【実施例】
【0027】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0028】
(クロマイズ処理前の試験片の表面観察)
オーステナイト系ステンレス鋼の粉末とバインダの混合物を射出材料として金属粉末射出成形によって成形して焼成することにより、焼結済みの成形体により構成される試験片1を製作した。そして、倍率500倍で走査型電子顕微鏡(SEM)により試験片1の表面の観察を行い、
図2A(a)に示すような観察結果を得て、
図2A(a)に示された部分を電子線マイクロアナライザー(EPMA)によって元素分析を行い、
図2A(b)に示すような分析結果を得た。これによると、試験片1の表面にクロムの濃度の高い箇所(薄くなっている箇所)が存在することが確認された。なお、エネルギー分散型X線分析(EDX)による点分析によってクロムの濃度の高い箇所にクロム炭化物が存在していることが確認された。
【0029】
オーステナイト系ステンレス鋼の粉末とバインダの混合物を射出材料として金属粉末射出成形によって成形して焼成し、焼結済みの成形体に固溶化処理を施すことにより、試験片2を製作した。そして、倍率500倍で走査型電子顕微鏡により試験片2の表面の観察を行い、
図2B(a)に示すような観察結果を得て、
図2B(a)に示された部分を電子線マイクロアナライザーによって元素分析を行い、
図2B(b)に示すような分析結果を得た。これによると、試験片2の表面にクロムの濃度の高い箇所がなくなって、試験片2の表面からクロム炭化物が略消滅したことが確認された。
【0030】
(クロマイズ処理前の試験片の断面観察)
試験片1を切断して、試験片1を埋込樹脂に埋め込んだ状態で、試験片1の切断面に対して研磨処理及びエッチング処理を順次行った。そして、倍率500倍で走査型電子顕微鏡により試験片1の断面端部(断面における表面側)及び断面中央部の観察を行い、
図3A(a)及び
図4A(a)に示すような観察結果を得て、
図3A(a)及び
図4A(a)に示された部分を電子線マイクロアナライザーによって元素分析を行い、
図3A(b)及び
図4A(b)に示すような分析結果を得た。これによると、試験片1の断面端部及び断面中央部、換言すれば、試験片1の内部にクロムの濃度の高い箇所が存在することが確認された。また、倍率20倍で光学顕微鏡により試験片1の断面端部及び断面中央部の観察を行い、
図5A(a)及び
図5A(b)に示すような観察結果を得た。なお、エネルギー分散型X線分析(EDX)による点分析によって、
図5A(a)及び
図5A(b)に示された部分にクロム炭化物が存在することが確認された。
【0031】
試験片2を切断して、試験片2を埋込樹脂に埋め込んだ状態で、試験片2の切断面に対して研磨処理及びエッチング処理を順次行った。そして、倍率500倍で走査型電子顕微鏡により試験片2の断面端部及び断面中央部の観察を行い、
図3B(a)及び
図4B(a)に示すような観察結果を得て、
図3B(a)及び
図4B(a)に示された部分を電子線マイクロアナライザーによって元素分析を行い、
図3B(b)及び
図4B(b)に示すような分析結果を得た。これによると、試験片2の断面端部及び断面中央部、換言すれば、試験片2の内部にクロムの濃度の高い箇所がなくなって、試験片2の内部からクロム炭化物が略消滅したことが確認された。また、倍率20倍で光学顕微鏡により試験片2の断面端部及び断面中央部の観察を行い、
図5B(a)及び
図5B(b)に示すような観察結果を得た。
【0032】
(クロマイズ処理後の試験片の断面観察)
試験片1の表面全体にクロマイズ処理を施した後に、試験片1を切断して、試験片1を埋込樹脂に埋め込んだ状態で、試験片1の切断面に対して研磨処理及びエッチング処理を順次行った。そして、倍率500倍で走査型電子顕微鏡により試験片1の断面端部の観察を行い、
図6A(a)に示すような観察結果を得て、
図6A(a)に示された部分を電子線マイクロアナライザーによって元素分析を行い、
図6A(b)に示すような分析結果を得た。また、倍率20倍で光学顕微鏡により試験片1の断面端部の異なる箇所の観察を行い、
図7A(a)(b)に示すような観察結果を得た。これによると、試験片1の表面に形成されたクロム炭化物層の厚みが薄く、クロム炭化物層の厚みにばらつきがあることが確認された。
【0033】
試験片2の表面全体にクロマイズ処理を施した後に、試験片2を切断して、試験片2を埋込樹脂に埋め込んだ状態で、試験片2の切断面に対して研磨処理及びエッチング処理を順次行った。そして、倍率500倍で走査型電子顕微鏡により試験片1の断面端部の観察を行い、
図6B(a)に示すような観察結果を得て、
図6B(a)に示された部分を電子線マイクロアナライザーによって元素分析を行い、
図6B(b)に示すような分析結果を得た。また、倍率20倍で光学顕微鏡により試験片2の断面端部の異なる箇所の観察を行い、
図7B(a)(b)に示すような観察結果を得た。これによると、試験片2の表面に形成されたクロム炭化物層の厚みが厚くなって、クロム炭化物層の厚みのばらつきが小さくなったことが確認された。