特許第6133610号(P6133610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大和ハウス工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6133610-室内環境調節システム 図000002
  • 特許6133610-室内環境調節システム 図000003
  • 特許6133610-室内環境調節システム 図000004
  • 特許6133610-室内環境調節システム 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133610
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】室内環境調節システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/02 20060101AFI20170515BHJP
   A61B 5/01 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   F24F11/02 S
   A61B5/00 101D
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-20907(P2013-20907)
(22)【出願日】2013年2月5日
(65)【公開番号】特開2014-152954(P2014-152954A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2016年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】山下 泰弘
【審査官】 佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−003920(JP,A)
【文献】 特開2008−073314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/02
A61B 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者が排泄する尿の温度を検出する尿温検出手段と、
前記被験者が生活する室内環境を調節する室内環境調節手段と、
年齢及び性別ごとに設定された複数種類の理想的な体温リズムを予め記憶し、前記被験者の年齢及び性別に応じて前記複数種類の理想的な体温リズムの中から最適だと思われる最適体温リズムを選択し、前記尿温検出手段により検出された尿の温度に基づいて前記被験者の一日の体温リズムを推定し、当該推定された体温リズムが前記最適体温リズムになるように前記室内環境調節手段によって室内環境を調節する制御手段と、
を具備することを特徴とする、
室内環境調節システム。
【請求項2】
前記室内環境調節手段は照明器具であることを特徴とする、
請求項1に記載の室内環境調節システム。
【請求項3】
前記室内環境調節手段は空調機器であることを特徴とする、
請求項1又は請求項2に記載の室内環境調節システム。
【請求項4】
前記制御手段による制御に関する情報を表示する表示手段をさらに具備することを特徴とする、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の室内環境調節システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者が排泄する尿の温度に基づいて室内環境を調節する室内環境調節システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被験者が排泄する尿の温度を検出する技術は公知となっている。例えば、特許文献1及び特許文献2に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、被験者が排泄した尿の温度を検出し、当該温度と所定の判定基準とを比較して、当該被験者の今後の体調変化を予測することができる。
【0004】
特許文献2に記載の技術では、被験者が排泄した尿の温度及び当該尿の温度に影響を与える要因(尿温影響要因)の状態値を検出し、当該尿の温度が所定の基準範囲外となった場合、尿温影響要因に関する情報を報知することで、尿の温度の変動の要因を把握することができる。
【0005】
しかしながら、上記特許文献に記載の技術では、被験者は尿の温度に基づいて自らの体調に関する情報を知ることができるものの、体調を理想的(健康的)な状態に整えるためには被験者自らが意識して照明や室温などの室内環境(生活環境)を調節する必要がある点で不利であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−73314号公報
【特許文献2】特開2009−82389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、被験者の体調の中でも特に体温リズムに着目し、当該体温リズムが理想的な状態(理想的な体温リズム)になるように、当該被験者の尿の温度に基づいて室内環境を自動的に調節することができる室内環境調節システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、被験者が排泄する尿の温度を検出する尿温検出手段と、前記被験者が生活する室内環境を調節する室内環境調節手段と、年齢及び性別ごとに設定された複数種類の理想的な体温リズムを予め記憶し、前記被験者の年齢及び性別に応じて前記複数種類の理想的な体温リズムの中から最適だと思われる最適体温リズムを選択し、前記尿温検出手段により検出された尿の温度に基づいて前記被験者の一日の体温リズムを推定し、当該推定された体温リズムが前記最適体温リズムになるように前記室内環境調節手段によって室内環境を調節する制御手段と、を具備するものである。
【0010】
請求項2においては、前記室内環境調節手段は照明器具であるものである。
【0011】
請求項3においては、前記室内環境調節手段は空調機器であるものである。
【0012】
請求項4においては、前記制御手段による制御に関する情報を表示する表示手段をさらに具備するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、被験者の体温リズムが理想的な体温リズムになるように、当該被験者の尿の温度に基づいて室内環境を自動的に調節することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の一形態に係る室内環境調節システムを示した模式図。
図2】制御装置による制御のフローを示した図。
図3】理想的な体温リズムと被験者の体温リズムを示した図。
図4】被験者の体温リズムの他の例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、図1を用いて、本発明の実施の一形態に係る室内環境調節システム1の構成について説明する。
【0016】
室内環境調節システム1は、住宅を含む建築物に設けられ、ある被験者の尿の温度に基づいて室内環境を自動的に調節するものである。
【0017】
ここで「被験者」とは、室内環境調節システム1が設けられた建築物内で、ある程度の時間を過ごす(生活する)人であり、当該室内環境調節システム1による体温リズムの調節の対象となる人である。
【0018】
また、「室内環境」とは、前記建築物内(室内)のあらゆる環境(例えば、照明、温度、湿度、音等)を含むものであるが、本実施形態においては、特に照明及び温度に着目して説明を行う。
【0019】
室内環境調節システム1は、主として尿温センサ10、照明器具20、空調機器30、タブレット端末40及び制御装置50を具備する。
【0020】
尿温センサ10は、本発明に係る尿温検出手段の一実施形態であり、被験者が排泄する尿の温度(尿温)を検出するものである。尿温センサ10は、前記建築物に設置された便器11に設けられる。尿温センサ10は、被験者が尿を排泄する際に、当該尿の温度を検出する。
【0021】
照明器具20は、本発明に係る室内環境調節手段の一実施形態であり、被験者が生活する前記建築物の室内の照明(照明環境)を調節するものである。照明器具20は、その明るさを段階的に(又は、無段階的に)調節することができる。
【0022】
空調機器30は、本発明に係る室内環境調節手段の一実施形態であり、被験者が生活する前記建築物の室内の温度を調節するものである。
【0023】
タブレット端末40は、本発明に係る表示手段の一実施形態であり、表示装置(ディスプレイ)及び入力装置(タッチパネル)を具備し、所定の情報を表示して被験者に報知したり、当該被験者が操作することによって情報を入力したりするものである。
【0024】
制御装置50は、本発明に係る制御手段の一実施形態であり、被験者の尿温に基づいて、照明器具20及び空調機器30の動作を制御するものである。制御装置50は、パソコン等のコンピュータであり、RAMやROM、並びにCPU等により構成される。制御装置50には、照明器具20及び空調機器30等を制御するための制御プログラム等の必要な情報が記憶される。
【0025】
制御装置50は尿温センサ10に接続され、当該尿温センサ10が検出した被験者の尿温に関する情報を取得することができる。
制御装置50は照明器具20に接続され、当該照明器具20の動作(具体的には、当該照明器具20の明るさ)を制御することができる。
制御装置50は空調機器30に接続され、当該空調機器30の動作(具体的には、当該空調機器30の温度設定)を制御することができる。
制御装置50はタブレット端末40に接続され、当該タブレット端末40により入力された情報を取得すると共に、所定の情報を当該タブレット端末40に表示させることができる。
【0026】
次に、図2及び図3を用いて、上述の如く構成された室内環境調節システム1による室内環境の調節の様子(制御態様)について説明する。
【0027】
図2のステップS101において、制御装置50は、被験者の尿温を検出する。具体的には、ある一日において、被験者が尿を排泄する度に、制御装置50は尿温センサ10によって当該尿温を検出する。
【0028】
ここで、尿温は被験者の体の深部の体温と同じに保たれているため、当該尿温を検出することによって、被験者の体温を比較的正確に検出することができる。
【0029】
そして、制御装置50は、当該尿温(すなわち、被験者の体温)及び当該体温を検出した時間を記憶する。ある一日における被験者の体温と当該体温を検出した時間を、図3上に点P1から点P6までで示している。
【0030】
制御装置50は、ステップS101の処理を行った後、ステップS102に移行する。
【0031】
図2のステップS102において、制御装置50は、ステップS101において検出した被験者の体温に基づいて、当該被験者の一日の体温リズムを推定する。
【0032】
ここで、「体温リズム」とは、体温の周期的な変化を意味する。通常、体温は約24時間(一日)周期で変動する。
【0033】
制御装置50は、図3に示す点P1から点P6までを近似することによって、被験者の体温リズムを推定する。当該推定された体温リズムを、図3上に曲線C1で示している。なお、通常、体温リズムは2つの頂点(最小値及び最大値)を持つ曲線状になる。
【0034】
制御装置50は、ステップS102の処理を行った後、ステップS103に移行する。
【0035】
図2のステップS103において、制御装置50は、ステップS102において推定された被験者の体温リズムと、理想的な体温リズムとを比較し、どのように異なっているかを判定する。
【0036】
ここで、「理想的な体温リズム」とは、一般的に健康的だと考えられている体温リズムを意味する。当該理想的な体温リズムは、予め制御装置50に記憶されている。当該理想的な体温リズムを、図3上に曲線Ctで示している。
【0037】
制御装置50は、ステップS102において推定された被験者の体温リズム(曲線C1)と理想的な体温リズム(曲線Ct)の頂点の位置や各時間における体温の大小を比較し、その相違点を判定する。
【0038】
本実施形態においては、曲線C1の最小値及び最大値は曲線Ctの最小値及び最大値とそれぞれ略同一であるため、その振幅(最小値と最大値の差)も略同一である。しかし、曲線C1の周期(例えば、最小及び最大となる時間)は、曲線Ctの周期に対して約3時間ほど後にずれている。制御装置50は、当該相違点(周期のずれ)を記憶する。
【0039】
制御装置50は、ステップS103の処理を行った後、ステップS104に移行する。
【0040】
図2のステップS104において、制御装置50は、ステップS103における比較結果(曲線C1と曲線Ctとの相違点)に基づいて、照明器具20及び空調機器30の制御方法を決定する。
【0041】
すなわち、制御装置50は、上述の如く曲線C1と曲線Ctとの間に相違点(本実施形態の例では、周期のずれ)がある場合、曲線C1(被験者の体温リズム)が曲線Ct(理想的な体温リズム)になる(近づく)ような照明器具20及び空調機器30の制御方法を決定する。
【0042】
具体的には、本実施形態においては曲線C1の周期が、曲線Ctの周期に対して約3時間ほど後にずれているため、当該曲線C1の周期を前にずらす(修正する)必要がある。このために、制御装置50は、夜間(例えば、18時から24時まで)の照明器具20の明るさ(照度)を下げると共に、早朝(例えば6時から9時まで)の照明器具20の明るさ(照度)を上げる、という制御方法を決定する。このような制御方法によって、被験者の夜間の体温の低下の開始(すなわち、体温が最大となる時間)を早めると共に、被験者の朝の体温の上昇の開始(すなわち、体温が最小となる時間)を早める効果が期待される。
【0043】
制御装置50は、ステップS104の処理を行った後、ステップS105に移行する。
【0044】
図2のステップS105において、制御装置50は、ステップS104において決定した制御方法に従って、照明器具20及び空調機器30の制御を行い、室内環境(室内の照明及び温度)を調節する。
【0045】
すなわち、制御装置50は、ステップS104において決定した如く、照明器具20を制御して、夜間の照明器具20の明るさ(照度)を下げると共に、早朝の照明器具20の明るさ(照度)を上げる制御を行い、被験者が生活する室内環境を調節する。
【0046】
制御装置50は、ステップS105の処理を行った後(例えば、ステップS105の制御を数日間行った後)、再びステップS101に移行する。すなわち、本制御(ステップS101からステップS105まで)を繰り返し行うことによって、被験者の体温リズムを徐々に理想的な体温リズムに近づけることができる。また、本制御を繰り返す度に被験者の尿温を検出し(ステップS101)、その時の被験者の体温リズムに応じた制御方法を決定することができる(ステップS104)。すなわち、常に被験者の体温リズムの変化に応じた最適な制御方法によって、室内環境を調節することができる。
【0047】
また、制御装置50は、本制御(ステップS101からステップS105まで)を行う際、当該制御に関する情報を自動的に(又は、被験者によるタブレット端末40の操作に応じて)タブレット端末40に表示させる。具体的には、制御装置50は、検出された被験者の尿温(ステップS101)、推定された被験者の体温リズム(ステップS102)及び理想的な体温リズム、決定された制御方法(ステップS104)、並びに現在行われている制御の内容(照明器具20及び空調機器30の動作状態)等をタブレット端末40に表示させる。被験者はタブレット端末40の表示内容を確認することで、自らの体調(尿温や体温リズム)や制御装置50による制御の内容等を知ることができる。
【0048】
以上の如く、本実施形態に係る室内環境調節システム1は、
被験者が排泄する尿の温度を検出する尿温センサ10(尿温検出手段)と、
前記被験者が生活する室内環境を調節する室内環境調節手段と、
前記尿温センサ10により検出された尿の温度に基づいて前記被験者の一日の体温リズムを推定し、当該推定された体温リズムが理想的な体温リズムになるように前記室内環境調節手段によって室内環境を調節する制御装置50(制御手段)と、
を具備するものである。
【0049】
このように構成することにより、被験者の体温リズムが理想的な体温リズムになるように、当該被験者の尿の温度に基づいて室内環境を自動的に調節することができる。すなわち、被験者は体温リズムの調節のために自ら室内環境を調節する必要がなくなる。
また、被験者の体温リズムを理想的な体温リズムにすることによって、当該被験者の睡眠の質の向上、免疫力の向上、基礎代謝の向上、冷え性の改善等が期待される。
【0050】
また、本実施形態に係る室内環境調節システム1の前記室内環境調節手段は照明器具20である。
【0051】
このように構成することにより、体温リズムに与える影響が大きいと考えられる室内の照明を調節することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る室内環境調節システム1の前記室内環境調節手段は空調機器30である。
【0053】
このように構成することにより、体温リズムに与える影響が大きいと考えられる室内の温度を調節することができる。
【0054】
また、室内環境調節システム1は、
制御装置50による制御に関する情報を表示するタブレット端末40(表示手段)をさらに具備するものである。
【0055】
このように構成することにより、被験者は当該タブレット端末40によって制御に関する情報を確認することができる。
【0056】
なお、本実施形態においては、本発明に係る室内環境調節手段の一実施形態として照明器具20及び空調機器30を例示したが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、室内環境調節手段は、被験者の体温リズムに影響を与える種々の室内環境を調節することが可能なものであれば良い。例えば、室内環境調節手段は、窓の開閉を自動的に行うことによって室内の温度や湿度の調節を行う装置、カーテンの開閉を自動的に行うことによって室内の明るさの調節を行う装置、室内に流れる音楽の音量を調節する装置等であっても良い。
【0057】
また、本実施形態においては、本発明に係る表示手段の一実施形態としてタブレット端末40を例示したが、本発明はこれに限るものではない。すなわち表示手段は、所定の情報を表示することができるものであれば、テレビや室内に備え付けられた専用のディスプレイ、パソコンのディスプレイ、スマートフォン等であっても良い。
【0058】
また、本実施形態においては、ある一日における被験者の尿温(体温)から当該被験者の一日の体温リズムを推定するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、体温リズムは日によって急激に変化するものではないため、ある一日だけではなく、例えば数日に亘って被験者の尿温(体温)を測定し、当該尿温から被験者の体温リズムを推定することも可能である。
【0059】
また、本実施形態においては、ステップS105の処理を行った後(例えば、ステップS105の制御を数日間行った後)で再びステップS101に移行するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、ステップS105の制御を行いながら、ステップS101からステップS104までの処理を再度行う構成とすることも可能である。これによって、室内環境の調節(ステップS105)を行いながら、被験者の体温リズムに関する情報を更新することができる。
【0060】
また、本実施形態においては、1つの理想的な体温リズムが制御装置50に予め記憶されているものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、年齢や性別等の個人情報ごとに設定された複数種類の理想的な体温リズムを制御装置50に予め記憶させることも可能である。そして、被験者の年齢や性別等に応じて、複数の理想的な体温リズムの中から最適なものを1つ選択して制御に用いる構成とすることが可能である。
【0061】
また、本実施形態においては、理想的な体温リズムは予め制御装置50に記憶されているものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、通常時(健康で体温リズムに狂いが無い時期)における被験者の尿温を検出し、当該尿温に基づいて当該被験者だけの理想的な体温リズムを作成し、当該理想的な体温リズムを制御に用いる構成とすることも可能である。また、予め記憶された理想的な体温リズムを、検出された被験者の尿温に基づいて修正して、当該被験者に応じた体温リズムを作成する構成とすることも可能である。
【0062】
また、本実施形態においては、ある一人の被験者の体温リズムに着目して室内環境を調節するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、一の住宅等で生活する複数の被験者それぞれの体温リズムを検出し、各被験者の体温リズムが理想的な体温リズムに近づくように室内環境を調節する構成とすることも可能である。この場合、尿温センサ10で尿温を測定する際には、どの被験者の尿温であるかをタブレット端末40等の入力装置を用いて制御装置50に入力し、各被験者の尿温のデータを区別する。また、各被験者によって調節すべき室内環境は異なるため、被験者が複数いる場合は、リビング等の複数の被験者が同時に集まる部屋ではなく、各被験者個人の部屋の室内環境を調節することが望ましい。
【0063】
また、本実施形態においては、図3に示すように、被験者の体温リズム(曲線C1)が理想的な体温リズム(曲線Ct)の周期に対して後にずれている場合を例示したが、その他にも、図4に示すような場合が想定される。
【0064】
図4の曲線C2は、被験者の体温リズム(曲線C2)が理想的な体温リズム(曲線Ct)の周期に対して前にずれている場合である。このような場合、制御装置50は、夜間(例えば、18時から24時まで)の照明器具20の明るさ(照度)を上げると共に、同じく夜間の空調機器30の設定温度を上げる制御を行う。当該制御によって、被験者の夜間の体温の低下の開始(すなわち、体温が最大となる時間)を遅くする効果が期待され、ひいては被験者の体温リズム(曲線C2)を理想的な体温リズム(曲線Ct)に近づけることができる。
【0065】
また、図4の曲線C3は、被験者の体温リズム(曲線C3)の周期は理想的な体温リズム(曲線Ct)と略同一であるものの、曲線C3の最大値が曲線Ctの最大値よりも小さく、また曲線C3の最小値が曲線Ctの最小値よりも大きい場合である。すなわち、当該被験者の体温リズム(曲線C3)は、朝方に体温が下がりきれておらず、また夕方に体温が上がりきれていない。このような場合、制御装置50は、朝方(例えば、5時から7時まで)の空調機器30の設定温度を下げると共に、夕方(例えば、17時から19時まで)の空調機器30の設定温度を上げる制御を行う。当該制御によって、被験者の朝方の体温を低下させると共に夕方の体温を上昇させる効果が期待され、ひいては被験者の体温リズム(曲線C3)を理想的な体温リズム(曲線Ct)に近づけることができる。
【0066】
なお、上述の被験者の体温リズムを理想的な体温リズムにする(近づける)ための照明器具20及び空調機器30の制御方法は一例であり、本発明は当該制御方法に限るものではなく、当該被験者の体温リズムを理想的な体温リズムにする(近づける)ことが可能であれば、その制御方法を限定するものではない。
【符号の説明】
【0067】
1 室内環境調節システム
10 尿温センサ(尿温検出手段)
11 便器
20 照明器具(室内環境調節手段)
30 空調機器(室内環境調節手段)
40 タブレット端末(表示手段)
50 制御装置(制御手段)
図1
図2
図3
図4