(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
<装置の構成>
図1(A)は本発明の一実施形態に係るシミュレーション装置1のブロック図である。シミュレーション装置1は同図に示される構成を有するコンピュータシステムで実現でき、汎用可能コンピュータシステムで実現可能である。
【0010】
シミュレーション装置1は、後述するプログラムを実行するCPU10と、CPU10が実行するデータやプログラムを記憶するROM11と、CPU10が処理するデータやプログラムを一時的に記憶するRAM12と、OS(オペレーションシステム)や後述するプログラム等のプログラム、ユーザが入力した演算条件、演算に必要なデータ、演算結果、表示画面用のデータ等が格納される記憶装置13と、を備える。記憶装置13は例えばハードディスクである。入力装置14はキーボード、マウス等の入力手段であり、ユーザが各種のデータを入力する。ディスプレイ15はCPU10の処理結果等を表示する表示手段である。
【0011】
<シミュレーション例>
図1(B)はシミュレーション装置1が実行するシミュレーションプログラム例を示すフローチャートである。本実施形態では病院利用者として外来患者を想定し、外来患者の病院内での行動をシミュレーションすることで、ブロックプランに対する病院の運用状況を推定する。
【0012】
S1では病院のブロックプランの設定を受け付ける。
図2(A)はブロックプランの一例を示す模式図である。同図は病院の1階部分のブロックプランを例示しているが、シミュレーションの対象とするブロックプランは複数階層を含んでいてもよい。
【0013】
ブロックプランは病院内の区画を示す。
図2(A)の例では、後述するシミュレーションに関連する区画を示しており、受付、会計、診察室1〜5、処置室1及び2、検査室1〜5、待合1〜3の各区画を含む。受付、会計は、窓口数分だけ設定するようにしてもよい。診察室は診療科目毎に区別することも可能である。処置室は例えば注射や点滴等の各処置を行う区画であり、検査室は例えば超音波検査、内視鏡検査、心電図検査、X線検査等の各種の検査を行う区画である。ブロックプランの設定は、例えば、ブロックプランを示す図面ファイルをユーザが指定し、そのファイルを読み込むことで行うことができる。
【0014】
図1(B)に戻り、S2では病院利用者の病院内での移動に関する利用者情報の設定を複数種類受け付ける。利用者情報の設定は、例えば、利用者情報を示すファイルをユーザが指定し、そのファイルを読み込むことで行うことができる。或いは、シミュレーションプログラム側で入力シートを表示させ、入力シートへ入力された情報を受け付ける形態としてもよい。
【0015】
図3は、利用者情報の例を示している。利用者情報は、シミュレーションの対象となる病院を利用する利用者(本実施形態の場合、外来患者)の推定行動態様を類型化したものである。利用者情報が現実の病院利用者の行動態様に近いほど、より精度の高いシミュレーション結果が得られることになる。
【0016】
類型化の方法はどのような方法でもよいが、例えば、実地調査による実測に基づき類型化してもよいし、病院関係者の想定にしたがって行ってもよい。実地調査は、例えば、既設病院の建て替えを目的とする場合は、既設病院にて事前に行うことができる。また、新築する場合には同規模の既設病院に協力を仰いてその既設病院にて行うこともできる。具体的手法としては、既設病院の複数個所にカメラを設置し、カメラの画像を解析することで個々の実外来患者の行動を追跡してその結果に基づき行動態様を類型化できる。また、近年ではICカード等により外来患者の情報管理を行うことも提案されている。既設病院がICカード等により外来患者の来院、診療科目、検査科目等を管理している場合には、ICカード等の記録を分析して外来患者の行動態様を類型化することも可能である。
【0017】
本実施形態の場合、各利用者情報は、「歩行速度」、「利用者数情報」、「来院時刻情報」及び「移動パターン及び区画滞在時間」を含み、各種類の利用者情報はこれらの少なくとも一つの内容が異なる。利用者情報の種類の数には制約はないが、十数種類から数十種類の範囲内とすることができる。
【0018】
「歩行速度」は、病院利用者が歩く速度を示し、種類Aの利用者情報では、歩行速度が600mm/秒の外来患者を想定していることになる。なお、「歩行速度」はシミュレーション上一律とし、利用者情報の対象としない方法も採用可能である。しかし、病院利用者として、例えば、男性や、女性、年齢などをも考慮する場合、歩行速度も設定可能とすることで、より緻密なシミュレーションを行うことができる。
【0019】
「利用者数情報」は、その種類の利用者情報の行動態様をとる病院利用者モデル(本実施形態では外来患者モデル)の発生数を示す。例えば、種類Aの「利用者情報」に属する病院利用者モデルは、シミュレーション上、30人発生し、同じ移動パターンで病院内を移動することになる。
【0020】
「来院時刻情報」は、その種類の利用者情報の行動態様をとる病院利用者モデルの来院時刻に関する情報であり、来院時刻情報によって同じ移動パターンで病院内を移動する病院利用者モデルの来院時刻が設定される。本実施形態の場合、「来院時刻情報」は「基準時刻」と「標準偏差」とを含み、「基準時刻」を平均値として、「標準偏差」で示されるバラつきが生じるように各外来患者モデルの来院時刻を設定される。例えば、種類Aの利用者情報に属する病院利用者モデル30人の来院時刻は、それぞれ、9時を平均値として15分の標準偏差となるように、設定されることになる。
【0021】
「来院時刻情報」として、その種類の利用者情報に属する病院利用者モデルの来院時刻を一律にする情報を設定してもよいが、人数が多くなると多数の外来患者が同時に来院することとなって現実的ではない場合がある。そこで、本実施形態では、来院時刻に一定のバラつきが生じるようにしている。また、来院時刻は、例えば、乱数によってシミュレーションプログラム側のみで設定する構成としてもよいが、利用者数情報に含めることで、より現実に即したシミュレーションが可能となる。
【0022】
「移動パターン及び区画滞在時間」のうち、「移動パターン」は、病院利用者の行先区画及びその移動順序を示す。例えば、種類Aの利用者情報の移動パターンは、病院利用者が受付→診察室1→会計の順にこれらを移動することを示している。この移動パターンは最も一般的な外来患者の行動態様を示しているものと言える。また、例えば、種類Cの利用者情報の移動パターンは、病院利用者が受付→診察室1→検査室3→診察室1→会計の順にこれらを移動することを示している。この移動パターンでは、診察の後、検査を行い、検査結果の説明等のために診察室に戻る場合が想定されている。
【0023】
「区画滞在時間」は、行先区画に到達した場合に、その区画でのサービスを受ける所要時間を示す。例えば、種類Aの利用者情報の場合、受付に1分30秒かかり、診察室1での診察に6分00秒かかり、会計に2分00秒かかることが想定されている。区画滞在時間は区画毎の情報として設定してもよいが(例えば後述する
図4(A)の各区画の設定内容とする)、本実施形態のように利用者情報に含めることで、その利用者情報で想定されている利用者に即した時間の設定が可能となる。例えば、種類Aの利用者情報では診察室1での診察に6分00秒かかることが想定されているが、種類Cの利用者情報では5分30秒かかることが想定されている。このように同じ区画であっても、利用者によって時間が異なる場合を想定可能としている。
【0024】
図1(B)に戻り、S3ではシミュレーションに必要なその他の情報の設定を受け付ける。
図4(A)及び(B)はその他の情報の一例を示し、各区画のシミュレーション条件の情報を例示している。
【0025】
図4(A)は受付、会計、診察室、検査室の情報に関し、「待合」を含む。「待合」は、その区画が順番待ちの場合に病院利用者を移動させる待合区画を指定している。例えば、”受付”が順番待ちの場合には病院利用者を”待合1”に移動させ、待機させることになる。また、例えば、”診察室1”が順番待ちの場合には病院利用者を”待合2”に移動させるが、満席の場合には”待合1”に移動させ、”検査室3”が順番待ちの場合には病院利用者を”待合3”に移動させるが、満席の場合には待合1に移動させる。
【0026】
このような「待合」の指定は、
図4(A)の例の診察室1等のように優先順位を付してもよいし、一つに固定してもよい。また、例えば、利用者情報において個別に規定することも可能である。例えば、
図3に示した利用者情報のうち、種類Aの利用者情報の移動パターンにおいて、受付(待合1)→診察室1(待合2)→会計(待合1)というように規定し、行先区画が順番待ちの場合の待合区画を指定する構成も採用可能である。
【0027】
図4(B)は待合1〜3の「席数」の設定を示している。同図の例では、例えば、待合1には座席が50席あることが設定されている。この席数の情報は待合区画が満席か否かの判断に用いることができる。なお、本実施形態の場合、シミュレーション上では、待合区画において着座する病院利用者数は席数に制約するが、待合区画において起立する病院利用者数は便宜的に制約しないものとしている。また、本実施形態の場合、待合区画の個々の座席の位置設定(平面座標設定)や着座状況の管理しないが、これらを行うようにしてもよい。
【0028】
図1(B)に戻り、S4ではユーザの開始指示を契機としてシミュレーションを実行する。
図5はS4の処理内容を示すフローチャートである。
【0029】
まず、S11で初期設定に関する処理が行われる。S11では、S1で設定されたブロックプランに基づいて、区画間の移動経路を決定すると共に、各区画の平面座標等を設定する。
図2(A)は区画間の移動経路RTを示している。各区画の座標は移動経路RTに繋がる代表的な1点又は複数点とする。病院利用者の歩行経路は移動経路RTに従い、かつ、区画間の最短距離経路とする。
【0030】
S11では、また、S2で設定された各利用者情報に基づいて個々の病院利用者モデルを設定する。例えば、
図3の種類Aの利用者情報から30人の病院利用者モデルを発生させ、その来院時刻を来院時刻情報に基づき個別に設定する。また、種類Bの利用者情報から15人の病院利用者モデルを発生させ、その来院時刻を来院時刻情報に基づき個別に設定する。
【0031】
図6(A)はその設定情報例を示しており、シミュレーション上の経過管理情報を構成する。シミュレーション実行中はこの経過管理情報を経時的に更新していくことで各病院利用者モデルの行動を進行させていく。
図6(B)はシミュレーション実行途中での経過管理情報の記録例を示している。
【0032】
「モデルID」は個々の病院利用者モデルを識別する符号である。「属性」はその病院利用者モデルが、どの種類の利用者情報に属するかを示す。例えば、モデルIDが001の病院利用者モデルは、
図3の種類Aの利用者情報から発生した30人の病院利用者モデルのうちの1人ということになる。「来院時刻」はその病院利用者モデルの来院時刻を示し、来院時刻情報に基づき個別に設定されたものである。
【0033】
「状態」、「終了時刻」、「次の行き先」、「終了区画」及び「現在位置」は
図6(A)に示す初期状態では初期値とされ、シミュレーション実行中に順次更新されて、例えば、
図6(B)の情報が設定される。
【0034】
「状態」はシミュレーション上の仮想時刻におけるその病院利用者モデルの状況を示し、初期値として”来院前”が設定される。来院後の「状態」としては、区画への滞在、区画間の移動、及び、終了等がある。区画への滞在は滞在中の区画名で示され、例えば、
図6(B)の例で、モデルIDが001の病院利用者モデルは、会計中であることが設定されており、モデルIDが040の病院利用者モデルは、待合2で待機中であることが設定されている。区画間の移動は単に移動と示され、例えば、モデルIDが053の病院利用者モデルは、行先区画へ移動中であることが設定されている。終了は移動パターンで示された全行先区画を終了したことを示す。
【0035】
「終了時刻」は、「状態」が区画への滞在である場合に、滞在終了時刻を示し、換言すれば、次の行先区画への出発時刻を示す。例えば、
図6(B)の例で、モデルIDが001の病院利用者モデルは、現在会計中であり、これが9時20分04秒に終了することが示されている。
【0036】
「次の行先」には、その病院利用者モデルの次の行先区画が設定され、
図3の利用者情報の移動パターンに従う。例えば、種類Aの利用者情報に属する病院利用者モデルが、受付に到達して順番待ち無しであれば、「次の行先」は”診察室1”に更新される。順番待ちであれば”待合1”や”待合2”等の待合区画に更新される。
【0037】
「終了区画」には、その病院利用者モデルが既に対応を受けた区画が設定され、「次の行先」を決定するための情報である。例えば、
図6(B)の例で、モデルIDが001の病院利用者モデルは、”診察室1”で既に診察を受けたことなっている。
【0038】
「現在位置」には、その病院利用者モデルの現在位置が、S11で設定したブロックモデルの平面座標で示される。「現在位置」は、「状態」が移動である場合に、仮想時刻の経過にしたがって経時的に、
図3の利用者情報の歩行速度にしたがって、移動経路RTに沿って演算され、行先区画の平面座標と一致した場合に、その行先区画に到達したものと判断する。
【0039】
S11では、また、各区画の初期設定も行う。
図7(A)、
図7(C)はその設定情報例を示しており、シミュレーション上の経過管理情報を構成する。病院利用者モデルと同様に、シミュレーション実行中はこの経過管理情報を経時的に更新していくことで各区画の状態を進行させていく。
図7(A)は待合区画以外の区画の経過管理情報を示し、
図7(C)は待合区画の経過管理情報を示す。
図7(B)はシミュレーション実行途中での待合区画以外の区画の経過管理情報の記録例を示している。まず、
図7(A)及び
図7(B)について説明する。
【0040】
「状態」にはシミュレーション上の仮想時刻におけるその区画の状況が設定される。例えば、
図7(B)の例で、”受付”区画は、モデルIDが051の病院利用者モデルの受付中であることを示す。この場合、他の病院利用者モデルが受付区画に到達しても順番待ちとなる。”会計”区画は空きであることを示す。この場合、病院利用者モデルが会計区画に到達すると直ぐに会計を受けることができることになる。”診察室1”区画は、モデルIDが025の病院利用者モデルの呼び出し中であることを示す。この場合、モデルIDが025の病院利用者モデルが、”診察室1”区画に到達すると診察を受けることができ、他の病院利用者モデルが”診察室1”区画に到達しても順番待ちとなる。
【0041】
「待ち順」には、その区画が順番待ちの場合に、順番待ちをしている病院利用者モデルの順位が設定される。例えば、
図7(B)の例では、”受付”区画においてモデルIDが052の病院利用者モデルの順番が1番であり、以降、053、054のモデルIDの病院利用者モデルが順番待ちをしていることになる。
【0042】
次に、
図7(C)を参照して待合区画の経過管理情報を説明する。「人数」にはシミュレーション上の仮想時刻におけるその待合区画の病院利用者モデル数が設定される。「状態」には仮想時刻においてその待合区画が満席か空席かが設定され、初期設定では同図に示すように空席である。満席か空席かの判断は、「人数」と
図4(B)の席数の設定に基づき行うことができる。
【0043】
図5に戻り、S12以降ではシミュレーションを実行する。概説すると、S18で単位仮想時間(例えば1秒)で仮想時刻を更新しながら、S12〜S17の処理を繰り返す。S13の処理は病院利用者モデルや区画の経過管理情報を更新する処理であり、S15は各病院利用者モデルや各区画の状況の履歴を保存する処理である。これにより、ブロックプランで示された仮想病院内における病院利用者モデルの移動態様を時刻と関連付けてシミュレーションすることができる。以下、順次説明する。
【0044】
S12では、病院利用者モデルの経過管理情報を1モデル分読みだす。読みだす順序は、例えば、
図6(A)に示した病院利用者モデルの経過管理情報の「モデルID」の番号順としてもよいし、「来院時刻」の時刻順としてもよい。
【0045】
S13ではS12で経過管理情報を読み出した病院利用者モデルについて、現在の仮想時刻に応じて必要に応じて経過管理情報を更新する。また、病院利用者モデルの経過管理情報の更新に伴って必要に応じて区画の経過管理情報も更新する。具体例を挙げると、病院利用者モデルの経過管理情報の「状態」の内容にしたがって、以下の処理を行う。
【0046】
<来院前の場合>
「状態」が”来院前”であれば、仮想時刻が「来院時刻」に達したか否かを判定する。「来院時刻」に達していない場合はS13の処理を終了する(S14へ進む。以下、同じ。)。来院時刻に達した場合は、「状態」を”移動”に更新し、「次の行先」を受付区画に設定する。また、「現在位置」を玄関の平面座標に設定する。
【0047】
<移動の場合>
「状態」が”移動”であれば、「現在位置」を更新する。詳細には、歩行速度×単位仮想時間分だけ現在位置を「次の行先」に向かって移動させる。更新後の「現在位置」が、「次の行先」に到達していない場合はS13の処理を終了する。更新後の「現在位置」が、「次の行先」に到達した場合は、以下の処理を行う。
【0048】
到達した「次の行先」が”終了”であれば「状態」を”終了”に更新し、S13の処理を終了する。
【0049】
到達した「次の行先」が待合区画以外の区画であった場合、その到達区画の経過管理情報を読み出し、到達区画の「状態」によって以下の(1)〜(3)の処理を行う。
【0050】
(1)到達区画の「状態」が”空き”であれば、その到達区画の「状態」を、到達した病院利用者モデルのモデルIDで更新する。また、病院利用者モデルの「状態」を到達区画名に更新する。これにより、その病院利用者モデルが到達区画で対応を受けていることになる。更に、病院利用者モデルの「終了時刻」、「次の行先」を、その「属性」の「移動パターン及び区画滞在時間」にしたがって更新する。「終了時刻」は、仮想時刻に「区画滞在時間」で示された到達区画の滞在時間を加算することで設定する。「次の行先」は「移動パターン」にしたがって更新し、到達区画が最後の行先区画の場合は”終了”に更新する。
【0051】
(2)到達区画の「状態」が”呼出×××”であり、かつ、到達した病院利用者モデルのモデルIDが”×××”であれば、”空き”の場合と同様の更新処理を行う。要するに、待合区画で順番待ちをしていて、自分の順番が来て呼び出された病院利用者モデルが、到達区画で対応を受ける場合を想定している。
【0052】
(3)次に、到達区画の「状態」が、別の病院利用者モデルのモデルIDが記録されている場合や、”呼出×××”であるが到達した病院利用者モデルのモデルIDが”×××”以外であれば、その到達区画の「待ち順」を更新する。詳細には、「待ち順」の最後尾に、到達した病院利用者モデルのモデルIDを記録する。また、
図4(A)の「待合」から待機する待合区画を選択する。そして、例えば、その病院利用者モデルの「次の行先」を、選択した待合区画に設定し、「状態」を”移動”に更新する。要するに、到達区画が順番待ちの状態にあり、待合区画で待機すべく、待合区画に移動する場合を想定している。以上が、到達した「次の行先」が待合区画以外の区画であった場合の処理である。
【0053】
次に、到達した「次の行先」が待合区画であった場合の処理について説明する。まず、「次の行先」を、その「属性」の「移動パターン」にしたがって更新する。具体的には「終了区画」の次の行先区画にする。これは、元の「次の行先」であった区画名に戻すことになる。また、その病院利用者モデルの「状態」を、待合区画名に更新する。更に、到達待合区画の経過管理情報を読み出し、経過管理情報の「人数」を1つ加算し、満席であれば「状態」を満席とする。
【0054】
<区画名の場合>
「状態」が区画名の場合、区画名が待合区画以外の区画の場合は以下の(11)の処理を行い、待合区画の場合は以下の(12)の処理を行う。
【0055】
(11)仮想時刻が「終了時刻」に達したか否かを判定する。達していない場合はS13の処理を終了する。達している場合は、その区画において病院利用者モデルに対する対応が完了したことを意味する。「状態」に示された対応完了区画名で「終了区画」を更新し、「状態」を”移動”に更新する。これにより、病院利用者モデルが、対応完了区画を出発することになる。また、「終了時刻」を処理に影響のない値にリセットする。
【0056】
続いて、「状態」に示されていた対応完了区画の経過管理情報を読み出し、対応完了区画の「状態」を更新する。対応完了区画が順番待ちで無い場合(「待ち順」にモデルIDが記録されていない場合)は、”空き”に更新する。対応完了区画が順番待ちであった場合(「待ち順」にモデルIDが記録されている場合)は、「状態」を”呼出○○○”とし、○○○には「待ち順」が一番目である、呼出し対象モデルのモデルIDを記録する一方、「待ち順」を一人分上位にシフトする。
【0057】
(12)「次の行先」の区画の経過管理情報を読み出し、その行先区画の「状態」が、”呼出△△△”であり、かつ、病院利用者モデルのモデルIDが”△△△”であるか否かを判定する。該当しない場合はS13の処理を終了する。該当する場合、その病院利用者モデルの順番が到来したことを意味する。そこで、「状態」を”移動”に更新する。更に、病院利用者モデルが待機していた待合区画の経過管理情報を読み出し、その待機区画の「人数」を1つ減算し、それにより「人数」が席数を下回った場合は「状態」を”満席”から”空席”に更新する。
【0058】
なお、本実施形態では、”呼出△△△”の確認を、待合区画に病院利用者モデルが到達した場合に行うようにしているが、待合区画へ向かって移動中においても確認し、呼び出されている場合には戻るようにしてもよい。以上により、S13の更新処理が終了し、S14へ進む。
【0059】
S14では、S13の更新処理において履歴として保存する対象となっている情報の更新があったか否かを判定する。更新処理において情報の更新があった場合は、全て履歴として保存してもよいが、情報量が不必要に多くなるため、必要な情報のみを書き出すものとしている。該当する場合はS15へ進み、該当しない場合はS16へ進む。
【0060】
S15では履歴保存処理を行う。ここでは、各病院利用者モデルと各区画の経過管理情報の中から選択された情報を仮想時刻と共に記録する。情報の更新時刻から、次の情報の更新時刻までは同じ状況であるため、仮想時刻と更新された情報とをセットで記録していくことで、中間の情報を削除することができ、記憶容量を削減できる。
【0061】
図8は病院利用者モデルの履歴情報の例を示している。同図の例では、履歴を4種類に区別している。「行先区画間の移動」は移動パターンに規定された行先区画間の移動中の時刻を意味し、「行先区画に滞在」は移動パターンに規定された行先区画での滞在時刻を意味する。これらは順番待ちがなかった場合の移動、滞在時間を示すことになる。「待合区画と行先区画間の移動」は待合区画に向かう間及び待合区画から戻る間の時刻を意味し、「待合区画に滞在」は待合区画での滞在時刻を意味する。これらは順番待ち時間を示すことになる。これらの履歴は、経過管理情報の「状態」及び「次の行先」の情報に基づき記録することができる。なお、図示していないが、滞在中の行先区画、待合区画の種類を示す情報も履歴の記録対象とすることができる。
【0062】
図9(A)は待合区画以外の各区画の履歴情報の例を示している。同図の例では、順番待ちの人数の推移を履歴情報として記録しており、経過管理情報の「待ち順」に基づいている。この履歴情報により、各区画の混雑状況がわかる。
図9(B)は待合区画の履歴情報の例を示している。同図の例では、待合区画の人数の推移を履歴情報として記録しており、経過管理情報の「人数」に基づいている。この履歴情報により、待合区画の混雑状況がわかり、席数と比較することで着座、起立の状況もわかる。
【0063】
図5に戻り、S16では全病院利用者モデルの経過管理情報についてS13の処理を行ったか否かを判定する。該当しない場合はS12に戻り、次の病院利用者モデルについて同様の処理を行う。該当する場合はS17へ進み、全病院利用者モデルの「状態」が”終了”になったかを判定し、終了になった場合はシミュレーションを終了する。この判定は、例えば、S13の更新処理において、「状態」が”終了”となっていない病院利用者モデルがあれば、全病院利用者モデルの「状態」が”終了”ではないことを示すフラグを立てておくことで実行できる。
【0064】
終了になっていない場合はS18で仮想時刻を1単位進めてS12に戻り、同様の処理を繰り返すことになる。
【0065】
以上により
図1(B)のS4のシミュレーション処理が終了する。続くS5ではS4のシミュレーション結果に基づく情報を出力する。情報の出力は例えばディスプレイ15による表示によって行う。
【0066】
S5で出力する情報としては、仮想病院の病院利用者の利便性に関する情報を挙げることができる。例えば、待合区画での待機時間に関する情報、仮想病院内での移動距離に関する情報、仮想病院内での滞在時間に関する情報、及び、待合区画の混雑度合に関する情報の少なくともいずれか1つを出力する。
【0067】
待合区画での待機時間に関する情報は、
図8の履歴情報のうち、「待合区画に滞在」の時間から得ることができ、「待合区画と行先区画間の移動」の時間も含めることができる。この情報は仮想病院の混雑状況の指標となり、受付数や診察室数等が適切か否かの評価指標となる。情報の単位としては、全病院利用者モデルの平均値としてもよいし、属性(利用者情報の種類)が共通する病院利用者モデル毎の平均値としてもよい。更に、来院時刻の時間帯毎の平均値としてもよい。
【0068】
仮想病院内での移動距離に関する情報は、
図8の履歴情報のうち、「行先区画間の移動」の時間と「待合区画と行先区画間の移動」と、利用者情報の歩行速度の情報から得ることができ、例えば、病院利用者モデルの総移動距離である。この情報はブロックプランの区画配置が病院利用者の移動に適したものか(不必要に長距離の移動を強いることがないか)の評価指標となる。情報の単位としては、全病院利用者モデルの平均値としてもよいし、属性(利用者情報の種類)が共通する病院利用者モデル毎の平均値としてもよい。
【0069】
仮想病院内での滞在時間に関する情報は、
図8の履歴情報の4種類の履歴の時間から得ることができ、例えば、来院から会計終了までのトータル時間である。この情報も仮想病院の混雑状況の指標となり、受付数や診察室数等が適切か否かの評価指標となる。
【0070】
待合区画の混雑度合に関する情報は、
図9(B)の履歴情報から得ることができ、例えば、着席者数/席数の平均値である。この情報は、主に、待合区画の席数の評価指標となる。
【0071】
以上により1単位の処理が終了する。本実施形態では、病院利用者の病院内での行動態様を利用者情報で規定できるようにしたので、この利用者情報を実情や病院関係者の想定に合わせて設定することで、ブロックプランに対する病院の運用状況をより現実的に推定するができる。
【0072】
なお、上記の処理に加えて仮想病院内での病院利用者モデルの移動態様を示す画像を生成し、ディスプレイ15に表示してもよい。
図10はその表示例を示。同図の表示例はブロックプランに基づく仮想病院内を病院利用者モデルMが移動する動画を想定している。仮想病院内の画像はS1で設定されるブロックプランから得ることができ、病院利用者モデルMの画像は事前に作成しておけばよい。病院利用者モデルMの画像の位置及び移動は上述したシミュレーション結果に基づいて制御すればよい。
【0073】
また、ブロックプランの区画配置だけ変更して再度のシミュレーションを行う場合には、S2、S3の設定をそのまま継承してS1のブロックプランの設定のみを変更可能としてもよい。これにより、区画配置の評価を行いやすくなる。