(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
クーラントを貯留する略矩形のタンクと、前記タンクに前記クーラントを流入させる流入口と、前記タンク内の前記クーラントを吸い出す複数のポンプと、を備えるクーラント処理装置であって、
前記流入口の前記タンクへの出口に第1のフィルタを備え、
前記タンク内で中央部付近に向かうクーラントの渦流を形成するため、前記タンクは、外周壁の交差する角部に、略曲線状の壁面を形成して前記外周壁に沿って前記クーラントの流れを整流する整流部材を備えるとともに、中央部付近に前記複数のポンプの吸出口を備え、
前記複数のポンプで吸い出された前記クーラントの一部を吐出する吐出口が前記タンクの外周壁近傍に設けられており、
前記タンクの中央部付近に、前記複数のポンプを取り付ける天板が設けられており、前記天板の取り付け下部に前記複数のポンプを取り付ける複数の支柱が形成されている
ことを特徴とするクーラント処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施例1>
図1は、本発明の実施例1によるクーラント処理装置を示す斜視図である。
図1に示すように、本発明の実施例1によるクーラント処理装置110は、大別すると、図示しない加工装置との間で循環されるクーラントを貯留する略矩形のタンク120と、該タンク120内に上記加工装置から還流するクーラントを流入させる流入口130と、上記タンク120内のクーラントを吸い出す複数のポンプを備えたポンプ群140と、で構成されている。
【0015】
略矩形のタンク120は、略矩形の形状を呈する底面部121と、該底面部121の外周にそれぞれ配置された外周壁122と、上記外周壁122が交差する角部に設けられた整流部材123と、を備えている。
ここで、「略矩形」とは、角部が厳密に直角である四角形だけでなく、正方形又は長方形に近似した角部を有する四角形をも含むものであり、また、4つ角部を備えるものであれば、後述するクーラントの渦流の形成を妨げない範囲で4つの辺の一部に凹凸を形成したものも含まれる。
また、「略矩形」のタンク120の角部は、厳密に2つの外周壁122が交差する角部を形成するものだけでなく、上記した整流部材123と外周壁122とを連続的に一体形成した構成も含むものである。
【0016】
略矩形のタンク120の角部に配置される整流部材123は、タンク120の内部を外周壁122に沿って流れるクーラントを、タンク120の角部でスムーズに方向転換して渦流を形成させるための内壁面を形成するための部材であって、例えば
図1に示すように、複数の平面を連続的に並べて略曲線状の形状を備えている。
図1では、複数の平面部を連続的に接続した構造を例示しているが、整流部材123を1つの曲面からなる1部材として形成するようにしてもよい。
また、
図1では、4つの外周壁122の交差する角部の内側に4つの整流部材123を配置する構成を例示したが、上記したとおり、外周壁122と整流部材123とを一体形成し、上記角部における外周壁122どうしの交差部分を削除した形状を採用してもよい。
【0017】
略矩形のタンク120には、図示しない加工装置から還流するクーラントを流入させる流入口130が取り付けられている。
図1では、流入口130は、上記したタンク120内に生じる渦流と合流するように、クーラントの流れが形成されている外周壁122の近傍に配置されている。また、流入口130を2つ設ける場合を例示しているが、流入口130は1つでも複数でもよい。
【0018】
流入口130のタンク120への出口には、加工装置から直接還流するクーラントから大きな不純物を分離する第1のフィルタ131が設けられている。このとき、第1のフィルタ131としては、例えば50μmの大きさの不純物を分離できるものを用いる。
なお、第1のフィルタは、大量のクーラントを処理するために、底面と側面にフィルタを取り付けたカゴ形状であることが望ましい。
このような配置にすることにより、加工装置から還流するクーラントがタンク120内での流れに直接合流することとなり、還流したクーラントに澱みが生じない。さらに第1のフィルタ131にて大きな切粉は回収されるため、タンク120の底面部121にクーラント内に混在する切粉やスラッジ等の不純物が停滞することなく、渦流とともに流すことができる。
【0019】
本発明の実施例1によるクーラント処理装置110は、複数のポンプを備えたポンプ群140を有している。
図1に示すように、ポンプ群140は、タンク120内に渦流を形成するために用いられる渦流形成用ポンプ141と、タンク120の中央部に滞留するクーラントを不純物とともに外部に吸い出す排出用ポンプ142と、加工装置に堆積した切粉を流すためのクーラントを吸い出す第1の切粉流し用ポンプ143及び第2の切粉流し用ポンプ144と、を備えている。
【0020】
図1に示すポンプ群140は、個々のポンプに後述する吸出配管が接続されており、これらの接続配管は、吸出口がタンク120の中央部付近にそれぞれ位置するように配置されている。
このような配置によって、本発明の実施例1によるクーラント処理装置110のタンク120は、流入口130からクーラントが供給され、当該クーラントが複数のポンプ群140に含まれる個々のポンプからそれぞれタンク120の外部に排出される態様で、クーラントを貯留する機能を備える。
なお、
図1では、加工装置に堆積した切粉を流すためのポンプとして、第1の切粉流し用ポンプ143と第2の切粉流し用ポンプ144との2系統を備える場合を例示したが、切粉を流すべきエリアの必要に応じて、切粉流し用ポンプは1つでも3つ以上配置してもよい。
【0021】
渦流形成用ポンプ141は、実施例1のクーラント処理装置110の略矩形のタンク120の内部に、タンク120の外周壁122に沿ったクーラントの流れ(渦流)を形成するために用いられるものであり、吸出配管141aと、排出配管141bと、が接続されている。
そして、排出配管141bの吐出口141cは、
図1に示すように、タンク120の外周壁122の内側に沿って水平方向にクーラントを吐出するように配向されている。
このような配置とすることにより、渦流形成用ポンプ141の吐出口141cから吐出されたクーラントは、タンク120の外周壁122に沿って流れ、その後タンク120の角部に配置された整流部材123によって流れの向きを変更され、次の外周壁122に沿って流れていく。
そして、次の外周壁122に沿って流れたクーラントは、また次の整流部材123によって流れの向きを変えられて、さらに次の外周壁122に沿って流れる。このようにして、タンク120内のクーラントは、外周壁122に沿った渦流を形成する。
また、吸出口がタンク120の中央部付近にそれぞれ位置するように配置されている。
このような配置とすることにより、ポンプ群140の個々のポンプの吸込力によって、タンク140中央部付近に向かってクーラントの渦流を形成する。
【0022】
上記のようなクーラントの渦流をタンク120内で形成することにより、当該クーラントが流れている外周壁122の近傍では、タンク120の底面部121に不純物が沈降して堆積することがない。そして、こうした不純物は、渦流によりタンク120の中央部付近に結果的に集中する。
そして、
図1に示すように、排出用ポンプ142は、タンク120の中央部付近に滞留する不純物をクーラントごと排出するために用いられるものであり、吸出配管142aと、排出配管142bと、が接続されている。
【0023】
また、排出用ポンプ142の排出配管142bは、タンク120の外部において第2のフィルタ145を介して、加工工具を冷却するためのクーラントを吐出する工具冷却用ポンプ146に接続されている。そして、工具冷却用ポンプ146には、図示しない加工装置の工具装着部にクーラントを供給する配管が接続されている。
このとき、第2のフィルタ145としては、例えば10μmの大きさの不純物を分離できるものを用いる。
【0024】
これらのような構成により、タンク120の中央部付近に滞留する不純物は、クーラントとともに排出ポンプ142によりタンク120の外部に排出されるため、タンク120内に不純物が残存することがない。
また、排出用ポンプ142の排出配管142bに、上記第1のフィルタよりも小さな不純物を分離できる第2のフィルタ145を取り付けることにより、タンク120内の不純物のほとんどをフィルタで回収することができ、タンク120内の清掃の頻度を減らすことができる。
【0025】
第1の切粉流し用ポンプ143は、例えば加工装置のワーク近傍の切粉を流すクーラントの供給に用いられるものであり、吸出配管143aと、排出配管143bと、が接続されている。
ここで、排出配管143bは途中で戻り配管143dに分岐しており、当該戻り配管143dの吐出口143cは、
図1に示すように、タンク120の外周壁122の内側に沿って水平方向で、かつ上記渦流形成用ポンプ141の吐出口141cから吐出されるクーラントと同じ方向の流れを形成する向きにクーラントを吐出するように配向されている。
なお、上記吐出口の少なくとも一つは、前記流入口130のクーラントの流れの上流に配置されていることが望ましい。
また、上記排出用ポンプ142の場合と同様に、第1の切粉流し用ポンプの排出配管143bに第2のフィルタを取り付けて、排出配管143bを通るクーラントに含まれる不純物を分離除去するように構成することもできる。
【0026】
第2の切粉流し用ポンプ144は、例えば加工装置の補助部分(カバー等)の切粉を流すクーラントの供給に用いられるものであり、吸出配管144aと、排出配管144bと、が接続されている。
ここで、排出配管144bは、上記第1の切粉流し用ポンプ143の場合と同様に、途中で戻り配管に分岐して、当該戻り配管の吐出口は、タンク120の外周壁122の内側に沿って水平方向で、かつ上記渦流形成用ポンプ141の吐出口141cから吐出されるクーラントと同じ方向の流れを形成する向きにクーラントを吐出するように配向する構成とすることもできる。その場合、第2の切粉流し用ポンプ144の吐出圧を大きくすれば、必ずしも渦流形成用ポンプ141は必要とはならない。
また、上記排出用ポンプ142の場合と同様に、第2の切粉流し用ポンプの排出配管144bに第2のフィルタ145を取り付けて、排出配管144bを通るクーラントに含まれる不純物を分離除去するように構成することもできる。
【0027】
図2は、本発明の実施例1によるクーラント処理装置におけるタンク120の底面部121の構造を示す斜視図である。なお、
図2においては、タンク120を外面側(裏面側)から見た状態を示している。
図2に示すように、タンク120の底面部121の外面側(裏面側)には、複数の補強リブ125x及び125yが設けられている。
【0028】
複数の補強リブ125x及び125yは、例えば略矩形のタンク120の一方の辺に沿う方向(x方向)に複数配置された補強リブ125xと、タンク120の他方の辺に沿う方向(y方向)に複数配置された補強リブ125yと、からなる。
これらの補強リブ125x及び125yは、タンク120の大きさや材質、重量の制限等に応じて本数や配置間隔等を自由に選択できる。
また、補強リブ125x及び125yは、必ずしも直交配置されるものではなく、またすべて平行に並べられる必要もない。
【0029】
このような補強リブ125x及び125yを用いることにより、タンク120全体の強度及び剛性を高めることが可能となる。
また、補強リブ125x及び125yを
図2に示すように直交配置すれば、タンク120の底面部121の中央部が重力によって撓むことなく平坦度を維持できるとともに、底面部121の内面側に凹凸を形成することがないため、クーラントの流れを遮ることがなく、渦流におけるクーラントの流速低下を抑制することができる。
【0030】
図1及び
図2に示した実施例1によるクーラント処理装置によれば、加工装置から還流するクーラントに含まれる切粉やスラッジ等の不純物を、まず第1段階として、タンク120に流入させる流入口130の出口に設けられた第1のフィルタ131で比較的大きな不純物を分離除去する。
つまり、タンク120内に発生するクーラントの渦流によっても底面部121に沈澱する比較的大きな不純物を除去できる。同様に、排出用ポンプ142で吸引できない比較的大きな不純物を除去できる。
続いて、第2段階として、タンク120内に上記第1のフィルタ131を通過したクーラントを流入させるとともに、タンク120内の外周壁122の近傍でクーラントの渦流を形成することにより、不純物を渦流によりタンク120の中央部付近に集中させて滞留させる。
そして、第3段階として、タンク120の中央部付近に滞留した不純物をクーラントとともに排出ポンプ等で排出し、ポンプの排出配管に設けられた第2のフィルタ145で微細な不純物を分離除去する。
【0031】
これらの段階の操作により、加工装置から還流するクーラントに含まれる不純物は、当該クーラントが流れる配管等に設けられた第1及び第2のフィルタで分離除去される。
したがって、従来のセパレータや磁気分離器等の別の動力を必要とする不純物の分離手段を設けることなく、クーラントから不純物を分離除去することが可能となる。
【0032】
また、略矩形のタンク120の角部にクーラントの流れを整流する整流部材123が設けられているため、クーラントの流れで形成される渦流が外周壁122の角部においてもスムーズに方向転換し、タンク120の外周壁122の近傍に該外周壁122に沿って安定したクーラントの流れが形成される。
これにより、クーラントに含まれる不純物がタンク120の外周壁122の近傍には沈殿及び滞留せず、渦流によりタンク120の中央部付近に集中して滞留するため、排出ポンプ142等のポンプにより確実に不純物をタンク120の外部に排出することが可能となり、タンク120内部の清掃等のメンテナンスの頻度を下げることができる。
また、タンク120内に安定したクーラントの渦流が形成できるため、クーラントの澱みが形成されることなく、クーラントの腐敗を抑制することができる。
【0033】
<実施例2>
図3は、本発明の実施例2によるクーラント処理装置を示す斜視図である。
図3に示すように、本発明の実施例2によるクーラント処理装置210は、実施例1によるクーラント処理装置110と同様に、図示しない加工装置との間で循環されるクーラントを貯留する略矩形のタンク220と、該タンク220内に上記加工装置から還流するクーラントを流入させる流入口230と、上記タンク220内のクーラントを吸い出す複数のポンプを備えたポンプ群240と、で構成されている。
【0034】
略矩形のタンク220は、略矩形の形状を呈する底面部221と、該底面部221の外周にそれぞれ配置された外周壁222と、上記外周壁222が交差する角部に設けられた整流部材223と、を備えている。
略矩形のタンク220の角部に配置される整流部材223は、タンク220の内部を外周壁222に沿って流れるクーラントを、タンク220の角部でスムーズに方向転換して渦流を形成させるための内壁面を形成するための部材であって、例えば
図3に示すように、複数の平面を連続的に並べて略曲線状の形状を備えている。
【0035】
図3では、複数の平面部を連続的に接続した構造を例示しているが、実施例1の場合と同様に、整流部材223を1つの曲面からなる1部材として形成するようにしてもよい。
また、
図3では、4つの外周壁222の交差する角部の内側に4つの整流部材223を配置する構成を例示したが、実施例1の場合と同様に、外周壁222と整流部材223とを一体形成し、上記角部における外周壁222どうしの交差部分を削除した形状を採用してもよい。
【0036】
略矩形のタンク220には、図示しない加工装置から還流するクーラントを流入させる流入口230が取り付けられている。
図3では、流入口230は、上記したタンク220内に生じる渦流と合流するように、クーラントの流れが形成されている外周壁222の近傍に配置されている。また、流入口230を2つ設ける場合を例示しているが、流入口230は1つでも複数でもよい。
【0037】
流入口230のタンク220への出口には、実施例1の場合と同様に、加工装置から直接還流するクーラントから大きな不純物を分離する第1のフィルタ231が設けられている。このとき、第1のフィルタとしては、例えば50μmの大きさの不純物を分離できるものを用いる。
なお、第1のフィルタは、大量のクーラントを処理するために、底面と側面にフィルタを取り付けたカゴ形状であることが望ましい。
このような配置にすることにより、加工装置から還流するクーラントがタンク220内での流れに直接合流することとなり、還流したクーラントに澱みが生じない。さらに第1のフィルタ231にて大きな切粉は回収されるため、タンク220の底面部221にクーラント内に混在する切粉やスラッジ等の不純物が停滞することなく、渦流とともに流すことができる。
【0038】
本発明の実施例2によるクーラント処理装置210は、複数のポンプを備えたポンプ群240を有している。
図3に示すように、ポンプ群240は、タンク220内に渦流を形成するために用いられる渦流形成用ポンプ241と、タンク220の中央部に滞留するクーラントを不純物とともに外部に吸い出す排出用ポンプ242と、加工装置に堆積した切粉を流すためのクーラントを吸い出す第1の切粉流し用ポンプ243及び第2の切粉流し用ポンプ244と、を備えている。
【0039】
実施例2におけるポンプ群240は、タンク220の外周壁222の上端側(天井側)であって該タンク220の中央部付近に設けられた天板226にそれぞれ取り付けられている。
そして、
図3に示すように、天板226は、例えばタンク220の天井側に複数配置された梁部材227に取り付けられる態様で配置される。
【0040】
ポンプ群240に含まれる個々のポンプには、図示しない吸出配管がそれぞれ接続されており、これらの接続配管は、吸出口が上記天板226の直下のタンク220の中央部付近にそれぞれ位置するように配置されている。
このような配置によって、本発明の実施例2によるクーラント処理装置210のタンク220は、流入口230からクーラントが供給され、当該クーラントが複数のポンプ群240に含まれる個々のポンプからそれぞれタンク220の外部に排出される態様で、クーラントを貯留する機能を備える。
【0041】
なお、
図3では、加工装置に堆積した切粉を流すためのポンプとして、第1の切粉流し用ポンプ243と第2の切粉流し用ポンプ244との2系統を備える場合を例示したが、切粉を流すべきエリアの必要に応じて、切粉流し用ポンプは1つでも3つ以上配置してもよい。
また、タンク220において、天板226を梁部材227で支持する構成を例示したが、梁部材227を用いずにタンク220の天井部分をすべて天板226で覆うような構成を採用してもよい。ただし、この場合は、ポンプ群240は天板226の中央部付近に配置される。
【0042】
渦流形成用ポンプ241は、実施例1の場合と同様に、クーラント処理装置210の略矩形のタンク220の内部に、タンク220の外周壁222に沿ったクーラントの流れ(渦流)を形成するために用いられるものであり、吸出配管(図示せず)と、排出配管241bと、が接続されている。
そして、排出配管241bの吐出口241cは、
図3に示すように、タンク220の外周壁222の内側に沿って水平方向にクーラントを吐出するように配向されている。
このような配置とすることにより、渦流形成用ポンプ241の吐出口241cから吐出されたクーラントは、タンク220の外周壁222に沿って流れ、その後タンク220の角部に配置された整流部材223によって流れの向きを変更され、次の外周壁222に沿って流れていく。
そして、次の外周壁222に沿って流れたクーラントは、また次の整流部材223によって流れの向きを変えられて、さらに次の外周壁222に沿って流れる。このようにして、タンク220内のクーラントは、外周壁222に沿った渦流を形成する。
また、吸出口がタンク220の中央部付近にそれぞれ位置するように配置されている。
このような配置とすることにより、ポンプ群240の個々のポンプの吸込力によって、タンク240中央部付近に向かってクーラントの渦流を形成する。
【0043】
上記のようなクーラントの渦流をタンク220内で形成することにより、当該クーラントが流れている外周壁222の近傍では、タンク220の底面部221に不純物が沈降して堆積することがない。そして、こうした不純物は、渦流によりタンク220の中央部付近に結果的に集中する。
そして、
図3に示すように、排出用ポンプ242は、タンク220の中央部付近に滞留する不純物をクーラントごと排出するために用いられるものであり、吸出配管(図示せず)と、排出配管242bと、が接続されている。
【0044】
また、排出用ポンプ242の排出配管242bは、実施例1の場合と同様に、タンク220の外部において第2のフィルタ245を介して、加工工具を冷却するためのクーラントを吐出する工具冷却用ポンプ246に接続されている。そして、工具冷却用ポンプ246には、図示しない加工装置の工具装着部にクーラントを供給する配管が接続されている。
このとき、第2のフィルタ245としては、例えば10μmの大きさの不純物を分離できるものを用いる。
【0045】
これらのような構成により、タンク220の中央部付近に滞留する不純物は、クーラントとともに排出ポンプ242によりタンク220の外部に排出されるため、タンク220内に不純物が残存することがない。
また、排出用ポンプ242の排出配管242bに、上記第1のフィルタよりも小さな不純物を分離できる第2のフィルタ245を取り付けることにより、タンク220内の不純物のほとんどをフィルタで回収することができ、タンク220内の清掃の頻度を減らすことができる。
【0046】
第1の切粉流し用ポンプ243は、例えば加工装置のワーク近傍の切粉を流すクーラントの供給に用いられるものであり、吸出配管(図示せず)と、排出配管243bと、が接続されている。
ここで、排出配管243bは途中で戻り配管243dに分岐しており、実施例1の場合と同様に、当該戻り配管243dの吐出口243cは、タンク220の外周壁222の内側に沿って水平方向で、かつ上記渦流形成用ポンプの吐出口241cから吐出されるクーラントと同じ方向の流れを形成する向きにクーラントを吐出するように配向されている。
なお、上記吐出口の少なくとも一つは、前記流入口230のクーラントの流れの上流に配置されていることが望ましい。
また、上記排出用ポンプ242の場合と同様に、第1の切粉流し用ポンプの排出配管243bに第2のフィルタを取り付けて、排出配管243bを通るクーラントに含まれる不純物を分離除去するように構成することもできる。
【0047】
第2の切粉流し用ポンプ244は、例えば加工装置の補助部分(カバー等)の切粉を流すクーラントの供給に用いられるものであり、吸出配管(図示せず)と、排出配管244bと、が接続されている。
ここで、排出配管244bは、上記第1の切粉流し用ポンプ243の場合と同様に、途中で戻り配管に分岐して、実施例1の場合と同様に、当該戻り配管の吐出口は、タンク220の外周壁22の内側に沿って水平方向で、かつ上記渦流形成用ポンプの排出配管241bから吐出されるクーラントと同じ方向の流れを形成する向きにクーラントを吐出するように配向する構成とすることもできる。その場合、第2の切粉流し用ポンプ244の吐出圧を大きくすれば、必ずしも渦流形成用ポンプ241は必要とはならない。
また、上記排出用ポンプ242の場合と同様に、第2の切粉流し用ポンプの排出配管244bに第2のフィルタを取り付けて、排出配管244bを通るクーラントに含まれる不純物を分離除去するように構成することもできる。
【0048】
図4は、
図3に示した本発明の実施例2によるクーラント処理装置において、天板226及びこれに取り付けられたポンプ群240をそれぞれ取り外した状態でのタンク220の内部構造を示す斜視図である。
図4に示すように、タンク220の内部には、上記した複数の梁部材227をタンク220の中央部付近で支持する4本の支柱228が設けられている。これらの支柱228は、上記の梁部材227を支持する機能に加えて、上記天板226を支持する機能、及び天板226に取り付けられたポンプ群240の個々のポンプを取り付けて支持する機能も有する。
つまり、上記天板226の取り付け下部に複数の支柱228が設けられている。
【0049】
図5は、
図4に示したタンクの内部構造から梁部材を削除したものの斜視図である。
4本の支柱228において、それぞれの支柱のタンク220の外周壁222側に位置する側面は、タンク220内に形成されるクーラントの流れを整流する整流面228aが形成されている。
そして、支柱228の整流面228aとは反対側のタンク220の中央部側に位置する側面には、ポンプ群240に含まれる個々のポンプ又は当該個々のポンプに接続された吸出配管が取り付けられる。
【0050】
これらの構成により、ポンプ群240を取り付けた天板226を強固に支持できるとともに、タンク220の外周壁222側の側面に整流面228aが形成されているため、支柱の外周壁側でのクーラントの流れを乱すことがないので、タンク220内での安定したクーラントの渦流を形成することができる。
また、4本の支柱228において、それぞれの支柱のタンク220の中央部側に位置する側面は、タンク220内に形成されるクーラントの流れを整流する整流面228bが形成されている。
この構成により、タンク220の外周壁側222側から中央部側へのクーラントの流れを乱すことがないので、タンク220内での安定したクーラントの渦流を形成することができる。
【0051】
また、
図3に示すように、前記吐出口は、支柱228とタンク220の外周壁との間に配置されている。
なお、前記吐出口は、支柱228とタンク220の外周壁が交差する角部に設けられた整流部材との間に配置することが望ましい。
この構成により、タンク220の外周壁側222側から中央部側へのクーラントの流れを乱すことがないので、タンク220内での安定したクーラントの渦流を形成することができる。
【0052】
また、天板226を用いてポンプ群240をタンク220の中央部付近に集中配置することにより、タンク220の外部に個々のポンプを設置する領域を設ける必要がないため、クーラント処理装置全体の床面積を削減してコンパクト化できる。
特に、ポンプ群240に含まれる個々のポンプとして、浸漬式のポンプを用いれば、それぞれのポンプを天板226に取り付けて、ポンプの天板取付面より下部の吸出部(図示せず)をタンク220内に沈めることにより、吸出配管を削減できるとともに、クーラント処理装置の高さ方向の寸法を抑制することができる。
【0053】
図3、
図4及び
図5に示した実施例2によるクーラント処理装置によれば、実施例1の場合と同様に、加工装置から還流するクーラントに含まれる切粉やスラッジ等の不純物を、まず第1段階として、タンク220に流入させる流入口230の出口に設けられた第1のフィルタ231で比較的大きな不純物を分離除去する。
つまり、タンク220内に発生するクーラントの渦流によっても底面部221に沈澱する比較的大きな不純物を除去できる。同様に、排出用ポンプ242で吸引できない比較的大きな不純物を除去できる。
続いて、第2段階として、タンク220内に上記第1のフィルタ231を通過したクーラントを流入させるとともに、タンク220内の外周壁222の近傍でクーラントの渦流を形成することにより、不純物を渦流によりタンク220の中央部付近に集中させて滞留させる。
そして、第3段階として、タンク220の中央部付近に滞留した不純物をクーラントとともに排出ポンプ等で排出し、ポンプの排出配管に設けられた第2のフィルタ245で微細な不純物を分離除去する。
【0054】
これらの段階の操作により、加工装置から還流するクーラントに含まれる不純物は、当該クーラントが流れる配管等に設けられた第1及び第2のフィルタで分離除去される。
したがって、従来のセパレータや磁気分離器等の別の動力を必要とする不純物の分離手段を設けることなく、クーラントから不純物を分離除去することが可能となる。
【0055】
また、略矩形のタンク220の角部にクーラントの流れを整流する整流部材223が設けられているとともに、タンク220の中央部付近に整流面228a及び228bを備えた支柱228が配置されているため、クーラントの流れで形成される渦流が外周壁222の角部及び支柱228のいずれの近傍においてもスムーズに方向転換し、タンク220内に該外周壁222に沿って安定したクーラントの流れが形成される。
これにより、クーラントに含まれる不純物がタンク220の外周壁222の近傍には沈殿及び滞留せず、渦流によりタンク220の中央部付近に集中して滞留するため、排出ポンプ242等のポンプにより確実に不純物をタンク220の外部に排出することが可能となり、タンク220内部の清掃等のメンテナンスの頻度を下げることができる。
また、タンク220内に安定したクーラントの渦流が形成できるため、クーラントの澱みが形成されることなく、クーラントの腐敗を抑制することができる。
【0056】
<実施例3>
図6は、本発明の実施例3によるクーラント処理装置を工作機械に組み込んだ際の切粉回収装置との配置関係を示す斜視図である。
図6に示すように、本発明の実施例3によるクーラント処理装置310は、工作機械の加工エリアで噴射された切粉やスラッジ等を含んだクーラントを搬送する切粉回収装置350と組み合わせて配置される。
【0057】
切粉回収装置350は、ベース351と、当該ベース351上で走行路を形成するベルト状のチップコンベア352と、チップコンベア352の一端に配置されてクーラントとともに搬送される残材等を回収するチップバケット353と、を含んでいる。
図6に示すように、クーラント処理装置310は、切粉回収装置350のチップコンベア352の走行路の一端に交差するように配置されている。
また、チップコンベア352の一端は、ベース351上からクーラント処理装置310の上側領域にまで達するように突出して配置され、かつベース351の表面に対して高い位置に保持されており、チップバケット353は、上記チップコンベア352の一端の直下に配置されている。
【0058】
上記したチップコンベア352の一端では、クーラントとともに搬送されてきた大きい残材等がそのままチップバケット353内に落下して回収され、クーラントはチップコンベア352の背面側で図示しない回収路に滴下して回収される。このとき、クーラントは上記残材等とは別に分離しきれなかった切粉やスラッジ等の不純物を含んでいる。
回収路に回収されたクーラントは、後述するクーラント処理装置310の流入口からタンク内に供給される。
【0059】
図7は、本発明の実施例3によるクーラント処理装置を示す斜視図である。
図7に示すように、本発明の実施例3によるクーラント処理装置310は、実施例1によるクーラント処理装置110と同様に、加工装置との間で循環されるクーラントを貯留する略矩形のタンク320と、該タンク320内に上記加工装置から還流するクーラントを流入させる流入口330と、上記タンク320内のクーラントを吸い出す複数のポンプを備えたポンプ群340と、で構成されている。
【0060】
略矩形のタンク320は、略矩形の形状を呈する底面部321と、該底面部321の外周にそれぞれ配置された外周壁322と、上記外周壁322が交差する角部に設けられた整流部材323と、を備えている。
上記説明したとおり、「略矩形」とは、クーラントの渦流の形成を妨げない範囲で4つの辺の一部に凹凸を形成したものも含まれるものであり、例えば実施例3によるクーラント処理装置310では、タンク320は上記チップバケット353を配置するための凹領域320aが形成されている。
このような凹領域320aを設けることにより、上記チップコンベア352の全長が短くなり、チップコンベア352に関わるコストが削減できるとともに、工作機械全体の床面積を削減することができる。
【0061】
略矩形のタンク320の角部に配置される整流部材323は、タンク320の内部を外周壁322に沿って流れるクーラントを、タンク320の角部でスムーズに方向転換して渦流を形成させるための内壁面を形成するための部材であって、例えば
図7に示すように、複数の平面を連続的に並べて略曲線状の形状を備えている。
図7では、複数の平面部を連続的に接続した構造を例示しているが、実施例1の場合と同様に、整流部材323を1つの曲面からなる1部材として形成するようにしてもよい。
また、
図7では、外周壁322の交差する角部の内側にそれぞれ整流部材323を配置する構成を例示したが、実施例1の場合と同様に、外周壁322と整流部材323とを一体形成し、外周壁322どうしの交差部分を削除した形状を採用してもよい。
【0062】
略矩形のタンク220には、上記した切粉回収装置350から回収されたクーラントを流入させる流入口330が取り付けられている。
図7では、流入口330は、上記したタンク320内に生じる渦流と合流するように、クーラントの流れが形成されている外周壁322の近傍に配置されている。また、流入口330を2つ設ける場合を例示しているが、流入口330は1つでも複数でもよい。
【0063】
流入口330のタンク320への出口には、実施例1の場合と同様に、加工装置から直接還流するクーラントから大きな不純物を分離する第1のフィルタ331が設けられている。このとき、第1のフィルタとしては、例えば50μmの大きさの不純物を分離できるものを用いる。
なお、第1のフィルタは、大量のクーラントを処理するために、底面と側面にフィルタを取り付けたカゴ形状であることが望ましい。
このような配置にすることにより、加工装置から還流するクーラントがタンク320内での流れに直接合流することとなり、還流したクーラントに澱みが生じない。さらに第1のフィルタ331にて大きな切粉は回収されるため、タンク320の底面部321にクーラント内に混在する切粉やスラッジ等の不純物が停滞することなく、渦流とともに流すことができる。
【0064】
本発明の実施例3によるクーラント処理装置310は、複数のポンプを備えたポンプ群340を有している。
図7に示すように、ポンプ群340は、タンク320内に渦流を形成するために用いられる渦流形成用ポンプ341と、タンク320の中央部付近に滞留するクーラントを不純物とともに外部に吸い出す排出用ポンプ342と、加工装置に堆積した切粉を流すためのクーラントを吸い出す第1の切粉流し用ポンプ343及び第2の切粉流し用ポンプ344と、を備えている。
なお、上記した渦流形成用ポンプ341、排出用ポンプ342、第1の切粉流し用ポンプ343及び第2の切粉流し用ポンプ344は、実施例1又は実施例2で説明したものと同様の構成及び機能を有するものであるため、ここでは説明を省略する。
【0065】
実施例3におけるポンプ群340は、実施例2の場合と同様に、タンク320の中央部付近に配置された支柱及び天板326に取り付けられる態様で配置されている(なお、
図7では支柱の構成は実施例2と共通であるため、図示を省略している)。
このような配置によって、本発明の実施例3によるクーラント処理装置310のタンク320は、流入口330からクーラントが供給され、当該クーラントが複数のポンプ群340に含まれる個々のポンプからそれぞれタンク320の外部に排出される態様で、クーラントを貯留する機能を備える。
【0066】
なお、
図7では、加工装置に堆積した切粉を流すためのポンプとして、第1の切粉流し用ポンプ343と第2の切粉流し用ポンプ344との2系統を備える場合を例示したが、切粉を流すべきエリアの必要に応じて、切粉流し用ポンプは1つでも3つ以上配置してもよい。
また、タンク320において、ポンプ群340に含まれる個々のポンプをタンク320の中央部付近に配置する構成を例示したが、実施例1の場合と同様に、個々のポンプをタンク320の外部に配置して吸出配管の吸出口をタンク320の中央部付近に配置するように構成してもよい。
【0067】
実施例3によるクーラント処理装置310において、タンク320にクーラントの渦流を形成するために、例えば
図7に示すように、タンク320の凹領域320aに位置する外周壁322の内側に沿って水平方向にクーラントを吐出するように吐出口を配向するとよい(
図7においては、渦流形成用ポンプ341の排出配管341bの吐出口341cが配置されている)。
このような配置とすることにより、渦流形成用ポンプ341の吐出口341cから吐出されたクーラントは、凹領域320aが存在したとしても、タンク320の外周壁322に沿って流れ、その後整流部材323によって流れの向きを変更される。このようにして、タンク320内のクーラントは、外周壁322に沿った渦流を形成する。
また、吸出口がタンク320の中央部付近にそれぞれ位置するように配置されている。
このような配置とすることにより、ポンプ群340の個々のポンプの吸込力によって、タンク340中央部付近に向かってクーラントの渦流を形成する。
【0068】
図6及び
図7に示した実施例3によるクーラント処理装置によれば、まず第1段階として、切粉回収装置350のチップコンベア352で搬送された搬送物から大きな残材等を分別してクーラントを回収する。
続いて第2段階として、タンク320に流入させる流入口330の出口に設けられた第1のフィルタ331で比較的大きな不純物を分離除去する。
つまり、タンク320内に発生するクーラントの渦流によっても底面部321に沈澱する比較的大きな不純物を除去できる。同様に、排出用ポンプ342で吸引できない比較的大きな不純物を除去できる。
さらに、第3段階として、タンク320内に上記第1のフィルタ331を通過したクーラントを流入させるとともに、タンク320内の外周壁322の近傍でクーラントの渦流を形成することにより、不純物を渦流によりタンク320の中央部付近に集中させて滞留させる。
そして、第4段階として、タンク320の中央部付近に滞留した不純物をクーラントとともに排出ポンプ342等で排出し、ポンプの排出配管に設けられた第2のフィルタ345で微細な不純物を分離除去する。
【0069】
これらの段階の操作により、加工装置から還流するクーラントに含まれる不純物は、当該クーラントが流れる配管等に設けられた第1及び第2のフィルタで分離除去される。
したがって、従来のセパレータや磁気分離器等の別の動力を必要とする不純物の分離手段を設けることなく、クーラントから不純物を分離除去することが可能となる。
【0070】
また、略矩形のタンク320の角部にクーラントの流れを整流する整流部材323が設けられているため、クーラントの流れで形成される渦流が外周壁322の角部においてもスムーズに流れることとなり、タンク320内に外周壁322に沿って安定したクーラントの流れが形成される。
これにより、クーラントに含まれる不純物がタンク320の外周壁322の近傍には沈殿及び滞留せず、渦流によりタンク320の中央部付近に集中して滞留するため、排出ポンプ342等のポンプにより確実に不純物をタンク320の外部に排出することが可能となり、タンク320内部の清掃等のメンテナンスの頻度を下げることができる。
また、タンク320内に安定したクーラントの渦流が形成できるため、クーラントの澱みが形成されることなく、クーラントの腐敗を抑制することができる。
【0071】
なお、本発明は、上記した実施例1〜3の構成に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。
例えば、本発明のクーラント処理装置において、タンクにチップバケット用の凹領域を設ける形状のものを例示したが、工作機械全体の床面積の削減を考慮する必要がなければ、上記凹領域を設けなくてもよい。
また、本発明は、実施例1〜3で説明した事項をそれぞれ組み合わせて適用してもよい。
例えば、実施例1の
図2で示したタンクの底面部の裏面側における補強リブの構成を実施例2又は実施例3で示したタンクの底面部に適用することもできる。