【文献】
J. Colloid Interface Sci.,2008 Jul,Vol.323,No.2,pp.267−273
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、当技術分野において、高度に免疫原性で有効なワクチンを生産するためのシステムおよび方法についての必要性がある。持続性の免疫応答を強力に誘導することができる、改善されたワクチン組成物についての必要性もまたある。感染症の治療および予防については、高度に免疫原性であるが、疾患を引き起こさない、改善されたワクチン組成物についての必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、免疫系を調整するための合成ナノキャリアを提供する。合成ナノキャリアは、1つまたは複数の表面を含む。いくつかの実施形態では、表面の少なくとも1つは、免疫特徴表面(immunofeature surface)を含む。任意選択で、本発明の合成ナノキャリアは、1つまたは複数の免疫調節作用物質、免疫刺激作用物質、およびターゲティング作用物質(本明細書において「ターゲティング成分(targeting moiety)」とも呼ばれる)を含有する。免疫調節作用物質は、B細胞および/またはT細胞において免疫応答を誘導する。免疫刺激作用物質は、免疫系を刺激するのを助ける(免疫応答を最終的に、増強する、抑制する、指示する、または再指示することができる方法で)。免疫特徴表面(immunofeature surface)は、抗原提示細胞と関連する1つまたは複数の標的を認識する。任意選択のターゲティング作用物質は、特定の器官、組織、細胞、および/または細胞下の場所と関連する1つまたは複数の標的を認識する。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、成分に対して体液性応答をもたらすのに有効な量で複数のその成分を含む表面を含む。例えば、合成ナノキャリアが患者に投与される場合、体液性応答が得られる。ナノキャリアは、免疫系調節による治療に感受性である疾患、障害、または状態の予防および/または治療のための薬学的調製物およびキットにおいて有用である。そのような状態は、免疫応答を特異的にもしくは非特異的に増強すること、免疫応答を特異的にもしくは非特異的に抑制すること、または免疫応答を特異的にもしくは非特異的に指示する/再指示することによって改変される疾患、障害、または状態を含む。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
(1)少なくとも1つの表面を有する合成ナノキャリアであって、その第1の表面が免疫特徴表面を含む合成ナノキャリアおよび
(2)薬学的に許容される賦形剤
を含む組成物。
(項目2)
前記免疫特徴表面は、複数の成分を含み、前記複数の成分は、抗原提示細胞(APC)結合アッセイでモノクローナル抗体(MAb)について観察される最大固定化の、少なくとも10%を得るために必要とされる密度以上の密度で存在し、ただし、前記APC結合アッセイにおいて、前記複数の成分についての最大半量の結合密度は、前記MAbについての最大半量の結合密度の少なくとも2倍である、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記複数の成分は、前記APC結合アッセイでMAbについて観察される最大固定化の、少なくとも20%を得るために必要とされる密度以上の密度で存在する、項目2に記載の組成物。
(項目4)
前記複数の成分についての前記最大半量の結合密度は、前記MAbについての前記最大半量の結合密度の少なくとも4倍である、項目2に記載の組成物。
(項目5)
前記APC結合アッセイは、
(a)機能成分のコーティングを一連の表面コーティング密度で有する、一連の基材を調製する工程であって、前記機能成分は樹状細胞(DC)または被膜下洞マクロファージ表面受容体に結合することができる、工程、
(b)前記一連の基材をDCまたは被膜下洞マクロファージの単一細胞懸濁物に所定の期間、曝露する工程、
(c)前記一連の基材から非接着APCを除去し、前記一連の基材に接着したAPCを固定する工程、
(d)前記一連の基材のそれぞれの基材に関し、単位表面積当たりの接着したAPCの数を定量する工程、
(e)前記機能成分の前記コーティング密度に対して前記(d)からの結果をプロットする工程、
(f)前記一連の基材についての単位表面積当たりの接着したAPCの最大数を決定することによって、前記最大固定化の値を得る工程、および
(g)前記最大の50%をもたらす前記表面コーティング密度を決定することによって、最大半量の結合密度の値を得る工程
を含む、項目2に記載の組成物。
(項目6)
前記MAbは、抗CD1c(BDCA−1)クローンAD5−8E7およびラット抗マウスCD169、クローン3D6.112、アイソタイプIgG2aから選択される、項目2に記載の組成物。
(項目7)
前記免疫特徴表面は、B細胞抗原を含む、項目1に記載の組成物。
(項目8)
前記免疫特徴表面は、複数の異なる成分を含む、項目1に記載の組成物。
(項目9)
1つまたは複数の成分が、7.2〜7.4の範囲のpHの緩衝水溶液中にある場合、前記免疫特徴表面は、正に荷電している、負に荷電している、または中性である、前記1つまたは複数の成分を含む、項目1に記載の組成物。
(項目10)
前記合成ナノキャリアの前記表面は、高親和性ターゲティング成分をさらに含む、項目1に記載の組成物。
(項目11)
前記合成ナノキャリアは、免疫刺激作用物質、免疫調節作用物質、B細胞抗原、およびT細胞抗原のうちの1つまたは複数をさらに含む、項目1に記載の組成物。
(項目12)
前記免疫刺激作用物質、B細胞抗原、またはT細胞抗原は、(i)前記免疫特徴表面上にある、(ii)前記ナノキャリアの第2の表面上にある、または(iii)前記ナノキャリアのコア領域内に封入されている、項目11に記載の組成物。
(項目13)
前記ナノキャリアの直径は、100nmを超える、項目1に記載の組成物。
(項目14)
前記薬学的に許容される賦形剤は、溶媒、分散媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散補助剤または懸濁補助剤、表面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、固体結合剤、および滑沢剤から選択される、項目1に記載の組成物。
(項目15)
被膜下洞マクロファージを標的にする、項目1に記載の組成物。
(項目16)
樹状細胞を標的にする、項目1に記載の組成物。
(項目17)
補体を実質的に活性化しない、項目1に記載の組成物。
(項目18)
項目1に記載の組成物の第1の用量を被験体に投与する工程を含む方法。
(項目19)
1日〜1年の範囲の間隔をおいて前記組成物の第2の用量を前記被験体に投与する工程をさらに含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記間隔の範囲は、1日〜1か月である、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記間隔の範囲は、1日〜1週間である、項目19に記載の方法。
(項目22)
被膜下洞マクロファージによる抗原の取り込みを増加させるための方法であって、
(1)(a)合成ナノキャリアの第1の表面が免疫特徴表面を含む少なくとも1つの表面、
(b)(i)前記免疫特徴表面上にある、(ii)前記合成ナノキャリアの第2の表面上にある、または(iii)前記合成ナノキャリアのコア領域内の封入されている抗原
を含む前記合成ナノキャリアおよび
(2)薬学的に許容される賦形剤
を含む組成物を、被膜下洞マクロファージによる抗原の取り込みを増加させる必要のある被験体に投与する工程を含む方法。
(項目23)
前記抗原は、抗原提示細胞結合アッセイでモノクローナル抗体(MAb)について観察される、最大の固定化の少なくとも10%を得るために必要とされる密度以上の密度で前記ナノキャリアにコンジュゲートされる、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記被膜下マクロファージは、CD169+マクロファージである、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記ナノキャリアは、(i)前記免疫特徴表面上にある、(ii)前記ナノキャリアの第2の表面上にある、または(iii)前記ナノキャリアの前記コア領域内に封入されている、免疫刺激作用物質をさらに含む、項目22に記載の方法。
(項目26)
(1)少なくとも1つの表面を有する合成ナノキャリアであって、その第1の表面が、成分に対して体液性応答をもたらすのに有効な量で複数の前記成分を含む、合成ナノキャリアおよび
(2)薬学的に許容される賦形剤
を含む組成物。
(項目27)
前記成分は、哺乳動物抗原提示細胞に対するアビディティベースの結合をもたらすのに有効な量で存在する、項目26に記載の組成物。
(項目28)
前記ナノキャリアの直径は、100nmを超える、項目26に記載の組成物。
(項目29)
前記薬学的に許容される賦形剤は、溶媒、分散媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散補助剤または懸濁補助剤、表面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、固体結合剤、および滑沢剤から選択される、項目26に記載の組成物。
(項目30)
被膜下洞マクロファージを標的にする、項目26に記載の組成物。
(項目31)
樹状細胞を標的にする、項目26に記載の組成物。
(項目32)
補体を実質的に活性化しない、項目26に記載の組成物。
(項目33)
項目1または26に記載の組成物を投与する工程を含む、体液性免疫応答を引き出すための方法。
【0007】
免疫特徴表面は、より詳細に本明細書において記載されるように、抗原提示細胞(APC)に対するナノキャリアの特異的なターゲティングをもたらす。特に、免疫特徴表面は、APC表面へのナノキャリアの高いアビディティの結合をもたらす。さらに、その高いアビディティの結合は、APC細胞に特異的である。例えば、いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは、被膜下洞(subcapsular sinus)マクロファージ(SCS−Mph)を特異的にターゲティングすることができる。そのようなナノキャリアは、被験体に投与された場合、リンパ節の被膜下洞領域中に蓄積する。他の実施形態では、本発明のナノキャリアは、樹状細胞を特異的にターゲティングし、T細胞応答を引き出すことができる。好ましい実施形態では、免疫特徴表面は、APC表面へのナノキャリアの低い親和性で高いアビディティの結合をもたらす。いくつかの実施形態では、免疫特徴表面を含むナノキャリアは、APCに対して、特異的で、低い親和性で、高いアビディティの結合を示し、他のタイプの細胞へのそのような結合をもたらさない。免疫特徴表面のさらなる詳細について、本明細書において提供される。
【0008】
免疫特徴表面がAPCをターゲティングする能力は、被験体に投与された場合に、本発明のナノキャリアが、B細胞および/またはT細胞に免疫刺激作用物質および免疫調節作用物質を送達することを可能にする、重要な特徴である。そのような送達は、本発明のナノキャリアが、免疫系応答を引き出すまたは免疫系応答を増強するのを可能にする。いくつかの実施形態では、本発明の合成ナノキャリアは、成分に対して体液性応答をもたらすのに有効な量で複数のその成分を含む表面を含む。
【0009】
当業者によって認識されるように、免疫系調節は、例えば、感染症、癌、および自己免疫疾患(関節リウマチを含む)の予防および/または治療、移植拒絶反応を改善させる(ameliorate)ための移植に関連する免疫抑制、依存性物質に対する免疫、ならびにバイオハザードおよび他の毒性物質に対する免疫のためなどの医学的処置に関連して、とりわけ有用である。免疫系調節はまた、例えば、抗体を産生するために動物を免疫するなどのように、産業上の環境および学問的研究環境におけるツールとしても有用である。
【0010】
本発明の一態様は、ワクチンの提供である。本発明によるワクチンは、典型的に、抗原を含有する。一実施形態では、抗原は、共有結合または非共有結合の手段によってナノキャリアに物理的に「結合される」。非共有結合は、例えばイオン結合、疎水性結合、物理的捕捉などを含み、すべて、さらに詳細に下記に記載される。それら自体が抗原を運搬する、そのようなナノキャリアは、下記にワクチンナノキャリアと呼ばれるカテゴリー中に含まれる。他の実施形態では、ナノキャリアは、好ましくは抗原に対する免疫応答を増強する、抑制する、指示する、または再指示するために免疫刺激作用物質をそれに結合させる。この場合、抗原は、作用物質結合ナノキャリア(免疫刺激作用物質が結合している)の調製物と混合され、ワクチンを形成してもよい。抗原はまた、もちろん、下記に議論されるように、免疫刺激作用物質が結合している同じナノキャリアを含むナノキャリアに結合されてもよい。抗原はまた、免疫特徴表面の成分であってもよい。
【0011】
多くの実例における本発明の調製物は、1つまたは複数のナノキャリアを含む。いくつかの実施形態では、調製物は、免疫特徴表面を有するナノキャリアを含み、ナノキャリアは、すべてではないが、1つまたは複数の免疫調節作用物質、免疫刺激作用物質、およびターゲティング作用物質に結合している。いくつかの実施形態では、調製物は、すべてではないが、1つまたは複数の免疫調節作用物質、免疫刺激作用物質、およびターゲティング作用物質を運搬している亜集団とナノキャリアの混合物である。いくつかの実施形態では、調製物は、異なるナノキャリアの混合物であり、それぞれのナノキャリアは、すべてではないが、1つまたは複数の免疫調節作用物質、免疫刺激作用物質、およびターゲティング作用物質を運搬している。調製物は、同様に、ナノキャリアのうちの1つであってもよく、それぞれのナノキャリアは、それに、免疫調節作用物質、免疫刺激作用物質、およびターゲティング作用物質のすべてを結合させる。この実例では、ナノキャリアは、それら自体、それらが送達する作用物質は別として、異なっていても同じであってもよい。ここで言及される(かつより詳細に本明細書において記載される)ターゲティング作用物質は、例えばB細胞ターゲティング成分またはT細胞ターゲティング成分である。本開示の全体にわたって、そのような成分は、免疫特徴表面に存在し、APCに対するナノキャリアのターゲティングをもたらす複数の成分の他にあることが十分に理解される。
【0012】
重要なのは、本発明のナノキャリアが免疫系を刺激するときに強力であるという発見である。重要なのは、自然界においてまたは先のワクチン技術において抗原に曝露された場合に免疫系が「認識する」ものを模倣し、免疫学的な観点からそれを改善するようにナノキャリアを適合させることができるという発見である。この点で、アジュバントの活性は、ナノキャリアに共有結合された場合に、著しく増強され得ることが予想外に発見された。ナノキャリアの免疫特徴表面は、特異的な細胞ターゲティング作用物質がなくても、免疫調節作用物質または免疫刺激作用物質が、適切な免疫細胞をターゲティングするのを助けることができることもまた予想外に発見された。
【0013】
本明細書において記載されるシステムは、改善された免疫調節をもたらす方法で免疫系に影響を与えるパラメータの操作を可能にする。本発明の重要な一態様は、サイズ、作用物質の密度、ターゲティングの程度および位置、分解、作用物質の放出などの点からナノキャリアを制御することができることである。本発明の様々な態様は、より詳細に下記に記載される1つまたは複数のこれらの利点を達成する。特に、免疫調節性調製物、そのような調製物の合成ナノキャリア成分、特異的で好ましいナノキャリア、特異的で好ましい免疫調節作用物質、免疫刺激作用物質、およびターゲティング作用物質、本発明のナノキャリアの構成部分および構成要素、ならびに自己組織化ナノキャリアに関する好ましい方法を含む、そのようなナノキャリアを製造するための方法が下記に記載される。さらに、弱い抗原ならびにT細胞によって認識されない抗原(例えば炭水化物および小分子抗原)に関して強い免疫調節を生じさせるための調製物およびシステムが記載される。いくつかの態様では、ナノキャリア(例えば特異的な器官、組織、細胞、または細胞下の場所をターゲティングするもの)を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、1つまたは複数の二次リンパ組織または二次リンパ器官をターゲティングする。いくつかの実施形態では、二次リンパ組織または二次リンパ器官は、リンパ節、脾臓、パイエル板、虫垂、または扁桃腺である。
【0014】
ナノキャリアの(および本明細書において提供される作用物質が結合してもよいまたは封入されてもよい)スカフォールドは、ポリマーおよび/または非ポリマー分子から構成することができる。したがって、ナノキャリアスカフォールドは、タンパク質ベース、核酸ベース、または炭水化物ベースのものとすることができる。スカフォールドは、いくつかの実施形態において、高分子である。いくつかの実施形態では、スカフォールドは、アミノ酸または核酸から構成される。いくつかの実施形態では、スカフォールドは、核酸などのような、分子の架橋鎖から構成される。いくつかの実施形態では、スカフォールドは、RNAi架橋鎖から構成される。いくつかの実施形態では、スカフォールドは、ポリアミノベースのものである。ナノキャリアは、1つまたは複数の脂質ベースのナノ粒子、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤ベースのエマルジョン、デンドリマー、および/または脂質ポリマーナノ粒子などのような、ナノ物質の組み合わせを使用して開発されたナノ粒子とすることができるが、これらに限定されない。
【0015】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、1つまたは複数のポリマーから構成される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のポリマーは、水溶性で非粘着性のポリマーである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチレンオキシド(PEO)である。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリアルキレングリコールまたはポリアルキレンオキシドである。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のポリマーは、生分解性ポリマーである。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のポリマーは、水溶性で非粘着性のポリマーおよび生分解性ポリマーのコンジュゲートである生体適合性ポリマーである。いくつかの実施形態では、生分解性ポリマーは、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、またはポリ(乳酸/グリコール酸)(PLGA)である。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、PEG−PLGAポリマーから構成される。
【0016】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、自己組織化によって形成される。自己組織化は、ナノキャリアを予想どおりに、再現性よく形成する予想可能な方法でそれら自体を配向する成分を使用する、ナノキャリアの形成のプロセスを指す。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、予想可能な寸法、構成物、および構成物の配置のナノキャリアを形成するために互いに配向する両親媒性生体材料を使用して形成される。本発明によれば、ナノキャリアが自己組織化した場合に、ナノキャリア上に/中に作用物質の局在および密度の再現可能なパターンが見られるように、両親媒性生体材料は、それらに免疫調節作用物質、免疫刺激作用物質、および/またはターゲティング作用物質を結合させてもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、微粒子、ナノ粒子、またはピコ粒子である。いくつかの実施形態では、微粒子、ナノ粒子、またはピコ粒子は、自己組織化している。
【0018】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、正のゼータ電位を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは中性のpHで正味の正電荷を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、その表面に1つまたは複数のアミン成分を含む。いくつかの実施形態では、アミン成分は、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、または第四級アミンである。いくつかの実施形態では、アミン成分は、脂肪族アミンである。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、アミン含有ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、アミン含有脂質を含む。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、中性のpHで正に荷電したタンパク質またはペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、ラテックス粒子である。いくつかの実施形態では、その表面に1つまたは複数のアミン成分を有するナノキャリアは、中性のpHで正味の正電荷を有する。
【0019】
本明細書において提供される組成物のナノキャリアは、いくつかの実施形態では、500nm未満の幾何平均直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、50nmを超えるが500nm未満である幾何平均直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアの集団の幾何平均直径は、約60nm、75nm、100nm、125nm、150nm、175nm、200nm、225nm、250nm、275nm、300nm、325nm、350nm、375nm、400nm、425nm、450nm、または475nmである。いくつかの実施形態では、幾何平均直径は、100〜400nm、100〜300nm、100〜250nm、または100〜200nmの間である。いくつかの実施形態では、幾何平均直径は、60〜400nm、60〜350nm、60〜300nm、60〜250nm、または60〜200nmの間である。いくつかの実施形態では、幾何平均直径は、75〜250nmの間である。いくつかの実施形態では、ナノキャリアの集団のナノキャリアの30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%以上は、500nm未満の直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアの集団のナノキャリアの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%以上は、50nmを超えるが500nm未満である直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアの集団のナノキャリアの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%以上は、約60nm、75nm、100nm、125nm、150nm、175nm、200nm、225nm、250nm、275nm、300nm、325nm、350nm、375nm、400nm、425nm、450nm、または475nmの直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアの集団のナノキャリアの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%以上は、100〜400nm、100〜300nm、100〜250nm、または100〜200nmの間の直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアの集団のナノキャリアの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%以上は、60〜400nm、60〜350nm、60〜300nm、60〜250nm、または60〜200nmの間の直径を有する。先の実施形態のうちのいくつかでは、ナノキャリアは、ナノ粒子である。
【0020】
本明細書において提供されるナノキャリアは、免疫応答を調整する(例えば、増強する、抑制する、指示する、または再指示する)ために使用することができ、免疫特徴表面を含む。いくつかの実施形態では、そのような免疫応答は、体液性免疫応答である。他の実施形態では、そのような免疫応答は、細胞性免疫応答である。いくつかの実施形態では、そのような免疫応答は、細胞性免疫応答および体液性免疫応答の組み合わせである。ナノキャリアは、免疫調節作用物質、免疫刺激作用物質、およびターゲティング作用物質のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、B細胞抗原、T細胞抗原、免疫刺激作用物質、およびターゲティング作用物質のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、B細胞抗原、T細胞抗原、免疫刺激作用物質、およびターゲティング作用物質のうちの少なくとも2つを含む。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、B細胞抗原、T細胞抗原、免疫刺激作用物質、およびターゲティング作用物質のうちの少なくとも3つを含む。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、B細胞抗原、T細胞抗原、免疫刺激作用物質、およびターゲティング作用物質のすべてを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、B細胞抗原を含む。B細胞抗原は、ナノキャリアの免疫特徴表面のものであってもよい、ナノキャリアの第2の表面のものであってもよい、ナノキャリア内に封入されてもよい、またはその組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、B細胞受容体を活性化する密度でナノキャリアの表面にある。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、ナノキャリアと結合している。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、ナノキャリアと共有結合している。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、ナノキャリアと非共有結合している。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、ターゲティング成分をさらに含む。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、低免疫原性抗原である。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、小分子である。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、依存性物質である。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、毒素である。いくつかの実施形態では、ナノキャリア中への包含のための毒素は、完全な分子またはその部分である。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、T細胞抗原ではない。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、炭水化物である。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、変性疾患抗原、感染症抗原、癌抗原、アトピー性疾患抗原、自己免疫疾患抗原、同種抗原、異種抗原、依存性物質、または代謝性疾患酵素もしくは代謝性疾患酵素産物である。
【0022】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、T細胞抗原を含む。いくつかの実施形態では、T細胞抗原は、ナノキャリアの免疫特徴表面にある、ナノキャリアの第2の表面(susurface)にある、ナノキャリア内に封入される、またはその組み合わせである。いくつかの実施形態では、T細胞抗原は、ナノキャリアと結合している。いくつかの実施形態では、T細胞抗原は、ナノキャリアと共有結合している。いくつかの実施形態では、T細胞抗原は、ナノキャリアと非共有結合している。いくつかの実施形態では、抗原は、変性疾患抗原、感染症抗原、癌抗原、アトピー性疾患抗原、自己免疫疾患抗原、同種抗原、異種抗原、依存性物質、または代謝性疾患酵素もしくは代謝性疾患酵素産物である。いくつかの実施形態では、T細胞抗原は、「万能な」T細胞抗原である(つまり、T細胞の助けを刺激するために、炭水化物を含む無関係なB細胞抗原と共に使用することができるもの)。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、ターゲティング成分をさらに含む。さらに、ここで言及される(かつより詳細に本明細書において記載される)ターゲティング成分は、免疫特徴表面に存在し、APCに対するナノキャリアのターゲティングをもたらす複数の成分の他にある。
【0023】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、B細胞抗原およびT細胞抗原の両方を含む。いくつかの実施形態では、B細胞抗原およびT細胞抗原は、異なる抗原である。いくつかの実施形態では、B細胞抗原およびT細胞抗原は、同じ抗原である。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、ナノキャリアの免疫特徴表面にあり、ナノキャリアの第2の表面にあり(例えば共有結合もしくは非共有結合している)、またはナノキャリアの表面の両方にあり(例えば共有結合もしくは非共有結合している)、かつナノキャリア内に封入されており(例えば共有結合もしくは非共有結合している)、一方、T細胞抗原は、ナノキャリアの免疫特徴表面にある、ナノキャリアの第2の表面にある(例えば共有結合もしくは非共有結合している)、ナノキャリア内に封入されている(例えば共有結合もしくは非共有結合している)、またはナノキャリアの表面の両方にあり(例えば共有結合もしくは非共有結合している)、かつナノキャリア内に封入されている(例えば共有結合もしくは非共有結合している)。
【0024】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアがB細胞抗原およびT細胞抗原の両方を含む場合、ナノキャリアは、免疫刺激作用物質をさらに含む。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、ナノキャリアの表面にあるおよび/またはナノキャリア内に封入されている。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、ナノキャリアと結合している。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、ナノキャリアと共有結合している。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、ナノキャリアと非共有結合している。
【0025】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアがB細胞抗原およびT細胞抗原の両方を含む場合、ナノキャリアは、ターゲティング作用物質をさらに含む。さらに、ここで言及される(かつより詳細に本明細書において記載される)ターゲティング作用物質は、免疫特徴表面に存在し、APCに対するナノキャリアのターゲティングをもたらす複数の成分の他にある。いくつかの実施形態では、ターゲティング作用物質は、ナノキャリアの免疫特徴表面にあり、ナノキャリアの第2の表面にある。いくつかの実施形態では、ターゲティング作用物質は、ナノキャリアと結合している。いくつかの実施形態では、ターゲティング作用物質は、ナノキャリアと共有結合している。いくつかの実施形態では、ターゲティング作用物質は、ナノキャリアと非共有結合している。
【0026】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアがB細胞抗原およびT細胞抗原の両方を含む場合、ナノキャリアは、免疫刺激作用物質およびターゲティング作用物質をさらに含む。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、ナノキャリアの表面にあり(例えば共有結合もしくは非共有結合している)および/またはナノキャリア内に封入されており(例えば共有結合もしくは非共有結合している)、一方、ターゲティング作用物質は、ナノキャリアの表面にある(例えば共有結合もしくは非共有結合している)。
【0027】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、免疫刺激作用物質を含む。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、ナノキャリアの表面にある。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、ナノキャリア内に封入されている。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、ナノキャリアの表面の両方にあり、かつナノキャリア内に封入されている。いくつかの実施形態では、ナノキャリアの表面の免疫刺激作用物質は、ナノキャリア内に封入された免疫刺激作用物質とは異なる。いくつかの実施形態では、ナノキャリアの表面の免疫刺激作用物質およびナノキャリア内に封入された免疫刺激作用物質は、同じである。
【0028】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、1種を超える免疫刺激作用物質を含み、その場合には、免疫刺激作用物質は、異なる。
【0029】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、免疫特徴表面、免疫刺激作用物質、および抗原を含む。いくつかの実施形態では、抗原は、B細胞抗原またはT細胞抗原である。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、免疫抑制薬(免疫応答を抑制する)である。いくつかの実施形態では、免疫抑制薬は、シクロスポリン、ステロイド、メトトレキサート、またはT細胞活性化に干渉する任意の作用物質である。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、調節性T細胞を誘導する(例えばTGF−β、ラパマイシン、またはレチノイン酸)。いくつかの実施形態では、調節性T細胞を誘導する免疫抑制薬か免疫抑制作用物質は、抗原に対する寛容の獲得を促進する。ナノキャリアは、いくつかの実施形態では、ターゲティング作用物質をさらに含む。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、被験体の免疫系を抑制するおよび/または寛容を促進するために使用することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアが、免疫特徴表面および免疫刺激作用物質を含む場合、ナノキャリアは、B細胞抗原および/またはT細胞抗原をさらに含む。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、低免疫原性抗原である。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、小分子である。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、炭水化物である。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、依存性物質である。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、毒素である。いくつかの実施形態では、T細胞抗原は、変性疾患抗原、感染症抗原、癌抗原、アトピー性疾患抗原、自己免疫疾患抗原、同種抗原、異種抗原、依存性物質、または代謝性疾患酵素もしくは代謝性疾患酵素産物である。いくつかの実施形態では、T細胞抗原は、万能なT細胞抗原である。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、ターゲティング作用物質をさらに含む。
【0031】
ナノキャリアは、いくつかの実施形態では、被験体において、低免疫原性抗原(例えば小分子または炭水化物)に対する免疫応答を誘導するまたは増強するために使用することができる。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、被験体において依存性物質に対する免疫応答を誘導するまたは増強するために使用することができる。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、被験体において、毒素に対する免疫応答を誘導するまたは増強するために使用することができる。ナノキャリアは、いくつかの実施形態では、嗜癖を有するまたはそれに対して感受性の被験体を治療するために使用することができる。ナノキャリアは、いくつかの実施形態では、毒素に曝露されたことのあるまたは曝露されるであろう被験体を治療するために使用することができる。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、感染症、癌、または自己免疫疾患(関節リウマチを含む)を治療するおよび/または予防するために使用することができる。他の実施形態では、ナノキャリアは、移植拒絶反応を改善させるために移植に関する免疫抑制に使用することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、ターゲティング成分をさらに含む。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、ナノキャリアの免疫特徴表面または第2の表面にある。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、ナノキャリアと結合している。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、ナノキャリアと共有結合している。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、ナノキャリアと非共有結合している。
【0033】
いくつかの態様では、(a)ポリマーおよび免疫特徴成分(つまり免疫特徴表面の複数の成分のうちの1つ)のコンジュゲート、(b)ポリマーおよび抗原のコンジュゲート、(c)ポリマーおよび免疫刺激作用物質のコンジュゲート、ならびに/または(d)ポリマーおよびターゲティング成分のコンジュゲートを含むナノキャリアを含む組成物が提供される。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、ポリマーおよび抗原のコンジュゲートならびにポリマーおよび免疫刺激作用物質のコンジュゲートを含む。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、ポリマーおよび抗原のコンジュゲートならびにポリマーおよびターゲティング成分のコンジュゲートを含む。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、ポリマーおよび免疫刺激作用物質のコンジュゲートならびにポリマーおよびターゲティング成分のコンジュゲートを含む。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、ポリマーおよび抗原のコンジュゲート、ポリマーおよび免疫刺激作用物質のコンジュゲート、ならびにポリマーおよびターゲティング成分のコンジュゲートを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のコンジュゲートは、1つもしくは複数の共有結合コンジュゲートまたは1つもしくは複数の非共有結合コンジュゲートまたはその任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、抗原は、B細胞抗原である。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、ポリマーおよびT細胞抗原のコンジュゲートをさらに含む。いくつかの実施形態では、そのようなコンジュゲートは、共有結合コンジュゲートまたは非共有結合コンジュゲートである。いくつかの実施形態では、抗原は、T細胞抗原である。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、ポリマーおよびB細胞抗原のコンジュゲートをさらに含む。いくつかの実施形態では、そのようなコンジュゲートは、共有結合コンジュゲートまたは非共有結合コンジュゲートである。
【0034】
いくつかの態様では、以下の式X−L1−Y−L2−Zの1つまたは複数の分子を含むナノキャリアを含む組成物であって、式中、Xは、生分解性ポリマーであり、Yは、水溶性で非粘着性のポリマーであり、Zは、ターゲティング成分、免疫調節作用物質、免疫刺激作用物質、または薬学的作用物質であり、L1およびL2は、結合または連結分子であり、YおよびZの両方ではなく、YまたはZのいずれかは、不在とすることができる組成物が提供される。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、抗原、免疫刺激作用物質、またはその両方を含む。いくつかの実施形態では、薬学的作用物質は、抗原である。いくつかの実施形態では、抗原は、変性疾患抗原、感染症抗原、癌抗原、アトピー性疾患抗原、自己免疫疾患抗原、同種抗原、異種抗原、依存性物質、または代謝性疾患酵素もしくは代謝性疾患酵素産物である。Zは、本明細書において記載される任意の抗原であってもよい。いくつかの実施形態では、Zは、ターゲティング成分である。いくつかの実施形態では、Zは、細胞の表面に発現された受容体に結合するターゲティング成分である。いくつかの実施形態では、Zは、可溶性受容体に結合するターゲティング成分である。いくつかの実施形態では、可溶性受容体は、補体タンパク質または既存の抗体である。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、抗原提示細胞、T細胞、またはB細胞へのナノキャリアの送達のためのものである。いくつかの実施形態では、抗原提示細胞は、樹状細胞(DC)、濾胞樹状細胞(FDC)、またはマクロファージである。いくつかの実施形態では、マクロファージは、被膜下洞マクロファージ(SCS−Mph)である。いくつかの実施形態では、Yは、PEGまたはPEOである。いくつかの実施形態では、Yは、ポリアルキレングリコールまたはポリアルキレンオキシドである。いくつかの実施形態では、Xは、PLGA、PLA、またはPGAである。いくつかの実施形態では、Zは不在である。
【0035】
本発明のナノキャリアは、免疫特徴表面を含む表面を含む。いくつかの態様では、組成物は、以下の式:X−L1−Y−L2−Iの1つまたは複数の分子を含むナノキャリアであって、式中、X、L1、Y、およびL2は、先に記載されるとおりであり、Iは、免疫特徴成分(immunofeature moiety)(つまり免疫特徴表面の複数の成分のうちの1つ)であるナノキャリアを含む。本明細書において記載されるように、免疫特徴表面は(免疫特徴表面の複数の成分を介して)、APCへの低い親和性で高いアビディティの結合を提供する。
【0036】
いくつかの態様では、免疫特徴表面を含むナノキャリアを含む組成物が、提供される。いくつかの態様では、免疫刺激作用物質を含むナノキャリアを含む組成物が、提供される。いくつかの実施形態では、組成物は、抗原および/またはターゲティング成分をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗原、ターゲティング成分、および免疫刺激作用物質のうちの少なくとも1つは、水溶性で非粘着性のポリマーにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、抗原、ターゲティング成分、および免疫刺激作用物質のうちの少なくとも1つは、生分解性ポリマーにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、抗原、ターゲティング成分、および免疫刺激作用物質のうちの少なくとも1つは、生体適合性ポリマーにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、生体適合性ポリマーは、生分解性ポリマーに結合された水溶性で非粘着性のポリマーのコンジュゲートである。いくつかの実施形態では、抗原は、B細胞抗原である。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、T細胞抗原ではない。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、T細胞抗原をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗原は、T細胞抗原である。
【0037】
いくつかの態様では、免疫特徴表面、小分子、免疫刺激作用物質、およびT細胞抗原を含むナノキャリアを含む組成物が、提供される。いくつかの実施形態では、小分子は、免疫特徴表面にある、ナノキャリアの第2の表面にある、またはナノキャリアの表面の両方にあり、かつナノキャリア内に封入されている。いくつかの実施形態では、小分子は、依存性物質である。いくつかの実施形態では、小分子は、毒素である。いくつかの実施形態では、毒素は、化学兵器、生物戦の作用物質、または危険な環境因子由来のものである。いくつかの実施形態では、小分子は、ポリマーにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、ポリマーは、水溶性で非粘着性のポリマー、生分解性ポリマー、または生体適合性ポリマーである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、生体適合性ポリマーである。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、ナノキャリアの表面にあるまたはナノキャリアの表面の両方にあり、かつナノキャリア内に封入されている。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、ポリマーにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、ポリマーは、水溶性で非粘着性のポリマー、生分解性ポリマー、または生体適合性ポリマー 生分解性ポリマーである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、水溶性の非粘着性のポリマーまたは生分解性ポリマーである。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、ターゲティング成分をさらに含む。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、ポリマーにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、ポリマーは、水溶性で非粘着性のポリマー、生分解性ポリマー、または生体適合性ポリマー 生分解性ポリマーである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、生体適合性ポリマーである。いくつかの実施形態では、水溶性で非粘着性のポリマーは、PEGまたはPEOである。いくつかの実施形態では、水溶性で非粘着性のポリマーは、ポリアルキレングリコールまたはポリアルキレンオキシドである。いくつかの実施形態では、生分解性ポリマーは、PLGA、PLA、またはPGAである。いくつかの実施形態では、生体適合性ポリマーは、水溶性で非粘着性のポリマーおよび生分解性ポリマーのコンジュゲートである。
【0038】
いくつかの実施形態では、免疫特徴表面、免疫刺激作用物質、T細胞抗原、およびターゲティング成分を含むナノキャリアを含む組成物が、提供される。いくつかの実施形態では、免疫特徴表面は、APC表面への低いアビディティの結合を提供することができる複数の成分を含む。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、TLR7/8アゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、R848(Resiquimodとも呼ばれる)またはイミキモドである。いくつかの実施形態では、免疫特徴表面の複数の成分は、ナノキャリアの表面にあるまたはナノキャリアの表面の両方にあり、かつナノキャリア内に封入されている。いくつかの実施形態では、免疫特徴表面の複数の成分は、ポリマーにコンジュゲートされる、好ましくは共有結合でコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、ポリマーは、水溶性で非粘着性のポリマー、生分解性ポリマー、または生体適合性ポリマーである。いくつかの実施形態では、免疫特徴表面の複数の成分は、生体適合性ポリマーにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、ナノキャリアの表面にある、ナノキャリア内に封入されている、またはナノキャリアの表面の両方にあり、かつナノキャリア内に封入されている。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、ポリマーにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、ポリマーは、水溶性で非粘着性のポリマー、生分解性ポリマー、または生体適合性ポリマー 生分解性ポリマーである。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、生分解性ポリマーにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、ポリマーにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、ポリマーは、水溶性で非粘着性のポリマー、生分解性ポリマー、または生体適合性ポリマー 生分解性ポリマーである。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、生体適合性ポリマーにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、水溶性で非粘着性のポリマーは、PEGまたはPEOである。いくつかの実施形態では、水溶性で非粘着性のポリマーは、ポリアルキレングリコールまたはポリアルキレンオキシドである。いくつかの実施形態では、生分解性ポリマーは、PLGA、PLA、またはPGAである。いくつかの実施形態では、生体適合性ポリマーは、水溶性で非粘着性のポリマーおよび生分解性ポリマーのコンジュゲートである。
【0039】
いくつかの態様では、低免疫原性抗原、免疫刺激作用物質、およびT細胞抗原を含むナノキャリアを含む組成物が、提供される。いくつかの実施形態では、低免疫原性抗原は、ナノキャリアの表面にあるまたはナノキャリアの表面の両方にあり、かつナノキャリア内に封入されている。いくつかの実施形態では、低免疫原性抗原は、小分子または炭水化物である。いくつかの実施形態では、低免疫原性抗原は、依存性物質である。いくつかの実施形態では、低免疫原性抗原は、毒素である。いくつかの実施形態では、低免疫原性抗原は、ポリマーに共有結合でコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、ポリマーは、水溶性で非粘着性のポリマー、生分解性ポリマー、または生体適合性ポリマー 生分解性ポリマーである。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、ナノキャリアの表面にあるまたはナノキャリアの表面の両方にあり、かつナノキャリア内に封入されている。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、ポリマーに共有結合でコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、ポリマーは、水溶性で非粘着性のポリマー、生分解性ポリマー、または生体適合性ポリマー 生分解性ポリマーである。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、ターゲティング成分をさらに含む。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、ポリマーに共有結合でコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、ポリマーは、水溶性で非粘着性のポリマー、生分解性ポリマー、または生体適合性ポリマー 生分解性ポリマーである。
【0040】
いくつかの態様では、B細胞を活性化する密度でその表面にB細胞抗原を含み、かつ免疫刺激作用物質を含む、特異的な細胞、組織、または器官を標的にし、免疫応答を調整するナノキャリアを含む組成物が、提供される。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、ターゲティング成分をさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的組成物であり、薬学的に許容されるキャリアをさらに含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、ワクチン組成物である。
【0041】
いくつかの態様では、抗原提示細胞ターゲティング成分およびナノキャリアを含む、薬学的組成物などのような組成物が、提供される。いくつかの実施形態では、抗原提示細胞ターゲティング成分およびナノキャリアは、コンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、共有結合コンジュゲートである。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、非共有結合コンジュゲートである。
【0042】
いくつかの態様では、免疫刺激作用物質およびナノキャリアを含む、薬学的組成物などのような組成物が、提供される。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質およびナノキャリアは、コンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、共有結合コンジュゲートである。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、非共有結合コンジュゲートである。
【0043】
いくつかの態様において、式X−L1−Y−L2−Zを有する分子を含む組成物であって、式中、Xは、生分解性ポリマーであり、Yは、水溶性で非粘着性のポリマーであり、Zは、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、または薬学的作用物質であり、L1およびL2は、結合または連結分子であり、YおよびZの両方ではなく、YまたはZは、不在とすることができる組成物が提供される。
【0044】
いくつかの態様において、式X−Ll−Y−L2−Iを有する分子を含む組成物であって、Iは、免疫特徴成分であり、Xは、生分解性ポリマーであり、Yは、水溶性で非粘着性のポリマーであり、L1およびL2は、結合または連結分子であり、YおよびIの両方ではなく、YまたはIは、不在とすることができる組成物が提供される。
【0045】
いくつかの態様では、式T−L1−X−L2−Y−L3−Zを有する分子を含む組成物であって、式中、Tは、T細胞抗原であり、Xは、生分解性ポリマーであり、Yは、水溶性で非粘着性のポリマーであり、Zは、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、または薬学的作用物質であり、L1、L2、およびL3は、結合または連結分子であり、T、Y、およびZの3つすべてではなく、T、Y、およびZのいずれか1つまたは2つは、不在とすることができる組成物が提供される。いくつかの実施形態では、薬学的作用物質は、抗原である。いくつかの実施形態では、抗原は、B細胞抗原またはT細胞抗原である。
【0046】
いくつかの態様では、式T−L1−X−L2−Y−L3−Iを有する分子を含む組成物であって、式中、Iは、免疫特徴成分であり、Tは、T細胞抗原であり、Xは、生分解性ポリマーであり、Yは、水溶性で非粘着性のポリマーであり、Zは、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、または薬学的作用物質であり、L1、L2、およびL3は、結合または連結分子であり、T、Y、およびZの3つすべてではなく、T、Y、およびZのいずれか1つまたは2つは、不在とすることができる組成物が提供される。いくつかの実施形態では、薬学的作用物質は、抗原である。いくつかの実施形態では、抗原は、B細胞抗原またはT細胞抗原である。
【0047】
いくつかの実施形態では、Zは、変性疾患抗原、感染症抗原、癌抗原、アトピー性疾患抗原、自己免疫疾患抗原、同種抗原、異種抗原、ハプテン、依存性物質、または代謝性疾患酵素もしくは代謝性疾患酵素産物である。いくつかの実施形態では、Zは、本明細書において記載されるB細胞抗原のいずれかである。いくつかの実施形態では、Zは、本明細書において提供されるT細胞抗原のいずれかである。
【0048】
いくつかの実施形態では、Zは、細胞の表面に発現された受容体に結合するターゲティング成分である。いくつかの実施形態では、Zは、可溶性受容体に結合するターゲティング成分である。いくつかの実施形態では、可溶性受容体は、補体または既存の抗体である。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、抗原提示細胞、T細胞、またはB細胞を標的にするためのものである。
【0049】
いくつかの実施形態では、Yは、PEGまたはPEOである。いくつかの実施形態では、Yは、ポリアルキレングリコールまたはポリアルキレンオキシドである。
【0050】
いくつかの実施形態では、Xは、PLGA、PGA、またはPLAである。
【0051】
いくつかの実施形態では、Zは不在である。いくつかの実施形態では、Yは不在である。
【0052】
いくつかの態様では、免疫刺激作用物質およびポリマーのコンジュゲートを含む薬学的組成物が、提供される。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、共有結合コンジュゲートである。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、非共有結合コンジュゲートである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、水溶性で非粘着性のポリマー、生分解性ポリマー、または生体適合性ポリマーである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、生体適合性ポリマーである。いくつかの実施形態では、生体適合性ポリマーは、生分解性ポリマーまたは水溶性で非粘着性のポリマーである。いくつかの実施形態では、生体適合性ポリマーは、水溶性で非粘着性のポリマーおよび生分解性ポリマーのコンジュゲートである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、合成ポリマーである。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、1つまたは複数のナノキャリアを含み、コンジュゲートは、1つまたは複数のナノキャリアの成分である。いくつかの実施形態では、組成物は、抗原をさらに含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、抗原を含まない。いくつかの実施形態では、組成物は、ターゲティング作用物質をさらに含む。
【0053】
いくつかの態様では、免疫刺激作用物質およびポリマーのコンジュゲートを含むワクチン組成物が、提供される。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、共有結合コンジュゲートである。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、非共有結合コンジュゲートである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、水溶性で非粘着性のポリマー、生分解性ポリマー、または生体適合性ポリマーである。いくつかの実施形態では、水溶性で非粘着性のポリマーは、ポリエチレングリコールである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、生体適合性ポリマーである。いくつかの実施形態では、生体適合性ポリマーは、生分解性ポリマーまたは水溶性で非粘着性のポリマーである。いくつかの実施形態では、生体適合性ポリマーは、水溶性で非粘着性のポリマーおよび生分解性ポリマーのコンジュゲートである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、合成ポリマーである。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、1つまたは複数のナノキャリアを含み、コンジュゲートは、1つまたは複数のナノキャリアの成分である。いくつかの実施形態では、組成物は、抗原をさらに含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、抗原を含まない。いくつかの実施形態では、組成物は、ターゲティング作用物質をさらに含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、タンパク質またはペプチドである。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、非タンパク質抗原である(つまりタンパク質でもペプチドでもない)。いくつかの実施形態では、タンパク質またはペプチドは、感染病原体由来のものである。いくつかの実施形態では、感染病原体は、細菌、真菌、ウイルス、原虫、または寄生虫である。いくつかの実施形態では、ウイルスは、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、デング熱ウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、麻疹ウイルス(rubeola virus)、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン−バーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、ムンプスを引き起こすウイルス、狂犬病を引き起こすウイルス、レオウイルス、風疹ウイルス、トガウイルス、オルトミクソウイルス、レトロウイルス、ヘパドナウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、またはE型肝炎ウイルスである。
【0055】
いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、小分子である。いくつかの実施形態では、小分子は、乱用物質、依存性物質、または毒素である。
【0056】
いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、依存性物質である。いくつかの実施形態では、依存性物質は、麻酔薬、幻覚薬、刺激薬、咳止め薬、トランキライザー、または鎮静薬である。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、オピオイド(opiod)またはベンゾジアゼピンである。
【0057】
いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、毒素である。いくつかの実施形態では、毒素は、化学兵器由来のものである。いくつかの実施形態では、化学兵器由来の毒素は、ボツリヌス毒素またはホスフィン(phosphene)である。化学兵器由来の毒素はまた、O−アルキル(<C10、シクロアルキルを含む)アルキル(Me、Et、n−Prまたはi−Pr)−ホスホノフルオリデート(例えばサリン:O−イソプロピルメチルホスホノフルオリデート、ソマン:O−ピナコリルメチルホスホノフルオリデート)、O−アルキル(<C10、シクロアルキルを含む)N,N−ジアルキル(Me、Et、n−Prまたはi−Pr)ホスホルアミドシアニデート(例えばタブン:O−エチルN,N−ジメチルホスホルアミドシアニデート)、O−アルキル(Hまたは<C10、シクロアルキルを含む)S−2−ジアルキル(Me、Et、n−Prまたはi−Pr)−アミノエチルアルキル(Me、Et、n−Prまたはi−Pr)ホスホノチオレートおよび対応するアルキル化塩またはプロトン化塩(例えばVX:O−エチルS−2−ジイソプロピルアミノエチルメチルホスホノチオレート)、サルファマスタード:2−クロロエチルクロロメチルスルフィド、マスタードガス:ビス(2−クロロエチル)スルフィド、ビス(2−クロロエチルチオ)メタン、セスキマスタード:1,2−ビス(2−クロロエチルチオ)エタン、1,3−ビス(2−クロロエチルチオ)−n−プロパン、1,4−ビス(2−クロロエチルチオ)−n−ブタン、1,5−ビス(2−クロロエチルチオ)−n−ペンタン、ビス(2−クロロエチルチオメチル)エーテル、O−マスタード:ビス(2−クロロエチルチオエチル)エーテル、ルイサイト:ルイサイト1:2−クロロビニルジクロロアルシン、ルイサイト2:ビス(2−クロロビニル)クロロアルシン、ルイサイト3:トリス(2−クロロビニル)アルシン、ナイトロジェンマスタード:HN1:ビス(2−クロロエチル)エチルアミン、HN2:ビス(2−クロロエチル)メチルアミン、HN3:トリス(2−クロロエチル)アミン、サキシトキシン、リシン、アミトン:O,O−ジエチルS−(2−(ジエチルアミノ)エチル)ホスホロチオレートおよび対応するアルキル化塩またはプロトン化塩、PFIB:1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−1−プロペン、3−キヌクリジニルベンジレート(BZ)、ホスゲン:カルボニルジクロリド、塩化シアン、シアン化水素、ならびにクロロピクリン:トリクロロニトロメタンをも含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ナノキャリア中への包含のための毒素は、先のもののいずれかの完全な分子またはその部分である。
【0058】
いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、バイオハザードまたは危険な環境因子である。いくつかの実施形態では、危険な環境因子は、ヒ素、鉛、水銀、塩化ビニル、ポリ塩化ビフェニル、ベンゼン、多環芳香族炭化水素、カドミウム、ベンゾ(a)ピレン、ベンゾ(b)フルオランテン、クロロホルム、ジクロロ−ジフェニル−トリクロロエチレン(DDT)、P,P’−アロクロール1254、P,P’−アロクロール1260、ジベンゾ(a,h)アントラセン、トリクロロエチレン、ジエルドリン、六価クロム、またはp,p’−ジクロロジフェニルジクロロエテン(DDE、P,P’)である。
【0059】
いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、炭水化物である。いくつかの実施形態では、炭水化物は、感染病原体由来のものである。いくつかの実施形態では、感染病原体は、細菌、真菌、ウイルス、原虫、または寄生虫である。いくつかの実施形態では、細菌は、シュードモナス属、肺炎球菌、E.coli、ブドウ球菌属、連鎖球菌属、トレポネーマ属、ボレリア属、クラミジア属、ヘモフィルス属、クロストリジウム属、サルモネラ属、レジオネラ属、ビブリオ属、もしくはエンテロコッカス属(Enterococci)の細菌またはマイコバクテリウム属である。いくつかの実施形態では、ウイルスは、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、デング熱ウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、麻疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン−バーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、ムンプスを引き起こすウイルス、狂犬病を引き起こすウイルス、レオウイルス、風疹ウイルス、トガウイルス、オルトミクソウイルス、レトロウイルス、ヘパドナウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、またはE型肝炎ウイルスである。
【0060】
いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、自己抗原である。いくつかの実施形態では、自己抗原は、タンパク質もしくはペプチド、リポタンパク質、脂質、炭水化物、または核酸である。いくつかの実施形態では、自己抗原は、酵素、構造タンパク質、分泌タンパク質、細胞表面受容体、またはサイトカインである。いくつかの実施形態では、サイトカインは、TNF、IL−1、またはIL−6である。いくつかの実施形態では、自己抗原は、コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)、アルツハイマー病と関連するAβタンパク質、Aβタンパク質の病理学的形態を処理するタンパク質分解酵素、アテローム性動脈硬化症と関連するLDL、またはHIV−1に対する共受容体である。いくつかの実施形態では、Aβタンパク質の病理学的形態を処理するタンパク質分解酵素は、ベータセクレターゼである。いくつかの実施形態では、アテローム性動脈硬化症と関連するLDLは、酸化されるまたは最小限に改変される。いくつかの実施形態では、HIV−1に対する共受容体は、CCR5である。いくつかの実施形態では、自己抗原は、自己免疫疾患抗原である。
【0061】
いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、変性疾患抗原、感染症抗原、癌抗原、アトピー性疾患抗原、自己免疫疾患抗原、または代謝性疾患酵素もしくはその酵素産物である。
【0062】
いくつかの実施形態では、抗原は、癌抗原である。いくつかの実施形態では、癌抗原は、メラン−A/MART−1、ジペプチジルペプチダーゼ−IV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、サイクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)−C017−1A/GA733、癌胎児性抗原(CEA)ならびにその免疫原性エピトープCAP−1およびCAP−2、etv6、aml1、前立腺特異抗原(PSA)ならびにその免疫原性エピトープPSA−1、PSA−2、およびPSA−3、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、T細胞受容体/CD3ゼータ鎖、腫瘍抗原のMAGEファミリー(例えばMAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A5、MAGE−A6、MAGE−A7、MAGE−A8、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A11、MAGE−A12、MAGE−Xp2(MAGE−B2)、MAGE−Xp3(MAGE−B3)、MAGE−Xp4(MAGE−B4)、MAGE−C1、MAGE−C2、MAGE−C3、MAGE−C4、MAGE−C5)、腫瘍抗原のGAGEファミリー(例えばGAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE−5、GAGE−6、GAGE−7、GAGE−8、GAGE−9)、BAGE、RAGE、LAGE−1、NAG、GnT−V、MUM−1、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUCファミリー、HER2/neu、p21ras、RCAS1、α−フェトプロテイン、E−カドヘリン、α−カテニン、β−カテニン、およびγ−カテニン、p120ctn、gp100
Pmel117、PRAME、NY−ESO−1、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX−1、SSX−2(HOM−MEL−40)、SSX−1、SSX−4、SSX−5、SCP−1、CT−7、cdc27、大腸腺腫性ポリポーシスタンパク質(APC)、フォドリン、P1A、コネキシン37、Igイディオタイプ、p15、gp75、GM2およびGD2ガングリオシド、ヒトパピローマウイルスタンパク質などのようなウイルス産物、腫瘍抗原のSmadファミリー、lmp−1、EBVコード核抗原(EBNA)−1、またはc−erbB−2である。
【0063】
いくつかの実施形態では、感染症抗原は、ウイルス抗原である。いくつかの実施形態では、ウイルス抗原は、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、デング熱ウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、麻疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン−バーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、ムンプスを引き起こすウイルス、狂犬病を引き起こすウイルス、レオウイルス、風疹ウイルス、トガウイルス、オルトミクソウイルス、レトロウイルス、ヘパドナウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、またはE型肝炎ウイルス由来の抗原である。
【0064】
いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、低免疫原性抗原である。いくつかの実施形態では、低免疫原性抗原は、非タンパク質抗原である。いくつかの実施形態では、低免疫原性抗原は、炭水化物または小分子である。いくつかの実施形態では、低免疫原性抗原は、乱用物質、依存性物質、または毒素である。いくつかの実施形態では、毒素は、化学兵器由来のものである。いくつかの実施形態では、低免疫原性抗原は、危険な環境因子である。いくつかの実施形態では、低免疫原性抗原は、自己抗原である。
【0065】
一般に、T細胞抗原は、タンパク質またはペプチドである。いくつかの実施形態では、T細胞抗原は、変性疾患抗原、感染症抗原、癌抗原、アトピー性疾患抗原、自己免疫疾患抗原、同種抗原、異種抗原、接触感作性物質(contact sensitizer)、ハプテン、または代謝性疾患酵素もしくは代謝性疾患酵素産物である。
【0066】
いくつかの実施形態では、T細胞抗原は、感染病原体由来のものである。いくつかの実施形態では、感染病原体は、細菌、真菌、ウイルス、原虫、または寄生虫である。いくつかの実施形態では、感染症抗原は、ウイルス抗原である。いくつかの実施形態では、ウイルス抗原は、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、デング熱ウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、麻疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン−バーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、ムンプスを引き起こすウイルス、狂犬病を引き起こすウイルス、レオウイルス、風疹ウイルス、トガウイルス、オルトミクソウイルス、レトロウイルス、ヘパドナウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、またはE型肝炎ウイルス由来の抗原である。
【0067】
いくつかの実施形態では、T細胞抗原は、万能なT細胞抗原である。いくつかの実施形態では、万能なT細胞抗原は、破傷風トキソイド、エプスタイン−バーウイルス、またはインフルエンザウイルスに由来する1つまたは複数のペプチドである。
【0068】
いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、インターロイキン、インターフェロン、サイトカインなどである。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、toll様受容体(TLR)アゴニスト、サイトカイン受容体アゴニスト、CD40アゴニスト、Fc受容体アゴニスト、CpG含有免疫刺激核酸、補体受容体アゴニスト、またはアジュバントである。いくつかの実施形態では、TLRアゴニストは、TLR−1アゴニスト、TLR−2アゴニスト、TLR−3アゴニスト、TLR−4アゴニスト、TLR−5アゴニスト、TLR−6アゴニスト、TLR−7アゴニスト、TLR−8アゴニスト、TLR−9アゴニスト、またはTLR−10アゴニストである。いくつかの実施形態では、Fc受容体アゴニストは、Fcガンマ受容体アゴニストである。いくつかの実施形態では、補体受容体アゴニストは、CD21またはCD35に結合する。いくつかの実施形態では、補体受容体アゴニストは、ナノキャリアの内因的な補体オプソニン化を誘導する。いくつかの実施形態では、サイトカイン受容体アゴニストは、サイトカインである。いくつかの実施形態では、サイトカイン受容体アゴニストは、小分子、抗体、融合タンパク質、またはアプタマーである。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、アジュバントである。いくつかの実施形態では、アジュバントは、サイトカイン生合成を誘導する。いくつかの実施形態では、アジュバントは、ミョウバン、MF59、R848、コレラ毒素、スクアレン、リン酸塩アジュバント、またはテトラクロロデカオキシドである。いくつかの実施形態では、アジュバントは、モノホスホリルリピドA(MPL、SmithKline Beecham);QS21を含むサポニン(SmithKline Beecham);免疫刺激オリゴヌクレオチド(例えば、Kreigら、Nature 374巻:546〜9頁、1995年によって最初に記載されたCpG免疫刺激オリゴヌクレオチド);不完全フロイントアジュバント;完全フロイントアジュバント;モンタニド;ビタミンE、ならびにスクアレンおよび/もしくはトコフェロールなどのような生分解性油、Quil A、Ribi Detox、CRL−1005、またはL−121から調製された様々な油中水型エマルジョンである。
【0069】
特定の実施形態では、免疫刺激作用物質は、Toll様受容体(TLR)に対する天然アゴニストまたは合成アゴニストであってもよい。特定の実施形態では、免疫刺激作用物質は、I型インターフェロン産生を誘導する、CpGなどのようなtoll様受容体(TLR)−7に対するリガンド;DC表面分子CD40に対するアゴニスト;DC成熟を促進する作用物質;TLR−4アゴニスト;サイトカイン;壊死細胞から放出された炎症性(proinflammatory)刺激物(例えば尿酸塩結晶);補体カスケード(例えばCD21、CD35など)の活性化成分などであってもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、細胞の表面に発現された受容体に結合する。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、可溶性受容体に結合する。いくつかの実施形態では、可溶性受容体は、補体タンパク質または既存の抗体である。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、抗原提示細胞、T細胞、またはB細胞へのナノキャリアの送達のためのものである。いくつかの実施形態では、抗原提示細胞は、マクロファージである。いくつかの実施形態では、マクロファージは、被膜下洞マクロファージである。いくつかの実施形態では、抗原提示細胞は、樹状細胞である。いくつかの実施形態では、抗原提示細胞は、濾胞樹状細胞である。
【0071】
いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、CD11b、CD169、マンノース受容体、DEC−205、CD11c、CD21/CD35、CX3CR1、またはFc受容体に結合する分子である。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、CD169、CX3CR1、またはFc受容体に結合する分子である。いくつかの実施形態では、CD169に結合する分子は、抗CD169抗体である。いくつかの実施形態では、CX3CR1に結合する分子は、CX3CL1(フラクタルカイン)である。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、免疫グロブリンのFc部分を含む。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、IgGのFc部分を含む。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンのFc部分は、免疫グロブリンのヒトFc部分である。いくつかの実施形態では、IgGのFc部分は、IgGのヒトFc部分である。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、可溶性受容体、CRFcである。いくつかの実施形態では、CRFcは、髄質のマクロファージではなく被膜下洞中のマクロファージを標的にするために使用することができる。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、1つまたは複数のアミン成分である。
【0072】
いくつかの態様では、本明細書において提供される組成物は、免疫原性のものである。
【0073】
いくつかの態様では、免疫応答を調整するのに有効な量で、本明細書において提供される組成物のいずれかを被験体に投与する工程を含む方法が、提供される。いくつかの実施形態では、組成物は、免疫応答を誘導するまたは増強するのに有効な量である。いくつかの実施形態では、組成物は、免疫応答を抑制するのに有効な量である。いくつかの実施形態では、組成物は、免疫応答を指示するまたは再指示するのに有効な量である。いくつかの実施形態では、方法は、本明細書において同定される状態の予防および/または治療のためのものである。
【0074】
いくつかの実施形態では、方法が、免疫応答を誘導するまたは増強するためのものである場合、被験体は、癌、感染症、非自己免疫代謝性疾患もしくは非自己免疫変性疾患、アトピー性疾患、または嗜癖を有するまたはそれを有するのに感受性である。いくつかの実施形態では、被験体は、毒素に曝露されたことがあるまたはそれに曝露され得る。いくつかの実施形態では、被験体は、化学兵器由来の毒素に曝露されたことがあるまたはそれに曝露され得る。いくつかの実施形態では、被験体は、危険な環境物質由来の毒素に曝露されたことがあるまたはそれに曝露され得る。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、B細胞抗原、免疫刺激作用物質、および万能なT細胞抗原などのようなT細胞抗原を含む。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、ターゲティング成分をさらに含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、方法が、嗜癖を治療もしくは予防するための(または毒素に曝露されたもしくはそれに曝露され得る被験体を治療するための)ものである場合、ナノキャリアは、依存性物質もしくは毒素、アジュバント、およびT細胞を含む。いくつかの実施形態では、方法は、原因となる作用物質がそのエフェクター部位(例えば脳)に達する前に、それに結合し、中和する高い力価の抗体を産生する。いくつかの実施形態では、依存性物質または毒素は、ナノキャリアの表面に高密度で存在する。
【0076】
いくつかの実施形態では、感染症は、慢性ウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、慢性ウイルス感染症は、HIV感染症、HPV感染症、HBV感染症、またはHCV感染症である。いくつかの実施形態では、感染症は、細菌感染症であるまたはそれによって引き起こされる。いくつかの実施形態では、被験体は、シュードモナス感染症、肺炎球菌感染症、結核症、マラリア、リーシュマニア症、H.pylori、ブドウ球菌感染症、またはサルモネラ感染症を有するまたはそれを有するのに感受性である。いくつかの実施形態では、感染症は、真菌感染症であるまたはそれによって引き起こされる。いくつかの実施形態では、感染症は、寄生虫感染症であるまたはそれによって引き起こされる。いくつかの実施形態では、感染症は、原虫感染症であるまたはそれによって引き起こされる。いくつかの実施形態では、被験体は、インフルエンザを有するまたはそれを有するのに感受性である。
【0077】
いくつかの実施形態では、自己免疫疾患は、狼瘡、多発性硬化症、関節リウマチ、I型糖尿病、炎症性腸疾患、甲状腺炎、またはセリアック病である。いくつかの実施形態では、被験体は、移植を受けたことがありまたはそれを受ける予定であり、方法は、移植拒絶反応を予防するまたは改善させることができる。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、抗原および免疫抑制薬または調節性T細胞を誘導する作用物質を含む。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、ターゲティング成分をさらに含む。一般に、方法が、免疫応答を抑制するためのものである場合、抗原は、アジュバントの非存在下において提供される。
【0078】
いくつかの態様では、免疫系の細胞への免疫調節作用物質の送達のためのワクチンナノキャリアが、提供される。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、B細胞においておよび/またはT細胞において免疫応答を誘導することができる少なくとも1つの免疫調節作用物質を含む。ある実施形態では、ナノキャリア表面に提示された免疫調節作用物質は、B細胞を刺激し、ナノキャリア内に封入された免疫調節作用物質は、処理され、T細胞に提示される。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、特異的な抗原提示細胞(APC)へのワクチンナノキャリアの選択的な送達に有用な少なくとも1つのターゲティング成分を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は、単離および/または組換えタンパク質またはペプチド、炭水化物、糖タンパク質、糖ペプチド、プロテオグリカン、不活化生物および不活化ウイルス、死んだ生物および死んだウイルス、遺伝子改変生物または遺伝子改変ウイルス、ならびに細胞抽出液を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は、核酸、炭水化物、脂質、および/または小分子を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は、免疫応答を引き出すものである。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は、抗原である。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は、ワクチンに使用される。
【0080】
いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は、任意のタンパク質および/または病原体に由来する他の抗原である。病原体は、ウイルス、細菌、真菌、原虫、寄生虫などであってもよい。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は、死滅した生物全体、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、糖ペプチド、プロテオグリカン、炭水化物、またはその組み合わせの形態をしていてもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアの免疫調節作用物質はすべて、互いに同一である。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアの免疫調節作用物質はすべて、異なる。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、正確に1つの異なるタイプ(つまり種)の免疫調節作用物質を含む。例えば、免疫調節作用物質が抗原である場合、ワクチンナノキャリア中にある抗原はすべて同じである。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、正確に2つの異なるタイプの免疫調節作用物質を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、2つを超える異なるタイプの免疫調節作用物質を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、B細胞において免疫応答を刺激する単一のタイプの免疫調節作用物質を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、T細胞において免疫応答を刺激する単一のタイプの免疫調節作用物質を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、2つのタイプの免疫調節作用物質を含み、第1の免疫調節作用物質は、B細胞を刺激し、第2の免疫調節作用物質は、T細胞を刺激する。ある実施形態では、上記の作用物質のいずれも、B細胞およびT細胞の両方を刺激することができるが、これは、必ずしもそうではない。ある実施形態では、上記の免疫調節作用物質は、B細胞またはT細胞のみをそれぞれ刺激する。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、2つを超えるタイプの免疫調節作用物質を含み、1つまたは複数のタイプの免疫調節作用物質は、B細胞を刺激し、1つまたは複数のタイプの免疫調節作用物質は、T細胞を刺激する。
【0083】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、脂質膜(例えば脂質二重層、脂質単層など)を含む。少なくとも1つの免疫調節作用物質は、脂質膜と結合していてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫調節作用物質は、脂質膜内に埋め込まれている、脂質二重層の内腔内に埋め込まれている、脂質膜の内面と結合している、および/またはワクチンナノキャリアの脂質膜により封入されている。
【0084】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、ポリマー(例えばポリマーのコア)を含む。免疫調節作用物質は、ポリマーと結合していてもよく、いくつかの実施形態では、少なくとも1つのタイプの免疫調節作用物質は、ポリマーと結合している。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は、ポリマー内に埋め込まれており、ポリマーの内面と結合しており、および/またはワクチンナノキャリアのポリマー内に封入されており、いくつかの実施形態では、少なくとも1つのタイプの免疫調節作用物質は、ポリマー内に埋め込まれている、ポリマーの内面と結合している、および/またはワクチンナノキャリアのポリマー内に封入されている。
【0085】
いくつかの実施形態では、本発明のワクチンナノキャリアは、90重量%未満、75重量%未満、50重量%未満、40重量%未満、30重量%未満、20重量%未満、15重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、1重量%未満、または0.5重量%未満の免疫調節作用物質を含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、免疫特徴表面と結合した複数の成分(つまり、APCへのナノキャリアのターゲティングをもたらす成分)の他に、少なくとも1つのターゲティング成分と結合している。さらなるターゲティング成分は、さらなるターゲティング成分が、典型的に、受容体への高い親和性結合をもたらす点で、免疫特徴表面に存在する複数の成分とは異なる(そのため、その代わりに、本明細書において「高親和性ターゲティング成分」と呼ばれてもよい)。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、核酸、ポリペプチド、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、プロテオグリカン、炭水化物、脂質、小分子などであってもよい。例えば、ターゲティング成分は、細胞型特異的マーカーに結合する核酸ターゲティング成分(例えばアプタマー、Spiegelmers(登録商標)など)とすることができる。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、細胞表面タンパク質、例えばDEC−205、CD169、CD11bなどに対する天然に存在するリガンドまたは合成リガンドであってもよい。ターゲティング成分の例はまた、上記に記載されるものなどのような、本明細書において他のところで提供されるものをも含む。
【0087】
本発明によれば、ターゲティング成分は、特定の器官、組織、細胞、および/または細胞下の場所と関連する1つまたは複数の「受容体」、「標的」または「マーカー」を認識する。いくつかの実施形態では、標的は、1つもしくは少数の細胞型と、1つもしくは少数の疾患と、および/または1つまたは少数の発生段階(developmental stage)と独占的にまたは主として関連するマーカーであってもよい。標的にされる細胞の例は、樹状細胞、濾胞樹状細胞、およびマクロファージなどのような抗原提示細胞(APC)を含む。マクロファージの1つの例は、被膜下洞マクロファージである。標的にされる他の細胞は、T細胞およびB細胞を含む。いくつかの実施形態では、標的は、タンパク質、炭水化物、脂質、および/または核酸を含むことができる。いくつかの実施形態では、標的は、腫瘍マーカーである。いくつかの実施形態では、標的は、APCマーカーである。ある実施形態では、標的は、T細胞マーカーである。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、二次リンパ組織または二次リンパ器官を標的にする。二次リンパ組織または二次リンパ器官は、リンパ節、脾臓、パイエル板、虫垂、または扁桃腺を含む。
【0088】
ある実施形態では、標的は、樹状細胞マーカーである。いくつかの実施形態では、DCマーカーは、DC−205、CD11c、クラスII MHC、CD80、CD86、DC−SIGN、CD11b、BDCA−1、BDCA−2、BDCA−4、Siglec−H、CX3CR1、および/またはランゲリンを含む。そのようなマーカーの例は、本明細書において他のところで提供される。
【0089】
ある実施形態では、標的は、被膜下洞マクロファージマーカーである。いくつかの実施形態では、SCS−Mphマーカーは、すべて顕著にSCS−Mph上に発現されるタンパク質であるCD169(つまりシアロアドヘシン)、CD11b(つまりCD11b/CD18、Mac−1、CR3、もしくはαMβ2インテグリン)、Fc受容体、および/またはマンノース受容体(つまり多価レクチン)を含む。そのようなマーカーの例は、本明細書において他のところで提供される。
【0090】
ある実施形態では、標的は、B細胞マーカーである。いくつかの実施形態では、B細胞マーカーは、B細胞上に発現されるタンパク質である補体受容体、CR1(つまりCD35)またはCR2(つまりCD21)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、B細胞ターゲティングは、CD19、CD20、および/またはCD22などのようなB細胞マーカーによって達成することができる。いくつかの実施形態では、B細胞ターゲティングは、CD40、CD52、CD80、CXCR5、VLA−4、クラスII MHC、表面IgMもしくは表面IgD、APRL、および/またはBAFF−RなどのようなB細胞マーカーによって達成することができる。そのようなマーカーの例は、本明細書において他のところで提供される。
【0091】
ある実施形態では、標的は、FDCマーカーである。いくつかの実施形態では、FDCマーカーは、FDC上に発現されるタンパク質である補体受容体、CR1(つまりCD35)またはCR2(つまりCD21)を含む。そのようなマーカーの例は、本明細書において他のところで提供される。
【0092】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、単一の細胞型へのワクチンナノキャリアの送達(例えばSCS−Mphのみへの送達)を指示する単一のタイプのターゲティング成分を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、複数の細胞型へのワクチンナノキャリアの送達(例えばSCS−MphおよびFDCの両方またはSCS−MphおよびDCの両方への送達)を指示する、単一のタイプのターゲティング成分を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、2つのタイプのターゲティング成分を含み、第1のタイプのターゲティング成分は、ある細胞型へのワクチンナノキャリアの送達を指示し、第2のタイプのターゲティング成分は、第2の細胞型へのワクチンナノキャリアの送達を指示する。例えば、いくつかの実施形態では、第1のタイプのターゲティング成分は、SCS−Mphへの送達を指示し、第2のタイプのターゲティング成分は、DCへの送達を指示する。他の例として、第1のタイプのターゲティング成分は、SCS−Mphへの送達を指示し、第2のタイプのターゲティング成分は、FDCへの送達を指示する。
【0093】
いくつかの実施形態では、本発明のワクチンナノキャリアは、50重量%未満、40重量%未満、30重量%未満、20重量%未満、15重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、1重量%未満、または0.5重量%未満のターゲティング成分を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、免疫応答を刺激するのを助けることができる1つまたは複数のタイプの免疫刺激作用物質を運搬し得る。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、それらの免疫刺激性能を増強するためにAPCを活性化することによって、免疫応答を高める。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、特異抗原に対するリンパ球応答を増幅することによって、免疫応答を高める。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、様々な細胞型からの、サイトカインなどのようなメディエーターの局所的な放出を誘導することによって、免疫応答を高める。
【0095】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、B細胞およびT細胞の両方を刺激する単一のタイプの免疫刺激作用物質を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、2つのタイプの免疫刺激作用物質を含み、第1のタイプの免疫刺激作用物質は、B細胞を刺激し、第2のタイプの免疫刺激作用物質は、T細胞を刺激する。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、2つを超えるタイプの免疫刺激作用物質含み、1つまたは複数のタイプの免疫刺激作用物質は、B細胞を刺激し、1つまたは複数のタイプの免疫刺激作用物質は、T細胞を刺激する。
【0096】
いくつかの実施形態では、様々なアッセイは、B細胞もしくはB細胞のグループまたはT細胞もしくはT細胞のグループにおいて免疫応答が調整されたかどうかを決定するために利用することができる。いくつかの実施形態では、アッセイは、細胞または細胞のグループが「活性化」されているかどうかを評価する。
【0097】
いくつかの実施形態では、様々なアッセイは、T細胞またはT細胞のグループにおいて免疫応答が刺激されたかどうかを決定するために利用することができる。いくつかの実施形態では、T細胞における免疫応答の刺激は、T細胞による、サイトカインの、抗原に誘導された産生を測定することによって決定することができる。いくつかの実施形態では、T細胞における免疫応答の刺激は、T細胞の、抗原に誘導された増殖を測定することによって決定することができる。いくつかの実施形態では、T細胞における免疫応答は、T細胞活性化の細胞性マーカーが、非刺激細胞と比較して異なるレベル(例えばより高いまたはより低いレベル)で発現された場合、刺激されたと決定される。
【0098】
いくつかの実施形態では、様々なアッセイは、B細胞またはB細胞のグループにおいて免疫応答が刺激されたかどうかを決定するために利用することができる。いくつかの実施形態では、B細胞における免疫応答の刺激は、抗体力価、抗体親和性、中和アッセイにおける抗体性能、クラススイッチ組換え、抗原特異的抗体の親和性成熟、記憶B細胞の発達、長期間、大量の高親和性抗体を産生することができる、長命の形質細胞の発達、胚中心反応、および/または中和アッセイにおける抗体性能を測定することによって決定することができる。
【0099】
ワクチンナノキャリアは、免疫特徴表面を含む実体(entity)である。ワクチンナノキャリアはまた、B細胞および/またはT細胞において免疫応答を刺激することができる少なくとも1つの免疫調節作用物質を含んでいてもよい。任意のワクチンナノキャリアは、本発明に従って使用することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、100ミクロン(μm)未満の最大径(例えば直径)を有する。いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは、300nm以下の最大径(例えば直径)を有する。いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは、250nm以下の最大径(例えば直径)を有する。いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは、200nm以下の最大径(例えば直径)を有する。いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは、150nm以下の最大径(例えば直径)を有する。いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは、100nm以下の最大径(例えば直径)を有する。いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは、25nm〜200nmの間の範囲の最大径を有する。いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは、20nm〜100nmの間の範囲の最大径を有する。
【0101】
様々な異なるナノキャリアは、本発明に従って使用することができる。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、球形または長球形である。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、フラットまたはプレート状である。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、立方体または立方体様である。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、卵形または楕円状である。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、円柱状、円錐状、または角錐状である。ナノキャリアは、1つまたは複数の表面を含み、1つまたは複数の表面の少なくとも1つは、免疫特徴表面を含む。ナノキャリアは、固体また中空であってもよく、1つまたは複数の層を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、それぞれの層は、他方の層(複数可)と比較して特有の組成物および特有の特性を有する。1つであるが例を挙げると、ナノキャリアは、コア/シェル構造を有していてもよく、コアは、ある層(例えばポリマーのコア)であり、シェルは、第2の層(例えば脂質二重層または単層)である。ナノキャリアは、複数の異なる層を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、ある層は、実質的に架橋されていてもよく、第2の層は、実質的に架橋されていない、などである。いくつかの実施形態では、1つ、少数、またはすべての異なる層は、1つまたは複数の免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはその組み合わせを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、ある層は、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質を含み、第2の層は、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質を含まない、などである。いくつかの実施形態では、それぞれの個々の層は、異なる免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはその組み合わせを含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、任意選択で、1つまたは複数の脂質を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、リポソームである。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、脂質二重層および/または複数の脂質二重層を含む。例えば、脂質二重層は、ナノキャリアの外面を形成してもよく、その場合には、脂質二重層シェルを含むナノキャリアは、リポソームと呼ばれてもよい。リポソームナノキャリアは、比較的成形しやすい表面を典型的に有し、ナノキャリアは、環境因子に依存して様々な形状(例えば球状、長方形、円柱状状など)をとることができる。そのため、そのようなナノキャリアの最大直径は、異なる環境において変化してもよいことが十分に理解される。典型的に、リポソームナノキャリアは、リン脂質を含む。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、脂質単層を含む。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、ミセルである。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、脂質層(例えば脂質二重層、脂質単層など)に取り囲まれたポリマーマトリックスのコアを含む。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、脂質層(例えば脂質二重層、脂質単層など)によって取り囲まれた非ポリマーのコア(例えば金属粒子、量子ドット(quantum dot)、セラミック粒子、骨片(bone particle)、ウイルス粒子など)を含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、1つまたは複数のポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスは、コーティング層(例えばリポソーム、脂質単層、ミセルなど)によって取り囲むことができる。いくつかの実施形態において、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質は、ポリマーマトリックスと結合することができる。そのような実施形態において、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質は、ナノキャリア内に有効に封入されている。しかしながら、免疫特徴表面の複数の成分(つまり、APCへのターゲティングをもたらす)は、ナノキャリアの表面にあり、表面は、外面であり、ナノキャリアを取り囲む環境に曝露されることが十分に理解される。
【0104】
いくつかの実施形態において、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質は、ナノキャリアと共有結合することができる。ここで言及される(かつより詳細に本明細書において記載される)ターゲティング成分は、例えばB細胞ターゲティング成分またはT細胞ターゲティング成分である。そのような成分は、免疫特徴表面に存在し、APCに対するナノキャリアのターゲティングをもたらす複数の成分の他にあることが十分に理解される。いくつかの実施形態では、共有結合は、リンカーによって媒介される。いくつかの実施形態において、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質は、ナノキャリアと非共有結合している。例えば、いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質は、ポリマーマトリックス、脂質膜などの内に封入されている、それによって取り囲まれている、および/またはその全体にわたって分散している。その代わりにまたはさらに、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質は、疎水的相互作用、電荷相互作用、ファンデルワールス力などによってポリマーマトリックス、脂質膜などと結合し得る。
【0105】
種々様々のポリマーおよびそれからポリマーマトリックスを形成するための方法は、薬剤送達の技術分野において公知である。一般に、ポリマーマトリックスは、1つまたは複数のポリマーを含む。任意のポリマーは、本発明に従って使用されてもよい。ポリマーは、天然ポリマーまたは非天然(合成)ポリマーであってもよい。ポリマーは、2つ以上の単量体を含むホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。配列に関して、コポリマーは、ランダム、ブロックであってもよい、またはランダム配列およびブロック配列の組み合わせを含む。本発明に従うポリマーは、有機ポリマーであってもよい。いくつかの実施形態では、ポリマーは、樹状ポリマーまたはポリマーのブレンドである。
【0106】
ポリマーの例は、ポリエチレン、ポリカーボネート(例えばポリ(1,3−ジオキサン−2オン))、ポリ無水物(例えばポリ(セバシン酸無水物))、ポリヒドロキシ酸(例えばポリ(β−ヒドロキシアルカノエート))、ポリプロピルフメレート、ポリカプロラクトン、ポリアミド(例えばポリカプロラクタム)、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル(例えばポリラクチド、ポリグリコリド)、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ尿素、ポリスチレン、およびポリアミンを含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、逆ミセル内に埋め込まれた免疫調節作用物質を含む。1つであるが例を挙げると、リポソームナノキャリアは、リポソーム膜内に埋め込まれた疎水性免疫調節作用物質およびリポソームナノキャリアの内部に見つけられる逆ミセルにより埋め込まれた親水性免疫調節作用物質を含んでいてもよい。
【0108】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、ポリマー成分を含まない。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子、骨片、ウイルス粒子などを含む。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質は、そのような非ポリマーナノキャリアの表面と結合している。いくつかの実施形態では、非ポリマーナノキャリアは、金属原子(例えば金原子)の集合体などのような、非ポリマー成分の集合体(aggregate)である。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質は、非ポリマー成分の集合体の表面と結合している、その内に封入されている、それによって取り囲まれている、および/またはその全体にわたって分散している。
【0109】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、任意選択で、1つまたは複数の両親媒性物質(amphiphilic entity)(つまり親水性および疎水性の特性の両方を有する実体)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、両親媒性物質は、増加した安定性、改善された均一性、または増加した粘性を有するナノキャリアの産生を促進することができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、ナノキャリアの外面と結合しているおよび/またはその内に封入されている1つまたは複数のナノ粒子を含む。
【0111】
ナノキャリアは、当技術分野において公知の任意の方法を使用して調製されてもよい。例えば、粒子状ナノキャリア製剤は、ナノ析出、流体チャネルを使用するフローフォーカシング(flow focusing)、噴霧乾燥、単一および二重乳化溶媒蒸発、溶媒抽出、相分離、ミリング、マイクロエマルジョン法、ナノ印刷、マイクロ加工(microfabrication)、ナノ加工、犠牲層(sacrificial layer)、単純コアセルベーションおよび複合コアセルベーション、ならびに当業者に周知の他の方法などのような方法によって形成することができる。その代わりにまたはさらに、単分散半導体ナノ粒子、伝導性ナノ粒子、磁性ナノ粒子、有機ナノ粒子、および他のナノ粒子についての水性溶媒合成および有機溶媒合成が、利用されてもよい。
【0112】
いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質は、ナノキャリアと共有結合していない。例えば、ナノキャリアは、ポリマーマトリックスを含んでいてもよく、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質などは、本発明のナノキャリアのポリマーマトリックスの表面と結合している、その内に封入されている、および/またはその全体にわたって分散している。免疫調節作用物質は、ナノキャリアの拡散、分解、および/またはその組み合わせによって放出されてもよい。いくつかの実施形態では、ナノキャリアのポリマー(複数可)は、バルク浸食(bulk erosion)によって分解する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアのポリマー(複数可)は表面浸食によって分解する。
【0113】
いくつかの実施形態では、免疫特徴成分、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質は、粒子と共有結合している。いくつかの実施形態では、共有結合は、1つまたは複数のリンカーによって媒介される。任意の適したリンカーは、本発明に従って使用することができる。いくつかの実施形態では、リンカーは、切断可能なリンカー(例えばエステル結合、アミド結合、ジスルフィド結合など)である。
【0114】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、自己組織化によって作製される。例として、脂質は、親油性免疫調節作用物質と混合され、次いで、固体表面で薄いフィルムを形成する。親水性免疫調節作用物質は、ボルテックス下で脂質を加水分解するためにその脂質フィルムに加えられる水溶液中に溶解される。二重層壁の中に組み込まれた親油性免疫調節作用物質およびリポソーム内腔の内部の親水性免疫調節作用物質を有するリポソームが、自然に組織化される。ある実施形態では、あらかじめ処方されたポリマーナノ粒子は、ポリマーナノ粒子表面へのリポソーム融合を誘導するために、緩やかなボルテックス下で小さなリポソームと混合される。
【0115】
他の例として、封入されることとなる親水性免疫調節作用物質は、揮発性水混和性有機溶媒中で天然由来の無毒性両親媒性物質と混合することによって、逆ミセルの中に最初に組み込まれる。いくつかの実施形態では、逆ミセル形成が完了した後、生分解性ポリマーが加えられる。結果として生じる生分解性ポリマー−逆ミセル混合物は、ポリマー不溶性親水性非溶媒と組み合わせられ、非溶媒への溶媒の急速な拡散および有機溶媒の蒸発によってナノ粒子が形成される。
【0116】
いくつかの実施形態では、脂質単層により安定化されたポリマーナノキャリアは、1つまたは複数の免疫調節作用物質を送達するために使用される。ある実施形態では、親水性免疫調節分子は、最初に、化学的に、脂質の極性頭部にコンジュゲートされる。コンジュゲートは、1つまたは複数の水混和性溶媒を含有する水溶液中で、ある比率の非コンジュゲート脂質分子と混合される。生分解性ポリマー材料は、水混和性または部分的に水混和性の有機溶媒中に封入されるように、疎水性免疫調節作用物質と混合される。結果として生じるポリマー溶液は、コンジュゲート脂質および非コンジュゲート脂質の水溶液に加えられ、水への有機溶媒の急速な拡散および有機溶媒の蒸発によってナノ粒子が得られる。
【0117】
本明細書において記載される組成物および方法は、様々な感染症、障害、および/または状態の予防および/または治療に使用することができる。他の疾患、障害、および/または状態の例は、本明細書において他のところで提供される。いくつかの実施形態では、本発明に従うワクチンナノキャリアは、疾患、障害、および/または状態の1つまたは複数の症状または特徴を治療する、緩和する、改善させる、軽減する、その発症を遅らせる、その進行を阻害する、その重症度を低下させる、および/またはその発生率を低下させるために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、本発明のワクチンナノキャリアは、微生物感染症(例えば細菌感染症、真菌感染症、ウイルス感染症、寄生虫感染症など)の1つまたは複数の症状または特徴を治療する、緩和する、改善させる、軽減する、その発症を遅らせる、その進行を阻害する、その重症度を低下させる、および/またはその発生率を低下させるために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、微生物感染症の予防および/または治療は、所望の結果を達成するのに必要である量および時間で、治療有効量の本発明のワクチンナノキャリアを、その必要のある被験体に投与する工程を含む。本発明のある実施形態では、本発明のワクチンナノキャリアの「治療有効量」は、本明細書において提供される疾患、障害、および/または状態の1つまたは複数の症状または特徴を治療する、緩和する、改善させる、軽減する、その発症を遅らせる、その進行を阻害する、その重症度を低下させる、および/またはその発生率を低下させるのに有効な量である。
【0118】
いくつかの実施形態では、本発明の予防的なおよび/または治療上のプロトコールは、免疫応答が調整される(例えば、T細胞および/またはB細胞の両方において刺激される)ように、治療有効量の1つまたは複数の本発明のワクチンナノキャリアを被験体に投与する工程を含む。
【0119】
本発明は、治療有効量の1つまたは複数のワクチンナノキャリアおよび1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む新規な組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書において記載される本発明のワクチンナノキャリアを含む薬学的組成物を提供する。組成物は、1つを超えるタイプのナノキャリアを含んでいてもよく、それぞれのタイプは、異なる構成物(例えば免疫調節作用物質、ターゲティング作用物質、免疫刺激作用物質、賦形剤など)を有する。いくつかの実施形態に従って、本発明の組成物を含む薬学的組成物を、その必要のある被験体(例えばヒト)に投与するための方法が提供される。
【0120】
いくつかの実施形態では、治療有効量の本発明のワクチンナノキャリア組成物は、疾患、障害、および/または状態の診断前に、それと同時に、および/またはその後に、患者および/または動物に送達される。いくつかの実施形態では、治療量の本発明のワクチンナノキャリア組成物は、疾患、障害、および/または状態の症状の発症前に、それと同時に、および/またはその後に、患者および/または動物に送達される。ある実施形態では、治療量の本発明のワクチンナノキャリア組成物は、感染病原体への曝露前に患者および/または動物に投与される。ある実施形態では、治療量の本発明のワクチンナノキャリア組成物は、感染病原体への曝露後に患者および/または動物に投与される。ある実施形態では、治療量の本発明のワクチンナノキャリア組成物は、依存性物質または毒素への曝露前に患者および/または動物に投与される。ある実施形態では、治療量の本発明のワクチンナノキャリア組成物は、依存性物質または毒素への曝露後に患者および/または動物に投与される。
【0121】
いくつかの実施形態では、本発明の薬学的組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内(intrathecal)、皮下、脳室内、経皮的、皮内、直腸、膣内、腹腔内、局部(散剤、軟膏剤、クリーム剤、および/もしくは滴剤によってのように)、経皮的、粘膜、経鼻、頬側、経腸、舌下を含む様々なルートによって;気管内滴注(intratracheal instillation)、気管支滴注(bronchial instillation)、および/もしくは吸入によって;ならびに/または経口噴霧、鼻内噴霧、および/もしくはエアロゾルとして投与される。ある実施形態では、組成物は、経口的に投与される。ある実施形態では、組成物は、非経口的に投与される。ある実施形態では、組成物は、筋肉内注射を介して投与される。
【0122】
ある実施形態では、疾患、障害、および/または状態(例えば特定の微生物感染症)の発症および/または進行を遅らせるワクチンナノキャリアは、疾患、障害、および/または状態の症状を治療する、1つまたは複数のさらなる治療剤と組み合わせて投与されてもよい。例えば、ワクチンナノキャリアは、抗癌剤、抗炎症剤、抗生物質、または抗ウイルス剤の使用と組み合わせられてもよい。
【0123】
本発明は、1つまたは複数の本発明のナノキャリアを含む様々なキットを提供する。例えば、本発明は、本発明のナノキャリアおよび使用のための説明書を含むキットを提供する。キットは、複数の異なるナノキャリアを含んでいてもよい。キットは、任意の組み合わせで、いくつかのさらなる成分または試薬のいずれかを含んでいてもよい。本発明のある実施形態によれば、キットは、例えば、(i)T細胞および/もしくはB細胞の応答の両方を刺激することができる少なくとも1つの免疫調節作用物質を含むナノキャリア、少なくとも1つのターゲティング成分、ならびに/または少なくとも1つの免疫刺激作用物質;(ii)その必要のある被験体にナノキャリアを投与するための説明書を含んでいてもよい。ある実施形態では、キットは、例えば、(i)T細胞およびB細胞の応答の両方を刺激することができる少なくとも1つの免疫調節作用物質;(ii)少なくとも1つのターゲティング成分;(iii)少なくとも1つの免疫刺激作用物質;(iv)ポリマーマトリックス前駆体;(v)脂質および両親媒性物質;(vi)個々の成分(i)〜(v)から本発明のワクチンナノキャリアを調製するための説明書を含んでいてもよい。
【0124】
いくつかの実施形態では、キットは、本発明のナノキャリアおよび混合のための説明書を含む。そのようなキットはまた、いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質および/または抗原をも含む。そのようなキットのナノキャリアは、免疫調節作用物質(例えば万能なT細胞抗原などのようなT細胞抗原)および/またはターゲティング成分を含んでいてもよい。T細胞抗原および/またはターゲティング成分は、ナノキャリアの表面にあってもよい。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質および抗原は同じである。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質および抗原は異なる。
【0125】
いくつかの実施形態では、本発明は、(1)少なくとも1つの表面を有する合成ナノキャリアであって、その第1の表面が免疫特徴表面を含む合成ナノキャリアおよび、(2)薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を提供する。
【0126】
いくつかの実施形態では、本発明は、(1)少なくとも1つの表面を有する合成ナノキャリアであって、その第1の表面が免疫特徴表面を含む合成ナノキャリアおよび、(2)薬学的に許容される賦形剤を含む組成物の少なくとも1回の用量を被験体に投与する工程を含む方法を提供する。
【0127】
いくつかの実施形態では、本発明は、(1)(a)合成ナノキャリアの第1の表面が免疫特徴表面を含む少なくとも1つの表面、および(b)(i)上記免疫特徴表面上にある抗原、(ii)上記ナノキャリアの第2の表面上にある抗原、または(iii)上記ナノキャリアのコア領域内に封入されている抗原を含む合成ナノキャリア、および(2)薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を提供する。
【0128】
いくつかの実施形態では、本発明は、被膜下洞マクロファージによる抗原の取り込みを増加させるための方法を提供する。この方法は、(1)(a)合成ナノキャリアの第1の表面が免疫特徴表面を含む少なくとも1つの表面、(b)(i)上記免疫特徴表面上にある、(ii)上記ナノキャリアの第2の表面上にある、または(iii)上記ナノキャリアのコア領域内に封入されている抗原を含む合成ナノキャリア、および(2)薬学的に許容される賦形剤を含む組成物をその必要のある被験体に投与する工程を含む。
【0129】
先のもののいくつかの実施形態では、免疫特徴表面は、抗原提示細胞への免疫特徴表面の低い親和性および高いアビディティ(avidity)の結合を提供するのに有効な量で存在する複数の成分を含む。
【0130】
さらに詳細に下記に議論されるように、本明細書において提示されたデータは、本明細書において他のところで定義される免疫特徴表面を組み込む合成ナノキャリアを産生することができるという証拠を提供する。被膜下洞マクロファージ(SCS−Mph)および樹状細胞(DC)に対する合成ナノキャリアの免疫特徴表面誘導ターゲティングについての証拠は、マウスの足蹠に蛍光性合成ナノキャリアを注射し、流入領域リンパ節における合成ナノキャリア分布およびプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)との結合について続いて分析することによって実証された。たとえば、下記により詳細に記載されるように、
図27は、アミン改変合成ナノキャリアが、SCS−Mphを、カルボキシレート改変合成ナノキャリアよりも効率的に標的にすることを実証する。したがって、アミン改変は、免疫特徴表面の一実施形態をもたらす。
図38および40は、ニコチンを含む免疫特徴表面がSCS−MphおよびDCの両方に対するターゲティングを与えることを実証する。さらに、SCS−Mphへの合成ナノキャリア蓄積の増強を媒介する免疫特徴表面の例が、
図41において提供される。
【0131】
下記に記載されるように、
図39は、ニコチン免疫特徴表面が低い親和性/高いアビディティの相互作用によってAPCと相互作用することを実証する。マイクロタイタープレートを、ニコチン(ニコチン−PEG−PLAを使用)またはDCに特異的に発現される糖タンパク質(glycoportein)であるCD11cに対する高親和性MAbのいずれかを用いて広範囲の濃度でコートした表面とした。パネルAは、高親和性MAbが、マイクロタイタープレートに加えられた懸濁DCに効率的に結合し、それを固定することを示す。対照的に、ニコチン免疫特徴表面をコートしたプレートは、同一のアッセイ条件下で効率的なDC結合を媒介したMAb密度よりも少なくとも3桁大きな最も高い達成可能なニコチン密度(10
15分子/cm
2)でさえ、非コート対照表面と比較した場合、DCを効率的に捕捉しなかった。これは、用いたアッセイ条件で、マウスDCに対するニコチン免疫特徴表面の親和性が低すぎたので、プレートの軽い洗浄に際してDCの脱離に抵抗するのに十分な機械的強度でDC結合を可能にすることができなかったことを実証する。それにもかかわらず、本明細書において提示されるin vivoにおけるターゲティング結果に基づいて、ニコチン免疫特徴表面は、ニコチン免疫特徴表面を有する合成ナノキャリアの脱離に抵抗するのに十分に高いアビディティでAPCに結合することができると結論付けることは合理的である。他のメカニズムが働き得るが、2つのアッセイの間の差異は、in vivoアッセイの間にニコチン−APC結合に作用する力が、in vitroアッセイにおいてプレート洗浄の間にDCが受ける力よりもはるかに低いものであり得るという情況によって説明されてもよい。
【0132】
図36における実験は、ニコチンを含む免疫特徴表面などのような免疫特徴表面を含む合成ナノキャリアが、アジュバントおよびタンパク質ベースの抗原をAPCに効率的に送達し、強力なヘルパーT細胞(T helper cell)活性化をもたらすことをさらに実証する。これは、R848およびOVAの両方を組み込むPLA−PEG−ニコチン合成ナノキャリアを用いる免疫に際して、抗ニコチンIgG力価が、OT−II細胞を受けなかったマウスと比較して、ナイーブOT−II(つまりOVA特異的)ヘルパーT細胞を受けたマウスにおいて約10倍増強されたという事実によって証拠づけられる。この効果は、免疫特徴改変合成ナノキャリア内に含有されていたアジュバント(R848)およびT細胞抗原(OVA)が、T細胞にOVAを提示するDCを効率的に標的にしたことを示す。OT−II細胞を受けた動物におけるOVA特異的T細胞のより高い有用性により、B細胞による抗ニコチン抗体の産生を引き続いて高めるヘルパー応答の増強がもたらされた。したがって、APCに対するその結合親和性が低すぎるために、in vitro捕捉アッセイによって検出可能とすることができない場合でさえ、上記の基準に従って免疫特徴表面を形成することができる成分は、合成ナノキャリアの免疫原性を高めることができる。
【0133】
上記に記載される先の実施形態のいずれにおいても、コンジュゲートされるという用語は、文脈が他に明白に示さない限り、共有結合または非共有結合でコンジュゲートされることを意味する。上記に記載される先の実施形態のいずれにおいても、封入されるという用語は、混合によって、コアを取り囲むシェルによって、ナノキャリアの表面の内部の共有結合などによって、物理的に内に捕捉されることを意味する。
【0134】
本出願は、すべて、参照によって本明細書において組み込まれる、様々な発行された特許、公開された特許出願、学術論文、および他の刊行物を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【
図1】
図1は、最適の体液性および細胞性免疫応答に対する混合ワクチンターゲティング戦略の図である。複合ワクチンは、内部T細胞抗原、アジュバント(非掲載)およびDC、FDCおよびSCS−Mphに対するターゲティング成分を、B細胞認識のための表面抗原と一緒に担持する。s.c.またはi.m.注射の際に、その材料は、排出リンパ管を介してリンパ節に到達し、各APCに蓄積する(明確にするために、APC特異的ターゲティング成分だけを示すが、個々のAPCは、完全な複合体を獲得している)。DCは複合体を内在化し、複合体を消化し、MHCクラスIおよびクラスII中の抗原ペプチドを、それぞれCD8およびCD4 T細胞に提示する。活性化T細胞は、細胞性免疫応答を仲介するエフェクター/メモリー(T
Eff/
Mem)細胞に分化する。T
FH細胞は、SCS−Mph上の抗原により最初に刺激され、この過程において、T
FHの再刺激のためのT細胞抗原を獲得し、プロセシングするB細胞に助けを提供する。T
FH細胞により提供された助けは、B細胞が増殖し、高親和性抗体を産生する間にGC反応を進行させる。
【
図2】
図2は、SCS−Mphが、リンパによって運ばれた(limph−borne)ウイルス粒子に結合し、それらを濾胞性B細胞に提示する図である。(A)抗CD169を用いて染色し、小麦胚芽凝集素を用いて対比染色したマウス膝窩リンパ節の皮質の免疫組織化学染色の写真である。リンパ節を、赤色蛍光水疱性口内炎ウイルス(VSV)の足蹠注射30分後に回収した。流入領域リンパ節の被膜下洞において、赤色ウイルスは、CD169
+マクロファージと排他的に共局在した。(B)VSV注射30分後のリンパ節のマクロファージ(Mph)および被膜下洞床(SCSf)の下の濾胞性B細胞(B1)が、Mphのファゴリソソーム表面および内部ならびにMphとB細胞との境界面(矢印)にVSVを示す電子顕微鏡写真である。(C)未処置マウス(B6)の足蹠へのVSV注射が、B細胞活性化の兆候である、ウイルス特異的B細胞における表面発現IgMを急速に下方制御する図である。クロドロネートリポソーム(CLL)の足蹠注射後のSCS−Mph枯渇はB細胞活性を破壊し、SCS−Mphが、B細胞に粒子状抗原を提示するために必須であることを示す。
【
図3】
図3は、膜に組み込まれた親油性免疫調節作用物質およびリポソーム内にカプセル化された親水性免疫調節作用物質を有する、例示的リポソームナノキャリアの図である。
【
図4】
図4は、膜に組み込まれた親油性免疫調節作用物質およびリポソーム内にカプセル化された親水性免疫調節性抑制作用物質を有する、例示的ナノ粒子安定化リポソームナノキャリアの図である。
【
図5】
図5は、膜に組み込まれた親油性免疫調節作用物質およびポリマーナノ粒子内にカプセル化された疎水性免疫調節性作用物質を有する、例示的リポソーム−ポリマーナノキャリアの図である。
【
図6】
図6は、膜に組み込まれた親油性免疫調節作用物質およびポリマーナノ粒子内にカプセル化された疎水性免疫調節性作用物質を有する、例示的ナノ粒子安定化リポソーム−ポリマーナノキャリアの図である。
【
図7】
図7は、膜に組み込まれた親油性免疫調節作用物質を有する逆ミセルおよび逆ミセル内にカプセル化された親水性免疫調節作用物質を含有する、例示的リポソーム−ポリマーナノキャリアの図である。
【
図8】
図8は、膜に組み込まれた親油性免疫調節作用物質を有する逆ミセルおよびリポソーム内部にカプセル化された親水性免疫調節作用物質を含有する、例示的ナノ粒子安定化リポソーム−ポリマーナノキャリアの図である。
【
図9】
図9は、脂質単層にコンジュゲートした親水性免疫調節作用物質およびポリマーコア内部にカプセル化された疎水性免疫調節作用物質を有する例示的脂質安定化ポリマーナノキャリアの図である。
【
図10】
図10は、脂質単層にコンジュゲートした親水性免疫調節作用物質を有する逆ミセルおよびポリマーコア内部にカプセル化された親水性免疫調節作用物質を含有する例示的脂質安定化ポリマーナノキャリアの図である。
【
図11-1】
図11は、SCSマクロファージによる、リンパによって運ばれたVSVの捕捉の図である。(A)膝窩LN中のVSVのMP−IVM顕微鏡写真である(数値:足蹠注射後の分;スケールバー:100μm)。(B)注射3時間後のC57BL/6→Act(EGFP)レシピエントにおけるVSVの蓄積の写真である(スケールバー:50μm)。(C)注射5分後のLNにおけるVSVの電子顕微鏡写真である。中央の顕微鏡写真を模式的に示し(左)、より高倍率(右)において示す。矢頭はVSV粒子を特定する(スケールバー:2μm)。(D)VSV−流入領域LN(30分)の共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:100μm(左)、15μm(右)。(E)野生型、C3−欠損またはCLL枯渇マウスに注射2時間後の膝窩LNにおけるVSV力価の図である。***:p<0.001(二元配置ANOVA、Bonferroniのポストテスト)。(F)DH−LMP2aマウスにおけるVSVの捕捉の図である。*:p<0.05(対応のないt検定)。(G)未処置マウスおよびCLL処置マウスにおける足蹠注射後のVSV力価の図である(2つの同様の実験のうちの1つ;n=3)。ProxLN:鼠径部、傍大動脈の(paraaortic)LN;BrachLN:上腕LN。(H)TDカニューレ挿入後のリンパ、脾臓および血液中のウイルス力価;*:p<0.05(対応のないt検定)。(E−H)中の水平バーは、平均値を意味する。
【
図11-2】
図11は、SCSマクロファージによる、リンパによって運ばれたVSVの捕捉の図である。(A)膝窩LN中のVSVのMP−IVM顕微鏡写真である(数値:足蹠注射後の分;スケールバー:100μm)。(B)注射3時間後のC57BL/6→Act(EGFP)レシピエントにおけるVSVの蓄積の写真である(スケールバー:50μm)。(C)注射5分後のLNにおけるVSVの電子顕微鏡写真である。中央の顕微鏡写真を模式的に示し(左)、より高倍率(右)において示す。矢頭はVSV粒子を特定する(スケールバー:2μm)。(D)VSV−流入領域LN(30分)の共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:100μm(左)、15μm(右)。(E)野生型、C3−欠損またはCLL枯渇マウスに注射2時間後の膝窩LNにおけるVSV力価の図である。***:p<0.001(二元配置ANOVA、Bonferroniのポストテスト)。(F)DH−LMP2aマウスにおけるVSVの捕捉の図である。*:p<0.05(対応のないt検定)。(G)未処置マウスおよびCLL処置マウスにおける足蹠注射後のVSV力価の図である(2つの同様の実験のうちの1つ;n=3)。ProxLN:鼠径部、傍大動脈の(paraaortic)LN;BrachLN:上腕LN。(H)TDカニューレ挿入後のリンパ、脾臓および血液中のウイルス力価;*:p<0.05(対応のないt検定)。(E−H)中の水平バーは、平均値を意味する。
【
図12A】
図12は、末梢LN中のCD169
+マクロファージの特徴付けの図である。(A〜C)ナイーブC57BL/6マウスのLNに由来するプールされた単核細胞の系統マーカー(lineage marker)の発現分析の図である。(A)CD169
+集団(真ん中のパネル)にゲートを設けた後で、細胞を、2種のマクロファージ関連表面マーカー、I−Ab(MHCクラスII)およびCD11b(最下段のパネル)の発現に関して分析した図である。抗CD169に関するアイソタイプ対照を用いた染色を、最上段のパネルに示す。(B)CD169
+I−Ab
+CD11b
+細胞を、CD68、F4/80、CD11cおよびGr−1の発現に関してさらに分析した図である。ゲートは、マーカーが従来のCD11c
high樹状細胞を特定するために位置付けられたCD11c染色を除く、マーカー+細胞を特定するために描かれた(重ねて記入)。数値は、ヒストグラムゲートより下のCD169
+I−Ab
+CD11b
+細胞のパーセントを示す。データは、同様の結果を有する3〜5の実験の代表的なものである。(C)パネル(B)中のデータの定量的分析の図であり、エラーバーはSEMを表す。(D〜G)CD169
+細胞における選択マーカー(矢頭)の同時発現を示す、ナイーブC57BL/6マウス由来膝窩LNの共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:左の縦列において125μmおよび他のすべての縦列において20μm。
【
図12B】
図12は、末梢LN中のCD169
+マクロファージの特徴付けの図である。(A〜C)ナイーブC57BL/6マウスのLNに由来するプールされた単核細胞の系統マーカー(lineage marker)の発現分析の図である。(A)CD169
+集団(真ん中のパネル)にゲートを設けた後で、細胞を、2種のマクロファージ関連表面マーカー、I−Ab(MHCクラスII)およびCD11b(最下段のパネル)の発現に関して分析した図である。抗CD169に関するアイソタイプ対照を用いた染色を、最上段のパネルに示す。(B)CD169
+I−Ab
+CD11b
+細胞を、CD68、F4/80、CD11cおよびGr−1の発現に関してさらに分析した図である。ゲートは、マーカーが従来のCD11c
high樹状細胞を特定するために位置付けられたCD11c染色を除く、マーカー+細胞を特定するために描かれた(重ねて記入)。数値は、ヒストグラムゲートより下のCD169
+I−Ab
+CD11b
+細胞のパーセントを示す。データは、同様の結果を有する3〜5の実験の代表的なものである。(C)パネル(B)中のデータの定量的分析の図であり、エラーバーはSEMを表す。(D〜G)CD169
+細胞における選択マーカー(矢頭)の同時発現を示す、ナイーブC57BL/6マウス由来膝窩LNの共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:左の縦列において125μmおよび他のすべての縦列において20μm。
【
図12C】
図12は、末梢LN中のCD169
+マクロファージの特徴付けの図である。(A〜C)ナイーブC57BL/6マウスのLNに由来するプールされた単核細胞の系統マーカー(lineage marker)の発現分析の図である。(A)CD169
+集団(真ん中のパネル)にゲートを設けた後で、細胞を、2種のマクロファージ関連表面マーカー、I−Ab(MHCクラスII)およびCD11b(最下段のパネル)の発現に関して分析した図である。抗CD169に関するアイソタイプ対照を用いた染色を、最上段のパネルに示す。(B)CD169
+I−Ab
+CD11b
+細胞を、CD68、F4/80、CD11cおよびGr−1の発現に関してさらに分析した図である。ゲートは、マーカーが従来のCD11c
high樹状細胞を特定するために位置付けられたCD11c染色を除く、マーカー+細胞を特定するために描かれた(重ねて記入)。数値は、ヒストグラムゲートより下のCD169
+I−Ab
+CD11b
+細胞のパーセントを示す。データは、同様の結果を有する3〜5の実験の代表的なものである。(C)パネル(B)中のデータの定量的分析の図であり、エラーバーはSEMを表す。(D〜G)CD169
+細胞における選択マーカー(矢頭)の同時発現を示す、ナイーブC57BL/6マウス由来膝窩LNの共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:左の縦列において125μmおよび他のすべての縦列において20μm。
【
図12D】
図12は、末梢LN中のCD169
+マクロファージの特徴付けの図である。(A〜C)ナイーブC57BL/6マウスのLNに由来するプールされた単核細胞の系統マーカー(lineage marker)の発現分析の図である。(A)CD169
+集団(真ん中のパネル)にゲートを設けた後で、細胞を、2種のマクロファージ関連表面マーカー、I−Ab(MHCクラスII)およびCD11b(最下段のパネル)の発現に関して分析した図である。抗CD169に関するアイソタイプ対照を用いた染色を、最上段のパネルに示す。(B)CD169
+I−Ab
+CD11b
+細胞を、CD68、F4/80、CD11cおよびGr−1の発現に関してさらに分析した図である。ゲートは、マーカーが従来のCD11c
high樹状細胞を特定するために位置付けられたCD11c染色を除く、マーカー+細胞を特定するために描かれた(重ねて記入)。数値は、ヒストグラムゲートより下のCD169
+I−Ab
+CD11b
+細胞のパーセントを示す。データは、同様の結果を有する3〜5の実験の代表的なものである。(C)パネル(B)中のデータの定量的分析の図であり、エラーバーはSEMを表す。(D〜G)CD169
+細胞における選択マーカー(矢頭)の同時発現を示す、ナイーブC57BL/6マウス由来膝窩LNの共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:左の縦列において125μmおよび他のすべての縦列において20μm。
【
図12E】
図12は、末梢LN中のCD169
+マクロファージの特徴付けの図である。(A〜C)ナイーブC57BL/6マウスのLNに由来するプールされた単核細胞の系統マーカー(lineage marker)の発現分析の図である。(A)CD169
+集団(真ん中のパネル)にゲートを設けた後で、細胞を、2種のマクロファージ関連表面マーカー、I−Ab(MHCクラスII)およびCD11b(最下段のパネル)の発現に関して分析した図である。抗CD169に関するアイソタイプ対照を用いた染色を、最上段のパネルに示す。(B)CD169
+I−Ab
+CD11b
+細胞を、CD68、F4/80、CD11cおよびGr−1の発現に関してさらに分析した図である。ゲートは、マーカーが従来のCD11c
high樹状細胞を特定するために位置付けられたCD11c染色を除く、マーカー+細胞を特定するために描かれた(重ねて記入)。数値は、ヒストグラムゲートより下のCD169
+I−Ab
+CD11b
+細胞のパーセントを示す。データは、同様の結果を有する3〜5の実験の代表的なものである。(C)パネル(B)中のデータの定量的分析の図であり、エラーバーはSEMを表す。(D〜G)CD169
+細胞における選択マーカー(矢頭)の同時発現を示す、ナイーブC57BL/6マウス由来膝窩LNの共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:左の縦列において125μmおよび他のすべての縦列において20μm。
【
図12F】
図12は、末梢LN中のCD169
+マクロファージの特徴付けの図である。(A〜C)ナイーブC57BL/6マウスのLNに由来するプールされた単核細胞の系統マーカー(lineage marker)の発現分析の図である。(A)CD169
+集団(真ん中のパネル)にゲートを設けた後で、細胞を、2種のマクロファージ関連表面マーカー、I−Ab(MHCクラスII)およびCD11b(最下段のパネル)の発現に関して分析した図である。抗CD169に関するアイソタイプ対照を用いた染色を、最上段のパネルに示す。(B)CD169
+I−Ab
+CD11b
+細胞を、CD68、F4/80、CD11cおよびGr−1の発現に関してさらに分析した図である。ゲートは、マーカーが従来のCD11c
high樹状細胞を特定するために位置付けられたCD11c染色を除く、マーカー+細胞を特定するために描かれた(重ねて記入)。数値は、ヒストグラムゲートより下のCD169
+I−Ab
+CD11b
+細胞のパーセントを示す。データは、同様の結果を有する3〜5の実験の代表的なものである。(C)パネル(B)中のデータの定量的分析の図であり、エラーバーはSEMを表す。(D〜G)CD169
+細胞における選択マーカー(矢頭)の同時発現を示す、ナイーブC57BL/6マウス由来膝窩LNの共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:左の縦列において125μmおよび他のすべての縦列において20μm。
【
図12G】
図12は、末梢LN中のCD169
+マクロファージの特徴付けの図である。(A〜C)ナイーブC57BL/6マウスのLNに由来するプールされた単核細胞の系統マーカー(lineage marker)の発現分析の図である。(A)CD169
+集団(真ん中のパネル)にゲートを設けた後で、細胞を、2種のマクロファージ関連表面マーカー、I−Ab(MHCクラスII)およびCD11b(最下段のパネル)の発現に関して分析した図である。抗CD169に関するアイソタイプ対照を用いた染色を、最上段のパネルに示す。(B)CD169
+I−Ab
+CD11b
+細胞を、CD68、F4/80、CD11cおよびGr−1の発現に関してさらに分析した図である。ゲートは、マーカーが従来のCD11c
high樹状細胞を特定するために位置付けられたCD11c染色を除く、マーカー+細胞を特定するために描かれた(重ねて記入)。数値は、ヒストグラムゲートより下のCD169
+I−Ab
+CD11b
+細胞のパーセントを示す。データは、同様の結果を有する3〜5の実験の代表的なものである。(C)パネル(B)中のデータの定量的分析の図であり、エラーバーはSEMを表す。(D〜G)CD169
+細胞における選択マーカー(矢頭)の同時発現を示す、ナイーブC57BL/6マウス由来膝窩LNの共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:左の縦列において125μmおよび他のすべての縦列において20μm。
【
図13A】
図13は、CLL処置後の膝窩LNにおける形態学的変化の図である。(A)未処置対照マウス(−CLL、左の縦列)および6〜10日前にCLLの足蹠注射を受けた動物の膝窩LN(上3段の横列)および脾臓(最下段の横列)の共焦点顕微鏡写真である。CLL処置により、LN中のCD169
+マクロファージは枯渇したが(最上段の横列)、脾臓においては枯渇せず、Lyve−1
+髄質のリンパ内皮細胞(2番目の横列)および皮質CD11c
high樹状細胞(3番目の横列)は影響を受けなかった。(B)CLL処置を受けた、または受けなかった膝窩LN中の細胞サブセットの頻度の図であり、データは、n=3のマウスから得、平均値±SEMとして表した;*:p<0.05、**:p<0.01;対応のないスチューデントt検定。(C)50μlのCLLの足蹠注射6〜10日後の膝窩LNにおける様々なI−Ab
+CD11b
+白血球サブセットの頻度の図である。個々の記号は、1匹のマウスに由来するプールされた膝窩LNを表す。膝窩LN中の全単核細胞の中のサブセット頻度は、
図12Aに示すように、I−Ab+CD11b+細胞のゲーティング後、フローサイトメトリーによって評価した。(D)処置しない(−CLL)、またはCLLの足蹠注射後7日(+CLL)の膝窩LNの免疫組織化学分析の図である。スケールバー:300mm。CLL処置7日後および20μgのVSV−INDの足蹠注射5分後の代表的膝窩LN7中SCSの超微細構造の図である。SCSマクロファージおよびウイルス粒子が全く存在しないことに留意されたい。スケールバー:2μm。
【
図13B】
図13は、CLL処置後の膝窩LNにおける形態学的変化の図である。(A)未処置対照マウス(−CLL、左の縦列)および6〜10日前にCLLの足蹠注射を受けた動物の膝窩LN(上3段の横列)および脾臓(最下段の横列)の共焦点顕微鏡写真である。CLL処置により、LN中のCD169
+マクロファージは枯渇したが(最上段の横列)、脾臓においては枯渇せず、Lyve−1
+髄質のリンパ内皮細胞(2番目の横列)および皮質CD11c
high樹状細胞(3番目の横列)は影響を受けなかった。(B)CLL処置を受けた、または受けなかった膝窩LN中の細胞サブセットの頻度の図であり、データは、n=3のマウスから得、平均値±SEMとして表した;*:p<0.05、**:p<0.01;対応のないスチューデントt検定。(C)50μlのCLLの足蹠注射6〜10日後の膝窩LNにおける様々なI−Ab
+CD11b
+白血球サブセットの頻度の図である。個々の記号は、1匹のマウスに由来するプールされた膝窩LNを表す。膝窩LN中の全単核細胞の中のサブセット頻度は、
図12Aに示すように、I−Ab+CD11b+細胞のゲーティング後、フローサイトメトリーによって評価した。(D)処置しない(−CLL)、またはCLLの足蹠注射後7日(+CLL)の膝窩LNの免疫組織化学分析の図である。スケールバー:300mm。(E)CLL処置7日後および20μgのVSV−INDの足蹠注射5分後の代表的膝窩LN7中SCSの超微細構造の図である。SCSマクロファージおよびウイルス粒子が全く存在しないことに留意されたい。スケールバー:2μm。
【
図13C】
図13は、CLL処置後の膝窩LNにおける形態学的変化の図である。(A)未処置対照マウス(−CLL、左の縦列)および6〜10日前にCLLの足蹠注射を受けた動物の膝窩LN(上3段の横列)および脾臓(最下段の横列)の共焦点顕微鏡写真である。CLL処置により、LN中のCD169
+マクロファージは枯渇したが(最上段の横列)、脾臓においては枯渇せず、Lyve−1
+髄質のリンパ内皮細胞(2番目の横列)および皮質CD11c
high樹状細胞(3番目の横列)は影響を受けなかった。(B)CLL処置を受けた、または受けなかった膝窩LN中の細胞サブセットの頻度の図であり、データは、n=3のマウスから得、平均値±SEMとして表した;*:p<0.05、**:p<0.01;対応のないスチューデントt検定。(C)50μlのCLLの足蹠注射6〜10日後の膝窩LNにおける様々なI−Ab
+CD11b
+白血球サブセットの頻度の図である。個々の記号は、1匹のマウスに由来するプールされた膝窩LNを表す。膝窩LN中の全単核細胞の中のサブセット頻度は、
図12Aに示すように、I−Ab+CD11b+細胞のゲーティング後、フローサイトメトリーによって評価した。(D)処置しない(−CLL)、またはCLLの足蹠注射後7日(+CLL)の膝窩LNの免疫組織化学分析の図である。スケールバー:300mm。(E)CLL処置7日後および20μgのVSV−INDの足蹠注射5分後の代表的膝窩LN7中SCSの超微細構造の図である。SCSマクロファージおよびウイルス粒子が全く存在しないことに留意されたい。スケールバー:2μm。
【
図13D】
図13は、CLL処置後の膝窩LNにおける形態学的変化の図である。(A)未処置対照マウス(−CLL、左の縦列)および6〜10日前にCLLの足蹠注射を受けた動物の膝窩LN(上3段の横列)および脾臓(最下段の横列)の共焦点顕微鏡写真である。CLL処置により、LN中のCD169
+マクロファージは枯渇したが(最上段の横列)、脾臓においては枯渇せず、Lyve−1
+髄質のリンパ内皮細胞(2番目の横列)および皮質CD11c
high樹状細胞(3番目の横列)は影響を受けなかった。(B)CLL処置を受けた、または受けなかった膝窩LN中の細胞サブセットの頻度の図であり、データは、n=3のマウスから得、平均値±SEMとして表した;*:p<0.05、**:p<0.01;対応のないスチューデントt検定。(C)50μlのCLLの足蹠注射6〜10日後の膝窩LNにおける様々なI−Ab
+CD11b
+白血球サブセットの頻度の図である。個々の記号は、1匹のマウスに由来するプールされた膝窩LNを表す。膝窩LN中の全単核細胞の中のサブセット頻度は、
図12Aに示すように、I−Ab+CD11b+細胞のゲーティング後、フローサイトメトリーによって評価した。(D)処置しない(−CLL)、またはCLLの足蹠注射後7日(+CLL)の膝窩LNの免疫組織化学分析の図である。スケールバー:300mm。(E)CLL処置7日後および20μgのVSV−INDの足蹠注射5分後の代表的膝窩LN7中SCSの超微細構造の図である。SCSマクロファージおよびウイルス粒子が全く存在しないことに留意されたい。スケールバー:2μm。
【
図13E】
図13は、CLL処置後の膝窩LNにおける形態学的変化の図である。(A)未処置対照マウス(−CLL、左の縦列)および6〜10日前にCLLの足蹠注射を受けた動物の膝窩LN(上3段の横列)および脾臓(最下段の横列)の共焦点顕微鏡写真である。CLL処置により、LN中のCD169
+マクロファージは枯渇したが(最上段の横列)、脾臓においては枯渇せず、Lyve−1
+髄質のリンパ内皮細胞(2番目の横列)および皮質CD11c
high樹状細胞(3番目の横列)は影響を受けなかった。(B)CLL処置を受けた、または受けなかった膝窩LN中の細胞サブセットの頻度の図であり、データは、n=3のマウスから得、平均値±SEMとして表した;*:p<0.05、**:p<0.01;対応のないスチューデントt検定。(C)50μlのCLLの足蹠注射6〜10日後の膝窩LNにおける様々なI−Ab
+CD11b
+白血球サブセットの頻度の図である。個々の記号は、1匹のマウスに由来するプールされた膝窩LNを表す。膝窩LN中の全単核細胞の中のサブセット頻度は、
図12Aに示すように、I−Ab+CD11b+細胞のゲーティング後、フローサイトメトリーによって評価した。(D)処置しない(−CLL)、またはCLLの足蹠注射後7日(+CLL)の膝窩LNの免疫組織化学分析の図である。スケールバー:300mm。(E)CLL処置7日後および20μgのVSV−INDの足蹠注射5分後の代表的膝窩LN7中SCSの超微細構造の図である。SCSマクロファージおよびウイルス粒子が全く存在しないことに留意されたい。スケールバー:2μm。
【
図14】
図14は、膝窩LN中の蛍光ウイルスおよびラテックスナノ粒子の保有を示す図である。(A)Alexa−568標識アデノウイルス(AdV)の足蹠注射30分後の膝窩LNの共焦点顕微鏡写真である。凍結切片を、FITC−α−CD169およびAlexa−647−α−B220を用いて染色し、B細胞を同定した。スケールバー:100μm(左パネル)および15μm(右パネル)。(B)SCSマクロファージにより捕捉されたAdV粒子の透過電子顕微鏡写真である。最上段のパネルは、低倍率の外観(中央パネル)の注釈付き概略図を示す。中央パネルの四角で囲んだ部分を下のパネルに拡大し、矢頭は電子密度の高い、球状のAdV粒子を示す。スケールバー:2μm(最上段および中央のパネル)および1μm(下のパネル)。(C〜D)20μgのAlexa−568標識UV不活化AdV(C)またはVV(D)の足蹠注射30分後のC57BL/6マウスに由来する膝窩LNの共焦点顕微鏡写真である。B濾胞の上の皮質SCSに蓄積された蛍光ウイルスは、FITC−α−B220染色により特定され、ウイルスが、CD169
+マクロファージと結合するだけではなく、LYVE−1
+リンパ内皮細胞とも結合する髄質中においてもまた特定された。スケールバーは、125μm(左パネル)および25μm(右パネル)を示す。(E)Alexa−568標識VSVおよびおよそ10
11のCrimson Fluospheres(直径200nm)の後部足蹠注射30分後の膝窩LNの共焦点顕微鏡写真である。凍結LN切片を、FITC−α−CD169を用いて対比染色した。VSVとは異なり、ラテックスビーズは、流入領域LNにほとんど保有されなかったことに留意されたい。スケールバー:125μm。
【
図15】
図15は、流入領域LNにおけるVSV分布に関する、CLL足蹠注射の効果を示す図である。共焦点顕微鏡写真は、CLL処置をしなかった(A)またはCLL処置7日後(B)の膝窩LN中の蛍光VSV粒子の局在を示す。B濾胞を、FITC−α−B220染色によって同定した。髄質(四角で囲まれた部分)において、VSVは、CLL処置によって影響を受けないLYVE−1
+細胞と結合した。スケールバー:125μm(左の縦列)および25μm(右の縦列)。
【
図16】
図16は、SCSマクロファージが、濾胞性Bリンパ球に対してリンパ由来AdVを提示する図である。(A)膝窩LN中のB濾胞の上のSCS中のCD169
+マクロファージの共焦点顕微鏡写真である。凍結切片を、細胞外マトリックスを同定するために小麦胚芽凝集素(WGA)を用い、B細胞を検出するためにα−B220を用いて対比染色した。いくつかのB細胞がSCSに存在し、1つのB細胞が濾胞とSCSとの間(矢頭)を遊走するようにみえることに留意されたい。スケールバー:25μm。AdVの足蹠注射30分後の膝窩LNにおけるSCSマクロファージおよび周辺細胞の(B)電子顕微鏡写真および(C)概略図である。スケールバー:2μm。(C)で描かれた四角部分を、パネル(D)および(E)により高倍率で示す。これらのパネルは、SCSマクロファージと、B細胞との間の境界面(矢頭)にあるAdV粒子の2つの例を示す。アスタリスクは、他のマクロファージ関連AdV粒子を表す。スケールバー:500nm。
【
図17-1】
図17は、リンパによって運ばれたVSVのSCS底部を越えたマクロファージ仲介輸送が、ウイルス特異的B細胞の挙動を変化させる図である。(A)VSV注射30分後にマクロファージが膝窩LNのSCS底部を突き抜けることを示す電子顕微鏡写真および概略図(中央)である。スケールバー:10μm(左)および2μm(右)。矢印:消化されたVSVによる空胞。矢頭:マクロファージとB細胞との間の接触ゾーンにおけるビリオン。(B)膝窩LNにおけるポリクローナルのMP−IVMおよびVI10YEN B細胞の図である。スケールバー:50μm。(C)VSV注射後のVI10YEN B細胞/対照B細胞の領域比を示す図である。結果は、3動画/群からのものである。(D、E)SCSに対する膝窩LNにおけるVI10YEN B細胞の局在を示す図である。**:p<0.01(一元配置ANOVAおよびBonferroniのポストテスト)。
【
図17-2】
図17は、リンパによって運ばれたVSVのSCS底部を越えたマクロファージ仲介輸送が、ウイルス特異的B細胞の挙動を変化させる図である。(A)VSV注射30分後にマクロファージが膝窩LNのSCS底部を突き抜けることを示す電子顕微鏡写真および概略図(中央)である。スケールバー:10μm(左)および2μm(右)。矢印:消化されたVSVによる空胞。矢頭:マクロファージとB細胞との間の接触ゾーンにおけるビリオン。(B)膝窩LNにおけるポリクローナルのMP−IVMおよびVI10YEN B細胞の図である。スケールバー:50μm。(C)VSV注射後のVI10YEN B細胞/対照B細胞の領域比を示す図である。結果は、3動画/群からのものである。(D、E)SCSに対する膝窩LNにおけるVI10YEN B細胞の局在を示す図である。**:p<0.01(一元配置ANOVAおよびBonferroniのポストテスト)。
【
図17-3】
図17は、リンパによって運ばれたVSVのSCS底部を越えたマクロファージ仲介輸送が、ウイルス特異的B細胞の挙動を変化させる図である。(A)VSV注射30分後にマクロファージが膝窩LNのSCS底部を突き抜けることを示す電子顕微鏡写真および概略図(中央)である。スケールバー:10μm(左)および2μm(右)。矢印:消化されたVSVによる空胞。矢頭:マクロファージとB細胞との間の接触ゾーンにおけるビリオン。(B)膝窩LNにおけるポリクローナルのMP−IVMおよびVI10YEN B細胞の図である。スケールバー:50μm。(C)VSV注射後のVI10YEN B細胞/対照B細胞の領域比を示す図である。結果は、3動画/群からのものである。(D、E)SCSに対する膝窩LNにおけるVI10YEN B細胞の局在を示す図である。**:p<0.01(一元配置ANOVAおよびBonferroniのポストテスト)。
【
図18A】
図18は、VSV血清型およびVSV−IND特異的VI10YEN B細胞の特徴を示す図である。(A)精製VSV溶解物のSDS−PAGEゲル(12%)である。上段:VSV−INDおよびVSV−NJ。NおよびPタンパク質は、VSV−NJにおいて共移動し、およその分子量を括弧内に示す。(B)Alexa−488標識VSV−IND(中央横列)またはVSV−NJ(下段の横列)とC57BL/6マウス(左の縦列)またはVI10YENマウス(右の縦列)由来B細胞との結合を示す図である。上段の横列は、VI10YEN BCRに対する抗イディオタイプ抗体35.61を用いる対照染色(DangおよびRock、1991年、J. Immunol.、146巻:3273頁)を示す。(C)VI10YENマウス(上段横列)またはC57BL/6マウス(下段横列)由来の、精製されたCD43
negの、Fluo−LOJO負荷B細胞における細胞内カルシウム流動の図である。事象(event)を時間とともに連続的に収集し、アスタリスクは抗体またはウイルスを加えた時点を示す。ウイルス粒子は1000/B細胞、抗IgM−(Fab)
2は10μg/10
6B細胞で使用した。(D)10μgのUV−VSVまたはUV−VSV−AlexaFluor−488−INDの足蹠注射による免疫4および10日後の、C57BL/6マウスの血清中の合計IgおよびIgGに関する中和アッセイの図である。(E)VSVストック由来の上清に曝露されたVI10YEN B細胞におけるカルシウム流動の図である。上清は、ウイルス力価においておよそ10,000倍の減少をもたらすスクロースクッションを介して超遠心分離法によって生成し、未希釈(上段右)または1:100希釈(下段右)のどちらかでB細胞に使用した。対照として、VSVのストック溶液を、同等のウイルス力価に希釈した(MOI;左パネル)。結果は、本発明者らの調製品中のウイルス粒子を伴わない、抗原性VSV−Gの存在を実証する。
【
図18B】
図18は、VSV血清型およびVSV−IND特異的VI10YEN B細胞の特徴を示す図である。(A)精製VSV溶解物のSDS−PAGEゲル(12%)である。上段:VSV−INDおよびVSV−NJ。NおよびPタンパク質は、VSV−NJにおいて共移動し、およその分子量を括弧内に示す。(B)Alexa−488標識VSV−IND(中央横列)またはVSV−NJ(下段の横列)とC57BL/6マウス(左の縦列)またはVI10YENマウス(右の縦列)由来B細胞との結合を示す図である。上段の横列は、VI10YEN BCRに対する抗イディオタイプ抗体35.61を用いる対照染色(DangおよびRock、1991年、J. Immunol.、146巻:3273頁)を示す。(C)VI10YENマウス(上段横列)またはC57BL/6マウス(下段横列)由来の、精製されたCD43
negの、Fluo−LOJO負荷B細胞における細胞内カルシウム流動の図である。事象(event)を時間とともに連続的に収集し、アスタリスクは抗体またはウイルスを加えた時点を示す。ウイルス粒子は1000/B細胞、抗IgM−(Fab)
2は10μg/10
6B細胞で使用した。(D)10μgのUV−VSVまたはUV−VSV−AlexaFluor−488−INDの足蹠注射による免疫4および10日後の、C57BL/6マウスの血清中の合計IgおよびIgGに関する中和アッセイの図である。(E)VSVストック由来の上清に曝露されたVI10YEN B細胞におけるカルシウム流動の図である。上清は、ウイルス力価においておよそ10,000倍の減少をもたらすスクロースクッションを介して超遠心分離法によって生成し、未希釈(上段右)または1:100希釈(下段右)のどちらかでB細胞に使用した。対照として、VSVのストック溶液を、同等のウイルス力価に希釈した(MOI;左パネル)。結果は、本発明者らの調製品中のウイルス粒子を伴わない、抗原性VSV−Gの存在を実証する。
【
図18C】
図18は、VSV血清型およびVSV−IND特異的VI10YEN B細胞の特徴を示す図である。(A)精製VSV溶解物のSDS−PAGEゲル(12%)である。上段:VSV−INDおよびVSV−NJ。NおよびPタンパク質は、VSV−NJにおいて共移動し、およその分子量を括弧内に示す。(B)Alexa−488標識VSV−IND(中央横列)またはVSV−NJ(下段の横列)とC57BL/6マウス(左の縦列)またはVI10YENマウス(右の縦列)由来B細胞との結合を示す図である。上段の横列は、VI10YEN BCRに対する抗イディオタイプ抗体35.61を用いる対照染色(DangおよびRock、1991年、J. Immunol.、146巻:3273頁)を示す。(C)VI10YENマウス(上段横列)またはC57BL/6マウス(下段横列)由来の、精製されたCD43
negの、Fluo−LOJO負荷B細胞における細胞内カルシウム流動の図である。事象(event)を時間とともに連続的に収集し、アスタリスクは抗体またはウイルスを加えた時点を示す。ウイルス粒子は1000/B細胞、抗IgM−(Fab)
2は10μg/10
6B細胞で使用した。(D)10μgのUV−VSVまたはUV−VSV−AlexaFluor−488−INDの足蹠注射による免疫4および10日後の、C57BL/6マウスの血清中の合計IgおよびIgGに関する中和アッセイの図である。(E)VSVストック由来の上清に曝露されたVI10YEN B細胞におけるカルシウム流動の図である。上清は、ウイルス力価においておよそ10,000倍の減少をもたらすスクロースクッションを介して超遠心分離法によって生成し、未希釈(上段右)または1:100希釈(下段右)のどちらかでB細胞に使用した。対照として、VSVのストック溶液を、同等のウイルス力価に希釈した(MOI;左パネル)。結果は、本発明者らの調製品中のウイルス粒子を伴わない、抗原性VSV−Gの存在を実証する。
【
図18D】
図18は、VSV血清型およびVSV−IND特異的VI10YEN B細胞の特徴を示す図である。(A)精製VSV溶解物のSDS−PAGEゲル(12%)である。上段:VSV−INDおよびVSV−NJ。NおよびPタンパク質は、VSV−NJにおいて共移動し、およその分子量を括弧内に示す。(B)Alexa−488標識VSV−IND(中央横列)またはVSV−NJ(下段の横列)とC57BL/6マウス(左の縦列)またはVI10YENマウス(右の縦列)由来B細胞との結合を示す図である。上段の横列は、VI10YEN BCRに対する抗イディオタイプ抗体35.61を用いる対照染色(DangおよびRock、1991年、J. Immunol.、146巻:3273頁)を示す。(C)VI10YENマウス(上段横列)またはC57BL/6マウス(下段横列)由来の、精製されたCD43
negの、Fluo−LOJO負荷B細胞における細胞内カルシウム流動の図である。事象(event)を時間とともに連続的に収集し、アスタリスクは抗体またはウイルスを加えた時点を示す。ウイルス粒子は1000/B細胞、抗IgM−(Fab)
2は10μg/10
6B細胞で使用した。(D)10μgのUV−VSVまたはUV−VSV−AlexaFluor−488−INDの足蹠注射による免疫4および10日後の、C57BL/6マウスの血清中の合計IgおよびIgGに関する中和アッセイの図である。(E)VSVストック由来の上清に曝露されたVI10YEN B細胞におけるカルシウム流動の図である。上清は、ウイルス力価においておよそ10,000倍の減少をもたらすスクロースクッションを介して超遠心分離法によって生成し、未希釈(上段右)または1:100希釈(下段右)のどちらかでB細胞に使用した。対照として、VSVのストック溶液を、同等のウイルス力価に希釈した(MOI;左パネル)。結果は、本発明者らの調製品中のウイルス粒子を伴わない、抗原性VSV−Gの存在を実証する。
【
図18E】
図18は、VSV血清型およびVSV−IND特異的VI10YEN B細胞の特徴を示す図である。(A)精製VSV溶解物のSDS−PAGEゲル(12%)である。上段:VSV−INDおよびVSV−NJ。NおよびPタンパク質は、VSV−NJにおいて共移動し、およその分子量を括弧内に示す。(B)Alexa−488標識VSV−IND(中央横列)またはVSV−NJ(下段の横列)とC57BL/6マウス(左の縦列)またはVI10YENマウス(右の縦列)由来B細胞との結合を示す図である。上段の横列は、VI10YEN BCRに対する抗イディオタイプ抗体35.61を用いる対照染色(DangおよびRock、1991年、J. Immunol.、146巻:3273頁)を示す。(C)VI10YENマウス(上段横列)またはC57BL/6マウス(下段横列)由来の、精製されたCD43
negの、Fluo−LOJO負荷B細胞における細胞内カルシウム流動の図である。事象(event)を時間とともに連続的に収集し、アスタリスクは抗体またはウイルスを加えた時点を示す。ウイルス粒子は1000/B細胞、抗IgM−(Fab)
2は10μg/10
6B細胞で使用した。(D)10μgのUV−VSVまたはUV−VSV−AlexaFluor−488−INDの足蹠注射による免疫4および10日後の、C57BL/6マウスの血清中の合計IgおよびIgGに関する中和アッセイの図である。(E)VSVストック由来の上清に曝露されたVI10YEN B細胞におけるカルシウム流動の図である。上清は、ウイルス力価においておよそ10,000倍の減少をもたらすスクロースクッションを介して超遠心分離法によって生成し、未希釈(上段右)または1:100希釈(下段右)のどちらかでB細胞に使用した。対照として、VSVのストック溶液を、同等のウイルス力価に希釈した(MOI;左パネル)。結果は、本発明者らの調製品中のウイルス粒子を伴わない、抗原性VSV−Gの存在を実証する。
【
図19-1】
図19は、VI10YEN B細胞のICAM−1およびVCAM−1へのVSV誘導性接着の図である。(A、B)表示の濃度の組換えICAM−1−Fc(A)またはVCAM−1−Fc(B)を用いてコーティングしたプラスチックプレートに対する、精製ナイーブVI10YEN B細胞およびVSV−IND活性化(曝露30分)VI10YEN B細胞の接着の図である。2種の3連の実験のプールしたデータを示す。水平バーは平均値を表す。(C、D)C57BL/6マウスの膝窩LNにおけるICAM−1およびVCAM−1の発現の共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:50μm。(E)精製ナイーブ野生型B細胞およびVI10YEN B細胞の、表示のpfu等価濃度のUV−不活化VSV−INDを用いてコーティングしたプラスチックディッシュへの接着の図である。データは、3連の平均値±SEMを表す。
【
図19-2】
図19は、VI10YEN B細胞のICAM−1およびVCAM−1へのVSV誘導性接着の図である。(A、B)表示の濃度の組換えICAM−1−Fc(A)またはVCAM−1−Fc(B)を用いてコーティングしたプラスチックプレートに対する、精製ナイーブVI10YEN B細胞およびVSV−IND活性化(曝露30分)VI10YEN B細胞の接着の図である。2種の3連の実験のプールしたデータを示す。水平バーは平均値を表す。(C、D)C57BL/6マウスの膝窩LNにおけるICAM−1およびVCAM−1の発現の共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:50μm。(E)精製ナイーブ野生型B細胞およびVI10YEN B細胞の、表示のpfu等価濃度のUV−不活化VSV−INDを用いてコーティングしたプラスチックディッシュへの接着の図である。データは、3連の平均値±SEMを表す。
【
図20A】
図20は、SCSマクロファージが、LNにおけるVSV特異的B細胞の初期活性化にとって必要であることを示す図である。(A)深在濾胞(アスタリスク)ではなく、SCS(矢頭)において、MHC−IIがVI10YENxMHCII(EGFP)B細胞中にVSV−IND(注射30分後)と共局在することを示す共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:25μm。(B)VSVを伴う、およびVSVを伴わないVI10YENxMHCII(EGFP)B細胞と、SCSとの距離を示す図である。水平線:中央値。(C)VSV−INDの足蹠注射後のVI10YENに関するBCRの発現動態および(D)VSV−INDの足蹠注射後のポリクローナルB細胞に関するBCRの発現動態を示す図である。(E)VSV−IND注射(20μg)後のCLL処置また未処置膝窩LNにおけるVI10YEN細胞のBCRの発現を示す図である。平均蛍光強度を、ウイルス非含有値(破線)に対して正規化した。平均値±SEM(3〜5匹のマウス)。(F)対照中のVI10YEN B細胞および(G)VSV−IND注射(0.4μg)6時間後のCLL処置膝窩LN中のVI10YEN B細胞の共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:125μm。(H)表示用量のVSV−IND注射6時間後のT/Bの境界および濾胞におけるVI10YEN B細胞頻度を示す図である。平均値±SEM;n=3〜4濾胞/2匹のマウス;*:p<0.05;**:p<0.01;***:p<0.001(t−検定)。
【
図20B】
図20は、SCSマクロファージが、LNにおけるVSV特異的B細胞の初期活性化にとって必要であることを示す図である。(A)深在濾胞(アスタリスク)ではなく、SCS(矢頭)において、MHC−IIがVI10YENxMHCII(EGFP)B細胞中にVSV−IND(注射30分後)と共局在することを示す共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:25μm。(B)VSVを伴う、およびVSVを伴わないVI10YENxMHCII(EGFP)B細胞と、SCSとの距離を示す図である。水平線:中央値。(C)VSV−INDの足蹠注射後のVI10YENに関するBCRの発現動態および(D)VSV−INDの足蹠注射後のポリクローナルB細胞に関するBCRの発現動態を示す図である。(E)VSV−IND注射(20μg)後のCLL処置また未処置膝窩LNにおけるVI10YEN細胞のBCRの発現を示す図である。平均蛍光強度を、ウイルス非含有値(破線)に対して正規化した。平均値±SEM(3〜5匹のマウス)。(F)対照中のVI10YEN B細胞および(G)VSV−IND注射(0.4μg)6時間後のCLL処置膝窩LN中のVI10YEN B細胞の共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:125μm。(H)表示用量のVSV−IND注射6時間後のT/Bの境界および濾胞におけるVI10YEN B細胞頻度を示す図である。平均値±SEM;n=3〜4濾胞/2匹のマウス;*:p<0.05;**:p<0.01;***:p<0.001(t−検定)。
【
図20C】
図20は、SCSマクロファージが、LNにおけるVSV特異的B細胞の初期活性化にとって必要であることを示す図である。(A)深在濾胞(アスタリスク)ではなく、SCS(矢頭)において、MHC−IIがVI10YENxMHCII(EGFP)B細胞中にVSV−IND(注射30分後)と共局在することを示す共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:25μm。(B)VSVを伴う、およびVSVを伴わないVI10YENxMHCII(EGFP)B細胞と、SCSとの距離を示す図である。水平線:中央値。(C)VSV−INDの足蹠注射後のVI10YENに関するBCRの発現動態および(D)VSV−INDの足蹠注射後のポリクローナルB細胞に関するBCRの発現動態を示す図である。(E)VSV−IND注射(20μg)後のCLL処置また未処置膝窩LNにおけるVI10YEN細胞のBCRの発現を示す図である。平均蛍光強度を、ウイルス非含有値(破線)に対して正規化した。平均値±SEM(3〜5匹のマウス)。(F)対照中のVI10YEN B細胞および(G)VSV−IND注射(0.4μg)6時間後のCLL処置膝窩LN中のVI10YEN B細胞の共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:125μm。(H)表示用量のVSV−IND注射6時間後のT/Bの境界および濾胞におけるVI10YEN B細胞頻度を示す図である。平均値±SEM;n=3〜4濾胞/2匹のマウス;*:p<0.05;**:p<0.01;***:p<0.001(t−検定)。
【
図20D】
図20は、SCSマクロファージが、LNにおけるVSV特異的B細胞の初期活性化にとって必要であることを示す図である。(A)深在濾胞(アスタリスク)ではなく、SCS(矢頭)において、MHC−IIがVI10YENxMHCII(EGFP)B細胞中にVSV−IND(注射30分後)と共局在することを示す共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:25μm。(B)VSVを伴う、およびVSVを伴わないVI10YENxMHCII(EGFP)B細胞と、SCSとの距離を示す図である。水平線:中央値。(C)VSV−INDの足蹠注射後のVI10YENに関するBCRの発現動態および(D)VSV−INDの足蹠注射後のポリクローナルB細胞に関するBCRの発現動態を示す図である。(E)VSV−IND注射(20μg)後のCLL処置また未処置膝窩LNにおけるVI10YEN細胞のBCRの発現を示す図である。平均蛍光強度を、ウイルス非含有値(破線)に対して正規化した。平均値±SEM(3〜5匹のマウス)。(F)対照中のVI10YEN B細胞および(G)VSV−IND注射(0.4μg)6時間後のCLL処置膝窩LN中のVI10YEN B細胞の共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:125μm。(H)表示用量のVSV−IND注射6時間後のT/Bの境界および濾胞におけるVI10YEN B細胞頻度を示す図である。平均値±SEM;n=3〜4濾胞/2匹のマウス;*:p<0.05;**:p<0.01;***:p<0.001(t−検定)。
【
図20E】
図20は、SCSマクロファージが、LNにおけるVSV特異的B細胞の初期活性化にとって必要であることを示す図である。(A)深在濾胞(アスタリスク)ではなく、SCS(矢頭)において、MHC−IIがVI10YENxMHCII(EGFP)B細胞中にVSV−IND(注射30分後)と共局在することを示す共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:25μm。(B)VSVを伴う、およびVSVを伴わないVI10YENxMHCII(EGFP)B細胞と、SCSとの距離を示す図である。水平線:中央値。(C)VSV−INDの足蹠注射後のVI10YENに関するBCRの発現動態および(D)VSV−INDの足蹠注射後のポリクローナルB細胞に関するBCRの発現動態を示す図である。(E)VSV−IND注射(20μg)後のCLL処置また未処置膝窩LNにおけるVI10YEN細胞のBCRの発現を示す図である。平均蛍光強度を、ウイルス非含有値(破線)に対して正規化した。平均値±SEM(3〜5匹のマウス)。(F)対照中のVI10YEN B細胞および(G)VSV−IND注射(0.4μg)6時間後のCLL処置膝窩LN中のVI10YEN B細胞の共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:125μm。(H)表示用量のVSV−IND注射6時間後のT/Bの境界および濾胞におけるVI10YEN B細胞頻度を示す図である。平均値±SEM;n=3〜4濾胞/2匹のマウス;*:p<0.05;**:p<0.01;***:p<0.001(t−検定)。
【
図20F】
図20は、SCSマクロファージが、LNにおけるVSV特異的B細胞の初期活性化にとって必要であることを示す図である。(A)深在濾胞(アスタリスク)ではなく、SCS(矢頭)において、MHC−IIがVI10YENxMHCII(EGFP)B細胞中にVSV−IND(注射30分後)と共局在することを示す共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:25μm。(B)VSVを伴う、およびVSVを伴わないVI10YENxMHCII(EGFP)B細胞と、SCSとの距離を示す図である。水平線:中央値。(C)VSV−INDの足蹠注射後のVI10YENに関するBCRの発現動態および(D)VSV−INDの足蹠注射後のポリクローナルB細胞に関するBCRの発現動態を示す図である。(E)VSV−IND注射(20μg)後のCLL処置また未処置膝窩LNにおけるVI10YEN細胞のBCRの発現を示す図である。平均蛍光強度を、ウイルス非含有値(破線)に対して正規化した。平均値±SEM(3〜5匹のマウス)。(F)対照中のVI10YEN B細胞および(G)VSV−IND注射(0.4μg)6時間後のCLL処置膝窩LN中のVI10YEN B細胞の共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:125μm。(H)表示用量のVSV−IND注射6時間後のT/Bの境界および濾胞におけるVI10YEN B細胞頻度を示す図である。平均値±SEM;n=3〜4濾胞/2匹のマウス;*:p<0.05;**:p<0.01;***:p<0.001(t−検定)。
【
図20G】
図20は、SCSマクロファージが、LNにおけるVSV特異的B細胞の初期活性化にとって必要であることを示す図である。(A)深在濾胞(アスタリスク)ではなく、SCS(矢頭)において、MHC−IIがVI10YENxMHCII(EGFP)B細胞中にVSV−IND(注射30分後)と共局在することを示す共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:25μm。(B)VSVを伴う、およびVSVを伴わないVI10YENxMHCII(EGFP)B細胞と、SCSとの距離を示す図である。水平線:中央値。(C)VSV−INDの足蹠注射後のVI10YENに関するBCRの発現動態および(D)VSV−INDの足蹠注射後のポリクローナルB細胞に関するBCRの発現動態を示す図である。(E)VSV−IND注射(20μg)後のCLL処置また未処置膝窩LNにおけるVI10YEN細胞のBCRの発現を示す図である。平均蛍光強度を、ウイルス非含有値(破線)に対して正規化した。平均値±SEM(3〜5匹のマウス)。(F)対照中のVI10YEN B細胞および(G)VSV−IND注射(0.4μg)6時間後のCLL処置膝窩LN中のVI10YEN B細胞の共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:125μm。(H)表示用量のVSV−IND注射6時間後のT/Bの境界および濾胞におけるVI10YEN B細胞頻度を示す図である。平均値±SEM;n=3〜4濾胞/2匹のマウス;*:p<0.05;**:p<0.01;***:p<0.001(t−検定)。
【
図20H】
図20は、SCSマクロファージが、LNにおけるVSV特異的B細胞の初期活性化にとって必要であることを示す図である。(A)深在濾胞(アスタリスク)ではなく、SCS(矢頭)において、MHC−IIがVI10YENxMHCII(EGFP)B細胞中にVSV−IND(注射30分後)と共局在することを示す共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:25μm。(B)VSVを伴う、およびVSVを伴わないVI10YENxMHCII(EGFP)B細胞と、SCSとの距離を示す図である。水平線:中央値。(C)VSV−INDの足蹠注射後のVI10YENに関するBCRの発現動態および(D)VSV−INDの足蹠注射後のポリクローナルB細胞に関するBCRの発現動態を示す図である。(E)VSV−IND注射(20μg)後のCLL処置また未処置膝窩LNにおけるVI10YEN細胞のBCRの発現を示す図である。平均蛍光強度を、ウイルス非含有値(破線)に対して正規化した。平均値±SEM(3〜5匹のマウス)。(F)対照中のVI10YEN B細胞および(G)VSV−IND注射(0.4μg)6時間後のCLL処置膝窩LN中のVI10YEN B細胞の共焦点顕微鏡写真である。スケールバー:125μm。(H)表示用量のVSV−IND注射6時間後のT/Bの境界および濾胞におけるVI10YEN B細胞頻度を示す図である。平均値±SEM;n=3〜4濾胞/2匹のマウス;*:p<0.05;**:p<0.01;***:p<0.001(t−検定)。
【
図21】
図21は、ウイルス注射後の流入領域LNにおけるVI10YEN B細胞の運動性を示す図である。VSV足蹠注射約5〜35分後の深在濾胞およびSCS/表在濾胞における野生型B細胞(三角)およびVI10YEN B細胞(丸)の3D瞬間速度の中央値である。水平バーは平均値を表す。*:p<0.05;**:p<0.01(一元配置ANOVAおよびBonferroniのポストテスト)。特異的B細胞は、本発明者らの調製品中の遊離のVSV−Gの結果と同様に濾胞全体を通して減速することに留意されたい(
図18を参照されたい)。対照実験は、CLL処置および未処置popLNにおける同様のB細胞運動性パラメータを示した。
【
図22A】
図22は、VSV−INDの注射後のウイルス−流入領域LNおよび非流入領域LNにおけるVI10YEN B細胞に関する活性化マーカー誘導の経時変化を示す図である。VI10YEN B細胞に、CMTMRを用いて蛍光タグを付け、ナイーブマウスに移入し、18時間後に20μgのUV不活化VSV−INDを注射した(0時間)。膝窩流入領域LN(popLN)および遠位上腕LN(brachLN)を、表示の時間間隔後に回収し、単一細胞懸濁物を生成した。B細胞におけるCD69およびCD86の発現を、(A)B220
+CMTMR
+VI10YEN細胞または(B)B220
+CMTMR
−内在性対照B細胞に関してゲーティング後、フローサイトメトリーによって評価した。
【
図22B】
図22は、VSV−INDの注射後のウイルス−流入領域LNおよび非流入領域LNにおけるVI10YEN B細胞に関する活性化マーカー誘導の経時変化を示す図である。VI10YEN B細胞に、CMTMRを用いて蛍光タグを付け、ナイーブマウスに移入し、18時間後に20μgのUV不活化VSV−INDを注射した(0時間)。膝窩流入領域LN(popLN)および遠位上腕LN(brachLN)を、表示の時間間隔後に回収し、単一細胞懸濁物を生成した。B細胞におけるCD69およびCD86の発現を、(A)B220
+CMTMR
+VI10YEN細胞または(B)B220
+CMTMR
−内在性対照B細胞に関してゲーティング後、フローサイトメトリーによって評価した。
【
図23】
図23は、CMTMR標識VI10YEN B細胞およびCMAC標識ポリクローナルB細胞(右縦列中)の混合物の養子移入を受けていた、マウスの膝窩LNの共焦点顕微鏡写真(左および中央の縦列)およびMP−IVM顕微鏡写真(右の縦列)である。翌日、20μgのUV不活化VSV−INDを足蹠に注射し、膝窩流入領域LNを、表示の時点において凍結切片を、MP−IVMのために外科的に調製するか、または共焦点分析のために回収するかのどちらかを実施した。MP−IVM画像は、VSV特異的であるが、ポリクローナルではないB細胞が、ウイルス注射後30分ほどの早さでSCS中のVSVと接触したことを示す。VI10YEN B細胞は、注射後6時間においてT/Bの境界に再局在した。スケールバー:左の縦列において150μmおよび他の縦列において25μm。
【
図24A】
図24は、ヒトIgG由来のFc断片を使用したSCS−Mphのin vivoターゲティングを示す図である。(A)左側のFACSヒストグラムは、蛍光PEG−PLGAナノ粒子(直径約100nm)とリンパ節マクロファージとの結合を実証している図である。(B)Fcナノ粒子(NP)はSCS−Mphおよび濾胞性樹状細胞を標的にしている図である。
【
図24B】
図24は、ヒトIgG由来のFc断片を使用したSCS−Mphのin vivoターゲティングを示す図である。(A)左側のFACSヒストグラムは、蛍光PEG−PLGAナノ粒子(直径約100nm)とリンパ節マクロファージとの結合を実証している図である。(B)Fcナノ粒子(NP)はSCS−Mphおよび濾胞性樹状細胞を標的にしている図である。
【
図25】
図25は、リンパ節の被膜下洞(SCS)中のマクロファージにおいてケモカイン受容体のCX3CR1(フラクタルキン受容体)が特定されるが、髄質中のマクロファージにおいては特定されないことを示す図である。右の顕微鏡写真は、緑色蛍光タンパク質(GFP)がCX3CR1遺伝子座において発現し、一方、赤色蛍光タンパク質(RFP)は別のケモカイン受容体のCCR2の発現を報告するダブルノックインマウス由来のリンパ節の3D映像である。SCS−Mphは、それらの優勢な緑色蛍光によって容易に同定可能であるが、髄質のマクロファージは主にRFPを発現する。
【
図26】
図26は、SCS−Mphがケモカイン受容体CX3CR1を発現することを示す図である。グラフは、CX3CR1遺伝子座からGFPを発現するように遺伝子操作されたノックインマウスのリンパ節に由来する単一細胞懸濁液のFACSのプロットを示す図である。SCS−Mphは、SCS中のマクロファージと結合するが、髄質とは結合しない可用性受容体CRFcを用いて染色することによって特定した。CRFc陰性CX3CR1発現(すなわち、GFP−high)細胞は、このケモカイン受容体を発現する従来の樹状細胞である。
【
図27】
図27は、アミン(左および中央のパネル)またはカルボキシ成分(右パネル)のどちらかを用いて表面を改変した、直径0.2μmのラテックスビーズの足蹠注射24時間後のマウス膝窩リンパ節由来凍結切片の蛍光顕微鏡写真である。ビーズの両方のセットは、Invitrogen(カタログ番号F8763およびF8805)から購入した。左および右の切片は、抗CD169を用いて対比染色した。画像は、髄質(抗CD169を用いた染色が弱く、拡散している)が右方向であり被膜下洞(SCS)領域(抗CD169が明るい)が左方向になるような向きに置いてある。赤色のアミン改変粒子はSCSに主に局在し、一方、青色のカルボキシ改変ビーズは髄質において主に保有されていることに留意されたい。
【
図28A】
図28(A)は、抗原を担持する標的化ナノ粒子は高度に免疫原性であり、高い抗体力価を誘導することを示す図である。
図28(B)は、ナノ粒子ワクチンによって誘導された誘導性免疫応答は、VSVの致死量からの強力な防御をもたらすことを示す図である。
【
図28B】
図28(A)は、抗原を担持する標的化ナノ粒子は高度に免疫原性であり、高い抗体力価を誘導することを示す図である。
図28(B)は、ナノ粒子ワクチンによって誘導された誘導性免疫応答は、VSVの致死量からの強力な防御をもたらすことを示す図である。
【
図29A】
図29は、免疫調節性ナノ粒子によるin vivoのT細胞活性化を示す図である。(A)CD4 T細胞活性化に対するNPの効果を示す図である。(B)CD8 T細胞応答に対する、CpGアジュバント(TLR9アゴニスト)を混合したNPの効果を示す図である。(C)共カプセル化されたアジュバントの、CD8 T細胞活性化に対する効果を示す図である。
【
図29B】
図29は、免疫調節性ナノ粒子によるin vivoのT細胞活性化を示す図である。(A)CD4 T細胞活性化に対するNPの効果を示す図である。(B)CD8 T細胞応答に対する、CpGアジュバント(TLR9アゴニスト)を混合したNPの効果を示す図である。(C)共カプセル化されたアジュバントの、CD8 T細胞活性化に対する効果を示す図である。
【
図29C】
図29は、免疫調節性ナノ粒子によるin vivoのT細胞活性化を示す図である。(A)CD4 T細胞活性化に対するNPの効果を示す図である。(B)CD8 T細胞応答に対する、CpGアジュバント(TLR9アゴニスト)を混合したNPの効果を示す図である。(C)共カプセル化されたアジュバントの、CD8 T細胞活性化に対する効果を示す図である。
【
図30】
図30は、例示的R848コンジュゲーション戦略を示す図である。
【
図31】
図31は、放出プロファイルデータを示す図である。ナノ粒子内にカプセル化されたR848を含有する製剤から、時間とともに放出されるR848のパーセントを示す。
【
図32】
図32は、放出プロファイルデータを示す図である。ナノ粒子内にカプセル化されたSIINFEKLを含有する製剤から、時間とともに放出されるSIINFEKLのパーセントを示す。
【
図33】
図33は、マウスが数種の製剤のうちの1つを投与された後の、マウスリンパ節(LN)中に測定されたOT−I細胞の数を示す図である。
【
図34a】
図34aは、様々な遊離のアジュバントとともにインキュベートされた樹状細胞の表面において、CD40、CD80およびCD86タンパク質の発現が増加することを示す図である。
【
図34b】
図34bは、樹状細胞を、ナノ粒子を含むまたは含まない様々な組成物とともにインキュベートした後の、樹状細胞のCD86の平均蛍光強度(MFI)を示す図である。
【
図34c】
図34cは、様々なナノ粒子組成物とともにインキュベートした樹状細胞の表面において、CD40、CD80およびCD86タンパク質の発現の増加およびリポ多糖類(LPS)とともにインキュベートしたDCとの比較を示す図である。
【
図35】
図35は、T細胞の増殖を示すFACSデータを示す図である。
【
図36】
図36は、マウスが様々な組成物を投与された後23週までの、マウス抗ニコチンIgGの力価および濃度を示す図である。
【
図37】
図37は、マウスが様々な組成物を投与された後21日までの、マウス抗ニコチンIgGの力価および濃度を示す図である。
【
図38】
図38aは、対照ナノ粒子と比較した、マウス足蹠注射4時間後の、SCSにおけるニコチン改変ナノ粒子の相対的蓄積を示す図である。
図38bは対照ナノ粒子と比較した、マウス足蹠注射24時間後の、DCとニコチン改変ナノ粒子との相対的共局在を示す図である。
【
図39】
図39aは、固定化抗CD11c抗体を有する表面に対する、in vitroのDCの接着を示す図である。
図39bは、固定化ニコチンを有する表面に対する、in vitroのDCの接着を示す図である。
【
図40】
図40(a)〜(b)は、マウス足蹠注射後のSCSにおける対照ナノ粒子と比較した、ニコチン改変ナノ粒子の蓄積を示す図である。
【
図41】
図41(a)〜(d)は、ナノ粒子をマウス足蹠に注射後の、SCSおよび膝窩リンパ節の髄質領域におけるGM3改変ナノ粒子の蓄積を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0136】
定義
乱用物質:本明細書において使用されるように、用語「乱用物質」は、それが示される目的以外の目的でまたは医師によって指示されるもの以外の方法もしくは量で被験体(例えばヒト)によって摂取される任意の物質である。いくつかの実施形態では、乱用物質は、違法薬物などのような薬剤である。ある実施形態では、乱用物質は、一般用医薬品(over−the−counter drug)である。いくつかの実施形態では、乱用物質は、処方せん医薬品(prescription drug)である。乱用物質は、いくつかの実施形態では、依存性物質である。いくつかの実施形態では、乱用物質は、精神状態に影響を与える効果を有し、そのため吸入薬および溶媒を含む。他の実施形態では、乱用物質は、精神状態に影響を与える効果または中毒特性を有していないものであり、そのため、タンパク同化ステロイドを含む。乱用物質は、カンナビノイド(例えばハシシュ、マリファナ)、抑制薬(例えばバルビツレート(barbituate)、ベンゾジアゼピン、フルニトラゼパム(Rohypnol)、GHB、メタカロン(クワルード))、解離性麻酔薬(例えばケタミン、PCP)、幻覚薬(例えばLSD、メスカリン、プシロシビン)、オピオイドおよびモルヒネ誘導体(例えばコデイン、フェンタニル、ヘロイン、モルヒネ、アヘン)、刺激薬(アンフェタミン、コカイン、Ecstacy(MDMA)、メタンフェタミン、メチルフェニデート(Ritalin))、タンパク同化ステロイド(anabolic steriod)、ならびに吸入薬を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ナノキャリア中への包含のための乱用物質は、完全な分子またはその部分である。
【0137】
依存性物質:本明細書において使用されるように、用語「依存性物質」は、強迫、強制、または身体依存もしくは精神依存を引き起こす物質である。いくつかの実施形態では、依存性物質は、違法薬物である。他の実施形態では、依存性物質は、一般用医薬品である。さらに他の実施形態では、依存性物質は、処方せん医薬品である。依存性物質は、コカイン、ヘロイン、マリファナ、およびメタンフェタミンを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ナノキャリア中への包含のための依存性物質は、完全な分子またはその部分である。
【0138】
投与することまたは投与:(1)薬理学的に有用な方法において、被験体に、本発明の組成物などのような薬理学的に活性な物質を投薬すること、(2)薬理学的に有用な方法においてそのような物質が被験体に投薬されるように指示すること、または(3)薬理学的に有用な方法においてそのような物質を自分で投薬するように被験体に指示すること。
【0139】
アミノ酸:本明細書において使用されるように、その最も広い意味での用語「アミノ酸」は、ポリペプチド鎖の中に組み込むことができる任意の化合物および/または物質を指す。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、一般的な構造H
2N−C(H)(R)−COOHを有する。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸である。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、合成アミノ酸であり、いくつかの実施形態では、アミノ酸は、D−アミノ酸であり、いくつかの実施形態では、アミノ酸はL−アミノ酸である。「標準のアミノ酸」または「天然アミノ酸」は、天然に存在するペプチドにおいて一般に見つけられる20種の標準のL−アミノ酸のいずれかを指す。「非標準のアミノ酸」は、それが合成的に調製されるまたは天然源から得られるかどうかにかかわらず、標準のアミノ酸以外の任意のアミノ酸を指す。本明細書において使用されるように、「非天然アミノ酸」は、塩、アミノ酸誘導体(アミドなど)、および/または置換を含むが、これらに限定されない、化学的に産生されたアミノ酸または改変アミノ酸を包含する。ペプチド中のカルボキシ末端アミノ酸および/またはアミノ末端アミノ酸を含むアミノ酸は、メチル化、アミド化、アセチル化、および/またはそれらの活性に悪影響を及ぼすことなくペプチドの循環半減期を変化させることができる他の化学基を用いる置換によって改変することができる。アミノ酸は、ジスルフィド結合に関与してもよい。用語「アミノ酸」は、「アミノ酸残基」と交換可能に使用され、遊離アミノ酸および/またはペプチドのアミノ酸残基を指してもよい。用語が遊離アミノ酸またはペプチドの残基を指すかどうかは、用語が使用される文脈から明らかである。
【0140】
動物:本明細書において使用されるように、用語「動物」は、動物界の任意のメンバーを指す。いくつかの実施形態では、「動物」は、発育の任意の段階のヒトを指す。いくつかの実施形態では、「動物」は、発育の任意の段階の非ヒト動物を指す。ある実施形態では、非ヒト動物は、哺乳動物(例えば、げっ歯動物、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長動物、および/またはブタ)である。いくつかの実施形態では、動物は、哺乳動物、鳥類、爬虫類動物、両生動物、魚類、および/または蠕形動物を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、動物は、トランスジェニック動物、遺伝子操作された動物、および/またはクローンであってもよい。
【0141】
抗体:本明細書において使用されるように、用語「抗体」は、天然または全体的にもしくは部分的に合成的に産生されたかにかかわらず、任意の免疫グロブリンを指す。特異的な結合能力を維持するその全ての誘導体もまた、その用語に含まれている。用語はまた、免疫グロブリン結合ドメインに相同なまたは大部分、相同の結合ドメインを有する任意のタンパク質を包含する。そのようなタンパク質は、天然源に由来してもよいまたは部分的にもしくは全体的に合成的に産生されてもよい。抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であってもよい。抗体は、ヒトクラス:IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEのいずれかを含む、任意の免疫グロブリンクラスのメンバーであってもよい。本明細書において使用されるように、「抗体断片」または「抗体の特徴的な部分」という用語は、交換可能に使用され、完全長未満である抗体の任意の誘導体を指す。抗体断片は、完全長抗体の特異的な結合能力の少なくとも1つの重要な部分を保持することができる。そのような抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、Fv、dsFvダイアボディ、およびFd断片を含むが、これらに限定されない。抗体断片はまた、Fc断片を含む。抗体断片は、任意の手段によって産生されてもよい。例えば、抗体断片は、完全な抗体の断片化によって酵素でもしくは化学的に産生されてもよいおよび/またはそれは、部分的な抗体配列をコードする遺伝子から組換えで産生されてもよい。その代わりにまたはさらに、抗体断片は、全体的にまたは部分的に合成的に産生されてもよい。抗体断片は、任意選択で、一本鎖抗体断片を含んでいてもよい。その代わりにまたはさらに、抗体断片は、例えばジスルフィド結合によって、共に連結される複数の鎖を含んでいてもよい。抗体断片は、任意選択で、多分子複合体(multimolecular complex)を含んでいてもよい。機能的な抗体断片は、典型的に、少なくとも約50のアミノ酸を含み、より典型的に、少なくとも約200のアミノ酸を含む。
【0142】
およそ(Approximately):本明細書において使用されるように、数に関する用語「およそ」または「約」は、一般に、他に指定されない限りまたは他に文脈から明白ではない限り、数の両方向の(を超えるまたはそれ未満の)5%、10%、15%、または20%の範囲内にある数を含むようにとられる(そのような数が、可能な値の0%未満になるまたは100%を超過する以外は)。
〜と結合した(Associated with):本明細書において使用されるように、「〜と結合した」という用語は、直接的または間接的な共有結合または非共有結合の相互作用によって連結される2つ以上の実体の状態を指す。いくつかの実施形態では、結合は、共有結合である。いくつかの実施形態では、共有結合は、リンカー成分によって媒介される。いくつかの実施形態では、結合は、非共有結合(例えば電荷相互作用、親和性相互作用、金属配位、物理吸着、ホスト−ゲスト相互作用、疎水的相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファンデルワールス相互作用、磁気的相互作用、静電的相互作用、双極子相互作用など)である。例えば、いくつかの実施形態では、実体(例えば免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、ナノ粒子など)は、ワクチンナノキャリアと共有結合されてもよい。いくつかの実施形態では、実体(例えば免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、ナノ粒子など)は、ワクチンナノキャリアと非共有結合されてもよい。例えば、実体は、本発明のワクチンナノキャリアの脂質二重層、脂質単層、ポリマーマトリックスなどの表面と結合されてもよい、その内に封入されてもよい、それによって取り囲まれてもよい、および/またはその全体にわたって分布していてもよい。実体が、遊離(つまり非コンジュゲート)形態で特定の名称によって呼ばれてもよい場合、他に指定されない限り、実体が第2の実体にコンジュゲートされる場合でさえ、実体は、同じ名称で呼ばれてもよいことが十分に理解される。
【0143】
生体適合性:本明細書において使用されるように、用語「生体適合性」は、細胞に対して毒性でない物質を指す。いくつかの実施形態では、物質は、in vivoにおける細胞へのその追加が、in vivoにおいて炎症および/または他の有害反応を誘発しない場合、「生体適合性」であると考えられる。いくつかの実施形態では、物質は、細胞へのin vitroまたはin vivoにおけるその追加が、約50%、約45%、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%以下または約5%未満の細胞死をもたらす場合、「生体適合性」であると考えられる。
【0144】
生分解性:本明細書において使用されるように、用語「生分解性」は、生理学的条件下で分解される物質を指す。いくつかの実施形態では、生分解性物質は、細胞性装置(cellular machinery)によって破壊される物質である。いくつかの実施形態では、生分解性物質は、化学プロセスによって破壊される物質である。
【0145】
B細胞抗原:本明細書において使用されるように、用語「B細胞抗原」は、B細胞によって認識され、B細胞における免疫応答を引き起こす任意の抗原を指す。いくつかの実施形態では、B細胞抗原である抗原はまた、T細胞抗原でもある。ある実施形態では、B細胞抗原はまた、T細胞抗原でもない。ある実施形態では、ナノキャリアが、本明細書において提供されるように、B細胞抗原およびT細胞抗原の両方を含む場合、B細胞抗原およびT細胞抗原は、同じ抗原ではないが、B細胞抗原およびT細胞抗原のそれぞれは、いくつかの実施形態では、B細胞抗原およびT細胞抗原の両方であってもよい。他の実施形態では、ナノキャリアのB細胞抗原およびT細胞抗原は、同じである。
【0146】
細胞型:本明細書において使用されるように、用語「細胞型」は、細胞型を定義する形態学的、生化学的、および/または機能的特徴の異なるセットを有する細胞の形態を指す。当業者は、様々な特異性のレベルにより細胞型を定義することができることを認識する。例えば、T細胞およびB細胞は、異なる細胞型であり、これらは、互いに区別することができるが、両方ともメンバーである、より広い「リンパ球」の細胞型の特徴である、ある種の特徴を共有する。典型的に、異なるタイプの細胞は、特定の1つまたは複数の細胞型(例えば特定の系統の細胞型)の「マーカー」と当技術分野において呼ばれる、様々な遺伝子のそれらの発現差異(differential expresson)に基づいて互いに区別されてもよい。いくつかの実施形態では、異なるタイプの細胞は、それらの機能差異に基づいて互いに区別されてもよい。「細胞型に特異的なマーカー」は、すべてまたはほとんどの他の細胞型によってよりも、1つまたは複数の細胞型によって著しく高いレベルで発現され、その発現がその細胞型の特徴となる遺伝子産物またはその改変バージョンである。そのため、多くの細胞型に特異的なマーカーが、当技術分野において認識されている。
【0147】
剤形:被験体への投与に適した媒体、キャリア、ビヒクル、またはデバイスにおける薬剤。剤形の例は、本明細書において提供される。
【0148】
危険な環境因子:本明細書において使用されるように、用語「危険な環境因子」は、環境において見つけられる任意の危険物質を指す。そのような物質は、一般に、健康の危険をもたらすと考えられる。危険な環境因子は、たとえそれらが実際に危険をもたらさないかもしれなくても、健康の危険をもたらすと考えられる物質を含む。危険な環境因子は、ヒ素、鉛、水銀、塩化ビニル、ポリ塩化ビフェニル、ベンゼン、多環芳香族炭化水素、カドミウム、ベンゾ(a)ピレン、ベンゾ(b)フルオランテン、クロロホルム、DDT、P,P’−アロクロール1254、P,P’−アロクロール1260、ジベンゾ(a,h)アントラセン、トリクロロエチレン、ジエルドリン、六価クロム、およびDDE、P,P’を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ナノキャリア中への包含のための危険な環境因子は、完全な分子またはその部分である。
【0149】
in vitro:本明細書において使用されるように、用語「in vitro」は、生物(例えば動物、植物、および/または微生物)内でではなく、人工環境において、例えば試験管内または反応容器中で、細胞培養物中などにおいて起こるイベントを指す。
【0150】
in vivo:本明細書において使用されるように、用語「in vivo」は、生物(例えば動物、植物、および/または微生物)内で起こるイベントを指す。
【0151】
免疫刺激作用物質:本明細書において使用されるように、用語「免疫刺激作用物質」は、抗原に対する免疫応答を調整するが、抗原ではないまたは抗原に由来しない作用物質を指す。「調整する」は、本明細書において使用されるように、免疫応答を誘導する、増強する、抑制する、指示する、または再指示することを指す。そのような作用物質は、抗原に対する免疫応答を刺激する(または高める)が、上記に定義されるように抗原ではないまたは抗原に由来しない免疫刺激作用物質を含む。免疫刺激作用物質は、そのため、アジュバントを含む。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、ナノキャリアの表面にあるおよび/またはナノキャリア内に封入されている。いくつかの実施形態では、ナノキャリアの表面の免疫刺激作用物質は、ナノキャリア内に封入された免疫刺激作用物質とは異なる。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、1つを超えるタイプの免疫刺激作用物質を含む。いくつかの実施形態では、1つを超えるタイプの免疫刺激作用物質は、異なる経路に作用する。免疫刺激作用物質の例は、本明細書において他のところで提供されるものを含む。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアの免疫刺激作用物質はすべて、互いに同一である。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、いくつかの異なるタイプの免疫刺激作用物質を含む。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、複数の個々の免疫刺激作用物質を含み、それらのすべては、互いに同一である。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、正確に1つのタイプの免疫刺激作用物質を含む。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、正確に2つの異なるタイプの免疫刺激作用物質を含む。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、2つを超える異なるタイプの免疫刺激作用物質を含む。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、脂質膜(例えば脂質二重層、脂質単層など)を含み、少なくとも1つのタイプの免疫刺激作用物質は、脂質膜と結合している。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのタイプの免疫刺激作用物質は、脂質膜内に埋め込まれている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのタイプの免疫刺激作用物質は、脂質二重層の内腔内に埋め込まれている。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、脂質膜の内面と結合している、少なくとも1つのタイプの免疫刺激作用物質を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのタイプの免疫刺激作用物質は、合成ナノキャリアの脂質膜内に封入されている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのタイプの免疫刺激作用物質は、合成ナノキャリアの複数の位置に位置していてもよい。当業者は、前の例が、複数の免疫刺激作用物質が、合成ナノキャリアの異なる場所と結合されてもよい多くの様々な方法を単に代表するものであることを認識する。複数の免疫刺激作用物質は、合成ナノキャリアの場所の任意の組み合わせで位置していてもよい。
【0152】
核酸:本明細書において使用されるように、その最も広い意味での用語「核酸」は、オリゴヌクレオチ鎖の中に組み込まれるまたは組み込むことができる任意の化合物および/または物質を指す。いくつかの実施形態では、核酸は、ホスホジエステル連結を介してオリゴヌクレオチド鎖の中に組み込まれるまたは組み込むことができる化合物および/または物質である。いくつかの実施形態では、「核酸」は、個々の核酸残基(例えばヌクレオチドおよび/またはヌクレオシド)を指す。いくつかの実施形態では、「核酸」は、個々の核酸残基を含むオリゴヌクレオチド鎖を指す。本明細書において使用されるように、「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」という用語は、交換可能に使用することができる。いくつかの実施形態では、「核酸」は、RNAならびに一本鎖および/もしくは二重鎖DNAならびに/またはcDNAを包含する。さらに、用語「核酸」、「DNA」、「RNA」、および/または同様の用語は、核酸アナログ、つまりホスホジエステルバックボーン以外を有するアナログを含む。例えば、当技術分野において公知であり、バックボーン中にホスホジエステル結合の代わりにペプチド結合を有する、いわゆる「ペプチド核酸」は、本発明の範囲内とみなされる。用語「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの縮重バージョンであるおよび/または同じアミノ酸配列をコードする、すべてのヌクレオチド配列を含む。タンパク質および/またはRNAをコードするヌクレオチド配列は、イントロンを含んでいてもよい。核酸は、天然源から精製し、組換え発現系を使用して産生し、任意選択で、精製し、化学的に合成するなどすることができる。適切な場合、例えば、化学的に合成された分子の場合には、核酸は、化学的に改変された塩基または糖、バックボーン改変などを有するアナログなどのようなヌクレオシドアナログを含むことができる。核酸配列は、他に示されない限り、5’から3’への方向で提示される。用語「核酸セグメント」は、より長い核酸配列の一部である核酸配列を指すために本明細書において使用される。多くの実施形態では、核酸セグメントは、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10以上の残基を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、天然ヌクレオシド(例えばアデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、およびデオキシシチジン);ヌクレオシドアナログ(例えば2−アミノアデノシン、2−チオチミジン、イノシン、ピロロ−ピリミジン、3−メチルアデノシン、5−メチルシチジン、C−5プロピニル−シチジン、C−5プロピニル−ウリジン、2−アミノアデノシン、C5−ブロモウリジン、C5−フルオロウリジン、C5−ヨードウリジン、C5−プロピニル−ウリジン、C5−プロピニルシチジン、C5−メチルシチジン、2−アミノアデノシン、7−デアザアデノシン、7−デアザグアノシン、8−オキソアデノシン、8−オキソグアノシン、O(6)−メチルグアニン、および2−チオシチジン);化学的に改変された塩基;生物学的に改変された塩基(例えばメチル化塩基);介在塩基(intercalated base);改変糖(例えば2’−フルオロリボース、リボース、2’−デオキシリボース、アラビノース、およびヘキソース);ならびに/または改変リン酸基(例えばホスホロチオエートおよび5’−N−ホスホラミダイト連結)であるまたはそれを含む。
【0153】
粒子:本明細書において使用されるように、「粒子」は、直径が10ミクロン(μm)未満である任意の実体を指す。典型的に、粒子は、1000nm以下の最長寸法(例えば直径)を有する。いくつかの実施形態では、粒子は、300nm以下の直径を有する。粒子は、微粒子、ナノ粒子、およびピコ粒子を含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、200nm以下の直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、100nm以下の直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、50nm以下の直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、30nm以下の直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、20nm以下の直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、10nm以下の直径を有する。いくつかの実施形態では、粒子は、ポリマーのマトリックスとすることができる。いくつかの実施形態では、粒子は、非ポリマー粒子(例えば金属粒子、量子ドット、セラミック、無機材料、骨など)とすることができる。粒子はまた、リポソームおよび/またはミセルであってもよい。本明細書において使用されるように、用語「ナノ粒子」は、1000nm未満の直径を有する任意の粒子を指す。
【0154】
薬学的に許容される賦形剤:本発明の組成物の投与をさらに促進するために本発明の組成物に加えられた薬理学的に不活性な物質。薬学的に許容される賦形剤の例は、限定を伴うことなく、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な希釈剤、様々な糖およびデンプンのタイプ、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ならびにポリエチレングリコールを含む。
【0155】
低免疫原性抗原(poorly immunogenic antigen):本明細書において使用されるように、用語「低免疫原性抗原」は、いかなる免疫応答をもまたは十分なレベルの所望の免疫応答を引き起こさない抗原を指す。「十分な」は、本明細書において使用されるように、例えば、ナノキャリアの非存在下においてアジュバントと混合された遊離抗原として、本明細書において記載されるナノキャリアを用いない組成物で投与された場合に検出可能なまたは保護的な免疫応答を引き出すための能力を指す。いくつかの実施形態では、所望の免疫応答は、疾患または状態を治療するまたは予防することである。ある実施形態では、所望の免疫応答は、疾患または状態の1つまたは複数の症状を緩和することである。低免疫原性抗原は、自己抗原、小分子、および炭水化物を含むが、これらに限定されない。
【0156】
自己抗原:本明細書において使用されるように、用語「自己抗原」は、動物内での抗原に対する免疫応答が引き起こされる場合、自己免疫(例えば自己免疫疾患)が結果として生じ得る動物の体内における正常な物質を指す。自己抗原は、タンパク質もしくはペプチド、リポタンパク質、脂質、炭水化物、または核酸とすることができる。核酸は、DNAまたはRNAとすることができる。自己抗原は、酵素、構造タンパク質、分泌タンパク質、細胞表面受容体、およびサイトカインを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、自己抗原は、サイトカインであり、サイトカインは、TNF、IL−I、またはIL−6である。いくつかの実施形態では、自己抗原は、高密度リポタンパク質(HDL)から低密度リポタンパク質コレステロール(LDL)へのコレステロール転送を担う血清タンパク質であるコレステリルエステル転送タンパク質(CETP)、アルツハイマー病と関連するAβタンパク質、Aβタンパク質の病理学的形態を処理するタンパク質分解酵素、アテローム性動脈硬化症と関連するLDL、またはHIV−Iに対する共受容体である。いくつかの実施形態では、Aβタンパク質の病理学的形態を処理するタンパク質分解酵素は、ベータセクレターゼである。いくつかの実施形態では、アテローム性動脈硬化症と関連するLDLは、酸化されるまたは最小限に改変される。いくつかの実施形態では、HIV−Iに対する共受容体は、CCR5である。
【0157】
小分子:一般に、「小分子」は、サイズが約2000g/mol未満である有機分子であると当技術分野において理解される。いくつかの実施形態では、小分子は、約1500g/mol未満または約1000g/mol未満である。いくつかの実施形態では、小分子は、約800g/mol未満または約500g/mol未満である。いくつかの実施形態では、小分子は、非ポリマーおよび/または非オリゴマーである。いくつかの実施形態では、小分子は、タンパク質、ペプチド、でもなければアミノ酸でもない。いくつかの実施形態では、小分子は、核酸でもなければヌクレオチドでもない。いくつかの実施形態では、小分子は、糖類でもなければ多糖類でもない。
【0158】
特異的な結合:本明細書において使用されるように、用語「特異的な結合」は、第1および第2の成分の間の結合が、結合が起こる環境において存在するほとんどまたはすべての他の成分とのいずれの成分の結合よりも、少なくとも2倍強力な、少なくとも5倍強力な、少なくとも10倍強力な、少なくとも50倍強力な、少なくとも100倍強力な、またはそれよりも強力である、第1および第2の成分の非共有結合の物理的結合を指す。2つ以上の実体の結合は、平衡解離定数、K
dが、用いられる条件下で、例えば、細胞内部のものなどのようなまたは細胞生存と調和している生理学的条件下で、10
−3M以下、10
−4M以下、10
−5M以下、10
−6M以下、10
−7M以下、10
−8M以下、10
−9M以下、10
−10M以下、10
−11M以下、または10
−12M以下である場合、特異的であると考えられる。いくつかの実施形態では、特異的な結合は、複数のより弱い相互作用によって達成することができる(例えば、複数の個々の相互作用、それぞれの個々の相互作用は、10
−3Mよりも高いK
dによって特徴付けられる)。いくつかの実施形態では、「分子認識」と呼ぶことができる特異的な結合は、それぞれの実体上の官能基の相補的な配向(complementary orientation)に依存的である、2つの実体間の飽和可能な(saturable)結合相互作用である。特異的な結合相互作用の例は、アプタマー−アプタマー標的相互作用、抗体−抗原相互作用、アビジン−ビオチン相互作用、リガンド−受容体相互作用、金属−キレート相互作用、相補的な核酸間のハイブリダイゼーションなどを含む。
【0159】
被験体:本明細書において使用されるように、用語「被験体」または「患者」は、本発明の組成物が、例えば実験的な、診断上の、および/または治療上の目的のために投与されてもよい任意の生物を指す。典型的な被験体は、動物(例えば、非ヒト霊長動物およびヒトなどのような哺乳動物;鳥類;ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、およびブタなどのような飼い慣らされた(domestic household)動物もしくは家畜;マウス、ラット、およびモルモットなどのような実験動物;ウサギ;魚類;爬虫類動物;動物園の動物および野生動物)ならびに/または植物を含む。典型的に、「被験体」は、ヒトおよび霊長動物などを含む動物である。
【0160】
〜に罹患している:疾患、障害、および/または状態に「〜に罹患している」個人は、疾患、障害、および/または状態と診断されている、それと診断することができる、またはその1つもしくは複数の症状を示す。
【0161】
〜に感受性である:疾患、障害、および/または状態に「〜に感受性である」個人は、疾患、障害、および/または状態と診断されていないおよび/またはその症状を示していなくてもよい。いくつかの実施形態では、疾患、障害、および/または状態は、微生物感染(例えば細菌感染、ウイルス感染、真菌感染、寄生虫感染など)と関連する。いくつかの実施形態では、微生物感染に感受性の個人は、微生物に曝露され得る(例えば食物摂取、吸入、身体的接触などによって)。いくつかの実施形態では、微生物感染に感受性の個人は、微生物に感染している個人に曝露され得る。いくつかの実施形態では、微生物感染に感受性の個人は、微生物が蔓延している場所にいる個人である(例えば、微生物が蔓延している場所に旅行している個人)。いくつかの実施形態では、疾患、障害、および/または状態に感受性の個人は、疾患、障害、および/または状態を発症する。いくつかの実施形態では、疾患、障害、および/または状態に感受性の個人は、疾患、障害、および/または状態を発症しない。いくつかの実施形態では、被験体は、癌、感染症、非自己免疫代謝性疾患もしくは非自己免疫変性疾患、または嗜癖を有するまたはそれを有するのに感受性である。いくつかの実施形態では、被験体は、細菌感染、真菌感染、原虫感染、寄生虫(parisitic)感染、またはウイルス感染を有するまたはそれを有するのに感受性である。そのような感染の原因は、本明細書において提供される生物のいずれかとすることができる。いくつかの実施形態では、被験体は結核症、マラリア、リーシュマニア症、H.pylori、ブドウ球菌感染症、またはサルモネラ感染症を有するまたはそれに感受性である。いくつかの実施形態では、被験体は、インフルエンザを有するまたはそれを有するのに感受性である。いくつかの実施形態では、被験体は、自己免疫疾患を有するまたはそれに感受性である。
【0162】
合成ナノキャリア(複数可):「合成ナノキャリア(複数可)」は、自然界において見つけられず、少なくとも、サイズが5ミクロン以下の寸法を有する別々の物体(object)を意味する。アルブミンナノ粒子は、特に、合成ナノキャリアとして含まれる。本発明による合成ナノキャリアは、実質的なベクター効果(vector effect)を誘導せず、好ましくは、それらは、ベクター効果を引き起こさない。ある好ましい実施形態では、合成ナノキャリアは、ベクター効果を低下させるまたは排除するように改変される。これは、合成ナノキャリアの免疫原性の性質を低下させるために、例えば、合成ナノキャリアに、様々な材料(例えばポリエチレングリコール)を結びつけることによって達成されてもよい。
【0163】
合成ナノキャリアは、1つまたは複数の脂質ベースのナノ粒子、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤ベースのエマルジョン、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤー、ウイルス様粒子、ペプチドベースの粒子もしくはタンパク質ベースの粒子(アルブミンナノ粒子など)、および/または脂質ポリマーナノ粒子などのような、ナノ物質の組み合わせを使用して開発されたナノ粒子とすることができるが、これらに限定されない。合成ナノキャリアは、長球形、立方体、角錐状、長方形、円柱状、環状体状(toroidal)などを含むが、これらに限定されない、様々な異なる形状をしていてもよい。本発明による合成ナノキャリアは、1つまたは複数の表面を含む。本発明の実施における使用に適応し得る例証的な合成ナノキャリアは、(1)Grefらに対する米国特許第5,543,158号において開示される生分解性ナノ粒子、(2)Saltzmanらに対する米国特許出願公開第20060002852号のポリマーナノ粒子、または(4)DeSimoneらに対する米国特許出願公開第20090028910号の、リソグラフィーにより構築されたナノ粒子を含む。約100nm以下、好ましくは約100nm以下の最小寸法を有する、本発明による合成ナノキャリアは、補体を活性化するヒドロキシル基を有する表面を含まず、その代わりに、補体を活性化するヒドロキシル基ではない成分から本質的に成る表面を含む。好ましい実施形態では、約100nm以下、好ましくは約100nm以下の最小寸法を有する、本発明による合成ナノキャリアは、実質的に補体を活性化する表面を含まないまたはその代わりに、実質的に補体を活性化しない成分から本質的に成る表面を含む。より好ましい実施形態では、約100nm以下、好ましくは約100nm以下の最小寸法を有する、本発明による合成ナノキャリアは、補体を活性化する表面を含まないまたはその代わりに、補体を活性化しない成分から本質的に成る表面を含む。
【0164】
用語「ナノキャリア」、「合成ナノキャリア」、また、その変形は、一般に、交換可能に本明細書において使用される。
【0165】
T細胞抗原:本明細書において使用されるように、用語「T細胞抗原」は、T細胞によって認識され、T細胞における免疫応答を引き起こす任意の抗原を指す(例えば、主要組織適合複合体分子(MHC)に結合した抗原またはその部分の提示を介してT細胞上のT細胞受容体によって特異的に認識される抗原)。いくつかの実施形態では、T細胞抗原である抗原はまた、B細胞抗原でもある。他の実施形態では、T細胞抗原はまた、B細胞抗原でもない。T細胞抗原は、一般に、タンパク質またはペプチドである。T細胞抗原は、CD8+T細胞応答、CD4+T細胞応答、またはその両方を刺激する抗原であってもよい。ナノキャリアは、そのため、いくつかの実施形態では、両方のタイプの応答を有効に刺激することができる。
【0166】
標的:本明細書において使用されるように、用語「標的」または「マーカー」は、特定のターゲティング成分に特異的に結合することができる任意の実体を指す。いくつかの実施形態では、標的は、1つまたは複数の特定の組織型に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、標的は、1つまたは複数の特定の細胞型に特異的に結合する。例えば、細胞型の特異的なマーカーは、典型的に、細胞の参照集団におけるよりも、その細胞型において少なくとも2倍高いレベルで発現される。いくつかの実施形態では、細胞型特異的マーカーは、参照集団におけるその平均発現の少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、または少なくとも1000倍高いレベルで存在する。細胞型特異的マーカーの検出または測定は、多数の、ほとんどの、または他のすべてのタイプの細胞から対象の1つまたは複数の細胞型を区別することを可能にしてもよい。いくつかの実施形態では、標的は、本明細書において記載されるように、タンパク質、炭水化物、脂質、および/または核酸を含むことができる。
【0167】
標的化(targeted):物質は、それが標的に特異的に結合する場合、本明細書において記載される目的のために「標的化」されていると考えられる。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、ストリンジェントな条件下で標的に特異的に結合する。ターゲティング成分を含む、ワクチンナノキャリアなどのような本発明のナノキャリアは、ターゲティング成分が標的に特異的に結合する場合、「標的化」されていると考えられ、それによって、特異的な器官、組織、細胞、および/または細胞下の場所に全ナノキャリアを送達する。
【0168】
ターゲティング成分:本明細書において使用されるように、用語「ターゲティング成分」および「高親和性ターゲティング成分」は、交換可能に使用され、細胞の成分に結合する任意の成分を指す。典型的に、細胞の成分へのターゲティング成分の結合は、高親和性結合相互作用となる。免疫特徴表面に存在し、APCに対するターゲティング(および高いアビディティの結合)をもたらす複数の成分の他に、本発明のナノキャリアは、1つまたは複数のさらなるターゲティング成分をさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、細胞の成分に特異的に結合する。そのような成分は、「標的」または「マーカー」と呼ばれる。ターゲティング成分は、ポリペプチド、糖タンパク質、核酸、小分子、炭水化物、脂質などであってもよい。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、抗体またはその特徴的な部分である。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、受容体またはその特徴的な部分である。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、リガンドまたはその特徴的な部分である。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、細胞型特異的マーカーに結合する核酸ターゲティング成分(例えばアプタマー)である。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、小分子である。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、ナノキャリアの表面にある。他の実施形態では、ターゲティング成分は、ナノキャリア内に封入されている。さらに他の実施形態では、ターゲティング成分は、ナノキャリアと結合している。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、ナノキャリアと共有結合している。他の実施形態では、ターゲティング成分は、ナノキャリアと非共有結合している。さらにまた他の実施形態では、ターゲティング成分は、細胞の表面に発現された受容体に結合する。ターゲティング成分は、いくつかの実施形態では、可溶性受容体に結合する。いくつかの実施形態では、可溶性受容体は、補体タンパク質または既存の抗体である。さらなる実施形態では、ターゲティング成分は、抗原提示細胞、T細胞、またはB細胞へのナノキャリアの送達のためのものである。いくつかの実施形態では、抗原提示細胞は、マクロファージである。他の実施形態では、マクロファージは、被膜下洞マクロファージである。さらに他の実施形態では、抗原提示細胞は、樹状細胞である。いくつかの実施形態では、抗原提示細胞は、濾胞樹状細胞である。ターゲティング成分の特定の非限定的な例は、CD11b、CD169、マンノース受容体、DEC−205、CD11c、CD21/CD35、CX3CR1、またはFc受容体に結合する分子を含む。いくつかの実施形態では、先のもののいずれかに結合する分子は、抗体またはその抗原結合断片である(例えば抗CD169抗体)。いくつかの実施形態では、Fc受容体に結合する分子は、免疫グロブリン(例えばIgG)のFc部分を含むものである。他の実施形態では、免疫グロブリンのFc部分は、ヒトFc部分である。いくつかの実施形態では、CX3CR1に結合する分子は、CX3CL1(フラクタルカイン)である。CD169に結合するターゲティング成分は、抗CD169抗体およびCD169のリガンド、例えばシアル酸を付加したCD227、CD43、CD206、または結合機能を保持するこれらのリガンドの部分、例えば可溶性部分を含む。
【0169】
治療有効量:本明細書において使用されるように、用語「治療有効量」は、疾患、障害、および/または状態に罹患しているまたはそれに感受性の被験体に投与された場合に、疾患、障害、および/または状態を治療する、緩和する、改善させる、軽減する、その症状を緩和する、それを予防する、その発症を遅らせる、その進行を阻害する、その重症度を低下させる、および/またはその発生率を低下させるのに十分である、治療剤、予防薬、および/または診断薬(例えば本発明のワクチンナノキャリア)の量を意味する。用語はまた、被験体において免疫応答を調整する、本明細書において提供されるナノキャリアまたはその組成物の量を指すようにも意図される。
【0170】
治療剤:本明細書において使用されるように、用語「治療剤」は、被験体に投与された場合に、治療上の、予防的な、および/もしくは診断上の効果を有するならびに/または所望の生物学的および/もしくは薬理学的効果を引き出す、任意の作用物質を指す。
【0171】
治療すること:本明細書において使用されるように、用語「治療すること」は、特定の疾患、障害、および/または状態の1つまたは複数の症状または特徴を部分的にまたは完全に緩和すること、改善させること、軽減すること、その発症を遅らせること、その進行を阻害すること、その重症度を低下させること、および/またはその発生率を低下させることを指す。例えば、微生物感染症を「治療すること」は、微生物の生存、成長、および/または拡散を阻害することを指してもよい。治療は、疾患、障害、ならびに/または状態と関連する病状を発症する危険性を減少させる目的のために、疾患、障害、および/もしくは状態の徴候を示さない被験体にならびに/または疾患、障害、および/もしくは状態の初期の徴候のみを示す被験体に施されてもよい。いくつかの実施形態では、治療は、被験体への、本発明のワクチンナノキャリアの送達を含む。
【0172】
万能なT細胞抗原:本明細書において使用されるように、用語「万能なT細胞抗原」は、T細胞の助けを促進することができ、完全に無関係な抗原に対する免疫応答を増強することができるT細胞抗原を指す。万能なT細胞抗原は、破傷風トキソイドおよび破傷風トキソイド、エプスタイン−バーウイルス、またはインフルエンザウイルスに由来する1つまたは複数のペプチドを含む。万能なT細胞抗原はまた、赤血球凝集素、ノイラミニダーゼ、もしくは核タンパク質などのようなインフルエンザウイルスの成分またはそれに由来する1つもしくは複数のペプチドを含む。
【0173】
ワクチンナノキャリア:本明細書において使用されるように、用語「ワクチンナノキャリア」は、少なくとも1つの免疫調節作用物質または免疫刺激作用物質を含む合成ナノキャリアを指す。ある実施形態では、ワクチンナノキャリアは、少なくとも2つのタイプの免疫調節作用物質を含む。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は、抗原であり、ワクチンナノキャリアは、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の抗原を含む。異なる抗原は、完全に異なる抗原分子とすることができるもしくはそれに由来するものとすることができるまたは異なる抗原は、同じ抗原分子由来の異なるエピトープとすることができる。他の実施形態では、ワクチンナノキャリアは、同じ抗原分子由来の2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の異なるエピトープを含む。ワクチンナノキャリアは、粒子の任意の形態であってもよい。ワクチンナノキャリアは、いくつかの実施形態では、T細胞および/またはB細胞において免疫応答を刺激することができる。他の実施形態では、ワクチンナノキャリアは、免疫応答を増強する、抑制する、指示する、または再指示することができる。いくつかの実施形態では、当技術分野において入手可能な任意のアッセイは、T細胞および/またはB細胞が刺激されたかどうかを決定するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、T細胞刺激は、サイトカインの、抗原に誘導された産生、T細胞の、抗原に誘導された増殖、および/またはタンパク質発現における、抗原に誘導された変化をモニターすることによって、アッセイされてもよい。いくつかの実施形態では、B細胞刺激は、抗体力価、抗体親和性、中和アッセイにおける抗体性能、クラススイッチ組換え、抗原特異的抗体の親和性成熟、記憶B細胞の発達、長期間、大量の高親和性抗体を産生することができる、長命の形質細胞の発達、胚中心反応、および/または中和アッセイにおける抗体性能をモニターすることによってアッセイされてもよい。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、被験体内の特定の標的(例えば器官、組織、細胞、および/または細胞下の場所)にワクチンナノキャリアを送達するのを助けることができる少なくとも1つのターゲティング成分をさらに含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、T細胞および/またはB細胞において免疫応答を刺激するのを助けることができる少なくとも1つの免疫刺激作用物質をさらに含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、調整可能な膜強剛性および制御可能なリポソーム安定性を可能にする少なくとも1つのナノ粒子をさらに含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、脂質、両親媒性化合物、ポリマー、糖、ポリマーマトリックス、および/または非ポリマー粒子を含む。
【0174】
ベクター効果:適応免疫応答が所望される、抗原ではなく、合成ナノキャリアに対する免疫応答の確立。ベクター効果は、合成ナノキャリアの材料がその化学組成または構造のために強力な免疫応答を刺激することができる場合、起こり得る。
【0175】
水溶性で非粘着性のポリマー。本明細書において使用されるように、用語「水溶性で非粘着性のポリマー」は、水中で可溶性であり、低下した生物汚染特性(biofouling property)を与えることができるポリマーを指す。いくつかの実施形態では、水溶性で非粘着性のポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアルキレングリコール、およびポリアルキレンオキシドである。
【0176】
ワクチン
ワクチン接種(vaccination)は、典型的に、自然状態では受動的または能動的なものかのいずれかである。一般に、能動的ワクチン接種は、不要な、望まれない、および/または外来性のものとして認識され、内因的な免疫応答を引き出す、1つまたは複数の作用物質に対する被験体の免疫系の曝露に関与しており、抗体分泌B細胞または抗原特異的エフェクターT細胞および抗原特異的記憶T細胞もしくはその両方を次いで生成する、抗原特異的ナイーブリンパ球の活性化をもたらす。このアプローチは、同じ抗原物質への繰り返しの曝露によって時々高められてもよい、長命の防御免疫をもたらすことができる。能動ワクチン接種に対する長命の免疫応答の成功の見込みは、ほとんどの臨床実践場面において受動的ワクチン接種よりもこの戦略を望ましいものにし、それによって、レシピエントは、急速な特別な(ad hoc)保護を与えてもよいが、典型的に、持続性の免疫を確立しない前もって形成された抗体または抗原特異的エフェクターリンパ球を注射される。
【0177】
種々様々のワクチン製剤は、ヒトにおいて用いられているまたは用いられてきた。ヒトにおける投与の最も一般的なルートは、筋肉内(i.m.)注射によるものであるが、ワクチンはまた、経口的に、鼻腔内に、皮下に、吸入で(inhalationly)、または静脈内に適用されてもよいまたは投与されてもよい。ほとんどの場合では、ワクチン由来の抗原は、局所リンパ節においてナイーブリンパ球に最初に提示される。
【0178】
例えば微生物病原体に対するいくつかの現在のワクチンは、微生物の生きた弱毒化変異体株もしくは非毒性変異体株または死滅させた生物もしくはその他に不活化生物から成る。他のワクチンは、多かれ少なかれ、ときに、他の分子、特にアジュバント活性を与えることができるタンパク質に融合される、表面の炭水化物または組換え病原体由来タンパク質などのような病原体溶解物の精製成分を利用する。
【0179】
生きた弱毒化病原体または不活化病原体を利用するワクチンは、典型的に、活発な免疫応答をもたらすが、それらの使用には、限界がある。例えば、生きたワクチン株は、ときに、とりわけ免疫無防備状態のレシピエントに投与された場合に、感染性病状を引き起こし得る。さらに、多くの病原体、特にウイルスは、それらのゲノムにおいて絶え間のない急速な変異を受け、これは、それらが、抗原性が異なるワクチン株に対する免疫応答を免れるのを可能にする。しかしながら、ほとんどまたはすべての病原体は、容易に変異しないある種の抗原決定基を有すると考えられる、なぜなら、それらが必須の機能と関連するからである。より変異し、非必須のエピトープではなく、これらの保存されたエピトープに対して向けられる抗体が、高度に変異を起こしやすいウイルスを防御することができる(Babaら、2000年、Nat. Med., 6巻:200頁;参照によって本明細書において組み込まれる)。生きたまたは死滅させたそのままの病原体に基づくワクチンは、必ずしも、これらの重要なエピトープの認識を促進するわけではないが、高度に変異する決定基に対するその攻撃に集中するように本質的に免疫系の「注意を転じさせる」かもしれない。したがって、本発明は、ウイルス粒子の高度に免疫原性の粒子状の性質を模倣するが、必須で、不変のエピトープを選択的に提示する操作されたワクチンナノキャリアが、そのままの微生物よりもはるかに強力で、「回避に影響されない」中和抗体およびエフェクターT細胞応答を得ることができるという認識を包含する。
【0180】
ワクチンが流入領域リンパ節において抗体応答を刺激する(またはしそこなう)正確なメカニズムは、まだ完全に理解されていない。B細胞およびT細胞は、最初に、異なる解剖学的な領域、表面的に位置づけられるB濾胞ならびに取り囲む副皮質および深部皮質(deep cortex)においてそれぞれ隔離されている。抗原投与に際して、濾胞中の抗原特異的B細胞およびT細胞エリア中のCD4 T細胞は、活性化されるようになり、次いで、2つのコンパートメント間の境界ゾーンに向かって遊走する。リンパによって運ばれる抗原を貪食したB細胞は、獲得した物質を処理し、活性化CD4 T細胞(T
FH細胞)によって次いで認識される、MHCクラスII表面分子中に抗原ペプチドを提示し始める。抗原認識は、T
FH細胞がB細胞への助けを提供することを可能にし、これは、強力な生存シグナルを構成し、B濾胞内に胚中心(GC)の形成を引き起こす。GC反応は、クラススイッチ組換え、抗原特異的抗体の親和性成熟、ならびに長期間、大量の高親和性抗体を産生することができる記憶B細胞および長命の形質細胞の形成を促進する。したがって、本発明は、ワクチンナノキャリアが、抗原物質がB細胞およびT細胞の両方によって効率的に認識されることを可能にし、活発なGC反応を誘導する成分を有していてもよいという認識を包含する(
図1)。
【0181】
本発明は、現在のワクチン技術のこれらの上記の限界を克服することができるワクチン送達のためのワクチンナノキャリアを開発するためのシステムを記載する。本発明は、直径が数十〜数百ナノメートルの長さがあり、強力な細胞性応答および抗体応答を誘導する、リンパによって運ばれるウイルス粒子が、流入領域リンパ節の被膜下洞中のマクロファージ(つまり被膜下洞マクロファージ、略してSCS−Mph)の表面に捕捉され、保持されるという認識を包含する。これらのマクロファージは、濾胞B細胞へのそのままのウイルス粒子の効率的な初期の提示に関与する。いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは、ウイルス粒子を模倣し、SCS−Mphを標的にする。実施例1において示されるように、脂質およびポリエチレングリコールの単層により表面が安定化されたCy5封入ポリ(乳酸−コグリコール酸(lactic−coglycolic acid))(PLGA)ナノ粒子(50nm〜150nm)の皮下注射に際して、注射されたナノ粒子は、リンパ管に容易に入り、リンパによって運ばれるウイルスと同様に、流入領域リンパ節の被膜下洞中で結合する。B細胞および/またはT細胞を刺激する免疫調節作用物質(複数可)を運搬する同様のナノキャリアは、被験体をワクチン接種するのに特に有用である。
【0182】
したがって、本発明は、免疫調節作用物質を運搬する、リンパによって運ばれるウイルスサイズのナノキャリアなどのようなナノキャリアが、あたかもそれらがウイルスかのように、リンパ節において認識され得、例えば、粒子が、B細胞および/またはT細胞によって認識される免疫調節作用物質(複数可)を含む場合に、強力な免疫応答を引き出し得るという認識を包含する。
【0183】
表面に免疫調節作用物質を運搬することおよび/または同様のもしくは異なる免疫調節作用物質を内部に装填することによって、ナノキャリアは、免疫系の異なる細胞にこれらの免疫調節作用物質を同時に送達し、それらを刺激することができる。ある実施形態では、ナノキャリア表面に提示された免疫調節作用物質は、B細胞を刺激し、ナノキャリア内に封入された免疫調節作用物質は、リンパ組織において、樹状細胞(DC)などのような抗原提示細胞(APC)によって(および活性化後にB細胞によって)処理され、T細胞に提示される。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分(例えば抗体またはその断片、ペプチドまたはポリペプチド、Affibody(登録商標)、Nanobody(商標)、AdNectin(商標)、Avimer(商標)、アプタマー、Spiegelmer(登録商標)、小分子、脂質、炭水化物など)を有するナノキャリアの表面を改変することによって、ナノキャリアは、DC、SCS−Mph、FDC、T細胞、B細胞、および/またはその組み合わせなどのような、特異抗原を提示する細胞に免疫調節作用物質を選択的に送達することができる。ナノキャリアは、1つまたは複数の脂質ナノ粒子、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤ベースのエマルジョン、デンドリマー、および/または脂質ポリマーナノ粒子などのような、ナノ物質の組み合わせを使用して開発されたナノ粒子とすることができるが、これらに限定されない。ワクチンナノキャリアは、「ワクチンナノキャリア」と題する部においてさらに詳細に記載される。
【0184】
T細胞
本発明は、例えば免疫調節作用物質を免疫系の細胞に送達するためのワクチンナノキャリアを提供する。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、APCに送達することができ、次いでAPCによって処理され、T細胞に送達される少なくとも1つの免疫調節作用物質を含む。
【0185】
プロフェッショナルAPCは、ファゴサイトーシスまたはエンドサイトーシスのいずれかによる抗原内在化において非常に有効であり、したがって、APC膜上のクラスII主要組織適合性複合体(クラスIIMHC)分子またはクラスIMHC分子のいずれかと結合した抗原の断片を提示する。CD4 T細胞は、APC膜上の抗原−クラスIIMHC分子複合体を認識しそれと相互作用し、一方CD8T細胞は、抗原−クラスIMHC分子複合体を認識しそれと相互作用する。追加的な共刺激シグナルおよび調節サイトカインが次いでAPCにより生成され、T細胞活性化をもたらす。
【0186】
免疫調節作用物質
本発明は、1つまたは複数の免疫調節作用物質を含むワクチンナノキャリアを提供する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫調節作用物質を含む本発明のナノキャリアをワクチンとして使用する。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は、単離および/または組換えタンパク質またはペプチド、炭水化物、糖タンパク質、糖ペプチド、プロテオグリカン、不活化生物および不活化ウイルス、死んだ生物および死んだウイルス、遺伝子改変生物または遺伝子改変ウイルス、ならびに細胞抽出物を含むことができる。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は、核酸、炭水化物、脂質、および/または小分子を含むことができる。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は、免疫応答を引き出す免疫調節作用物質である。他の実施形態では、免疫調節作用物質は、タンパク質またはペプチドが発現されると免疫応答が引き出される、そのタンパク質またはペプチドをコードするポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は抗原である。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質はタンパク質またはペプチドである。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質はワクチンに使用する。
【0187】
いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は病原体由来の任意のタンパク質および/または他の抗原である。病原体はウイルス、細菌、真菌、原生動物、寄生虫などであってよい。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は、例えば、Borrelia属種、Bacillus anthracis、Borrelia burgdorferi、Bordetella pertussis、Camphylobacter jejuni、Chlamydia属種、Chlamydial psittaci、Chlamydial trachomatis、Clostridium属種、Clostridium tetani、Clostridium botulinum、Clostridium perfringens、Corynebacterium diphtheriae、Coxiella属種、Enterococcus属種、Erlichia属種、Escherichia coli、Francisella tularensis、Haemophilus属種、Haemophilus influenzae、Haemophilus parainfluenzae、Lactobacillus属種、Legionella属種、Legionella pneumophila、Leptospirosis interrogans、Listeria属種、Listeria monocytogenes、Mycobacterium属種、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium leprae Mycoplasma属種、Mycoplasma pneumoniae、Neisseria属種、Neisseria meningitidis、Neisseria gonorrhoeae、Pneumococcus属種、Pseudomonas属種、Pseudomonas aeruginosa、Salmonella属種、Salmonella typhi、Salmonella enterica、Rickettsia属種、Rickettsia ricketsii、Rickettsia typhi、Shigella属種、Staphylococcus属種、Staphylococcus aureus、Streptococcus属種、Streptococcus pnuemoniae、Streptococcus pyrogenes、Streptococcus mutans、Treponema属種、Treponema pallidum、Vibrio属種、Vibrio cholerae、Yersinia pestisなどの細菌生物の抗原を含むことができる。
【0188】
いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は、例えば、ポックスウイルス、疱瘡(天然痘)、エボラウイルス、ヘパドナウイルス、マールブルグウイルス、デング熱ウイルス、インフルエンザAおよびB、パラインフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス、はしか(麻疹ウイルス)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、水痘帯状疱疹、単純ヘルペス1および2、サイトメガロウイルス、エプスタインバーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、リノウイルス、アデノウイルス、オルトミクソウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、おたふく風邪、狂犬病、レオウイルス、風疹、トガウイルス、レトロウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎、日本脳炎、黄熱病、リフトバレー熱、A、B、C、D、およびE型肝炎ウイルスなどのウイルス生物の抗原を含むことができる。ウイルス生物は、dsDNAウイルス、ssDNAウイルス、dsRNAウイルス、(+)ssRNAウイルス、(−)sRNAウイルス、ssRNA−RTウイルス、およびdsDNA−RTウイルスである生物を含む。
【0189】
いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は、例えば、Aspergillus属種、Candida属種、Candida albicans、Candida tropicalis、Cryptococcus属種、Cryptococcus neoformans、Entamoeba histolytica、Histoplasma capsulatum、Leishmania属種、Nocardia asteroides、Plasmodium falciparum、Toxoplasma gondii、Trichomonas vaginalis、Toxoplasma属種、Trypanosoma brucei、Schistosoma mansoniなどの真菌生物、原生動物生物、および/または寄生虫生物の抗原を含むことができる。
【0190】
いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質はHCVのE1および/またはE2タンパク質を含むことができる。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質はHIVのgp120を含むことができる。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質はインフルエンザウイルスのヘマグルチニンおよび/またはノイラミニダーゼを含むことができる。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は、肺炎球菌多糖体またはStreptococcus pneumoniaeのファミリー1および/もしくはファミリー2のPspAまたは莢膜多糖体5型および8型またはStapylococcus aureusの付着性マトリックス分子を認識する微生物表面成分を含むことができる。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は、Candida albicansのマンナンまたはCryptococcus neoformansのクリプトコッカス莢膜多糖体を含むことができる。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は、Plasmodium falciparumのPfEMP1、またはプラスモジウム感染赤血球細胞上で発現される他の寄生虫由来抗原、またはToxoplasma gondiのGRA7を含むことができる。
【0191】
本明細書に記載する任意の抗原は、完全に死滅させた生物、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、糖ペプチド、プロテオグリカン、タンパク質もしくはペプチドをコードする核酸、炭水化物、小分子、またはこれらの組合せの形であってよい。
【0192】
いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は、それに対する少なくとも1つのワクチンが既に存在する微生物に由来する。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は、それに対するワクチンが開発されていない微生物に由来する。
【0193】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、少なくとも1つの型の免疫調節作用物質を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアの全ての免疫調節作用物質が互いに同一である。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアはいくつかの異なる免疫調節作用物質を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは複数の個別の免疫調節作用物質を含み、それらは全て同じである。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、正確に1つの型の免疫調節作用物質を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、正確に2つの異なる型の免疫調節作用物質を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、3つ以上の異なる型の免疫調節作用物質を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多くの異なる型の免疫調節作用物質を含む。
【0194】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、いずれも単一の属の微生物に由来する2つの型の免疫調節作用物質を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、いずれも単一の属および種の微生物に由来する2つの型の免疫調節作用物質を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、いずれも単一の属、種、および系統の微生物に由来する2つの型の免疫調節作用物質を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、いずれも微生物の単一のクローンに由来する2つの型の免疫調節作用物質を含む。
【0195】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、全てが単一の属の微生物に由来する3つ以上の型の免疫調節作用物質を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、全てが単一の属および種の微生物に由来する3つ以上の型の免疫調節作用物質を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、全てが単一の属、種、および系統の微生物に由来する3つ以上の型の免疫調節作用物質を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、全てが微生物の単一のクローンに由来する3つ以上の型の免疫調節作用物質を含む。
【0196】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、全てが単一の属の微生物に由来する2つ以上の型の免疫調節作用物質を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、全てが単一の属および種の微生物に由来する2つ以上の型の免疫調節作用物質を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、全てが単一の属、種、および系統の微生物に由来する2つ以上の型の免疫調節作用物質を含む。
【0197】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、異なる系統の単一の種の微生物に由来する2つ以上の型の免疫調節作用物質を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、同じ属の異なる種の微生物に由来する2つ以上の型の免疫調節作用物質を含む。他の実施形態では、ワクチンナノキャリアは、それぞれ異なる属の微生物に由来する2つ以上の型の免疫調節作用物質を含む。
【0198】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、B細胞とT細胞の両方において免疫応答を刺激する1つの型の免疫調節作用物質を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは2つの型の免疫調節作用物質を含み、第1の免疫調節作用物質はB細胞を刺激し、第2の型の免疫調節作用物質はT細胞を刺激する。特定の実施形態では、一方または両方の作用物質がT細胞およびB細胞を刺激することができる。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは3つ以上の型の免疫調節作用物質を含み、1つまたは複数の型の免疫調節作用物質がB細胞を刺激し、1つまたは複数の型の免疫調節作用物質がT細胞を刺激する。
【0199】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、ワクチンナノキャリアの外側表面と結合した少なくとも1つの型の免疫調節作用物質を含む。いくつかの実施形態では、結合は共有結合である。いくつかの実施形態では、共有結合は1つまたは複数のリンカーによって仲介される。いくつかの実施形態では、結合は非共有結合である。いくつかの実施形態では、非共有結合は電荷相互作用、親和性相互作用、金属配位、物理的吸着、ホスト−ゲスト相互作用、疎水性相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファンデルワールス相互作用、磁気相互作用、静電相互作用、双極子間相互作用、および/またはこれらの組合せによって仲介される。どのようにして免疫調節作用物質がワクチンナノキャリアと結合することができるかの、さらなる詳細な記載に関しては、「ワクチンナノキャリアの生成」という表題の以下のセクションをご覧頂きたい。
【0200】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、脂質膜(例えば脂質二重層、脂質単層など)を含む。少なくとも1つの免疫調節作用物質が脂質膜と結合することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫調節作用物質が脂質膜内に埋め込まれている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫調節作用物質が脂質二重層の内腔に埋め込まれている。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、脂質膜の内側表面と結合した少なくとも1つの免疫調節作用物質を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫調節作用物質が、ワクチンナノキャリアの脂質膜内に封入されている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの型の免疫調節作用物質はワクチンナノキャリアの複数の位置に位置してよい。例えば、第1の型の免疫調節作用物質は脂質膜内に埋め込むことができ、第2の型の免疫調節作用物質はワクチンナノキャリアの脂質膜内に封入することができる。別の例を挙げると、第1の型の免疫調節作用物質は脂質膜の外側表面と結合することができ、第2の型の免疫調節作用物質はワクチンナノキャリアの脂質膜の内側表面と結合することができる。いくつかの実施形態では、第1の型の免疫調節作用物質はワクチンナノキャリアの脂質二重層の内腔に埋め込むことができ、脂質二重層は、その全体に第2の型の免疫調節作用物質が分布するポリマーマトリックスを封入することができる。いくつかの実施形態では、第1の型の免疫調節作用物質と第2の型の免疫調節作用物質は、ワクチンナノキャリアの同じ場所に存在してよい(例えば、それらはいずれもワクチンナノキャリアの外側表面と結合することができる、それらはいずれもワクチンナノキャリア内に封入することができる、など)。
【0201】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、ポリマー(例えばポリマーコア)を含む。少なくとも1つの型の免疫調節作用物質はポリマーと結合することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの型の免疫調節作用物質がポリマー内に埋め込まれている。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、ポリマーの内側表面と結合した少なくとも1つの型の免疫調節作用物質を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの型の免疫調節作用物質がワクチンナノキャリアのポリマーと封入されている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの型の免疫調節作用物質はワクチンナノキャリアの複数の位置に位置してよい。例えば、第1の型の免疫調節作用物質はポリマー内に埋め込むことができ、第2の型の免疫調節作用物質はワクチンナノキャリアのポリマーコア周囲の脂質膜内に封入することができる。別の例を挙げると、第1の型の免疫調節作用物質はポリマーの外側表面と結合することができ、第2の型の免疫調節作用物質はワクチンナノキャリアのポリマー内に埋め込むことができる。
【0202】
当業者は、上記の例が、多数の免疫調節作用物質をワクチンナノキャリアの異なる場所で結合させることが可能である、多くの異なる方法の単なる例示であることを理解しているはずである。複数の免疫調節作用物質は、ワクチンナノキャリアの任意の場所の組合せで位置してよい。さらに、上記の例は、ナノキャリアの他の作用物質に適用することもできる(例えば免疫調節作用物質)。
【0203】
いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質はT細胞抗原であり、T細胞抗原はワクチン接種の対象である同じ病原体に由来する。この場合、最初に少数のナイーブT細胞を刺激して病原体特異的エフェクターT細胞および記憶T細胞を生成する。いくつかの実施形態では、それに対する広範囲の免疫が既に存在する感染因子(例えば、破傷風トキソイド、またはインフルエンザウイルスの共通の成分、ヘマグルチニン、ノイラミニダーゼなど、または核タンパク質)などの、無関係な源から抗原を得ることができる。後者の場合、ワクチンは先の感染または先のワクチン接種に応答して生じた記憶T細胞の存在を利用する。記憶細胞は一般に抗原の再攻撃により迅速かつ活発に反応し、したがって、B細胞への助けの優れた源をもたらし得る。
【0204】
他のT細胞抗原には、変性疾患抗原、感染疾患抗原、癌抗原、同種抗原、アトピー性疾患抗原、自己免疫疾患抗原、接触感作性物質、ハプテン、異種抗原、または代謝疾患酵素もしくはその酵素産物が挙げられるが、これらだけには限られない。いくつかの実施形態では、感染疾患抗原は、本明細書で記載する任意のウイルスに由来する任意の抗原を含むウイルス抗原である。T細胞抗原の例は、本明細書の他の箇所で与える抗原を含む。
【0205】
いくつかの実施形態では、T細胞抗原を完全タンパク質(intact protein)としてナノキャリアに組み込む。いくつかの実施形態では、T細胞抗原を改変タンパク質としてナノキャリアに組み込む。いくつかの実施形態では、T細胞抗原を変異タンパク質としてナノキャリアに組み込む。いくつかの実施形態では、T細胞抗原を、MHCクラスII複合体への抗原の組み込みを促進することができ、したがってヘルパー応答をさらに助けることができる重複ペプチドの集合(collection)として与える。いくつかの実施形態では、T細胞抗原を、MHCクラスII複合体への抗原の組み込みを促進することができ、したがってヘルパー応答をさらに助けることができる非重複ペプチドの集合として与える。いくつかの実施形態では、T細胞抗原を、抗原をコードする核酸として与える。
【0206】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアなどの本発明のナノキャリアは、90重量%未満、75重量%未満、50重量%未満、40重量%未満、30重量%未満、20重量%未満、15重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、1重量%未満、または0.5重量%未満の免疫調節作用物質を含む。
【0207】
ターゲティング成分
いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは、1つまたは複数のターゲティング成分を含む。本発明の特定の実施形態では、ナノキャリアを1つまたは複数のターゲティング成分と結合させる。ターゲティング成分は、臓器、組織、細胞、細胞外マトリックス、および/または細胞内の位置と関係がある構成要素と結合する任意の成分である。いくつかの実施形態では、このような構成要素を「標的」または「マーカー」と呼び、これらは以下でさらに詳細に論じる。
【0208】
ターゲティング成分は、核酸、ポリペプチド、糖タンパク質、炭水化物、脂質、小分子などであってよい。例えばターゲティング成分は、細胞型特異的マーカーと結合する核酸ターゲティング成分(例えばアプタマー、Spiegelmer(登録商標)など)であってよい。一般に、アプタマーは、ポリペプチドなどの特定標的と結合する、オリゴヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、またはそのアナログもしくは誘導体)である。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、細胞表面受容体に対する天然に存在するリガンドまたは合成リガンド、例えば増殖因子、ホルモン、LDL、トランスフェリンなどであってよい。ターゲティング成分は抗体であってよく、この用語は抗体断片、抗体の特徴的部分、単鎖抗体などを含むものとする。Affibodies(登録商標)、Nanobodies(商標)、AdNectins(商標)、Avimers(商標)などのような合成結合タンパク質を使用することができる。例えば、ファージディスプレイなどの手順を使用して、ペプチドターゲティング成分を同定することができる。この広く使用されている技法を使用して、様々な異なる細胞型の細胞特異的リガンドが同定されている。
【0209】
本発明によれば、ターゲティング成分は、特定臓器、組織、細胞、および/または細胞内の位置と結合した1つまたは複数の「標的」または「マーカー」を認識する。いくつかの実施形態では、標的は、1個もしくは数個の細胞型、1個もしくは数個の疾患、および/または1個もしくは数個の発生段階(developmental stage)と独占的にまたは主として関係があるマーカーであってよい。細胞型特異的マーカーは、例えば、ほぼ等しい量の細胞(例えば、ほぼ等しい数の細胞、ほぼ等しい体積の細胞、ほぼ等しい塊の細胞など)を含有する混合物からなってよい参照細胞集団より、少なくとも2倍高いレベルでその細胞型において典型的に発現される。いくつかの実施形態では、細胞型特異的マーカーは、参照集団におけるその平均的発現より、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍、少なくとも5000倍、または少なくとも10,000倍高いレベルで存在する。細胞型特異的マーカーの検出または測定は、多数、大部分、または全ての他の型の細胞と、対象の1つまたは複数の細胞型の識別を可能にし得る。
【0210】
いくつかの実施形態では、標的は、タンパク質、炭水化物、脂質、および/または核酸を含むことができる。特定の実施形態では、標的は、タンパク質および/またはその特徴的部分、例えば、腫瘍マーカー、インテグリン、細胞表面受容体、膜貫通タンパク質、細胞内タンパク質、イオンチャネル、膜輸送タンパク質、酵素、抗体、キメラタンパク質、糖タンパク質などを含むことができる。特定の実施形態では、標的は、炭水化物および/またはその特徴的部分、例えば、糖タンパク質、糖(例えば単糖、二糖、多糖)、糖衣(すなわち、大部分の真核細胞の外側表面の炭水化物が豊富な辺縁部)などを含むことができる。特定の実施形態では、標的は、脂質および/またはその特徴的部分、例えば、油、脂肪酸、グリセリド、ホルモン、ステロイド(例えば、コレステロール、胆汁酸)、ビタミン(例えばビタミンE)、リン脂質、スフィンゴ脂質、リポタンパク質などを含むことができる。特定の実施形態では、標的は、核酸および/またはその特徴的部分、例えば、DNA核酸、RNA核酸、改変DNA核酸、改変RNA核酸、ならびにDNA、RNA、改変DNA、および改変RNAの任意の組合せを含む核酸などを含むことができる。
【0211】
いくつかの実施形態では、ターゲティング成分はVSV由来の表面糖タンパク質分子であり得る。VSVは、toll様受容体アゴニストである単一の表面分子VSV−Gを含む。VSVは免疫系の細胞を効率よく標的にし、したがって、いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、ワクチンナノキャリアを免疫系の細胞に対して標的とするためにVSV表面分子を含むことができる。
【0212】
いくつかの実施形態では、標的は腫瘍マーカーである。いくつかの実施形態では、腫瘍マーカーは、健常細胞および/または正常細胞においてではなく腫瘍細胞において発現される抗原である。いくつかの実施形態では、腫瘍マーカーは、健常細胞および/または正常細胞におけるより腫瘍細胞においてより高頻度で存在する抗原である。例示的な腫瘍マーカーには、gp100;Melan−A;チロシナーゼ;PSMA;HER−2/neu;MUC−1;トポイソメラーゼIlα;シアリル−Tn;癌胎児性抗原;ErbB−3−結合タンパク質−1;アルファ−フェトプロテイン;および癌精巣抗原MAGE−A1、MAGE A4、およびNY−ESO−1が挙げられるが、これらだけには限られない。
【0213】
いくつかの実施形態では、標的はAPCマーカーである。いくつかの実施形態では、APC標的は、非APCにおいてではなくAPCにおいて発現される抗原である。いくつかの実施形態では、APC標的は、非APCにおけるよりAPCにおいてより高頻度で存在する抗原である。例示的なAPCマーカーには、CD11c、CD11b、CD14、CD40、CD45、CD163、CD169(シアロアドヘシン)、DEC205(CD205)、MHCクラスII、DC−SIGN、CD21/CD35、およびFcγRI、PD−L2が挙げられるが、これらだけには限られない。いくつかの実施形態では、APCマーカーは任意のDCマーカーおよび/またはマクロファージマーカーを含み、その例は本明細書に記載する。
【0214】
特定の実施形態では、標的はDCマーカーである。いくつかの実施形態では、DC標的は、非DCにおいてではなくDCにおいて発現される抗原である。いくつかの実施形態では、DC標的は、非DCにおけるよりDCにおいてより高頻度で存在する抗原である。例示的なDCマーカーは「樹状細胞」という表題の以下のセクション中に列挙し、本明細書において他の箇所で与えるDCマーカーを含む。
【0215】
特定の実施形態では、標的はT細胞マーカーである。いくつかの実施形態では、T細胞標的は、非T細胞においてではなくT細胞において発現される抗原である。いくつかの実施形態では、T細胞標的は、非T細胞におけるよりT細胞においてより高頻度で存在する抗原である。例示的なT細胞マーカーは「T細胞ターゲティング成分」という表題の以下のセクション中に列挙し、本明細書において他の箇所で与えるT細胞マーカーを含む。
【0216】
いくつかの実施形態では、標的は特定細胞型において優先的に発現される。例えば、APC、DC、および/またはT細胞におけるAPC標的、DC標的、および/またはT細胞標的の発現は、参照集団と比較してAPC、DC、および/またはT細胞において、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、または少なくとも1000倍過剰発現である。いくつかの実施形態では、参照集団は非APC、非FDC、および/または非T細胞を含むことができる。
【0217】
いくつかの実施形態では、活性化APC、活性化DC、および/または活性化T細胞におけるAPC、DC、および/またはT細胞標的の発現は、参照集団と比較して活性化APC、活性化DC、および/または活性化T細胞において、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、または少なくとも1000倍過剰発現している。いくつかの実施形態では、参照集団は活性化されていないAPC、活性化されていないDC、および/または活性化されていないT細胞を含むことができる。
【0218】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアなどの本発明のナノキャリアは、50重量%未満、40重量%未満、30重量%未満、20重量%未満、15重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、1重量%未満、または0.5重量%未満のターゲティング成分を含む。
【0219】
いくつかの実施形態では、ターゲティング成分はナノキャリアと共有結合している。いくつかの実施形態では、共有結合はリンカーによって仲介される。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分はナノキャリアと共有結合していない。例えばターゲティング成分は、本発明の粒子のポリマーマトリックスの表面と結合し得る、そのポリマーマトリックス中に封入し得る、そのポリマーマトリックスによって囲まれ得る、および/またはそのポリマーマトリックス全体に分布し得る。例えば、いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は、ナノキャリアのリポソーム膜および/またはポリマーマトリックス中に封入し得る、それによって囲まれ得る、および/またはそれ全体に分散し得る。代替的または追加的に、電荷相互作用、親和性相互作用、金属配位、物理的吸着、ホスト−ゲスト相互作用、疎水性相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファンデルワールス相互作用、磁気相互作用、静電相互作用、双極子間相互作用、および/またはこれらの組合せによって、ナノキャリアとターゲティング成分を結合させることが可能である。ターゲティング成分とワクチンナノキャリアの結合は、「ワクチンナノキャリアの生成」という表題の以下のセクション中にさらに詳細に記載する。
【0220】
樹状細胞
樹状細胞(DC)は骨髄性白血球の1つの型であり、それらは特にTリンパ球に対する最も強力な抗原提示細胞である。休止状態のDCは未熟状態、寛容原性状態にあるリンパ節を含めた多くの組織に存在し、すなわちそれらは、中間〜高レベルのペプチド−MHC複合体を提示するが、共刺激分子はほとんどまたは全く提示せず、T細胞がエフェクター細胞へ分化するのに必要とするサイトカインを分泌しない。未熟なDCによる特異的抗原でもって提示されるT細胞は数日で増殖し始めるが、次いでそれらはアポトーシスによって死滅する、またはさらなる活性化に無反応な状態になる。抗原特異的T細胞応答のその後の枯渇によって、この抗原に対して宿主を選択的に寛容状態にする。対照的に、DCが成熟刺激に曝露されながら抗原を獲得すると、これらの細胞はMHCおよび共刺激分子を迅速に上方制御し、数種のサイトカインを分泌する。ここで成熟DCは、エフェクターT細胞および免疫学的記憶の強力なインデューサーである。DCの成熟は、特定の炎症性サイトカイン、DC発現CD40のライゲーション、TLRに対するアゴニスト(例えば、細菌エンドトキシン)、免疫複合体、活性化補体、壊死細胞、アポトーシス細胞、遊離尿酸塩、尿酸塩結晶、および/またはHMGB−1などの多くのシグナルによって誘導することができる。
【0221】
DEC−205(すなわちCD205)は、DCおよびリンパ組織中の胸腺上皮細胞において選択的に発現される、表面発現多機能性レクチンである。皮下注射用キメラα−DEC−205モノクローナル抗体を用いたin vivo実験は、DEC−205と結合したリガンドが、マウスおよびヒト両方のMHC分子における提示のためにエンドサイトーシスされた物質の有効な内在化およびその後のプロセシングを誘導することを示している(Hawigerら、2001年、J. Exp. Med.194巻:769頁、Bonifazら、2002年、J. Exp. Med.、196巻:1627頁、およびBozzaccoら、2007年、Proc. Natl. Acad. Sci., USA、104巻:1289頁、これらはそれぞれ参照によって本明細書に組み込まれる)。皮内または皮下注射によって、キメラ抗体はリンパ管を通って流入領域リンパ節に運ばれ、そこでそれは常在性DCと特異的に結合し、したがってそれらの成熟を引き起こさずに休止状態のDCに抗原を標的とするための手段をもたらす。したがって標的化DCは、免疫ではなく、提示抗原に対するT細胞の寛容性を誘導する。しかしながら、DCの成熟を誘導する免疫調節作用物質と共にDEC−205を標的とするとき(例えば、α−CD40またはDC発現TLRに対する1つまたは複数のリガンド、「免疫刺激作用物質」という表題の以下のセクション中でさらに詳細に論じる)、ワクチンは、次に細胞傷害性およびTh1型エフェクターT細胞応答を優先的に促進する強力な免疫刺激剤として作用する。
【0222】
DC−205、CD11c、クラスIIMHC、CD80、CD86、DC−SIGN、CD11b、BDCA−1、BDCA−2、BDCA−4、Siglec−H、CX3CR1、および/またはランゲリンと結合する成分によってDCターゲティングを実施することができる。
【0223】
いくつかの実施形態では、DC上で顕著に発現および/または提示される(すなわち、DCマーカー)任意の実体(entity)(例えばタンパク質、脂質、炭水化物、小分子など)と特異的に結合する任意のターゲティング成分によってDCターゲティングを達成することができる。例示的なDCマーカーには、CD1a(R4、T6、HTA−1);CD1b(R1);CD1c(M241、R7);CD1d(R3);CD1e(R2);CD11b(αMインテグリン鎖、CR3、Mo1、C3niR、Mac−1);CD11c(αXインテグリン、p150、95、AXb2);CDw117(ラクトシルセラミド、LacCer);CD19(B4);CD33(gp67);CD35(CR1、C3b/C4b受容体);CD36(GpIIIb、GPIV、PASIV);CD39(ATPデヒドロゲナーゼ、NTPデヒドロゲナーゼ−1);CD40(Bp50);CD45(LCA、T200、B220、Ly5);CD45RA;CD45RB;CD45RC;CD45RO(UCHL−1);CD49d(VLA−4α、α4インテグリン);CD49e(VLA−5α、α5インテグリン);CD58(LFA−3);CD64(FcγRI);CD72(Ly−19.2、Ly−32.2、Lyb−2);CD73(Ecto−5’ヌクレオチダーゼ(nucloticlase));CD74(Ii、不変鎖);CD80(B7、B7−1、BB1);CD81(TAPA−1);CD83(HB15);CD85a(ILT5、LIR3、HL9);CD85d(ILT4、LIR2、MIR10);CD85j(ILT2、LIR1、MIR7);CD85k(ILT3、LIR5、HM18);CD86(B7−2/B70);CD88(C5aB);CD97(BL−KDD/F12);CD101(IGSF2、P126、V7);CD116(GM−CSFRα);CD120a(TMFRI、p55);CD120b(TNFRII、p75、TNFR p80);CD123(IL−3Rα);CD139;CD148(HPTP−η、p260、DEP−1);CD150(SLAM、IPO−3);CD156b(TACE、ADAM17、cSVP);CD157(Mo5、BST−1);CD167a(DDR1、trkE、cak);CD168(RHAMM、IHABP、HMMR);CD169(シアロアドヘシン、Siglec−1);CD170(Siglec−5);CD171(L1CAM、NILE);CD172(SIRP−1α、MyD−1);CD172b(SIRPβ);CD180(RP105、Bgp95、Ly64);CD184(CXCR4、NPY3R);CD193(CCR3);CD196(CCR6);CD197(CCR7(wsCDw197));CDw197(CCR7、EBI1、BLR2);CD200(OX2);CD205(DEC−205);CD206(MMR);CD207(ランゲリン);CD208(DC−LAMP);CD209(DC−SIGN);CDw218a(IL18Rα);CDw218b(IL8Rβ);CD227(MUC1、PUM、PEM、EMA);CD230(プリオンタンパク質(PrP));CD252(OX40L、TNF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー4);CD258(LIGHT、TNF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー14);CD265(TRANCE−R、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー11a);CD271(NGFR、p75、TNFRスーパーファミリー、メンバー16);CD273(B7DC、PDL2);CD274(B7H1、PDL1);CD275(B7H2、ICOSL);CD276(B7H3);CD277(BT3.1、B7ファミリー:ブチロフィリン3);CD283(TLR3、TOLL様受容体3);CD289(TLR9、TOLL様受容体9);CD295(LEPR);CD298(ATP1B3、Na K ATPaseβ3サブミット);CD300a(CMRF−35H);CD300c(CMRF−35A);CD301(MGL1、CLECSF14);CD302(DCL1);CD303(BDCA2);CD304(BDCA4);CD312(EMR2);CD317(BST2);CD319(CRACC、SLAMF7);CD320(8D6);およびCD68(gp110、マクロシアリン);クラスIIMHC;BDCA−1;Siglec−Hが挙げられるが、これらだけには限られず、括弧内に示す名称は代わりの名称を表す。
【0224】
T細胞ターゲティング成分
いくつかの実施形態では、T細胞上で顕著に発現および/または提示される(すなわち、T細胞マーカー)任意の実体(例えばタンパク質、脂質、炭水化物、小分子など)と特異的に結合する任意のターゲティング成分によってT細胞ターゲティングを達成することができる。例示的なT細胞マーカーには、CD2(E−ロゼットR、T11、LFA−2);CD3(T3);CD3α;CD3β;CD3ε;CD4(L3T4、W3/25、T4);CD5(T1、Tp67、Leu−1、LY−1);CD6(T12);CD7(gp40、Leu9);CD8a(Leu2、T8、Lyt2,3);CD8b(CD8、Leu2、Lyt3);CD11a(LFA−1α、αインテグリン鎖);CD11b(αMインテグリン鎖、CR3、Mo1、C3niR、Mac−1);CD11c(αXインテグリン、p150、95、AXb2);CD15s(シアリルルイスX);CD15u(3’スルホルイスX);CD15su(6スルホ−シアリルルイスX);CD16b(FcgRlllb);CDw17(ラクトシルセラミド、LacCer);CD18(インテグリンβ2CD11a、b、cβ−サブユニット);CD26(DPPIVエクトエンザイム(ectoeneyme)、ADA結合タンパク質);CD27(T14、S152);CD28(Tp44、T44);CD29(血小板GP11a、β−1インテグリン、GP);CD31(PECAM−1、エンドカム);CD35(CR1、C3b/C4b受容体);CD37(gp52−40);CD38(ADP−リボシル/シクラーゼ、T10);CD43(シアロホリン、ロイコシアリン);CD44(ECMRII、H−CAM、Pgp−1);CD45(LCA、T200、B220、Ly5);CD45RA(p56lck、p59fyn、Srcキナーゼ);CD45RB(p56lck、p59fyn、Srcキナーゼ);CD45RC(p56lck、p59fyn、Srcキナーゼ);CD46(MCP);CD47(gp42、IAP、OA3、ニューロフィリン);CD47R(MEM−133);CD48(Blast−1、Hulym3、BCM−1、OX−45);CD49c(VLA−3α、α3インテグリン);CD49d(VLA−4α、α4インテグリン);CD49e(VLA−5α、α5インテグリン);CD49f(VLA−6α、α6インテグリン gplc);CD50(ICAM−3);CD52(CAMPATH−1、HES);CD53(OX−44);CD54(ICAM−1);CD55(DAF);CD56(Leu−19、NKH−1、NCAM);CD57(HNK1、Leu−7);CD58(LFA−3);CD59(1F5Ag、H19、プロテクチン、MACIF、MIRL、P−18);CD60a(GD3);CD60b(9−O−アセチルGD3);CD60c(7−OアセチルGD3);CD62L(L−セレクチン、LAM−1、LECAM−1、MEL−14、Leu8、TQ1);CD73(Ecto−5’−ヌクレオチダーゼ(nuclotidase));CD75(シアロマスクラクトサミン(sialo−masked lactosamine));CD75S(α2、6シアリル化ラクトサミン);CD81(TAPA−1);CD82(4F9、C33、IA−4、KAI1、R2);CD84(P75、GR6);CD85a(ILT5、LIR3、HL9);CD85j(ILT2、LIR1、MIR7);CD87(uPAR);CDw92(p70);CD94(Kp43);CD95(APO−1、FAS、TNFRSF6);CD98(4F2、FRP−1、RL−388);CD99(MIC2、E2);CD99R(CD99Mab拘束性);CD100(SEMA4D);CD102(ICAM−2);CD108(SEMA7A、JMH血液型抗原);CDw119(IFNγR、IFNγRa);CD120a(TNFRI、p55);CD120b(TNFRII、p75、TNFRp80);CD121a(1型IL−1R);CD121b(2型IL−1R);CD122(IL2Rβ);CD124(IL−4Rα);CD126(IL−6Rα);CD127(p90、IL−7R、IL−7Rα);CD128a(IL−8Ra、CXCR1、(CD181と暫定的に改名));CD128b(IL−8Rb、CXCR2、(CD182と暫定的に改名));CD130(gp130);CD132(共通のγ鎖、IL−2Rγ);CD147(バシジン、EMMPRIN、M6、OX47);CD148(HPTP−η、p260、DEP−1);CD150(SLAM、IPO−3);CD153(CD3OL、TNSF8);CD156b(TACE、ADAM17、cSVP);CD158a(KIR2DL1、p58.1);CD158b1(KIR2DL2、p58.2);CD158b2(KIR2DL3、p58.3);CD158c(KIR2DS6、KIRX);CD158|e1/e2(KIR3DLI/S1、p70);CD159F(KIR2DL5);CD158g(KIR2DS5);CD158h(KIR2DS1、p50.1);CD158i(KIR2DS4、p50.3);CD158j(KIR2DS2、p50.2);CCD158k(KIR3DL2、p140);CD159a(NKG2A);CD160(BY55、NK1、NK28);CD161(NKR、NKRP1A);CD162(PSGL−1);CD164(MGC−24、MUC−24);CD171(L1CAM、NILE);CD172g(SIRPg);CD181(CXCR1、(以前はCD128aとして公知であった));CD182(CXCR2、(以前はCD128bとして公知であった));CD183(CXCR3、GPR9);CD184(CXCR4、NPY3R);CD185(CXCR5);CD186(CXCR6);CD191(CCR1);CD192(CCR2);CD193(CCR3);CD195(CCR5);CD196(CCR6);CD197(CCR7(以前はCDw197であった));CDw197(CCR7、EBI1、BLR2);CDw198(CCR8);CDw199(CCR9);CD205(DEC−205);CDw210(CK);CDw217(CK);CDw218a(IL18Rα);CDw218b(IL18Rβ);CD220(インスリンR);CD221(IGF1R);CD222(M6P−R、IGFII−R);CD223(LAG−3);CD224(GGT);CD225(Leu13);CD226(DNAM−1、PTA1);CD229(Ly9);CD230(プリオンタンパク質(PrP));CD244(2B4、P38、NAIL);CD245(p220/240);CD247(CD3ゼータ鎖);CD261(TRAIL−R1、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー10a);CD262(TRAIL−R2、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー10b);CD263(TRAIL−R3、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー10c);CD264(TRAIL−R4、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー10d);CD265(TRANCE−R、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー11a);CD268(BAFFR、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー13C);CD272(BTLA);CD275(B7H2、ICOSL);CD277(BT3.1、B7ファミリー:ブチロフィリン3);CD294(CRTH2、PGRD2、Gタンパク質共役受容体44);CD295(LEPR);CD296(ART1、ADP−リボシルトランスフェラーゼ1);CD298(ATP1B3、Na K ATPase β3サブユニット);CD300a(CMRF−35H);CD300c(CMRF−35A);CD305(LAIR1);CD314(NKG2D);CD316(EW12);CD317(BST2);CD319(CRACC、SLAMF7);CD321(JAM1);CD322(JAM2);CDw328(Siglec7);およびCD68(gp110、マクロシアリン)が挙げられるが、これらだけには限られず、括弧内に示す名称は代わりの名称を表す。
【0225】
いくつかの実施形態では、活性化によってT細胞上で顕著に発現および/または提示される(すなわち、活性化T細胞標的)任意の実体(例えばタンパク質、脂質、炭水化物、小分子など)と結合、特異的に結合などする任意のターゲティング成分によってT細胞ターゲティングを達成することができる。例示的な活性化T細胞ターゲティング成分には、CD1a(RA、T6、HTA−1);CD1b(R1);Cd1c(M241、R7);CD1d(R3);CD9(p24、DRAP−1、MRP−1);CD25(Tac抗原、IL−2Rα、p55);CD30(Ber−H2、Ki−1);CD39(ATPデヒドロゲナーゼ、NTPデヒドロゲナーゼ−1);CD45RO(UCHL−1);CD49a(VLA−1α、α1インテグリン);CD49b(VLA−2α、gpla、α2インテグリン);CD69(AIM、EA1、MLR3、gp34/28、VEA);CD70(Ki−24、CD27リガンド);CD74(Ii、不変鎖);CD80(B7、B7−1、BB1);CD86(B7−2/B70);CD96(TACTILE);CD97(BL−KDD/F12);CD101(IGSF2、P126、V7);CD103(HML−1、インテグリンαE、ITGAE);CD107a(LAMP−1);CD107b(LAMP−2);CD109(8A3、E1237D1);CD134(OX40、TNFRSF4);CDw137(4−1BB、ILA);CD146(Muc18、S−エンド、MCAM、Mel−CAM);CD152(CTLA−4);CD154(CD40L、gp39、TRAP−1、T−BAM);CD166(ALCAM、KG−CAM、SC−1、BEN、DM−GRASP);CD178(Fasリガンド);CD227(MUC1、PUM、PEM、EMA);CD253(TRAIL、TNF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー10);CD254(TRANCE、RANKL、TNF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー11);CD258(LIGHT、TMF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー14);CD267(TACI、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー13B);CD273(B7DC、PDL2);CD274(B7H1、PDL1);CD278(ICOS);CD279(PD1);およびCD312(EMR2)が挙げられるが、これらだけには限られず、括弧内に示す名称は代わりの名称を表す。
【0226】
ターゲティング成分の分子特性
核酸ターゲティング成分。本明細書で使用する「核酸ターゲティング成分」は、標的に選択的に結合する核酸である。いくつかの実施形態では、核酸ターゲティング成分は核酸アプタマーである。アプタマーは典型的には、特定臓器、組織、細胞、細胞外マトリックス構成要素、および/または細胞内の位置と関係がある特異的標的構造と結合するポリヌクレオチドである。一般に、アプタマーのターゲティング機能はアプタマーの三次元構造に基づく。いくつかの実施形態では、標的とアプタマーの結合は、典型的にはアプタマーと標的両方の二次元および/または三次元構造間の相互作用によって仲介される。いくつかの実施形態では、標的とアプタマーの結合はアプタマーの一次配列のみに基づくわけでなく、アプタマーおよび/または標的の三次元構造(複数可)に依存する。いくつかの実施形態では、アプタマーは相補的ワトソンクリック塩基対形成によってそれらの標的と結合し、それは塩基対形成を妨げる構造(例えば、ヘアピンループ)によって妨げられる。
【0227】
いくつかの実施形態では、核酸ターゲティング成分はSpiegelmer(登録商標)である。一般に、Spiegelmer(登録商標)は、D−オリゴヌクレオチドと比較して酵素分解に対して高い耐性を示す高親和性L−エナンチオマーオリゴヌクレオチドリガンドである。いくつかの実施形態では、アプタマーを設計および利用するのと同様に、Spiegelmer(登録商標)を設計および利用することができる。
【0228】
当業者は、本明細書に記載するように、標的と特異的に結合することができる任意の核酸を、本発明に従い使用することができることを理解している。
【0229】
(以下でさらに詳細に記載する、核酸ターゲティング成分および/または送達される機能的RNA、例えばRNAi作用物質、リボザイム、tRNAなどを含めた)本発明の核酸は、化学合成、酵素合成、より長い前駆体の酵素的または化学的切断などが挙げられるがそれだけには限らない、任意の利用可能な技法に従い調製することができる。RNAを合成する方法は当技術分野で公知である(例えば、Gait, M.J.(編)Oligonucleotide synthesis: a practical approach、Oxford [Oxfordshire]、Washington, DC: IRL Press、1984年;およびHerdewijn, P.(編)Oligonucleotide synthesis: methods and applications、Methods in molecular biology、288巻(Clifton, N.J.)Totowa, N.J.:Humana Press、2005年を参照;これらはいずれも参照によって本明細書に組み込まれる)。
【0230】
核酸ターゲティング成分を形成する核酸は、天然に存在するヌクレオシド、改変ヌクレオシド、1つもしくは複数のヌクレオシド間に挿入された炭化水素リンカー(例えばアルキレン)またはポリエーテルリンカー(例えばPEGリンカー)を有する天然に存在するヌクレオシド、1つもしくは複数のヌクレオシド間に挿入された炭化水素リンカーまたはPEGリンカーを有する改変ヌクレオシド、あるいはこれらの組合せを含むことができる。いくつかの実施形態では、核酸ターゲティング成分のヌクレオチドまたは改変ヌクレオチドは、核酸ターゲティング成分の結合親和性および選択性が置換によって実質的に低減しないという条件で(例えば、標的に対する核酸ターゲティング成分の解離定数は約1×10
−3Mを超えてはならない)、炭化水素リンカーまたはポリエーテルリンカーと置換することができる。
【0231】
本発明による核酸は、天然に存在する核酸において見られる型のヌクレオチドを完全に含むことができる、または1つもしくは複数のヌクレオチドアナログを代わりに含むことができる、または天然に存在する核酸のそれと他で異なる構造を有することができることは、当業者によって理解される。米国特許第6,403,779号、同第6,399,754号、同第6,225,460号、同第6,127,533号、同第6,031,086号、同第6,005,087号、同第5,977,089号、およびそれらの中の参照文献は、使用することができる広く様々な特異的ヌクレオチドアナログおよび改変を開示する。参照によって本明細書に組み込まれる、Crooke, S. (編) Antisense Drug Technology:Principles, Strategies, and Applications(第1版)、Marcel Dekker;ISBN:0824705661、第1版(2001年)、およびその中の参照文献を参照。例えば、2’−改変はハロ、アルコキシおよびアリルオキシ基を含む。いくつかの実施形態では、2’−OH基をH、OR、R、ハロ、SH、SR
1、NH
2、NH
R、NR
2またはCNから選択される基によって置換し、前式でRはC
1〜C
6アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、ハロはF、Cl、BrまたはIである。改変結合の例には、ホスホロチオエートおよび5’−N−ホスホラミダイト結合が挙げられる。
【0232】
様々な異なるヌクレオチドアナログ、改変骨格、または非天然ヌクレオシド間結合を含む核酸を、本発明に従い利用することができる。本発明の核酸は、天然ヌクレオシド(すなわち、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、およびデオキシシチジン)または改変ヌクレオシドを含むことができる。改変ヌクレオシドの例には、塩基改変ヌクレオシド(例えば、アラシチジン、イノシン、イソグアノシン、ネブラリン、シュードウリジン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノプリン、2−チオチミジン、3−デアザ−5−アザシチジン、2’−デオキシウリジン、3−ニトロピロール、4−メチルインドール、4−チオウリジン、4−チオチミジン、2−アミノアデノシン、2−チオチミジン、2−チオウリジン、5−ブロモシチジン、5−ヨードウリジン、イノシン、6−アザウリジン、6−クロロプリン、7−デアザアデノシン、7−デアザグアノシン、8−アザアデノシン、8−アジドアデノシン、ベンズイミダゾール、M1−メチルアデノシン、ピロロ−ピリミジン、2−アミノ−6−クロロプリン、3−メチルアデノシン、5−プロピニルシチジン、5−プロピニルウリジン、5−ブロモウリジン、5−フルオロウリジン、5−メチルシチジン、7−デアザアデノシン、7−デアザグアノシン、8−オキソアデノシン、8−オキソグアノシン、O(6)−メチルグアニン、および2−チオシチジン)、化学的または生物学的改変塩基(例えば、メチル化塩基)、改変糖(例えば、2’−フルオロリボース、2’−アミノリボース、2’−アジドリボース、2’−O−メチルリボース、L−エナンチオマーヌクレオシドアラビノース、およびヘキソース)、改変リン酸基(例えば、ホスホロチオエートおよび5’−N−ホスホラミダイト結合)、およびこれらの組合せが含まれる。核酸の化学合成用の天然および改変ヌクレオチドモノマーは容易に入手可能である。いくつかの場合、このような改変を含む核酸は、天然に存在するヌクレオチドのみからなる核酸と比較して改善された性質を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する核酸改変を利用して、ヌクレアーゼ(例えば、エクソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼなど)による消化を低減および/または予防する。例えば、核酸の構造は、消化を低減するために核酸の一方または両方の鎖の3’末端にヌクレオチドアナログを含めることによって、安定化することができる。
【0233】
改変核酸はその分子の長さ全体に沿って均一に改変されている必要はない。異なるヌクレオチド改変および/または骨格構造は核酸中の様々な位置に存在してよい。当業者は、ヌクレオチドアナログまたは他の改変(複数可)は、核酸の機能が実質的に影響を受けないように、核酸の任意の位置(複数可)に位置してよいことを理解している。単なる一例を挙げると、アプタマー標的と特異的に結合するアプタマーの能力が実質的に影響を受けないように、改変はアプタマーの任意の位置に位置してよい。改変領域は一方または両方の鎖の5’末端および/または3’末端であってよい。例えば、両鎖のいずれかの5’および/または3’末端における約1〜約5残基がヌクレオチドアナログである、および/または骨格改変を有する改変アプタマーを利用することができる。改変は5’または3’末端の改変であってよい。核酸鎖は、少なくとも50%の非改変ヌクレオチド、少なくとも80%の非改変ヌクレオチド、少なくとも90%の非改変ヌクレオチド、または100%の非改変ヌクレオチドを含むことができる。
【0234】
本発明による核酸は、例えば米国特許公開2003/0175950、2004/0192626、2004/0092470、2005/0020525、および2005/0032733中に記載されたような、糖、ヌクレオシド、またはヌクレオシド間結合に対する改変を含むことができる。本発明は、ここに記載する任意の1つまたは複数の改変を有する任意の核酸の使用を包含する。例えば、いくつかの末端コンジュゲート、例えば、コレステロール、リトコール酸、ラウリン酸(aluric acid)などの脂質、または長鎖アルキル分枝鎖は、細胞への取り込みを改善することが報告されている。アナログおよび改変を、例えば当技術分野で公知である任意の適切なアッセイを使用して試験して、例えば治療剤の改善された送達、アプタマー標的とアプタマーの改善された特異的結合などをもたらすアナログおよび改変を選択することができる。いくつかの実施形態では、本発明による核酸は、1つまたは複数の非天然ヌクレオシド結合を含むことができる。いくつかの実施形態では、アプタマーの3’末端、5’末端、または3’末端と5’末端の両方における1つまたは複数の内部ヌクレオチドを反転させて3’−3’結合または5’−5’結合などの結合を得る。
【0235】
いくつかの実施形態では、本発明による核酸は合成ではなく、ただしその天然環境から単離した天然に存在する実体である。
【0236】
小分子ターゲティング成分。いくつかの実施形態では、本発明によるターゲティング成分は小分子であってよい。特定の実施形態では、小分子は約2000g/mol未満の大きさである。いくつかの実施形態では、小分子は約1500g/mol未満または約1000g/mol未満である。いくつかの実施形態では、小分子は約800g/mol未満または約500g/mol未満である。
【0237】
特定の実施形態では、小分子はオリゴマーである。特定の実施形態では、小分子は非オリゴマーである。特定の実施形態では、小分子は、天然産物の全体構造に基づく部分的構造(例えば基礎構造(substructure))を有する、天然産物または天然産物様化合物である。特定の実施形態では、小分子は合成産物である。いくつかの実施形態では、小分子は化学ライブラリー由来であってよい。いくつかの実施形態では、小分子は製薬会社の従来のライブラリーに由来してよい。特定の実施形態では、小分子は、米国連邦規則集(C.F.R.)中に与えられる米国食品医薬品局によって承認された薬剤である。
【0238】
当業者は、本明細書に記載する望ましい標的と特異的に結合する任意の小分子を、本発明に従い使用することができることを理解している。
【0239】
タンパク質ターゲティング成分。いくつかの実施形態では、本発明によるターゲティング成分は、タンパク質またはペプチドであってよい。特定の実施形態では、ペプチドは約5〜約100、約5〜約50、約10〜約75、約15〜約50、または約20〜約25アミノ酸の大きさの範囲にある。いくつかの実施形態では、ペプチド配列はタンパク質の配列に基づいてよい。いくつかの実施形態では、ペプチド配列はランダムな配置のアミノ酸であってよい。
【0240】
用語「ポリペプチド」と「ペプチド」は本明細書では交換可能に使用し、「ペプチド」は典型的には約100アミノ酸未満の長さを有するポリペプチドを指す。ポリペプチドはL−アミノ酸、D−アミノ酸、または両方を含有することができ、当技術分野で公知である任意の様々なアミノ酸改変またはアナログを含有することができる。有用な改変は、例えば、末端アセチル化、アミド化、脂質化、リン酸化、グリコシル化、アシル化、ファルネシル化、硫酸化などを含む。
【0241】
本発明によるターゲティング成分として使用することができる例示的なタンパク質には、抗体、受容体、サイトカイン、ペプチドホルモン、糖タンパク質、糖ペプチド、プロテオグリカン、コンビナトリアルライブラリー由来のタンパク質(例えば、Avimers(商標)、Affibodies(登録商標)など)、およびこれらの特徴的部分が挙げられるが、これらだけには限られない。例えばNanobodies(商標)、AdNectins(商標)などの合成結合タンパク質を使用することができる。いくつかの実施形態では、タンパク質ターゲティング成分はペプチドであってよい。
【0242】
当業者は、本明細書に記載する望ましい標的と特異的に結合する任意のタンパク質および/またはペプチドを、本発明に従い使用することができることを理解している。
【0243】
いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は抗体および/またはその特徴的部分であってよい。用語「抗体」は、天然または完全もしくは部分的に合成的に産生された任意の免疫グロブリン、およびその誘導体およびその特徴的部分を指す。抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであってよい。抗体は、ヒトクラス:IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEのいずれかを含めた、任意の免疫グロブリンクラスのメンバーであってよい。
【0244】
本明細書で使用するように、抗体断片(すなわち、抗体の特徴的部分)は、完全長未満である抗体の任意の誘導体を指す。いくつかの実施形態では、抗体断片は、完全長抗体の特異的結合能力の少なくとも重要な部分を保持する。このような抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、Fv、dsFvダイアボディ、およびFd断片が挙げられるが、これらだけには限られない。抗体断片は、Fc断片だけには限られないが、これらも含む。
【0245】
抗体断片は任意の手段によって産生することができる。例えば、抗体断片は完全抗体の断片化によって酵素的もしくは化学的に産生することができ、および/または抗体断片は、部分的抗体配列をコードする遺伝子から組換えによって産生することができる。代替的または追加的に、抗体断片は完全または部分的に合成的に産生することができる。抗体断片は単鎖抗体断片を任意選択で含むことができる。代替的または追加的に、抗体断片は、例えばジスルフィド結合によって1つに連結した多数の鎖を含むことができる。抗体断片は多分子複合体を任意選択で含むことができる。機能的抗体断片は典型的には少なくとも約50のアミノ酸を含み、より典型的には少なくとも約200のアミノ酸を含み得る。
【0246】
いくつかの実施形態では、抗体はキメラ(例えば「ヒト化」)および単鎖(組換え)抗体を含むことができる。いくつかの実施形態では、抗体は低減したエフェクター機能および/または二重特異性分子を有してよい。いくつかの実施形態では、抗体はFab発現ライブラリーによって産生した断片を含むことができる。
【0247】
単鎖Fv(scFv)は、ポリペプチドリンカーによって互いに共有結合した可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)のみからなる組換え抗体断片である。VLまたはVHのいずれかはNH2末端ドメインを含んでよい。ポリペプチドリンカーは、2つの可変ドメインが重大な立体障害なしで架橋形成する限り、様々な長さおよび組成であってよい。典型的には、リンカーはグリシンおよびセリン残基の伸張部分(stretch)を主に含み、いくつかのグルタミン酸またはリシン残基は溶解性のためその間を占めている。
【0248】
ダイアボディは二量体scFvである。ダイアボディは典型的には大部分のscFvより短いペプチドリンカーを有し、それらは優先的に二量体としての結合を示すことが多い。
【0249】
Fv断片は、非共有結合性相互作用によって1つに結合した1個のVHおよび1個のVLドメインからなる抗体断片である。本明細書で使用する用語「dsFv」は、VH−VL対を安定化するために操作された分子間ジスルフィド結合を有するFvを指す。
【0250】
F(ab’)2断片は、pH4.0〜4.5で酵素ペプシンを用いた消化によって免疫グロブリンから得られるそれと基本的に等しい抗体断片である。断片は組換えによって産生することができる。
【0251】
Fab’断片は、F(ab’)2断片中のジスルフィド架橋または2つの重鎖片を結ぶ架橋の還元によって得られるそれと基本的に等しい抗体断片である。Fab’断片は組換えによって産生することができる。
【0252】
Fab断片は、酵素(例えばパパイン)を用いた免疫グロブリンの消化によって得られるそれと基本的に等しい抗体断片である。Fab断片は組換えによって産生することができる。Fab断片の重鎖セグメントはFd片である。
【0253】
炭水化物ターゲティング成分。いくつかの実施形態では、本発明によるターゲティング成分は炭水化物を含むことができる。いくつかの実施形態では、当技術分野で公知であるように、炭水化物はグリコシド結合によって結合した単糖を含む多糖(またはそれらの誘導体)であってよい。このような糖は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、セルビオース、マンノース、キシロース、アラビノース、グルクロン酸(glucoronic acid)、ガラクツロン酸(galactoronic acid)、マンヌロン酸、グルコサミン、ガラクトサミン(galatosamine)、およびノイラミン酸(neuramic acid)を含むが、これらだけに限らない。いくつかの実施形態では、炭水化物は1つまたは複数のプルラン、セルロース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシセルロース、メチルセルロース、デキストラン、シクロデキストラン、グリコーゲン、スターチ、ヒドロキシエチルスターチ、カラギーナン、グリコン(glycon)、アミロース、キトサン、N,O−カルボキシメチルキトサン、アルギンおよびアルギン酸、スターチ、キチン、ヘパリン、コンニャク、グルコマンナン、パスツラン、ヘパリン、ヒアルロン酸、カードラン、およびキサンタンであってよい。
【0254】
いくつかの実施形態では、炭水化物はアミノ化、カルボキシル化、および/または硫酸化されてもよい。いくつかの実施形態では、多数の側鎖疎水性基を導入することによって、親水性多糖を改変して疎水性状態にすることができる。いくつかの実施形態では、疎水性炭水化物は酢酸セルロース、酢酸プルラン、酢酸コンニャク、酢酸アミロース、および酢酸デキストランを含むことができる。
【0255】
当業者は、本明細書に記載する望ましい標的と特異的に結合する任意の炭水化物を、本発明に従い使用することができることを理解している。
【0256】
脂質ターゲティング成分。いくつかの実施形態では、本発明によるターゲティング成分は1つまたは複数の脂肪酸基またはその塩を含むことができる。いくつかの実施形態では、脂肪酸基は、消化可能な、長鎖(例えばC
8〜C
50)、置換または非置換炭化水素を含むことができる。いくつかの実施形態では、脂肪酸基はC
10〜C
20脂肪酸またはその塩であってよい。いくつかの実施形態では、脂肪酸基はC
15〜C
20脂肪酸またはその塩であってよい。いくつかの実施形態では、脂肪酸基はC
15〜C
25脂肪酸またはその塩であってよい。いくつかの実施形態では、脂肪酸基は不飽和であってよい。いくつかの実施形態では、脂肪酸基は単不飽和状態(monounsaturated)であってよい。いくつかの実施形態では、脂肪酸基は多不飽和状態であってよい。いくつかの実施形態では、不飽和脂肪酸基の二重結合はシス配座状態であってよい。いくつかの実施形態では、不飽和脂肪酸の二重結合はトランス配座状態であってよい。
【0257】
いくつかの実施形態では、脂肪酸基は、1つまたは複数の酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、またはリグノセリン酸であってよい。いくつかの実施形態では、脂肪酸基は、1つまたは複数のパルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、アルファ−リノール酸、ガンマ−リノール酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、またはエルカ酸であってよい。
【0258】
当業者は、本明細書に記載する望ましい標的と特異的に結合する任意の脂肪酸残基を、本発明に従い使用することができることを理解している。
【0259】
新規のターゲティング成分
任意の新規のターゲティング成分を、本発明によるナノキャリアにおいて利用することができる。当技術分野で公知である任意の方法を使用して、新規のターゲティング成分を設計、同定、および/または単離することができる。例えば、分子のライブラリーおよびin vitro結合アッセイを利用する標準的技法を利用して、新規のターゲティング成分を同定することができる。
【0260】
核酸ターゲティング成分(例えばアプタマー、Spiegelmer(登録商標))は、任意の利用可能な方法を使用して設計および/または同定することができる。いくつかの実施形態では、核酸ターゲティング成分は、核酸の候補混合物から核酸ターゲティング成分を同定することによって設計および/または同定する。Systemic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment(SELEX)、またはその変形は、核酸の候補混合物由来の標的と結合する核酸ターゲティング成分を同定する、一般的に使用される方法である(例えば、米国特許第6,482,594号、同第6,458,543号、同第6,458,539号、同第6,376,190号、同第6,344,318号、同第6,242,246号、同第6,184,364号、同第6,001,577号、同第5,958,691号、同第5,874,218号、同第5,853,984号、同第5,843,732号、同第5,843,653号、同第5,817,785号、同第5,789,163号、同第5,763,177号、同第5,696,249号、同第5,660,985号、同第5,595,877号、同第5,567,588号、および同第5,270,163号を参照、これらはそれぞれ参照によって本明細書に組み込まれる)。代替的または追加的に、Polyplex In Vivo Combinatorial Optimization(PICO)は、in vivoおよび/またはin vitroで核酸の候補混合物由来の標的と結合する核酸ターゲティング成分(例えばアプタマー)を同定するために使用することができる方法であり、参照によって本明細書に組み込まれる2006年12月15日に出願された「System for Screening Particles」という表題の、同時係属のPCT出願US06/47975号中に記載されている。
【0261】
免疫刺激作用物質
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、免疫応答の刺激を手助けすることができる1つまたは複数の免疫刺激作用物質を運ぶことができる。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、APCを活性化してそれらの免疫刺激能力を高めることによって免疫応答を促進する。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、特異的抗原に対するリンパ球応答を増幅することによって免疫応答を促進する。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、様々な細胞型からのサイトカインなどのメディエーターの局所放出を誘導することによって免疫応答を促進する。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は免疫応答を抑制または再誘導する。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は制御T細胞を誘導する。
【0262】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアの全ての免疫刺激作用物質が互いに同一である。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアはいくつかの異なる型の免疫刺激作用物質を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは複数の個別の免疫刺激作用物質を含み、それらは全て互いに同じである。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、正確に1つの型の免疫刺激作用物質を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、正確に2つの異なる型の免疫刺激作用物質を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、3つ以上の異なる型の免疫刺激作用物質を含む。
【0263】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、B細胞とT細胞の両方を刺激する1つの型の免疫刺激作用物質を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは2つの型の免疫刺激作用物質を含み、第1の免疫刺激作用物質はB細胞を刺激し、第2の型の免疫刺激作用物質はT細胞を刺激する。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは3つ以上の型の免疫刺激作用物質を含み、1つまたは複数の型の免疫刺激作用物質がB細胞を刺激し、1つまたは複数の型の免疫刺激作用物質がT細胞を刺激する。
【0264】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、ワクチンナノキャリアの外側表面と結合した少なくとも1つの型の免疫刺激作用物質を含む。いくつかの実施形態では、結合は共有結合である。いくつかの実施形態では、共有結合は1つまたは複数のリンカーによって仲介される。いくつかの実施形態では、結合は非共有結合である。いくつかの実施形態では、非共有結合は電荷相互作用、親和性相互作用、金属配位、物理的吸着、ホスト−ゲスト相互作用、疎水性相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファンデルワールス相互作用、磁気相互作用、静電相互作用、双極子間相互作用、および/またはこれらの組合せによって仲介される。免疫調節作用物質とワクチンナノキャリアの結合は、「ワクチンナノキャリアの生成」という表題の以下のセクション中にさらに詳細に記載される。
「ワクチンナノキャリアの生成」
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、脂質膜(例えば脂質二重層、脂質単層など)を含み、少なくとも1つの免疫刺激作用物質が脂質膜と結合する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの型の免疫刺激作用物質が脂質膜内に埋め込まれている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫刺激作用物質が脂質二重層の内腔に埋め込まれている。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、脂質膜の内側表面と結合した少なくとも1つの型の免疫刺激作用物質を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの型の免疫刺激作用物質が、ワクチンナノキャリアの脂質膜内に封入されている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの型の免疫刺激作用物質はワクチンナノキャリアの複数の位置に位置してよい。例えば、第1の型の免疫刺激作用物質は脂質膜内に埋め込むことができ、第2の型の免疫刺激作用物質はワクチンナノキャリアの脂質膜内に封入することができる。別の例を挙げると、第1の型の免疫刺激作用物質は脂質膜の外側表面と結合することができ、第2の型の免疫刺激作用物質はワクチンナノキャリアの脂質膜の内側表面と結合することができる。いくつかの実施形態では、第1の型の免疫刺激作用物質はワクチンナノキャリアの脂質二重層の内腔に埋め込むことができ、脂質二重層は、その全体に第2の型の免疫刺激作用物質が分布するポリマーマトリックスを封入することができる。いくつかの実施形態では、第1の型の免疫刺激作用物質と第2の型の免疫刺激作用物質は、ワクチンナノキャリアの同じ場所に存在してよい(例えば、それらはいずれもワクチンナノキャリアの外側表面と結合することができる、それらはいずれもワクチンナノキャリア内に封入することができる、など)。当業者は、上記の例が、複数の免疫刺激作用物質をワクチンナノキャリアの異なる場所で結合させることが可能である、多くの異なる方法の単なる例示であることを理解している。複数の免疫刺激作用物質は、ワクチンナノキャリアの任意の場所の組合せで位置してよい。
【0265】
特定の実施形態では、免疫刺激作用物質はインターロイキン、インターフェロン、サイトカインなどであってよい。具体的な実施形態では、免疫刺激作用物質はToll様受容体(TLR)の天然または合成アゴニストであってよい。具体的な実施形態では、ワクチンナノキャリアは、I型インターフェロン産生を誘導するCpGなどのtoll様受容体(TLR)−7のリガンドを取り込む。具体的な実施形態では、免疫刺激作用物質はDC表面分子CD40のアゴニストであってよい。特定の実施形態では、寛容性というよりは寧ろ免疫を刺激するために、ナノキャリアは、DC成熟(ナイーブT細胞の初回抗原刺激に必要)、ならびに抗体応答および抗ウイルス免疫を促進するI型インターフェロンなどの、サイトカインの産生を促進する免疫刺激作用物質を取り込む。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は細菌リポ多糖(LPS)、VSV−G、および/またはHMGB−1などのTLR−4アゴニストであってよい。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は、細胞によって放出され、細胞間相互作用、他の細胞の情報伝達および挙動に対して特異的な影響を有する、低分子タンパク質または生物因子(5kD〜20kDの範囲)であるサイトカインである。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は壊死細胞から放出される炎症性刺激物質(例えば尿酸結晶)であってよい。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は補体カスケードの活性化成分(例えば、CD21、CD35など)であってよい。いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質は免疫複合体の活性化成分であってよい。免疫刺激作用物質はTLR−1、TLR−2、TLR−3、TLR−4、TLR−5、TLR−6、TLR−7、TLR−8、TLR−9、およびTLR−10アゴニストを含む。免疫刺激作用物質は、CD21またはCD35と結合する分子などの補体受容体アゴニストも含む。いくつかの実施形態では、補体受容体アゴニストは、ナノキャリアの内因性補体オプソニン化を誘導する。免疫刺激作用物質は、サイトカインなどのサイトカイン受容体アゴニストも含む。いくつかの実施形態では、サイトカイン受容体アゴニストは、小分子、抗体、融合タンパク質、またはアプタマーである。
【0266】
いくつかの実施形態では、2つ以上の型の免疫刺激作用物質が存在する。いくつかの実施形態では、異なる免疫刺激作用物質が異なる経路にそれぞれ作用する。したがって免疫刺激作用物質は、異なる複数のToll様受容体、Toll様受容体とCD40、Toll様受容体とインフラマソームの成分などであってよい。
【0267】
いくつかの実施形態では、免疫刺激作用物質はアジュバントであってよい。したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、1つまたは複数のアジュバントで製剤化したワクチンナノキャリアを含む薬学的組成物を提供する。本明細書で使用する用語「アジュバント」は、特異的抗原を構成しないが、投与する抗原に対する免疫応答を促進する作用物質を指す。
【0268】
いくつかの実施形態では、本発明は、抗原提示細胞(APC)の細胞表面などの標的にされる位置に(封入および/または表面に)アジュバントを運ぶことができるナノキャリアを使用したアジュバントの送達を対象とし、ナノキャリアは、(i)標的特異的細胞に対する表面に1つまたは複数の分子、(iii)ポリマーと共有結合またはナノ粒子内に封入したときに免疫原性応答を引き出すことができる1つまたは複数の分子を含む。この実施形態は、有効量の本発明のアジュバントの送達用ナノ粒子を投与して1つまたは複数の抗原に対する哺乳動物の免疫応答を向上させることを含む、哺乳動物における免疫応答の増強の向上を対象とする。この実施形態は、本発明の組成物を使用するワクチン接種の方法も対象とする。
【0269】
例えば、いくつかの実施形態では、アジュバントを本発明のナノ粒子内に封入する。典型的には、このような場合、アジュバントは遊離形で存在する、すなわちアジュバントは、ナノ粒子を形成するポリマーとコンジュゲートしていない。本明細書で例示するように、通常の方法でナノ粒子の調製の間にアジュバントを封入する。患者に投与したときのナノ粒子からのアジュバントの放出プロファイルは、ナノ粒子の大きさ、ナノ粒子を形成するポリマーの溶解測度(溶解が起こる場合)、ナノ粒子を形成するポリマーの分子量、およびアジュバントの化学的性質(したがって、ナノ粒子内のアジュバントの位置、拡散速度などに影響を与え得る)を含めた、様々な因子に依存し得る。ポリマーナノ粒子中に封入するアジュバントの量は、ナノ粒子の形成プロセス中に決定される。
【0270】
例えば、いくつかの実施形態では、アジュバントを、ナノ粒子を形成するポリマーにコンジュゲートさせる。典型的には、このような場合、アジュバントはナノ粒子の表面または近辺で発現される。いくつかの実施形態では、ナノ粒子に自己集合することができる両親媒性(amphilic)ポリマーを使用し、アジュバントはポリマーの1つの末端と共有結合する。例えば、ポリマーを形成するために使用する重合反応の開始種として、アジュバントを使用することができる。アジュバントがポリマーの末端とコンジュゲート(すなわち共有結合)すると、ポリマーの自己集合によって、アジュバントはナノ粒子の周囲または中心(core)に濃縮する。例えば、疎水性ブロックおよび親水性ブロックを含み、疎水性コアと親水性周囲を有するナノ粒子に自己集合するポリマーにおいて、親水性ブロックの末端とコンジュゲートするアジュバントはナノ粒子の周囲に濃縮し得る。いくつかの好ましい実施形態では、アジュバントはナノ粒子の表面に濃縮され、一箇所に留まり免疫刺激作用物質として作用する。コンジュゲートされたアジュバントを含むナノ粒子製剤に関して、ナノ粒子の表面のアジュバントの密度は、ナノ粒子を形成するポリマーの分子量、ナノ粒子の密度、およびアジュバントの化学的性質を含めた様々な因子の関数であり得る。
【0271】
いくつかの実施形態では、封入アジュバントとコンジュゲートされたアジュバントの組合せを使用する。
【0272】
例えば、いくつかの実施形態では、ゲル型アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウムなど)、微生物アジュバント(例えば、CpGモチーフを含む免疫調節DNA配列、モノホスホリル脂質Aなどのエンドトキシン、例えばコレラ毒素、E.coli易熱性毒素、および百日咳毒素、ムラミルジペプチドなどのエクソトキシン)、油状エマルジョンおよび乳化剤をベースとしたアジュバント(例えば、フロイントアジュバント、MF59[Novartis]、SAFなど)、粒子状アジュバント(例えば、リポソーム、生分解性ミクロスフェア、サポニンなど)、合成アジュバント(例えば、非イオン性ブロックコポリマー、ムラミルペプチドアナログ、ポリホスファゼン、合成ポリヌクレオチドなど)、界面活性剤をベースとしたアジュバント、ならびに/もしくはこれらの組合せなどの、1つまたは複数のアジュバントでワクチンナノキャリアを製剤化する。他の例示的なアジュバントには、いくつかのポリマー(例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,500,161号中に記載されるポリホスファゼン)、QS21、スクアレン、テトラクロロデカオキシドなどがある。
【0273】
T細胞活性化のアッセイ
いくつかの実施形態では、様々なアッセイを利用して、免疫応答がT細胞またはT細胞群において刺激されたかどうか(すなわち、T細胞またはT細胞群が「活性化状態」になったかどうか)決定することができる。いくつかの実施形態では、T細胞における免疫応答の刺激は、T細胞によるサイトカインの抗原誘導型産生を測定することによって決定することができる。いくつかの実施形態では、T細胞における免疫応答の刺激は、T細胞によるIFNγ、IL−4、IL−2、IL−10、IL−17および/またはTNFαの抗原誘導型産生を測定することによって決定することができる。いくつかの実施形態では、T細胞によるサイトカインの抗原誘導型産生は、細胞内サイトカイン染色、次にフローサイトメトリーによって測定することができる。いくつかの実施形態では、T細胞によるサイトカインの抗原誘導型産生は、表面捕捉染色、次にフローサイトメトリーによって測定することができる。いくつかの実施形態では、T細胞によるサイトカインの抗原誘導型産生は、活性化T細胞培養物の上清中のサイトカイン濃度の決定によって測定することができる。いくつかの実施形態では、これはELISAによって測定することができる。
【0274】
いくつかの実施形態では、T細胞によるサイトカインの抗原産生型産生は、ELISPOTアッセイによって測定することができる。一般にELISPOTアッセイは、サンドウィッチ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)技法と非常に類似した技法を利用する。抗体(例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体など)を、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)で裏打ちしたマイクロプレートに無菌コーティングする。抗体は問題のサイトカインに対するその特異性に関して選択する。(例えば、アッセイ中のいかなる抗体とも反応性がない血清タンパク質で)プレートをブロッキングする。対象の細胞は、抗原またはマイトジェンと共に様々な密度でプレート培養し、次いで指定の時間の間、加湿した37℃のCO
2インキュベーター中に置く。活性化細胞によって分泌されたサイトカインは、高い表面積のPVDF膜上でコーティング抗体によって局所的に捕捉する。ウェルを洗浄して細胞、残骸、および培地成分を除去した後、サイトカインに特異的な二次抗体(例えば、ビオチニル化ポリクローナル抗体)をウェルに加える。この抗体は標的サイトカインの異なるエピトープと反応性があり、したがってこれを利用して捕捉サイトカインを検出する。任意の非結合ビオチニル化抗体を除去するための洗浄後、次いで検出したサイトカインを、アビジン−HRP、および沈着基質(例えば、AEC、BCIP/NBT)を使用して可視化する。着色した最終産物(スポット、通常は黒っぽい青色)は、個々のサイトカイン産生細胞を典型的に示す。スポットは手作業で(例えば、解剖顕微鏡で)、またはマイクロウェルの像(image)を捉えるための自動読み取り器を使用して計数して、スポットの数および大きさを分析することができる。いくつかの実施形態では、それぞれのスポットは個々のサイトカイン産生細胞と関係がある。
【0275】
いくつかの実施形態では、T細胞における免疫応答は、約1%と約100%の間の抗原特異的T細胞がサイトカインを産生する場合、刺激されると言える。いくつかの実施形態では、T細胞における免疫応答は、少なくとも約1%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または約100%の抗原特異的T細胞がサイトカインを産生する場合、刺激されると言える。
【0276】
いくつかの実施形態では、T細胞における免疫応答は、免疫された被験体がナイーブ対照より少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約500倍、少なくとも約1000倍、少なくとも約5000倍、少なくとも約10,000倍、少なくとも約50,000倍、少なくとも約100,000倍、または少なくとも約100,000倍を超える、より多くのサイトカイン産生細胞を含む場合、刺激されると言える。
【0277】
いくつかの実施形態では、T細胞における免疫応答の刺激は、T細胞の抗原誘導型増殖を測定することによって決定することができる。いくつかの実施形態では、抗原誘導型増殖は、分裂T細胞におけるH
3−チミジンの取り込みとして測定することができる(時折「リンパ球形質転換試験」、または「LTT」と呼ばれる)。いくつかの実施形態では、抗原誘導型増殖は、(γ線カウンターからのカウント数として与える)H
3−チミジンの取り込みが、ナイーブ対照より少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約500倍、少なくとも約1000倍、少なくとも約5000倍、少なくとも約10,000倍、または少なくとも約10,000倍を超える、より高い場合に起こると言える。
【0278】
いくつかの実施形態では、抗原誘導型増殖はフローサイトメトリーによって測定することができる。いくつかの実施形態では、抗原誘導型増殖はカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)希釈アッセイによって測定することができる。CFSEは、そのスクシンイミジル反応基を有する細胞質タンパク質(例えば、T細胞タンパク質)のアミノ基と結合する、無毒、蛍光性の、膜透過性色素である。細胞が分裂すると、CFSE標識タンパク質が娘細胞間に等しく分布され、したがってそれぞれの分裂で細胞の蛍光は半分になる。したがって、抗原特異的T細胞はそれぞれの抗原の存在下での培養後それらの蛍光を失い(CFSE
低)、培養中他の細胞と区別可能である(CFSE
高)。いくつかの実施形態では、抗原誘導型増殖は、(全CFSE
+細胞中のCFSE
低細胞の割合として与える)CFSE希釈が、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約100%である場合に起こったと言える。
【0279】
いくつかの実施形態では、T細胞における免疫応答は、T細胞活性化の細胞マーカーが非刺激細胞と比較して異なるレベル(例えば、高いまたは低いレベル)で発現される場合、刺激されると言える。いくつかの実施形態では、CD11a CD27、CD25、CD40L、CD44、CD45RO、および/またはCD69が、非刺激T細胞におけるより活性化T細胞においてより高度に発現される。いくつかの実施形態では、L−セレクチン(CD62L)、CD45RA、および/またはCCR7は、非刺激T細胞におけるより活性化T細胞においてあまり高度に発現されない。
【0280】
いくつかの実施形態では、T細胞における免疫応答は、抗原パルス標的細胞に対するエフェクターCD8
+T細胞による細胞傷害性のアッセイによって測定する。例えば、
51クロム(
51Cr)放出アッセイを実施することができる。このアッセイでは、エフェクターCD8
+T細胞は、クラスIMHC上でウイルスペプチドを提示する感染細胞に結合し、感染細胞にシグナル伝達してアポトーシスをもたらす。エフェクターCD8
+T細胞を加える前に細胞を
51Crで標識する場合、上清に放出される
51Crの量は死滅させた標的の数に比例する。
【0281】
当業者は、上に記載したアッセイを、T細胞活性化が起こったかどうかを決定するために利用することができる、単なる例示的な方法であることを理解している。T細胞活性化が起こったかどうかを決定するために使用することができる当業者に公知である任意のアッセイが、本発明の範囲の範疇にある。T細胞活性化が起こったかどうかを決定するために使用することができる本明細書に記載するアッセイおよび他のアッセイは、Current Protocols in Immunology(参照によって本明細書に組み込まれる、John Wiley & Sons、Hoboken、NY、2007年)中に記載される。
【0282】
B細胞
本発明は、例えば免疫調節作用物質を、免疫系の細胞に送達するための、ワクチンナノキャリアを提供する。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、B細胞(すなわち、B細胞抗原)に提示することができる少なくとも1つの免疫調節作用物質を含む。
【0283】
免疫調節作用物質
B細胞とT細胞は、異なる機構によって抗原を認識する。上に記載したように、T細胞はプロセシングされた型の抗原を認識する(例えば、T細胞受容体に対してAPCのMHC分子によって提示されるペプチド断片として)。B細胞はそれらの天然型(native form)で抗原を認識する。B細胞は、B細胞受容体(BCR)および/または膜結合免疫グロブリンを使用して、血液またはリンパ中の遊離(例えば、可溶性)抗原を認識する。
【0284】
免疫調節作用物質はB細胞抗原であってよい。B細胞抗原には、タンパク質、ペプチド、小分子、および炭水化物が挙げられるが、これらだけには限られない。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、非タンパク質抗原(すなわち、タンパク質でもペプチドでもない抗原)である。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は感染因子と関連した炭水化物である。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、感染因子と関連した糖タンパク質または糖ペプチドである。感染因子は、細菌、ウイルス、真菌、原生動物、または寄生虫であってよい。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は低免疫原性抗原である。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は乱用物質またはその一部分である。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は依存性物質またはその一部分である。
【0285】
依存性物質は、麻酔薬、咳止め薬、トランキライザー、および鎮静薬を含むが、これらに限定されない。依存性物質の例は、本明細書において他のところで提供されるものを含む。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は毒素、化学兵器由来の毒素などである。いくつかの実施形態では、化学兵器由来の毒素はボツリヌス毒素またはホスフェンである。化学兵器由来の毒素には、O−アルキル(<C10、シクロアルキル含む)アルキル(Me、Et、n−Prまたはi−Pr)−ホスホノフルオリデート(例えば、サリン:O−イソプロピルメチルホスホノフルオリデート、ソマン:O−ピナコリルメチルホスホノフルオリデート)、O−アルキル(<C10、シクロアルキル含む)N,N−ジアルキル(Me、Et、n−Prまたはi−Pr)ホスホルアミドシアニデート(例えば、タブン:O−エチルN,N−ジメチルホスホルアミドシアニデート)、O−アルキル(Hまたは<C10、シクロアルキル含む)S−2−ジアルキル(Me、Et、n−Prまたはi−Pr)−アミノエチルアルキル(Me、Et、n−Prまたはi−Pr)ホスホノチオレートおよび対応するアルキル化またはプロトン化塩(例えば、VX:O−エチルS−2−ジイソプロピルアミノエチルメチルホスホノチオレート)、イオウマスタード:2−クロロエチルクロロメチルスルフィド、マスタードガス:ビス(2−クロロエチル)スルフィド、ビス(2−クロロエチルチオ)メタン、セスクマスタード:1,2−ビス(2−クロロエチルチオ)エタン、1,3−ビス(2−クロロエチルチオ)−n−プロパン、1,4−ビス(2−クロロエチルチオ)−n−ブタン、1,5−ビス(2−クロロエチルチオ)−n−ペンタン、ビス(2−クロロエチルチオメチル)エーテル、O−マスタード:ビス(2−クロロエチルチオエチル)エーテル、ルイサイト:ルイサイト1:2−クロロビニルジクロロアルシン、ルイサイト2:ビス(2−クロロビニル)クロロアルシン、ルイサイト3:トリス(2−クロロビニル)アルシン、ナイトロジェンマスタード:HN1:ビス(2−クロロエチル)エチルアミン、HN2:ビス(2−クロロエチル)メチルアミン、HN3:トリス(2−クロロエチル)アミン、サキシトキシン、リシン、アミトン:O,O−ジエチルS−(2−(ジエチルアミノ)エチル)ホスホロチオエート(phosphorothiolate)および対応するアルキル化またはプロトン化塩、PFIB:1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−1−プロペン、3−キヌクリニジルベンジレート(BZ)、ホスゲン:二塩化カルボニル、塩化シアン、シアン化水素およびクロロピクリン:トリクロロニトロメタンが挙げられるが、これらだけには限られない。
【0286】
B細胞抗原は、有害な環境因子であり得る。有害な環境因子には、砒素、鉛、水銀、塩化ビニル、ポリ塩化ビフェニル、ベンゼン、多環式芳香族炭化水素、カドミウム、ベンゾ(a)ピレン、ベンゾ(b)フルオランテン、クロロホルム、DDT、P,P’−アロクロール1254、アロクロール1260、ジベンゾ(a,h)アントラセン、トリクロロエチレン、ジエルドリン、六価クロム、およびDDE、P,P’が挙げられるが、これらだけには限られない。このような因子の例には、本明細書の他の箇所で与える因子がある。
【0287】
いくつかの実施形態では、B細胞抗原は自己抗原である。他の実施形態では、B細胞抗原は、同種抗原、接触感作性物質、変性疾患抗原、ハプテン、感染疾患抗原、癌抗原、アトピー病抗原、自己免疫疾患抗原、依存性物質、異種抗原、または代謝疾患酵素もしくはその酵素産物である。このような抗原の例には、本明細書の他の箇所で与える抗原がある。
【0288】
上に記載したように、本発明は、例えば1つまたは複数の免疫調節作用物質を含むワクチンナノキャリアを提供する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫調節作用物質を含む本発明のナノキャリアをワクチンとして使用する。いくつかの実施形態では、B細胞に対する抗原提示は、ナノキャリアの表面で構造上完全な免疫調節作用物質を提示することによって最適化することができる。いくつかの実施形態では、構造上完全な免疫調節作用物質を、高コピー数および/または密度でワクチンナノキャリアの表面に提示する。
【0289】
いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は、単離および/もしくは組換えのタンパク質またはペプチド、不活化生物および不活化ウイルス、死んだ生物および死んだウイルス、遺伝子改変生物または遺伝子改変ウイルス、ならびに細胞抽出物を含むことができる。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は、核酸、炭水化物、脂質、および/または小分子を含むことができる。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は、免疫応答を誘導する免疫調節作用物質である。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質は抗原である。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質はワクチンに使用する。免疫調節作用物質のさらなる記載は、「B細胞」という表題の前のセクション中で見ることができる。
【0290】
上に論じたように、ワクチンナノキャリアは、B細胞とT細胞の両方を刺激する1つの型の免疫調節作用物質を含むことができる。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは2つの型の免疫調節作用物質を含み、第1の免疫調節作用物質はB細胞を刺激し、第2の型の免疫調節作用物質はT細胞を刺激する。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは3つ以上の型の免疫調節作用物質を含み、1つまたは複数の型の免疫調節作用物質がB細胞を刺激し、1つまたは複数の型の免疫調節作用物質がT細胞を刺激する。
【0291】
ターゲティング成分
上に論じたように、本発明のナノキャリアは、1つまたは複数のターゲティング成分を含む。本発明によるターゲティング成分の一般的および具体的な性質の考察に関しては、「T細胞」という表題の前のセクション中の、「ターゲティング成分」という表題の副題を参照。いくつかの実施形態では、ターゲティング成分は特定の細胞型をターゲティングする。特定の実施形態では、標的はB細胞マーカーである。いくつかの実施形態では、B細胞標的は、非B細胞においてではなくB細胞において発現される抗原である。いくつかの実施形態では、B細胞標的は、非B細胞におけるよりB細胞においてより高頻度で存在する抗原である。
【0292】
特定の実施形態では、標的はSCS−Mphマーカーである。いくつかの実施形態では、SCS−Mph標的は、非SCS−MphにおいてではなくSCS−Mphにおいて発現される抗原である。いくつかの実施形態では、SCS−Mph標的は、非SCS−MphにおけるよりSCS−Mphにおいてより高頻度で存在する抗原である。例示的なSCS−Mphマーカーは「被膜下洞マクロファージ細胞」という表題の以下のセクション中に列挙し、本明細書において他の箇所で与えるマーカーを含む。
【0293】
特定の実施形態では、標的はFDCマーカーである。いくつかの実施形態では、FDC標的は、非FDCにおいてではなくFDC中において発現される抗原である。いくつかの実施形態では、FDC標的は、非FDCにおけるよりFDCにおいてより高頻度で存在する抗原である。例示的なFDCマーカーは「濾胞樹状細胞」という表題の以下のセクション中に列挙し、本明細書において他の箇所で与えるマーカーを含む。
【0294】
いくつかの実施形態では、標的は特定細胞型において優先的に発現される。例えば、SCS−Mph、FDC、および/またはB細胞におけるSCS−Mph、FDC、および/またはB細胞標的の発現は、参照集団と比較してSCS−Mph、FDC、および/またはB細胞において、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、または少なくとも1000倍過剰発現である。いくつかの実施形態では、参照集団は非SCS−Mph、FDC、および/またはB細胞を含むことができる。
【0295】
いくつかの実施形態では、活性化SCS−Mph、FDC、および/またはB細胞におけるSCS−Mph、FDC、および/またはB細胞標的の発現は、参照集団と比較して活性化SCS−Mph、FDC、および/またはB細胞において、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、または少なくとも1000倍過剰発現である。いくつかの実施形態では、参照集団は非活性化SCS−Mph、FDC、および/またはB細胞を含むことができる。
【0296】
被膜下洞マクロファージ細胞
本発明は、被膜下洞マクロファージ(SCS−Mph)に対する抗原のターゲティングは、濾胞B細胞に対するウイルスなどのリンパによって運ばれる病原体の有効な初期提示に関与するという認識を含む(
図2)。実施例1中に記載したように、マウスの足蹠に水泡性口内炎ウイルス(VSV)またはアデノウイルス(AdV)を皮下注射した後、ウイルス粒子は流入領域膝窩リンパ節においてCD169
+SCS−Mphによって効率よく選択的に保持された。これらのリンパ節のVSV特異的B細胞受容体(BCR)トランスジェニックB細胞はすぐに活性化され、このウイルスの攻撃の際に非常に高い抗体力価をもたらした。(Mphに毒性である)クロドロネートを充填したリポソームの注射によるSCS−Mphの枯渇は初期B細胞活性化を無効にし、SCS−MphはB細胞に対するリンパによって運ばれる粒子状抗原の提示に必要不可欠であることを示した。
【0297】
B細胞は、溶液中ではなく固定表面でそれらに対して提示される多価抗原によって、より強く活性化される。いずれか1つの理論によって縛られることを望まずに、本発明は、多くのエンベロープウイルス(VSVなど)がそれらのエンベロープ糖タンパク質に対する強力な中和抗体応答を引き出す、抗原タンパク質がウイルス粒子の表面において非常に高い密度で提示される、およびウイルス粒子が比較的無動の形式で、すなわちSCS−Mphの原形質膜と結合してB細胞に対して提示される理由を示唆する。本発明は、皮下注射によるSCS−Mphのターゲティングおよびその表面での高次構造が無傷の多価抗原の提示によって、ウイルス粒子を模倣したワクチンキャリアが、強力なB細胞応答を刺激することができるという認識を含む。
【0298】
いくつかの実施形態では、CD169(すなわちシアロアドヘシン)、CD11b(すなわち、CD11b/CD18、Mac−1、CR3もしくはαMβ2インテグリン)、および/またはマンノース受容体(すなわち多価レクチン)、いずれもSCS−Mphで顕著に発現されるタンパク質と結合する成分によって、SCS−Mphターゲティングが達成される。このような成分の例は、本明細書において他の箇所で与える成分を含む。
【0299】
いくつかの実施形態では、マクロファージ上で顕著に発現および/または提示される(すなわち、SCS−Mphマーカー)任意の実体(例えばタンパク質、脂質、炭水化物、小分子など)と特異的に結合する任意のターゲティング成分によって、SCS−Mphターゲティングを達成することができる。例示的なSCS−Mphマーカーには、CD4(L3T4、W3/25、T4);CD9(p24、DRAP−1、MRP−1);CD11a(LFA−1α、αLインテグリン鎖);CD11b(αMインテグリン鎖、CR3、Mo1、C3niR、Mac−1);CD11c(αXインテグリン、p150、95、AXb2);CDw12(p90−120);CD13(APN、gp150、EC3.4.11.2);CD14(LPS−R);CD15(X−ハプテン、ルイス、X、SSEA−1、3−FAL);CD15s(シアリルルイスX);CD15u(3’スルホルイスX);CD15su(6スルホ−シアリルルイスX);CD16a(FCRIIIA);CD16b(FcgRIIIb);CDw17(ラクトシルセラミド、LacCer);CD18(インテグリンβ2、CD11a,b,cβ−サブユニット);CD26(DPPIVエクトエンザイム、ADA結合タンパク質);CD29(血小板GPIIa、β−1インテグリン、GP);CD31(PECAM−1、エンドカム);CD32(FCγRII);CD33(gp67);CD35(CR1、C3b/C4b受容体);CD36(GpIIIb、GPIV、PASIV);CD37(gp52−40);CD38(ADP−リボシルシクラーゼ、T10);CD39(ATPデヒドロゲナーゼ、NTPデヒドロゲナーゼ−1);CD40(Bp50);CD43(シアロホリン、ロイコシアリン);CD44(EMCRII、H−CAM、Pgp−1);CD45(LCA、T200、B220、Ly5);CD45RA;CD45RB;CD45RC;CD45RO(UCHL−1);CD46(MCP);CD47(gp42、IAP、OA3、ニューロフィリン);CD47R(MEM−133);CD48(Blast−1、Hulym3、BCM−1、OX−45);CD49a(VLA−1α、α1インテグリン);CD49b(VLA−2α、gpla、α2インテグリン);CD49c(VLA−3α、α3インテグリン);CD49e(VLA−5α、α5インテグリン);CD49f(VLA−6α、α6インテグリン、gplc);CD50(ICAM−3);CD51(インテグリンα、VNR−α、ビロネクチン−Rα);CD52(CAMPATH−1、HE5);CD53(OX−44);CD54(ICAM−1);CD55(DAF);CD58(LFA−3);CD59(1F5Ag、H19、プロテクチン、MACIF、MIRL、P−18);CD60a(GD3);CD60b(9−O−アセチルGD3);CD61(GPIIIa、β3インテグリン);CD62L(L−セレクチン、LAM−1、LECAM−1、MEL−14、Leu8、TQ1);CD63(LIMP、MLA1、gp55、NGA、LAMP−3、ME491);CD64(FcγRI);CD65(セラミド、VIM−2);CD65s(シアリル化−CD65、VIM2);CD72(Ly−19.2、Ly−32.2、Lyb−2);CD74(Ii、不変鎖);CD75(シアロマスクラクトサミン);CD75S(α2,6シアリル化ラクトサミン);CD80(B7、B7−1、BB1);CD81(TAPA−1);CD82(4F9、C33、IA4、KAI1、R2);CD84(p75、GR6);CD85a(ILT5、LIR2、HL9);CD85d(ILT4、LIR2、MIR10);CD85j(ILT2、LIR1、MIR7);CD85k(ILT3、LIR5、HM18);CD86(B7−2/B70);CD87(uPAR);CD88(C5aR);CD89(IgAFc受容体、FcαR);CD91(α2M−R、LRP);CDw92(p70);CDw93(GR11);CD95(APO−1、FAS、TNFRSF6);CD97(BL−KDD/F12);CD98(4F2、FRP−1、RL−388);CD99(MIC2、E2);CD99R(CD99 Mab拘束性);CD100(SEMA4D);CD101(IGSF2、P126、V7);CD102(ICAM−2);CD111(PVRL1、HveC、PRR1、ネクチン1、HIgR);CD112(HveB、PRR2、PVRL2、ネクチン2);CD114(CSF3R、G−CSRF、HG−CSFR);CD115(c−fms、CSF−1R、M−CSFR);CD116(GM−CSFRα);CDw119(IFNγR、IFNγRA);CD120a(TNFRI、p55);CD120b(TNFRII、p75、TNFRp80);CD121b(2型IL−1R);CD122(IL2Rβ);CD123(IL−3Rα);CD124(IL−4Rα);CD127(p90、IL−7R、IL−7Rα);CD128a(IL−8Ra、CXCR1、(CD181と暫定的に改名));CD128b(IL−8Rb、CSCR2、(CD182と暫定的に改名));CD130(gp130);CD131(一般的βサブユニット);CD132(一般的γ鎖、IL−2Rγ);CDw136(MSP−R、RON、p158−ron);CDw137(4−1BB、ILA);CD139;CD141(トロンボモジュリン、フェトモジュリン);CD147(バシジン、EMMPRIN、M6、OX47);CD148(HPTP−η、p260、DEP−1);CD155(PVR);CD156a(CD156、ADAM8、MS2);CD156b(TACE、ADAM17、cSVP);CDw156C(ADAM10);CD157(Mo5、BST−1);CD162(PSGL−1);CD164(MGC−24、MUC−24);CD165(AD2、gp37);CD168(RHAMM、IHABP、HMMR);CD169(シアロアドヘシン、Siglec−1);CD170(Siglec5);CD171(LlCAM、NILE);CD172(SIRP−1α、MyD−1);CD172b(SIRPβ);CD180(RP105、Bgp95、Ly64);CD181(CXCR1、(以前はCD128aとして公知であった));CD182(CXCR2、(以前はCD128bとして公知であった));CD184(CXCR4、NPY3R);CD191(CCR1);CD192(CCR2);CD195(CCR5);CDw197(CCR7(以前はCDw197であった));CDw198(CCR8);CD204(MSR);CD205(DEC−25);CD206(MMR);CD207(ランゲリン);CDw210(CK);CD213a(CK);CDw217(CK);CD220(インスリンR);CD221(IGF1R);CD222(M6P−R、IGFII−R);CD224(GGT);CD226(DNAM−1、PTAl);CD230(プリオンタンパク質(PrP));CD232(VESP−R);CD244(2B4、P38、NAIL);CD245(p220/240);CD256(APRIL、TALL2、TNF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー13);CD257(BLYS、TALL1、TNF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー13b);CD261(TRAIL−R1、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー10a);CD262(TRAIL−R2、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー10b);CD263(TRAIL−R3、TNBF−Rスーパーファミリー、メンバー10c);CD264(TRAIL−R4、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー10d);CD265(TRANCE−R、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー11a);CD277(BT3.1、B7ファミリー:ブチロフィリン3);CD280(TEM22、ENDO180);CD281(TLR1、Toll様受容体1);CD282(TLR2、Toll様受容体2);CD284(TLR4、Toll様受容体4);CD295(LEPR);CD298(ATP1B3、Na K ATPase、β3サブユニット);CD300a(CMRF−35H);CD300c(CMRF−35A);CD300e(CMRF−35L1);CD302(DCL1);CD305(LAIR1);CD312(EMR2);CD315(CD9P1);CD317(BST2);CD321(JAM1);CD322(JAM2);CDw328(Siglec7);CDw329(Siglec9);CD68(gp 110、マクロシアリン);および/またはマンノース受容体が挙げられるが、これらだけには限られず、括弧内に示す名称は他の名称を表す。このようなマーカーの例には、本明細書の他の箇所で与えるマーカーがある。
【0300】
いくつかの実施形態では、活性化によってマクロファージ上で顕著に発現および/または提示される(すなわち、活性化SCS−Mphマーカー)任意の実体(例えばタンパク質、脂質、炭水化物、小分子など)と特異的に結合する任意のターゲティング成分によってSCS−Mphターゲティングを達成することができる。例示的な活性化SCS−Mphマーカーには、CD1a(R4、T6、HTA−1);CD1b(R1);CD1c(M241、R7);CD44R(CD44v、CD44v9);CD49d(VLA−4α、α4インテグリン);CD69(AIM、EA 1、MLR3、gp34/28、VEA);CD105(エンドグリン);CD142(組織因子、トロンボプラスチン、F3);CD143(ACE、ペプチジルジペプチダーゼA、キニナーゼII);CD153(CD3OL、TNSF8);CD163(M130、GHI/61、RM3/1);CD166(ALCAM、KG−CAM、SC−1、BEN、DM−GRASP);CD227(MUC1、PUM、PEM、EMA);CD253(TRAIL、TNF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー10);CD273(B7DC、PDL2);CD274(B7H1、PDL1);CD275(B7H2、ICOSL);CD276(B7H3);CD297(ART4、ADP−リボシルトランスフェラーゼ4;およびDombrock血液型糖タンパク質が挙げられるが、これらだけには限られず、括弧内に示す名称は他の名称を表す。このようなマーカーの例には、本明細書の他の箇所で与えるマーカーがある。
【0301】
B細胞ターゲティング成分
いくつかの実施形態では、B細胞およびFDCにおいて発現される補体受容体、CR1(すなわちCD35)タンパク質またはCR2(すなわちCD21)タンパク質と結合する成分によって、B細胞ターゲティングを達成することができる。いくつかの実施形態では、CD19、CD20、および/またはCD22などのB細胞マーカーによって、B細胞ターゲティングを達成することができる。いくつかの実施形態では、CD40、CD52、CD80、CXCR5、VLA−4、クラスII MHC、表面IgMもしくはIgD、APRL、および/またはBAFF−RなどのB細胞マーカーによってB細胞ターゲティングを達成することができる。本発明は、補体受容体または他のAPC関連分子に特異的な成分によるB細胞の同時ターゲティングは、体液性応答を促進するという認識を含む。
【0302】
いくつかの実施形態では、B細胞上で顕著に発現および/または提示される(すなわち、B細胞マーカー)任意の実体(例えばタンパク質、脂質、炭水化物、小分子など)と特異的に結合する任意のターゲティング成分によって、B細胞ターゲティングを達成することができる。例示的なB細胞マーカーには、CD1c(M241、R7);CD1d(R3);CD2(E−ロゼットR、T11、LFA−2);CD5(T1、Tp67、Leu−1、Ly−1);CD6(T12);CD9(p24、DRAP−1、MRP−1);CD11a(LFA−1α、αLインテグリン鎖);CD11b(αMインテグリン鎖、CR3、Mo1、C3niR、Mac−1);CD11c(αXインテグリン、P150、95、AXb2);CDw17(ラクトシルセラミド、LacCer);CD18(インテグリンβ2、CD11a、b、c β−サブユニット);CD19(B4);CD20(B1、Bp35);CD21(CR2、EBV−R、C3dR);CD22(BL−CAM、Lyb8、Siglec−2);CD23(FceRII、B6、BLAST−2、Leu−20);CD24(BBA−1、HSA);CD25(Tac抗原、IL−2Rα、p55);CD26(DPP IVエクトエンザイム、ADA結合タンパク質);CD27(T14、S152);CD29(血小板GPIIa、β−1インテグリン、GP);CD31(PECAM−1、エンドカム);CD32(FCγRII);CD35(CR1、C3b/C4b受容体);CD37(gp52−40);CD38(ADP−リボシルシクラーゼ、T10);CD39(ATPデヒドロゲナーゼ、NTPデヒドロゲナーゼ−1);CD40(Bp50);CD44(ECMRII、H−CAM、Pgp−1);CD45(LCA、T200、B220、Ly5);CD45RA;CD45RB;CD45RC;CD45RO(UCHL−1);CD46(MCP);CD47(gp42、IAP、OA3、ニューロフィリン);CD47R(MEM−133);CD48(Blast−1、Hulym3、BCM−1、OX−45);CD49b(VLA−2α、gpla、α2インテグリン);CD49c(VLA−3α、α3インテグリン);CD49d(VLA−4α、α4インテグリン);CD50(ICAM−3);CD52(CAMPATH−1、HES);CD53(OX−44);CD54(ICAM−1);CD55(DAF);CD58(LFA−3);CD60a(GD3);CD62L(L−セレクチン、LAM−1、LECAM−1、MEL−14、Leu8、TQ1);CD72(Ly−19.2、Ly−32.2、Lyb−2);CD73(Ecto−5’ヌクレオチダーゼ(nuciotidase);CD74(Ii、不変鎖);CD75(シアロマスクラクトサミン);CD75S(α2,6シアリル化ラクトサミン);CD77(Pk抗原、BLA、CTH/Gb3);CD79a(Igα、MB1);CD79b(Igβ、B29);CD80;CD81(TAPA−1);CD82(4F9、C33、IA4、KAI1、R2);CD83(HB15);CD84(P75、GR6);CD85j(ILT2、LIR1、MIR7);CDw92(p70);CD95(APO−1、FAS、TNFRSF6);CD98(4F2、FRP−1、RL−388);CD99(MIC2、E2);CD100(SEMA4D);CD102(ICAM−2);CD108(SEMA7A、JMH血液型抗原);CDw119(IFNγR、IFNγRa);CD120a(TNFRI、p55);CD120b(TNFRII、p75、TNFRp80);CD121b(2型IL−1R);CD122(IL2Rβ);CD124(IL−4Rα);CD130(gp130);CD132(一般的γ鎖、IL−2Rγ);CDw137(4−1BB、ILA);CD139;CD147(バシジン、EMMPRIN、M6、OX47);CD150(SLAM、IPO−3);CD162(PSGL−1);CD164(MGC−24、MUC−24);CD166(ALCAM、KG−CAM、SC−1、BEN、DM−GRASP);CD167a(DDR1、trkE、cak);CD171(L1CMA、NILE);CD175s(シアリル−Tn(S−Tn));CD180(RP105、Bgp95、Ly64);CD184(CXCR4、NPY3R);CD185(CXCR5);CD192(CCR2);CD196(CCR6);CD197(CCR7(以前はCDw197であった));CDw197(CCR7、EBI1、BLR2);CD200(OX2);CD205(DEC−205);CDw210(CK);CD213a(CK);CDw217(CK);CDw218a(IL18Rα);CDw218b(IL18Rβ);CD220(インスリンR);CD221(IGF1R);CD222(M6P−R、IGFII−R);CD224(GGT);CD225(Leu13);CD226(DNAM−1、PTA1);CD227(MUC1、PUM、PEM、EMA);CD229(Ly9);CD230(プリオンタンパク質(Prp));CD232(VESP−R);CD245(p220/240);CD247(CD3ゼータ鎖);CD261(TRAIL−R1、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー10a);CD262(TRAIL−R2、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー10b);CD263(TRAIL−R3、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー10c);CD264(TRAIL−R4、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー10d);CD265(TRANCE−R、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー11a);CD267(TACI、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー13B);CD268(BAFFR、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー13C);CD269(BCMA、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー16);CD275(B7H2、ICOSL);CD277(BT3.1.B7ファミリー:ブチロフィリン3);CD295(LEPR);CD298(ATP1B3 Na K ATPase β3サブユニット);CD300a(CMRF−35H);CD300c(CMRF−35A);CD305(LAIR1);CD307(IRTA2);CD315(CD9P1);CD316(EW12);CD317(BST2);CD319(CRACC、SLAMF7);CD321(JAM1);CD322(JAM2);CDw327(Siglec6、CD33L);CD68(gp 100、マクロシアリン);CXCR5;VLA−4;クラスII MHC;表面IgM;表面IgD;APRL;および/またはBAFF−Rが挙げられるが、これらだけには限られず、括弧内に示す名称は他の名称を表す。マーカーの例には、本明細書の他の箇所で与えるマーカーがある。
【0303】
いくつかの実施形態では、活性化によってB細胞上で顕著に発現および/または提示される(すなわち、活性化B細胞マーカー)任意の実体(例えばタンパク質、脂質、炭水化物、小分子など)と特異的に結合する任意のターゲティング成分によってB細胞ターゲティングを達成することができる。例示的な活性化B細胞マーカーにはCD1a(R4、T6、HTA−1);CD1b(R1);CD15s(シアリルルイスX);CD15u(3’スルホルイスX);CD15su(6スルホ−シアリルルイスX);CD30(Ber−H2、Ki−1);CD69(AIM、EA1、MLR3、gp34/28、VEA);CD70(Ki−24、CD27リガンド);CD80(B7、B7−1、BB1);CD86(B7−2/B70);CD97(BL−KDD/F12);CD125(IL−5Rα);CD126(IL−6Rα);CD138(シンデカン−1、ヘパラン硫酸プロテオグリカン);CD152(CTLA−4);CD252(OX40L、TNF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー4);CD253(TRAIL、TNF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー10);CD279(PD1);CD289(TLR9、Toll様受容体9);およびCD312(EMR2)が挙げられるが、これらだけには限られず、括弧内に示す名称は他の名称を表す。マーカーの例には、本明細書の他の箇所で与えるマーカーがある。
【0304】
濾胞樹状細胞
以前には未知の抗原を初期に検出するB細胞は、その抗原に対する最適以下の結合親和性でB細胞受容体(BCR、すなわち膜貫通ドメインを有する抗体)を典型的に発現する。しかしながら、B細胞は、それらが胚中心(GC)反応に入るとき、それらが産生する抗体の親和性を数桁増大することができる。典型的に数週間続くこの事象は、抗原物質を蓄積し、保持し、そして活性化B細胞に対して抗原物質を提示するFDCに依存する。B細胞は、活発に増殖しながら、抗体の抗原結合部位をコードするゲノム配列を繰り返し変異させ、クラススイッチ組換えを経て、大部分はIgGアイソタイプの分泌型高親和性抗体を形成する。GC反応は、しばしば数年間高い防御抗体力価を維持する長寿命の記憶B細胞および形質細胞の生成も刺激する。皮下注射によってFDCを標的にし長期間FDC表面に保持されるワクチンキャリアは、ワクチン接種に応答してGC反応を促進し、望ましい体液性免疫応答の親和性および寿命を改善すると予想される。
【0305】
いくつかの実施形態では、FDCおよびB細胞上で発現される補体受容体、CR1(すなわち、CD35)タンパク質またはCR2(すなわち、CD21)タンパク質と結合する成分によってFDCターゲティングを実施することができる。成分の例は、本明細書において他の箇所で与える成分を含む。
【0306】
複数のターゲティング成分を含むワクチンナノキャリア
GC反応およびB細胞の生存はFDCを必要とするだけでなく、活性化CD4 T細胞によって与えられる助力にも依存する。CD4T細胞が、MHCクラスII(pMHC)の同種ペプチドを提示するDCにより最初に刺激されて、濾胞ヘルパー(T
FH)の表現型を得るとき、助力は最も効率よく与えられる。新たに生じたT
FH細胞は次いでB濾胞に向かって移動し、同じpMHC複合体でもってそれらを提示するB細胞に助力を与える。このため、B細胞は最初に抗原物質(例えば、ウイルスまたはウイルス様ワクチン)を得て、それを内在化およびプロセシングし(すなわち、MHCクラスIIに充填されるペプチドを抽出する)、次いでT
FH細胞にpMHCを提示する。
【0307】
したがって、本発明は、最適な体液性免疫を刺激するワクチンは、いくつかの特徴と成分(
図1):(a)DCによってターゲティングされ提示される、CD4 T細胞に対する抗原物質、(b)SCS−Mphによって天然型で、抗原特異的濾胞B細胞に対して提示され得る表面抗原、(c)T
FH細胞へ提示するための、濾胞B細胞によって獲得およびプロセシングされる能力(本発明は、B細胞はSCS−Mph由来の粒子状物質を容易に獲得および内在化するという認識を含む);(d)FDCに到達しFDCに長時間完全型で留まる能力、および(e)APCを完全に免疫原性にし耐性を回避または克服するアジュバント活性、を組み合わせることができるという認識を含む。
【0308】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは少なくとも1つのターゲティング成分を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアの全てのターゲティング成分が互いに同一である。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアはいくつかの異なる型のターゲティング成分を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは複数の個別のターゲティング成分を含み、それらは全て互いに同じである。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、正確に1つの型のターゲティング成分を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、正確に2つの異なる型のターゲティング成分を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、3つ以上の異なる型のターゲティング成分を含む。
【0309】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、1つの細胞型へのワクチンナノキャリアの送達(例えば、SCS−Mphのみへの送達)を誘導する1つの型のターゲティング成分を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、複数の細胞型へのワクチンナノキャリアの送達(例えば、SCS−MphとFDCの両方への送達)を誘導する1つの型のターゲティング成分を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは2つの型のターゲティング成分を含み、第1のターゲティング成分は1つの細胞型へのワクチンナノキャリアの送達を誘導し、第2の型のターゲティング成分は第2の細胞型へのワクチンナノキャリアの送達を誘導する。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは3つ以上の型のターゲティング成分を含み、1つまたは複数の型のターゲティング成分が1つの細胞型へのワクチンナノキャリアの送達を誘導し、1つまたは複数の型のターゲティング成分が第2の細胞型へのワクチンナノキャリアの送達を誘導する。一例だけ挙げると、ワクチンナノキャリアは2つの型のターゲティング成分を含むことができ、第1の型のターゲティング成分はDCへのワクチンナノキャリアの送達を誘導し、第2の型のターゲティング成分はSCS−Mphへのワクチンナノキャリアの送達を誘導する。
【0310】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、ワクチンナノキャリアの外側表面と結合した少なくとも1つのターゲティング成分を含む。いくつかの実施形態では、結合は共有結合である。いくつかの実施形態では、共有結合は1つまたは複数のリンカーによって仲介される。いくつかの実施形態では、結合は非共有結合である。いくつかの実施形態では、非共有結合は電荷相互作用、親和性相互作用、金属配位、物理的吸着、ホスト−ゲスト相互作用、疎水性相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファンデルワールス相互作用、磁気相互作用、静電相互作用、双極子間相互作用、および/またはこれらの組合せによって仲介される。
【0311】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、脂質膜(例えば脂質二重層、脂質単層など)を含み、少なくとも1つのターゲティング成分が脂質膜と結合する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのターゲティング成分が脂質膜内に埋め込まれている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのターゲティング成分が脂質二重層の内腔に埋め込まれている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのターゲティング成分はワクチンナノキャリアの複数の位置に位置してよい。例えば、第1のターゲティング成分は脂質膜内に埋め込むことができ、第2の免疫刺激作用物質はワクチンナノキャリアの外側表面と結合することができる。別の例を挙げると、第1のターゲティング成分と第2のターゲティング成分の両方が、ワクチンナノキャリアの外側表面と結合することができる。
【0312】
免疫刺激作用物質
上に記載したように、いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、免疫応答の刺激を手助けすることができる1つまたは複数の免疫刺激作用物質を運ぶことができる。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、B細胞とT細胞の両方を刺激する1つの型の免疫刺激作用物質を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは2つの型の免疫刺激作用物質を含み、第1の型の免疫刺激作用物質はB細胞を刺激し、第2の型の免疫刺激作用物質はT細胞を刺激する。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは3つ以上の型の免疫刺激作用物質を含み、1つまたは複数の型の免疫刺激作用物質がB細胞を刺激し、1つまたは複数の型の免疫刺激作用物質がT細胞を刺激する。本発明に従い使用することができる免疫刺激作用物質のより詳細な記載に関しては、前のセクションを参照。
【0313】
B細胞活性化のアッセイ
いくつかの実施形態では、様々なアッセイを利用して、免疫応答がB細胞またはB細胞群において刺激されたかどうか(すなわち、B細胞またはB細胞群が「活性化状態」になったかどうか)決定することができる。いくつかの実施形態では、B細胞の免疫応答の刺激は、抗体力価を測定することによって決定することができる。一般に、「抗体力価」は、特定の希釈度(dilution)で抗原と結合し中和する抗体の能力を指す。例えば、高い抗体力価とは、高希釈度でさえ抗原と結合し中和する抗体の能力を指す。いくつかの実施形態では、B細胞の免疫応答は、抗体力価が非免疫個体または免疫前血清より、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約500倍、少なくとも約1000倍、または約1000倍を超える希釈度でプラスであると測定した場合に刺激されると言える。
【0314】
いくつかの実施形態では、B細胞における免疫応答の刺激は、抗体親和性を測定することによって決定することができる。特に、B細胞における免疫応答は、抗体が10
−7M未満、10
−8M未満、10
−9M未満、10
−10M未満、10
−11M未満、10
−12M未満、またはそれよりも小さい平衡解離定数(K
d)を有する場合に刺激されると言える。
【0315】
いくつかの実施形態では、B細胞におけるT細胞依存性免疫応答は、クラススイッチ組換えが起こった場合に刺激されると言える。特に、IgMから、IgGアイソタイプまたはIgAアイソタイプまたはこれらのアイソタイプの混合物への変更は、B細胞のT細胞依存性免疫応答を示す。
【0316】
いくつかの実施形態では、B細胞における免疫応答は、抗原特異的抗体の親和性成熟を測定することによって決定する。親和性成熟は胚中心反応の間に起こり、それにより活性化B細胞は抗原結合領域をコードする免疫グロブリン遺伝子の領域を繰り返し変異させる。抗原に対するより高い親和性を有する変異抗体を産生するB細胞は、優先的に生存および増殖することができる。したがって、経時的に、GCにおいてB細胞によって産生される抗体は徐々により高い親和性を得る。いくつかの実施形態では、このプロセスの読み出し値が、高い抗体力価(例えば、高希釈度でさえ抗原と結合し中和する高親和性IgG抗体)の存在である。
【0317】
いくつかの実施形態では、B細胞における免疫応答は、長期間多量の高親和性抗体を産生することができる記憶B細胞および/または長寿命形質細胞が形成された場合に刺激されると言える。いくつかの実施形態では、抗体力価をワクチン接種後に異なる時間間隔で(例えば2週間、1ヶ月、2ヶ月、6ヶ月、1年、2年、5年、10年、15年、20年、25年、またはそれより長く)測定して、長期間多量の高親和性抗体を産生することができる記憶B細胞および/または長寿命形質細胞の存在に関して試験する。いくつかの実施形態では、長期間多量の高親和性抗体を産生することができる記憶B細胞および/または長寿命形質細胞は、体液性応答を測定することによって示されると言える(例えば、初回感作の間よりも、後の追加ワクチン接種後に、体液性応答が顕著により迅速でありより高い力価をもたらす場合)。
【0318】
いくつかの実施形態では、B細胞における免疫応答は、活発な胚中心反応が起こる場合に刺激されると言える。いくつかの実施形態では、活発な胚中心反応は、組織学的実験を実施することによって目視により評価することができる。いくつかの実施形態では、活発な胚中心反応は、抗原含有リンパ組織(例えば、ワクチン−流入領域リンパ節、脾臓など)の免疫組織化学を実施することによって評価することができる。いくつかの実施形態では、免疫組織化学に続いてフローサイトメトリーを行う。
【0319】
いくつかの実施形態では、B細胞における免疫応答の刺激は、抗体のアイソタイプ(例えば、IgG、IgA、IgE、IgM)を同定することにより決定することができる。特定の実施形態では、B細胞によるIgGアイソタイプ抗体の産生はB細胞における望ましい免疫応答である。
【0320】
いくつかの実施形態では、B細胞における免疫応答は、中和アッセイで抗体の機能を分析することによって決定する。特に、血清の不在下においてin vitroで感受性細胞系に感染する微生物(例えば、ウイルス、細菌、真菌、原生動物、寄生虫など)の能力を、その中で細胞が増殖する培養培地に、異なる希釈度の免疫血清および非免疫血清を加える場合の状態と比較する。特定の実施形態では、B細胞における免疫応答は、約1:5、約1:10、約1:50、約1:100、約1:500、約1:1000、約1:5000、約1:10,000、またはそれを超えるの希釈度で微生物の感染が中和される場合に刺激されると言える。
【0321】
いくつかの実施形態では、動物モデルにおけるワクチンの有効性は、典型的には致死性である一定用量の微生物を(例えば、ワクチン接種後3週間以上の)免疫処置および非免疫処置マウスの群に感染させることによって決定することができる。両群の生存の程度および期間をモニタリングし、典型的にはカプランマイヤー曲線にグラフ化する。高い生存率がB細胞応答によるものであるかどうか評価するために、免疫マウス由来の血清を「受動的ワクチン」として移し、致死的感染からの非免疫マウスの防御を評価することができる。
【0322】
当業者は、上に記載したアッセイが、B細胞活性化が起こったかどうかを決定するために利用することができる、単なる例示的な方法であることを理解している。B細胞活性化が起こったかどうかを決定するために使用することができる当業者に公知の任意のアッセイが、本発明の範囲の範疇にある。B細胞活性化が起こったかどうかを決定するために使用することができる本明細書に記載するアッセイおよび他のアッセイは、Current Protocols in Immunology(参照によって本明細書に組み込まれる、John Wiley & Sons、Hoboken、NY、2007年)中に記載される。
【0323】
ナノキャリア
本明細書に記載する任意のナノキャリアはワクチンナノキャリアであってよい。本明細書に具体的に提供する開示の一部は、ワクチンナノキャリアに言及するが、他に示さない限り、本開示はワクチンナノキャリアに限られず、本明細書に記載する任意のナノキャリアに当てはまることは理解されよう。
【0324】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、例えば、B細胞とT細胞の一方または両方において免疫応答を刺激することができる、少なくとも1つの免疫調節作用物質を含む、合成ナノキャリアである。免疫調節作用物質は、本明細書でより詳細に記載するように、任意の形式でナノキャリアと結合させることが可能である。
【0325】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは生分解性および生体適合性である。一般に、生体適合性物質は細胞に対して無毒である。いくつかの実施形態では、細胞へのその添加が一定閾値未満の細胞死(例えば、50%未満、20%未満、10%未満、5%未満、またはそれ以下の細胞死)をもたらす場合、物質は生体適合性であると考える。いくつかの実施形態では、細胞へのその添加が有害反応を誘導しない場合、物質は生体適合性であると考える。一般に、生分解性物質は、治療関連期間(例えば、数週間、数ヶ月、または数年)の行程にわたり生理条件下で分解を経る物質である。いくつかの実施形態では、生分解性物質は、細胞機構によって分解され得る物質である。いくつかの実施形態では、生分解性物質は、化学的プロセスによって分解さ得る物質である。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、生体適合性と生分解性の両方である物質である。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、生体適合性であるが生分解性ではない物質である。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、生分解性であるが生体適合性ではない物質である。
【0326】
いくつかの実施形態では、本発明によるナノキャリアは、5ミクロン(μm)未満の最大寸法(例えば直径)を有する任意の実体である。いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは3μm未満の最大寸法を有する。いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは1000ナノメートル(nm)未満の最大寸法を有する。いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは900nm未満、800nm未満、700nm未満、600nm未満、500nm未満、400nm未満、300nm未満、200nm未満、または100nm未満の最大寸法を有する。いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは300nm以下の最大寸法(例えば直径)を有する。いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは250nm以下の最大寸法(例えば直径)を有する。いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは200nm以下の最大寸法(例えば直径)を有する。いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは150nm以下の最大寸法(例えば直径)を有する。いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは100nm以下の最大寸法(例えば直径)を有する。例えば50nm以下の最大寸法を有する、さらに小さなナノキャリアを、本発明のいくつかの実施形態において使用する。いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは、25nmと200nmの間の範囲の最大寸法を有する。いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは、20nmと100nmの間の範囲の最大寸法を有する。本明細書で提供する組成物のナノキャリアは、いくつかの実施形態では、500nm未満である幾何学的平均径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、50nmより大きいが500nm未満である幾何学的平均径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアの集団の幾何学的平均径は、約60nm、約75nm、約100nm、約125nm、約150nm、約175nm、約200nm、約225nm、約250nm、約275nm、約300nm、約325nm、約350nm、約375nm、約400nm、約425nm、約450nm、または約475nmである。いくつかの実施形態では、幾何学的平均径は、100nm〜400nm、100nm〜300nm、100nm〜250nm、または100nm〜200nmの間である。いくつかの実施形態では、幾何学的平均径は、60nm〜400nm、60nm〜350nm、60nm〜300nm、60nm〜250nm、または60nm〜200nmの間である。いくつかの実施形態では、幾何学的平均径は75nmと250nmの間である。
【0327】
いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは1000ナノメートル(nm)より大きい最大寸法を有する。いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは900nm、800nm、700nm、600nm、500nm、400nm、300nm、200nm、または100nmより大きい最大寸法を有する。いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは300nm以上の最大寸法(例えば直径)を有する。いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは250nm以上の最大寸法(例えば直径)を有する。いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは200nm以上の最大寸法(例えば直径)を有する。いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは150nm以上の最大寸法(例えば直径)を有する。いくつかの実施形態では、本発明のナノキャリアは100nm以上の最大寸法(例えば直径)を有する。例えば50nm以上の最大寸法を有する、さらに小さなナノキャリアを、本発明のいくつかの実施形態において使用する。
【0328】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは1000nm未満の直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは約750nmの直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは約500nmの直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは約450nmの直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは約400nmの直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは約350nmの直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは約300nmの直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは約275nmの直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは約250nmの直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは約225nmの直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは約200nmの直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは約175nmの直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは約150nmの直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは約125nmの直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは約100nmの直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは約75nmの直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは約50nmの直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは約25nmの直径を有する。
【0329】
特定の実施形態では、ナノキャリアは腎排泄の限界を超える大きさである(例えば、6nmを超える直径を有するナノキャリア)。特定の実施形態では、ナノキャリアは、肝臓による血流からのナノキャリアの除去を回避するほど十分小さい(例えば、1000nm未満の直径を有するナノキャリア)。一般に、ナノキャリアの物理化学的特徴は、腎排泄および肝クリアランスを低減することによってナノキャリアを血漿中でより長時間循環させるはずである。
【0330】
大きさ、形状、および/または組成の点で比較的均一であり、したがってそれぞれのナノキャリアが類似した性質を有する、ナノキャリアの集団を使用するのは望ましいことが多い。例えば、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のナノキャリアが、平均直径または最大寸法の5%、10%、または20%の範囲内の直径または最大寸法を有し得る。いくつかの実施形態では、ナノキャリアの集団は大きさ、形状、および/または組成の点で異質であってよい。いくつかの実施形態では、ナノキャリア集団の30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれより多くのナノキャリアが、500nM未満である直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリア集団の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれより多くのナノキャリアが、50nmより大きいが500nm未満である直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリア集団の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれより多くのナノキャリアが、約60nm、約75nm、約100nm、約125nm、約150nm、約175nm、約200nm、約225nm、約250nm、約275nm、約300nm、約325nm、約350nm、約375nm、約400nm、約425nm、約450nm、または約475nmの直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリア集団の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれより多くのナノキャリアが、100nm〜400nm、100nm〜300nm、100nm〜250nm、または100nm〜200nmの間である直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノキャリア集団の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれより多くのナノキャリアが、60nm〜400nm、60nm〜350nm、60nm〜300nm、60nm〜250nm、または60nm〜200nmの間である直径を有する。
【0331】
様々な異なるナノキャリアを本発明に従い使用することができる。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは球形または長球形である。いくつかの実施形態では、ナノキャリアはフラットまたはプレート形状である。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは立方体または立方体様である。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは卵形または楕円状である。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは円柱状、円錐状、環状体状(すなわち、ドーナッツ形状)、または角錐状である。いくつかの実施形態では、粒子はリポソームである。いくつかの実施形態では、粒子はミセルである。それぞれのこれらの形状は「粒子」の一般カテゴリーの範囲内にあること、および本発明のナノキャリアは、ナノ粒子(すなわち、1000nm未満の直径を有する粒子)、マイクロ粒子(すなわち、1000マイクロメートル未満の直径を有する粒子)、またはピコ粒子(すなわち、1nm未満の直径を有する粒子)を含むことができることは理解されよう。(以下でより詳細に記載するような脂質系ナノキャリアなどの)いくつかの実施形態では、ナノキャリアは剛性ではなく、環境に基づいて変化する形状および直径を有し得ることがさらに理解されよう。
【0332】
「合成ナノキャリアの最大寸法」は、合成ナノキャリアの任意の軸に沿って測定したナノキャリアの最大の寸法を意味する。「合成ナノキャリアの最小寸法」は、合成ナノキャリアの任意の軸に沿って測定した合成ナノキャリアの最小の寸法を意味する。例えば、長球形の合成ナノキャリアに関して、合成ナノキャリアの最大寸法と最小寸法は実質的に同じであり、その直径の大きさである。同様に、立方体の合成ナノキャリアに関して、合成ナノキャリアの最小寸法はその高さ、幅または長さの最小値であり、一方で合成ナノキャリアの最大寸法はその高さ、幅または長さの最大値である。一実施形態では、試料中の合成ナノキャリアの合計数に基づく、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは80%、より好ましくは90%の最小寸法は100nmより大きい。一実施形態では、試料中の合成ナノキャリアの合計数に基づく、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは80%、より好ましくは90%の最大寸法は5μm以下である。好ましくは、試料中の合成ナノキャリアの合計数に基づく、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは80%、より好ましくは90%の最小寸法は110nmより大きく、より好ましくは120nmより大きく、より好ましくは130nmより大きく、およびさらにより好ましくは150nmより大きい。好ましくは、試料中の合成ナノキャリアの合計数に基づく、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは80%、より好ましくは90%の最大寸法は3μm以下であり、より好ましくは2μm以下であり、より好ましくは1μm以下であり、より好ましくは800nm以下であり、より好ましくは600nm以下であり、およびさらにより好ましくは500nm以下である。好ましい実施形態では、試料中の合成ナノキャリアの合計数に基づく、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは80%、より好ましくは90%の最大寸法はl00nm以上であり、より好ましくは120nm以上であり、より好ましくは130nmより大きく、より好ましくは140nmより大きく、およびさらにより好ましくは150nmより大きい。合成ナノキャリアの大きさの測定値は、合成ナノキャリアを液状(通常水性)媒体に縣濁すること、および動的光散乱を使用すること(例えば、Brookhaven ZetaPALS装置を使用すること)によって得る。ナノキャリアは中実(solid)または中空(hollow)であってよく、1つまたは複数の層を含むことができる。いくつかの実施形態では、それぞれの層は他の層(複数可)と比較して特有の組成および特有の性質を有する。一例だけ挙げると、ナノキャリアはコア/シェル構造を有することができ、この場合コアは1つの層であり(例えば、ポリマーコア)、シェルは第2の層である(例えば、脂質二重層または単層)。ナノキャリアは複数の異なる層を含むことができる。いくつかの実施形態では、1つの層は実質的に架橋状態であり得、第2の層は実質的に架橋状態ではない、などである。いくつかの実施形態では、異なる層の1個、数個、または全てが、1つもしくは複数の免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはこれらの組合せを含むことができる。いくつかの実施形態では、1つの層は免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質を含み、第2の層は免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質を含まない、などである。いくつかの実施形態では、それぞれ個々の層が、異なる免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはこれらの組合せを含む。
【0333】
脂質ナノキャリア
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは1つまたは複数の脂質を任意選択で含むことができる。いくつかの実施形態では、ナノキャリアはリポソームを含むことができる。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは脂質二重層を含むことができる。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは脂質単層を含むことができる。いくつかの実施形態では、ナノキャリアはミセルを含むことができる。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、脂質層(例えば、脂質二重層、脂質単層など)によって囲まれたポリマーマトリックスを含むコアを含むことができる。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、脂質層(例えば、脂質二重層、脂質単層など)によって囲まれた非ポリマーコア(例えば、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子、骨粒子、ウイルス粒子など)を含むことができる。
【0334】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、ナノキャリアの内側と外側が親水性であり、脂質二重層の内腔が疎水性であるように配向した脂質二重層を含むことができる。脂質二重層を含むワクチンナノキャリアの例は実施例2中に記載し、
図3〜8中に示す。いくつかの実施形態では、疎水性免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質は、脂質二重層の内腔と結合させる(例えば、その中に埋め込む)ことが可能である。いくつかの実施形態では、親水性免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質は、ナノキャリアの内側および/または外側と結合させること(例えば、それと共有または非共有結合させる、その中に封入することなど)が可能である。いくつかの実施形態では、親水性免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質は、脂質二重層の内側および/または外側表面と結合させること(例えば、それと共有または非共有結合させる、その中に封入することなど)が可能である。いくつかの実施形態では、脂質二重層の内側、親水性表面は両親媒性物質(amphiphilic entity)と結合する。いくつかの実施形態では、両親媒性物質は、両親媒性物質の親水性末端が脂質二重層の内側表面と結合するように配向し、両親媒性物質の疎水性末端はナノキャリアの内側に対して配向し、ナノキャリアの内側内に疎水性環境をもたらす。
【0335】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、ナノキャリアの内側が疎水性であり、ナノキャリアの外側が親水性であるように配向した、脂質単層を含むことができる。脂質単層を含むワクチンナノキャリアの例は実施例2中に記載し、
図9および10中に示す。いくつかの実施形態では、疎水性免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質は、ナノキャリアの内側および/または脂質単層の内側表面と結合させること(例えば、それと共有または非共有結合させる、その中に封入することなど)が可能である。いくつかの実施形態では、親水性免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質は、ナノキャリアの外側および/または脂質単層の外側表面と結合させること(例えば、それと共有または非共有結合させる、その中に封入することなど)が可能である。いくつかの実施形態では、脂質二重層の内側、疎水性表面は両親媒性物質と結合する。いくつかの実施形態では、両親媒性物質は、両親媒性物質の疎水性末端が脂質二重層の内側表面と結合するように配向し、両親媒性物質の親水性末端はナノキャリアの内側に対して配向し、ナノキャリアの内側内に親水性環境をもたらす。
【0336】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは、ナノキャリアの外側表面と結合した1つまたは複数のナノ粒子を含むことができる。ナノキャリアの外側表面と結合したナノ粒子を含むワクチンナノキャリアの例は実施例2中に記載し、
図4、6、および8中に示す。
【0337】
ナノキャリアの脂質の割合は、0重量%〜99重量%、10重量%〜99重量%、25重量%〜99重量%、50重量%〜99重量%、または75重量%〜99重量%の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、ナノキャリアの脂質の割合は、0重量%〜75重量%、0重量%〜50重量%、0重量%〜25重量%、または0重量%〜10重量%の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、ナノキャリアの脂質の割合は、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、または約30重量%であってよい。
【0338】
いくつかの実施形態では、脂質は油である。一般に、当技術分野で公知である任意の油をナノキャリアに含めることができる。いくつかの実施形態では、油は1つまたは複数の脂肪酸基またはその塩を含むことができる。いくつかの実施形態では、脂肪酸基は、消化可能な、長鎖(例えばC
8〜C
50)の、置換または非置換炭化水素を含むことができる。いくつかの実施形態では、脂肪酸基はC
10〜C
20脂肪酸またはその塩であってよい。いくつかの実施形態では、脂肪酸基はC
15〜C
20脂肪酸またはその塩であってよい。いくつかの実施形態では、脂肪酸基はC
15〜C
25脂肪酸またはその塩であってよい。いくつかの実施形態では、脂肪酸基は不飽和であってよい。いくつかの実施形態では、脂肪酸基は単不飽和状態であってよい。いくつかの実施形態では、脂肪酸基は多不飽和状態であってよい。いくつかの実施形態では、不飽和脂肪酸基の二重結合はシス配座状態であってよい。いくつかの実施形態では、不飽和脂肪酸の二重結合はトランス配座状態であってよい。
【0339】
いくつかの実施形態では、脂肪酸基は、1つまたは複数の酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、またはリグノセリン酸であってよい。いくつかの実施形態では、脂肪酸基は、1つまたは複数のパルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、アルファ−リノール酸、ガンマ−リノール酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、またはエルカ酸であってよい。
【0340】
いくつかの実施形態では、油は液体トリグリセリドである。
【0341】
本発明により使用するのに適した油には、アーモンド、杏仁、アボカド、ババス、ベルガモット、ブラックカラントシード、ルリヂサ、ジュニバータール、カモミール、キャノーラ、カラウェー、カルナバ、カストリウム、シナモン、ココアバター、ココナッツ、タラ肝、コーヒー、コーン、綿実、エミュー、ユーカリ、マツヨイグサ、魚類、アマニ、ゲラニオール、ゴード、ブドウ種、ヘーゼルナッツ、ヒソップ、ホホバ、ククイの実、ラバンジン、ラベンダー、レモン、アオモジ、マカダミアナッツ、アオイ、マンゴ種、メドウフォーム種、ミンク、ナツメグ、オリーブ、オレンジ、オレンジラフィー、パーム、パーム核、桃核、ピーナッツ、ケシの実、カボチャ種、菜種、米ぬか、ローズマリー、ベニバナ、ビャクダン、サスクアナ、サボリー、シーバックソーン、ゴマ、シアバター、シリコーン、ダイズ、ヒマワリ、ティーツリー、アザミ、ツバキ、ベチベル、クルミ、およびコムギ胚芽油、ならびにこれらの組合せが挙げられるが、これらだけには限られない。本発明により使用するのに適した油には、ステアリン酸ブチル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコン、セバシン酸ジエチル、ジメチコン360、ミリスチン酸イソプロピル、鉱油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーン油、およびこれらの組合せが挙げられるが、これらだけには限られない。いくつかの実施形態では、脂質はホルモン(例えば、エストロゲン、テストステロン)、ステロイド(例えば、コレステロール、胆汁酸)、ビタミン(例えばビタミンE)、リン脂質(例えば、ホスファチジルコリン)、スフィンゴ脂質(例えばセラミド)、またはリポタンパク質(例えば、アポリポタンパク質)である。
【0342】
ポリマーマトリックスを含むナノキャリア
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは1つまたは複数のポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスはコーティング層(例えば、リポソーム、脂質単層、ミセルなど)によって囲まれ得る。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質をポリマーマトリックスと結合させることが可能である。このような実施形態では、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質をナノキャリア内に効率よく封入する。
【0343】
いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質を、ポリマーマトリックスと共有結合させることが可能である。いくつかの実施形態では、共有結合はリンカーによって仲介される。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質を、ポリマーマトリックスと非共有結合させることが可能である。例えば、いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質を、ポリマーマトリックス中に封入する、それによって囲まれる、および/またはそれ全体に分散させることが可能である。代替的または追加的に、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質を、疎水性相互作用、電荷相互作用、ファンデルワールス力などによってポリマーマトリックスと結合させることが可能である。
【0344】
広く様々なポリマーおよびそこからポリマーマトリックスを形成するための方法は、薬剤送達の技術分野では公知である。一般に、ポリマーマトリックスは1つまたは複数のポリマーを含む。本発明による任意のポリマーを使用することができる。ポリマーは天然または非天然(合成)ポリマーであってよい。ポリマーは2個以上のモノマーを含むホモポリマーまたはコポリマーであってよい。配列の点で、コポリマーはランダム、ブロックであってよく、またはランダム配列とブロック配列の組合せを含む。典型的には、本発明によるポリマーは有機ポリマーである。
【0345】
ポリマーの例には、ポリエチレン、ポリカーボネート(例えばポリ(1,3−ジオキサン−2オン))、ポリ無水物(例えばポリ(セバシン酸無水物))、ポリヒドロキシ酸(例えばポリ(β−ヒドロキシアルカノエート))、ポリプロピルフメレート、ポリカプロラクトン、ポリアミド(例えばポリカプロラクタム)、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル(例えばポリラクチド、ポリグリコリド)、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレア、ポリスチレン、およびポリアミンが挙げられる。
【0346】
いくつかの実施形態では、本発明によるポリマーは、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(1,3−ジオキサン−2オン))、ポリ無水物(例えばポリ(セバシン酸無水物))、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール)、ポリウレタン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、およびポリシアノアクリレートだけには限られないが、これらを含めた、21C.F.R.§177.2600の下で米国食品医薬品局(FDA)によってヒトにおける使用が承認されているポリマーを含む。
【0347】
いくつかの実施形態では、ポリマーは親水性であってよい。例えば、ポリマーは陰性基(例えば、リン酸基、硫酸基、カルボキシレート基)、陽性基(例えば、第四級アミン基)、または極性基(例えば、ヒドロキシル基、チオール基、アミン基)を含むことができる。いくつかの実施形態では、親水性ポリマーマトリックスを含むナノキャリアは、そのナノキャリア内に親水性環境をもたらす。いくつかの実施形態では、親水性免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質を、親水性ポリマーマトリックスと結合させることが可能である。
【0348】
いくつかの実施形態では、ポリマーは疎水性であってよい。いくつかの実施形態では、疎水性ポリマーマトリックスを含むナノキャリアは、そのナノキャリア内に疎水性環境をもたらす。いくつかの実施形態では、疎水性免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質を、疎水性ポリマーマトリックスと結合させることが可能である。
【0349】
いくつかの実施形態では、ポリマーは1つまたは複数の成分および/または官能基で改変することができる。任意の成分または官能基を本発明に従い使用することができる。いくつかの実施形態では、ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)で、炭水化物で、および/または多糖由来の非環状ポリアセタールで改変することができる(参照によって本明細書に組み込まれる、Papisov、2001年、ACS Symposium Series、786巻、301頁)。
【0350】
いくつかの実施形態では、ポリマーは脂質または脂肪酸基で改変することができ、それらの性質は以下でさらに詳細に記載する。いくつかの実施形態では、脂肪酸基は1つまたは複数の酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、またはリグノセリン酸であってよい。いくつかの実施形態では、脂肪酸基は、1つまたは複数のパルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、アルファ−リノール酸、ガンマ−リノール酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、またはエルカ酸であってよい。
【0351】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、本明細書で集合的に「PLGA」と呼ぶポリ(乳酸−コ−グリコール酸)およびポリ(ラクチド−コ−グリコリド)などの乳酸およびグリコール酸単位を含むコポリマー、ならびに本明細書で「PGA」と呼ぶグリコール酸単位、ならびに本明細書で集合的に「PLA」と呼ぶポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、ポリ−D,L−乳酸、ポリ−L−ラクチド、ポリ−D−ラクチド、およびポリ−D,L−ラクチドなどの乳酸単位を含むホモポリマーを含めた、ポリエステルであってよい。いくつかの実施形態では、例示的なポリエステルには、例えば、ポリヒドロキシ酸、PEGコポリマーならびにラクチドとグリコリドのコポリマー(例えば、PLA−PEGコポリマー、PGA−PEGコポリマー、PLGA−PEGコポリマー、およびこれらの誘導体)がある。いくつかの実施形態では、ポリエステルには、例えば、ポリ無水物、ポリ(オルトエステル)、ポリ(オルトエステル)−PEGコポリマー、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)−PEGコポリマー、ポリリシン、ポリリシン−PEGコポリマー、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンイミン)−PEGコポリマー、ポリ(L−ラクチド−コ−L−リシン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)、ポリ[α−(4−アミノブチル)−L−グリコール酸]、およびこれらの誘導体が挙げられる。
【0352】
いくつかの実施形態では、ポリマーはPLGAであってよい。PLGAは、乳酸とグリコール酸の生体適合性および生分解性のコポリマーであり、様々な形のPLGAが乳酸:グリコール酸の比によって特徴付けられる。乳酸はL−乳酸、D−乳酸、またはD,L−乳酸であってよい。PLGAの分解率は、乳酸:グリコール酸の比を変えることによって調節することができる。いくつかの実施形態では、本発明に従い使用するPLGAは、約85:15、約75:25、約60:40、約50:50、約40:60、約25:75、または約15:85の乳酸:グリコール酸の比によって特徴付けられる。
【0353】
いくつかの実施形態では、ポリマーは1つまたは複数のアクリル酸系ポリマーであってよい。特定の実施形態では、アクリル酸系ポリマーは、例えば、アクリル酸とメタクリル酸のコポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸無水物)、メチルメタクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)コポリマー、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、グリシジルメタクリレートコポリマー、ポリシアノアクリレート、および上記のポリマーの1つまたは複数を含む組合せを含む。アクリル酸系ポリマーは、第四級アンモニウム基の含有量が少ないアクリル酸とメタクリル酸エステルの完全に重合したコポリマーを含むことができる。
【0354】
いくつかの実施形態では、ポリマーはカチオン性ポリマーであってよい。一般に、カチオン性ポリマーは、核酸(例えば、DNA、RNA、またはこれらの誘導体)の負に帯電した鎖を濃縮(condense)および/または保護することができる。ポリ(リシン)(Zaunerら、1998年、Adv. Drug Del. Rev.、30巻、97頁、およびKabanovら、1995年、Bioconjugate Chem.、6巻、7頁、いずれも参照によって本明細書に組み込まれる)、ポリ(エチレンイミン)(PEI;Boussifら、1995年、Proc. Natl. Acad. Sci., USA、1995年、92巻、7297頁、参照によって本明細書に組み込まれる)、ならびにポリ(アミドアミン)デンドリマー(Kukowska−Latalloら、1996年、Proc. Natl. Acad. Sci., USA、93巻、4897頁、Tangら、1996年、Bioconjugate Chem.、7巻、703頁、およびHaenslerら、1993年、Bioconjugate Chem.、4巻、372頁、これらは全て参照によって本明細書に組み込まれる)などのアミン含有ポリマーは生理的pHで正に帯電しており、核酸とイオン対を形成し、様々な細胞系においてトランスフェクションを仲介する。
【0355】
いくつかの実施形態では、ポリマーはカチオン性側鎖を有する分解性ポリエステルであってよい(Putnamら、1999年、Macromolecules、32巻、3658頁、Barreraら、1993年、J. Am. Chem. Soc.、115巻、11010頁、Kwonら、1989年、Macromolecules、22巻、3250頁、Limら、1999年、J. Am. Chem. Soc.、121巻、5633頁、およびZhouら、1990年、Macromolecules、23巻、3399頁、これらは全て参照によって本明細書に組み込まれる)。これらのポリエステルの例には、ポリ(L−ラクチド−コ−L−リシン)(Barreraら、1993年、J. Am. Chem. Soc.、115巻、11010頁、参照によって本明細書に組み込まれる)、ポリ(セリンエステル)(Zhouら、1990年、Macromolecules、23巻、3399頁、参照によって本明細書に組み込まれる)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)(Putnamら、1999年、Macromolecules、32巻、3658頁、およびLimら、1999年、J. Am. Chem. Soc.、121巻、5633頁、いずれも参照によって本明細書に組み込まれる)、ならびにポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)(Putnamら、1999年、Macromolecules、32巻、3658頁、およびLimら、1999年、J. Am. Chem. Soc.、121巻、5633頁、いずれも参照によって本明細書に組み込まれる)がある。
【0356】
いくつかの実施形態では、本発明によるポリマーは、その性質を以下でさらに詳細に記載する炭水化物であってよい。いくつかの実施形態では、当技術分野で公知であるように、炭水化物はグリコシド結合によって結合した単糖を含む多糖(またはそれらの誘導体)であってよい。いくつかの実施形態では、炭水化物は1つまたは複数のプルラン、セルロース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシセルロース、メチルセルロース、デキストラン、シクロデキストラン、グリコーゲン、スターチ、ヒドロキシエチルスターチ、カラギーナン、グリコン、アミロース、キトサン、N,O−カルボキシルメチルキトサン、アルギンおよびアルギン酸、スターチ、キチン、ヘパリン、コンニャク、グルコマンナン、パスツラン、ヘパリン、ヒアルロン酸、カードラン、ならびにキサンタンであってよい。
【0357】
いくつかの実施形態では、本発明によるポリマーは、その性質を以下でさらに詳細に記載するタンパク質またはペプチドであってよい。本発明に従い使用することができる例示的なタンパク質には、アルブミン、コラーゲン、ポリ(アミノ酸)(例えばポリリシン)、抗体などが挙げられるが、これらだけには限られない。
【0358】
いくつかの実施形態では、本発明によるポリマーは、その性質を以下でさらに詳細に記載する核酸(すなわち、ポリヌクレオチド)であってよい。本発明に従い使用することができる例示的なポリヌクレオチドには、DNA、RNAなどが挙げられるが、これらだけには限られない。
【0359】
いくつかの実施形態では、本発明は、抗体の産生を誘導するための基盤としての、ナノ粒子−抗原バイオコンジュゲートシステムの使用に関する。本明細書で使用する放出制御ポリマーシステムまたは小胞系システムは、治療剤、診断剤、予後剤、または予防剤などの活性剤と組み合わせたポリマーであり、したがって活性剤は、予め設計した形式でその材料から放出および/または誘導される。ポリマー−抗原バイオコンジュゲートシステムは、ホモポリマー、ジブロック トリブロックおよび/またはマルチブロック(multibock)コポリマーとして合成することができる。ポリマー−抗原バイオコンジュゲートシステムの合成は、モノマーからの重合および異なるポリマーのコンジュゲーションを含む。ナノ粒子システムは、生物分解性、化学分解性、または生物分解性と化学分解性の両方であるポリマーを含むことができる。放出制御ポリマーシステムに適したポリマーの例には、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸)の誘導体、PEG化ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)の誘導体、PEG化ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(無水物)、PEG化ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(オルトエステル)(pholy(ortho ester))の誘導体、PEG化ポリ(オルトエステル)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)の誘導体、PEG化ポリ(カプロラクトン)、ポリリシン、ポリリシンの誘導体、PEG化ポリリシン、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンイミン)の誘導体、PEG化ポリ(エチレンイミン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリル酸)の誘導体、PEG化ポリ(アクリル酸)、ポリ(ウレタン)、PEG化ポリ(ウレタン)、ポリ(ウレタン)の誘導体、およびこれらの組合せが挙げられるが、これらだけには限られない。
【0360】
これらおよび他のポリマーの性質、ならびにそれらを調製するための方法は、当技術分野で周知である(例えば、米国特許第6,123,727号、同第5,804,178号、同第5,770,417号、同第5,736,372号、同第5,716,404号、同第6,095,148号、同第5,837,752号、同第5,902,599号、同第5,696,175号、同第5,514,378号、同第5,512,600号、同第5,399,665号、同第5,019,379号、同第5,010,167号、同第4,806,621号、同第4,638,045号、および同第4,946,929号、Wangら、2001年、J. Am. Chem. Soc.、123巻、9480頁、Limら、2001年、J. Am. Chem. Soc.、123巻、2460頁、Langer、2000年、Acc. Chem. Res.、33巻、94頁、Langer、1999年、J. Control. Release、62巻、7頁、およびUhrichら、1999年、Chem. Rev.、99巻、3181頁を参照、これらは全て参照によって本明細書に組み込まれる)。より一般的に、適切なポリマーを合成するための様々な方法が、Goethals編、Pergamon Press、1980年によるConcise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric Amines and Ammonium Salts、Odian、John Wiley & Sons、第4版、2004年によるPrinciples of Polymerization、Allcockら、Prentice−Hall、1981年によるContemporary Polymer Chemistry、Demingら、1997年、Nature、390巻、386頁中、ならびに米国特許第6,506,577号、同第6,632,922号、同第6,686,446号、および同第6,818,732号中に記載されており、これらは全て参照によって本明細書に組み込まれる。
【0361】
いくつかの実施形態では、ポリマーは直鎖または分枝ポリマーであってよい。いくつかの実施形態では、ポリマーはデンドリマーであってよい。いくつかの実施形態では、ポリマーは互いに実質的に架橋状態であってよい。いくつかの実施形態では、ポリマーは実質的に架橋がない状態であってよい。いくつかの実施形態では、架橋工程を経ずに、本発明に従いポリマーを使用することができる。
【0362】
本発明のナノキャリアは、任意の上記のポリマーおよび他のポリマーのブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ブレンド、混合物、ならびに/または付加物を含むことができることがさらに理解されよう。
【0363】
当業者は、本明細書に列挙するポリマーは、本発明に従い使用することができる包括的ではなく例示的なポリマーの一覧を表すことを理解している。
【0364】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは逆ミセル内に埋め込まれた免疫調節作用物質を含む。一例だけ挙げると、リポソームナノキャリアは、リポソーム膜内に埋め込まれた疎水性免疫調節作用物質、およびリポソームナノキャリアの内側に存在する逆ミセル内に埋め込まれた親水性免疫調節作用物質を含むことができる。
【0365】
非ポリマーナノキャリア
いくつかの実施形態では、ナノキャリアはポリマー成分を含まない場合がある。いくつかの実施形態では、ナノキャリアは金属粒子、量子ドット、セラミック粒子、骨粒子、ウイルス粒子などを含むことができる。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質は、このような非ポリマーナノキャリアの表面と結合させることが可能である。いくつかの実施形態では、非ポリマーナノキャリアは、金属原子(例えば金原子)の集合体などの、非ポリマー成分の集合体である。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質は、非ポリマー成分の集合体の表面と結合させる、その中に封入する、それによって囲まれる、および/またはそれ全体に分散させることが可能である。
【0366】
本発明の特定の実施形態では、非ポリマーナノキャリアは勾配または均質合金(gradient or homogeneous alloy)を含む。本発明の特定の実施形態では、ナノキャリアは、光学的および/または磁気的に検出可能な性質を有する粒子を含む。
【0367】
両親媒性物質を含むナノキャリア
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは1つまたは複数の両親媒性物質を任意選択で含むことができる。いくつかの実施形態では、両親媒性物質は、増大した安定性、改善された均一性、または増大した粘性を有するナノキャリアの生成を促進することができる。いくつかの実施形態では、両親媒性物質は、脂質膜(例えば、脂質二重層、脂質単層など)の内側表面と結合させることが可能である。例えば、脂質膜の内側表面が親水性である場合、脂質ナノキャリア内の封入された空間は親水性である。しかしながら、両親媒性物質が、両親媒性物質の親水性末端が親水性脂質膜の内側表面と結合し、両親媒性物質の疎水性末端がナノキャリアの内側と結合するように、親水性脂質膜の内側表面と結合する場合、ナノキャリア内の封入された空間は疎水性である。
【0368】
ナノキャリアの両親媒性物質の割合は、0重量%〜99重量%、10重量%〜99重量%、25重量%〜99重量%、50重量%〜99重量%、または75重量%〜99重量%の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、ナノキャリアの両親媒性物質の割合は、0重量%〜75重量%、0重量%〜50重量%、0重量%〜25重量%、または0重量%〜10重量%の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、ナノキャリアの両親媒性物質の割合は、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、または約30重量%であってよい。
【0369】
当技術分野で公知である任意の両親媒性物質が、本発明によるナノキャリアの作製において使用するのに適している。このような両親媒性物質には、ホスホグリセリド、ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジオレイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム(DOTMA)、ジオレイルホスファチジルコリン、コレステロール、コレステロールエステル、ジアシルグリセロール、ジアシルグリセロールスクシネート、ジホスファチジルグリセロール(DPPG)、ヘキサンデカノール、ポリエチレングリコール(PEG)などの脂肪アルコール、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、パルミチン酸またはオレイン酸などの界面活性脂肪酸、脂肪酸、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸アミド、ソルビタントリオレート(Span(登録商標)85)グリココレート、ソルビタンモノラウレート(Span(登録商標)20)、ポリソルベート20(Tween(登録商標)20)、ポリソルベート60(Tween(登録商標)60)、ポリソルベート65(Tween(登録商標)65)、ポリソルベート80(Tween(登録商標)80)、ポリソルベート85(Tween(登録商標)85)、ポリオキシエチレンモノステアレート、サーファクチン、ポロキサマー(poloxomer)、ソルビタントリオレートなどのソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、リゾレシチン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、ホスファチジルエタノールアミン(セファリン)、カルジオリピン、ホスファチジン酸、セレブロシド、ジセチルホスフェート、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ステアリルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシル−アミン、アセチルパルミテート、グリセロールリシノレート、ヘキサデシルステアレート、イソプロピルミリステート、チロキサポール、ポリ(エチレングリコール)5000−ホスファチジルエタノールアミン、ポリ(エチレングリコール)400−モノステアレート、リン脂質、高い界面活性を有する合成および/または天然洗剤、デオキシコレート、シクロデキストリン、カオトロピック塩、イオン対形成物質、およびこれらの組合せが挙げられるが、これらだけには限られない。両親媒性物質成分は、異なる両親媒性物質の混合物であってよい。これらの両親媒性物質は天然源から抽出および精製することができ、または研究室中で合成的に調製することができる。特定の具体的な実施形態では、両親媒性物質は市販されている。
【0370】
当業者は、これは包括的ではなく例示的な、界面活性を有する物質の一覧であることを理解しているはずである。任意の両親媒性物質を、本発明に従い使用するナノキャリアの生成において使用することができる。
【0371】
炭水化物を含むワクチンナノキャリア
いくつかの実施形態では、ナノキャリアは1つまたは複数の炭水化物を任意選択で含むことができる。ナノキャリアの炭水化物の割合は、0重量%〜99重量%、10重量%〜99重量%、25重量%〜99重量%、50重量%〜99重量%、または75重量%〜99重量%の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、ナノキャリアの炭水化物の割合は、0重量%〜75重量%、0重量%〜50重量%、0重量%〜25重量%、または0重量%〜10重量%の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、ナノキャリアの炭水化物の割合は、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、または約30重量%であってよい。
【0372】
炭水化物は天然または合成であってよい。炭水化物は誘導体化天然炭水化物であってよい。特定の実施形態では、炭水化物は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、セルビオース、マンノース、キシロース、アラビノース、グルクロン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸、グルコサミン、ガラクトサミン、およびノイラミン酸だけには限られないが、これらを含めた単糖である。特定の実施形態では、炭水化物は、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、およびセロビオースだけには限られないが、これらを含めた二糖である。特定の実施形態では、炭水化物は、プルラン、セルロース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシセルロース(HC)、メチルセルロース(MC)、デキストラン、シクロデキストラン、グリコーゲン、スターチ、ヒドロキシエチルスターチ、カラギーナン、グリコーゲン、アミロース、キトサン、N,O−カルボキシメチルキトサン、アルギンおよびアルギン酸、スターチ、キチン、ヘパリン、コンニャク、グルコマンナン、パスツラン、ヘパリン、ヒアルロン酸、カードラン、およびキサンタンだけには限られないが、これらを含めた多糖である。特定の実施形態では、炭水化物は、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、およびラクチトールだけには限られないが、これらを含めた糖アルコールである。
【0373】
粒子およびワクチンナノキャリアと結合した粒子
いくつかの実施形態では、本発明によるワクチンナノキャリアは、1つまたは複数の粒子を含むことができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の粒子はワクチンナノキャリアと結合する。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、ナノキャリアの外側表面と結合した1つまたは複数の粒子を含む。いくつかの実施形態では、粒子は共有結合によってワクチンナノキャリアと結合させることが可能である。いくつかの実施形態では、粒子は非共有結合相互作用(例えば、電荷相互作用、親和力相互作用、金属配位、物理的吸着、ホスト−ゲスト相互作用、疎水性相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファンデルワールス相互作用、磁気相互作用、静電相互作用、双極子間相互作用、および/またはこれらの組合せ)によってワクチンナノキャリアと結合させることが可能である。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、ナノキャリア内に封入された1つまたは複数の粒子を含む。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、ナノキャリアの表面内に埋め込まれた(例えば、脂質二重層内に埋め込まれた)1つまたは複数の粒子を含む。いくつかの実施形態では、ナノキャリアと結合した粒子は、調節可能な膜の剛性および制御可能なリポソームの安定性を可能にする。
【0374】
いくつかの実施形態では、上に記載したように、ワクチンナノキャリアの粒子またはワクチンナノキャリアと結合した粒子は、ポリマーマトリックスを含むことができる。いくつかの実施形態では、上に記載したように、ワクチンナノキャリアの粒子またはワクチンナノキャリアと結合した粒子は、非ポリマー成分(例えば、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子、骨粒子、ウイルス粒子など)を含むことができる。
【0375】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアの粒子またはワクチンナノキャリアと結合した粒子は、負の電荷を有し得る。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアの粒子またはワクチンナノキャリアと結合した粒子は、正の電荷を有し得る。いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアの粒子またはワクチンナノキャリアと結合した粒子は、電気的に中性である場合がある。
【0376】
いくつかの実施形態では、粒子は表面に1つまたは複数のアミン成分を有する。アミン成分は、例えば脂肪族アミン成分であってよい。特定の実施形態では、アミンは第一級、第二級、第三級、または第四級アミンである。特定の実施形態では、粒子はアミン含有ポリマーを含む。特定の実施形態では、粒子はアミン含有脂質を含む。特定の実施形態では、粒子は中性pHで正に帯電したタンパク質またはペプチドを含む。いくつかの実施形態では、その表面に1つまたは複数のアミン成分を有する粒子は中性pHで正味の正電荷を有する。中性pHで正電荷をもたらす他の化学成分も、本発明の粒子において使用することができる。
【0377】
いくつかの実施形態では、粒子は表面に1つまたは複数の(中性pHで)負に帯電した成分を有する。例えば、粒子は表面に1つまたは複数のカルボン酸またはリン酸基を有する。いくつかの実施形態では、その表面に1つまたは複数のカルボン酸またはリン酸成分を有する粒子は中性pHで正味の負電荷を有する。中性pHで負電荷をもたらす他の化学成分も、本発明の粒子において使用することができる。
【0378】
いくつかの実施形態では、粒子は表面に1つまたは複数の(中性pHで)実質的に中性な成分を有する。例えば、粒子は表面に1つまたは複数のエーテル基を有する。いくつかの実施形態では、その表面に1つまたは複数のエーテル成分を有する粒子は中性pHで実質的に正味の電荷を有していない。中性pHで中性電荷をもたらす他の化学成分も、本発明の粒子において使用することができる。
【0379】
ナノキャリアの表面に存在して表面の電荷に影響を与え得る化合物の、いくつかの非制限的な例には、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)、1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン、塩化物塩(DOTAP)、モノシアロガングリオシドGM3、1,2−ジヘキサデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン、ナトリウム塩(DPPS)、モノホスホリル脂質A、およびN−4−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾールホスファチジルエタノールアミン(NBD−PE)がある。
【0380】
ゼータ電位は粒子の表面電位の測定値である。いくつかの実施形態では、ナノキャリアの粒子またはナノキャリアと結合した粒子は、正のゼータ電位を有する。いくつかの実施形態では、粒子は−50mVと+50mVの間の範囲のゼータ電位を有する。いくつかの実施形態では、粒子は−25mVと+25mVの間の範囲のゼータ電位を有する。いくつかの実施形態では、粒子は−10mVと+10mVの間の範囲のゼータ電位を有する。いくつかの実施形態では、粒子は−5mVと+5mVの間の範囲のゼータ電位を有する。いくつかの実施形態では、粒子は0mVと+50mVの間の範囲のゼータ電位を有する。いくつかの実施形態では、粒子は0mVと+25mVの間の範囲のゼータ電位を有する。いくつかの実施形態では、粒子は0mVと+10mVの間の範囲のゼータ電位を有する。いくつかの実施形態では、粒子は0mVと+5mVの間の範囲のゼータ電位を有する。いくつかの実施形態では、粒子は−50mVと0mVの間の範囲のゼータ電位を有する。いくつかの実施形態では、粒子は−25mVと0mVの間の範囲のゼータ電位を有する。いくつかの実施形態では、粒子は−10mVと0mVの間の範囲のゼータ電位を有する。いくつかの実施形態では、粒子は−5mVと0mVの間の範囲のゼータ電位を有する。いくつかの実施形態では、粒子は実質的に中性のゼータ電位(すなわち、約0mV)を有する。
【0381】
粒子(例えば、ナノ粒子、マイクロ粒子)は、当技術分野で公知である任意の方法を使用して調製することができる。例えば、ナノ粒子沈殿、流体チャネルを使用するフローフォーカシング、スプレー乾燥、一回および二回エマルジョン溶媒蒸発、溶媒抽出、相分離、ミリング、マイクロエマルジョン手順、マイクロファブリケーション、ナノファブリケーション、犠牲層、単純および複合コアセルベーション、および当業者に周知である他の方法などの方法によって粒子状製剤を形成することができる。代替的または追加的に、単分散半導体ナノ粒子、伝導性ナノ粒子、磁気ナノ粒子、有機ナノ粒子、および他のナノ粒子に関する水性および有機溶媒合成が記載されている(Pellegrinoら、2005年、Small、1巻:48頁、Murrayら、2000年、Ann. Rev. Mat. Sci.、30巻:545頁、およびTrindadeら、2001年、Chem. Mat.、13巻:3843頁、これらは全て参照によって本明細書に組み込まれる)。
【0382】
特定の実施形態では、ナノ粒子沈殿処理またはスプレー乾燥によって粒子を調製する。粒子の調製において使用する条件を変えて、望ましい大きさまたは性質(例えば、疎水性、親水性、外的形態、「粘性」、形状など)の粒子を生成することができる。使用する粒子および条件(例えば、溶媒、温度、濃度、エアフロー速度など)を調製する方法は、送達する治療剤および/またはポリマーマトリックスの組成に依存し得る。
【0383】
封入剤の送達用のマイクロ粒子を作製するための方法は文献中に記載されている(例えば、Doubrow, Ed.、「Microcapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy」、CRC Press, Boca Raton、1992年、Mathiowitzら、1987年、J. Control. Release、5巻:13頁、Mathiowitzら、1987年、Reactive Polymers、6巻:275頁、およびMathiowitzら、1988年、J. Appl. Polymer Sci.、35巻:755頁を参照、これらは全て参照によって本明細書に組み込まれる)。
【0384】
上記の方法のいずれかによって調製した粒子が、望ましい範囲外の大きさの範囲を有する場合、例えば篩を使用して、粒子を寸法で分類することができる。
【0385】
免疫特徴表面
本発明の合成ナノキャリアは1つまたは複数の表面を含み、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの表面が免疫特徴表面を含む。
【0386】
免疫特徴表面は複数の成分を含む表面であり、(1)免疫特徴表面は抗体のFc部分である成分は除外し、かつ(2)成分は哺乳動物抗原提示細胞とのアビディティベースの結合をもたらすのに有効な量で存在する。
【0387】
アビディティベースの結合はアビディティ効果に基づく結合である(この型の結合は「高アビディティ」結合と呼ぶこともできる)。好ましい実施形態では、免疫特徴表面の存在は、以下のようにin vivoアッセイ次にin vitroアッセイを使用して決定することができる(ただし、アビディティ効果に基づく結合(すなわち、「高アビディティ」結合)の存在を確認する他の方法も、本発明の実施において使用することができる。)。
【0388】
in vivoアッセイは異なる蛍光標識を有する二組の合成ナノキャリアを利用し、一組の合成ナノキャリアは免疫特徴表面を有し、他の組は対照として働く。免疫特徴表面がin vivoで抗原提示細胞に合成ナノキャリアをターゲティングすることができるかどうか試験するために、二組の合成ナノキャリアを1:1に混合し、マウスの足蹠に注射する。樹状細胞および被膜下洞マクロファージにおける合成ナノキャリアの蓄積は、それぞれナノキャリア注射後1〜4時間および24時間の時間地点で、注射したマウスの流入領域膝窩リンパ節を採取することによって測定する。リンパ節は共焦点蛍光顕微鏡による凍結切片の免疫組織学的分析用に処理し、マウス−CD11cに対する蛍光抗体で対比染色し(クローンHL3、BD BIOSCIENCES(登録商標)またはマウス−CD169(SEROTEC(登録商標)由来のクローン3D6.112)、ADOBE(登録商標)PHOTOSHOP(登録商標)などの適切なイメージ処理ソフトウェアを使用して面積測定法によって分析する。免疫特徴表面を含む合成ナノキャリアが、対照ナノキャリアより少なくとも1.2倍、好ましくは少なくとも1.5倍、より好ましくは少なくとも2倍の頻度で樹状細胞および/または被膜下洞マクロファージと結合する場合、免疫特徴表面による抗原提示細胞のターゲティングが確定する。
【0389】
好ましい実施形態では、in vivoアッセイと付随するin vitroアッセイにより、免疫特徴表面を構成する成分、またはin vitro抗原提示細胞発現表面抗原(ヒト樹状細胞に関して:Miltenyi BIOTEC(登録商標)由来の抗CD1c(BDCA−1)クローンAD5−8E7、マウス樹状細胞に関して:抗CD11c(αXインテグリン)クローンHL3、BD BIOSCIENCES(登録商標)、またはネズミの被膜下洞マクロファージに関して:SEROTEC(登録商標)由来の抗CD169クローン3D6.112)に特異的である抗体のいずれかでコーティングした生体適合性表面のヒトもしくはネズミの樹状細胞またはネズミの被膜下洞マクロファージ(集合的に、「in vitro抗原提示細胞」)の固定を決定し、その結果は、(i)免疫特徴表面を構成する成分でコーティングした表面へのin vitro抗原提示細胞の最大固定に相当する、最適コーティング密度が、検出不能であるか、または抗体コーティング表面で観察されるそれの少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%であるかのいずれかである、および(ii)免疫特徴表面によるin vitro抗原提示細胞の固定が検出可能である場合、試験対象の免疫特徴表面が、半最大結合を支える抗体コーティング密度より少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍、より好ましくは少なくとも4倍高い免疫特徴表面が含む成分のコーティング密度で半最大結合を支えているということである。
【0390】
免疫特徴表面は、pH=7.2〜7.4で正に帯電した、負に帯電した、または中性電荷状態であってよい。免疫特徴表面は、同じ成分または異なる成分の混合物で構成されてよい。いくつかの実施形態では、免疫特徴表面はB細胞抗原を含むことができる。免疫特徴表面において潜在的に有用である成分の例は、メトキシ基、正に帯電したアミン基(例えば第三級アミン)、シアリルラクトース、アビジンおよび/またはニュートラアビジン(NeutrAvidin)などのアビジン誘導体、および上記のいずれかの残基を含む。一実施形態では、免疫特徴表面が含む成分は、本発明のナノキャリアの表面と結合する。別の実施形態では、免疫特徴表面が本発明のナノキャリアの表面と結合する。
【0391】
免疫特徴表面が含む成分は、高いアビディティの結合をもたらすことに留意しなければならない。この定義において具体的に定義し、本明細書を通じて一般的に記載するように、ナノキャリア上に存在し得る全ての成分が高いアビディティの結合をもたらすわけではない。したがって、表面が複数の成分を含むことができる場合でさえ(時折「アレイ」と呼ばれる)、これはこのような表面は本質的に免疫特徴表面が不在であることを意味せず、データはこのような表面は本発明の定義および開示による結合をもたらすことを示す。
【0392】
いくつかの実施形態では、複数の成分は抗体のFc部分以外の成分である。いくつかの実施形態では、複数の成分は、(本明細書に記載するような)免疫刺激作用物質の成分、(本明細書に記載するような)免疫調節作用物質の成分、(本明細書に記載するような)ターゲティング成分、小分子有機成分(例えばニコチン)、オリゴマー、およびポリマー(PEGなどの合成ポリマー含む)、無機成分、核酸およびポリヌクレオチド(例えば、DNAおよびRNA断片)、アミノ酸、ポリペプチド、糖タンパク質、(本明細書に記載するような)生物活性物質、ガングリオシド、脂質、リン脂質、炭水化物、多糖、および上記のいずれかの断片から選択される。いくつかの実施形態では、免疫特徴表面はB細胞抗原またはT細胞抗原を含むことができる。上記の成分の任意の組合せも本発明の範囲内にある。このような成分と免疫特徴表面の結合は、表面との結合と成分中の原子との結合の置換などの適切な改変を含むことができることは理解されよう。
【0393】
いくつかの実施形態では、複数の成分と免疫特徴表面の結合は、それらの成分とナノキャリアの要素の間の共有結合による。例えば、ポリマー物質を含むナノキャリアの場合、複数の成分をポリマーと結合させることが可能である。しかしながら、いくつかの場合、イオンまたは水素結合、または分散力を含めた、非共有結合相互作用を使用することができる。
【0394】
免疫特徴表面は、同じ成分または異なる成分の混合物である複数の成分を含むことができる。例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10の異なる型の成分が免疫特徴表面中に存在してよい。
【0395】
免疫特徴表面が範囲7.2〜7.4のpHで緩衝水溶液中に存在するとき、免疫特徴表面は、全体的に正に帯電した、負に帯電した、または中性電荷状態であってよい。異なる成分の混合物が免疫特徴表面に存在する場合、免疫特徴表面を任意の特定のpHで正に帯電した、負に帯電した、および/または中性電荷成分の組合せと結合させることが可能であることは理解されよう。
【0396】
免疫特徴表面は、抗原提示細胞(APC)、特にMHCII分子を発現するAPCとの高いアビディティの結合をもたらす。例えば、いくつかの実施形態では、免疫特徴表面は樹状細胞(DC)との高いアビディティの結合をもたらす。いくつかの他の実施形態では、免疫特徴表面はマクロファージ、例えば被膜下洞マクロファージ(SCSMph)との高いアビディティの結合をもたらす。いくつかの実施形態では、免疫特徴表面はB細胞との高いアビディティの結合をもたらす(すなわち、免疫特徴表面はB細胞抗原を含む)。好ましい実施形態では、免疫特徴表面はDC、SCSMph、またはB細胞との高いアビディティおよび低い親和性結合をもたらす。
【0397】
免疫特徴表面は、複数の成分を含み、複数の成分は、すべて同じ成分または異なる成分の混合物であってもよい。複数の成分(moietiesare)は、高いアビディティでAPC表面に結合することができる表面に存在する。いくつかの実施形態では、複数の成分は、高いアビディティおよび低い親和性でAPC表面に結合することができる表面に存在する。
【0398】
免疫特徴表面において有用である成分の例には、マンノース、マレイミド、POPC、DPPS、DOPS、モノホスホリル脂質A、NBD−PE、およびそれらの誘導体などの有機低分子、メトキシ、アミン、カルボン酸、およびそれらのアナログなどの官能基、シアリルラクトースおよびモノシアロガングリオシドGM3などの多糖、例えばアビジン、ニュートラアビジン、リソザイム、オリゴマーG、タンパク質G、およびそれらの誘導体などのタンパク質およびポリペプチドがある。
【0399】
免疫特徴表面中に存在する成分がナノキャリアをAPCに向けることができる程度は変わり得る。例えば、APCをより特異的に標的にする(すなわち、高いアビディティおよび低い親和性でAPCとより特異的に結合することができる)免疫特徴表面をもたらす成分は、SCSなどの領域中でより高い蓄積を示すナノキャリア製剤をもたらし得る。
【0400】
免疫特徴表面が含む成分は、高いアビディティの結合をもたらすことに留意しなければならない。この定義において具体的に、および本明細書を通じて一般的に言及するように、ナノキャリア上に存在する全ての成分が高いアビディティの結合をもたらすわけではない。したがって、表面が複数の成分を含むことができる場合でさえ(時折「アレイ」と呼ばれる)、これはこのような表面は本質的に免疫特徴表面が不在であることを意味せず、データはこのような表面は本発明の定義および開示による結合をもたらすことを示す。
【0401】
いくつかの実施形態では、免疫特徴表面を含む表面を有するナノキャリアは、被験体に投与すると特異的APCを標的にすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、免疫特徴表面を有するナノキャリアはDCを標的にすることができる。いくつかの実施形態では、免疫特徴表面を有するナノキャリアはSCS−Mphなどのマクロファージを標的にすることができる。いくつかの実施形態では、免疫特徴表面を有するナノキャリアはB細胞を標的にすることができる。この文脈において、用語「標的」を使用して、免疫特徴表面を有するナノキャリアの組成物は、被験体に投与すると特定領域中に蓄積する傾向があることを示す。このような蓄積は、投与の数分以内(例えば、1分未満、5分未満、または10分未満、または30分未満)、数時間以内(例えば、1時間未満、または2時間未満、または5時間未満、または10時間未満)、または数日以内(例えば、1日未満、または2日未満、または5日未満)に起こり得る。
【0402】
いくつかの実施形態では、補体系は本発明のナノキャリアによって実質的に活性化されない。例えば、いくつかの実施形態では、ナノキャリアは古典的補体経路および/または代替補体経路を活性化しない。補体を実質的に活性化しないナノキャリアは、米国公開特許出願2008/0031899の実施例9中に開示し同じ実施例9の方法を使用して決定したヒドロキシル化ナノキャリアと比較して、50%未満、好ましくは35%未満、より好ましくは25%未満のC3a量の増加を示す。
【0403】
ナノキャリアの生成
ナノキャリアは当技術分野で公知である任意の方法を使用して調製することができる。例えば、ナノ粒子沈殿、流体チャネルを使用するフローフォーカシング、スプレー乾燥、一回および二回エマルジョン溶媒蒸発、溶媒抽出、相分離、ミリング、マイクロエマルジョン手順、マイクロファブリケーション、ナノファブリケーション、犠牲層、単純および複合コアセルベーション、および当業者に周知である他の方法などの方法によって粒子状ナノキャリア製剤を形成することができる。代替的または追加的に、単分散半導体ナノ粒子、伝導性ナノ粒子、磁気ナノ粒子、有機ナノ粒子、および他のナノ粒子に関する水性および有機溶媒合成が記載されている(Pellegrinoら、2005年、Small、1巻:48頁、Murrayら、2000年、Ann. Rev. Mat. Sci.、30巻:545頁、およびTrindadeら、2001年、Chem. Mat.、13巻:3843頁、これらは全て参照によって本明細書に組み込まれる)。
【0404】
特定の実施形態では、ナノ粒子沈殿処理またはスプレー乾燥によって粒子を調製する。ナノキャリアの調製において使用する条件を変えて、望ましい大きさまたは性質(例えば、疎水性、親水性、外的形態、「粘性」、形状など)の粒子を生成することができる。使用するナノキャリアおよび条件(例えば、溶媒、温度、濃度、エアフロー速度など)を調製する方法は、ナノキャリアの組成および/または生成する構造に依存し得る。
【0405】
本発明による合成ナノキャリアを作製するための方法は文献中に記載されている(例えば、Doubrow, Ed.、「Microcapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy」、CRC Press, Boca Raton、1992年、Mathiowitzら、1987年、J. Control. Release、5巻:13頁、Mathiowitzら、1987年、Reactive Polymers、6巻:275頁、およびMathiowitzら、1988年、J. Appl. Polymer Sci.、35巻:755頁を参照、これらは全て参照によって本明細書に組み込まれる)。
【0406】
いくつかの実施形態では、本発明のワクチンナノキャリアは、少なくとも1つの免疫調節作用物質、および任意選択で、脂質膜、ポリマーマトリックス、および/または非ポリマー粒子を含む。特定の実施形態では、本発明のワクチンナノキャリアは、少なくとも1つの免疫調節作用物質、脂質膜、ポリマーマトリックス、および/または非ポリマー粒子、および少なくとも1つのターゲティング成分を含む。特定の実施形態では、本発明のワクチンナノキャリアは、少なくとも1つの免疫調節作用物質、脂質膜、ポリマーマトリックス、および/または非ポリマー粒子、少なくとも1つのターゲティング成分、および少なくとも1つの免疫刺激作用物質を含む。特定の実施形態では、本発明のワクチンナノキャリアは、少なくとも1つの免疫調節作用物質、脂質膜、ポリマーマトリックス、および/または非ポリマー粒子、少なくとも1つのターゲティング成分、少なくとも1つの免疫刺激作用物質、および少なくとも1つのナノ粒子を含む。
【0407】
本発明のナノキャリアは、任意の利用可能な方法を使用して製造することができる。免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質の3次元の特徴および高次構造に悪影響を与えずに、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、および/または免疫刺激作用物質をワクチンナノキャリアと結合させることが望ましい。ワクチンナノキャリアは、全身投与後に単核細胞ファゴサイトーシス系による取り込みを必ず回避することができ、したがってそれは身体の特定細胞に到達することができることが望ましい。
【0408】
いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子は、ワクチンナノキャリアと共有結合しない。例えば、ワクチンナノキャリアはポリマーマトリックスを含むことができ、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子は、本発明のワクチンナノキャリアのポリマーマトリックス表面と結合させる、その中に封入する、および/またはそれ全体に分布させることが可能である。免疫調節作用物質は、ワクチンナノキャリアの拡散、分解、および/またはその組合せによって放出される。いくつかの実施形態では、ポリマーは大量浸食によって分解する。いくつかの実施形態では、ポリマーは表面浸食によって分解する。
【0409】
いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子は、ワクチンナノキャリアと共有結合する。このようなワクチンナノキャリアに関して、標的部位への免疫調節作用物質の放出および送達は、結合を妨害することによって起こる。例えば、免疫調節作用物質が切断可能なリンカーによってナノキャリアと結合する場合、免疫調節作用物質はリンカーの切断によって標的部位に放出および送達される。
【0410】
いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子は、ワクチンナノキャリアと共有結合しない。例えば、ワクチンナノキャリアはポリマーを含むことができ、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子は、本発明のワクチンナノキャリアのポリマー表面と結合させる、その中に封入する、それによって囲む、および/またはそれ全体に分布させることが可能である。いくつかの実施形態では、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子は、ワクチンナノキャリアと物理的に結合する。
【0411】
物理的結合は様々な異なる方法によって実施することができる。物理的結合は共有結合または非共有結合であってよい。ワクチンナノキャリア、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子は、例えば1つまたは複数の共有結合によって互いに直接結合することができ、または1つまたは複数のリンカーによって結合することができる。一実施形態では、リンカーは免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子と1つまたは複数の共有結合または非共有結合、および免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子と1つまたは複数の共有結合または非共有結合を形成し、それによってこれらを互いに結合させる。いくつかの実施形態では、第1のリンカーはワクチンナノキャリアと共有結合または非共有結合を形成し、第2のリンカーは免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子と共有結合または非共有結合を形成する。2つのリンカーは互いに1つまたは複数の共有結合または非共有結合(複数可)を形成する。
【0412】
任意の適切なリンカーを本発明に従い使用することができる。リンカーを使用して、アミド結合、エステル結合、ジスルフィド結合などを形成することができる。リンカーは炭素原子またはヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、イオウなど)を含有することができる。典型的には、リンカーは1〜50原子長、1〜40原子長、1〜25原子長、1〜20原子長、1〜15原子長、1〜10原子長、または1〜10原子長である。水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、アリール、複素環、芳香族複素環、シアノ、アミド、カルバモイル、カルボン酸、エステル、チオエーテル、アルキルチオエーテル、チオール、およびウレイド基だけには限られないが、これらを含めた様々な置換基でリンカーを置換することができる。当業者によって理解されるように、これらの基のそれぞれを順に置換することができる。
【0413】
いくつかの実施形態では、リンカーは脂肪族またはヘテロ脂肪族リンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーはポリアルキルリンカーである。特定の実施形態では、リンカーはポリエーテルリンカーである。特定の実施形態では、リンカーはポリエチレンリンカーである。特定の具体的な実施形態では、リンカーはポリエチレングリコール(PEG)リンカーである。
【0414】
いくつかの実施形態では、リンカーは切断可能なリンカーである。数例のみ挙げると、切断可能なリンカーには、プロテアーゼ切断可能ペプチドリンカー、ヌクレアーゼ感受性核酸リンカー、リパーゼ感受性脂質リンカー、グリコシダーゼ感受性炭水化物リンカー、pH感受性リンカー、低酸素感受性リンカー、光切断性リンカー、易熱性リンカー、酵素切断性リンカー(例えば、エステラーゼ切断性リンカー)、超音波感受性リンカー、X線切断性リンカーなどがある。いくつかの実施形態では、リンカーは切断可能なリンカーではない。
【0415】
任意の様々な方法を使用して、リンカーとワクチンナノキャリアを結合させることが可能である。一般的な戦略には、受動的吸着(例えば、静電相互作用による)、多価キレート化、特異的結合対のメンバー間の高親和性非共有結合、共有結合形成などがある(参照によって本明細書に組み込まれる、Gaoら、2005年、Curr. Op. Biotechnol.、16巻:63頁)。いくつかの実施形態では、クリック化学を使用してリンカーと粒子を結合させることが可能である。
【0416】
二官能性架橋試薬を利用することができる。このような試薬は2つの反応基を含有し、これによって2つの標的基と共有結合する手段を与える。化学架橋試薬中の反応基は典型的に、スクシンイミジルエステル、マレイミド、およびピリジルジスルフィドなどの様々なクラスの官能基に属する。例示的な架橋剤には、例えばカルボジイミド、N−ヒドロキシスクシンイミジル−4−アジドサリチル酸(NHS−ASA)、ジメチルピメリミデートジヒドロクロリド(DMP)、ジメチルスベリミデート(DMS)、3,3’−ジチオビスプロピオンイミデート(DTBP)、N−スクシンイミジル3−[2−ピリジルジチオ]−プロピオンアミド(SPDP)、スクシミジル(succimidyl)α−メチルブタノエート、ビオチンアミドヘキサノイル−6−アミノ−ヘキサン酸N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル(SMCC)、スクシンイミジル−[(N−マレイミドプロピオンアミド)−ドデカエチレングリコール]エステル(NHS−PEO12)などが挙げられる。例えば、カルボジイミド介在アミド形成および活性エステルマレイミド介在アミンおよびスルフヒドリルカップリングは、広く使用されている手法である。
【0417】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、時折2または3工程の反応順序による、一分子上のアミン基と第2の分子上のチオール基のカップリングによって形成することができる。チオール含有分子は、ヘテロ二官能性架橋試薬、例えばスクシンイミジルエステルと、マレイミド、ピリジルジスルフィド、またはヨードアセトアミドのいずれかの、両方を含有する試薬を使用して、アミン含有分子と反応することができる。アミン−カルボン酸およびチオール−カルボン酸架橋、マレイミド−スルフヒドリルカップリング化学(例えば、マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)法)などを使用することができる。ポリペプチドは、それぞれリシンもしくはシステイン側鎖中のアミンもしくはチオール基によって、またはN末端アミノ基によって粒子と都合よく結合することができる。RNAなどの核酸は末端アミノ基で合成することができる。様々なカップリング試薬(例えば、スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)およびスルホスクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−l−カルボキシレート(スルホ−SMCC)を使用して、ワクチンナノキャリアの様々な成分を結合させることが可能である。ワクチンナノキャリアを、表面で利用可能な官能基、例えばアミンまたはカルボキシル基で調製して、生体分子との結合を容易にすることができる。
【0418】
非共有特異的結合相互作用を利用することができる。例えば、粒子または生体分子のいずれかをビオチンで官能化することができ、他方はストレプトアビジンで官能化することができる。この2つの成分は非共有結合によって高親和性で互いに特異的に結合し、したがって粒子および生体分子を結合させる。他の特異的結合対を同様に使用することができる。あるいは、ヒスチジンタグ生体分子を、ニッケル−ニトリロトリ酢酸(nickel−nitrolotriacetic acid)(Ni−NTA)と結合した粒子と結合させることが可能である。
【0419】
粒子、ターゲティング成分、および/または治療剤と結合する任意の生体分子。スペーサーは、例えば、短いペプチド鎖、例えば、1アミノ酸長と10アミノ酸長の間、例えば、1、2、3、4、または5アミノ酸長、核酸、アルキル鎖などであってよい。
【0420】
結合および/またはコンジュゲーション法および架橋剤に関する他の一般的な情報に関しては、American Chemical Society、Columbus OH、PO Box3337、Columbus, OH、43210が発行している雑誌 Bioconjugate Chemistry、Pierceのウエブサイトで利用可能であり1994〜95年のPierce Catalog、およびその中に挙げられた参照文献で最初に公開された、「Cross−Linking」、Pierce Chemical Technical Library、Wong SS、Chemistry of Protein Conjugation and Cross−linking、CRC Press Publishers、Boca Raton、1991年、およびHermanson, G. T.、Bioconjugate Techniques、Academic Press, Inc.、San Diego、1996年を参照。
【0421】
代替的または追加的に、ワクチンナノキャリアを、非共有結合相互作用によって直接的または間接的に、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子と結合させることが可能である。非共有結合相互作用には、電荷相互作用、親和性相互作用、金属配位、物理的吸着、ホスト−ゲスト相互作用、疎水性相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファンデルワールス相互作用、磁気相互作用、静電相互作用、双極子間相互作用、および/またはこれらの組合せが挙げられるが、これらだけには限られない。
【0422】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、電荷相互作用によって、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子と結合させることが可能である。例えば、ワクチンナノキャリアはカチオン性表面を有することができ、またはポリ(リシン)またはポリ(エチレンイミン)などのカチオン性ポリマーと反応して、カチオン性表面をもたらすことができる。したがってワクチンナノキャリア表面は、電荷相互作用によって、負に帯電した免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子と結合することができる。免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子の一端は、典型的には、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子の機能を妨害せずにカチオン性ポリマー表面と相互作用することができる、負に帯電したポリマー(例えば、ポリ(カルボン酸))または他のオリゴヌクレオチド配列と結合する。
【0423】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、親和性相互作用によって、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子と結合させることが可能である。例えば、ビオチンはワクチンナノキャリアの表面と結合することができ、ストレプトアビジンは免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子と結合することができる。あるいは逆に、ビオチンは免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子と結合することができ、ストレプトアビジンはワクチンナノキャリアの表面と結合することができる。ビオチン基およびストレプトアビジンは、アルキレンリンカーまたはポリエーテルリンカーなどのリンカーによって、ワクチンナノキャリアまたは免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子と結合することができる。ビオチンとストレプトアビジンは親和性相互作用によって結合し、それによってワクチンナノキャリアと免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子を結合させる。
【0424】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、金属配位によって、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子と結合させることが可能である。例えば、ポリヒスチジンは免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子の一端と結合することができ、ニトリロトリ酢酸はワクチンナノキャリアの表面と結合することができる。Ni
2+などの金属はポリヒスチジンおよびニトリロトリ酢酸をキレート化し、それによって免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子をワクチンナノキャリアと結合させる。
【0425】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、物理的吸着によって、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子と結合させることが可能である。例えば、少なくとも約10炭素を有するポリメタクリレートまたはアルキル基などの疎水性尾部は免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子の一端と結合することができる。疎水性尾部は疎水性ワクチンナノキャリアの表面に吸着し、それによって免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子をワクチンナノキャリアと結合させる。
【0426】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、ホスト−ゲスト相互作用によって、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子と結合させることが可能である。例えば、ククルビツリルまたはシクロデキストリンなどの大環状ホスト化合物はワクチンナノキャリアの表面と結合することができ、アルキル基、ポリエチレングリコール、またはジアミノアルキル基などのゲスト基は免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子と結合することができる。あるいは逆に、ホスト基は免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子と結合することができ、ゲスト基はワクチンナノキャリアの表面と結合することができる。いくつかの実施形態では、宿主および/またはゲスト分子は、アルキレンリンカーまたはポリエーテルリンカーなどのリンカーによって、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子またはワクチンナノキャリアと結合することができる。
【0427】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは、水素結合相互作用によって、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子と結合させることが可能である。例えば、特定配列を有するオリゴヌクレオチドをワクチンナノキャリアの表面と結合することができ、ほぼ相補的な配列を、それが免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子の機能を妨害しないように、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子の一端または両端と結合させることが可能である。したがって免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子は、ワクチンナノキャリアと結合したオリゴヌクレオチドとの相補的塩基対形成によって、ワクチンナノキャリアと結合する。1オリゴヌクレオチド上の約80%の核酸塩基が、第2のオリゴヌクレオチド上の塩基と、例えばワトソン−クリック型塩基対形成、逆方向ワトソン−クリック型塩基対形成、フーグステン型塩基対形成などのオリゴヌクレオチド塩基対形成システムによって水素結合を形成する場合、2つのオリゴヌクレオチドはほぼ相補的である。典型的には、ワクチンナノキャリアと結合したオリゴヌクレオチド配列は、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子と結合した相補的オリゴヌクレオチドと少なくとも約6個の相補的塩基対を形成することが望ましい。
【0428】
いくつかの実施形態では、ワクチンナノキャリアは自己集合によって作製される。ワクチンナノキャリアの自己集合の詳細な例に関しては、実施例1および2を参照。特定の実施形態では、小さなリポソーム(10nm〜1000nm)を製造し、これらを利用して免疫系の細胞に1つまたは複数の免疫調節作用物質を送達する(
図3)。一般にリポソームは、数十〜数千nmのその制御可能な直径が、タンパク質、酵素、DNAおよび薬剤分子などの様々な充填物を封入および保存するために使用することができるゼプトリットル(10
―21L)〜フェムトリットル(10
―15L)の体積を有する生体適合性区画を個々のリポソームが含むことを示す、人工的に構築された球状の脂質小胞である。リポソームは両親媒性を有する脂質二重層を含むことができ、二重層の内側表面と外側表面の両方が親水性であり、二重層の内腔は疎水性である。親水性分子はそれ自体がリポソーム膜に自然に組み込み、その親水性ドメインを外側に保持することができ、親水性分子は膜の二官能性を利用してリポソームの外側表面と化学結合することができる。
【0429】
特定の実施形態では、脂質を親油性免疫調節作用物質と混合し、次いで固体表面の薄膜の一部にする。親水性免疫調節作用物質は水溶液に溶かし、それを脂質膜に加えて攪拌下で脂質を加水分解する。親油性免疫調節作用物質が二重層壁に組み込まれ親水性免疫調節作用物質がリポソームの内腔中に存在するリポソームは自己集合する。
【0430】
特定の実施形態では、リポソーム中に使用する脂質は、以下の:ホスファチジルコリン、脂質A、コレステロール、ドリコール、スフィンゴシン、スフィンゴミエリン、セラミド、グリコシルセラミド、セレブロシド、サルファチド、フィトスフィンゴシン、ホスファチジル−エタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、およびリゾホスファチドの1つまたは複数であってよいが、これらだけには限らない。特定の実施形態では、免疫調節作用物質をリポソームの表面と結合させることが可能である。いくつかの実施形態では、リポソームは同一または非同一の免疫調節作用物質を内側に有する。いくつかの実施形態では、リポソーム表面膜を、特異的抗原発現細胞に対して免疫調節作用物質(複数可)を選択的に送達することができるターゲティング成分で改変することができる。
【0431】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子安定化リポソームを使用して、免疫系の細胞に1つまたは複数の免疫調節作用物質を送達する(
図4)。小さな帯電ナノ粒子(1nm〜30nm)をリポソーム表面に吸着させることにより、リポソーム−ナノ粒子複合体は上記の露出リポソームだけでなく(
図3)、調節可能な膜の剛性および制御可能なリポソームの安定性のメリットも有する。小さな帯電ナノ粒子が反対電荷を有するか正味の電荷を有さないリポソームの表面に接近すると、ナノ粒子と膜の間の静電相互作用または電荷−双極子間相互作用はナノ粒子を引き付けて、一部分が脂質膜によって覆われた膜の表面に存在させる。これはリポソームの局所の膜屈曲および球状表面張力を誘導し、これらはいずれも膜の剛性の調節を可能にする。この態様は、その剛性がウイルス膜内の他の生物学的成分の組成に依存するウイルスを模倣した、リポソームを使用するワクチン送達に重要である。さらに、吸着したナノ粒子は融合に対してリポソームを保護する帯電殻(charged shell)を形成し、それによってリポソームの安定性を高める。特定の実施形態では、小さなナノ粒子を軽い攪拌下でリポソームと混合し、ナノ粒子はリポソーム表面に自然に接着する。具体的な実施形態では、小さなナノ粒子は、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、無機または有機ナノ粒子、これらのハイブリッド、および/またはこれらの組合せだけには限られないが、これらであってよい。
【0432】
いくつかの実施形態では、リポソーム−ポリマーナノキャリアを使用して、免疫系の細胞に1つまたは複数の免疫調節作用物質を送達する(
図5)。リポソーム内部を中空に保つ代わりに、親水性免疫調節作用物質を封入することができる。
図3は、その制約のいくつかを除外する一方でリポソームとポリマーナノ粒子の両方のメリットを有する、リポソームコーティングポリマーナノキャリアを形成するためにジ−ブロックコポリマーナノ粒子を充填したリポソームを示す。いくつかの実施形態では、リポソーム殻を使用して親油性または複合の(conjugate)親水性免疫調節作用物質を保持することができ、ポリマーコアを使用して疎水性免疫調節作用物質を送達することができる。
【0433】
特定の実施形態では、予め製剤化したポリマーナノ粒子(40nm〜1000nm)を軽い攪拌下で小さなリポソーム(20nm〜100nm)と混合して、ポリマーナノ粒子表面へのリポソーム融合を誘導する。具体的な実施形態では、ジ−ブロックコポリマーナノ粒子は、以下の:ポリ(
D,L乳酸)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(PLA−b−PEG)、ポリ(
D,Lグリコール酸)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(PLG−b−PEG)、ポリ(
D,L乳酸−コ−グリコール酸)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(PLGA−b−PEG)、およびポリ(ε−カプロラクトン)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(PCL−b−PEG)の1つまたは複数であってよいが、これらだけには限らない。
【0434】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子安定化リポソーム−ポリマーナノキャリアを使用して、1つまたは複数の免疫調節作用物質を送達する(
図6)。小さなナノ粒子(1nm〜30nm)をリポソーム−ポリマーナノキャリアの表面に吸着させることによって、ナノキャリアは上記のナノ粒子安定化リポソーム(
図4)と上記のリポソーム−ポリマーナノ粒子(
図5)の両方のメリットだけでなく、調節可能な膜の剛性および制御可能なリポソームの安定性のメリットも有する。
【0435】
いくつかの実施形態では、逆ミセルを含有するリポソーム−ポリマーナノキャリアを使用して、1つまたは複数の免疫調節作用物質を送達する(
図7)。上記のリポソーム−ポリマーナノキャリア(
図5および6)はポリマーナノ粒子内の疎水性免疫調節作用物質の保持に限定されるので、ここでは小さな逆ミセル(1nm〜20nm)を製剤化して親水性免疫調節作用物質を封入し、次いでジ−ブロックコポリマーと混合してリポソームのポリマーコアを製剤化する。
【0436】
特定の実施形態では、封入する親水性免疫調節作用物質は、揮発性、水混和性の有機溶媒中で天然由来の無毒の両親媒性物質と混合することによって逆ミセル中に最初に取り込む。特定の実施形態では、両親媒性物質は、以下の:ホスファチジルコリン、脂質A、コレステロール、ドリコール、スフィンゴシン、スフィンゴミエリン、セラミド、グリコシルセラミド、セレブロシド、サルファチド、フィトスフィンゴシン、ホスファチジル−エタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、およびリゾホスファチドの1つまたは複数だけには限られないが、これらであってよい。いくつかの実施形態では、揮発性、水混和性の有機溶媒は、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、またはジメチルホルムアミドだけには限られないが、これらであってよい。いくつかの実施形態では、逆ミセルの形成が終了した後に、生分解性ポリマーをこの混合物に加える。生成した生分解性ポリマーと逆ミセルの混合物はポリマー不溶性親水性非溶媒と組合せて、非溶媒への溶媒の迅速な拡散および有機溶媒の蒸発によってナノ粒子を形成する。特定の実施形態では、ポリマー不溶性親水性非溶媒は、以下の:水、エタノール、メタノール、およびこれらの組合せの1つまたは複数だけには限られないが、これらであってよい。逆ミセル含有ポリマーナノ粒子を脂質分子と混合して、上記のリポソーム−ポリマー複合体構造を形成する(
図5)。
【0437】
いくつかの実施形態では、逆ミセルを含有するナノ粒子安定化リポソーム−ポリマーナノキャリアを使用して、1つまたは複数の免疫調節作用物質を送達する(
図8)。小さなナノ粒子(1nm〜30nm)をリポソーム−ポリマーナノキャリアの表面に吸着させることによって、ナノキャリアは上記のナノ粒子安定化リポソーム(
図4)と上記の逆ミセル含有リポソーム−ポリマーナノ粒子(
図7)の両方のメリットだけでなく、調節可能な膜の剛性および制御可能なリポソームの安定性のメリットも有する。
【0438】
いくつかの実施形態では、脂質単層安定化ポリマーナノキャリアを使用して、1つまたは複数の免疫調節作用物質を送達する(
図9)。上記のリポソーム−ポリマーナノキャリア(
図5〜8)と比較して、このシステムは作用物質と製造の両方の点で簡潔性のメリットを有する。いくつかの実施形態では、疎水性ホモポリマーは、疎水性と親水性の両方のセグメントを有する
図5〜8中で使用したジ−ブロックコポリマーとは対照的に、ポリマーコアを形成することができる。脂質安定化ポリマーナノキャリアは、ポリマーナノ粒子とリポソームを別々に製剤化し次にそれらを1つに融合する代わりに、1つの単工程内で形成することができる。
【0439】
特定の実施形態では、親水性免疫調節作用物質の分子を脂質頭部基と最初に化学結合させる。コンジュゲートは1つまたは複数の水混和性溶媒を含有する水溶液中で特定比の非コンジュゲート脂質分子と混合する。特定の実施形態では、両親媒性物質は、以下の:ホスファチジルコリン、脂質A、コレステロール、ドリコール、スフィンゴシン、スフィンゴミエリン、セラミド、グリコシルセラミド、セレブロシド、サルファチド、フィトスフィンゴシン、ホスファチジル−エタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、およびリゾホスファチドの1つまたは複数だけには限られないが、これらであってよい。いくつかの実施形態では、水混和性溶媒は、アセトン、エタノール、メタノール、およびイソプロピルアルコールだけには限られないが、これらであってよい。生分解性ポリマー材料を、水混和性または部分的に水混和性の有機溶媒中に封入する疎水性免疫調節作用物質と混合する。具体的な実施形態では、生分解性ポリマーは、以下の:ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(D,L−グリコール酸)、ポリ(ε−カプロラクトン)、または様々なモル比でのそれらのコポリマーの1つまたは複数だけには限られないが、これらであってよい。いくつかの実施形態では、水混和性有機溶媒は、アセトン、エタノール、メタノール、またはイソプロピルアルコールだけには限られないが、これらであってよい。いくつかの実施形態では、部分的に水混和性の有機溶媒は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、酢酸イソプロピル、またはジメチルホルムアミドだけには限られないが、これらであってよい。生成したポリマー溶液はコンジュゲートおよび非コンジュゲート脂質の水溶液に加えて、水中への有機溶媒の迅速な拡散および有機溶媒の蒸発によってナノ粒子を生成する。
【0440】
いくつかの実施形態では、逆ミセルを含む脂質単層安定化ポリマーナノ粒子を使用して、1つまたは複数の免疫調節作用物質を送達する(
図10)。上記の脂質安定化ポリマーナノキャリア(
図9)は疎水性免疫調節作用物質の保持に限定されるので、ここでは小さな逆ミセル(1nm〜20nm)を製剤化して親水性免疫調節作用物質を封入し、生分解性ポリマーと混合してポリマーナノキャリアのコアを形成する。
【0441】
本発明の組成物は任意の適切な方法によって作製することができ、本発明は決して本明細書に記載する方法を使用して生成することができる組成物に限られないことは理解されよう。適切な方法の選択は、関係する個々の成分の性質に対する配慮を必要とし得る。
【0442】
望む場合、様々な方法を使用して、免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子が結合したワクチンナノキャリアと免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子が結合していない状態のワクチンナノキャリアを分離すること、またはそこに結合した異なる数の免疫調節作用物質、ターゲティング成分、免疫刺激作用物質、および/またはナノ粒子を有するワクチンナノキャリアを分離することができる。例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動、または濾過を使用して、そこに結合した異なる数の実体を有するワクチンナノキャリアの集団を分離すること、および/またはワクチンナノキャリアを他の実体と分離することができる。いくつかの方法には、サイズ排除または陰イオン交換クロマトグラフィーがある。
【0443】
いくつかの実施形態では、本発明のワクチンナノキャリアは無菌条件下で製造する。これによって、生成するワクチンが無菌および非感染状態であり、したがって生ワクチンと比較したとき安全性を改善することを確実にすることができる。特にワクチンを接種する被験体が免疫欠陥を有する、感染症に罹患している、および/または感染を受けやすいとき、これは貴重な安全尺度を与える。
【0444】
いくつかの実施形態では、本発明のワクチンナノキャリアは、活性を消なうことのない長期間の製剤戦略に応じて、凍結乾燥することができ、そして懸濁物でまたは凍結乾燥粉末として保存することができる。
【0445】
適用
本明細書に記載の組成物および方法を使用して、免疫応答を、誘導、強化、抑制、指示、または再指示することができる。本明細書に記載の組成物および方法は、任意のがん、感染性疾患、代謝性疾患、変性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、免疫疾患または他の障害および/または病態の予防および/または治療に使用できる。本明細書に記載の組成物および方法は、嗜癖、例えば、本明細書に記載の任意の依存性物質に対する嗜癖の治療にもまた使用できる。本明細書に記載の組成物および方法は、毒素、有害物質、環境毒素、または他の有害物に曝露されることによりもたらされる病態の予防および/または治療にもまた使用できる。被験体は、限定するものではないが、ヒトおよび/または他の霊長類、商業用の関連哺乳動物、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコおよび/またはイヌを含む哺乳動物、および/または商業用の関連鳥類、例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウおよび/またはシチメンチョウなどを含む。
【0446】
いくつかの実施形態において本発明に従ったワクチンナノキャリアは、疾患、障害および/または病態の1つまたは複数の症状または特徴の、治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延、進行の阻害、重症度の低減および/または発生率の低減のために使用できる。いくつかの実施形態において、本発明のワクチンナノキャリアは、微生物感染(例えば、細菌感染、真菌感染、ウイルス感染、寄生虫感染など)の1つまたは複数の症状または特徴の、治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延、進行の阻害、重症度の低減および/または発生率の低減のために使用できる。
【0447】
本発明の一態様において、疾患、障害または病態(例えば、微生物感染)の予防および/または治療のための方法を提供する。いくつかの実施形態において、疾患、障害または病態の予防および/または治療は、それらを必要とする被験体に、所望の結果を得るために必要な量および時間で、治療有効量の本発明のワクチンナノキャリアを投与する工程を含む。本発明のある実施形態において、本発明のワクチンナノキャリアの「治療有効量」は、微生物感染または複数の症状または特徴の、治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延、進行の阻害、重症度の低減および/または発生率の低減のために有効な量である。いくつかの実施形態において「治療有効量」は、免疫系を調節するために有効な量である。このような量は、免疫原性量、すなわち、被験体において検出可能な免疫応答、例えば、検出可能な抗体応答および/または検出可能なT細胞応答を引き出すために十分な量であってよい。
【0448】
本発明の予防および/または治療プロトコールは、治療有効量の1つまたは複数の本発明のワクチンナノキャリアを、健康な被験体(例えば、微細物感染の任意の症状を示していない、および/または微生物感染の診断を受けていない被験体、未だ毒素に曝露されたことがない被験体、未だ乱用物質または依存性物質を摂取したことがない被験体など)に投与する工程を含む。例えば、健康な個体を、微生物感染の発症、毒素、乱用物質、依存性物質などに対する曝露、および/またはそれらに関連する症状の発症の前に、本発明のワクチンナノキャリア(複数可)を使用して免疫でき、危険性のある個体(例えば、微生物感染を患っている個体、微生物/毒素がまん延している地域に旅行した個体に曝露された患者など)を、症状の発症および/または曝露/摂取と実質的に同時に(例えば48時間以内、24時間以内または12時間以内)治療できる。当然のことながら、微生物感染を有すること、毒素に曝露されたこと、または乱用物質または依存性物質を摂取したことが分かっている個体は、任意の時点で治療を受けることができる。
【0449】
いくつかの実施形態において、本発明の予防および/または治療プロトコールは、免疫応答がT細胞およびB細胞の両方において刺激されるような、治療有効量の1つまたは複数の本発明のワクチンナノキャリアを被験体に投与する工程を含む。
【0450】
いくつかの実施形態において、選択した免疫調節作用物質と、ターゲティング成分および様々なAPCに対する免疫刺激作用物質とを組み合わせることによって、免疫応答(例えば、エフェクター応答)をあつらえて、所与の適用に対する免疫応答、例えば、体液性応答、1型T細胞応答、2型T細胞応答、細胞傷害性T細胞応答および/またはこれらの応答の組み合わせの最も望ましい型を優先的に引き出すことができる。したがって、同じプラットフォームを、病原体の宿主に対する予防ワクチンおよび既存の疾患、例えば、感染症、自己免疫疾患および/またはがんの免疫療法を含む、広範囲の様々な臨床応用に使用できる。
【0451】
がんは、限定するものではないが、胆道がん、脳腫瘍、乳がん、子宮頸がん、絨毛がん、結腸がん、子宮内膜がん、食道がん、胃がん、上皮内新生物、リンパ腫、肝がん、肺がん(例えば、小細胞および非小細胞)、黒色腫、神経芽細胞腫、口腔がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、直腸がん、非上皮性悪性腫瘍、皮膚がん、精巣がん、甲状腺がんおよび腎臓がんならびに他の上皮性悪性腫瘍および非上皮性悪性腫瘍を含む。
【0452】
自己免疫疾患は、限定するものではないが、関節リウマチ、リウマチ熱、潰瘍性大腸炎、セリアック病、クローン病、炎症性腸疾患、インスリン依存性糖尿病、糖尿病、若年性糖尿病、自然発症性自己免疫性糖尿病、胃炎、自己免疫性萎縮性胃炎、自己免疫性肝炎、甲状腺炎、橋本甲状腺炎、自己免疫性甲状腺炎、膵島炎、卵巣炎、精巣炎、ブドウ膜炎、水晶体起因性ブドウ膜炎、多発性硬化症、重症筋無力症、原発性粘液水腫、甲状腺中毒症、悪性貧血、自己免疫性溶血性貧血、アジソン病、強皮症、グッドパスチャー症候群、ギラン・バレー症候群、グレーブス病、糸球体腎炎、乾癬、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、交感性眼炎、特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocylopenic purpura)、特発性白血球減少症(idiopathic leucopenia)、シェーグレン症候群(Siogrens’ syndrome)、ウェゲナー肉芽腫症、多発性筋炎/皮膚筋炎または全身性エリテマトーデスを含む。
【0453】
炎症性疾患/障害は、例えば、心血管疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、慢性胆嚢炎、結核、橋本甲状腺炎、敗血症、サルコイドーシス、珪肺症、および他の塵肺症ならびに創傷に埋め込まれた異物を含むが、限定するものではない。本明細書において使用する場合、「敗血症」という用語は、微生物の侵入に対する宿主の全身性炎症性応答に関連する、十分認識された臨床的症候群を指す。本明細書において使用される「敗血症」という用語は、発熱または体温低下および頻拍および頻呼吸によって通常示される病態を指し、重篤な例では、血圧低下、臓器機能不全および死亡にも達し得る。
【0454】
いくつかの実施形態では、本発明は、免疫応答を引き出すのに適したナノ粒子組成物に関する。
【0455】
いくつかの実施形態では、本発明は、1つまたは複数の抗原に対する哺乳動物の免疫応答を増強するために、有効量の本発明のナノ粒子を投与する工程を含む、哺乳動物における免疫応答の強化の増強に関する。本発明はまた、哺乳動物のワクチン接種の方法にも関する。
【0456】
薬学的組成物
本発明は、治療有効量の1つまたは複数のワクチンナノキャリアおよび1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む新規な組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、本発明のワクチンナノキャリアおよび/または本明細書に記載の任意のそれらの組成物を含む薬学的組成物を提供する。このような薬学的組成物は、場合により1つまたは複数の追加の治療的活性物質を含むことができる。いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物を含む薬学的組成物を、それらを必要とする被験体に投与する工程が含まれる方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物はヒトに投与される。本発明の目的のために、「活性成分」という語句は、少なくとも1種の免疫調節作用物質を含み、場合により、1つまたは複数のターゲティング成分、免疫刺激作用物質および/またはナノ粒子を含む、本発明のワクチンナノキャリアを通常指す。
【0457】
本明細書において提供される薬学的組成物の説明は、主にヒトへの投与に適した薬学的組成物を対象とするが、当業者は、このような組成物が、あらゆる種類の動物への投与に一般的に適していることを理解する。ヒトへの投与に適した薬学的組成物を、様々な動物への投与に適した組成物にするための改良は十分理解されており、当業者である獣医薬理学者は、必要であればごく普通の実験を用いて、このような改良を設計および/または実施できる。本発明の薬学的組成物の投与が企図される被験体は、限定するものではないが、ヒトおよび/または他の霊長類、商業用の関連哺乳動物、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコおよび/またはイヌを含む哺乳動物、および/または商業用の関連鳥類、例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウおよび/またはシチメンチョウなどを含む鳥類を含む。
【0458】
本明細書に記載の薬学的組成物の製剤は、薬学分野において公知または今後開発される任意の方法によって調製できる。一般的にこのような調製方法(preparatory methods)は、活性成分を、1つまたは複数の賦形剤および/または1つまたは複数の他の副成分(accessory ingredient)と組み合わせ、その後、必要および/または所望であれば、製品を、所望の1回または複数回投与単位に成形および/または包装する工程を含む。
【0459】
本発明の薬学的組成物は、単回単位用量として、および/または複数の単回単位用量として調製、包装および/またはまとめて販売され得る。本明細書において使用する場合、「単位用量」は、所定量の活性成分を含む個別の量(discrete amount)の薬学的組成物である。活性成分の量は、一般的に、被験体に投与される活性成分の投与量および/またはこのような投与量の適当な分割量、例えば、このような投与量の1/2または1/3と等しい。
【0460】
本発明の薬学的組成物中の活性成分、薬学的に許容される賦形剤(複数可)および/または任意のさらなる成分の相対量は、治療される被験体の個性(identity)、サイズおよび/または病態に応じて、さらに組成物の投与経路に応じて変動する。例としては、本組成物は、0.1%と100%(w/w)の間の活性成分を含み得る。
【0461】
本発明の医薬製剤は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含むことができ、本明細書において使用する場合、それらは、所望の特定の剤形に適するような、任意およびすべての溶媒、分散媒、希釈剤または他の液体ビヒクル、分散補助剤もしくは懸濁補助剤、表面活性剤、等張剤、増粘剤もしくは乳化剤、保存剤、固体結合剤、滑沢剤などを含む。Remington’s The Science and Practice of Pharmacy, 21版、A. R. Gennaro、(Lippincott、Williams & Wilkins、Baltimore、MD、2006年;参照により本明細書に組み込まれる)は、薬学的組成物の製剤化に使用される様々な賦形剤およびそれらの調製のための公知の技術を開示している。任意の従来の賦形剤が、例えば、任意の望ましくない生物学的作用をもたらす、またはその薬学的組成物の任意の他の成分(複数可)と有害な様式で相互作用することによってある物質またはその誘導体と不適合である場合を除いて、それらの使用は本発明の範囲内であると企図される。
【0462】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%純粋である。いくつかの実施形態において、賦形剤は、ヒトにおける使用または動物への使用が承認されている。いくつかの実施形態において、賦形剤は、米国食品医薬品局(United States Food and Drug Administration)によって承認されている。いくつかの実施形態において、賦形剤は薬剤グレードである。いくつかの実施形態において、賦形剤は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方および/または国際薬局方の基準を満たしている。
【0463】
薬学的組成物の製造に使用される薬学的に許容される賦形剤は、限定するものではないが、不活性な希釈剤、分散剤および/または造粒剤、界面活性剤および/または乳化剤、崩壊剤、結合剤、保存剤、緩衝剤、滑沢剤ならびに/あるいは油を含む。このような賦形剤は、場合により、この本発明の製剤中に含まれ得る。賦形剤、例えば、カカオバターおよび坐剤用のろう、着色剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および芳香剤は、調合者の判断に従って、組成物中に存在し得る。
【0464】
例示的希釈剤としては、限定するものではないが、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム ラクトース、スクロース、セルロース、微結晶性セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、コーンスターチ、パウダーシュガーなどおよびそれらの組み合わせを含む。
【0465】
例示的造粒剤および/または分散剤は、限定するものではないが、ジャガイモデンプン、コーンスターチ、タピオカデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、クレー、アルギン酸、グアーガム、柑橘類の果肉、寒天、ベントナイト、セルロース製品および木製品、天然の海綿、カチオン交換樹脂、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、炭酸ナトリウム、架橋ポリ(ビニルピロリドン)(クロスポビドン)、カルボキシメチルデンプンナトリウム(デンプングリコール酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロース)、メチルセルロース、アルファ化デンプン(デンプン1500)、微結晶性デンプン、水不溶性デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum)、ラウリル硫酸ナトリウム、四級アンモニウム化合物など、およびそれらの組み合わせを含む。
【0466】
例示的界面活性剤および/または乳化剤は、限定するものではないが、天然の乳化剤(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、コンドラックス(chondrux)、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂、コレステロール、ろうおよびレシチン)、コロイド状粘土(例えば、ベントナイト[ケイ酸アルミニウム]およびVeegum[ケイ酸アルミニウムマグネシウム])、長鎖アミノ酸誘導体、高分子量アルコール(例えば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、トリアセチンモノステアレート、ジステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸グリセリルおよびモノステアリン酸プロピレングリコール、ポリビニルアルコール)、カルボマー(例えば、カルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、アクリル酸ポリマーおよびカルボキシビニルポリマー)、カラギナン、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、粉末セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン[Tween(登録商標)20]、ポリオキシエチレンソルビタン[Tween(登録商標)60]、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン[Tween(登録商標)80]、モノパルミチン酸ソルビタン[Span(登録商標)40]、モノステアリン酸ソルビタン[Span(登録商標)60]、トリステアリン酸ソルビタン[Span(登録商標)65]、モノオレイン酸グリセリル、モノオレイン酸ソルビタン[Span(登録商標)80])、ポリオキシエチレンエステル(例えば、モノステアリン酸ポリオキシエチレン[Myrj(登録商標)45]、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエトキシ化ヒマシ油、ステアリン酸ポリオキシメチレンおよびSolutol)、スクロース脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、Cremophor(登録商標))、ポリオキシエチレンエーテル、(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル[Brij(登録商標)30])、ポリ(ビニル−ピロリドン)、ジエチレングリコールモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミン、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸エチル、オレイン酸、ラウリン酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、Pluronic F68、Poloxamer188、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ドキュセートナトリウムなど、および/またはそれらの組み合わせを含む。
【0467】
例示的結合剤は、限定するものではないが、デンプン(例えば、コーンスターチおよびデンプンペースト);ゼラチン;糖(例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、糖蜜、ラクトース、ラクチトール、マンニトール);天然ゴムおよび合成ゴム(例えば、アカシア、アルギン酸ナトリウム、トチャカ(Irish moss)の抽出物、パンワールゴム(panwar gum)、ガッチゴム、イサポール皮(isapol husks)の粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、酢酸セルロース、ポリ(ビニル−ピロリドン)、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum)およびカラマツアラボガラクタン(larch arabogalactan);アルギネート;ポリエチレンオキシド;ポリエチレングリコール;無機カルシウム塩;ケイ酸;ポリメタクリレート;ろう;水;アルコール;など;およびそれらの組み合わせを含む。
【0468】
例示的保存剤は、酸化防止剤、キレート剤、抗菌保存剤、抗真菌保存剤、アルコール保存剤、酸性保存剤および他の保存剤を含むことができる。例示的酸化防止剤は、限定するものではないが、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムおよび亜硫酸ナトリウムを含むことができる。例示的キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸一水和物、エデト酸二ナトリウム、エデト酸二カリウム、エデト酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、エデト酸ナトリウム、酒石酸およびエデト酸三ナトリウムを含む。例示的抗菌保存剤は、限定するものではないが、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコールおよびチメロサールを含む。例示的抗真菌保存剤は、限定するものではないが、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウムおよびソルビン酸を含む。例示的アルコール保存剤は、限定するものではないが、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、ヒドロキシベンゾエートおよびフェニルエチルアルコールを含む。例示的酸性保存剤は、限定するものではないが、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ベータ−カロテン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸およびフィチン酸を含む。他の保存剤は、限定するものではないが、トコフェロール、酢酸トコフェロール、デテロキシムメシレート、セトリミド、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluened)(BHT)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ナトリウムラウリルエーテルスルフェート(SLES)、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、Glydant Plus(登録商標)、Phenonip(登録商標)、メチルパラベン、Germall 115、Germaben II、Neolone(商標)、Kathon(商標)およびEuxyl(登録商標)を含む。ある実施形態において、保存剤は、酸化防止剤である。他の実施形態において、保存剤は、キレート剤である。
【0469】
例示的緩衝剤は、限定するものではないが、クエン酸塩緩衝溶液、酢酸塩緩衝溶液、リン酸塩緩衝溶液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプチン酸カルシウム、グルクロン酸カルシウム、D−グルクロン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、第二リン酸カルシウム、リン酸、第三リン酸カルシウム、水酸化リン酸カルシウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルクロン酸カリウム、カリウム混合物、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、発熱物質非含有水、等張性食塩水、リンゲル溶液、エチルアルコールなど、およびそれらの組み合わせを含む。
【0470】
例示的滑沢剤は、限定するものではないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、麦芽、ベヘン酸グリセリル(glyceryl behanate)、硬化植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムなど、およびそれらの組み合わせを含む。
【0471】
例示的な油は、限定するものではないが、アーモンドオイル、杏仁油、アボカド油、ババス油、ベルガモット油、ブラックカラント(black current)シードオイル、ルリヂサ油、ケードオイル、カモミールオイル、キャノーラ油、カラウェー油、カルナバオイル、ヒマシ油、桂皮油、カカオバター油、ヤシ油、タラ肝油、コーヒーオイル、トウモロコシ油、綿実油、エミューオイル、ユーカリ油、月見草油、魚油、亜麻仁油、ゲラニオール油、ヒョウタン油、グレープシード油、ヘーゼルナッツオイル、ヒソップ油、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ油、ククイナッツ油、ラバンジン油、ラベンダー油、レモン油、リツェアクベバ油、マカダミアナッツ(macademia nut)油、ゼニアオイ油、マンゴー種子油、メドウフォーム種子油、ミンク油、ナツメグ油、オリーブ油、オレンジ油、オレンジラフィー油、パーム油、パーム核油、桃仁油、落花生油、ケシ油、パンプキンシードオイル、菜種油、米糠油、ローズマリー油、ベニバナ油、ビャクダン油、サザンカ油(sasquana)、セイボリー油、シーバックソーンオイル、ゴマ油、シアバター油、シリコーン油、ダイズ油、ヒマワリ油、ティーツリー油、アザミ油、ツバキ油、ベチベル油、クルミ油および小麦胚芽油を含む。例示的な油は、限定するものではないが、ステアリン酸ブチル、トリカプリル酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、シクロメチコン、セバシン酸ジエチル、ジメチコン360、ミリスチン酸イソプロピル、鉱油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーン油およびそれらの組み合わせを含む。
【0472】
経口投与用および非経口投与用の液体の剤形は、限定するものではないが、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤を含む。液体剤形は、活性成分に加えて、当該分野において通常使用される不活性な希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルならびにそれらの混合物を含み得る。経口組成物は、不活性な希釈剤に加えて、アジュバント、例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤(suspending agent)、甘味剤、香味剤および芳香剤を含み得る。非経口投与に関するある実施形態において、本発明のワクチンナノキャリアは、可溶化剤、例えば、Cremophor(登録商標)、アルコール、油、変性油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマーおよびそれらの組み合わせと混合される。
【0473】
注射可能な製剤、例えば、滅菌の注射可能な水性または油性の懸濁剤は、適当な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して、公知の技術に従って製剤化され得る。滅菌の注射可能な製剤は、無毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液としての滅菌の注射可能な液剤、懸濁剤または乳剤であり得る。用いることのできる許容可能なビヒクルおよび溶媒は、水、リンゲル溶液、U.S.P.および等張性塩化ナトリウム溶液である。さらに、滅菌の固定油は、溶媒または懸濁化媒質として、慣習的に使用される。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性の固定油を用いることができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射可能物の調製に使用される。
【0474】
注射可能な製剤は、例えば、細菌保持フィルターで濾過すること、あるいは使用前に、滅菌水もしくは他の滅菌の注射可能な媒質に溶解または分散できる、滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌できる。
【0475】
薬物の作用を長くするために、多くの場合、皮下注射または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅延させることが望ましい。このことは、水に難溶性である結晶性または非晶質の材料の液体懸濁液を使用することによって達成できる。そして、薬物の吸収速度は、溶解の速度に依存し、そしてその溶解の速度は、結晶のサイズおよび結晶の形状に依存し得る。あるいは、非経口的に投与された薬物形態の吸収の遅延は、油性のビヒクルに薬物を溶解または懸濁することによって達成され得る。
【0476】
直腸投与用または膣投与用の組成物は、通常、本発明のワクチンナノキャリアを、周囲温度では固体であるが体温では液体であり、したがって、直腸または膣腔において融解し、活性成分を放出する、適切な非刺激性賦形剤、例えば、カカオバター、ポリエチレングリコールまたは坐剤ろうと混合することによって調製され得る坐剤である。
【0477】
経口投与用の固体剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤を含む。そのような固体剤形において、活性成分は、少なくとも1つの不活性で薬学的に許容される賦形剤、例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、ならびに/またはa)充填剤もしくは増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸)、b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロースおよびアカシアなど、c)グリセロールなどの湿潤剤、d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケートおよび炭酸ナトリウム、e)パラフィンなどの溶解遅延剤(solution retarding agent)、f)四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなど、h)吸収剤、カオリンおよびベントナイトクレーなど、およびi)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物と混合される。カプセル、錠剤および丸剤の場合において、それらの剤形は、緩衝剤を含み得る。
【0478】
同様の型の固体組成物は、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用した軟ゼラチンカプセルおよび硬ゼラチンカプセル内の充填剤として用いることができる。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固体剤形は、コーティングおよびシェル、例えば、腸溶性コーティングおよび製薬分野において周知の他のコーティングを用いて調製できる。それらは、場合により、乳白剤(opacifying agent)を含むことができ、腸管の特定の部分において、場合により遅延様式で、活性成分のみを放出するか、または活性成分を優先的に放出する組成物であり得る。使用できる包埋組成物の例は、ポリマー物質およびろうを含む。同様の型の固体組成物は、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用した軟ゼラチンカプセルおよび硬ゼラチンカプセル内の充填剤として用いることができる。
【0479】
活性成分は、上で述べたような1つまたは複数の賦形剤を含むマイクロカプセル型であり得る。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固体剤形は、コーティングおよびシェル、例えば、腸溶性コーティング、放出制御コーティングおよび製薬分野において周知の他のコーティングを用いて調製できる。そのような固体剤形において、活性成分は、少なくとも1つの不活性な希釈剤、例えば、スクロース、ラクトースまたはデンプンと混合され得る。そのような剤形は、通常の慣行と同じように、不活性な希釈剤、例えば、錠剤化滑沢剤および他の錠剤化補助剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロース以外のさらなる物質を含み得る。カプセル、錠剤および丸剤の場合、剤形は、緩衝剤を含み得る。それらは、場合により、乳白剤を含み得、腸管の特定の部分において、場合により遅延様式で、活性成分のみを放出するか、または活性成分を優先的に放出する組成物であり得る。使用できる包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびろうを含む。
【0480】
本発明に従うワクチンナノキャリアの局所的投与用および/または経皮的投与用の剤形は、軟膏剤、ペースト、クリーム、ローション剤、ゲル、散剤、液剤、スプレー、吸入剤および/またはパッチを含み得る。一般に、活性成分は、必要に応じて、薬学的に許容される賦形剤および/または任意の必要な保存剤および/または緩衝剤と滅菌条件下において混合される。さらに、本発明は、経皮パッチの使用を企図し、それは、多くの場合身体への活性成分の制御された送達を提供するという追加の利点を有する。このような剤形は、例えば、活性成分を適切な媒質に溶解することおよび/または分散することによって調製され得る。あるいはまたはさらに、その速度は、速度制御膜を提供すること、および/または活性成分をポリマーマトリックスおよび/またはゲルに分散することのいずれかによって、制御され得る。
【0481】
本明細書中に記載の皮内薬学的組成物の送達における使用に適切なデバイスは、米国特許第4,886,499号;米国特許第5,190,521号;米国特許第5,328,483号;米国特許第5,527,288号;米国特許第4,270,537号;米国特許第5,015,235号;米国特許第5,141,496号;および米国特許第5,417,662号に記載されているような短針デバイスを含む。皮内組成物は、皮膚への針の有効な穿通長を限定するデバイス、例えば、PCT公報WO99/34850に記載されているものおよびその機能的同等物によって投与され得る。液体ジェット式注射器を介して、および/または角質層に突き刺し、真皮に到達するジェットをもたらす針を介して、液体のワクチンを真皮に送達するジェット式注射デバイスが適切である。ジェット式注射デバイスは、例えば、米国特許第5,480,381号;米国特許第5,599,302号;米国特許第5,334,144号;米国特許第5,993,412号;米国特許第5,649,912号;米国特許第5,569,189号;米国特許第5,704,911号;米国特許第5,383,851号;米国特許第5,893,397号;米国特許第5,466,220号;米国特許第5,339,163号;米国特許第5,312,335号;米国特許第5,503,627号;米国特許第5,064,413号;米国特許第5,520,639号;米国特許第4,596,556号;米国特許第4,790,824号;米国特許第4,941,880号;米国特許第4,940,460号;ならびにPCT公報WO97/37705およびWO97/13537に記載されている。粉末の形態のワクチンを皮膚の外層を通過して真皮に向かって加速する圧縮ガスを使用する、弾道的な粉末(ballistic powder)/粒子の送達デバイスが適切である。あるいはまたはさらに、従来の注射器が、従来のマントー(mantoux)法の皮内投与において使用できる。
【0482】
局所的投与に適切な製剤は、限定するものではないが、液体および/または半液体の調製品、例えば、リニメント剤、ローション剤、水中油型および/または油中水型の乳剤、例えば、クリーム、軟膏剤および/またはペースト、および/または液剤および/もしくは懸濁剤を含む。局所的に投与可能な製剤は、例えば、約1%〜約10%(w/w)の活性成分を含み得るが、活性成分の濃度は、溶媒中の活性成分の溶解度の限界と同じであり得る。局所的投与用の製剤は、本明細書中に記載されるさらなる成分の1つまたは複数をさらに含み得る。
【0483】
本発明の薬学的組成物は、口腔前庭を介する肺投与に適切な製剤で、調製され、包装され、そして/または販売され得る。このような製剤は、活性成分を含み、かつ、約0.5μm〜約7μmまたは約1μm〜約6μmの範囲の直径を有する、乾燥粒子を含み得る。このような組成物は、好都合にも、噴霧剤の流れが粉末を分散させるように割り当てられていることがある乾燥粉末リザーバーを備えているデバイスを使用して、および/または密閉容器内に低沸点噴霧剤に溶解された活性成分および/または懸濁された活性成分を含むデバイスなどの自動推進式の溶媒/粉末投薬容器を使用して、投与するための乾燥粉末の形態である。このような粉末は粒子を含み、その粒子の少なくとも98重量%が、0.5μmを超える直径を有し、そして数でその粒子の少なくとも95%が、7μm未満の直径を有する。あるいは、粒子の少なくとも95重量%が、1μmを超える直径を有し、数で粒子の少なくとも90%が、6μm未満の直径を有する。乾燥粉末組成物は、糖などの固体の微粉希釈剤を含み得、単位用量の形態で便利に提供される。
【0484】
低沸点噴霧剤は、一般的に、大気圧において65°F未満の沸点を有する液体噴霧剤を含む。一般的に、この噴霧剤は、組成物の50%〜99.9%(w/w)を構成し得、活性成分は、組成物の0.1%〜20%(w/w)を構成し得る。この噴霧剤は、さらなる成分、例えば、液体の非イオン性および/または固体の陰イオン性の界面活性物質、ならびに/またはこの活性成分を含む粒子と同じ桁の粒径を有し得る固体希釈剤をさらに含み得る。
【0485】
肺送達のために製剤化された本発明の薬学的組成物は、溶液および/または懸濁液の液滴の形態で活性成分を提供し得る。このような製剤は、活性成分を含む水溶液および/または希薄アルコール溶液および/または懸濁液として、任意選択で、滅菌されたものとして、調製、包装、および/または販売され得、任意の噴霧化デバイスおよび/または霧化デバイスを用いて便利に投与され得る。このような製剤は、限定するものではないが、サッカリンナトリウムなどの着香料、揮発油、緩衝剤、界面活性剤、および/またはメチルヒドロキシベンゾエートなどの保存剤を含む、1つまたは複数のさらなる成分をさらに含み得る。この投与経路によって提供される液滴は、約0.1μm〜約200μmの範囲の平均直径を有し得る。
【0486】
肺送達に有用であるような本明細書中に記載の製剤は、本発明の薬学的組成物の鼻腔内送達に有用である。鼻腔内投与に適切な別の製剤は活性成分を含み、約0.2μm〜約500μmの平均粒子を有する、粗い粉末である。このような製剤は、嗅剤が摂取される様式で、すなわち、鼻孔に近づけられた粉末の容器から鼻道を通過する迅速な吸入によって、投与される。
【0487】
経鼻投与に適した製剤は、例えば、わずか約0.1%(w/w)から100%(w/w)もの活性成分を含み得、本明細書中に記載のさらなる成分の1つまたは複数を含み得る。本発明の薬学的組成物は、頬側投与に適した製剤に調製、包装、および/または販売され得る。このような製剤は、例えば、従来の方法を使用して作製される錠剤および/またはトローチ剤の形態であり得、例えば、活性成分は0.1%〜20%(w/w)であり得、残りは、経口的に溶解可能および/または分解可能な組成物、ならびに場合により、本明細書中に記載のさらなる成分の1つまたは複数を含む。あるいは、頬側投与に適した製剤は、活性成分を含む散剤ならびに/あるいはエアロゾル化および/または霧化された液剤および/または懸濁剤を含み得る。このような粉末状の、エアロゾル化された、および/またはエアロゾル化された製剤は、分散されるとき、約0.1μm〜約200μmの範囲の平均粒径および/または平均液滴サイズを有し得、本明細書中に記載のさらなる成分の1つまたは複数をさらに含み得る。
【0488】
本発明の薬学的組成物は、眼科投与に適切な製剤として、調製、包装、および/または販売され得る。このような製剤は、水性または油性の液体賦形剤中、例えば、0.1%/1.0%(w/w)の溶液および/または懸濁液の活性成分を含む、例えば点眼剤の形態であり得る。このような点眼剤は、緩衝剤、塩および/または本明細書中に記載の1つまたは複数の他のさらなる成分をさらに含み得る。眼科的に投与可能で有用な他の製剤は、微結晶性の形態および/またはリポソーム調製品中に活性成分を含む製剤を含む。点耳剤および/または点眼剤は、本発明の範囲内であると企図される。
【0489】
医薬品の製剤化および/または製造における一般的な考察は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 21版、Lippincott Williams & Wilkins、2005年に見いだすことができる。
【0490】
投与
いくつかの実施形態において、治療有効量の本発明のワクチンナノキャリア組成物は、疾患、障害および/または病態の診断前、診断と同時に、および/または診断後に、患者および/または動物に送達される。いくつかの実施形態において、治療量の本発明の組成物は、疾患、障害および/または病態の症状の発症前に、発症と同時に、および/または発症後に、患者および/または動物に送達される。いくつかの実施形態において、ワクチンナノキャリアの量は、疾患、障害および/または病態の1つまたは複数の症状または特徴の、治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延、進行の阻害、重症度の低減および/または発生率の低減のために十分である。いくつかの実施形態において、ワクチンナノキャリアの量は、被験体において検出可能な免疫応答を引き出すために十分である。いくつかの実施形態において、ワクチンナノキャリアの量は、被験体において検出可能な抗体応答を引き出すのに十分である。いくつかの実施形態において、ワクチンナノキャリアの量は、被験体において検出可能なT細胞応答を引き出すために十分である。いくつかの実施形態において、ワクチンナノキャリアの量は、被験体において検出可能な抗体応答およびT細胞応答を引き出すために十分である。いくつかの実施形態において、提供されるナノキャリアの利点は、ナノキャリアが、従来のワクチンで必要とされる濃度よりも非常に低い濃度の抗原で強力な応答を引き出し得る点である。
【0491】
本発明の方法によれば、本組成物は、治療のために有効な、任意の量および任意の投与経路を使用して投与され得る。必要とされる正確な量は、被験体の種、年齢および全般的な状態、感染の重症度、特定の組成物、その投与様式、その活性様式などに応じて、被験体ごとに変動する。本発明の組成物は、通常、投与の容易さおよび投薬量の均一性のために、単位剤形に製剤化される。しかし、本発明の組成物の1日の使用量の合計は、信頼できる医学的判断の範囲内で主治医によって決定されるものであると理解されるだろう。任意の特定の被験体または生物に対する特定の治療的に有効な具体的な用量レベルは、治療される障害およびその障害の重症度;使用される特定の活性成分の活性;使用される特定の組成物;被験体の年齢、体重、全般的な健康状態、性別および食餌;使用される特定の活性成分の投与回数、投与経路および排出速度;治療の継続期間;使用される特定の活性成分と併用してまたは同時に使用される薬物;ならびに医学分野において周知の同様の因子を含む、様々な因子に依存する。
【0492】
本発明の薬学的組成物は、任意の経路によって投与され得る。いくつかの実施形態において、本発明の薬学的組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、皮下、脳室内、経皮的、皮内、直腸、膣内、腹腔内、局所的(散剤、軟膏剤、クリームおよび/または滴剤によるようなもの)、経皮的、粘膜、鼻腔内、頬側、腸内、舌下を含む様々な経路によって;気管内点滴注入、気管支点滴注入および/または吸入;ならびに/あるいは経口スプレー、鼻腔内スプレーおよび/もしくはエアロゾルによって投与される。具体的に企図される経路は、経口投与、静脈内注射、筋肉内注射および/または皮下注射である。いくつかの実施形態において、本発明のワクチンナノキャリアは、非経口的に投与される。いくつかの実施形態において、本発明のワクチンナノキャリアは、静脈内に投与される。いくつかの実施形態において、本本発明のワクチンナノキャリアは、経口的に投与される。
【0493】
一般に、最も適切な投与経路は、ワクチンナノキャリアの性質(例えば、消化管の環境における安定性)、被験体の病態(例えば、被験体が経口投与に耐えることができるかどうか)を含む、様々な因子に依存すると思われる。本発明は、薬物送達の科学における進歩を潜在的に考慮に入れた任意の適切な経路による本発明の薬学的組成物の送達を包含する。
【0494】
ある実施形態において、本発明のワクチンナノキャリアは、1日1回または複数回で、約0.001mg/kg〜約100mg/kg、約0.01mg/kg〜約50mg/kg、約0.1mg/kg〜約40mg/kg、約0.5mg/kg〜約30mg/kg、約0.01mg/kg〜約10mg/kg、約0.1mg/kg〜約10mg/kgまたは約1mg/kg〜約25mg/kg被験体体重/日の範囲の量で投与されることにより、所望の治療効果を得ることができる。所望の投薬量は、1日に3回、1日に2回、1日に1回、1日おき、3日目ごと、毎週、2週間ごと、3週間ごと、または4週間ごとに、送達され得る。ある実施形態において、所望の投薬量は、複数回投与(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14回またはそれを超える投与)を使用して送達され得る。
【0495】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明のワクチンナノキャリアの集団を含む「治療用カクテル」を包含する。いくつかの実施形態において、ワクチンナノキャリアの集団内のワクチンナノキャリアのすべてが、複数の標的に結合し得る(例えば、SCS−MphとFDCとの両方に結合し得る)単一の種類のターゲティング成分を含む。いくつかの実施形態において、ワクチンナノキャリアの集団内の異なるワクチンナノキャリアが異なるターゲティング成分を含み、異なるターゲティング成分のすべてが同じ標的に結合し得る。いくつかの実施形態において、異なるワクチンナノキャリアが異なるターゲティング成分を含み、異なるターゲティング成分のすべてが異なる標的に結合し得る。いくつかの実施形態において、このような異なる標的は、同じ細胞型と会合されていることがある。いくつかの実施形態において、このような異なる標的は、異なる細胞型と会合されていることがある。
【0496】
必要に応じて、本発明のナノ粒子バイオコンジュゲートは、それ自体(純正な(neat))または薬学的に許容される塩の形態で投与され得る。医薬品に使用される場合、この塩は薬学的に許容されるべきであるが、薬学的に許容されない塩も、それらの薬学的に許容される塩の調製に便利に使用でき、本発明の範囲から除外されない。このような薬学的に許容される塩は、限定するものではないが、以下の酸から調製されるものを含む:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸(salicyclic)、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸およびベンゼンスルホン酸。さらに、薬学的に許容される塩は、カルボン酸基のアルカリ金属(alkyline metal)またはアルカリ土類(alkyline earth)の塩、例えば、ナトリウム、カリウムまたはカルシウムの塩として調製され得る。
【0497】
腸溶性コーティングの経口製剤の調製のためのカプセル化物質は、酢酸フタル酸セルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびメタクリル酸エステルのコポリマーを含む。カプセルまたは錠剤などの個体経口製剤が好ましい。エリキシル剤およびシロップ剤もまた、経口製剤として周知である。エアロゾル製剤の成分は、可溶化活性成分、酸化防止剤、溶媒混合物および液体製剤のための噴霧剤ならびに微粉化および懸濁化された活性成分、懸濁製剤のための分散剤および噴霧剤を含む。本発明の経口用、エアロゾル用および鼻腔内製剤は、このような製剤は無菌でなくてもよいのに対して、注射用調製品は無菌でなくてはならないので、先行技術の注射用調製品とは区別され得る。
【0498】
本発明のいくつかの実施形態において、ナノキャリアの投与は複数回用量で起こる。例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10用量を、患者に投与できる。必要に応じた投薬もまた、本発明の範囲内であり、定期的な投薬の繰り返しも含み得る。用量は、所望の生物学的効果を得るために適切な任意の間隔、例えば、1日および1年の間、または1日および1ヶ月の間、または1日および1週間の間に分割できる。
【0499】
いくつかの実施形態では、ナノキャリアの第1の用量は、その用量を受ける被験体においてT細胞増殖を引き出す。いくつかの実施形態では、患者へのナノキャリアの第1の用量の投与後に、その被験体におけるT細胞の血清濃度は、200ng/mlを超えるまたは250ng/mlを超えるまたは300ng/mlを超えるまたは400ng/mlを超えるまたは500ng/mlを超える。いくつかの実施形態では、被験体におけるT細胞のそのような血清濃度は、ナノキャリアの継続用量(subsequent dose)の投与後に達成されるおよび/または維持される。
【0500】
併用療法
本発明のワクチンナノキャリアおよび薬学的組成物は、併用療法に用いることができることが理解される。併用レジメンに用いられる療法(治療または手順)の特定の併用は、所望の治療および/または手順と達成されるべき所望の治療効果との適合性が考慮に入れられると思われる。用いられる療法は、同じ目的に対して所望の効果を達成し得る(例えば、特定のタイプの微生物感染に対するワクチン接種に有用な本発明のワクチンナノキャリアは、同じ微生物感染の治療に有用な別の薬剤と同時に投与され得る)こと、またはそれらは、異なる効果(例えば、ワクチンナノキャリアが原因の任意の有害作用の管理)を達成し得ることが理解されるだろう。
【0501】
いくつかの実施形態において、本発明の薬学的組成物は、単独で投与されてもよいし、1つまたは複数の他の治療薬と併用して投与されてもよい。「〜と併用して」とは、薬剤が、同時に投与されなければならない、および/または一緒に送達されるために製剤化されていなければならないことを意味することを意図しないが、これらの送達方法は、本発明の範囲内である。組成物は、1つまたは複数の他の所望の治療または医学的手順と同時に、その前に、またはその後に、投与され得る。一般的に、各薬剤は、その薬剤に対して決定された用量および/または時間スケジュールで投与される。さらに、本発明は、本発明の薬学的組成物のバイオアベイラビリティを改善し、それらの代謝を低下および/または改良し、それらの排出を阻害し、および/またはそれらの体内分布を改良できる薬剤と併用した、本発明の薬学的組成物の送達を包含する。
【0502】
併用レジメンにおいて用いられる療法(治療および/または手順)の特定の併用は、所望の療法および/もしくは手順ならびに/または達成されるべき所望の治療効果の適合性が考慮に入れられると思われる。用いられる療法は、同じ障害に対して所望の効果を達成し得る(例えば、本発明のワクチンナノキャリアは、同じ障害を治療するために使用される別の治療薬と同時に投与され得る)こと、および/またはそれらは、異なる効果(例えば、ワクチンナノキャリアが原因の任意の有害作用の管理)を達成し得ることが理解されるだろう。いくつかの実施形態において、本発明のワクチンナノキャリアは、米国食品医薬品局によって承認されている第2の治療薬とともに投与される。
【0503】
併用に利用される治療的に活性な薬剤は、単一の組成物で一緒に投与されてもよいし、異なる組成物として個別に投与されてもよいことがさらに理解される。
【0504】
一般的に、併用して利用される薬剤は、個別で利用されるレベルを超えないレベルで利用されることが求められる。いくつかの実施形態において、併用して利用されるレベルは、個別で利用されるレベルよりも低い。
【0505】
いくつかの実施形態において、本発明のワクチンナノキャリアは、例えば、治療薬、診断薬および/または予防薬を含む薬剤と併用して投与され得る。本発明に従って送達される例示的薬剤は、限定するものではないが、小分子、有機金属化合物、核酸、タンパク質(多量体タンパク質、タンパク質複合体などを含む)、ペプチド、脂質、炭水化物、ホルモン、金属、放射性の元素および化合物、薬物、ワクチン、免疫学的作用物質など、および/またはそれらの組み合わせを含む。
【0506】
ある実施形態において、特定の微生物感染の発症および/または進行を遅延させるワクチンナノキャリアは、微生物感染の症状を治療する、1つまたは複数のさらなる治療薬と併用して投与され得る。一例にすぎないが、狂犬病ウイルスに曝露された際、狂犬病ウイルスに対するワクチン接種に有用な免疫調節作用物質を含むナノキャリアが、狂犬病ウイルスの症状の治療に有用な1つまたは複数の治療薬(例えば、狂犬病ウイルス感染の症状を示すパラノイアの治療に有用な抗精神病薬)と併用して投与され得る。
【0507】
いくつかの実施形態において、本発明のワクチンナノキャリアを含む薬学的組成物は、50重量%未満、40重量%未満、30重量%未満、20重量%未満、15重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、1重量%未満または0.5重量%未満の送達されるべき薬剤を含む。
【0508】
本明細書に提供される薬学的組成物は、1つまたは複数のさらなる生物学的活性物質をさらに含み得る。一般的に、このような物質の非限定的例は、真核細胞および原核細胞、ウイルス、ベクター、タンパク質、ペプチド、核酸、多糖類および炭水化物、脂質、糖タンパク質ならびに動物に投与された際に生物学的効果を発揮する合成の有機および無機薬剤を含む。このような生物学的活性物質の併用もまた、本発明の範囲内である。容易に参照できるように、また特に示していない限り、「活性物質」という用語は、検出可能な化合物、例えば、大気、バリウム、磁性化合物などを含む放射線不透過性化合物を含むようにも使用される。さらなる活性物質は、水に可溶性または非可用性であってよい。生物学的活性物質のさらなる例は、抗新脈管形成因子、抗体、抗菌剤、抗マラリア剤、抗アメーバ剤、抗原虫剤(antiprotazoal)、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗悪性腫瘍化合物、成長因子ホルモン、酵素、免疫活性剤およびステロイドまたは抗生物質などの薬剤を含む。これらのおよび他のクラスの生物学的活性物質の非限定例が以下に記載され、標的細胞または標的組織への送達目的のためのナノ粒子送達系内にカプセル化され得る
いくつかの実施形態において、ワクチンナノキャリアは、薬学的活性を有する1つまたは複数の小分子および/または有機化合物と併用して投与される。いくつかの実施形態において、薬剤は、臨床上使用される薬物である。いくつかの実施形態において、薬物は、抗癌剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗HIV剤、寄生虫駆除剤、抗原虫剤、麻酔薬、抗凝固薬、酵素の阻害剤、ステロイド剤、ステロイド性または非ステロイド性の抗炎症剤、抗ヒスタミン、免疫抑制作用物質、抗新生物剤、抗原、ワクチン、抗体、うっ血除去薬、鎮静剤、オピオイド、鎮痛薬、解熱薬、避妊薬、ホルモン、プロスタグランジン、プロゲステロン剤、抗緑内障剤、眼科剤、抗コリン薬、鎮痛薬、抗うつ薬、抗精神病薬、神経毒、催眠薬、精神安定剤、抗痙攣薬、筋弛緩剤、抗パーキンソン病剤、鎮痙薬、筋収縮剤、チャネル遮断薬、縮瞳剤、抗分泌剤、抗血栓剤、抗凝固剤、抗コリン薬、β−アドレナリン遮断剤、利尿薬、心臓血管活性剤、血管作用剤、血管拡張剤、抗高血圧剤、血管形成剤、細胞−細胞外マトリックス相互作用の調節因子(例えば、細胞成長阻害剤および抗接着分子)、DNA合成、RNA合成またはタンパク質合成の阻害剤などである。
【0509】
ある実施形態において、小分子剤は、任意の薬物であり得る。いくつかの実施形態において、薬物は、適切な行政機関または規制機関によって、ヒトまたは動物における使用に対して安全であり、有効であるとすでにみなされているものである。例えば、ヒトにおける使用に対して承認された薬物は、参照により本明細書に組み込まれる21C.F.R.§§330.5、331〜361および440〜460のもとに、FDAによって列挙されており;動物用で使用するための薬物は、参照により本明細書に組み込まれる21C.F.R.§§500〜589のもとにFDAによって列挙されている。列挙されたすべての薬物が、本発明に従う使用について許容されるとみなされる。
【0510】
本発明における使用に適したクラスおよび特定の薬物のより完全な列挙は、Axel KleemannおよびJurgen EngelによるPharmaceutical Drugs:Syntheses,Patents,Applications,Thieme Medical Publishing、1999年、GoodmanおよびGilman、The Pharmacological Basis of Therapeutics、第9版McGraw−Hill 1996年およびBudavariら編、Merck Index:An Encyclopedia of Chemicals, Drugs and Biologicals, CRC Press、1996年に見出だすことができる。これらのテキストの関連部分は、参照により本発明に組み込まれる。
【0511】
いくつかの実施形態において、ワクチンナノキャリアは、1つまたは複数の核酸(例えば、機能性RNA、機能性DNAなど)と併用して、特定の位置、例えば、組織、細胞または細胞下の場所に投与される。例えば、特定の微生物感染の発症および/または進行を遅延させるために使用される本発明のワクチンナノキャリアは、微生物タンパク質の発現を低下させるRNAi剤と併用して投与され得る。核酸の分子特性は、上記の「核酸ターゲティング成分」と題される項に記載されている。
【0512】
いくつかの実施形態において、ワクチンナノキャリアは、1つまたは複数のタンパク質またはペプチドと併用して投与される。いくつかの実施形態において、送達される薬剤は、ペプチド、ホルモン、エリスロポイエチン、インスリン、サイトカイン、ワクチン接種用の抗原などであり得る。いくつかの実施形態において、送達される薬剤は、抗体および/またはその特徴的な一部であり得る。それらの分子特性は、上記の「タンパク質ターゲティング成分」と題される項に記載されている。
【0513】
いくつかの実施形態において、ワクチンナノキャリアは、1つまたは複数の炭水化物、例えば、タンパク質(例えば、糖タンパク質、プロテオグリカン(proteogycan)など)と結合している炭水化物と併用して投与される。炭水化物は、天然のものであってもよいし、合成のものであってもよい。炭水化物は、誘導体化された天然の炭水化物であってもよい。ある実施形態において、炭水化物は、単糖であってもよいし、複合糖であってもよい。ある実施形態において、炭水化物は、限定するものではないが、グルコース、フルクトース、ガラクトースおよびリボースを含む単糖類である。ある実施形態において、炭水化物は、限定するものではないが、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロースおよびセロビオースを含む二糖類である。ある実施形態において、炭水化物は、限定するものではないが、セルロース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、デキストロース、デキストラン、グリコーゲン、キサンタンガム、ジェランガム、デンプンおよびプルランを含む多糖類である。ある実施形態において、炭水化物は、限定するものではないが、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール(malitol)およびラクチトールを含む糖アルコールである。炭水化物の分子特性は、上記の「炭水化物を含むワクチンナノキャリア」と題される項に記載されている。
【0514】
いくつかの実施形態において、ワクチンナノキャリアは、1つまたは複数の脂質、例えば、タンパク質と結合している脂質(例えば、リポタンパク質)と併用して投与される。本発明に従って使用され得る例示的脂質は、限定するものではないが、油、脂肪酸、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、必須脂肪酸、シス脂肪酸、トランス脂肪酸、グリセリド、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、ホルモン、ステロイド(例えば、コレステロール、胆汁酸)、ビタミン(例えば、ビタミンE)、リン脂質、スフィンゴ脂質およびリポタンパク質を含む。脂質の分子特性は、上記の「脂質ワクチンナノキャリア」と題される項に記載されている。
【0515】
治療薬のさらなる例は、以下を含む:
抗新生物化合物。例としては、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾトシン)、メチルヒドラジン(例えば、プロカルバジン、ダルカルバジン)が挙げられる。
【0516】
ステロイドホルモン。例としては、グルココルチコイド、エストロゲン、プロゲスチン、アンドロゲン、テトラヒドロデオキシコルチコステロン(tetrahydrodesoxycaricosterone)、サイトカインおよび成長因子、アスパラギナーゼが挙げられる。
【0517】
免疫活性化合物。例としては、免疫抑制作用物質(例えば、ピリメタミン、トリメトプリム(trimethopterin)、ペニシラミン、シクロスポリン、アザチオプリン)および免疫刺激作用物質(例えば、レバミゾール、ジエチルジチオカルバメート、エンケファリン、エンドルフィン)が挙げられる。
【0518】
抗菌化合物。例としては、抗生物質、例えば、β−ラクタム、ペニシリン、セファロスポリン、カルバペネム(carbapenims)およびモノバクタム、β−ラクタマーゼ阻害剤、アミノグリコシド、マクロライド、テトラサイクリンおよびスペクチノマイシンが挙げられる。
【0519】
抗マラリア剤、抗アメーバ剤、抗原虫剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤。例としては、アンホテリシンβ、アシクロビル、イドクスウリジン、リバビリン、トリフルリジン、ビダラビン、ガンシクロビルが挙げられる。さらなる抗ウイルス剤は、逆転写阻害剤およびヌクレオシド類似体、例えば、ddl、ddC、3TC、ddA、AZT;プロテアーゼ阻害剤、例えば、インビラーゼ、ABT−538;RNAプロセシングの阻害剤、例えば、リバビリンが挙げられる。
【0520】
寄生虫駆除剤、寄生虫様駆除剤、放射性医薬品、胃腸薬、血液学的化合物および免疫グロブリン。血液凝固タンパク質、例えば、抗血友病因子および第IX因子複合体。抗凝血剤、例えば、ジクロマロールおよびヘパリンNa。フィブロリシン(Fibrolysin)阻害剤、例えば、トラネキサム酸。
【0521】
心臓血管薬および末梢抗アドレナリン作用性薬剤。中枢作用抗高血圧剤、例えば、メチルドパ、メチルドパHCl;抗高血圧性直接血管拡張薬、例えば、ジアゾキシド、ヒドララジンHCl。レニン−アンギオテンシン系に影響を及ぼす薬剤。末梢血管拡張剤、例えば、フェントラミン。抗狭心症剤および強心配糖体類。強心性血管拡張剤、例えば、アムリノン、ミルリノン、エノキシモン、フェノキシモン、イマゾダンおよびスルマゾール。抗律動異常剤(antidysrhythmics);カルシウム流入遮断剤および血液脂質に影響を及ぼす薬剤、例えば、ラニチジン、ボセンタン、レズリン。
【0522】
呼吸器疾患治療薬。交感神経模倣薬(Sypathomimetic drugs)、アルブテロール、ビトルテロールメシラート、ドブタミンHCl、ドーパミンHCl、エフェドリンSo、エピネフリン、フェンフルラミンHCl、イソプロテレノールHCl、メトキサミンHCl、酒石酸水素ノルエピネフリン、フェニレフリンHCl、リトドリンHCl。
【0523】
コリン模倣薬、例えば、アセチルコリンCl。抗コリンエステラーゼ、例えば、エドロホニウムCl。コリンエステラーゼ再活性化剤。アドレナリン遮断薬、例えば、アセブトロールHCl、アテノロール、エスモロールHCl、ラベタロールHCl、メトプロロール、ナドロール、フェントラミンメシレートおよびプロプラノロール(propanolol)HCl。抗ムスカリン様作用薬、例えば、臭化メチルアニソトロピン、アトロピンS04、クリジニウム(clinidium)Br、グリコピロレート、イプラトロピウムBrおよびスコポラミンHBr。
【0524】
神経伝達物質および神経伝達作用薬、例えば、アセチルコリン、アデノシン、アデノシン三リン酸。アミノ酸神経伝達物質、例えば興奮性アミノ酸、GABA、グリシン。生体アミン神経伝達物質、例えば、ドーパミン、エピネフリン、ヒスタミン、ノルエピネフリン、オクトパミン、セロトニン、チラミン。神経ペプチド、一酸化窒素、K+チャネル毒素。抗パーキンソン薬。例としては、アマンタジン(amaltidine)HCl、メタンスルホン酸ベンズトロピン、例えばカルビドパが挙げられる。
【0525】
ホルモン。下垂体ホルモン、例えば、絨毛性ゴナドトロピン、コシントロピン、メノトロピン、ソマトトロピン、コルチコトロピン(iorticotropin)、プロチレリン、甲状腺刺激ホルモン、バソプレシンおよびリプレシン。副腎ホルモン、例えば、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾンおよびトリアムシノロン。膵臓ホルモン、例えば、グルカゴンおよびインスリン。副甲状腺ホルモン、例えば、ジヒドロキステロール(dihydrochysterol)。甲状腺ホルモン、例えば、カルシトニンエチドロン酸二ナトリウム、レボチロキシンNa、リオチロニンNa、リオトリックス、チログロブリン、酢酸テリパラチド。抗甲状腺薬。エストロゲンホルモン。プロゲスチンおよびアンタゴニストならびにホルモン性避妊剤。精巣ホルモン。胃腸ホルモン、例えば、コレシストキニン、エンテログリカン、ガラニン、胃阻害性ポリペプチド、上皮増殖因子−ウロガストロン、胃阻害性ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、ガストリン、ペンタガストリン、テトラガストリン、モチリン、ペプチドYY、セクレチン、血管作用性腸ペプチド、シンカリド。
【0526】
酵素。例としては、ヒアルロニダーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、ウロキナーゼ、PGEアデノシンデアミナーゼが挙げられる。
【0527】
ペプチドおよびタンパク質。ナノ粒子バイオコンジュゲート系は、ペプチド/タンパク質をカプセル化でき、および/またはペプチド/タンパク質を用いて表面を活性化させることができる。ペプチドおよびタンパク質の例は、アンキリン、アレスチン、細菌膜タンパク質、クラスリン、コネキシン、オボアルブミン、カプシドまたはエンベロープ様HAまたはVSVG由来のウイルス性タンパク質、ジストロフィン、エンドセリン受容体、スペクトリン、セレクチン、サイトカイン。ケモカイン。成長因子、インスリン、エリスロポエチン(EPO)、腫瘍壊死因子(TNF)、神経ペプチド、神経ペプチドY、ニューロテンシン、形質転換成長因子−α、形質転換成長因子−β、インターフェロン(IFN)、およびホルモン、増殖阻害剤、例えば、ゲニステイン、ステロイドなど;糖タンパク質、例えば、ABC輸送体、血小板糖タンパク質、GPIb−IX複合体、GPIIb−IIIa複合体、ビトロネクチン、トロンボモジュリン、CD4、CD55、CD58、CD59、CD44、リンパ球機能関連抗原、細胞間接着分子、血管細胞接着分子、Thy−1、対向輸送体、CA−15−3抗原、フィブロネクチン、ラミニン、ミエリン関連糖タンパク質、GAP、GAP−43を含む。
【0528】
サイトカインおよびサイトカイン受容体。本発明のナノ粒子キャリアを介して送達され得るサイトカインおよびそれらの受容体の例は、限定するものではないが、:インターロイキン−1(Interleulun−1)(IL−1)、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−1受容体、IL−2受容体、IL−3受容体、IL−4受容体、IL−5受容体、IL−6受容体、IL−7受容体、IL−8受容体、IL−9受容体、IL−10受容体、IL−11受容体、IL−12受容体、IL−13受容体、IL−14受容体、IL−15受容体、IL−16受容体、IL−17受容体、IL−18受容体、リンホカイン阻害因子、マクロファージコロニー刺激因子、血小板由来成長因子、幹細胞因子、腫瘍成長因子β、腫瘍壊死因子、リンホトキシン、Fas、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγが挙げられる。
【0529】
成長因子、タンパク質ホルモンおよびそれらの受容体。例としては、エリスロポエチン、アンジオゲニン、肝細胞成長因子、線維芽細胞成長因子、ケラチノサイト成長因子、神経成長因子、腫瘍成長因子α、トロンボポエチン、甲状腺刺激因子、甲状腺放出ホルモン、ニューロトロフィン、上皮成長因子、VEGF、毛様体神経栄養因子、LDL、ソマトメジン、インスリン成長因子、インスリン様増殖因子IおよびIIが挙げられる。
【0530】
ケモカインおよびそれらの受容体。例としては、:ENA−78、ELC、GRO−α、GRO−β、GRO−γ、HRG、LIF、IP−10、MCP−1、MCP−2、MCP−3、MCP−4、MIP−1α、MIP−1β、MIG、MDC、NT−3、NT−4、SCF、LIF、レプチン、RANTES、リンホタクチン、エオタキシン−1、エオタキシン−2、TARC、TECK、WAP−1、WAP−2、GCP−1、GCP−2、α−ケモカイン受容体:CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CXCR7、β−ケモカイン受容体:CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7が挙げられる。
【0531】
抗体。本発明のナノ粒子キャリアを介するターゲティングリガンドとして使用できる抗体の例は、(a)抗分化抗原群CD−1からCD−166およびこれらの分子に対するリガンドまたは対抗受容体;(b)抗サイトカイン抗体、例えば、抗IL−1から抗IL−18およびこれらの分子に対する受容体;(c)抗免疫受容体抗体、T細胞受容体に対する抗体、主要組織適合性複合体IおよびII、B細胞受容体、セレクチンキラー抑制性受容体、キラー活性化受容体、OX−40、MadCAM−1、Gly−CAMl、インテグリン、カドヘリン(cadherens)、シアロアドヘリン、Fas、CTLA−4、Fcy−受容体、Fcα−受容体、Fcε受容体、Fcμ−受容体およびそれらのリガンド;(d)抗メタロプロテイナーゼ抗体、例えば、コラゲナーゼ、MMP−1からMMP−8、TIMP−1、TIMP−2;抗細胞溶解炎症促進性分子、例えば、パーフォリン、補体成分、プロスタノイド、窒素酸化物(nitron oxide)、トロンボキサン;および(e)抗接着分子、例えば、がん胎児性(carcioembryonic)抗原、ラミン、フィブロネクチンを含む。
【0532】
本発明のナノ粒子送達を介して送達され得る、公知の治療薬の具体的例は、限定するものではないが:(a)カポテン(Capoten)、モノプリル(Monopril)、プラバコール(Pravachol)、アバプロ(Avapro)、プラビックス(Plavix)、セフジル(Cefzil)、デュリセフ(Duricef)/ウルトラセフ(Ultracef)、アザクタム(Azactam)、ヴァイデックス(Videx)、ゼリット(Zerit)、マキシピーム(Maxipime)、ベプシド(VePesid)、パラプラチン(Paraplatin)、プラチノール(Platinol)、タキソール(Taxol)、UFT、バスパー(Buspar)、セルゾン(Serzone)、スタドールNS(Stadol NS)、エストレース(Estrace)、グルコファージ(Glucophage)(Bristol−Myers Squibb);(b)セクロール(Ceclor)、ロラビド(Lorabid)、ジナバク(Dynabac)、プロザック(Prozac)、ダルボン(Darvon)、ペルマックス(Permax)、ジプレキサ(Zyprexa)、ヒューマログ(Humalog)、アキシッド(Axid)、ジェムザール(Gemzar)、エビスタ(Evista)(Eli Lily);(c)バソテック(Vasotec) ナセレティック(Naseretic)、メバコール(Mevacor)、ゾコール(Zocor)、プリニビル(Prinivil)/プリニジデ(Prinizide)、プレンジル(Plendil)、コザール(Cozaar)Iハイザール(Hyzaar)、ペプシド(Pepcid)、プリロセック(Prilosec)、プリマキシン(Primaxin)、ノロキシン(Noroxin)、リコンビバックスHB(Recombivax HB)、バリバックス(Varivax)、チモプティク(Timoptic)IXE、トルソプト(Trusopt)、プロスカー(Proscar)、フォサマックス(Fosamax)、シネメット(Sinemet)、クリキシバン(Crixivan)、プロペシア(Propecia)、ビオックス(Vioxx)、シングレア(Singulair)、マクサルト(Maxalt)、イベルメクチン(Ivermectin)(Merck&Co.);(d)ダイフルカン(Diflucan)、ユナシン(Unasyn)、スルペラゾン(Sulperazon)、ジスロマック(Zithromax)、トロバン(Trovan)、プロカジアXL(Procardia XL)、カルデュラ(Cardura)、ノルバスク(Norvasc)、ドフェチリド(Dofetilide)、フェルデン(Feldene)、ゾロフト(Zoloft)、ゼルドックス(Zeldox)、グルコトロールXL(Glucotrol XL)、ジルテック(Zyrtec)、エレトリプタン(Eletriptan)、バイアグラ(Viagra)、ドロロキシフェン(Droloxifene)、アリセプト(Aricept)、リピトール(Lipitor)(Pfizer);(e)バンチン(Vantin)、レスクリプター(Rescriptor)、ビスタイド(Vistide)、ジェノトロピン(Genotropin)、ミクロナーゼ(Micronase)/グリン.(Glyn.)/グリブ.(Glyb.)、フラグルニン(Fragrnin)、トータルメドロール(Total Medrol)、ゼイナックスラルフラゾラム(Xanaxlalprazolam)、サーミオン(Sermion)、ハルシオンルトリアゾラム(Halcionltriazolam)、フリードックス(Freedox)、ドスティネックス(Dostinex)、エドロナックス(Edronax)、ミラペックス(Mirapex)、ファルモルビシン(Pharmorubicin)、アドリアマイシン(Adriamycin)、カルンプトサー(Carnptosar)、レミサール(Remisar)、デポ・プロベラ(Depo−Provera)、カバージェクト(Caverject)、デトルシトール(Detrusitol)、エストリング(Estring)、ヒアロン(Healon)、キサラタン(Xalatan)、ロゲイン(Rogaine)(Phannacia & Upjohn);(f)ロピッド(Lopid)、アククルピル(Accrupil)、ディランティン(Dilantin)、コグネックス(Cognex)、ニューロンティン(Neurontin)、ロエストリン(Loestrin)、ディルゼム(Dilzem)、フェムパッチ(Fempatch)、エストロ工程(Estrostep)、リズリン(Rezulin)、リピトール(Lipitor)、オムニセフ(Omnicef)、フェムハート(FemHRT)、スラミン(Suramin)およびクリナフロキサシン(Clinafloxacin)(Warner Lambert)を含む。
【0533】
当業者は、これは例示であり、包括的なものではなく、本発明のワクチンナノキャリアと併用して送達され得る治療薬、診断薬および/または予防薬のリストであることを認識する。任意の治療薬、診断薬および/または予防薬を、本発明に従ったワクチンナノキャリアと一緒に投与可能である。
【0534】
キット
本発明は、1つまたは複数の本発明のナノキャリアを含む様々なキットを提供する。例えば、本発明は、本発明のワクチンナノキャリアおよび使用のための指示書を含むキットを提供する。キットは、複数の異なるワクチンナノキャリアを含み得る。キットは、任意の多数のさらなる成分または試薬を任意の組み合わせで含み得る。様々な組み合わせのすべてが、明確に示されるわけではないが、個々の組み合わせは、本発明の範囲内に含まれる。
【0535】
本発明のある実施形態に従って、キットは、例えば、(i)T細胞およびB細胞の応答の両方を刺激することができる少なくとも1つの免疫調節作用物質を含むワクチンナノキャリア;(ii)このワクチンナノキャリアを、それらを必要とする被験体に投与するための指示書を含み得る。
【0536】
ある実施形態において、キットは、例えば、(i)T細胞およびB細胞の応答の両方を刺激することができる少なくとも1つの免疫調節作用物質、少なくとも1つのターゲティング成分および/または少なくとも1つの免疫調節作用物質を含むワクチンナノキャリア;(ii)このワクチンナノキャリアを、それらを必要とする被験体に投与するための指示書を含み得る。
【0537】
ある実施形態において、キットは、例えば、(i)T細胞応答とB細胞応答との両方を刺激することができる少なくとも1つの免疫調節作用物質;(ii)少なくとも1つのターゲティング成分;(iii)少なくとも1つの免疫刺激作用物質;(iv)ポリマーマトリックス前駆体;(v)脂質および両親媒性物質;(vi)個別の成分(i)〜(v)から本発明のワクチンナノキャリアを組織化するための指示書を含み得る。
【0538】
いくつかの実施形態において、キットは、本発明のナノキャリアおよび混合するための指示書を含む。このようなキットは、いくつかの実施形態において、免疫刺激作用物質および/または免疫調節作用物質(例えば、B細胞抗原またはT細胞抗原)もまた含む。このようなキットのナノキャリアは、免疫調節作用物質(例えば、ユニバーサルT細胞抗原などのT細胞抗原)および/またはターゲティング成分を含み得る。T細胞抗原および/またはターゲティング成分は、ナノキャリアの表面に存在し得る。いくつかの実施形態において、免疫調節作用物質および抗原は、同じである。いくつかの実施形態において、それらは異なる。
【0539】
キットは、通常、本発明のワクチンナノキャリアを使用するための指示書を含む。指示書は、例えば、プロトコールを含み得、そして/またはワクチンナノキャリアの生成のための条件、ワクチンナノキャリアを必要とする被験体へのそれらの投与についての条件などを記載し得る。キットは、一般的に、1つまたは複数の器または容器を含み、個別の成分および試薬の一部またはすべてが個別に収納され得る。キットは、市販のための比較的厳重な梱包(close confinement)で個別の容器を封入するための手段、例えば、プラスチック箱を含み得、指示書、スタイロフォームなどの包装材料が同封され得る。識別子、例えば、バーコード、電磁波による個体識別(radio frequency identification)(ID)タグなどが、そのキット内もしくはキット上、またはそのキットに含まれる1つまたは複数の器もしくは容器の内部もしくはその上に存在し得る。識別子は、例えば、品質管理、在庫管理、追跡、ワークステーション間の移動などの目的のために独自にキットを識別するために使用され得る。
【実施例】
【0540】
(実施例1)
リンパ節内の被膜下洞マクロファージは、リンパによって運ばれたウイルスを除去し、それらを抗ウイルス性B細胞に提示する
材料および方法
方法の要約
VSV−INDおよびVSV−NJビリオンを、感染BSRT7細胞の培養上清から精製し、未改変またはAlexa−568(赤色)もしくはAlexa−488(緑色)で蛍光標識されたもののいずれかを使用した。組織の画像化に使用される蛍光性のウイルスをUV照射し、非蛍光の子孫の発生を防いだ。VSV−IND粒子の蛍光標識またはUV照射は、それらの抗原性またはVI10YEN細胞内へのカルシウム流入を引き出す能力に影響を及ぼさなかった(非掲載)。足蹠に蛍光性ウイルスを注射後、電子顕微鏡による分析のために、または免疫染色用および共焦点顕微鏡観察用の凍結切片を作製するために、膝窩流入領域LNを回収した。LNにおける養子移入B細胞を画像化するために、VI10YENおよび野生型B細胞を蛍光標識し、野生型または変異体のレシピエントマウスにi.v.注射によって同時移入した。18時間後、B細胞がB細胞濾胞にホーミングしたとき、標識VSVまたは非標識VSVをマウスの右足蹠に注射した。その後、様々な時間間隔で、膝窩流入領域LNを、MP−IVMによって観察し、または共焦点顕微鏡もしくはフローサイトメトリーのために回収することにより、ウイルス特異的B細胞および対照B細胞の活性化状態を分析した。いくつかの実験において、膝窩LN中のマクロファージをCLLのsc注射によって枯渇させ、7〜10日後に実験のために動物を使用した。様々なマーカーに対して、MP−IVM、電子顕微鏡、免疫組織化学およびフローサイトメトリーを、CLL前処置有りおよび無しで、LNにおいて実施した。規定量の生VSVを足蹠に注射した後、VSV注射の2時間後または6時間後に組織を回収することによって、足蹠注射部位から血液および他の器官へのVSVの伝播を評価した。ウイルス力価を測定するために、組織をホモジナイズし、プラークアッセイに使用した。胸管のカニューレ挿入後に、いくつかのウイルス伝播実験を行った。
【0541】
マウスおよび抗体
C57BL/6およびBALB/cマウスは、Taconic Farms(Germantown、NY)から購入した。VI10YENマウス(Hangartnerら、2003年、Proc. Natl. Acad. Sci., USA、100巻:12883頁;参照により本明細書に組み込まれる)、C3
−/−マウス(Wesselsら、1995年、Proc. Natl. Acad. Sci., USA、92巻:11490頁;参照により本明細書に組み込まれる)、MHCII−EGFPマウス(Boesら、2002年、Nature、418巻:983頁;参照により本明細書に組み込まれる)、Act−EGFPマウス(Wrightら、2001年、Blood、97巻:2278頁)およびDH−LMP2Aマウス(Casolaら、2004年、Nat. Immunol.、5巻:317頁;参照により本明細書に組み込まれる)をHarvard Medical SchoolおよびImmune Disease Institute(IDI)におけるバリアを設けた動物施設内で飼育した。650radの2線量でAct(EGFP)マウスを放射線照射し、C57BL/6骨髄を用いて再構成することによって、放射線照射キメラを作出し、そのキメラは、使用前の8週間に再構成された。いくつかの実験において、実験の7〜10日前に30μlのクロドロネートリポソーム(CLL)を足蹠注射することによって、SCSマクロファージを枯渇させた。
【0542】
クロドロネートは、Roche Diagnostics GmbH,Mannheim,Germanyからの寄贈品であった。リポソームを調製するための他の試薬は:ホスファチジルコリン(LIPOID E PC、Lipoid GmbH、Ludwigshafen、Germany)およびコレステロール(Sigma−Aldrich)であった。
【0543】
米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)のガイドラインに従って、特定病原体未感染かつ抗ウイルス抗体を含まない状態でマウスを収容した。すべての実験動物の手順は、Institutional Animal Committees of Harvard Medical SchoolおよびIDIによって承認されたものだった。
【0544】
抗B220−Alexa647(Invitrogen−Caltag)、抗LYVE−1(Millipore−Upstate)、ヤギ−抗ウサギ−APC(Invitrogen)、ヤギ−抗GFP−FITC(Rockland)、抗FITC−Alexa488(Invitrogen)およびFab抗IgM−FITC(Jackson Immunoresearch)を除いて、抗体は、BD Biosciences(San Jose、CA)から購入した。以下の抗体:抗CD68−Alexa647、抗CD11b−Alexa647、F4/80−Alexa647、抗CD169−FITC(3D6)は、AbD−Serotecから購入した。VI10YENマウスにおけるVI10BCRの検出用抗イディオタイプ抗体35.61(Hangartnerら、2003年、Proc. Natl. Acad. Sci., USA、100巻:12883頁;参照により本明細書に組み込まれる)は、標準的な方法に従ってハイブリドーマ上清から作製された。
【0545】
フローサイトメトリー
マウスの後眼窩より瀉血を行い、そしてACK緩衝液(0.15MのNH
4Cl、1mMのKHCO
3、0.1mMのEDTA(二ナトリウム塩),pH7.2)を用いて赤血球を溶解した後に、血液試料のフローサイトメトリー分析を行った。組織を慎重に細かく切り、続いて、250μg/mlのリベラーゼCI(Roche)+50μg/mlのDNase−I(Roche)の存在下、DMEM(Invitrogen−Gibco)中において37℃にて40分間消化することによって、フローサイトメトリー用のLNおよび脾臓の単一細胞縣濁液を作製した。20分の消化後、試料を18G針に勢いよく通過させることにより、器官の完全な分離を確実にした。すべてのフローサイトメトリー解析を、2mM EDTAおよび2%FBS(Invitrogen−GIBCO)を含むPBS含有FACS緩衝液中で、FACScalibur(BD Pharmingen)において実施し、FlowJoソフトウェア(Treestar Inc.、Ashland、OR)によって分析した。カルシウム流動(flux)について、細胞を、10%FCSを含有するDMEM中の4μM Fluo−LOJO(Teflabs)を用いて37℃において90分間標識した。FCSを通して細胞を遠心し、迅速に使用した。
【0546】
ウイルスおよびVSVプラークアッセイ
VSV血清型Indiana(VSV−IND、Mudd−Summers由来のクローン、in vitroにおいてレスキュー(Whelanら、1995年、Proc. Natl. Acad. Sci., USA、92巻:8388頁;参照により本明細書に組み込まれる)プラーク精製)またはNew Jersey(VSV−NJ、Pringle Isolate、プラーク精製)を、BSRT7細胞に対して0.01のMOIで伝播させた。2000×gにおいて遠心分離し、0.45μm滅菌フィルターで濾過し、40,000×g、90分間の超遠心分離に供することによって、感染細胞の上清を細胞残屑から除去した。ペレットをPBSに再懸濁し、NTE(0.5mMのNaCl、10mMのTris−HCl pH7.5、5mMのEDTA pH8)中10%スクロースのクッションを介する超遠心分離(157,000×g、60分間)によって精製した。一晩PBSに再懸濁した後、ウイルスタンパク質をBCAアッセイ(Pierce)によって定量化し、感染性をプラークアッセイによって定量化した。数バッチ分をAlexaFluor−488またはAlexaFluor−568(Invitrogen−Molecular Probes)のカルボン酸スクシンイミジルエステルで、ウイルス粒子より104〜105倍モル濃度過剰のAlexa色素で標識した。コンジュゲートされていない色素を、NTE中10%のスクロースを介する超遠心分離により除去し、ペレットをPBSに再懸濁し、凍結保存した。VSV調製品の感染性を、ミドリザル腎臓細胞(Vero)におけるプラークアッセイによって定量化した。感染マウスの器官由来のVSV力価は、Potter−Elvejhemホモジナイザーを用いて器官を均質化した後に、同様に決定した。必要に応じて、ウイルスの調製中に、157,000×gの超遠心分離からのおよそ4mlの上清を回収し、10,000MWCO Amicon Ultra(Millipore)を用いて濃縮した。濃縮された上清中の残留感染性を説明するために、VSVのストックを、濃縮された上清のレベルと等しい感染性レベルに希釈し、VI10YEN B細胞におけるカルシウム流動をさらに100倍希釈のVSVおよび上清と比較した。UV不活化AlexaFluor−568標識アデノウイルス5(AdV5)を、標準的な手順(Leopoldら、1998年、Human Gene Therapy、9巻:367頁;参照により本明細書に組み込まれる)に従って作製した。すべての感染性の作業は、施設のガイドラインに従って設計され、Harvard Committee on Microbiological Safetyによって承認されたBL2+作業空間において実施された。
【0547】
VSV中和アッセイ
免疫マウスの血清を、2%FCSを含有するMEMで40倍に前希釈した。2倍段階希釈物を等体積のVSV(500pfu/ml)と混合し、5%CO
2中、37℃にて90分間インキュベートした。100μlの血清−ウイルス混合物を96ウェルプレート内のVero細胞単層上に移し、37℃において1時間インキュベートした。この単層を、1%メチルセルロースを含有する100μlのDMEMで覆い、37℃において24時間インキュベートした。続いて、覆いを廃棄し、単層を固定し、0.5%クリスタルバイオレットを用いて染色した。プラーク数を50%減少させた最も高い血清の希釈度を力価とした。IgG力価を決定するために、無希釈の血清を、食塩水中の等体積の0.1mMのβ−メルカプトエタノールで前処理した。
【0548】
接着アッセイ
96ウェルプレート(Corning)を、PBS中の、組換えマウスVCAM−1−FcもしくはICAM−1−Fc(R&D systems)または精製されたVSV−INDの希釈物を用いて、3連に一晩コーティングした。陰性対照のウェルは、4%BSAを用いてコーティングし、陽性対照のウェルは、1mg/mlポリ−L−リシンを用いてコーティングした。プレートを、Hanks平衡塩類溶液(HBSS)/1%BSAを用いて4℃において1〜2時間ブロッキングし、洗浄した。VI10YENまたはC57BL/6マウス由来のナイーブB細胞を、CD43磁気ビーズ(Miltenyi,Bergisch Gladbach,Germany)を使用する磁気細胞分離によってネガティブセレクションし、UV不活化VSV−IND(MOI1000)の存在下または不在下で、1%BSA、1mM Ca
2+および1mM Mg
2+を含むHBSS中の3×10
5/ウェルで37℃にて30分間、プレートに加えた。穏やかに洗浄した後(1%BSAを含むHBSS中で3回)、PBS/10%グルタルアルデヒドを用いてプレートを10分間固定し、0.5%クリスタルバイオレット/20%メタノールを用いて45分間染色し、水中で洗浄した。1%SDSを加えることによって色素を溶出し、30分後に570nmにおける吸光度を分光光度的に測定した(SpectraMax340PCマイクロプレートリーダーおよびSoftmaxPro3.1.2ソフトウェア,Molecular Devices Corporation)。
【0549】
共焦点顕微鏡観察
いくつかの分析のために、AlexaFluor−568またはAlexaFluor−488で標識された20μgのVSV−INDまたはVSV−NJを、C57BL/6マウスの両後足蹠に30分間注射した。他の実験のために、VI10YEN×MHCII−EGFPマウス由来のネガティブセレクションされた1×10
7個のナイーブB細胞を、実験の1日前にマウスに輸注した。所定の時点において、膝窩LNを、1%パラホルムアルデヒド/過ヨウ素酸塩(PLP)を含むリン酸塩緩衝化L−リシンの足蹠注射によってin situにおいて固定した。膝窩LNを取り出し、そして4℃のPLP中で3〜5時間インキュベートした後、膝窩LNを0.1M PBS,pH7.2中で洗浄し、そしてPBS中10%、20%および30%のスクロース上昇系列によって凍結保護した。試料をTBS組織凍結液(Triangle Biomedical Sciences、Durham NC)中で急速冷凍し、そして−80℃において保存した。40μmの厚さの切片をSuperfrost Plusスライド(Fisherbrand)上に載せ、そして1μg/mlの抗体2.4G2(BD Pharmingen)を用いてFc受容体を遮断した後に、加湿チャンバー内において蛍光抗体で染色した。試料をFluorSave試薬溶液(EMD−Calbiochem)中に入れ、分析まで4℃において保存した。Olympus BX50WI顕微鏡および10×/0.4または60×/1.2Wの対物レンズを使用するBioRad共焦点顕微鏡系を用いて画像を集めた。LaserSharp2000ソフトウェア(BioRad Cell Science,Hemel Hempstead,Great Britain)およびPhotoshop CS(Adobe)を使用して、画像を分析した。B220対比染色によって表される、50μmのT/B境界内に存在する細胞を数えることによって、T/B境界に局在したB細胞の定量化を行い、より中心領域に局在する任意の細胞を濾胞性と考えた。
【0550】
電子顕微鏡観察
0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液,pH7.4中2%ホルムアルデヒドおよび2.5%グルタルアルデヒドの足蹠注射によって、膝窩LNをin situで固定した。LNを切除し、同じ緩衝液中に4℃において一晩浸漬し、カコジル酸塩緩衝液で洗浄し、暗所で室温において1時間、1%四酸化オスミウム/1.5%フェロシアン化カリウム(水溶液)を用いてオスミウム化した(osmicated)。水で洗浄した後、試料を0.05Mマレイン酸塩(malelate)緩衝液pH5.15中で3〜4回洗浄した。試料を、マレイン酸塩緩衝液中1%酢酸ウラニルで2時間対比染色し、水中で3回洗浄した。試料を、水でのエタノールの希釈物(70%−90%−100%)中で15分間インキュベートすることによって脱水し、酸化プロピレン中で1時間インキュベートし、酸化プロピレンと1:1混合されたEpon中にRTにおいて一晩移した。試料を、新たに混合されたEponで満たされた包埋型(embedding mold)に移し、重合のために60℃において24〜48時間加熱した。Harvard Medical School EM施設のTecnai G2 Spirit BioTWIN電子顕微鏡において試料を分析した。
【0551】
膝窩LNの生体多光子顕微鏡観察(MP−IVM)
CD43ビーズ(Miltenyi)を使用する磁気単離によって、ナイーブB細胞をネガティブセレクションした。VI10YEN B細胞を、37℃において20分間、10μMの5−(および6−)−(((4−クロロメチル)ベンゾイル)アミノ)テトラメチルローダミン(CMTMR;Invitrogen)で標識し、C57BL/6B細胞を、37℃において25分間、10μMの7−アミノ−4−クロロメチルクマリン(CMAC;Invitrogen)で標識した。いくつかの実験において、非特異的色素の作用を排除するために、野生型とVI10YEN B細胞との間で標識を交換した。分析の1日前に、各集団の5〜6×10
6個のB細胞を混合し、尾静脈注射によってC57BL/6レシピエントマウスに養子移入した。いくつかの実験において、SCSマクロファージを排除するために、その実験の7〜10日前にレシピエントC57BL/6マウスの後足蹠に30μlのCLLの注射を行った(Delemarreら、1990年、J. Leukoc. Biol、47巻:251頁;参照により本明細書に組み込まれる)。B細胞の養子移入の18時間後に、ケタミン(50mg/kg)およびキシラジン(10mg/kg)の腹腔内注射によってレシピエントマウスに麻酔をかけた。右の膝窩LNをMP−IVMのために顕微手術的に調製し、(Mempelら、2004年、Nature、427巻:154頁;参照により本明細書に組み込まれる)に報告されているような注文製の顕微鏡ステージ上に置いた。血管および輸入リンパ管を残すように注意を払った。露出させたLNをノーマルセーラインに浸し、そしてガラスのカバーガラスで覆った。LNの隣に熱電対を置くことにより、局所温度をモニターして、36〜38℃に維持した。調節可能なMaiTai Ti:サファイアレーザー(Spectra−Physics)からの800nmの励起波長で、BioRad2100MPシステムにおいて、MP−IVMを行った。蛍光標識されたVSV(20μl中20μg)を、観察と同時にレシピエントマウスの右後足蹠に31G針を介して注射した。細胞遊走の4次元オフライン分析のために、20×/0.95水浸対物レンズ(Olympus)によって1.8×〜3×に電子ズームしながら、4μmのz間隔の、11個の光学的x−y断面の積み重ねを15秒ごとに取得した。非デスキャン型(non−descanned)検出器を用いて、400/40nm、450/80nm、525/50nmおよび630/120nmのバンドパスフィルターを介して放射蛍光および第二高調波シグナルを検出し、3色の画像を作成した。Volocityソフトウェア(Improvision)を使用して、一連の像の積み重ねを、ボリュームレンダリングされた(volume−rendered)4次元の微速度動画に変換した。Volocityを用いる半自動化の細胞追跡およびMatlab(Mathworks)によるコンピュータ分析によって、3D瞬間速度を決定した。盲検の観察者によって実施された手動による動画分析によって、SCSにおける細胞の蓄積を決定した。2分ごとに、VI10YEN B細胞およびポリクローナルB細胞を、SCSにおいて、表在濾胞(SCSから<50μmの距離)および深在濾胞(SCSから>50μmの距離)について数え、30分間の動画全体における各区画についてのVI10YEN/ポリクローナルB細胞の比を表した。
【0552】
胸管カニューレ挿入
胸管カニューレ挿入のために、カニューレ挿入の30分前に、マウスに200μlのオリーブ油をp.o.投与し、リンパ管の可視化を容易にした。次いで、動物をキシラジン(10mg/kg)およびケタミンHCl(50mg/kg)を用いて麻酔した。1U/mlのヘパリン(American Pharmaceutical partners、Los Angeles、CA)を含有する乳酸リンゲル液(Abbott Laboratories、North Chicago、IL)の持続注入(2ml/時間)のために、ポリエチレンカテーテル(PE−10)を右頚静脈に挿入した。解剖顕微鏡を使用して、左肋骨下切開を介してTDを露出させた。Silastic(登録商標)シリコンチューブ(0.012”I.D.、Dow Corning、Midland、USA)に、ヘパリン化された(50U/ml)リン酸塩緩衝化食塩水(DPBS、Mediatech、Herndon、VA)を流し、およそ0.3mm切開することによって乳糜槽に挿入し、イソブチルシアノアクリレートモノマー(Nexaband(登録商標)、Abbott Laboratories)で固定した。チューブの残りの部分を後腹壁から体外に出した。続いて、6−0非吸収性縫合糸(Sofsilk、Tyco Healthcare Group、Norwalk、CO)を使用して腹部切開を閉じた。リンパ流を30分間平衡させた後、動物の足蹠に108pfuのVSV−INDを注射し、リンパ試料を氷上に6時間回収した。胸管リンパの回収の6時間後にリンパおよび器官を採取し、上記のようにプラーク形成させた。リンパおよび器官を上記のようにプラーク形成させた。いくつかの実験において、膝窩および傍大動脈の流入領域リンパ節を外科的に切除し、周囲のリンパ管を焼灼し、血液にリンパによって運ばれたウイルスの接近を防いだ。
【0553】
結果および考察
リンパ節(LN)は、末梢の感染部位から身体の表面に進入するウイルスなどの病原体の全身性の播種を防ぐ。リンパ節は、病原体由来の抗原に対する獲得免疫応答の拠点でもある(von Andrian and Mempel、2003年、Nat. Rev. Immunol、3巻:867頁;およびKarrerら、1997年、J. Exp. Med、185巻:2157頁;これらは両方とも参照により本明細書に組み込まれる)。どのようにしてウイルス粒子が輸入リンパから除去されるのか、およびどのようにして同族のB細胞に提示され、抗体応答が誘導されるのかは不明である。ここで、本発明者らは、皮下(s.c.)注射後、数分以内にウイルス粒子を捕捉する、被膜下洞(SCS)の床上およびLNの髄質中のCD11b
+CD169
+MHCII
+マクロファージの集団を同定する。SCSマクロファージは、表面に結合したウイルス粒子を、SCS床の全体にわたって移行させ、それらを下部の濾胞内の遊走B細胞に提示した。これらのマクロファージの選択的枯渇は、局所ウイルス保持を損なわせ、宿主のウイルス血症を悪化させ、局所的なB細胞活性化を低下させた。これらの知見は、CD169
+マクロファージが、二重の生理学的機能を有することを示す。このマクロファージは、リンパによって運ばれた病原体が全身に広がるのを防ぐことによって、生得的な「ハエ捕り紙」として作用し、粒状抗原のB細胞認識を容易にし、体液性免疫応答を開始する、リンパ組織境界面における重要な門番として作用する。
【0554】
本発明者らは、末梢組織に進入するウイルス粒子が、どのようにして流入領域LN内で取り扱われるのかを調べた。マウスの後足蹠に、蛍光標識されUV不活化された、昆虫による咬傷によって伝播可能な水疱性口内炎ウイルス(VSV)(Meadら、2000年、Ann. N.Y. Acad. Sci.、916巻:437頁;参照により本明細書に組み込まれる)である細胞変性ラブドウイルスを注射し、T非依存性中和B細胞応答を引き出す(Bachmannら、1995年、Eur. J. Immunol.、25巻:3445頁;参照により本明細書に組み込まれる))。注射された足蹠に流入する膝窩LNにおいて多光子生体顕微鏡(MP−IVM)を使用して(Mempelら、2004年、Nature、427巻:154頁;参照により本明細書に組み込まれる)、本発明者らは、VSVが、sc注射後数分以内にSCS床上の個別の斑(patch)に蓄積したが、SCSの実質および蓋(roof)にはウイルスが存在しないままであったことを観察した(
図11A)。ウイルスの沈積物は、著しい不規則な網状パターンを形成しながら次第に濃くなり、それは、数時間にわたってその場に固定されたままだった。
【0555】
LN内のVSV結合についての偏向部位を特徴付けるために、本発明者らは、照射されたAct(EGFP)マウスを野生型骨髄で再構成した。得られたB6→Act(EGFP)キメラは、SCSの床上および蓋上の非造血細胞、潜在的にリンパ内皮細胞においてEGFPを発現した。蛍光VSVをC57BL/6→Act(EGFP)キメラに足蹠注射すると、ウイルス粒子はSCSに押し寄せた。3時間後、未結合の内腔VSVは消失したが、SCS床は、EGFP
+細胞と共局在しないVSVの顕著な斑を示したことから、VSVが、造血細胞によって捕捉されたことが示唆される(
図11B)。推定上のVSV捕捉白血球を特徴付けるために、本発明者らは、VSV注射の5分後に回収された膝窩LNの電子顕微鏡観察を行った(
図11C)。弾丸型の高電子密度VSV粒子は、SCS内またはSCS床のすぐ下に存在する、散らばった大きな細胞の表面の別個の領域に選択的に結合した。SCS床の下に位置するVSV結合細胞は、通常、SCS内腔に伸びる突起を介してリンパ区画と接触していた。
【0556】
LNの超微細構造的研究から、SCSが多くのマクロファージを含有することが示されている(Clark、1962年、Am. J. Anat.、110巻:217頁;およびFarrら、1980年、Am. J. Anat.、157巻:265頁;これらは両方とも参照により本明細書に組み込まれる)ので、本発明者らは、VSV保有細胞がこの集団に属するという仮説を立てた。実際に、足蹠注射の30分後に得られた凍結LN切片の共焦点顕微鏡観察から、VSVと、マクロファージマーカーであるCD169/シアロアドヘシンとが、SCS内に共局在したことが示された(
図11D)。フローサイトメトリーを用いて、本発明者らは、LN内のおよそ1%〜2%の単核細胞(MNC)上にCD169を検出し、それらは、CD11bとMHC−IIとを均等に同時発現していたことから、VSV結合細胞は、実際にマクロファージであることが示唆される(
図12)。大部分のCD169
+細胞は、CD68およびF4/80を含む他のマクロファージマーカーも発現したが、顆粒球/単球マーカーGr−1を発現していたのはわずかであった。CD169
+細胞は、CD11cも発現したが、CD11c
highの従来の樹状細胞(DC)よりも低いレベルで発現した。無傷なビリオンは、経皮的な沈着の後数分以内にリンパに進入し、流入領域LNの髄質内およびSCS内のマクロファージ上に迅速かつ選択的に蓄積する。
【0557】
ウイルス固定についての機序を探求するために、生のVSV(2×10
8pfuを含有する20μg)を後足蹠に注射し、そして2時間後に流入領域LNにおけるウイルス力価を評価した。補体C3欠損マウスの流入領域LNにおけるVSV保有について欠陥はなかった(
図11E)。分泌型免疫グロブリンを欠くDH−LMP2aマウスのウイルス力価は、脾臓において低かったが、膝窩LNでは低くなかった(
図11F)。したがって、LNにおけるVSV固定は、脾周辺帯マクロファージ(血液由来VSVを捕捉するためにC3および自然抗体を必要とする)によって使用される機序とは異なる機序を介して生じる(Ochsenbeinら、1999年、J. Exp. Med.,190巻:1165頁;およびOchsenbeinら、1999年、Science、286巻:2156頁;これらは両方とも参照により本明細書に組み込まれる)。潜在的に、VSV表面糖タンパク質(VSV−G)は、マクロファージによって発現される炭水化物結合スカベンジャー受容体によって、LNにおいて認識され得る(Taylorら、2005年、Ann. Rev. Immunol.、23巻:901頁;参照により本明細書に組み込まれる)が、正確な機序は、さらなる調査を必要とする。
【0558】
ウイルスの伝播に対するマクロファージによるウイルス捕捉および抗ウイルス免疫の結果は何だろうか。この疑問に立ち向かうために、本発明者らは、クロドロネートリポソーム(CLL;Delemarreら、1990年、J. Leukoc. Biol、47巻:251頁;参照により本明細書に組み込まれる)の足蹠注射によってLN常在性マクロファージを枯渇させた。使用した用量では、sc注射されたCLLは、膝窩、鼠径部および傍大動脈のLNを含む、注射部位に流入するLNにおいてマクロファージを選択的に排除した(Delemarreら、1990年、J. Leukoc. Biol、47巻:251頁;参照により本明細書に組み込まれる)が、遠位のLNおよび脾臓におけるマクロファージは、残ったままだった(
図13A、B)。様々なLN常在性CD11b
+MHCII
+食細胞のうち、CLLは、CD169
+サブセットを優先的に除去したのに対し、LYVE−1
+細胞および従来のDCは、変化しないままだった。CLL処置された膝窩LNは、処置の7日後に、B細胞の数を増加させ、そして濾胞を大きくさせたが、他の形態学的パラメータ、例えば、T/B境界の分界およびSCS超微細構造は、変化しないままだった(
図13C〜E)。
【0559】
本発明者らは、未処置LNと比べて、CLL処置マウスの流入領域LNからおよそ10倍低いウイルス力価を再確認し(
図11G)、このことは、マクロファージの枯渇が、リンパの濾過を非効率的にさせることが示唆する。実際に、VSV力価は、CLL処置マウスの血液、脾臓および非流入領域LNにおいて劇的に増加した。CLL処置マウスにおいてでさえも、胸管(TD)において閉塞カテーテルを有するマウスの足蹠にウイルスが注射されたとき、循環VSVは検出不可能だったので、注射部位から血液へのウイルスの伝播は、厳密にリンパドレナージに依存した。ウイルス力価は、未処置のマウスのTDリンパ液において低かったが検出可能であり、CLL処置動物では有意に増加した(
図11H)。このことは、末梢組織から早期にウイルスが伝播するための主要な導管が、リンパであり、これは、リンパによって運ばれたVSVが全身に広がるのを防ぐ、LN常在性でCLL感受性のマクロファージによってモニターされることを示唆している。
【0560】
この捕捉機序は、VSVに特有ではなかった;CD169
+SCSマクロファージは、アデノウイルス(AdV;
図14A〜C)およびワクシニアウイルス(VV、
図14D)も保有し、マクロファージが、多くの構造的に異なる病原体に対する監視者として作用することが示唆される。対照的に、ウイルスサイズのラテックスビーズ(200nm)は、足蹠注射後、SCSにおいて保有が少なかった(
図14E)。したがって、SCSマクロファージは、リンパによって運ばれたウイルスと他の類似サイズの粒子を識別する。蛍光性のVSV、AdVおよびVVは、流入領域LNの髄質にも蓄積したが、それらは、CD169
low細胞(
図11D)だけでなく、CD169
−LYVE−1
+リンパ内皮細胞(
図14C、D)によっても結合された。このことは、CLL処置LNにおいて確証され、VSVは、髄質性LYVE−1
+細胞上に排他的に蓄積した(
図15)。
【0561】
次に、本発明者らは、捕捉されたVSVが、どのようにしてB細胞によって認識されるのかを調べた。膝窩LNは、SCS内腔にまれなB細胞を含有する(
図16A)が、本発明者らは、電子顕微鏡像においてSCS内にウイルス結合リンパ球についての証拠を見いだせなかった。その代わり、ウイルス粒子は、SCS床を横切って伸びるマクロファージによって、表在濾胞内のB細胞に提示されていた。VSV(
図17A)またはAdV(
図16B〜E)のどちらかの注射の後、ビリオンは、少なくとも4時間にわたって、B細胞−マクロファージ境界面において容易に検出可能だった。このことは、SCSマクロファージが、B細胞への提示のためにSCS床を横切ってウイルス粒子を往復輸送することを示唆した。SCSマクロファージ中にVSVを含有するベシクルが殆どないことがウイルス分解の証拠を示すので、トランスサイトーシスは、ありそうにもないとみられた。さらに、本発明者らは、MP−IVMによって、チャレンジ後の少なくとも最初の6時間はウイルス結合マクロファージの実質的な運動を検出しなかった。したがって、ウイルス粒子は、マクロファージ表面に沿って移動することによって、LN実質に到達した可能性が最も高かった。注目すべきは、VSVおよび他の抗原もまた、末梢の位置から移行するDCによってB細胞に提示される(Ludewigら、2000年、Eur. J. Immunol、30巻:185頁;およびQiら、2006年、Science、312巻:1672頁;これらは両方とも、参照により本明細書に組み込まれる)が、足蹠由来のDCの膝窩LNへの遊走は、長い時間を要するので、足蹠由来のDCは、これらの非常に早期の事象において関与しない可能性がある。SCS床は、リンパによって運ばれたウイルスにとって乗り越えられないものであり;CD169
+マクロファージは、ウイルスの転位およびB細胞への提示の門番役および進行役として作用するとみられる。
【0562】
次に、どのようにしてナイーブB細胞が、ウイルスの遭遇に応答するのかを、2種のVSV血清型Indiana(VSV−IND)およびNew Jersey(VSV−NJ)(
図18;Roostら、1996年、J. Immunol. Methods、189巻:233頁;参照により本明細書に組み込まれる)を用いて探索した。本発明者らは、野生型B細胞と、VSV−NJと結合しないVSV−IND特異的B細胞受容体を発現するVI10YENマウス由来のB細胞(Hangartnerら、2003年、Proc. Natl. Acad. Sci., USA、100巻:12883頁;参照により本明細書に組み込まれる)とを比較した。対照的に、少ない割合(2%〜5%)の野生型B細胞が、活性化されずに両方の血清型に結合した。これは、VSV−Gとの低親和性の反応性または間接的な相互作用、例えば、補体を介する相互作用(RossbacherおよびShlomchik,2003年、J. Exp. Med.、198巻:591頁;参照により本明細書に組み込まれる)を反映し得る。in vivoにおける応答を評価するために、異なって標識された野生型およびVI10YEN B細胞を養子移入し、LN濾胞へホーミングさせた。次いで、蛍光性UV不活化ウイルスを足蹠に注射し、そして約5〜35分後にMP−IVMによって膝窩LNを記録した。ウイルスを含まないLNにおいて、またはVSV−NJの注射後に、VI10YENおよび対照B細胞は、同じ分布を示した(
図17B〜C)。対照的に、VSV−INDを注射したとき、VI10YEN細胞は、迅速にSCS床およびその下に蓄積した。CLL処置LNと未処置LNとの間にベースラインのB細胞の運動性および分布の差異はなく、VSV特異的B細胞が、両方の条件においてSCSを探索し得ることが同様にあると示唆される。しかし、CLL処置LNにおいて、蛍光性ウイルスが、SCSにおいて保有されておらず、VI10YEN B細胞は、その領域に集まることができず、SCSマクロファージが、両方の事象にとって必須であることが示唆される(
図17B)。
【0563】
VI10YEN B細胞の分布を厳密に定量化するために、LNをVSVチャレンジの30分後に回収し、共焦点顕微鏡によって分析した。濾胞性VI10YEN集団全体は、その全体的な分布を保持した(
図17D)が、SCSの≦50μm下に存在する細胞のサブセットは、VSV−INDを含有するLNではSCSに向かって移動したが、VSV−NJを含むLNでは移動しなかった(
図17E)。非応答性ポリクローナルB細胞が、同じ化学誘引物質受容体を発現するので、化学誘引物質シグナルが原因で、VI10YEN B細胞がSCSに再分布されることはありそうにないとみられる。それどころか、運動性のVI10YEN細胞と、マクロファージに結合したVSV−INDとのランダムな接触が、BCR依存性の「停止シグナル」を作動させる(Okadaら、2005年、PLoS Biol、3巻:el50;参照により本明細書に組み込まれる):VSV−INDに対する短期間の曝露が、VI10YEN B細胞においてLFA−1および/またはα4インテグリンを活性化し(DangおよびRock、1991年、J. Immunol、146巻:3273頁;参照により本明細書に組み込まれる)、その結果、それぞれのリガンドであるICAM−1およびVCAM−1への接着がもたらされ、これらは両方ともSCSにおいて発現される(
図19)。さらに、SCSマクロファージに結合されたVSV−INDは、BCRを介して直接、VI10YEN B細胞接着に対する基材を提供し得る。
【0564】
捕捉されたビリオンが、どのようにして検出のときにB細胞によってプロセシングされるのかを調べるために、本発明者らは、VI10YEN×MHCII−EGFPマウス由来のB細胞を試験し、これにより、本発明者らは、B細胞プライミングの指標として、エンドソームのMHC−IIと共局在する、エンドサイトーシスによって取り込まれたVSVを可視化させた(Vascottoら、2007年、Curr., Opin., Immunol.、19巻:93頁;参照により本明細書に組み込まれる)。注射後30分以内に、表在濾胞内のVI10YENxMHCII−EGFP B細胞は、広範囲にわたってVSV−INDを内部移行したが、VSV−NJ粒子を内部移行しなかった(
図20A、B)。ウイルスを担持しているVSV特異的B細胞は、深在濾胞において、まれではあるが検出可能だった。これらの細胞は、表面にVSVを担持する稀有なポリクローナルB細胞からビリオンを獲得できたか、またはVSV−INDを獲得後にSCSにおいて拘束することができなかったVI10YEN細胞に相当し得る。
【0565】
本発明者らの組織学的な知見から、無傷なビリオンが、SCSおよび表在濾胞においてB細胞によって優先的に検出され、獲得されることが実証されるが、B細胞運動性のMP−IVM測定から、より広い抗原伝播が明らかになった。VSV−IND注射の後、VI10YEN細胞は、B濾胞全体において急速な速度の低下を示した(
図21)。これは、CLL処置LNおよび対照LNにおいて等しく観察され、ウイルス抗原が、マクロファージとは独立してB細胞に達したことが示唆される。この抗原性物質は、潜在的に、天然の感染(natural infection)の避けられない副産物である、遊離ウイルスタンパク質から構成されていた。実際に、本発明者らのVSVストックの精製された上清が、VI10YEN B細胞において強力なカルシウム流入を誘導した(
図18E)。低分子のリンパによって運ばれたタンパク質は、迅速に濾胞中に拡散し、同族のB細胞を活性化することが公知である(Papeら、2007年、Immunity、26巻:491頁;参照により本明細書に組み込まれる)。したがって、ウイルス上清の注射は、SCSにおける濾胞性VI10YEN B細胞の蓄積を誘導せずに濾胞性VI10YEN B細胞の運動性を抑制し、遊離VSV−Gがそのウイルス接種材料中に含有され、活性であったことが示唆される。このことは、VSV−IND注射のマクロファージ非依存性の汎−濾胞作用を説明し得る。
【0566】
ウイルス遭遇の際のVI10YEN B細胞活性化の動態を決定するために、本発明者らは、通常の活性化マーカーを測定した(
図22)。共刺激分子CD86が、まず、VSV−INDチャレンジの6時間後に上方制御された。CD69は、潜在的に多面発現性のIFN−αシグナル伝達によって、ポリクローナルB細胞上でも、より迅速に誘導された(Barchetら、2002年、J. Exp. Med.、195巻:507頁;およびShiowら、2006年、Nature、440巻:540頁;これらは両方とも参照により本明細書に組み込まれる)。70%超のVI10YEN細胞がBCR
low/negだった場合、表面IgM(
図20C、D)が、チャレンジの30分後に早くも下方制御され、2時間以内に最大に達した。したがって、BCR内部移行は、ウイルス特異的B細胞活性化に対して最も早い特異的な読み取りを提供した。著しいことに、CLL処置LNにおけるVI10YEN B細胞は、20μgのVSV−INDを皮下注射した後の最初の2時間においてBCRを下方制御することができず(
図20E)、SCSマクロファージが、捕捉したビリオンをB細胞に効率的に早期に提示するために必要であることが示唆される。
【0567】
プライミングされたB細胞は、クラススイッチ組換えおよび胚中心形成のために、最終的にCD4
−T細胞からの助けを求める(Vascottoら、2007年、Curr., Opin., Immunol.、19巻:93頁;参照により本明細書に組み込まれる)。T細胞と接触するために、新たに活性化されたB細胞は、T/B境界に向かって遊走する(Okadaら、2005年、PLoS Biol、3:el50;およびReifら、Nature、416巻:94頁;これらは両方とも参照により本明細書に組み込まれる)。この機序は、マクロファージが十分なマウスにおいて効率的に作動した;大部分のVI10YEN B細胞は、わずか40ngのVSV−INDの足蹠注射後の6時間以内にT/B境界に再分布した(
図20F、Hおよび23)。対照的に、CLL処置マウスにおいてVI10YEN B細胞の十分な再分布を引き出すためには、100倍多いウイルスの用量が必要だった(
図20G、H)。注射の後12時間までに、注射された用量と無関係に大部分のVSV特異的細胞が、T−B境界に達した。したがって、SCSマクロファージ無しでさえも、濾胞性B細胞は、効率的ではないが、VSV由来抗原によって最終的に活性化される。
【0568】
結論として、本発明者らは、LNにおけるCD169
+マクロファージに対する二重の役割を実証する:それらは、リンパによって運ばれたウイルスを捕捉して、それらの全身への伝播を防ぎ、濾胞性B細胞の効率的な提示および活性化のためにSCS床を横切って、捕捉されたビリオンを導く。
【0569】
(実施例2)
例示的な脂質ベースのワクチンナノテクノロジー構造
リポソームナノキャリア
いくつかの実施形態において、小型のリポソーム(10nm〜1000nm)を製造し、いくつかの実施形態において、1つまたは複数の免疫調節作用物質を免疫系細胞に送達するために使用する(
図3)。一般に、リポソームは、人工的に構築された球状の脂質ベシクルであり、その数十〜数千nmの制御可能な直径は、個別のリポソームが、様々なカーゴ、例えば、タンパク質、酵素、DNAおよび薬物分子をカプセル化し、保存するために使用され得る、ゼプトリットル(10
−21L)〜フェムトリットル(10
−15L)の体積を有する生体適合性の区画を構成することを示す。リポソームは、両親媒性の特性:二分子層の内面と外面の両方が親水性であり、二分子層の内腔が疎水性である、を有する脂質二分子層を含むことができる。親油性分子は、リポソーム膜中にそれ自身を自発的に包埋され得、それらの親水性ドメインを外側に保有され得、親水性分子は、膜の生体機能性を利用してリポソームの外面と化学的にコンジュゲートされ得る。
【0570】
ある実施形態において、脂質は、親油性の免疫調節作用物質と混合され、次いで、固体表面で薄膜に形成される。親水性の免疫調節作用物質を水溶液に溶解し、それをその脂質薄膜に加えて、ボルテックスによって脂質を加水分解する。二分子層壁に組み込まれた親油性の免疫調節作用物質およびリポソーム内腔の内側の親水性免疫調節作用物質を有するリポソームは、自発的に組織化される。
【0571】
ナノ粒子安定化リポソームナノキャリア
いくつかの実施形態において、ナノ粒子安定化リポソームが、1つまたは複数の免疫調節作用物質を免疫系の細胞に送達するために使用される(
図4)。小型の荷電ナノ粒子が、逆の電荷を担持するかまたは正味電荷を担持しないリポソームの表面に近づくとき、ナノ粒子と膜との間の静電気的相互作用または電荷−双極子相互作用によって、ナノ粒子が引きつけられ、ナノ粒子がその膜表面に留まり、脂質膜によって部分的に包まれる。これは、リポソームの局所的な膜の屈曲および小球の表面張力を誘導し、これらの両方が膜の剛性の調整を可能にする。この態様は、ウイルスを模倣するリポソームを使用するワクチン送達にとって重要であり、その堅さはウイルス膜内の他の生物学的成分の組成に依存する。さらに、吸着されたナノ粒子は、リポソームを融合から保護する帯電したシェルを形成し、それにより、リポソームの安定性が強化される。ある実施形態において、小型のナノ粒子は、穏やかなボルテックスによってリポソームと混合され、このナノ粒子は、自発的にリポソーム表面に固着する。
【0572】
リポソーム−ポリマーナノキャリア
いくつかの実施形態において、リポソーム−ポリマーナノキャリアが、1つまたは複数の免疫調節作用物質を免疫系の細胞に送達するために使用される(
図5)。リポソーム内部の中空を維持する代わりに、親水性の免疫調節作用物質は、カプセル化され得る。
図3は、リポソームでコーティングされたポリマーナノキャリアを形成するジブロックコポリマーナノ粒子が負荷されたリポソームを示しており、これは、リポソームおよびポリマーナノ粒子の限界のいくつかを排除しながら、それら両方の長所を有する。いくつかの実施形態において、リポソームシェルは、親油性の免疫調節作用物質を担持するため、または親水性の免疫調節作用物質をコンジュゲートするために使用でき、ポリマーコアは、疎水性免疫調節作用物質を送達するために使用できる。ある実施形態において、あらかじめ製剤化されたポリマーナノ粒子(40nm〜1000nm)は、穏やかなボルテックスによって小型のリポソーム(20nm〜100nm)と混合され、ポリマーナノ粒子の表面にリポソーム融合が誘導される。
【0573】
ナノ粒子安定化リポソーム−ポリマーナノキャリア
いくつかの実施形態において、ナノ粒子安定化リポソーム−ポリマーナノキャリアが、1つまたは複数の免疫調節作用物質を送達するために使用される(
図6)。小型のナノ粒子(1nm〜30nm)をリポソーム−ポリマーナノキャリア表面に吸着させることによって、このナノキャリアは、上述のナノ粒子安定化リポソーム(
図4)と、上述のリポソーム−ポリマーナノ粒子(
図5)の両方の長所だけでなく、調整可能な膜の剛性および調節可能なリポソーム安定性も有する。
【0574】
逆ミセルを含むリポソーム−ポリマーナノキャリア
いくつかの実施形態において、逆ミセルを含有するリポソーム−ポリマーナノキャリアが、1つまたは複数の免疫調節作用物質を送達するために使用される(
図7)。上述のリポソーム−ポリマーナノキャリア(
図5および6)は、ポリマーナノ粒子内に疎水性免疫調節作用物質を担持することに限定されているので、ここで、小型の逆ミセル(1nm〜20nm)が、親水性免疫調節作用物質をカプセル化するように製剤化され、次いで、ジブロックコポリマーと混合し、リポソームのポリマーコアを製剤化する。
【0575】
ある実施形態において、カプセル化される親水性免疫調節作用物質は、まず、揮発性で水混和性の有機溶媒中において、天然由来かつ無毒性の両親媒性物質と混合することによって、逆ミセル内に組み込まれる。得られた生分解性ポリマー−逆ミセル混合物をポリマー−不溶性の親水性非溶媒と組み合わせ、非溶媒への溶媒の迅速な拡散および有機溶媒の蒸発によってナノ粒子が形成される。ポリマーナノ粒子を含有した逆ミセルは、脂質分子と混合され、上述のリポソーム−ポリマー複合体構造が形成される(
図5)。
【0576】
逆ミセルを含む、ナノ粒子安定化リポソーム−ポリマーナノキャリア
いくつかの実施形態において、逆ミセルを含有する、ナノ粒子安定化リポソーム−ポリマーナノキャリアが、1つまたは複数の免疫調節作用物質を送達するために使用される(
図8)。小型のナノ粒子(1nm〜30nm)をリポソーム−ポリマーナノキャリア表面に吸着させることによって、このナノキャリアは、上述のナノ粒子安定化リポソーム(
図4)と、上述の逆ミセルを含有したリポソーム−ポリマーナノ粒子(
図7)の両方の長所だけでなく、調整可能な膜の剛性および調節可能なリポソーム安定性も有する。
【0577】
脂質単層によって安定化されたポリマーナノキャリア
いくつかの実施形態において、脂質単層によって安定化されたポリマーナノキャリアが、1つまたは複数の免疫調節作用物質を送達するために使用される(
図9)。上述のリポソーム−ポリマーナノキャリア(
図5〜8)と比較して、この系は、薬剤と製造の両方に関して単純さという長所を有する。いくつかの実施形態において、疎水性ホモポリマーは、疎水性セグメントと親水性セグメントの両方を有する
図5〜8において使用されるジブロックコポリマーとは対照的に、ポリマーコアを形成し得る。脂質によって安定化されたポリマーナノキャリアは、ポリマーナノ粒子およびリポソームを別個に製剤化した後、それらを一緒に融合する代わりに、単一工程で形成され得る。
【0578】
ある実施形態において、まず、親水性の免疫調節性分子を、脂質頭部基と化学的にコンジュゲートする。このコンジュゲートを、1つまたは複数の水混和性溶媒を含有する水溶液において、ある特定の比で非コンジュゲート脂質分子と混合する。生分解性のポリマー材料を、カプセル化される疎水性免疫調節作用物質と、水混和性または部分的に水混和性の有機溶媒中で混合する。得られたポリマー溶液を、コンジュゲートされた脂質およびコンジュゲートされていない脂質の水溶液に加え、水への有機溶媒の迅速な拡散および有機溶媒の蒸発によってナノ粒子が得られる。
【0579】
逆ミセルを含む、脂質単層によって安定化されたポリマーナノキャリア
いくつかの実施形態において、逆ミセルを含む、脂質単層によって安定化されたポリマーナノ粒子が、1つまたは複数の免疫調節作用物質を送達するために使用される(
図10)。上述の脂質によって安定化されたポリマーナノキャリア(
図9)は、疎水性免疫調節作用物質を担持することに限定されているので、ここで、小型の逆ミセル(1nm〜20nm)は、親水性免疫調節作用物質をカプセル化するように製剤化され、生分解性ポリマーと混合され、ポリマーナノキャリアコアが形成される。
【0580】
(実施例3)
ヒトIgG由来のFcフラグメントを使用するSCS−Mphのin vivoのターゲティング
蛍光で改変されていない対照ナノ粒子(上パネル、
図24A)またはFc表面コンジュゲート標的化ナノ粒子(中央および下パネル、
図24A)を、麻酔されたマウスの足蹠に注射し、1時間後に膝窩流入領域リンパ節を切除し、フローサイトメトリーのために単一細胞縣濁液を調製した。クロドロネート負荷リポソームの注射によってリンパ節マクロファージを枯渇させた1週間後のマウスにも標的化ナノ粒子を注射した(下パネル、
図24A)。CD11bの高発現に基づいて、ゲート内の細胞集団を、ナノ粒子と会合されているマクロファージとして同定した。これらの結果は、(i)ナノ粒子結合は、クロドロネート感受性マクロファージの存在に依存すること、および(ii)標的化ナノ粒子は、対照ナノ粒子よりも約2倍多いマクロファージと結合することが示される。
【0581】
図24の右のパネルは、青色蛍光対照ナノ粒子(上パネル、
図24A)または標的化ナノ粒子(中央および下パネル、
図24A)を注射した後の凍結リンパ節切片の蛍光顕微鏡像を示す。切片を抗CD169、および髄質(上および下パネル、
図24A)またはB細胞(中央パネル、
図24A)のいずれかを同定するマーカーで対比染色した。ナノ粒子注射の1時間後、大部分の対照粒子が、髄質内に存在する(上、
図24A)が、標的化ナノ粒子は、B細胞濾胞に隣接するCD169+SCS−Mphと共局在する(中央、
図24A)。注射の24時間後に、SCSと髄質との間の皮質性領域に、標的化ナノ粒子の細胞サイズの不連続な蓄積が見られ、遊走性樹状細胞による取り込みおよび輸送が示唆される。
【0582】
マウスに赤色蛍光B細胞をi.v.注射し、対照とFc標的化ナノ粒子との1:1混合物を足蹠に注射した。24時間後、移入されたB細胞のいくつかが、B細胞濾胞に遊走したとき、膝窩流入領域リンパ節を切除し、共焦点顕微鏡および緑色:青色蛍光比の定量的画像解析のために切片にした。被膜下洞(SCS)領域は、類似レベルの青色ナノ粒子と緑色ナノ粒子とを含有した(右側の丸で囲まれた細胞、
図24B)が、Fc標的化ナノ粒子と会合された緑色蛍光は、SCSにおいて約2倍強かった。散らばった赤色B細胞によって表されるB濾胞内の緑色ナノ粒子の顕著な蓄積も存在した。これらの領域は、マクロファージおよび樹状細胞と同様に、大量のFc受容体を発現することが公知である濾胞性樹状細胞(FDC)の特徴的なサイズ、形状および分布を有する。
【0583】
(実施例4)
抗原を有する標的化ナノ粒子は、高度に免疫原性であり、高い抗体価を誘導する
マウスの群(5匹/群)を:UV不活化水疱性口内炎ウイルス(VSV、血清型Indiana)またはVSVの精製された免疫原性エンベロープ糖タンパク質(VSV−G)を用いて免疫した。VSV−Gは、ミョウバンと混合されている可溶性形態、またはアジュバントとしてミョウバン有りもしくは無しの、非標的化もしくは標的化(表面に固定化されたヒトFcによって)PLGAナノ粒子とコンジュゲートされている可溶性形態で、投与された。遊離VSV−Gの用量は、ナノ粒子とともに送達されたVSV−Gの用量よりも約10倍高いと推定された。初回免疫の55日目後に、マウスに追加免疫注射を行い、10週間後に血清を得て、Vero細胞に対するVSV仲介性プラーク形成の中和について試験した。結果は、プラーク形成を少なくとも50%阻止した最も高い血清希釈度として力価を示している。各符号は、1匹のマウスにおける中和抗VSV力価を反映している。Fc標的化ナノ粒子上に提示されたVSV−Gを用いて免疫されたマウスの群は、他の任意の群よりも有意に高い中和抗VSV力価をもたらした(その群の中で最も高い力価を有した2匹の動物は、試験された最も高い希釈度においてプラーク形成を完全に中和したので、実際の力価は、より高かったようである)。
【0584】
ナノ粒子(NP)ワクチンによって引き出される誘導型免疫応答は、致死量のVSVからの強力な保護をもたらす。ワクチン接種されたすべての群がいくらかの保護を示したが、Fc標的化NPへのVSV−Gコンジュゲート+ミョウバンを投与された群だけが、致死量の感染からの100%保護を示した。遊離VSV−G(VSV−G+ミョウバン)のレシピエントには、ナノ粒子とコンジュゲートされているVSV−Gを投与される動物よりも約10倍多い抗原を投与した。陰性対照として、1つのマウスの群に、VSV−Gを含まないFc標的化ナノ粒子(NP−Fc)を投与し、保護はもたらされなかった。
【0585】
(実施例5)
免疫調節性ナノ粒子によるin vivoにおけるT細胞活性化
C57BL6Jマウスに、MHCクラスIIにおいて提示されるニワトリオボアルブミン(OVA)に特異的なトランスジェニックTCRを発現する、OT−IIドナーマウス由来のCFSE標識CD4T細胞をi.v.注射した。続いて、遊離OVAを、またはモデル抗原として等量のOVAをカプセル化しているPLAもしくはPLGAのいずれかから構成されているナノ粒子を片方の足蹠に注射することによって、免疫実験を実施した。すべての抗原性混合物は、アジュバントとしてCpG(TLR9アゴニスト)もまた含有した。動物に注射し、免疫の3日後に犠牲にし、様々な組織由来の単一細胞縣濁液におけるフローサイトメトリーによって、OT−IIT細胞活性化を評価した。
【0586】
刺激されていない5,6−カルボキシ−スクシンイミジル−フルオレセイン−エステル(CFSE)標識T細胞は分裂せず、したがって一様に高い濃度のCFSEを担持し、明るい蛍光細胞の単一の狭いピークを生じる。対照的に、活性化されたT細胞は分裂し、そのプロセスにおいて2つの娘細胞の間で蛍光色素を均等に分割し、連続分裂ごとに蛍光強度が徐々に減少する。したがって、CFSEが左にシフトすればするほど、蛍光T細胞の活性化が強くなった。結果は:(i)ナノ粒子−カプセル化抗原が、膝窩流入領域リンパ節において、遊離抗原よりも強力なCD4T細胞応答をもたらしたこと(popLN、上列);(ii)ナノ粒子だけで、上腕リンパ節(中列)および脾臓(下列)を含む遠位のリンパ組織において局所的なT細胞増殖を誘導したが、遊離OVAは誘導しなかったこと、を示す。遊離OVAのレシピエントにおいて、上腕LNおよび脾臓は、非分裂細胞のみまたは非常に少ないCFSE含有量の細胞を含有した。後者の集団は、局所的なT細胞活性化は示さず、他の箇所で活性化されたT細胞の遊走を示す。
【0587】
C57BL6Jマウスに、MHCクラスIにおいて提示されるニワトリオボアルブミン(OVA)に特異的なトランスジェニックT細胞受容体(TCR)を発現する、OT−Iドナーマウス由来のCFSE標識CD8T細胞をi.v.注射した。実験プロトコールは、すぐ上に記載されたものとその他の点は同一だった。
【0588】
C57BL6Jマウスに、上記のようなOT−Iドナーマウス由来のCFSE標識CD8T細胞をi.v.注射した。しかし、この実験において、TLR−7およびTLR−8を活性化するイミダゾキノリン化合物であるCL097をアジュバントとして使用し、アジュバント送達の様々な方法を試験した。この場合におけるT細胞活性化は、遊離アジュバント(160ng)と混合された遊離OVA(1μgまたは100ng)の足蹠注射の3日後に、膝窩流入領域リンパ節におけるOT−I T細胞の総数を数えることによって評価された。ナノ粒子を投与したすべての動物に、160ngのCL097と一緒に、または無しで100ngのOVAを与えた。ナノ粒子の中にカプセル化されているが、PLAポリマーに共有結合していない材料を[]の中に示す。CL097とPLAとの共有結合は、ハイフンで結ぶことによって特定される。同じ区画内に遊離型で混合された材料を「+」で分ける。これらの結果から、アジュバントが賦形剤と共有結合しているナノ粒子の中にカプセル化されたOVAを投与された動物におけるCD8T細胞増殖の著明な増加が明らかになった。
【0589】
(実施例6)
ナノ粒子の形成
PLA−PEG−COOH(DCM中3mg/ml)を、PLA−R848(DCM中3mg/ml)またはR848(DCM/DMSO(5%)中15.7mg/ml)と混合した。500μlのPLA−PEG−COOH溶液を、500μlPLA−R848に加え、ボルテックスし、500μlのOVA(水中5mg/ml)またはSIINFEKLペプチド(2mg/ml)を加え、SINOMIX(ソニケーターS−4000)を使用して超音波処理(15秒、振幅50)し、2mlのPVA溶液(水中1%w/v)を加え、超音波処理(15秒、振幅50)し、この溶液を40mlの水の中に滴下した。2時間撹拌させ、水を用いて3回洗浄し、PBSを用いて1回洗浄した。カプセル化R848製剤のために、500μlのPLA−PEG−COOH溶液を400μlの遊離のPLA(3.75mg/ml)および100μlのR848に加え、ボルテックスし、500μlのOVA(水中5mg/ml)またはSIINFEKLペプチド(2mg/ml)を加え、超音波処理し(15秒、振幅50)、2mlのPVA溶液(水中1%w/v)を加え、超音波処理し(15秒、50W)、この溶液を40mlの水の中に滴下した。2時間撹拌させ、水を用いて3回洗浄し、PBSを用いて1回洗浄した。
【0590】
(実施例7)
PLA−R848の合成
方法1、エチルヘキサン酸スズ触媒
撹拌子およびコンデンサを装備した二首丸底フラスコに、イミダゾキノリンレシキモド(R−848、100mg、3.18×10
−4モル)、D/Lラクチド(5.6gm、3.89×10
−2モル)および無水硫酸ナトリウム(4.0gm)を加えた。このフラスコおよび内容物を、50℃において8時間真空下で乾燥させた。次いで、このフラスコにアルゴンを流し、トルエン(100mL)を加えた。反応物を120℃に設定したオイルバス中で、すべてのラクチドが溶解するまで撹拌し、その後、エチルヘキサン酸スズ(75mg、60μL)をピペットで加えた。その後、アルゴン下で16時間加熱を続けた。冷却後、水(20mL)を加え、30分間撹拌し続けた。反応物を、追加のトルエン(200mL)を用いて希釈し、次いで水(200mL)を用いて洗浄した。次いで、トルエン溶液を、順に、5%濃塩酸(200mL)を含有する10%塩化ナトリウム溶液、その後、飽和重炭酸ナトリウム(200mL)を用いて洗浄した。TLC(シリカ、塩化メチレン中10%メタノール)は、この溶液が遊離のR−848を含有しなかったことを示した。この溶液を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空下で蒸発させ、3.59グラムのポリ乳酸−R−848コンジュゲートを得た。ポリマーの一部を、塩基中で加水分解し、R−848含有量をHPLCによって試験した。R−848濃度対HPLC反応の標準曲線と比較することによって、ポリマーが、4.51mgのR−848/グラムのポリマーを含有したことを決定した。ポリマーの分子量は、約19,000であることがGPCによって決定された。
【0591】
方法2、リチウムジイソプロピルアミド触媒
イミダゾキノリン(R−848)、D/Lラクチドおよび関連ガラス器具をすべて、使用前に、50℃において8時間、真空下で乾燥させた。撹拌子およびコンデンサを装備した丸底フラスコに、R−848(33mg、1.05×10
−4モル)および乾燥トルエン(5mL)を加えた。これを加熱して還流し、すべてのR−848を溶解した。この溶液を窒素下で撹拌し、室温に冷却し、微細の(finely devided)R−848の縣濁液を得た。この縣濁液に、リチウムジイソプロピルアミドの溶液(THF中2.0M、50μL、1.0×10
−4モル)を加え、その後、室温において5分間撹拌し続けた。形成された淡黄色の溶液を、注射器を介して、窒素下においてD/Lラクチド(1.87gm、1.3×10
−2モル)の熱溶液(120℃)に加えた。加熱をやめ、淡黄色の溶液を室温において1時間撹拌した。この溶液を、塩化メチレン(200mL)を用いて希釈し、次いでこれを、1%の塩酸(2×50mL)、その後飽和重炭酸溶液(50mL)を用いて洗浄した。この溶液を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空下で蒸発させ、ポリ乳酸−R−848コンジュゲートを得た。TLC(シリカ、塩化メチレン中10%メタノール)は、この溶液が遊離のR−848を含有しなかったことを示した。このポリマーを塩化メチレン(10mL)に溶解し、この溶液を撹拌されたヘキサン(200mL)中にドリップした。沈殿させたポリマーを、デカントすることによって単離し、真空下で乾燥させ、白い固体として1.47グラムのポリ乳酸−R−848コンジュゲートを得た。ポリマーの一部を、塩基中で加水分解し、R−848含有量をHPLCによって試験した。R−848濃度対HPLC反応の標準曲線と比較することによって、ポリマーが、10.96mgのR−848/グラムのポリマーを含有したことを決定した。
【0592】
【化1】
(実施例8)
カプセル化R848製剤:カプセル化および放出
500ulのPLA−PEG−COOH溶液(DCM中3mg/ml)を、500ulのPLA−R848に加え、ボルテックスし、500ulのOVAまたはSIINFEKLペプチドを加え、超音波処理(15秒、振幅50)し、2mlのPVA溶液(水中1%w/v)を加え、超音波処理(15秒、50W)し、この溶液を40mlの水の中に滴下した。2時間撹拌させ、水を用いて3回洗浄し、PBSを用いて1回洗浄した。PLAR848のEE%を100%であると仮定し、負荷は約5〜10%であると推定した。負荷は、ナノ粒子を形成するためにPLA−PEG−COOHと混合されたPLA−R848の量によって調節される。逆相C18カラム(Supelco)を、移動相速度1mL/分で使用して、HPLC実験を実施した。移動相は、0.1%のTFA/水および0.1%TFA/ACN/水(60:40)で構成される。検出波長は320nmである。注入容量は100uLである。
【0593】
遊離のR848の1.57mg(5%DMSO/DCMに溶解、15.7mg/ml)を、PLA−PEGCOOH/PLA(1:1、DCM中合計3mg/mL、1mL)と混合し、二重エマルジョン技術によりナノ沈殿させた。最終NP[R848]溶液は1.0mLであり、平均Np径は約250nmである。遊離のR848カプセル化のEE%は3.54%であり、負荷は1.85wt%である。
【0594】
R848放出実験を、37℃において2LのPBS緩衝液中で実施した。0.5mLのNP溶液(1mg/ml)を、ミニ透析カセット(mini−dialysis cassette)(3500Da)に加え、これを、PBS溶液中に浸した。個々の時点で、500μlの試料を再度取り出し(redrawn)(3反復)、この溶液の100μlを100μlのアセトニトリルと混合し、その後分析のためにHPLCに注入した。
【0595】
放出されたR848の濃度/量を決定するためのHPLC実験を、逆相C18カラム(Supelco)を、移動相速度1mL/分で使用して、実施した。移動相は、0.1%のTFA/水および0.1%TFA/ACN/水(60:40)で構成される。検出波長は320nmである。注入容量は100uLである。
【0596】
データを
図32に示す。
【0597】
(実施例9)
SIINFEKL製剤:カプセル化および放出
SIINFEKLは、マウスMHCクラスI(H2k−b)と結合するニワトリオボアルブミン(OVA)由来の免疫原性ペプチドであり、トランスジェニックOT−I T細胞によって認識される。SIINFEKL 2mg/mLの500uLを、1mLのPLA−PEG−COOH/PLAR848溶液(1:1、DCM中合計3mg/mL)中で、二重エマルジョン技術によってカプセル化した。最終NPR848[SIINFEKL]溶液は1.5mLである。平均NP径は約220nmである。SIINFEKLのカプセル化効率(EE%)は1.32%であり、負荷は0.44wt%である。
【0598】
SIINFEKL放出実験を、37℃において11mLのPBS緩衝液中で実施した。0.5mLのNP溶液を、ミニ透析カセット(3500Da)に加え、これを、PBS溶液中に浸した。各次官に、2mLのPBSを採取し、2mLの新しいPBSを交換した。試料を凍結乾燥し、HPLC分析のために150uLのDI水に溶解した。
【0599】
放出されたSIINFEKLの量を決定するためのHPLC実験を、逆相C18カラム(Supelco)を、移動相速度1mL/分で使用して、実施した。移動相は、0.1%のTFA/水および0.1%TFA/ACN/水(60:40)を含み、時間勾配は、0〜16分で100%→40%TFA/水および16〜38分で40%→0%TFA/水である。検出波長は215nmである。注入容量は100uLである。個々の時点に関して、SIINFEKLの放出を、3つの並行した試料から定量化し、平均した。
【0600】
SIINFEKLの放出のデータを
図29Cに示す。
【0601】
(実施例10)
カプセル化OVA製剤:カプセル化および放出
OVAの放出実験を、37℃において10mLのPBS緩衝液中で実施した。3mgのNP溶液をOVAを用いてカプセル化し(3反復)、これを10mlのPBSに浸した。個々の時点で、この溶液の0.5mlを回収し、遠心分離し(8分、13rpm)、上清を回収し、BCAの定量化のためにナノ粒子を遠心分離した。
【0602】
方法1:OVAの定量化のためのBCAアッセイの使用。NP−OVAとBCA緩衝溶液との、60℃において30分間の直接インキュベーション。
【0603】
結果:
1.0%PVA:1.09mg/mL;EE%21.8%;負荷36.3wt%。
【0604】
1.5%PVA:1.18mg/mL;EE%23.6%;負荷39.3wt%。
【0605】
2.0%PVA:1.39mg/mL;EE%27.8%;負荷46.3wt%。
【0606】
方法2:OVAの定量化のためのタンパク質ゲル電気泳動の使用。
【0607】
ローディング緩衝液中で、95℃において5分間のNP−OVAの直接インキュベーション。Bio−Radレディゲル(ready gels)(10%PAGE)を使用。200V、30分間。
【0608】
結果:
1.0%PVA:約0.6mg/mL;EE%12%;負荷約20wt%。
【0609】
ゲル電気泳動のデータは、NP−OVA組成物中でOVAが一部分解/変性していた可能性があるが、OVAは大部分は変化ないままであることを示した。
【0610】
OVAのin Vivo送達およびプロセシング。
【0611】
DQ−OVAは、OVAが抗原提示細胞(大部分はDC)によってタンパク質分解的にプロセシングされるまでは非蛍光のままである蛍光色素分子とコンジュゲートされたOVAからなる。NPカプセル化OVAの投与後のマウスLNの分析から、sq注射後、NP−カプセル化OVAはプロセシングされ、輸送され、流入領域リンパ節中のDCにより提示されることが実証された。
【0612】
(実施例11)
in vivoのCD8 T細胞の活性化
OVA抗原およびCL097アジュバントを含むナノ粒子を調製し、本明細書に記載の手順に従って、in vivoで試験した。以下の6種の組成物を調製した:(1)遊離のOVA;(2)遊離のOVAおよび遊離のCL097;(3)NP[OVA](すなわち、カプセル化OVAを含有するナノ粒子);(4)NP[OVA+CL097](すなわち、カプセル化OVAおよびカプセル化CL097を含むナノ粒子);(5)NP−CL097[OVA](すなわち、CL097とコンジュゲートし、カプセル化OVAを含有するナノ粒子);およびOVA+NP−CL097(すなわち、遊離のOVAおよびCL097とコンジュゲートしたナノ粒子)。リンパ節(LN)T細胞の数のデータを
図33に示す。
【0613】
図34は、以下の組成物の投与の1日後にマウスリンパ節において観察されるOT−I細胞のカウントを提供する:(1)遊離のSIINFEKL;(2)遊離のSIINFEKLおよび遊離のR848;(3)ナノ粒子内にカプセル化されたSIINFEKL;および(4)ナノ粒子内にカプセル化され、R848とコンジュゲートされたSIINFEKL。データは、SIINFEKLをカプセル化し、R848とコンジュゲートされたナノ粒子が、最も多いOT−I細胞カウントを得たことを示す。細胞カウントは、わずか1日後に測定し、組成物(1)、(2)および(3)に関するOT−I細胞カウントは、2日目以降に測定した場合観察された値より少ないが、組成物(4)に関するOT−I細胞カウントは、2日目以降に測定した場合も観察された値と同様であることが予期される。
【0614】
(実施例12)
ナノ粒子ターゲティング
I.リガンドを含有するリポソームによる被膜下洞マクロファージ(SCS−Mph)ターゲティング
リポソームの調製および特徴付け。小さな単層リポソームを、小胞押し出し法によって調製した。クロロホルム中に溶解した脂質を、窒素の流れの下で乾燥させ、その後に3時間の真空乾燥を行った。次に、脂質をPBS緩衝液中で再水和させた。5回の凍結融解サイクル後に、リポソームを、100nm孔を有するポリカーボネートフィルター(Whatman)に通して20回押し出した。この方法によって調製したリポソームを、粒径分析器(Brookhaven Instruments)を用いて動的光散乱法によって特徴付けた。
【0615】
SCS−Mphターゲティングについて試験したリポソーム。(1)1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)、モノシアロガングリオシドGM3、およびN−4−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾールホスファチジルエタノールアミン(NBD−PE)を含有するリポソームのいくつかの試料を、調製した。試料全体にわたるGM3の密度は、約10〜約30mol%で変動した。脂質濃度は、約1mg/mLであり、平均リポソームサイズは、約110nmである。ターゲティングデータは、GM3密度が高いほど、よりよいターゲティングをもたらすことができたことを示した。特に、データは、sc注射の1時間後に流入領域LNにおけるSCS Mphにリポソームの蓄積を示した。(2)POPCおよびNBD−PEのみを含有するリポソームもまた、対照として調製した。試験した条件下でターゲティングは観察されなかった。脂質濃度およびリポソームサイズは、(1)と同様である。
【0616】
II.リガンドを含有するポリマーナノ粒子によるSCS−Mphターゲティング
1.ナノ粒子(NP)の調製および特徴付け。NPは、ナノ析出法によって調製した。100μLポリマー(アセトニトリル中のPLA−PEG−COOH 5mg/mL)を、500μL DI水の中に滴下添加した。その溶液を、2時間、400rpmで撹拌し、Amiconチューブ(100KDa)を使用することによってDI水を用いて2回およびPBSを用いて1回洗浄した。NP溶液の最終濃度は、約1mg/mLであった。平均粒径(約74nm)を、粒径分析器(Brookhaven Instruments)を用いて動的光散乱法によって決定した。
【0617】
2.リガンドコンジュゲーション。リゾチーム、プロテインG、抗CD169、およびシアリルラクトースを含むリガンドを、EDC/NHS反応によってNP表面にコンジュゲートした。ポリマーナノ析出(nanoprecipitation)後に、そのNP溶液を、DI水を用いて2回洗浄した。次いで、表面カルボン酸基を、1時間のEDC/NHS(15mg/mL)溶液とのインキュベーションによって活性化した。過剰のEDCおよびNHを、DI水および次いでPBS緩衝液を用いて洗浄して除いた。次いで、NP溶液を、2時間、リガンド溶液と混合し(ポリマー対リガンドのモル比は、タンパク質について1:1であり、シアリルラクトースについて1:2である)、3回、PBS緩衝液を用いて洗浄した。PLA−PEG−OCH3ターゲティング実験については、NPは、(1)において記載されるのと同じ手順を用いて調製した。NP画像化のために、10%PLA−Alexa Fluor 647を、ナノ析出実験においてPLA−PEGポリマーと混ぜ合わせた。
【0618】
結論:共焦点蛍光画像により、NP−OCH3およびNP−抗CD169が、SCS−Mphに結合することができたことならびにSCS中のNPシアリルラクトースの少量の蓄積を示した。SCS−MphへのNPリゾチームおよびNPプロテインGの結合は、特定のセットの実験条件下で観察されなかった。
【0619】
III.リガンドを含有するポリスチレンビーズによるSCS−Mphターゲティング
1.ポリスチレンビーズおよびリガンドのコンジュゲーション。NeutrAvidin標識ビーズ(FluoSpheres、0.01g/mL)は、Invitrogenから購入した。平均サイズは、約200nmである。ビオチン化抗CD169およびビオチン化オリゴマーG(12mer)を含むリガンドを、2時間のインキュベーションによってNeutrAvidin標識ビーズに連結した。
【0620】
2.結果。抗CD169コンジュゲートビーズおよびオリゴマーGコンジュゲートビーズの両方が、SCS−Mphに蓄積した。
【0621】
(実施例13)
T細胞発現
様々な濃度の様々な遊離アジュバント(つまり、ナノ粒子と結合していない)を含有する一連の溶液を調製した。アジュバントは、CL097、イミキモド、LPS、R848、およびR854であった。そのようなアジュバントが樹状細胞の活性化を誘導する能力を決定するために、DCを、異なるアジュバント溶液の存在下において一晩インキュベートした。活性化マーカー(CD40、CD80、およびCD86)の表面発現を測定した。データを
図35aに示す。結果は、未処理樹状細胞と比較した誘導倍数として表す。同じ実験手順を使用して、そのままの(plain)ナノ粒子(つまり官能性を持たせていないまたは免疫刺激成分もしくは免疫調節成分と結合していない)の活性を試験し、NPそれ自体がDCの活性化を誘導していないことを示すためにLPSと比較した。データを
図35bに示す。さらに、同じ実験手順を使用して、そのままのNP、封入されたR848を有するNP(NP[R848])、コンジュゲートされたR848を有するNP(NP−R848)、および遊離LPSの、DCの活性を誘導することにおける活性を比較した。データを
図35cに示す。
【0622】
図36は、T細胞増殖を示すFACSデータを提供する。ナイーブT細胞は、細胞質色素CFSEを用いて標識する。細胞が分裂すると、色素は娘細胞間に分割され、そのため、それらは2分の1の蛍光性となる。これらの細胞がさらに分裂すると、それらは4分の1の蛍光性などとなる。このように、ピークは、細胞分裂の数に相当する。以下の製剤を試験した:遊離SIINFEKL;遊離SIINFEKLおよび遊離R848;封入されたSIINFEKLを有するNP(NP[SIINFEKL]);ならびにコンジュゲートされたR848および封入されたSIINFEKLを有するNP(NP−R848[SIINFEKL])。
【0623】
(実施例14)
コンジュゲートの形成
コチニン−PEG−コチニンのコンジュゲートを、両側末端機能化(doubly end−functionalized)PEGを使用して、以下の反応式に従って形成した:
【0624】
【化2】
水素化アルミニウムリチウムを用いたコチニン−PEG−コチニンの還元は、HO−PEG−ニコチンを形成させる:
【0625】
【化3】
同様に、HO−PEG−ニコチンを以下の反応に従った開環重合におけるイニシエーターとして使用してニコチンとコンジュゲートしたPLAおよびPEGのコポリマーを調製した:
【0626】
【化4】
ニコチン−NPを、50%PLA−PEG−ニコチンおよび50%PLAを使用して調製し、皮下(sc)注射を介してマウスに投与した。sc注射の1時間後に流入領域LNを回収し、切片を、B細胞を標識するためにAPC−B220を用いて染色し(灰色)、および抗ニコチンAb(クローンHB−9123)その後、Alexa568−抗−マウスIgG(赤色)を用いて染色した。蛍光データは、sc注射の1時間後、ニコチン−NPが、流入領域LNのSCSに蓄積することを示している。
【0627】
(実施例15)
免疫マウスにおける抗ニコチンIgG
実験の第1シリーズにおいて、C57BL6マウスの群(4〜5匹)を、0日目に、ニコチン免疫ナノ治療用組成物を用いて免疫し、2、4および8週後に追加免疫した。ELISAによってAb力価を測定し、抗ニコチンMAbからの標準曲線と比較し、濃度を計算した。マウスの1つの群は、ワクチン接種前にOVA特異的OT−II T細胞(5×10
5IV)を投与され、T細胞の助けを上昇させた。データを
図36に示す。曲線を、免疫製剤によって特定する。例えば、「ニコチン+R848+OVA」と表示されたデータは、遊離のニコチン、遊離のR848および遊離のOVAを含有する製剤を用いて免疫されたマウスを示す。「PLA−ニコチン[OVA]」と表示されたデータは、カプセル化OVAを有するPLA−ニコチンナノ粒子を含有する製剤を用いて免疫されたマウスを示す。
【0628】
実験の第2シリーズにおいて、さらなるニコチン力価を決定し、
図37に示す。さらなるデータは、初期(3週目)の力価を示す。注射の用量およびタイミングに関するプロトコールは、第1シリーズと同じであった。しかし、いくつかの新しい粒子製剤を試験し、a)あらかじめ凍結したナノ粒子(50%のニコチン−PEG−PLAを含有する)がそれらの免疫原性を保有しているかどうか;b)ニコチン−PEG−PLAの含有量が抗体力価にどのように影響を与えるか;およびc)ナノ粒子(50%ニコチン−PEG−PLA)が、MHCクラスII欠損マウスにおいて作用するかどうか、を評価した。製剤は、以下のようである:(1)50%ニコチン−PEG−PLAおよび50%PLA−R848を有するNPであって、カプセル化OVAを含むNP、調製されたまま使用(すなわち、凍結しない);(2)50%ニコチン−PEG−PLAおよび50%PLA−R848を有するNPであって、カプセル化OVAを含むNP、一晩凍結しその後解凍して使用;(3)5%ニコチン−PEG−PLA、45%PLA−PEGおよび50%PLA−R848を有するNP;(4)25%ニコチン−PEG−PLA、25%PLA−PEGおよび50%PLA−R848を有するNP;(5)75%ニコチン−PEG−PLAおよび25%PLA−R848を有するNP、R848の用量を一定に保つために通常の用量の2倍の製剤を投与;(6)50%ニコチン−PEG−PLAおよび50%PLAを有するNPであって、カプセル化OVAを含むNP、遊離のR848は、注射の直前に製剤に混合した;(7)50%ニコチン−PEG−PLAナノ粒子および50%PLA−R848を有するNPであって、カプセル化OVAを含むNP、ワクチン接種前に、マウスにOVA−特異的OT−II T細胞を投与;(8)50%ニコチン−PEG−PLAおよび50%PLA−R848を有するNPであって、カプセル化OVAを含むNP、MHCクラスII欠損マウス;ならびに(9)50%ニコチン−PEG−PLAおよび50%PLAを有するNPであって、カプセル化OVAを含むNP、MHCクラスII欠損マウス。ELISA感度における差のため、このシリーズにおける力価の絶対値は第1シリーズのデータと直接比較できない。以下の結論に達した:a)あらかじめ凍結し、解凍したNPは未だ免疫原性であった;b)初期の抗体力価は、5から50%の範囲のニコチン−PEG−PLA含有量(常に同じ50%量のR848−PLAを含む)を有するNPを投与されたマウスにおいて同様であったが、75%ニコチン−PEG−PLAを使用したNPの場合低かった;c)ニコチン−NPに対する体液性応答は、MHC−II欠損マウスにおいて誘導され、T−非依存性IgG応答を誘導する能力を示した。
【0629】
図36および
図37におけるデータは、遊離のニコチン(すなわち、コンジュゲートしていない)は、PLA−R848、R848および/またはOVAと一緒に投与された場合でさえ、ニコチン抗体の産生を引き出さないことを示している。しかし、ニコチンナノ粒子は、このような産生を引き出す。T細胞の助けが存在しなくても、本明細書に記載のニコチンナノ粒子は、実質的な抗体産生を引き起こす。
【0630】
まとめると、
図36に示すデータは、免疫特徴表面、例えば、ニコチン、有効な送達アジュバントおよびAPCに対するタンパク質ベースの抗原を含む免疫特徴表面などの免疫特徴表面を含む合成ナノキャリアが、ヘルパーT細胞の強力な活性化をもたらすことをさらに実証する。このことは、R848およびOVAの両方を組み込んだPLA−PEG−ニコチン合成ナノキャリアを用いた免疫の際に、OT−II細胞を投与されていなかったマウスと比較して、ナイーブOT−II(すなわちOVA特異的)ヘルパーT細胞を投与されたマウスにおいて、抗ニコチンIgG力価が約10倍強化されたという事実によって証明される。この効果は、免疫特徴改変合成ナノキャリア内に含有されたアジュバント(R848)およびT細胞抗原(OVA)が、T細胞にOVAを提示するDCに効率的に標的化されたことを示す。OT−II細胞を投与された動物におけるOVA特異的T細胞の非常に優れた有用性は、B細胞による抗ニコチン抗体の産生を上昇させるヘルパー応答の強化をもたらした。したがって、上記の基準に従った免疫特徴表面を形成できる成分は、APCに対するその結合親和性が低すぎてin vitroの捕捉アッセイによって検出できない場合であっても、合成ナノキャリアの免疫原性を上昇させることができる。
【0631】
(実施例16)
in vivoにおいてリンパ節APCを標的にするナノ粒子
ニコチン改変ナノ粒子および対照(PLA−PEG)ナノ粒子はin vivoで、リンパ節APCに蓄積する。蛍光ナノ粒子(約100nm)を、二重エマルジョン手順を用いて作製した。ニコチン粒子は、50%PLA−PEG−Nic(約15kD PLA)、15%PLGA−染料−PLGA(合計約15kD PLGA)および35%PLA(約15kD)から構成され、一方、対照粒子は、50%PLA−PEG(約15kD PLA、メトキシ末端化PEG)、15%PLGA−染料−PLGA(合計約15kD PLGA)および35%PLA(約15kD)を使用して作製された。DCに対するターゲティングを評価するために、カプセル化OVAタンパク質(OVA)含有および非含有の2セットの対照粒子を作製した。粒子のすべてのセットを作製し、PLGA−ローダミン−B(=PLGA−染料)を緑色(543nm)蛍光標識として組み込んだ。加えて、対照粒子(OVA非含有)もまた作製し、スペクトルが異なる(赤色)蛍光発光を有するAlexa647を組み込んだ。全緑色粒子を、等量の赤色対照粒子と混合し、混合物を若い成体C57/BL6マウスの足蹠に注射した。膝窩流入領域リンパ節を、4時間後または24時間後に回収し、1%パラホルムアルデヒド/過ヨウ素酸塩を含むリン酸塩緩衝L−リシンを用いて、4℃において一晩固定し、PBS中10%、20%および30%スクロースの上昇系列によって凍結保護し、組織凍結培地(Triangle Biomedical Sciences、Durham、NC)において急速凍結し、凍結切片の免疫蛍光分析のために調製した。APCに対するターゲティングを、Adobe Photoshop CS3を使用して、デジタル共焦点顕微鏡画像の面積測定によって決定した。データを、
図38aおよび38bに提供する。
【0632】
図38aにおいて、4時間目の試料を使用して、リンパ節切片全体(F−合計)およびSCS(F−scs)に割り当てられた対象領域(ROI)における緑色(被験)および赤色(対照)の蛍光ピクセルの総数を定量化することによって、被膜下洞(SCS)マクロファージにおける蓄積を評価した。「相対的蓄積」は、F−scs/F−合計×100%で得られる。データに示すようにニコチン含有試料(「ニコチン4時間」)は、対照(「PLA−PEG 4時間」)と比較してSCS中に有意に多い相対的蓄積を生じた。
【0633】
図38bにおいて、24時間試料においてCD11cの共局在の分析を実施し、樹状細胞(DC)に対するターゲティングを評価した。T細胞ゾーン中のDCを、青色蛍光抗CD11cを用いて染色することによって特定し、ROIとして定めた。ROIと共局在した緑色および赤色のピクセルの数を測定し、比率として表した。赤色および緑色蛍光対照粒子ならびにカプセル化OVAを含む粒子は、DCにおいて同様の蓄積を示し、一方、ニコチンから構成される免疫特徴表面は、APCに対して統計的に有意なターゲティングをもたらした。
【0634】
要するに、本明細書に提示されたデータは、本明細書の他のところで規定された免疫特徴表面を組み込む合成ナノキャリアを作製できることの証拠を提供する。被膜下洞マクロファージ(SCS−Mph)および樹状細胞(DC)に対する合成ナノキャリアの免疫特徴表面誘導性ターゲティングに関する証拠は、上記のように、蛍光合成ナノキャリアをマウスの足蹠に注射し、その後、流入領域リンパ節における合成ナノキャリアの分布およびプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)との会合の引き続く分析によって実証された。
【0635】
(実施例17)
樹状細胞結合のIn vitro比較
様々な密度の固定化抗CD11cまたはニコチンでコーティングされたマイクロタイタープレート上のマウスDCのin vitroの蓄積を使用して、免疫特徴表面の特性の証拠をさらに提供した。データを
図39aおよび39bに示す。
【0636】
図39aにおいて、MAXISORP(商標)NUNC−IMMUNO(商標)96MICROWELL(商標)プレート(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS;Mediatech Inc.、Manassas、VA)中の精製ハムスター抗−マウスCD11c抗体(Clone HL3、BD Biosciences、San Jose、CA)を用いて、表示の濃度で1時間、37℃においてコーティングした。次いで、プレートをPBSで3回洗浄した。樹状細胞(DC)を、免疫磁気陽性細胞分取(positive immunomagnetic cell sorting)(約98%CD11c+;Miltenyi Biotec)によって、ドナーC57BL/6マウス(Charles River、Wilmington、MA)の脾臓から精製した。DCを、10%(vol/vol)ウシ胎児血清(FCS;Invitrogen、Carlsbad、CA)を含む、RPMI(Mediatech Inc.、Manassas、VA)中の5mMのCFSE(カルボキシフルオレセイン−ジアセテート−スクシンイミジル−エステル;Invitrogen、Carlsbad、CA)とともに、25℃において7分間インキュベートし、洗浄し、表示の濃度で各ウェルに加えた。次いで、プレートを、60rpmのシェーカー上で、37℃で15分間インキュベートした。プレートをPBSに浸すことによって2回洗浄し、4%パラホルムアルデヒドを用いて固定し、Perkin Elmer Victor Fluorescence Plate Reader(485nm/535nm、1.0秒)を使用して読み取った。データは、表面固定化CD11c抗体が、試験したすべての濃度において、樹状細胞との顕著な結合を提供したことを示す。
【0637】
図39bにおいて、マイクロタイタープレートを、希釈せずに使用するか(100%)、または様々な比率でメトキシ末端化PEG−PLAと混合したPLA−PEG−ニコチンを用いてコーティングした。ニコチンの固定化を、ニコチン−特異的MAbの結合を測定することによって検証した(クローン402C10; Bjercke ら、J Immunol Methods. 1986年6月24日、90巻(2):203〜13頁)。100%のPLA−PEG−ニコチンを用いてコーティングしたプレートは、10
15ニコチン分子/cm
2が存在すると推定されるが、最大の抗CD11 MAbコーティング(1μg)は、およそ10
11 IgG分子/cm
2の密度をもたらした。(A)におけるように、DCを精製し、染色し、プレートに加えた。(A)におけるように、プレートをインキュベートし、洗浄し、固定し、読み取った。(実施例16で実証されたように)ナノキャリアにおいて免疫特徴として使用した場合、ニコチンは、in vivoでAPCターゲティング特性をもたらしたが、最大のAPC結合をもたらすために必要な高親和性抗体のコーティング密度より4桁を超えて高かったコーティング密度でさえ、APCに対する結合親和性が低すぎてAPCの検出可能な結合を仲介できなかった。このことは、ニコチン−NPが、低親和性、高アビディティの表面を提供することのさらなる証拠である。
【0638】
図39aおよび39bは、ニコチン免疫特徴表面が、低親和性/高アビディティ相互作用を介してAPCと相互に作用することを実証する。マイクロタイタープレートを、広範囲の濃度で、ニコチン(ニコチン−PEG−PLAを使用)または、DCにおいて特異的に発現する糖タンパク質である、CD11cに対して高親和性のMAbのどちらかを用いて表面コーティングした。パネルAは、高親和性MAbが、マイクロタイタープレートに加えられた懸濁DCと効率的に結合し、固定化することを示す。対照的に、ニコチン免疫特徴表面コーティングプレートは、最も高い達成可能なニコチン密度(10
15分子/cm
2)においてさえ、コーティングしていない対照表面と比較してDCを効率的に捕捉せず、最も高い達成可能なニコチン密度(10
15分子/cm
2)は、同一のアッセイ条件のもとで、効率的なDC結合を仲介するMAb密度より少なくとも3桁高かった。このことは、採用したアッセイ条件において、マウスDCに対するニコチン免疫特徴表面の親和性が低すぎて、プレートの穏やかな洗浄の際のDCの脱離に耐える十分な機械的強度でDCを結合できないことを実証する。それにもかかわらず、本明細書に提示するin vivoのターゲティング結果に基づき、ニコチン免疫特徴表面が、ニコチン免疫特徴表面を含む合成ナノキャリアの脱離に抵抗するために十分な高アビディティでAPCと結合できると結論付けることが合理的である。
【0639】
(実施例18)
APCターゲティングのin vivo試験
(先に記載の)
図27のデータは、アミン改変合成ナノキャリアが、カルボン酸塩改変合成ナノキャリアより効率的にSCS−Mphを標的にすることを実証している。したがって、アミンによる改変は、免疫特徴表面の一実施形態を作り出す。
【0640】
さらに、
図40aおよび40bは、ニコチンを含む免疫特徴表面がSCS−Mphに対するターゲティングをもたらすが、対照粒子はこのようなターゲティングをもたらさないことを実証している。PLA−PEG−ニコチン(左)またはPLA−PEG対照ナノ粒子(右)を、若い成体C57/BL6マウスの足蹠に注射した。粒子は、
図36に記載の免疫実験のものと同じであった。1時間後、膝窩流入領域リンパ節を回収し、1%パラホルムアルデヒド/過ヨウ素酸塩を含むリン酸塩緩衝L−リシンを用いて、4℃において一晩固定し、PBS中10%、20%および30%スクロースの上昇系列によって凍結保護し、組織凍結培地(Triangle Biomedical Sciences、Durham、NC)において急速凍結し、凍結切片の免疫蛍光分析のために調製した。切片を、ニコチン特異的MAb(クローン402C10;Bjercke ら、J Immunol Methods.1986年6月24日;90巻(2):203〜13頁)を用いて染色し、その後、Alexa568−コンジュゲート抗マウスIgG2a二次Abを用いて染色した。抗体染色のデジタルグレースケール画像を得、同一の設定を使用して処理した。可視性を改善するために、画像を、Adobe Photoshop CS3を使用してデジタル方式で変換した。
図40aおよび40bにおいて、SCS領域を、矢印によって特定してある。
図40aにおいて、十分量のナノ粒子がSCSにおいて観察されるが、
図40bにおいて、十分量のナノ粒子はSCSにおいて観察されていない。
【0641】
様々な表面結合成分を使用する免疫特徴表面のさらなる例として、
図41(a)〜(d)は、GM3がSCSに対するナノ粒子ターゲティングを与えることを示すデータを提供する。
【0642】
単層リポソームを、小胞押し出し法によって調製した。クロロホルム中に溶解した脂質を、窒素の流れの下で乾燥させ、その後に3時間の真空乾燥を行った。次いで、脂質をPBS緩衝液で再水和させた。5回の凍結融解サイクル後に、リポソームを、100nm孔を有するポリカーボネートフィルター(Whatman)によって20回押し出した。この方法によって調製したリポソームを、粒径分析器(Brookhaven Instruments)を用いて動的光散乱法によって特徴付け、平均リポソームサイズは、約110nmであることが分かった。
【0643】
POPC/GM3(30モル%)/NBD−PE(a、c)またはPOPC/NBD−PE(b、d)を、若い成体C57/BL6マウスの足蹠に注射した。流入領域膝窩リンパ節を、1時間後に採取し、1%パラホルムアルデヒド/過ヨウ素酸塩を有するリン酸塩緩衝L−リシンを用いて4℃で一晩固定し、PBS中10%、20%、および30%スクロースの上昇系列によって凍結保護し、組織凍結培地(Triangle Biomedical Sciences、Durham、NC)中でスナップ凍結し、凍結切片の免疫蛍光法分析のために調製した。リポソーム蛍光シグナルのデジタルグレースケール画像を獲得し、同一の設定を使用して処理した。鮮明度を改善するために、画像をAdobe Photoshop CS3を使用してデジタルで反転した。
図41において、「SCS」は被膜下洞を指し、「Med」は髄質を指す。
【0644】
図41(a)および41(b)は、リンパ節の横断面の全体図を示す。
図41(c)および41(d)は、被膜下洞領域のクローズアップ写真を示す。
【0645】
図41に示されるように、対照ナノ粒子(nnoparticle)およびGM3改変ナノ粒子(nnoparticle)の両方が髄質中に保持されるが、GM3改変ナノ粒子のみがSCS中に蓄積し、そのことは、ナノキャリアが被膜下洞マクロファージを標的にするように、GM3ガングリオシドが免疫特徴表面を形成することができることを示す。
【0646】
均等物および範囲
当業者は、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を、認識するか、または単なる通例の実験を用いて確かめることができる。本発明の範囲は、上記の説明に限定されると意図されず、添付の特許請求の範囲によって示されるとおりである。
【0647】
当業者は、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を、認識するか、または単なる通例の実験を用いて確かめることができる。本発明の範囲は、上記の説明に限定されると意図されず、添付の特許請求の範囲によって示されるとおりである。
【0648】
本特許請求の範囲において、「a」、「an」および「the」などの冠詞は、反対のことが示されていないか、または文脈から明らかでない限り、1つまたは複数を意味し得る。したがって、例えば、「ナノ粒子(a nanoparticle)」という表示は、複数のこのようなナノ粒子を含み、「細胞(the cell)」という表示は、当業者に公知の1つまたは複数の細胞に対する言及を含むなどである。ある群の1つまたは複数のメンバー間に「または」を含む請求項または説明は、反対のことが示されていないか、または文脈から別途明らかでない限り、1つ、複数またはすべての群のメンバーが、所与の生成物またはプロセスに存在するか、採用されているか、または関連性があることを満たすとみなされる。本発明は、その群の厳密に1つのメンバーが、所与の生成物またはプロセスに存在するか、使用されているか、または関連性がある、実施形態を含む。本発明は、1つより多いか、またはすべてのその群のメンバーが、所与の生成物またはプロセスに存在するか、使用されているか、または関連性がある、実施形態を含む。さらに、本発明は、1つまたは複数の列挙される請求項からの1つまたは複数の制限、要素、節、記述用語などが、別の請求項に導入されている、すべてのバリエーション、組み合わせおよび置換を包含すると理解されるべきである。例えば、別の請求項に従属している任意の請求項は、同じ基本請求項に従属する他の任意の請求項に見出だされる1つまたは複数の制限を含むように変更され得る。さらに、本特許請求の範囲が組成物を列挙している場合、別途記載されていないか、または矛盾もしくは不一致が生じ得ると当業者に明らかでない限り、本明細書中に開示される目的のいずれかのためにその組成物を使用する方法が含まれ、本明細書中に開示される生成方法のいずれかに従ってその組成物を生成する方法または当該分野で公知の他の方法が含まれることが理解されるべきである。
【0649】
要素が列挙として、例えば、マーカッシュ形式(Markush group format)で提示されている場合、それらの要素の各サブグループもまた開示され、任意の要素(複数可)が、その群から除去され得ると理解されるべきである。通常、本発明または本発明の態様が、特定の要素、特徴などを含むと言及される場合、本発明のある実施形態または本発明の態様は、このような要素、特徴などからなるか、またはそれらから本質的になると理解されるべきである。単純化の目的で、それらの実施形態は、これらの言葉で本明細書中に具体的に示されていない。「〜を含む(comprising)」という用語は、オープンであることおよびさらなる要素または工程の包含を許容することが意図されることに留意されたい。
【0650】
範囲が与えられる場合、エンドポイントは含まれる。さらに、別途記載されていないか、または文脈および当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表現される値は、本発明の様々な実施形態において、記載される範囲内の任意の特定の値または部分領域を、文脈が明らかに別のことを示していない限りその範囲の下限の単位の10分の1まで想定し得ると理解されるべきである。
【0651】
さらに、従来技術内に包含される本発明の任意の特定の実施形態は、本請求項の任意の1つまたは複数から明確に除外され得ると理解されるべきである。このような実施形態は、当業者に公知であるとみなされるので、それらは、その除外が本明細書中で明確に示されていない場合も除外され得る。本発明の組成物の任意の特定の実施形態(例えば、任意の免疫調節作用物質、任意のターゲティング成分、任意の免疫刺激作用物質、任意の抗原提示細胞、任意のワクチンナノキャリア構造、任意の微生物、任意の投与方法、任意の予防的および/または治療的な適用など)は、従来技術の存在に関係があってもなくても、任意の理由のために任意の1つまたは複数の請求項から除外され得る。
【0652】
上記および本文中の全体において記述される刊行物は、本出願の出願日前に、その開示のために単独で提供されている。本発明者らが、事前開示の理由でこのような開示に先行する権利を与えられないという承認と解釈されるものは本明細書中にない。