(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、セルラー方式の移動通信システムにおいて、セルを走行している通信中の移動局が他のセルに移動した場合、移動局が通信する通信中の基地局を通信元基地局から移動先のセルの基地局に変えて通信を継続するハンドオーバが知られている(例えば、非特許文献1、2参照)。
【0003】
図7は、従来のセルラー方式の移動通信システムの構成例を示す説明図である。
図7の移動通信システムは、WCDMA(登録商標)(Wideband Code Division Multiple Access)方式を用いた第3世代移動通信方式のシステムであり、基地局(NB:Node B)910,911と無線ネットワーク制御装置(RNC:Radio Network Controller)930と移動通信交換局(MSC:Mobile Switching Center)940とを備えている。ここで、例えば
図8に示すようにセル910Aで通信している移動局(MS:Mobile Station)900がセル911Aに移動した場合には、セル910Aの基地局910からセル911Aの基地局911に切り替えて通信を継続させるようにハンドオーバが制御される。パケット誤りやパケット損失等で通信品質を劣化させることなくハンドオーバさせるためには、移動局900、セル910Aの基地局910、セル911Aの基地局911及び無線ネットワーク制御装置930が互いに連携し、無線ネットワーク制御装置930において、移動局900から網側への通信経路を基地局910から基地局911に切り替えるようにハンドオーバが制御される。このハンドオーバ制御では、移動局900、基地局910、基地局911及び無線ネットワーク制御装置930の連携に時間を要し、ハンドオーバには数100ミリ秒から数秒の時間を要する。
【0004】
図9は、従来のセルラー方式の移動通信システムの他の構成例を示す説明図である。
図8の移動通信システムは、LTE(Long Term Evolution)に準拠した第4世代移動通信方式のシステムであり、基地局(eNB:evolutional Node B)912,913と移動管理制御装置(MME:Mobility Management Entity)950と移動通信パケット交換局(EPC:Evolved Packet Core)960とを備えている。基地局(eNB:evolutional Node B)912,913はそれぞれ移動通信パケット交換局960から受信したパケットを蓄積する機能を有している。ここで、例えば
図10に示すようにセル1で通信している移動局MSがセル2に移動した場合には、セル912Aの基地局912からセル913Aの基地局913に切り替えて通信を継続させるようにハンドオーバが制御される。パケット誤りやパケット損失等で通信品質を劣化させることなくハンドオーバするためには、移動局900、セル912Aの基地局912、セル913Aの基地局913及び移動管理制御装置950が互いに連携し、次にようにハンドオーバが制御される。先ず、移動通信パケット交換局960からセル912Aの基地局912に送付された送付済みのパケットを、基地局912からセル913Aの基地局913に転送し、その後、移動通信パケット交換局960において、移動局900から網側への通信経路を基地局912から基地局913に切り替えるようにハンドオーバが制御される。このハンドオーバ制御では、移動局900、基地局912,913及び移動管理制御装置950の連携に時間を要し、ハンドオーバには数100ミリ秒から数秒の時間を要する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、大都市部においては通信トラフィックが急増しており、通信トラフィックを効率よく運ぶセルラー方式の構成として、
図11に示すようにスモールセル基地局915のマクロセル914Aにマイクロセル、ピコセル、フェムトセルなどのスモールセル(「極小セル」とも呼ばれる。)915Aを重畳(オーバレイ)して構成したオーバレイセル構成(「階層化セル構成」ともいう。)が知られている。スモールセル基地局915のスモールセル915Aのサイズは数十メートル程度である。そのため、高速走行する移動局が短時間でスモールセル915Aを移動する場合、マクロセル914Aとスモールセル915Aとの間のハンドオーバ制御や、互いに隣接するスモールセル915A間のハンドオーバ制御が間に合わず、移動局が網側との通信を継続できない場合がある。
【0006】
例えば、915A移動局900が時速100km(秒速:約30m)で走行している場合、
図12(a)に示す複数のマクロセル914Aが配置されたマクロセル構成では、移動局900は数十秒で1つのマクロセル914Aを横断することになる。
これに対し、
図12(b)に示すセルの大きさが数十メートルのスモールセル915Aでは、移動局900は数百ミリ秒〜数秒(例えば1秒前後)で1つのスモールセル915Aを横断することになる。ハンドオーバ制御には数100ミリ秒から数秒単位の時間を必要とするため、現状のハンドオーバ制御をそのまま適用すると、高速走行の移動局900の通信を継続することは極めて困難である。
【0007】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、互いにサイズが異なる複数のセルが重複したオーバレイセル構成において移動局が高速走行しているときでも移動局と網側との通信を継続することができる基地局、ハンドオーバ管理装置、移動通信システム及びハンドオーバ制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る基地局は、互いにサイズが異なる複数のセルが重複したオーバレイセル構成に用いられる基地局であって、当該基地局と通信しているハンドオーバ対象の移動局の走行速度を検出する検出手段と、前記移動局の走行速度の検出結果に基づいて、切替先候補基地局へのハンドオーバを行うか否かを判断する判断手段と、を備える。
前記基地局において、前記判断手段は、前記移動局の走行速度の検出結果と所定の閾値とを比較し、その比較の結果に基づいて、前記切替先候補基地局へのハンドオーバを行うか否かを判断してもよい。
また、前記基地局において、前記ハンドオーバの通信元基地局が、マクロセル基地局であり、前記切替先候補基地局が、スモールセル基地局であり、前記移動局の走行速度の検出結果が前記閾値以上の場合は、前記切替先候補のスモールセル基地局へのハンドオーバを行わずに前記移動局の走行速度の検出結果が前記閾値よりも小さい場合は、前記切替先候補のスモールセル基地局へのハンドオーバを行うようにしてもよい。
また、前記基地局において、前記ハンドオーバの通信元基地局が、スモールセル基地局であり、前記切替先候補基地局が、マクロセル基地局であり、前記移動局の走行速度の検出結果にかかわらず、前記切替先候補のマクロセル基地局へのハンドオーバを行うようにしてもよい。
また、前記基地局において、前記ハンドオーバの通信元基地局が、スモールセル基地局であり、前記切替先候補基地局が、前記通信元基地局のスモールセルに隣接する周辺のスモールセル基地局であり、前記移動局の走行速度の検出結果が前記閾値以上の場合は、前記周辺のスモールセル基地局へのハンドオーバを行わずに、前記通信元基地局であるスモールセル基地局のスモールセルがオーバレイしているマクロセルのマクロセル基地局へのハンドオーバを行い、前記移動局の走行速度の検出結果が前記閾値よりも小さい場合は、前記周辺のスモールセル基地局へのハンドオーバを行うようにしてもよい。
また、前記基地局において、前記切替先候補基地局の情報を前記移動局から受信する手段を、更に備えてもよい。
【0009】
本発明の他の態様に係るハンドオーバ管理装置は、互いにサイズが異なる複数のセルが重複したオーバレイセル構成におけるハンドオーバを管理するハンドオーバ管理装置であって、前記オーバレイセル構成における複数のセルの基地局それぞれが、マクロセル基地局及びスモールセル基地局のいずれであるかを決定し、更に、該スモールセル基地局のスモールセルがオーバレイしているマクロセルのマクロ基地局を決定する手段と、前記決定の結果を前記複数の基地局それぞれに通知する手段と、を備える。
前記ハンドオーバ管理装置において、前記複数の基地局それぞれについて、該基地局へのハンドオーバを行うか否かの判断の際にハンドオーバ対象の移動局の走行速度の検出結果と比較される閾値を計算する手段と、前記計算した閾値を前記複数の基地局それぞれに通知する手段と、を更に備えてもよい。
【0010】
本発明の更に他の態様に係るハンドオーバ制御方法は、互いにサイズが異なる複数のセルが重複したオーバレイセル構成におけるハンドオーバを制御するハンドオーバ制御方法であって、前記オーバレイセル構成におけるハンドオーバの通信元基地局と通信している移動局の走行速度を検出することと、前記移動局の走行速度の検出結果に基づいて、切替先候補基地局へのハンドオーバを行うか否かを判断することと、を含む。
前記ハンドオーバ制御方法において、前記移動局の走行速度の検出結果と所定の閾値とを比較すること、を更に含み、前記比較の結果に基づいて、前記切替先候補基地局へのハンドオーバを行うか否かを判断してもよい。
また、前記ハンドオーバ制御方法において、前記ハンドオーバの通信元基地局が、マクロセル基地局であり、前記切替先候補基地局が、スモールセル基地局であり、前記移動局の走行速度の検出結果が前記閾値以上の場合は、前記切替先候補のスモールセル基地局へのハンドオーバを行わずに前記移動局の走行速度の検出結果が前記閾値よりも小さい場合は、前記切替先候補のスモールセル基地局へのハンドオーバを行うようにしてもよい。
また、前記ハンドオーバ制御方法において、前記ハンドオーバの通信元基地局が、スモールセル基地局であり、前記切替先候補基地局が、マクロセル基地局であり、前記移動局の走行速度の検出結果にかかわらず、前記切替先候補のマクロセル基地局へのハンドオーバを行うようにしてもよい。
また、前記ハンドオーバ制御方法において、前記ハンドオーバの通信元基地局が、スモールセル基地局であり、前記切替先候補基地局が、前記通信元基地局のスモールセルに隣接する周辺のスモールセル基地局であり、前記移動局の走行速度の検出結果が前記閾値以上の場合は、前記周辺のスモールセル基地局へのハンドオーバを行わずに、前記通信元基地局であるスモールセル基地局のスモールセルがオーバレイしているマクロセルのマクロセル基地局へのハンドオーバを行い、前記移動局の走行速度の検出結果が前記閾値よりも小さい場合は、前記周辺のスモールセル基地局へのハンドオーバを行うようにしてもよい。
また、前記ハンドオーバ制御方法において、前記切替先候補基地局の情報を前記移動局から受信することを更に含んでもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、互いにサイズが異なる複数のセルが重複したオーバレイセル構成において移動局が高速走行しているときでも移動局と網側との通信を継続することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る基地局を備えたオーバレイセル構成の移動通信システムの概略構成の一例を示す説明図である。なお、
図1では、マクロセルに2つのスモールセルが重畳している場合について示しているが、本発明は、マクロセルに1つのスモールセルが重畳している場合や、マクロセルに3つ以上のスモールセルが重畳している場合にも、同様に適用することができる。
【0014】
図1において、本実施形態の移動通信システムは、セルラー方式の移動通信システムであり、第1の基地局としてのマクロセル基地局(eNB)111,112と、第2の基地局としてのスモールセル基地局(sNB)121〜124と、移動通信ネットワークのコアネットワーク140を介して各基地局111,112,121〜124と通信可能なハンドオーバ管理装置(nHc)150とを備えている。スモールセル基地局121,122のスモールセル121A,122Aは、マクロセル基地局111のマクロセル111Aに重畳し、スモールセル基地局123,124のスモールセル123A,124Aは、マクロセル基地局112のマクロセル112Aに重畳している。また、ハンドオーバ管理装置150は、各基地局111,112,121〜124のセル間のハンドオーバを管理する装置である。
【0015】
ここで、スモールセル基地局は、広域のマクロセル基地局とは異なり、例えば1W以下の送信パワーを有し、無線通信可能距離が数m乃至数百m程度(例えば数10m程度)であり、一般家庭、店舗、オフィス等の屋内にも設置することができる小容量の基地局である。スモールセル基地局は、移動体通信網における広域のマクロセル基地局がカバーするエリアよりも小さなエリアをカバーするように設けられるため「フェムト基地局」と呼ばれたり、「Home e−Node B」や「Home eNB」と呼ばれたりする場合もある。スモールセル基地局は、回線終端装置及びADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線や光回線等のブロードバンド公衆通信回線などの通信回線を介して移動体通信網のコアネットワーク140に接続され、他の基地局や、コアネットワーク1040上のサーバ装置、前述のハンドオーバ管理装置150などの各種ノードとの間で所定の通信インターフェースにより通信可能になっている。
【0016】
これに対して、マクロセル基地局は、例えば10W程度の送信パワーを有し、移動体通信網において屋外に設置されている通常の半径数百m乃至数km程度の広域エリアであるマクロセルをカバーする広域の基地局であり、「Macro e−Node B」、「MeNB」等と呼ばれる場合もある。マクロセル基地局は、他の基地局と例えば有線の通信回線で接続され、所定の通信インターフェースで通信可能になっている。また、マクロセル基地局は、回線終端装置及び専用回線などの通信回線を介して移動体通信網のコアネットワーク140に接続され、コアネットワーク140上のサーバ装置、前述のハンドオーバ管理装置150などの各種ノードとの間で所定の通信インターフェースにより通信可能になっている。
【0017】
また、スモールセル基地局121〜124及びマクロセル基地局111,112それぞれの基地局装置は、例えばCPUやメモリ等を有するコンピュータ装置、コアネットワーク140に対する外部通信インターフェース部、無線通信部などのハードウェアを用いて構成され、所定のプログラムが実行されることにより、後述のハンドオーバ制御を実行したり、所定の通信方式及び無線通信リソースを用いてユーザ端末である移動局との間の無線通信を行ったりすることができる。
【0018】
また、スモールセル基地局121〜124及びマクロセル基地局111,112それぞれの基地局装置は、コンピュータ装置に所定のプログラムが読み込まれて実行されることにより次の(1)〜(3)に示す各手段として機能するハンドオーバ制御手段としてのハンドオーバ制御装置(bHc)130を備えている。
(1)当該基地局と通信しているハンドオーバ対象の移動局100の走行速度vを検出する検出手段。
(2)上記移動局100の走行速度vの検出結果に基づいて、切替先候補基地局へのハンドオーバを行うか否かを判断する判断手段。
(3)ハンドオーバの最適な切替先候補基地局の情報を移動局100から受信する手段。
【0019】
上記移動局100の走行速度vは、例えば(i)受信信号のドップラー周波数を利用する方法、(ii)複数のアンテナの受信レベルの大小関係を利用する方法、及び、(iii)GPS(Global Positioning System)位置情報を利用する方法で検出することができる。
【0020】
上記(i)の方法は、
図2に示すように、移動局100の走行速度vに比例して変動する移動局からの受信信号の変動(伝搬変動)をフーリエ変換し、最大ドップラー周波数(f
D)を測定し、その測定値を、換算式(v=f
D×波長)を用いて走行速度vに換算する方法である。
【0021】
また、上記(ii)の方法は、移動局100からの信号を複数のアンテナ(例えば、アンテナ1、アンテナ2)で受信している場合に、アンテナ1とアンテナ2の受信レベルの大小を比較し、大小の反転回数から、移動局100の走行速度vを計算する方法である。
【0022】
また、上記(iii)の方法は、移動局100がGPS信号の受信機能を備えている場合に、通信中の移動局100から定期的に送信される現在位置情報(例えば、緯度、経度及び高度のGPS位置情報)を受信し、現在位置情報に基づいて、移動局100の走行速度vを計算する方法である。
【0023】
移動局100は、マクロセル111A,112Aやスモールセル121A〜124Aに在圏するときに、その在圏するセルに対応するマクロセル基地局やスモールセル基地局と間で所定の通信方式及び無線通信リソースを用いて無線通信することができる。移動局100は、例えばCPUやメモリ等を有するコンピュータ装置、無線通信部などのハードウェアを用いて構成され、所定のプログラムが実行されることにより基地局等との間の無線通信等を行うことができる。
【0024】
また、移動局100は、前述のようにGPS信号の受信機能を備え、GPS信号に基づいて算出した現在位置情報(例えば、緯度、経度及び高度のGPS位置情報)を、定期的に、自身が在圏するセルの基地局に送信するように構成してもよい。
【0025】
ハンドオーバ管理装置150は、例えばCPUやメモリ等を有するコンピュータ装置、コアネットワーク140に対する外部通信インターフェース部などのハードウェアを用いて構成され、所定のプログラムが実行されることにより、次のような各種手段として機能することができる。
【0026】
例えば、ハンドオーバ管理装置150は、オーバレイセル構成における複数のセルの基地局それぞれがマクロセル基地局111,112及びスモールセル基地局121〜124のいずれであるかを決定し、さらにスモールセル基地局121〜124のスモールセルそれぞれがオーバレイしているマクロセルのマクロセル基地局を決定する手段や、その決定の結果(各基地局の種別情報等)を前記複数の基地局それぞれに通知する手段としても機能する。各スモールセル基地局121〜124のハンドオーバ制御装置130は、ハンドオーバ管理装置150から通知された各基地局の種別情報に基づいて、切替先候補基地局にハンドオーバするか否かの判断を行う。
【0027】
また、ハンドオーバ管理装置150は、マクロセル111A,112A及びスモールセル121A〜124Aそれぞれについて、セルへのハンドオーバを行うか否かの判断の際にハンドオーバ対象の移動局100の走行速度vの検出結果と比較される走行速度閾値v
thを計算する手段や、その計算した走行速度閾値v
thをマクロセル基地局111,112及びスモールセル基地局121〜124それぞれに通知する手段としても機能する。
【0028】
一般に、走行速度閾値v
thは切替先候補のスモールセルの大きさに依存するため、その値は各スモールセル毎に異なる。そこで、ハンドオーバ管理装置150は、各スモールセル基地局121〜124に設定する走行速度閾値v
thを各スモールセルのサイズに応じて適宜計算し、その走行速度閾値v
thの値を各スモールセル基地局121〜124のハンドオーバ制御装置130に通知する。各スモールセル基地局121〜124のハンドオーバ制御装置130は、ハンドオーバ管理装置150から通知された走行速度閾値v
thと、ハンドオーバ対象の移動局100の走行速度vの検出結果とに基づいて、切替先候補基地局にハンドオーバするか否かの判断を行う。
【0029】
なお、走行速度閾値v
thは、オーバレイセル構成の変更に応じて適宜変更するように計算してもよい。例えば、第1のスモールセルの近くに他の第2のスモールセルが追加された場合は、第1のスモールセルの実質的なエリアサイズを小さくするように、第1のスモールセルに対する走行速度閾値v
thを小さくするように変更してもよい。
【0030】
図3(a)、(b)及び(c)はそれぞれ、本実施形態の移動通信システムにおける互いに異なる制御アルゴリズムが適用されるハンドオーバの説明図である。
【0031】
図3(a)は、マクロセル111Aと通信中の移動局100が、そのマクロセル111Aに重畳しているスモールセル122Aに移動するときのハンドオーバの場合を示している。この場合、移動局100の走行速度vと予め設定した所定の走行速度閾値v
thとを比較し、v>v
thの場合にはハンドオーバ制御が間に合わないと判断して、スモールセル122Aにハンドオーバをさせないでマクロセル111Aとの通信をそのまま継続させる。一方、v<=v
thの場合にはハンドオーバ制御が間に合うと判断して、切替先候補のスモールセル122Aに切替を要求し、ハンドオーバをさせる。
【0032】
図3(b)は、スモールセル122Aと通信中の移動局100が、そのスモールセル122Aが重畳しているマクロセル111Aに移動するときのハンドオーバの場合を示している。この場合、移動局100の走行速度vに関係なく、スモールセル122Aが重畳しているマクロセル111Aに切替を要求し、ハンドオーバをさせる。
【0033】
図3(c)は、マクロセル111Aに重畳しているスモールセル121Aと通信中の移動局100が、スモールセル121Aに隣接するスモールセル122Aに移動するときのハンドオーバの場合を示している。この場合、移動局100は、隣接するスモールセル122A及びスモールセル121Aが重畳しているマクロセル111Aの両方に通信可能である。v<=v
thの場合にはハンドオーバ制御が間に合うと判断して、隣接する切替先候補のスモールセル122Aに切替を要求し、ハンドオーバをさせる。一方、v>v
thの場合には、隣接する切替先候補のスモールセル122Aにはハンドオーバをさせないで、スモールセル121Aが重畳しているマクロセル111Aに切替を要求し、ハンドオーバをさせる。
【0034】
図4は、本実施形態の移動通信システムにおいてハンドオーバの通信元基地局がマクロセル基地局111の場合のハンドオーバ制御アルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
図4において、まず、ハンドオーバの通信元基地局であるマクロセル基地局111は、マクロセル111Aに在圏する移動局100から、切替先候補基地局の情報(例えばセル番号や基地局番号)とともにハンドオーバの要求を受信する(S101)。ハンドオーバの最適な切替先候補基地局は、例えば、移動局100が周辺基地局の送信信号を受信し、その受信結果に基づいて決定する。
【0035】
次に、マクロセル基地局111は、通信中の移動局100の走行速度vを検出する(S102)。この移動局100の走行速度vは例えば前述の方法で検出することができる。
【0036】
次に、マクロセル基地局111は、予め取得しておいた周辺の基地局情報(マクロセル基地局、スモールセル基地局、及び、そのスモールセル基地局のスモールセルがオーバレイしているマクロセルのマクロセル基地局、等)に基づいて、切替先候補基地局がスモールセル基地局か否かを判断する(S103)。周辺の基地局情報は、例えばハンドオーバ管理装置150から適宜取得しておくことができる。
【0037】
上記ステップS103において、切替先候補基地局がスモールセル基地局121であると判断した場合(S103でYes)、マクロセル基地局111は、移動局100の走行速度vの検出値が、切替先候補基地局であるスモールセル基地局に設定された所定の走行速度閾値v
thよりも小さいか否か、すなわち、v<v
thを満たすか否かを更に判断する(S104)。
【0038】
上記ステップS104において、移動局100の走行速度vの検出値が所定の走行速度閾値v
thよりも小さい場合、すなわち、v<v
thを満たすと判断した場合(S104でYes)、マクロセル基地局111は、切替先候補基地局であるスモールセル基地局121に、ハンドオーバの切替要求を送信する(S105)。
【0039】
上記ステップS103において、切替先候補基地局がスモールセル基地局でないと判断した場合(S103でNo)、マクロセル基地局111は、他のマクロセル基地局112にハンドオーバの切替要求を送信する(S106)。
【0040】
また、上記ステップS104において、移動局100の走行速度vの検出値が所定の走行速度閾値v
th以上の場合、すなわち、v<v
thを満たさないと判断した場合(S104でNo)、マクロセル基地局111は、ハンドオーバさせないで移動局100との通信をそのまま継続する(S107)。
【0041】
図4のハンドオーバ制御によれば、マクロセルとスモールセルとが重複したオーバレイセル構成において、通信元基地局であるマクロセル基地局111からスモールセル基地局121及び他のマクロセル基地局112それぞれへのハンドオーバについて、ハンドオーバ対象の移動局100の走行速度vに応じた最適なハンドオーバ制御を行うことができる。
【0042】
なお、
図4のハンドオーバ制御では、通信中の移動局100の走行速度vを検出した(S102)後、切替先候補基地局がスモールセル基地局か否かを判断している(S103)が、走行速度vの検出前に、切替先候補基地局がスモールセル基地局か否かの判断を行ってもよい。この場合、切替先候補基地局がスモールセル基地局でないと判断したとき、走行速度vの検出結果にかかわらず他のマクロセル基地局112にハンドオーバの切替要求を送信するため、走行速度vの検出を行わないように制御してもよい。
【0043】
図5は、本実施形態の移動通信システムにおいてハンドオーバの通信元基地局がスモールセル基地局121の場合のハンドオーバ制御アルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
図5において、まず、ハンドオーバの通信元基地局であるスモールセル基地局121は、スモールセル121Aに在圏する移動局100から、切替先候補基地局の情報(例えばセル番号や基地局番号)とともにハンドオーバの要求を受信する(S201)。ハンドオーバの最適な切替先候補基地局は、例えば、移動局100が周辺基地局の送信信号を受信し、その受信結果に基づいて決定する。
【0044】
次に、スモールセル基地局121は、通信中の移動局100の走行速度vを検出する(S202)。この移動局100の走行速度vは例えば前述の方法で検出することができる。
【0045】
次に、スモールセル基地局121は、予め取得しておいた周辺の基地局情報に基づいて、切替先候補基地局がスモールセル基地局か否かを判断する(S203)。周辺の基地局情報は、例えばハンドオーバ管理装置150から適宜取得しておくことができる。
【0046】
上記ステップS203において、切替先候補基地局がスモールセル基地局であると判断した場合(S203でYes)、スモールセル基地局121は、移動局100の走行速度vの検出値が、切替先候補基地局であるスモールセル基地局122に設定された所定の走行速度閾値v
thよりも小さいか否か、すなわち、v<v
thを満たすか否かを更に判断する(S204)。
【0047】
上記ステップS204において、移動局100の走行速度vの検出値が所定の走行速度閾値v
thよりも小さい場合、すなわち、v<v
thを満たすと判断した場合(S204でYes)、スモールセル基地局121は、切替先候補基地局であるスモールセル基地局122に、ハンドオーバの切替要求を送信する(S205)。
【0048】
上記ステップS203において、切替先候補基地局がスモールセル基地局でないと判断した場合(S203でNo)、スモールセル基地局121は、スモールセル121Aが重畳(オーバレイ)しているマクロセル111Aのマクロセル基地局111に、ハンドオーバの切替要求を送信する(S206)。
【0049】
また、上記ステップS204において、移動局100の走行速度vの検出値が所定の走行速度閾値v
th以上の場合、すなわち、v<v
thを満たさないと判断した場合(S204でNo)、スモールセル基地局121は、上記S206の場合と同様に、スモールセル121Aが重畳(オーバレイ)しているマクロセル111Aのマクロセル基地局111に、ハンドオーバの切替要求を送信する(S207)。
【0050】
図5のハンドオーバ制御によれば、マクロセル111とスモールセル121、122とが重複したオーバレイセル構成において、ハンドオーバの通信元基地局であるスモールセル基地局121からマクロセル基地局111及び周辺のスモールセル基地局122それぞれへのハンドオーバについて、ハンドオーバ対象の移動局100の走行速度vに応じた最適なハンドオーバ制御を行うことができる。
【0051】
なお、
図5のハンドオーバ制御では、通信中の移動局100の走行速度vを検出した(S202)後、切替先候補基地局がスモールセル基地局か否かを判断している(S203)が、走行速度vの検出前に、切替先候補基地局がスモールセル基地局か否かの判断を行ってもよい。この場合、切替先候補基地局がスモールセル基地局でないと判断したとき、走行速度vの検出結果にかかわらずスモールセル121Aが重畳(オーバレイ)しているマクロセル111Aのマクロセル基地局111に、ハンドオーバの切替要求を送信するため、走行速度vの検出を行わないように制御してもよい。
【0052】
図6は、本実施形態の移動通信システムにおいて第1のスモールセル121とマクロセル111と第2のスモールセル122とをまたがるように移動局100が高速走行しているときのハンドオーバの一例の様子を示す説明図である。
図6において、スモールセル基地局121がスモールセル121Aに在圏している通信中の移動局100から切替先候補基地(マクロセル基地局111)の情報とともにハンドオーバの要求を受信すると、その通信中の移動局100の走行速度vにかかわらず、通信対象の基地局を、スモールセル121Aが重畳(オーバレイ)しているマクロセル111Aのマクロセル基地局111に切り替える第1のハンドオーバが実施される。
【0053】
次に、上記第1のハンドオーバの後、マクロセル基地局111がマクロセル111Aに在圏している通信中の移動局100から切替先候補基地(第2のスモールセル基地局122)の情報とともにハンドオーバの要求を受信すると、その通信中の移動局100の走行速度vに応じてハンドオーバが実施される。
例えば、移動局100の走行速度vがスモールセル基地局122に対して設定されている走行速度閾値vthよりも小さい場合は、通信対象の基地局を第2のスモールセル基地局122に切り替える第2のハンドオーバが実施される。
一方、移動局100の走行速度vがスモールセル基地局122に対して設定されている走行速度閾値vth以上の場合は、ハンドオーバを実施せずに、移動局100とマクロセル基地局111との通信がそのまま継続される。
【0054】
以上、本実施形態によれば、互いにサイズが異なるマクロセルとスモールセルとが重複したオーバレイセル構成において、マクロセル基地局とスモールセル基地局との間のハンドオーバ及びスモールセル基地局と隣接する周辺のスモールセル基地局との間のハンドオーバそれぞれについて、ハンドオーバ対象の移動局100の走行速度vに応じた最適なハンドオーバ制御を行うことができる。従って、互いにサイズが異なるマクロセルとスモールセルとが重複したオーバレイセル構成において、パケット誤りやパケット損失等で通信品質を劣化させることなくスムーズなハンドオーバ制御を実現できる。
【0055】
なお、本明細書で説明された処理工程並びに移動通信システム、基地局及びユーザ端末装置(移動局)の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0056】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、Node B、端末、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0057】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、FLASHメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0058】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。