特許第6133524号(P6133524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6133524
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】容器体
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/00 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   B65D83/00 F
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-571371(P2016-571371)
(86)(22)【出願日】2016年11月28日
(86)【国際出願番号】JP2016085213
【審査請求日】2016年12月5日
(31)【優先権主張番号】特願2015-234866(P2015-234866)
(32)【優先日】2015年12月1日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅野 夏基
【審査官】 西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−025431(JP,A)
【文献】 特開2010−120323(JP,A)
【文献】 再公表特許第2012/008145(JP,A1)
【文献】 特開2014−111474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
B65D 77/04−77/06
B65D 85/00
A61L 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物と、内容物を封入する袋体と、前記袋体を収容する容器とを備える容器体であって、
前記袋体の一端近傍は、前記容器の少なくとも一方の側面部分で薬剤の揮散を抑制しうる程度に密着して全幅にわたって狭持されつつ外部に延出され、
前記袋体の引張強度が0.5N/15mm以上83.3N/15mm以下の範囲であり、
前記袋体のループ剛性が0.5mN以上77mN以下の範囲であることを特徴とする容器体。
【請求項2】
前記袋体の厚みが2μm以上600μm以下の範囲であることを特徴とする請求項に記載の容器体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器体に関し、特に内容物が封入された袋体を収容する容器体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、芳香剤や防虫剤などの揮発性および昇華性の成分を含有する固形状やジェル状の内容物を収納するための容器構造として、様々なものが提案されている。これらの容器構造では、内容物を設置する際や詰め替えをする際に、指に内容物が接触して薬剤が付着してしまう可能性があり、衛生対策や安全性対策を講じる必要があった。
【0003】
これらの問題を解決するために特許文献1には、容器内にパック体を収容し、パック体のラミネートフィルムに遊離片を形成して牽引索を取り付け、容器の導出口から外部に導出された牽引索を引っ張ることでパック体を開封することにより、薬剤を含有する内容物に触れることなく内容物を容器内で露出させる構造が提案されている。
【0004】
また特許文献2には、ケースに密封袋を設置し、ケースの側面に設けられた開口部から密封袋の端部を導出しておき、導出された端部のVカットから密封袋を開封して、密封袋内に封入されていた薬剤袋に空気を導入させる構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実願昭58−40306号(実開昭59−147067号)のマイクロフィルム
【特許文献2】実願昭57−40475号(実開昭58−143354号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし特許文献1の従来技術では、パック体の構造が複雑になる。また、容器内にパック体を設置する際にも容器の各部とパック体の各構造を一致させる必要があり、パック体の設置や詰め替えの作業効率が悪いという問題があった。
【0007】
また特許文献2の従来技術では、ケースの側面に設けられた開口部からのみ薬剤袋に空気が流出入するため、内容物を揮発させる方向が側面に限定され、ケース上方向への薬剤揮散効果を得ることが難しい。また、ケースの周囲に対する薬剤の付着を抑制するためには、上方向への薬剤を揮散させて側面方向への薬剤揮散は抑制する必要がある。しかし、特許文献2の従来技術では、側面の開口部から側面方向への薬剤揮散が生じてしまい、ケース周囲への薬剤付着を防止しにくく、側面方向以外への薬剤揮散量を適切に設計することが困難になるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、簡便な構造の袋体を用いて揮発性の薬剤を含有した内容物を容器内に露出させることができ、かつ側面方向への薬剤揮散を抑制することが可能な容器体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の容器体は、内容物と、内容物を封入する袋体と、前記袋体を収容する容器とを備える容器体であって、前記袋体の一端近傍は、前記容器の少なくとも一方の側面部分で薬剤の揮散を抑制しうる程度に密着して全幅にわたって狭持されつつ外部に延出され、前記袋体の引張強度が0.5N/15mm以上83.3N/15mm以下の範囲であり、前記袋体のループ剛性が0.5mN以上77mN以下の範囲であることを特徴とする。
【0010】
このような本発明の容器体では、側面部分で挟持された袋体の一端を引っ張ることで、袋体を容器から取り除いて容器内に内容物を残すことができ、簡便な構造で内容物を指で触れずに容器内で露出させることができる。また、容器の側面部で袋体の一端近傍を挟持しているため、側面部に開口部を設ける必要が無く、側面方向への内容物の揮散を抑制することができる。
【0012】
また本発明の一態様では、前記袋体の厚みが2μm以上600μm以下の範囲である。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、簡便な構造の袋体を用いて揮発性の薬剤を含有した内容物を容器内に露出させることができ、かつ側面方向への薬剤揮散を抑制することが可能な容器体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態における容器体1を示す外観斜視図である。
図2】第1実施形態の容器体1を示す分解斜視図であり、図2(a)は容器上部10を斜め下方から見た斜視図であり、図2(b)は容器下部20を斜め上方から見た斜視図である。
図3】第1実施形態の袋体30および薬剤含浸体40を示す模式図であり、図3(a)は模式断面図であり、図3(b)は模式斜視図である。
図4】容器下部20の上に袋体30および薬剤含浸体40を載置して容器上部10を組み合わせる前の状態を示す模式斜視図である。
図5図1中にA−A線で示した位置における容器体1の断面図である。
図6】袋体30を抜き取った状態の容器体1を示す外観斜視図である。
図7】引き抜き強度の測定方法を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
【0016】
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本実施形態における容器体1を示す外観斜視図である。容器体1は、容器上部10と容器下部20と袋体30を備えている。容器上部10と容器下部20とは、組み合わされて袋体30の中央部を内部に収容し、袋体30の端部が側面から外部に延出されている。他の構成部材の詳細については後述する。
【0017】
図2は本実施形態の容器体1を示す分解斜視図であり、図2(a)は容器上部10を斜め下方から見た斜視図であり、図2(b)は容器下部20を斜め上方から見た斜視図である。図2(a)に示すように容器上部10は、上部引出側面11、上部係止側面12、天面13、揮散口14、中仕切梁15、係止爪16を備えている。
【0018】
上部引出側面11と上部係止側面12は、天面13の外周を囲んで下方に伸びる壁面であり、その下端は全周にわたって面一に形成されている。天面13は、両端に位置する上部引出側面11側が低く、上部係止側面12の中央部に向かって緩やかに高さが増す曲面形状をしている。天面13には複数の揮散口14が形成され、容器体1の内部と外部との間で空気の流出入が可能とされている。
【0019】
また、天面13の最も高い中央近傍の内側には、板状の部分である中仕切梁15が両側の上部係止側面12にかけて形成されている。中仕切梁15は、天面13と上部係止側面12の剛性を高めるための部分であるとともに、後述する内容物である薬剤含浸体が天面13方向に移動するのを規制する。上部係止側面12の内側下端には、後述する係止溝25に対応する位置に係止爪16が形成されている。
【0020】
図2(b)に示すように容器下部20は、下部引出側面21、下部係止側面22、底面23、支持部24、係止溝25、台座部26を備えている。下部引出側面21と下部係止側面22は、底面23の外周を囲んで上方に伸びる壁面であり、その上端は全周にわたって面一に形成されている。底面23は略矩形状の平板部分であり、下部係止側面22の内側に支持部24が立設して形成され、略中央位置に台座部26が形成されている。
【0021】
支持部24は下部係止側面22の内側に沿って、下部引出側面21側の端部から所定の範囲にわたって立設された部材であり、係止爪16に対応した位置に係止溝25が形成されている。支持部24の外側面は、上部引出側面11および上部係止側面12の内側面と対応した位置と形状で形成されており、容器上部10と容器下部20を組み合わせた際に互いの水平方向への移動が規制される。係止溝25に係止爪16が嵌合されると、容器上部10と容器下部20の上下方向への移動が規制される。台座部26は、底面23の略中央に設けられた所定高さの突起であり、薬剤含浸体を載置したときに薬剤含浸体を保持する部分である。
【0022】
容器上部10および容器下部20は、それぞれ各部が一体に形成されている。容器上部10と容器下部20を構成する材料としては、樹脂、金属、紙、木等が挙げられるが、成型の容易さや機械的強度、軽量であることから樹脂が好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ABS、ポリカーボネート、塩化ビニル、アクリロニトリル・スチレン共重合体が挙げられる。内容物である薬剤含浸体に含まれる薬剤に対する耐腐食性や防汚性などの観点からPET(Polyethylene terephthalate)が最も好ましい。図1,2では、容器体1の外形として平面視が略矩形状のものを示したが、どのような形状でも構わない。
【0023】
図3は本実施形態の袋体30および薬剤含浸体40を示す模式図であり、図3(a)は模式断面図であり、図3(b)は模式斜視図である。袋体30は、二枚のフィルム31a,31bで薬剤含浸体40を挟み、薬剤含浸体40の周囲を接着剤で貼り合わせて封入したものである。薬剤含浸体40は、袋体30の内部に封入されている内容物であり、液状体を内部に保持可能な含浸体に、ハッカ油、レモン油、チョウジ油、ユーカリ油等の精油、香料成分、トランスフルトリン、メトフルトリン、エンペントリン、プロフルトリン、樟脳、ナフタレン、パラジクロロベンゼンなどの防虫成分、イソプロピルメチルフェノール、パラクロロメタキシレノール、ヨウ素、アリルイソチオシアネート、二酸化塩素等の殺菌剤などの揮発性および昇華性薬剤を染み込ませたものである。薬剤含浸体40は昇華性薬剤のみで構成した固形薬剤であってもよい。揮発性薬剤および昇華性薬剤は常温で揮発および昇華する物質であればよく、既知の殺虫剤、忌避剤、芳香剤、殺菌剤等が挙げられる。
【0024】
フィルム31a,31bは、内容物である薬剤含浸体40から揮発した薬剤が透過しない材料で構成する必要があり、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン(Ny)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアクリロニトリル(PAN)、などが挙げられる。フィルムにはアルミ等の金属が含まれていてもよい。袋体30の長手方向の一端近傍には、薬剤含浸体40が位置しない端部領域32が設けられており、端部領域32の両側辺には一部を切り欠いたV字カット33が形成されている。袋体30におけるV字カット33の形成位置は、長手方向ではフィルム31a,31bを接着剤で貼り合わせた領域よりも内側であり、幅方向では両側の接着剤で貼り合わせた領域の範囲内である。
【0025】
図4は、容器下部20の上に袋体30および薬剤含浸体40を載置して容器上部10を組み合わせる前の状態を示す模式斜視図である。図4に示すように、袋体30の長手方向が下部係止側面22と略平行になるように底面23上に袋体30を載置する。このとき、袋体30に封入されている薬剤含浸体40は、底面23の略中央部に位置しており図示しない台座部26上にフィルム31bを介して載置される。また、袋体30の長手方向は対向する2つの引出側面11,21間よりも長く形成されており、その一端近傍である端部領域32およびV字カット33は下部引出側面21よりも外部に延出して載置されている。袋体30を載置した後に、容器下部20を上方から容器上部10を位置合わせして下方に移動させ、両者を組み合わせて図1に示した本実施形態の容器体1を得る。
【0026】
再び図1および図5を用いて本実施形態の容器体1について説明する。図5は、図1中にA−A線で示した位置における容器体1の断面図である。容器上部10と容器下部20を組み合わせた状態の容器体1では、袋体30の端部領域32は、幅方向の全体にわたって上部引出側面11と下部引出側面21とが密着しており、上部引出側面11と下部引出側面21によって全幅にわたって挟持されて外部に延出される。図5に示すように、袋体30の幅方向は2つの下部係止側面22間よりも短く、その端辺は上部係止側面12と下部係止側面22の間には挟持されていない。
【0027】
上述したように、上部引出側面11の下端と下部引出側面21の上端とは、ともに面一に形成されており容器上部10と容器下部20とを組み合わせた際に互いに接触するように設計されている。また、支持部24の上端は天面13に対応する形状とされており、係止爪16と係止溝25とが嵌合された状態では、天面13と係止爪16とで支持部24が把持され、容器上部10の上下方向への移動が規制される。
【0028】
容器上部10および容器下部20は樹脂で形成されているため、係止爪16と係止溝25の嵌合部分を含めた容器上部10および容器下部20は多少の弾性変形が可能となっている。したがって、上部引出側面11と下部引出側面21の間に袋体30の端部領域32が挟まれていても、係止爪16と係止溝25とは嵌合可能であり、容器上部10と容器下部20とは上下方向および水平方向への移動が規制されて組み合わされる。
【0029】
次に、図1を用いて本実施形態の容器体1の使用方法について説明する。はじめに、一方の端部領域32のV字カット33から幅方向に袋体30を引き裂いて、フィルム31a,31bが貼り合わされていない領域で切断し、袋体30を開封する。次に、切断した側とは反対である他方の端部領域32を指等でつまみ、袋体30を上部引出側面11と下部引出側面21との間から引き抜く。
【0030】
このとき、他方から袋体30を引っ張ることで薬剤含浸体40を含めて袋体30全体が移動する。しかし、袋体30の一方の端部領域32ではV字カット33で切断されて開封されており、上部引出側面11と下部引出側面21とで袋体30を挟んでいるため、薬剤含浸体40の移動のみが阻害される。これにより、薬剤含浸体40は袋体30から取り出されると同時に容器上部10と容器下部20の内部に残留して露出される。露出された薬剤含浸体40からは、薬剤が揮発して揮散口14を介して外部に放散される。
【0031】
図6は、袋体30を抜き取った状態の容器体1を示す外観斜視図である。図に示すように、容器上部10の上部引出側面11と上部係止側面12が、容器下部20の下部引出側面21と下部係止側面22と密着した状態で組み合わされる。したがって、容器体1の側面方向からの薬剤の放散はなく、天面13に形成された複数の揮散口14からのみ薬剤の放散が行われる。これにより、簡便な構造の袋体30を用いて揮発性の薬剤を含有した内容物である薬剤含浸体40を容器内に露出させることができ、かつ側面方向への薬剤揮散を抑制することが可能となる。
【0032】
上述したように本発明では、開封した袋体30を上部引出側面11と下部引出側面21の隙間から引き抜いて、袋体30の中に封入されていた薬剤含浸体40を容器体1の内部に残留させて露出させる。したがって、袋体30を構成する二枚のフィルム31a,31bは、上部引出側面11と下部引出側面21の隙間からの引き抜きを良好に行うことができる材質で形成される必要がある。
【0033】
袋体30を引き抜く際には、二枚のフィルム31a,31bとともに薬剤含浸体40も移動する。このとき、薬剤含浸体40の上下面を覆っているフィルム31a,31bは、薬剤含浸体40の厚み程度離間している。しかし薬剤含浸体40の移動は、上部引出側面11と下部引出側面21の近くで移動が阻まれ、フィルム31a,31bのみが上部引出側面11と下部引出側面21の隙間から引き抜かれる。その際、上部引出側面11と下部引出側面21の近傍では、高さ方向で薬剤含浸体40厚さの半分程度のフィルム31a,31bの変形が発生する。したがってフィルム31a,31bは、容易に当該変形を可能とするループ剛性が要求され、0.02mN以上200mN以下の範囲であればよく、0.1mN以上150mN以下の範囲が好ましく、0.5mN以上100mN以下の範囲がより好ましい。ループ剛性は短冊状にカットしたフィルムをループ状にし、ループを押しつぶした際の反発力を数値化したものである。ループステフネステスターを用いて測定し、温度23℃(±2℃)、相対湿度50%(±5%)、フィルム幅25mm、クランプ幅117mm、押しつぶし距離20mmの条件にて測定する。
【0034】
また、袋体30の引き抜き動作時には、フィルム31a,31bに端部領域32に加えられる外側方向への力と、上部引出側面11と下部引出側面21との隙間での挟持による容器体1方向への力が印加される。よって、フィルム31a,31bには、長手方向に引っ張り力が加えられても破断や変形が生じず、上部引出側面11と下部引出側面21との隙間から引き抜きが可能な程度の引張強度が要求され、0.5N/15mm以上100N/15mm以下の範囲であればよく、5N/15mm以上100N/15mm以下の範囲が好ましく、10N/15mm以上100N/15mm以下の範囲がより好ましい。引張強度はJIS K7127の測定法に従って測定する。
【0035】
また、袋体30のフィルム31a,31bが上記引張強度を備えていたとしても、フィルム31a,31bと上部引出側面11,下部引出側面21との間での摩擦力が大きすぎる場合には、引張強度を超える力が加わり袋体30に破断や変形が生じてしまう。したがって袋体30のフィルム31a,31bは、最大静止摩擦力および動摩擦力が加わっても破断や変形が生じない摩擦係数を備える必要があり、静摩擦係数が0.01以上0.9以下の範囲が好ましい。特に、容器上部10および容器下部20をPET樹脂で形成し、フィルム31a,31bをナイロン、エチレン−ビニルアルコール共重合体で形成した場合が好ましい。
【0036】
また袋体30は、上部引出側面11と下部引出側面21の隙間で挟持できる程度の厚みを有する必要があり、袋体30を載置した状態で容器上部10を容器下部20に組み合わせて係止爪16を係止溝25に嵌合させる動作を容易にするためにも、フィルム31a,31bの合計の厚みが2μm以上600μm以下の範囲が好ましい。
【0037】
(実施例)
本発明の容器体1と表1に記載のフィルム構成である袋体を用いて引き抜き性試験を行った。図1のように容器上部10と容器下部20の間に袋体30を挟み、袋体30を開封して袋体を引き抜いた。
実施例1:エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、袋体の厚み30μm。
実施例2:二軸延伸したナイロンとエチレン−ビニルアルコール共重合体の積層フィルム、袋体の厚み60μm。
実施例3:二軸延伸したナイロンとエチレン−ビニルアルコール共重合体の積層フィルム、袋体の厚み70μm。
実施例4:二軸延伸したポリプロピレンとアルミを蒸着した無延伸のポリプロピレンの積層フィルム、袋体の厚み90μm。
実施例5:ポリエチレンテレフタレートと直鎖状低密度ポリエチレンの積層フィルム、袋体の厚み84μm。
実施例6:二軸延伸したナイロンとポリアクリロニトリルの積層フィルム、袋体の厚み90μm。
実施例7:ポリエチレンテレフタレートとアルミニウムとエチレン−ビニルアルコール共重合体の積層フィルム、袋体の厚み78μm。
実施例8:ポリエチレンテレフタレートとアルミニウムとポリアクリロニトリルの積層フィルム、袋体の厚み102μm。
比較例1:二軸延伸したポリプロピレンと低密度ポリエチレン、アルミ、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンの積層フィルム、袋体の厚み208μm。
【0038】
各実施例について引張強度およびループ剛性を測定した結果を表1に示す。また、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンを材料とした容器上部10と容器下部20をそれぞれ用意し、各実施例の袋体30内に薬剤含浸体40を配置した状態と配置しない状態で下記の評価基準にて引き抜き性を評価したところ、いずれも引き抜き性は良好であった。PET容器と袋体30の静摩擦係数は、実施例2で0.46であり、実施例3で0.51、実施例6で0.26であった。
◎:8回以上引き抜ける
○:5〜7回引き抜ける
△:1〜4回引き抜ける
×:引き抜けない
【0039】
各実施例について引き抜き強度を測定した結果を表1に示す。図7は、引き抜き強度の測定方法を示す図面代用写真である。図7(a)に示すように、一方の端部領域32を開封した150mm×40mmの袋体30内に薬剤含浸体40を配置した状態で容器体1に収容し、開封されていない他方の端部領域32を容器体1から20mm露出させた。次に図7(b)に示すように、他方の端部領域32をオートグラフ(島津株式会社製 AGS−G 5kN)のクランプで挟持し、容器体1が動かないように冶具で固定した。他方の端部領域32をクランプで100mm/minの速度で引っ張り、袋体30を容器体1から引き抜いた際の最大引き抜き強度を引き抜き強度として測定し、下記の評価基準で評価した。
◎:0〜20N未満(楽に引き抜ける)
○:20N〜40N未満(引き抜ける)
△:40N〜60N未満(やや引き抜けにくい)
×:60N以上(引き抜けにくい)
【表1】
【0040】
本発明の容器体1では、内容物である薬剤含浸体40を袋体30に封入し、容器上部10と容器下部20で構成される容器の内部に袋体30を収容し、袋体30の端部領域32が少なくとも一方の側面部分である上部引出側面11と下部引出側面21の全幅にわたって狭持されつつ外部に延出されている。また、厚みが2μm以上600μm以下の範囲であり、袋体30を構成するフィルム31a,31bはループ剛性が0.02mN以上200mN以下の範囲であるか、引張強度が0.5N/15mm以上100N/15mm以下の範囲であるか、静摩擦係数が0.01以上0.9以下の範囲であるか、硬度が0.5N以上500N以下の範囲とされている。これにより、簡便な構造の袋体30を用いて揮発性の薬剤を含有した内容物である薬剤含浸体40を容器内に露出させることができ、かつ側面方向への薬剤揮散を抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
1…容器体
10…容器上部
20…容器下部
30…袋体
40…薬剤含浸体
11…上部引出側面
12…上部係止側面
13…天面
14…揮散口
15…中仕切梁
16…係止爪
21…下部引出側面
22…下部係止側面
23…底面
24…支持部
25…係止溝
26…台座部
31a,31b…フィルム
32…端部領域
33…V字カット
【要約】
【課題】簡便な構造の袋体を用いて揮発性の薬剤を含有した内容物を容器内に露出させることができ、かつ側面方向への薬剤揮散を抑制することが可能な容器体を提供する。
【解決手段】内容物と、内容物を封入する袋体と、前記袋体を収容する容器とを備える容器体であって、前記袋体の一端近傍は、前記容器の少なくとも一方の側面部分で狭持されつつ外部に延出され、前記袋体の引張強度が0.5N/15mm以上100N/15mm以下の範囲であることを特徴とする容器体。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7