(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内燃機関の回転に応じて負圧が生ずる負圧室と、前記負圧室の負圧を用いて運転者のブレーキ操作を補助するブレーキ操作補助手段と、第1の条件が成立する場合に前記内燃機関を自動停止させると共に、該自動停止後、第2の条件が成立する場合に前記内燃機関を自動始動させる自動停止始動手段と、を備える車両の制御装置であって、
車両運転者によるブレーキ操作が行われていないか否かを判別するブレーキ操作有無判別手段と、
前記内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段と、
前記負圧室に生ずる負圧に応じた信号を出力する負圧センサの出力信号に基づいて前記負圧室の負圧を検出する負圧検出手段と、
前記ブレーキ操作有無判別手段により前記ブレーキ操作が行われていないと判別されかつ前記回転数検出手段により検出される前記内燃機関の回転数が閾値以上である状態が所定時間以上継続した後、前記負圧検出手段により検出される前記負圧室の負圧に基づいて、前記負圧センサが異常状態にあるか否かの仮判定を行う仮判定手段と、
前記仮判定手段による前記負圧センサが異常状態にあるとの仮判定が所定回数なされた場合に、前記負圧センサが異常状態にあることを確定する異常確定手段と、
前記異常確定手段により前記負圧センサが異常状態にあることが確定された場合に、前記自動停止始動手段による前記内燃機関の自動停止を禁止する自動停止禁止手段と、
前記仮判定手段による前記負圧センサが異常状態にあるとの仮判定が行われた後、前記状態が継続するか否かに応じて、次に前記仮判定手段により前記負圧センサが異常状態にあるか否かの仮判定を行ううえで用いる前記状態が継続すべき前記所定時間を変更する時間変更手段と、
を備えることを特徴とする車両の制御装置。
前記時間変更手段は、前記仮判定手段による前記負圧センサが異常状態にあるとの仮判定が行われた後、次に前記仮判定手段により前記負圧センサが異常状態にあるか否かの仮判定を行ううえで用いる前記状態が継続すべき前記所定時間を、前記状態が継続している場合は、前記状態が継続しなかった場合に比して短くすることを特徴とする請求項1記載の車両の制御装置。
前記時間変更手段は、更に、前記仮判定手段による前記負圧センサが異常状態にあるとの仮判定が行われた後、前記状態が継続している場合は、次に前記仮判定手段により前記負圧センサが異常状態にあるか否かの仮判定を行ううえで用いる前記状態が継続すべき前記所定時間を、前回用いた前記所定時間に比して短くすることを特徴とする請求項1又は2記載の車両の制御装置。
前記時間変更手段は、更に、前記仮判定手段による前記負圧センサが異常状態にあるとの仮判定が行われた後、前記状態が継続しなかった場合に、次に前記仮判定手段により前記負圧センサが異常状態にあるか否かの仮判定を行ううえで必要な前記状態が継続すべき前記所定時間を、前回用いた前記所定時間に比して長くすることを特徴とする請求項3記載の車両の制御装置。
前記仮判定手段は、前記状態が前記所定時間以上継続した後、前記負圧検出手段により検出される前記負圧室の負圧が所定閾値に比して大気圧側であることが閾値時間以上継続する場合に、前記負圧センサが異常状態にあるとの仮判定を行うことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項記載の車両の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて、本発明に係る車両の制御装置の具体的な実施の形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施例である車両20及びその制御装置22の構成図を示す。また、
図2は、本実施例における車両20が搭載するブレーキシステム24のハード構成図を示す。
【0013】
図1及び
図2に示す如く、車両20は、ブレーキシステム24と、内燃機関26と、を有している。内燃機関26は、燃料を爆発燃焼させることで車両動力を得る熱機関である。内燃機関26は、ガソリンエンジンであってもよいし、ディーゼルエンジンであってもよい。内燃機関26は、車載バッテリからの電力供給により駆動されるスタータ28により始動されることが可能である。
【0014】
ブレーキシステム24は、ブレーキペダル30と、ブレーキブースタ32と、を有している。ブレーキペダル30は、車両20の運転者によりブレーキ操作されるものであって、運転者が車両20のブレーキ力を増加させる際に踏み込み力や踏み込み量を増加させてブレーキ踏み込み操作を行い、また、ブレーキ踏み込み状態から車両20のブレーキ力を減少させる際に踏み込み力や踏み込み量を減少させてブレーキ戻し操作を行うペダルである。ブレーキペダル30には、ブレーキブースタ32が連結されている。
【0015】
ブレーキブースタ32は、その内部にダイヤフラムにより隔成された負圧室34及び変圧室36を有している。負圧室34には、負圧管38を介して直動負圧ポンプ40が接続されている。負圧管38の途中には、負圧室34側から直動負圧ポンプ40側へ向かう空気の流れのみを許容する一方向弁である逆止弁42が設けられている。逆止弁42は、負圧管38の負圧室34側の圧力が直動負圧ポンプ40側の圧力に比して高い場合に開弁する。
【0016】
直動負圧ポンプ40は、内燃機関26の回転に応じて作動することで負圧管38に大気圧に比して圧力の低い負圧を導くポンプである。尚、以下では、負圧は大気圧を基準とした値とし、「負圧が大きい」とは圧力がゼロ[kPa](真空圧)に近い側にあることを意味し、「負圧が小さい」とは圧力が大気圧に近い側にあることを意味し、「負圧上昇」とは圧力がゼロに近い側へ変化することを意味し、「負圧低下」とは圧力が大気圧側へ変化することを意味するものとする。
【0017】
直動負圧ポンプ40は、内燃機関26のカムに接続されており、内燃機関26の回転数の半分の回転数で回転することで負圧管38に負圧を導く。負圧管38に導かれた負圧は、負圧室34に供給される。負圧室34には、内燃機関26の回転に応じた負圧が生成される。直動負圧ポンプ40は、内燃機関26の回転数が所定以上である状態が所定時間以上継続した場合に、負圧室34に所定レベル以上(具体的には、ゼロ[kPa]近傍)の負圧を生成することが可能な特性を有している。
【0018】
ブレーキペダル30が踏み込み操作されていない場合は、ブレーキブースタ32の変圧室36に、負圧室34の負圧が導入される。この場合は、変圧室36と負圧室34との間に差圧はあまり生じない。一方、ブレーキペダル30が踏み込み操作されている場合は、変圧室36にブレーキペダル30へのブレーキ踏力に応じて大気が導入される。この場合は、変圧室36と負圧室34との間にブレーキ踏力に応じた差圧が発生する。この差圧は、ブレーキペダル30へのブレーキ踏力に対して所定の倍力比を有する助勢力として作用する。従って、ブレーキブースタ32は、内燃機関26の回転中においてブレーキペダル30が踏み込み操作された際に、負圧室34の負圧を用いて運転者のブレーキブースタ32へのブレーキ踏力を補助する助勢力を発生する。
【0019】
ブレーキブースタ32には、ブレーキオイルが充填される液圧室を有するマスタシリンダ44が連結されている。マスタシリンダ44の液圧室には、ブレーキ踏力とブレーキブースタ32の助勢力との合力に応じたマスタシリンダ圧が発生する。マスタシリンダ44には、各車輪46に設けられるホイルシリンダ48が接続されている。各ホイルシリンダ48はそれぞれ、マスタシリンダ44のマスタシリンダ圧に応じたブレーキ力を車輪46に対して付与する。
【0020】
車両20に搭載される制御装置22は、マイクロコンピュータを主体に構成される電子制御ユニット(ECU)50を備えている。ECU50には、燃料噴射のためのインジェクタや燃料ポンプなどの内燃機関26の有するアクチュエータやスタータ28などが電気的に接続されている。ECU50は、内燃機関26の各アクチュエータの駆動やスタータ28の駆動などを制御する。
【0021】
また、ECU50は、所定の停止条件が成立する場合に内燃機関26を自動停止させると共に、その内燃機関26の自動停止後、所定の再始動条件が成立する場合に内燃機関26を自動始動(再始動)させる制御を実行することが可能である。以下、この制御をストップ&スタート(S&S)制御と称す。すなわち、車両20は、S&S制御を実行するアイドリングストップ車両である。S&S制御によれば、車両20の燃費を向上させることができる。
【0022】
S&S制御における所定の停止条件としては、内燃機関26が始動されて車両20の走行が開始された後、運転者がブレーキペダル30を踏み込むブレーキ踏み込み操作が行われることを含めて車両が減速すること(例えば、車速が所定車速以下まで低下することや車両の減速度が所定減速度以上になることを含んでもよい。)である。また、所定の再始動条件としては、S&S制御の実行開始後、上記のブレーキペダルの戻し操作が行われることやアクセル操作が行われること,車載電気負荷が所定以上に大きくなることなどである。
【0023】
また、制御装置22は、ECU50に接続される負圧センサ52を備えている。負圧センサ52は、ブレーキブースタ32の負圧室34に配設されている。負圧センサ52は、負圧室34に生じている負圧(圧力)に応じた信号を出力する。負圧センサ52は、S&S制御による内燃機関26の自動停止中にブレーキブースタ32の負圧室34の負圧をモニタするためのセンサである。
【0024】
負圧センサ52の出力信号は、ECU50に供給される。ECU50は、負圧センサ52の出力信号に基づいて負圧室34の負圧Pvacを検出する。そして、ECU50は、その検出した負圧室34の負圧Pvacを内燃機関26の各アクチュエータの駆動などの制御に用いると共に、S&S制御による内燃機関26の自動停止中においてその検出した負圧Pvacが所定以上に確保されていない場合に、その自動停止の解除によって内燃機関26を自動始動させて負圧室34の負圧を確保させる処理を行う。
【0025】
ECU50には、回転数センサ54が接続されている。回転数センサ54は、内燃機関26の回転数に応じた信号を出力する。回転数センサ54の出力信号は、ECU50に供給される。ECU50は、回転数センサ54の出力信号に基づいて内燃機関26の回転数NEを検出する。そして、ECU50は、その検出した内燃機関26の回転数NEを、内燃機関26の各アクチュエータの駆動などの制御に用いる。
【0026】
ECU50には、マスタ圧センサ56が接続されている。マスタ圧センサ56は、マスタシリンダ44の液圧室に配設されている。マスタ圧センサ56は、マスタシリンダ44の液圧室に生じている圧力に応じた信号を出力する。マスタ圧センサ56の出力信号は、ECU50に供給される。ECU50は、マスタ圧センサ56の出力信号に基づいてマスタシリンダ44の液圧室の圧力(以下、マスタ圧と称す。)Pmを検出する。
【0027】
ECU50には、ストップランプスイッチ58が接続されている。ストップランプスイッチ58は、運転者によるブレーキペダル30へのブレーキ操作の有無に応じてオンオフされるスイッチであって、ブレーキペダル30が解除状態から踏み込み操作されている場合にオンし、ブレーキペダル30の踏み込み操作が解除されている場合にオフする。ECU50は、ストップランプスイッチ58の状態を検出する。
【0028】
ECU50には、運転者の視認可能なメータ内に設けられる表示ランプ(MIL)60が接続されている。ECU50は、上記の如く検出した負圧室34の負圧Pvacに基づいて、後に詳述する如く、負圧センサ52が異常状態(特に、ゲインずれやオフセットずれなどの偏差異常状態)にあるか否かを判別する。ECU50は、負圧センサ52が異常状態にあると判別した場合は、S&S制御による内燃機関26の自動停止を禁止すると共に、その負圧センサ52の異常を示すダイアグ記憶を行い、かつ、その負圧センサ52の異常又は内燃機関26の自動停止禁止を知らせるべくMIL60を点灯表示させる。
【0029】
図3は、本実施例の車両20の制御装置22において実現される一例の動作タイムチャートを示す。また、
図4は、本実施例の車両20の制御装置22において負圧センサ52の異常有無を判定すべく実行される制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。
【0030】
本実施例のブレーキシステム24において、ブレーキペダル30が踏み込み操作されている状態からその踏み込み操作が解除されてそのブレーキ戻し操作が行われると、ブレーキブースタ32の負圧室34に大気が導入されることで、負圧室34の負圧が急激に小さくなって大気圧側へ低下する。また、S&S制御による内燃機関26の自動停止中にブレーキペダル30のブレーキ戻し操作が行われると、上記した所定の再始動条件の成立により内燃機関26が自動始動されることで、内燃機関26の回転上昇が負圧室34の負圧低下に遅れて発生する。内燃機関26が回転すると、ブレーキペダル30のブレーキ操作が無い限り、負圧室34の負圧が大気圧側から直動負圧ポンプ40の作動によりゼロ[kPa]へ向けて徐々に上昇する。
【0031】
本実施例の制御装置22において、ECU50は、負圧センサ52の異常有無を判定するうえで、その判定を行うタイミングとして、ブレーキブースタ32の負圧室34の負圧がブレーキペダル30のブレーキ操作により消費されるタイミングを排除することとしている。具体的には、まず、ECU50は、予め定められた時間ごとに、ブレーキブースタ32の負圧室34の負圧がゼロ[kPa](真空圧)に近い値まで回復した状態(負圧回復状態)にあるか否かを判別する(ステップ100)。
【0032】
上記ステップ100における判別は、具体的には例えば、ストップランプスイッチ58の状態を読み取って運転者によるブレーキペダル30のブレーキ操作が行われていないか否かの判別と、回転数センサ54の出力信号に基づいて内燃機関26の回転数NEを読み取って内燃機関26の回転数NEが所定閾値NE0以上であるか否かの判別と、に基づいて行われ、ブレーキペダル30のブレーキ操作が行われておらずかつ内燃機関26の回転数NEが所定閾値NE0以上である場合に肯定されるものとすればよい。
【0033】
ECU50は、上記ステップ100において負圧が回復状態にないと判別した場合は、同じステップ100の処理を繰り返し行う。一方、負圧が回復状態にあると判別した場合は、次に、負圧が回復状態にあることを示すカウンタをカウントアップする(ステップ102)。そして、そのカウントアップしたカウンタのカウント値に基づいて、負圧が回復状態にあることが所定時間αm(尚、値mは、後述の如く負圧センサ52が異常状態にあると仮判定される回数であって、"0"以上の整数である。)以上継続するか否かを判別する(ステップ104)。
【0034】
尚、上記の所定閾値NE0及び所定時間αmはそれぞれ、直動負圧ポンプ40の作動によってブレーキブースタ32の負圧室34に所定レベル以上(具体的には、ゼロ[kPa]近傍)の負圧が生成されると判断される値に設定されていればよい。
【0035】
また、所定時間αmの初期値α0は、予め直動負圧ポンプ40の負圧回復能力に応じて定められた時間である。また、所定時間αm(m≧1)は、ECU50において、負圧が前回回復していると判定されてからその負圧が消費されずにその負圧回復状態が継続しているか否か、すなわち、ブレーキペダル30のブレーキ操作が行われておらずかつ内燃機関26の回転数NEが所定閾値NE0以上である負圧回復状態が前回から継続しているか否かに応じて変更される値である。具体的には、所定時間αm(m≧1)は、上記の負圧回復状態がその負圧回復状態の前回判定から継続している場合は、負圧が消費されてその負圧回復状態が前回判定から継続しなかった場合に比して短くされる。
【0036】
また、所定時間αm(m≧1)は、ブレーキペダル30のブレーキ操作が行われておらずかつ内燃機関26の回転数NEが所定閾値NE0以上である負圧回復状態がその負圧回復状態の前回判定から継続している場合、前回用いた所定時間α(m−1)に比して短くされてもよいし、また、前回用いた所定時間α(m−1)と同じ値であってもよい。また、所定時間αm(m≧1)は、上記の状態が前回から継続しなかった場合、前回用いた所定時間α(m−1)と同じ値であってもよいし、また、前回用いた所定時間α(m−1)に比して長くされてもよい。
【0037】
ECU50は、上記ステップ104において負圧が回復状態にあることが所定時間αm以上継続しないと判別した場合は、上記したステップ100の処理を繰り返し行う。一方、負圧が回復状態にあることが所定時間αm以上継続したと判別した場合は、次に、負圧センサ52の出力信号に基づいてブレーキブースタ32の負圧室34に生じている負圧Pvacを読み取り、その負圧Pvacが異常範囲にあるか否かの判別を行うことで負圧センサ52が異常状態にあるか否かの仮判定を行う(ステップ106)。
【0038】
上記した負圧Pvacの異常範囲は、例えば、所定負圧Pvac0に比して大気圧側の負圧のことであって、上記ステップ106における仮判定は、例えば、負圧室34の負圧Pvacが所定負圧Pvac0に比して大気圧側の値である場合に肯定されるものとすればよい。また、この所定負圧Pvac0は、ブレーキペダル30のブレーキ操作が行われておらずかつ内燃機関26の回転数NEが所定閾値NE0以上である状態が所定時間αm以上継続した場合に、負圧センサ52が正常状態にあれば取り得る負圧の最小値に設定されていればよい。
【0039】
また、上記ステップ106における仮判定は、負圧Pvacが異常範囲にある状態が所定時間βm以上継続する場合に肯定される。この所定時間βmは、負圧センサ52が実際には正常状態にあるにもかかわらずノイズ等に起因して負圧Pvacが異常範囲となったことで負圧センサ52が異常状態にあると誤判定されるのを排除するためのものであって、予め定められた時間に設定されていればよい。
【0040】
尚、この所定時間βmは、ゼロであってもよい。また、この所定時間βmがゼロを超える時間である構成では、各回の負圧が回復状態にあることが継続する時間の計時を、負圧Pvacが異常範囲にある状態が継続する時間の計時中は停止することとしてもよいし(
図3参照)、また、負圧Pvacが異常範囲にある状態が継続する時間の計時中でも行うこととしてもよい(但し、この場合は、βm<α(m+1)が成立することが必要である。)。
【0041】
ECU50は、上記ステップ106において負圧Pvacが異常範囲にないことで負圧センサ52が異常状態にないと仮判定した場合は、上記したステップ100の処理を繰り返し行う。一方、負圧Pvacが異常範囲にあることで負圧センサ52が異常状態にあると仮判定した場合は、次に、その仮判定を含めて負圧センサ52が異常状態にあるとの仮判定が所定回数n行われたか否かを判別する(ステップ108)。
【0042】
尚、上記の所定回数nは、"2"以上の予め定められた回数であって、例えば"3"や"5"などに設定されている。また、負圧センサ52が異常状態にあるとの仮判定が行われた回数mは、上記ステップ108において負圧センサ52が異常状態にあるとの仮判定が始めて行われたと判別されてから所定回数n行われたと判別されるまでの間に、負圧回復状態が継続しなくなった、すなわち、ブレーキペダル30のブレーキ操作が行われた又は内燃機関26の回転数NEが所定閾値NE0未満となった場合にも、"0"にリセットされることなく維持される値である。
【0043】
ECU50は、上記ステップ108において負圧センサ52が異常状態にあるとの仮判定が行われた回数mが所定回数n未満であると判別した場合は、次に、負圧センサ52が異常状態にあると仮判定された回数mを"1"だけインクリメントする処理を行い(ステップ110)、その後、上記したステップ100の処理を繰り返し行う。一方、負圧センサ52が異常状態にあるとの仮判定が行われた回数mが所定回数n以上であると判別した場合は、次に、負圧センサ52が異常状態にあることを確定する(ステップ112)。
【0044】
ECU50は、上記ステップ112において負圧センサ52が異常状態にあると確定した場合は、次に、S&S制御による内燃機関26の自動停止を禁止すると共に(ステップ114)、その負圧センサ52の異常を示すダイアグ記憶を行い、かつ、運転者にその負圧センサ52の異常又は内燃機関26の自動停止禁止を知らせるべくMIL60を点灯表示させる(ステップ116)。尚、負圧センサ52の異常確定に伴う内燃機関26の自動停止の禁止は、内燃機関26の自動停止中に負圧センサ52が異常状態にあると確定された場合に内燃機関26を自動始動させることを含むものである。
【0045】
尚、ECU50は、負圧センサ52が異常状態にあることを確定し、又は、S&S制御による内燃機関26の自動停止を禁止した後、負圧Pvacが正常範囲内に収まった場合に、負圧センサ52が正常状態にあると判定して、S&S制御による内燃機関26の自動停止の禁止を解除すると共に、運転者への負圧センサ52の異常又は内燃機関26の自動停止禁止の通知を解除すべくMIL60を消灯させることとしてもよい。
【0046】
このように、本実施例のS&S制御が実行される車両20の制御装置22においては、ブレーキペダル30がブレーキ操作されておらずかつ内燃機関26の回転数NEが所定閾値NE0以上である状態が所定時間αm以上継続した後のタイミングで、負圧センサ52の出力信号に基づいて検出される負圧室34の負圧Pvacに基づいて、その負圧センサ52が異常状態にあるか否かの仮判定を行うことができる。そして、負圧センサ52が異常状態にあるとの仮判定が行われた後、その同じ仮判定が所定回数n行われた場合に、負圧センサ52が異常状態にあることを確定することができる。
【0047】
ブレーキペダル30がブレーキ操作されておらずかつ内燃機関26の回転数NEが所定閾値NE0以上である状態が所定時間αm以上継続した後のタイミングでは、負圧センサ52が正常状態にあれば、その負圧センサ52を用いて検出される負圧室34の負圧Pvacは、所定負圧Pvac0に比して圧力ゼロ[kPa]側の値となる。一方、負圧センサ52が偏差異常を起こしていると、上記のタイミングにおいてその負圧センサ52を用いて検出される負圧室34の負圧Pvacは、所定負圧Pvac0に比して大気圧側の値をとる。
【0048】
従って、本実施例の制御装置22によれば、上記のタイミングで負圧センサ52を用いて検出される負圧室34の負圧Pvacを所定負圧Pvac0と比較することで、その負圧センサ52の偏差異常を含む異常の有無をより正確に判定することができる。また、異常状態の仮判定が所定回数n行われた場合に負圧センサ52が異常状態にあることを確定するので、負圧センサ52の異常を精度良く判定することができる。
【0049】
また、本実施例においては、負圧センサ52を用いて検出される負圧室34の負圧Pvacを所定負圧Pvac0と比較するタイミング(すなわち、負圧センサ52の異常有無の仮判定を行うタイミング)として用いられる、ブレーキペダル30がブレーキ操作されておらずかつ内燃機関26の回転数NEが所定閾値NE0以上である負圧回復状態が継続すべき所定時間αm(m≧1)が、その負圧回復状態が前回判定から継続しているか否かに応じて変更される。具体的には、所定時間αm(m≧1)は、上記の負圧回復状態が前回判定から継続している場合は、継続しなかった場合に比して短くされる。
【0050】
ブレーキペダル30がブレーキ操作されておらずかつ内燃機関26の回転数NEが所定閾値NE0以上である負圧回復状態が継続しなかったときは、ブレーキブースタ32の負圧室34の負圧が消費されたと判断できる。一方、その負圧回復状態が継続しているときは、ブレーキブースタ32の負圧室34の負圧が消費されていないと判断できる。
【0051】
このため、負圧回復状態が前回判定から継続しているときは、上記の所定時間αmを、負圧回復状態が継続しなかったときに比べて短くすることとしても、負圧回復状態がその所定時間αmだけ継続したときに負圧室34の負圧を十分に確保することが可能であり、負圧センサ52の異常有無の仮判定を精度よく行うことができる。また、負圧回復状態が前回判定から継続しなかったときは、上記の所定時間αmを、負圧回復状態が継続しているときに比べて長くすれば、負圧回復状態がその所定時間αmだけ継続したときに負圧室34の負圧を十分に確保することが可能であり、負圧センサ52の異常有無の仮判定を精度よく行うことができる。
【0052】
また、上記の所定時間αmを短くすれば、負圧センサ52が異常状態にあるか否かの仮判定を前回仮判定から短時間で行うことが可能である。従って、本実施例の制御装置22によれば、上記の所定時間αmを、負圧回復状態が前回判定から継続しているときは継続しなかったときに比べて短くすることで、負圧センサ52の異常をできるだけ早期に確定することが可能である。
【0053】
また、本実施例において、上記の所定時間αmは、ブレーキペダル30のブレーキ操作が行われておらずかつ内燃機関26の回転数NEが所定閾値NE0以上である負圧回復状態がその負圧回復状態の前回判定から継続している場合、前回用いた所定時間α(m−1)に比して短くされてもよい。負圧回復状態が前回判定から継続していれば、ブレーキブースタ32の負圧室34の負圧が消費されておらず、十分に確保されていると判断できる。従って、所定時間αmを、負圧回復状態がその負圧回復状態の前回判定から継続している場合に短くすることで、負圧センサ52の異常をより早期に確定させることが可能となる。
【0054】
また、本実施例において、上記の所定時間αmは、上記の負圧回復状態がその負圧回復状態の前回判定から継続しなかった場合、前回用いた所定時間α(m−1)に比して長くされてもよい。負圧回復状態が前回判定から継続しなかったときは、ブレーキブースタ32の負圧室34の負圧が消費されて、十分には確保されていない可能性がある。従って、所定時間αmを、負圧回復状態がその負圧回復状態の前回判定から継続しなかった場合に長くすることで、その所定時間αmだけ負圧回復状態が継続したときに負圧室34の負圧を十分に確保することが可能となる。
【0055】
本実施例においては、上記の如く負圧センサ52が異常状態にあると確定されると、以後、S&S制御による内燃機関26の自動停止が禁止される。このため、本実施例によれば、負圧センサ52の偏差異常時にS&S制御により内燃機関26が自動停止されるのを防止し又はその自動停止が継続するのを防止することができるので、その負圧センサ52に偏差異常が生じているときに、負圧室34の負圧を常に十分に確保することが可能である。
【0056】
また、本実施例においては、上記の如く負圧センサ52が異常状態にあると判定されると、負圧センサ52の異常がダイアグ記憶される。このため、本実施例によれば、負圧センサ52の偏差異常発生後、車両ディーラーなどで車両20の異常箇所を容易に特定することが可能となる。
【0057】
更に、本実施例においては、上記の如く負圧センサ52が異常状態にあると判定されると、以後、負圧センサ52の異常又は内燃機関26の自動停止禁止を知らせるべくMIL60が点灯表示される。このため、本実施例によれば、負圧センサ52の偏差異常時に、その負圧センサ52の偏差異常又はその偏差異常に伴う内燃機関26の自動停止の禁止がMIL60により運転者へ速やかに知らされるので、偏差異常を起こした負圧センサ52の交換ないしは修理を促すことができる。
【0058】
尚、上記の実施例においては、ブレーキブースタ32が特許請求の範囲に記載した「ブレーキ操作補助手段」に、所定の停止条件が特許請求の範囲に記載した「第1の条件」に、所定の再始動条件が特許請求の範囲に記載した「第2の条件」に、ECU50がS&S制御を実行することが特許請求の範囲に記載した「自動停止始動手段」に、ECU50がストップランプスイッチ58の状態を検出して運転者によるブレーキペダル30のブレーキ操作が行われていないか否かを判別することが特許請求の範囲に記載した「ブレーキ操作有無判別手段」に、ECU50が回転数センサ54の出力信号に基づいて内燃機関26の回転数NEを検出することが特許請求の範囲に記載した「回転数検出手段」に、ECU50が負圧センサ52の出力信号に基づいてブレーキブースタ32の負圧室34に生じている負圧Pvacを検出することが特許請求の範囲に記載した「負圧検出手段」に、ECU50が
図4に示すルーチン中ステップ106の処理を実行することが特許請求の範囲に記載した「仮判定手段」に、ECU50がステップ112の処理を実行することが特許請求の範囲に記載した「異常確定手段」に、ECU50がステップ114の処理を実行することが特許請求の範囲に記載した「自動停止禁止手段」に、ECU50が所定時間αmを、ブレーキペダル30のブレーキ操作が行われておらずかつ内燃機関26の回転数NEが所定閾値NE0以上である状態が前回から継続するか否かに応じて変更することが特許請求の範囲に記載した「時間変更手段」に、それぞれ相当している。
【0059】
ところで、上記の実施例においては、内燃機関26の異常状態有無の仮判定を行うのに、内燃機関26の回転数NEの所定閾値NE0及び所定時間αmを用いることとしているが、直動負圧ポンプ40の負圧生成能力は、内燃機関26の回転数NEやブレーキペダル30の操作量,大気圧,イグニションオン後の時間などに応じて変わるので、所定閾値NE0は固定値である一方で、所定時間αmはそれらの内燃機関26の回転数NEやブレーキペダル30の操作量,大気圧,イグニションオン後の時間などに応じて変更されるものであってもよい。かかる変形例によれば、直動負圧ポンプ40の負圧生成能力が変化しても、負圧センサ52の異常状態有無の仮判定を行ううえで用いるパラメータとしての負圧Pvacの検出を、負圧室34に生成されている負圧が常にゼロ[kPa]近傍に達するタイミングで開始することができるので、負圧センサ52の異常状態有無の仮判定を精度よく行うことが可能となる。
【0060】
また、上記の実施例においては、運転者によるブレーキペダル30のブレーキ操作が行われていないか否かの判別を、ストップランプスイッチ58がオフ状態にあるか否かに基づいて行うこととしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、この判別を、マスタ圧Pmが所定値Pm0未満であるか否かに基づいて行うこととしてもよい。
【0061】
また、上記の判別を、マスタ圧Pmの、内燃機関26の回転が開始されたタイミングでの値と負圧センサ52を用いて負圧Pvacが検出されるタイミングでの値との差圧の絶対値が所定値未満であるか否かに基づいて行うこととしてもよい。この場合、この判別は、差圧絶対値が所定値未満である場合に肯定される。尚、かかる変形例において、差圧絶対値の所定値は、ブレーキペダル30のブレーキ操作が行われていないと判断される上記の差圧の最大値に設定されていればよい。
【0062】
また、上記の判別を、マスタ圧Pmの、内燃機関26の回転が開始されたタイミングでの値から負圧センサ52を用いて負圧が検出されるタイミングでの値を差し引いた差圧がゼロ以上かつ所定値未満であるか否かに基づいて行うこととしてもよい。この場合、この判別は、差圧がゼロ以上かつ所定値未満である場合に肯定される。尚、かかる変形例において、差圧の所定値は、ブレーキペダル30のブレーキ操作が行われていないと判断される上記の差圧の最大値に設定されていればよい。
【0063】
また、上記の判別を、マスタ圧Pmの、内燃機関26の回転が開始されたタイミングでの値から負圧センサ52を用いて負圧が検出されるタイミングでの値を差し引いた差圧が所定値以上であるか否か、又は、ストップランプスイッチ58がオン状態からオフ状態へ切り替わったか否かに基づいて行うこととしてもよい。この場合、この判別は、差圧が所定値以上である場合又はストップランプスイッチ58がオン状態からオフ状態へ切り替わった場合に肯定される。
【0064】
上記の実施例においては、ブレーキシステム24に内燃機関26の回転に応じて作動する直動負圧ポンプ40を設けたうえで、ECU50にステップ106において内燃機関26の回転条件が成立するか否かの判別を実施させることとしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、直動負圧ポンプ40が設けられていないブレーキシステム24に適用することが可能である。直動負圧ポンプ40が設けられていないブレーキシステム24においては、負圧室34に十分な負圧が生成されるタイミングは、内燃機関26の回転のみに依存せず、内燃機関26が有するスロットルの開度にも依存する。そこで、ECU50に以下に示す如く内燃機関26の回転条件が成立するか否かの判別を実施させることとしてもよい。
【0065】
ブレーキペダル30のブレーキ戻し操作が行われておらず、内燃機関26の所定閾値以上の回転数NEが所定時間以上継続し、かつ、所定開度以下のスロットル開度が所定時間以上継続した後のタイミングでは、いわゆるポンピングロスが十分に発生し、ブレーキブースタ32の負圧室34に十分な負圧が生成される。従って、かかる変形例の如く、ブレーキシステム24に直動負圧ポンプ40が設けられていない構成でも、そのタイミングで負圧センサ52の出力信号に基づいて検出される負圧室34の負圧Pvacに基づいて、その負圧センサ52の異常有無を仮判定することができるので、上記の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0066】
また、上記の実施例においては、負圧センサ52が異常状態にあるとの仮判定及び確定を行うこととしている。しかし、本発明はこれに限定されるものでなく、その異常状態にあるとの仮判定及び確定を行うと共に、負圧センサ52が正常状態にあるとの仮判定及び確定も行うこととしてもよい。かかる変形例においては、正常状態の仮判定と異常状態の仮判定とが交互に発生するようなときは、判定精度の向上のため又は誤判定防止のため、仮判定回数をリセットすることとしてもよい。
【0067】
また、負圧センサ52が正常状態にあるとの仮判定及び確定を行う構成では、一旦、負圧センサ52が異常状態にあると判定された後、その負圧センサ52が正常状態にあると判定された場合は、S&S制御による内燃機関26の自動停止の禁止を解除すると共に、MIL60を消灯することとしてもよい。かかる変形によれば、負圧センサ52が異常状態から正常状態へ戻った後は、S&S制御による内燃機関26の自動停止が許容されることで燃費の向上を図ることが可能となると共に、負圧センサ52の無駄な交換や修理などを排除することが可能となる。
【0068】
また、上記の実施例においては、負圧センサ52の異常状態有無の仮判定を、検出される負圧室34の負圧Pvacが所定負圧Pvac0以上であるか否かに基づいて行うこととしているが、この所定負圧Pvac0は固定値であってもよい。また、内燃機関の回転による負圧生成能力は、車両20が置かれている環境での大気圧、及び、S&S制御による内燃機関26の自動停止中でのブレーキ力確保に必要な負圧値に応じて変わるので、上記の所定負圧Pvac0は、それらの大気圧や必要負圧に応じて変更されるものであってもよい。かかる変形例によれば、負圧センサ52の異常状態有無の仮判定及び異常状態の確定を精度よく行うことが可能となり、その結果として、S&S制御による内燃機関26の自動停止の禁止を精度良く行うことができる。
【0069】
例えば、ECU50は、所定負圧Pvac0を設定するうえで、まず、大気圧を算出すると共に、S&S制御による内燃機関26の自動停止中に車両停車のためのブレーキ力を確保するために必要な必要負圧を算出する。そして、その算出した大気圧及び必要負圧並びに予め定められた負圧センサ52ごとの特性バラツキ誤差を吸収するための誤差マージンに基づいて、大気圧から必要負圧を差し引きかつ誤差マージンを差し引いた値を所定負圧Pvac0として設定する(Pvac0=大気圧−必要負圧−誤差マージン)。ECU50は、その設定後の所定負圧Pvac0を用いて上記ステップ106の処理を実行する。
【0070】
尚、上記した大気圧は、予め定められた固定値を用いるものであってもよい。また、大気圧は、高度として予め定められた固定値を用いる一方で、その高度固定値を気圧情報、温度情報などに基づいて補正した値を用いるものであってもよい。更に、大気圧は、車両20が現在置かれている高度情報、気圧情報、温度情報などに基づいて算出されるものであってもよい。
【0071】
また、上記した必要負圧は、予め定められた固定値を用いるものであってもよい。また、必要負圧は、車両20が現在置かれている状態や周辺環境(例えば、道路路面の勾配)に基づいて算出される車両20の制動に必要な負圧値、又は、車両20の特徴(例えば、車重や車格,搭載エンジンの排気量,搭載ブレーキシステムなど)に基づいて算出される車両20の制動に必要な負圧値を用いて算出されるものであってもよい。
【0072】
更に、上記の実施例においては、負圧センサ52の異常又は内燃機関26の自動停止の禁止を運転者に知らせる手段として、メータ内に設けられる表示ランプであるMIL60を用いることとしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、他の表示手段を用いることとしてもよいし、また、視覚による手段に代えて或いは視覚による手段と共に聴覚による手段を用いることとしてもよい。