特許第6133661号(P6133661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133661
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】熱源装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/10 20060101AFI20170515BHJP
   F24D 17/00 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   F24H1/10 302C
   F24D17/00 K
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-75118(P2013-75118)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-199162(P2014-199162A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2015年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000129231
【氏名又は名称】株式会社ガスター
(74)【代理人】
【識別番号】100093894
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 清
(72)【発明者】
【氏名】寺内 誠
(72)【発明者】
【氏名】内山 翼
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−003044(JP,A)
【文献】 特開2006−010114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/10
F24D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯槽を備えて該貯湯槽からの湯水を出湯通路を通して送水する機能を有する主熱源装置と、該主熱源装置から送水される湯水を導入して給湯熱交換器で加熱する追い加熱動作の機能を有する補助熱源装置とを備え、該補助熱源装置の湯水導入部側には給水通路と前記出湯通路とが合流する合流部が湯水導入通路を介して接続され、前記補助熱源装置の湯水導出部側には湯水を給湯先に導く給湯通路が接続されており、前記出湯通路から前記合流部側に流れる湯水の流量と前記給水通路から前記合流部側に流れる水の流量を制御することによって混合設定温度設定手段により予め定められる混合設定温度の混合湯水が前記合流部で形成されるようにするミキシング流量制御手段と、前記貯湯槽内の湯水の温度を検出する貯湯槽内湯水温検出手段とを有し、前記混合設定温度設定手段は、前記貯湯槽内湯水温検出手段の検出温度が予め定められる追い加熱基準温度よりも高い温度のときの給湯時の前記混合設定温度を給湯設定温度に対応させた第1の設定温度に設定し、前記貯湯槽内湯水温検出手段の検出温度が給湯途中で前記追い加熱基準温度よりも高い温度から前記追い加熱基準温度以下に低下したときには、前記混合設定温度が前記補助熱源装置の動作開始時の動作加熱号数で給湯流量の湯を作ったときの温度分だけ前記第1の設定温度よりも低い第2の設定温度になるまで前記混合設定温度が前記湯水導入通路の長さに応じて該長さが長くなるにつれて小さくなる温度勾配で前記貯湯槽内湯水温検出手段の検出温度低下時から徐々に低下するように前記混合設定温度を設定する構成を有し、前記貯湯槽内湯水温検出手段の検出温度低下時に前記合流部を通った湯水が前記湯水導入通路内を通って前記補助熱源装置の湯水導入部に達する時間が経過したときに前記補助熱源装置の追い加熱機能による加熱を開始させることを特徴とする熱源装置。
【請求項2】
混合設定温度を第1の設定温度から第2の設定温度まで下げる期間は、出湯通路と給水通路との合流部から補助熱源装置の湯水導入部までの湯水導入通路内の湯水容量が流れる期間としたことを特徴とする請求項1記載の熱源装置。
【請求項3】
補助熱源装置は、追い加熱機能の動作時に給湯温度と給湯流量と給湯熱交換器の加熱量とに基づいて補助熱源装置に導入される湯水の温度を演算により求める構成を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の熱源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯槽と、貯湯槽から出湯される湯をさらに加熱する機能を備えた補助熱源装置とを備えた熱源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
貯湯槽を備えた熱源装置が用いられており(例えば、特許文献1参照)、図3には、開発中の熱源装置が模式的なシステム構成図により示されている。同図において、貯湯槽2と出湯通路9とを備えた主熱源装置としてのタンクユニット4が、熱回収用通路3を介して燃料電池(FC)1と熱的に接続されている。燃料電池1は、例えば固体高分子型燃料電池(PEFC)等により形成されており、水の電気分解の逆反応で、都市ガス等の燃料から取り出された水素と空気中の酸素とを反応させて発電する発電装置である。
【0003】
熱回収用通路3は、燃料電池1と貯湯槽2との間で液体(ここでは湯水)を図の矢印Aおよび矢印A’に示されるように循環させる通路であり、熱回収用通路3には、熱回収用通路3内に液体を循環させる図示されていないポンプが介設されている。そして、該ポンプの駆動により、貯湯槽2内の水を図の矢印A’に示すように熱回収用通路3を通して燃料電池1に導入して冷却水とし、この水を燃料電池1の発電時に生じる廃熱によって加熱した後、図の矢印Aに示すように熱回収用通路3を通し、例えば60℃といった温度の湯として貯湯槽2に蓄積する。なお、熱回収用通路3には、三方弁6を介してバイパス通路7が設けられ、燃料電池1側から貯湯槽2側へ流れる液体を、必要に応じて貯湯槽2を通さずに燃料電池1に戻すことができるように形成されている。
【0004】
貯湯槽2には、貯湯槽2内または貯湯槽2の外側壁に、貯湯槽2内の湯水の温度を検出する貯湯槽内湯水温検出手段5が、貯湯槽2の上下方向に互いに間隔を介して複数(図3では5個)設けられている。なお、最上位に設けられている貯湯槽内湯水温検出手段5aは、貯湯槽2の上端よりも予め定められた設定長さだけ下側の位置、つまり、例えば貯湯槽2の上端まで湯が満たされた場合よりも20リットル少ない湯量の湯が貯湯槽2内に導入された場合の湯面の位置に設けられている。
【0005】
貯湯槽2の上部側に接続されている出湯通路9は、貯湯槽2で形成された湯を出湯する(送水する)通路と成しており、出湯通路9には、出湯通路9を通る湯(湯水)の温度を検出する貯湯槽出湯水温検出手段11と、出湯通路9を通して送水される湯の流量を(例えば弁開度により)調節する貯湯槽出湯水流量調節器としてのタンク湯水混合器12と、出湯通路9を通しての湯の送水の有無を弁の開閉により切り替える貯湯槽出側湯水電磁弁としてのタンク側電磁弁13とが介設されている。なお、同図には図示されていないが、貯湯槽2を備えた熱源装置には、貯湯槽2内の圧力が許容圧力を超えたときに該圧力を外部に逃がすための過圧逃がし弁が適宜の位置(例えば出湯通路9に接続された圧力逃がし用の通路等)に設けられている。
【0006】
また、この熱源装置への給水通路8は給水通路8aと給水通路8bとに分岐され、一方側の給水通路8(8a)が貯湯槽2の下部側に接続されて、他方側の給水通路8(8b)は、合流部10で出湯通路9に合流するように形成されている。給水通路8bには、給水通路8bから合流部10側へ流れる水の量を(例えば弁開度により)可変するための給水量調節器としての水混合器14が介設されている。
【0007】
合流部10には、補助熱源装置としての給湯器16の湯水導入側が、湯水導入通路15を介して接続されており、湯水導入通路15には混合湯水温検出手段としての混合サーミスタ28(28a,28b)が介設されている。給湯器16は、通水する水を例えば給湯バーナの燃焼熱により加熱する加熱手段としての給湯熱交換器17を備え、図の矢印Bに示されるように、貯湯槽2から出湯通路9を通して送水される(タンクユニット4から送水される)湯水を、図の矢印B”に示されるように、湯水導入通路15を介して給湯器16に導入して給湯熱交換器17で加熱する追い加熱の機能を有している。
【0008】
この追い加熱機能により加熱された湯は、通路18と給湯通路19とを順に通って一つ以上の給湯先に給湯される。なお、同図には図示されていないが、給湯通路19の先端側には給湯栓が設けられており、この給湯栓を開くことにより、貯湯槽2に蓄えられていた湯水が給水圧を受けて前記のように出湯通路9を通り、前記の如く、給水通路8bからの水と混合されたり、給湯器16により追い加熱されたりして給湯される。
【0009】
なお、周知の如く、給湯器16には、給湯熱交換器17を加熱する給湯バーナ(ガスバーナ)や給湯バーナへの空気の給排気を行う燃焼ファン等の適宜の構成要素(図示せず)が設けられ、その構成要素を制御することにより前記追い加熱機能の動作が行われるものであるが、ガスバーナで給湯熱交換器17を加熱する給湯器16は、最小燃焼号数に対応する燃焼熱量より小さい燃焼熱量でガスバーナの燃焼(つまり、ガスバーナによる給湯熱交換器17の加熱)を行うことはできないものである。
【0010】
なお、図3の図中、符号25は入水温度サーミスタ、符号26は燃料電池1から貯湯槽2へ導入される湯水温検出用のFC高温サーミスタ、符号27は貯湯槽2から燃料電池1側へ導出される湯水温検出用のFC低温サーミスタをそれぞれ示し、符号29は給水流量センサ、符号50は減圧弁、符号30は給湯器16から浴槽31への注湯通路、符号32は暖房装置と給湯器16とを接続する暖房用通路、符号42は通路18と給湯通路19を通して給湯される給湯流量を検出する流量検出手段をそれぞれ示している。
【0011】
図4には、図3に示したシステム構成における配管および構成要素の一部を省略または破線で示したシステム構成図が示されており、図4に示されるように、前記通路18には分岐継手20を介して接続通路21の一端側が接続され、接続通路21の他端側は、熱回収用通路3において湯水を燃料電池1側から貯湯槽2側に通す通路の途中部に接続されている。また、熱回収用通路3において湯水を貯湯槽2側から燃料電池1側に通す通路の途中部と前記出湯通路9の先端側とを接続する接続通路22が設けられ、接続通路22には、湯水を循環させる循環ポンプ23と、水電磁弁24とが介設されている。
【0012】
そして、通路18、接続通路21、熱回収用通路3のうちの通路3a、3b(接続通路21との接続部および接続通路22との接続部よりも貯湯槽2側の領域の一部)と、バイパス通路7、接続通路22、湯水導入通路15を有して、同図の矢印Cに示されるように湯水を循環させる湯水循環通路40が形成されている。水電磁弁24は、循環ポンプ23の駆動による湯水循環通路40への水の循環の有無を弁の開閉により切り替える電磁弁であり、水電磁弁24を開いた状態で循環ポンプ23を駆動させて湯水循環通路40を循環する湯水を、給湯器16が給湯熱交換器17により加熱する循環湯水加熱機能を有している。この循環湯水加熱機能の動作も、給湯器16の前記構成要素を制御することにより行われる。
【0013】
なお、図3図4において、加熱により温められた湯水が主に通る通路部分にはドットを記しており、湯水循環通路40においては温められた湯水の温度が湯水循環通路40内を通るときに徐々に冷めていくが、湯水循環通路40のうち給湯器16の湯水導出側の通路18からバイパス通路7の入口までの領域にドットを記している。
【0014】
また、図3図4に示す熱源装置には、図示されていない制御装置が設けられており、制御装置には、タンク湯水混合器12を制御して出湯通路9から合流部10側に流れる湯水の流量を制御すると共に、水混合器14を制御して給水通路8bから合流部10側に流れる水の流量を制御し、合流部10で適宜の温度の混合湯水が形成されるようにするミキシング流量制御手段が設けられている。
【0015】
このミキシング流量制御手段は、給湯停止時には例えばタンク側電磁弁13を閉じて出湯通路9から合流部10側に流れる湯(貯湯槽2からの出湯湯水)の流量がゼロとなる状態にする。また、給湯通路19の先端側に設けられている給湯栓が開かれると、ミキシング流量制御手段は、タンク湯水混合器12の制御により、図3の矢印Bに示されるように出湯通路9から合流部10側に流れる湯水の流量を調節すると共に、水混合器14の制御により、図3の矢印B’に示されるように給水通路8bから合流部10側に流れる水の流量を調節し、合流部10で形成される混合湯水の温度が例えば給湯設定温度と同じまたはその近傍に設定される混合設定温度になるようにする。
【0016】
なお、貯湯槽2内に貯湯されている湯水には、例えば図5の模式図に示されるような温度の層Wa、Wb、Wcが形成されるものであり、貯湯槽2の上部側の層(高温層)Waには燃料電池1の発電時に生じる廃熱によって加熱された高温Ta(例えば60℃)の湯が貯湯され、貯湯槽2の下部側の層(低温層)Wcには貯湯槽2内に給水される給水温度と同じ温度Tc(例えば15℃)の水が貯水されており、その間に、温度Taから温度Tcまでの急な温度勾配を持つ層(温度中間層)Wbがある。
【0017】
そこで、前記混合湯水の温度調節は、例えば層Waと層Wbとの境界が貯湯槽内湯水温検出手段5aの配設領域よりも下にあって、貯湯槽内湯水温検出手段5aの検出温度が給湯設定温度より例えば2℃高く設定される閾値(追い加熱基準温度)より高い温度のときには、まず、例えば貯湯槽出湯水温検出手段11の検出温度と、混合設定温度と、給湯流量と、入水温度サーミスタ25の検出温度と、これらの値に対応させて予め与えられている混合流量調節データに基づき、タンク湯水混合器12と水混合器14を制御することによって出湯通路9から合流部10側に流れる湯水の流量と給水通路8bから合流部10側に流れる水の流量とを調節するミキシング流量フィードフォワード制御を行う。
【0018】
その後、混合サーミスタ28(28a,28b)の検出温度と混合設定温度との差に基づいて、混合サーミスタ28(28a,28b)の検出温度が混合設定温度になるように、タンク湯水混合器12と水混合器14を制御して出湯通路9から合流部10側に流れる湯水の流量と給水通路8bから合流部10側に流れる水の流量とを調節するミキシング流量フィードバック制御を行うことにより、合流部10で形成される混合湯水の温度調節を行う。
【0019】
なお、ミキシング流量制御手段は、前記ミシキシング流量フィードフォワード制御を行う代わりに、給湯開始時には、混合設定温度に対応させて、予め設定された流量の湯水が出湯通路9側からと給水通路8b側からそれぞれ合流部10に流れるように、タンク湯水混合器12と水混合器14を制御し(例えばタンク湯水混合器12と水混合器14の流量調節が、段階的に設定されている調節レベルのうちの混合比に対応するレベルを選択することにより行われる場合には、タンク湯水混合器12と水混合器14のレベルを混合比に対応させて合わせ)、その後、前記ミキシング流量フィードバック制御を行うようにしてもよい。また、ミキシング流量フィードフォワード制御を行わずにミキシング流量フィードバック制御のみを行うようにしてもよい。
【0020】
そして、このようなキシング流量制御手段による制御によって、合流部10で形成される混合湯水の温度が混合設定温度(例えば給湯設定温度と同じ温度)またはその近傍温度とされると、その混合湯水は、図3の矢印B”に示されるように、合流部10から湯水導入通路15を通して給湯器16に導入されるが、このとき、給湯器16において給湯熱交換器17による加熱は行われずに、通路18と給湯通路19を通して給湯先に給湯される。
【0021】
一方、貯湯槽内湯水温検出手段5aの検出温度が前記閾値以下であり、ミキシング流量制御手段による流量制御のみでは、給湯設定温度と同等の温度に設定される混合設定温度の湯を給湯することができない場合には、混合設定温度を、給湯設定温度から給湯器16のmin号数(最小燃焼号数)で給湯流量の水を加熱したときに上昇する温度分を差し引いた値まで下げる。そして、その混合湯水が給湯器16の前記追い加熱機能の動作によって給湯熱交換器17により加熱されて給湯設定温度の湯が作り出され、この湯が通路18と給湯通路19を通して給湯先に給湯される。
【0022】
図6には、貯湯槽2内の湯水の出湯による給湯の途中で貯湯槽2内の層Waの湯が無くなってしまったときの、ミキシング流量制御手段によるタンク湯水混合器12の弁開度の制御例と、給湯器16の燃焼熱量制御例と、これらの制御に伴う給湯温度がタイムチャートにより示されている。この制御例は、特許文献1に記載されているものであり、貯湯槽2内の層Waの湯が十分にある場合には(図のt、参照)、特性線aに示されるように、貯湯槽内湯水温検出手段5aの検出温度Tdは温度Taとなる。このとき、混合設定温度Tsが給湯設定温度Tqsと同じになるように設定されてミキシング流量制御手段による制御が行われ、実際の混合湯水の温度(混合サーミスタ28の検出温度Tmix)も、特性線bに示されるように、給湯設定温度Tqsとほぼ同じになる。
【0023】
また、貯湯槽2内の層Waの湯が無くなり、層Wbが貯湯槽内湯水温検出手段5aの位置に達すると(図のt1’参照)、特性線aに示されるように、貯湯槽内湯水温検出手段5aの検出温度Tdが低下し始めるが、貯湯槽内湯水温検出手段5aは、貯湯槽2の頂端より設定距離だけ下側に設けられているので、貯湯槽2から合流部10に流れる湯の温度は、特性線a’に示されるように高いまま(Ta)である。このときにも、混合設定温度Tsは給湯設定温度Tqsと同じになるように設定されて、ミキシング流量制御手段による制御が行われ、特性線bに示されるように、混合サーミスタ28の検出温度Tmixも、前記と同様に、給湯設定温度Tqsとほぼ同じになる。
【0024】
その後、貯湯槽内湯水温検出手段5aの検出温度Tdがさらに低下して閾値に達した時点t1で、給湯器16による追い加熱動作を開始する(図6(c)の特性線d、参照)と共に、図6(b)の特性線cに示されるように、タンク湯水混合器12を介して出湯通路9側から合流部10に流れる混合湯水の流量を急速に減じ(特性線cに示されるようにタンク湯水混合器12の弁開度を急速に小さくし)、混合設定温度を式(1)に示すような混合設定温度Tsになるように設定する。つまり、給湯器16が最小燃焼号数の燃焼熱量(Qmin)で給湯流量(F)の湯を作ったときの温度分(ΔT=Qmin/F)だけ給湯設定温度(Tqs)より低くなるように、混合設定温度を一気に下降させ、その状態を維持する。
【0025】
Ts=Tqs−Qmin/F・・・(1)
【0026】
なお、貯湯槽内湯水温検出手段5aは、前記の如く、貯湯槽2の上端よりも予め定められた設定長さだけ下側の位置に設けられているので、貯湯槽内湯水温検出手段5aの検出温度Tdが閾値に達した時点t1においても、貯湯槽2内には温度Taの湯が残っている。そのため、ミキシング流量制御手段により形成される混合湯水の温度Tminは、給湯設定温度Tqsより前記温度差(ΔT=Qmin/F)だけ低い混合設定温度Tsに一定に維持され、この温度差分を給湯器16により加熱する(温度差分を給湯器16により補う)ことにより、特性線eに示されるように、給湯温度(給湯器16の出口側温度)は給湯設定温度に安定に維持される。
【0027】
そして、貯湯槽2の湯が消費されて層Wbの湯が貯湯槽2から出てくると(図のt2の時点になると)、出湯通路9側から合流部10に流れる湯水温が低下するので、ミキシング流量制御手段の制御によってタンク湯水混合器12を介して出湯通路9側から合流部10に流れる混合湯水の流量を変えなければ(特性線c、参照)合流部10で形成される混合湯水温は特性線bに示されるように低下することになる。そこで、特性線dに示されるように、その分だけ給湯器16の燃焼熱量を増加させて混合湯水を加熱し、前記温度低下分を補うことにより給湯温度を給湯設定温度に安定に維持する(図のt2〜t3の期間の特性線d、参照)。
【0028】
また、貯湯槽2内の層Wbの湯も消費されて層Wcの水が出てくると、貯湯槽出湯水温検出手段11や混合サーミスタ28の検出温度が給水温度Tcに低下するので(図のt3の時点)、ミキシング流量制御手段は、タンク湯水混合器12を介して出湯通路9側から合流部10に流れる水の流量を急激に増やして(例えばタンク湯水混合器12の弁開度を全開にして)、貯湯槽2内の水を給水通路8a側から貯湯槽2に給水される水と置換しながら、貯湯槽2から合流部10を介して給湯器16に導入される水を給湯器16により加熱して給湯設定温度に湯を作り、給湯する。
【0029】
なお、従来は、タンクユニット4と給湯器16とが隣接配置されたタイプ(一体型)の熱源装置が用いられていたが、開発中の熱源装置は、タンクユニット4と給湯器16と燃料電池1とをそれぞれ個別に配置し、互いに配管により接続する個別配置型の熱源装置も可能とするものである。このようにすると、例えば複数種あるタンクユニット4のうち、利用者が必要な容量の貯湯槽2を備えたタンクユニット4を選択し、そのタンクユニット4と、複数種ある給湯器16のうち選択された給湯器16と、複数種ある燃料電池1のうち選択された燃料電池1とを組み合わせるといったことができ、バリエーションを増やすことができる。
【0030】
また、前記のような個別配置型の熱源装置は、既設の給湯器16にタンクユニット4等を接続して熱源装置を形成することもできるといったメリットもある。この場合、例えば給湯器16は建物の北側に配置されてタンクユニット4は建物の東側や西側に配置されるといったように、タンクユニット4と給湯器16とが離れて配置されることも想定されるが、そのような場合には、冬場等に、湯水導入通路15および接続通路21内の水が、給湯停止中に凍結することを防止するため等に、水電磁弁24を開いて循環ポンプ23を駆動させ、図4の矢印Cに示したように、湯水循環通路40に湯水を循環させながら給湯熱交換器17により加熱する前記循環湯水加熱機能の動作が適宜行われるような構成が必要となると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】特許第4359339号公報
【特許文献2】特開平8−20113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
ところで、従来のように、タンクユニット4と給湯器16とが隣接配置されたタイプの熱源装置においては、合流部10で形成された混合湯水の温度と給湯器16に導入される給湯器入水温度とがほぼ等しかったが、タンクユニット4と給湯器16とが離れて配置されて湯水導入通路15の長さが例えば4m以上といった長い長さになると、合流部10で形成された混合湯水が湯水導入通路15を通って給湯器16の入水部まで達するまでには例えば20秒〜30秒といった時間がかかることになる。
【0033】
このような場合、前記のように、貯湯槽内湯水温検出手段5aの検出温度Tdが低下して閾値に達した時点t1で混合設定温度を前記式(1)に示した値に下げることにより(図7(a)の特性線b、参照)、混合サーミスタ28の検出温度Tminが混合設定温度と同様に低下しても、その湯水が給湯器16の入水部まで達するまでには湯水が湯水導入通路15を通るのに要する時間Δt(例えば20秒〜30秒)がかかるため、図7(b)の特性線b’に示されるように、この時間Δtは、時点t1で混合設定温度を下げる前に形成されて湯水導入通路15内に入っていた給湯設定温度の湯が給湯器16の入水部に導入され、時間Δtの経過後に、温度が低下した湯水が導入されることになる。そのため、図7(c)の特性線d’に示されるように、時点t1で給湯器16による追い加熱動作を開始すると、給湯器16による追い加熱分(前記ΔT)だけ高い温度の湯が形成されてしまう。
【0034】
そこで、図7(c)の特性線dに示されるように、時点t1から時間Δtが経過した後に給湯器16の追い加熱動作を開始することも考えられるが、時点t1で混合設定温度を急激に下げると、温度を急激に下げられた湯水が給湯器16に導入されることになるので、追い加熱動作開始直後は給湯器16に導入された低い温度の混合湯水の給湯設定温度との温度差分を追い加熱動作により即座に補うことはできないため、図7(d)の特性線eに示されるように、大きなアンダーシュート発生するといった問題が生じた。
【0035】
なお、特許文献2に記載されているように、給湯器16に給湯器入水温度の検出手段を設けずに、入水温度をリアルタイムで検出せずに演算によって求める方式の給湯器を適用すると、給湯器入水温度の検出手段を設けない分だけコストダウンを図ることができるメリットがある。そこで、本発明は、その種の給湯器16を開発中の熱源装置に適用することも考えているが、そうすると、演算により求めた入水温度に基づいて給湯器16の燃焼量を制御することになるため、実際の入水温度に基づく燃焼量制御方式に比べると入水温度に対応する燃焼量制御が少し遅れるために、前記アンダーシュートがより一層発生しやくなってしまう、といった問題が生じる。
【0036】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、貯湯槽内の湯水の出湯途中で貯湯槽内の高温の湯が無くなってしまったときでも、給湯温度の大きな変動が生じることを防げる熱源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0037】
本発明は上記目的を達成するために、次の構成をもって課題を解決する手段としている。すなわち、第1の発明は、貯湯槽を備えて該貯湯槽からの湯水を出湯通路を通して送水する機能を有する主熱源装置と、該主熱源装置から送水される湯水を導入して給湯熱交換器で加熱する追い加熱動作の機能を有する補助熱源装置とを備え、該補助熱源装置の湯水導入部側には給水通路と前記出湯通路とが合流する合流部が湯水導入通路を介して接続され、前記補助熱源装置の湯水導出部側には湯水を給湯先に導く給湯通路が接続されており、前記出湯通路から前記合流部側に流れる湯水の流量と前記給水通路から前記合流部側に流れる水の流量を制御することによって混合設定温度設定手段により予め定められる混合設定温度の混合湯水が前記合流部で形成されるようにするミキシング流量制御手段と、前記貯湯槽内の湯水の温度を検出する貯湯槽内湯水温検出手段とを有し、前記混合設定温度設定手段は、前記貯湯槽内湯水温検出手段の検出温度が予め定められる追い加熱基準温度よりも高い温度のときの給湯時の前記混合設定温度を給湯設定温度に対応させた第1の設定温度に設定し、前記貯湯槽内湯水温検出手段の検出温度が給湯途中で前記追い加熱基準温度よりも高い温度から前記追い加熱基準温度以下に低下したときには、前記混合設定温度が前記補助熱源装置の動作開始時の動作加熱号数で給湯流量の湯を作ったときの温度分だけ前記第1の設定温度よりも低い第2の設定温度になるまで前記湯水導入通路の長さに応じて該長さが長くなるにつれて小さくなる温度勾配で前記貯湯槽内湯水温検出手段の検出温度低下時から徐々に低下するように前記混合設定温度を設定する構成を有し、前記貯湯槽内湯水温検出手段の検出温度低下時に前記合流部を通った湯水が前記湯水導入通路内を通って前記補助熱源装置の湯水導入部に達する時間が経過したときに前記補助熱源装置の追い加熱機能による加熱を開始させる構成をもって課題を解決する手段としている。
【0038】
また、第2の発明は、前記第1の発明の構成に加え、前記混合設定温度を第1の設定温度から第2の設定温度まで下げる期間は、出湯通路と給水通路との合流部から補助熱源装置の湯水導入部までの湯水導入通路内の湯水容量が流れる期間としたことを特徴とする。
【0039】
さらに、第3の発明は、前記第1または第2の発明の構成に加え、前記補助熱源装置は、追い加熱機能の動作時に給湯温度と給湯流量と給湯熱交換器の加熱量とに基づいて補助熱源装置に導入される湯水の温度を演算により求める構成を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、貯湯槽からの湯水を出湯通路を通して送水される湯水と給湯通路からの水とを合流部に導いて混合湯水を形成する構成と、合流部に湯水導入通路を介して接続された補助熱源装置により混合湯水を追い加熱する構成とを有し、ミキシング流量制御手段によって、前記出湯通路から前記合流部側に流れる湯水の流量と前記給水通路から前記合流部側に流れる水の流量を制御して前記合流部で混合湯水が形成されるようにするが、混合湯水の温度を混合設定温度設定手段により以下のように適切に設定することによって、給湯温度を安定化できる。
【0041】
つまり、混合設定温度設定手段は、貯湯槽内の湯水温を検出する貯湯槽内湯水温検出手段の検出温度が追い加熱基準温度よりも高い温度のときの給湯時の前記混合設定温度を給湯設定温度に対応させた第1の設定温度に設定し、この第1の設定温度になるように形成された混合湯水を補助熱源装置に通し、補助熱源装置による加熱を行わずに給湯することにより、給湯設定温度の湯を給湯できる。
【0042】
また、混合設定温度設定手段は、前記貯湯槽内湯水温検出手段の検出温度が給湯途中で追い加熱基準温度よりも高い温度から前記追い加熱基準温度以下に低下したときには、混合設定温度が前記補助熱源装置の動作開始時の動作加熱号数で給湯流量の湯を作ったときの温度分だけ前記第1の設定温度よりも低い第2の設定温度になるまで、前記湯水導入通路の長さに応じて該長さが長くなるにつれて小さくなる温度勾配で前記貯湯槽内湯水温検出手段の検出温度低下時から徐々に低下するように混合設定温度を設定する。そして、前記貯湯槽内湯水温検出手段の検出温度低下時に前記合流部を通った湯水が前記湯水導入通路内を通って前記補助熱源装置の湯水導入部に達する時間が経過したときに補助熱源装置による追い加熱動作が開始される。
【0043】
つまり、本発明において、混合湯水を形成する合流部と補助熱源装置の湯水導入部側を接続する湯水導入通路の長さについて限定されるものではないが、例えば4mといった長い長さの湯水導入通路であることも想定しており、その場合、合流部で形成された混合設定温度の湯水(混合湯水)が補助熱源装置に到達するまでに例えば20〜30秒といった時間がかかる。
【0044】
そこで、合流部で形成された混合設定温度の湯水が湯水導入通路内を通って補助熱源装置の湯水導入部に達する時間が経過したとき(到達する頃)に補助熱源装置による追い加熱動作が開始されるようにし、かつ、混合湯水の温度を前記第1の設定温度から第2の設定温度になるまで、前記湯水導入通路の長さに応じて該長さが長くなるにつれて小さくなる温度勾配で、前記貯湯槽内湯水温検出手段の検出温度低下時から徐々に低下させることにより、徐々に温度が低下する混合湯水を補助熱源装置により追い加熱して混合湯水の温度低下分を補助熱源装置の追い加熱動作により補うことができるので、貯湯槽内湯水温検出手段の検出温度が給湯途中で追い加熱基準温度よりも高い温度から追い加熱基準温度以下に低下したときに急激に混合設定温度を低下させる場合に生じるアンダーシュート発生を抑制でき、給湯温度の安定化を図ることができる。
【0045】
なお、本発明においては、前記のように温度を前記第1の設定温度から第2の設定温度になるまで、前記湯水導入通路の長さに応じて該長さが長くなるにつれて小さくなる温度勾配で徐々に低下させる(言い換えれば、混合設定温度を徐々に低下させる期間を湯水導入通路の長さに応じて該長さが長くなるにつれて長くなるようにする)ことを特徴としているが、その効果についての詳細説明は後述する。
【0046】
また、補助熱源装置を、追い加熱機能の動作時に給湯温度と給湯流量と給湯熱交換器の加熱量とに基づいて補助熱源装置に導入される湯水の温度を演算により求める構成とすると、演算により求めた入水温度に基づいて燃焼量を制御する際に、演算により求めた値と、実際に補助熱源装置に入水される湯水の温度とのずれ(検出タイミングの遅れ)が生じ、補助熱源装置による追い加熱動作開始時に給湯温度が不安定になりやすいが、本発明を適用することにより、適切に給湯開始時の給湯温度の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明に係る熱源装置の一実施例の制御構成を示すブロック図である。
図2】実施例の熱源装置による混合湯水温設定制御特性および追い加熱動作制御特性ならびに給湯温度特性を説明するためのタイムチャートである。
図3】実施例および開発中の熱源装置のシステム構成例を説明するための説明図である。
図4図3に示す熱源装置に設けられている湯水循環通路と貯湯槽の出湯通路とを説明するために、図3の一部構成を簡略化して示すシステム構成図である。
図5】貯湯槽内の温度層の分布例を模式的に示す説明図である。
図6】従来例の熱源装置による追い加熱動作開始時の制御特性及び温度特性を示すタイムチャートである。
図7図6に示した制御またはその制御に近い制御を開発中の熱源装置に適用した場合の問題点を説明するためのタイムチャートである。
図8】混合設定温度の低下割合と補助熱源装置の加熱速度との関係を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。なお、本実施例の説明において、これまでの説明の例と同一構成要素には同一符号を付し、その重複説明は省略または簡略化する。
【実施例】
【0049】
図1には、本発明に係る熱源装置の一実施例のシステム構成が模式的に示されている。本実施例は、図3に示した熱源装置と同様のシステム構成を有し、さらに、図1に示されるように、タンクユニット60内の制御装置33に、ミキシング流量制御手段35、混合設定温度設定手段36、メモリ部37、積算流量検出手段38を設けている。また、制御装置33には給湯器16の制御装置46とリモコン装置43とが信号接続され、リモコン装置43には給湯設定温度設定操作手段45が設けられ、給湯器16の制御装置46には給湯燃焼制御手段47が設けられている。なお、リモコン装置43は、屋内において、リビングや、浴室、台所、洗面所等の適宜の場所に設置されている。
【0050】
給湯設定温度設定操作手段45は、利用者等により給湯設定温度を設定するための操作手段であり、例えばリモコン装置43の表面側に設けられている操作ボタン等により形成されている。この給湯設定温度設定操作手段45により設定された給湯設定温度の値は、制御装置33の混合設定温度設定手段36と給湯器16の燃焼制御手段47とに加えられる。
【0051】
混合設定温度設定手段36は、混合湯水の設定温度(混合設定温度)を設定するものであり、貯湯槽内湯水温検出手段5aの検出温度が前記追い加熱基準温度(前記閾値)よりも高い温度のときの給湯時の前記混合設定温度を給湯設定温度に対応させて第1の設定温度(T1)に設定する。この第1の設定温度は、例えば図2(a)の特性線bに示されるような、時点t1以前の期間における温度であり、例えば給湯設定温度設定操作手段45によって設定された給湯設定温度Tqsの値と同じ値に(または、それより0.5℃といった温度だけ高めに)設定する。
【0052】
また、混合設定温度設定手段36は、貯湯槽内湯水温検出手段5aの検出温度が、給湯途中で前記追い加熱基準温度よりも高い温度から前記追い加熱基準温度以下に低下したとき(時点t1)には、図2(a)の特性線bに示されるように、混合設定温度が、第1の設定温度よりも給湯器16の動作開始時の動作加熱号数である最小燃焼号数で給湯流量の湯を作ったときの温度分(ΔT)だけ低い第2の設定温度(T2)になるように、前記温度低下時から徐々に低下する値に設定する。
【0053】
この温度低下割合(温度下降勾配)は、前記湯水導入通路の長さに応じて該長さが長くなるにつれて緩やかに設定されるものであり、本実施例では、出湯通路9と給水通路8bとの合流部10から給湯器16の湯水導入部までの湯水導入通路15内の湯水容量が流れる期間(積算流量対応期間)Δtが経過したときに混合設定温度が第2の設定温度となるように、混合設定温度設定手段36が、第1の設定温度から第2の設定温度まで混合設定温度を低下させる温度勾配を決定する。
【0054】
前記積算流量対応期間Δtは、積算流量検出手段38により検出されるものであり、積算流量検出手段38は、メモリ部37に格納されている湯水導入通路15の長さ(この長さは熱源装置の施工業者によって入力される)と管路径とから湯水導入通路15の容量を求め、この容量の湯水が流れる前記積算流量対応期間(言い換えれば、時点t1の時に合流部10にあった湯水が給湯器16の湯水導入部に達するまでの時間)を、その容量と流量検出手段42により検出される流量とから求め、その値を混合設定温度設定手段36に加えると共に、積算流量対応期間が経過したときには、期間経過信号を燃焼制御手段47に加える。
【0055】
混合設定温度設定手段36は、積算流量検出手段38から加えられる積算流量対応期間の値を受けて、この期間経過中に混合設定温度が第1の設定温度から第2の設定温度に低下するような温度勾配を求め、これらの情報に基づいて、前記の如く混合設定温度を設定する。混合設定温度設定手段36によって設定された混合設定温度(混合設定温度情報)は、ミキシング流量制御手段35に加えられる。
【0056】
ミキシング流量制御手段35は、合流部10側に出湯通路9から流れる湯水の流量と給水通路8bから合流部10側に流れる水の流量を制御し、混合設定温度設定手段36により設定される設定混合温度の混合湯水が合流部10で形成されるようにするものである。ミキシング流量制御手段35は、前記の如く、タンク側電磁弁13の開閉制御とタンク湯水混合器12および水混合器14の制御による湯水流量と水流量との制御により、合流部10で形成される混合湯水の温度が混合設定温度となるように制御する。
【0057】
給湯器16の燃焼制御手段47は、混合設定温度設定手段36から前記積算流量対応期間が経過したとき加えられる期間経過信号を受けて、図2(c)の特性線dに示されるように、積算流量対応期間Δtの経過後に前記追い加熱機能による加熱を開始させる。このようにすることで、混合設定温度の低下が開始されたときに合流部10を通った湯水が湯水導入通路15内を通って給湯器16の湯水導入部に達したときに、図2(c)の特性線dに示されるように、追い加熱機能動作が開始される。
【0058】
なお、図2(b)の特性線b’は、給湯器の湯水導入部における温度(入水温度)を示しており、図2(a)の特性線bと比較するとわかるように、合流部10で形成された混合湯水が湯水導入通路15を通って給湯器16に導入されるまでのタイムラグ(前記積算流量対応期間Δt)だけ温度がずれ、設定期間経過時から徐々に温度が低下する。そのため、このときに給湯器16の追い加熱動作を開始させることにより、混合湯水の温度低下分を給湯器16の追い加熱動作により補うが、それにより、給湯温度は、図2(d)の特性線eに示されるように、矢印Eに示す時点で若干の温度変動が生じたとしても大きな温度変動が無い、安定した値(給湯設定温度)に制御される。
【0059】
なお、本実施例は、前記の如く、混合設定温度を第1の設定温度から第2の設定温度に低下させるときの温度勾配を、合流部10と給湯器16の湯水導入部とを接続する湯水導入通路15の長さに応じて長さが長くなるにつれて小さくなるように定め、貯湯槽2からの給湯途中で貯湯槽内湯水温検出手段5aの検出温度が追い加熱基準温度よりも高い温度から追い加熱基準温度以下に低下したときには、その定めた温度勾配で、混合設定温度を第1の設定温度から第2の設定温度まで徐々に低下させることを特徴とする。言い換えれば、混合設定温度を低下させる期間を湯水導入通路15の長さに対応する値として、この期間における混合設定温度の低下速度を湯水導入通路15の長さが長くなるにつれて遅くするものである。
【0060】
それに対し、例えば図8(a)の特性線a’に示されるような給湯器の加熱速度(JIS S2109 7.12.1d加熱速度試験、参照)と同じ温度勾配(角度θ)で、図8(b)の特性線b’に示されるように、混合設定温度を第1の設定温度から第2の設定温度まで低下させることも考えられ(図8(b)の角度θ、参照)、この場合、図8(a)の加熱速度θと図8(b)の温度降下速度θとが打ち消しあうことから、給湯器16の燃焼開始時の切り替えが最短時間ででき、給湯温度も図8(c)の特性線c’に示されるように、安定するのではないかと理論上は考えられる。
【0061】
なお、図8(a)〜(d)において、横軸は全て時間を示しているが、合流部10と給湯器16の湯水導入口との間には湯水導入通路15が設けられており、その長さが長くなるほど合流部10を通った湯水が給湯器16の湯水導入口まで達するには時間がかかり、図8(b)の点Bで温度を下げ始めても、その湯はなかなか給湯器16の入り口には達せず、点Bで温度を下げ始めた湯は例えばその30秒後に給湯器16に達する。このとき(図8(a)の点A)に給湯器16の加熱作動が開始されるものであり(燃焼開始)、温度が下がり始める混合湯水が給湯器16に達し、その湯水が給湯器16で加熱された後の出湯時の温度が、図8(c)の点Cとして表されている。また、合流部10を通った湯水が給湯器16の湯水導入口まで達するまでの時間(前記では30秒)は、配管を流れる流量が多ければ短時間となり、少なければ給湯器16に達する時間は長くなる。
【0062】
ここで、本実施例のように、タンクユニット4と給湯器16とを個別に配置して配管によって接続するタイプの熱源装置においては、以下に述べるような状況となることがあり、そのため、本実施例のような混合設定温度の設定が重要となる。例えば既設の給湯器16と貯湯槽2を備えたタンクユニット4を組み合わせることもできるが、既設の給湯器16が家屋の北側の浴室近傍の壁に取り付けられており、北側の隣地境界が迫っている場合には、大型の貯湯槽2を既設の給湯器16の近傍に取付けできず、貯湯槽2は南側の庭に設置する等の対応が必要となる。その場合、給湯器16と貯湯槽2との間の長い距離を配管(湯水導入通路15の配管)で接続しなければならない場合がある。
【0063】
給湯器16の加熱速度は給湯器16が配設されている場所の外気条件により変わるものであるが、例えば南側の庭に設置された貯湯槽2を備えたタンクユニット4側で、例えば北側の浴室近傍の壁に取り付けられた給湯器16の給気温度等の給気条件を検出することはできないため、たとえ、市販等されている様々な給湯器16の中から利用者が使用している給湯器16がどの給湯器なのかを把握して、その給湯器16の固有の加熱速度をタンクユニット4側の制御装置33に入力しても、外気条件による給湯器16の加熱速度の変化についてタンクユニット4側で判断することはできない。
【0064】
つまり、タンクユニット4側の制御装置33において、販売されている複数の種類の給湯器16の中から指定された給湯器16の想定される加熱速度を求める際には、例えば貯湯槽2の配設領域周囲の外気温を参考として求めるが、実際の加熱速度は給湯器16の周囲の外気温で左右され、貯湯槽2の周囲の外気温と給湯器16の周囲の外気温の差は、給湯器16と貯湯槽2が離れれば離れるほど大きくなる可能性があるため、正確な値を求めることはできない。
【0065】
なお、外気条件による給湯器16の加熱速度の変化の例として、以下のようなことがある。例えば、給湯器16として、潜熱を回収する熱交換器を搭載した、潜熱回収式給湯暖房機を使用した場合、夏場の給気が湿度が高くて35℃の場合であっても、冬場の給気が湿度が低くて5℃の場合であっても、給水温度が同じならば、排気温度がほぼ同じになるがごとく、熱効率は(例えば給気が湿度80%35℃の場合と湿度50%5℃の場合では効率が3%近く違う等)給気する外気条件に大きく左右される。なお、潜熱回収熱交換器を搭載した場合には、顕熱熱交から出た排気ガスの熱を潜熱回収熱交換器で回収するために吸熱最終段が潜熱回収熱交換器であるのに対し(排気温度や熱効率は給水温度に大きく左右されるのに対し)、顕熱熱交換器のみの場合には、吸熱最終段が出湯部であるために、排気温度や熱効率は出湯温度に大きく左右される。
【0066】
本願発明者は、このような外気条件による給湯器16の加熱速度への影響により、給湯器16と貯湯槽2との間の距離が離れれば離れるほど、給湯器16の想定される加熱速度と実際の加熱速度とに差異が生じる点にも着目し、給湯器16と貯湯槽2の間の配管距離に相当する流量(積算流量)が貯湯槽2から流れ出る間(前記積算流量対応期間)に渡って、ミキシング温度を徐々に下げるようにした。
【0067】
なお、貯湯槽2の周囲の外気温に比して給湯器16の周囲の外気温が高い方向に差が生じた場合には実際の加熱速度は速くなるので、加熱速度が速ければ、入水してくる給水温度変化に十分対応できるので、出湯温度は設定温度を保つことができる。しかし、その逆に、給湯器16の周囲の外気温が低い場合には(給湯器16は北側に配設されることも多く、このような場合が多いが)、図8(a)の特性線aに示されるように、実際の加熱速度は特性線a’に示した理論上の加熱速度よりも遅くなり、その結果、図8(b)の特性線b’に示されるように低下していく混合湯水の温度を給湯器16による追い加熱動作によって十分に補償することができず、図8(c)の特性線cに示されるように、給湯温度にアンダーシュートが発生してしまう。
【0068】
そこで、本願発明者は、貯湯槽2の周囲の外気温と給湯器16の周囲の外気温の差を合流部10から給湯器16の湯水導入口までを接続する湯水導入通路15の長さ(配管距離)に対応する値として考え、配管距離を工事業者にタンクユニット4の制御装置33に入力してもらい、湯水導入通路15の長さ(配管距離)に応じて、前記第1の設定温度から第2の設定温度まで混合設定温度を下げる割合を長さが長くなるほど小さく(緩やかに温度が低下するように)することで、給湯温度の安定化を図るようにしている。
【0069】
つまり、前記のように、給湯器16の周囲の外気温が貯湯槽2の周囲の外気温に比して低い場合に生じるアンダーシュート対策として、配管距離として入力された数値が大きければ大きいほど、例えば図8(b)の特性線bに示されるように、合流部10により形成される混合湯水の温度を下げる度合いを小さくする(干満方向に補正する)ことで、給湯器16の追い加熱動作による温度補償を適切に行えるようにして給湯温度の安定を図るようにし、給湯温度のアンダーシュートが出ないようにした。
【0070】
すなわち、貯湯槽2と給湯器16との間は、例えば架橋ポリエチレン管16A(外径が16mmの管)で配管工事がされるので、前記制御装置33に入力してもらってメモリ部37に格納されている配管距離は、配管内に貯留する湯水容量に相当し、流量が一定であれば、工事業者に入力してもらった配管距離が長ければ長いほど、前記第1の設定温度から前記第2の設定温度まで混合設定温度を干満に下げることで、前記アンダーシュートを防止することができる。
【0071】
また、混合設定温度を前記第1の設定温度から第2の設定温度に下げるまでに要する期間を前記積算流量対応期間とする場合には、給湯流量が同じならば湯水導入通路15の長さが長くなるほど積算流量対応期間が長くなり、また、同じ配管距離であっても、流量が少ない場合には湯水導入通路15内の湯水容量が流れる積算流量対応期間が長いので時間をかけて温度を下げることになり、その逆に、流量が多い場合には前記設定期間が短く設定されて短時間で温度を下げることになる。このように、湯水導入通路15の長さに対応させることに加えて給湯流量に応じても混合設定温度の制御を行ってもよい。
【0072】
また、貯湯槽2の周囲の外気温と給湯器16周囲の外気温の差は、配管距離に比して無制限に温度差が広がるものではないので、第1の設定温度から第2の設定温度まで混合設定温度を下げる温度勾配(温度下降勾配)は必ずしも一定にする必要はない(第1の設定温度から第2の設定温度まで混合設定温度が直線性をもって下がるようにする必要性はない)。
【0073】
さらに、以下のような方法で、混合設定温度を第1の設定温度から第2の設定温度まで下げるときの温度下降勾配等の設定を行ってもよい。例えば給湯器16の施工業者によって熱源装置に適用されている給湯器16の種類を制御装置33に入力してもらい、この入力情報に基づき、制御装置33が給湯器16を最小燃焼号数で加熱開始した時の加熱速度(温度上昇勾配)情報を検出する。そして、第1の設定温度から第2の設定温度まで混合設定温度を下げる温度下降勾配を前記温度上昇勾配よりも小さくなるように設定することにし、かつ、温度下降勾配を小さくする割合を湯水導入通路15の長さが長くなるほど大きくする(つまり、温度下降勾配は湯水導入通路15の長さが長くなるほど小さくなる)ようにしてもよい。
【0074】
このようにすると、熱源装置に適用されている給湯器16の加熱速度に対応し、かつ、湯水導入通路15の長さが長くなるほど異なる傾向にある貯湯槽2の配設外部環境と給湯器16の配設外部環境との差(一般には給湯器16の配設されている場所が北側等で外気温が低い等、といった差)にも対応した温度下降勾配で、第1の設定温度から第2の設定温度まで混合設定温度を下げることができるので、前記アンダーシュート発生の抑制をより一層適切に行うことができる。
【0075】
なお、給湯器16の加熱速度は、本来は直線ではないが、図8)の特性線aのように、略直線として給湯器16の加熱による温度上昇勾配(角度θ)の値のみ記憶し、第1の設定温度から第2の設定温度まで混合設定温度を下げる角度(温度下降勾配)を、施工業者に入力してもらった配管距離に応じて前記角度θより小さい値となるように補正し、この補正された角度に基づいて混合設定温度を干満に下げるようにしてもよい(本来は直線ではなく点火時に急速に温度が上昇し、設定温度が近づくと上昇程度が緩やかになるが、加熱速度の説明を明確にしやすくするために図8(a)では直線で示している)。
【0076】
さらに、熱源装置に適用されている給湯器16の情報を入力する代わりに、複数種ある給湯器16のそれぞれにおける外気温別の複数の加熱速度の中から、最も遅い加熱速度を予めメモリ部38に記憶しておき(例えば図8(a)に示した温度上昇勾配θが最も小さい特性を記憶したり、その温度上昇勾配の値を記憶したりし)、施工業者に入力してもらった配管距離(湯水導入通路15の長さ)が長くなる場合には、長さに応じて長さが長くなるほど、混合設定温度設定を第1の設定温度から第2の設定温度に下げる際の前記温度下降勾配θを小さい値となるように補正して、混合設定温度を干満に下げるようにしてもよい。
【0077】
なお、このように、最も遅い加熱速度を予めメモリ部38に記憶しておく場合には、湯水導入通路15の長さが短い場合には、給湯器16の加熱速度がメモリ部38に記憶してある最も遅い加熱速度よりは速い加熱速度となる場合もあるので、温度下降勾配を、記憶してある温度上昇勾配の値と同じ値(図8(d)の特性線d)よりも大きい値に補正してもよい(図8(d)の特性線d”参照)。なお、図8(d)のd’は湯水導入通路15の長さが長いときの補正例を示す。
【0078】
さらに、例えばアンダーシュートがマイナス3℃まで許されるのならば、必ずしも最も悪い加熱速度を選択記憶させるのではなく、許される範囲のアンダーシュートを実現できる加熱速度のみを記憶しておき、その角度を、施工業者に入力してもらった配管距離(湯水導入通路15の長さ)が長くなる場合には長さに応じて補正して、混合設定温度を干満に下げるようにしてもよい。
【0079】
これらのように、複数ある給湯器16の中から熱源装置に適用されている給湯器16の加熱速度を入力して設定するのではなく、予め制御装置33に設定しておいた値を基準となる温度勾配を用いて前記補正を行うようにすれば、給湯器16の情報を入力する必要がなくなるために、例えば貯湯槽2の工事業者と給湯器16の工事業者が異なる場合の、給湯器16の施工業者への入力依頼を不必要とすることができる。
【0080】
さらに、本実施例をはじめとし、本発明では、混合設定温度設定を第1の設定温度から第2の設定温度まで下げる際の温度下降勾配を決定する際に、給湯器16の周囲の外気温を検出してこの検出情報に基づき給湯器16の加熱速度を求め、その加熱速度に応じて温度下降勾配を決定するのではなく、湯水導入通路15の長さに応じて前記温度下降勾配を決定するので、外気温センサを省略できる。仮に、外気温センサがあったとしても用いないことで、貯湯槽2の複数の加熱速度を記憶するメモリ容量を増やす必要性がなくなる。
【0081】
さらに、混合設定温度設定を第1の設定温度から第2の設定温度に低下させる際の温度下降勾配を決定する際に、貯湯槽2に供給されるAC100Vの周波数が50Hzなのか60Hzなのかで値を変えるようにしてもよい。
【0082】
なお、本発明は、前記実施例に限定されるものでなく、適宜設定されるものである。例えば、本発明の熱源装置の詳細なシステム構成は適宜設定されるものであり、貯湯槽2と出湯通路9と、該出湯通路9と給水通路8bとが合流する合流部10とを備え、ミキシング流量制御手段によって出湯通路9と給水通路8bとから合流部10側に流れる湯水や水の流量を制御して設定混合温度の混合湯水が合流部10で形成されるようにし、かつ、合流部10を通った混合湯水を必要に応じて給湯器16等の補助熱源装置で追い加熱する構成を有していればよい。したがって、給湯器16は、給湯熱交換器17を例えば石油燃焼式のバーナ装置により加熱するタイプの給湯器としてもよいし、電気ヒータにより加熱するタイプの給湯器としてもよい。
【0083】
また、給湯器16等の補助熱源装置の動作開始時の動作加熱号数は、通常、最小燃焼号数であり、前記実施例においても最小燃焼号数で加熱動作を開始しているが、最小燃焼号数とは異なる号数で加熱動作の開始を行ってもよい。その場合、その動作加熱号数に対応させて、前記第2の設定温度を設定することになる。
【0084】
さらに、前記実施例では、貯湯槽2は燃料電池1に熱的に接続されていたが、燃料電池1の代わりに、太陽熱の集熱機やヒートポンプ等を接続してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の熱源装置は、貯湯槽の湯水を必要に応じて加熱または非加熱状態で給湯でき、非加熱状態から追い加熱有りの動作に切り替える際の温度変動も小さいため、使い勝手が良好であり、例えば家庭用の熱源装置として利用できる。
【符号の説明】
【0086】
1 燃料電池
2 貯湯槽
3 熱回収用通路
4 タンクユニット
5 貯湯槽内湯水温検出手段
6 三方弁
7 バイパス通路
8,8a,8b 給水通路
9 出湯通路
10 合流部
11 貯湯槽出湯水温検出手段
12 タンク湯水混合器
13 タンク電磁弁
14 水混合器
15 湯水導入通路
16 給湯器
17 給湯熱交換器
23 循環ポンプ
24 電磁弁
26 FC高温サーミスタ
27 FC低温サーミスタ
28 混合サーミスタ
33 制御装置
35 ミキシング流量制御手段
36 混合設定温度設定手段
37 メモリ部
38 積算流量検出手段
40 湯水循環通路
42 流量検出手段
45 給湯設定温度設定操作手段
47 燃焼制御手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8