(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固定補助具は、U字状断面を有しており、前記ランナーの一対の側壁と直交するように配置される底壁部と、前記ランナーの一対の側壁の内面に沿って位置する一対の側壁部とを含み、
前記側壁部の側縁部が、前記係合部を構成する、請求項1に記載のランナー固定構造。
前記固定補助具は、U字状断面を有しており、前記ランナーの一対の側壁と直交するように配置される底壁部と、前記ランナーの底壁上に位置する一方の側壁部と、前記一方の側壁部に対して略平行に配置される他方の側壁部とを含み、
前記他方の側壁部には、前記ランナー固定具の把持部内に嵌合されるように立ち上がる翼状部が設けられ、
前記翼状部が、前記係合部を構成する、請求項1に記載のランナー固定構造。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0025】
<実施の形態1>
本実施の形態では、特願2013−148788号出願において提案されたランナー固定具を利用して、乾式壁に用いられる上側および下側のランナーを、建物の躯体部(たとえば梁)に固定する。このランナー固定具は、取付け場所ごとに、2つのランナーを躯体部に固定する構造を有している。
【0026】
まず、本実施の形態に係るランナー固定構造の説明に先立ち、このランナー固定具の前提となる、ランナー並走タイプの乾式壁について簡単に説明する。このような乾式壁の構造については、特願2012−262441号として出願済である。
【0027】
(乾式壁について)
本実施の形態に係る乾式壁は、共同住宅、長屋および寄宿舎等の住戸が連続する建築物における界壁(戸境壁)、あるいは、防音室等の高遮音性が求められる間仕切り壁が想定される。このような乾式壁は、隣り合う空間(部屋)を仕切るために配置される。本実施の形態において、隣り合う空間を仕切る仮想的な面を「仕切り面」といい、横断面において隣り合う空間を仕切る仮想的な線を「仕切り線」という。また、本実施の形態において、仕切り面と直交する、乾式壁の厚み方向を「表裏方向」という。
【0028】
図1〜
図4を参照して、本発明の実施の形態1に係る乾式壁の構造について説明する。
【0029】
図1は、本実施の形態に係る乾式壁1の構造を示す縦断面図である。
図2は、
図1のII−II線で切断した場合の乾式壁1の部分断面図である。なお、
図1および2において、紙面右側を第1空間、紙面左側を第2空間として説明する。また、
図2における仮想線A1は、仕切り線を示し、矢印A2は、表裏方向を示している。
【0030】
図1および
図2を参照して、乾式壁1は、仕切り面に沿って配置される基礎部材2と、基礎部材2の一方面側および他方面側にそれぞれ固定される面部材4とを備えている。
【0031】
基礎部材2は、第1空間側に間隔をおいて配置される複数のスタッド21と、第2空間側に間隔をおいて配置される複数のスタッド22とを含む。これらのスタッド21および22は、それぞれ、第1空間側および第2空間側において、直線状に整列している。各スタッド21,22は、鋼製であり、横断面の形状は、たとえば短辺が40〜45mm、長辺が60〜65mmの略長方形状である。なお、本実施の形態において、スタッド21の第1空間側の面およびスタッド22の第2空間側の面、すなわち面部材4と接する側の側面を、「表面」という。また、スタッド21の第2空間側の面およびスタッド22の第1空間側の面、すなわち表面の反対側の側面を、「裏面」という。
【0032】
基礎部材2は、また、複数のスタッド21それぞれの軸方向両端を抱え込むように配置される一対のランナー31,33と、複数のスタッド22それぞれの軸方向両端を抱え込むように配置される一対のランナー32,34とを含む。第2空間側のランナー32,34は、表裏方向において、第1空間側のランナー31,33とは所定の隙間を有して配置されている。
【0033】
このように、本実施の形態では、取り付け場所ごとに、表裏方向に独立して2つのランナーが設けられている。したがって、
図4に示されるように、一方側の空間において発生した音Sは、たとえば天井側においても、ランナー31,32間の隙間3において遮断され、他方側の空間への伝搬を回避することができる。その結果、本実施の形態における乾式壁1によれば、各取付け場所に1つのランナーが設けられた一般的な遮音壁(
図20)よりも高遮音性の要求を満たすことができる。
【0034】
ここで、
図2および
図3を参照して、複数のスタッド21,22の配置例について説明する。
図3は、本発明の実施の形態1に係る乾式壁1のスタッド21,22の配置例を示す図であり、表裏方向に切断した場合の乾式壁1の断面図である。
【0035】
一般的な乾式壁では、各スタッドは強軸配置されるが、本実施の形態において、各スタッド21,22は、弱軸配置されている。つまり、各スタッド21,22は、その短辺と面部材4に対して直交する方向(表裏方向)とが平行となるように配置されている。各スタッド21,22は、遮音性を考慮すると、閉鎖断面の筒状部材とするよりも、一方の長辺(裏側)が開口を有する開放断面の部材とすることが望ましい。一方で、本実施の形態では、スタッド21,22が弱軸配置であるため、開放断面のスタッドは、壁の強度を担保できる範囲でのみ、すなわち部分的に、取り入れられることが望ましい。たとえば、第1空間および第2空間それぞれの部屋の種類(台所、リビングなど)に応じて、特に強度を必要とする空間側のスタッドのみを開放断面としてもよい。
【0036】
このように、本実施の形態では、スタッド21,22が弱軸配置される。そのため、スタッド21とスタッド22との間の表裏方向の間隔L2(
図2)をたとえば10mmとした場合、本実施の形態では、対向する面部材4間の距離、すなわち基礎部材2の厚みL1(
図3)は、100mm程度である。このように、本実施の形態によれば、取り付け場所ごとに表裏方向に独立して2つのランナーを設けても、基礎部材2の厚みL1が増大してしまうことを回避できる。
【0037】
なお、第1空間側のスタッド21と第2空間側のスタッド22との間の隙間L2は、たとえば5mm以上15mm以下の範囲で定められることが望ましい。この間隔の下限値は、少なくとも、第1空間側のランナー31(33)と第2空間側のランナー32(34)とが表裏方向に隙間を有し得る値であり、上限値は、基礎部材2間の厚みを考慮した値である。ランナー32,34(31,33)間の隙間は、壁全体の厚みやランナーの固定方法などに応じて定められてよい。
【0038】
複数のスタッド21,22は、また、対向する面部材4間において千鳥状に配置されている。つまり、隣接するスタッド21およびスタッド22が、表裏方向に重ならないように互い違いに配置されている。なお、本実施の形態では、表裏方向においてスタッド21,22間に空間(隙間L2)があるため、スタッド21およびスタッド22は、表裏方向に少なくとも一部重なっていてもよいし、完全に重なっていてもよい。
【0039】
複数のスタッド21は、仕切り線A1に沿って所定ピッチで配置されている。複数のスタッド22は、柱51を中心として、仕切り線A1に沿って所定ピッチで配置されている。柱51の第2空間側には、石膏ボード41を貼り付ける下地52として、たとえばベニヤ板が配置されている。また、各列(第1空間側または第2空間側)において、隣り合うスタッド21(22)間には、吸音材53として、たとえばグラスウールが設けられている。これにより、スタッド21,22の裏面側に吸音材53が密着されるため、一方側の空間から発生した音が吸音材53で吸音され、遮音性が高められる。
【0040】
なお、本実施の形態では、スタッド21,22が弱軸配置であるため、壁の強度を確保するために、スタッドが強軸配置された一般的な乾式壁よりも、各列において、スタッドの本数を多く設けてもよい。その場合、一部分においてのみ、スタッドを配置するピッチを小さくしてもよい。たとえば、第1空間および第2空間それぞれの部屋の種類に応じて、特に強度を必要とする空間側のピッチを、他方よりも小さくしてもよい。
【0041】
図1および
図3を参照して、面部材4は、各々、基礎部材2側に配置される石膏ボード41と、空間側に露出して配置される強化石膏ボード42とで構成されていてよい。強化石膏ボード42は、耐火性能を強化するために、ガラス繊維等が混入された石膏ボード(網入り強化石膏ボード)である。強化石膏ボード42は、耐火性能の向上のため、石膏ボード41の厚みよりも大きいことが望ましい。具体的には、石膏ボード41の厚みは、たとえば9.5mmであり、強化石膏ボード42の厚みは、たとえば15mmである。
【0042】
以上説明した乾式壁1は、その上下端部それぞれが、建物の躯体部としての、梁11,12によって支えられている。梁11,12は、たとえばH型鋼である。
図1のように、乾式壁1の上端部および下端部がそれぞれ梁11,12に支えられる場合、上側のランナー31,32が、天井側の梁11に固定され、下側のランナー33,34が、床側の梁12に固定される。その際に、たとえば特願2013−148788号として出願済のランナー固定具が用いられる。
【0043】
(ランナー固定具について)
ランナー固定具の構造については、上側のランナー31,32を天井側の梁11に固定する場合を例にして説明する。
図5には、本発明の実施の形態1に係るランナー固定具13を用いて、上側のランナー31,32を梁11に固定する場合のランナー固定構造が示されている。
図6〜
図8は、それぞれ、本発明の実施の形態1に係るランナー固定具13を示す斜視図、断面図および上面図である。
図7には、
図6に示すVII−VII線に沿って表裏方向に切断した場合のランナー固定具13の断面が示されている。
【0044】
図1および
図5を参照して、ランナー31は、スタッド21の上端面と当接し、水平に配置されるベース部(上壁)310と、ベース部310の両端部より下方に延びる一対の側壁(以下「鍔部」という)311,312とを有している。同様に、ランナー32は、スタッド22の上端面と当接し、水平に配置されるベース部(上壁)320と、ベース部320の両端部より下方に延びる一対の鍔部321,322とを有している。
【0045】
これらのランナー31,32は、ランナー固定具13によって、天井側の梁11に固定されている。複数のランナー固定具13が、ランナー31,32の延びる方向に沿って、間隔をおいて配置される。ランナー固定具13は、同方向において隣り合うスタッド間に、スタッドと接しないように配置されることが望ましい。
【0046】
図5〜
図8を参照して、ランナー固定具13は、係止部材6と保持部材7とを含む。係止部材6は、ランナー31,32のベース部310,320に隣接する、梁11のフランジ110に係止される。フランジ110は、ウェブ111の下端に配置される水平材である。保持部材7は、係止部材6と連結され、ランナー31,32を、表裏方向に間隔をあけた状態で保持する。
【0047】
より具体的には、係止部材6は、フランジ110の表裏方向両端部を挟持するために、取付部61,64と、把持部62,65と、押圧爪部63,66とを含む。取付部61,64は、略矩形形状の板材であり、後述する保持部材7の板状部70の上面に固定されている。取付部61は、第1空間側に配置され、取付部64は、第2空間側に配置される。把持部62,65は、取付部61,64の表裏方向表側端縁からそれぞれ上方に起立する。把持部62,65は、フランジ110の表裏方向両端面に当接され、フランジ110を左右方向に挟み込む。押圧爪部63,66は、把持部62,65の上端縁側において、表裏方向裏側に突出するように屈曲している。押圧爪部63,66は、フランジ110の上面110aを上から押圧固定する。
【0048】
なお、本実施の形態では、係止部材6は、梁11のフランジ110を挟み込むことで、梁11に係止される構成としているが、
図5に示される梁11の貫通穴112,113を利用して梁11に係止される構成であってもよい。ランナー固定具13によって下側のランナー33,34を梁12に固定する場合にも同様に、係止部材6は、梁12のフランジ120および貫通穴122,123のいずれに係止されてもよい。
【0049】
保持部材7は、板状部70と、ランナー31を把持する1対の把持部710,730と、ランナー32を把持する一対の把持部750,770とを有する。板状部70は、梁11のフランジ110とランナー31,32との間に配置される。板状部70は、ランナー31の表側端縁からランナー32の表側端縁まで延び、たとえば、表裏方向を長辺とする略矩形形状の板材である。板状部70には、長辺に沿って溝部85,86が形成されている。これにより、強度向上が図られる。板状部70の上面には、上述の取付部61,64が固定されている。板状部70の下方側に、2対の把持部710,730,750,770が連結されている。
【0050】
一対の把持部710,730は、ランナー31の鍔部311,312を、それぞれの外側から抱え込むように把持する。把持部710,730は、下端側へいくにつれて互いに近接するように傾斜して延びている。把持部710は、ランナー31の表裏方向表側の鍔部311の外側に配置される側面部71と、この側面部71の下端縁部(自由端側)が内側斜め上方に返された折り返し部72とを含む。把持部730は、ランナー31の表裏方向裏側の鍔部312の外側に配置される側面部73と、この側面部73の下端縁部(自由端側)が内側斜め上方に返された折り返し部74とを含む。把持部710,730がこのように構成されることで、それぞれの先端部に係合溝72a,74aが形成される。
【0051】
一対の把持部750,770は、ランナー32の鍔部321,322を、それぞれの外側から抱え込むように把持する。把持部750,770は、下端側へいくにつれて互いに近接するように傾斜して延びている。把持部750は、ランナー32の表裏方向表側の鍔部321の外側に配置される側面部75と、この側面部75の下端部(自由端側)において内側斜め上方に返された折り返し部76とを含む。把持部770は、ランナー32の表裏方向裏側の鍔部322の外側に配置される側面部77と、この側面部77の下端部(自由端側)において内側斜め上方に返された折り返し部78とを含む。把持部750,770がこのように構成されることで、それぞれの先端部に係合溝76a,78aが形成される。
【0052】
本実施の形態では、板状部70と、外側に位置する把持部710,750とは、たとえば1枚の鋼板が折り曲げ加工されて形成されている。また、内側に位置する把持部730,770の上端同士は、板状部70の下面に固定された連結部79を介して連結されている。これらの把持部730,770および連結部79も、たとえば1枚の鋼板が折り曲げ加工されて形成されている。
【0053】
保持部材7がこのように形成されることで、ランナー31は、保持部材7の側面部71,73が押し広げられた状態で側面部71,73間に嵌入され、嵌入された後は、側面部71,73の復元力により左右方向に挟持される。ランナー31の鍔部311,312の下端は、それぞれ、折り返し部72,74(係合溝72a,74a)によって支えられる。同様に、ランナー32は、保持部材7の側面部75,77が押し広げられた状態で側面部75,77間に嵌入され、嵌入された後は、側面部75,77の復元力により左右方向に挟持される。ランナー32の鍔部321,322の下端は、それぞれ、折り返し部76,78(係合溝76a,78a)によって支えられる。
【0054】
ランナー固定具13には、板状部70の上側および下側に、それぞれバネ部材が設けられている。本実施の形態では、上側のバネ部材として、たとえば2つの板バネ81,82が設けられている。板バネ81,82は、取付部61,64の内側端縁と連結され、取付部61,64より斜め上方に延びている。したがって、梁11のフランジ110の上面110aは、押圧爪部63,66の復元力によって下側に押圧され、その下面110bは、板バネ81,82の復元力によって上側に押圧される。これにより、梁11のフランジ110は上下方向にも挟持される。
【0055】
下側のバネ部材としては、ランナー31,32を板状部70から遠ざける方向に付勢する、たとえば2つの板バネ83,84が設けられている。板バネ83,84は、取付部61,64の表裏方向裏側端縁と連結され、板状部70に形成された穴87,88を貫通して斜め下方に延びている。つまり、板バネ83は、ランナー31側に配置され、板バネ84は、ランナー32側に配置されている。そのため、ランナー31の鍔部311,312の下端が折り返し部72,74に支えられるとともに、ランナー31のベース部310の上面が板バネ83で押圧された状態で固定される。したがって、ランナー31は、板バネ83の復元力により下側に押圧されるとともに、折り返し部72,74により上側方向に支持される。ランナー32も同様に、板バネ84の復元力により下側に押圧されるとともに、折り返し部76,78により上側方向に支持される。これにより、ランナー31,32は、上下方向にも挟持される。
【0056】
また、ランナー固定具13が、これら板バネ81〜84を有することで、梁11の厚みや、ランナー31,32の垂直方向長さが異なる場合でも、柔軟に対応することができる。なお、板バネ81,82が上方側に延び、板バネ83,84が下方側に延びていれば、これらの向きは特に限定されない。
【0057】
ランナー固定具13を上述のような構造とすることで、現場において、ランナー固定具13をワンタッチで梁11のフランジ110に固定(係止)することができる。また、複数のランナー固定具13を先にフランジ110に固定しておくことで、ランナー31,32をボルトレスで固定することができるとともに、ランナー31,32の位置決めを容易にすることができる。また、その結果、現場工程をスムーズに進めることができる。
【0058】
また、本実施の形態では、複数のランナー固定具13が、ランナー31,32の延びる方向に沿って間隔をおいて配置される。そのため、隙間を有して並列するランナー31,32を一括して保持するランナー固定具13が配置されても、一般的な乾式壁よりも遮音性を十分に高めることができる。
【0059】
なお、本実施の形態では、保持部材7側に、ランナー31の表側端縁からランナー32の表側端縁まで延びる板材(板状部70)を設けたが、係止部材6側に、このような板材を設けてもよい。つまり、係止部材6の2つの取付部61,64が1枚の板材として一続きに形成されていてもよい。この場合、保持部材7の板状部70は表裏方向に分割され、分割された板状部分を底面部701,702とする略逆U字形状の部材が、係止部材6の一続きの板材の下面に隙間を有して固定されていてもよい。
【0060】
上述のように、上側のランナー31,32を梁11に固定する場合、板バネ83,84によって、ランナー31,32の鍔部311,312,321,322の下端は、ランナー固定具13の把持部710,730,750,770に形成された係合溝72a,74a,76a,78aに押し付けられる。そのため、ランナー固定具13によって、ランナー31,32を安定的に梁11に固定することができる。
【0061】
これに対し、ランナー固定具13によって下側のランナー33,34を梁12に固定する場合には、ランナー固定具13のみによって適切に固定することができない場合がある。このことについて、
図9および
図10を参照して説明する。なお、このように、ランナー固定具13を下側のランナー33,34に用いる場合、ランナー固定具13についての上記説明のうち、「ランナー31」および「ランナー32」の記載をそれぞれ「ランナー33」および「ランナー34」に読み替え、かつ、上下方向の記載を逆に読み替えればよい。また、
図6等に示されるランナー固定具13が、係止部材6によって梁12に係止されているものとする。
【0062】
ここでは、説明を容易にするために、下側の2つのランナー33,34のうちたとえば第2空間側のランナー34と、ランナー固定具13の保持部材7のうちランナー34を固定する部分(以下「ランナー保持部分」という)700との関係のみを示す。
図9および
図10は、それぞれ、本実施の形態において、ランナー34をランナー固定具13のランナー保持部分700に挿入した場合の理想状態と問題点とを示す模式図である。
【0063】
図9を参照して、ランナー34がランナー保持部分700に挿入された場合、理想的には、ランナー34の底壁であるベース部340が、ランナー固定具13の板バネ83によって上方に押し上げられている。この理想状態においては、上側のランナー31,32を固定する場合と同様に、ランナー34の鍔部341,342の上端部は、把持部710,730上端の係合溝72a、74a内に強固に押し付けられている。そのため、ランナー34は、把持部710,730によって適切に把持されている。
【0064】
しかし、実際には、板バネ83には、ランナー34の自重だけでなく、ランナー34上に載置されるスタッド22の重み、および、スタッド22の表面に貼り付けられる面部材4の重みの両方が、板バネ83に掛かる。そうすると、板バネ83は、その付勢力(復元力)を維持することができず、
図10に示すように、ランナー34は沈み込んでしまう。そうすると、ランナー固定具13の一対の把持部710,730の上端の係合溝72a,74aに、ランナー34の側壁341,342の上端部が係合されない状態となる。その結果、ランナー34がランナー固定具13から離脱してしまうことがある。
【0065】
特に、本実施の形態のように、ランナー並走タイプの乾式壁1においては、ランナー34の鍔部341,342のうち、表側に位置する鍔部341の方にのみ面部材4が設けられる。そのため、施工段階で面部材4が貼り付けられると、ランナー34の鍔部341側の方に大きな荷重が掛かるため、
図10において反時計方向に傾いてしまい、ランナー34がランナー固定具13(ランナー保持部分700)から外れるという不具合が起こる。
【0066】
そこで、本実施の形態では、下側のランナー34がランナー固定具13(ランナー保持部分700)から離脱することを防止するために、固定補助具を用いる。
【0067】
(固定補助具を用いたランナー固定構造について)
図11は、本実施の形態に係るランナー固定構造を部分的に示す模式図である。
図12〜
図14は、それぞれ、固定補助具9を示す正面図、側面図および底面図である。
図15は、本実施の形態に係るランナー固定構造を示す斜視図である。
【0068】
図11および
図15に示されるように、ランナー固定具13の配置位置において、ランナー34上に固定補助具9が配置されている。固定補助具9は、
図12に示されるように、略U字状(コの字状)断面を有しており、底壁部90と、一対の側壁部91,92とを含む。底壁部90は、ランナー34のベース部340の上面に沿って位置する。一対の側壁部91,92は、ランナー34の一対の鍔部341,342の内面に沿って位置する。なお、固定補助具9を上側のランナー31,32の固定に用いる場合であっても、底壁部90から遠い方を、固定補助具9の上側と定める。
【0069】
底壁部90の下面(裏面)には、ランナー34の底壁340の上面に当接し、固定補助具9をランナーから遠ざける方向に付勢するバネ部材として、たとえば2つの板バネ93,94が設けられている。板バネ93,94は、底壁部90の表裏方向略中央位置に設けられており、下端側へいくにつれて互いに遠ざかるように傾斜して延びている。固定補助具9の高さは、ランナー固定具13の各把持部710,730の上下方向長さに略等しい。
【0070】
固定補助具9をランナー34上に配置する際には、固定補助具9を上方から押え付けるようにして嵌め込む。
図15に示されるように、固定補助具9上には何も載置されない。そのため、板バネ93,94は、固定補助具9自身を上方に付勢し、ランナー固定具13の一対の把持部710,730と、固定補助具9の一対の側壁部91,92の上端部910,920との係合状態を維持する。つまり、この固定補助具9の側壁部91,92の上端部910,920が、把持部710,730に抱え込まれ、係合溝72a,74aに係合される係合部として機能する。固定補助具9は、板バネ93,94の復元力によって、その上端部910,920が係合溝72a,74a内に強固に押し付けられるように構成されてもよい。
【0071】
このような固定補助具9がランナー34上に被せられることで、ランナー34がランナー固定具13(ランナー保持部分700)から離脱することを防止することができる。したがって、本実施の形態によれば、下側のランナー34を梁12に固定する場合には、ランナー固定具13と固定補助具9とを含むランナー固定ユニットを用いることで、安定的にランナーを固定することができる。なお、
図15に示されるように、ランナー33上にも固定補助具9が被せられることで、ランナー固定具13からの両ランナー33,34の離脱が防止される。
【0072】
なお、固定補助具9の形状は、上記形状に限定されない。固定補助具9の変形例を以下に示す。
【0073】
(固定補助具の変形例)
図16および
図17は、それぞれ、本発明の実施の形態1の変形例に係る固定補助具9Aを示す斜視図および正面図である。
【0074】
図16および
図17を参照して、固定補助具9Aは、底壁部90Aと、一対の側壁部91A,92Aとに加え、一対の傾斜壁95,96をさらに含む。傾斜壁95,96は、側壁部91A,92Aの下端縁と、底壁部90Aの表裏方向両端との間に形成されている。このように、本変形例では、上記実施の形態の板バネ93,94に代えて傾斜壁95,96が設けられている。
【0075】
図18には、固定補助具9Aが取り付けられた状態における、固定補助具9Aの側壁部91Aの配置位置が示されている。なお、
図18には、
図15の矢印A3で示す方向から見た場合のランナー固定構造が示されている。
【0076】
図17および
図18に示されるように、固定補助具9Aの側壁部91Aの上端縁は、頂部911と、頂部911から下方へ向かって傾斜する傾斜部912,913とを含む形状を有していることが望ましい。側壁部92Aも同様に、その上端縁が、頂部921と、頂部921から下方へ向かって傾斜する傾斜部922,923とを含む形状を有していることが望ましい。取付け状態において、固定補助具9Aの側壁部91A,92Aの頂部911,921が、把持部710,730の係合溝72a,74a内に当接される。なお、頂部911,921は、ともに、点状に形成されてもよいし、線状に形成されてもよい。
【0077】
側壁部91A,92Aがこのような形状とされることで、固定補助具9Aを、
図18に示す取付け位置に設置するに際し、
図19に示すように傾けて回転させるように滑り込ませて挿入することができる。つまり、ランナー34が延びる方向においてランナー固定具13の側方から、進行方向の傾斜部913(923)を、ランナー固定具13の把持部710,730の端に当接させながら挿入することができる。あるいは、一旦、ランナー34上の、ランナー固定具13から離れた位置に固定補助具9Aを傾けることなく載置し、ランナー固定具13に向けてそのままスライドさせるようにして挿入することもできる。
【0078】
<実施の形態2>
本実施の形態における固定補助具も略U字状断面を有しているが、取付け状態における固定補助具の向きが、上記実施の形態1とは異なる。以下に、本実施の形態に係るランナー固定構造について、実施の形態1と異なる部分のみ詳細に説明する。
【0079】
図20は、本発明の実施の形態2に係る固定補助具9Bを示す斜視図である。
図21および
図22は、それぞれ、本発明の実施の形態2に係るランナー固定構造を部分的に示す斜視図および模式断面図である。
図23は、本発明の実施の形態2に係る固定補助具の設置方法を模式的に示す図である。
【0080】
図20〜
図22を参照して、本実施の形態では、取付け状態において、固定補助具9Bは、その底壁部90Bがランナー34の一対の側壁341,342と直交するように、横向きに配置されている。この固定補助具9Bの一対の側壁部91B,92Bには、ランナー34の側壁341,342に弾性的に接する板バネ部914,924がそれぞれ設けられている。板バネ部914,924は、側壁部91B,92Bより外側に向かって、斜め下方側(底壁部90B側)へ延びている。
【0081】
固定補助具9Bを
図21に示す取付け位置に設置するに際しては、まず、
図23の一点鎖線で示すように、ランナー固定具13(ランナー保持部分700)から離れた位置において、側壁部91B,92Bの上端部を下方に向けて、ランナー34内に固定補助具9Bの大部分を挿入させる。その後、側壁部91B,92Bの上端部が進行方向前方となるように、固定補助具9Bを約90度回転させ、ランナー固定具13の位置までスライドさせる。望ましくは、固定補助具9Bの底壁部90Bが、ランナー固定具13の把持部710,730の端に突き当たる位置までスライドさせる。これにより、側壁部91B,92Bの側縁部915,925が、ランナー固定具13の把持部710,730の係合溝72a,74aに係合される。
【0082】
本実施の形態では、固定補助具9Bを取付ける際に、ランナー34の底壁340に押え付ける必要がないため、容易に固定補助具9Bを差し込むことができる。また、実施の形態1の変形例で示した固定補助具9Aよりも、ランナー34と接する面積が小さいため、固定補助具9Bをスムーズにスライドさせることができる。
【0083】
なお、本実施の形態では、板バネ部914,924は、底壁部90Bを下方とした場合に斜め下方側へ延びていることとしたが、これらは共に、取付け状態において、斜め下方側へ延びていてもよい。つまり、板バネ914,924は、底壁部90Bを下方とした場合に斜め側方に延びていてもよい。このようにすることで、上述のように固定補助具9Bを回転させる必要がなくなるため、より容易に固定補助具をランナー34内に差し込むことができる。
【0084】
<実施の形態3>
本実施の形態においても、固定補助具は略U字状断面を有しているが、取付け状態における固定補助具の向きが、上記実施の形態1とは異なる。以下に、本実施の形態に係るランナー固定構造について、実施の形態1と異なる部分のみ詳細に説明する。
【0085】
図24は、本発明の実施の形態3に係る固定補助具9Cを示す斜視図である。
図25は、本発明の実施の形態3に係るランナー固定構造を部分的に示す斜視図である。
【0086】
図24および
図25を参照して、本実施の形態では、取付け状態において、固定補助具9Cは、その底壁部90Cがランナー34の一対の側壁341,342と直交するように、横向きに配置されている。この固定補助具9Cの一方の側壁部91Cは、ランナー34の底壁340上に位置し、他方の側壁部92Cは、側壁部91Cに対して略平行に配置されている。側壁部92Cの側縁部には、ランナー固定具13の把持部710,730内に嵌合されるように立ち上がる翼状部97,98が設けられている。翼状部97,98は、他方の側壁部92Cの各側縁部より、斜め方向外側に向かって延びている。
【0087】
本実施の形態では、底壁部90Cが進行方向前側となるように、固定補助具9Bをランナー34上に挿入し、そのままランナー固定具13の位置までスライドさせる。これにより、側壁部91C,92Cの翼状部97,98が、少なくともその一部分において、ランナー固定具13の把持部710,730の係合溝72a,74aに係合される。
【0088】
なお、底壁部90Cには、固定補助具9Cの移動の際に底壁部90Cを移動方向に引き寄せることができるように、孔部900が設けられていてもよい。
【0089】
また、図示されるように、翼状部97,98には、側方(すなわち、取付け状態において上側)に突出した頂部980が設けられていてもよい。頂部970,980は、たとえば、翼状部97,98の上端部側(進行方向後側)に設けられている。この場合、ランナー固定具13の把持部710,730には、頂部970,980を受入れる係合孔710a,730aが設けられる。これにより、固定補助具9Cの位置決めおよび固定が容易になる。
【0090】
本実施の形態においても、固定補助具9Cを取付ける際に、ランナー34の底壁340に押え付ける必要がないため、容易に固定補助具9Cを差し込むことができる。また、翼状部97,98は、ランナー34の側壁341,341に殆ど接しないように形成されているため、固定補助具9Cをスムーズにスライドさせることができる。
【0091】
<実施の形態4>
上記各実施の形態では、固定補助具は、ランナー並走タイプのランナー固定具に取り付けられた。これに対し、本実施の形態では、固定補助具は、ランナー並走タイプではないランナー固定具に取り付けられる。このランナー固定具は、たとえば、上記特許第4241322号公報(特許文献1)に示される形状を有している。以下に、本実施の形態に係るランナー固定構造について、実施の形態1との相違点のみ詳細に説明する。
【0092】
図26は、本発明の実施の形態4に係る乾式壁1Aの構造を示す縦断面図である。
図27は、本発明の実施の形態4に係るランナー固定構造を示す断面図である。
【0093】
図26を参照して、本実施の形態では、乾式壁1Aは、上下に1つずつランナー32A,34Aを含んでいる。下側のランナー34Aは、仕切り面に沿って配置されている複数のスタッド21A,22Aの下端部を、下方から抱えている。本実施の形態では、第1空間側のスタッド21Aと第2空間側のスタッド22Aとが、表裏方向に一部重なるように、千鳥状に配置されている。また、各スタッド21A,22Aは強軸配置されている。そのため、ランナー34Aの底壁340Aの表裏方向長さ(両鍔部間)は、実施の形態1のランナー34の底壁340の表裏方向長さの2倍程度である。なお、スタッド21Aの裏面側、および、スタッド22Aの裏面側の空間には、たとえばスペーサ35が挿入されている。
【0094】
このような乾式壁1Aのランナー34Aを梁12に固定する場合、
図27に示されるようなランナー固定具13Aが用いられる。ランナー固定具13Aは、実施の形態1のランナー固定具13とは保持部材の形状のみが異なる。
【0095】
図27を参照して、ランナー固定具13Aの保持部材7Aは、1つのランナー34Aを保持するだけでよいため、
図7等に示される中央の把持部730,770を有さない形状である。つまり、保持部材7Aは、板状部70と、1つのランナー34Aの鍔部341,342を外側から把持する1対の把持部710,750とを有している。この場合、板状部70より斜め上方に延びる板バネ83,84は、ともに、ランナー34Aの幅広のベース部340Aに当接される。
【0096】
本実施の形態のような乾式壁1Aにおいても、板バネ83,84は、ランナー34Aの自重と、ランナー34Aに荷重されるスタッド21A,22Aおよび面部材4の重みとにより、ランナー34Aのベース部340によって押え付けられる。したがって、この場合も同様に、ランナー34Aの鍔部341,342の先端部が、ランナー固定具13Aの把持部710,750それぞれの係合溝72a,76aから外れてしまう。本実施の形態では、実施の形態1と異なり、ランナー34Aの鍔部341,342の外側それぞれに面部材4が配置されるため、完成状態においては、ランナー34Aの一方の鍔部側に片寄って荷重が加えられることはない。しかしながら、施工段階においては、第1空間側および第2空間側に順に面部材4が取付けられる。そのため、一方側にのみ面部材4が取り付けられた状態においては、その荷重がランナー34Aの一方の鍔部側に片寄って加えられる。したがって、本実施の形態のように、1つのランナー34Aのみを梁12に固定する場合にも、ランナー34Aがランナー固定具13Aから外れてしまうケースが起こり得る。
【0097】
そこで、本実施の形態においても、ランナー固定具13Aの配置位置と重なる位置に、固定補助具9Dを配置している。固定補助具9Dの底壁部90Dの幅(表裏方向長さ)が、実施の形態1で示した固定補助具9の底壁部90よりも広いだけで、他は同様である。したがって、本実施の形態においても、固定補助具9Dがランナー34A上に取り付けられると、固定補助具9Dの板バネ93,94によって、固定補助具9D自身が上方に付勢され、ランナー固定具13Aの一対の把持部710,750と、固定補助具9Dの一対の側壁部91,92の上端部910,920との係合状態が維持される。その結果、ランナー34Aがランナー固定具13Aの保持部材7Aから外れてしまうことを防止することができる。
【0098】
なお、上記各実施の形態では、ランナー固定具の保持部材には、板バネ83,84が設けられることとしたが、上記固定補助具を用いることを前提とする場合、板バネ83,84がなくてもよい。ランナー固定具が板バネ83,84を有さない場合、上側のランナー31,32に対しても、各実施の形態に係る固定補助具を用いてもよい。これにより、梁11に、上側のランナーを安定的に固定することができる。
【0099】
また、各実施の形態では、ランナーを建物の梁に固定する構造を示したが、建物の基礎に固定するものであってもよい。その場合、ランナー固定具は、係止部材を有さなくてもよい。たとえば、ランナー固定具は、保持部材の板状部の略中央位置を貫通するボルト等の釘材によって、基礎に固定されてもよい。
【0100】
また、上述の各実施の形態および変形例を、適宜組み合わせてもよい。
【0101】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。