(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133520
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】新型改質不織布リチウムイオン電池用セパレータ及びその製作方法
(51)【国際特許分類】
H01M 2/16 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
H01M2/16 P
H01M2/16 M
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-561758(P2016-561758)
(86)(22)【出願日】2014年4月30日
(65)【公表番号】特表2017-510960(P2017-510960A)
(43)【公表日】2017年4月13日
(86)【国際出願番号】CN2014076666
(87)【国際公開番号】WO2015154320
(87)【国際公開日】20151015
【審査請求日】2016年10月5日
(31)【優先権主張番号】201410144003.2
(32)【優先日】2014年4月10日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516299224
【氏名又は名称】佛山市金輝高科光電材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】FOSHAN JINHUI HIGH−TECH OPTOELECTRONIC MATERIAL CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】林 妙云
(72)【発明者】
【氏名】黄 美容
(72)【発明者】
【氏名】呉 耀根
(72)【発明者】
【氏名】蔡 朝輝
(72)【発明者】
【氏名】廖 凱明
【審査官】
近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−179279(JP,A)
【文献】
特開2013−163881(JP,A)
【文献】
特開2010−239061(JP,A)
【文献】
特開2004−115980(JP,A)
【文献】
特開2002−008619(JP,A)
【文献】
特表2014−532979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
新型改質不織布リチウムイオン電池用セパレータであって、
前記セパレータは、改質不織布基材と、その複合充填剤とを備え、
前記改質不織布基材には、孔径が1〜50000nmである均等に配列された孔が分布され、孔隙率が30〜95%であり、
前記改質不織布基材は、低融点材料と、高融点材料とを含み、前記低融点材料が溶融結晶化処理され、前記高融点材料が改質不織布基材の総重量の85〜99.9%であり、残りが低融点材料であり、前記高融点材料が融点≧200℃であるポリエステル、ポリオレフィン、ニトリルポリマー、ポリイミド及びポリエーテルの1種類又は複数の種類の混合で形成され、前記低融点材料は融点が50〜199℃であるポリオレフィン、ポリビニルアルコール、熱接着性ポリエステル、ポリスチレン及びフッ素系ポリマーの1種類又は複数の種類の混合で形成され、
前記改質不織布基材に複合された充填剤は、有機ポリマーと、第1充填材料、又は第2充填材料、又は第1充填材料及び第2充填材料の混合とを備え、
前記有機ポリマーは、フッ素系ポリマー、ゴム、エステル系ポリマー、セルロース及びでん粉の1種類又は2種類以上の組み合わせであり、
前記第1充填材料は、粒径が1〜2000nmである無機粒子であり、前記無機粒子は、無機酸化物ナノ粒子、無機窒化物ナノ粒子及び鉱石ナノ粒子の1種類又は2種類以上の組み合わせであり、
前記第2充填材料は、粒径が1〜10000nmである繊維粒子であり、前記繊維粒子は、珪灰石繊維、ガラス繊維、リグニン、セルロースナノファイバー、アクリル繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維及びポリイミド繊維の1種類又は2種類以上の組み合わせであり、
前記充填剤は、改質不織布基材の孔内に充填される、ことを特徴とする新型改質不織布リチウムイオン電池用セパレータ。
【請求項2】
前記充填剤は、改質不織布基材の孔内から外向きに延伸して改質不織布基材全体を覆い、
前記セパレータの厚さは、改質不織布基材の厚さの1〜10倍である、ことを特徴とする請求項1に記載の新型改質不織布リチウムイオン電池用セパレータ。
【請求項3】
前記セパレータの厚さは、改質不織布基材の厚さの1〜2倍である、ことを特徴とする請求項2に記載の新型改質不織布リチウムイオン電池用セパレータ。
【請求項4】
前記第1充填材料の粒径は、10〜1000nmであり、前記第2充填材料の粒径は、100〜5000nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の新型改質不織布リチウムイオン電池用セパレータ。
【請求項5】
前記溶融結晶化処理は、低融点材料をその融点より0〜10℃高い温度で加熱して溶融してから、冷却して結晶化させる、ことを特徴とする請求項1に記載の新型改質不織布リチウムイオン電池用セパレータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項の前記新型改質不織布リチウムイオン電池用セパレータの製作方法であって、
前記製作方法は、以下のステップa〜fを備え、
ステップaにおいて、不織布繊維層を製作し、
高融点材料及び低融点材料を加工して不織布繊維層を製作し、前記加工の工程は、メルトブローン、スパンボンド法、湿式抄紙、スパンレース、突刺、熱延の1種類であり、ここで、高融点材料の重さは、製作された不織布繊維層の総重量の85〜99.9%であり、残りは、低融点材料であり、
前記高融点材料が融点≧200℃であるポリエステル、ポリオレフィン、ニトリルポリマー、ポリイミド及びポリエーテルの1種類又は複数の種類であり、
前記低融点材料は融点が50〜199℃であるポリオレフィン、ポリビニルアルコール、熱接着性ポリエステル、ポリスチレン及びフッ素系ポリマーの1種類又は複数の種類であり、
ステップbにおいて、改質不織布基材を製作し、
ステップaにより得られた不織布繊維層を溶融結晶化処理し、
前記溶融結晶化処理は、ステップaに用いられた低融点材料の融点より0〜10℃高い温度で低融点材料を加熱して溶融してから、冷却して結晶化させるプロセスであり、
ステップcにおいて、充填剤パルプを製作し、
第1充填材料及び/又は第2充填材料を乾燥処理し、1:(5〜50):(0.1〜10)の重量比で有機ポリマー、第1溶剤及び第2溶剤を混合して、澄んだ状態になるまで攪拌加熱してから、乾燥処理された第1充填材料及び/又は第2充填材料を添加して均一に混合し、
前記有機ポリマーは、フッ素系ポリマー、ゴム、エステル系ポリマー、セルロース及びでん粉の1種類又は2種類以上の組み合わせであり、
前記第1溶剤は、ケトン系溶剤、アミド系溶剤及びエステル系溶剤の1種類又は2種類以上の混合であり、
前記第2溶剤は、水、アルコール溶剤、ハロゲン化炭化水素溶剤の1種類又は2種類以上の混合であり、
ステップdにおいて、不織布を充填し、
ステップcにより製作された充填剤パルプをステップbより製作された改質不織布基材に充填し、
ステップeにおいて、溶剤を除去し、
ステップdにより加工された不織布繊維層に対して抽出又は乾燥を行い、予備の不織布リチウムイオン電池用セパレータを取得し、
ステップfにおいて、後処理を行い、
ステップeにより製作された予備の不織布リチウムイオン電池用セパレータを、前記有機ポリマーの融点より5〜30℃高い温度まで加熱し、
あるいは、第3溶剤に浸け、前記第3溶剤は、水、ケトン系溶剤、アミド系溶剤、エステル系溶剤、アルコール溶剤及びハロゲン化炭化水素溶剤の1種類又は2種類以上の混合である、
ことを特徴とする新型改質不織布リチウムイオン電池用セパレータの製作方法。
【請求項7】
前記ステップcにおいて、
前記第1充填材料及び2充填材料の総重量と、有機ポリマーの重量との割合は、(1:5)〜(5:1)であり、
第2充填材料は、第1充填材料及び第2充填材料の総重量の0〜50%を占める、ことを特徴とする請求項6に記載の新型改質不織布リチウムイオン電池用セパレータの製作方法。
【請求項8】
前記ステップcにおいて、補助剤を添加し、前記補助剤は、分散剤、消泡剤、界面活性剤の1種類又は2種類以上の組み合わせである、ことを特徴とする請求項6に記載の新型改質不織布リチウムイオン電池用セパレータの製作方法。
【請求項9】
前記ステップdにおける充填は、積層、浸け置き、押圧、注入、ロール塗布、ナイフ塗布又はグラビア塗布を用いる、ことを特徴とする請求項6に記載の新型改質不織布リチウムイオン電池用セパレータの製作方法。
【請求項10】
製作された新型改質不織布リチウムイオン電池用セパレータに対して機械処理を行い、前記機械処理は、熱間圧延、遠心分離及び引っ張りの1種類又は複数の種類である、ことを特徴とする請求項6に記載の新型改質不織布リチウムイオン電池用セパレータの製作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新型改質不織布リチウムイオン電池用セパレータに関し、当該電池用セパレータの製作方法にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、商用化されたポリエチレン及びポリプロピレンのセパレータは、携帯電話やカメラなどのデジタル製品用電池に適用している。しかしながら、そのようなセパレータは、いくつかの不足を有する。一方、ポリオレフィンの溶融温度が165℃より低いので、電池の外部温度が高すぎているか又は意外な衝撃を受けたとき、セパレータは破壊される可能性があり、この場合、電池が短絡されるので、電池燃焼及び爆発の原因になる。他方、ポリオレフィンの親電解質の性能が悪く、電解質を保持する性能が不足であるので、電池のサイクル寿命や大電流充放電などの性能が悪い原因になる。そのようなセパレータの安全性能と電気性能上の不足は、パワー蓄電池における使用を制限している。
【0003】
セパレータの安全性能及び吸液保液性能を改善するために、中国特許文献第CN102629679A号は、3層のナノファイバーリチウムイオン複合セパレータを提供しており、当該セパレータは、熱安定性がよく、孔隙率が高く、吸液能力が高く、熱間複合プレスによりその機械強度を改善することができる。しかしながら、エレクトロスピニングスプレーにより3層の複合構造を形成し、当該セパレータの剥離強度が低いので、界面抵抗は大きく、製作された電池の内部抵抗は大きく、パワー蓄電池の大電流充放電に有利でない。なお、その孔径が大きく、電池製作プロセスにおいて耐高圧絶縁性が悪く、電池内の短絡率が10%に達する。
【0004】
中国特許文献第CN1679185号は、ハイパワーリチウムイオン電池に適用するセラミックセパレータを提供している。当該セパレータは、不織布の基体にセラミック塗層と、Al、Zr、Siの元素を有する酸化物粒子と、イオン導電機能を有する無機材料とを塗布している。当該セパレータの最大利点は、イオン導電率が高く、融点が250℃より高く、熱安定性が良く、電気化学安定性が良く、製作された電池の大電流充放電上の性能が優れている。しかしながら、当該セパレータの塗布層の無機材料は、外表面に露出され、吸水が容易であり、製作されたセパレータの吸水性が極めて高い。電池製作プロセスにおいて、普通の乾燥工程では水分を除去し難く、セパレータにおける比較的多い水分が電池システムに入って水分が電解質と反応する場合、電池の膨張が起き、内部抵抗が大きく、さらに、電池の電気化学性能が悪く、例えば、電池の容量損失が大きく、サイクル寿命が悪い。なお、フレキシブル基材に対する脆性無機塗層の接着力が悪いことは、電池加工プロセスにおける機械操作性を悪くする。セパレータに折り曲げ空隙、ひび及び損傷などの問題が発生しやすく、さらに電池の短絡が発生する。電池の膨張を解決するために、電池製作プロセスにおいて、水分を除去するように、更に長い乾燥時間又は更に高い温度が必要になり、脆性無機塗層の損傷及び剥落の可能性を高める。さらに、当該セパレータの強度が悪いので、高速自動巻きの加工要求を満たすことができなく、電極ダストによる突き通しに耐える能力が弱く、短絡率が高い。
【0005】
発明者は、上述のセパレータに対して異なる性能上の最適化を行い、上述の分析から大きい改善の余地があることを見つけた。パワー蓄電池が高容量と高出力の充放電電池であることが求められているので、安全性能と電気性能についてセパレータに対する要求が高い。したがって、セパレータは、熱安定性と電気化学安定性が良く、リチウムイオン伝導性が高く、吸液保液性能が優れ、含水量が低く、電池を加工しやすいなどの性能を同時に有さなければならない。
【発明の概要】
【0006】
従来のリチウムイオン電池用セパレータにおける吸水が容易で、耐熱性が悪く、強度が高くないという問題を解決し、リチウムイオン電池の使用寿命及び安全性を改善するために、本発明は、新型改質不織布リチウムイオン電池用セパレータを提供し、当該電池用セパレータの製作方法をさらに提供する。
【0007】
上述の問題を解決するために、本発明の技術案は、以下のとおりである。
【0008】
新型改質不織布リチウムイオン電池用セパレータであって、前記セパレータは、改質不織布基材と、その複合充填剤とを備える。
【0009】
前記充填剤は、改質不織布基材の孔内に充填される。このとき、不織布基材の孔隙内に充填剤が充填される。好ましくは、前記充填剤は、改質不織布基材の孔内から外向きに延伸して改質不織布基材全体を覆う。前記セパレータの厚さは、改質不織布基材の厚さの1〜10倍である。さらに好ましくは、前記セパレータの厚さは、改質不織布基材の厚さの1〜2倍である。この場合、前記改質不織布リチウムイオン電池用セパレータの構造は、中間が一層の不織布繊維層であり、不織布基材の孔隙内に充填剤が充填され、充填剤が不織布基材の表面も覆う。
【0010】
前記改質不織布基材は、基材に孔径が1〜50000nmである均等に配列された孔が分布されるので、不織布の改質複合フィルムの厚さ及び孔径構造の均一性を確保する。毛細管による吸液原理及び液体の表面張力などの要因に基づいて、基材の孔隙率が30〜95%である。孔隙率が30%をこえる場合、製作されたセパレータはより良い吸液保液性能を有し、セパレータにおいてリチウムイオンをスムーズに伝導することを保証し、製作された電池の内部抵抗が低く、電池の高出力の充放電を容易にする。しかし、孔隙率が95%より大きい場合、不織布基材の強度が不足であり、製作されたセパレータ電池の加工性が悪く、歩留まりが低い。
【0011】
改質不織布基材は、低融点材料と、高融点材料とを含む。前記低融点材料は、溶融結晶化処理される。高融点材料は、改質不織布基材の総重量の85〜99.9%である。残りは、低融点材料である。前記高融点材料は、融点≧200℃であるポリエステル、ポリオレフィン、ニトリルポリマー、芳香族ポリイミド、及びポリエーテルの1種類又は複数の種類の混合で製作される。ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレ-ト(PET)、ポリトリメチレン テレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンフタレート材料を含むがそれに限定されない。ポリオレフィン系繊維は、ポリメチルペンテン材料を含むがそれに限定されない。セルロース系は、ポリビニルホルマール-ナノセルロース、テンセル材料を含むがそれに限定されない。ポリニトリル系は、ポリアクリロニトリル(PAN)材料を含むがそれに限定されない。ポリエーテル系は、芳香族ポリエーテル材料を含むがそれに限定されない。ポリエーテル系は、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、及びポリフェニレンサルファイド材料を含むがそれに限定されない。前記低融点材料は融点が50〜199℃であるポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、熱接着性ポリエステル、フッ素系ポリマールの1種類又は複数の種類である。
【0012】
低融点材料と高融点材料からなる基材を選択して、基材は二峰性の融点を有する。所定の熱量及び機械圧力の場合、重量比が小さい低融点材料は、軟化溶融し始め、元の繊維形式を変化させ、平坦で均一な表面を有する構造を改めて形成し、一方で、重量比が大きい高融点材料は、その高温安定性のため、変化しない。熱量と圧力が解放された後、溶融された低融点溶融物は、冷却固化され又は再結晶され、高融点材料を堅く結合する。基材全体の強度及び表面平坦度を向上し、基材は、引っ張り強度が60MPaに達し、突刺強度が3Nに達する。低融点材料は、基材重量の0.1〜15%を占め、高融点材料は、基材重量の85〜99.9%を占める。低融点材料の含有量が15%を超える場合、製作された基材の熱収縮性能が悪いほど、セパレータが高温で収縮しやすいので、電池の正負電極が接触して短絡及び爆発が起こる。低融点材料の含有量が0.1%より低い場合、製作された基材の表面粗さが粗いほど、厚さの均一性が悪く、その機械強度が低く、耐絶縁性の破壊短絡試験の合格率が低い。
【0013】
本発明において、好ましくは、溶融結晶化処理は、低融点材料の融点より0〜10℃高い温度で低融点材料を加熱して溶融してから、冷却して結晶化させるプロセスである。前記溶融温度が低融点材料の融点より0〜10℃高い温度を用いるので、重量比が小さい低融点材料は、軟化溶融し、元の繊維形式を変化させ、平坦で均一な表面を有する構造を改めて形成し、一方で、重量比が大きい高融点材料は、その高温安定性のため、変化しない。加熱を停止し温度が低下するとき、溶融された低融点溶融物の冷却結晶により、高融点物質が堅く結合され、基材全体の強度が向上される。
【0014】
前記改質不織布基材における充填剤は、有機ポリマーと、第1充填材料及び/又は第2充填材料とを備える。
【0015】
前記有機ポリマーは、フッ素系ポリマーや、ゴム、エステル系ポリマー、セルロース、でん粉などの1種類又は2種類以上の組み合わせである。前記フッ素系ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンヘキサフルオロプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデントリクロロエチレンを含むがそれに限定されない。前記ゴムは、スチレンブタジエンゴム、カルボキシル化スチレンブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴムを含むがそれに限定されない。前記エステル系ポリマーは、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸グリセリド、メタクリル酸エチレングリコールエステル、ポリエチレンビニルアセテート、ポリビニルアセテートを含むがそれに限定されない。前記セルロースは、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、シアノエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びこれらの混合物を含むがそれに限定されない。前記でん粉は、シアノエチルプルラン、プルランなどを含むがそれに限定されない。
【0016】
選択された有機ポリマーは、セパレータの吸液保液性能を確保するように、親電解質特性を有し、セパレータのイオン伝導率及び電池のサイクル性能を保証する。選択された有機ポリマーは、充填材料を結びつき及び覆うように、適当なクリープ性能及び充填材料との湿潤性を有する。
【0017】
前記第1充填材料は、粒径が1〜2000nm、好ましくは10〜1000nm、さらに好ましくは50〜500nmである無機顆粒である。前記第1充填材料は、無機ナノ粒子であり、不織布孔隙を充填し、セパレータの高温安定性を向上する役割を主に果たす。前記第1充填材料は、無機酸化物ナノ粒子、無機窒化物ナノ粒子、鉱石ナノ粒子の1種類又は複数の種類を含むがそれに限定されない。前記無機酸化物ナノ粒子は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、ジルコニア、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化鉄及び二酸化セリウムの少なくとも1種類である。前記無機窒化物ナノ粒子は、窒化ケイ素、窒化チタン及び窒化ホウ素の少なくとも1種類である。前記鉱石ナノ粒子は、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、滑石、カオリン粘土、カオリナイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、雲母、ベントナイト粘土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、珪藻土、珪砂の少なくとも1種類である。前記第1充填材料の形状は、球形、略球形、亜鈴形、棒形であってもよい。
【0018】
前記第2充填材料は、粒径が1〜10000nm、好ましくは100〜5000nm、さらに好ましくは300〜3000nmである繊維粒子である。前記第2充填材料は、セパレータにおいて増強の役割を果たし、繊維粒子である。前記繊維粒子は、珪灰石繊維、ガラス繊維、リグニン、セルロースナノファイバー、アクリル繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維及びポリイミド繊維などの1種類又は2種類以上の混合である。
【0019】
好ましくは、前記改質不織布基材材料は、ポリエステル、ポリオレフィン、ニトリルポリマー及びポリイミドの1種類又は2種類以上の混合である。前記第1充填材料は、無機酸化粒子である。前記第2充填材料は、珪灰石繊維、リグニン、セルロースの1種類又は2種類以上の混合である。
【0020】
新型改質不織布リチウムイオン電池用セパレータ及びその製作方法は、以下のステップa〜fを備える。
【0021】
ステップaにおいて、不織布繊維層を製作し、高融点材料及び低融点材料を加工して不織布繊維層を製作し、前記加工工程は、メルトブローン、スパンボンド、抄紙、スパンレース、突刺、熱延の1種類であってもよく、ここで、高融点材料の重さは、製作された不織布繊維層の総重量の85〜99.9%であり、残りは、低融点材料であり、上述の工程は、パラメータを調整することで、不織布繊維層の孔隙寸法及び孔隙率を制御することができ、
前記高融点材料が融点≧200℃であるポリエステル、ポリオレフィン、ニトリルポリマー、芳香族ポリイミド、及びポリエーテルの1種類又は複数の種類であり、
前記低融点材料は、融点が50〜199℃であるポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、熱接着性ポリエステル、フッ素系ポリマールである。
【0022】
ステップbにおいて、改質不織布基材を製作し、
ステップaにより得られた不織布繊維層を溶融結晶化処理し、前記溶融結晶化処理は、ステップaに用いられた低融点材料の融点より0〜10℃高い温度で低融点材料を加熱して溶融してから、冷却して結晶化させるプロセスである。前記溶融温度がステップaにおける低融点材料の融点より0〜10℃高い温度を用いるので、重量比が小さい低融点材料は、軟化溶融し、元の繊維形式を変化させ、平坦で均一な表面を有する構造を改めて形成し、一方で、重量比が大きい高融点材料は、その高温安定性のため、変化しない。加熱を停止し温度が低下するとき、溶融された低融点溶融物の冷却結晶により、高融点物質が堅く結合され、基材全体の強度が向上される。続いて、溶融結晶化処理された不織布を乾燥し、不織布の含水量ができるだけ低いことを確保する。
【0023】
ステップcにおいて、充填剤パルプを製作し、第1充填材料及び第2充填材料に対して乾燥処理を行う。1:(5〜50):(0.1〜10)の重量比で有機ポリマー、第1溶剤及び第2溶剤を混合して、澄んだ状態になるまで攪拌加熱してから、乾燥処理された第1充填材料及び/又は第2充填材料を添加して均一に混合する。
【0024】
前記有機ポリマーは、フッ素系ポリマーや、ゴム、エステル系ポリマー、セルロース、でん粉などの1種類又は2種類以上の組み合わせである。前記フッ素系ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンヘキサフルオロプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデントリクロロエチレンを含むがそれに限定されない。前記ゴムは、スチレンブタジエンゴム、カルボキシル化スチレンブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴムを含むがそれに限定されない。前記エステル系ポリマーは、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸グリセリド、メタクリル酸エチレングリコールエステル、ポリエチレンビニルアセテート、ポリビニルアセテートを含むがそれに限定されない。前記セルロースは、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、プロピオン酸セルロース アセテート、シアノエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びこれらの混合物を含むがそれに限定されない。前記でん粉は、シアノエチルプルラン、プルランなどを含むがそれに限定されない。
【0025】
前記第1溶剤は、ケトン系溶剤、アミド系溶剤、エステル系溶剤の1種類又は2種類以上の混合である。ケトン系溶剤は、アセトン、ブタノン及びN−メチルピロリドンを含むがそれに限定されない。アミド系溶剤は、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドを含むがそれに限定されない。エステル系溶剤は、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリメチル、及び酢酸エチルを含むがそれに限定されない。
【0026】
前記第2溶剤は、水、アルコール溶剤、ハロゲン化炭化水素溶剤の1種類又は2種類以上の混合である。前記アルコール溶剤は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、ブチルアルコール、グリセリンを含むがそれに限定されない。前記ハロゲン化炭化水素溶剤は、クロロホルム、ジクロロメタンを含むがそれに限定されない。
【0027】
選択された第2溶液の沸点は、第1溶剤の沸点より10℃以上高い。撹拌加熱温度は、第1溶剤の沸点の以下であり、好ましくは第1溶剤の沸点より10℃以上低い。前記加熱温度が高すぎる場合、溶剤の揮発が早すぎるので、パルプの局部温度が高くなり、塊りになり易い。
【0028】
ステップdにおいて、不織布を充填し、ステップcにより製作された充填剤パルプをステップbより製作された改質不織布基材に充填する。
【0029】
ステップeにおいて、溶剤を除去し、ステップdにより加工された不織布繊維層に対して抽出又は乾燥の方式を用いて、予備の不織布リチウムイオン電池用セパレータを取得する。
【0030】
ステップfにおいて、後処理を行い、ステップeにより製作された予備の不織布リチウムイオン電池用セパレータを、前記有機ポリマーの融点より5〜30℃高い温度まで加熱し、
あるいは、第3溶剤に浸け、前記第3溶剤は、水、ケトン系溶剤、アミド系溶剤、エステル系溶剤、アルコール溶剤及びハロゲン化炭化水素溶剤の1種類又は2種類以上の混合である。
【0031】
ステップfにより、有機ポリマーは、充填材料をさらに堅く覆い、セパレータの含水量を少なくし、強度を高くする。そのプロセスにおいて有機ポリマーにクリープが起こり、塗層の孔隙構造が変化するが、塗層の孔隙の微孔構造が変化しなく、セパレータには大きい熱収縮が起こらない。さらに、無機粒子が有機ポリマーにより覆われ、無機粒子の大部の表面が空気と隔絶するので、無機粒子の吸水性を大幅に低減する。処理されたセパレータは、空気に数ヶ月保管した後、低い含水量を保持することができる。
【0032】
前記第3溶剤は、第1溶剤と同じであってもよく、異なってもよく、好ましくは、アセトン、水、N,N−ジメチルスルホキシドである。このような溶剤により、有機ポリマーが溶解される可能性があり、したがって、塗層の孔隙構造を変化するが、セパレータの優れた性能に影響を与えなければならない。
【0033】
塗層パルプの性能を向上するために、好ましくは、ステップcにおいて、必要に応じて適宜な補助剤を加入する。加入された補助剤は、膜形成に役に立つが、電池システムに悪影響を与えてはならない。前記補助剤は、分散剤、消泡剤、界面活性剤などの1種類又は複数の種類を含むがそれに限定されない。
【0034】
前記分散剤は、市販の分散剤であってもよく、例えば、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウムなどの1種類又は複数の種類である。
【0035】
前記界面活性剤は、市販の活性剤であり、例えば、含フッ素界面活性剤、含シリコン界面活性剤、ポリエーテル系界面活性剤などの1種類又は複数の種類である。
【0036】
前記消泡剤は、市販の消泡剤であり、例えば、天然油脂、シリコーン系消泡剤、高級脂肪アルコール、ポリエーテル系消泡剤などの1種類又は複数の種類である。
【0037】
さらに、前記ステップcにおいて、前記第1充填材料と2充填材料の総重量、及び有機ポリマーの重量の割合は、(1:5)〜(5:1)であり、第2充填材料は、第1充填材料及び第2充填材料の総重量の0〜50%を占める。
【0038】
製作された電池用セパレータの性能を向上するために、ステップfの後に、必要に応じて、製作されたリチウムイオン電池用セパレータに対して、追加の機械処理を増加又は複合し、例えば、熱間圧延、遠心分離及び引っ張りの1種類又は複数の種類である。孔隙率を増加する場合、引っ張り処理を増加することが考えられてもよい。孔隙率を減少する場合、圧延又は遠心分離を増加することが考えられてもよい。
【0039】
本発明による新型リチウムイオン電池用セパレータは、以下の技術効果を実現することができる。その独特な不織布基材は、セパレータの強度を向上させ、巻き加工性を確保し、電池の歩留まりを向上することができる。特別な有機ポリマーは、無機顆粒構造を覆うことは、電池用セパレータの吸水性を大幅に低減し、水分が電池システムに入る可能性を低減することができる。したがって、過剰な水分と電解質との反応は、電池膨張を発生させ、内部抵抗を大きくすることを防止する。さらに、電池の倍率放電性能及び使用寿命を向上する。本発明は、新型リチウムイオン電池用セパレータの製作方法をさらに提供する。当該方法は、操作が簡単で、コストが安く、製作された製品は、含水量が低く、化学安定性が良く、機械強度が高いので、電池の歩留まり、使用寿命及び安全性を向上する。
【0040】
以下、図面及び具体的な実施形態を参照しながら、本発明について更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、第1実施例の改質不織布リチウムイオン電池用セパレータの構成模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
<第1実施例>
融点が250℃である95gの高融点PET繊維及び融点が150℃である5gの低融点PET繊維を用いて、湿式抄紙法により、不織布繊維ウェブ層を抄造する。不織布繊維ウェブ層に対して155℃の温度で溶融結晶化処理を行ってから冷却を行うことで、孔隙率が58%で、平均孔径が11μmで、突刺強度が3.0Nで、150℃及び1hの場合に熱収縮が1%で、厚さが16μmである改質不織布基材1を製作し得る。
【0043】
充填剤2を準備しておく。前記充填剤は、酸化アルミニウムと、PVDFとを含む。
【0044】
溶融結晶化処理された不織布を乾燥し、ここで、乾燥温度が90℃であり、時間が1minである。粒径が250nmである40gの酸化アルミニウムを乾燥箱に入れ、ここで、温度が100℃であり、時間が4hである。
【0045】
融点が165である20gのPVDF、500gのアセトン及び20gのエチルアルコールを混合加熱攪拌して、澄んだ状態になるまで60℃で加熱攪拌する。乾燥された酸化アルミニウム、0.5gのPVP及び1gの含フッ素界面活性剤を混合液に入れて、撹拌を15〜30min続けて、予備分散されたパルプを得る。当該パルプを分散装置に入れて15〜20min分散して、充填パルプを得る。
【0046】
浸け置き方式を用いて、二峰性の融点を有するPET改質不織布基材に、上述の充填パルプを充填し、5〜10min静置してから、乾燥箱に入れて10〜20min乾燥して、予備不織布複合セパレータを得る。
【0047】
上述の予備不織布複合セパレータを160℃の温度で熱間プレス加工して、本発明に係る前記厚さが20μmである改質不織布リチウムイオン電池用セパレータを得る。
図1に示すように、製作された改質不織布リチウムイオン電池用セパレータは、改質不織布基材1と、充填剤2とを備える。充填剤2は、改質不織布基材1の孔内に充填され、外向きに延伸して改質不織布基材1全体を覆う。
【0048】
<第2実施例>
第1実施例の方法による改質不織布リチウムイオン電池用セパレータとの相違は、融点が150℃である0.5gの低融点PET繊維のみを添加して、突刺強度が2.2Nで、150℃及び1hの場合に熱収縮が0.5%である不織布基材を製作し得る点である。
【0049】
<第3実施例>
第1実施例の方法による改質不織布リチウムイオン電池用セパレータとの相違は、融点が150℃である16.8gの低融点PET繊維のみを添加して、突刺強度が3.2Nで、150℃及び1hの場合に熱収縮が5%である不織布基材を製作し得る点である。
【0050】
<第4実施例>
第1実施例の方法による改質不織布リチウムイオン電池用セパレータとの相違は、充填されたセパレータの厚さ及び充填されない不織布基材の厚さは同じで、16μmである点である。
【0051】
<第5実施例>
第1実施例の方法による改質不織布リチウムイオン電池用セパレータとの相違は、メルトブローン工程を用いて改質不織布基材を製作する点である。
【0052】
<第6実施例>
第1実施例の方法による改質不織布リチウムイオン電池用セパレータとの相違は、粒径が250nmである40gの酸化アルミニウムを乾燥箱に入れ、ここで、温度が80℃で、時間が1minである点である。
【0053】
<第7実施例>
第1実施例の方法による改質不織布リチウムイオン電池用セパレータとの相違は、粒径が1200nmである20gの珪灰石繊維粒子を追加する点である。
【0054】
<第8実施例>
第1実施例の方法による改質不織布リチウムイオン電池用セパレータとの相違は、融点が145℃であるPVDF-HFPを有機ポリマーとして選択し、ブタノンを第1溶剤として選択する点である。
【0055】
<第9実施例>
第1実施例の方法による改質不織布リチウムイオン電池用セパレータとの相違は、粒径が800nmである水酸化マグネシウムを第1充填材料として用いる点である。
【0056】
<第10実施例>
第1実施例の方法による改質不織布リチウムイオン電池用セパレータとの相違は、後処理工程において、予備不織布複合セパレータを水に1〜5min浸してから乾燥して、本発明による改質不織布リチウムイオン電池用セパレータを製作し得る点である。
【0057】
<第11実施例>
第1実施例の方法による改質不織布リチウムイオン電池用セパレータとの相違は、予備不織布複合セパレータを180℃の温度で熱間プレス加工する点である。
【0058】
<第1比較例>
第1実施例の方法によるリチウムイオン電池用セパレータとの相違は、150℃の低融点PET材料を添加しない場合に改質不織布基材を製作する点である。
【0059】
<第2比較例>
第1実施例の方法によるリチウムイオン電池用セパレータとの相違は、融点が150℃である24gの低融点PET材料を添加して、改質不織布基材を製作する点である。
【0060】
<第3比較例>
第1実施例の方法によるリチウムイオン電池用セパレータとの相違は、不織布基材及び酸化アルミニウムを乾燥処理しない点である。
【0061】
<第4比較例>
第1実施例の方法によるリチウムイオン電池用セパレータとの相違は、何も後処理工程を行わない点である。
【0062】
<第5比較例>
第1実施例の方法によるリチウムイオン電池用セパレータとの相違は、単層PEフィルムを基材として用いる点である。
【0063】
<第6比較例>
普通のセラミックセパレータである。
【0064】
<第7比較例>
普通の不織布セパレータである。
【0066】
正極はコバルト酸リチウムLiCoO2で製作され、負極は黒鉛を用い、電池の電解質は、炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)と炭酸ジメチル(DMC)の体積比が1:1:1である溶液を用い、電解質に添加された溶質は、1mol/Lの6フッ化リン酸リチウムLiPF
6である。実施例1〜6及び比較例1〜5に対して電池性能評価をそれぞれ行う。
【0068】
各実施例のサンプルを85℃の乾燥箱に入れて異なる時間(それぞれが、6h、12h、24h、48h)で乾燥してから、サンプルに対して含水量試験を行う。表1は、試験結果を示す。
【0069】
表1の試験結果により、普通のセラミックセパレータと比較すると、本発明のセパレータは、より低い熱収縮性能を有する。第1、2、4、7比較例と比較すると、本発明による不織布基材の特定の高低融点特性に基づいて製作されたセパレータは、より低い熱収縮性能、及び十分な突刺引っ張り強度を有することを同時に保証し、セパレータ電池の加工歩留まり及び安全性を確保する。
【0071】
表2の試験結果により、普通のセラミックセパレータと比較すると、本発明のセパレータの含水量は、より低い。第3、4、6比較例と比較すると、本発明による基材と充填構造からなるセパレータは、加工の特殊性、及び有機ポリマーが無機粒子を覆う構造のため、セパレータの含水量を低く、必要な乾燥時間を少なくする。
【0072】
耐絶縁性破壊短絡の試験方法及び試験結果について
【0073】
各実施例に対して100個の電池を製作する。電池製作において、電池セルを85℃の真空乾燥箱に24h乾燥してから、電池セルに対して耐絶縁性破壊短絡の試験を行い、異なる電圧で試験された電池に対して個数統計を行う。表3は、試験結果を示す。
【0075】
表3の試験結果により、普通の不織布セパレータと比較すると、本発明のセパレータの耐絶縁性が良く、250Vの電圧での破壊短絡試験合格率が100%に達し、一方で、普通の不織布セパレータの合格率が5%である。第1、4比較例と比較すると、本発明による前記基材及び充填剤構造からなるセパレータは、基材の特殊性及びカバレッジ性の充填剤構造が、セパレータの耐絶縁性を大幅に向上させ、電池の歩留まりを向上する。
【0076】
安全性能の試験方法及び試験結果について
【0077】
各実施例に対して100個の電池を製作する。電池の安全性能試験を行い、電池に対して個数及び試験状況による統計を行う。
【0078】
ヒートショックについて、中国の国定標準GB/T18287−2013における方法に基づいて試験を行い、液体漏れがなく、発火せず、爆発が発生しないことを判断基準とする。
【0079】
突刺について、室温で、0.5Cの電流で充電制限電圧4.2Vまで定電流充電したとき、定電圧充電に変換し、3.5H後又は電流が0.02Cに降下した場合、充電を停止させ、充電された電池に対して、直径が3.0〜8.0mmである鉄釘を用いて、21〜40mm/secの速度で電池を垂直に突き通し、発火せず、爆発が発生しないことを判断基準とする。
【0080】
短絡について、中国の国定標準GB/T18287−2013における方法に基づいて試験を行い、発火せず、爆発が発生しなく、外表面の温度が150℃より低いことを判断基準とする。
【0081】
過充電について、中国の国定標準GB/T18287−2013における方法に基づいて試験を行い、発火せず、爆発が発生しないことを判断基準とする。
【0083】
表4の試験結果により、本発明のセパレータによる電池は安全性能試験上の表現がより優れるので、本発明のセパレータは良い高温安定性と安全性を有することを表す。熱暴走や外力衝撃などの事故が起こっている場合、電池の火事や爆発などの事故をより効果的に防ぐことができる。
【0084】
電気性能の試験方法及び試験結果について
【0085】
各実施例に対して100個の電池を製作する。電池に対して電気性能試験を行い、10個の電池試験データの平均値を算出して表5に記入する。
【0086】
倍率放電について、中国の国定標準GB/T18287−2013における方法に基づいて試験を行う。
【0087】
サイクル性能について、性能試験装置BS−9300を用い、1Cの倍率で充放電サイクル試験を行い、定電流定電圧充電方式(CC-CV)と定電流放電方式を用い、充放電電圧範囲が3.0〜4.2Vであり、まず、1Cの定電流で4.2Vに充電し、続いて、電流が20mAより低いまで4.2Vの定電圧で充電してから、カットオフ電圧が3.0Vになるまで、1Cの定電流で放電する。このようにして、500回のサイクルを行って、サイクルデータを収集する。
【0088】
内部抵抗について、中国の国定標準GB/T18287−2013における方法に基づいて試験を行う。
【0090】
表5の試験結果により、本発明のセパレータによる電池は、内部抵抗がより小さく、高率放電性能とサイクル性能がより優れる。本発明による基材及び充填剤は、均一の厚さと孔径寸法、良い電気化学的な安定性、優れた吸液保液性能、及び極小の吸水性をセパレータに与えることで、本発明のセパレータによる電池は、優れた倍率放電性能とサイクル寿命を有する。
【0091】
上述の実施形態は、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、本発明の保護の範囲を限定するものではない。当業者であれば、本発明に基づいて各種の非実質性変化及び置換は、全て本発明の保護の範囲に属する。