(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6133527
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】消臭方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/14 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
A61L9/14
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-16425(P2017-16425)
(22)【出願日】2017年2月1日
【審査請求日】2017年2月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512044312
【氏名又は名称】有限会社 セイケン九州
(74)【代理人】
【識別番号】100085257
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 有
(72)【発明者】
【氏名】福留 広人
【審査官】
佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−187565(JP,A)
【文献】
特開平08−280785(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/016529(WO,A1)
【文献】
特開2004−231545(JP,A)
【文献】
特開2011−145615(JP,A)
【文献】
特開平06−142168(JP,A)
【文献】
特開2004−081027(JP,A)
【文献】
特開2006−136873(JP,A)
【文献】
特開2001−037854(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/090683(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0313335(US,A1)
【文献】
韓国登録特許第10−0355355(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00− 9/22
A01N 59/12
A61K 31/33−33/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポビドンヨードにアスコルビン酸(ビタミンC)またはチオ硫酸ナトリウムを添加して中和反応を起こさせてポビドンヨード溶液を無色透明とし、この無色透明なポビドンヨード溶液を水で希釈し、希釈した水溶液表面に超音波振動エネルギーを加えることで、微細な水滴として噴霧するとともに水滴中の前記中和反応によって生じたヨウ化水素(HI)をイオン化することを特徴とする消臭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペット臭等の不快な生活臭を消臭する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポビドンヨード(povidon iodine)は、商品名をイソジン(登録商標)とした消毒剤として広く知られている。このポビドンヨードはヨウ素(I)をキャリアであるポリビニルピロリドン(PVP)に結合させた水溶性の複合体である。
【0003】
上記のポビドンヨードに関する先行技術として、特許文献1及び特許文献2が知られている。
特許文献1は、3カ月以上に亘って有効ヨウ素及び遊離ヨウ素の量を維持することができる組成物として、約0.01〜1.4重量%の有効ヨウ素、約10〜125ppmの遊離ヨウ素、約0.005〜0.5重量%のヨウ素酸イオン、溶液中の該有効ヨウ素を維持するのに十分な量の錯化剤、約0.004〜0.50重量%のヨウ化物イオンからなるpHが約2.0〜4.5の溶液を提案している。
【0004】
特許文献2は、7〜30質量%のヨウ素、およびこのヨウ素に対してモル比が0.5〜2であるヨウ化アルカリを溶解するアルコール類および多価アルコール類の少なくともいずれか一方の水溶液からなる消毒剤を提案している。
【0005】
非特許文献1にはポビドンヨードを消毒剤ではなく、ビタミンCの定量剤として使用することが記載されている。
即ち、アスコルビン酸(ビタミンC)+ヨウ素(I
2)
→デヒドロアスコルビン酸+ヨウ化水素(2HI)
の反応式において、ヨウ素(I
2)は紫〜オレンジ色を呈するが、ヨウ化水素(2HI)は無色であるので、無色になるまでに滴下した量で、ビタミンCの定量を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2000−507217号公報
【特許文献2】特開2003−183169号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】BASF Kids' lab experiment guide
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1及び特許文献2或いは従来から知られるポビドンヨードを消毒剤や消臭剤として噴霧すると衣服等がヨウ素の色(紫〜オレンジ)に着色させてしまう。このため、着色されるのを嫌う衣服、カーテン、室内或いは車の座席などに付着した悪臭を除去する消臭剤としてこれらを用いた事例はない。
【0009】
一方、ポビドンヨードに非特許文献1に示すようにビタミンCを添加するか或いはハイポアルコール(チオ硫酸ナトリウム)を添加すると、中和されて無色透明になる。しかしながら、無色透明になった時点で有効ヨウ素(遊離ヨウ素)はヨウ化水素(HI)となっており、事実は別として消毒効果は消失するとされている。故に無色透明でしかも悪臭の除去に有効な消臭方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る消臭方法は、ポビドンヨードにアスコルビン酸(ビタミンC)またはチオ硫酸ナトリウムを添加して中和反応を起こさせてポビドンヨード溶液を無色透明とし、この無色透明なポビドンヨード溶液を水で希釈し、希釈した水溶液に振動などの物理的な刺激を与えることで、目に見えない程小さなミスト(水滴気流)として噴霧する。
【0011】
前記ミストは、例えば水面に超音波振エネルギーを与えることで発生させることができる。また水によるポビドンヨード溶液の希釈倍率は好ましくは500倍以上とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る消臭方法によれば、消臭対象となる衣服、家具、室内、車のシート等を着色することなく、効果的に消臭することができる。
【0013】
ポビドンヨードにアスコルビン酸(ビタミンC)またはチオ硫酸ナトリウムを添加すると中和され無色透明になるが、同時に遊離ヨウ素も消失し、酸化作用による消毒効果もなくなると言われている。しかしながら、本発明者の実験によれば中和反応によって無色透明になったポビドンヨード溶液を水で希釈し、この希釈水溶液をミスト気流にして噴霧拡散することにより、いくつかの消臭市販品よりも高い消臭効果を確認できた。
この理由は、中和反応によって生じたヨウ化水素(HI)を含む希釈水溶液をミストの気流にすることで各々がイオン化し、遊離ヨウ素と同じような性能を発揮するものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る消臭方法の概略を説明したブロック図。
【
図2】希釈水溶液を微細な霧状にする一例を示した図
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に示すように、ポビドンヨードにアスコルビン酸(ビタミンC)またはチオ硫酸ナトリウムを添加する。ポビドンヨードは強酸化剤、アスコルビン酸(ビタミンC)またはチオ硫酸ナトリウムは強還元剤であるので、これらを混合すると、中和反応が起こり、ポビドンヨード中のヨウ素(遊離ヨウ素)は無色透明のヨウ化水素(HI)に変化する。
【0016】
市販のポビドンヨード(ポピドンヨード1mL中7mgの有効ヨウ素)にアスコルビン酸(ビタミンC)またはチオ硫酸ナトリウムの添加量は中和(無色透明)になるのに必要な量(当量)とし、当量以上(過剰)は添加しない。
【0017】
次に無色透明となった ポビドンヨードとアスコルビン酸(ビタミンC)またはチオ硫酸ナトリウムとの混合液を水で500〜1000倍程度に希釈する。このようにして希釈した水溶液を
図2に示す容器内に充填する。
【0018】
容器はミスト霧化室1と給水室2に分けられ、霧化室1内にはガイド筒3が設けられ、給水室2には給水タンク4が着脱自在に収納され、また霧化室1の外側面にはエア導入通路5が設けられ、このエア導入通路5の底部にはファンモータ6が設けられている。
【0019】
また、ミスト霧化室1の底部には圧電振動子7が配置され、この圧電振動子7を駆動する駆動回路8は容器の外側に配置されている。
【0020】
上記容器内に上記の希釈した水溶液を充填し、圧電振動子7を振動させると水溶液表面に超音波の振動エネルギーが伝達され、水面から霧が発生し、この霧はエア導入通路5から霧化室1内に入り、更にガイド筒3の下端の隙間からガイド筒3内を通って室内に散布され、散布されたミスト中にはヨウ化水素(HI)が含まれているが、このように微細な水滴とすることによって、ヨウ化水素(HI)のイオン化が一層促進され繊維奥まで浸透容易な状態になり、遊離ヨウ素と同等以上の消臭(菌の不活化)効果を発揮する。
【0021】
実験例
消臭対象を臭気レベルが200〜300(平均230)の中古車50台の車内空間に、
図2に示した消臭装置を助手席に置き、ミストを10分間噴霧する。
同時に車内を密閉してエアコン循環状態とし10分間エンジンをかけ続ける。
10分経過後にドアを開けて10分の換気を行った。
エンジン駆動前と停止後の助手席足元の臭気をポータブル型臭いセンサ
(新コスモス電機株式会社製:ニオイセンサmini XP-329m)にて測定した。
【0022】
比較例
消臭対象を臭気レベルが200〜300(平均230)の中古車50台の車内空間とし、消臭ビーズ(小林製薬製:無香空間)2個を車内助手席に置き、車内を密閉エアコン循環状態として10分間エンジンをかけ、10分経過後にドアを開けて同様の換気を行った。
エンジン駆動前と停止後の助手席足元の臭気をポータブル型臭いセンサ(新コスモス電機株式会社製:ニオイセンサmini XP-329m)にて測定した。
【0023】
本発明方法による場合には、全て中古車内の臭気レベルはいずれも0になっていた。また、当該中古車を所有する顧客に消臭処理から90日後の臭いの状況を問い合わせたところ、快適である、確実に不快臭が減じているとの連絡を得た。
一方、消臭ビーズを用いて消臭した場合には、平均205の臭気レベルが残っていた。また中古車所有者への問い合わせについても効果がないとの回答であった。
【産業上の利用可能性】
【0024】
図示例にあっては、定期的に散布することで室内空間に臭いが発生するのを未然に防止する消臭装置を示したが、衣服、シート、カバー等の特定の対象物に車塗装用のスプレーガンや手動式の噴霧器を用いて散布するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1…ミスト霧化室、2…給水室、3…ガイド筒、4…給水タンク、5…エア導入通路、6…ファンモータ、7…圧電振動子、8…駆動回路。
【要約】
【課題】
落ちにくい臭いを簡単に除去できる消臭方法を提供する。
【解決手段】
ポビドンヨードにアスコルビン酸(ビタミンC)またはチオ硫酸ナトリウムを添加し、中和反応によって無色透明とする。この後無色透明となった溶液を水で500〜1000倍程度に希釈し、希釈した水溶液を霧化して消臭対象に散布する。
【選択図】
図1