またはエステルを使用して生成することができる。これらのチーグラー触媒は、たとえば、塩化マグネシウム、シリカ、アルミナ、または酸化マグネシウム上に担持されることができる。本発明における使用に適した中密度ポリエチレンポリマーはまた、エチレンを1−ブテンに二量体化するための1種の触媒種(たとえば、チタンエステルおよびトリエチルアルミニウムの組合せ)、ならびにエチレンおよび生じた1−ブテンの共重合のための別の触媒(たとえば、塩化マグネシウム上に担持された塩化チタン)を含有する、いわゆる「二元チーグラー触媒」を使用して生成することができる。本発明における使用に適した中密度ポリエチレンポリマーはまた、酸化クロム触媒、たとえば、シリカ−チタニア担体上にクロム化合物を堆積させ、酸素および空気の混合物中でこのように得られた触媒を酸化し、次いで触媒を一酸化炭素で還元することによって生成されるものを使用して生成することができる。これらの酸化クロム触媒は典型的には、共触媒、たとえば、トリアルキルホウ素またはトリアルキルアルミニウム化合物と併せて使用される。酸化クロム触媒はまた、チーグラー触媒、たとえば、チタンハロゲン化物またはチタンエステルをベースとする触媒と併せて使用することができる。本発明における使用に適した中密度ポリエチレンポリマーはまた、高密度ポリエチレンを作製するのに適した触媒の考察において上述したものなどの担持されたクロム触媒を使用して生成することができる。本発明における使用に適した中密度ポリエチレンポリマーはまた、メタロセン触媒を使用して生成することができる。いくつかの異なるタイプのメタロセン触媒を使用することができる。たとえば、メタロセン触媒は、2個のシクロペンタジエニル環およびメチルアルミノキサンを有するジルコニウム、チタン、またはハフニウムのビス(メタロセン)錯体を含有することができる。高密度ポリエチレン生成において使用される触媒と同様に、リガンドは、様々な基(たとえば、n−ブチル基)で置換することができ、または架橋基と連結することができる。使用することができる別のクラスのメタロセン触媒は、ジルコニウムまたはチタンのビス(メタロセン)錯体、およびペルフルオロ化ホウ素芳香族化合物のアニオンからなる。使用することができる第3のクラスのメタロセン触媒は、拘束された幾何学的形状の触媒と称され、チタンまたはジルコニウムのモノシクロペンタジエニル誘導体を含有し、ここではシクロペンタジエニル環中の炭素原子の1つは、架橋基によって金属原子に連結している。これらの錯体は、これらをメチルアルミノキサンと反応させることによって、または非配位アニオン、たとえば、B(C654-もしくはB(C653CH3-とイオン結合型錯体を形成させることによって活性化される。使用することができる第4のクラスのメタロセン触媒は、別のリガンド、たとえば、ホスフィンイミンまたは−O−SiR3と組み合わせた1個のシクロペンタジエニルリガンドを含有する、遷移金属、たとえば、チタンのメタロセンをベースとする錯体である。このクラスのメタロセン触媒はまた、メチルアルミノキサンまたはホウ素化合物で活性化される。本発明における使用に適した中密度ポリエチレンの作製において使用するのに適した他の触媒には、これらに限定されないが、米国特許第6,649,558号に開示されている触媒が含まれる。
【0055】
本発明における使用に適した中密度ポリエチレンポリマーは、任意の適切な組成上の均一性を有することができ、これはポリマーのコポリマー分子中の分枝の均一性を説明するために使用される用語である。多くの市販の中密度ポリエチレンポリマーは、相対的に低い組成上の均一性を有し、ここではポリマーの高分子量画分は、相対的に少ないα−オレフィンコモノマーを含有し、かつ相対的に少ない分枝を有し、一方、ポリマーの低分子量画分は、相対的に多量のα−オレフィンコモノマーを含有し、かつ相対的に多量の分枝を有する。代わりに、別のセットの中密度ポリエチレンポリマーは、相対的に低い組成上の均一性を有し、ここではポリマーの高分子量画分は、相対的に多量のα−オレフィンコモノマーを含有し、一方、ポリマーの低分子量画分は、相対的に少ないα−オレフィンコモノマーを含有する。ポリマーの組成上の均一性は、任意の適切な方法、たとえば、昇温溶出分別を使用して測定することができる。
【0056】
本発明における使用に適した中密度ポリエチレンポリマーは、任意の適切な分子量を有することができる。たとえば、ポリマーは、約50,000g/mol〜約200,000g/molの重量平均分子量を有することができる。当業者が理解するように、中密度ポリエチレンの適切な重量平均分子量は、少なくとも部分的に、ポリマーについて前もって定められた特定の用途または最終使用によって決まる。
【0057】
本発明における使用に適した中密度ポリエチレンポリマーはまた、任意の適切な多分散性を有することができる。多くの市販の中密度ポリエチレンポリマーは、約2〜約30の多分散性を有する。本発明における使用に適した中密度ポリエチレンポリマーはまた、マルチモーダル(たとえば、バイモーダル)分子量分布を有することができる。たとえば、ポリマーは、相対的に低い分子量を有する第1の画分および相対的に高い分子量を有する第2の画分を有することができる。本発明における使用に適した高密度ポリエチレンポリマーと同様に、マルチモーダル中密度ポリエチレンポリマー中の画分の重量平均分子量の間の差異は、任意の適切な量でよい。実際は、重量平均分子量の間の差異は、2つの別個の分子量画分がゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して分解することができるように十分に大きい必要はない。しかし、特定のマルチモーダルポリマーにおいて、画分の重量平均分子量の間の差異は、2つ以上の別個のピークがポリマーについてのGPC曲線から分解することができるほど十分大きくあり得る。この文脈において、用語「別個の」とは、各画分に対応するGPC曲線のポーションが重複しないことを必ずしも意味しないが、各画分についての別個のピークがポリマーについてのGPC曲線から分解することができることを示すことを単に意味する。本発明における使用に適したマルチモーダルポリマーは、任意の適切なプロセスを使用して生成することができる。上で述べたように、マルチモーダルポリマーは、多段階反応器プロセスを使用して生成することができる。1つの適切な例は、一連の撹拌タンクを組み込んだ多段階溶液プロセスである。代わりに、マルチモーダルポリマーは、これらのそれぞれが異なる重量平均分子量を有するポリマーを生成するように設計されている、触媒の組合せを使用して単一の反応器において生成することができる。
【0058】
本発明における使用に適した中密度ポリエチレンポリマーは、任意の適切なメルトインデックスを有することができる。たとえば、中密度ポリエチレンポリマーは、約0.01dg/分〜約200dg/分のメルトインデックスを有することができる。重量平均分子量と同様に、中密度ポリエチレンポリマーについての適切なメルトインデックスは、少なくとも部分的に、ポリマーについて前もって定められた特定の用途または最終使用によって決まることを当業者は理解する。このように、たとえば、ブロー成形用途またはパイプ用途を意図した中密度ポリエチレンポリマーは、約0.01dg/分〜約1dg/分のメルトインデックスを有することができる。インフレートフィルム用途を意図した中密度ポリエチレンポリマーは、約0.5dg/分〜約3dg/分のメルトインデックスを有することができる。キャストフィルム用途を意図した中密度ポリエチレンポリマーは、約2dg/分〜約10dg/分のメルトインデックスを有することができる。射出成形用途を意図した中密度ポリエチレンポリマーは、約6dg/分〜約200dg/分のメルトインデックスを有することができる。回転成形用途を意図した中密度ポリエチレンポリマーは、約4dg/分〜約7dg/分のメルトインデックスを有することができる。電線およびケーブル絶縁用途を意図した中密度ポリエチレンポリマーは、約0.5dg/分〜約3dg/分のメルトインデックスを有することができる。ポリマーのメルトインデックスは、ASTM標準D1238−04cを使用して測定する。
【0059】
本発明における使用に適した中密度ポリエチレンポリマーは一般に、有意量の長鎖分枝を含有しない。たとえば、本発明における使用に適した中密度ポリエチレンポリマーは一般に、10,000個の炭素原子毎に約0.1個未満の長鎖分枝(たとえば、100個のエチレン単位毎に約0.002個未満の長鎖分枝)または10,000個の炭素原子毎に約0.01個未満の長鎖分枝を含有する。
【0060】
本発明における使用に適した直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは一般に、0.925g/cm3以下(たとえば、約0.910g/cm3〜約0.925g/cm3)の密度を有する。用語「直鎖状低密度ポリエチレン」は、少なくとも高圧下でエチレンのフリーラジカル重合によって生成される低密度ポリエチレンポリマー中に存在する長い分枝と比較して、相対的に短い分枝を有するエチレンのより低い密度のポリマーを指すために使用される。
【0061】
本発明における使用に適した直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは一般に、エチレンおよび少なくとも1個のα−オレフィン、たとえば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、および4−メチル−1−ペンテンのコポリマーである。α−オレフィンコモノマーは、任意の適切な量で存在することができるが、典型的には約6mol%未満(たとえば、約2mol%〜約5mol%)の量で存在する。当業者が理解するように、コポリマーに適したコモノマーの量は、コポリマーについての最終使用、およびこの最終使用によって決定される、必要とされるまたは所望のポリマー特性によって大部分は決定される。
【0062】
本発明における使用に適した直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、任意の適切なプロセスによって生成することができる。高密度ポリエチレンポリマーと同様に、直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは典型的には、「低圧力」触媒作用プロセス、たとえば、本発明における使用に適した高密度ポリエチレンポリマーとの関連で上で記載したプロセスのいずれかにおいて生成される。適切なプロセスには、これらに限定されないが、気相重合プロセス、溶液重合プロセス、スラリー重合プロセス、および多段階反応器プロセスが含まれる。適切な多段階反応器プロセスは、上記の気相、溶液、およびスラリー重合プロセスの任意の適切な組合せを組み込むことができる。高密度ポリエチレンポリマーと同様に、多段階反応器プロセスを使用して、マルチモーダルポリマーを生成することが多い。
【0063】
本発明における使用に適した直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、任意の適切な触媒または触媒の組合せを使用して生成することができる。たとえば、ポリマーは、チーグラー触媒、たとえば、有機アルミニウム化合物(たとえば、トリエチルアルミニウム)と組み合わせて使用される遷移金属(たとえば、チタン)ハロゲン化物またはエステルを使用して生成することができる。これらのチーグラー触媒は、たとえば、塩化マグネシウム、シリカ、アルミナ、または酸化マグネシウム上に担持されることができる。本発明における使用に適した直鎖状低密度ポリエチレンポリマーはまた、エチレンを1−ブテンに二量体化するための1種の触媒種(たとえば、チタンエステルおよびトリエチルアルミニウムの組合せ)、ならびにエチレンおよび生じた1−ブテンの共重合のための別の触媒(たとえば、塩化マグネシウム上に担持された塩化チタン)を含有する、いわゆる「二元チーグラー触媒」を使用して生成することができる。本発明における使用に適した直鎖状低密度ポリエチレンポリマーはまた、酸化クロム触媒、たとえば、シリカ−チタニア担体上にクロム化合物を堆積させ、酸素および空気の混合物中でこのように得られた触媒を酸化し、次いで触媒を一酸化炭素で還元することによって生成されるものを使用して生成することができる。これらの酸化クロム触媒は典型的には、共触媒、たとえば、トリアルキルホウ素またはトリアルキルアルミニウム化合物と併せて使用される。酸化クロム触媒はまた、チーグラー触媒、たとえば、チタンハロゲン化物またはチタンエステルをベースとする触媒と併せて使用することができる。本発明における使用に適した直鎖状低密度ポリエチレンポリマーはまた、高密度ポリエチレンを作製するのに適した触媒の考察において上述したものなどの担持されたクロム触媒を使用して生成することができる。本発明における使用に適した直鎖状低密度ポリエチレンはまた、メタロセン触媒を使用して生成することができる。いくつかの異なるタイプのメタロセン触媒を使用することができる。たとえば、メタロセン触媒は、2個のシクロペンタジエニル環およびメチルアルミノキサンを有するジルコニウム、チタン、またはハフニウムのビス(メタロセン)錯体を含有することができる。高密度ポリエチレン生成において使用される触媒と同様に、リガンドは、様々な基(たとえば、n−ブチル基)で置換することができ、または架橋基と連結することができる。使用することができる別のクラスのメタロセン触媒は、ジルコニウムまたはチタンのビス(メタロセン)錯体、およびペルフルオロ化ホウ素芳香族化合物のアニオンからなる。使用することができる第3のクラスのメタロセン触媒は、拘束された幾何学的形状の触媒と称され、チタンまたはジルコニウムのモノシクロペンタジエニル誘導体を含有し、ここではシクロペンタジエニル環中の炭素原子の1つは、架橋基によって金属原子に連結している。これらの錯体は、これらをメチルアルミノキサンと反応させることによって、または非配位アニオン、たとえば、B(C654-もしくはB(C653CH3-とイオン結合型錯体を形成させることによって活性化される。使用することができる第4のクラスのメタロセン触媒は、別のリガンド、たとえば、ホスフィンイミンまたは−O−SiR3と組み合わせた1個のシクロペンタジエニルリガンドを含有する、遷移金属、たとえば、チタンのメタロセンをベースとする錯体である。このクラスのメタロセン触媒はまた、メチルアルミノキサンまたはホウ素化合物で活性化される。本発明における使用に適した直鎖状低密度ポリエチレンの作製において使用するのに適した他の触媒には、これらに限定されないが、米国特許第6,649,558号に開示されている触媒が含まれる。
【0064】
本発明における使用に適した直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、任意の適切な組成上の均一性を有することができ、これはポリマーのコポリマー分子中の分枝の均一性を説明するために使用される用語である。多くの市販の直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、相対的に低い組成上の均一性を有し、ここではポリマーの高分子量画分は、相対的に少ないα−オレフィンコモノマーを含有し、かつ相対的に少ない分枝を有し、一方、ポリマーの低分子量画分は、相対的に多量のα−オレフィンコモノマーを含有し、かつ相対的に多量の分枝を有する。代わりに、別のセットの直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、相対的に低い組成上の均一性を有し、ここでは、ポリマーの高分子量画分は、相対的に多量のα−オレフィンコモノマーを含有し、一方、ポリマーの低分子量画分は、相対的に少ないα−オレフィンコモノマーを含有する。ポリマーの組成上の均一性は、任意の適切な方法、たとえば、昇温溶出分別を使用して測定することができる。
【0065】
本発明における使用に適した直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、任意の適切な分子量を有することができる。たとえば、ポリマーは、約20,000g/mol〜約250,000g/molの重量平均分子量を有することができる。当業者が理解するように、直鎖状低密度ポリエチレンの適切な重量平均分子量は、少なくとも部分的に、ポリマーについて前もって定められた特定の用途または最終使用によって決まる。
【0066】
本発明における使用に適した直鎖状低密度ポリエチレンポリマーはまた、任意の適切な多分散性を有することができる。多くの市販の直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、相対的に狭い分子量分布、およびしたがって相対的に低い多分散性、たとえば、約2〜約5(たとえば、約2.5〜約4.5または約3.5〜約4.5)を有する。本発明における使用に適した直鎖状低密度ポリエチレンポリマーはまた、マルチモーダル(たとえば、バイモーダル)分子量分布を有することができる。たとえば、ポリマーは、相対的に低い分子量を有する第1の画分および相対的に高い分子量を有する第2の画分を有することができる。本発明における使用に適した高密度ポリエチレンポリマーと同様に、マルチモーダル直鎖状低密度ポリエチレンポリマー中の画分の重量平均分子量の間の差異は、任意の適切な量でよい。実際は、重量平均分子量の間の差異は、2つの別個の分子量画分がゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して分解することができるように十分に大きい必要はない。しかし、特定のマルチモーダルポリマーにおいて、画分の重量平均分子量の間の差異は、2つ以上の別個のピークがポリマーについてのGPC曲線から分解することができるほど十分大きくあり得る。この文脈において、用語「別個の」とは、各画分に対応するGPC曲線のポーションが重複しないことを必ずしも意味しないが、各画分についての別個のピークがポリマーについてのGPC曲線から分解することができることを示すことを単に意味する。本発明における使用に適したマルチモーダルポリマーは、任意の適切なプロセスを使用して生成することができる。上で述べたように、マルチモーダルポリマーは、多段階反応器プロセスを使用して生成することができる。1つの適切な例は、一連の撹拌タンクを組み込んだ多段階溶液プロセスである。代わりに、マルチモーダルポリマーは、これらのそれぞれが異なる重量平均分子量を有するポリマーを生成するために設計される、触媒の組合せを使用して単一の反応器において生成することができる。
【0067】
本発明における使用に適した直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、任意の適切なメルトインデックスを有することができる。たとえば、直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、約0.01dg/分〜約200dg/分のメルトインデックスを有することができる。重量平均分子量と同様に、直鎖状低密度ポリエチレンポリマーについての適切なメルトインデックスは、少なくとも部分的に、ポリマーについて前もって定められた特定の用途または最終使用によって決まることを当業者は理解する。このように、たとえば、ブロー成形用途またはパイプ用途のための直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、約0.01dg/分〜約1dg/分のメルトインデックスを有することができる。インフレートフィルム用途のための直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、約0.5dg/分〜約3dg/分のメルトインデックスを有することができる。キャストフィルム用途のための直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、約2dg/分〜約10dg/分のメルトインデックスを有することができる。射出成形用途のための直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、約6dg/分〜約200dg/分のメルトインデックスを有することができる。回転成形用途のための直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、約4dg/分〜約7dg/分のメルトインデックスを有することができる。電線およびケーブル絶縁用途のための直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、約0.5dg/分〜約3dg/分のメルトインデックスを有することができる。ポリマーのメルトインデックスは、ASTM標準D1238−04cを使用して測定する。
【0068】
本発明における使用に適した直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは一般に、有意量の長鎖分枝を含有しない。たとえば、本発明における使用に適した直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは一般に、10,000個の炭素原子毎に約0.1個未満の長鎖分枝(たとえば、100個のエチレン単位毎に約0.002個未満の長鎖分枝)または10,000個の炭素原子毎に約0.01個未満の長鎖分枝を含有する。
【0069】
本発明における使用に適した低密度ポリエチレンポリマーは一般に、0.935g/cm3未満の密度を有し、高密度ポリエチレンと対照的に、中密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンは、ポリマー中に相対的に多量の長鎖分枝を有する。
【0070】
本発明における使用に適した低密度ポリエチレンポリマーは、エチレンホモポリマーまたはエチレンのコポリマーおよび極性コモノマーでよい。適切な極性コモノマーには、これらに限定されないが、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、およびアクリル酸が含まれる。これらのコモノマーは、任意の適切な量で存在することができ、20重量%まで高いコモノマー含量が特定の用途のために使用される。当業者が理解するであろうように、ポリマーに適したコモノマーの量は、ポリマーについての最終使用、およびこの最終使用によって決定される、必要とされるまたは所望のポリマー特性によって大部分は決定される。
【0071】
本発明における使用に適した低密度ポリエチレンポリマーは、任意の適切なプロセスを使用して生成することができるが、典型的には、ポリマーは、高圧(たとえば、約81〜約276MPa)および高温(たとえば、約130〜約330℃)下で、エチレンのフリーラジカル開始重合によって生成される。任意の適切なフリーラジカル開始剤をこのようなプロセスにおいて使用することができ、ペルオキシドおよび酸素が最も一般である。フリーラジカル重合機序は、ポリマー中の短鎖分枝、およびまた低密度ポリエチレンを他のエチレンポリマー(たとえば、高密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレン)から区別する相対的に高い程度の長鎖分枝を生じさせる。重合反応は典型的には、オートクレーブ反応器(たとえば、撹拌オートクレーブ反応器)、管形反応器、または直列に配置されたこのような反応器の組合せにおいて行われる。
【0072】
本発明における使用に適した低密度ポリエチレンポリマーは、任意の適切な分子量を有することができる。たとえば、ポリマーは、約30,000g/mol〜約500,000g/molの重量平均分子量を有することができる。当業者が理解するように、低密度ポリエチレンの適切な重量平均分子量は、少なくとも部分的に、ポリマーについて前もって定められた特定の用途または最終使用によって決まる。たとえば、ブロー成形用途のための低密度ポリエチレンポリマーは、約80,000g/mol〜約200,000g/molの重量平均分子量を有することができる。パイプ用途のための低密度ポリエチレンポリマーは、約80,000g/mol〜約200,000g/molの重量平均分子量を有することができる。射出成形用途のための低密度ポリエチレンポリマーは、約30,000g/mol〜約80,000g/molの重量平均分子量を有することができる。フィルム用途のための低密度ポリエチレンポリマーは、約60,000g/mol〜約500,000g/molの重量平均分子量を有することができる。
【0073】
本発明における使用に適した低密度ポリエチレンポリマーは、任意の適切なメルトインデックスを有することができる。たとえば、低密度ポリエチレンポリマーは、約0.2〜約100dg/分のメルトインデックスを有することができる。上で述べたように、ポリマーのメルトインデックスは、ASTM標準D1238−04cを使用して測定する。
【0074】
上で述べたように、低密度ポリエチレンおよび他のエチレンポリマーの間の主要な区別の1つは、ポリマー内の相対的に高い程度の長鎖分枝である。本発明における使用に適した低密度ポリエチレンポリマーは、任意の適切な量の長鎖分枝、たとえば、10,000個の炭素原子毎に約0.01個以上の長鎖分枝、10,000個の炭素原子毎に約0.1個以上の長鎖分枝、10,000個の炭素原子毎に約0.5個以上の長鎖分枝、10,000個の炭素原子毎に約1個以上の長鎖分枝、または10,000個の炭素原子毎に約4個以上の長鎖分枝を示すことができる。本発明における使用に適した低密度ポリエチレンポリマー中に存在することができる長鎖分枝の最大程度に対する厳密な限定は存在しない一方、多くの低密度ポリエチレンポリマー中の長鎖分枝は、10,000個の炭素原子毎に約100個未満の長鎖分枝である。
【0075】
ポリエチレンポリマーに加えて、物品は、ポリエチレンポリマーのための成核剤を含むことができる。ここで利用されるように、用語「成核剤」は、溶融状態から凝固するときに、核を形成し、またはポリマー中の結晶の形成および/もしくは成長のための部位を提供する化合物もしくは添加物を指すために使用される。一態様において、成核剤は、式(I)の構造に従う化合物を含む。
【0076】
【化2】
【0077】
式(I)の構造において、R1は、ヒドロキシ、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アリール基、および置換アリール基からなる群から選択される。変数nは、0または1〜4の正の整数である。Lは、2個以上の原子、および連結基中の2個の原子の間の少なくとも1つの二重結合を含む連結基である。変数vは、1〜3の正の整数である。R2は、(i)Lが二価連結基であり、vが1であるとき、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され、(ii)Lが三価連結基であり、vが1であるとき、アルカンジイル基、置換アルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、置換シクロアルカンジイル基、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基からなる群から選択され、(iii)Lが二価連結基であり、vが2であるとき、アルカンジイル基、置換アルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、置換シクロアルカンジイル基、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基からなる群から選択され、(iv)Lが二価連結基であり、vが3であるとき、アルカントリイル基、置換アルカントリイル基、シクロアルカントリイル基、置換シクロアルカントリイル基、アレーントリイル基、置換アレーントリイル基、ヘテロアレーントリイル基、および置換ヘテロアレーントリイル基からなる群から選択される。変数xは、正の整数である。各M1は、金属カチオンであり、変数yは、カチオンの原子価であり、変数zは、正の整数である。変数bは、0または正の整数である。bが正の整数であるとき、各Q1は、負に帯電している対イオンであり、aは、負に帯電している対イオンの原子価である。v、x、y、z、a、およびbの値は、等式(vx)+(ab)=yzを満足させる。式(I)の構造において、Lが二価連結基であり、vが1であり、R2がシクロアルキル基または置換シクロアルキル基であるとき、シクロアルキル基または置換シクロアルキル基の環状ポーションは、一緒に縮合している2個以下の環の構造を含む。
【0078】
好ましい態様において、R1は、ハロゲンまたはヒドロキシであり、n=1が特に好ましい。より特定の態様において、nは、1でよく、R1は、ヒドロキシでよく、カルボン酸基に対してオルト位にあるアリール環に付着することができる。別の好ましい態様において、nは、0であり、カルボキシレート−置換アリール環はR1基で置換されていないことを意味する。
【0079】
Lは、2個以上の原子、および連結基中の2個の原子の間の少なくとも1つの二重結合を含む連結基である。連結基中の2個の原子の間の少なくとも1つの二重結合を伴って、連結基中の原子の2つはsp2混成しており、これらの原子の少なくとも1つの周りの結合角の合計は概ね360度である。連結基内の二重結合の存在は、二重結合の周りの分子の回転を制限し、任意の特定な理論に束縛されるものではないが、化合物をポリマーの核生成のためにより都合よい配置に維持すると考えられる。一連の好ましい態様において、Lは、下記の式(LA)〜(LF)の1つの構造に従う部分からなる群から選択される。
【0080】
【化3】
【0081】
これらの構造から見ることができるように、適切な連結基は、少なくとも2個の原子、および連結基中の2個の原子の間の二重結合を含む。これらのL基のそれぞれについて、連結基の任意の適切な末端は、カルボキシレート−置換アリール環に付着することができ、他の末端(複数可)は、基R2に付着することができる。好ましい態様において、Lは、式(LA)および(LD)の構造に従う部分からなる群から選択される部分である。特に好ましい態様において、Lは、式(LA)の構造に従う部分である。このような態様において、部分は、カルボキシレート−置換アリール環または基R2に結合した窒素原子を有することができる。
【0082】
基R2は、一価、二価、または三価の部分でよい。R2の原子価は、化合物中の連結基Lの原子価およびカルボキシレート−置換アリール環の数によって決まる。このように、Lが二価連結基であり、vが1であるとき、R2は、下記の式(AA)〜(AG)の1つの構造に従う部分からなる群から選択することができる。式(AA)の構造は、
【0083】
【化4】
【0084】
である。式(AA)の構造において、変数dは、0または1〜5の正の整数であり、各R10は、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アリール基、および置換アリール基からなる群から独立に選択される。式(AB)の構造は、
【0085】
【化5】
【0086】
である。式(AB)の構造において、変数hは、0または1〜10の正の整数であり、各R13は、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アリール基、および置換アリール基からなる群から独立に選択される。式(AC)の構造は、
【0087】
【化6】
【0088】
である。式(AC)の構造において、変数eは、0または1〜8の正の整数であり、各R15は、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アリール基、および置換アリール基からなる群から独立に選択される。式(AD)の構造は、
【0089】
【化7】
【0090】
である。式(AD)の構造において、変数gは、0または1〜6の正の整数であり、各R20は、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アリール基、および置換アリール基からなる群から独立に選択される。式(AE)の構造は、
【0091】
【化8】
【0092】
である。式(AE)の構造において、変数jは、0または1〜4の正の整数であり、各R25は、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アリール基、および置換アリール基からなる群から独立に選択される。式(AF)の構造は、
【0093】
【化9】
【0094】
である。式(AF)の構造において、変数X1、X2、X3、X4、およびX5は、炭素原子および窒素原子からなる群から独立に選択され、ただし、X1、X2、X3、X4、およびX5の少なくとも1つおよび3つ以下は、窒素原子であり、tは、0、または5−Xと等しい正の整数であり、Xは、窒素原子の数であり、各R27は、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アリール基、および置換アリール基からなる群から独立に選択される。式(AG)の構造は、
【0095】
【化10】
【0096】
である。式(AG)の構造において、変数X6は、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、および第二級アミン基からなる群から選択され、X7、X8、およびX9は、炭素原子および窒素原子からなる群から独立に選択され、X6、X7、X8、およびX9の少なくとも1つおよび3つ以下は、非炭素原子であり、uは、0、または4−Yと等しい正の整数であり、Yは、環構造における非炭素原子の数であり、各R29は、ハロゲン、シアノ基、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アリール基、および置換アリール基からなる群から独立に選択される。
【0097】
Lが三価連結基であり、vが1であるとき、R2は、下記の式(AH)〜(AJ)の1つの構造に従う部分からなる群から選択することができる。式(AH)の構造は、
【0098】
【化11】
【0099】
である。式(AH)の構造において、変数kは、0または1〜8の正の整数であり、各R30は、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アリール基、および置換アリール基からなる群から独立に選択される。式(AI)の構造は、
【0100】
【化12】
【0101】
である。式(AI)の構造において、変数mは、0または1〜4の正の整数であり、各R35は、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アリール基、および置換アリール基からなる群から独立に選択される。式(AJ)の構造は、
【0102】
【化13】
【0103】
である。式(AJ)の構造において、変数pは、0または1〜3の正の整数であり、p’は、0または1〜3の正の整数であり、各R40およびR45は、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アリール基、および置換アリール基からなる群から独立に選択される。
【0104】
Lが二価連結基であり、vが2であるとき、R2は、下記の式(BA)の構造に従う部分からなる群から選択することができる。
【0105】
【化14】
【0106】
式(BA)の構造において、変数qは、0または1〜4の正の整数であり、rは、0または1〜4の正の整数であり、各R50およびR55は、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アリール基、および置換アリール基からなる群から独立に選択される。
【0107】
Lが二価連結基であり、vが3であるとき、R2は、下記の式(CA)の構造に従う部分からなる群から選択することができる。
【0108】
【化15】
【0109】
式(CA)の構造において、変数sは、0または1〜3の正の整数であり、各R60は、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アリール基、および置換アリール基からなる群から独立に選択される。
【0110】
一連の好ましい態様において、Lは、二価連結基であり、vは、1であり、R2は、式(AA)の構造に従う部分である。この一連の好ましい態様内で、変数dは好ましくは、0または1である。dが1である場合、基R10は好ましくは、連結基Lへの結合に対してパラ位であるアリール環に付着している。さらに、dが1である場合、基R10は好ましくは、ハロゲン(たとえば、臭素)、アルコキシ基(たとえば、メトキシ基)、またはアリール基(たとえば、フェニル基)である。
【0111】
一連の好ましい態様において、Lは、二価連結基であり、vは、1であり、R2は、式(AC)の構造に従う部分である。この一連の好ましい態様内で、変数dは好ましくは、0または1であり、0が特に好ましい。
【0112】
上で述べたように、M1は、金属カチオンである。適切な金属カチオンには、これらに限定されないが、アルカリ金属カチオン(たとえば、ナトリウム)、アルカリ土類金属カチオン(たとえば、カルシウム)、遷移金属カチオン(たとえば、亜鉛)、および13族金属カチオン(たとえば、アルミニウム)が含まれる。ここで利用するように、用語「遷移金属」は、元素の周期律表の3〜12族に対応する、元素の周期律表のd−ブロックにおけるこれらの元素を指すために使用される。好ましい態様において、M1は、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、および亜鉛からなる群から選択される金属カチオンである。別の好ましい態様において、M1は、リチウムカチオンである。化合物が複数の金属カチオンM1を含有するこのような態様において、各M1は、同じまたは異なってもよい。
【0113】
別の好ましい態様において、成核剤は、式(CX)の構造に従う化合物を含む。
【0114】
【化16】
【0115】
(CX)の構造において、R111は、シクロペンチル基および式(CXI)の構造に従う部分からなる群から選択され、R112は、水素およびヒドロキシからなる群から選択される。式(CXI)の構造は、
【0116】
【化17】
【0117】
である。(CXI)の構造において、R115は、水素、ハロゲン、メトキシ、およびフェニルからなる群から選択される。変数xは、正の整数であり、各M1は、金属カチオンであり、yは、カチオンの原子価であり、zは、正の整数である。変数bは、0または正の整数である。bが正の整数であるとき、各Q1は、負に帯電している対イオンであり、aは、負に帯電している対イオンの原子価である。x、y、z、a、およびbの値は、等式x+(ab)=yzを満足させる。さらに、R115が水素であるとき、R112は、水素であり、xは、1であり、M1は、リチウムカチオンであり、yは、1であり、zは、1であり、bは、0である。また、R115がメトキシ基である場合、R112は、ヒドロキシ基である。
【0118】
1は、式(I)の構造のために好ましいと留意されたこれらのカチオンを含めた、式(I)の構造に従う化合物に適しているとして上記のカチオンのいずれかでよい。好ましい態様において、M1は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選択される金属のカチオンである。別の好ましい態様において、M1は、アルカリ金属からなる群から選択される金属のカチオンである。好ましい態様において、M1は、リチウムカチオンである。Q1は、存在する場合、式(I)の構造のために好ましいと留意されたこれらのアニオンを含めた、式(I)の構造に従う化合物に適しているとして上記のアニオンのいずれかでよい。
【0119】
好ましい態様において、R111は、シクロペンチル基である。シクロペンチル基は、無置換または置換されていてもよい。置換シクロペンチル基は、上記の式(AC)の構造に適していることができる。好ましくは、シクロペンチル基は、無置換である。より特定の態様において、R111は、シクロペンチル基であり、変数xは、1であり、M1は、リチウムカチオンであり、yは、1であり、zは、1であり、bは、0である。
【0120】
別の好ましい態様において、R111は、式(CXI)の構造に従う部分である。より特定の態様において、R111は、式(CXI)の構造に従う部分であり、R115は、水素である。別のより特定の態様において、R111は、式(CXI)の構造に従う部分であり、R115は、メトキシ基である。さらに別の特定の態様において、R111は、式(CXI)の構造に従う部分であり、R115は、メトキシ基であり、xは、1であり、M1は、リチウムカチオンであり、yは、1であり、zは、1であり、bは、0である。別のより特定の態様において、R111は、式(CXI)の構造に従う部分であり、R115は、ハロゲン、好ましくは塩素である。さらにより特定の態様において、R111は、式(CXI)の構造に従う部分であり、R115は、ハロゲン、好ましくは塩素であり、R112は、水素である。別のより特定の態様において、R111は、式(CXI)の構造に従う部分であり、R115は、塩素であり、R112は、水素であり、M1は、アルカリ金属、好ましくはナトリウムからなる群から選択される金属のカチオンである。より特定の態様において、R111は、式(CXI)の構造に従う部分であり、R115は、塩素であり、R112は、水素であり、xは、1であり、M1は、ナトリウムカチオンであり、yは、1であり、zは、1であり、bは、0である。
【0121】
成核剤は、ポリエチレンポリマー中に任意の適切な量で存在することができる。成核剤は、ポリエチレンポリマーの全重量に対して、約50百万分率(ppm)以上、約100ppm以上、約250ppm以上、または約500ppm以上の量でポリエチレンポリマー中に存在することができる。成核剤は典型的には、ポリエチレンポリマーの全重量に対して、約10,000ppm以下、約7,500ppm以下、約5,000ppm以下、約4,000ppm以下、または約3,000ppm以下の量でポリエチレンポリマー中に存在する。このように、ポリエチレン物品の特定の態様において、成核剤は、ポリエチレンポリマーの全重量に対して、約50〜約10,000ppm、約100〜約7,500ppm(たとえば、約100〜約5,000ppm)、約250〜約5,000ppm(たとえば、約250〜約4,000ppmまたは約250〜約3,000ppm)、または約500〜約5,000ppm(たとえば、約500〜約4,000ppmまたは約500〜約3,000ppm)の量でポリエチレンポリマー中に存在する。
【0122】
式(I)の金属塩化合物を含む成核剤は、様々な粒子の形状およびサイズで生成することができる。一般に、これらの塩化合物は層状結晶構造を形成し、ここで金属イオンは有機表面の交代層の間にはさまれているギャラリー中に存在する。その結果、平坦な血小板様粒子が生成されることが多く、ここでは核生成表面は、エッジよりむしろ粒子の上部および底部上に曝露されている。これらの血小板様粒子のアスペクト比は典型的には、直径、または横幅に対する厚さと定義される。伸長した血小板、または「ラス様」結晶は、これらの金属塩化合物で可能となる別の粒子形態である。これらの伸長した構造において、アスペクト比は典型的には、長さ対幅の比と定義される。2:1から50:1までのアスペクト比が可能である。アスペクト比を有する粒子は、平坦な表面が機械方向、または流れ方向に対して平行であり、かつ横断方向または横方向に対して平行であるように、溶融ポリマー流れフィールド中に整列することができる。その結果、核生成表面は、部品製作の間に溶融ポリマーの法線方向においてのみ曝露される(血小板形状の粒子が平坦なレジストリには不十分なアスペクト比を有し、およびポリマー流れ方向における回転が生じるとき、例外が生じる)。好ましい粒子配向、または「レジストリ」は、核生成事象の間のポリエチレンとの特定の結晶学的相互作用と合わさって、生成された物品内でポリエチレン結晶の独特および有益な配向をもたらすことができる方向を持ったラメラの成長を生じさせることができる。
【0123】
上で考察した成核剤の粒子は、任意の適切なサイズを有することができる。好ましくは、成核剤の粒子は、熱可塑性ポリマー組成物から作製した完成物品中で目に見えないほど十分に小さい。このように、好ましい態様において、成核剤の粒子は好ましくは、直径が25ミクロン未満、より好ましくは直径が20ミクロン未満、最も好ましくは直径が15ミクロン未満である。
【0124】
任意の特定な理論に束縛されるものではないが、上記の成核剤は2つの可能な機序の1つによってポリエチレンの所望のb軸配向を生じさせることができると考えられている。第1の機序において、成核剤は結晶性固体であり、成核剤の結晶は、二次元において特定の間隔を有する原子からなる表面トポロジーを有する。成核剤の核生成表面におけるこれらの原子の間隔は、間隔の少なくとも1つの正の整数倍数が、斜方晶系ポリエチレン単位格子のb軸長さ(0.493nm)の少なくとも1つの正の整数倍数の15%以内、好ましくは5%であるようなものである。さらに、この第1の機序において、成核剤の粒子は、成核剤の核生成表面が機械方向−横断方向面中にあり、成核剤結晶中のd間隔方向が機械方向の45°以内であるような方法で、ポリマー流れ中に整列するようになる。成核剤がこれらの特性を示し、かつポリマー中にこの様式で整列するとき、ポリエチレンは結晶化し、b軸は上記のように機械方向において優先的に整列すると考えられる。
【0125】
第2の機序において、成核剤は結晶性固体であり、成核剤の結晶は、二次元において特定の間隔を有する原子からなる表面トポロジーを有する。成核剤の核生成表面における原子の間隔は、間隔の少なくとも1つの正の整数倍数が、(i)斜方晶系ポリエチレン単位格子のa軸長さ(0.74nm)または(ii)ポリエチレン110面の鎖間の距離(0.445nm)の少なくとも1つの正の整数倍数の15%以内、好ましくは5%であるようなものである。さらに、この第2の機序において、成核剤の粒子は、「小さなコイン」形態を示し(すなわち、主要な表面が実質的に同じ長さおよび幅を有するプレート様粒子、たとえば、おおよそ円形または四角)、粒子の「平坦なコイン表面」(すなわち、プレート様粒子の主要な表面)が流れ方向に対して垂直に整列しているように、粒子はポリマー流れにおいて整列する。成核剤がこれらの特性を示し、溶融ポリエチレンの流れ方向における回転を可能とするこのような小さな粒径のものであるとき、ポリエチレンは結晶化し、b軸は上記のように機械方向において優先的に整列していると考えられる。
【0126】
ポリエチレン物品は、上記の成核剤に加えて他のポリマー添加物を含有することができる。適切なさらなるポリマー添加物には、これらに限定されないが、抗酸化剤(たとえば、フェノール系抗酸化剤、ホスフィット抗酸化剤、およびこれらの組合せ)、粘着防止剤(たとえば、アモルファスシリカおよび珪藻土)、顔料(たとえば、有機顔料および無機顔料)ならびに他の着色剤(たとえば、色素およびポリマー着色剤)、賦形剤および強化剤(たとえば、ガラス、ガラス繊維、タルク、炭酸カルシウム、およびオキシ硫酸マグネシウムウィスカー)、成核剤、清澄剤、酸掃去剤(たとえば、脂肪酸の金属塩、たとえば、ステアリン酸の金属塩、およびジヒドロタルサイト)、ポリマー処理添加物(たとえば、フルオロポリマー処理添加物)、ポリマー架橋剤、スリップ剤(たとえば、脂肪酸およびアンモニアまたはアミン含有化合物の間の反応に由来する脂肪酸アミド化合物)、脂肪酸エステル化合物(たとえば、脂肪酸およびヒドロキシル含有化合物、たとえば、グリセロール、ジグリセロール、およびこれらの組合せの間の反応に由来する脂肪酸エステル化合物)、ならびに上記の組合せが含まれる。
【0127】
上で述べたように、本発明のポリエチレン物品は、式(I)の構造に従うこれらの化合物に加えて他の成核剤を含有することができる。適切な成核剤には、これらに限定されないが、2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)リン酸塩(たとえば、2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)リン酸ナトリウムまたは2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)リン酸)アルミニウム、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸塩(たとえば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二ナトリウムまたはビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸カルシウム)、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸塩(たとえば、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸カルシウム、一塩基性シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸アルミニウム、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸二リチウム、またはシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ストロンチウム)、グリセロラート塩(たとえば、グリセロラート亜鉛)、フタル酸塩(たとえば、フタル酸カルシウム)、フェニルホスホン酸塩(たとえば、フェニルホスホン酸カルシウム)、およびこれらの組合せが含まれる。ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸塩およびシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸塩について、カルボキシレート部分は、cis−またはtrans−配置でアレンジすることができ、cis−配置が好ましい。
【0128】
上で述べたように、本発明のポリエチレン物品はまた、清澄剤を含有することができる。適切な清澄剤には、これらに限定されないが、トリスアミド、ならびに多価アルコールおよび芳香族アルデヒドの縮合生成物であるアセタール化合物が含まれる。適切なトリスアミド清澄剤には、これらに限定されないが、ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸のアミド誘導体、N−(3,5−ビス−ホルミルアミノ−フェニル)−ホルムアミド(たとえば、N−[3,5−ビス−(2,2−ジメチル−プロピオニルアミノ)−フェニル]−2,2−ジメチル−プロピオンアミド)の誘導体、2−カルバモイル−マロンアミド(たとえば、N,N’−ビス−(2−メチル−シクロヘキシル)−2−(2−メチル−シクロヘキシルカルバモイル)−マロンアミド)の誘導体、およびこれらの組合せが含まれる。上で述べたように、清澄剤は、多価アルコールおよび芳香族アルデヒドの縮合生成物であるアセタール化合物でよい。適切な多価アルコールは、非環式ポリオール、たとえば、キシリトールおよびソルビトール、および非環式デオキシポリオール(たとえば、1,2,3−トリデオキシノニトールまたは1,2,3−トリデオキシノナ−1−エニトール)を含む。適切な芳香族アルデヒドは典型的には、単一のアルデヒド基を含有し、芳香族環上の残りの位置は、無置換または置換されている。したがって、適切な芳香族アルデヒドは、ベンズアルデヒドおよび置換ベンズアルデヒド(たとえば、3,4−ジメチル−ベンズアルデヒドまたは4−プロピル−ベンズアルデヒド)を含む。上記の反応によって生成されるアセタール化合物は、モノ−アセタール、ジ−アセタール、またはトリ−アセタール化合物(すなわち、それぞれ、1個、2個、または3個のアセタール基を含有する化合物)でよく、ジ−アセタール化合物が好ましい。適切なアセタールをベースとする清澄剤には、これらに限定されないが、米国特許第5,049,605号;同第7,157,510号;および同第7,262,236号に開示されている清澄剤が含まれる。
【0129】
特定の一態様において、本発明は、上記のような成核剤および酸掃去剤化合物を含むポリエチレン物品を提供する。物品中に存在する成核剤は、上記の成核剤化合物、たとえば、式(I)の構造に従う化合物、式(C)の構造に従う化合物、式(CX)の構造に従う化合物、式(CXX)の構造に従う化合物、またはこのような化合物の任意の適切な混合物の任意の1つ以上でよい。好ましくは、物品中の成核剤は、式(CX)の構造に従う化合物からなる群から選択される。より好ましくは、成核剤は、式(CX)の構造に従う化合物であり、ここで、R112は、水素であり、R111は、式(CXI)の構造に従う部分であり、R115は、ハロゲンである。より特定の好ましい態様において、成核剤は、式(CX)の構造に従う化合物であり、ここでR112は、水素であり、R111は、式(CXI)の構造に従う部分であり、R115は、塩素であり、M1は、ナトリウムカチオンであり、xは、1であり、yは、1であり、zは、1であり、bは、0である。
【0130】
成核剤および酸掃去剤を含むポリエチレン物品のこの態様において、酸掃去剤は好ましくは、脂肪酸の金属塩および合成ヒドロタルサイト化合物からなる群から選択される。脂肪酸の適切な金属塩には、これらに限定されないが、C12〜C22脂肪酸、たとえば、ステアリン酸の金属塩が含まれる。好ましい態様において、酸掃去剤は、ステアリン酸の亜鉛塩、カリウム塩、およびランタン塩からなる群から選択される。適切な合成ヒドロタルサイト化合物には、これらに限定されないが、協和化学工業株式会社によって販売されているDHT−4A酸掃去剤が含まれる。
【0131】
成核剤および酸掃去剤は、物品中に任意の適切な量で存在することができる。たとえば、成核剤および酸掃去剤は、物品中の成核剤および酸掃去剤の重量に対して、約10:1〜約1:10の比(成核剤対酸掃去剤)で物品中に存在することができる。より好ましくは、成核剤および酸掃去剤は、物品中の成核剤および酸掃去剤の重量に対して、約4:1〜約1:4、約3:1〜約1:3、約1:1〜約1:4、または約1:1〜約1:3の比(成核剤対酸掃去剤)で物品中に存在する。
【0132】
驚いたことに、成核剤および酸掃去剤は、両方が熱可塑性ポリマー、たとえば、ポリエチレンポリマーに加えられるとき、相乗的に相互作用することが見出された。特に、酸掃去剤の添加は、成核剤の性能を改善させることができることが見出された。たとえば、成核剤と酸掃去剤の両方の添加は、成核剤単独が使用されるとき実現されるものを超えた、ポリマーへの物理的特性の増強を改善させることができる。また、酸掃去剤の添加は、成核剤が単独で加えられた場合に必要とされるであろうよりもより少ない成核剤を使用して、ポリマーへの所望のレベルの物理的特性の増強の達成を可能とすることができる。酸掃去剤はポリマー自体を核生成することが観察されていないという事実を考慮すれば、この相乗作用は特に驚くべきことであると考えられる。たとえば、酸掃去剤単独の添加は、ポリマーの物理的特性に対してはっきりと認識できる効果を有さない。
【0133】
ポリエチレン物品において、上記の成核剤および酸掃去剤の添加は、結晶ラメラの機械方向配向の増加を示す機械方向の収縮を有意に低下させ、かつポリマーの剛直性および加熱たわみ温度を有意に改善させることが観察されてきた。
【0134】
本発明のポリエチレン物品は、任意の適切な技術、たとえば、射出成形(たとえば、薄壁射出成形、多成分成形、オーバー成形、または2K成形)、射出回転成形、ブロー成形(たとえば、押出ブロー成形、射出ブロー成形、または射出延伸ブロー成形)、押出(たとえば、異形押出、繊維押出、テープ(たとえば、スリットテープ)押出、シート押出、フィルム押出、キャストフィルム押出、パイプ押出、押出コーティング、または発泡押出)、サーモフォーミング、回転成形、フィルムブローイング(インフレートフィルム)、フィルムキャスティング(キャストフィルム)、圧縮成形、押出圧縮成形、押出圧縮ブロー成形などによって作製することができる。好ましくは、本発明のポリエチレン物品は、押出(たとえば、繊維押出、テープ押出、シート押出、フィルム押出、キャストフィルム押出、パイプ押出、押出コーティング、または異形押出)、フィルムブローイング(インフレートフィルム)、フィルムキャスティング(キャストフィルム)、射出成形(たとえば、薄壁射出成形、多成分成形、オーバー成形、または2K成形)、および押出ブロー成形によって作製することができる。本発明のポリエチレン物品は、多層物品における単一の層、たとえば、多層インフレートもしくはキャストフィルム、または多層射出成形した物品でよい。このような態様において、本発明の物品に対応する層は、上記のb軸配向を示し、一方、他の層は、結晶ポリエチレンの異なる配向を示してもよい。このような多層物品において、層の全ては上記のb軸配向を示すことができ、このような場合、物品のそれぞれの個々の層を本発明による物品と考えることができ、または多層構造全体を本発明による物品と考えることができる。
【0135】
本発明のポリエチレン物品は、任意の適切な製造品でよい。適切な製造品には、これらに限定されないが、医療用具(たとえば、レトルト用途のための事前充填シリンジ、静脈内供給容器、および採血装置)、食品包装、液体容器(たとえば、飲料、医薬、パーソナルケア組成物、シャンプーなどのための容器)、衣料品ケース、電子レンジに使える物品、棚材料、キャビネットのドア、機械部品、自動車部品、シート、パイプ、チューブ、回転成型した部品、ブロー成型した部品、フィルム、繊維などが含まれる。
【0136】
成核剤が本発明の物品を生成するために使用されるとき、ポリマーに対する成核剤の物理的特性効果は、特徴的なプロセス時間(Τ)を操作し、かつ/または適当な平均緩和時間(λ)を示すポリマーを選択することによって改善することができる。この文脈において、特徴的なプロセス時間(Τ)は、その間に溶融ポリマーがひずみに供され、これによって溶融ポリマーにおいて応力(たとえば、伸び溶融応力)をもたらす時間である。平均緩和時間(λ)はポリマーの特徴であり、溶融ポリマーが応力を緩和するのにかかる時間の尺度である。平均緩和時間(λ)は、とりわけ、ポリマーの分子量、ポリマーの分子量分布、およびポリマー中の分枝の程度によって決まる。たとえば、λはポリマーの分子量に比例しており、より高い分子量はより長い緩和時間をもたらすことは公知である。さらに、大部分の市販のポリオレフィンはある程度多分散しており、多分散性の程度は典型的にはGPCによって決定されるようなMw/Mnによって示される。この多分散性は一連の分子量依存性緩和時間を固有に生じさせるが、多くの技術はこのような多分散系についての単一の平均緩和時間のみを測定し得る。ポリマーの多分散性、ならびに一連の分子量依存性緩和時間および/または平均緩和時間は、上記のようなバイモーダルブレンドを作製することによって意図的にさらに広幅化または操作することができる。
【0137】
多くの熱可塑性ポリマー、たとえば、ポリエチレンは、鎖の折畳みによって結晶化し、アモルファス相と共に散在している結晶ラメラが生じる。溶融ポリマーが相対的に少ないひずみに供されるプロセスにおいて、溶融ポリマー中のポリマー鎖はよく整列されておらず、十分な鎖の整列が起こり、結晶ラメラ成長が自発的に開始するまで、溶融ポリマー(たとえば、溶融ポリエチレン)は冷却する。この自発的ラメラ成長が起こるとき、核生成密度は相対的に低く、成長しているラメラは互いの上に侵害する前にさらに移動する。これによってラメラはその方向を変え始め、または外に広がることを可能とし、広がりの究極は完全な球晶の形成である。このような条件下において自己核生成が起こるのにかかる相対的に長い時間によって、溶融ポリマーに加えられた成核剤(本出願において記載されているものなど)は、ラメラ成長のより大きな比率を制御する機会を有する。ラメラのより大きな比率が成核剤によって形成されるにつれ、成核剤はポリマーおよび物品の物理的特性に効果的に影響を与える。
【0138】
特定のプロセス、たとえば、フィルムブローイングは、機械方向(すなわち、溶融ポリマーがダイを出る方向)において溶融ポリマーに相当な伸びひずみを与えることができる。このように得られた応力は、ポリマー鎖がこれらのエントロピーのランダムコイルからほどけることをもたらし、機械方向において伸びたポリマー鎖の整列をもたらす。溶融ポリマーが冷却するにつれこの配向が持続する場合、これらの整列した伸びた鎖セグメントのいくらかは、溶融物から結晶化して、相対的に長いフィブリルを形成することができる。フィブリルは、核生成鎖の折畳みラメラ成長において非常に有効である。ラメラが形成され、フィブリル軸に対して垂直に、およびフィブリルの周りにある程度放射状に成長し始める。核生成密度はより高いため、かなりの広がりが始まる前に、成長しているラメラは互いの上に侵害してもよい。このプロセスは、ここで「応力誘起フィブリル自己核生成」と称される。下記のような特定の条件下で、この応力誘起フィブリル自己核生成は、ポリマー(たとえば、ポリエチレンポリマー)において顕著となることができる。このように、任意の不均質な成核剤は、この応力誘起フィブリル自己核生成と競合しなければならず、成核剤がポリマーおよび物品の物理的特性に有利に影響を与えるのにより有効でないものとする。応力誘起フィブリル自己核生成に対するλおよびΤの効果、ならびに成核剤の有効性を下記に記載する。
【0139】
一定のΤであると仮定して、より短いλは、より多くの応力緩和が起こり、より少ないポリマー鎖配向(たとえば、溶融ポリマー上の伸びひずみによって誘起されるポリマー鎖配向)がΤの最後において残ることを意味する。このような条件下で、応力誘起フィブリル自己核生成は、ポリマー中でより顕著でなく、成核剤はラメラ成長を制御し、ポリマーおよび物品の物理的特性に影響を与えるのにより有効である。同じΤで、より長いλは、より少ない応力緩和が起こり、より多くのポリマー鎖配向がΤの最後において残ることを意味する。このセットの条件下で、応力誘起フィブリル自己核生成はポリマー中でより顕著であり、成核剤はラメラ成長を制御し、ポリマーおよび物品の物理的特性に影響を与えるのにより有効でない。
【0140】
たとえば、インフレートフィルムプロセスにおける、応力誘起フィブリル自己核生成に対するλおよびΤの効果、ならびに不均質な成核剤(たとえば、ここに記載されているもの)の有効性の評価において、ここの下記で「製作時間比」(FTR)と称する、λ対Τの比(λ/Τ)を考慮することが有益であり得る。FTRは、デボラ数(De)と同じ形態であり、おおよそこれと類似である。上記の考察によって例示されるように、より低いFTRは、より少ない応力誘起フィブリル自己核生成がポリマー中で起こり、成核剤を物理的特性に影響を与えるのにより有効なものとすることを意味する。より高いFTRは、より多くの応力誘起フィブリル自己核生成がポリマー中で起こり、成核剤を物理的特性に影響を与えるのにより有効でないものとすることを意味する。大部分の市販のプロセスのプロセス時間は相対的に狭いウィンドウ内でのみ変化することができるため、成核剤の効果を改善または最適化するためのFTRを変化させるためのより実行可能なオプションは、λを変化させることであり、これはポリマー特性を変化させることによって行われる。さらに具体的には、所与のプロセスについて、成核剤の効果を最適化して、プロセス時間Τをより良好にマッチさせるためにポリマー特性およびλを変化させることによって所望の結果を達成することができる。
【0141】
このように、プロセスにおいて所与の成核剤およびポリマーを使用して所望の程度の核生成効果(たとえば、バリア性の改善または引裂き強度の増加)を達成できない場合、より短いλを有する異なるポリマーを選択することによって結果を改善することができる。たとえば、相対的に低いメルトインデックスを有する第1の画分(典型的にはより高い分子量、したがってより長いλを示す)および相対的に高いメルトインデックスを有する第2の画分(典型的にはより低い分子量したがってより短いλを示す)を含有するバイモーダルポリマーを選択することができる。この系において、より高いメルトインデックス画分は、より少ない応力誘起フィブリル自己核生成、および不均質な成核剤に対する反応の改善をもたらす、全ポリマーについてのλを実現してもよい。代わりに、成核剤は、より高いメルトインデックス画分を核生成するのみであってもよく(画分によって示されるより短いλによる)、あたかも成核剤が存在しなかったのと基本的に同じ様式で、より低いメルトインデックス画分が応力誘起フィブリル自己核生成を受けることをもたらす。作用している機序に関わらず、最終結果は、成核剤がポリマーにおけるより多くのラメラ成長を制御し、ポリマーの物理的特性に対する影響の増加を発揮することである。上記の例はバイモーダルポリマーの使用について記載する一方、マルチモーダルポリマーおよび別個のポリマーの物理的ブレンドを使用して同じ効果を達成することができる。これらの代替物のそれぞれはまたλを低減させる手段を提供するためである。さらに、同様の改善は、(より低いメルトフロー比によって示されるような)より狭い分子量分布を有するポリマーを選択することによって達成することができる。より狭い分子量分布は典型的には、ポリマーについてのλを増加させてもよく、ポリマー中のより高い分子量の「テイル」または画分が存在しないことを示す。また、長鎖分枝は、λを増加させることができる溶融もつれをもたらすことができるため、より少ない長鎖分枝を有するポリマーを選択することによって同様の改善を達成することができる。
【0142】
下記の例は上記の主題をさらに例示するが、当然ながら、決してその範囲を限定すると解釈すべきではない。
【0143】
[実施例]
例1
この例は、射出成形による本発明によるポリエチレン物品の製作を示す。ポリマー組成物(試料1)は、2000ppmの4−クロロフェニルアミド安息香酸ナトリウムを、概ね0.954g/cm3の密度および概ね1.45dg/分のメルトフローインデックスを有する市販の高密度ポリエチレン(LYB HOSTALEN ACP6541AUV)中に配合することによって調製した。樹脂を35メッシュの粉末に最初に粉砕し、添加物と高強度混合し、次いで、配合および押出しし、ペレットを形成させた。次いで、形成されたポリマー組成物ペレットを、Airburg40 Ton射出成形機械および2つのキャビティモールドで127mm×12.7mm×3.2mmの寸法を有する長方形のバーに射出成形した。射出成形温度は220℃であり、射出速度は40cm3/sであり、これによって0.81秒の射出時間となった。
【0144】
別のセットの射出成形したバーを、成核剤を有さない同じ高密度ポリエチレンポリマー(比較試料1)を使用して生成した。
【0145】
曲げ弾性率試験(1%正割弾性率として報告)を、ASTM D790手順BによってMTS Qtest/5機器を使用して上記のバーで行った。バーの加熱たわみ温度(HDT)を、ASTM D648−07方法BによってCeast HDT3VICAT機器を使用して決定した。ASTM D256、方法AによってTinius−Olsen892T機器を使用してバーにおいてアイゾット衝撃試験を行った。
【0146】
ポリエチレンポリマーについてのピークポリマー再結晶化温度(Tc)を、示差走査熱量計(Mettler−Toledo DSC822示差走査熱量計)を使用して測定した。特に、試料を標的部分から採取し、60℃の温度から220℃まで20℃/分の速度で加熱し、220℃にて2分間保持し、60℃の温度に概ね10℃/分の速度で冷却した。ピークポリマー結晶再形成が起こった温度(ピークポリマー再結晶化温度に対応する)を、各試料について記録した。
【0147】
広角X線回折極点図分析のために、3mm×3mm×35mmの寸法を有する長方形のストリップを、バーの機械方向(MD)に沿った長さを有する射出成形したバーを切断することによって作製した。極点図データは、GADDS透過検出器を備え、Cu Kα線(0.1542nm)で作動するD8 discoverを使用して得た。試料配向を回転させる間に、固定した2シータ範囲においてデータを集めた((200)回折について2θ約24°および(020)回折について2θ約36°)。次いで、このように得られたデータを、メーカー(Bruker AXS Inc)によって供給されたGADDSソフトウェアを使用して分析した。
【0148】
表1は、試料1および比較試料1から作製したバーについての、機械方向(MD)、横断方向(TD)、および法線方向(ND)における、b軸のヘルマン配向インデックスを示す。表2は、試料1および比較試料1の様々な特性を示す。
表1、試料1および比較試料1のヘルマン配向インデックス。
【0149】
【表1】
【0150】
表2、試料1および比較試料1(C.S.1)の様々な特性。
【0151】
【表2】
【0152】
表1および2において記載したデータから見ることができるように、本発明の物品(試料1で作製したバー)は、物品の機械方向におけるポリエチレン結晶のb軸の優先的整列を示した。比較物品(比較試料1で作製したバー)は、物品の横断および法線方向におけるb軸の僅かに優先的整列を伴うむしろランダム配向を示した。本発明の物品はまた、いくつかの物理的特性、たとえば、弾性率および加熱たわみ温度において改善を示した。
【0153】
例2
この例は、本発明によるポリエチレン物品の製作を示す。ポリマー組成物(試料2)は、2000ppmのミルにかけた4−クロロフェニルアミド−安息香酸ナトリウムを、概ね0.962g/cm3の密度および概ね1.2dg/分のメルトフローインデックスを有する市販の高密度ポリエチレンポリマー(Nova ChemicalsからのSclair(登録商標)19G)中に配合することによって調製した。使用したポリエチレン樹脂を約35メッシュに最初に粉砕し、次いで、添加物を樹脂に加え、約2100rpmのブレードスピードを伴うヘンシェル高強度ミキサーにおいて約2分間ブレンドした。次いで、試料を、38mm直径のスクリューを有するMPM単軸スクリュー押出機において溶融配合した。押出機のバレル温度を160から190℃に傾斜させた。ストランドの形態の押出物を水浴中で冷却し、次いで引き続いてペレット化した。
【0154】
次いで、形成されたポリマー組成物ペレットを使用して、下記の設定を使用して、Future Design空冷環を有するインフレートフィルムラインにおいてインフレートフィルム(3ミル厚さ)を生成した。101.6mm(4インチ)ダイ、2.0mmダイギャップ、BUR2.3、DDR11.4、および排出量30kg/h。このように得られたフィルムのヘルマン配向インデックス、再結晶化ピーク温度、引裂き強度、落槍衝撃、1%正割弾性率、および浸透を測定したが、表3、4および5において報告する。
【0155】
極点図分析のためのフィルム試料に関して、フィルムの層を注意深く積み重ね、回折強度を増強する。次いで、約3×3×30mm3の寸法、MDに沿った長さを有する長い長方形のストリップをカットし、接着剤Scotchのりをフィルム上に噴霧することによってスタックを作製した。極点図データは、GADDS透過検出器を備え、Cu Kα線(0.1542nm)で作動するD8discoverを使用して得た。試料配向を回転させる間に、固定した2シータ範囲においてデータを集め((200)回折について2θ約24°および(020)回折について2θ約36°)、メーカー(Bruker AXS Inc)によって供給されたGADDSソフトウェアを使用して分析した。
【0156】
水蒸気透過速度として測定した浸透を、ASTM E398によってIllinois Instruments7000水蒸気浸透アナライザーを使用して測定した。ASTM D1922によってProTear引裂きテスター装置を使用して引裂き強度を測定した。ASTM D1709によってDyniscoモデルD2085AB−P落槍ポリマーテスターを使用して落槍衝撃試験を行った。ASTM D882によってMTS Q−テスト−5機器を使用してフィルム引張試験を行った。
【0157】
熱可塑性ポリマー組成物についてのピークポリマー再結晶化温度(Tc)を、示差走査熱量計(Mettler−Toledo DSC822示差走査熱量計)を使用して測定した。特に、圧縮成形したプラークはペレットから調製し、試料はプラークから採取し、60℃の温度から220℃へ20℃/分の速度で加熱し、220℃にて2分間保持し、60℃の温度へと概ね10℃/分の速度で冷却した。ピークポリマー結晶再形成が起こった温度(ピークポリマー再結晶化温度に対応する)を、各試料について記録した。
【0158】
別のセットのインフレートフィルムを、成核剤を伴わない同じ高密度ポリエチレンポリマーを使用して生成した(比較試料2)。
表3、試料2および比較試料2のヘルマン配向インデックス。
【0159】
【表3】
【0160】
表4:試料2および比較試料2の結晶温度(Tc)、引裂き抵抗、および衝撃データ。
【0161】
【表4】
【0162】
表5:試料2および比較試料2の1%正割弾性率および正規化透過速度データ。
【0163】
【表5】
【0164】
表から、本発明の物品(試料2で作製したフィルム)は、物品の機械方向におけるポリエチレン結晶のb軸の優先的整列を示した。比較物品(比較試料1で作製したフィルム)は、物品の横断および法線方向におけるb軸の優先的整列を示した。本発明の物品はまた、いくつかの物理的特性、たとえば、バランスのとれたMD−TD引裂きプロファイル、より高いMD弾性率、およびより低い浸透速度において改善を示した。
【0165】
例3
この例は、本発明によるポリエチレン物品の製作を示す。ポリマー組成物(試料3)は、2000ppmの4−クロロフェニルアミド−安息香酸ナトリウムを、概ね0.922g/cm3の密度および概ね1.0dg/分のメルトフローインデックスを有する市販の直鎖状低密度ポリエチレンポリマー(Dowlex(商標)2056G)中に配合することによって調製した。使用したポリエチレン樹脂を、最初に約35メッシュに粉砕した。添加物を樹脂に加え、約2100rpmのブレードスピードを伴うヘンシェル高強度ミキサーにおいて約2分間ブレンドした。次いで、試料を、38mm直径のスクリューを有するMPM単軸スクリュー押出機において溶融配合した。押出機のバレル温度を160から190℃に傾斜させた。ストランドの形態の押出物を水浴において冷却し、次いで引き続いてペレット化した。
【0166】
次いで、形成されたポリマー組成物ペレットを使用して、下記の設定を使用して、Future Design空冷環を有するインフレートフィルムラインにおいてインフレートフィルム(3ミル厚さ)を生成した。101.6mm(4インチ)ダイ、2.0mmダイギャップ、BUR2.38、DDR11、および排出量23kg/h。このように得られたフィルムのヘルマン配向インデックス、再結晶化ピーク温度、引裂き強度、落槍衝撃、1%正割弾性率、および浸透を測定したが、表6、7および8において報告する。
【0167】
別のセットのインフレートフィルムを、成核剤を有さない同じ高密度ポリエチレンポリマー(比較試料3)を使用して生成した。
表6、試料3および比較試料3のヘルマン配向インデックス。
【0168】
【表6】
【0169】
表7、試料3および比較試料3の再結晶化ピーク温度(Tc)、引裂き強度、および落槍衝撃。
【0170】
【表7】
【0171】
表8、試料3および比較試料3の1%正割弾性率および正規化透過速度データ。
【0172】
【表8】
【0173】
表から、本発明の物品(試料3で作製したフィルム)は、物品の機械方向におけるポリエチレン結晶のb軸の優先的整列を示した。比較物品(比較試料3で作製したフィルム)は、物品の横断および法線方向におけるb軸の優先的整列を示した。本発明の物品はまた、いくつかの物理的特性、たとえば、バランスのとれたMD−TD引裂きプロファイル、より高いMD弾性率、およびより低い浸透速度において改善を示した。
【0174】
例4
この例は、本発明によるポリエチレン物品の製作を示す。ポリマー組成物(試料4)は、1500ppmの4−クロロフェニルアミド−安息香酸ナトリウムを、概ね0.952g/cm3の密度および概ね19dg/分のメルトフローインデックスを有する市販の高密度ポリエチレンポリマー(ExxonMobilTM HDPE HD6719)中に配合することによって調製した。
【0175】
使用したポリエチレン樹脂を、約35メッシュに最初に粉砕した。添加物を、Sunbeam(登録商標)Kitchen Assistantミキサーで3分まで粉砕した樹脂と混合した。次いで、混合した粉末を、キャストフィルムダイを備えたRandcastle(登録商標)microtruderでフィルムに押出しした。押出温度プロファイルを、異なるゾーンについて140℃、190℃、205℃および215℃に設定した。押出スピードは約100rpmであり、冷却ロール温度は約80℃であった。
【0176】
フィルム試料4に対する極点図分析を、試料2と同じ方法を使用して行った。試料サイズの限定によって、この試料では物理試験は行わなかった。
【0177】
表9は、試料4から作製したフィルムについての機械方向(MD)、横断方向(TD)、および法線方向(ND)におけるb軸のヘルマン配向インデックスを示す。本発明の物品(試料4で作製したフィルム)は、物品の機械方向におけるポリエチレン結晶のb軸の優先的整列を示した。
表9、試料4のヘルマン配向インデックス。
【0178】
【表9】
【0179】
ここにおいて引用した公開資料、特許出願、および特許を含めた全ての参照文献は、各参照文献が個々におよび具体的に参照により組み込まれていることが示され、かつその全体がここで記載されているのと同じ程度に参照によりここに組み込まれている。
【0180】
本出願の主題の記載との関連での、用語「a」および「an」および「the」ならびに同様の参照対象の使用(特に、下記の特許請求の範囲との関連で)は、ここで他に示さない限り、または文脈に明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方をカバーすると解釈される。用語「含むこと」、「有すること」、「含めること」および「含有すること」は、他に断らない限り、オープンエンドの用語であると解釈される(すなわち、「これらに限定されないが、以下を含めた」を意味する)。ここで値の範囲の記載は、ここで他に示さない限り、範囲内に入るそれぞれの別々の値を個々に言及する簡単な方法としての役割を果たすことを単に意図し、それぞれの別々の値は、これがここで個々に記載されているかのように明細書中に組み込まれる。ここに記載されている全ての方法は、ここにおいて他に示さない限り、または他に文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で行うことができる。ここで提供するありとあらゆる例、または例示的な言葉(たとえば、「など」)の使用は、本出願の主題をより良好に解明することを単に意図し、その他の点で特許請求しない限り主題の範囲に対する限定を提起しない。明細書におけるどの言葉も、ここに記載されている主題の実施に対して必須であるとして任意の特許請求していない要素を示していると解釈するべきではない。
【0181】
本出願の主題の好ましい態様は、特許請求した主題を行うための本発明者らに公知の最良の態様を含めてここに記載されている。これらの好ましい態様のバリエーションは、上記の説明を読めば、当業者には明らかとなってもよい。本発明者らは、当業者がこのようなバリエーションを必要に応じて用いることを予想し、本発明者らは、具体的にここに記載されているのと異なるようにここに記載されている主題が実施されることを意図する。したがって、この開示は、適用可能な法律によって許容されるような、ここに添付の特許請求において記載した主題の全ての改変および同等物を含む。さらに、その全ての可能なバリエーションにおける上記の要素の任意の組合せは、ここにおいて他に示さない限り、または他に文脈によって明らかに矛盾しない限り、本開示によって包含される。
以下に、本願の種々の実施態様を付記する。
[1]
溶融ポリエチレンポリマーから生成されたポリエチレン物品であって、前記物品は、ある厚さを有し、前記物品は、前記物品が生成されたとき、前記溶融ポリエチレンポリマーが前記物品中の領域内を流れた方向に対応する少なくとも1つのローカル機械方向(MDローカル)を有し、前記物品は、前記物品内の各ローカル機械方向に対して直角である対応するローカル横断方向(TDローカル)を有し、前記物品は、各ローカル機械方向および対応するローカル横断方向に対して直角であり、かつ前記物品の前記厚さを通り抜けるラインに対して平行であるローカル法線方向(NDローカル)を有し、前記ポリエチレンポリマーは、複数のラメラを含み、各ラメラは、結晶ポリエチレンを含み、前記結晶ポリエチレンは、b軸を有し、前記ラメラ中の前記結晶ポリエチレンの前記b軸は、各ローカル機械方向においてヘルマン配向インデックス(F(MDローカル、020))、各対応するローカル横断方向においてヘルマン配向インデックス(F(TDローカル、020))、および各対応するローカル法線方向においてヘルマン配向インデックス(F(NDローカル、020))を有し、前記ラメラ中の前記結晶ポリエチレンの前記b軸は、F(MDローカル、020)>0、F(MDローカル、020)>F(TDローカル、020)、およびF(MDローカル、020)>F(NDローカル、020)であるように、前記物品内で配向している、ポリエチレン物品。
[2]
F(MDローカル、020)>0.01、F(MDローカル、020)−F(TDローカル、020)>0.01、F(MDローカル、020)−F(NDローカル、020)>0.01である、[1]に記載のポリエチレン物品。
[3]
F(MDローカル、020)>0.05、F(MDローカル、020)−F(TDローカル、020)>0.05、F(MDローカル、020)−F(NDローカル、020)>0.05である、[1]に記載のポリエチレン物品。
[4]
前記物品が、前記ポリエチレンポリマーのための成核剤をさらに含む、[1]から[3]のいずれかに記載のポリエチレン物品。
[5]
前記成核剤が、式(I)の構造に従う化合物を含み、
【化18】
式中、R1は、ヒドロキシ、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アリール基、および置換アリール基からなる群から選択され、nは、0または1〜4の正の整数であり、Lは、2個以上の原子、および連結基中の2個の原子の間の少なくとも1つの二重結合を含む連結基であり、vは、1〜3の正の整数であり、R2は、(i)Lが二価連結基であり、vが1であるとき、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され、(ii)Lが三価連結基であり、vが1であるとき、アルカンジイル基、置換アルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、置換シクロアルカンジイル基、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基からなる群から選択され、(iii)Lが二価連結基であり、vが2であるとき、アルカンジイル基、置換アルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、置換シクロアルカンジイル基、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基からなる群から選択され、(iv)Lが二価連結基であり、vが3であるとき、アルカントリイル基、置換アルカントリイル基、シクロアルカントリイル基、置換シクロアルカントリイル基、アレーントリイル基、置換アレーントリイル基、ヘテロアレーントリイル基、および置換ヘテロアレーントリイル基からなる群から選択され、xは、正の整数であり、各M1は、金属カチオンであり、yは、前記カチオンの原子価であり、zは、正の整数であり、bは、0または正の整数であり、bが正の整数であるとき、各Q1は、負に帯電している対イオンであり、aは、前記負に帯電している対イオンの原子価であり、v、x、y、z、a、およびbの値は、等式(vx)+(ab)=yzを満足させ、Lが二価連結基であり、vが1であり、R2がシクロアルキル基または置換シクロアルキル基であるとき、前記シクロアルキル基または置換シクロアルキル基の環状ポーションは、一緒に縮合している2個以下の環の構造を含む、[4]に記載のポリエチレン物品。
[6]
前記成核剤が、式(CX)の構造に従う化合物を含み、
【化19】
式中、R111は、シクロペンチル基および式(CXI)の構造に従う部分からなる群から選択され、R112は、水素およびヒドロキシからなる群から選択され、式(CXI)は、
【化20】
であり、R115は、水素、ハロゲン、メトキシ、およびフェニルからなる群から選択され、xは、正の整数であり、各M1は、金属カチオンであり、yは、前記カチオンの原子価であり、zは、正の整数であり、bは、0または正の整数であり、bが正の整数であるとき、各Q1は、負に帯電している対イオンであり、aは、前記負に帯電している対イオンの原子価であり、x、y、z、a、およびbの値は、等式x+(ab)=yzを満足させる、[5]に記載のポリエチレン物品。
[7]
111が、式(CXI)の前記構造に従う部分である、[6]に記載のポリエチレン物品。
[8]
115が、ハロゲンである、[7]に記載のポリエチレン物品。
[9]
115が、塩素である、[8]に記載のポリエチレン物品。
[10]
112が、水素である、[9]に記載のポリエチレン物品。
[11]
xが、1であり、M1が、ナトリウムカチオンであり、yが、1であり、zが、1であり、bが、0である、[10]に記載のポリエチレン物品。
[12]
前記成核剤が、前記ポリエチレンポリマーの全重量に対して約100〜約5,000百万分率(ppm)の量で前記物品中に存在する、[4]から[11]のいずれかに記載のポリエチレン物品。
[13]
前記成核剤が、前記ポリエチレンポリマーの全重量に対して約250〜約3,000百万分率(ppm)の量で前記物品中に存在する、[12]に記載のポリエチレン物品。
[14]
前記成核剤が、複数の粒子の形態で存在し、前記粒子は、ある長さおよびある幅を有し、前記長さ対前記幅の比が、約2:1またはそれ超である、[4]から[13]のいずれかに記載のポリエチレン物品。
[15]
前記ポリエチレンポリマーが、直鎖状低密度ポリエチレンである、[1]から[14]のいずれかに記載のポリエチレン物品。
[16]
前記ポリエチレンポリマーが、高密度ポリエチレンである、[1]から[14]のいずれかに記載のポリエチレン物品。
[17]
溶融ポリエチレンポリマーをオリフィスを通してある方向で押し出すことによって生成されるポリエチレン物品であって、前記物品は、ある厚さを有し、前記物品は、前記溶融ポリエチレンポリマーが前記オリフィスを出る前記方向に対応する機械方向(MD)を有し、前記物品は、前記機械方向に対して直角であり、かつ前記物品の前記厚さを通り抜けるラインに対して直角である横断方向(TD)を有し、前記物品は、前記機械方向および前記横断方向に対して直角であり、かつ前記物品の前記厚さを通り抜けるラインに対して平行である法線方向(ND)を有し、前記ポリエチレンポリマーは、複数のラメラを含み、各ラメラは、結晶ポリエチレンを含み、前記結晶ポリエチレンは、b軸を有し、前記ラメラ中の前記結晶ポリエチレンの前記b軸は、前記機械方向においてヘルマン配向インデックス(F(MD、020))、前記横断方向においてヘルマン配向インデックス(F(TD、020))、および前記法線方向においてヘルマン配向インデックス(F(ND、020))を有し、前記ラメラ中の前記結晶ポリエチレンの前記b軸は、F(MD、020)>0、F(MD、020)>F(TD、020)、およびF(MD、020)>F(ND、020)であるように、前記物品内で配向している、物品。
[18]
F(MD、020)>0.01、F(MD、020)−F(TD、020)>0.01、F(MD、020)−F(ND、020)>0.01である、[17]に記載のポリエチレン物品。
[19]
F(MD、020)>0.05、F(MD、020)−F(TD、020)>0.05、F(MD、020)−F(ND、020)>0.05である、[18]に記載のポリエチレン物品。
[20]
前記物品が、前記ポリエチレンポリマーのための成核剤をさらに含む、[17]に記載のポリエチレン物品。
[21]
前記成核剤が、式(I)の構造に従う化合物を含み、
【化21】
式中、R1は、ヒドロキシ、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アリール基、および置換アリール基からなる群から選択され、nは、0または1〜4の正の整数であり、Lは、2個以上の原子、および連結基中の2個の原子の間の少なくとも1つの二重結合を含む連結基であり、vは、1〜3の正の整数であり、R2は、(i)Lが二価連結基であり、vが1であるとき、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、および置換ヘテロアリール基からなる群から選択され、(ii)Lが三価連結基であり、vが1であるとき、アルカンジイル基、置換アルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、置換シクロアルカンジイル基、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基からなる群から選択され、(iii)Lが二価連結基であり、vが2であるとき、アルカンジイル基、置換アルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、置換シクロアルカンジイル基、アレーンジイル基、置換アレーンジイル基、ヘテロアレーンジイル基、および置換ヘテロアレーンジイル基からなる群から選択され、(iv)Lが二価連結基であり、vが3であるとき、アルカントリイル基、置換アルカントリイル基、シクロアルカントリイル基、置換シクロアルカントリイル基、アレーントリイル基、置換アレーントリイル基、ヘテロアレーントリイル基、および置換ヘテロアレーントリイル基からなる群から選択され、xは、正の整数であり、各M1は、金属カチオンであり、yは、前記カチオンの原子価であり、zは、正の整数であり、bは、0または正の整数であり、bが正の整数であるとき、各Q1は、負に帯電している対イオンであり、aは、前記負に帯電している対イオンの原子価であり、v、x、y、z、a、およびbの値は、等式(vx)+(ab)=yzを満足させ、Lが二価連結基であり、vが1であり、R2がシクロアルキル基または置換シクロアルキル基であるとき、前記シクロアルキル基または置換シクロアルキル基の環状ポーションは、一緒に縮合している2個以下の環の構造を含む、[20]に記載のポリエチレン物品。
[22]
前記成核剤が、式(CX)の構造に従う化合物を含み、
【化22】
式中、R111は、シクロペンチル基および式(CXI)の構造に従う部分からなる群から選択され、R112は、水素およびヒドロキシからなる群から選択され、式(CXI)は、
【化23】
であり、R115は、水素、ハロゲン、メトキシ、およびフェニルからなる群から選択され、xは、正の整数であり、各M1は、金属カチオンであり、yは、前記カチオンの原子価であり、zは、正の整数であり、bは、0または正の整数であり、bが正の整数であるとき、各Q1は、負に帯電している対イオンであり、aは、前記負に帯電している対イオンの原子価であり、x、y、z、a、およびbの値は、等式x+(ab)=yzを満足させる、[21]に記載のポリエチレン物品。
[23]
111が、式(CXI)の前記構造に従う部分である、[22]に記載のポリエチレン物品。
[24]
115が、ハロゲンである、[23]に記載のポリエチレン物品。
[25]
115が、塩素である、[24]に記載のポリエチレン物品。
[26]
112が、水素である、[25]に記載のポリエチレン物品。
[27]
xが、1であり、M1が、ナトリウムカチオンであり、yが、1であり、zが、1であり、bが、0である、[26]に記載のポリエチレン物品。
[28]
前記成核剤が、前記ポリエチレンポリマーの全重量に対して約100〜約5,000百万分率(ppm)の量で前記物品中に存在する、[20]から[27]のいずれかに記載のポリエチレン物品。
[29]
前記成核剤が、前記ポリエチレンポリマーの全重量に対して約250〜約3,000百万分率(ppm)の量で前記物品中に存在する、[28]に記載のポリエチレン物品。
[30]
前記成核剤が、複数の粒子の形態で存在し、前記粒子が、ある長さおよびある幅を有し、前記長さ対前記幅の比が、約2:1またはそれ超である、[20]から[29]のいずれかに記載のポリエチレン物品。
[31]
前記ポリエチレンポリマーが、直鎖状低密度ポリエチレンである、[17]から[30]のいずれかに記載のポリエチレン物品。
[32]
前記ポリエチレンポリマーが、高密度ポリエチレンである、[17]から[30]のいずれかに記載のポリエチレン物品。
[33]
前記物品が、フィルムである、[17]から[32]のいずれかに記載のポリエチレン物品。
[34]
前記物品が、押出パイプである、[17]から[32]のいずれかに記載のポリエチレン物品。