特許第6133628号(P6133628)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6133628-テレビ信号増幅装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133628
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】テレビ信号増幅装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/10 20060101AFI20170515BHJP
   H04N 5/00 20110101ALI20170515BHJP
   H04N 5/14 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   H04N7/10
   H04N5/00 B
   H04N5/14 B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-41888(P2013-41888)
(22)【出願日】2013年3月4日
(65)【公開番号】特開2014-171099(P2014-171099A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2016年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113665
【氏名又は名称】マスプロ電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】杉原 誠
(72)【発明者】
【氏名】稲熊 淳一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢二
【審査官】 後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−182047(JP,A)
【文献】 特開2012−253412(JP,A)
【文献】 特開2000−197019(JP,A)
【文献】 特開平7−298372(JP,A)
【文献】 米国特許第4907003(US,A)
【文献】 特開平10−210326(JP,A)
【文献】 特開2001−111975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/00
H04N 5/14
H04N 5/38−5/46
H04N 7/10
H04N 21/00−21/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信アンテナにて受信されたテレビ信号である受信信号と、CATVシステムにてヘッドエンドから端末側に伝送されるテレビ信号である下り信号との何れか一方を選択的に入力するための入力端子と、
前記入力端子に入力された受信信号又は下り信号を所定の出力レベルまで増幅する出力増幅回路を備え、該出力増幅回路にて増幅された受信信号又は下り信号を出力端子から出力させる出力経路と、
前記入力端子に入力された受信信号を入力増幅回路にて所定の入力レベルまで増幅して前記出力経路まで伝送する受信信号伝送経路と、
前記入力端子に入力された下り信号を前記出力経路まで伝送する下り信号伝送経路と、
前記入力端子からの信号入力経路と前記受信信号伝送経路及び前記下り信号伝送経路との間、及び、前記受信信号伝送経路及び前記下り信号伝送経路と前記出力経路との間、にそれぞれ設けられた経路切換用の一対の接点を有し、該一対の接点が連動して移動することにより、前記入力端子に入力された受信信号を前記受信信号伝送経路を介して前記出力経路に入力するか、又は、前記入力端子に入力された下り信号を前記下り信号伝送経路を介して前記出力経路に入力するかを切り換え可能な切換スイッチと、
を備え、
前記切換スイッチと前記出力経路との接続点には電源ラインが接続され、
前記受信信号伝送経路における前記入力増幅回路の受信信号出力側には、前記切換スイッチが前記受信信号伝送経路側に切り換えられているとき、前記切換スイッチを介して前記電源ラインから電源供給を受けることによりオン状態となって、前記入力増幅回路からの出力を出力経路側に伝送させ、前記切換スイッチが前記下り信号伝送経路側に切り換えられているときには、前記電源ラインからの電源供給が遮断されることによりオフ状態となって、前記入力増幅回路から前記出力経路への前記受信信号の出力を遮断する半導体スイッチ、が設けられていることを特徴とするテレビ信号増幅装置。
【請求項2】
前記受信信号伝送経路に設けられた前記入力増幅回路は、
前記切換スイッチが前記受信信号伝送経路側に切り換えられているときに、前記切換スイッチを介して前記電源ラインから電源供給を受けることにより増幅動作し、前記切換スイッチが前記下り信号伝送経路側に切り換えられているときには、前記電源ラインからの電源供給が遮断されて増幅動作を停止することを特徴とする請求項1に記載のテレビ信号増幅装置。
【請求項3】
前記切換スイッチが前記下り信号伝送経路側に切り換えられているときに、前記受信信号伝送経路の入力側を所定の伝送インピーダンスにて終端する終端回路、
を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のテレビ信号増幅装置。
【請求項4】
前記入力端子と前記出力端子との間には、外部から出力端子に入力されたCATVシステムの上り信号を所定レベルまで増幅する上り増幅回路を備えた上り信号伝送経路が設けられており、
前記上り増幅回路は、
前記切換スイッチが前記下り信号伝送経路側に切り換えられているときに、前記切換スイッチを介して前記電源ラインから電源供給を受けることにより増幅動作し、前記切換スイッチが前記受信信号伝送経路側に切り換えられているときには、前記電源ラインからの電源供給が遮断されて増幅動作を停止することを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のテレビ信号増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信アンテナにて受信されたテレビ信号である受信信号と、CATVシステムにてヘッドエンドから端末側に伝送されるテレビ信号である下り信号との何れか一方を選択的に取り込み、その取り込んだ受信信号又は下り信号を所定レベルまで増幅して出力するテレビ信号増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マンション等でテレビ信号を加入者宅に伝送する共同受信システムとして、システム専用の受信アンテナにて受信されたテレビ信号(受信信号)を各戸に配信するように構成されたものや、CATVシステムにてヘッドエンドから端末側に伝送されるテレビ信号(下り信号)を各戸に配信するように構成されたものが知られている。
【0003】
そして、こうした2種類のシステムで利用可能なテレビ信号増幅装置として、受信信号及び下り信号を各々伝送するための伝送経路を備え、入力端子に入力されたテレビ信号(受信信号又は下り信号)を、その信号に対応する伝送経路にスイッチを介して入力するように構成されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この提案のテレビ信号増幅装置においては、上記一対の伝送経路の一方を通過したテレビ信号(受信信号又は下り信号)を、各信号共通の増幅回路で増幅して、出力端子から端末側に出力するように構成することで、増幅回路の低コスト化を図り、且つ、装置を小型化できるようにしている。
【0005】
また、このように出力側の増幅回路を共通化すると、上記一対の伝送経路のうち、テレビ信号(受信信号又は下り信号)を通過させない伝送経路が、他方の伝送経路を通過したテレビ信号を増幅する増幅回路の動作に影響を与えることが考えられる。
【0006】
このため、上記提案のテレビ信号増幅装置においては、上記一対の伝送経路の出力側にも、各信号共通の増幅回路における信号入力側と選択的に接続するためのスイッチが設けられている。
【0007】
つまり、上記提案のテレビ信号増幅装置は、受信信号及び下り信号をそれぞれ伝送する伝送経路の入力側及び出力側に、経路切換用の一対の切換スイッチを設け、入力端子に入力されたテレビ信号が受信信号であれば、その一対の切換スイッチを受信信号伝送用の伝送経路側に切り換え、入力端子に入力されたテレビ信号が下り信号であれば、その一対の切換スイッチを下り信号伝送用の伝送経路側に切り換えるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−304512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記提案のテレビ信号増幅装置を実際に製造する際には、上記各伝送経路の入力側及び出力側に設ける一対の切換スイッチを、2経路を同時に切換可能な一つの切換スイッチにて構成することで、テレビ信号増幅装置の小型化を図ることができる。
【0010】
しかしながら、このようにすると、切換スイッチにおいて、各伝送経路の入力側と出力側とが近接配置されることになる。
このため、例えば、各信号共通の増幅回路へのテレビ信号の入力レベルを適正レベルにするために、一対の伝送経路の一方に増幅回路を設けた場合、その増幅回路を設けた伝送経路から切換スイッチを介して次段の増幅回路(各信号共通の増幅回路)に出力されるテレビ信号の一部が、伝送経路の入力側に回り込み、その伝送経路を通過するテレビ信号の劣化を招き、場合によっては、その伝送系路上の増幅回路が発振することが考えられる。
【0011】
つまり、CATVシステムから取り込む下り信号の信号レベルは、CATVシステム側の増幅装置によって適正レベルに制御されているが、受信アンテナから入力される受信信号は、受信アンテナの設置場所にもよるが、一般に、適正レベルよりも低くなる。
【0012】
このため、受信信号伝送用の伝送経路には、通常、受信アンテナからの受信信号を増幅する増幅回路が設けられる。
しかし、このように増幅回路にて受信信号を増幅すると、受信信号の増幅後の信号レベルは、受信信号の入力レベルよりも高くなり、切換スイッチのアイソレーションが悪いと、その受信信号の一部が増幅回路の入力側に回り込んで、受信信号の品質低下を招いてしまう。
【0013】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、テレビ放送の受信信号と、CATVシステムの下り信号とをそれぞれ伝送する2つの伝送経路を備え、一方の伝送経路の入力側及び出力側を、一つの切換スイッチを介して入力端子及び各信号共通の増幅回路に選択的に接続するよう構成されたテレビ信号増幅装置において、切換スイッチを介して伝送経路の出力側から入力側にテレビ信号が回り込むのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載のテレビ信号増幅装置は、
受信アンテナにて受信されたテレビ信号である受信信号と、CATVシステムにてヘッドエンドから端末側に伝送されるテレビ信号である下り信号との何れか一方を選択的に入力するための入力端子と、
前記入力端子に入力された受信信号又は下り信号を所定の出力レベルまで増幅する出力増幅回路を備え、該出力増幅回路にて増幅された受信信号又は下り信号を出力端子から出力させる出力経路と、
前記入力端子に入力された受信信号を入力増幅回路にて所定の入力レベルまで増幅して前記出力経路まで伝送する受信信号伝送経路と、
前記入力端子に入力された下り信号を前記出力経路まで伝送する下り信号伝送経路と、
前記入力端子からの信号入力経路と前記受信信号伝送経路及び前記下り信号伝送経路との間、及び、前記受信信号伝送経路及び前記下り信号伝送経路と前記出力経路との間、にそれぞれ設けられた経路切換用の一対の接点を有し、該一対の接点が連動して移動することにより、前記入力端子に入力された受信信号を前記受信信号伝送経路を介して前記出力経路に入力するか、又は、前記入力端子に入力された下り信号を前記下り信号伝送経路を介して前記出力経路に入力するかを切り換え可能な切換スイッチと、
を備え、
前記切換スイッチと前記出力経路との接続点には電源ラインが接続され、
前記受信信号伝送経路における前記入力増幅回路の受信信号出力側には、前記切換スイッチが前記受信信号伝送経路側に切り換えられているとき、前記切換スイッチを介して前記電源ラインから電源供給を受けることによりオン状態となって、前記入力増幅回路からの出力を出力経路側に伝送させ、前記切換スイッチが前記下り信号伝送経路側に切り換えられているときには、前記電源ラインからの電源供給が遮断されることによりオフ状態となって、前記入力増幅回路から前記出力経路への前記受信信号の出力を遮断する半導体スイッチ、が設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のテレビ信号増幅装置において、
前記受信信号伝送経路に設けられた前記入力増幅回路は、
前記切換スイッチが前記受信信号伝送経路側に切り換えられているときに、前記切換スイッチを介して前記電源ラインから電源供給を受けることにより増幅動作し、前記切換スイッチが前記下り信号伝送経路側に切り換えられているときには、前記電源ラインからの電源供給が遮断されて増幅動作を停止することを特徴とする請求項1に記載のテレビ信号増幅装置。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のテレビ信号増幅装置において、
前記切換スイッチが前記下り信号伝送経路側に切り換えられているときに、前記切換スイッチに接続される前記受信信号伝送経路の入力側を所定の伝送インピーダンスにて終端する終端回路、
を備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のテレビ信号増幅装置において、
前記入力端子と前記出力端子との間には、外部から出力端子に入力されたCATVシステムの上り信号を所定レベルまで増幅する上り増幅回路を備えた上り信号伝送経路が設けられており、
前記上り増幅回路は、
前記切換スイッチが前記下り信号伝送経路側に切り換えられているときに、前記切換スイッチを介して前記電源ラインから電源供給を受けることにより増幅動作し、前記切換スイッチが前記受信信号伝送経路側に切り換えられているときには、前記電源ラインからの電源供給が遮断されて増幅動作を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載のテレビ信号増幅装置には、受信信号伝送経路と下り信号伝送経路とが備えられており、これら各伝送経路の入力側及び出力側が、切換スイッチを介して、入力端子及び出力経路に選択的に接続される。
【0019】
切換スイッチは、入力端子からの信号入力経路と受信信号伝送経路及び下り信号伝送経路との間、及び、受信信号伝送経路及び下り信号伝送経路と出力経路との間、にそれぞれ設けられた経路切換用の一対の接点を有し、その一対の接点が連動して移動することにより、入力端子に入力された受信信号を受信信号伝送経路を介して出力経路に入力するか、又は、入力端子に入力された下り信号を下り信号伝送経路を介して出力経路に入力するかを切り換え可能である。
【0020】
このため、受信アンテナにて受信されたテレビ信号(受信信号)を入力端子に入力した際に、その受信信号を出力経路へ伝送する経路として受信信号伝送経路を選択する場合、或いは、CATVシステムにてヘッドエンドから端末側に伝送されるテレビ信号(下り信号)を入力端子に入力した際に、その受信信号を出力経路へ伝送する経路として下り信号伝送経路を選択する場合、使用者は、一つの切換スイッチを操作するだけで、テレビ信号(受信信号又は下り信号)の伝送経路を簡単に設定できる。
【0021】
また、受信信号伝送経路及び出力経路には、それぞれ、入力増幅回路及び出力増幅回路が設けられているため、入力端子に入力された受信信号の信号レベルが低い場合に、入力増幅回路にて受信信号を適正レベルまで増幅した後、出力増幅回路に入力できることになり、出力増幅回路を適正に動作させることができる。
【0022】
ところで、このように受信信号伝送経路に入力増幅回路を設けた場合、切換スイッチが受信信号伝送経路側に切り換えられているとき、入力増幅回路からの受信信号の出力レベルが、入力端子から入力増幅回路への受信信号の入力レベルよりも高くなるため、切換スイッチの入力側と出力側とのアイソレーションが悪いと、入力増幅回路からの出力が入力側に回り込むことが考えられる。
【0023】
これに対し、請求項1に記載のテレビ信号増幅装置においては、切換スイッチと出力経路との接続点に電源ラインが接続されており、受信信号伝送経路における入力増幅回路の受信信号出力側には、切換スイッチが受信信号伝送経路側に切り換えられているとき、切換スイッチを介して電源ラインから電源供給を受けることによりオン状態となって、入力増幅回路からの出力を出力経路側に伝送させ、切換スイッチが下り信号伝送経路側に切り換えられているときには、電源ラインからの電源供給が遮断されることによりオフ状態となって、入力増幅回路から出力経路への受信信号の出力を遮断する、半導体スイッチが設けられている。
【0024】
この結果、請求項1に記載のテレビ信号増幅装置によれば、切換スイッチが受信信号伝送経路側に切り換えられているときに、入力増幅回路にて増幅された受信信号が半導体スイッチを介して直接出力経路に伝送されることにより、切換スイッチ内での信号入出力端子間のアイソレーションが低い場合であっても、入力増幅回路から出力された受信信号が入力増幅回路の入力側に回り込むのを防止できる。
【0025】
よって、請求項1に記載のテレビ信号増幅装置によれば、切換スイッチが受信信号伝送経路側に切り換えられているとき、受信信号の信号品質を劣化させることなく、受信信号を所望レベルまで増幅して、出力端子から出力させることができる。
【0026】
次に、請求項2に記載のテレビ信号増幅装置においては、切換スイッチが受信信号伝送経路側に切り換えられているときに、切換スイッチを介して電源ラインから入力増幅回路に電源供給されて、入力増幅回路が増幅動作し、切換スイッチが下り信号伝送経路側に切り換えられているときには、電源ラインから入力増幅回路への電源供給が遮断されて、入力増幅回路が増幅動作を停止する。
【0027】
このため、請求項2に記載のテレビ信号増幅装置によれば、切換スイッチが下り信号伝送経路側に切り換えられているときに、入力増幅回路の増幅動作によって周囲のノイズが増幅されて、下り信号の伝送経路に回り込み、下り信号の信号品質が劣化するのを防止することができる。
【0028】
また次に、請求項3に記載のテレビ信号増幅装置においては、切換スイッチが下り信号伝送経路側に切り換えられているときに、受信信号伝送経路の入力側を所定の伝送インピーダンスにて終端する終端回路が設けられている。
【0029】
このため、請求項3に記載のテレビ信号増幅装置によれば、切換スイッチが下り信号伝送経路側に切り換えられているときに、受信信号伝送経路にノイズが入力されるのを、終端回路により防止することができる。
【0030】
よって、請求項3に記載のテレビ信号増幅装置によれば、受信信号伝送経路に入力されたノイズが、切換スイッチ内で下り信号の伝送経路に回り込んだり、或いは、入力増幅回路にて増幅されたりすることにより、下り信号の信号品質が劣化するのを、より良好に防止することができる。
【0031】
また、請求項4に記載のテレビ信号増幅装置においては、入力端子と出力端子との間に、外部から出力端子に入力されたCATVシステムの上り信号を所定レベルまで増幅する上り増幅回路を備えた上り信号伝送経路が設けられている。
【0032】
このため、請求項4に記載のテレビ信号増幅装置によれば、端末側から出力端子に伝送されてきたCATVシステムの上り信号を増幅して、CATVシステムのヘッドエンド側に出力することができ、CATVシステムでの双方向通信を実現できる。
【0033】
また、請求項4に記載のテレビ信号増幅装置においては、切換スイッチが下り信号伝送経路側に切り換えられているときに、切換スイッチを介して電源ラインから上り増幅回路に電源供給されて、上り増幅回路が増幅動作し、切換スイッチが受信信号伝送経路側に切り換えられているときには、電源ラインから上り増幅回路への電源供給が遮断されて、上り増幅回路が増幅動作を停止する。
【0034】
このため、請求項4に記載のテレビ信号増幅装置によれば、切換スイッチが受信信号伝送経路側に切り換えられており、CATVシステムの上り信号を入力端子からCATVシステムの伝送路に出力する必要がないときに、使用者による切換スイッチの操作と連動して、上り増幅回路への電源供給を自動で遮断することができる。
【0035】
よって、請求項4に記載のテレビ信号増幅装置によれば、上り増幅回路への電源供給による不要な電力消費を防止し、テレビ信号増幅装置の省電力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】実施形態のテレビ信号増幅装置の構成を表す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
本実施形態のテレビ信号増幅装置2は、受信アンテナにて受信されたUHF帯のテレビ信号(受信信号)と、CATVシステムにてヘッドエンドから端末側に伝送されるテレビ信号(下り信号)との何れかを入力するための入力端子T1を備え、入力端子T1に入力された受信信号又は下り信号を所定レベルまで増幅して、出力端子T2から出力するためのもの(所謂ブースタ)である。
【0038】
図1に示すように、テレビ信号増幅装置2には、受信信号又は下り信号を所定の出力レベルまで増幅する前後2段の出力増幅回路34、35を備え、各出力増幅回路34、35にて増幅された受信信号又は下り信号を、出力端子T2から出力させる出力経路4が設けられている。
【0039】
この出力経路4と出力端子T2との間には、受信信号及び下り信号を通過させ、これらの信号とは周波数帯が異なる他の信号の通過を阻止するハイパスフィルタ(HPF)36及びローパスフィルタ(LPF)38が設けられている。
【0040】
また、出力経路4の入力側には、出力経路4に入力される受信信号又は下り信号を減衰させることで出力経路4全体の利得を調整するゲインコントロール回路(GC)32が設けられている。
【0041】
一方、入力端子T1には、受信信号及び下り信号を通過させ、これらの信号よりも低周波数の信号(例えば、後述の上り信号)の通過を阻止するHPF10が接続されている。
また、HPF10の入力端子T1とは反対側には、HPF10を介して入力された受信信号又は下り信号を減衰させることで、これら各信号の入力レベルを調整するための可変減衰器(ATT)12が接続されている。
【0042】
そして、このATT12とGC32との間には、この間の経路を遮断した状態で、ATT12及びGC32を受信信号伝送経路20の入力側及び出力側に接続するか、或いは、ATT12及びGC32を下り信号伝送経路40の入力側及び出力側に接続するか、を手動で切り換えるための切換スイッチ14が設けられている。
【0043】
この切換スイッチ14は、ATT12と受信信号伝送経路20及び下り信号伝送経路40の入力側との間に設けられた摺動接点14a、及び、受信信号伝送経路20及び下り信号伝送経路40の出力側とGC32との間に設けられた摺動接点14bとの2つの摺動接点を備える。
【0044】
この2つの摺動接点14a、14bは、共通の操作部14cにて連結されており、この操作部14cを操作して、摺動接点14a、14bを受信信号伝送経路20側に移動させれば、ATT12及びGC32が受信信号伝送経路20の入力側及び出力側にそれぞれ接続され、下り信号伝送経路40の入力側及び出力側が開放される。
【0045】
また、操作部14cを操作して、摺動接点14a、14bを下り信号伝送経路40側に移動させれば、ATT12及びGC32が下り信号伝送経路40の入力側及び出力側にそれぞれ接続され、受信信号伝送経路20の入力側及び出力側が開放される。
【0046】
ここで、下り信号伝送経路40は、入力端子T1にCATVシステムの伝送路が接続されて、入力端子T1にCATVシステムの下り信号が入力されているとき、切換スイッチ14を下り信号伝送経路40側に切り換えることにより、ATT12から入力される下り信号をGC32側に伝送させるためのものである。
【0047】
そして、この下り信号伝送経路40には、直流電流の通過を阻止し、下り信号等のテレビ信号(換言すれば高周波信号)を通過させるコンデンサ42が設けられている。
次に、受信信号伝送経路20は、入力端子T1に受信信号が入力されているとき、切換スイッチ14を受信信号伝送経路20側に切り換えることにより、ATT12から入力される受信信号をGC32側に伝送させるためのものである。
【0048】
そして、受信信号伝送経路20には、受信信号を通過させ、受信信号よりも低周波数の信号の通過を阻止するHPF22と、HPF22を介して入力される受信信号を、CATVシステムの下り信号と同レベルの適正レベルまで増幅する入力増幅回路26と、受信信号伝送経路20全体の利得を調整するための可変減衰器(ATT)24と、が設けられている。
【0049】
また、受信信号伝送経路20において、入力増幅回路26の出力側には、直流電流を遮断し、受信信号等のテレビ信号を通過させるコンデンサ28と、半導体スイッチとして機能するピンダイオード30とが設けられており、更に、これらコンデンサ28とピンダイオード30との間の接続点は、電流制限用の抵抗54を介してグランドラインに接地されている。
【0050】
なお、抵抗54の抵抗値は大きく、コンデンサ28及びピンダイオード30を通過する受信信号に影響を与えることはない。
ピンダイオード30は、カソードがコンデンサ28に接続され、アノードがGC32の入力側に直接接続されている。また、ピンダイオード30のカソードは、コイル52を介して、切換スイッチ14に接続されている。なお、このコイル52は、受信信号等のテレビ信号を遮断し、直流電流を通過させるためのものである。
【0051】
また、GC32と切換スイッチ14との間には、直流電流を遮断し、下り信号等のテレビ信号を通過させるコンデンサ44が設けられており、コンデンサ44の切換スイッチ14側には、コイル50を介して電源ラインが接続されている。なお、このコイル50は、コイル52と同様、テレビ信号を遮断し直流電流を通過させるためのものである。
【0052】
従って、切換スイッチ14が受信信号伝送経路20側に切り換えられているとき、コイル50、52、摺動接点14b及び抵抗54を介して、電源ラインからピンダイオード30に順方向電流が流れ、ピンダイオード30が、受信信号を通過可能な低インピーダンス(換言すればオン状態)となって、入力増幅回路26にて増幅された受信信号がGC32(延いては出力経路4)に直接出力されることになる。
【0053】
また、出力経路4に設けられた出力増幅回路34、35には、電源ラインから直接電源電圧Vcが供給されるが、受信信号伝送経路20に設けられた入力増幅回路26には、切換スイッチ14が受信信号伝送経路20側に切り換えられているときにだけ、コイル50、切換スイッチ14及びコイル52を介して、電源ラインから電源電圧Vcが供給される。
【0054】
このため、入力増幅回路26は、切換スイッチ14が受信信号伝送経路20側に切り換えられているときにだけ増幅動作し、切換スイッチ14が下り信号伝送経路40側に切り換えられているときには、増幅動作を停止する。
【0055】
従って、本実施形態のテレビ信号増幅装置2によれば、切換スイッチ14が受信信号伝送経路20側に切り換えられて、入力端子T1に入力された受信信号が受信信号伝送経路20に入力されているとき、入力増幅回路26がその受信信号を増幅し、増幅後の受信信号がピンダイオード30を介して、GC32(延いては出力経路4)に直接出力されることになる。
【0056】
このため、本実施形態のテレビ信号増幅装置2によれば、切換スイッチ14内での信号入出力端子間のアイソレーションが低い場合であっても、入力増幅回路26から出力された受信信号が入力増幅回路の入力側に回り込むのを防止できる。
【0057】
よって、本実施形態のテレビ信号増幅装置2によれば、切換スイッチ14が受信信号伝送経路20側に切り換えられているとき、受信信号の信号品質を劣化させることなく、入力増幅回路26、出力増幅回路34、35、GC32、及びATT12、24を介して、受信信号を所望レベルまで増幅し、出力端子T2から出力させることができる。
【0058】
また、切換スイッチ14が下り信号伝送経路40側に切り換えられているときには、入力増幅回路26は、増幅動作を停止する。
このため、本実施形態のテレビ信号増幅装置2によれば、入力増幅回路26の増幅動作によって周囲のノイズが増幅されて、下り信号の伝送経路に回り込み、下り信号の信号品質が劣化するのを防止することもできる。
【0059】
また次に、本実施形態のテレビ信号増幅装置2には、切換スイッチ14が下り信号伝送経路40側に切り換えられているときに、受信信号伝送経路20の入力側を所定の伝送インピーダンスにて終端するための終端回路60が設けられている。
【0060】
この終端回路60は、終端用のコンデンサ62と、このコンデンサ62をHPF22の入力側に接続するための半導体スイッチであるピンダイオード64と、ピンダイオード64に流れる電流を制限する抵抗66と、切換スイッチ14が下り信号伝送経路40側に切り換えられているとき、摺動接点14を介して、電源ラインからの電源電圧Vcをピンダイオード64に供給するためのコイル67及び68と、により構成されている。
【0061】
ここで、ピンダイオード64は、カソードがHPF22の入力側に接続され、アノードがコンデンサ62に接続されている。また、抵抗66は、一端がピンダイオード64のカソードに接続され、他端がグランドラインに接地されている。なお、抵抗66の抵抗値は大きく、受信信号伝送経路20を通過する受信信号に影響を与えることはない。
【0062】
また、コンデンサ62は、一端がピンダイオード64のアノードに接続され、他端がグランドラインに接地されている。また、コイル67及び68は、上述したコイル50、52と同様、受信信号、下り信号等のテレビ信号を遮断し、直流電流を通過させるためのものである。
【0063】
このように構成された終端回路60においては、切換スイッチ14が下り信号伝送経路40側に切り換えられているとき、コイル68、摺動接点14a、コイル67、及び抵抗66を介して、電源ラインからピンダイオード64に順方向電流が流れ、ピンダイオード64がオン状態となって、HPF22の入力側をコンデンサ62の容量で決まる所定の伝送インピーダンスにて終端することになる。
【0064】
このため、切換スイッチ14が下り信号伝送経路40側に切り換えられて、HPF22の入力側が開放状態になった際に、受信信号伝送経路20に周囲のノイズが入力されるのを防止し、延いては、そのノイズが、切換スイッチ14を介して下り信号伝送経路40を通過する下り信号に影響を与えるのを防止できる。
【0065】
また更に、本実施形態のテレビ信号増幅装置には、入力端子T1と出力端子T2との間に、端末側から出力端子T2に入力されたCATVシステムの上り信号を、入力端子T1まで伝送して、入力端子T1からCATVシステムのヘッドエンド側に出力する上り信号伝送経路70が設けられている。
【0066】
この上り信号伝送経路70には、上り信号を通過させ、受信信号や下り信号等のテレビ信号の通過を阻止する一対のLPF72、76と、この一対のLPF72、76の間に配置されて、上り信号を所定レベルまで増幅する上り増幅回路74と、が備えられている。
【0067】
そして、この上り増幅回路74には、切換スイッチ14が下り信号伝送経路40側に切り換えられているとき、コイル50、摺動接点14b 及びコイル78を介して、電源ラインから電源電圧Vcが供給される。
【0068】
このため、本実施形態のテレビ信号増幅装置2によれば、切換スイッチ14が受信信号伝送経路20側に切り換えられており、CATVシステムの上り信号を入力端子T1からCATVシステムの伝送路に出力する必要がないときに、使用者による切換スイッチ14の操作と連動して、上り増幅回路74への電源供給を自動で遮断することができる。
【0069】
よって、本実施形態のテレビ信号増幅装置2によれば、上り増幅回路74への電源供給による不要な電力消費を防止し、テレビ信号増幅装置2の省電力化を図ることができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内にて、種々の態様を採ることができる。
【0070】
例えば、上記実施形態では、請求項1〜請求項4に記載の全ての構成を含むテレビ信号増幅装置について説明したが、本発明のテレビ信号増幅装置は、請求項1に記載の構成(本実施形態では、ピンダイオード30と、ピンダイオード30への通電を行うコイル50、摺動接点14b、コイル52及び抵抗54からなる通電経路)を備えるだけで所期の目的を達成することができる。
【0071】
このため、請求項2〜請求項4に記載の各構成は、こうした請求項1に記載の構成と適宜組み合わせるようにすればよく、各構成の組み合わせは、設計時に適宜選択すればよい。
【0072】
また、上記実施形態では、半導体スイッチとしてピンダイオードを用いるものとして説明したが、半導体スイッチは、受信信号を通過させるか否かを通電・非通電により切り換えることができればよいため、トランジスタ等、ピンダイオード以外の半導体を利用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0073】
2…テレビ信号増幅装置、T1…入力端子、T2…出力端子、4…出力経路、10,22,36…HPF、12,24…ATT、14…切換スイッチ、14a,14b…摺動接点、14c…操作部、20…受信信号伝送経路、26…入力増幅回路、28,42,44,62…コンデンサ、30,64…ピンダイオード、32…GC、34…出力増幅回路、38,72,76…LPF、40…下り信号伝送経路、50,52,68,78…コイル、54,66…抵抗、60…終端回路、70…上り信号伝送経路、74…上り増幅回路。
図1