(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の説明では、図中に示した矢印Uの方向を上方向、矢印Dの方向を下方向、矢印Lの方向を左方向、矢印Rの方向を右方向、矢印Fの方向を前方向、矢印Bの方向を後方向とそれぞれ定義して、説明を行う。
【0030】
以下では、
図1及び
図2を用いて、本発明の一実施形態(第一実施形態)に係る作業車両の全体的な構成について説明する。
【0031】
作業車両は、車体の主な構造体として、パイプ材や板材等を組み合わせて前後方向に延びるように形成された主フレーム1を具備する。主フレーム1の前部は左右一対の前輪2に支持され、主フレーム1の後部は左右一対の後輪3に支持される。前輪2及び後輪3は駆動させることが可能な車輪(駆動輪)である。主フレーム1の前部には、当該主フレーム1を上方から覆うようにフロントカバー4が設けられる。主フレーム1の前後中途部の上部には、保護フレーム5が設けられる。保護フレーム5によって形作られた略直方体状の空間に、作業者が搭乗するための運転操作部6が形成される。運転操作部6は、前部に形成される前列部6Fと、後部に形成される後列部6Rとに区分けされる。
【0032】
前列部6Fには、水平な床面(作業者が搭乗した際に足を載せる面(足載せ面))を形成する前部デッキ板6aが設けられる。前部デッキ板6aは主フレーム1に適宜固定される。前列部6Fには、作業者が着座する前部座席6bが設けられる。前列部6Fには、前部座席6bに着座した作業者が操作可能なステアリングホイール6cや各種の操作具が設けられる。
【0033】
後列部6Rには、水平な床面(足載せ面)を形成する後部デッキ板6dが設けられる。後部デッキ板6dは前部デッキ板6aよりもやや高い位置において、主フレーム1に適宜固定される。後列部6Rには、作業者が着座する後部座席6eが設けられる。後部座席6eは、前下部に設けられた回動軸を中心として回動可能に支持される。
【0034】
主フレーム1の後上部には、荷台7が設けられる。荷台7の前端部近傍には、折り畳み可能な可変部7aが形成される。可変部7aは、運転操作部6の後列部6R内まで前方に延びるように形成される。また荷台7の後端部は、前後方向において後輪3よりも後方まで延びるように形成される。
【0035】
図1に示す状態においては、後部座席6eが前方へと回動され、当該後部座席6eが回動することによって確保された空間に荷台7の可変部7aが配置されている。この状態では、作業者は運転操作部6の前列部6Fに搭乗することができる。一方、荷台7の可変部7aを折り畳み、後部座席6eを後方へと回動させることで、運転操作部6の後列部6Rにも作業者が搭乗することができるようになる。このように、作業車両は、前部座席6b及び後部座席6eに作業者が着座可能な2列座席仕様と、前部座席6bにのみ作業者が着座可能な1列座席仕様(
図1参照)と、を切り替えることができる。1列座席仕様においては、荷台7の可変部7aを広げることで、当該荷台7の容量を拡張することができる。
【0036】
以下では、
図3から
図5までを用いて、作業車両の動力の伝達経路に関する構成について説明する。
【0037】
図3及び
図4に示すように、作業車両の車体の後部(具体的には、荷台7の可変部7aの下方)には、エンジン8が配置される。エンジン8は、その内部に収容されたクランクシャフトの長手方向が前後方向を向くように配置される。エンジン8の後方かつ荷台7の下方には、ミッションケース9aに収容されたギヤ式変速装置9が配置される。エンジン8は、ミッションケース9aの前側面の右寄りに固定される。ミッションケース9aの後方かつ荷台7の下方には、HSTケース10aに収容されたHST(静油圧式無段変速装置)10が配置される。HSTケース10aは、ミッションケース9aの後側面に固定される。
なお、ギヤ式変速装置9及びHST10は、本発明に係るトランスミッションの実施の一形態である。
【0038】
ギヤ式変速装置9には、左右一対の回転軸11が連結される。左右の回転軸11は、ミッションケース9aの左右両側面から外方向に向かって延びるように設けられる。左右の回転軸11の外側端部は、左右の後輪3にそれぞれ連結される。
【0039】
また、ギヤ式変速装置9には、前輪駆動軸12が連結される。前輪駆動軸12は、ミッションケース9aの前側面の左寄りから前方向に向かって延びるように設けられる。前輪駆動軸12は、差動ケース13aに収容された前輪差動機構13に連結される。前輪差動機構13は、左右一対の前輪2の略中央に配置される。前輪差動機構13には、左右一対の回転軸14が連結される。左右の回転軸14は、差動ケース13aの左右両側面から外方向に向かって延びるように設けられる。左右の回転軸14の外側端部は、左右の前輪2にそれぞれ連結される。
なお、
図3においては、便宜上、前輪駆動軸12、前輪差動機構13及び回転軸14の図示を省略している。
【0040】
また、エンジン8には、機械式動力伝達機構20が連結される。機械式動力伝達機構20の後端部は、前記クランクシャフトの前端部に連結された動力取出軸8aに連結される。機械式動力伝達機構20は前方向に向かって延びるように設けられる。機械式動力伝達機構20の前端部は、作業車両の車体の前部(具体的には、左右一対の前輪2の略中央)に配置されたPTO軸15に連結される。
なお、機械式動力伝達機構20及びPTO軸15の詳細については後述する。
【0041】
このように構成された作業車両において、エンジン8の回転数は、運転操作部6に設けられるエンジン回転数操作具(不図示)によって任意に調節することができる。
図4及び
図5に示すように、エンジン8からの動力は、前記クランクシャフトの後端部から、ミッションケース9a内に配置される図示しない軸を介してHST10へと伝達され、当該HST10において適宜変速される。当該HST10における変速比は、運転操作部6に設けられる変速操作具(不図示)によって無段階に調節することができる。HST10において変速された動力は、ギヤ式変速装置9へと伝達され、当該ギヤ式変速装置9においてさらに変速(例えば、前進と後進の切り替えや、高速と低速の切り替え等)される。当該ギヤ式変速装置9における変速段は、運転操作部6に設けられる変速操作具(不図示)によって切り替えることができる。
【0042】
ギヤ式変速装置9において変速された動力は、回転軸11を介して左右の後輪3に伝達される。当該動力によって後輪3が駆動される。また、ギヤ式変速装置9において変速された動力は、前輪駆動軸12を介して前輪差動機構13に伝達される。当該前輪差動機構13に伝達された動力は、回転軸14を介して左右の前輪2に伝達される。当該動力によって前輪2が駆動される。
【0043】
また、エンジン8からの動力は、前記クランクシャフトの前端部から動力取出軸8a及び機械式動力伝達機構20を介してPTO軸15に伝達される。当該動力によってPTO軸15が回転駆動される。当該PTO軸15から、外部へと動力を取り出すことができる。例えば、PTO軸15に所望の作業装置(例えば、除雪作業を行うスノーブロアや、芝刈作業を行うモア等)を連結することで、作業車両のエンジン8の動力を用いて当該作業装置を駆動させることができる。
PTO軸15へと伝達される動力は、HST10及びギヤ式変速装置9によって変速される前のエンジン8の動力である。このため、HST10及びギヤ式変速装置9における変速比(ひいては、作業車両の走行速度)にかかわらず、エンジン8の回転数に応じた動力を当該PTO軸15から取り出すことが可能となる。
【0044】
以下では、
図6から
図10までを用いて、機械式動力伝達機構20及びPTO軸15の構成について詳細に説明する。
【0045】
機械式動力伝達機構20は、HST10及びギヤ式変速装置9によって変速される前のエンジン8の動力を、運転操作部6の下方を介してPTO軸15へと伝達するものである。機械式動力伝達機構20は、主として後部伝達軸21、クラッチユニット22、クラッチ入力軸23、クラッチ出力軸24、前部伝達軸25及び減速機構26を具備する。
【0046】
図6から
図8までに示す後部伝達軸21は、エンジン8の動力取出軸8aと後述するクラッチ入力軸23とを連結することにより、当該動力取出軸8aからの動力をクラッチ入力軸23へと伝達するためのものである。後部伝達軸21は、エンジン8の前方に配置される。後部伝達軸21の後端は、第一自在継手27aを介して動力取出軸8aに連結される。後部伝達軸21の前端は、前下方に向かって延びるように配置される。これによって、後部伝達軸21は、後上方から前下方に向かって傾斜するように配置される。
【0047】
ここで、エンジン8の前方には、後列部6Rの後部デッキ板6dが配置されている。また、本実施形態に係るエンジン8は、動力取出軸8aが後列部6Rの後部デッキ板6dよりも低い位置(具体的には、前列部6Fの前部デッキ板6aと同じ高さ)になるように配置されている(
図6参照)。したがって、当該動力取出軸8aに連結された後部伝達軸21は、後部デッキ板6dの下方に位置することになる。
【0048】
クラッチユニット22は、当該クラッチユニット22を介する動力の伝達の可否を切り替えるものである。クラッチユニット22は、後部伝達軸21の前端の前方(前列部6Fの後端部下方)に配置される。またクラッチユニット22は、前後方向において運転操作部6(より詳細には、前列部6F)の下方に配置される。
【0049】
本実施形態においては、クラッチユニット22は湿式多板クラッチにより形成されるものとするが、本発明はこれに限るものではなく、その他の種類のクラッチ(例えば、電磁クラッチ、噛み合いクラッチ等)を用いることも可能である。
【0050】
クラッチユニット22には、当該クラッチユニット22を操作するための操作レバー22aが設けられる。操作レバー22aは、クラッチユニット22から左方向へと延びるように形成されると共に、当該左端部から上方向へと延びるように形成される。これによって、操作レバー22aの上端部は、前列部6Fに配置された前部座席6bの左側方に位置することになる。前列部6Fに着座した作業者が当該操作レバー22aを操作することにより、クラッチユニット22による動力の伝達の可否を切り替えることができる。
【0051】
クラッチ入力軸23は、後部伝達軸21とクラッチユニット22とを連結することにより、当該後部伝達軸21からの動力をクラッチユニット22へと伝達するためのものである。クラッチ入力軸23は、軸線方向を前後方向に向けて配置される。クラッチ入力軸23の後端は、第二自在継手27bを介して後部伝達軸21の前端に連結される。クラッチ入力軸23の前端は、クラッチユニット22に連結される。
クラッチ入力軸23の中途部は、主フレーム1に固定された軸受ユニット23aによって回転可能に支持される。これによって、クラッチ入力軸23の振れ回りを防止することができる。
【0052】
クラッチ出力軸24は、クラッチユニット22と後述する前部伝達軸25とを連結することにより、当該クラッチユニット22からの動力を前部伝達軸25へと伝達するためのものである。クラッチ出力軸24は、軸線方向を前後方向に向けて配置される。クラッチ出力軸24の後端は、クラッチユニット22に連結される。クラッチ出力軸24の前端は、前方向に延びるように配置される。
【0053】
図6から
図10までに示す前部伝達軸25は、クラッチ出力軸24と後述する減速機構26とを連結することにより、当該クラッチ出力軸24からの動力を減速機構26へと伝達するためのものである。前部伝達軸25は、運転操作部6の前部デッキ板6aの下方において、軸線方向を前後方向に向けて概ね水平に配置される。前部伝達軸25の後端は、第三自在継手27cを介してクラッチ出力軸24の前端に連結される。前部伝達軸25の前端は、左右一対の前輪2の中間部近傍まで前方向に延びるように配置される。
【0054】
図9及び
図10に示す減速機構26は、PTO軸15へと伝達される動力を減速させるためのものである。減速機構26は、箱状の減速ケース26a、当該減速ケース26aに収容される図示しないギヤ及び軸等、並びに入力軸26bによって形成される。当該減速機構26による動力の減速比は、予め任意の値に設定される。
【0055】
減速ケース26aは、左右一対の前輪2の中間部近傍かつフロントカバー4の下方に配置される。減速ケース26aは、上下方向において運転操作部6の前部デッキ板6aの下方から上方に亘るように配置される。
【0056】
減速ケース26aの後側面の下端部近傍(より詳細には、運転操作部6の前部デッキ板6aよりも下方に位置する部分)には、後方に向かって突出するように入力軸26bが設けられる。入力軸26bの前端部は、減速ケース26a内のギヤ等に連結される。入力軸26bの後端部は、第四自在継手27dを介して前部伝達軸25の前端部に連結される。
【0057】
PTO軸15は、作業車両の外部へと動力を取り出すためのものである。PTO軸15は、軸線方向を前後方向に向けて配置される。PTO軸15は、減速ケース26aの前側面の上端部近傍(より詳細には、運転操作部6の前部デッキ板6aよりも上方に位置する部分)から前方に向かって突出するように設けられる。PTO軸15の後端部は、減速ケース26a内のギヤ等に連結される。PTO軸15は、フロントカバー4の下方(正面から視認可能な位置(
図2参照))において、作業車両の左右中央に位置するように配置される。このようにして、PTO軸15は減速機構26を介することによって、正面視において前部伝達軸25の前端(入力軸26b)と重複しない位置に配置(オフセット)される。
【0058】
なお、エンジン8の動力取出軸8aは、本発明に係る動力取出部の実施の一形態である。
また、後部伝達軸21、クラッチ入力軸23、クラッチ出力軸24及び前部伝達軸25は、本発明に係る動力伝達軸の実施の一形態である。
また、後部伝達軸21は、本発明に係る第一伝達軸の実施の一形態である。
また、クラッチ入力軸23、クラッチ出力軸24及び前部伝達軸25は、本発明に係る第二伝達軸の実施の一形態である。
【0059】
また、
図6及び
図7に示すように、主フレーム1の底部には保護プレート16が固定される。保護プレート16は、主フレーム1の底部に沿うように、板状の部材を適宜折り曲げて形成される。保護プレート16は、機械式動力伝達機構20の中途部(より詳細には、後部伝達軸21の中途部から前部伝達軸25の中途部に亘る部分)を下方から覆うように配置される。当該保護プレート16によって、土や草等の異物が機械式動力伝達機構20(特に、第二自在継手27b及び第三自在継手27c)に付着するのを防止することができ、ひいては機械式動力伝達機構20に不具合が生じるのを防止することができる。
【0060】
以上の如く、機械式動力伝達機構20は、エンジン8の動力を、運転操作部6(前部デッキ板6a及び後部デッキ板6d)の下方を介してPTO軸15へと伝達することができる。機械式動力伝達機構20はエンジン8の動力を機械的に(複数の軸及びギヤを用いて)伝達するため、動力の伝達ロスを低く抑えることができる。
【0061】
また、後部伝達軸21を傾斜するように配置することで、当該後部伝達軸21に連結される前部伝達軸25等をエンジン8の動力取出軸8aと異なる高さ(特に、動力取出軸8aより低い位置)に配置することができる(
図6参照)。これによって、機械式動力伝達機構20を運転操作部6の下方に容易に配置することができ、当該機械式動力伝達機構20と運転操作部6との干渉を回避することができる。また、前部伝達軸25等の位置にかかわらず、エンジン8を高い位置に配置することができるため、地面から当該エンジン8までの距離(高さ)を大きく確保することが可能となる。
【0062】
また、機械式動力伝達機構20(特に、前部伝達軸25)は、前輪駆動軸12に沿うように(すなわち、前輪駆動軸12の近傍において、当該前輪駆動軸12と概ね平行になるように)配置されている(
図7から
図10まで参照)。このように構成することにより、前輪駆動軸12が配置されているスペースを利用して、機械式動力伝達機構20を容易に配置することができる。
【0063】
なお、上記第一実施形態においては、ギヤ式変速装置9はミッションケース9aに収容され、HST10はHSTケース10aに収容されるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、HST10の一部がミッションケース9aに収容される構成であっても良い。
【0064】
また、本発明に係るトランスミッションの構成は、上記第一実施形態に係るギヤ式変速装置9及びHST10を具備する構成に限るものではない。例えば、HST10の代わりにベルト式のCVT(無段変速装置)を用いる構成や、ギヤ式変速装置9のみを有する構成とすることも可能である。
【0065】
また、本発明に係る機械式動力伝達機構の構成は、上記第一実施形態に係る機械式動力伝達機構20の構成に限るものではない。すなわち、機械式動力伝達機構20は、エンジン8の動力を運転操作部6の下方を介して機械的にPTO軸15へと伝達することができるものであれば良い。
例えば、クラッチユニット22は任意の位置に設けることが可能である。但し、運転操作部6まで延設される操作レバー22aをクラッチユニット22に設ける場合には、クラッチユニット22を当該運転操作部6の近傍(運転操作部6の下方)に配置することが望ましい。
また、クラッチユニット22を操作するための操作具は、当該クラッチユニット22と機械的に連結される操作レバー22aに限るものではなく、例えば電気的にクラッチユニット22を操作可能なスイッチ等であっても良い。
また、機械式動力伝達機構20は、作業車両に対して着脱可能に構成することも可能である。
【0066】
また、上記第一実施形態においては、エンジン8、ギヤ式変速装置9及びHST10の上方に荷台7が配置されるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、荷台7はギヤ式変速装置9及びHST10の上方にのみ配置される構成(エンジン8の上方には、その他の部材(例えば、運転操作部6)が配置される構成)であっても良い。
【0067】
また、上記第一実施形態においては、PTO軸15は前部デッキ板6aよりも上方に配置されているものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、PTO軸15は任意の高さに配置することが可能である。
【0068】
また、上記第一実施形態においては、エンジン8は、動力取出軸8aが前部デッキ板6aと同じ高さになるように配置されているものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、エンジン8は任意の高さに配置することが可能である。たとえば、動力取出軸8aが前部デッキ板6aよりも高い位置になるようにエンジン8を配置することも可能である。
【0069】
なお、機械式動力伝達機構20が具備する自在継手による連結部の角度には、適切に作動することが可能な角度の上限(許容角度)が予め定められている。よって、機械式動力伝達機構20は、当該許容角度を満たすように構成されることが望ましい。例えば、後部伝達軸21と動力取出軸8aとの連結部(第一自在継手27a)の角度は、当該第一自在継手27aの許容角度(例えば、30°)以下になるように構成することが望ましい。また、当該許容角度よりもさらに小さい角度(例えば、25°以下)になるように構成することにより、当該第一自在継手27aから発生する騒音を抑制することもできる。
【0070】
以下では、本発明に係る作業車両の他の実施形態について説明する。
【0071】
まず、
図11を用いて、第二実施形態に係る作業車両について説明する。
第一実施形態に係る作業車両においては、
図11(a)に示すように、機械式動力伝達機構20は後部伝達軸21、クラッチ入力軸23及びクラッチ出力軸24、並びに前部伝達軸25を具備するものとした。しかし、第二実施形態(
図11(b)参照)に係る作業車両においては、機械式動力伝達機構20は2本の軸(後部伝達軸21及び第二伝達軸31)を具備している。この場合、第一実施形態に係るクラッチ入力軸23、クラッチ出力軸24及び前部伝達軸25の代わりに、第二伝達軸31によって第二自在継手27bと第四自在継手27dとが連結される。これによって、第一実施形態に係る作業車両に比べて、1つの自在継手(第三自在継手27c)を削減し、構造の簡素化を図ることができる。
【0072】
次に、
図12(a)を用いて、第三実施形態に係る作業車両について説明する。
第三実施形態に係る作業車両においては、機械式動力伝達機構20は1本の軸(第三伝達軸32)を具備している。第三伝達軸32は、作業車両の車体の後部から前部に亘って配置されている。この場合、第三伝達軸32によって第一自在継手27aと第四自在継手27dとが連結される。これによって、第一実施形態に係る作業車両に比べて、2つの自在継手(第二自在継手27b及び第三自在継手27c)を削減し、構造の簡素化を図ることができる。
【0073】
次に、
図12(b)を用いて、第四実施形態に係る作業車両について説明する。
第四実施形態に係る作業車両においては、機械式動力伝達機構20は、第三実施形態に係る構成に加えて後部減速機構33を具備している。
【0074】
後部減速機構33は、エンジン8の動力を減速させて第三伝達軸32へと伝達するためのものである。後部減速機構33はエンジン8の直前に設けられる。後部減速機構33はエンジン8の動力取出軸8aに連結され、当該動力取出軸8aからの動力を減速した後で、第三伝達軸32へと伝達する。このようにして、当該後部減速機構33によって減速された動力を第三伝達軸32へと伝達することで、当該第三伝達軸32の回転数を低く抑えることができる。これによって、第三伝達軸32の振れ回りを抑制したり、当該第三伝達軸32の径の小径化を図ることができる。
【0075】
また、後部減速機構33を介して第三伝達軸32を動力取出軸8aに連結することで、当該第三伝達軸32を動力取出軸8aに対してオフセットさせることができる。例えば、
図12(b)に示すように、第三伝達軸32を動力取出軸8aに対して下方にオフセットさせることで、当該第三伝達軸32をより低い位置に配置することができる。これによって、当該第三伝達軸32と運転操作部6との干渉を容易に回避することが可能となる。
【0076】
また、後部減速機構33に、当該後部減速機構33を介する動力の伝達の可否を切り替えることが可能なクラッチを設ける構成とすることも可能である。
【0077】
次に、
図13を用いて、第五実施形態及び第六実施形態に係る作業車両について説明する。
第一実施形態に係る作業車両においては、
図13(a)に示すように、エンジン8はミッションケース9aの前側面の右寄りに固定されるものとした。しかし、第五実施形態(
図13(b)参照)に係る作業車両においては、エンジン8はミッションケース9aの前側面の左寄りに固定されている。この場合、前輪駆動軸12はミッションケース9aの前側面の右寄りから前方に向かって延びるように設けることができる。
【0078】
また、第六実施形態(
図13(c)参照)に係る作業車両においては、エンジン8とミッションケース9aとが離間した状態で配置されている。このように、エンジン8とミッションケース9aとを直接固定することなく配置しても良い。
【0079】
次に、
図14を用いて、第七実施形態に係る作業車両について説明する。
第一実施形態に係る作業車両においては、
図13(a)に示すように、エンジン8、ギヤ式変速装置9及びHST10を前後方向に一列に配置するものとした。しかし、第七実施形態(
図14参照)に係る作業車両のようにエンジン8等を配置することも可能である。以下、具体的に説明する。
【0080】
第七実施形態に係る作業車両においては、エンジン8は、その内部に収容されたクランクシャフトの長手方向が左右方向を向くように配置される。エンジン8の後方には、ミッションケース9aに収容されたギヤ式変速装置9が配置される。エンジン8及びミッションケース9aの右側方には、HSTケース10aに収容されたHST10が配置される。HSTケース10aの左側面の前端部は、エンジン8の右側面に固定される。HSTケース10aの左側面の後端部は、ミッションケース9aの右側面に固定される。
【0081】
また、第七実施形態に係る機械式動力伝達機構20は、動力変換機構34を具備する。動力変換機構34は、エンジン8のクランクシャフトの回転(すなわち、左右方向に向けられた軸を中心とする回転)を、後部伝達軸21の回転(すなわち、前後方向に向けられた軸を中心とする回転)に変換するためのものである。動力変換機構34は、エンジン8の左側方に設けられる。動力変換機構34は、図示しないギヤ(例えば、一対のベベルギヤ)及び軸等、並びに出力軸34aによって形成される。動力変換機構34は、前記クランクシャフトの左端部に連結された動力取出軸8aに連結される。動力変換機構34は、動力取出軸8aを介して伝達されるエンジン8の動力を、前方向に向けて突出するように設けられた出力軸34aから出力することができる。当該出力軸34aは、第一自在継手27aを介して後部伝達軸21と連結されている。
【0082】
このように構成された作業車両において、エンジン8からの動力は前記クランクシャフトの右端部からHST10へと伝達され、当該HST10において適宜変速される。当該HST10において変速された動力は、ギヤ式変速装置9へと伝達され当該ギヤ式変速装置9においてさらに変速される。当該ギヤ式変速装置9において変速された動力は、回転軸11を介して左右の後輪3に伝達される。また、ギヤ式変速装置9において変速された動力は、前輪駆動軸12及び前輪差動機構13等を介して左右の前輪2に伝達される。
【0083】
また、エンジン8からの動力は、前記クランクシャフトの左端部から動力取出軸8aを介して動力変換機構34に伝達され、当該動力変換機構34によって動力の回転方向が変換される。当該動力は、出力軸34a等を介してPTO軸15に伝達される。
【0084】
第七実施形態に示したように、エンジン8を、その内部に収容されたクランクシャフトの長手方向が左右方向を向くように配置することも可能である。
なお、この場合、動力変換機構34においてエンジン8からの動力を減速するように構成することで、後部伝達軸21等の振れ回りを抑制することもできる。
【0085】
次に、
図15を用いて、第八実施形態に係る作業車両について説明する。
第八実施形態に係る作業車両においては、第七実施形態(
図14参照)に係る作業車両と同様に、エンジン8はクランクシャフトの長手方向が左右方向を向くように配置されている。また、第八実施形態に係る機械式動力伝達機構20は、ベルト37を用いてエンジン8からの動力を減速機構26へと伝達する。以下、具体的に説明する。
【0086】
第八実施形態に係る機械式動力伝達機構20は、後部プーリ35、前部プーリ36、ベルト37及び減速機構38を具備する。後部プーリ35は、エンジン8の動力取出軸8aに連結される。減速機構38は、作業車両の前部に配置されたPTO軸15に連結される。当該減速機構38へと動力を入力するための入力軸38aは、当該減速機構38から左方向に向かって突出するように設けられる。前部プーリ36は、減速機構38の入力軸38aに連結される。ベルト37は後部プーリ35及び前部プーリ36に巻かれ、当該後部プーリ35からの動力を前部プーリ36に伝達することができる。
【0087】
このように構成された作業車両において、エンジン8からの動力は、前記クランクシャフトの左端部から動力取出軸8aを介して後部プーリ35に伝達される。当該動力は、ベルト37を介して前部プーリ36に伝達され、さらに入力軸38aから減速機構38へと伝達される。当該動力は、減速機構38において適宜減速され、PTO軸15に伝達される。
【0088】
第八実施形態に示したように、機械式動力伝達機構20は、軸だけでなくベルト37を用いてエンジン8からの動力をPTO軸15へと伝達する構成とすることも可能である。
【0089】
なお、第八実施形態に係る機械式動力伝達機構20に、ベルト37の張力を変更することで当該ベルト37を介した動力の伝達の可否を切り替えるクラッチ(ベルトテンションクラッチ)をさらに設けることも可能である。
また、ベルト37に代えて、チェーンを用いて動力を伝達する構成とすることも可能である。
【0090】
次に、
図16を用いて、第九実施形態に係る作業車両について説明する。
第一実施形態に係る作業車両においては、
図5及び
図13(a)に示すように、エンジン8の前側(クランクシャフトの前端側)から取り出された動力を機械式動力伝達機構20を介してPTO軸15へと伝達すると共に、エンジン8の後側(クランクシャフトの後端側)から取り出された動力をHST10へと伝達するものとした。しかし、第九実施形態に係る作業車両においては、エンジン8の後側から取り出された動力を、PTO軸15及びHST10へとそれぞれ伝達するものとしている。以下、具体的に説明する。
【0091】
第九実施形態に係る機械式動力伝達機構20は、第一実施形態に係る機械式動力伝達機構20の構成に加えて、動力取出機構39を具備している。動力取出機構39は、エンジン8のクランクシャフトの後端部からHST10へと伝達される動力を取り出すためのものである。動力取出機構39は、図示しないギヤ及び軸等、並びに出力軸39aによって形成される。動力取出機構39は、ミッションケース9aの右側面に固定される。動力取出機構39は、前記クランクシャフトの後端部からHST10へと動力を伝達する軸(不図示)にミッションケース9a内で連結され、当該軸からHST10によって変速される前のエンジン8の動力を取り出すことができる。動力取出機構39によって取り出された動力は、当該動力取出機構39から前方向に向かって突出するように設けられた出力軸39aから後部伝達軸21へと伝達される。
【0092】
このように、機械式動力伝達機構20は、HST10及びギヤ式変速装置9によって変速される前のエンジン8の動力を取り出してPTO軸15へと伝達することが可能であれば、当該動力を取り出す位置は任意に選択することが可能である。
なお、動力取出機構39に、当該動力取出機構39を介する動力の伝達の可否を切り替えるクラッチを設けることも可能である。
【0093】
次に、
図17及び
図18を用いて、第十実施形態に係る作業車両について説明する。
第一実施形態に係る作業車両は、
図1から
図3までに示すように、2列座席仕様(2列座席仕様と1列座席仕様とを切り替えることが可能)に構成されるものとした。しかし、第十実施形態に係る作業車両は、1列座席仕様に構成されている。
【0094】
具体的には、第十実施形態に係る作業車両の運転操作部6は前後に区分けされていない。運転操作部6には、水平な床面を形成するデッキ板6fが設けられると共に、作業者が着座する座席6gが設けられる。
【0095】
このように、1列座席仕様に構成された作業車両においても、第一実施形態と同様に機械式動力伝達機構20を設けることができる。但し、機械式動力伝達機構20と運転操作部6との干渉を回避する(機械式動力伝達機構20を運転操作部6の下方に配置する)ため、後部伝達軸21の上下方向への傾斜角度は適宜の角度に設定される。例えば、第一実施形態(
図3参照)に係る作業車両においては、エンジン8のすぐ前方に配置された後列部6Rの後部デッキ板6dは、さらに前方に配置された前列部6Fの前部デッキ板6aよりも高い位置に配置されているため、後部伝達軸21の傾斜角度を緩やかな角度に設定しても、機械式動力伝達機構20と運転操作部6とが干渉することはない。しかし、第十実施形態(
図18参照)に係る作業車両においては、後列部6Rが設けられていないため、機械式動力伝達機構20と運転操作部6との干渉を回避するため、後部伝達軸21の傾斜角度を第一実施形態に比べて急な角度に設定する必要がある。
【0096】
また、
図17に示すように、第十実施形態に係る作業車両の保護フレーム5の上部にはルーフ41が設けられる。以下では、当該ルーフ41の左右端部の構成について説明する。なお、ルーフ41は概ね左右対称となるように構成されている。よって以下の説明では、ルーフ41の左端部近傍についてのみ説明し、右端部近傍についての説明は省略する。
【0097】
図19及び
図20に示すように、ルーフ41の左端部近傍には、当該ルーフ41の左端部の角度を変更するためのルーフ角度調節機構50が設けられる。ルーフ角度調節機構50は、主として第一アーム51及び第二アーム52を具備する。
【0098】
第一アーム51は、略矩形板状の部材である。第一アーム51の一端(右端)は、フレーム側支持部材51aを介して保護フレーム5の上部に支持される。第一アーム51は、フレーム側支持部材51aに対して上下に回動可能に連結される。
【0099】
第二アーム52は、略矩形板状の部材である。第二アーム52の一端(左端)は、ルーフ側支持部材52aを介してルーフ41の左端部に支持される。第二アーム52は、ルーフ側支持部材52aに対して上下に回動可能に連結される。第二アーム52の他端(右端)部近傍は、第一アーム51の他端(左端)に回動可能に連結される。
【0100】
また、ルーフ41の左端部近傍(左端部から所定距離だけ離れた部分)には、他の部分よりも厚さが薄くなるように形成された薄肉部41aが形成される。ルーフ41は、当該薄肉部41aにおいて弾性変形することにより、当該ルーフ41の左端部を上下に回動させることができる。
【0101】
このように構成されたルーフ41において、
図19に示すように、通常は、ルーフ41の左端部は概ね下方を向いた状態になっている。ルーフ41の左端部の角度を変更する場合、作業者は、当該ルーフ41の左端部を外側(左上方向)へと押す。これによって、ルーフ41は薄肉部41aにおいて弾性変形し、当該薄肉部41aを中心としてルーフ41の左端部が左上方へと回動する。
【0102】
図20に示すように、ルーフ41の左端部が最大限に左上方(外側)へと回動した場合(第一アーム51と第二アーム52とが背面視において一直線上に並んだ場合)、第二アーム52の右端に形成された凹部52bに、第一アーム51の左端部近傍に設けられた球体51bが嵌まり込む。当該球体51bは、圧縮ばね51cによって第二アーム52側(後方)へと押圧されている。このため、第一アーム51及び第二アーム52の回動位置が、当該位置で保持される。これによって、ルーフ41の左端部を、外側に最大限に回動した状態で保持することができる。
【0103】
なお、ルーフ41の左端部を元の状態(
図19参照)に戻す場合には、作業者は第一アーム51と第二アーム52との連結部分を下方へと引き下げる。これによって球体51bが凹部52bから外されると、ルーフ41の左端部は元の角度に戻る。
【0104】
例えば、通常(雨が降っていない状態)は、ルーフ41の左端部は概ね下方を向いた状態となっている(
図19参照)。雨が降った場合には、ルーフ41の左端部を外側に広げることで(
図20参照)、ルーフ41上に降った雨が運転操作部6内に落ち難くなる。すなわち、運転操作部6に搭乗している作業者が濡れ難くなる。このように、必要な場合にのみルーフ41の左端部を外側に広げて、作業者が雨に濡れ難くすることができる。また通常はルーフ41の左端部を下方に向けることで、デザインを損なうことがなく、また当該ルーフ41の左端部が走行や作業の邪魔になるのを防止することができる。また、上述のようなルーフ角度調節機構50においては、手作業でルーフ41の左端部の角度を変更することができ、工具等を用いる必要がない。
【0105】
また、作業車両には、
図21に示すような運転操作部6を覆うキャビン60を具備するものがある。以下では、当該キャビン60に設けられる日除け64について説明する。
【0106】
キャビン60は、前方に配置されるフロントガラス61、後方に配置されるリアガラス62及び上方から運転操作部6を覆うルーフ63を具備する。また、ルーフ63は、キャビン60の内側(運転操作部6)に面するインナールーフ63a及びキャビン60の外側に面するアウタールーフ63bを具備する。
【0107】
また、インナールーフ63aとアウタールーフ63bとの間には、日除け64が収容される。日除け64は、矩形シート状のポリエチレンフォーム64aの表面(上面)に、アルミニウム64bを蒸着させて形成される。日除け64の前端部は、引張りばね65を介してインナールーフ63aの前端部に連結される。日除け64の後端部は、インナールーフ63aの後方を介してキャビン60の内側(運転操作部6内)へと案内されている。
【0108】
このように構成された日除け64は、通常は引張りばね65によってルーフ63内に引き込まれている。この際、日除け64はシート状に広がったままの状態でインナールーフ63aとアウタールーフ63bとの間に収納されることになる。この場合、日除け64はルーフ63の断熱材として利用することができる。すなわち、ルーフ63を介する熱の移動を当該日除け64によって抑制し、キャビン60内の温度(室温)の上昇を抑制することができる。
【0109】
また、日除け64の後端部を引き下げて、任意の位置で適宜固定することによって、リアガラス62の内側を日除け64で覆うことができる。これによって、リアガラス62を介してキャビン60内へと照射される光(太陽光)を遮断することができる。なお、再度日除け64をルーフ63内に収納する場合には、当該日除け64の固定を解除すれば、引張りばね65の張力によって当該日除け64がルーフ63内へと引き込まれる。
【0110】
このように、引張りばね65を用いた簡素な構成によって、キャビン60に日除け64を設けることができる。また、日除け64をルーフ63内に収容する場合には、当該日除け64を巻き取るのではなくシート状のまま引き込むため、当該日除け64をルーフ63の断熱材として利用することができる。