特許第6133826号(P6133826)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6133826媒体繰出装置、投票券発券装置、及びピックローラー回転抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133826
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】媒体繰出装置、投票券発券装置、及びピックローラー回転抑制方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/06 20060101AFI20170515BHJP
   G07C 13/00 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   B65H3/06 350C
   G07C13/00 A
   B65H3/06 330G
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-175849(P2014-175849)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-50078(P2016-50078A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2016年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237639
【氏名又は名称】富士通フロンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】寺島 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】島村 達也
(72)【発明者】
【氏名】江崎 勇
【審査官】 松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】 実開平3−64941(JP,U)
【文献】 特開2006−151594(JP,A)
【文献】 特開平10−139181(JP,A)
【文献】 特開昭59−64431(JP,A)
【文献】 特開2013−156851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00− 3/68
B65H 5/06
G07C 1/00−15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を繰り出すためのピックローラー、第1のギア、及び第2のギアがシャフトに取り付けられ、前記第1のギアが前記シャフトに回転自在に軸支され、前記ピックローラー、及び前記第2のギアのうちの少なくとも一方が所定の回転可能範囲を設けた状態に軸支された構造体と、
前記第1のギア、及び前記第2のギアに噛合させ、前記第1のギアの動力を前記第2のギアに伝達させるための第3のギアと、
前記第3のギアを移動させ、前記第3のギアを前記第1のギア、及び前記第2のギアに一時的に噛合させるギア移動手段と、
を備えることを特徴とする媒体繰出装置。
【請求項2】
前記ピックローラー、及び前記第1のギアは、共に、前記シャフトに前記所定の回転可能範囲を設けた状態に軸支されている、
ことを特徴とする請求項1記載の媒体繰出装置。
【請求項3】
媒体を繰り出すためのピックローラー、第1のギア、及び第2のギアがシャフトに取り付けられ、前記第1のギアが前記シャフトに回転自在に軸支され、前記ピックローラー、及び前記第2のギアのうちの少なくとも一方が所定の回転可能範囲を設けた状態に軸支された構造体と、
前記第1のギア、及び前記第2のギアに噛合させ、前記第1のギアの動力を前記第2のギアに伝達させるための第3のギアと、
前記第3のギアを移動させ、前記第3のギアを前記第1のギア、及び前記第2のギアに一時的に噛合させるギア移動手段と、
を備えることを特徴とする投票券発券装置。
【請求項4】
シャフトに、媒体を繰り出すためのピックローラー、第1のギア、及び第2のギアを取り付け、
前記第1のギアを前記シャフトに回転自在に軸支させるとともに、前記ピックローラー、及び前記第2のギアのうちの少なくとも一方を、所定の回転可能範囲を設けた状態に軸支させ、
前記第1のギア、及び前記第2のギアに第3のギアを噛合させた場合に、前記ピックローラーの所定方向への回転を、前記ピックローラー、及び前記第2のギアのうちの少なくとも一方に設けた前記所定の回転可能範囲により抑制させる、
ことを特徴とするピックローラー回転抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体束から媒体を1枚ずつ分離して繰り出す技術に関する。
【背景技術】
【0002】
公営競技は、ギャンブルとして開催されるプロフェッショナルスポーツである。希望者は、式別毎に、レース結果、つまり競技者(ここでは、競技者である騎手が乗馬する馬を含む)の着順を予想し、投票券を購入することができる。
【0003】
公営競技場、及び投票所には、投票券を自動的に購入できるように、投票券発券装置(ここでは投票券発払装置を含む)が設置されている。その投票券発券装置は、購入希望者が挿入する投票カードを読み取り、投票カードで指定された投票内容の投票券を発券する。現在、投票券発券装置の大部分は、購入希望者が希望する投票券をより効率的に購入できるように、複数枚の投票カードを一度に挿入することができる。投票券発券装置に挿入されるのは、1枚以上の積み重ねられた投票カードであることから、以降、挿入された1枚以上の投票カードは便宜的に「投票カード束」と表記する。
【0004】
購入希望者が挿入した投票カード束は、読み取りのために、一枚ずつ投票カードが繰り出されて搬送される。そのため、投票券発券装置には、投票カードを繰り出すための媒体繰出装置が搭載されている。
【0005】
媒体繰出装置は、繰り出し用のローラーであるピックローラーによる搬送力を投票カード束の投票カードに一時的に伝達させる。一時的に搬送力を伝達させることにより、1枚の投票カードが投票カード束から分離されて搬送される。
【0006】
装置の製造コストは、部品点数が多くなる程、高くなる傾向がある。そのため、媒体繰出装置を搭載する投票券発券装置では、動力源となるモーターの数をより少なくさせている。それにより、投票カードの搬送に用いるモーターを、投票カードの繰り出しの動力源とする媒体繰出装置が多くなっている。
【0007】
投票カード束でピックローラーの搬送力を伝達させる位置は、投票カードの搬送方向上、奥側の端になっている。そのため、ピックローラーに搬送力を伝達させるべき投票カードが搬送方向上、手前側(ここでは挿入方向側)にずれると、その投票カードに搬送力を適切に伝達できなくなる。次に搬送力を伝達すべき投票カードが存在する場合、その投票カードに搬送力を伝達され、2枚以上の投票カードを一度に繰り出す繰り出しエラーが発生しやすい。
【0008】
投票カードの搬送に用いるモーターを投票カードの繰り出しの動力源とする媒体繰出装置には、通常、ピックローラーにモーターからの動力を一時的に伝達するための機構が搭載される。動力の伝達には、ギアが用いられるのが一般的である。
【0009】
ギアを用いた動力の一時的な伝達では、ギア同士を一時的に噛合させることが行われる。ギア同士を噛合させる場合、噛合させる各ギアの歯の位置関係により、噛合の際に、動力が伝達される側のギアが一瞬、想定方向の逆方向に回転する可能性がある。
【0010】
動力が伝達される側のギアは、ピックローラーと連結されている。そのため、動力が伝達される側のギアが想定方向の逆方向に回転した場合、ピックローラーは投票カードを繰り出す方向とは反対方向に搬送力を作用させる。しかし、反対方向に搬送力を作用させた場合、ピックローラーと投票カード束の上記位置関係から、繰り出しエラーが発生しやすくなる。このことから、現在、ピックローラーを一方方向のみに回転させるための機構であるワンウェイクラッチが採用されている。
【0011】
ワンウェイクラッチは、埃、及び汚れ等によって適切に機能しなくなることから、定期的に清掃等のメンテナンスを必要とする。投票カードの繰り出し、及び搬送を行うことから、媒体繰出装置内は埃(紙粉)が発生しやすい環境である。そのため、媒体繰出装置の定期的なメンテナンスでは、ワンウェイクラッチの清掃は必須の項目となっている。
【0012】
ワンウェイクラッチの清掃は、ワンウェイクラッチを含む構造体を媒体繰出装置から取り外し、取り外した構造体を分解して行う必要がある。そのため、ワンウェイクラッチの清掃には長い時間を必要とし、メンテナンスコストを高くさせている。それにより、媒体繰出装置のメンテナンスコストをより抑制することが重要と思われる。これは、媒体の種類に係わらず、ピックローラーの回転方向を制限するためにワンウェイクラッチを採用している媒体繰出装置、及びその媒体繰出装置を搭載した装置であれば共通している課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平8−268579号公報
【特許文献2】特開2006−56658号公報
【特許文献3】特開2013−82519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
1側面では、本発明は、媒体繰出装置、及びその媒体繰出装置を搭載した装置のメンテナンスコストをより抑制するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明を適用した1装置は、媒体を繰り出すためのピックローラー、第1のギア、及び第2のギアがシャフトに取り付けられ、第1のギアがシャフトに回転自在に軸支され、ピックローラー、及び第2のギアのうちの少なくとも一方が所定の回転可能範囲を設けた状態に軸支された構造体と、第1のギア、及び第2のギアに噛合させ、第1のギアの動力を第2のギアに伝達させるための第3のギアと、第3のギアを移動させ、第3のギアを第1のギア、及び第2のギアに一時的に噛合させるギア移動手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0016】
本発明を適用した場合には、媒体繰出装置、及びその媒体繰出装置を搭載した装置のメンテナンスコストをより抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態による媒体繰出装置を搭載した投票カード読取ユニットの斜視図である。
図2】繰出機構の詳細を表す斜視図である。
図3】構造体の分解斜視図である。
図4】繰出機構の上面図である。
図5】投票カードの非繰出時の繰出機能の状態を説明する図である。
図6】投票カードの繰出時の繰出機構の状態を説明する図である。
図7】本実施形態による投票券発券装置のハードウェア構成例を説明する図である。
図8】投票カード読取ユニットのハードウェア構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態による媒体繰出装置を搭載した投票カード読取ユニットの斜視図である。
【0019】
この投票カード読取ユニット1には、投票内容が記入された投票カードが1枚以上、重ねられた投票カード束が図1中に矢印で表す方向から一括挿入部2に挿入される。それにより、投票カード読取ユニット1は、投票カード束から投票カードを1枚ずつ繰り出して搬送し、搬送中の投票カードに記入された投票内容を読み取るようになっている。3は、投票カード束から投票カードを1枚ずつ繰り出すための繰出機構である。
【0020】
繰出機構3により繰り出された投票カードは、投票カードを収納するためのスタッカ部4に向けて搬送される途中で投票内容が読み取られる。投票内容の読み取りが適切に行えなかった投票カード、及び投票内容が不適切な投票カードは、返却部5を介し、返却口6から排出される。
【0021】
図2は、繰出機構の詳細を表す斜視図である。その図2を参照し、繰出機構3について更に詳細に説明する。
【0022】
返却部5は、開閉可能になっており、図2は、返却部5を開けた状態で繰出機構3を表している。図1に表す矢印方向から見て、図2(a)は、右側上方からの斜視図(図1の矢視Cから見た図)であり、図2(b)は、左側上方からの斜視図(図1の矢視Dから見た図)である。以降、視点は、特に断らない限り、図1に表す矢印方向から見た視点を想定する。
【0023】
投票カード読取ユニット1には、投票カードの繰り出し、及び繰り出した投票カードの搬送のための動力源としてモーター41が1つだけ搭載されている。モーター41のシャフトにはプーリー42が取り付けられている。プーリー42は、ベルト43に動力を伝達する。ベルト43は、プーリー42、複数のプーリー45、及びプーリー46の間に張架されている。
【0024】
プーリー46が取り付けられたシャフト47は、ギア21を軸支している。ギア21には、ギア22が噛合され、ギア22にはギア34が噛合されている。それにより、モーター41からプーリー46に伝達された動力は、シャフト47、ギア21、及びギア22を介してギア34に伝達される。
【0025】
ギア34は、投票カードを繰り出すための構造体30の一部である。図3に表すように、この構造体30は、シャフト31に、ピックローラー32、ギア33、34、及び軸受38を取り付けた構成となっている。
【0026】
シャフト31には、径方向に突出した平行ピン36が設けられている。ピックローラー32には、シャフト31が挿入可能な穴32a、その穴32aから径方向に突出し、挿入された平行ピン36が移動可能な2つの溝32bが形成されている。
【0027】
図3は、構造体30の分解斜視図である。
図3に示す様に、ギア22に噛合されたギア34には、シャフト31が挿入される穴34aが形成されている。それにより、ギア34は、シャフト31に対し、回転自在に軸支されている。このことから、以降、ギア34はアイドラギアとも表記する。
【0028】
一方、ギア33には、ピックローラー32と同様に、シャフト31が挿入される穴33a、その穴33aから径方向に突出し、挿入された平行ピン36が移動可能な2つの溝33bが形成されている。
【0029】
2つのギア33、34には、ギア23が一時的に噛合される。そのギア23の噛合により、モーター41からの動力がシャフト31に伝達され、シャフト31が回転する。その回転に伴い、ピックローラー32が回転し、投票カード束の一番上に位置する投票カードにピックローラー32による動力が伝達される。その結果、投票カードが1枚、繰り出される。
【0030】
図2(a)、図2(b)に示す様に、ギア23とギア33、34との一時的な噛合は、ソレノイド25を用いて行われる。ギア23は、ブラケット28に取り付けられたシャフト29によって軸支され、ブラケット28には、ソレノイド35のプランジャー35aからの動力が連結部材26を介して伝達される。連結部材26とブラケット28間は、シャフト27により連結されている。それにより、ソレノイド35の駆動時のみ、ギア23はギア33、34に向けて押し付けられるようになっている。
【0031】
次に、図4図6を参照し、上記繰出機構3の動作について具体的に説明する。図4は、繰出機構の上面図である。図5は、投票カードの非繰出時の繰出機能の状態を説明する図であり、図5(a)は非繰出時のA−A線断面図、図5(b)は非繰出時のB−B線断面図である。図6は、投票カードの繰出時の状態を説明する図であり、図6(a)は繰出時のA−A線断面図、図5(b)は繰出時のB−B線断面図である。図4図6では、便宜的に、特に主要な構成要素のみを表している。
【0032】
図4に表すように、ギア23は、2つのギア33、34に噛合させることのできる幅のギアである。そのため、ギア23を2つのギア33、34に噛合させた場合、ギア34に伝達された動力は、ギア23を介してギア33に伝達される。ギア33への動力の伝達により、シャフト31を介してピックローラー32に動力が伝達され、ピックローラー32は投票カード束60の一番上に位置する投票カードを繰り出すことになる。
【0033】
ギア23が取り付けられたブラケット28は、図5(a)、及び図6(a)に表すように、シャフト51を軸に回転可能になっている。そのブラケット28の他方の端部28aは、図5(b)、及び図6(b)に表す圧板54への動力伝達用である。この圧板54は、投票カード束60をピックローラー32に向けて押し付けるための部材であり、ブラケット28の端部28aに取り付けられたシャフト52を介して動力が伝達される。53は、投票カード束60の搬送上のガイドをする上板であり、55は、一括挿入部2に挿入された投票カード束60を奥側に搬送するためのローラー(ピンチローラー)である。
【0034】
上記のように、非繰出時、ソレノイド25は非駆動状態であり、図5(a)に表すように、ギア23はギア33、34とは離間している。圧板54は、図5(b)に表すように、投票カード束60をピックローラー32に向けて押し付ける状態ではない。
【0035】
一方、繰出時には、ソレノイド25が駆動され、図6(a)に表すように、ギア23はギア33、34に向けて移動して噛合する。圧板54は、図6(b)に表すように、投票カード束60をピックローラー32に向けて押し付ける状態となる。
【0036】
圧板54が投票カード束60をピックローラー32に押し付ける状態では、図6(b)に表すように、投票カード束60は搬送ローラー56とピンチローラー55間に挟まれた状態となる。この搬送ローラー56は、投票カート束60の一括挿入部2への挿入時、その投票カード束60を奥に搬送するために設けられている。それにより、繰出時にも、搬送ローラー56による搬送力が投票カード束60の一番上の投票カードに作用する。
【0037】
繰出時には、ギア23をギア33、34に噛合させる。その噛合の際、ギア33は、自身の歯とギア23の歯との間の位置関係により、正逆の何れの方向にも回転する。ここでの正方向とは、投票カードを繰り出す方向(図5(a)に向かって右回転方向)である。このことから、逆方向は、投票カードを一括挿入部2側に向けて搬送力を作用させる方向である。
【0038】
ギア33、及びピックローラー32を共に固定的にシャフト31に取り付けた場合、シャフト31、及びピックローラー32はギア33と同方向に連動する形で回転する。そのため、ギア23を噛合させた際、ギア33が逆方向に回転すると、シャフト31に取り付けられたピックローラー32は、投票カード束60で接触している投票カードに対し、一括挿入部2方向に向けて搬送させる搬送力を作用させることになる。そのような搬送力を作用させた場合、その搬送力を作用させた投票カードとピックローラー32は接触しなくなるか、或いは接触範囲が狭まり、繰り出すべき投票カードを適切に繰り出せない可能性が高くなる。このことから、従来、ピックローラー32の回転方向の制限用に、正方向のみに回転させるためのワンウェイクラッチが広く用いられている。
【0039】
ワンウェイクラッチを採用する場合、シャフト31には高い硬度、及び高い精度等が求められる。部品点数も多くなる。このようなことから、ワンウェイクラッチを採用することにより、製造コストは上昇する。
【0040】
また、ワンウェイクラッチは、埃、及び汚れ等によって適切に機能しなくなる。投票カードの繰り出し、及び搬送を行う場合、埃(紙粉)が発生しやすいことから、定期的なメンテナンスでワンウェイクラッチは清掃しなければならない。ワンウェイクラッチの清掃には長い時間を必要とすることから、メンテナンスコストも非常に高くさせる。
【0041】
このようなことから、本実施形態では、ピックローラー32に溝32b、ギア33に溝33bをそれぞれ設け、ワンウェイクラッチを採用する必要性を抑制させている。
【0042】
ピックローラー32に設けた溝32b、及びギア33に設けた溝33bは共に、ピックローラー32が逆回転するまでの余裕を作る。これは、ギア33からシャフト31に動力が伝達する以上、平行ピン36が溝32bの2つの面32b1、32b2のうちの一方に接触し、且つ平行ピン37が溝33bの2つの面33b1、33b2のうちの同じ側の面に接触しなければ、ピックローラー32は回転しないからである。ギア23の噛合の際にギア33を逆回転させる最大の回転角度は、比較的に小さく、溝32b、33bは、その最大の回転角度以上、平行ピン36、37が移動可能なように形成している。そのため、ギア23を噛合させた際、ピックローラー32は逆回転しないか、たとえ逆回転したとしても、その回転量は僅かなものとなる。
【0043】
このことから、ワンウェイクラッチを用いる必要性は事実上、回避させることができる。ワンウェイクラッチを用いないことにより、製造コスト、及びメンテナンスコストを共に、より抑制することができる。また、本実施形態のギヤ・シャフト・プーリ・ベルト等の駆動手段の構成にすることにより、1つのモーターのみで、投票カード(媒体)の繰り出し・搬送が可能となり、製造コスト、及びメンテナンスコストを共に、より抑制することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、ギア33、及びピックローラー32に共に、ギア23の噛合による影響を抑制するための回転可能範囲を設けているが、そのうちの一方のみに回転可能範囲を設けるようにしても良い。また、平行ピン36を溝32bの面32b2に、或いは平行ピン37を溝33bの面33b2に接触するような力を作用させるようにしても良い。そのような力を何れか一方に作用させる場合、ギア23を噛合させる際に発生するピックローラー32の逆回転は確実に回避させることができる。
【0045】
本実施形態による投票券発券装置は、上記投票カード読取ユニット1を搭載させることで実現される。この投票券発券装置は、挿入された投票カードの繰り出しを行えば良いものであることから、投票券発券装置には、払い戻しが行える投票券発払装置も含まれる。以降は、その投票券発券装置について具体的に説明する。
【0046】
図7は、本実施形態による投票券発券装置のハードウェア構成例を説明する図である。
この投票券発券装置は、投票券の発券に加え、投票券の払い戻しが可能な投票券発払装置100である。その投票券発払装置100は、図7に表すように、ディスプレイ101、管理者用ディスプレイ102、タッチパネル103、管理者用タッチパネル104、投票カード読取ユニット1、紙幣還流ユニット105、硬貨還流ユニット106、投票券印刷ユニット107、払戻投票券読取ユニット108、及び制御部110を備えている。
【0047】
ディスプレイ101は、利用者に対し、操作案内、レース案内、投票カードの投票内容等の情報の表示に用いられる。管理者用ディスプレイ102は、メンテナンス等の際に、作業員に必要な情報の表示に用いられる。この管理者用ディスプレイ102は、例えば投票券発券装置100の裏側に設けられている。
【0048】
タッチパネル103は、ディスプレイ101の上方に配置された入力装置である。管理者用タッチパネル104は、管理者用ディスプレイ102の上方に配置された入力装置である。
【0049】
投票カード読取ユニット1は、上記のように、利用者が一括挿入部2に挿入した投票カード束60から投票カードを1枚ずつ繰り出して搬送し、搬送中に投票カードに記入された投票内容を読み取るための装置である。
【0050】
紙幣還流ユニット105は、紙幣の入金、及び出金を可能にするための装置である。硬貨還流ユニット106は、硬貨の入金、及び出金を可能にするための装置である。これら紙幣還流ユニット105、及び硬貨還流ユニット106により、利用者は現金を用いた投票券の購入、及び払い戻しを行うことができる。
【0051】
投票券印刷ユニット107は、未印刷の投票券に必要な内容を印刷して、投票券を発券するための装置である。
【0052】
払戻投票券読取ユニット108は、利用者が挿入した投票券の投票内容を読み取るための装置である。
【0053】
制御部110は、投票券発払装置100全体を制御する制御装置である。図7に表すように、CPU(Central Processing Unit)111、RAM(Random Access Memory)112、HDD(Hard Disk Drive)113、通信インタフェース114、グラフィック処理ユニット115、入出力インタフェース116を備え、各々がバス117に接続されている。なお、制御部110は、コンピュータの一例に相当する。
【0054】
CPU111は、制御部110を制御して、投票券発券装置100全体を制御する。RAM112は、CPU111が実行するOS(Operating System)、及びアプリケーションプログラム等の少なくとも一部の一時的な格納に用いられる。また、RAM112は、CPU111による処理に必要な各種データ(例えば投票内容のデータ等)の一時的な格納に用いられる。HDD113には、OSやアプリケーションプログラム、各種データ等が格納される。
【0055】
通信インタフェース114は、ネットワーク200に接続され、ネットワーク200を介した外部装置との通信を可能にさせる。投票券の発券、及び払い戻し時には、ネットワーク200を介した外部装置(例えば投票サーバ)との通信が行われる。
【0056】
なお、CPU111に実行させるプログラムは、ネットワーク200を介して外部装置から受信しても良い。また、入出力インタフェース116が可搬型記録媒体120にアクセス可能な駆動装置に接続可能であった場合、プログラムは、入出力インタフェース116を介して取得するようにしても良い。このようなこともあり、プログラムの格納先、及び取得方法等は特に限定されない。
【0057】
グラフィック処理ユニット115は、CPU111の指示に従い、ディスプレイ101、或いは管理者用ディスプレイ102に表示させる画面(画像データ)を生成し、生成した画面をディスプレイ101、或いは管理者用ディスプレイ102に出力する。それにより、CPU111は、必要な情報をディスプレイ101、及び管理者用ディスプレイ102に表示させる。
【0058】
入出力インタフェース116は、双方向のデータの入出力のためのインタフェースである。この入出力インタフェース116には、タッチパネル103、管理者用タッチパネル104、投票カード読取ユニット1、紙幣還流ユニット105、硬貨還流ユニット106、投票券印刷ユニット107、及び投票券読取ユニット108が接続されている。それにより、CPU111は、これら各ユニット1、103〜108への指示、及び各ユニット1、103〜108の状態の確認、及び必要なデータの取得を、入出力インタフェース116を介して行う。
【0059】
図8は、投票カード読取ユニットのハードウェア構成例を説明する図である。
上記投票カード読取ユニット1は、図8に表すように、ソレノイド25、及びモーター41に加え、読取制御部131、厚みセンサ132、イメージセンサ133、センサ群134、ソレノイド駆動部135、及びモーター駆動部136を備える。
【0060】
読取制御部131は、投票カード読取ユニット1全体を制御する制御装置である。厚みセンサ132は、ピックローラー32によって繰り出された投票カードの厚みを検出するためのセンサである。2枚以上の投票カードの繰り出しは、この厚みセンサ132によって検出され、返却部5を介して排出される。
【0061】
イメージセンサ133は、搬送中の投票カードの読み取りに用いられるセンサである。このイメージセンサ133によって読み取られた投票カード画像は、例えば読取制御部131、或いは制御部110のCPU111によって処理され、投票内容が適切に読み取れたか否かの判定、及び投票内容が適切か否かの判定が行われる。
【0062】
センサ群134には、一括挿入部2に挿入された投票カード束60の検出用センサ、搬送されている投票カードを検出するための複数のセンサ、等を含む。このセンサ群134によって、投票カード束の挿入、搬送異常、等を検出することができる。
【0063】
ソレノイド駆動部135は、ソレノイド25の駆動のために電流を供給するための回路である。モーター駆動部136は、モーター41の駆動用の信号を供給するための回路である。
【0064】
なお、本実施形態では、繰り出す対象とする媒体を投票カードとしているが、媒体は投票カードに限定されない。それにより、媒体繰出装置は、投票券発券装置とは異なる装置に搭載されるものであっても良い。投票券発払装置では、投票券も繰り出す対象となることから、媒体繰出装置は、投票券を対象としたものであっても良い。
【符号の説明】
【0065】
1 投票カード読取ユニット
2 一括挿入部
21〜23、33、34 ギア
25 ソレノイド
25a プランジャー
26 連結部材
28 ブラケット
31、47 シャフト
32 ピックローラー
32a、33a、34a 穴
32b、33b 溝
35、36 平行ピン
41 モーター
42、45、46 プーリー
43 ベルト
60 投票カード束
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8