特許第6133618号(P6133618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133618
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】油中水型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20170515BHJP
   A61K 8/894 20060101ALI20170515BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20170515BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20170515BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   A61K8/37
   A61K8/894
   A61K8/891
   A61K8/06
   A61Q19/00
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-32247(P2013-32247)
(22)【出願日】2013年2月21日
(65)【公開番号】特開2014-162724(P2014-162724A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年9月9日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(72)【発明者】
【氏名】前田 大介
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−068934(JP,A)
【文献】 特開2004−161698(JP,A)
【文献】 特開2007−291095(JP,A)
【文献】 特開2009−235046(JP,A)
【文献】 特開2010−222349(JP,A)
【文献】 特開2004−010518(JP,A)
【文献】 特開平04−173715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00−8/99
A61Q1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)〜(E)を含有する油中水型乳化組成物。
(A):ジポリヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコール
(B):EG−9ジメチコン
(C):デカメチルシクロペンタシロキサン
(D):油剤
(E):水
【請求項2】
化粧料である請求項1に記載の油中水型乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温安定性に優れた油中水型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
油中水型乳化化粧料は、外相の油剤中に水相を分散させた化粧料である。このような化粧料は、連続相が油相となるため、肌上に油性の化粧膜を形成することができることから、保湿感に優れるファンデーションや口紅等のメーキャップ化粧料に応用されている。油中水型乳化化粧料(W/O型)において、低温安定性を向上させる試みがなされ、提案されている。
油相(外相)中に、(a)少なくともデカメチルシクロペンタシロキサンとオクタメチルシクロテトラシロキサンを、デカメチルシクロペンタシロキサン:オクタメチルシクロテトラシロキサン=19:1〜7:3(重量比)の配合割合で含む揮発性シリコーン油と、(b)有機変性粘土鉱物と、(c)HLBが7以下の乳化剤とを含有してなる油中水型乳化組成物の技術が提案されている(特許文献1:特開2000−219609号公報)。
また、多価アルコールのポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)エステルを乳化組成物に含有させると、高温および低温安定性に優れた流動性のある低粘度乳化組成物を製造できる (非特許文献1:FRAGRANCE JOURNAL 1999年9月)。
さらにまた、この多価アルコールのポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)エステルを用いて、より低温安定性を向上させる技術が提案されている。例えば、0.1〜10重量%のポリヒドロキシステアリン酸ポリオキシエチレンと0.05〜10重量%のオリーブ油とを含有する油中水中油型乳化組成物が提案されている(特許文献2:特開2001−342114号公報)。
また、ジポリヒドロキシステアリン酸ポリオキシエチレンと、蔗糖脂肪酸エステルとイソステアリン酸ソルビタンとオリーブ油とを含有する油中水中油型乳化組成物が提案されている(特許文献3:特開2002−29919号公報)。
これらの先行技術で開示された組成物を超える低温安定性を有する乳化組成物が求められている。
【0003】
本発明者は、多価アルコールのポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)エステルとシリコーン系界面活性剤と揮発性シリコーンを含有する油中水型乳化組成物が、−20℃での低温条件にあっても安定性に極めて優れた化粧料になることを見出し、本発明を完成させた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−219609号公報
【特許文献2】特開2001−342114号公報
【特許文献3】特開2002−29919号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】FRAGRANCE JOURNAL 1999年9月 第83〜86頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
低温安定性に優れた油中水型乳化組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
(1)以下の(A)〜(E)を含有する油中水型乳化組成物。
(A):ジポリヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコール
(B):EG−9ジメチコン
(C):デカメチルシクロペンタシロキサン
(D):油剤
(E):水
(2)化粧料である(1)に記載の油中水型乳化組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、低温安定性に優れた油中水型乳化組成物を提供できる。
この組成物は、−20℃でも安定性に問題を生じない。また一般的な温度帯とされる−5℃〜50℃での保存に問題を生じないことから、想定されるすべての流通または使用温度帯で安定な製品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の構成成分について説明する。
必須成分
【0010】
〔(A):多価アルコールのポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)エステル〕
本発明に用いる多価アルコールのポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)エステルは、ポリエチレングリコール等の多価アルコールをアルカリ存在下、ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)と塩化チオニル等のハロゲン化剤を反応させて調製した酸クロライドを反応させることにより得ることができる。
多価アルコールのポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)エステルを合成する際には、多価アルコ−ルとして、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、(ポリ)グリセリン、(ポリ)プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどが好ましく例示でき、ポリエチレングリコールが特に好ましい。この場合のポリエチレングリコールは、平均分子量で400〜6000のものが好ましい。一方、疎水基のポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)は平均分子量1000〜3000のものが好ましい。
本発明において用いる多価アルコールのポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)エステルは、ポリエチレングリコールジ(12−ヒドロキシステアリン酸)エステルを用いることが好ましく、特にINCI名がジポリヒドロキシステアリン酸PEG−30として収載されている化合物が好ましい。ユニケマ社製のアラセルP−135、クローダジャパン(株)社製のシスロールDPHSが市販品として挙げられる。
多価アルコールのポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)エステルの配合量は、0.1〜7質量%が好ましく、特に好ましくは1〜5質量%である。0.1質量%に満たないと、乳化が不十分になる恐れがある。7質量%を超えると、べたついた使用感になる恐れがある。
【0011】
〔(B):ポリエーテル変性シリコーン〕
本発明で用いるポリエーテル変性シリコーンとは、主鎖のシリコーン鎖に、側鎖としてポリエーテル鎖を有するものである。側鎖としてポリエーテル鎖以外に、アルキル鎖、シリコーン鎖を含むものであっても良い。ポリエーテル変性シリコーンは、高分子界面活性剤として化粧料に使用されている。本発明では、化粧品表示名称でラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、PEG−9ジメチコンとして特定される化合物を用いることが好ましい。市販品としては例えば信越シリコーン社製のシリコーンKF−6038(ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン)、シリコーンKF−6019(PEG−9ジメチコン)が挙げられる。
ポリエーテル変性シリコーンの配合量は0.1〜10質量%であり、好ましくは0.3〜3.0質量%である。10質量%を越えて配合するとべたついた使用感を組成物に与える恐れがある。0.1質量%に満たないと乳化が不十分になる恐れがある。
【0012】
〔(C):揮発性シリコーン〕
揮発性シリコーンは環状シリコーンオイルとも呼ばれ、化粧品原料の溶剤としてしばしば使用される。本発明にあってはデカメチルシクロペンタシロキサンを用いることが好ましい。市販品としては例えば信越シリコーン社製のシリコーンKF−995(デカメチルシクロペンタシロキサン)が挙げられる。揮発性シリコーンの配合量は0.1〜15質量%であり、好ましくは1〜10質量%である。15質量%を越えて配合すると、のびが良すぎて止まり感のない使用感を与える恐れがある。0.1質量%に満たないと目的とする低温安定性能に達しない恐れがある。
【0013】
〔(D):油剤〕
本発明の油中水型組成物に適した油剤としては、エステル油、植物油のような油脂類、炭化水素類、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコ−ン油などが例示できる。
エステル油としては、例えば、エチルヘキサン酸セチル、ジイソノナン酸1,3−ブチレングリコール、ジ2−エチルヘキサン酸1,3−ブチレングリコール、ジイソノナン酸ジプロピレングリコール、ジ2−エチルヘキサン酸ジプロピレングリコール、イソノナン酸イソノニル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、パルミチン酸エチルヘキシル、ネオペンタン酸イソステアリル、(カプリル酸/カプリン酸)カプリリル、カプリル酸ヤシ油アルキル、カプリル酸プロピルヘプチル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル・2-オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・2-オクチルドデシル)等が挙げられる。
油脂類としては、例えば、ツバキ油、月見草油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ナタネ油、トウモロコシ油、ゴマ油、ホホバ油、胚芽油、小麦胚芽油、等の液体油脂、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ、モクロウ核油、硬化油、硬化ヒマシ油等の固体油脂、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、ヌカロウ、ラノリン、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ等のロウ類が挙げられる。
炭化水素類としては、例えば、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等が挙げられる。
高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、等の直鎖アルコール、モノステアリルグリセリンエーテル、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、オクチルドデカノール、バチルアルコール等の分枝鎖アルコール等が挙げられる。
シリコ−ン油として、例えば、鎖状ポリシロキサンのジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等、が挙げられる。
前記の油剤は、低温で固化しない液状の油剤を用いることが好ましい。なお本発明における油剤の配合量は特に限定されないが、好ましくは10〜40質量%である。
【0014】
〔(E):水〕
本発明において水は、油中水型のエマルジョンを形成させるために必須の成分である。配合量は特に限定されないが、好ましくは30〜80質量%であり、より好ましくは50〜70質量%である。水を80質量%を越えて配合すると、スプラッシュ感が強すぎ、使用感が低下する恐れがある。水が30質量%に満たないとさっぱりとした使用感が得られない恐れがある。
【0015】
本発明における油中水型乳化組成物は、油の中に水が粒子となって分散している乳化組成物のことであり、水相を、乳化組成物の連続相となる油相へ添加して調製する。ここで、水相とは、その組成物中に含有される(E)水に多価アルコール等の水溶性成分、塩類(塩化ナトリウムや硫酸マグネシウムなどを溶解または混合した溶液)が該当する。油相とは、その組成物中に含有される天然動・植物油、合成油等のすべての(D)油剤、(C)揮発性シリコーン、乳化剤である(A)多価アルコールのポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)エステル、(B)ポリエーテル変性シリコーンなどの非水溶性成分が該当する。水相には、通常化粧料に配合される水溶性の成分を配合できる。水相が水のみで構成されていても構わない。
本発明の油中水型乳化組成物では、水相の合計量が乳化組成物全体の55〜84質量%であることが好ましい。なお本発明にあっては、84質量%を超えた高内水相の油中水型乳化組成物としても、安定性に優れたものが調製できる。しかし、独特のスプラッシュ感(塗布時に内水相が弾け出る感触)が生じ肌に自然に馴染む感覚が得られず使用感に優れた組成物が得られにくくなる恐れがあるため、水相を84質量%以下とすることが好ましい。
【0016】
本発明の油中水型乳化組成物は、低粘度から高粘度のものまで調製可能である。本発明の油中水型乳化組成物の粘度を、B型粘度計を使用し、測定温度25℃で測定するとき、950〜50000mPa・sの粘度の範囲になるように調製すると、さっぱりとしたべたつかない使用感を維持しながら、安定な乳化組成物を実現することができる。B型粘度計のローターは組成物の粘度に応じて適宜選択する。粘度が250〜2500mPa・sの時は2号ローター、1000〜10000mPa・sの時は3号ローター、5000〜50000mPa・sの時は4号ローターを選択するとよい。ローター回転速度は12rpmが好ましく、測定開始後30秒の条件で測定する。
【0017】
任意成分
本発明の油中水型乳化組成物には、任意成分として本発明の効果を損なわない範囲で、化粧料に通常用いられている成分、例えば、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、油剤、多価アルコール等の保湿剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、塩類、pH調整剤、防腐剤、抗菌剤、キレート剤、増粘剤、着色剤、香料等を配合することができる。また、アスコルビン酸誘導体やセラミド、植物抽出液等の美容成分を配合することができる。
【0018】
保湿剤としては、グリセリン、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール等が挙げられる。
塩類としては、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
pH調製剤としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
防腐剤としては、フェノキシエタノール、パラベン等が挙げられる。
アスコルビン酸誘導体としては、L−アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩、L−アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム塩、アスコルビン酸2−グルコシド、3−O−エチルアスコルビン酸等が挙げられる。
セラミドとしては、セチルPGヒドロキシエチルパルミタイド、セレブロシド、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6等が挙げられる。
【0019】
本発明の油中水型乳化組成物に、さらにキレート剤を含有させると、油中水型乳化組成物の保管温度による粘度の差をより小さくすることができる。キレート剤としては、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、エデト酸二カリウムを例示することができる。一般的にはエデト酸三ナトリウムを用いることが好ましい。市販されているキレート剤としては、キレスト株式会社製のキレスト2C−SDを用いることができる。本発明の油中水型乳化組成物は、キレート剤を0.0001質量%〜0.2質量%含有することが好ましい。
【0020】
本発明の油中水型乳化組成物は、特に高分子の配合を必要とするものではないが、さらに組成物を増粘させたい場合や、つるつるとした感触を付与したい場合など、目的に応じて水溶性高分子や油溶性高分子などの高分子を配合しても構わない。
【0021】
本発明の油中水型乳化組成物は乳液、クリーム、美容液、日焼け止め、リキッドファンデーション等の化粧料や、医薬部外品や医薬品用の皮膚外用剤として使用できる。
【実施例】
【0022】
以下に実施例を挙げて、本発明の特徴と効果をさらに詳細に説明する。
表1の組成にて実施例1〜5、表2の組成にて比較例1〜9の油中水型乳化組成物を調製した。比較例1〜5は(B)成分のポリエーテル変性シリコーンを含有しない組成物、比較例6〜8は(A)成分の多価アルコールのポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)エステルを含まない組成物、比較例9は(C)成分の揮発性シリコーンを含まない組成物である。
(1)調製方法
(A)ジポリヒドロキシステアリン酸PEG−30と、(B)ポリエーテル変性シリコーンと、(C)揮発性シリコーンと、(D)油剤とを80℃に加熱して、十分に攪拌し油相を調製する。(E)水と水溶性成分(多価アルコール、塩類)を80℃に加熱して十分に攪拌し水相を調製する。次いで水相を油相へ徐々に添加しながら、ホモミキサーで4500rpm、3分攪拌して乳化し、その後、室温まで攪拌しながら冷却し乳化組成物とした。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
(2)試験方法及び評価方法
実施例と比較例の組成物を下記の試験を行い、評価した。
<粘度>
得られた油中水型乳化組成物を直径約3cmのガラス容器に充填し25℃に保存した。調製から7日目に測定温度25℃の環境下で、No.4ローターを備えたB型粘度計を使用し、ローター回転速度12rpm、測定開始後30秒後の条件で粘度を測定した。粘度が測定限界値付近の場合は適宜ローターを交換して測定した。例えば、粘度が1000mPa・sを下回る場合は2号ローター、1000〜10000mPa・sの時は3号ローター、10000mPa・sを超えた場合は4号ローターにして測定した。
【0026】
<乳化安定性試験>
(1)で得た各乳化組成物を、直径約3cmのガラス容器に充填し、−20℃、−5℃、25℃、50℃に保存した。乳化安定性は以下の基準により目視評価した。目視評価は、35日間毎日行い、35日間で変化の観察されなかった組成物は、60日目に再度評価した。60日目に異常の認められなかった組成物は、○評価とし、途中段階で分離などの外観異常が観察された場合には、調製日から数えた日数(何日目か)を記録した。したがって表2中の日付である4日、5日、7日、11日、14日、21日、25日、30日、35日とは、乳化安定性が担保された日数である。
尚、−20℃に保管したとき、凝固や凍結が観察された場合でも、室温(25℃)に戻して観察した時に分離などの外観異常がない場合は〇と評価した。
【0027】
(3)結果
本発明の実施例1〜5の油中水型乳化組成物は、50℃〜−20℃のすべての温度帯で60日間保存後も分離などの異常がなく安定であった。
比較例1〜5は、(B)成分のポリエーテル変性シリコーンの代わりに様々なタイプのシリコーン系界面活性剤を配合した油中水型乳化組成物である。比較例1〜5は、25℃の常温保管での安定性について60日経過後も問題はなかった。しかし−20℃、−5℃および50℃保管での安定性に問題があることがわかった。
比較例6〜8は、(A)成分のジポリヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコールを含まず、また(B)成分のポリエーテル変性シリコーンの配合量を段階的に増量させた油中水型乳化組成物である。(B)ポリエーテル変性シリコーンを配合したことにより−20℃の安定性は向上したが(比較例6と比較例7、8を参照)、一方−5℃〜50℃での安定性は好ましい結果ではなかった。
比較例9は、(C):揮発性シリコーンに代えてジメチルポリシロキサンを配合した乳化組成物であるが、特に−20℃及び50℃の安定性に問題があることがわかった。
【0028】
表1、2の結果から、本発明の実施例1〜5の組成物は、全ての温度帯で安定であり、特に−20℃の低温安定性に極めて優れた油中水型乳化組成物であることが明らかとなった。
【0029】
以下に、本発明の構成を使用した油中水型乳化組成物の処方および特性を示す。
〔処方例1〕
(1)保湿クリームの処方
成分 配合量(質量%)
1. ジポリヒドロキシステアリン酸PEG−30 3
2. ミリストイルメチル−β−アラニン 2
(フィトステリル/デシルテトラデシル)
3. オリーブ油 5
4. ホホバ油 4
5. パルミチン酸エチルヘキシル 3
6. セチルPGヒドロキシエチルパルミタミド 0.5
7. デカメチルシクロペンタシロキサン 8
8. ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 2
9. グリセリン 10
10.ペンチレングリコール 2
11.フェノキシエタノール 0.2
12.塩化ナトリウム 0.8
13.精製水 残余

油相(1〜8)と水相(9〜13)をそれぞれ別に80℃に加熱して、十分に攪拌後、水相を油相へ添加し、ホモミキサーで4500rpm、3分攪拌して乳化し、その後、室温まで攪拌冷却した。
(2)特性
本処方の保湿クリームは、保存安定性に優れ、特に低温保存安定性(−20℃)に優れていた。
【0030】
〔処方例2〕
(1)保湿クリームの処方
成分 配合量(質量%)
1. ジポリヒドロキシステアリン酸PEG−30 2
2. ミリストイルメチル−β−アラニン 2
(フィトステリル/デシルテトラデシル)
3. オリーブ油 3
4. ホホバ油 1
5. パルミチン酸エチルヘキシル 2
6. セチルPGヒドロキシエチルパルミタミド 0.5
7. ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 3
8. デカメチルシクロペンタシロキサン 5 9. ジグリセリン 5
10.ペンチレングリコール 2
11.フェノキシエタノール 0.2
12.硫酸マグネシウム 0.5
13.精製水 残余

油相(1〜8)と水相(9〜13)をそれぞれ別に80℃に加熱して、十分に攪拌後、水相を油相へ添加し、ホモミキサーで4500rpm、3分攪拌して乳化し、その後、室温まで攪拌冷却した。
(2)特性
本処方の保湿クリームは、保存安定性に優れ、特に低温保存安定性(−20℃)に優れていた。