(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記コアワイヤの炭素含有量(質量パーセント)をCcとし,上記ラッピングワイヤの炭素含有量(質量パーセント)をCwとしたときに,0.05≦Cc−Cw≦0.40の関係を持つ,
請求項1から3のいずれか一項に記載のストリップ状スチールコード。
【実施例】
【0019】
(スチールコードの構造について)
図1は,この発明の実施例を示すもので,ストリップ状のスチールコード1の一部拡大斜視図である。
図2は
図1のII−II線に沿う断面図である。
図3はストリップ状スチールコード1を構成するラッピングワイヤ3の一部をさらに拡大して示す斜視図である。
【0020】
ストリップ状スチールコード1は,一の平面内において互いに平行に隣接して配列された直線状にのびる5本のコアワイヤ2と,5本のコアワイヤ2をその平行配列を維持したまま束ねる1本のラッピングワイヤ3を備えている。コアワイヤ2およびラッピングワイヤ3はいずれもスチール製であり,炭素および鉄を含有する。
【0021】
コアワイヤ2は,たとえば直径5.50mmの断面円形のピアノ線材に乾式伸線,熱処理,ブラスめっき,湿式伸線を順番に施すことでたとえば直径0.23mmの断面円形の母線を作成し,その後,扁平率(短径d
1 /長径d
2 × 100%)がたとえば80%となるように扁平加工(圧延)したものである。扁平加工によって,コアワイヤ2は一対の平面部2aと一対の外向きの曲面部2bとを持つものになる。隣接するコアワイヤ2は,撚られることなく,平面部2a同士を全長にわたって互いに接触させるようにして平行に引き揃えられる。隣接するコアワイヤ2の間には,断面形状が概略扇形の空間(隙間)が上下対称に長手方向に存在する。たとえばコアワイヤ2の短径d
1が0.20mmであればストリップ状のスチールコード1の幅は約1.00mmとなる。
図1に示すスチールコード1の斜視図はかなり拡大されて示されているものであることが理解されよう。
【0022】
スチールコード1を構成するラッピングワイヤ3の直径はコアワイヤ2の母線径(扁平加工前の直径)よりも小さく,直径0.10mm〜0.15mm程度のものが用いられる。ラッピングワイヤ3も,ピアノ線材に乾式伸線,熱処理,ブラスめっき,湿式伸線を順番に施すことで製造される。
【0023】
コアワイヤ2に含有されている炭素量とラッピングワイヤ3に含有されている炭素量に違いがあり,ラッピングワイヤ3の硬度はコアワイヤ2の硬度よりも低い。すなわち,ラッピングワイヤ3は,コアワイヤ2よりも小さい力で変形しやすいものである。
【0024】
撚られることなく互いに平行に引き揃えられた5本のコアワイヤ2の周囲からラッピングワイヤ3が巻付けられることで,5本のコアワイヤ2はラッピングワイヤ3によって束ねられる。ラッピングワイヤ3の巻付けには専用のラップ機(図示略)が用いられる。ラップ機では5本のコアワイヤ2が無撚のまま一定速度で繰出され,繰出される5本のコアワイヤ2の周囲を回転運動するフライヤアームからラッピングワイヤ3が一定速度で繰出され,これにより,5本のコアワイヤ2の外側からラッピングワイヤ3が巻き付けられる。
図1に示すように,ラッピングワイヤ3はコアワイヤ2の長手方向に対して斜めに(らせん状に)設けられる。
【0025】
5本のコアワイヤ2およびこれを束ねるラッピングワイヤ3は圧延ロール(図示略)に与えられ,ここでその両面(上下面)から挟まれて押圧される。ラッピングワイヤ3が外側に位置しており,かつ上述したようにラッピングワイヤ3の硬度はコアワイヤ2の硬度よりも低い。このため,圧延ロールによって押圧されると,ラッピングワイヤ3がコアワイヤ2よりも先に変形する。圧延ロールによる押圧力およびコアワイヤ2とラッピングワイヤ3の硬度差を調整することで,コアワイヤ2の変形量に対し,ラッピングワイヤ3の変形量をかなり大きくすることができる。
【0026】
上述したように,隣接するコアワイヤ2の間には断面形状が概略扇形の空間が形成されている。圧延ロールによって押圧されると,ラッピングワイヤ3のコアワイヤ2に面している内がわ部分のうち,隣接するコアワイヤ2の境界に位置する部分が隣接するコアワイヤ2間の空間を埋めるように変形し,隣接するコアワイヤ2間の空間の形状に沿う突起3aが形成される。同時に,圧延ロールに接するラッピングワイヤ3の外がわの部分3bは平面状に変形し,かつコアワイヤ2に接している部分には弧状の窪み3cが形成される(
図2,
図3参照)。
【0027】
変形したラッピングワイヤ3は上述のように隣接するコアワイヤ2間の空間に入り込む。上記突起3aによってコアワイヤ2の動きが制限されるから,ラッピングワイヤ3による5本のコアワイヤ2の拘束力は大きい。また,圧延されたときのラッピングワイヤ3の塑性変形量を比較的大きくすることで,巻付けられたラッピングワイヤ3の回転トルクおよび反発力(巻付けによって生じる,巻付けを解放しようとする力)をほとんど生じなくすることができ,5本のコアワイヤ2の平行配列を安定して維持することができる。
【0028】
完成したストリップ状スチールコード1は巻取リールに巻き取られて,自動車用タイヤの製造工場等に出荷される。
【0029】
図4は自動車用タイヤ10の半断面図である。
図5は自動車用タイヤ10が備えるベルト層4A,4Bの一部拡大断面図である。
【0030】
図4を参照して,自動車用タイヤ10はそのトレッド部11の内側に2つのベルト層4A,4Bを備えている。ベルト層4A,4Bは自動車用タイヤ10の周方向に設けられる。
【0031】
図5を参照して,自動車用タイヤ10の周方向に設けられるベルト層4A,4Bに,上述したストリップ状のスチールコード1は埋め込まれて自動車用タイヤ10の補強材として用いられる。ベルト層4A,4Bはゴム5によって構成されており,スチールコード1はその全体がゴム5によって覆われる。
【0032】
スチールコード1を構成するコアワイヤ2の長径方向が自動車用タイヤ10の接地面(トレッド部11の外周面)と垂直な方向を向くように,スチールコード1はベルト層4A,4Bに埋め込まれる。地面に接触する自動車用タイヤ10の外周面に垂直な方向の剛性(面外剛性)を高めることができる。
【0033】
(評価試験について)
上述したストリップ状スチールコード1(
図1〜
図3),およびこのスチールコード1が埋め込まれたベルト層4A,4B(
図5)を備えるタイヤサイズ 195/65R15の自動車用タイヤ10(
図4)を試作し,これらについて,様々な観点から評価試験を行った。以下,この評価試験について詳細に説明する。
【0034】
表1および表2は,コアワイヤ2の形状(扁平率),コアワイヤ2の断面積,ラッピングワイヤ3の直径,コアワイヤ2およびラッピングワイヤ3の含有炭素量等をパラメータとして,パラメータを様々に変えて製造した61種類のスチールコード1についての評価試験の結果を示している。スチールコードの構造は,61種類のスチールコードのすべてについて,5本のコアワイヤ2をラッピングワイヤ3によって束ねたもの(
図1)とした。表1には,後述する評価試験において好ましくない評価が得られた被試験体(「比較例」と呼ぶ)についての試験結果がまとめられている。表2には,後述する評価試験において好ましい評価が得られた被試験体(「実施例」と呼ぶ)についての試験結果がまとめられている。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
「コアワイヤ径(短径,長径)」は,スチールコード1の製造に用いるコアワイヤ2の短径d
1 および長径d
2 である(
図2参照)(単位はmm)。表1を参照して,比較例1および比較例2はコアワイヤ2の短径および長径が同じである。これは比較例1および比較例2のスチールコード1を構成するコアワイヤ2についてのみ,断面円形であること(コアワイヤ2が丸線であること)を表す。
【0038】
「扁平率」はコアワイヤ2の短径/長径×100の値である(単位は%)。
【0039】
「断面積」はコアワイヤ2の断面積である(単位はmm
2)。
【0040】
「母線径」は扁平に形成する前のコアワイヤ2(母線)の直径である(単位はmm)。
【0041】
「ラップワイヤ径」はラッピングワイヤ3の直径(変形前のラッピングワイヤ3の直径)である(単位はmm)。
【0042】
「コアワイヤC%」はコアワイヤ2の炭素含有量である(単位はwt%)(質量パーセント)。
【0043】
「ラップワイヤC%」はラッピングワイヤ3の炭素含有量である(単位はwt%)。
【0044】
「C%差」は,コアワイヤ2の炭素含有量からラッピングワイヤ3の炭素含有量を減算した値(炭素含有量差)である。
【0045】
「圧延率」は,圧延ロールによる押圧後のスチールコード1の厚さDs(
図2参照)を,押圧前のスチールコード1の厚さDによって除算した値である(Ds/D)。圧延ロールによる押圧力が小さいと,Dsの値とDの値との差が小さくなるので,Ds/Dの値は大きくなる(「1」に近づく)。圧延ロールによる押圧力が大きいと,Dsの値がDの値よりも小さくなるので,Ds/Dの値は小さくなる。なお,押圧前のスチールコード1の厚さDは,コアワイヤ2の長径をd
2,ラッピングワイヤ3の直径をd
wとすると,d
2+2d
wによって表される。
【0046】
「コード短径」は,上述した圧延ロールによる押圧後のスチールコード1の厚さDs(
図2参照)である(単位はmm)。
【0047】
「単位重量指数」は,比較例1のスチールコード1(直径 0.200mmの断面円形のコアワイヤ2と直径 0.150mmのラッピングワイヤ3を用いたもの)の重量を「100」としたときの相対的な重量の指数を示している。
【0048】
表1および表2には,「ラップ断線」,「回転性」,「耐久性」,「操縦安定性」および「乗り心地」の5つの評価試験の結果が示されている。
【0049】
(1)ラップ断線
ラッピングワイヤ3が断線すると,平行配列された複数本のコアワイヤ2の拘束力が無くなり,コアワイヤ2の並びに乱れが生じてしまう。スチールコード1を巻取リールに巻き取るときに,断線検出器が用いられてラッピングワイヤ3に断線が発生しているかどうかが検査される。ラッピングワイヤ3の断線が検出された場合,スチールコード1を巻取リールに巻き取る巻取機の運転が停止される。「ラップ断線」の欄には,ラッピングワイヤ3の断線が検出されたものについて「×」が示されている。ラッピングワイヤ3の断線が検出されることなく,規定のコード長のスチールコード1を巻取リールに巻き取ることができたものについて「○」が示されている。ラップ断線が「×」と評価されたものについては,後述する自動車用タイヤ10に関する評価(「操縦安定性」および「乗り心地」の評価)は実施しなかった。
【0050】
(2)回転性
スチールコード1は,上述したように,自動車用タイヤ10のベルト層4A,4B中に埋込まれて用いられる(
図4,
図5)。スチールコード1にその長手方向を中心に回転する力(回転力)が内在すると,ベルト層4A,4Bまたはベルト層4A,4Bを製造する前段階のカレンダーシートに反りが生じてしまうことがある。したがってスチールコード1は回転力を持たないものであることが要求される。「回転性」の評価は以下のように実施される。まず,巻取リールから,スチールコード1を全く回転させずに6m引出し,引き出したスチールコード1の先端5cmをペンチで下向きにほぼ直角に折り曲げる。引き出したスチールコード1が地面等に接触しないように注意しつつ,スチールコード1を自由に回転させる。スチールコード1に残留トルクがあれば,スチールコード1は長手方向を中心に回転する。スチールコード1を構成するラッピングワイヤ3の巻付け方向と同じ方向に回転した場合を+とし,逆方向に回転した場合を−として,それぞれの方向に回転した回転数を記録する。回転数は整数で記録し,0.5回転未満は切り捨て,0.5回転以上は切り上げる。「回転性」の評価欄には,回転数が0(すなわち,±0.5回転未満)であったものについて「○」が,回転数が0でなかったものについて「×」がそれぞれ示されている。回転性が「×」と評価されたものについては,後述する自動車用タイヤ10に関する評価(「操縦安定性」および「乗り心地」の評価)は実施しなかった。
【0051】
(3)耐久性
図6(A)に示すように,スチールコード1を15本/インチの密度でゴム5に埋め込んだ試験サンプル6を作成した。
図6(B)に示すように,この試験サンプル6を直径1インチのプーリー7に掛け, 50kgfの負荷荷重を加えてシューシャインテストを実施した。シューシャインテストでは,プーリー7に掛けた試験サンプル6の長手方向の両端のそれぞれにチャック8を固定し, 50kgfの負荷荷重を維持したまま,2つのチャック8を互いに逆向きに所定ストローク往復移動させる。試験サンプル6はプーリー7において繰り返し屈曲させられる。屈曲回数 150万回でテストを停止したあと試験サンプル6を解体し,スチールコード1の折れ(断線)の有無を確認した。「耐久性」の評価欄には,スチールコード1の折れが確認されなかったものについて「○」が,折れが確認されたものについて「×」が示されている。耐久性が「×」と評価されたものについては,次に説明する自動車用タイヤ10に関する評価(「操縦安定性」および「乗り心地」の評価)は実施しなかった。
【0052】
(4)操縦安定性
内圧200kPaでJIS規定の標準リムに組み込んだ自動車用タイヤ10を排気量 2000ccの試験車両に装着し,訓練された3名のテストドライバーがテストコースを走行し,官能評価をした。3名のドライバーは,各スチールコード1を用いた自動車用タイヤ10を装着した試験車両の操縦安定性を,比較例1のスチールコード1を用いた自動車用タイヤ10を6点とする10段階評価で採点し,その後,3名のドライバーによる採点の平均点を算出して,これを操縦安定性の評価結果とする。分かりやすくするために,「操縦安定性」の評価欄には,実施例30のスチールコード1を用いた自動車用タイヤ10についての操縦安定性の評価結果を「100」に換算したときの指数が示されている。数字が大きいほど操縦安定性が良好であることを意味する。また,上述したように,ラップ断線,回転性および耐久性のいずれかの評価が「×」であったスチールコード1については,操縦安定性の評価は実施していない(表1において「−」で示す)。
【0053】
(5)乗り心地
内圧200kPaでJIS規定の標準リムに組み込んだ自動車用タイヤ10を排気量 2000ccの試験車両に装着し,訓練された3名のテストドライバーが悪路テストコースを走行し,官能評価をした。3名のドライバーは,各スチールコード1を用いた自動車用タイヤ10を装着した試験車両の乗り心地を,比較例1のスチールコード1を用いた自動車用タイヤ10を6点とする10段階評価で採点し,その後,3名のドライバーによる採点の平均点を算出してこれを乗り心地の評価結果とする。分かりやすくするために,「乗り心地」の評価欄には,実施例30のスチールコード1を用いた自動車タイヤ10についての乗り心地の評価結果を「100」に換算したときの指数が示されている。数字が大きいほど乗り心地が良好であることを意味する。また,上述したように,ラップ断線,回転性および耐久性のいずれかの評価が「×」であったスチールコード1については,乗り心地の評価は実施していない(表1において「−」で示す)。
【0054】
図7〜
図10は,表1および表2の評価試験結果をプロットによって示すものである。
図7は横軸をコアワイヤ断面積,縦軸を扁平率とした座標軸上に,耐久性,操縦安定性および乗り心地の評価試験結果をプロットしている。
図8は横軸をコアワイヤ断面積,縦軸を圧延率(Ds/D)とした座標軸上に,耐久性,回転性および乗り心地の評価試験結果をプロットしている。
図9は横軸をコアワイヤ断面積,縦軸をラッピングワイヤの直径とした座標軸上に,耐久性,回転性,乗り心地およびラップ断線の評価試験結果をプロットしている。
図10は横軸をコアワイヤ断面積,縦軸を炭素含有量差(C%差)とした座標軸上に,耐久性,ラップ断線,乗り心地および回転性の評価試験結果をプロットしている。各プロット点として,試験結果(ラップ断線,回転性および耐久性については表1および表2に示す○または×,操縦安定性および乗り心地については指数が 100以上のものに○, 100未満のものに×)が,表1および表2に示す被試験体の番号(1) 〜(61)とともに示されている。
図7〜
図10のそれぞれにおいて,以下に説明する好ましい数値範囲が一点鎖線によって示されている。
【0055】
<コアワイヤの断面積と耐久性との関係>
比較例20および21を参照して,比較例20のスチールコード1は断面積が 0.015mm
2のコアワイヤ2を,比較例21のスチールコード1は断面積が 0.017mm
2のコアワイヤ2を,それぞれ用いたものである。比較例20,21のように,比較的小さい断面積を持つコアワイヤ2,すなわち細いコアワイヤ2を用いると,耐久性の評価が「×」となった。比較例20,21のコアワイヤ2を用いたスチールコード1は,シューシャインテストにおいてスチールコード1の折れ(断線)が確認されたことから,耐久性の評価が「×」となったものである。他方,実施例49,50を参照して,実施例49,50のスチールコード1はいずれも断面積が 0.019mm
2のコアワイヤ2を用いたものである。実施例49,50のスチールコード1を用いると耐久性の評価が「○」となっている。耐久性に良好にするには,コアワイヤ2の断面積を 0.018mm
2以上(好ましくは0.019mm
2以上)とする必要がある(
図7〜
図10参照)。
【0056】
<コアワイヤの断面積と乗り心地との関係>
断面積の大きいコアワイヤ2,すなわち太いコアワイヤ2を用いると,地面に接触する自動車用タイヤ10の外周面に垂直方向の剛性(面外剛性)が高くなるから,耐久性は良好になる。しかしながら,コアワイヤ2の断面積を大きくすればするほど,そのコアワイヤ2を用いたスチールコード1の重量が重くなり,結果的にそのスチールコード1を用いた自動車用タイヤ10の重量も重くなってしまう。
【0057】
比較例22を参照して,比較例22のスチールコード1は,断面積が 0.091mm
2のコアワイヤ2を用いたものである。このコアワイヤ2の単位重量指数は 289を示しており,比較的重いものである。比較例22のスチールコード1を用いると乗り心地の評価が悪化した(乗り心地の指数は89)。コアワイヤ2の断面積が大きすぎると,面外剛性が高くなりすぎて乗り心地に悪影響を与えると考えられる。他方,実施例61を参照して,実施例61のスチールコード1は,断面積が 0.085mm
2である点を除いて,他のパラメータは比較例22のスチールコード1のものとほぼ同等のコアワイヤ2を用いたものである。実施例61のスチールコード1を用いると乗り心地の評価は悪化しなかった(乗り心地の指数は 100)。乗り心地を良好にするには,コアワイヤ2の断面積を 0.085mm
2以下にとどめる必要があることが分かる(
図7〜
図10参照)。
【0058】
<コアワイヤの長径と乗り心地の関係>
乗り心地の観点でさらに検討すると,比較例23および24を参照して,比較例23および24のものは,コアワイヤ2の断面積はさほど大きくはない(それぞれ 0.077mm
2,0.066mm
2)にも関わらず,乗り心地の評価が悪化している(乗り心地の指数はそれぞれ89,94)。比較例23,24のスチールコード1のコアワイヤ2はその長径d
2が 0.370mmと比較的長い。自動車用タイヤ10の外周面に対して垂直な方向を向くコアワイヤ2の長径d
2が長すぎても,自動車用タイヤ10の面外剛性が高くなりすぎて乗り心地に悪影響を与えると考えられる。コアワイヤ2の長径d
2を 0.350mm以下とすると,乗り心地の評価は悪化していない(実施例58,59,60,61)。乗り心地を良好にするにはコアワイヤ2の長径d
2を0.350mm以下にすることが必要である(
図7〜
図10参照)。
【0059】
<コアワイヤの扁平率と操縦安定性との関係>
次に比較例1および比較例2を参照して,コアワイヤ2の扁平率が 100%,すなわち断面が円形である丸線のコアワイヤ2を用いると,操縦安定性の評価が悪化した(操縦安定性の指数はそれぞれ89,94)。また,比較例25〜比較例27を参照して,扁平率が比較的大きい90%のコアワイヤ2を用いた場合も,操縦安定性の評価が悪化した(操縦安定性の指数はそれぞれ89,94,94)。断面が円形の,ないし円形に近いコアワイヤ2を用いると,自動車用タイヤ10の面外剛性が不足して操縦安定性に欠けることがあると考えられる。もっとも,断面が円形ないし円形に近いコアワイヤ2であっても,その直径が太く,断面積が大きいものであれば,操縦安定性の評価は向上する。しかしながら,直径を太くすればするほど(断面積が大きいほど)自動車用タイヤ10の重量が増加してしまう。扁平率を85%以下とすると,操縦安定性に影響はなかった(実施例61を参照)。重量増加を抑制し,しかも操縦安定性を良好にするには,コアワイヤ2を扁平に形成する必要があり,その扁平率を85%以下にすることが必要であることが分かる(
図7参照)。
【0060】
<コアワイヤの扁平率と耐久性との関係>
比較例28および29を参照して,比較例28および29のスチールコード1を構成するコアワイヤ2の扁平率は45%であり,短径d
1 が長径d
2 の1/2未満となる程度に強く扁平加工されたものである。扁平率が45%のコアワイヤ2を用いたスチールコード1は,シューシャインテストでスチールコード1の折れ(断線)が確認されたことから,耐久性の評価が「×」となっている。扁平率が45%に至る程度に強く扁平加工することでコアワイヤ2の強度が大きく低下したと考えられる。扁平率を50%にとどめると,耐久性に影響はなかった(実施例58を参照)。耐久性との関係からすると,コアワイヤ2の扁平率は50%以上にする必要があることが分かる(
図7参照)。
【0061】
<圧延率,ラッピングワイヤの直径および炭素含有量と回転性との関係>
比較例9〜13を参照して,圧延率Ds/Dの値が0.85以上であると,すなわち圧延ロールを用いたスチールコード1の圧延工程における押圧力が弱すぎると,回転性の評価が「×」となった。これは,ラッピングワイヤ3に回転トルクまたは反発力が大きく残存しており,その結果としてスチールコード1に回転力が生じているものと考えられる。Ds/Dが0.80以下であれば回転性の評価は「○」となることが多かった。圧延ロールによる押圧力を大きくしてラッピングワイヤ3の塑性変形量を大きくすることで,ラッピングワイヤ3の回転トルクまたは反発力が弱められ,その結果としてスチールコード1の回転力がなくなると考えられる(
図8参照)。
【0062】
比較例6〜8を参照して,これらの圧延率Ds/Dの値は0.75であり,比較的小さい(0.80よりも小さい)値であるものの,回転性の評価が「×」となった。比較例6〜8のものは,ラッピングワイヤ3の直径(ラップワイヤ径)が比較的大きく(0.17mm
2),圧延ロールによる押圧を経てもラッピングワイヤ3の回転トルクまたは反発力が小さくならずに,その結果として,スチールコード1に回転力が生じたものと考えられる。回転性に着目する場合,ラッピングワイヤ3の直径は0.15mm以下とする必要があることが分かった(
図9参照)。
【0063】
さらに比較例14〜16を参照して,これらのDs/Dの値は0.75であり,さらにラッピングワイヤ3の直径も0.10mm〜0.15mmであるものの,回転性の評価が「×」となった。比較例14〜16のものは,コアワイヤ2の炭素含有量からラップワイヤ3の炭素含有量を減算した炭素含有量差(C%差)が0.02wt%と比較的小さい。上述したように,スチールコード1を構成するラッピングワイヤ3の硬度はコアワイヤ2の硬度よりも低く,ラッピングワイヤ3はコアワイヤ2よりも小さい力で変形しやすい。この硬度の違いはコアワイヤ2およびラッピングワイヤ3の炭素含有量(より正確には,コアワイヤ2およびラッピングワイヤ3を製造するのに用いられるピアノ線材の炭素含有量)を調整することによって実現することができる。
【0064】
炭素含有量が増えるとワイヤの硬度は高くなる。コアワイヤ2の炭素含有量とラッピングワイヤ3の炭素含有量の差が大きいほど,ラッピングワイヤ3はコアワイヤ2よりも相対的に柔らかいものになる。
【0065】
比較例14〜16のものは,コアワイヤ2の炭素含有量とラッピングワイヤ3の炭素含有量の差が小さく(0.02wt%),コアワイヤ2とラッピングワイヤ3の硬度がほぼ同等である。このときにも回転性の評価が「×」となったと考えられる。これは,コアワイヤ2とラッピングワイヤ3の硬度が同等であるために,圧延ロールによる押圧時のラッピングワイヤ3の塑性変形量が少なくなってしまい,ラッピングワイヤ3に回転トルクまたは反発力が大きく残存し,その結果としてスチールコード1にも回転力が生じたものと考えられる。炭素含有量の差が0.05cw%以上(好ましくは0.10cw%以上)であれば回転性の評価が「○」となった(
図10参照)。
【0066】
<炭素含有量とラップ断線との関係>
炭素含有量の差に関して,比較例17〜19を参照して,炭素含有量の差が0.45wt%のものは,ラッピングワイヤ3の断線が頻発した。これは,コアワイヤ2とラッピングワイヤ3の間の硬度差が大きすぎるために,圧延ロールによる押圧のときにラッピングワイヤ3が大きくつぶれてしまい,その負荷にラッピングワイヤ3が耐えることができなかったと考えられる。ラッピングワイヤ3の断線を避けるには,炭素含有量の差を0.40wt%以下とすることが必要であることが分かった(実施例41,
図10参照)。
【0067】
<ラッピングワイヤの直径とラップ断線との関係>
さらに比較例3〜5を参照して,比較例3〜5のものは炭素含有量の差は0.40wt%以下であるが,ラッピングワイヤ3の断線が頻発した。比較例3〜5のものはラッピングワイヤ3の直径が0.08mmであり,ラッピングワイヤ3の直径が細すぎても断線が発生しやすくなると考えられる。ラッピングワイヤ3の直径は0.10mm以上であることが必要である(実施例31,
図9参照)。