特許第6133780号(P6133780)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニアの特許一覧

特許6133780汎捕捉性の結合領域を備えている多方向マイクロ流体デバイス、及びその使用方法
<>
  • 特許6133780-汎捕捉性の結合領域を備えている多方向マイクロ流体デバイス、及びその使用方法 図000010
  • 特許6133780-汎捕捉性の結合領域を備えている多方向マイクロ流体デバイス、及びその使用方法 図000011
  • 特許6133780-汎捕捉性の結合領域を備えている多方向マイクロ流体デバイス、及びその使用方法 図000012
  • 特許6133780-汎捕捉性の結合領域を備えている多方向マイクロ流体デバイス、及びその使用方法 図000013
  • 特許6133780-汎捕捉性の結合領域を備えている多方向マイクロ流体デバイス、及びその使用方法 図000014
  • 特許6133780-汎捕捉性の結合領域を備えている多方向マイクロ流体デバイス、及びその使用方法 図000015
  • 特許6133780-汎捕捉性の結合領域を備えている多方向マイクロ流体デバイス、及びその使用方法 図000016
  • 特許6133780-汎捕捉性の結合領域を備えている多方向マイクロ流体デバイス、及びその使用方法 図000017
  • 特許6133780-汎捕捉性の結合領域を備えている多方向マイクロ流体デバイス、及びその使用方法 図000018
  • 特許6133780-汎捕捉性の結合領域を備えている多方向マイクロ流体デバイス、及びその使用方法 図000019
  • 特許6133780-汎捕捉性の結合領域を備えている多方向マイクロ流体デバイス、及びその使用方法 図000020
  • 特許6133780-汎捕捉性の結合領域を備えている多方向マイクロ流体デバイス、及びその使用方法 図000021
  • 特許6133780-汎捕捉性の結合領域を備えている多方向マイクロ流体デバイス、及びその使用方法 図000022
  • 特許6133780-汎捕捉性の結合領域を備えている多方向マイクロ流体デバイス、及びその使用方法 図000023
  • 特許6133780-汎捕捉性の結合領域を備えている多方向マイクロ流体デバイス、及びその使用方法 図000024
  • 特許6133780-汎捕捉性の結合領域を備えている多方向マイクロ流体デバイス、及びその使用方法 図000025
  • 特許6133780-汎捕捉性の結合領域を備えている多方向マイクロ流体デバイス、及びその使用方法 図000026
  • 特許6133780-汎捕捉性の結合領域を備えている多方向マイクロ流体デバイス、及びその使用方法 図000027
  • 特許6133780-汎捕捉性の結合領域を備えている多方向マイクロ流体デバイス、及びその使用方法 図000028
  • 特許6133780-汎捕捉性の結合領域を備えている多方向マイクロ流体デバイス、及びその使用方法 図000029
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133780
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】汎捕捉性の結合領域を備えている多方向マイクロ流体デバイス、及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20170515BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20170515BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20170515BHJP
   G01N 27/447 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   G01N35/08 A
   G01N33/50 Z
   G01N37/00 101
   G01N27/447 325A
   G01N27/447 325C
   G01N27/447 325B
   G01N27/447 315K
【請求項の数】23
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2013-541031(P2013-541031)
(86)(22)【出願日】2011年11月22日
(65)【公表番号】特表2013-544362(P2013-544362A)
(43)【公表日】2013年12月12日
(86)【国際出願番号】US2011061959
(87)【国際公開番号】WO2012071472
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2014年9月24日
(31)【優先権主張番号】61/416,693
(32)【優先日】2010年11月23日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ハール,エイミー イー.
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドヒュン
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−172453(JP,A)
【文献】 特開2005−249572(JP,A)
【文献】 特開2007−139759(JP,A)
【文献】 特開2008−128835(JP,A)
【文献】 特開2004−061319(JP,A)
【文献】 特開2006−162405(JP,A)
【文献】 Robert S. Foote,Preconcentration of Proteins on Microfluidic Devices Using Porous Silica Membranes,Anal. Chem.,2005年 1月 1日,Vol. 77, No. 1,pp. 57-63
【文献】 Mei He,Automated microfluidic protein immunoblotting,nature protocols,2010年10月28日,Vol. 5, No. 11,pp. 1844-1856,Published online
【文献】 Mei He,Polyacrylamide Gel Photopatterning Enables Automated Protein Immunoblotting in a Two-Dimensional Microdevice,J. AM. CHEM. SOC.,2010年 2月 4日,Vol. 132, No. 8,pp. 2512-2513,Published on Web
【文献】 Lichtenberg J,Sample preconcentration by field amplification stacking for microchip-based capillary electrophoresis.,Electrophoresis,2001年 1月,Vol. 22, No. 2,pp. 258-271
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
G01N 27/447
G01N 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体試料中の分析物を検出するためのマイクロ流体デバイスであって、
第1の方向軸の分離流路を有し、前記試料中の分析物を分離するように構成されている分離媒体と、
該分離媒体と流体連通し、前記第1の方向軸と60度〜120 度の範囲内で交差する第2の方向軸の流路を有し、前記分離媒体によって分離して分離状態を維持して移動する分析物に非特異的に結合するように構成されている結合媒体と
を備え、
2以上の方向の異なる流れ場に試料を曝すように構成されていることを特徴とするマイクロ流体デバイス。
【請求項2】
前記結合媒体は、静電相互作用によって前記試料中の分析物に非特異的に結合するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
前記結合媒体は、負の電荷を有するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
前記結合媒体は、負に帯電したゲルを含んでいることを特徴とする請求項3に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
前記結合媒体は、支持体と安定して会合し負に帯電し、前記試料中の分析物に非特異的に結合するように構成されている結合メンバーを含んでいることを特徴とする請求項3に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
前記流体試料は、前記試料中の分析物に正の電荷を与えるように構成されている界面活性剤を含んでいることを特徴とする請求項3に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項7】
前記界面活性剤は、臭化セチルトリメチルアンモニウムを含んでいることを特徴とする請求項6に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項8】
前記分析物は、蛍光標識を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項9】
前記2以上の方向の異なる流れ場は、2以上の方向の異なる電場を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項10】
前記第2の方向軸は、前記第1の方向軸と直交していることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項11】
前記分離媒体及び前記結合媒体を収容するチャンバを更に備えていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項12】
流体試料中の分析物を検出する方法であって、
(a)2以上の方向の異なる流れ場に流体試料を曝すように構成されているマイクロ流体デバイス内に、前記分析物を含む前記流体試料を導入することであって、前記マイクロ流体デバイスは、
(i) 第1の方向軸の分離流路を有し、前記試料中の分析物を分離するように構成されている分離媒体と、
(ii)該分離媒体と流体連通し、前記第1の方向軸と60度〜120 度の範囲内で交差する第2の方向軸の流路を有し、前記分離媒体によって分離して分離状態を維持して移動する分析物に非特異的に結合するように構成されている結合媒体と
を備えていることと、
(b)前記分離媒体を通して前記試料を導いて、分離した分析物を生成することと、
(c)該分離した分析物を検出することと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記分離した分析物を前記結合媒体に移動させることを更に含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記分析物に特異的に結合して標識が付された分析物を生成する前記標識と前記分析物を接触させることを更に含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記標識が付された分析物を検出することを更に含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記2以上の方向の異なる流れ場は、2以上の方向の異なる電場を含んでいることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項17】
流体試料中の分析物を検出するためのシステムであって、
(a)2以上の方向の異なる流れ場に試料を曝すように構成されているマイクロ流体デバイスであって、
(i) 第1の方向軸の分離流路を有し、前記試料中の分析物を分離するように構成されている分離媒体と、
(ii)該分離媒体と流体連通し、前記第1の方向軸と60度〜120 度の範囲内で交差する第2の方向軸の流路を有し、前記分離媒体によって分離して分離状態を維持して移動する分析物に非特異的に結合するように構成されている結合媒体と
を備えている前記マイクロ流体デバイスと、
(b)検出器と
を備えていることを特徴とするシステム。
【請求項18】
前記2以上の方向の異なる流れ場は、2以上の方向の異なる電場を含んでいることを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記マイクロ流体デバイスを通して流体を導くように構成されているマイクロ流体要素を更に備えていることを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
流体試料中の分析物を検出するためのキットであって、
(a)2以上の方向の異なる流れ場に試料を曝すように構成されているマイクロ流体デバイスであって、
(i) 第1の方向軸の分離流路を有し、前記試料中の分析物を分離するように構成されている分離媒体と、
(ii)該分離媒体と流体連通し、前記第1の方向軸と60度〜120 度の範囲内で交差する第2の方向軸の流路を有し、前記分離媒体によって分離して分離状態を維持して移動する分析物に非特異的に結合するように構成されている結合媒体と
を備えている前記マイクロ流体デバイスと、
(b)緩衝液と
を備えていることを特徴とするキット。
【請求項21】
前記結合媒体は、負の電荷を有するように構成されており、
前記緩衝液は、前記試料中の分析物に正の電荷を与えるように構成されている界面活性剤を含んでいることを特徴とする請求項20に記載のキット。
【請求項22】
前記界面活性剤は臭化セチルトリメチルアンモニウムを含んでいることを特徴とする請求項21に記載のキット。
【請求項23】
前記分析物に付される検出試薬、及び前記分析物と前記結合媒体との結合相互作用を阻害するように構成されている剥離剤からなる群から選択される1以上の試薬を更に備えていることを特徴とする請求項20に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
所与の試料中の特定の分析物を検出するために、様々な分析技術が使用され得る。例えば、ゲル電気泳動を使用して試料中のタンパク質を分離し、続いて、標的タンパク質に特異的な抗体でプローブすることにより試料中のタンパク質を検出するウエスタンブロット法が使用され得る。サザンブロット法は、電気泳動によって分離したDNA断片のフィルタ膜への移動と、その後のプローブのハイブリダイゼーションによるDNA断片の検出とを組み合わせたものである。ノーザンブロット法は、RNA試料をサイズごとに分離するための電気泳動の使用と、標的配列の一部又は全体に相補的なハイブリダイゼーションプローブを用いた検出とを含んでいる。イースタンブロット法は、脂質、炭水化物、リン酸化、又は任意の他のタンパク質修飾に特異的なプローブを使用して、翻訳後修飾について電気泳動によって分離したタンパク質を分析することにより、タンパク質の翻訳後修飾(PTM)を検出するために使用され得る。ファーウエスタンブロット法は、ウエスタンブロット法と類似しているが、対象となるタンパク質に結合するために非抗体タンパク質を使用し、従ってタンパク質間相互作用を検出するために使用され得る。サウスウエスタンブロット法は、ゲル電気泳動を使用して試料中のタンパク質を分離し、その後、ゲノムDNA断片でプローブすることによって、DNA結合タンパク質を検出するために使用され得る技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0153046 号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したような従来のブロッティング技術は、ハイスループット試料分析又はリソースが不足している設定における操作のいずれかを必要とする用途の性能ニーズには及ばない場合がある。ブロッティング技術は、熟練技師によって実行される労働集約的で時間のかかる多段階の手順を必要とする可能性があり、従って、臨床設定における使用には非実用的である場合がある。更に、より廉価でより製造し易いデバイスが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
マイクロ流体デバイス、及びマイクロ流体デバイスを使用するための方法を提供する。本発明の態様は、分離媒体及び汎捕捉性の結合媒体を備えたマイクロ流体デバイスを含む。マイクロ流体デバイスは、2以上の方向の異なる流れ場に試料を曝すように構成されている。更に、マイクロ流体デバイスを使用する方法、並びにマイクロ流体デバイスを含むシステム及びキットを提供する。マイクロ流体デバイス、システム、及び方法は、診断・検証アッセイを含む様々な異なる用途に使用される。
【0005】
本開示の態様は、流体試料中の分析物を検出するためのマイクロ流体デバイスを含む。ある実施形態では、マイクロ流体デバイスは、第1の方向軸の分離流路を有する分離媒体と、分離媒体と流体連通し、第2の方向軸の流路を有する汎捕捉性の結合媒体とを備えている。場合によっては、第2の方向軸は、第1の方向軸と直交している。
【0006】
結合媒体は、静電相互作用によって試料中の分析物に非特異的に結合するように構成されてもよい。例えば、結合媒体は、負の電荷を有するように構成されてもよい。場合によっては、結合媒体は、負に帯電したゲルを含んでいる。ある実施形態では、結合媒体は、支持体と安定して会合し負に帯電した汎捕捉性の結合メンバーを含んでいる。場合によっては、流体試料は界面活性剤を含んでいる。界面活性剤は、試料中の分析物に正の電荷を与えるように構成されてもよい。負に帯電したゲルと試料中の分析物に正の電荷を付与する界面活性剤とを含む実施形態では、分析物の結合媒体への静電結合を促進することができる。ある場合には、界面活性剤は、臭化セチルトリメチルアンモニウムである。
【0007】
場合によっては、分析物は蛍光標識を含んでいる。場合によっては、マイクロ流体デバイスは、2以上の方向の異なる流れ場に試料を曝すように構成されている。例えば、2以上の方向の異なる流れ場は、2以上の方向の異なる電場を含んでもよい。ある場合には、マイクロ流体デバイスは、分離媒体及び結合媒体を収容するチャンバを備えている。
【0008】
本開示の態様は更に、流体試料中の分析物を検出する方法を含む。該方法は、(a)2以上の方向の異なる流れ場に試料を曝すように構成されているマイクロ流体デバイス内に、分析物を含む流体試料を導入することと、(b)分離媒体を通して試料を導いて、分離した試料を生成することと、(c)分離した試料中の分析物を検出することとを含む。上述したように、マイクロ流体デバイスは、第1の方向軸の分離流路を有する分離媒体と、該分離媒体と流体連通し、第2の方向軸の流路を有する汎捕捉性の結合媒体とを備えている。
【0009】
ある実施形態では、分析物を検出する方法は更に、分離した試料を結合媒体に移動させることを含む。前記方法は更に、分析物に特異的に結合する標識と分析物を接触させて、標識が付された分析物を生成することを含んでもよい。場合によっては、前記方法は、標識が付された分析物を検出することを更に含む。
【0010】
ある場合には、前記方法は診断方法であり、他の場合には検証方法であってもよい。
【0011】
本開示の態様は更に、流体試料中の分析物を検出するためのシステムを含む。該システムは、2以上の方向の異なる流れ場に試料を曝すように構成されているマイクロ流体デバイスと、検出器とを備えている。上述したように、マイクロ流体デバイスは、第1の方向軸の分離流路を有する分離媒体と、該分離媒体と流体連通し、第2の方向軸の流路を有する汎捕捉性の結合媒体とを備えている。
【0012】
ある実施形態では、前記システムは更に、マイクロ流体デバイスを通して流体を導くように構成されているマイクロ流体要素を備えている。
【0013】
本開示の態様は更に、2以上の方向の異なる流れ場に試料を曝すように構成されているマイクロ流体デバイスと、緩衝液とを備えたキットを含む。上述したように、前記マイクロ流体デバイスは、第1の方向軸の分離流路を有する分離媒体と、該分離媒体と流体連通し、第2の方向軸の流路を有する汎捕捉性の結合媒体とを備えている。
【0014】
ある実施形態では、緩衝液は、試料中の分析物に正の電荷を与えるように構成されている界面活性剤を含んでいる。例えば、界面活性剤は、臭化セチルトリメチルアンモニウムであってもよい。
【0015】
ある実施形態では、前記キットは更に、限定されないが、検出試薬、剥離剤、界面活性剤、リフォールディング試薬、及び変性試薬等の1以上の試薬を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は、本開示の実施形態に係るマイクロ流体デバイスを示す写真図であり、(b)は、本開示の実施形態に係るマイクロ流体デバイスを示す概略図である。
図2】本開示の実施形態に係るマイクロ流体デバイスを示す概略図、並びに充填媒体、分離媒体及び結合媒体を含むチャンバを示す拡大図である。
図3】本開示の実施形態に従った試料中の分析物の分離、移動及び検出を示す概略図である。
図4】本開示の実施形態に従った、電気泳動注入による分離媒体内へのCTAB緩衝液流の添加、及びマイクロ流体デバイスの分離軸の確定を示す概略図である。
図5】本開示の実施形態に係るマイクロ流体システムを示す写真図及び拡大図である。
図6】本開示の実施形態に従って、マイクロ流体チャンバ内でポリアクリルアミドゲルを光パターニングするために使用される製造ステップを示す概略図である。
図7】上方は、本開示の実施形態に係るマイクロ流体デバイスにおけるタンパク質試料の分離に関する経時的な(秒単位の)蛍光画像のモンタージュを示す図であり、下方は、本開示の実施形態に係るマイクロ流体デバイスにおけるタンパク質試料の分離に関する線形対数分子量(Mr)対移動度(10-5cm2 /V・s)の関係を示すグラフである。
図8】本開示の実施形態に係るマイクロ流体デバイスを使用した試料中の4つのタンパク質(プロテインG、OVA、BSA、及びαアクチニン)の分離及び移動の蛍光画像を示す図である。
図9】(a)は、本開示の実施形態に係るマイクロ流体デバイスの結合媒体中に固定された試料中の分離したタンパク質(プロテインG、OVA、BSA、及びαアクチニン)の蛍光画像を示す図であり、(b)は、本開示の実施形態に従った、分離した試料中における検出可能な標識(抗体)のプロテインGへのその後の結合の蛍光画像を示す図である。
図10】本開示の実施形態に従った、結合媒体中に免疫グロブリンG(IgG)を含んだマイクロ流体デバイスにおける分離及び結合中の試料内の分離したタンパク質(プロテインG、OVA、BSA、及びαアクチニン)の蛍光画像を示す図である。
図11】本開示の実施形態に従った、結合媒体中にβ−ガラクトシダーゼ(β−gal)を含んだマイクロ流体デバイスにおける分離及び結合中の試料内の分離したタンパク質(プロテインG、OVA、BSA、及びαアクチニン)の蛍光画像を示す図である。
図12】本開示の実施形態に係る方法の間に行われる分離、移動、結合(例えば、固定)、洗浄、及びブロッキングを含む種々のステップにおける蛍光画像を示す図、並びに対応する蛍光強度を示すグラフである。
図13】本開示の実施形態に係る方法の間に行われる分離、移動、結合(例えば、固定)、洗浄、及びブロッキングを含む種々のステップにおけるタンパク質の捕捉効率を示すグラフである。
図14】本開示の実施形態に従った、検出可能な標識(例えば、抗体プローブ)が付されたプロテインGを含む分離した試料タンパク質(プロテインG、OVA、BSA、及びβ−gal* (β−ガラクトシダーゼ単量体))の多重スペクトル合成蛍光画像を示す図である。
図15】(a)は、本開示の実施形態に従った、静電結合媒体の電荷密度の影響を示す捕捉効率(%)対β−gal濃度(μM)を示すグラフであり、(b)は、本開示の実施形態に従った、捕捉効率(%)対移動緩衝液のイオン強度(mM)を示すグラフである。
図16】本開示の実施形態に従った、異なる電荷密度及び結合メンバー(β−gal対Immobiline)におけるタンパク質の結合強度の蛍光画像を示す図である。
図17】本開示の実施形態に従った、異なるイオン強度の緩衝液(例えば、異なる緩衝液濃度)におけるタンパク質の結合強度の蛍光画像を示す図である。
図18】本開示の実施形態に従ってポリアクリルアミドゲル孔内に共重合したCTAB−タンパク質複合体と、(a)Immobiline及び(b)β−galとの夫々の電荷相互作用の比較を示す概略図である。
図19】本開示の実施形態に従った、(a)1×TA緩衝液及び(b)ヒト涙液中の、タンパク質及びヒトラクトフェリンの試料のCTAB−PAGE分離及び免疫ブロッティングの蛍光画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
マイクロ流体デバイス、及びマイクロ流体デバイスを使用するための方法を提供する。本発明の態様は、分離媒体及び汎捕捉性の結合媒体を備えたマイクロ流体デバイスを含む。マイクロ流体デバイスは、2以上の方向の異なる電場に試料を曝すように構成されている。更に、マイクロ流体デバイスを使用する方法、並びにマイクロ流体デバイスを含むシステム及びキットを提供する。マイクロ流体デバイス、システム、及び方法は、診断・検証アッセイを含む様々な異なる用途に使用される。
【0018】
以下に、主題のマイクロ流体デバイスについてまず詳細に記載する。主題のマイクロ流体デバイスが使用される、流体試料中の分析物を検出する方法を更に開示する。更に、主題のマイクロ流体デバイスを含むシステム及びキットについても記載する。
【0019】
マイクロ流体デバイス
本開示の態様は、流体試料中の分析物を検出するためのマイクロ流体デバイスを含む。「マイクロ流体デバイス」は、小さな縮尺(例えば、サブミリメートル)に幾何学的に拘束された流体を制御して作動するように構成されているデバイスである。マイクロ流体デバイスの実施形態では、分離媒体及び汎捕捉性の結合媒体が備えられている。分離媒体は、試料中の分析物を互いに分離するように構成され得る。分離した分析物は、試料中の要素に非特異的に結合する汎捕捉性の結合媒体と接することができる。その後、結合した対象となる一又は複数の分析物を検出することができる。分離媒体及び汎捕捉性の結合媒体に関する更なる詳細を以下に述べる。
【0020】
分離媒体
ある実施形態では、マイクロ流体デバイスは分離媒体を備えている。分離媒体は、試料中の分析物を互いに分離するように構成され得る。場合によっては、分離媒体は、分析物の物理的特性に基づいて試料中の分析物を分離するように構成されている。例えば、分離媒体は、分析物の分子量、サイズ、電荷(例えば、電荷対質量比)、等電点等に基づいて、試料中の分析物を分離するように構成され得る。ある場合には、分離媒体は、分析物の分子量に基づいて試料中の分析物を分離するように構成されている。場合によっては、分離媒体は、分析物の等電点(例えば、等電点焦点)に基づいて試料中の分析物を分離するように構成されている。分離媒体は、試料中の分析物を、分析物の異なる検出可能なバンドに分離するように構成されてもよい。「バンド」とは、分析物の濃度が周囲の領域よりも著しく高い異なる検出可能な領域を意味する。分析物の各バンドは、1又は複数の分析物を含んでもよく、分析物の単一のバンド中の各分析物は、上述したように実質的に同様の物理的特性を有する。
【0021】
ある実施形態では、分離媒体は、試料が分離媒体を横切るときに試料中の分析物を分離するように構成されている。場合によっては、分離媒体は、試料が分離媒体を通って流れるときに試料中の分析物を分離するように構成されている。分離媒体の態様は、分離媒体が方向軸を有する流路を有することを含む。「流路」とは、流体試料が移動するときに進む方向を意味する。場合によっては、流路は、試料が分離媒体等の媒体を横切るときに試料が進む方向である。上述したように、分離媒体は、方向軸を有する流路を有してもよい。ある実施形態では、分離流路の方向軸は分離媒体の長さに揃えられる。これらの実施形態では、試料は、分離媒体の分離流路の方向に分離媒体を横切る(例えば、試料は、分離媒体の長さに沿って分離媒体を横切ってもよい)。場合によっては、分離媒体の長さは、分離媒体の幅よりも大きく、例えば、分離媒体の幅の2倍、3倍、4倍、5倍、10倍等である。場合によっては、分離媒体の分離流路は、分離媒体を含む領域によって画定されている。例えば、マイクロ流体デバイスはチャンバを含んでもよい。チャンバは、分離媒体を含む分離領域と、汎捕捉性の結合媒体を含む結合領域とを含んでもよい。試料がチャンバを通って流れると試料が分離媒体を横切るように、分離媒体がチャンバ内に含まれてもよい。
【0022】
ある実施形態では、分離媒体は、ポリマーゲル等のポリマーを含んでいる。ポリマーゲルは、ゲル電気泳動に好適なゲルであってもよい。ポリマーゲルは、限定されないが、ポリアクリルアミドゲル、アガロースゲル等を含んでもよい。分離媒体の分解能は、限定されないが、孔径、全ポリマー含有量(例えば、総アクリルアミド含有量)、架橋剤の濃度、印加される電場、アッセイ時間等の種々の要因に依存してもよい。例えば、分離媒体の分解能は、分離媒体の孔径に依存してもよい。場合によっては、孔径は、分離媒体の全ポリマー含有量及び/又は分離媒体中の架橋剤の濃度に依存する。ある場合には、分離媒体は、50,000Da以下、25,000Da以下、又は10,000Da以下、例えば5,000Da以下、2,000Da以下、又は1,000Da以下を含む7,000Da以下、例えば500Da以下、又は100Da以下の分子量の差を有する分析物を分解するように構成されている。場合によっては、分離媒体は、1%〜20%、例えば5%〜10%を含む3%〜15%の範囲の総アクリルアミド含有量T(T=アクリルアミド及びビスアクリルアミド単量体の総濃度)を有するポリアクリルアミドゲルを含んでもよい。場合によっては、分離媒体は、6%の総アクリルアミド含有量を有する。
【0023】
ある実施形態では、分離媒体は緩衝液を含んでいる。緩衝液は、ゲル電気泳動に使用されるあらゆる便利な緩衝液であってもよい。ある実施形態では、緩衝液は、限定されないが、トリシン−アルギニン緩衝液等のアルカリ性緩衝液である。ある実施形態では、分離媒体は、トリス−グリシン緩衝液等の緩衝液を含んでいる。例えば、緩衝液は、トリス及びグリシンの混合物を含んでもよい。
【0024】
場合によっては、緩衝液は界面活性剤を含んでいる。ある場合には、界面活性剤は、試料中の分析物に略同様の電荷対質量比を与えるように構成されている。略同様の電荷対質量比を有する分析物は、試料中の分析物の分子量に基づいて、分析物の1以上のバンドへの分離媒体における分離を容易にする。ある場合には、界面活性剤は、試料中の分析物に正の電荷等の電荷を与えるように構成されている陽イオン界面活性剤である。例えば、界面活性剤は、試料中の分析物に正の電荷を与えるように構成されている陽イオン界面活性剤であってもよい。以下により詳細に記載するように、正の電荷を帯びた分析物は、負に帯電した結合媒体に静電結合し易くなる。ある実施形態では、界面活性剤は、臭化セトリモニウム又は臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムとしても知られている臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)である。
【0025】
場合によっては、上述したように、緩衝液は界面活性剤を含んでいる。緩衝液のある実施形態では、陰イオン界面活性剤が含まれてもよい。ある場合には、界面活性剤は、試料中の分析物に負の電荷を与えるように構成されている陰イオン界面活性剤である。負の電荷を帯びた分析物は、正に帯電した結合媒体に静電結合し易くなる。例えば、界面活性剤は、限定されないが、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等の陰イオン界面活性剤であってもよい。
【0026】
汎捕捉性の結合媒体
マイクロ流体デバイスの態様は、汎捕捉性の結合媒体(pan−capture binding medium)を含む。「汎捕捉性」(pan−capture)とは、結合媒体が、試料中の分析物に非特異的に結合することを意味する。例えば、汎捕捉性の結合媒体は、試料中のタンパク質に非特異的に結合し得る。非特異的結合は、試料中の略全ての分析物との結合を含んでもよい。場合によっては、非特異的結合は、試料中の分析物と汎捕捉性の結合媒体との結合相互作用に基づいている。結合相互作用は、限定されないが、共有結合、イオン結合、静電相互作用、疎水性相互作用、水素結合、ファン・デル・ワールス力(例えば、ロンドン分散力)、双極子間相互作用、それらの組み合わせ等の、汎捕捉性の結合媒体と試料中の分析物との様々な結合相互作用のうちの1以上に基づくことができる。結合相互作用は、(例えば、共有結合等による結合相互作用を克服するために比較的大量のエネルギーを必要とする)実質的に永久的であってもよいか、又は(例えば、双極子間相互作用等による結合相互作用を阻害するために比較的少量のエネルギーを必要とする)可逆的であってもよい。
【0027】
ある実施形態では、汎捕捉性の結合媒体は、静電相互作用によって試料中の分析物に非特異的に結合するように構成されている。場合によっては、静電相互作用は、2つの反対に帯電したイオン間の引力による結合相互作用を含んでいる。例えば、静電相互作用は、正に帯電した分析物と負に帯電した結合媒体との間に存在し得る。同様に、静電相互作用は、負に帯電した分析物と正に帯電した結合媒体との間に存在し得る。ある場合には、結合媒体は、負の電荷を有するように構成されている。そのため、負に帯電した結合媒体は、正に帯電した分析物との静電結合相互作用を有するように構成されてもよい。他の場合には、結合媒体は、正の電荷を有するように構成されている。そのため、正に帯電した結合媒体は、負に帯電した分析物との静電結合相互作用を有するように構成されてもよい。
【0028】
ある場合には、結合媒体は、ポリマーゲル又はポリマーモノリス等のポリマーを含んでいる。モノリスとは、単一の連続的な構造を意味する。モノリスは、同一の物理的且つ化学的な組成を有する単一領域を含み得るか、又は物理的且つ化学的な組成が異なる2以上の領域を含み得る。ポリマーゲルは、ゲル電気泳動に好適なゲルであってもよい。ポリマーゲルは、限定されないが、ポリアクリルアミドゲル、アガロースゲル等を含んでもよい。ポリマーゲルは、限定されないが、アクリレートポリマー、アルキルアクリレートポリマー、アルキルアルキルアクリレートポリマー、そのコポリマー等のポリマーを含んでもよい。場合によっては、結合媒体は、1%〜20%、例えば5%〜10%を含む3%〜15%の範囲の総アクリルアミド含有量を有するポリアクリルアミドゲルを含んでもよい。例えば、結合媒体は、9%の総アクリルアミド含有量を有するポリアクリルアミドゲルを含んでもよい。
【0029】
上述したように、ある実施形態では、結合媒体は、負の電荷を有するように構成されている。例えば、結合媒体は、負に帯電したポリアクリルアミドゲル等の負に帯電したゲルを含んでもよい。負に帯電したゲルは、正に帯電した分析物との静電結合相互作用を容易にすることができる。ある実施形態では、結合媒体は緩衝液を含んでいる。場合によっては、緩衝液はアルカリ性緩衝液である。アルカリ性緩衝液は、結合媒体(例えば、ポリアクリルアミドゲル)上の負電荷の存在を容易にすることができる。場合によっては、緩衝液は、限定されないが、トリシン−アルギニン緩衝液等のアルカリ性緩衝液である。
【0030】
他の実施形態では、結合媒体は、正の電荷を有するように構成されている。例えば、結合媒体は、正に帯電したポリアクリルアミドゲル等の正に帯電したゲルを含んでもよい。正に帯電したゲルは、負に帯電した分析物との静電結合相互作用を容易にすることができる。上述したように、結合媒体は緩衝液を含んでもよい。場合によっては、緩衝液は、結合媒体上の正の電荷の存在を容易にするように構成されてもよく、そのため、結合媒体は、負に帯電した分析物との静電結合相互作用を容易にすることができる。
【0031】
ある実施形態では、結合媒体は、汎捕捉性の結合メンバーを含んでいる。汎捕捉性の結合メンバーは、試料中の分析物と結合して保持するように構成され得る。例えば、汎捕捉性の結合メンバーは、試料中のタンパク質との非特異的な結合等、試料中の分析物と非特異的に結合するように構成されてもよい。上述した汎捕捉性の結合媒体と同様に、汎捕捉性の結合メンバーは、限定されないが、共有結合、イオン結合、静電相互作用、疎水性相互作用、水素結合、ファン・デル・ワールス力(例えば、ロンドン分散力)、双極子間相互作用、それらの組み合わせ等の、汎捕捉性の結合メンバーと試料中の分析物との様々な結合相互作用のうちの1以上に基づいて分析物と結合するように構成されてもよい。ある実施形態では、汎捕捉性の結合メンバーは、静電相互作用によって試料中の分析物と非特異的に結合するように構成されている。例えば、汎捕捉性の結合メンバーが試料中の正に帯電した分析物に非特異的に結合するように、汎捕捉性の結合メンバーは、負の電荷を有するように構成されてもよい。場合によっては、汎捕捉性の結合メンバーは、限定されないが、負に帯電したアクリルアミド化合物(例えば、Immobiline)等の負に帯電した化合物を含んでいる。場合によっては、汎捕捉性の結合メンバーは、負に帯電したタンパク質又はペプチドのようなペプチド又はタンパク質(例えば、捕捉タンパク質)を含んでいる。例えば、汎捕捉性の結合メンバーは、免疫グロブリン−G(IgG)、β−ガラクトシダーゼ(β−gal)、ミオシン、それらの誘導体、それらの組み合わせ等を含んでもよい。上述したように、アルカリ性緩衝液(例えば、トリシン−アルギニン緩衝液)等の緩衝液は、結合メンバー上の負電荷の存在を容易にすることができる。場合によっては、アルカリ性緩衝液は、酸性アミノ酸残基をイオン化して結合メンバー上に負の電荷を与える(例えば、酸性アミノ酸残基は、アルカリ性緩衝液のpHよりも低いpK値を有する可能性がある)。
【0032】
他の実施形態では、汎捕捉性の結合メンバーは、静電相互作用によって試料中の分析物に非特異的に結合するように構成されてもよく、そのため、汎捕捉性の結合メンバーは、正の電荷を有するように構成されている。例えば、汎捕捉性の結合メンバーが、試料中の負に帯電した分析物に非特異的に結合するように、汎捕捉性の結合メンバーは、正の電荷を有するように構成されてもよい。
【0033】
ある実施形態では、汎捕捉性の結合メンバーは、支持体と安定して会合している。「安定して会合している」とは、標準的な条件下で、ある部分が、別の部分若しくは構造体と結合しているか、又は会合していることを意味する。ある場合には、支持体は、上述したようなポリマーゲルである。そのため、ある実施形態では、マイクロ流体デバイスは、本明細書に記載されているように、汎捕捉性の結合媒体及び汎捕捉性の結合メンバーの両方を備えている。結合メンバーと支持体との結合は、限定されないが、共有結合と、イオン結合、静電相互作用、疎水性相互作用、水素結合、ファン・デル・ワールス力(例えば、ロンドン分散力)、双極子間相互作用等の非共有結合相互作用とを含んでもよい。ある実施形態では、結合メンバーは、支持体に共有的に結合してもよく、例えば、支持体に架橋されても又は共重合されてもよい。例えば、結合メンバーは、限定されないが、受容体/リガンド結合対、受容体のリガンド結合部分、抗体/抗原結合対、抗体の抗原結合断片、ハプテン、レクチン/炭水化物結合対、酵素/基質結合対、ビオチン/アビジン結合対、ビオチン/ストレプトアビジン結合対、ジゴキシン/抗ジゴキシン結合対、DNA又はRNAアプタマー結合対、ペプチドアプタマー結合対等の連結基によって支持体に結合してもよい。場合によっては、結合メンバーは、ビオチン/ストレプトアビジン結合対によって支持体に結合している。
【0034】
マイクロ流体デバイスの実施形態の更なる態様
マイクロ流体デバイスの態様は、分離媒体が結合媒体と流体連通する実施形態を含む。マイクロ流体デバイスは、まず分離媒体によって試料を導いて、分離した試料を生成するように構成されてもよい。ある実施形態では、マイクロ流体デバイスは、分離媒体及び結合媒体が互いに直接流体連通するように構成されている。例えば、分離媒体は、結合媒体と直接接してもよい。場合によっては、分離媒体及び結合媒体は互いに結合しており、例えば、隣接して連続的に光パターニングされる。分離媒体が結合媒体と直接流体連通する実施形態は、要素の損失を最小限度に抑えて、分離媒体から結合媒体への要素の移動を促進することができる。場合によっては、マイクロ流体デバイスは、分離媒体から結合媒体に要素を定量的に且つ再現性良く移動させるように構成されている。
【0035】
ある実施形態では、マイクロ流体デバイスは、分離した試料を結合媒体に導くように構成されている。他の場合には、試料又は分析物が分離媒体から結合媒体に直接横切ることができるように、マイクロ流体デバイスは、分離媒体及び結合媒体が互いに直接流体連通するように構成されている。上述したように、結合媒体は、分離した試料中の対象となる分析物を検出するために、試料中の分析物に非特異的に結合するように構成されてもよい。
【0036】
ある実施形態では、マイクロ流体デバイスは、多方向マイクロ流体デバイスである。「多方向」とは、2以上の方向、3以上の方向、4以上の方向等の1より多くの方向を意味する。ある場合には、2以上の方向が共平面であるように、2以上の方向が単一の平面に含まれている。場合によっては、マイクロ流体デバイスは、2以上の方向、3以上の方向、4以上の方向等の1より多くの方向に流体を導くように構成されている(例えば、マイクロ流体デバイスは多方向性である)。例えば、マイクロ流体デバイスは、2の方向、3の方向、4の方向等に流体を導くように構成されてもよい。例えば、マイクロ流体デバイスが平面であるように、マイクロ流体デバイスが基板に含まれてもよい。マイクロ流体デバイスは、その面内で複数の方向に流体を導くように構成されてもよい。
【0037】
マイクロ流体デバイスの態様は、分離流路を有する分離媒体と、分離媒体と流体連通する汎捕捉性の結合媒体とを含む。分離媒体は第1の方向軸を有する分離流路を含んでもよく、第1の方向軸は、試料が分離媒体を横切るときに試料が進む方向に相当する。結合媒体は、第2の方向軸を有する第2の流路を含んでもよい。場合によっては、第2の流路は、試料が分離媒体から結合媒体へと横切るときに試料が進む方向である。結合媒体は、分離媒体の方向軸とは異なる方向軸を有してもよい。例えば、分離媒体は第1の方向軸を有してもよく、結合媒体は第2の方向軸を有してもよく、第2の方向軸は、第1の方向軸に対して180度以下の角度であり、例えば、第1の方向軸に対して120度以下、90度以下、60度以下、45度以下、又は30度以下を含む150度以下、135度以下の角度である。ある実施形態では、分離流路が結合媒体の流路に対して90度の角度であるように、第2の方向軸が第1の方向軸と直交している。
【0038】
場合によっては、マイクロ流体デバイスは、2以上の方向の異なる流れ場に試料を曝すように構成されている。「流れ場」とは、要素が略同一の方向に領域を横切る領域を意味する。例えば、流れ場は、移動性の要素が媒体を通って略同一の方向に移動する領域を含んでもよい。流れ場は、分離媒体、結合媒体、充填媒体等の媒体を含んでもよく、緩衝液、分析物、試薬等の要素が媒体を通って略同一の方向に移動する。流れ場は、印加される電場、圧力差、電気浸透等によって導かれてもよい。ある実施形態では、2以上の流れ場の方向が異なってもよい。例えば、第1の流れ場は、分離媒体の分離流路の方向軸に揃えられてもよい。第1の流れ場は、分離流路に沿って分離媒体を通る試料又は分析物を導くように構成されてもよい。第2の流れ場が、結合媒体の流路の方向軸に揃えられてもよい。場合によっては、第2の流れ場は、結合媒体の流路に沿って分離媒体から結合媒体に試料又は分析物を導くように構成されている。第2の流れ場は、分析物が結合媒体と接して結合するように、分離媒体から結合媒体に試料又は分析物を導くように構成されてもよい。上述したように、ある場合には、結合媒体の流路の方向軸は、分離流路の方向軸と直交している。これらの場合には、第2の流れ場は、第1の流れ場と直交してもよい。
【0039】
ある実施形態では、マイクロ流体デバイスは、2以上の方向の異なる電場に試料を曝すように構成されている。電場は、マイクロ流体デバイスを通る試料の移動(例えば、マイクロ流体デバイスの1の領域からマイクロ流体デバイスの別の領域への試料の動電的移動)を促進することができる。電場は更に、上述したように、電気泳動(例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE))による試料中の分析物の分離を促進することができる。例えば、電場は、マイクロ流体デバイスの分離媒体を通る試料中の分析物を導くように構成されてもよい。電場は、分析物の物理的特性に基づく試料中の分析物の分離を促進するように構成されてもよい。例えば、電場は、分析物の分子量、サイズ、電荷(例えば、電荷対質量比)、等電点等に基づく試料中の分析物の分離を促進するように構成されてもよい。ある場合には、電場は、分析物の分子量に基づいて試料中の分析物の分離を促進するように構成されている。
【0040】
ある実施形態では、2以上の電場の方向が異なってもよい。例えば、第1の電場が、分離媒体の分離流路の方向軸に揃えられてもよい。第1の電場は、分離流路に沿って分離媒体を通る試料又は分析物を導くように構成されてもよい。第2の電場が、結合媒体の流路の方向軸に揃えられてもよい。場合によっては、第2の電場は、結合媒体の流路に沿って分離媒体から結合媒体に試料又は分析物を導くように構成されている。第2の電場は、分析物が結合媒体と接して結合するように、分離媒体から結合媒体に分析物を導くように構成されてもよい。上述したように、ある場合には、結合媒体の流路の方向軸は、分離流路の方向軸と直交している。これらの場合には、第2の電場は、第1の電場と直交してもよい。
【0041】
ある実施形態では、マイクロ流体デバイスは、電場を発生するように構成されている1以上の電場発生器を備えている。電場発生器は、分離媒体、結合媒体、充填媒体等のうちの1以上のマイクロ流体デバイスの種々の領域に電場を印加するように構成されてもよい。電場発生器は、マイクロ流体デバイスの種々の媒体を通る試料中の分析物及び要素を動電的に運ぶように構成されてもよい。ある場合には、電場発生器は、マイクロ流体デバイス上に配置される等、マイクロ流体デバイスの近傍にあってもよい。場合によっては、電場発生器は、マイクロ流体デバイスから離れて配置されている。例えば、電場発生器は、以下により詳細に記載するように、分析物を検出するためのシステム内に組み込まれてもよい。
【0042】
マイクロ流体デバイスの実施形態では、マイクロ流体デバイスは、マイクロ流体デバイスに使用されるアッセイ条件、試料、緩衝液、試薬等に適合するあらゆる好適な材料から作製されてもよい。場合によっては、マイクロ流体デバイスは、主題のマイクロ流体デバイス及び方法に使用される試料、緩衝液、試薬等に対して不活性な(例えば、劣化しないか又は反応しない)材料から作製されている。例えば、マイクロ流体デバイスは、限定されないが、ガラス、石英、ポリマー、エラストマー、紙、それらの組み合わせ等の材料から作製されてもよい。
【0043】
場合によっては、マイクロ流体デバイスは、1以上の試料注入ポートを備えている。試料注入ポートは、試料がマイクロ流体デバイス内に導入され得るように構成されてもよい。試料注入ポートは、分離媒体と流体連通してもよい。場合によっては、試料注入ポートは、分離媒体の上流端部と流体連通する。試料注入ポートは、流体が試料注入ポートから流出するのを防止するような構造を更に含んでもよい。例えば、試料注入ポートは、キャップ、弁、シール等を含んでもよく、これらは、マイクロ流体デバイス内への試料の導入を可能にするように、例えば、穿孔されるか又は開放されることができ、その後、試料及び/又は緩衝液を含む流体が試料注入ポートから流出するのを実質的に防止するように再密封されるか又は閉鎖されることができる。
【0044】
ある実施形態では、マイクロ流体デバイスは略透明である。「透明」とは、ある物質が、その物質に可視光を透過させることを意味する。ある実施形態では、透明なマイクロ流体デバイスは、結合媒体に結合した分析物、例えば、蛍光標識等の検出可能な標識を含む分析物等の検出を促進する。場合によっては、マイクロ流体デバイスは略不透明である。「不透明」とは、ある物質が、その物質に可視光を透過させないことを意味する。ある場合には、不透明なマイクロ流体デバイスは、光の存在下で反応するか又は劣化する分析物等の、感光性の分析物の分析を促進することができる。
【0045】
ある態様では、図2に示されているように、分離媒体及び結合媒体が単一の共通のチャンバ内に含まれている。これらの実施形態では、マイクロ流体デバイスはチャンバを備えている。チャンバは分離媒体及び結合媒体を含んでもよい。上述したように、分離媒体は、直接的な物理的接触等により、結合媒体と流体連通してもよい。場合によっては、分離媒体は、結合媒体と隣接して連続的に光パターニングされる等、結合媒体に結合している。そのため、チャンバは、互いに流体連通する分離媒体及び結合媒体の両方を収容するように構成されてもよい。
【0046】
分離媒体及び結合媒体に加えて、チャンバは、充填媒体を更に含んでもよい。充填媒体は、分離媒体と流体連通してもよい。場合によっては、充填媒体は、分離媒体と直接的且つ物理的に接している。例えば、充填媒体は、分離媒体と隣接して連続的に光パターニングされる等、分離媒体に結合してもよい。充填媒体は、試料が分離媒体と接する前に充填媒体と接するように設けられてもよい。ある実施形態では、充填媒体は、試料の分離媒体との接触を促進する。例えば、充填媒体は、試料が分離媒体と接する前に試料を濃縮するように構成されてもよい。ある実施形態では、充填媒体は、異なる物理的及び/又は化学的な特性を有する2以上の領域を含んでもよい。充填媒体は、充填領域及び蓄積領域を含んでもよい。充填媒体は、蓄積領域から上流側に充填領域を含むように構成されてもよい。
【0047】
ある実施形態では、充填媒体は、ポリマーゲル等のポリマーを含んでいる。ポリマーゲルは、ゲル電気泳動に好適なゲルであってもよい。ポリマーゲルは、限定されないが、ポリアクリルアミドゲル、アガロースゲル等を含んでもよい。場合によっては、充填領域は、孔径が大きいポリマーゲルを含んでいる。例えば、充填領域は、5%以下、例えば3%以下、又は2%以下を含む4%以下の総アクリルアミド含有量を有するポリアクリルアミドゲルを含んでもよい。場合によっては、充填領域は、3%の総アクリルアミド含有量を有する。場合によっては、充填媒体の蓄積領域は、試料が分離媒体と接する前に試料を濃縮するように構成されてもよい。蓄積領域は、充填領域より孔径が小さいポリマーゲルを含んでもよい。例えば、蓄積領域は、5%〜10%、例えば5%〜8%、又は5%〜7%を含む5%〜9%の範囲の総アクリルアミド含有量を有するポリアクリルアミドゲルを含んでもよい。場合によっては、蓄積領域は6%の総アクリルアミド含有量を有する。蓄積領域のより小さい孔径は、蓄積領域を通る試料の電気泳動移動を遅らせることができ、従って試料が分離媒体と接する前に試料を濃縮する。
【0048】
ある場合には、チャンバは、充填媒体、分離媒体及び結合媒体を収容する。チャンバは、上述したように、充填媒体、分離媒体及び結合媒体が互いに流体連通するように、充填媒体、分離媒体及び結合媒体を収容するように構成されてもよい。例えば、チャンバは、種々の領域を有する連続的なポリマーゲルモノリスを含んでもよい。連続的なポリマーゲルモノリスの各領域は、異なる物理的及び/又は化学的な特性を有してもよい。連続的なポリマーゲルモノリスは、充填媒体を有する第1の領域、分離媒体を有する第2の領域、及び結合媒体を有する第3の領域を含んでもよい。ポリマーゲルモノリスの各領域の流路は、試料が、最初に充填媒体と接し、次いで分離媒体と接し、最後に結合媒体と接するように構成されてもよい。
【0049】
ある実施形態では、ポリマーゲルモノリスは、0.1mm〜5mm、例えば0.5mm〜1.5mmを含む0.2mm〜2.5mmの範囲の幅を有する。場合によっては、ポリマーゲルモノリスは1mmの幅を有する。場合によっては、ポリマーゲルモノリスは、0.5mm〜5mm、例えば1mm〜2mmを含む0.5mm〜3mmの範囲の長さを有する。ある場合には、ポリマーゲルモノリスは1.5mmの長さを有する。ある実施形態では、充填媒体を含むポリマーゲルモノリスの第1の領域は、0.1mm〜5mm、例えば0.5mm〜1.5mmを含む0.2mm〜2.5mmの範囲の幅を有する。場合によっては、充填媒体を含むポリマーゲルモノリスの第1の領域は、0.9mmの幅を有する。場合によっては、充填媒体を含むポリマーゲルモノリスの第1の領域は、0.1mm〜2mm、例えば0.1mm〜0.5mmを含む0.1mm〜1mmの範囲の長さを有する。ある実施形態では、充填媒体を含むポリマーゲルモノリスの第1の領域は0.2mmの長さを有する。ある場合には、分離媒体を含むポリマーゲルモノリスの第2の領域は、0.1mm〜5mm、例えば0.5mm〜1.5mmを含む0.2mm〜2.5mmの範囲の幅を有する。場合によっては、分離媒体を含むポリマーゲルモノリスの第2の領域は、0.9mmの幅を有する。場合によっては、分離媒体を含むポリマーゲルモノリスの第2の領域は、0.5mm〜5mm、例えば1mm〜2mmを含む0.5mm〜3mmの範囲の長さを有する。ある実施形態では、分離媒体を含むポリマーゲルモノリスの第2の領域は、1.3mmの長さを有する。ある場合には、結合媒体を含むポリマーゲルモノリスの第3の領域は、0.01mm〜2mm、例えば0.05mm〜0.5mmを含む0.01mm〜1mmの範囲の幅を有する。場合によっては、結合媒体を含むポリマーゲルモノリスの第3の領域は、0.1mmの幅を有する。場合によっては、結合媒体を含むポリマーゲルモノリスの第3の領域は、0.5mm〜5mm、例えば1mm〜2mmを含む0.5mm〜3mmの範囲の長さを有する。ある実施形態では、結合媒体を含むポリマーゲルモノリスの第3の領域は、1.5mmの長さを有する。
【0050】
ある実施形態では、マイクロ流体デバイスは、10cm〜1mm、例えば1cm〜5mmを含む5cm〜5mmの範囲の幅を有する。場合によっては、マイクロ流体デバイスは、100cm〜1mm、例えば10cm〜5mm又は1cm〜5mmを含む50cm〜1mmの範囲の長さを有する。ある態様では、マイクロ流体デバイスは、1000cm2 以下、例えば50cm2 以下を含む100cm2 以下、例えば、10cm2 以下、5cm2 以下、3cm2 以下、1cm2 以下、0.5cm2 以下、0.25cm2 以下、又は0.1cm2 以下の面積を有する。
【0051】
関連するマイクロ流体デバイスの更なる態様が、2011年1月24日に出願された米国特許出願第13/055,679号明細書に見出され、その開示は、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0052】
図1の(a)は、マイクロ流体デバイス10の写真図を示す。図1の(b)に示されているように、マイクロ流体デバイス10は、充填媒体、分離媒体及び結合媒体を収容するチャンバ11を備えている。マイクロ流体デバイス10は、流入チャネル1、2、3、及び制御チャネル4、5、6、7、8等の種々のマイクロ流体チャネルを更に備えている。各マイクロ流体チャネルは、(黒い点で表されている)対応するアクセスポートを有している。
【0053】
図2は、充填媒体22、分離媒体23及び結合媒体24を収容するチャンバ21を備えたマイクロ流体デバイス20の概略図を示す。充填媒体22は分離媒体23と流体連通しており、分離媒体23は結合媒体24と流体連通している。分離媒体23の方向軸が、垂直方向の矢印によって示されており、試料が充填媒体22から分離媒体23へ、更に分離媒体23を通って横切る流路を示している。結合媒体24の方向軸が、水平方向の矢印によって示されており、試料が分離媒体23から結合媒体24に横切る流路を示している。マイクロ流体デバイス20は、流入チャネル1、2、3、及び制御チャネル4、5、6、7、8等の種々のマイクロ流体チャネルを更に備えている。流入チャネル1、2、3は、流体試料をチャンバ21内に導くように構成され得る。制御チャネル4、5、6、7、8は、チャンバ21内に及び/又はチャンバ21から離れるように流体(例えば、試薬、標識、緩衝液、洗浄液等)を導くように構成されてもよい。更に、制御チャネル4、5、6、7、8は、チャンバ21内の充填媒体22、分離媒体23及び結合媒体24を通って試料中の分析物を動電的に運ぶために、マイクロ流体デバイスの種々の領域に電場を印加するように構成されてもよい。
【0054】
方法
本方法の実施形態は、試料中に分析物が存在するか否かを判定すること、例えば、試料中の1以上の分析物の有無を判定することを対象としている。本方法のある実施形態では、試料中の1以上の分析物の存在が定質的に又は定量的に判定され得る。定質的判定は、試料中の分析物の存在に関する単純な存在/非存在の結果がユーザに提供される判定を含む。定量的判定は、試料中の分析物の量に関して、例えば少ない、中程度、多い等の大まかな結果がユーザに提供される半定量的判定と、分析物の濃度の正確な測定値がユーザに提供される詳細な結果との両方を含む。
【0055】
ある実施形態では、マイクロ流体デバイスは、試料中の1以上の分析物の存在を検出するように構成されている。本方法は、マイクロ流体デバイス内に流体試料を導入することを含む。マイクロ流体デバイス内に流体試料を導入することは、試料を分離媒体と接触させることを含んでもよく、又は充填媒体を含むマイクロ流体デバイスの実施形態では、試料を充填媒体と接触させることを含んでもよい。本方法は、分離媒体を通して試料を導いて、分離した試料を生成することを更に含む。場合によっては、分離した試料は、上述したように、試料が分離媒体を横切るときにゲル電気泳動によって生成される。分離した試料は、分析物の異なる検出可能なバンドを含んでもよく、各バンドは、行われるゲル電気泳動の種類に応じて分子量、サイズ、電荷(例えば、電荷対質量比)、等電点等の略同様の特性を有する1以上の分析物を含む。
【0056】
本方法の態様は、分離した試料を汎捕捉性の結合媒体に移動させることを更に含み得る。ある実施形態では、本方法は、分離した試料全体を汎捕捉性の結合媒体に移動させることを含む。他の場合には、分離した試料中の分析物の特定のバンドが、結合媒体に選択的に移動されてもよい。場合によっては、本本法は、分離した試料中の分析物を汎捕捉性の結合媒体と接触させることを含む。上述したように、汎捕捉性の結合媒体は、分析物に非特異的に結合するように構成されてもよく、従って、略全ての分析物を結合媒体中に保持する。
【0057】
ある実施形態では、本方法は、結合媒体に結合した対象となる分析物を検出することを含む。対象となる分析物の結合媒体への検出可能な結合は、試料中の対象となる分析物の存在を表す。場合によっては、対象となる分析物を検出することは、対象となる分析物に特異的に結合するように構成されている標識と対象となる分析物を接触させることを含む。標識は、標的とされるタンパク質、核酸配列又は生体高分子(例えば、対象となる分析物)に特異的に結合するあらゆる分子であってもよい。分析物の性質に応じて、標識は、限定されないが、核酸を検出するための標的DNA又はRNA配列の特有な領域に相補的なDNAの一本鎖、タンパク質及びペプチドを検出するためのペプチド分析物のエピトープに対する抗体、又は、特異的結合対のメンバー等のあらゆる認識分子であってもよい。例えば、好適な特異的結合対は、限定されないが、受容体/リガンド対のメンバー、受容体のリガンド結合部分、抗体/抗原対のメンバー、抗体の抗原結合断片、ハプテン、レクチン/炭水化物対のメンバー、酵素/基質対のメンバー、ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、ジゴキシン/抗ジゴキシン、DNA又はRNAのアプタマー結合対のメンバー、ペプチドアプタマー結合対のメンバー等を含む。ある実施形態では、標識は抗体を含む。抗体は、対象となる分析物に特異的に結合することができる。
【0058】
ある実施形態では、標識は検出可能な標識を含む。検出可能な標識は、本方法及びシステムを使用して検出され得るあらゆる便利な標識を含み、限定されないが、蛍光標識、比色標識、化学発光標識、マルチカラー試薬、酵素結合試薬、アビジン−ストレプトアビジン会合検出試薬、放射標識、金粒子、磁気標識等を含んでもよい。ある実施形態では、標識は、検出可能な標識と会合した抗体を含む。例えば、標識は、対象となる分析物に特異的に結合する蛍光標識された抗体を含んでもよい。
【0059】
主題の方法を用いてアッセイされ得る試料は、単純試料及び複合試料の両方を含んでもよい。単純試料は、対象となる分析物を含む試料であり、対象とならない1以上の分子要素を含んでも含まなくてもよく、これらの非対象分子要素の数は少なくてもよく、例えば、10以下、5以下等である。単純試料は、初めの生体試料、又は、例えば干渉し得る分子要素を試料から除去するために何らかの方法で処理された他の試料を含み得る。「複合試料」とは、対象となる分析物を有しても有さなくてもよいが、対象とならない多くの異なるタンパク質及び他の分子を更に含む試料を意味する。場合によっては、主題の方法でアッセイされる複合試料は、分子構造又は物理的特性(例えば、分子量、サイズ、電荷、等電点等)で互いに異なる10以上、例えば100以上を含む20以上、例えば103 以上、15,000、20,000又は25,000以上のような104 以上の別個の(すなわち、異なる)分子要素を含む試料である。
【0060】
ある実施形態では、対象となる試料は、限定されないが、尿、血液、血清、血漿、唾液、精液、前立腺液、乳頭吸引液、涙液、汗、便、口腔粘膜採取検体、脳脊髄液、細胞溶解物試料、羊水、胃腸液、生検組織(例えば、レーザー・キャプチャー・マイクロダイセクション(LCM)から得られた試料)等の生体試料である。試料は、生体試料であり得るか、又はDNA、RNA、タンパク質及びペプチドを適切に抽出するための従来の方法を使用して、ヒト、動物、植物、菌類、酵母、細菌、組織培養、ウイルス培養、又はそれらの組合せに由来する生体試料から抽出されてもよい。ある実施形態では、試料は、流体中の分析物の溶液等の流体試料である。流体は、限定されないが、水、緩衝液等の水溶液であってもよい。
【0061】
上述したように、主題の方法でアッセイされ得る試料は、1以上の対象となる分析物を含み得る。検出可能な分析物の例として、限定されないが、核酸、例えば、二本鎖又は一本鎖のDNA、二本鎖又は一本鎖のRNA、DNA−RNAハイブリッド、DNAアプタマー、RNAアプタマー等と、修飾されているか又は修飾されていないタンパク質及びペプチド、例えば、抗体、二重特異性抗体、Fab断片、DNA又はRNAの結合タンパク質、リン酸化タンパク質(リン酸化プロテオミクス)、ペプチドアプタマー、エピトープ等と、阻害因子、活性因子、リガンド等の小分子と、オリゴ糖類又は多糖類と、それらの混合物等とが挙げられる。
【0062】
ある実施形態では、本方法は、分離媒体を通して試料を導く前に、試料を濃縮するか、希釈するか、又はバッファ交換することを含む。試料を濃縮することは、試料を分離媒体と接触させる前に、試料を濃縮媒体と接触させることを含んでもよい。濃縮媒体は、小孔径ポリマーゲル、膜(例えば、サイズ排除膜)、それらの組み合わせ等を含んでもよい。試料が分離媒体を通って横切るときに分析物の各分離したバンドがあまり分散しない可能性があるため、試料を分離媒体と接触させる前に試料を濃縮することによって、分離した試料中の分析物のバンド間の分解能が増加し易くなる。試料を希釈することは、試料を分離媒体と接触させる前に、試料を追加の緩衝液と接触させることを含んでもよい。試料のバッファ交換は、試料を分離媒体と接触させる前に、試料をバッファ交換媒体と接触させることを含んでもよい。バッファ交換媒体は、試料緩衝液とは異なる緩衝液を含んでもよい。バッファ交換媒体は、限定されないが、分子篩、多孔性樹脂等を含んでもよい。
【0063】
ある実施形態では、本方法は、対象となる分析物を検出する前に、結合媒体に結合する分離した分析物をブロッキング剤と接触させることを含む。場合によっては、対象となる分析物を検出する前に、分離した分析物をブロッキング剤と接触させることにより、検出可能な標識の分離した分析物への非特異的結合を最小限度に抑えることが可能になる。例えば、対象となる分析物を検出する前に、分離した分析物をブロッキング剤と接触させることにより、標識が付された抗体の分離した分析物への非特異的結合を最小限度に抑えることが可能になる。ブロッキング剤は、上述したように機能するあらゆるブロッキング剤であってもよく、限定されないが、ウシ血清アルブミン(BSA)、脱脂粉乳、カゼイン、及びゼラチンを含んでもよい。ある実施形態では、本方法は、本方法の他のステップの前、他のステップの間、及び他のステップの後の種々の時点で行われてもよい任意の洗浄ステップを更に含む。例えば、洗浄ステップは、分離した試料を分離媒体から結合媒体に移動させた後、分離した試料をブロッキング剤と接触させた後、分離した試料を検出可能な標識と接触させた後等に行われてもよい。
【0064】
本方法の実施形態は、結合媒体に結合した分析物を剥離することを更に含んでもよい。剥離することは、結合した分析物を剥離剤と接触させることを含んでもよい。剥離剤は、分析物と結合媒体との結合相互作用を阻害するように構成されてもよい。場合によっては、剥離剤は、分析物と結合媒体との結合相互作用を阻害し、結合媒体に分析物を解放させる試薬、緩衝液等である。結合媒体から分析物を剥離した後、本方法は、分析物を結合媒体から離して移動させることを含んでもよい。例えば、本方法は、限定されないが、紫外分光計、赤外分光計、質量分析計、HPLC、親和性アッセイデバイス等の二次的分析デバイスを用いた二次分析のために、剥離した分析物を結合媒体から下流側に導くことを含んでもよい。
【0065】
ある実施形態では、本方法は、試料中の分析物の一重(uniplex)分析を含む。「一重分析」とは、試料中の1の分析物の存在を検出するために試料が分析されることを意味する。例えば、試料は、対象となる分析物と対象とならない他の分子要素との混合物を含み得る。場合によっては、本方法は、試料混合物中の対象となる分析物の存在を判定するための試料の一重分析を含む。
【0066】
ある実施形態は、試料中の2以上の分析物の多重(multiplex)分析を含む。「多重分析」とは、2以上の分析物が互いに異なる2以上の別個の分析物の存在が判定されることを意味する。例えば、分析物は、それらの分子量、サイズ、電荷(例えば、質量対電荷比)、等電点等における検出可能な差異を含み得る。場合によっては、分析物の数は、2より多くの、例えば、4以上、6以上、8以上等、最高20以上、例えば100以上を含む50以上の別個の分析物である。ある実施形態では、本方法は、2〜100の別個の分析物、例えば4〜20の別個の分析物を含む4〜50の別個の分析物の多重分析を含む。ある実施形態では、多重分析は、2以上の異なる検出可能な標識の使用を更に含む。2以上の異なる検出可能な標識は、同一の又は異なる分析物に特異的に結合することができる。場合によっては、2以上の異なる検出可能な標識が、同一の分析物に特異的に結合することができる。例えば、2以上の異なる検出可能な標識は、同一の分析物上の異なるエピトープに特異的な異なる抗体を含んでもよい。同一の分析物に特異的な2以上の検出可能な標識の使用は、シグナル対ノイズ比を向上させることによって分析物の検出を容易にすることができる。他の場合には、2以上の異なる検出可能な標識は、異なる分析物に特異的に結合することができる。例えば、2以上の検出可能な標識は、異なる分析物上のエピトープに特異的な異なる抗体を含んでもよい。異なる分析物に夫々特異的な2以上の検出可能な標識の使用は、単一のアッセイにおける試料中の2以上の夫々の分析物の検出を容易にすることができる。
【0067】
ある実施形態では、本方法は自動化された方法である。そのため、本方法は、マイクロ流体デバイス内に試料を導入した後、ユーザとマイクロ流体デバイス及びシステムとのやり取りを最小限度に抑える。例えば、分離媒体を通して試料を導き、分離した試料を生成するステップ、及び分離した試料を結合媒体に移動させるステップは、マイクロ流体デバイス及びシステムによって行われ、ユーザがこれらのステップを手動で行う必要がない。場合によっては、自動化された方法により、全アッセイ時間が短縮され得る。例えば、試料中の分析物の分離及び検出を含む本方法の実施形態は、30分以内、例えば15分以内、10分以内、5分以内、2分以内、又は1分以内を含む20分以内に行われ得る。
【0068】
図3は、試料中の分析物の存在を検出するための方法の一実施形態の概略図を示す。この方法は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、PAGEに続く分離後の試料移動、最後に標識が付された抗体プローブを使用した検出を含む。分析物は、PAGE分離媒体から連続的な汎捕捉性の結合媒体へと動電的に移動され、特異的親和性相互作用によってその場所で特定される。ステップ1(図3の(a))では、試料30を充填媒体31と接触させる。試料は臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を含んでおり、CTABは、等モル比で試料中の分析物(例えば、タンパク質)に結合して略同一の電荷対質量比を有する分析物を生成する。そのため、CTABで処理したタンパク質の分離に関して、線形対数分子量(Mr)対移動度の関係が観察される(図7(下方)参照)。更に、CTABで処理したタンパク質は正の電荷を有しており、試料中のタンパク質を負に帯電した汎捕捉性の結合媒体に静電結合させ易くする。試料30を充填媒体31と接触させた後、試料を、充填媒体31を通って充填媒体31と分離媒体32との界面に導くために、分離媒体の方向軸に沿って電場を印加する(図3の(a)及び(b))。ステップ2(図3の(b)及び(c))では、試料中の種々の分析物を、分離媒体32を通る電気泳動によって分離する。分離媒体32は、第1の方向軸の分離流路を有する。分離媒体32を通して試料を導くために、(垂直方向の矢印によって示されている)第1の方向軸に沿って電場を印加する(図3の(b))。ステップ3(図3の(c)及び(d))では、分離した分析物33を汎捕捉性の結合媒体34に導くために、(水平方向の矢印によって示されている)第2の方向軸に沿って電場を印加することによって、分離した分析物33を汎捕捉性の結合媒体34に移動させることができる(図3の(c))。汎捕捉性の結合媒体は、アルカリ性緩衝液(例えば、トリシン−アルギニン緩衝液)を含んでおり、負に帯電している。正に帯電し分離した分析物は、負に帯電した結合媒体に静電的に結合する(図3の(d))。ステップ4(図3の(e))では、ブロッキング剤(例えば、BSA)を、結合媒体に結合する分離した分析物と接触させる。場合によっては、ブロッキング剤は、標識が付された抗体の分離した分析物への非特異的結合を最小限度に抑える。分離した分析物とブロッキング剤を接触させた後、ブロッキング剤を洗い流してもよい(図3の(f))。ステップ5(図3の(g))では、検出可能な標識(例えば、蛍光標識が付された抗体)を、結合媒体に結合する分離した分析物と接触させる。検出可能な標識は、対象となる分析物35(例えば、標的タンパク質)に特異的に結合する。バックグラウンド信号を減らすために、未結合の標識を洗い流す(図3の(h))。検出可能な標識の陽性検出が、試料中の対象となる分析物35の存在を表す。
【0069】
システム
ある実施形態の態様は、試料中の分析物を検出するためのシステムを含む。場合によっては、システムは、本明細書に記載されているようなマイクロ流体デバイスを備えている。システムは、検出器を更に備えてもよい。場合によっては、検出器は、検出可能な標識を検出するように構成されている検出器である。検出器は、アッセイに使用される検出可能な標識を検出するように構成されているあらゆる種類の検出器を備えてもよい。上述したように、検出可能な標識は、蛍光標識、比色標識、化学発光標識、マルチカラー試薬、酵素結合試薬、アビジン−ストレプトアビジン会合検出試薬、放射標識、金粒子、磁気標識等であってもよい。場合によっては、検出可能な標識は蛍光標識である。これらの場合、検出器は、蛍光標識を励起して検出可能な電磁放射線(例えば、可視光等)を蛍光標識に放出させる電磁放射線(例えば、可視光、UV、X線等)と蛍光標識を接触させるように構成されてもよい。放出された電磁放射線は、結合媒体に結合した分析物の存在を判定するために、検出器によって検出され得る。
【0070】
場合によっては、検出器は、上述したように、蛍光標識からの放出を検出するように構成されてもよい。ある場合には、検出器は、光電子増倍管(PMT)、電荷結合素子(CCD)、増強電荷結合素子(ICCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)センサ、視覚比色読み出し情報、フォトダイオード等を含んでいる。
【0071】
本開示のシステムは、必要に応じて種々の他の構成要素を含むことができる。例えば、システムは、マイクロ流体の流体処理要素等の流体処理要素を含んでもよい。流体処理要素は、マイクロ流体デバイスを通して1以上の流体を導くように構成されてもよい。場合によっては、流体処理要素は、限定されないが、試料溶液、緩衝液(例えば、電気泳動緩衝液、洗浄緩衝液、剥離緩衝液等)等の流体を導くように構成されている。ある実施形態では、マイクロ流体の流体処理要素は、流体が分離媒体に接するように、マイクロ流体デバイスの分離媒体に流体を運ぶように構成されている。流体処理要素は、マイクロ流体ポンプを含んでもよい。場合によっては、マイクロ流体ポンプは、本明細書に開示されているマイクロ流体デバイス及びシステムを通る流体の圧力駆動によるマイクロ流体処理及び分配のために構成されている。ある場合には、マイクロ流体の流体処理要素は、少量の流体、例えば1mL以下、例えば100μL以下を含む500μL以下、例えば50μL以下、25μL以下、10μL以下、5μL以下、又は1μL以下の流体を運ぶように構成されている。
【0072】
ある実施形態では、システムは、1以上の電場発生器を備えている。電場発生器は、マイクロ流体デバイスの種々の領域に電場を印加するように構成されてもよい。システムは、試料がマイクロ流体デバイスを通って動電的に運ばれるように、電場を印加するように構成されてもよい。例えば、電場発生器は、分離媒体に電場を印加するように構成されてもよい。場合によっては、印加される電場は、分離媒体の分離流路の方向軸と揃えられてもよい。そのため、印加される電場は、分離媒体を通して試料中の分析物及び要素を動電的に運ぶように構成されてもよい。ある実施形態では、システムは、試料中の分析物及び/又は要素が分離媒体から結合媒体に動電的に運ばれるように、電場を印加すべく構成されている電場発生器を備えている。例えば、印加される電場は、結合媒体の流路の方向軸と揃えられてもよい。場合によっては、印加される電場は、分離媒体によって分離され選択された分析物を動電的に運ぶように構成されている。分離媒体によって分離された分析物は、結合媒体の流路の方向軸に沿って適切な電場を印加することによって結合媒体に運ばれてもよい。場合によっては、電場発生器は、10V/cm〜1000V/cm、例えば200V/cm〜600V/cmを含む100V/cm〜800V/cmの範囲の強度で電場を印加するように構成されている。
【0073】
ある実施形態では、電場発生器は電圧調整要素を含んでいる。場合によっては、電圧調整要素は、印加される電場の強度が分離媒体及び/又は結合媒体に亘って略均一であるように、印加される電場の強度を制御するように構成されている。電圧調整要素は、試料中の分析物の分解能を増加させ得る。例えば、電圧調整要素は、分離媒体を通る試料の非均一的な移動を減少させ得る。更に、電圧調整要素は、分析物が分離媒体を横切るときに、分析物のバンドの分散を最小限度に抑えることができる。
【0074】
ある実施形態では、主題のシステムは、バイオチップ(例えば、バイオセンサチップ)である。「バイオチップ」又は「バイオセンサチップ」とは、基板の表面に2以上の別個のマイクロ流体デバイスを表示する基板表面を含むマイクロ流体システムを意味する。ある実施形態では、マイクロ流体システムは、マイクロ流体デバイスのアレイを有する基板表面を備えている。
【0075】
「アレイ」は、アドレス可能な領域の任意の二次元的な又は実質的に二次元的な(及び三次元的な)配置、例えば、空間的にアドレス可能な領域を含んでいる。アレイは、アレイの特定の所定の位置(例えば、「アドレス」)に置かれた複数のデバイスを有する場合に、「アドレス可能」である。アレイの特徴(例えば、デバイス)は、介在する空間によって分離されてもよい。任意の所与の基板が、基板の前面に配置された1、2、4、又はそれ以上のアレイを有してもよい。使用法に応じて、アレイのうちのいずれか又は全てが同一であってもよいか又は互いに異なってもよく、各々が、複数の異なるマイクロ流体デバイスを有してもよい。アレイは、2以上、4以上、8以上、10以上、25以上、50以上、又は100以上を含む1以上のマイクロ流体デバイスを有してもよい。ある実施形態では、マイクロ流体デバイスは、100cm2 以下、50cm2 以下、25cm2 以下、10cm2 以下、又は5cm2 以下、例えば50mm2 以下、20mm2 以下、又は10mm2 以下を含む1cm2 以下、又はそれより更に小さい面積を有するアレイ内に配置されてもよい。例えば、マイクロ流体デバイスは、100mm×100mm以下を含む10mm×10mm〜200mm×200mmの範囲の寸法、例えば50mm×50mm以下、例えば25mm×25mm以下、10mm×10mm以下、又は5mm×5mm以下、例えば1mm×1mm以下の寸法を有してもよい。
【0076】
マイクロ流体デバイスのアレイは、試料の多重分析のために設けられてもよい。例えば、一連のマイクロ流体デバイス内で複数の異なる分析物の存在について試料を分析することができるように、複数のマイクロ流体デバイスが直列に配置されてもよい。ある実施形態では、2以上の試料を略同時に分析できるように、複数のマイクロ流体デバイスが並列に配置されてもよい。
【0077】
システムの態様は、マイクロ流体デバイスが、依然として検出可能な結果を与える一方で、最小量の試料を消費するように構成されてもよいことを含む。例えば、システムは、依然として検出可能な結果を与える一方で、100μL以下、例えば50μL以下、25μL以下、又は10μL以下を含む75μL以下、例えば5μL以下、2μL以下、又は1μL以下の試料体積を使用するように構成されてもよい。ある実施形態では、システムは、1nM以下、例えば100pM以下を含む500pM以下、例えば1pM以下、500fM以下、又は250fM以下、例えば50fM以下、25fM以下、又は10fM以下を含む100fM以下の検出感度を有するように構成されている。場合によっては、システムは、1μg/mL以下、例えば100ng/mL以下を含む500ng/mL以下、例えば10ng/mL以下、又は5ng/mL以下、例えば1ng/mL以下、0.1ng/mL以下、又は1pg/mL以下を含む0.01ng/mL以下の濃度の分析物を検出することができるように構成されている。ある実施形態では、システムは、10-18 M〜10M、例えば10-12 M〜10-6Mを含む10-15 M〜10-3Mの範囲のダイナミックレンジを有する。
【0078】
ある実施形態では、マイクロ流体デバイスは、1℃〜100℃、例えば10℃〜50℃を含む5℃〜75℃、又は20℃〜40℃の範囲の温度で作動される。場合によっては、マイクロ流体デバイスは、35℃〜40℃の範囲の温度で作動される。
【0079】
図5は、マイクロ流体システムの写真図及び拡大図を示す。ある実施形態では、マイクロ流体システムは、蛍光顕微鏡501内に配置されているマイクロ流体デバイス500を備えている。蛍光顕微鏡501は、光源503及び検出器502に動作可能に接続されている。場合によっては、システムは、アッセイを行うときにシステムの種々の構成要素を制御するように構成されているコンピュータ505を備えている。コンピュータ505は更に、アッセイによって生成されたデータを記憶して分析するように構成されてもよい。ある場合には、システムは、高電圧シーケンサ等の電場発生器504を備えている。電場発生器504は、電極508を含むリード線507によってマイクロ流体デバイス500に動作可能に接続されてもよい。マイクロ流体デバイス500は、マイクロ流体デバイス500を蛍光顕微鏡501内に配置するためのガイドワイヤ509を更に備えてもよい。更に、マイクロ流体デバイス500は、流体(例えば、試料流体、緩衝液、検出可能な標識、試薬等)の流れをマイクロ流体デバイス500へと導くように構成されているマニホールド510に流体接続されてもよい。アッセイに使用するために、試料、緩衝液、検出可能な標識、試薬等が試験管506に含まれてもよい。
【0080】
有用性
主題のマイクロ流体デバイス、システム、及び方法は、試料中の1以上の分析物の有無の判定、及び/又は定量化が所望される様々な異なる用途に使用される。例えば、主題のマイクロ流体デバイス、システム、及び方法は、タンパク質、ペプチド、核酸等の分離及び検出に使用される。場合によっては、主題のマイクロ流体デバイス、システム、及び方法は、タンパク質の分離及び検出に使用される。ある場合には、タンパク質は天然のタンパク質(例えば、未変性タンパク質)である。例えば、マイクロ流体デバイスは、タンパク質を変性させることなく天然のタンパク質を分離するように構成されている分離媒体を備えてもよい。場合によっては、分離媒体は、試料中のタンパク質を著しく変性させない試薬、緩衝液、界面活性剤等を使用すること等によって、非変性条件下でタンパク質を分離するように構成されている。例えば、分離媒体は、限定されないが、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)等の非変性界面活性剤を含んでもよい。非変性条件の使用は、試料中のタンパク質を復元する必要性を排除することによって、全体的な分離及び検出のプロセスを簡略化することができる。
【0081】
ある実施形態では、主題のマイクロ流体デバイス、システム、及び方法は、試料中の核酸、タンパク質、又は他の生体分子の検出に使用される。方法は、一組のバイオマーカー、例えば、試料中の2以上の別個のタンパク質バイオマーカーの検出を含んでもよい。例えば、方法は、例えば対象の病態の診断、又は対象の病態の継続的な管理若しくは治療に用いられるように、生体試料中の2以上の疾患バイオマーカーの迅速な臨床検出に使用されてもよい。更に、主題のマイクロ流体デバイス、システム、及び方法は、限定されないが、ウエスタンブロット法、サザンブロット法、ノーザンブロット法、イースタンブロット法、ファーウエスタンブロット法、サウスウエスタンブロット法等の、試料中の分析物の検出のためのプロトコルに使用され得る。
【0082】
ある実施形態では、主題のマイクロ流体デバイス、システム、及び方法は、バイオマーカーの検出に使用される。場合によっては、主題のマイクロ流体デバイス、システム、及び方法は、限定されないが、尿、血液、血清、血漿、唾液、精液、前立腺液、乳頭吸引液、涙液、汗、便、口腔粘膜採取検体、脳脊髄液、細胞溶解物試料、羊水、胃腸液、生検組織等の、血液、血漿、血清、又は他の体液若しくは排出物中の特定のバイオマーカーの有無、特定のバイオマーカーの濃度の増減を検出するために使用されてもよい。
【0083】
バイオマーカーの有無、又はバイオマーカーの濃度の著しい変化は、個人における疾患リスク、疾患の存在を診断するため、又は個人における疾患に対する治療を調整するために使用され得る。例えば、特定のバイオマーカー又はバイオマーカーのパネルにより、個人に施される薬物治療又は投与計画の選択に影響を及ぼす可能性がある。薬物療法を評価する上で、バイオマーカーは、生存又は不可逆的な疾病等の自然なエンドポイントの代わりとして使用されてもよい。治療によって、健康の改善と直接的な関連性を有するバイオマーカーが変化する場合、バイオマーカーは、特定の治療計画又は投与計画の臨床的な利点を評価するための代替エンドポイントとしての役割を果たすことができる。よって、個人で検出された特定のバイオマーカー又はバイオマーカーのパネルに基づく個人に合わせた診断及び治療は、主題のマイクロ流体デバイス、システム、及び方法によって容易になる。更に、疾患に関連するバイオマーカーの早期検出は、上述したように、主題のマイクロ流体デバイス及びシステムの高い感度によって容易になる。感度、拡張性、及び使い易さと併せて、単一のチップで複数のバイオマーカーを検出する能力により、本開示のマイクロ流体デバイス、システム、及び方法は、携帯型のポイントオブケア診断又はベッドサイド分子診断に使用される。
【0084】
ある実施形態では、主題のマイクロ流体デバイス、システム、及び方法は、疾患又は病態に関するバイオマーカーの検出に使用される。ある場合には、主題のマイクロ流体デバイス、システム、及び方法は、創薬及びワクチン開発のための細胞シグナル伝達経路及び細胞内情報伝達機構の特徴付けに関するバイオマーカーの検出に使用される。例えば、主題のマイクロ流体デバイス、システム、及び方法は、疾患試料、正常試料、又は良性試料中のバイオマーカーの量を検出する及び/又は定量化するために使用されてもよい。ある実施形態では、主題のマイクロ流体デバイス、システム、及び方法は、感染症又は病態に関するバイオマーカーの検出に使用される。場合によっては、バイオマーカーは、限定されないが、タンパク質、核酸、炭水化物、小分子等の分子バイオマーカーであってもよい。
【0085】
主題のマイクロ流体デバイス、システム、及び方法は、限定されないが、上述したようなバイオマーカーの検出及び/又は定量化、無症候性の対象について一定間隔で試料を検査するスクリーニングアッセイ、バイオマーカーの存在及び/又は量を、起こり得る疾患の経過を予測するために使用する予後アッセイ、異なる薬物治療に対する対象の反応を予測することができる層別化アッセイ、薬物治療の有効性をモニタリングする有効性アッセイ等のような診断アッセイに使用される。
【0086】
主題のマイクロ流体デバイス、システム、及び方法は更に、検証アッセイにも使用される。例えば、検証アッセイは、疾患マーカーが、様々な個体に亘って疾患の有無の信頼性が高い指標であることを検証するか又は確認するために使用されてもよい。主題のマイクロ流体デバイス、システム、及び方法のアッセイ時間が短いことにより、最小の時間で複数の試料をスクリーニングするためにスループットが増大し得る。
【0087】
場合によっては、主題のマイクロ流体デバイス、システム、及び方法は、実施のために実験室を必要とせずに使用され得る。同等の分析研究用の実験機器と比較して、主題のマイクロ流体デバイス及びシステムは、携帯型の手持ち式システムで同等の分析感度を有する。場合によっては、大きさ及び操作コストが典型的な固定型実験機器よりも低い。対象となる分析物の分離、移動、標識の付与、及び検出を含むアッセイの全てのステップを単一の装置によって行うことができるように、主題のマイクロ流体デバイス及びシステムは単一の装置に組み込まれてもよい。例えば、場合によっては、対象となる分析物の分離、移動、標識の付与、及び検出のために別個の装置は存在しない。更に、主題のマイクロ流体デバイス及びシステムは、試料中の1以上の分析物を検出するために、医療訓練を受けていない人物によって、市販の家庭用検査のために家庭環境で用いられ得る。主題のマイクロ流体デバイス及びシステムは更に、臨床現場で、例えば、迅速な診断のためにベッドサイドで、又はコスト若しくは他の理由から固定型実験機器が提供されない現場で用いられてもよい。
【0088】
キット
本開示の態様は、本明細書に詳述されているようなマイクロ流体デバイスを有するキットを更に含む。キットは、緩衝液を更に含んでもよい。例えば、キットは、電気泳動緩衝液、試料緩衝液等の緩衝液を含んでもよい。ある場合には、緩衝液は、限定されないが、トリシン−アルギニン緩衝液等のアルカリ性緩衝液である。場合によっては、緩衝液は界面活性剤(SDS又はCTAB等)を含み、界面活性剤は、本明細書に記載されているように、分離したタンパク質の汎捕捉において用いられる。例えば、緩衝液は、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を含んでもよい。
【0089】
キットは、限定されないが、剥離剤、変性試薬、リフォールディング試薬、界面活性剤、検出可能な標識(例えば、蛍光標識、比色標識、化学発光標識、マルチカラー試薬、酵素結合試薬、検出試薬(例えば、アビジン−ストレプトアビジン会合検出試薬)、較正標準試薬、放射標識、金粒子、磁気標識等)等の付加的な試薬を更に含んでもよい。
【0090】
上述した構成要素に加えて、主題のキットは、主題の方法を行うための使用説明書を更に含んでもよい。これらの使用説明書は、主題のキット内に様々な形態で備えられてもよく、使用説明書のうちの一又は複数がキット内に備えられてもよい。これらの使用説明書が備えられる一形態は、好適な媒体又は基板上に印刷された情報であり、例えば、情報が印刷されている一又は複数の紙片、キットの包装体、又は添付文書等である。更なる別の手段は、情報が記録されているか又は保存されているコンピュータ可読媒体であり、例えば、ディスケット、CD、DVD、ブルーレイ、コンピュータ可読メモリ等である。存在し得る更なる別の手段は、離れた場所で情報にアクセスするためにインターネットを介して使用可能なウェブサイトアドレスである。あらゆる簡便な手段がキット内に設けられ得る。
【0091】
上記に提供した開示から明らかであるように、本発明の実施形態は、多様な用途を有する。従って、本明細書に提示されている実施例は、例示のために提供されているのであって、本発明に対する何らかの制限であるとみなされることを意図するものではない。当業者は、本質的に同様の結果をもたらすために変更されるか又は修正されてもよい様々な重要ではないパラメータを容易に認識する。よって、以下の実施例は、本発明をどのように作製して使用するかについての完全な開示及び説明を当業者に提供するために記載されるのであって、本発明者が自身の発明であるとみなすものの範囲を限定することを意図するものではなく、また、以下の実験が、行われた全ての又は唯一の実験であることを表すことを意図するものでもない。使用された数値(例えば、量、温度等)に関して正確性を確保するために努力がなされたが、ある程度の実験誤差及び偏差は考慮に入れられるべきである。別途記載のない限り、部は質量部であり、分子量は質量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧であるか又は大気圧に近い圧力である。
【0092】
[実施例]
実施例1
マイクロ流体デバイスの設計
Autocadソフトウェア(Autodesk社、San Rafael,CA)を使用して、ガラス製のマイクロ流体チップ(10mm×15mm)(図1の(a))を設計した。異なるウエスタンブロット法のステップのために、3つの機能的なゲル領域を収容するための矩形のマイクロ流体チャンバ(1mm×1.5mm×0.02mm)を設計した。図2は、試料を充填するための充填用ゲル、タンパク質のサイジングのための分離用ゲル、並びに移動及び標的プロービングのためのブロッティング用ゲルを含むマイクロ流体チャンバの概略図を示す。チャンバを、注入チャネル及び制御チャネル等の複数のマイクロ流体チャネルに接続した。各注入チャネルの幅が25μmであり、各制御チャネルの幅が10μmであった。注入チャネルは、二重のT字分岐部分を形成する3つのチャネルに分岐しており(図2のチャネル1、2、3参照)、ピンチ電流を印加することによってT字分岐部分に幅の狭い試料プラグが形成された。制御チャネル(図2のチャネル4、5、6、7、8参照)もチャンバに接続した。これらの幅の狭い抵抗性チャネルを介して、電流源から定電流を印加した。電場は電流と平行であった。チャンバ内に試料プラグを移動させるために使用した注入チャネルから電場に平行になるように電場を制御した。電場を制御することにより、チャンバ内での試料の分散を最小限度に抑えた。このように電流を印加することにより、分離パターンを確保する一方で、タンパク質の水平方向及び垂直方向の移動を促進した。
【0093】
製造
マイクロ流体チップを調製するために、ガラス製のマイクロ流体チップにリソグラフィ処理を施し、等方的にエッチングし、ダイシングした(Caliper Life Sciences社、Hopkinton,MA)。エッチングの深さは20μmであった。ガラス用ドリルビットを使用して8つのアクセス孔を開けた。チップをピラニア溶液で洗浄し、プログラム可能なオーブンで592℃で6時間ブランクチップに熱的に結合させた。
【0094】
マイクロ流体チャンバ内でポリアクリルアミド(PA)ゲルを光パターニングする前に、0.1MのNaOHを10分間マイクロ流体チャネルに流し、脱イオン化(DI)水で10分間、及びメタノールで5分間すすぐことによってガラスチップを洗浄した。PAゲルを内側のガラス表面に共有結合させるために、2:2:3:3の比率の3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、氷酢酸、DI水、及びメタノール(全てSigma社、St.Luis,MOから調達)の塩分溶液(salination solution)をチップ内に導入し、30分間インキュベートし、メタノールで30分間すすいだ。3つの機能的なゲルを光パターニングするために、各ゲルの前駆体溶液を毛管作用によりチャンバ内に導入し、UV光を使用して重合し、その後排出し、真空吸引を使用して次の前駆体溶液と交換した。図6は、マイクロ流体チャンバ内でポリアクリルアミドゲルを光パターニングするために使用される製造ステップを示す概略図である。30μLの30%Tアクリルアミド/ビスアクリルアミド(Sigma社)、10μLの1mg/mLストレプトアビジンアクリルアミド(Invitrogen社、Carlsbad,CA)、40μLの2mg/mL結合メンバー(例えば、捕捉タンパク質)、5×TA緩衝液(1×TA:25mMトリシン−14mMアルギニン、全てSigma社から調達)、及び5μLの1%(v/w)光開始剤VA−086溶液(Wako Chemical社、Richmond,VA)を使用して、結合媒体のゲルのための9%T(T=総アクリルアミド含有量)の前駆体溶液を調製した。6%Tの分離用ゲル及び3%Tの充填用ゲルも同様に光パターニングしたが、ポリアクリルアミドゲル前駆体はストレプトアビジン−アクリルアミド及び結合メンバー(例えば、捕捉タンパク質)を含まなかった。更に、次の試料を充填するために3%Tのゲルをマイクロ流体注入チャネル内で重合した。
【0095】
光パターニングにはUV照射システムを使用した。水銀ランプ及びUV対物レンズ(UPLANS−APO 4×、Olympus社)を備えた倒立顕微鏡(IX−50、Olympus社、Melville,NY)により、ガラスチップ及び透明マスク(Fineline−Imaging社、Colorado Springs,CO)とUV照射部との手動による調整が可能になった。結合用ゲル及び分離用ゲルを13mW/cm2 で8分間照射した。充填用ゲルをUVランプ(Blak−Ray、Upland,CA)下で9mW/cm2 で6分間全面照射した。
【0096】
800nMプロテインG(20kDa、Abcam社、Cambridge,MA)、200nM卵白アルブミン(OVA、45kDa、Sigma社)、200nMウシ血清アルブミン(BSA、68kDa、Sigma社)、及び500nMのαアクチニン(95kDa、Sigma社)の4つの分子量標準物質をフルオレセイン(Alexa Fluor 488、Invitrogen社)に結合した。タンパク質を1×TA緩衝液に溶解した。チップに充填する5分前に、0.1%CTAB(Sigma社)をタンパク質に加えた。
【0097】
マイクロ流体PAGEアッセイ
マイクロチップを用いたウエスタンブロット法の全てのアッセイステップ(図3参照)は、高電圧シーケンサ(Caliper Life Sciences社)を使用して8つのアクセスポート(図2)を介して電圧及び電流を制御することにより行った。電圧/電流シーケンスを表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
試料充填ステップの前に、PAゲル内にCTABを電気泳動的に導入した(図4参照)。ゲル内に十分なCTAB濃度がないと、(1)希釈に起因して、タンパク質が試料調製ステップで事前に結合したCTABイオンを失う可能性があり、(2)負に帯電したPAゲルと正に帯電しCTAB処理したタンパク質との静電相互作用によって、PAGE分離の前にタンパク質の結合がもたらされる可能性があるため、CTABでPAゲルを前処理することにより、試料中の分析物を分離し易くする。従って、タンパク質プラグが非特異的な相互作用なしで泳動するのに十分な幅である幅の狭いバンドとして、アクセスポート1、2、3から0.1%CTABをマイクロチャネル内に10分間注入し、マイクロ流体チャンバ内に5分間注入した。
【0100】
ペルチェ冷却CCDカメラ(CoolSNAP HQ2、Photometrics社、Tucson,AZ)を備えた落射型蛍光顕微鏡(IX−7、Olympus社)を使用して、全てのアッセイ段階でタンパク質の蛍光画像を撮像した。後で、ImageJソフトウェア(NIH(アメリカ国立衛生研究所)、Bethesda,Maryland)を使用してタンパク質の定量化について蛍光画像を分析した。
【0101】
結果
CTABで処理した分子量標準物質をピペットでアクセス孔3に加えた。二重のT字分岐部分に幅の狭いプラグが形成された。孔径が大きいため、充填用ゲル(3%T)への試料の充填に要した時間は1分以下であった。マイクロ流体チャンバ内に試料を注入した(図3の(a))。分離用ゲル(6%T)に達すると、孔径の減少により充填用ゲル−分離用ゲルの界面に試料の蓄積が生じた(図3の(b))。下流側に泳動する一方で、タンパク質混合物は、PAゲル内のふるい作用により、タンパク質の分子量に基づいて複数のバンドに分離した(図3の(c))。図7の上方に見られるように、αアクチニン、BSA、OVA、及びプロテインGを含むタンパク質試料の蓄積が生じ、次いで、30秒以内にコンパクトなバンドに分離した。線形対数分子量(log−Mr)対移動度(10-5cm2 /V・s)の関係が観察され(図7の下方参照)、CTAB−PAGEを使用したMrの決定が正確であったことが示された。
【0102】
分離後、分離したタンパク質のバンドを結合用ゲルに移動させるために水平方向の電場を印加した(図3の(c)及び(d))。結合用ゲルに達すると、PAゲルとの静電相互作用により、分離したタンパク質のバンドを圧縮して固定した(図3の(d))。図8は、試料中の4つのタンパク質(プロテインG、OVA、BSA、及びαアクチニン)の分離及び移動の蛍光画像を示す。図8の(a)は、分離用ゲルにおける4つのタンパク質の異なるバンドへの分離の蛍光画像を示す。図8の(b)は、分離したタンパク質の分離用ゲルから結合媒体への移動の蛍光画像を示す。図8の(c)は、分離したタンパク質の結合媒体への結合の蛍光画像を示す。
【0103】
アルカリ性のトリシン−アルギニン(TA)緩衝液(pH8.2)中で、PAが加水分解され、正味の負電荷を有した。ストレプトアビジン−アクリルアミドリンカーを使用して、IgG(pI=5.5−8.0、Mr=150kDa)及びβ−ガラクトシダーゼ(pI=4.61、Mr=465kDa)等のMrが大きくpI点が低いビオチン化した結合メンバーをPAゲルに共重合すると、電荷密度が増加した。電荷密度の増加は試料タンパク質のより強力な固定から明らかであった。電気的移動は約42秒で完了した。蛍光強度に基づいて、著しく検出可能な量の分離したタンパク質が保持された。固定後の分離したタンパク質の保持率が、プロテインG、OVA、BSA、及びαアクチニンの夫々に関して75%、77%、65%、及び78%であった。分離パターンと固定との間に略1:1の相関関係が認められ(例えば、プロテインGとOVAとの間の分離分解能は、ブロッティングの前後で1.41であった)、タンパク質の移送が効率的であったことが示された。
【0104】
試料の充填から電気的移動までのアッセイは約63秒で完了し、このような時間は従来のウエスタンブロットアッセイより約10分の1短い時間であった。固定後、残留したCTABを結合用ゲルから洗浄するために水平方向の電場を連続的に印加した。プローブ抗体がCTABに曝されると沈殿する可能性があるため、残留したCTABを洗浄することにより、その後のプローブ抗体が導入され易くなる。図9の(a)は、結合媒体に固定されたタンパク質(プロテインG、OVA、BSA、及びαアクチニン)の蛍光画像を示す。その後のブロッキングステップでは、抗体の非特異的な結合を防止するために、TA緩衝液に溶解した1%BSAを電気泳動的に導入することによりゲル上の解放電荷部位にブロッキング処理を行った(図3の(e))。逆電場を印加することにより、残留したBSAを洗浄した(図3の(f))。ブロッキング後、Alexa Fluor 568(Invitrogen社)と結合した抗体プローブを導入し、10分間インキュベートした(図3の(g))。逆電場を印加することにより抗体プローブを洗浄した(図3の(h))。図9の(b)に示されているように、免疫親和性プローブは、固定した標的に特異的に結合した。SDS−PAGEゲル電気泳動を使用する従来のウエスタンブロット法に一般に必要とされるタンパク質復元ステップを必要とせずに、800nMのプロテインGが検出された。
【0105】
結論
本明細書に開示されているマイクロ流体デバイスは、多重チャネルによる電圧/電流制御を使用することにより、マイクロ流体デバイスの小型化及びアッセイの自動化を可能にした。更に、マイクロ流体アッセイの性能も、典型的なSDS−PAGEウエスタンブロットアッセイより著しく良好であり、マイクロ流体アッセイは、約100分の1〜1000分の1(例えば、約10ng)少ない試料の消費量及び迅速な完了時間(1〜2日に対して約2.5時間)を有する。試料分析物と結合媒体との静電相互作用により、全ての分解されたタンパク質の結合媒体への電気的移動が可能になった。ある実施形態では、分離したタンパク質標的を固定するために、一致するペア抗体を結合媒体に共重合させる必要がなかった。代わりに、分離したタンパク質を結合媒体に静電的に固定した後で免疫親和性プローブを導入した。場合によっては、分離したタンパク質の静電的な固定により、対象となる分析物に結合した一次抗体に特異的に結合することができる、酵素に結合した二次抗体の使用による分離したタンパク質の検出が容易になった。二次抗体は、検出可能な信号を増大させることができ、検出限界を高め、非標識検出を可能にする。更に、CTAB−PAGEを使用する本開示の実施形態は、複雑且つ時間のかかるタンパク質の復元を行うことなく免疫ブロッティングを容易にすることができる。
【0106】
実施例2
移動効率及びアッセイの再現性を判定するために、実施例1と同一の実験プロトコルを使用して実験を行った。マイクロ流体デバイスの結合媒体の製造に使用した結合メンバー(例えば、捕捉タンパク質)は、150kDaのIgG(抗C反応性タンパク質)であった。プロテインG(20kDa)、OVA(45kDa)、BSA(68kDa)、及びαアクチニン(95kDa)を含有する試料を分離媒体中で分離し、結合媒体に移動させた。分離ステップは、試料を充填した21秒後に完了した(図10の(a))。図10の(b)は、分離した試料が移動する間の試料の充填から35秒後の蛍光画像を示す。分離媒体1010から結合媒体1020への分離した試料の移動は42秒で(例えば、試料の充填から63秒後に)完了した(図10の(c))。図10の(d)の蛍光画像に示されているように、結合したタンパク質を緩衝液で洗浄した後であっても、結合媒体1020によってタンパク質が保持されており、試料の充填から139秒かかった。表2は、移動ステップの間(図10の(b))及び結合媒体への結合後(図10の(c))の試料中のタンパク質の分離分解能(SR)を示す。表2に示されているように、移動ステップ及び結合ステップの間、タンパク質は自身の分離分解能を維持した。表3は、結合媒体への結合後(図10の(c))及び緩衝液による洗浄後(図10の(d))の試料中のタンパク質の捕捉効率(%)を示す。表3に示されているように、結合媒体は、アッセイの間、各タンパク質の検出可能な量を保持した。
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
実施例3
移動効率及びアッセイの再現性を判定するために、実施例1と同一の実験プロトコルを使用して実験を行った。マイクロ流体デバイスの結合媒体の製造に使用した結合メンバー(例えば、捕捉タンパク質)は、465kDaのβ−ガラクトシダーゼ(pI=4.61)であった。プロテインG(20kDa)、OVA(45kDa)、BSA(68kDa)、及びαアクチニン(95kDa)を含有する試料を分離媒体中で分離し、結合媒体に移動させた。分離ステップは、試料を充填した18秒後に完了した(図11の(a))。図11の(b)は、分離した試料が移動する間の試料の充填から21秒後の蛍光画像を示す。分離媒体1110から結合媒体1120への分離した試料の移動は、20秒で(例えば、試料の充填から38秒後に)完了した(図11の(c))。図11の(d)の蛍光画像に示されているように、結合したタンパク質を緩衝液で洗浄した後であっても、結合媒体1120によってタンパク質が保持されており、試料の充填から53秒かかった。表4は、移動ステップの間(図11の(b))及び結合媒体への結合後(図11の(c))の試料中のタンパク質の分離分解能(SR)を示す。表4に示されているように、移動ステップ及び結合ステップの間、タンパク質は自身の分離分解能を維持した。表5は、結合媒体との結合後(図11の(c))及び緩衝液による洗浄後(図11の(d))の試料中のタンパク質の捕捉効率(%)を示す。表5に示されているように、結合媒体は、アッセイの間、各タンパク質の検出可能な量を保持した。
【0110】
【表4】
【0111】
【表5】
【0112】
実施例4
マイクロ流体デバイスの製造
AUTOCADソフトウェア(Autodesk社、San Rafael,CA)を使用して、ガラス製のマイクロ流体チップを設計し、微細加工した(Caliper Life Sciences社、Hopkinton,MA)。注入チャネルの幅は25μmであり、制御チャネルの幅は10μmであった。中央のマイクロ流体チャンバのサイズは、1.0mm×1.5mmであった(図1)。8つのアクセスポートをあけて、チップをブランクチップにプログラム可能なオーブンで熱的に結合させた。完成したガラスチップを図1の(a)に示す。0.1MのNaOH(10分)、DI水(10分)、及びメタノール(5分)を使用して、ゲル重合の前にガラスチップの内部を完全に洗浄した。PA(ポリアクリルアミド)ゲルへの共有結合のために、2:2:3:3の比率の3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、氷酢酸、DI水、及びメタノール(全てSigma社、St.Luis,MOから調達)を含むシラン溶液を使用して内側のガラス表面を官能化した。ゲル前駆体溶液を毛管作用によりガラスチップ内に導入した(図6、ステップ1)。ストレプトアビジン−ビオチンリンカーを使用してβ−gal(β−ガラクトシダーゼ、四量体、465kDa)をアクリルアミドと共重合させることにより、静電結合媒体を調製した。前駆体の組成は、1×TA(トリシン−アルギニン)緩衝液(Sigma社)中の6〜9%Tw/vのアクリルアミド/ビスアクリルアミド(Sigma社)、3.8μMのストレプトアビジンアクリルアミド(Invitrogen社、Carlsbad,CA)、0〜1.6μMの大腸菌由来ビオチン化β−gal(Sigma社)、及び0.1%w/vの光開始剤VA−086溶液(Wako Chemical社、Richmond,VA)であった。倒立顕微鏡(IX−70、Olympus社、Center Valley,PA)、UV光源、及びフォトリソグラフィ用マスクを使用してPA前駆体組成物を重合した(図6、ステップ2)。重合されなかった前駆体組成物を排出し、真空吸引を使用して次の前駆体と交換した(図6、ステップ3)。ゲルの製造が完了した後、使用するまでチップを1×TA緩衝液中で保存した。マイクロ流体デバイスは再利用可能であったため、アッセイが完了した後、加熱した2:1の過塩素酸及び過酸化水素の溶液に浸漬してPAゲルを除去することにより、マイクロ流体チップを再利用した。
【0113】
アッセイステップ
本方法は、1)試料の充填、2)タンパク質の分離及びサイジングのためのCTAB−PAGE、3)静電結合媒体(EBM)による分離したタンパク質の電気的移動及び静電的な汎捕捉、4)EBMにおける非特異的結合部位のブロッキング、並びに5)固定したタンパク質バンドの抗体に基づくプロービングという5つのアッセイステップを含む。アッセイは自動化されてもよく、マイクロ流体システムのためのアッセイステップの電圧及び電流シーケンスを以下の表6に示す。
【0114】
【表6】
【0115】
中央のチャンバ(図2)にて6%TのPAゲルの分離媒体を光重合し、分離軸を画定した。充填用ゲル(3%T)の比較的より大きな孔径のために効率的なタンパク質の充填が可能となり、充填媒体(3%T)と分離媒体(6%T)との間の界面では孔径が次第に小さくなるため、試料タンパク質を「蓄積」することによって注入分散を最小限度に抑えた。タンパク質の注入前にCTAB流を電気泳動的に注入することにより、分離軸に沿った泳動緩衝液を画定した(図4)。充填媒体及び分離媒体の緩衝液中に、CTAB界面活性剤が含まれた。CTABをその場所で緩衝液に加えた。0.1〜0.5%のCTABを注入チャネル1〜3(図2参照)に充填し、マイクロチャネル内に10分間電気泳動的に導入した。その後、試料を充填する前に、CTABを幅の狭いバンド(図4)として分離媒体に10分間注入した。この注入により、タンパク質バンドの分散を最小限に抑えて分離軸を画定した。
【0116】
プロテインG(PG、20kDa)、OVA(45kDa)、BSA(68kDa)(全てInvitrogen社から調達)、ホスホリラーゼb(97.2kDa)、αアクチニン(αA、95kDa)、β−gal* (β−ガラクトシダーゼ単量体、116kDa)(全てSigma社から調達)、並びにS100B(10.5kDa)及びラクトフェリン(LF、78kDa)(全てAbcam社、Cambridge,MAから調達)を、Alexa Fluor488(Invitrogen社)と、製造者の指示に従って製造の際に又は使用する前に結合した。抗ウサギポリクローナルPG(Abcam社)をAlexa Fluor568(Invitrogen社)と結合した。タンパク質及び抗体を全て1×TA緩衝液に溶解した。アッセイを開始する前に、タンパク質試料を試料緩衝液(1×TA:25mMトリシン+14mMアルギニン+0.1%w/vのCTAB)にアッセイの15分前に希釈し、その後、充填媒体に電気泳動的に充填した。
【0117】
アッセイのステップ1)では、β−gal** は、EBM内でタンパク質の捕捉のために使用される四量体「β−gal」ではなく、β−galの単量体を表す)、BSA、OVA、及びプロテインGを含むタンパク質試料を分離軸に沿って注入した。典型的なSDS−PAGEシステムとは対照的に、正に帯電したCTAB−タンパク質複合体は陽極から陰極に移動した。充填媒体と分離媒体との間の不連続な3〜6%Tのゲル界面により、注入したタンパク質試料プラグの、ガウス分布フィッティングの±2σとして定義される幅が57%(すなわち、493μmから213μmに)減少した。
【0118】
ステップ2)の間、CTAB−PAGEを使用して、タンパク質を分離してタンパク質のサイズ情報を得た。印加された電場(47V/cm)下では、36秒の分離時間が経過後に、中程度から小程度のMrの種が完全に分解された(例えば、分解の程度が最も少なかったBSA−OVAピークでSR>1.5)。サイジングは、(分解の程度が最も少なかったピーク対がSR=1.5のときの最も速いピーク位置として定義される)1496μmの分離距離で完了した。Mr標準ラダーのCTAB−PAGE分析(20〜118kDa、プロテインG,OVA,BSA,及びαアクチニンを各200nM)により、線形対数Mr対移動度の関係が得られた(y=−1.96×103 X+5.33、R2 =0.997、n=5、図7(下方)参照)。
【0119】
未知の種の分子量を更に、CTAB−PAGEを使用して正確に予測した。線形対数Mr対移動度曲線を使用して、ラクトフェリン(LF、78kDa)のMrを1.1%以内の誤差で推定した。5つのラダータンパク質(ladder protein)であるS100B、OVA、BSA、ホスホリラーゼb、及びβ−gal* を使用して、線形対数Mr対移動度の関係を得た。LFタンパク質(78kDa)はラダーと共に移動し、移動度データ及び線形対数Mr対移動度較正曲線を使用してLFのMrを算出した。予測されたMrは、78.8kDa(誤差1.05%)であった。
【0120】
ステップ3)は、移動及び結合を含み、移動は、分離したタンパク質の電気泳動による移動を含み、結合は静電結合媒体(EBM)上での汎タンパク質の捕捉を含んだ。静電的な捕捉は非特異的であり、つまり、全てのCTAB−タンパク質複合体が結合媒体上で固定されたということである。電気的移動後に、自由溶液中の検出可能な標識(例えば、検出抗体)を結合媒体に導入した。結合媒体では一致する抗体ペアが必要なかった。EBMを製造するために、β−ガラクトシダーゼ(β−gal)を陰イオン部分として9%TのPAゲルに共重合した。β−galは、低いpI点(4.61)及び大きなMr(465kDa)の結果として生じる高い負の表面電荷を有した。大腸菌由来の野生型β−gal上の負の表面電荷の合計数は著しいものであった(−160、pH8.2)。1.6μMのβ−galをPA結合媒体と共重合させることにより、分離媒体と連続した定常的な、電荷を帯びた領域を得た。
【0121】
図12に示されているように、分解したタンパク質を分離軸からEBMに電気的に移動させた。横方向の電場を印加することにより、電気的移動は31秒で完了した。EBMに対する静電気引力がCTAB−タンパク質複合体を結合媒体に結合させ、タンパク質の固定をもたらした。更に、水平方向に圧縮されることにより、EBMに移動するタンパク質バンドが濃縮された(PG、OVA、及びBSAの夫々に関して、25%、56%、及び65%ピーク幅が減少した)。移動前のAUC(曲線下面積)をEBMでのAUCと比較することによって判るように、31秒での材料保持率は、PG、OVA、BSA、及びβ−gal* の夫々に関して、92%、100%、66%、及び21%であった。PAゲルは、アルカリ性媒体中で加水分解し、正味の負電荷を保持する。正に帯電したCTAB−タンパク質複合体は、負に帯電した結合媒体に結合する。試料タンパク質は、分離情報を失うことなく結合媒体上で固定され、その後の分離したタンパク質の特定を容易にした。電気的移動後のステップ4)及び5)を通して、図12の対応する蛍光強度のグラフに示されているようにサイジング情報が保持された。分離軸での分離分解能(SR)とEBMでの分離分解能(SR)との比較は、電気的移動及び結合の間、試料タンパク質の分離が保持されたことを示す(表7参照)。表7は、マイクロ流体アッセイのステップの間の、2つの隣り合うタンパク質のピーク間の分離分解能を示す。式SR=(X2 −X1 )/(w2 +w1 )を使用して分離分解能を算出した。ここで、X1 、X2 は、2つの隣り合うピークの中心であり、w1 、w2 はそれらのピーク幅(ガウス分布フィッティングの分散の2倍)である。ピークの幅及び中心は、非線形ガウス曲線のフィッティング(OriginLab社、Northampton,MA)を使用して推定した。
【0122】
【表7】
【0123】
アッセイのステップ4)は、EBMのブロッキングステップであり、その後のステップ5)における抗体プローブの非特異的結合を最小限度に抑えるために、PA結合媒体の電荷部位をBSAと接触させた。ブロッキングの前に、横方向の電場(E=45V/cm)を30分間印加することにより、残留して遊離しているCTABをEBMから電気泳動的に洗浄した。洗浄ステップにより、抗体のCTABとの会合に起因する可能性のあるバックグラウンド信号を最小限度に抑えた。洗浄ステップの間、タンパク質の捕捉は、PG、OVA、BSA、及びβ−gal* の夫々に関して、11%、29%、13%、及び5%であった。ブロッキングステップでは、逆極性を使用して1%w/vのBSAをEBMと電気泳動的に接触させた(例えば、BSAは、非界面活性剤条件下で負に帯電した)。10分間のブロッキングのためにインキュベーションした後、逆電場を15分間印加して未結合のブロッキング用BSAを除去した。ブロッキングステップの後、固定したタンパク質の信号は、PG、OVA、BSA、及びβ−gal* の夫々に関して、6%、19%、8%、及び5%であった。最終的なブロッキング用BSAの洗浄後、タンパク質の捕捉は定常状態に達した。図13は、(秒単位の)経時的なタンパク質バンドの材料保持を表す蛍光強度(正規化されたピーク高さ)のグラフを示す。半対数プロットにおいて、蛍光強度は、時間の関数として指数関数的に減少した(対数時間目盛りのために時間軸を0.1秒ずらした)。図13では、未結合のブロッキング用BSAを除去するための洗浄ステップの後、更なる著しい減少は観察されなかった。
【0124】
ステップ5)では、EBM上に固定されブロッキング処理された分離したタンパク質の抗体プロービングを行った。赤色フルオロフォア(Alexa Fluor 568)と結合した抗体プローブをEBMに電気泳動的に導入し、10分間インキュベートし、未結合の抗体を電気泳動的に洗い流した。図14は、固定したプロテインG(PG)標的に結合する200nMウサギポリクローナル抗体に関するプロービング結果の多重スペクトル蛍光画像を示す。抗体を洗浄するステップから11分後のプローブ抗体からの蛍光信号は、バックグラウンドが低く、PGに特異的であった(AUCに基づいてSNRは34)。固定したタンパク質のシグナル対ノイズ比(SNR)は、2時間の電場印加後に依然として検出可能であった。PG、OVA、BSA、及びβ−gal* の夫々に関して、6、16、8、及び5であった。2つの濃度(600nM対260nM)のPGを抗体でプローブした結果、夫々1278対637の対応するプローブ抗体の信号を得た。濃度と信号との直接的な相関関係は、較正曲線の作成を容易にし、従って、タンパク質の絶対定量化を可能にする。抗体プロービングは、従来のSDSウエスタンブロット法に必要とされる別個のタンパク質復元ステップを含まなかった。従来のウエスタンブロット法と比較して、タンパク質の充填から電気的移動までアッセイ時間が約100分の1未満に(4〜5時間に対して約3分)減少し、完全なアッセイでは10分の1〜20分の1に(例えば、1〜2日に対して約2時間)減少した。更に、試料消費量が100分の1未満に(例えば、1〜40μgに対して約10ng)減少した。
【0125】
実施例5
EBM上でのタンパク質の捕捉を特徴付けるための追加実験を行った。EBM上の捕捉部位の電荷密度及び移動緩衝液のイオン強度の2つの物理化学的なEBMの特性について調べた(図15参照)。試験試料としてPG及びBSA(+0.1%CTAB)を注入して分離し、EBMに固定した。上述した実施例4のステップ3)で行った電気的移動の特徴付けと同様に、実施例4のステップ4)におけるCTAB洗浄のための30分間の電場印加後の材料保持率に基づいて捕捉効率を得た。電荷密度の変化の影響を調べるために、固定したβ−galの濃度を増加させた(0μM、0.2μM、0.8μM、1.6μM)EBMを有するマイクロ流体デバイスを製造した(図15の(a)及び図16)。図16は、異なる電荷密度におけるタンパク質の結合強度を調べる実験の蛍光画像を示す。プロテインG及びBSAは、バンドとして分離媒体1610内で移動した。横方向の電場を印加した後、プロテインG及びBSAは、異なる濃度のβ−ガラクトシダーゼ(例えば、0μM、0.2μM、0.8μM、及び1.6μM)中、異なる捕捉効率で結合媒体1620に結合した。比較のために、1mMのImmobiline中での結合を更に示す。β−gal濃度を1.6μMまで増加すると、PG及びBSA両方の材料保持率が増加し、PGは最大に達した。逆に帯電した表面上の電荷を増加させることにより、タンパク質の捕捉が増加した。BSAと比較してPGの捕捉効率がより低いことは、PGがより低いMr及び表面電荷を有することに起因する可能性がある。PAゲルが負の電荷を有することに起因して、0μMのβ−galではBSAとEBMとの弱い相互作用が観察された。EBM内のより高い濃度のβ−gal(例えば、3.2μM)では、タンパク質の捕捉が減少した(データを図示せず)。
【0126】
EBMの細孔におけるデバイの長さがタンパク質の捕捉に与える影響を調べるために、移動緩衝液のイオン強度を変化させて実験を行った(図15の(b))。7.57×、1×、及び0.13×TA緩衝液+0.1%CTABの夫々に関して、115.4mM、16.4mM、及び4.5mMの3つの異なるイオン強度条件を調べた。図15の(b)に示すように、緩衝液のイオン強度を増加させてEBM上の電荷の遮蔽を増強すると、タンパク質の捕捉が減少した。図17は、異なるイオン強度の緩衝液(例えば、異なる緩衝液濃度)におけるタンパク質の結合強度の蛍光画像を示す。異なる緩衝液濃度(例えば、7.57×、1×、及び0.13×TA緩衝液+0.1%CTAB)の結合媒体に結合(例えば、固定)する前後の、分離媒体1710及び静電結合媒体1720に対するプロテインG及びBSAの結合が示されている。デバイの長さが減少すると(例えば、緩衝液のイオン強度が増加すると)、電荷遮蔽効果の増強に起因してタンパク質の捕捉効率が減少した。
【0127】
CTABのタンパク質との会合は緩衝液のイオン強度に依存していたため、タンパク質−CTAB複合体の表面電荷もイオン強度に依存して変化した。異なる表面電荷がタンパク質の捕捉に与えるこの影響を異なるイオン強度から切り離すために、プロテインG及びBSAの表面電荷密度の特徴付けを行った。任意の緩衝液濃度Cにおける表面電荷QS (C)の相対的な増加又は減少が対象であるため、標準濃度C0 (1×TA緩衝液)に対するCTAB−タンパク質複合体の相対的な電荷密度QS (C)/QS (C0 )を得た。電気泳動移動度に関するHenryの式、電気泳動移動度データ、及びタンパク質の流体力学的パラメータをQS (C)/QS (C0 )の算出に用いた。タンパク質が完全な球体(r=流体力学的半径)であり、均等に分布した表面電荷を有するものと仮定した。10×TA緩衝液を適切に希釈して7.57×TA緩衝液、1×TA緩衝液、及び0.13×TA緩衝液の溶液を調製し、0.1%w/vのCTABを各緩衝液に加えた。イオン強度を115.4mM、16.37mM、及び4.52mMとして夫々算出した。蛍光標識が付されたPG(605nM)及びBSA(179nM)を、各緩衝液条件下で共に溶解した。2つのタンパク質が、定電場下且つ均一な6%TのPAゲルで二重のT字分岐チップ(Caliper Life Sciences社)で分離した。移動の速度(すなわち、直線状のマイクロ流体チャネルにおいて2mmの距離を進むための時間)に基づいて電気泳動移動度を得た。自由溶液の移動度と%T値(例えば、6%T)との数学的関係を用いて、異なるイオン強度における移動度の比率を算出した。%Tの項を無効化し、その後、QS (C)/QS (C0 )を自由溶液の移動度の関数として表した。回転型レオメータ(Physica MCR 301、Anton−Paar社、Ashland,VA)を使用してトリシン−アルギニン緩衝液システムの粘度を測定した。BSAのストークス半径を文献から得た。操作された組み換えPG(Invitrogen社、20kDa)について、同様のMr値を有するタンパク質のストークス半径から半径を推定した。最後に、Henryの式を用いて、1×TA緩衝液に対する7.57×TA緩衝液及び0.13×TA緩衝液での相対的な負の表面電荷を算出した。表8は、計算に用いられたパラメータである粘度μ、6%Tのゲルで実験的に得られた移動度η、タンパク質の流体力学的半径aとデバイの長さλD との比率、及び表面電荷比QS (C)/QS (C0 )を示す。
【0128】
【表8】
【0129】
図15の(b)は、イオン強度の増加に伴ってタンパク質の捕捉が減少したことを示しており、このような現象は表面電荷に起因して観察されたタンパク質の捕捉に対する反対の影響であった。イオン強度の増加に伴うタンパク質の捕捉の減少は、静電相互作用がEBM上でのタンパク質の捕捉に対する優勢な機構であったことを示すものであった。
【0130】
実施例6
タンパク質の捕捉効率は、電荷密度を増加させること及び/又は緩衝液濃度を減少させることによって調整され得る。負に帯電した結合メンバーをEBMに共重合させるための追加実験を行った。使用した負に帯電した結合メンバーは、アクリルアミド緩衝液である酸性Immobiline種(pK=3.8)であった。Immobilineを結合メンバーとして使用してタンパク質の固定を観察した。
【0131】
静電結合媒体(EBM)にImmobilineを含んだ実験を以下の通り行った。酸性Immobiline種(pK=3.8、GE healthcare社、Pittsburgh,PA)をEBMと共重合した。複数の異なるゲル多孔度(例えば、6〜10%T)及びImmobiline濃度(例えば、0.1〜10mM)のEBMを調製し、捕捉効率を調べた。使用した最も濃度の高いImmobiline(10mM)に関して、分離ステップの間にEBMで濃度分極が観察された(E=87V/cm)。このEBMでは、数秒後に、制御チャネル5(図1の(b)参照)からの電流が初期値の10%未満まで指数関数的に減少した。電流の減少は、分離媒体と静電結合媒体との界面に形成された定常性の高い電荷密度に起因する可能性がある。1mMのImmobilineでは、中程度の濃度分極が観察され、CTAB−タンパク質複合体がサイジングされ、EBM上に固定された。このImmobiline濃度での捕捉効率は、0.2μMのβ−galに共重合したEBMの捕捉効率と同様であることが算出され、1.6μMのβ−galを使用した場合の捕捉効率よりも低かった。EBMにおける0.2μMのβ−galの正味の電荷密度は0.032mMであると推定された。0.1mMのImmobiline濃度では、EBM上でのタンパク質の捕捉は、0μMのβ−galに共重合したEBMの基準値と同等であった。図18は、CTAB−タンパク質複合体と、ポリアクリルアミドゲル孔内に共重合した(a)Immobiline及び(b)β−galとの夫々の電荷相互作用の比較の概略図を示す。細孔の形状を理想化し、Immobilineが均等に分布されているものと仮定した。次元解析に基づいて、β−galの1〜2個の分子を6%TのPAゲルの各細孔に1.6μMのβ−galで固定した。β−gal分子は、蓄積した点電荷(例えば、分子当たり−160)として機能した。グラフトしたImmobilineに由来する電荷は、各細孔の周囲に均等に分布された(図18)。従って、Immobilineに対する静電引力は全方向に働き、結果としてβ−gal等の点電荷に向かう引力よりも低いベクトル力の和をもたらした。
【0132】
実施例7
疾患及び機能障害のタンパク質バイオマーカーについて調べるために免疫ブロットアッセイを行った。ラクトフェリン(LF)を分析するためにマイクロ流体アッセイを行った。LFは、免疫細胞が外分泌腺を攻撃する自己免疫疾患であるシェーグレン症候群のためのバイオマーカーである。ヒト涙液におけるLFのマイクロ流体CTAB−PAGE分析を行った。増加したCTAB濃度(0.5%)を用いて分離軸を準備した。LFが負に帯電した分離媒体と非特異的に会合することが観察されたため、より高いCTAB濃度は、PA分離用ゲル上の負電荷の遮蔽を増加させ得る。抗体スクリーニング後、無担体の抗LFヤギポリクローナル抗体を用いてLFに関する検出可能な信号を生成した。希釈したBSA(0.2%)をブロッキング緩衝液として使用した。図19の(a)は、タンパク質ラダー(OVA及びβ−gal* )と共に1×TA緩衝液+0.2%CTAB中に添加されたヒト母乳(400nM)から精製したLFの試料に関する結果を示す。16秒の分離時間が経過後(E=84V/cm)、CTAB−PAGEはOVA及びβ−gal* からLFを分離した(SR>1.5)。約85kDaの未分解のピーク(* )は、LFピークと共に密接に移動した。対照実験により、未同定のピークの源がβ−gal* 試料であることが示された。合計分離時間は19秒であり、抗体の結合及び検出を含む合計アッセイ時間は115分であった。結合媒体への結合後、検出可能な標識抗体はLFに結合した。(SNR=275、抗体洗浄ステップを開始してから5分後)。
【0133】
600nMのLFを加えた希釈涙液(48×)についてもアッセイを行った(図19の(b))。涙液(約80種、合計10mg/mL)におけるタンパク質のバックグラウンドのために、試料緩衝液中のCTABを0.7%まで増加して界面活性剤の会合を促進した。分離前の試料の蛍光信号は、試料に涙液のマトリクスを含まない場合の信号の31%であった。14秒の分離時間経過後及び分離長さ992μm(E=60V/cm)で、未同定のピーク(* )を除いてLFは共に移動するタンパク質試料から分離した。LFに特異的な抗体との結合は、CTAB−PAGEの間に観察されたLFのバンドと一致した。LFに対する免疫ブロッティングのSNRは43であった(抗体洗浄ステップを開始してから5分後)。合計分離時間は21秒であり、抗体の結合及び検出を含む合計アッセイ時間は115分であった。
【0134】
上記実施形態は、理解し易くするために例証及び例示としてある程度詳細に記載されているが、当業者には、本開示の教示に鑑みて、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、特定の変更及び修正が行われてもよいことは容易に明らかである。本明細書に使用されている専門用語は、具体的な実施形態について説明するためだけのものであり、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、限定的であることを意図するものではないことも理解されたい。
【0135】
ある範囲の値が与えられる場合、その範囲の上限及び下限の間の、文脈が別段に明示しない限りは下限の単位の10分の1までの各介在値、及びその記載された範囲内の任意の他の記載された値又は介在する値が本発明に包含されることを理解されたい。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、より小さい範囲内に独立して含まれてもよく、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限度を条件として本発明に包含される。記載された範囲が限度のうちの一方又は両方を含む場合、これらの含まれた限度の一方又は両方を除外した範囲も本発明に包含される。
【0136】
本明細書に引用されている全ての刊行物及び特許は、個々の刊行物又は特許が、具体的に且つ個別に参照によって組み込まれると示されているかのように参照によって本明細書に組み込まれ、刊行物の引用に関連する方法及び/又は材料を開示して記載すべく、参照によって本明細書に組み込まれる。任意の刊行物の引用は、出願日前のその開示に関するものであって、先行発明を理由として、本発明がそのような刊行物に先行する権限がないことを認めるものであるとみなされるべきではない。更に、提供される刊行物の日付は、実際の公開日とは異なる場合があり、個別に確認する必要がある。
【0137】
単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」が、本明細書及び請求項で用いられている場合、文脈が別段に明示しない限り、複数の指示対象を含むことを留意すべきである。更に、請求項がいかなる選択的な要素も排除して記載されていることを留意すべきである。従って、この記述は、請求項の要素の記載に関する「唯一の(solely)」、「のみの(only)」等の排他的用語の使用、又は「否定的な(negative)」限定の使用のための先行記載として機能すべく意図される。
【0138】
当業者が本開示を読むと明らかであるように、本明細書に説明され例示された個々の実施形態は夫々、別々の構成要素及び特徴を有しており、別々の構成要素及び特徴は、本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の複数の実施形態のいずれかの特徴から容易に分離されてもよく、又はいずれかの特徴と容易に組み合わされてもよい。全ての記載された方法は、記載された事象の順序で、又は論理的に可能な任意の他の順序で実行され得る。
【0139】
従って、前述の内容は本発明の本質を単に示しているに過ぎない。本明細書に明示的に説明されていないか又は示されていないが、本発明の本質を具体化して本発明の趣旨及び範囲に含まれる様々な構成を当業者が考案することが可能であることは明らかである。更に、本明細書に述べられている全ての例及び条件的な用語は、本発明の本質と、本技術分野を進展させるために本発明者により与えられた概念とを理解する際に読者を支援することを本質的に意図するものであり、このように具体的に述べられた例及び条件に限定するものではないと解釈されるべきである。更に、本発明の本質、態様及び実施形態だけでなく、本発明の具体的な例を述べている本明細書における全ての記載は、本発明の構造的且つ機能的な等価物の両方を含むことを意図するものである。加えて、このような均等物は、現時点で既知の均等物及び今後開発される均等物の両方、すなわち構造に関わらず同一の機能を有する開発された全ての要素を含むことを意図するものである。従って、本発明の範囲は、本明細書に示され説明された例示的な実施形態に限定されることを意図するものではない。むしろ、本発明の範囲及び趣旨は、添付の特許請求の範囲により具体化される。
【0140】
本出願は、米国特許法119条に基づいて、2010年11月23日に出願された米国仮特許出願第61/416,693号明細書の優先権を主張しており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19