(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記共重合体(A)が、4−メチル−1−ペンテンおよび/または3−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位を50〜95モル%含み、炭素原子数3のαーオレフィンに由来する構成単位を5〜50モル%含む共重合体である、請求項1に記載のコーティング剤。
前記溶媒が、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ナフテン系溶剤、イソパラフィン系溶剤及び芳香族系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の溶媒である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のコーティング剤。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.組成物
本発明の組成物は、共重合体(A)と、溶媒と、を含む組成物である。以下で、本願発明の組成物について詳細に説明する。なお、本願発明において、「〜」を使用して数値範囲を規定するが、本願発明の「〜」は境界値を含む。例えば、「1〜100」とは10以上100以下を意味する。また、本願では共重合のことを重合と記載する場合があり、共重合体のことを重合体と記載する場合がある。
【0013】
(1)共重合体(A)
本発明の共重合体(A)は、(i)4−メチル−1−ペンテンおよび/または3−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位を50〜95モル%含み、エチレン及び炭素原子数3〜4のαーオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種類のオレフィンに由来する構成単位を5〜50モル%含む共重合体であり、(ii)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5〜5.0(dl/g)であり、(iii)DSCで測定した融点(Tm)が200℃以下または実質的に融点が存在せず、(iv)密度が820〜850(kg/m3)であり、(v)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定する重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)は1.0〜3.5であるとの(i)〜(v)の要件を同時に満たす。以下で各要件について説明する。
【0014】
(1−1)要件(i)
本願発明の共重合体(A)は、4−メチル−1−ペンテンおよび/または3−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位を50〜95モル%含み、エチレン及び炭素原子数3〜4のαーオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種類のオレフィンに由来する構成単位を5〜50モル%含む共重合体である。
【0015】
ここで、4−メチル−1−ペンテンおよび/または3−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位の上限は好ましくは95モル%、より好ましくは90モル%であり、下限は好ましくは50モル%、より好ましくは70モル%である。なお4−メチル−1−ペンテンおよび/または3−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位のモル%とは、4−メチル−1−ペンテンのみに由来する構成単位のモル%と3−メチル−1−ペンテンのみに由来する構成単位のモル%を合計したものである。
【0016】
共重合体(A)中には、4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位か3−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位のいずれか一方が含まれていてもよく、両方が含まれていてもよい。4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位と3−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位の比率などは特に限定されないが、好ましくは4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位が、3−メチル−1−ペンテンと4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位の合計100モル%に対して80〜100モル%の比率であることが好ましい。
【0017】
エチレン及び炭素原子数3〜4のαーオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種類のオレフィンから導かれる構成単位の上限は好ましくは50モル%、より好ましくは30モル%、さらに好ましくは13モル%であり、下限は好ましくは5モル%、より好ましくは10モル%である。
【0018】
ここで、4−メチル−1−ペンテンおよび/または3−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位が100モル%(エチレン及び炭素原子数3〜4のαーオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種類のオレフィンから導かれる構成単位が0モル%)とは、共重合体(A)が、4−メチル−1−ペンテンおよび/または3−メチル−1−ペンテンのみの重合体であることを示すものである。
【0019】
各構成単位が上記範囲にあると、共重合体(A)を含む組成物から作成したフィルムの離型性と電気絶縁性が良好になる。さらに後述する溶媒との親和性が向上し、本発明の組成物の安定性が向上する傾向にある。これは嵩高い構成単位である4−メチル−1−ペンテンおよび/または3−メチル−ペンテンが、結晶化しやすいプロピレン、ヘキサデセン、オクタデセン、ヘキセンのようなオレフィンに対して一定含まれることで共重合体(A)が結晶化しにくくなり、溶媒に展開し均一に分散しやすくなるためと考えられる。なお本願発明でいう組成物の安定性とは、共重合体(A)が後述する溶媒に均一に溶解し、前記共重合体(A)の著しい沈殿が見られないことを意味する。
【0020】
炭素原子数3〜4のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテンなどが好適な例として挙げられる。これらのうち、共重合性および得られる共重合体の物性の観点からは、プロピレンが好ましい。これらのエチレン及び炭素原子数3〜4のα−オレフィンは、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
なお、共重合体(A)は、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の重合性化合物由来の構造単位を含んでいてもよい。このような他の重合性化合物としては、例えばスチレン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナン等の環状構造を有するビニル化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル類;メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和有機酸またはその誘導体;ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン等の共役ジエン類;1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペンル−2−ノルボルネン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン等の非共役ポリエン類などが挙げられる。
【0022】
本発明における共重合体(A)は、このような他の重合性化合物から導かれる単位を、共重合体(A)に含まれる全ての重合性化合物に由来する構造単位の合計100モル%に対して、10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下の量で含有していてもよい。
【0023】
共重合体(A)中の4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、エチレンやα−オレフィンなどの含量は、以下の装置および条件により13C−NMRにより測定により行うことができる。具体的には、日本電子(株)製ECP500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒としてオルトジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒,試料(共重合体(A))濃度55mg/0.6mL、測定温度120℃、観測核は13C(125MHz)、シーケンスはシングルパルスプロトンデカップリング、パルス幅は4.7μ秒(45°パルス)、繰り返し時間は5.5秒、積算回数は1万回以上、27.50ppmをケミカルシフトの基準値として測定することができる。
【0024】
(1−2)要件(ii)
本願発明の共重合体(A)の135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は0.5〜5.0(dl/g)である。ここで本発明の組成物の安定性と言う観点からは、極限粘度[η]の上限値は、4.0以下が好ましく、2.5以下がさらに好ましい。また、本発明の組成物を用いて作成したフィルムの形状安定性という観点からは極限粘度[η]の下限値が0.6以上であるのがより好ましい。上記極限粘度[η]の値は、共重合体(A)を製造する際の、重合工程における水素の添加量により調整することが可能である。
【0025】
また極限粘度[η]はデカリン溶媒を用いて、135℃で測定した値である。具体的には、共重合体(A)約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定することができる。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定し、濃度(C)を0に外挿することで、ηsp/Cの値を極限粘度として求めることができる。
【0026】
(1−3)要件(iii)
本願発明の共重合体(A)DSCで測定した融点(Tm)が200℃以下または実質的に融点がなく、好ましくは実質的に融点がないか110〜180℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは実質的に融点がないか160℃未満が好ましい。前記、融点(Tm)の値は、重合体の立体規則性ならびにエチレン及び炭素原子数3〜4のα−オレフィン構造単位の含有率に依存する傾向がある。このため後述するオレフィン重合用触媒を用い、さらにはエチレンや炭素原子数3〜4のα−オレフィン構造単位の含有率を制御することにより、融点(Tm)を調整することができる。
【0027】
また融点(Tm)は、以下のような方法で測定することができる。セイコーインスツルメンツ社製DSC測定装置(DSC220C)を用い、測定用アルミパンに約5mgの試料(共重合体(A))をつめて、10℃/minで290℃まで昇温し、290℃で5分間保持した後、10℃/minで−50℃まで降温させる。この時の結晶化溶融ピークのピーク頂点から融点(Tm)を算出することができる。なお後述する結晶化温度(Tc)は、Tmと同様の方法で測定した結晶化ピークのピーク頂点の温度から求めることができ
る。
【0028】
なお実質的に融点が存在しないとは、示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)の融解エンタルピー(ΔH)が、実質的に観測されない熱可塑性樹脂をいう。融解エンタルピー(ΔH)が実質的に観測されないとは、ΔHが好ましくは10J/g以下、更に好ましくは5J/g以下であることをいう。融点(Tm)の値が上記範囲にある共重合体(A)を用いることで、組成物の保存安定性が向上し、かつフィルムの性状も均一なものが得られる傾向にある。
【0029】
(1−4)要件(iv)
本願発明の共重合体(A)の密度は820〜850(kg/m3)である。好ましくは825〜850kg/m3であり、より好ましくは825〜845kg/m3、さらに好ましくは825〜840kg/m3である。共重合体(A)の密度の値は、4−メチル−1−ペンテンおよび/または3−メチル−1−ペンテンと共に重合する他のオレフィンの種類や含有率を選択することにより、調整することが可能である。また密度は、JIS K6268に準拠して測定することができる。密度の値が上記範囲にある共重合体(A)は、耐熱性の観点から好ましいため、これを含む組成物から得られるフィルムも耐熱性が高いものが得られる傾向にある。
【0030】
(1−5)要件(v)
本願発明の共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定する重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)は1.0〜3.5であり、好ましくは1.3〜3.0、さらに好ましくは1.5〜2.5である。
【0031】
前記分子量分布(Mw/Mn)の値は、後述するオレフィン重合用触媒、特にメタロセン触媒の種類によって調整することが可能である。また分子量分布(Mw/Mn)は、Waters社製ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC−2000型を用いて測定することができる。例えば、分離カラムは、TSKgel GNH6−HTを2本およびTSKgel GNH6−HTLの2本を用いることができる(カラムサイズはいずれも直径7.5mm、長さ300mm)。カラム温度を140℃とし、移動相にはo−ジクロロベンゼン(和光純薬工業株式会社製)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品工業株式会社製)0.025重量%を用い、1.0ml/分で移動させる。次に、共重合体(A)の濃度を15mg/10mLに調整し、試料注入量は500マイクロリットルにして検出器(示差屈折計)で測定することができる。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000またはMw>4×106の範囲ついては東ソー株式会社製を用い、1000≦Mw≦4×106の範囲ついてはプレッシャーケミカル社製を用いて測定することができる。
【0032】
分子量分布(Mw/Mn)の値が前記範囲にある共重合体(A)は、透明性、機械特性の観点から好ましいため、これを含む組成物から得られるフィルムも透明性に優れたものが得られる傾向にある。また共重合体(A)の分子量分布が前記範囲内にあると、後述する溶媒との親和性が高まり、本発明の組成物の安定性が向上する。さらには本発明の組成物を用いて製造したフィルムの表面平滑性や均一性が向上し、タック性が低下する傾向がある。
【0033】
(1−6)結晶化温度(Tc)
本発明における、共重合体(A)のDSCで測定した結晶化温度(Tc)は110〜220℃であることが好ましく、さらに好ましくは120〜210℃である。上記、結晶化温度(Tc)の値は、重合体の立体規則性ならびにエチレンや炭素原子数3〜4のα−オレフィン構造単位の含有率に依存する傾向があり、後述するオレフィン重合用触媒を用い、さらにはエチレンや炭素原子数3〜4のα−オレフィン構造単位の含有率を制御することにより調整することができる。 結晶化温度(Tc)の値が上記範囲にある共重合体(A)は、成形性の観点から好ましいため、これを含む組成物から得られるフィルムも成形性に優れたものが得られる傾向にある。
【0034】
(1−7)変性
本発明における共重合体(A)は、活性水素含有基、酸無水物基、エポキシ基からなる群から選ばれる1種類以上の官能基を有するのもまた好ましい態様である。これらの官能基は、共重合体(A)中に、0.1〜10.0当量含まれていることが好ましい。またこれらの官能基の共重合体(A)への導入(変性)は公知の方法で行うことができ、特に限定されない。共重合体(A)に官能基を導入することで、PET、ABS、PMMA、PEN等の極性を有するフィルムや金属、ガラス、セラミックス等の無機素材に対する密着性を付与する事ができる。活性水素含有基としては、具体的にはメタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸が挙げられる。酸無水物基としては、無水マレイン酸、無水 コハク酸、 無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水シトラエン酸等が挙げられる。エポキシ基としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートが挙げられる。
【0035】
(1−8)共重合体(A)の製造方法
本発明における共重合体(A)は、オレフィン重合用触媒の存在下、4−メチル−1−ペンテンおよび/または3−メチル−1−ペンテンと上述した特定のオレフィン、さらに必要に応じて前記その他の重合性化合物と重合することにより得ることができる。
【0036】
前述のオレフィン重合用触媒のうち、共重合体(A)を製造するに当たり、好ましい触媒の態様として、メタロセン触媒を挙げることができる。好ましいメタロセン触媒としては、国際公開第01/53369号パンフレット、国際公開第01/27124号パンフレット、特開平3−193796号公報、特開平02−41303号公報中あるいは国際公開第06/025540号パンフレット中に記載のメタロセン触媒が挙げられる。
【0037】
本願発明の組成物の共重合体(A)含有量は、前記組成物100重量%に対して、0.1〜95重量%が好ましく、0.1〜80重量%がより好ましく、0.1〜35重量%がさらに好ましく、0.1〜15重量%が特に好ましい。溶媒の含有量が前記範囲にあると、本願発明の組成物をコーティング剤などとして用いた際の組成物のハンドリング性と組成物からフィルムを製造する際の溶媒の除去のしやすさのバランスが良好となり、コーティング剤から製造されるフィルムの膜厚を調整しやすくなる。
【0038】
(2)溶媒
本願発明の組成物は、溶媒を含む。また特に25℃における比誘電率が5以下の溶媒を含むのが好ましい。本願発明の溶媒とは、共重合体(A)が一部でも可溶な液状の物質ならばよく、特に限定されない。また25℃における比誘電率が5以下の溶媒とは、具体的には、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ナフテン系溶剤、イソパラフィン系溶剤等の脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤等が挙げられる。なお、ここで言うナフテン系溶剤とは、1分子内にナフテンに由来する構造を含む化合物である。具体的には、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、エクソールD(登録商標、エクソンモービル社製)が挙げられる。また、イソパラフィン系溶剤とは1分子内にイソパラフィンに由来する構造を含む化合物である。具体的にはIPソルベント(登録商標、出光興産社製)、シェルゾール(登録商標、シェル社製)、アイソパー(登録商標、エクソンモービル社製)が挙げられ、同様に、芳香族系溶剤とは、1分子内にベンゼン環など芳香族に由来する構造を含む化合物である。具体的には、トルエン、キシレン以外に、ソルベッソ(登録商標、エクソンモービル社製)、イプゾール(登録商標、出光興産社製)、ミネラルスピリット等が挙げられる。本発明の組成物に比誘電率を5以下の溶媒を添加することで、前記共重合体(A)が均一に展開し、本発明の組成物を用いてフィルムを作成すると、フィルムの表面平滑性や均一性が向上する傾向がある。
【0039】
また本願発明の組成物が含む溶媒の沸点は、10〜300℃であることが好ましく、20〜250℃がより好ましく、さらに好ましくは、70〜200℃が好ましい。この範囲に沸点があると、組成物のハンドリング性と組成物を用いてフィルムを製造した場合の製造効率のバランスが良好となる。また、上記脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤に加えて、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、イソホロン、γ―ブチロラクトン等のケトン系溶剤を含む事ができる。このケトン系溶剤は、これらのケトン系溶剤と脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤からなる溶剤100重量%に対して0.5〜40重量%であることが好ましく、5〜30重量%がより好ましく、さらに好ましくは10〜20重量%である事が好ましい。
【0040】
(3)その他の成分
本発明の組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに必要に応じて、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、レベリング剤、強化剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、充填剤などを配合することができる。また本願発明の組成物を用いて作成したフィルムと、後述する基材フィルムや前記組成物を塗布する回路基板などとの間の密着力、接着力を高める必要がある場合は、本願発明の組成物に、a)熱可塑性の接着性樹脂、b)粘着成分を有する樹脂、c)共重合体(A)を極性化合物でグラフト変性した成分(以下では、グラフト変性共重合体(A)ともいう)を配合することもできる。特に、本発明の組成物が、活性水素含有官能基、酸無水物基及びエポキシ基からなる群から選ばれた官能基を有する前記a)〜c)のいずれかの樹脂である樹脂(B)を含む態様は好ましい。樹脂(B)を含むことで、本発明の組成物をガラス板などの基材にコートし溶媒を除去し作成したコート層と、前記基材の間の密着力や接着力を高めることができる。また、塗布法などにより樹脂(B)を含む層(Y)を基材などの上に形成し、前記樹脂(B)を含む層の上に、本発明の組成物を配置し、前記組成物中の溶媒を除去することで、(i)〜(v)の要件を満たす共重合体(A)を含む層(X)を形成することで得られる層(X)と層(Y)の積層フィルムも、層(X)と層(Y)と基材の間の密着力や接着力を高めることもできる。
【0041】
a)熱可塑性の接着性樹脂
a)熱可塑性の接着性樹脂としては、公知の熱可塑性接着剤を挙げることができるが、極性官能基が導入されたポリオレフィン、アイオノマー樹脂、エチレン又はエチレンを含むモノマーとグリシジルメタクリレートとの共重合体から選ばれるものを用いるのが好ましい。極性官能基が導入されたポリオレフィンとしては、例えば、市販の熱可塑性樹脂「アドマー」(登録商標)(三井化学(株)製又は三井化学東セロ(株)製)、ポリオレフィン系接着性樹脂(商品名モディック;三菱化学(株)製)を用いることができる。また、同様に溶剤に溶解もしくは、分散した液状の様態として用いる事が出来る物として液状ポリオレフィン系接着剤(三井化学(株)製ユニストール(R))、塩素化ポリオレフィンワニス(日本製紙(株)製スーパークロン(R))が挙げられ、前記接着性樹脂の添加量は、組成物中の共重合体(A)100重量%に対して0.1〜30重量%が好ましく、0.1〜15重量%がさらに好ましい。
【0042】
b)粘着成分を有する樹脂
b)粘着成分を有する樹脂は、粘着性がある樹脂であるならば、特に制限はないが、例えばDSCで測定した融点(Tm)が110℃未満の熱可塑性樹脂、および従来公知である熱可塑性エラストマーを挙げることができる。具体的にはポリオレフィン系熱可塑性樹脂あるいはポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが好ましく、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂あるいはポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの例として、具体的には、エチレン系重合体、プロピレン系共重合体、ブテン系共重合体が挙げられる。より具体的には、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の各種ビニル化合物をコモノマーとするエチレン系共重合体、プロピレンと炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体、プロピレンと炭素数4〜20のα−オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の各種ビニル化合物をコモノマーとするエチレン系共重合体等が挙げられる。
【0043】
また、熱可塑性エラストマーとしてはポリスチレン系エラストマーを挙げることもできる。ポリスチレン系エラストマーとしては、硬質部(結晶部)となるポリスチレンブロックと、軟質部となるジエン系モノマーブロックとのブロック共重合体(SBS)、水添スチレン・ブタジエン・スチレンブロック(HSBR)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・イソブチレン・スチレン共重合体(SIBS)、スチレン・イソブチレン共重合体(SIB)などを例示することができる。ポリスチレン系エラストマーは、単独または2種類以上を組み合せて用いられる。
【0044】
スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体は、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)を水素添加してなるものである。SISの具体例としては、JSR株式会社から商品名:JSR SIS(登録商標)として、株式会社クラレから商品名:ハイブラー(登録商標)、またはシェル株式会社から商品名:クレイトンD(登録商標)として市販されているものなどが挙げられる。
【0045】
また、SEPSの具体例としては、株式会社クラレから商品名:セプトン(登録商標)として市販されているものなどが挙げられる。また、SIBSの具体例としては、株式会社カネカから商品名:シブスター(登録商標)として市販されているものなどが挙げられる。
【0046】
さらには、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーの例として、オレフィン系ブロック共重合体からなるエラストマーも使用することができる。ポリオレフィン系ブロック共重合体からなるエラストマーとして、例えば硬質部となるポリプロピレン等の結晶性の高いポリマーを形成するポリオレフィンブロックと、軟質部となる非晶性を示すモノマー共重合体とのブロック共重合体が挙げられ、具体的には、オレフィン(結晶性)・エチレン・ブチレン・オレフィンブロック共重合体、ポリプロピレン・ポリオレフィン(非晶性)・ポリプロピレンブロック共重合体等を例示することができる。具体例としては、JSR株式会社から商品名DYNARONとして市販されているものが挙げられる。前記、b)粘着成分を有する樹脂の添加量は、組成物中の共重合体(A)100重量%に対して0〜50重量%が好ましく、0.1〜20重量%がさらに好ましい。
【0047】
c)グラフト変性共重合体(A)
共重合体(A)を極性樹脂と混合する場合や、本願発明のフィルムと本願フィルムが接する基材フィルムなどとの間の接着力を高める必要がある場合など、共重合体(A)の少なくとも一部が極性化合物によりグラフト変性されているグラフト変性共重合体(A)を、本願発明の組成物に添加するのが好ましい。
【0048】
グラフト変性に用いる極性化合物としては、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸またはその誘導体、ビニルエステル化合物、塩化ビニル、ビニル基含有有機ケイ素化合物、カルボジイミド化合物などが挙げられる。これらのうち、不飽和カルボン酸またはその誘導体およびビニル基含有有機ケイ素化合物が特に好ましい。
【0049】
不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物、カルボン酸基を有する化合物とアルキルアルコールとのエステル、無水カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物等を挙げることができ、不飽和基としては、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素基などを挙げることができる。これらの化合物は従来公知のものが使用でき、特に制限はないが具体的な化合物としては、例えばアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸〔登録商標〕(エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸)等の不飽和カルボン酸;またはその誘導体、例えば酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステル等が挙げられる。かかる誘導体の具体例としては、例えば塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエート等が挙げられる。これらの不飽和カルボン酸および/またはその誘導体は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。これらの中では、不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物が好適であり、特にマレイン酸、ナジック酸〔登録商標〕またはこれらの酸無水物が好ましく用いられる。
【0050】
ビニル基含有有機ケイ素化合物としては、従来公知のものが使用でき、特に制限はないが具体的には、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシーエトキシシラン)、γ−グリシドキシプロピルートリピルトリーメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクロキシプロピルメチルジメメトキシシラン、3−メタクロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが使用できる。好ましくは、γ−グリシドキシプロピルトリピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−アクロキシプロピルトリメトキシシラン、さらに好ましくは、立体障害が小さくグラフト変性効率の高いビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−アクロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0051】
本願発明でグラフト変性共重合体(A)は、共重合体(A)100重量部に対して、前記極性化合物を通常1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部の量でグラフト反応させることにより得ることができる。このグラフト反応は、通常ラジカル開始剤の存在下に行なわれる。
【0052】
グラフト重合に用いられるラジカル開始剤としては、有機過酸化物あるいはアゾ化合物などが挙げられる。ラジカル開始剤は、共重合体(A)、および極性化合物にそのまま混合して使用することもできるが、少量の有機溶媒に溶解してから使用することもできる。この有機溶媒としては、ラジカル開始剤を溶解し得る有機溶媒であれば特に限定することなく用いることができる。
【0053】
また共重合体(A)に極性化合物をグラフト反応させる際には、還元性物質を用いてもよい。還元性物質を用いると、極性化合物のグラフト量を向上させることができる場合がある。 共重合体(A)の極性化合物によるグラフト変性反応は、従来公知の方法で行うことができる。例えば共重合体(A)を有機溶媒に溶解し、次いで極性化合物およびラジカル開始剤などを溶液に加え、70〜200℃、好ましくは80〜190℃の温度で、0.5〜15時間、好ましくは1〜10時間反応させる方法を挙げることができる。
【0054】
また、押出機などを用いて、無溶媒で、共重合体(A)と極性化合物とを反応させることもできる。この反応は、通常共重合体(A)の融点(Tm)以上、具体的には160〜290℃の温度で、通常0.5〜10分間行なわれることが望ましい。
【0055】
このようにして得られるグラフト変性共重合体(A)の変性量(極性化合物のグラフト量)は、通常、グラフト変性反応を行った共重合体(A)100重量%に対して0.1〜50重量%、好ましくは0.2〜30重量%、さらに好ましくは0.2〜10重量%である。
【0056】
酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤が使用可能である。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、イオウ系酸化防止剤、ラクトーン系酸化防止剤、有機ホスファイト化合物、有機ホスフォナイト化合物、あるいはこれらを数種類組み合わせたものが使用できる。
【0057】
滑剤としては、例えばラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの飽和または不飽和脂肪酸のナトリウム、カルシウム、マグネシウム塩などがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。またかかる滑剤の配合量は本発明の組成物100重量部に対して通常0.1〜3重量部、好ましくは0.1〜2重量部程度であることが望ましい。
【0058】
スリップ剤としては、ラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エルカ酸、ヘベニン酸などの飽和または不飽和脂肪酸のアミド、あるいはこれらの飽和または不飽和脂肪酸のビスアマイドを用いることが好ましい。これらのうちでは、エルカ酸アミドおよびエチレンビスステアロアマイドが特に好ましい。これらの脂肪酸アミドは本発明の組成物中の共重合体(A)100重量部に対して0.01〜5重量部の範囲で配合することが好ましい。
【0059】
アンチブロッキング剤としては、微粉末シリカ、微粉末酸化アルミニウム、微粉末クレー、粉末状、もしくは液状のシリコン樹脂、テトラフロロエチレン樹脂、微粉末架橋樹脂、例えば架橋されたアクリル、メタクリル樹脂粉末等をあげることができる。これらのうちでは、微粉末シリカおよび架橋されたアクリル、メタクリル樹脂粉末が好ましい。
【0060】
また後述するように本願発明の組成物をコーティング剤として用いる場合には、本願発明の組成物にレベリング剤を添加するのも好ましい態様である。本願発明の組成物で作成したフィルムの表面粗さを小さくするためのレベリング剤としてはフッ素系ノニオン界面活性剤、特殊アクリル樹脂系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤など用いることができ、溶媒と相溶性が良いものが好ましく、添加量は組成物中の共重合体(A)に対して1〜50,000ppmの範囲で用いられる。また、本発明の目的を損なわない範囲で、公知の架橋剤を併用することもできる。例えば、ウレタンプレポリマー、ウレア樹脂、ガボジイミド類等耕地の架橋剤が挙げられる。添加量は組成物中の共重合体(A)に対して5,000〜500,000ppmの範囲で用いられる。
【0061】
強化剤としては、ケイ素、チタン、アルミニウム、ジルコニウムなどの金属の酸化物、多官能アルコキシ化合物あるいはそのオリゴマー、粘土鉱物を組成物中の共重合体(A)100重量部に対して、5〜50重量部を配合することもでき、本願発明の組成物をコーティング剤として用いて作成したフィルム(この場合はコート層ともいう)の硬度や弾性率を高めることができる。添加量が5重量部未満では効果が低すぎ、50重量部を超えるとコート層の透明性や機械強度が損なわれることがある。
【0062】
(4)組成物の製造方法
本願発明の組成物の製造方法は特に限定されず、通常用いられる方法で製造することができる。例えば、前記溶媒に、前記共重合体(A)を添加し、前記溶媒の沸点以下の温度で、所定の時間攪拌することで製造することができる。
【0063】
(5)組成物の用途
本願発明の組成物は、前記組成物を用いて電気絶縁性が高いフィルムを製造することができるため、コーティング剤、特に液晶表示素子やエレクトロルミネッセンス表示素子などの各種表示デバイス;半導体デバイス;導光板、偏光フィルム、光拡散フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルムなどの光学部材;プリント回路基板などに対する、表面保護用、絶縁用、平坦化用、耐熱用、耐光用、耐候用などの各種コーティング剤として好適に用いることができる。また、本発明の組成物は、オレフィン系の重合体を主に含むことから、本発明の組成物は加熱により分解させやすい。このため、粉末冶金やセラミックス製造時の金属、、合金、無機物の粘結助剤として好適に用いる事もできる。
【0064】
特に、本願発明の組成物は複雑な形状を有する基板への保護層を形成することができるため、プリント配線基板やキャパシタの電極表面の保護層形成用のコーティング剤として好適に用いることできる。また本願発明の組成物を、他のフィルムの上に塗布し、溶媒を除去することで、前記他のフィルムを離型フィルムにすることもできる。
【0065】
2.フィルム
(1)フィルム
本発明のフィルムは、前記の共重合体(A)と、溶媒と、を含む、フィルムである。以下で、本願発明のフィルムについて詳細に説明する。なお、本願でいう「フィルム」とは、便宜上の名称であって、平面状の成形物の総称であり、これにはフィルムの他、シート、膜、テープ、基板上に形成される層などを含む概念である。また「フィルム」とは、平面が連続している成形物に限定されない。
【0066】
本願発明のフィルムは、前記フィルム全体を100重量%とした場合に、溶媒の含有量が0.001〜0.5重量%であるのが通常である。この範囲にあると、フィルムとしての形状を保持しやすく、またフィルムの柔軟性が高くなる。このため、例えば回路基板の離型フィルムとして用いた場合に、プレス加工等でフィルムが破損し、電気絶縁性が低下することを防ぐことができる。また本願発明のフィルムの絶縁破壊電圧(BDV)をフィルムの厚さで除した規格化絶縁破壊電圧(kV/μm)は、0.05以上であることが好ましい。
【0067】
また、共重合体(A)を押出法などで成形する場合は、共重合体(A)をその融点(Tm)以上の温度に加熱し溶融する必要があるが、本願発明の組成物を用いてコーティングでフィルムを製造する場合は融点(Tm)より低い温度でフィルムを製造できるため、共重合体の熱劣化などによる分解物が少なくなり、離型性が高くなる場合がある。分解物としては、例えば共重合体(A)が高温で分解したことにより得られる共重合体(A)を構成するモノマー成分の2量体〜5量体などの低分子量成分や、上記のその他の成分として例示した、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、レベリング剤、強化剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、充填剤などの酸化物、および酸化分解した成分の一部、などが挙げられる。
【0068】
(2)フィルムの製造方法
本願発明のフィルムは、本願発明の組成物を用いて製造することができる。具体的には、本願発明の組成物を、所定の基板上に塗布し、前記組成物の沸点に近い温度に加熱することで組成物中の溶媒をある程度、除去し、フィルムを製造することができる。本願発明のフィルムを基板から分離して自立したフィルムとして用いる場合は、本願発明の組成物を塗布する基板は離型性が高い材質で構成されているのが好ましい。
【0069】
また本願発明のフィルムを、積層フィルム中の特定の層として用いたい場合は、積層したいフィルムに本願発明の組成物をコーティング剤として塗布し、前記組成物中の溶媒をある程度、除去することで、本願発明のフィルムを層として含む積層フィルムを得ることもできる。本願発明の組成物を塗布する方法は、特に限定されないが、はけやブラシを用いた塗布、スプレーによる吹き付け、スクリーン印刷法、フローコーティング、スピンコート、ディッピングによる方法や、バーコーター、Tダイ、バー付きTダイ、ドクターナイフ、ロールコート、ダイコートなどを用いてロールや平板に塗布する方法など挙げられる。
【0070】
なお本願でいう溶媒の除去とは、本願発明の組成物中から溶媒を完全に取り去ることのみを意味するものではなく、本願発明の組成物をフィルム状に成形しえる程度に溶媒を取り去ることをいう。具体的には、本願発明の組成物を用いて作成したフィルムの重量100%に対して、溶媒が0.001〜0.5重量%程度になるまで、溶媒を取り去ることをいう。溶媒を除去する方法は特に限定されず、放置することで乾燥してもよいが、一般的には30〜220℃で加熱し乾燥することで除去される。また共重合体(A)の熱劣化や熱分解を防ぐために共重合体(A)の融点(Tm)以下の温度で溶媒を除去するのが好ましい。一方、乾燥温度が低すぎると乾燥時間が長くなるため生産性が悪化し、高すぎると発泡や劣化などの問題が生じる。発泡を防ぎながら短時間で乾燥させるために、2段階以上もしくは連続的に温度を上昇させながら乾燥してもよい。また、乾燥工程の後に水、メタノール、エタノール、アセトン、塩化メチレンなど共重合体(A)が溶解しにくい溶媒に浸漬する工程、あるいはその溶媒の蒸気雰囲気下に曝す工程を経ることによってコート層に残留する溶媒を低減することもできる。乾燥後のコート層中に残留する溶媒は、0.5重量%以下、好ましくは0.05重量%以下さらに好ましくは0.01重量%以下である。
【0071】
また各種表示デバイス、半導体デバイス、光学部材、プリント回路基板、キャパシタなどの保護層として本願発明のフィルムを用いる場合には、前記デバイスや回路の所定の位置に、本願発明の組成物を塗布し、前記デバイスなどが劣化しない温度で加熱し組成物中の溶媒をある程度、除去することで、フィルム(この場合はコート層ともいう)を形成することもできる。
【0072】
(3)フィルムの用途
本願発明のフィルムは、前述のように耐熱性・電気絶縁性に優れるため、各種表示デバイス、半導体デバイス、光学部材、プリント回路基板、キャパシタなどの保護層として特に好適に用いることができる。また本願発明のフィルムは離型フィルムまたは離型フィルムの離型層として好適に用いられる。以下で離型フィルムの離型層に本願発明のフィルムを用いた例について説明する。
【0073】
本願発明のフィルムを後述する基材フィルムと積層させることで離型フィルムを作成することができる。基材フィルムは、材質は特に限定されず、また単層体であっても複層体であってもよく、厚さも特に限定されないが、フィルム成形が容易な熱可塑性樹脂を含むのが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−α-オレフィン共重合体などの線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、4―メチル−1−ペンテン系ポリマー、ポリブテンなどのポリオレフィン樹脂などが挙げられる。また基材フィルムの成形方法は、押出、一軸あるいは二軸延伸など一般的な方法でよく、特に限定されない。
【0074】
またこれらの基材フィルムに、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の通常、ポリオレフィンに用いる各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加しておいてもよい。これらの基材フィルムの厚さは通常10〜100μmであるが、特に限定されない。
【0075】
前記基材フィルムの表面に、本願発明の組成物を塗布し、前記組成物の溶媒を除去することで本願発明のフィルムを前記基材フィルムの表面に積層させることで離型フィルムを作成することができる。なお、前記離型フィルムの最表面の少なくとも一部に、本願発明のフィルムが配置されていればよいので、基材フィルムの表面全体に本願発明の組成物を塗布しなくてもよい。
【0076】
また基材フィルムと本願発明のフィルムとの間の密着力や接着力を高める必要がある場合は、本願発明のフィルムに、前述のa)熱可塑性の接着性樹脂、b)粘着成分を有する樹脂、c)グラフト変性共重合体(A)を適宜選択して添加するのが好ましい。これらの成分a〜cは一種類だけ本願発明のフィルムに添加してもよいし、それぞれを組み合わせて添加してもよい。これらの成分を本願発明のフィルムに添加する方法は限定されないが、具体的には、本願発明の組成物に前記a〜c成分を添加・混合した組成物を用いて前記方法でフィルムを形成する方法で添加することもできる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例において各物性の測定及び評価は以下の条件で行なった。
【0078】
[極限粘度[η]]
デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。すなわち重合パウダー、ペレットまたは樹脂塊約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求めた。計算式を以下に示す。
「式1」
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
【0079】
[MFR]
共重合体(A)のMFRは、JIS K7210に準拠して、230℃、2.16kgの荷重にて測定した。
【0080】
[数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)]
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)は、Waters社製ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC−2000型を用い、以下のようにして測定した。分離カラムは、TSKgel GNH6−HTを2本およびTSKgel GNH6−HTLの2本を用いた。これらのカラムのサイズはいずれも直径7.5mm、長さ300mmである。カラム温度を140℃とし、移動相にはo−ジクロロベンゼン(和光純薬工業株式会社)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品工業株式会社)0.025重量%を用い、1.0ml/分で移動させた。試料(被測定体:共重合体(A))の濃度を15mg/10mLに調整し、500マイクロリットル注入し、示差屈折計を用いて検出した。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000やMw>4×106の試料ついては東ソー株式会社製のものを用い、1000≦Mw≦4×106についてはプレッシャーケミカル社製のものを用いた。
【0081】
[共重合(A)中のオレフィン等の含量]
共重合体中の4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテンおよびα−オレフィン含量は、以下の装置および条件により13C−NMRにより測定した。日本電子(株)製ECP500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒としてオルトジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒,試料濃度55mg/0.6mL、測定温度120℃、観測核は13C(125MHz)、シーケンスはシングルパルスプロトンデカップリング、パルス幅は4.7μ秒(45°パルス)、繰り返し時間は5.5秒、積算回数は1万回以上、27.50ppmをケミカルシフトの基準値として測定した。得られた13C−NMRスペクトルにより、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、α−オレフィンの組成を定量化した。
【0082】
[融点(Tm)]
セイコーインスツルメンツ社製DSC測定装置(DSC220C)を用い、測定用アルミパンに約5mgの試料をつめて、100℃/minで290℃まで昇温し、290℃で5分間保持した後、10℃/minで−100℃まで降温させた時の結晶溶融ピークのピーク頂点から融点(Tm)を算出した。融点(Tm)が高いほど、耐熱性が高いことを意味する。
【0083】
[密度]
密度測定は、上記の方法で得られた1mm厚プレスシートを30mm角に切り取り、JIS K6268に準拠して、電子比重計を用いて水中置換方法で測定した。
【0084】
[保存安定性(組成物安定性)]
後述する本願発明の組成物の合成において、共重合体(A)と溶媒とを攪拌機付き容器に入れ80℃、1時間、200rpmで攪拌し組成物を合成した後に、24時間、室温で保管した後、前記組成物が可視光線下、目視で透明な場合は○、白濁して見えたが流動性が見られた場合は△、白濁しかつ流動性が見られなかった場合は、×として評価した。
【0085】
[フィルム塗工性]
本願発明の組成物を、24時間、室温で保管した後、25℃でガラス基板上に塗布してアプリケーターで均一に伸ばした後、25℃で30分、さらに80℃で1時間乾燥し、フィルムを得た場合、前記フィルムの表面の凹凸が0.02mm以下の場合を○、0.02mm超の凹凸があった場合を×、フィルムを指で押した場合、指に前記フィルムの成分が目視できる程度に付着した場合をタック性ありとして△として評価した。ここで凹凸には溶け残りによるブツもカウントした。
【0086】
[絶縁破壊電圧(BDV)]
絶縁破壊電圧(V/μm)測定は、ASTM−D149に準じ、ヤマヨ試験器有限会社製絶縁破壊試験機を用いた。上記の方法で得られたフィルムを昇圧速度500V/secにて電圧を印加して破壊耐電圧を測定し、耐圧特性を求めた。また絶縁破壊電圧を求めたフィルムの部位の厚さを測定し、前記厚さで絶縁破壊電圧(BDV)を除したものを規格化絶縁破壊電圧kV(/μm)とした。この規格化絶縁破壊電圧が大きいほど、電気絶縁性が高いことを表す。
【0087】
[水の接触角測定]
水の接触角測定は、DropMaster500画像処理式、固液界面解析システムを用いて、得られたフィルムに水滴を落としたときの接触角値を測定した。接触角値が大きいほど、極性が高い材料に対する離型性が高いことを意味する。
【0088】
[臨界界面張力]
臨界界面張力測定は、DropMaster500画像処理式、固液界面解析システムを用いて、試験液にぬれ張力試薬用混合液(和光純薬工業株式会社製)を用いて、23℃、湿度50%の環境下で、実施例で得られたフィルムの接触角を測定し、それを元に臨界界面張力を算出した。臨界界面張力が小さいほど、極性が高い材料に対する離型性が高いことを意味する。
【0089】
[溶媒含有量 分解物含有量]
フィルム中に含まれる溶媒や共重合体(A)の分解物などは、特開2011−88352号公報、特開2007−224311号公報等の試験方法を参考にして実施した。具体的には、厚み50μmのフィルムを、20×2mmの短冊状にカットし、そのうち10mg分を精秤後、ヘリウム気流下にて180℃で30分加熱した。前記加熱時に発生するガス成分を動的ヘッドスペース法で捕集し、熱脱着GC/MSスペクトル分析装置(アジレントテクノロジー社製HP6890/HP5975)にて測定した。次に、得られたMSスペクトルを、デカンを標準試料とした換算定量値に換算し、溶媒に由来するピークを溶媒量、前記溶媒に由来しないピークを分解物量とした。
【0090】
以下の合成例で実施例や比較例で用いた共重合体の合成方法について説明する。なお合
成例1〜4は本願発明でいう共重合体(A)である。
【0091】
(合成例1)共重合体(A)−1の調製
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃でノルマルヘキサン300ml(乾燥窒素雰囲気、活性アルミナ上で乾燥したもの)、4−メチル−1−ペンテンを450ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し攪拌機を回した。次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.19MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいた、メチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.01mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を100℃、減圧下で12時間乾燥した。得られたポリマーは44.0gで、ポリマー中の4−メチル−1−ペンテン含量は85mol%、プロピレン含量は15mol%であった。各種物性について測定した結果を表1に示す。
【0092】
(合成例2)共重合体(A)−2の調製
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃でノルマルヘキサン300ml(乾燥窒素雰囲気、活性アルミナ上で乾燥したもの)、4−メチル−1−ペンテンを450ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し攪拌機を回した。次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.15MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧し、連鎖移動剤として水素を12ml加えた。続いて、予め調製しておいた、メチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.01mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始20分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を100℃、減圧下で12時間乾燥した。得られたポリマーは72.5gで、ポリマー中の4−メチル−1−ペンテン含量は87.9mol%、プロピレン含量は12.1mol%であった。各種物性について測定した結果を表1に示す。
【0093】
(合成例3)共重合体(A)−3の調製
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃でノルマルヘキサン300ml(乾燥窒素雰囲気、活性アルミナ上で乾燥したもの)、4−メチル−1−ペンテンを450ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し攪拌機を回した。次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.40MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいた、メチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.01mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を100℃、減圧下で12時間乾燥した。得られたポリマーは36.9gで、ポリマー中の4−メチル−1−ペンテン含量は72mol%、プロピレン含量は28mol%であった。各種物性について測定した結果を表1に示す。
【0094】
(合成例4)共重合体(A)−4の調製
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で
4−メチル−1−ペンテンを750ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチ
ルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入
し攪拌機を回した。次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.12MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいた、メチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.005mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を130℃、減圧下で12時間乾燥した。得られたポリマーは34.7gで、ポリマー中の4−メチル−1−ペンテン含量は94mol%、プロピレン含量は6mol%であった。ポリマーの融点(Tm)は200℃であり、極限粘度[η]は1.6dl/gであった。各種物性について測定した結果を表1に示す。
【0095】
(合成例5)共重合体(A)−5の調製
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で
4−メチル−1−ペンテンを750ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチ
ルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入
し攪拌機を回した。次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.11MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧し、連鎖移動剤として水素を50ml添加した。続いて、予め調製しておいた、メチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.01mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始20分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を130℃、減圧下で12時間乾燥した。得られたポリマーは31.2gで、ポリマー中の4−メチル−1−ペンテン含量は99mol%、プロピレン含量は1mol%であった。ポリマーの融点(Tm)は224℃であり、極限粘度[η]は1.5dl/gであった。各種物性について測定した結果を表1に示す。なおJIS K7210に準拠して、260℃で5kgの荷重で測定したMFRは60であった。
【0096】
【表1】
【0097】
(実施例1)
共重合体(A)−1 10gに対して、酸化防止剤としてのトリ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートを0.1重量%、耐熱安定剤としてのn−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピネートを0.1重量%添加し、固形分濃度が5重量%になるようにトルエン(和光純薬工業株式会社製)を添加して、40℃、1時間、200rpmで攪拌して共重合体(A)−1を含む組成物を製造した。この溶液を25℃でガラス基板上に塗布してアプリケーターで均一に伸ばした後、25℃で30分、さらに80℃で1時間乾燥し、フィルムを得た。
(実施例2)
共重合体(A)−2を用いた以外は実施例1と同様の作業を行い、フィルムを得た。
(実施例3)
共重合体(A)−3を用いた以外は実施例1と同様の作業を行い、フィルムを得た。
(実施例4)
共重合体(A)−4を用いた以外は実施例1と同様の作業を行い、フィルムを得た。
(比較例1)
共重合体(A)−5を用いた以外は実施例1と同様の作業を行い、フィルムを得た。
【0098】
表2に実施例1〜4、比較例1の組成物の組成、塗布性、および前記組成物を用いて作成したフィルムについて、前述の方法で測定した厚さ、絶縁破壊電圧(BDV),フィルムの厚さでBDVを除した規格化絶縁破壊電圧(BDV)、水の接触角、臨界界面張力(mN/m)を示した。なお、実施例1〜4、比較例1で得られたフィルムに含まれる溶媒の量は、前記フィルムを100重量%としたときに、0.001〜0.2重量%であった。
【0099】
【表2】
【0100】
表2の結果から明らかなように、共重合体(A)の融点(Tm)が200℃以下または融点(Tm)が実質的に観測されない実施例1〜4については組成物の保存安定性が高いのに対して、共重合体(A)の融点(Tm)が224℃と高い比較例1では保存安定性が低いことがわかる。また共重合体(A)の融点が160℃未満または融点(Tm)が実質的に観測されない実施例1〜3は、特に保存安定性に優れることが分かる。