(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記硬化触媒(C)が、錫化合物、アルミキレート化合物、および、活性水素基を有さない3級アミン化合物からなる群から選ばれる1つ以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコーティング用多液型硬化性樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
自動車、建材、プラスチック部品、フィルムなどに塗膜を形成するために使用される上塗り塗料に対して、形成される塗膜の耐久性への要求が高まっている。外観性のほかに具体的には耐候性、耐溶剤性、耐酸性、耐薬品性、耐擦傷性等に優れる塗膜性能が要求されている。この様な高い塗膜性能と外観性を発現するため、従来から2液硬化型の塗料が使用されてきた。
【0003】
自動車、建材、プラスチック部品、フィルムなどの保護や、意匠性を付与する目的で使用される塗料としては、アクリルラッカー塗料や2液性硬化型ウレタン樹脂塗料、2液性硬化型アクリルシリコン樹脂塗料等がある。アクリルラッカー塗料は、樹脂の架橋反応を伴わない1液型塗料であり、硬化剤の配合等の手間がなく扱い易いが、得られる塗膜は耐薬品性などに劣る。
【0004】
また、従来、自動車、産業機械、スチール製家具などの塗装には、主としてアルキドメラミンやアクリルメラミンなどのメラミン樹脂を含有する塗料が用いられてきたが(特許文献1)、かかるメラミン樹脂には、硬化時に有害なホルマリンが発生したり、硬化塗膜が耐酸性に劣るため、酸性雨に侵され、塗膜にエッチングや白化、シミなどが発生する現象が見られる。
【0005】
このような欠点を解消するために、メラミン重合体を使用せず、水酸基とイソシアネートの反応を利用したいわゆるウレタン塗料が提案されている(特許文献2、特許文献3)。それぞれ水酸基含有樹脂と多官能イソシアネート化合物あるいは、ブロックイソシアネートとの組み合わせによる硬化性樹脂組成物であるが、耐酸性は改善されているものの、得られる塗膜の耐擦傷性や耐汚染性は充分ではない。
【0006】
熱硬化型の2液ウレタン塗料を塗布し、塗膜を形成する方法(特許文献4)は、耐擦傷性と耐薬品性を得るためには架橋密度を上げる必要があり、水酸基価を高く設計することとなる。しかしながら耐擦傷性、耐薬品性ともに充分なレベルではなく、さらにプラスチック基材に対する付着性が低下する問題がある。
【0007】
そこで耐擦傷性を向上させる目的で、アクリル樹脂などの水酸基含有樹脂を基体樹脂とし、ポリイソシアネート化合物を架橋剤とするウレタン架橋系塗料において、ポリカーボネートジオールを使用することが検討されている(特許文献5)。しかしながら、ポリカーボネートジオールは、アクリルポリオールとの相溶性が不充分であり更に、耐擦傷性確保のためにポリカーボネートジオールを多量に配合すると、架橋密度が低下するため耐候性、耐溶剤性が不充分となる問題がある。
【0008】
一方で、加水分解性シリル基を有する重合体を用いた塗料を使用することも提案されている(特許文献6)。加水分解性シリル基とアルコール性水酸基を有するビニル系重合体を用いることで、焼付け乾燥により、安定なシロキサン結合ないしはシロキシ結合を形成して硬化するため、耐酸性や耐候性に優れた塗膜が形成できる。しかしながら、得られる塗膜の耐擦傷性は充分ではないなどの問題があった。
【0009】
また、2液性硬化型アクリルシリコン樹脂塗料では、優れた耐溶剤性や耐薬品性を得ることができるものの、2液性硬化型ウレタン樹脂塗料と比べ加工性、リコート性、塗膜外観に劣るといった問題がある。
【0010】
また、多官能性モノマーやオリゴマーを主な構成成分とし、光ラジカル発生剤を用いてUV硬化する方法も報告されている(特許文献7)。本方法では、硬化に熱乾燥を必要としないため、プラスチックなどの基材を傷めることがなく、また短時間で高硬度の膜が得られる利点がある。しかしながら柔軟性に乏しく、衝撃により塗膜が割れたり、剥がれたりするなどの問題点がある。
【0011】
このため、自動車、建材、プラスチック部品、フィルムなどへ塗布可能で、耐候性、耐溶剤性、耐酸性、耐薬品性、耐擦傷性、耐汚染性等に優れる塗膜性能を有し、安価なコーティング剤(例えば自動車クリアーコーティング剤)の開発が求められていた。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明をその実施の形態に基づき詳細に説明する。
本発明のコーティング用多液型硬化性樹脂組成物は、上記(A)〜(C)成分を含有する。
まず、各成分について説明する。
【0025】
(A)ビニル系共重合体
(A)成分としては、主鎖が(メタ)アクリル系共重合体鎖であり、主鎖末端および/または側鎖に一般式(I):
R
2a
|
−Si−(OR
1)
3−a (I)
(式中、R
1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、R
2は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基を示す。aは0〜2の整数を示す。)
で表される加水分解性ケイ素基を10個以上有し、且つ主鎖末端および/または側鎖に水酸基を10個以上有するビニル系共重合体であれば、特に限定することなく用いることができる。
【0026】
加水分解性ケイ素基(以下、加水分解性シリル基とも記載する)とは、加水分解性基が結合したケイ素原子を含む基のことである。加水分解性シリル基は、(A)成分の主鎖末端に結合していてもよく、側鎖に結合していてもよく、主鎖末端および側鎖に結合していてもよい。
【0027】
水酸基は、(A)成分の主鎖末端に結合していてもよく、側鎖に結合していてもよく、主鎖末端および側鎖に結合していてもよい。
【0028】
前記一般式(I)において、本発明の組成物の硬化性が良好になるという点から、aが0または1であることが好ましい。OR
1またはR
2が複数個ある場合は、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0029】
中でも、硬化速度が速く、得られる塗膜の耐溶剤性や耐薬品性、さらに耐酸性に優れるという観点から、R
1は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素数1〜2のアルキル基であることがより好ましい。
【0030】
また、硬化速度が速く、架橋度が高くなるとの観点から、R
2は立体的に大きくないことがよく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基およびシクロアルキル基、ならびに、フェニル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましい。
【0031】
ビニル系共重合体(A)は、ガラス転移温度が−20〜80℃であることが、耐薬品性と耐擦傷性のバランスに優れる点から好ましい。ガラス転移温度が−20℃未満である場合は、塗膜にタックが残るとともに耐溶剤や耐薬品性が悪化する傾向がある。一方、ガラス転移温度が80℃を超える場合には、耐溶剤性や耐薬品性は優れるものの、塗膜が脆くなり耐擦傷性が充分ではない。
【0032】
また、ビニル系共重合体(A)の水酸基価は50〜300mgKOH/gであることが好ましい。
【0033】
ビニル系共重合体(A)は、炭素数が3以上のアルキレン基を介して水酸基が(メタ)アクリロイル基と結合した単量体および/または炭素−炭素二重結合を末端に有するポリラクトン系単量体を共重合することによって得られるものであることが好ましい。
【0034】
ビニル系共重合体(A)の製造方法としては特に限定されないが、主鎖が(メタ)アクリル系共重合体鎖である共重合体が得られる方法の中で、例えば、(a)加水分解性シリル基含有ビニル系単量体、(b)水酸基含有ビニル系単量体、及び、(c)その他の重合性ビニル系単量体を重合させる方法などにより得られる。
【0035】
(a)加水分解性シリル基含有ビニル系単量体
加水分解性シリル基含有ビニル系単量体(a)としては、下記一般式(I)で表されるアルコキシシリル基を有するビニル系単量体が有用である。
【0036】
R
2a
|
−Si−(OR
1)
3−a (I)
(式中、R
1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、R
2は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基を示す。aは0〜2の整数を示す。)
【0037】
加水分解性シリル基含有ビニル系単量体(a)の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(n−プロポキシ)シラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリエトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン、3−(N−スチリルメチル−2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシエチルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロルシランなどを挙げることができ、これらの中では、特にアルコキシシリル基含有単量体であるγ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランが安定性の点で好ましい。
【0038】
これらの加水分解性シリル基含有ビニル系単量体(a)は単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。
【0039】
なお、本明細書中では「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。「(メタ)アクリロキシ」とは、メタアクリロキシおよび/またはアクリロキシを表すこととする。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
【0040】
加水分解性シリル基含有ビニル系単量体(a)は、ビニル系共重合体(A)一分子につき加水分解性シリル基が10〜30個、特に好ましくは10〜20個含有されるように使用することが、充分な耐溶剤性と耐薬品性を与え、また擦傷性が良好になるという観点から好ましい。一分子中の加水分解性シリル基の個数は、単量体混合物中の加水分解性シリル基含有ビニル系単量体(a)の割合(モル数)と、ビニル系単量体(a)の数平均分子量から計算によって求めることができる。
【0041】
加水分解性シリル基含有ビニル系単量体(a)は、ビニル系共重合体(A)の全単量体100重量部中、5重量部以上80重量部以下配合するのが好ましく、10重量部以上60重量部以下配合するのが特に好ましい。
【0042】
(b)水酸基含有ビニル系単量体
水酸基含有ビニル系単量体(b)としては、特に限定されないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、4−ヒドロキシスチレンビニルトルエンなど水酸基含有ビニル系単量体;PlaccelFA−1、PlaccelFA−4、PlaccelFM−1、PlaccelFM−4(以上ダイセル化学(株)製)などの重合可能な炭素−炭素二重結合を末端に有する変性ラクトンまたはポリエステル;ブレンマーPPシリーズ、ブレンマーPEシリーズ、ブレンマーPEPシリーズ(以上日油(株)製)、MA−30、MA−50、MA−100、MA−150、RA−1120、RA−2614、RMA−564、RMA−568、RMA−1114、MPG130−MA(以上、日本乳化剤(株)製)などの重合可能な炭素−炭素二重結合を末端に有するポリオキシアルキレンなどが挙げられる。
【0043】
中でも、イソシアナートとの反応性に優れ、耐候性や耐薬品性、耐擦傷性が良好な塗膜が得られるという点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0044】
さらに、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートや4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどの、炭素数が3以上、より好ましくは炭素数が3以上10以下のアルキレン基を介して水酸基が(メタ)アクリロイル基と結合した単量体やPlaccelなどの炭素−炭素二重結合を末端に有するラクトン変性単量体(ポリラクトン系単量体)を使用すれば、傷修復性が得られる点から好ましい。
【0045】
これらの水酸基含有ビニル系単量体(b)成分は、単独で用いてもよいし、また2種以上を併用しても良い。
【0046】
また使用量としては、ビニル系共重合体(A)一分子につき水酸基が10〜50個、特に好ましくは10〜30個含有されるように設計することが、良好な耐擦傷性を得られるという点から好ましい。一分子中の水酸基の個数は、単量体混合物中の水酸基含有ビニル系単量体(b)の割合(モル数)と、ビニル系単量体(A)の数平均分子量から計算によって求めることができる。
【0047】
特に、ビニル系共重合体(A)の水酸基価が50〜300mgKOH/gになるよう設計することが、耐薬品性と耐擦傷性が良好になるという観点から好ましい。
【0048】
水酸基含有ビニル系単量体(b)は、ビニル系共重合体(A)の全単量体100重量部中、10重量部以上80重量部以下配合するのが好ましく、15重量部以上60重量部以下配合するのが特に好ましい。
【0049】
(c)その他の重合性ビニル系単量体
その他の重合性ビニル系単量体(c)としては、炭素−炭素二重結合を有していれば特に限定がなく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜20のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の炭素数4〜20のシクロアルキル(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート;ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等の炭素数3〜20のアラルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、オキシシクロヘキシニル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸などのα、β−エチレン性不飽和カルボン酸あるいは、それらの塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩など);無水マレイン酸などの酸無水物またはそれらと炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコールとのハーフエステルあるいは、それらの塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩など);スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホン酸、2−(メタ)アクリロキシエチルホスフェートなどの重合可能な炭素−炭素二重結合を有する酸、あるいは、それらの塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩など);N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有ビニル単量体、あるいは、それらの塩(塩酸塩、酢酸塩など);トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレート塩酸塩などの4級アミノ基を有するビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、α−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド、あるいは、それらの塩(塩酸塩、酢酸塩など);N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾールなどの含窒素ビニル単量体;α、β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステルのリン酸エステル;ウレタン結合やシロキサン結合を含む(メタ)アクリレートなどのビニル化合物;東亜合成化学(株)製のマクロモノマーであるAS−6、AN−6、AA−6、AB−6、AK−5などの化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ジアリルフタレートなどのビニルエステルやアリル化合物;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有ビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、4−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル単量体;ビニルメチルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン、プロピレン、ブタジエンなどのその他のビニル系単量体などを挙げることができ、これらの群から選ばれる1種または2種以上の混合物を使用することができる。
【0050】
その他の重合性ビニル系単量体(c)は、ビニル系共重合体(A)の全単量体100重量部中、1重量部以上85重量部以下配合するのが好ましく、3重量部以上75重量部以下配合するのが特に好ましい。
【0051】
重合方法は特に限定されず、例えば溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法等が挙げられ、溶液重合法が合成の容易さなどの点で好ましい。
【0052】
重合に用いる開始剤としては、公知のものを挙げることができ、例えば、クメンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物系、アゾビス−2−メチルブチロニトリルなどのアゾ化合物系、過硫酸カリウムなどの無機過酸化物系、過酸化物と還元剤を組み合わせるレドックス系などの開始剤を挙げることができる。
【0053】
得られるビニル系共重合体(A)の重合度は、数平均分子量で2000ないし50000とする事が好ましく、3000ないし25000がより好ましく、3000ないし10000が特に好ましい。数平均分子量が2000未満の場合は、未重合の単量体が残存し易く、好ましくない。一方、数平均分子量が50000を超える場合には、得られる硬化性樹脂組成物は、その塗装時に糸引き等の欠陥を生じることが多い。重合度は、ラジカル発生剤の種類及び使用量、重合温度、及び連鎖移動剤の使用によって調節することができる。連鎖移動剤としては、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、及びγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が好適に使用できる。
【0054】
(B)イソシアナート基を2個以上有する化合物
本発明においては、架橋剤としてイソシアナート基を2個以上有する化合物(B)(以下、ポリイソシアナート化合物(B)という)を使用する。イソシアナート基は7個未満であることが好ましい。イソシアナート基が2個未満の場合、架橋剤として働かないのは当然であるが、7個以上の場合には、架橋点が集中しすぎて付着性を阻害する場合がある。
【0055】
ポリイソシアナート化合物(B)としては、脂肪族系もしくは芳香族系のものが挙げられる。
【0056】
脂肪族系ポリイソシアナートの具体例として、ヘキサメチレンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン4,4’−イソシアナート、2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナート、イソフォロンジイソシアナートがある。
【0057】
芳香族ポリイソシアナートとしては、2,4―トリレンジイソシアナート、2,6―トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアナート、キシレンジイソシアナート、ポリメチレン−ポリフェニレル−ポリイソシアナートなどがある。
黄変などがなく、耐候性が良好という観点から、脂肪族ポリイソシアナートがより好ましい。
【0058】
ポリイソシアナート化合物(B)の構造としては、単量体、ビュレット型、アダクト型、イソシアヌレート型がある。これらの化合物は常温硬化用に用いることができるが、さらにこれらのイソシアナート基をブロック剤でマスクしたものを用いることもできる。そのブロック剤としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、シクロヘキシルアルコール、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p―クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、チモール、p−ニトロフェノール、β―ナフトールなどがある。また、これらの化合物は、2種以上混合して用いることもできる。
【0059】
市販されているポリイソシアナート化合物(B)としては、コロネートHL(日本ポリウレタン工業(株)製)やデュラネートP−301、デュラネートE−402、デュラネートE−405(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)などのアダクト型、デュラネート18H、デュラネート21S、デュラネート22A(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)などのビュレット型、コロネートHX、コロネートHK、コロネート2760、コロネート2349(以上、日本ポリウレタン工業(株)製)、デュラネートMFA、デュラネートTPA100、デュラネートTHA100、デュラネートTSA100(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)、コロネートAP−M、コロネートBI301、コロネート2507(以上、日本ポリウレタン工業(株)製)、デュラネート17B、デュラネートMF(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)などのブロック型が挙げられる。
【0060】
ビニル系共重合体(A)とポリイソシアナート化合物(B)の使用割合は、ビニル系共重合体(A)中の水酸基に対してイソシアナート基が好ましくは0.3〜2当量、より好ましくは0.5〜1.5当量である。ポリイソシアナート化合物が少なすぎる場合には、得られる硬化物の耐薬品性が劣る傾向があり、また多すぎる場合には耐衝撃性等の加工性が劣ることになり、また、塗り重ね時にちぢみを生じたりするおそれがある。
【0061】
(C)硬化触媒
本発明においては、加水分解性シリル基およびイソシアナートの硬化触媒(C)を使用する。
【0062】
硬化触媒としては特に限定されず、錫化合物、アルミキレート化合物、及び、活性水素基を有さない3級アミン化合物が塗膜の硬化性や得られる塗膜の総合的な物性が優れる点から好ましい。
【0063】
前記錫化合物の具体例としては、ジオクチル錫ビス(2−エチルヘキシルマレート)、ジオクチル錫オキサイドまたはジブチル錫オキサイドとシリケートとの縮合物、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジステアレート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫ビス(エチルマレート)、ジブチル錫ビス(ブチルマレート)、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルマレート)、ジブチル錫ビス(オレイルマレート)、スタナスオクトエート、ステアリン酸錫、ジ−n−ブチル錫ラウレートオキサイドがある。また、ジブチル錫ビスイソノニル−3―メルカプトプロピオネート、ジオクチル錫ビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネート、オクチルブチル錫ビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネート、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグルコレート、ジオクチル錫ビスイソオクチルチオグルコレート、オクチルブチル錫ビスイソオクチルチオグルコレートなどの分子内にS原子を有する錫化合物が挙げられる。
【0064】
前記錫化合物のうちでは、分子内にS原子を有する化合物が、イソシアナートを配合した場合の貯蔵安定性および可使時間が良好であることから好ましく、特に、ジブチル錫ビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネート、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグルコレートがより好ましく、ジオクチル錫ビスイソオクチルチオグルコレートが硬化性と貯蔵安定性、可使時間のバランスの点から特に好ましい。
【0065】
また、アルミキレート化合物としては、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセチルアセテートアルミニウムジイソプロピレートなどが挙げられる。
【0066】
活性水素基を有さない3級アミン化合物を使用すれば、非錫系で且つ優れた塗膜物性が得られるため好ましい。
【0067】
活性水素基を有さない3級アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、トリメチルアミンのようなトリアルキルアミン、テトラメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブタンジアミンのようなテトラアルキルジアミン、ビス(ジエチルエタノールアミン)アジペートのようなエステルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンのようなシクロヘキシルアミン誘導体、N−メチルモルホリンのようなモルホリン誘導体、N,N’−ジエチル−2−メチルピペラジンのようなピペラジン誘導体があげられるが、硬化活性の観点から環状アミン化合物が好ましく、特にトリエチレンジアミンが好ましい。
【0068】
これら硬化触媒(C)は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0069】
硬化触媒(C)の使用量としては、硬化温度と時間により適宜調整すればよいが、(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対して0.01重量部以上20重量部以下であることが好ましく、0.1重量部以上5重量部以下がより好ましい。0.01重量部未満の場合は、加水分解性シリル基の反応性が不充分となり塗膜性能のバランスが劣る傾向にあり、20重量部を超えると、可使時間が短くなり作業性が劣る傾向にある。
【0070】
(硬化性樹脂組成物)
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記(A)〜(C)成分以外に、必要に応じて例えば下記の成分を含有してもよい。
なお、外観性と表面硬度が低下すること、さらには耐汚染性が低下するおそれがあることから、本系ではポリブタジエン系重合体は含有しないことが好ましい。
【0071】
(溶媒)
ビニル系共重合体(A)を含有する多液型硬化性樹脂組成物に用いる溶媒としては特に限定はなく、公知の芳香族系、脂肪族炭化水素系、エーテル系、ケトン系、エステル系、アルコール系、水等の溶媒を用いることができる。トルエン、キシレン、酢酸ブチル等のエステル系、メチルイソブチルケトン等のケトン系、脂肪族炭化水素含有溶剤を用いるのがビニル系共重合体(A)の溶解性の点から好ましい。
また、硬化時の塗膜外観を考慮し、その他の溶剤を混合して揮発速度を調整することが望ましい。
【0072】
(脱水剤)
加水分解性シリル基と水酸基を有するビニル系共重合体(A)は、湿分との反応性を有するため、さらに脱水剤を配合することによって、組成物の保存安定性を向上させることができる。
【0073】
脱水剤としては、例えば、オルソ蟻酸メチル、オルソ蟻酸エチルもしくはオルソ蟻酸ブチル等のオルソ蟻酸アルキル;オルソ酢酸メチル、オルソ酢酸エチルもしくはオルソ酢酸ブチル等のオルソ酢酸アルキル;オルソほう酸メチル、オルソほう酸エチル、オルソほう酸ブチル等のオルソほう酸アルキル等のオルソカルボン酸エステルや、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等の高活性シラン化合物などが挙げられる。
【0074】
脱水剤の使用量としては、ビニル系共重合体(A)100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下であることが好ましい。
【0075】
(その他)
本発明のコーティング用多液型硬化性樹脂組成物には、必要に応じて添加剤を配合することができる。添加剤としては可塑剤、分散剤、脱水剤、湿潤剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、沈降防止剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤等があげられる。
【0076】
さらに必要に応じて顔料を添加しても良く、顔料としては、二酸化チタン、炭酸カルシルム、炭酸バリウム、カオリン等の白色顔料、カーボンブラック、ベンガラ、シアニンブルー等の有色系顔料が挙げられる。
【0077】
本発明の硬化性樹脂組成物の調製方法としては、硬化性樹脂組成物が多液型となるのであれば特に限定されない。組成物の混合比、貯蔵安定性、混合方法、ポットライフ等を考慮して配合成分を多液に分けて配合しておき、使用時に混合する。すなわち、2液型の場合は、配合成分をA液とB液の2液に分割して配合しておき、2液を使用時に混合する。A液とB液への分割方法は、貯蔵安定性等に応じて種々の組合せが可能である。また、必要に応じて、3液型あるいはそれ以上に分割することも可能である。
【0078】
以上のようにして、本発明に係わるコーティング用多液型硬化性樹脂組成物が得られる。本発明のコーティング用多液型硬化性樹脂組成物を塗布する際には、ロールコーター法、ブレードコーター法、グラビアコーター法、ビートコーター法、カーテンフローコーター法、浸漬塗布法、及びスプレー塗布法のいずれも可能である。
【0079】
(硬化方法)
また、硬化性樹脂組成物は、常温〜300℃の任意の温度で硬化することができる。
硬化性樹脂組成物が加熱硬化型の場合は、加熱温度が高いほど加熱時間は短縮でき得る。その場合、65〜250℃の温度で5秒〜60分加熱硬化することが好ましい。
もちろん、過度に熱をかけることができない材料に対しても温和な硬化条件で塗膜を形成することが可能である。その場合は、常温程度で湿分により硬化することが好ましい。
【0080】
(塗膜)
本発明の多液型コーティング用硬化性樹脂組成物の塗膜の厚みとしては、0.5〜70μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。薄すぎる場合には、物理的な磨耗により塗膜が欠損し易くなり、耐久性の面で好ましくなく、厚すぎる場合には、塗材を加工する際に、塗膜に割れ及び剥がれが発生し易くなり、好ましくない。
【0081】
本発明に係わるコーティング用多液型硬化性樹脂組成物の被塗物としては、金属、無機物、有機物、および複合材料が挙げられる。金属としては、ステンレス、アルミニウム、ブリキ、トタン、軟鋼板、銅、真鍮、各種メッキ鋼板およびチタン等が挙げられる。化成処理、アルマイト処理などの表面処理を施した基材でも好適に使用できる。無機物としてはガラス、モルタル、スレート、コンクリート及び瓦等が挙げられる。有機物としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル、ポリカーボネート、ABS、ポリスチレン、PET、ナイロン、ポリエステル、ゴム、及びエラストマーのようなプラスチック成形品およびこれらをフィルム状に加工した製品などが挙げられる(尚、これらは、付着性の点から必要に応じて表面処理されたものであっても良い)。さらに本発明は、トップコートして充分な機能を有するため、エポキシ系塗料やウレタン系塗料、メラミン系塗料などの各種有機系の下塗り剤に対しても使用できる。複合材料としてはFRP、FRTP、積層板および金属と有機物を圧着したサンドイッチ材などが挙げられる。
【0082】
(用途)
硬化性樹脂組成物の具体的用途としては、携帯電話や(パーソナル)コンピューターの筐体や家電製品等のプラスチック成型体、フラットパネルディスプレイやタッチパネル用のフィルム、テーブルや机、家具などの木材製品さらに各種金属製品への塗装が挙げられる。また、耐候性、耐酸性、耐薬品性、耐擦傷性、耐汚染性に優れる塗膜が得られることから、自動車用トップコートとして使用される自動車クリアーコーティング剤も好ましい用途として挙げられる。
【0083】
本発明に係る自動車クリアーコーティング剤は、本発明のコーティング用多液型硬化性樹脂組成物を含んでなるものである。
【0084】
また、本発明に係る塗装物は、本発明のコーティング用多液型硬化性樹脂組成物を塗装したものである。
【実施例】
【0085】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0086】
(ビニル系共重合体)
攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた反応器に表1の(イ)成分を仕込み、窒素ガスを導入しつつ110℃に昇温した後、表1の(ア)成分の混合物を滴下ロートから5時間かけて等速滴下した。次に、(ウ)成分の混合溶液を1時間かけて等速滴下した。その後、引き続き、110℃で2時間攪拌した後に、室温まで冷却した。最後に表1の(エ)成分を加えて攪拌し、共重合体を合成した。
【0087】
得られた共重合体の固形分濃度、GPCで測定した数平均分子量などを表1に示した。尚、共重合体(A−1〜A−8)は、重合溶剤で固形分濃度が50%となるように一旦希釈して次の配合へと進めた。
【0088】
【表1】
【0089】
(硬化剤)
表2に示す配合に従い、硬化剤(H−1〜H−7)を調製した。
【0090】
【表2】
【0091】
FM−4:ダイセル化学工業(株)製ラクトン変性ヒドロキシエチルメタクリレート
コロネートHX:日本ポリウレタン工業(株)製ポリイソシアネート(NCO%=21.3%)
コロネート2349:日本ポリウレタン工業(株)製ポリイソシアネート(NCO%=12.2%)
【0092】
(物性評価1)
表3に示す配合に従い塗液を調製し、エアスプレー塗布法にて乾燥膜厚が20〜30μmになるようにポリカーボネート樹脂成形板に塗布し、80℃で30分乾燥させ、耐溶剤性、及び、耐薬品性の評価を行った。
【0093】
・耐溶剤性、耐薬品性
ポリカーボネート樹脂成型板に塗布した試験片を室温養生3日後、表3に示す溶剤、薬品をスポットし、耐溶剤性評価の場合は、常温で溶剤が揮発するまで静置し、耐薬品性評価の場合は、80℃で1時間静置した後、脱脂綿で拭取り、塗膜の状態を観察した。
○:変化なし
△:スポット跡が残る
×:塗膜が膨潤(溶解)している
コパトーン(登録商標)及びニベア(登録商標)としては、下記のものを使用した。
コパトーン:コパトーンSPF50(花王(株)製)
ニベア :ニベアSPF47((株)アイ・エー・シー製)
【0094】
(物性評価2)
カチオン電着塗装されたリン酸亜鉛処理鋼板(日本テストパネル(株)製バルボンド処理板)に、水性ベースコート白(AXUZ−DRY:イサム塗料(株)製)を塗装し、80℃で5分間プレヒートを行った。次に表3に示す配合に従い調製した塗液を、エアスプレー塗布法にて乾燥膜厚が30〜40μmになるように塗布し、140℃で30分焼き付けて塗膜を形成させ、評価を行った。
【0095】
・耐酸性
室温養生1日後、40%硫酸水溶液をスポットして、70℃で30分間放置したのち、水で硫酸水溶液を洗い落して塗膜の状態を観察した。
○:変化なし
△:スポット跡が残る
×:塗膜が膨潤(溶解)している
【0096】
・耐擦傷性
室温養生3日後、消しゴム摩耗試験機((株)光本製作所製)を用い、スチールウール#0000に250g/cm
2の荷重をかけて30回往復させ、塗膜に残った傷の本数を観察した。
○:傷なし
○△:数本の傷
△:数本から10本以内の浅い傷
×:傷が10本以上若しくは深い傷
・傷修復性
Knoop硬度計を用いて塗膜に傷を付け、30分後の傷の状態(修復性)を観察した。
○:傷が回復している
△:傷の面積が減少している
×:変化なし
−:未実施
【0097】
・耐汚染性
作製した塗装板を、大阪府摂津市の屋外で30°の角度になるように設置して曝露に供した。2ヶ月間曝露したのち、塗膜表面の汚れ具合を目視にて観察、評価した。
○:汚れがあまり見られず、耐汚染性にすぐれている
△:薄めの汚れが確認できる
×:はっきりと目立った汚れが確認できる
【0098】
【表3】
【0099】
実施例1〜10では、硬化後すぐに高い耐溶剤性、耐酸性及び耐薬品性を示し、また耐擦傷性にも優れたバランスの良い塗膜が得られた。さらには、屋外に供した場合の汚れが付きにくく、耐汚染性に優れていた。また水酸基が炭素数4のアルキレン基を介してアクリロイル基と結合した単量体である4−ヒドロキシブチルアクリレートを使用した実施例5と実施例9、および炭素−炭素二重結合を末端に有するポリラクトン系単量体であるFM−4を使用した実施例7では、耐溶剤性、耐酸性、耐薬品性、耐擦傷性に加え、傷修復性も認められた。
なお、物性評価2において作製した塗装板についても、物性評価1と同様の耐薬品性評価を行ったところ、表3に記載した結果と同じ結果が得られた。
また、ABS樹脂成形板に表3に示す配合に従い塗液を調製し、エアスプレー塗布法にて乾燥膜厚が20〜30μmになるように塗布し、80℃で30分乾燥させ、物性評価2と同様の耐傷性評価を行ったところ、表3に記載した結果と同じ結果が得られた。
【0100】
一方、一分子中の加水分解性基ケイ素基および水酸基が10個に満たない共重合体(A−6)を用いた比較例1では、耐薬品性と耐擦傷性が充分に得られなかった。また一分子中の加水分解性基ケイ素基は10個以上あるものの、水酸基を含まない比較例2では耐汚染性は優れるものの、耐擦傷性が、逆に一分子中の水酸基は10個以上あるものの、加水分解性ケイ素基を含まない比較例3は、耐薬品性及び耐汚染性が極めて劣る結果となった。
【0101】
以上のように本発明のコーティング用硬化性樹脂組成物は、高い耐溶剤性、耐酸性と耐薬品性を示し、また耐擦傷性及び耐汚染性にも優れるものであり、目的とした課題をバランスよく解決できるコーティング用硬化性樹脂組成物であることが確認された。さらに、共重合体成分として特定の単量体を使用することで、傷修復性も期待できることが確認された。