特許第6133771号(P6133771)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133771
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】ガス混合装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/19 20160101AFI20170515BHJP
   F02M 26/66 20160101ALI20170515BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20170515BHJP
   F16K 27/02 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   F02M26/19 331
   F02M26/66
   F02M35/10 311E
   F16K27/02
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-271966(P2013-271966)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-124761(P2015-124761A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207791
【氏名又は名称】大豊工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 洸嗣
(72)【発明者】
【氏名】井口 慎吾
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−160155(JP,A)
【文献】 特開平08−319900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 47/08−47/10
F02D 13/00−28/00
F02M 26/00−26/74、35/00−35/16
F16K 1/00− 1/54、27/00−27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
新気ガスが流れる吸気通路と、該吸気通路に排気ガスを導入すると共に下流端に合流口を有するEGR通路と、を有し、該排気ガスの流量を調整可能なポペット弁が配置されるハウジングと、
該合流口と該吸気通路との間に配置され、該ポペット弁の弁軸が挿通される弁軸挿通孔と、該吸気通路に開口する導入孔と、を有する隔壁部と、
を備え、
該吸気通路と該EGR通路とは、互いに交差する方向に延在しており、
該EGR通路の通路長方向から見て、該弁軸挿通孔および該導入孔は、該合流口の径方向内側に配置されており、
前記隔壁部は、前記ハウジングと別体であり、
前記弁軸挿通孔および前記導入孔は、該隔壁部に穿設されているガス混合装置。
【請求項2】
前記隔壁部は、前記吸気通路に開口する複数の分流孔を有し、
前記EGR通路の通路長方向から見て、複数の該分流孔は、前記合流口の径方向外側に配置されている請求項1に記載のガス混合装置。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記吸気通路と前記隔壁部とが径方向内側に収容される収容室を有し、
前記EGR通路は、該収容室に径方向外側から接続される請求項1または請求項2に記載のガス混合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGR(Exhaust Gas Recirculation)通路を流れる排気ガスを、吸気通路を流れる新気ガスに、混合するガス混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のEGR拡散ユニットは、吸排気システムにおいて、排気ガスを新気ガスに混合する際に用いられている。EGR拡散ユニットは、吸気通路と、外周通路と、を備えている。吸気通路は、外周通路の径方向内側に配置されている。吸気通路と、外周通路と、は隔壁により仕切られている。隔壁には、複数のEGR出口が配置されている。外周通路には、高圧EGR流路から、排気ガスが導入される。導入された排気ガスは、複数のEGR出口を介して、吸気通路に流れ込む。排気ガスは、吸気通路を流れる新気ガスに、混合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−64163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、EGR拡散ユニットは、高圧EGR流路の高圧EGR調整弁から、独立して配置されている。このため、吸排気システムを構成する装置数が多い。すなわち、吸排気システムの構成が複雑である。
【0005】
また、吸気通路を流れる新気ガスのうち、径方向外側部分の新気ガスは、比較的簡単にEGR出口から導入される排気ガスに、混合される。しかしながら、吸気通路を流れる新気ガスのうち、径方向中心部分の新気ガスは、EGR出口から導入される排気ガスに、混合されにくい。すなわち、排気ガスは、隔壁つまり吸気通路の内周面に開設されたEGR出口から、吸気通路に導入される。このため、排気ガスは、径方向中心部分の新気ガスにまで、到達しにくい。
【0006】
また、排気ガスは、複数のEGR出口から、吸気通路に導入される。ここで、複数のEGR出口のうち、高圧EGR通路の軸線上に配置されているEGR出口からは、本来、比較的流速の速い排気ガスを、吸気通路に導入することができる。流速の速い排気ガスであれば、吸気通路の径方向中心部分の新気ガスに、到達しやすい。
【0007】
しかしながら、複数のEGR出口の流路抵抗は、高圧EGR通路に近いほど大きくなるように、設定されている。すなわち、複数のEGR出口のうち、最も流路抵抗が大きいのは、高圧EGR通路の軸線上に配置されているEGR出口である。このため、流速の速い排気ガスを吸気通路に導入することは困難である。
【0008】
そこで、本発明は、吸排気システムの構成を簡単にすることが可能で、排気ガスが吸気通路の径方向中心部分付近の新気ガスにまで到達しやすいガス混合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するため、本発明のガス混合装置は、新気ガスが流れる吸気通路と、該吸気通路に排気ガスを導入すると共に下流端に合流口を有するEGR通路と、を有し、該排気ガスの流量を調整可能なポペット弁が配置されるハウジングと、該合流口と該吸気通路との間に配置され、該ポペット弁の弁軸が挿通される弁軸挿通孔と、該吸気通路に開口する導入孔と、を有する隔壁部と、を備え、該吸気通路と該EGR通路とは、互いに交差する方向に延在しており、該EGR通路の通路長方向から見て、該弁軸挿通孔および該導入孔は、該合流口の径方向内側に配置されていることを特徴とする。
【0010】
ここで、「新気ガス」とは、本発明のガス混合装置から排気ガスが合流する前のガスをいう。例えば、本発明のガス混合装置の上流側に別のガス混合装置があり、当該ガス混合装置から既に新気ガスに排気ガスが混合されている場合は、排気ガス混合済みの新気ガスが、本発明のガス混合装置における新気ガスに相当する。
【0011】
本発明のガス混合装置と、排気ガスの流量を調整するEGRバルブアセンブリと、はハウジングを共用している。すなわち、本発明のガス混合装置とEGRバルブアセンブリとは、ハウジングを介して、一体化されている。このため、ガス混合装置とEGRバルブアセンブリとが別体の場合と比較して、吸排気システムを構成する装置数が少なくなる。したがって吸排気システムの構成を簡単にすることができる。
【0012】
また、本発明のガス混合装置によると、EGR通路の通路長方向から見て、導入孔が合流口の径方向内側に配置されている。言い換えると、吸気通路から見て、導入孔と、合流口と、が直列に並んでいる。このため、導入孔を介して吸気通路に流れ込む排気ガスは、失速しにくい。したがって、排気ガスが、吸気通路の径方向中心部分付近の新気ガスにまで到達しやすい。よって、排気ガスと、新気ガスと、を充分に混合することができる。
【0013】
また、本発明のガス混合装置によると、ポペット弁の弁軸に沿って流れる流速の速い排気ガスを、導入孔から吸気通路に導入することができる。このため、排気ガスと、新気ガスと、を充分に混合することができる。
【0014】
また、排気ガスは、新気ガスに対して、高温である。このため、排気ガスが混合された新気ガスには、温度ムラが発生しやすい。特に、吸気通路の径方向外側部分の新気ガス(高温)と、吸気通路の径方向中心部分付近の新気ガス(低温)と、の間には、大きな温度差が発生しやすい。この点、本発明のガス混合装置によると、排気ガスが、吸気通路の径方向中心部分付近の新気ガスにまで到達しやすい。したがって、排気ガスが混合された新気ガスに、温度ムラが発生しにくくなる。
【0015】
(1−1)上記(1)の構成において、前記吸気通路と前記EGR通路とは、互いに直交する方向に延在している構成とする方がよい。本構成によると、EGR通路の延在方向が、吸気通路の径方向中心を向いている。このため、排気ガスが、吸気通路の径方向中心部分付近の新気ガスにまで到達しやすい。したがって、排気ガスと、新気ガスと、を充分に混合することができる。
【0016】
(2)上記(1)の構成において、前記隔壁部は、前記吸気通路に開口する複数の分流孔を有し、前記EGR通路の通路長方向から見て、複数の該分流孔は、前記合流口の径方向外側に配置されている構成とする方がよい。
【0017】
本構成によると、排気ガスは、導入孔および複数の分流孔を介して、EGR通路から吸気通路に導入される。ここで、EGR通路の通路長方向から見て、複数の分流孔は、合流口の径方向外側に配置されている。このため、導入孔から吸気通路に導入される排気ガスと比較して、分流孔から吸気通路に導入される排気ガスは、流速が遅い。したがって、本構成によると、導入孔経由の高速の排気ガスを、吸気通路の径方向中心部分付近の新気ガスに、混合することができる。並びに、分流孔経由の低速の排気ガスを、吸気通路の径方向外側部分の新気ガスに、混合することができる。よって、排気ガスと、新気ガスと、を充分に混合することができる。
【0018】
また、本構成によると、分流孔が単一の場合と比較して、排気ガスを小さな塊状に分割して、吸気通路に導入することができる。このため、新気ガスに対する排気ガスの伝熱面積が大きくなる。したがって、排気ガスが混合された新気ガスに、温度ムラが発生しにくくなる。
【0019】
(2−1)上記(2)の構成において、前記吸気通路の上流側の方が下流側よりも、該吸気通路に対する前記分流孔の開口面積が大きい構成とする方がよい。ここで、「開口面積」とは、上流側または下流側に、複数の分流孔が配置されている場合は、複数の分流孔の吸気通路に対する開口面積の総和をいう。
【0020】
吸気通路においては、上流側の分流孔から導入された排気ガスの方が、下流側の分流孔から導入された排気ガスよりも、新気ガスとの接触時間が長くなる。このため、上流側の分流孔から導入された排気ガスの方が、下流側の分流孔から導入された排気ガスよりも、新気ガスと混合されやすい。
【0021】
この点、本構成によると、吸気通路の上流側の分流孔の方が下流側の分流孔よりも、排気ガスの導入量が大きくなる。このため、排気ガスの導入量が大きいほど、新気ガスとの接触時間を長くすることができる。したがって、排気ガスと、新気ガスと、を充分に混合することができる。また、排気ガスが混合された新気ガスに、温度ムラが発生しにくくなる。
【0022】
(3)上記(1)または(2)の構成において、前記ハウジングは、前記吸気通路と前記隔壁部とが径方向内側に収容される収容室を有し、前記EGR通路は、該収容室に径方向外側から接続される構成とする方がよい。本構成によると、隔壁部が、収容室つまりハウジングの内部に収容されている。このため、外部からの衝撃から、隔壁部を保護することができる。
【0023】
(4)上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記隔壁部は、前記ハウジングと別体であり、前記弁軸挿通孔および前記導入孔は、該隔壁部に穿設されている構成とする方がよい。本構成によると、隔壁部に簡単に弁軸挿通孔および導入孔を配置することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、吸排気システムの構成を簡単にすることが可能で、排気ガスが吸気通路の径方向中心部分付近の新気ガスにまで到達しやすいガス混合装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態であるガス混合装置が配置される吸排気システムの模式図である。
図2】同ガス混合装置の斜視断面図である。
図3図2の隔壁部付近の吸気通路方向断面図である。
図4図2の隔壁部付近の弁軸方向断面図である。
図5図2の隔壁部付近の透過図である。
図6図5のハウジングと隔壁部との分解図である。
図7】隔壁部の内周面の周方向展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明のガス混合装置の実施の形態について説明する。
【0027】
<吸排気システムの構成>
まず、本実施形態のガス混合装置が配置される吸排気システムの構成について説明する。図1に、本実施形態のガス混合装置が配置される吸排気システムの模式図を示す。図1に示すように、吸排気システム9は、吸気系90と、排気系91と、HPL(High Pressure Loop)−EGR系92と、LPL(Low Pressure Loop)−EGR系93と、を備えている。
【0028】
吸気系90は、吸気側ターボバイパスバルブ900と、インタークーラー切換バルブ901と、インタークーラー902と、スロットルバルブ903と、を備えている。吸気系90は、エンジン94に、新気ガスG3を供給している。
【0029】
排気系91は、排気側ターボバイパスバルブ910と、排気ブレーキバルブ911と、DPF(Diesel Particulate Filter)912と、排気絞りバルブ913と、を備えている。排気系91は、エンジン94から、排気ガスG2を排出している。吸気系90と排気系91との間には、第一ターボチャージャー95と、第二ターボチャージャー96と、が配置されている。
【0030】
HPL−EGR系92は、エンジン94の排気側と、吸気系90(具体的にはスロットルバルブ903下流側)と、の間に配置されている。HPL−EGR系92は、EGRクーラー切換バルブ920と、HPL−EGRバルブ921と、EGRクーラー922と、を備えている。HPL−EGR系92は、排気ガスG2の一部を吸気系90に戻している。
【0031】
LPL−EGR系93は、排気系91(具体的にはDPF912の下流側)と、吸気系90(具体的には第二ターボチャージャー96の上流側)と、の間に配置されている。LPL−EGR系93は、LPL−EGRバルブ931と、EGRクーラー932と、を備えている。LPL−EGR系93は、排気ガスG2の一部を吸気系90に戻している。
【0032】
上記吸排気システム9における複数のバルブのうち、LPL−EGRバルブ931付近に、本実施形態のガス混合装置が配置されている。
【0033】
<ガス混合装置の構成>
次に、本実施形態のガス混合装置の構成について説明する。図2に、本実施形態のガス混合装置の斜視断面図を示す。図3に、図2の隔壁部付近の吸気通路方向断面図を示す。図4に、図2の隔壁部付近の弁軸方向断面図を示す。図5に、図2の隔壁部付近の透過図を示す。図6に、図5のハウジングと隔壁部との分解図を示す。図7に、隔壁部の内周面の周方向展開図を示す。
【0034】
図2図7に示すように、本実施形態のガス混合装置1は、ハウジング2と、隔壁部3と、吸気管70、71と、を備えている。なお、ハウジング2は、後述するEGRバルブアセンブリ8(図1に示すLPL−EGRバルブ931に対応)のハウジングと共用化されている。
【0035】
[ハウジング2]
ハウジング2は、収容室20と、EGR通路21と、スプリング収容室22と、を備えている。収容室20は、前後方向に延在している。収容室20の径方向断面は、真円状を呈している。収容室20の後端には、段差20aが形成されている。図4に示すように、収容室20の内周面の上側部分には、径方向内側に張り出す凸部20bが形成されている。また、収容室20の後側部分の内周面の上側部分からは、ボス部20cが突設されている。ボス部20cの径方向内側には、後述するEGRバルブアセンブリ8のポペット弁80の弁軸800が、上下方向に移動可能に挿通されている。
【0036】
収容室20の内部には、吸気通路202が配置されている。吸気通路202は、前後方向に延在している。吸気通路202の径方向断面は、真円状を呈している。吸気通路202は、後述する隔壁部3の径方向内側に配置されている。吸気通路202の前端(軸方向一端、上流端)には、新気ガス流入口200が配置されている。新気ガス流入口200には、後述する吸気管70から、新気ガスG1が流入する。一方、吸気通路202の後端(軸方向他端、下流端)には、新気ガス流出口201が配置されている。新気ガス流出口201からは、排気ガスG2が混合された新気ガス(新気ガスG1と排気ガスG2との混合ガス)G3が流出する。
【0037】
EGR通路21は、上下方向に延在している。EGR通路21の径方向断面は、真円状を呈している。EGR通路21は、収容室20から、下側に分岐している。EGR通路21の下端(軸方向一端、上流端)には、排気ガス流入口210が配置されている。排気ガス流入口210は、図1に示すLPL−EGR系93の、EGRクーラー932の下流側に接続されている。排気ガス流入口210には、排気ガスG2が流入する。一方、EGR通路21の上端(軸方向他端、下流端)には、合流口211が配置されている。図3図5に示すように、合流口211は、収容室20に、下側(径方向外側)から開口している。スプリング収容室22は、収容室20の上側に配置されている。図2に示すように、スプリング収容室22には、後述するEGRバルブアセンブリ8のスプリング82が収容されている。
【0038】
[吸気管70、71]
図2図3図5に示すように、吸気管70は、ハウジング2の前側に配置されている。吸気管70は、図1に示す吸気系90の、吸気口930の下流側に接続されている。吸気管70の内部には、吸気通路700が形成されている。吸気通路700は、前後方向に延在している。吸気通路700の径方向断面は、真円状を呈している。吸気通路700は、新気ガス流入口200に連通している。
【0039】
図2図3図5に示すように、吸気管71は、ハウジング2の後側に配置されている。吸気管71は、図1に示す吸気系90の、第二ターボチャージャー96の上流側に接続されている。吸気管71の内部には、吸気通路710が形成されている。吸気通路710は、前後方向に延在している。吸気通路710の径方向断面は、真円状を呈している。吸気通路710は、新気ガス流出口201に連通している。
【0040】
[隔壁部3]
図2図6に示すように、隔壁部3は、金属製であって、円筒状を呈している。隔壁部3は、収容室20の内部に配置されている。隔壁部3は、合流口211を上側から覆っている。隔壁部3は、合流口211と吸気通路202とを仕切っている。隔壁部3の後端は、段差20aに当接している。当該当接により、収容室20に対する隔壁部3の前後方向位置が決定される。図4に示すように、隔壁部3の外周面の上側部分には、径方向外側に張り出す凸部3bが形成されている。凸部3bは、ハウジング2の凸部20bと当接している。当該当接により、収容室20に対する隔壁部3の径方向位置が決定される。凸部3bには、図7に示すように、半円状の切欠部3aが凹設されている。切欠部3aは、ボス部20cの外周面の前半部分に当接している。
【0041】
図7に示すように、隔壁部3には、合計10個の分流孔30dと、合計6個の分流孔30eと、合計3個の導入孔32と、弁軸挿通孔31と、が穿設されている。分流孔30d、30e、導入孔32は、各々、EGR通路21と、吸気通路202と、を連通している。分流孔30d、30e、導入孔32については、後で詳しく説明する。弁軸挿通孔31には、後述するEGRバルブアセンブリ8のポペット弁80の弁軸800が、上下方向に移動可能に挿通されている。
【0042】
<EGRバルブアセンブリの構成>
次に、本実施形態のガス混合装置とハウジングを共用するEGRバルブアセンブリの構成について簡単に説明する。図2に示すように、EGRバルブアセンブリ8は、ガス混合装置1と共用のハウジング2と、ポペット弁80と、弁座81と、スプリング82と、モータ83と、を備えている。
【0043】
弁座81は、EGR通路21の合流口211の下側に配置されている。ポペット弁80は、弁軸800と、弁体801と、を備えている。弁体801は、弁座81に対して、下側から、着座、離座可能である。弁軸800は、弁体801の上面から上側に突設されている。弁軸800は、上下方向に延在している。弁軸800は、スプリング収容室22からEGR通路21まで、収容室20を径方向に横切って、延在している。弁軸800の上端には、フランジ部800aが配置されている。スプリング82は、ハウジング2のスプリング収容室22の底面と、弁軸800のフランジ部800aと、の間に介装されている。スプリング82は、弁軸800、つまりポペット弁80を、上側に付勢している。モータ83は、スプリング収容室22を上側から覆っている。モータ83は、ギア(図略)と、モータ側シャフト830と、を備えている。モータ83は、ギアを回転駆動する。ギアは、モータ側シャフト830を、上下方向に往復動させる。モータ側シャフト830の下端は、弁軸800の上端に、当接している。
【0044】
閉弁状態から図2に示す開弁状態に切り換える場合は、モータ83を駆動し、スプリング82の付勢力に抗して、弁軸800を下降させる。弁体801は、弁座81から離座する。一方、図2に示す開弁状態から閉弁状態に切り換える場合は、モータ83を停止し、スプリング82の付勢力により、弁軸800を上昇させる。弁体801は、弁座81に着座する。
【0045】
<分流孔、導入孔について>
次に、本実施形態のガス混合装置の分流孔30d、30e、導入孔32について説明する。図4に示すように、前側から見て、収容室20の径方向中心(吸気通路202の径方向中心、隔壁部3の径方向中心)A1を通る上下方向直線、つまり合流口211の径方向中心L1に対して、分流孔30d、30eは、左右対称に配置されている。
【0046】
図7に示すように、隔壁部3の内周面の展開図において、収容室20の径方向中心A1に対して、分流孔30d、30eは、左右対称に配置されている。すなわち、隔壁部3の下端を0°位置として、前側から見て時計回り方向に角度が進行する場合、90°位置を経由した場合の0°位置から180°位置までの構成(時計回り)と、270°位置を経由した場合の0°位置から180°位置までの構成(反時計回り)と、は左右対称である。
【0047】
図7に示すように、分流孔30dの径方向断面は、真円状を呈している。10個の分流孔30dは、周方向および前後方向に並んでいる。分流孔30eの径方向断面は、真円状を呈している。分流孔30eは、分流孔30dよりも、小径である。6個の分流孔30dは、周方向および前後方向に並んでいる。
【0048】
図4に示すように、前側から見て、収容室20の径方向中心A1を通る上下方向直線、つまり合流口211の径方向中心L1に対して、導入孔32は、左右対称に配置されている。図4図7に示すように、3個の導入孔32は、上側(吸気通路202の径方向内側)から見て、合流口211の径方向内側に配置されている。
【0049】
<ガス混合装置の動き>
次に、本実施形態のガス混合装置の動きについて説明する。図2に示す開弁状態においては、ポペット弁80の弁体801が、弁座81から離間している。このため、弁体801と弁座81との隙間を介して、EGR通路21から吸気通路202に、排気ガスG2が導入される。
【0050】
具体的には、図4図7に示すように、排気ガスG2は、排気ガス流入口210から、EGR通路21、合流口211、分流孔30d、30e、導入孔32を介して、吸気通路202に流れ込む。この際、排気ガスG2は、分流孔30d、30e、導入孔32により、複数の流れに分流される。
【0051】
すなわち、図7に示すように、隔壁部3の前縁付近からは、10個の大径の分流孔30dを介して、排気ガスG2が吸気通路202に流れ込む。また、隔壁部3における分流孔30dの後側部分からは、6個の小径の分流孔30eを介して、排気ガスG2が吸気通路202に流れ込む。また、隔壁部3における弁軸挿通孔31の周囲からは、3個の導入孔32を介して、排気ガスG2が吸気通路202に流れ込む。このように、排気ガスG2は、複数の流れに分流して、吸気通路202に流れ込む。
【0052】
流れ込んだ排気ガスG2は、吸気通路202において、新気ガスG1と合流する。排気ガスG2が混合された新気ガスG3は、新気ガス流出口201から、吸気管71の吸気通路710に流出する。新気ガスG3は、図1に示す吸気系90を介して、エンジン94に導入される。
【0053】
<作用効果>
次に、本実施形態のガス混合装置の作用効果について説明する。図2に示すように、本実施形態のガス混合装置1と、EGRバルブアセンブリ8と、はハウジング2を共用している。すなわち、ガス混合装置1とEGRバルブアセンブリ8とは、ハウジング2を介して、一体化されている。このため、ガス混合装置1とEGRバルブアセンブリ8とが別体の場合と比較して、図1に示す吸排気システム9を構成する装置数が少なくなる。したがって吸排気システム9の構成を簡単にすることができる。
【0054】
また、本実施形態のガス混合装置1によると、図7に示すように、上側(EGR通路21の通路長方向の下流側)から見て、複数の導入孔32が合流口211の径方向内側に配置されている。言い換えると、吸気通路202から見て、複数の導入孔32と、合流口211と、が上下方向に直列に並んでいる。このため、複数の導入孔32を介して吸気通路202に流れ込む排気ガスG2は、失速しにくい。したがって、排気ガスG2が、吸気通路202の径方向中心部分付近の新気ガスG1にまで到達しやすい。よって、排気ガスG2と、新気ガスG1と、を充分に混合することができる。
【0055】
また、本実施形態のガス混合装置1によると、図4に示すように、ポペット弁80の弁軸800に沿って流れる流速の速い排気ガスG2を、流れ方向(下側から上側に向かう方向)を変えることなく、複数の導入孔32から吸気通路202に導入することができる。このため、排気ガスG2と、新気ガスG1と、を充分に混合することができる。
【0056】
また、排気ガスG2は、新気ガスG1に対して、高温である。このため、排気ガスG2が混合された新気ガスG3には、温度ムラが発生しやすい。特に、吸気通路202の径方向外側部分の新気ガスG3(高温)と、吸気通路202の径方向中心部分付近の新気ガスG3(低温)と、の間には、大きな温度差が発生しやすい。この点、本実施形態のガス混合装置1によると、排気ガスG2が、吸気通路202の径方向中心部分付近の新気ガスG1にまで到達しやすい。したがって、排気ガスG2が混合された新気ガスG3に、温度ムラが発生しにくくなる。
【0057】
また、本実施形態のガス混合装置1によると、図3図4に示すように、吸気通路202とEGR通路21とは、互いに直交する方向に延在している。すなわち、EGR通路21の延在方向が、吸気通路202の径方向中心を向いている。このため、排気ガスG2が、吸気通路202の径方向中心部分付近の新気ガスG1にまで到達しやすい。したがって、排気ガスG2と、新気ガスG1と、を充分に混合することができる。
【0058】
また、本実施形態のガス混合装置1によると、図7に示すように、排気ガスG2は、複数の導入孔32、および複数の分流孔30d、30eを介して、EGR通路21から吸気通路202に、導入される。ここで、上側(EGR通路21の通路長方向の下流側)から見て、複数の分流孔30d、30eは、合流口211の径方向外側に配置されている。このため、図4に示すように、複数の分流孔30d、30eから吸気通路202に導入される排気ガスG2は、隔壁部3の外周面に沿って、周方向に迂回する必要がある。したがって、複数の導入孔32から吸気通路202に導入される排気ガスG2と比較して、複数の分流孔30d、30eから吸気通路202に導入される排気ガスG2は、流速が遅くなる。よって、本実施形態のガス混合装置1によると、複数の導入孔32経由の高速の排気ガスG2を、吸気通路202の径方向中心部分付近の新気ガスG1に、混合することができる。並びに、複数の分流孔30d、30e経由の低速の排気ガスG2を、吸気通路202の径方向外側部分の新気ガスG1に、混合することができる。
【0059】
また、本実施形態のガス混合装置1によると、図4図7に示すように、排気ガスG2は、隔壁部3の複数の分流孔30d、30eを介して、EGR通路21から吸気通路202に、導入される。ここで、複数の分流孔30d、30eは、前後方向(吸気通路202の通路長方向)および周方向に分布している。このため、本実施形態のガス混合装置1によると、前後方向および周方向における排気ガスG2の導入量のばらつきを抑制することができる。したがって、排気ガスG2と、新気ガスG1と、を充分に混合することができる。
【0060】
また、排気ガスG2は、新気ガスG1に対して、高温である。このため、排気ガスG2が混合された新気ガスG3には、温度ムラが発生しやすい。この点、本実施形態のガス混合装置1によると、分流孔30d、30eが単一の場合と比較して、排気ガスG2を小さな塊状に分割して、吸気通路202に導入することができる。このため、新気ガスG1に対する排気ガスG2の伝熱面積が大きくなる。したがって、排気ガスG2が混合された新気ガスG1に、温度ムラが発生しにくくなる。
【0061】
また、吸気通路202においては、上流側の分流孔30dから導入された排気ガスG2の方が、下流側の分流孔30eから導入された排気ガスG2よりも、新気ガスG1との接触時間(排気ガスG2が新気ガスG1に接触してから、図1に示すエンジン94に導入されるまでの時間)が長くなる。このため、上流側の分流孔30dから導入された排気ガスG2の方が、下流側の分流孔30eから導入された排気ガスG2よりも、新気ガスG1と混合されやすい。
【0062】
この点、本実施形態のガス混合装置1によると、図7に示すように、前側の方が後側よりも、分流孔30d、30eの開口面積が大きい。すなわち、吸気通路202に対する分流孔30d、30eの開口面積は、「10個の分流孔30dの総和>6個の分流孔30eの総和」となるように、設定されている。このため、吸気通路202に対する排気ガスG2の導入量は、「10個の分流孔30dの総和>6個の分流孔30eの総和」となる。したがって、排気ガスG2の導入量が大きいほど、新気ガスG1との接触時間を長くすることができる。よって、排気ガスG2と、新気ガスG1と、を充分に混合することができる。また、排気ガスG2が混合された新気ガスG3に、温度ムラが発生しにくくなる。
【0063】
また、図4図5に示すように、隔壁部3は、収容室20つまりハウジング2の内部に収容されている。このため、外部からの衝撃から、隔壁部3を保護することができる。また、図6に示すように、隔壁部3は、ハウジング2と別体である。また、弁軸挿通孔31、複数の導入孔32、複数の分流孔30d、30eは、隔壁部3に穿設されている。このため、隔壁部3に簡単に弁軸挿通孔31、複数の導入孔32、複数の分流孔30d、30eを配置することができる。
【0064】
<その他>
以上、本発明のガス混合装置の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0065】
例えば、隔壁部3における分流孔30d、30e、導入孔32の位置、寸法、範囲は特に限定しない。図7に示す、90°位置を経由した場合の0°位置から180°位置までの区間(正方向区間)と、270°位置を経由した場合の0°位置から180°位置までの区間(逆方向区間)と、で分流孔30d、30e、導入孔32の位置、寸法、範囲が異なっていてもよい。例えば、正方向区間だけ、または逆方向区間だけに、分流孔30d、30e、導入孔32を偏在させてもよい。こうすると、吸気通路202に、排気ガスG2の旋回流を形成しやすくなる。このため、排気ガスG2と、新気ガスG1と、を充分に混合することができる。また、複数の分流孔30d、30eを、隔壁部3に、格子状に配置してもよい。また、複数の分流孔30d、30eを、隔壁部3の全体に配置してもよい。
【0066】
また、市販のパンチングメタルの板材を利用して、図6に示す隔壁部3を作製してもよい。すなわち、パンチングメタルの板材を丸めることにより、円筒状の隔壁部3を作製してもよい。こうすると、隔壁部3の製造コストを削減することができる。
【0067】
また、図4図6に示す収容室20の内周面における、分流孔30d、30eに対応する位置に、径方向内側に隆起するスロープ状の規制部を配置してもよい。そして、吸気通路202に対する排気ガスG2の流出方向を、所望の方向(吸気通路202の通路長方向、周方向、径方向のうち、少なくとも一つが含まれる任意の方向)に、配向させてもよい。こうすると、排気ガスG2と、新気ガスG1と、を充分に混合することができる。
【0068】
また、規制部は、吸気通路202の上流側の方が下流側よりも、排気ガスG2の流出方向が周方向を向くように、分流孔30d、30eからの流出方向を規制してもよい。こうすると、吸気通路202の上流側において、主に、排気ガスG2を、新気ガスG1の径方向外側部分に、導入することができる。また、吸気通路202の下流側において、主に、排気ガスG2を、新気ガスG1の径方向中間部分(径方向中心部分と径方向外側部分との間の部分)に、導入することができる。すなわち、吸気通路202の上流側から下流側に亘って、排気ガスG2の導入方向を、段階的に、径方向に振り分けることができる。
【0069】
また、図6に示す隔壁部3を、一体物ではなく、複数の分割体製としてもよい。例えば、後縁の上下方向両端に半円状の切欠部を有する前側隔壁と、前縁の上下方向両端に半円状の切欠部を有する後側隔壁と、を合体させることにより、隔壁部3を作製してもよい。この場合、上端の前後一対の切欠部が合体することにより、ボス部20cの挿通孔が形成される。並びに、下端の前後一対の切欠部が合体することにより、弁軸挿通孔31が形成される。また、前側隔壁を、吸気管70に一体的に形成してもよい。また、後側隔壁を、収容室20の内周面に、一体的に形成してもよい。こうすると、ハウジング2と吸気管70とを組み付けることにより、前側隔壁と、後側隔壁と、を合体させることができる。したがって、ハウジング2と吸気管70との組付と同時に、隔壁部3を設置することができる。
【0070】
また、ガス混合装置1は、EGRバルブアセンブリ8と別体であってもよい。この場合、ハウジング2は、例えば吸気管70、71のような、管状であってもよい。また、この場合、吸気通路202を有する管状のハウジング2の径方向外側に、EGR通路21を有するEGR管を、二重筒状に配置してもよい。そして、ハウジング2の管壁に、隔壁部3を配置してもよい。すなわち、ハウジング2の管壁に、分流孔30d、30e、導入孔32を開設してもよい。また、EGRバルブアセンブリ8に配置されるバルブは、バタフライバルブであってもよい。
【0071】
また、ガス混合装置1は、図1のHPL−EGRバルブ921付近に配置してもよい。この場合は、スロットルバルブ903出側の新気ガスG3が、本発明の「新気ガス」に相当する。また、ガス混合装置1の配置方向(吸気通路202、EGR通路21の延在方向)は特に限定しない。例えば、図2における上側が、下側、前側、後側、右側、左側などであってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1:ガス混合装置。
2:ハウジング、20:収容室、200:新気ガス流入口、201:新気ガス流出口、202:吸気通路、20a:段差、20b:凸部、20c:ボス部、21:EGR通路、210:排気ガス流入口、211:合流口、22:スプリング収容室。
3:隔壁部、3a:切欠部、3b:凸部、30d:分流孔、30e:分流孔、31:弁軸挿通孔、32:導入孔。
70:吸気管、700:吸気通路、71:吸気管、710:吸気通路。
8:EGRバルブアセンブリ、80:ポペット弁、800:弁軸、800a:フランジ部、801:弁体、81:弁座、82:スプリング、83:モータ、830:モータ側シャフト。
9:吸排気システム、90:吸気系、900:吸気側ターボバイパスバルブ、901:インタークーラー切換バルブ、902:インタークーラー、903:スロットルバルブ、91:排気系、910:排気側ターボバイパスバルブ、911:排気ブレーキバルブ、912:DPF、913:排気絞りバルブ、92:HPL−EGR系、920:EGRクーラー切換バルブ、921:HPL−EGRバルブ、922:EGRクーラー、93:LPL−EGR系、930:吸気口、931:LPL−EGRバルブ、932:EGRクーラー、94:エンジン、95:第一ターボチャージャー、96:第二ターボチャージャー。
G1:新気ガス、G2:排気ガス、G3:新気ガス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7