(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、携帯電話機、パーソナルコンピュータ等の電子機器では、表示部に透光型の入力装置が配置されている。このような入力装置として、指などの被検出体を入力装置に接触、または接触させずに近づけたときの静電容量変化によって入力位置を検出する、静電容量型の入力装置が知られている。このような入力装置において、多様な入力操作を実現するために、直接被検出体を接触させて入力操作を行うほか、被検出体を接触させずに離れた状態における接近を検出可能とすることが要求されている。
【0003】
特許文献1には、シールド層を設けて外部から侵入する電磁ノイズの影響を受けにくくした入力装置が開示されている。
図12は、特許文献1に記載されている第1の従来例の入力装置について部分拡大断面図を示す。第1の従来例の入力装置110において、操作者の指などの被検出体を入力装置110の入力領域115に接触させ、または、接触させずに近づけたときに、第1の電極131と第2の電極(
図12では省略して示す)との間の静電容量が変化して、これに基づいて入力位置情報を検出することができる。
【0004】
検出された入力位置情報は、引出配線136を通して外部回路(図示しない)へと伝達されるため、外部から電磁波ノイズが侵入して引出配線136に重畳すると、入力位置情報と混同して誤検出や誤動作が発生する。
図12に示すように、第1の従来例の入力装置110では、シールド層150が引出配線136と重なって入力操作側に配置されている。シールド層150により、入力操作側の外部から侵入する電磁波ノイズを遮蔽することができ、検出感度の低下や誤検出を防止することができる。又、指が近づいたときの引出配線での容量変化を起こさないように防止できる。したがって、第1の従来例の入力装置110において、被検出体が近づいたことによる静電容量変化を感度良く検出可能であり、被検出体が近づいたときの検出可能距離を大きくすることが可能である。
【0005】
また、特許文献2には、被検出体の近接を検出することが可能な検出可能距離を伸ばすと同時に、近接座標の位置分解能を高めることができる入力装置が記載されている。
図13には、特許文献2に記載されている第2の従来例の入力装置を示す。
【0006】
図13に示すように第2の従来例の入力装置210は、基材201に設けられた複数の電極202a〜202dと、検出電極結合回路205と、静電容量検出回路206と、制御回路204とを有して構成される。第2の従来例の入力装置210によれば、複数の電極202a〜202d同士の結合または分離をするための電極結合分離手段が、複数の電極202a〜202dのそれぞれに設けられており、検出電極結合回路205は電極結合分離手段から構成される。遠い位置に存在する被検出体を検出する場合、複数の電極202a〜202dを電気的に結合して、複数の電極202a〜202dの合計の静電容量を検出する。また、近い位置に存在する被検出体を検出する場合、複数の電極202a〜202dを電気的に分離して、複数の電極202a〜202dのそれぞれの静電容量を検出する。このように、複数の電極202a〜202dを分離・結合することにより、検出可能距離を伸ばすと同時に近接座標の位置分解能を高めることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、
図12に示す第1の従来例の入力装置110において、静電容量変化の閾値を小さくして検出可能距離をより大きくした場合、外部から侵入する電磁ノイズを検出し易くなってしまい誤検出が発生し易くなる。よって、大きな検出可能距離を実現することが困難である。
【0009】
また、
図13に示す第2の従来例の入力装置210は、複数の電極202a〜202dのそれぞれについて、結合または分離をするための電極結合分離手段を設ける必要があり、かつ、その全てを適切に制御する必要がある。そのため、複数の電極がさらに多く設けられている場合には、検出電極結合回路205及び静電容量検出回路206の回路構成の規模が大きくなり、また複数の電極202a〜202dの切り替え制御に複雑な制御が必要となる。よって、複数の電極が多数(例えば数10から数100以上)設けられている携帯電話機、スマートフォン、タブレットPC等に適用することは困難である。
【0010】
本発明は、上記課題を解決して、誤検出を防止して入力位置を検出すると共に、簡便な構成により検出可能距離を大きくすることができる入力装置及びその検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の入力装置は、基材と、前記基材
の入力領域に設けられた複数の電極と、前記電極に接続され
て前記入力領域および前記入力領域を取り囲む非入力領域に延在する引出配線と、前記基材の入力操作側に配置されたシールド層とを有し、前記シールド層は、
前記入力領域および前記非入力領域において前記引出配線と重な
り、前記電極が形成された位置には開口部を有し、前記電極のそれぞれの面積よりも大きい面積を有して設けられており、前記電極により静電容量を検出する第1の検出手段と、前記シールド層により静電容量を検出する第2の検出手段と、前記第1の検出手段と前記第2の検出手段とを切り替える切り替え手段とを有
し、前記第1の検出手段により静電容量を検出する際に、前記シールド層が接地され、又は定電圧に設定され、前記第2の検出手段により静電容量を検出する際に、前記シールド層が検出回路に接続されることを特徴とする。
【0012】
これによれば、被検出体が入力装置に接触または接触せずに近づいた際には、第1の検出手段により、複数の電極で検出された静電容量から被検出体の入力位置を検出可能である。このとき、外部から侵入する電磁ノイズはシールド層により遮蔽されるため、誤検出が抑制される。また、被検出体が入力装置から離れている場合には、第2の検出手段により、大きい面積を有するシールド層を静電容量検出用の電極として用いて、被検出体の接近を検出することができる。そして第1の検出手段と第2の検出手段とを切り替え手段により切り替えることで、被検出体の入力位置の検出と、被検出体の接近の検出とが可能となる。
【0013】
よって、大きな面積を有するシールド層を用いて検出可能距離を大きくすることができ、また、1つの切り替え手段により第1の検出手段と第2の検出手段とを切り替えるのみで制御可能であるため複雑な制御が不要である。したがって、誤検出を防止して入力位置を検出すると共に、簡便な構成により検出可能距離を大きくすることができる。
【0014】
本発明の入力装置において、前記切り替え手段は、前記第1の検出手段と前記第2の検出手段とを所定の時間で交互に切り替えることが好ましい。これによれば、被検出体が入力装置に接触または接近した際の入力位置、及び被検出体が入力装置から離れている場合の被検出体の接近について、時分割することにより簡便な制御方法により検出することができる。
【0016】
前記第2の検出手段において、前記シールド層及び前記電極により静電容量を検出することが好ましい。これによれば、シールド層及び電極の合計面積によって被検出体との間の静電容量が形成されるため、シールド層及び電極と被検出体との間の静電容量が大きくなり、第2の検出手段の検出可能距離をさらに大きくすることができる。
【0017】
本発明の入力装置において、前記シールド層は、電気的に分離された複数のシールド部を有して構成され、前記第2の検出手段において前記複数のシールド部のそれぞれによって静電容量を検出することが好適である。これによれば、被検出体が入力装置から離れている場合における被検出体の位置を検出することができる。
【0018】
本発明の入力装置の検出方法は、基材と、前記基材
の入力領域に設けられた複数の電極と、前記電極に接続され
て前記入力領域および前記入力領域を取り囲む非入力領域に延在する引出配線と、前記基材の入力操作側に配置され
、前記入力領域および前記非入力領域において前記引出配線と重なり、前記電極が形成された位置には開口部を有し、
前記電極のそれぞれの面積よりも大きい面積を有するシールド層とを有する入力装置の検出方法であって、
前記シールド層を接地し、又は定電圧に設定し、複数の前記電極により静電容量を検出する第1の検出方法と、
前記シールド層を検出回路に接続し、前記シールド層により静電容量を検出する第2の検出方法とを有し、前記第1の検出方法と前記第2の検出方法とを切り替えることを特徴とする。
【0019】
これによれば、被検出体が入力装置に接触または接近した際には、第1の検出方法により、複数の電極で検出された静電容量から被検出体の入力位置を検出可能である。また、被検出体が入力装置から離れている場合には、第2の検出方法により、大きい面積を有するシールド層を静電容量検出用の電極として用いて、被検出体の接近を検出することができる。そして第1の検出方法と第2の検出方法とを切り替えることで、被検出体の入力位置の検出と、被検出体の接近の検出とが可能となる。
【0020】
よって、大きな面積を有するシールド層を用いて検出可能距離を大きくすることができ、また、1つの切り替え手段で検出手段を切り替えるのみで制御可能であるため複雑な制御が不要である。したがって、誤検出を防止して入力位置を検出すると共に、簡便な構成により検出可能距離を大きくすることができる。
【0021】
本発明の入力装置の検出方法は、前記第1の検出方法と前記第2の検出方法とを所定の時間で交互に切り替えることが好適である。これによれば、入力位置の検出、及び被検出体の接近の検出について、時分割することにより簡便な制御方法により検出することができる。
【0022】
前記第2の検出方法において、前記シールド層及び前記電極により静電容量を検出することが好適である。これによれば、シールド層及び電極の合計面積によって被検出体との間の静電容量が形成されるため、第2の検出方法における検出可能距離をさらに大きくすることができる。
【0024】
本発明の入力装置の検出方法において、前記シールド層は、電気的に分離された複数のシールド部を有して構成され、前記第2の検出方法において前記複数のシールド部のそれぞれの静電容量を検出することが好適である。これによれば、被検出体が入力装置から離れている場合における被検出体の位置を検出することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の入力装置及びその検出方法によれば、誤検出を防止して入力位置を検出すると共に、簡便な構成により検出可能距離を大きくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態について説明する。なお、各図面の寸法は適宜変更して示す。
【0028】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態における入力装置の分解斜視図である。
図2は、本実施形態の入力装置を構成する複数の電極及び引出配線の平面図である。
図3は本実施形態の入力装置を構成する上部シールド層の平面図である。また、
図4は、
図2のIV−IV線の位置で切断して矢印方向から見たときの入力装置の部分拡大断面図である。
【0029】
図1に示すように、本実施形態の入力装置1は、第1の基材21と、第1の基材21の上方に配置された第2の基材31と、第1の基材21の下方に配置された第3の基材41とを有して構成される。さらに、第2の基材31の上方には表面パネル11が設けられている。
図4に示すように第1の基材21、第2の基材31、第3の基材41、及び表面パネル11は、粘着層17、18、19を介して貼り合わされている。
【0030】
本実施形態において、表面パネル11は透光性のガラス材料又は透光性樹脂材料を用いて平板状に形成されている。表面パネル11の裏面側には、着色された加飾層12が設けられており、加飾層12は、表面パネル11の外周部において額縁状に形成されている。入力装置1において、加飾層12と重なる領域は非入力領域16であり、加飾層12によって囲まれた領域が入力操作を行う入力領域15である。操作者は、指などの被検出体を表面パネル11の入力面11aに接触させて、又は接触させずに近づけた状態で入力操作を行うことができる。
【0031】
図2に示すように、第1の基材21の入力領域15には、複数の電極22が配置されている。複数の電極22は、それぞれ矩形状に形成されており、X1−X2方向及びY1−Y2方向において間隔を設けて配列される。複数の電極22とグラウンド層(図示しない)との間にはそれぞれ静電容量が形成されており、操作者が入力操作を行う際に、指などの被検出体と、入力位置における電極22との間に静電容量が形成される。入力操作の際、電極22とグラウンド層との間の静電容量と、電極22と被検出体との間の静電容量との合計の静電容量が検出されて、この静電容量変化により入力位置情報が検出される。
【0032】
図2に示すように、複数の電極22のそれぞれに引出配線27が接続されている。引出配線27は、入力領域15において複数の電極22同士の間を引き回されており、入力領域15から非入力領域16に延在する。そして、複数の引出配線27は非入力領域16において並行に配置されて、第1の接続端子28に接続される。第1の接続端子28は、
図1に示す外部のフレキシブルプリント基板49に接続されて、入力位置情報が外部回路へ伝達される。
【0033】
本実施形態の入力装置1において、第1の基材21は、フィルム状の樹脂材料を用いて形成される。例えば、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等の透光性樹脂材料が用いられる。複数の電極22は、ITO(Indium Tin Oxide)、SnO
2、ZnO等の透明導電材料を用いて形成されており、スパッタや蒸着等の薄膜法により形成される。また、複数の電極22は、Agナノワイヤ、Agナノチューブ、カーボンナノチューブ、PEDOTのいずれかを有するインクを用いて印刷法により形成することも可能である。引出配線27は、入力領域15において操作者から視認されないように、電極22と同じ透明導電材料を用いて形成されている。非入力領域16に配置された引出配線27には、Cu、Ag、Au等の金属材料を用いることができる。
【0034】
なお、電極22の形状や配置、又は引出配線27の引出方法は、
図2に示すものに限定されない。電極22が菱形形状、多角形状で形成された構成や、引出配線27が各電極22から異なる方向へ引き出される構成であっても、本発明を適用できる。
【0035】
図3に示すように、第2の基材31には上部シールド層32が設けられている。上部シールド層32は、第2の基材31の非入力領域16において額縁状に設けられており、第1の基材21の非入力領域16に配置された引出配線27と重なる位置に設けられている。また、
図3及び
図4に示すように、入力領域15の上部シールド層32は、引出配線27と重なる位置に設けられるとともに、電極22と重なる位置には開口部33が設けられている。つまり、開口部33が設けられていない部分の上部シールド層32は、格子状に設けられている。上部シールド層32は、電極22及び引出配線27よりも入力面11a側に、すなわち入力操作側に設けられているため、電磁ノイズが入力面11a側から侵入した場合に、上部シールド層32により電磁ノイズが遮蔽されて入力装置1の誤検出の発生を防止できる。また、指等が近づいたときに静電容量の変化を引出配線27が検知しないように防止できる。
【0036】
また、
図1に示すように、第1の基材21の下方に配置された第3の基材41には、下部シールド層42が設けられている。下部シールド層42は、液晶ディスプレイなどの表示装置(図示しない)からの電磁ノイズを遮蔽するために設けられており、第3の基材41の全面に設けられる。なお、上部シールド層32及び下部シールド層42は、グラウンドに接地する、若しくは所定の電位にするために、それぞれ第2の接続端子38、第3の接続端子48を介してフレキシブルプリント基板49に接続される。
【0037】
上部シールド層32及び下部シールド層42は、ITO、SnO
2、ZnO等の透明導電材料を用いて、スパッタや蒸着などの薄膜法により形成される。また、Agナノワイヤ、Agナノチューブ、カーボンナノチューブ、PEDOTのいずれかを有するインクを用いて印刷法により形成することも可能である。また、
図1に示すように、非入力領域16の上部シールド層32及び下部シールド層42には、導電性の高い金属層32a、金属層42aを用いてシールド効果を高めることもできる。なお、非入力領域16には加飾層12が設けられているため、金属層32a及び金属層42aが操作者から視認されることがない。
【0038】
図5は、本実施形態の入力装置の検出手段の構成を説明するためのブロック図である。本実施形態の入力装置1は、上述した複数の電極22により静電容量を検出する第1の検出手段53と、上部シールド層32により静電容量を検出する第2の検出手段54と、第1の検出手段53と第2の検出手段54とを切り替える切り替え手段52とを有する。
【0039】
第1の検出手段53は、指などの被検出体が表面パネル11の入力面11aに接触、又は接触させずに近づけた状態(例えば入力面11aと被検出体との距離が0mm〜20mm程度の状態)において、複数の電極22を個別に切り替えて個別の静電容量を検出して、被検出体の入力領域15内の入力位置を検出する。
【0040】
図4に示すように、上部シールド層32は、引出配線27よりも入力面11a側において引出配線27と重なる位置に配置される。よって、第1の検出手段53で複数の電極22により静電容量を検出する際に、上部シールド層32により、外部から侵入する電磁ノイズを遮蔽して引出配線27に電磁ノイズが重畳することを防止できるため、電磁ノイズに起因する誤検出が防止される。また、指等が近づいたときに静電容量の変化を引出配線27が検知しないように防止できる。
【0041】
また、
図5に示すように、第1の検出手段53において複数の電極22により静電容量を検出する際に、上部シールド層32は接地され、又は定電圧電源56に接続される。上部シールド層32を所定の電位に制御することで、引出配線27と上部シールド層32との間に発生する静電容量を所定の値に制御することができる。引出配線27において形成される静電容量は、入力操作の検出に寄与しない静電容量成分である。よって、引出配線27と上部シールド層32との間に形成される静電容量を所定の値に制御することで、電極22の検出感度を効果的に向上させることができ、第1の検出手段53における検出感度を向上させることができる。なお、
図5では上部シールド層32は定電圧電源56に接続されているが、これに限られず、第1の検出手段53において上部シールド層32を接地することも可能である。
【0042】
第2の検出手段54は、指などの被検出体が入力装置1の入力面11aから離れている場合(例えば、入力面11aと被検出体との距離が100mm〜200mm程度の状態)には、上部シールド層32を静電容量検出用の電極として用いて、被検出体の接近を検出することができる。
図2及び
図3に示すように、上部シールド層32の合計面積は、複数の電極22のぞれぞれの面積に比べて大きいため、被検出体と上部シールド層32との間に比較的大きな静電容量が形成される。よって、被検出体が離れている場合であっても、上部シールド層32により静電容量を良好に検出して、検出可能距離を大きくすることができる。
【0043】
なお、上部シールド層32を検出用電極として兼用せずに、被検出体が離れている場合の被検出体の接近を複数の電極22によって検出する為には、複数の電極22と被検出体との間の静電容量が非常に小さいため、第1の検出手段53における検出の閾値を小さくする必要がある。その場合、外部から侵入する電磁ノイズなどの静電容量変化と被検出体の接近による静電容量変化とが区別できず、誤動作や誤検出が多発するおそれがある。本実施形態では、大きい面積を有する上部シールド層32を静電容量検出用電極として用いるため、静電容量検出の閾値を小さくすることなく被検出体の接近を検出可能であるため、誤動作や誤検出の発生が抑制される。
【0044】
図5に示すように、第1の検出手段53及び第2の検出手段54により検出された静電容量は、検出回路55を介して、それぞれ第1の出力、第2の出力として出力される。
【0045】
そして、第1の検出手段53と第2の検出手段54とは、切り替え手段52によって切り替えられ、被検出体の入力位置の検出と、被検出体の接近の検出とが可能となる。
【0046】
図6は、第1の検出手段53と第2の検出手段54との切り替え方法を説明するためのグラフである。
図6(a)及び
図6(b)は、検出回路55で検出される静電容量と時間の関係を示す。本実施形態において、
図6(a)に示すように、第1の検出手段53と第2の検出手段54とは切り替え手段52によって所定の時間t
1、t
2で交互に切り替えられる。このように、第1の検出手段53と第2の検出手段54とを時分割することにより、被検出体が入力装置1に接触または接近した際の入力位置の検出、及び被検出体が入力装置1から離れている場合の被検出体の接近の検出について、簡便な制御方法で検出することができる。
【0047】
なお、
図6(a)に示すように、第1の検出手段53の検出時間t
1と第2の検出手段54の検出時間t
2は等しい時間(t
1=t
2)で切り替えられているが、これに限定されない。入力位置の検出精度を向上させる場合にはt
1>t
2とし、被検出体が離れている場合の被検出体の接近の検出を重視する場合はt
1<t
2とすることも可能である。なお、
図5に示すように、切り替え手段52には制御回路51が接続されており、切り替え手段52の切り替えのタイミングは制御回路51によって制御される。
【0048】
第1の検出手段53と第2の検出手段54との切り替え方法は、時分割により切り替える方法に限定されない。
図6(b)は切り替え方法の変形例を示すグラフである。本変形例の切り替え方法においては、静電容量値C
1、C
2を閾値として第1の検出手段53と第2の検出手段54とが切り替えられる。
【0049】
図6(b)に示すように、第2の検出手段54において指などの被検出体の接近を検出する際に、入力装置1の入力面11aに被検出体が近づくに従い、静電容量が大きくなっていく。そして、所定の閾値C
2以上になった場合には、操作者が入力操作を行うと判断して、第2の検出手段54から第1の検出手段53に切り替えられる。同様に、第1の検出手段53により静電容量を検出する際において、所定の閾値C
1以下になった場合には、操作者が入力操作を中断して被検出体を入力面11aから離したと判断して第2の検出手段54に切り替える。
【0050】
このように所定の静電容量値C
1、C
2を閾値として、第1の検出手段53と第2の検出手段54とを切り替えることにより、指などの被検出体が入力装置1の入力面11aから離れている場合の被検出体の接近と、被検出体を入力面11aに接触させ又は近づけた場合の入力位置とを適切に判断して切り替えることができる。よって、
図6(a)に示す切り替え方法と比較して、それぞれの検出手段で時間的に連続して検出可能であるため、より高精度な検出が可能である。
【0051】
以上のように本実施形態の入力装置1によれば、大きな面積を有する上部シールド層32を用いて検出可能距離を大きくすることができ、また、1つの切り替え手段52で第1の検出手段53と第2の検出手段54とを切り替えて制御可能であるため複雑な制御が不要である。
【0052】
また、本実施形態において、上部シールド層32は、第1の検出手段53において複数の電極22により静電容量を検出する際には、定電圧電源56に接続される。そして、第2の検出手段54により静電容量を検出する際に、上部シールド層32は検出回路55に電気的に接続される。これにより、第1の検出手段53により静電容量を検出する際に、上部シールド層32のシールド効果により電磁ノイズの侵入を抑制して、検出感度の低下や誤検出を防止することができる。また、指等が近づいたときに静電容量の変化を引出配線27が検知しないように防止できる。
【0053】
したがって、本実施形態の入力装置1によれば、誤検出を防止して入力位置を検出すると共に、簡便な構成により検出可能距離を大きくすることができる。
【0054】
図7は、本実施形態の第1の変形例の入力装置における検出手段を説明するためのブロック図である。
図7に示すように、第1の変形例の入力装置2は、第2の検出手段58において上部シールド層32及び複数の電極22により静電容量を検出することが可能である。これによれば、上部シールド層32及び電極22の合計面積によって静電容量が形成されるため、指などの被検出体が入力装置2の入力面11aから離れている場合であっても、上部シールド層32及び複数の電極22により検出される静電容量を大きくすることができる。よって、第2の検出手段58の検出可能距離をさらに大きくすることができる。
【0055】
図8は、本実施形態の第2の変形例の入力装置を構成する上部シールド層の平面図である。
図8に示すように、第2の変形例の入力装置3は、上部シールド層32が複数に分割されている点で異なる。本変形例では、上部シールド層32は、互いに電気的に分離された、第1のシールド部34、第2のシールド部35、第3のシールド部36、第4のシールド部37を有して構成される。
【0056】
第2の検出手段54において、指などの被検出体の接近を検出する際に、複数のシールド部34〜37のそれぞれによって静電容量が検出される。これにより、被検出体が入力装置3から離れている場合における被検出体の位置を検出することができる。よって、ジェスチャー入力等の多様な入力操作が可能である。なお、本変形例の入力装置3では、上部シールド層32を4分割しているが、分割する数、各シールド部の面積等は適宜変更できる。
【0057】
図9は、本実施形態の第3の変形例の入力装置の部分拡大断面図である。
図9に示すように、第3の変形例の入力装置4は、第2の基材31が設けられていない点で異なる。本変形例では上部シールド層32は表面パネル11の裏面に形成されている。このような態様であっても、大きい面積を有する上部シールド層32を静電容量検出用電極として用いることができ、第2の検出手段54において上部シールド層32により静電容量を検出することができる。
【0058】
また、上部シールド層32を設ける位置は、適宜変更することができ、第1の基材21及び引出配線27の上に絶縁層を介して設けることも可能である。
【0059】
<第2の実施形態>
図10は、第2の実施形態の入力装置の平面図であり、
図11は、
図10のXI−XI線で切断して矢印方向から見たときの入力装置の部分拡大断面図である。
図10に示すように本実施形態の入力装置5は、複数の第1の電極62及び複数の第2の電極63を有している。X1−X2方向において複数の第1の電極62がブリッジ部64を介して接続されており、Y1−Y2方向において複数の第2の電極63が接続部65を介して接続されている。
図11に示すように、ブリッジ部64は、絶縁層66を介して接続部65に跨がって設けられており、隣り合う第1の電極62、62同士を接続する。
【0060】
本実施形態において、引出配線67は、第1の電極62及び第2の電極63のそれぞれに電気的に接続されて、第1の基材61の非入力領域16を引き回されている。そして、
図10及び
図11に示すように、引出配線67と重なる位置に上部シールド層72が配置されている。上部シールド層72は、非入力領域16に重なる位置に設けられており、入力領域15を囲む枠状に配置されている。
【0061】
このような態様であっても、
図5及び
図6と同様に第1の検出手段53及び第2の検出手段54により被検出体を検出することができる。第1の検出手段53は、第1の電極62及び第2の電極63により静電容量の検出を行い、指などの被検出体が入力装置5の入力面11aに接触し、又は接触せずに近づいたときの入力位置を検出する。また、指などの被検出体が入力装置5の入力面11aから離れている場合(例えば、入力面11aと被検出体との距離が100mm〜200mm程度の状態)において、第2の検出手段54により上部シールド層72を静電容量検出用の電極として用いて、被検出体の接近を検出することができる。
【0062】
そして、第1の検出手段53と第2の検出手段54とは、切り替え手段52によって切り替えられ、被検出体の入力位置の検出と、被検出体の接近の検出とが可能となる。
【0063】
図10に示すように、本実施形態においても上部シールド層72の合計面積は、第1の電極62及び第2の電極63の個々の面積に比べて大きいため、被検出体と上部シールド層72との間に比較的大きな静電容量が形成される。よって、被検出体が離れている場合であっても、上部シールド層72により静電容量を良好に検出して、検出可能距離を大きくすることができる。この場合、上部シールド層72は加飾層12と重なるため、透明である必要は無い。また、上部シールド層72を加飾層12の代わりに用いることもできる。
【0064】
また、第1の検出手段53において第1の電極62及び第2の電極63により静電容量の検出を行う際には、上部シールド層72は接地され、又は定電圧電源56に接続される。これにより、上部シールド層72の電位を制御して上部シールド層72と引出配線67との間の静電容量の変動を抑制することができるため、入力装置5の誤動作や誤検出の発生が抑制される。
【0065】
以上のように本実施形態の入力装置5においても、大きな面積を有する上部シールド層72を用いて検出可能距離を大きくすることができ、また、1つの切り替え手段52で第1の検出手段53と第2の検出手段54とを切り替えて制御可能であるため複雑な制御が不要である。したがって、誤検出を防止して入力位置を検出すると共に、簡便な構成により検出可能距離を大きくすることができる。