(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133747
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】警報装置、警報装置の故障検出方法および踏切警報機ならびに踏切警報機の故障検出方法
(51)【国際特許分類】
G08B 23/00 20060101AFI20170515BHJP
B61L 29/28 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
G08B23/00 520C
B61L29/28 A
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-211438(P2013-211438)
(22)【出願日】2013年10月8日
(65)【公開番号】特開2015-75903(P2015-75903A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2015年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】潮見 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】長峯 望
(72)【発明者】
【氏名】遠山 喬
(72)【発明者】
【氏名】杉本 経嗣
【審査官】
吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】
実開平01−167960(JP,U)
【文献】
特開2004−302807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L1/00−99/00
G08B1/00−9/20
19/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の音響信号を送出する第1の音源と、
第2の音響信号を送出する第2の音源と、
前記第1の音響信号および第2の音響信号とは異なる音響信号である故障検出用の第3の音響信号を送出する第3の音源と、
前記第3の音響信号を分岐する分岐部と、
分岐された一方の前記第3の音響信号を第1の音響信号と重畳する第1の合波部と、
分岐された他方の第3の音響信号を位相反転させる位相反転部と、
位相反転された第3の音響信号を第2の音響信号と重畳する第2の合波部と、
前記第1の合波部の出力と前記第2の合波部の出力とを合成し位相が反転する二つの前記第3の音響信号をキャンセルする第3の合波部と
を備えた警報装置。
【請求項2】
請求項1記載の警報装置において、
前記第3の音響信号は、故障連絡先の情報を含む音声信号である、
ことを特徴とする警報装置。
【請求項3】
第1の音源と第2の音源とを有し、前記第1の音源から送出される第1の音響信号と、前記第2の音源から送出される第2の音響信号とを合成して出力する警報装置の故障検出方法において、
前記第1の音源または前記第2の音源から送出される音響信号とは異なる音響信号である故障検出用の第3の音響信号を第3の音源から送出し、
前記第3の音響信号を分岐してその一方の音響信号を前記第1の音響信号と重畳し、
他方の第3の音響信号の位相を反転させて前記第2の音響信号と重畳し、
この第3の音響信号が重畳された第1の音響信号と第2の音響信号とを重畳して位相が反転する二つの第3の音響信号をキャンセルする
ことを特徴とする警報装置の故障検出方法。
【請求項4】
踏切遮断時の警報音の第1の音響信号を送出する第1の音源と、
踏切遮断時の警報音の第2の音響信号を送出する第2の音源と、
前記第1の音響信号および第2の音響信号とは異なる音響信号である故障検出用の第3の音響信号を送出する第3の音源と、
前記第3の音響信号を分岐する分岐部と、
分岐された一方の前記第3の音響信号を第1の音響信号と重畳する第1の合波部と、
分岐された他方の第3の音響信号を位相反転させる位相反転部と、
位相反転された第3の音響信号を第2の音響信号と重畳する第2の合波部と、
前記第1の合波部の出力と前記第2の合波部の出力とを合成し位相が反転する二つの前記第3の音響信号をキャンセルする第3の合波部と
を備えた踏切警報機。
【請求項5】
請求項4記載の踏切警報機において、
前記故障検出用の第3の音響信号は、故障連絡先の情報を含む音声信号である、
ことを特徴とする踏切警報機。
【請求項6】
踏切遮断時の第1の音源と第2の音源とを有し、前記第1の音源から送出される第1の音響信号と、前記第2の音源から送出される第2の音響信号とを合成して出力する踏切警報器の故障検出方法において、
前記第1の音源または前記第2の音源から送出される音響信号とは異なる音響信号である故障検出用の第3の音響信号を第3の音源から送出し、
前記第3の音響信号を分岐してその一方の音響信号を前記第1の音響信号と重畳し、
他方の第3の音響信号の位相を反転させて前記第2の音響信号と重畳し、
この第3の音響信号が重畳された第1の音響信号と第2の音響信号とを重畳して位相が反転する二つの第3の音響信号をキャンセルする
ことを特徴とする踏切警報機の故障検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警報装置、警報装置の故障検出方法および踏切警報機ならびに踏切警報機の故障検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の踏切等に設置される警報装置は、鉄道の安全運行の観点から故障しづらいことが最も重要である。このため、警報装置における踏切警報音発生器は、警報音を送出する音源を少なくとも2系統有する。
【0003】
たとえば、非特許文献1では、2系統の音源で互いに発振周波数を異なるようにし、2系統が共に正常であるときと、いずれか1系統が故障したときとで、警報音が変化するようにしている。
【0004】
また、2系統の音源は同じ音響信号を発生するものとし、1系統のみの場合に比べて信頼性を向上させ、故障の検出は、別途に故障検出用の回路を設ける構成とすることもできる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本国有鉄道規格(JRS22501−1C−13AR6E)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1の警報装置では、警報音の変化によって故障の有無を判断できるのは、所定の訓練を受けた作業員や鉄道乗務員に限定され、踏切周辺の一般人が故障の有無を判断することは難しい。
【0007】
また、警報装置内に、別途に故障検出用の回路を設ける構成では、故障表示手段も別途に設ける必要があり、構成が複雑化する。このとき、故障検出用の回路や故障表示手段についても2系統設けて信頼性を向上させるとすれば、回路構成はさらに複雑化する。
【0008】
本発明は、所定の訓練を受けない一般人であっても故障の有無を認識できると共に、故障の表示のための比較的簡単な回路構成を有する警報装置、警報装置の故障検出方法および踏切警報機ならびに踏切警報機の故障検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の観点は、
第1の音響信号を送出する第1の音源と
、第2の音響信号を送出する第2の音源と、
第1の音響信号および第2の音響信号とは異なる音響信号である故障検出用の第3の音響信号を送出する第3の音源と、第3の音響信号を分岐する分岐部と、分岐された一方の第3の音響信号を第1の音響信号と重畳する第1の合波部と、分岐された他方の第3の音響信号を位相反転させる位相反転部と、位相反転された第3の音響信号を第2の音響信号と重畳する第2の合波部と、第1の合波部の出力と第2の合波部の出力とを合成し位相が反転する二つの第3の音響信号をキャンセルする第3の合波部とを
備えたものである。
【0010】
本発明の第二の観点は、第1の音源と第2の音源とを有し、第1の音源から送出される
第1の音響信号と、第2の音源から送出される
第2の音響信号とを合成して出力する警報装置の故障検出方法において、第1の音源または第2の音源から送出される音響信号とは異なる音響信号である故障検出用の
第3の音響信号を第3の音源から送出
し、第3の音響信号を分岐してその一方の音響信号を第1の音響信号と重畳し、他方の第3の音響信号の位相を反転させて第2の音響信号と重畳し、この第3の音響信号が重畳された第1の音響信号と第2の音響信号とを重畳して位相が反転する二つの第3の音響信号をキャンセルするものである。
【0011】
本発明の第三の観点は、踏切遮断時の警報音の
第1の音響信号を送出する第1の音源と
、踏切遮断時の警報音の第2の音響信号を送出する第2の音源と、
第1の音響信号および第2の音響信号とは異なる音響信号である故障検出用の第3の音響信号を送出する第3の音源と、第3の音響信号を分岐する分岐部と、分岐された一方の第3の音響信号を第1の音響信号と重畳する第1の合波部と、分岐された他方の第3の音響信号を位相反転させる位相反転部と、位相反転された第3の音響信号を第2の音響信号と重畳する第2の合波部と、第1の合波部の出力と第2の合波部の出力とを合成し位相が反転する二つの第3の音響信号をキャンセルする第3の合波部とを備えたものである。
【0012】
本発明の第四の観点は、踏切遮断時の第1の音源と第2の音源とを有し、第1の音源から送出される
第1の音響信号と、第2の音源から送出される
第2の音響信号とを合成して出力する踏切警報器の故障検出方法において、第1の音源または第2の音源から送出される音響信号とは異なる音響信号である故障検出用の
第3の音響信号を第3の音源から送出
し、第3の音響信号を分岐してその一方の音響信号を第1の音響信号と重畳し、他方の第3の音響信号の位相を反転させて第2の音響信号と重畳し、この第3の音響信号が重畳された第1の音響信号と第2の音響信号とを重畳して位相が反転する二つの第3の音響信号をキャンセルするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、所定の訓練を受けない一般人であっても故障の有無を認識できると共に、故障の表示のための比較的簡単な回路構成を有する警報装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係る警報装置のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態に係る警報装置1を
図1〜
図3を参照しながら説明する。警報装置1は、たとえば鉄道の踏切に設置される。警報装置1は、踏切の遮断時に、特定の音響信号「カン、カン、カン、…」等を送出することで、踏切の近傍にいる歩行者や車の運転者の注意を喚起する。
【0016】
警報装置1の全体構成について、
図1を参照しながら説明する。警報装置1は、
図1に示すように、1系および2系の2系統の音響信号発生部11a,11b、故障検出用発振回路12、合波部13、およびスピーカ14を有する。
【0017】
音響信号発生部11aの発振回路21は、連続音である音響信号f1を発振する。変調回路22は、音響信号f1を変調して断続音である音響信号f1aを生成する。増幅回路23の前段にある合波器24は、変調回路22で生成された音響信号f1aと故障検出用発振回路12が発振する所定の音響信号f3とを合波して音響信号(f1a+f3)を生成する。音響信号(f1a+f3)は、増幅回路23で増幅されて合波部13に出力される。
【0018】
音響信号発生部11bの発振回路31は、連続音である音響信号f2を発振する。変調回路32は、音響信号f2を変調して断続音である音響信号f2aを生成する。増幅回路33の前段にある合波器36は、変調回路32で生成された音響信号f2aと故障検出用発振回路12が発振する音声信号f3の位相が位相反転部35により反転した音響信号fr3とを合波して音響信号(f2a+fr3)を生成する。音響信号(f2a+fr3)は、増幅部33で増幅されて合波部13に出力される。
【0019】
合波部13は、音響信号発生部11a,11bからそれぞれ出力される音響信号を合波する。スピーカ14は、合波部13から送出される音響信号を空中に送出する。
【0020】
次に、音響信号発生部11aおよび音響信号発生部11bの構成について、
図1を参照しながら説明する。音響信号発生部11aは、第1の音源としての発振回路21、変調回路22および増幅回路23を有している。発振回路21は、連続音である音響信号f1を発振し、変調回路22に送出する。
【0021】
変調回路22は、発振回路21から送出された連続音である音響信号f1に変調を施すことで、たとえば「カン、カン、カン、…」などの断続音の音響信号f1aを生成する。さらに合波器24は、変調した音響信号f1aと故障検出用発振回路12から送出された音響信号f3とを重畳して音響信号(f1a+f3)を生成し、増幅回路23に送出する。
【0022】
増幅回路23は、合波器24から送出された音声信号(f1a+f3)を増幅し、合波部13に送出する。
【0023】
音響信号発生部11bは、第2の発振回路としての発振回路31と、変調回路32、増幅回路33、分岐部34、および位相反転部35を有する。発振回路31は、連続音である音響信号f2を発振し、変調回路32に送出する。分岐部34は、故障検出用発振回路12から送出される音響信号f3を2つに分岐し、位相反転部35および音響信号発生部11aの合波器24に送出する。位相反転部35は、分岐部34で分岐された音響信号f3の位相を反転させて音響信号fr3とし、合波器36に送出する。
【0024】
変調回路32は、発振回路31から送出された連続音である音響信号f2に変調を施すことで、たとえば「カン、カン、カン、…」などの断続音である音響信号f2aを生成する。さらに合波器36は、変調した音響信号f2aと位相反転部35から送出された位相が反転された音響信号fr3とを重畳して音響信号(f2a+fr3)を生成し、増幅回路33に送出する。
【0025】
増幅回路33は、合波器36から送出された音響信号(f2a+fr3)を増幅し、合波部13に送出する。
【0026】
次に、警報装置1の動作について、
図1を参照しながら説明する。発振回路21は、音響信号f1を送出し、発振回路31は、音響信号f2を送出し、故障検出用発振回路12は、音響信号f3を送出する。このとき、f1=f2≠f3であってもf1≠f2≠f3であってもよい。
【0027】
分岐部34は、故障検出用発振回路12から送出される音響信号f3を2つに分岐する。位相反転部35は、分岐部34で分岐された音響信号f3の一方の位相を反転させて音響信号fr3とする。
【0028】
合波器24は、分岐部34で分岐された音響信号f3の一方を変調回路22から送出される音響信号f1aに重畳して音響信号(f1a+f3)を生成する。
【0029】
合波器36は、位相反転部35で位相が反転された音響信号fr3を変調回路32から送出される音響信号f2aに重畳して音響信号(f2a+fr3)を生成する。
【0030】
上述したように、音響信号発生部11aにおいて、音響信号f1aと音響信号f3が重畳された音響信号(f1a+f3)が増幅されて、合波部13に送出される。音響信号発生部11bにおいて、音響信号f2aと位相が反転した音響信号fr3が重畳された音響信号(f2a+fr3)が増幅されて、合波部13に送出される。合波部13において、音響信号(f1a+f3)と音響信号(f2a+fr3)とが合波される。
【0031】
音響信号f3と音響信号fr3とは、互いに逆位相になっている。すなわち合波部13で音響信号(f1a+f3)と音響信号(f2a+fr3)が合波されると、音響信号f3と音響信号fr3が相殺されて合波部13から送出されない。すなわちスピーカ14からは音響信号(f1a+f2a)が出力される。なお音響信号発生部11aの増幅回路23と音響信号発生部11bの増幅回路33の増幅率は、音響信号f3と音響信号fr3が合成されることによって相殺される増幅率となっている。
【0032】
したがって、音響信号発生部11a、音響信号発生部11bが正常に作動しているときには、合波部13からは音響信号(f1a+f2a)のみがスピーカ14に送出される。これにより、警報装置1が正常に作動しているときには、スピーカ14からは音響信号f1と音響信号f2とが合波された音響信号(f1a+f2a)が空中に送出される。なお、音響信号(f1a+f2a)は、たとえば、「カン、カン、カン、…」などの警報音である。
【0033】
ここで、仮に、音響信号発生部11aまたは音響信号発生部11bのいずれか一方が故障した場合を想定する。たとえば、音響信号発生部11aが故障した場合には、合波部13には、音響信号(f2a+fr3)のみが入力される。このとき、音響信号fr3を相殺する相手となる音響信号f3が合波部13に入力されないため、音響信号(f2a+fr3)がそのままスピーカ14から空中に送出される。
【0034】
同様に、音響信号発生部11bが故障した場合には、合波部13には、音響信号(f1a+f3)のみが入力される。このとき、音響信号f3を相殺する相手となる音響信号fr3が合波部13に入力されないため、音響信号(f1a+f3)がそのままスピーカ14から空中に送出される。
【0035】
ここで、変調回路22と変調回路32で変調された音響信号f1aと音響信号f2aは、共に警報音であり、たとえば踏切遮断時に耳にする「カン、カン、カン、…」という音である。よって、音響信号(f1a+f3)または音響信号(f2a+fr3)を耳にした人には、「カン、カン、カン、…」という警報音と共に、故障検出用発振回路12から送出される異なる音響信号が聞こえることになる。なお、音響信号f1a,f2aは、f1a=f2aであってもよいし、非特許文献1のように、f1a≠f2aであってもよい。これに対し、音響信号f3は、故障であることを人に報知するための音響信号である。音響信号f3の実施例1〜5を以下に説明する。
【0036】
(実施例1)
上述したように、変調された音響信号f1a,f2aは、「カン、カン、カン、…」などの一般的な警報音であるので、音響信号f3は、これとは全く異なる種類の音にすることにより、警報装置1の故障を人に気付かせることができる。たとえば、音響信号f3を「ブー」という連続的なブザー音にしたり、または、「ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、…」という短い周期の高音にすることで、これを聞いた人は、明らかにいつもと違う音であることに気付くことができる。さらに、警報装置1の近傍に、これらの異常な音が警報装置1の故障を表すものであることと、これらの異常な音を聞いた人に連絡を促すための連絡先を書いた看板を設置したほうがよい。
【0037】
(実施例2)
音響信号f3を故障時の連絡先情報を含めた音声信号とすることにより、実施例1のような連絡先を書いた看板を不要とすることができる。たとえば、音響信号f3を「警報装置に故障が発生しました。○○○○番に電話をかけてください。」などとする。
【0038】
(実施例3)
音響信号f3を故障時の連絡先の電話番号に相当するDTMF(Dual-Tone Multi-Frequency)信号を含むものとする。たとえば、音響信号f3を「警報装置に故障が発生しました。お近くの鉄道電話機を警報装置に近づけてください。ピッ、ポッ、パッ…」などとする。これによれば、警報装置1の近傍に立つ人が警報装置1の近傍にある鉄道電話機のマイクでDTMF信号を集音することで、連絡先に電話をかけることができる。
【0039】
(実施例4)
実施例4を、
図2を参照しながら説明する。
図2は、実施例4の警報装置の要部構成図であり、合波部13の前段の構成は省略してある。実施例4は、
図2に示すように、合波部13から送出される音響信号を分岐部40によって分岐し、一方をフィルタ部41に入力する。フィルタ部41は、音響信号f3またはfr3を選択的に通過させる帯域通過フィルタを有する。すなわち音響信号f3と音響信号fr3とは、互いに逆位相ではあるが、周波数は同じであるので、帯域通過フィルタは、音響信号f3およびfr3については、いずれも通過させることができる。
【0040】
このようにしてフィルタ部41を通過した音響信号f3またはfr3は、パイロットランプ42に送出される。パイロットランプ42は、音響信号f3またはfr3の電力で点灯するものであり、警報装置1の近傍にいる人は、パイロットランプ42の点灯によって、警報装置1の故障を認識することができる。さらに、警報装置1の近傍に、パイロットランプ42の点灯が警報装置1の故障を表すものであることと、パイロットランプ42の点灯に気付いた人に連絡を促すための連絡先を書いた看板を設置したほうがよい。なお、音響信号f3またはfr3の電力がパイロットランプ42を点灯させるには小さい場合には、フィルタ部41に電力増幅器を設けてもよい。あるいは、音響信号f3またはfr3の電力がパイロットランプ42を点灯させるには小さい場合には、フィルタ部41にパイロットランプ42を点灯させるためのバッテリまたは外部電源を設置し、音響信号f3またはfr3の入力を契機としてパイロットランプ42にバッテリまたは外部電源から電力を供給する構成としてもよい。
【0041】
(実施例5)
実施例5を、
図3を参照しながら説明する。
図3は、実施例5の警報装置の要部構成図であり、合波部13の前段の構成は省略してある。実施例5は、
図3に示すように、合波部13から送出される音響信号を分岐部40によって分岐し、一方をフィルタ部41aに入力する。フィルタ部41aは、音響信号f3またはfr3を選択的に通過させる帯域通過フィルタと、音響信号f3またはfr3が帯域通過フィルタを通過したことを、通信回線43を介して遠隔地にある集中監視センタ44に通知する通信機能とを有する。すなわち、音響信号f3またはfr3がフィルタ部41aを通過する状況とは、
図1に示す音響信号発生部11aまたは音響信号発生部11bのいずれか一方に故障が発生した状況なので、フィルタ部41aは、故障情報を集中監視センタ44に送信することができる。
【0042】
これにより、警報装置1から離れた場所に設定された集中監視センタ44で、警報装置1の故障情報を受信することができる。なお、通信回線43は、専用回線の他に、電話回線やインターネットなどの公衆ネットワークを利用することができる。あるいは、通信回線43は、無線回線であってもよい。通信回線43が無線回線である場合には、集中監視センタ44の他にも走行中の鉄道車両の運転室内等にフィルタ部41aから送信される故障情報を表示することができる。
【0043】
(その他の実施の形態)
上述した実施の形態は、その要旨を逸脱しない限りにおいて、様々に変更が可能である。たとえば、
図1の例では、音響信号発生部11b側に位相反転部35を設けたが、位相反転部35は音響信号発生部11a側に設けてもよい。あるいは、位相反転部35の機能を故障検出用発振回路12の内部に設け、故障検出用発振回路12から音響信号f3と音響信号fr3とが出力されるようにしてもよい。
【0044】
また、上述の実施の形態では、1対の音響信号発生部11aおよび音響信号発生部11bを有する警報装置1を示したが、音響信号発生部11aおよび音響信号発生部11bの対をさらに有し、各対間を並列に接続する構成としてもよい。この場合、各対毎に故障検出用発振回路12を有してもよいし、各対共通に1個の故障検出用発振回路12を有してもよい。
【0045】
また、
図2に示すパイロットランプ42に代えて、あるいは、パイロットランプ42と併せて回転灯を設置してもよい。または、
図2に示すパイロットランプ42に代えて、あるいは、パイロットランプ42と併せて電光掲示板を設置し、その電光掲示板に、故障時の連絡先情報等を表示するようにしてもよい。その他にもパイロットランプ42に代えて、あるいは、パイロットランプ42と併せて電気信号により作動する様々な機器を設けることができる。たとえば、このような機器として、電気信号により発火する発炎筒や信号赤炎筒などでもよい。
【0046】
上述の実施の形態では、踏切の警報装置1として説明したが、警報装置1の適用範囲を踏切に限定するものではない。たとえば視覚障害者用の道路上の信号機の音響信号発生装置として警報装置1の構成を適用してもよい。あるいは、自治体の防災警報装置やダムの放水警報装置として警報装置1の構成を適用してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…警報装置、11a,11b…音響信号発生部、21…発振回路(第1の音源)、31…発振回路(第2の音源)、22,32…変調回路(重畳する手段)、23,33…増幅回路、13…合波部、14…スピーカ、12…故障検出用発振回路(第3の音源)、34…分岐部、35…位相反転部