(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133784
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】充放電制御回路及びバッテリ装置
(51)【国際特許分類】
G01R 19/165 20060101AFI20170515BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20170515BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20170515BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
G01R19/165 M
H02J7/00 A
H02J7/02 H
G01R19/165 A
H01M10/48 P
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-547061(P2013-547061)
(86)(22)【出願日】2012年10月19日
(86)【国際出願番号】JP2012077031
(87)【国際公開番号】WO2013080693
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2015年8月6日
(31)【優先権主張番号】61/564,485
(32)【優先日】2011年11月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/533,321
(32)【優先日】2012年6月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エスアイアイ・セミコンダクタ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】桜井 敦司
(72)【発明者】
【氏名】佐野 和亮
【審査官】
赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−017732(JP,A)
【文献】
特開2004−282798(JP,A)
【文献】
特開2006−058285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/165
H01M 10/48
H02J 7/00
H02J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の二次電池の充放電を制御する充放電制御回路であって、
前記二次電池が接続される端子に夫々設けられた電圧検出回路と、
前記電圧検出回路の検出信号を出力する検出信号出力端子と、
セルフテスト開始信号を受けた後に、前記電圧検出回路の機能をセルフテストし、セルフテストが終了すると、前記セルフテスト開始信号を出力するセルフテスト回路と、
を備え、
前記セルフテスト回路は、
前記二次電池が接続される端子に設けられたプルアップ/プルダウン回路と、
前記プルアップ/プルダウン回路を制御して、前記電圧検出回路のテストをするセルフテスト制御回路と、
を備えたことを特徴とする充放電制御回路。
【請求項2】
前記充放電制御回路は、セルフテスト開始信号入力端子と、セルフテスト開始信号出力端子と、を備え、
前記セルフテスト制御回路は、
前記セルフテスト開始信号入力端子から前記セルフテスト開始信号が入力されると、セルフテストを開始し、
セルフテストが終了すると、前記セルフテスト開始信号出力端子に前記セルフテスト開始信号を出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の充放電制御回路。
【請求項3】
前記充放電制御回路は、セルフテスト状態信号入力端子と、セルフテスト状態信号出力端子と、を備え、
前記セルフテスト制御回路は、
セルフテストの状態を示すセルフテスト状態信号と、前記セルフテスト状態信号入力端子に入力されたセルフテスト状態信号と、を前記セルフテスト状態信号出力端子に出力する、
ことを特徴とする請求項2に記載の充放電制御回路。
【請求項4】
前記セルフテスト制御回路は、
前記セルフテスト状態信号入力端子で受信したセルフセルフテスト状態信号を、所定の時間遅延させてから、前記セルフテスト状態信号出力端子に出力する、
ことを特徴とする請求項3に記載の充放電制御回路。
【請求項5】
前記充放電制御回路は、セルフテスト結果信号入力端子と、セルフテスト結果信号出力端子と、セルフテスト結果通信回路と、を備え、
前記セルフテスト結果通信回路は、前記電圧検出回路から出力されたセルフテストの結果を示すセルフテスト結果信号と、前記セルフテスト結果信号入力端子で受信したセルフセルフテスト結果信号と、を前記セルフテスト結果信号出力端子から出力する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の充放電制御回路。
【請求項6】
前記充放電制御回路は、前記セルフテスト結果信号出力端子を前記検出信号出力端子が兼ね、前記電圧検出回路と前記検出信号出力端子の間に遅延回路を備え、
前記セルフテスト制御回路は、
セルフテストの間、前記遅延回路の遅延時間を短縮する、
ことを特徴とする請求項5に記載の充放電制御回路。
【請求項7】
前記充放電制御回路は、
セルフテストを実施していない通常動作時は、少なくとも前記プルアップ/プルダウン回路が電流を消費しないように動作を停止する、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の充放電制御回路。
【請求項8】
複数カスケード接続した請求項1から7のいずれかに記載の充放電制御回路と、
前記充放電制御回路に接続された複数の二次電池と、
を備えたことを特徴とするバッテリ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の充放電を制御する充放電制御回路及びバッテリ装置に関し、より詳しくは、二次電池の電圧を検出する電圧検出回路のセルフテスト機能を備えた充放電制御回路及びバッテリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリ装置は、様々な電子機器の回路の電圧供給源として用いられている。近年では、自動車や電気工具の電源用として高い電圧を出力することが要求されている。従って、複数の二次電池を直列に接続して、その充放電を制御する複数のカスケード接続された充放電制御回路からなるバッテリ装置が必要になっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4に、従来の、直列に接続された二次電池とそれを制御するカスケード接続された充放電制御回路からなるバッテリ装置のブロック図を示す。
【0004】
従来のバッテリ装置は、複数のカスケード接続された充放電制御回路401a〜401nと、直列に接続された複数の二次電池402a〜402nと、充電制御FET403と、放電制御FET404と、充電制御端子COと充電制御信号入力端子CTLCとを接続する抵抗405a〜405nと、放電制御端子DOと放電制御信号入力端子CTLDとを接続する抵抗406a〜406nと、を備えている。
【0005】
従来のバッテリ装置は、充放電制御回路401a〜nが、充電制御端子COと充電制御信号入力端子CTLCとで接続され、放電制御端子DOと放電制御信号入力端子CTLDとで接続され、夫々が通信することが出来るようなっている。このようにして、複数の充放電制御回路が直列に接続することが出来るので、高電圧を出力するのに必要な数の直列接続された二次電池を制御することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-17732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のバッテリ装置では、二次電池の数に応じて電圧検出回路の数も増加する。従って、バッテリ装置として組立てられた状態では、各電圧検出回路をテストする装置も複雑になってしまうという欠点があった。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するために考案されたものであり、複雑なテスト装置を必要としない、セルフテスト機能を備えた充放電制御回路及びバッテリ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来の課題を解決するために、本発明の充放電制御回路及びバッテリ装置は以下のような構成とした。
【0010】
直列に接続された複数の二次電池の電圧を検出する検出回路の機能をテストするセルフテスト回路を設け、そのセルフテスト回路は、二次電池が接続される端子に設けられたプルアップ/プルダウン回路と、プルアップ/プルダウン回路を制御するセルフテスト制御回路と、を備え、テストが終了すると、次段の充放電制御回路にセルフテスト開始信号を出力する、ように構成した充放電制御回路。
【0011】
また、複数カスケード接続した充放電制御回路と、その充放電制御回路に接続された複数の二次電池と、を備えたことを特徴とするバッテリ装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の充放電制御回路及びバッテリ装置によれば、複雑なテスト装置を必要としない、充放電制御回路及びバッテリ装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態の充放電制御回路の回路図である。
【
図2】本実施形態のバッテリ装置のブロック図である。
【
図3】本実施形態の充放電制御回路及びバッテリ装置のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の充放電制御回路の回路図である。
本実施形態の充放電制御回路10は、電流源とスイッチ回路を含むプルアップ/プルダウン回路11a〜11eと、分圧回路12a〜12eと、基準電圧回路13a〜13eと、比較回路14a〜14eと、遅延回路15と、CO制御回路16と、セルフテスト制御回路17と、を備えている。また、電源端子VDDと、二次電池が接続される端子VC1〜VC5およびVSSと、クロック信号入力端子CLKIと、クロック信号出力端子CLKOと、充電制御信号出力端子COと、充電制御信号入力端子CTLCと、リセット信号入力端子RSTIと、リセット信号出力端子RSTOと、セルフテスト状態信号入力端子CAIと、セルフテスト状態信号出力端子CAOと、を備えている。また、図示はしないが、過充電検出回路なども備えている。
【0015】
端子VC1〜VC5およびVSSには、分圧回路12a〜12eと基準電圧回路13a〜13eとが接続されている。比較回路14a〜14eは、分圧回路12a〜12eが出力する分圧電圧と基準電圧回路13a〜13eが出力する基準電圧とを比較する。遅延回路15は、比較回路14a〜14eの出力信号を所定の時間だけ遅延して、CO制御回路16に出力する。CO制御回路16は、充電制御信号入力端子CTLCに入力された次段の充電制御信号を入力し、遅延回路15の出力信号とともに充電制御信号出力端子COに出力する。すなわち、CO制御回路16はセルフテスト結果通信回路としての機能を有する。
【0016】
セルフテスト制御回路17は、クロック信号入力端子CLKIに入力されたクロック信号と、リセット信号入力端子RSTIに入力されたリセット信号と、を入力してセルフテストを開始し、プルアップ/プルダウン回路11a〜11eを制御してセルフテストを実行する。また、セルフテスト制御回路17は、セルフテスト状態信号入力端子CAIから次段のセルフテスト状態信号を入力し、セルフテスト状態信号をセルフテスト状態信号出力端子CAOに出力し、リセット信号をリセット信号出力端子RSTOに出力し、クロック信号をクロック信号出力端子CLKOに出力することで、セルフテストを制御する。また、セルフテスト制御回路17は、セルフテストを開始すると、遅延回路15に信号を出力して、その遅延時間を短縮する。
【0017】
図2は、本実施形態のバッテリ装置のブロック図である。本実施形態のバッテリ装置は、
図1で示した充放電制御回路10a、10b(・・・10n)と、直列に接続された二次電池20a、20b(・・・20n)と、放電制御FET21と、充電制御FET22と、外部端子EB+及びEB−を備えている。
【0018】
二次電池20a及び20bは、夫々抵抗を介して充放電制御回路10a及び10bの端子VDD、VC1〜VC5、VSSに接続されている。充電制御信号入力端子CTLCは、次段の充放電制御回路10xの充電制御信号出力端子COと接続されている。セルフテスト状態信号入力端子CAIは、次段の充放電制御回路10xのセルフテスト状態信号出力端子CAOと接続されている。クロック信号出力端子CLKOは、次段の充放電制御回路10xのクロック信号入力端子CLKIと接続されている。リセット信号出力端子RSTOは、次段の充放電制御回路10xのリセット信号入力端子RSTIと接続されている。初段の充放電制御回路10aのリセット信号入力端子RSTIにはセルフテストを開始するためのリセット信号が入力され、クロック信号入力端子CLKIにはクロック信号が入力される。また、初段の充放電制御回路10aのセルフテスト状態信号出力端子CAOはセルフテスト状態信号を出力し、充電制御信号出力端子COは充電制御FET22を制御する信号と、セルフテストの結果を示す信号を出力する。すなわち、充電制御信号出力端子COは、過充電検出信号の通信端子とセルフテスト結果信号の通信端子の機能を有する。
【0019】
ここで、リセット信号及びクロック信号は、外部からの信号によってバッテリ装置の内部で作られてもよいし、バッテリ装置に接続された外部機器から供給されてもよい。また、出力されるセルフテスト状態信号及びセルフテスト結果信号は、バッテリ装置の内部に設けられた回路によって検出されてもよいし、バッテリ装置に接続された外部機器にそのまま出力されてもよい。
【0020】
上述したような充放電制御回路10を複数備えたバッテリ装置は、以下のように動作してセルフテストを実施する機能を有する。
図3は、本実施形態の充放電制御回路及びバッテリ装置のタイミングチャートである。
先ず、充放電制御回路10aのリセット入力端子RSTIにリセット信号とクロック信号入力端子CLKIにクロック信号が入力される。
【0021】
充放電制御回路10は、リセット入力端子RSTIにリセット信号が入力した場合、リセットが解除後にクロック信号に同期してセルフテストを実施する。すなわち、クロック信号はセルフテスト開始信号として機能する。リセット入力端子RSTIに入力されたリセット信号は、リセット出力端子RSTOから出力され、次段の充放電制御回路10のリセット入力端子RSTIに入力される。クロック信号入力端子CLKIに入力されたクロック信号は、セルフテストが終了するまでクロック信号出力端子CLKOから出力されない。従って、次段の充放電制御回路10は、リセット信号が入力されても、セルフテストを実施しない。このようにして、充放電制御回路10は、順次セルフテストを実施する。
【0022】
充放電制御回路10aは、リセット信号が解除されると、クロック信号に同期してセルフテスト状態信号出力端子CAOからセルフテスト状態信号を出力する。
【0023】
このセルフテスト状態信号は、波形によってどの充放電制御回路10がセルフテスト状態にあるかを示すことが出来るようにセルフテスト制御回路17によって制御される。次段の充放電制御回路10がセルフテスト状態になると、セルフテスト状態信号入力端子CAIに入力されたセルフテスト状態信号は、同様にクロック信号に同期してセルフテスト状態信号出力端子CAOからセルフテスト状態信号を出力する。すなわち、1クロック信号分だけ波形の変化が遅れることによって、初段の充放電制御回路10aが出力するセルフテスト状態信号によって、何段目の充放電制御回路10がセルフテストを実施しているかを検出することが出来る。
【0024】
セルフテスト状態になった充放電制御回路10aは、セルフテスト制御回路17によってプルアップ/プルダウン回路11a〜11eが順次制御される。
【0025】
本実施形態の充放電制御回路10は、例えば、端子VC2にプルアップ/プルダウン回路11aが接続され、端子VC3にプルアップ/プルダウン回路11bと11cが接続され、端子VC4にプルアップ/プルダウン回路11dが接続され、端子VC5にプルアップ/プルダウン回路11eが接続される。プルアップ/プルダウン回路は、すべての比較回路14a〜14eがテストされれば、どのように形態、配置でもよく、この実施形態に限定されない。
【0026】
セルフテストを開始すると、最初のクロック信号に同期して、セルフテスト制御回路17から電圧V11aが出力され、プルアップ/プルダウン回路11aが端子VC2の電圧をプルダウンする。ここで、端子VC1と端子VC2の間の電圧が比較回路14aの検出電圧より大きくなるように、電流源の電流値を設計する。従って、比較回路14aは、正常であれば検出電圧Hを出力し、異常であれば検出電圧Hを出力しない。また、次のクロック信号に同期して、セルフテスト制御回路17から電圧V11bが出力され、プルアップ/プルダウン回路11bが端子VC3の電圧をプルダウンする。
【0027】
このようにして、クロック信号に同期して、すべての比較回路14a〜14eがテストされ、その結果が充電制御信号出力端子COから出力される。
【0028】
セルフテストが終了すると、最後のクロック信号に同期して、リセット信号をリセット出力端子RSTOから出力し、充放電制御回路10bのリセット入力端子RSTIに入力する。そして、次のクロック信号からクロック信号出力端子CLKOを介して充放電制御回路10bのクロック信号入力端子CLKIに入力する。リセット信号とクロック信号を入力された充放電制御回路10bは、クロック信号に同期してセルフテストを開始する。ここで、充放電制御回路10bに再度リセット信号を入力したが、最初のリセット信号によってセルフテスト状態になっているので、特に必要がなければこの機能は削除してもよい。
【0029】
充放電制御回路10bは、最初のクロック信号に同期してセルフテスト状態信号出力端子CAOからセルフテスト状態信号を充放電制御回路10aのセルフテスト状態信号入力端子CAIに出力する。充放電制御回路10aは、充放電制御回路10bから入力されたセルフテスト状態信号を次のクロック信号で変化させて、1クロック信号分だけ波形の変化が遅れたセルフテスト状態信号をセルフテスト状態信号出力端子CAOから出力する。
【0030】
以上のように、充放電制御回路10a〜10nは、順次セルフテストを実施して、セルフテスト状態信号と検出結果を出力する。従って、バッテリ装置内、もしくは外部に接続される電子機器によって、これらの信号を検出することで、すべての充放電制御回路10a〜10nのすべての電圧検出回路をテストすることが出来る。
【0031】
本実施形態のバッテリ装置に設けられる充放電保護回路は、充放電制御回路10a〜10nと記載したように、
図3のタイミングチャートに示したセルフテスト状態信号のビット数を適宜設定することによって、限定されるものではない。
【0032】
以上記載したように、本実施形態の充放電保護回路を用いれば、複雑なテスト装置を必要としない、セルフテスト機能を備えたバッテリ装置を提供することが出来る。
【0033】
なお、図示はしないが、セルフテストが行われていないときは、プルアップ/プルダウン回路11a〜11eやセルフテスト制御回路17などのセルフテストの通信に関する回路をパワーダウンして、通常動作時の消費電力を増加させないようにすることが出来る。
【符号の説明】
【0034】
10、10a、10b 充放電制御回路
20a、20b 二次電池
11a〜e プルアップ/プルダウン回路
12a〜e 分圧回路
13a〜e 基準電圧回路
14a〜e 比較回路
15 遅延回路
16 CO制御回路
17 セルフテスト制御回路