【実施例】
【0033】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0034】
(実施例1)
甲州種のブドウの種子及び果皮1kgに1Lの水を加え、微粒磨砕機を用いて湿式粉砕し、粒径100μm以下のブドウ粉砕物を得た。このブドウ粉砕物2kgに水1Lを加え、pHを6とし、120℃で20分間加熱殺菌した。この加熱殺菌処理物に、ラクトバチルス・プランタルムの前培養液5mL(菌体数5×10
9個)と、ラクトバチルス・ブレビスの前培養液5mL(菌体数5×10
9個)とを加え、温度を33±1℃に維持し、48時間発酵させた。
【0035】
発酵終了後、70℃で10分間加熱殺菌し、−40℃に凍結させた後、圧力0.1mbr以下、24時間、30℃の条件で凍結乾燥処理して、粉末状のブドウの乳酸発酵物を250g得た。このブドウの乳酸発酵物100mg中には、ラクトバチルス・プランタルムの死菌体が5×10
8個、ラクトバチルス・ブレビスの死菌体が5×10
8個含まれていた。また、総ポリフェノール含有量は、没食子酸相当量で23mgであり、DPPHラジカル消去活性は、Trolox相当量で242μmolであった。
【0036】
(比較例1)
乳酸菌として、ラクトバチルス・ブレビスを用いずに、ラクトバチルス・プランタルムを菌体数10×10
9個でブドウ粉砕物に加えて用いた以外は、実施例1と同様にして、ブドウの乳酸発酵物を得た。
【0037】
(比較例2)
乳酸菌として、ラクトバチルス・プランタルムを用いずに、ラクトバチルス・ブレビスを菌体数10×10
9個でブドウ粉砕物に加えて用いた以外は、実施例1と同様にして、ブドウの乳酸発酵物を得た。
【0038】
(比較例3)
乳酸菌として、ラクトバチルス・プランタルムとラクトバチルス・ブレビスに代えて、ラクトバチルス・カゼイとストレプトコッカス・ラクティスを、それぞれ菌体数5×10
9個でブドウ粉砕物に加えて用いた以外は、実施例1と同様にして、ブドウの乳酸発酵物を得た。
【0039】
(比較例4)
乳酸菌として、ラクトバチルス・プランタルムとラクトバチルス・ブレビスに代えて、ラクトバチルス・サーモフィルスとエンテロコッカス・フェカリスを、それぞれ菌体数5×10
9個でブドウ粉砕物に加えて用いた以外は、実施例1と同様にして、ブドウの乳酸発酵物を得た。
【0040】
<試験例1>(チロシナーゼ阻害活性)
実施例1、比較例1〜4のブドウの乳酸発酵物について、チロシナーゼ阻害活性を測定した。阻害活性は、ブドウの乳酸発酵物の代わりに水を添加したときのチロシナーゼ活性と比較することにより求めた。また、参考例として、乳酸発酵物の調製に用いたブドウ粉砕物の加熱殺菌処理物を、そのまま凍結乾燥した非発酵物についても、チロシナーゼ阻害活性を測定した。以下に被検試料をまとめて示す。また、チロシナーゼ阻害活性の測定方法を示す。
【0041】
[被検試料]
A:対照(水)
B:参考例(ブドウの種子及び果皮の非発酵物)
C:実施例1(Lactobacillus plantarum + Lactobacillus brevis)
D:比較例1(Lactobacillus plantarum)
E:比較例2(Lactobacillus brevis)
F:比較例3(Lactobacillus casei + Streptococcus lactis)
G:比較例4(Lactobacillus thermophilus + Enterococcus faecalis)
【0042】
[測定方法]
・試料の調製
発酵物または非発酵物100mgを80%メタノール10mLに懸濁し、3時間振盪しながら抽出した。遠心分離して得られた上清液からメタノールを除去し、再度10mLに調製して、試料とした。
【0043】
・分析方法
上記試料0.3mLを取り、これにクエン酸緩衝液(20mM、pH6.8)3mLを加え、さらにチロシナーゼ溶液(マッシュルーム由来チロシナーゼを400U/mLになるようにクエン酸緩衝液で調製)0.3mLを加えて37℃、10分間インキュベートした。その後、チロシン溶液(1.11μmol/mL)3mLを加えて37℃、20分間反応させた。490nmの吸光度を測定し、上記試料0.3mLの代わりに水0.3mLを用いた場合のチロシナーゼ活性を100としたときの相対活性を求めた。
【0044】
結果を
図1に示す。
【0045】
図1に示されるように、非発酵物を用いた参考例では、チロシナーゼ活性は、対照の60%程度であった。ラクトバチルス・プランタルム、又はラクトバチルス・ブレビスを単独で用いて乳酸発酵した比較例1、2では、その乳酸発酵により阻害活性が向上し、ラクトバチルス・プランタルムとラクトバチルス・ブレビスを併用して用いて乳酸発酵した実施例1では、阻害活性が更により一層向上した。それに対して、乳酸菌として、ララクトバチルス・カゼイとストレプトコッカス・ラクティスを併用して用いて乳酸発酵した比較例3や、ラクトバチルス・サーモフィルスとエンテロコッカス・フェカリスを併用して用いて乳酸発酵した比較例4では、非発酵物を用いた参考例と同程度の阻害活性しか得られなかった。
【0046】
<試験例2>(メラニン生成抑制活性)
実施例1、比較例1〜2のブドウの乳酸発酵物について、B16メラノーマ細胞のメラニン生成を抑制する活性を試験した。抑制活性は、ブドウの乳酸発酵物の代わりに水を添加したときのメラニン生成量と比較することにより求めた。また、参考例として、乳酸発酵物の調製に用いたブドウ粉砕物の加熱殺菌処理物を、そのまま凍結乾燥した非発酵物についても、メラニン生成抑制活性を試験した。以下に被検試料をまとめて示す。また、メラニン生成抑制活性の試験方法を示す。
【0047】
[被検試料]
A:対照(水)
B:参考例(ブドウの種子及び果皮の非発酵物)
C:実施例1(Lactobacillus plantarum + Lactobacillus brevis)
D:比較例1(Lactobacillus plantarum)
E:比較例2(Lactobacillus brevis)
【0048】
[試験方法]
・試料の調製
発酵物および非発酵物100mgを蒸留水10mLに懸濁し、3時間振盪しながら抽出した。遠心分離して得られた上清液を凍結乾燥して、試料とした。
【0049】
・B16メラノーマ細胞の培養
B16メラノーマ細胞は、5%牛胎児血清(FBS)含有Doulbecco’s modified Eagle’s Medium(5%FBS含有DMEM)を用いて1.0×10
4cells/wellの濃度に調製し、6well plateに播種して、37度、5%CO
2気相下で培養を開始した。24時間培養後、上記試料を5%FBS含有DMEMに0.05%添加した培地を用いて培地交換した。72時間毎に同様の培地交換を行いながら、6日間培養した。なお、対照には、上記試料の代わりに超純水を用いた。
【0050】
・分析方法
培養後、0.25%トリプシン溶液で細胞を剥がし、その溶液を遠心分離して細胞ペレットを作成した。1.5mLのPBS(−)緩衝液にペレットを懸濁させ、0.3mLをタンパク質測定用、1.2mLをメラニン定量用とした。
【0051】
タンパク質測定は次のようにして行った。すなわち、0.3mLの細胞懸濁液を遠心分離して細胞をペレットにし、そのペレットをPBS(−)緩衝液で3回洗浄した。ペレットに0.5%Triton X−100含有PBS(−)緩衝液1mL添加し、20分間ボルテックス処理を行い、細胞タンパク溶解液を得た。得られた細胞タンパク溶解液について、常法に従い、Lowry法でタンパク量を定量した。
【0052】
メラニン定量は次のようにして行った。すなわち、1.2mLの細胞懸濁液を遠心分離して細胞をペレットにし、ペレットをPBS(−)緩衝液、5%トリクロロ酢酸溶液、エタノール/ジエチルエーテル(1:3)溶液でそれぞれ3回ずつ洗浄した後、ジエチルエーテルで1回洗浄した。ペレットを1時間、50℃に加熱して十分乾燥させた後、1M水酸化ナトリウム溶液150μLを添加し、100℃、10分間加熱してメラニンを可溶化した。マイクロプレートリーダーを用いてメラニンの405nmの吸光度を測定し、タンパク量当たりの吸光度でメラニン量を比較した。
【0053】
結果を
図2に示す。
【0054】
図2に示されるように、非発酵物を用いた参考例では、メラニン生成活性は、対照の80%程度であった。ラクトバチルス・プランタルム、又はラクトバチルス・ブレビスを単独で用いて乳酸発酵した比較例1、2では、その乳酸発酵によりメラニン生成抑制活性が向上したが、ラクトバチルス・プランタルムとラクトバチルス・ブレビスを併用して用いて乳酸発酵した実施例1では、メラニン生成抑制活性が更により一層向上した。
【0055】
<製造例1>
下記表1の配合にて、常法に従い、実施例1で得られたブドウの乳酸発酵物を含有する錠剤を製造した。
【0056】
【表1】
【0057】
<製造例2>
下記表2の配合にて、常法に従い、実施例1で得られたブドウの乳酸発酵物を含有するドリンク剤を製造した。
【0058】
【表2】
【0059】
<製造例3>
下記表3の配合にて、常法に従い、実施例1で得られたブドウの乳酸発酵物を含有するクリーム剤を製造した。
【0060】
【表3】