特許第6133834号(P6133834)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133834
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】美白剤及び美白用化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/97 20170101AFI20170515BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20170515BHJP
   A61K 8/99 20170101ALI20170515BHJP
   A61K 36/87 20060101ALI20170515BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20170515BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20170515BHJP
【FI】
   A61K8/97
   A61Q19/02
   A61K8/99
   A61K36/87
   A23L33/135
   A61K35/747
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-251733(P2014-251733)
(22)【出願日】2014年12月12日
(65)【公開番号】特開2016-113386(P2016-113386A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2016年8月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597106806
【氏名又は名称】日本・バイオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】三沢 宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 光政
【審査官】 駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/093670(WO,A1)
【文献】 特開2005−325105(JP,A)
【文献】 ZHANG Xixing,LACTIC ACID BIOSYNTHESIS FROM BIOMASS DERIVED SUGARS VIA LACTOBACILLUS PLANTARUM AND LACTOBACILLUS BREVIS CO-FERMENTATION,K-State Research Forum Program Booklet,[online] K-State Student Union ,2014年 3月26日,p.24,インターネット<URL:https://www.k-state.edu/grad/students/studentcouncil/research-forums/docs/kgrad/2014%20KRF%20Abstract%20Booklet.pdf>
【文献】 加藤 陽治,ブドウ果実の細胞壁多糖の組成,[online],日本,弘前大学,2004年 3月,インターネット<URL:http://repository.ul.hirosaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10129/485/1/AN00211590_91_67.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K35/00−35/768
A61K36/06−36/068
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブドウの種子及び果皮をラクトバチルス・プランタルムとラクトバチルス・ブレビスとを少なくとも含む乳酸菌で発酵して得られるブドウの乳酸発酵物及び/又はその抽出物を有効成分として含有することを特徴とする美白剤。
【請求項2】
前記ブドウの乳酸発酵物及び/又はその抽出物はチロシナーゼ阻害活性を有するものである、請求項1に記載の美白剤。
【請求項3】
前記ブドウの乳酸発酵物及び/又はその抽出物はメラニン生成抑制活性を有するものである、請求項1又は2に記載の美白剤。
【請求項4】
ブドウの種子及び果皮をラクトバチルス・プランタルムとラクトバチルス・ブレビスとを少なくとも含む乳酸菌で発酵して得られるブドウの乳酸発酵物及び/又はその抽出物を有効成分として含有することを特徴とする美白用化粧料。
【請求項5】
前記ブドウの乳酸発酵物及び/又はその抽出物はチロシナーゼ阻害活性を有するものである、請求項4に記載の美白用化粧料。
【請求項6】
前記ブドウの乳酸発酵物及び/又はその抽出物はメラニン生成抑制活性を有するものである、請求項4又は5に記載の美白用化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日焼けの予防、回復や、シミ、ソバカス等色素沈着を抑えるために有用な美白剤及び美白用化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
日焼けの予防、回復や、シミ、ソバカス等色素沈着を抑えることは美容の重要な要素であり、肌の色素沈着の原因となるメラニンの生成を抑える技術への関心は高い。また、メラニン生成には、色素細胞のチロシナーゼが関与しているので、そのチロシナーゼの活性を阻害する技術への関心も高い。そして、副作用がなく、日常的に手軽かつ安全に利用することができ、なおかつ効果に優れた有効成分の開発が望まれている。
【0003】
このような問題に対して、例えば下記特許文献1には、ブドウ果皮及び種子の乳酸菌発酵物にはチロシナーゼ阻害活性やメラニン生成抑制活性があり、皮膚の美白に有用であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/093670号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のブドウ果皮及び種子の乳酸菌発酵物は、単一の乳酸菌を用いた発酵物であり、そのチロシナーゼ阻害活性やメラニン生成抑制活性は、十分ではなかった。
【0006】
本発明の目的は、日常的に手軽かつ安全に摂取でき、チロシナーゼ阻害活性やメラニン生成抑制活性に優れた美白剤及び美白用化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、種々の検討の結果、ブドウの種子及び果皮をラクトバチルス・プランタルムとラクトバチルス・ブレビスとを併用して乳酸発酵することで、それぞれ単独で乳酸発酵したよりも優れたチロシナーゼ阻害活性及びメラニン生成抑制活性が奏されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の構成を有する美白剤及び美白用化粧料を提供する。
[1]ブドウの種子及び果皮をラクトバチルス・プランタルムとラクトバチルス・ブレビスとを少なくとも含む乳酸菌で発酵して得られるブドウの乳酸発酵物及び/又はその抽出物を有効成分として含有することを特徴とする美白剤。
[2]前記ブドウの乳酸発酵物及び/又はその抽出物はチロシナーゼ阻害活性を有するものである、前記[1]に記載の美白剤。
[3]前記ブドウの乳酸発酵物及び/又はその抽出物はメラニン生成抑制活性を有するものである、前記[1]又は[2]に記載の美白剤。
[4]ブドウの種子及び果皮をラクトバチルス・プランタルムとラクトバチルス・ブレビスとを少なくとも含む乳酸菌で発酵して得られるブドウの乳酸発酵物及び/又はその抽出物を有効成分として含有することを特徴とする美白用化粧料。
[5]前記ブドウの乳酸発酵物及び/又はその抽出物はチロシナーゼ阻害活性を有するものである、前記[4]に記載の美白用化粧料。
[6]前記ブドウの乳酸発酵物及び/又はその抽出物はメラニン生成抑制活性を有するものである、前記[4]又は[5]に記載の美白用化粧料。
【発明の効果】
【0009】
本発明の美白剤及び美白用化粧料は、ブドウの種子及び果皮をラクトバチルス・プランタルムとラクトバチルス・ブレビスとを少なくとも含む乳酸菌で発酵して得られるブドウの乳酸発酵物及び/又はその抽出物を有効成分として含有するので、チロシナーゼ阻害活性やメラニン生成抑制活性に優れている。また、有効成分が天然素材由来であることから、安全性が高く、日常的に手軽かつ安全に摂取でき、それにより日焼けを予防及び/又は回復したり、シミ、ソバカス等色素沈着を抑えたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】試験例1において調べたチロシナーゼ阻害活性を示す図表である。
図2】試験例2において調べたメラニン生成抑制活性を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の美白剤及び美白用化粧料は、ブドウの乳酸発酵物及び/又はその抽出物を有効成分として含有してなるものである。
【0012】
本発明において、原料となるブドウとしては、特に限定はなく、白系ブドウ、赤系ブドウ等のいずれでもよい。白系ブドウとしては、シャルドネ種、リースリング種、マスカット種などが挙げられる。赤系ブドウとしては、甲州種、巨峰種、ピオーネ種、カベルネ・フラン種、カベルネ・ソービニヨン種、メルロ種、ピノ・ノアール種、ピノ・ムニエ種、マスカット・ベリーA種、シラー種、ガメイ種、グルナッシュ種、ムールヴェードル種、サンソー種、グロロー種などが挙げられる。なかでも、赤系ブドウの果皮には、アントシアニンやフラボノイドなどが比較的多量に含まれているので、赤系ブドウが好ましく用いられる。原料ブドウの使用部位は、ポリフェノール類の含有量が高く、安価な原料素材でもあることから、種子及び果皮を用いる。
【0013】
本発明において、原料ブドウの乳酸発酵に用いる乳酸菌は、ラクトバチルス・プランタルムとラクトバチルス・ブレビスとを少なくとも含む乳酸菌である。ラクトバチルス・プランタルムとラクトバチルス・ブレビスとを少なくとも含む乳酸菌で発酵することにより、原料ブドウに含まれるポリフェノール類や他の成分の量が増加したり、それら成分の体内への吸収性が高まったりして、チロシナーゼ阻害活性やメラニン生成抑制活性が向上する。また、ブドウ由来成分と、ラクトバチルス・プランタルムとラクトバチルス・ブレビスとを少なくとも含む乳酸菌とが相乗的に作用して、チロシナーゼ阻害活性やメラニン生成抑制活性がより一層向上する。更にまた、渋み、苦味、青臭さが低減され、風味が向上する。その結果、日焼けの予防、回復や、シミ、ソバカス等色素沈着を抑える美白剤及び美白用化粧料の有効成分として、好適に用いられる。
【0014】
乳酸菌としては、ラクトバチルス・プランタルムとラクトバチルス・ブレビスの生育を妨げない範囲であれば、他の乳酸菌を添加してもよく、例えば、食品としても利用可能で安全な、エンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・フェシウム、エンテロコッカス・アビウム、エンテロコッカス・デュランス、エンテロコッカス・マラドラートス、エンテロコッカス・カセリフラブス、エンテロコッカス・ガリナール、ロイコノストック・クレモリス、ロイコノストック・シトロボラム、ロイコノストック・メゼンテロイデス、ペディオコッカス・セルビシェ、ペディオコッカス・ハロフィルス、ストレプトコッカス・アセトイニカス、ストレプトコッカス・エビウム、ストレプトコッカス・クレモリス、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ストレプトコッカス・サングィウス、ストレプトコッカス・ソイエ、ストレプトコッカス・デュランス、ストレプトコッカス・パラシトロボルス、ストレプトコッカス・ラクチス等の乳酸球菌、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ヘルベティクス等の乳酸桿菌、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ロングム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ等のビフィズス菌等が挙げられる。
【0015】
ブドウの乳酸発酵物の抽出に用いる溶媒としては、特に限定は無い。水、メタノールやエタノール等のアルコール系溶媒等が挙げられる。好ましくは、安全性や抽出効率が高いという理由から、エタノールや含水エタノールが適している。
【0016】
本発明の有効成分であるブドウの乳酸発酵物及び/又はその抽出物は、例えば以下のようにして得ることができる。
【0017】
まず、原料ブドウを粉砕し、ブドウ粉砕物を得る。好ましくは、粒径が100μm以下となるまで粉砕する。ブドウ粉砕物の粒径が100μm以下であれば、ザラツキ感が無くなり、食感の良いものとなり、更には、乳酸菌による発酵効率も向上する。原料ブドウとしては、ブドウの種子及び果皮を含むものを用いる。その場合、種子や果皮を含むブドウの果実そのものを用いてもよく、ブドウの果実から果肉や果汁を回収して残った種子や果皮を含む残渣を用いてもよい。
【0018】
原料ブドウの粉砕方法は、湿式粉砕が好ましい。湿式粉砕は、例えば、磨砕機、カッター等を用いて行うことができる。
【0019】
次に、得られたブドウ粉砕物に適当量の水を加え、加熱殺菌して培地を調製する。
【0020】
培地中のブドウ粉砕物の濃度は、固形分換算含有量で10〜40質量%が好ましく、25〜35質量%がより好ましい。ブドウ粉砕物の濃度が10質量%未満であると、乾燥コストがかかったり、嵩比重が小さくなったりして、製剤化に不都合が生じる傾向がある。また、ブドウ粉砕物の濃度が40質量%を超えると、粘度が上昇して攪拌し難くなり、乳酸発酵が不均一に行われる傾向があり、更には、乳酸菌の増殖に時間がかかって生産性が低下する傾向がある。
【0021】
加熱殺菌は、110〜125℃で、10〜30分間行うことが好ましく、115〜120℃で、10〜20分間行うことがより好ましい。上記条件で加熱殺菌を行うことにより、チロシナーゼ阻害活性やメラニン生成抑制活性を担う成分を破壊することなく、雑菌などの繁殖を抑制できる。
【0022】
次に、上記のように調製したブドウ由来組成物に、乳酸菌を添加して乳酸発酵を行う。乳酸菌としては、前述したように、ラクトバチルス・プランタルムとラクトバチルス・ブレビスとを少なくとも含む乳酸菌を用いる。乳酸菌の添加量は特に限定されないが、培地1リットルに対して、両者合計の菌体数が1×10〜1×1010個となるように添加することが好ましく、ラクトバチルス・プランタルムの菌体数が5×10〜5×10個、ラクトバチルス・ブレビスの菌体数が5×10〜5×10個となるように添加することがより好ましい。
【0023】
乳酸発酵は、温度27〜37℃、pH3〜7、培養時間24〜72時間の条件で行うことが好ましく、より好ましくは、温度30〜33℃、pH4.5〜6、培養時間40〜50時間の条件で行う。
【0024】
このようにして乳酸発酵して得られるブドウの乳酸発酵物は、乳酸発酵前の状態に比べてポリフェノール含量が増加し、かつ、ポリフェノール類の体内への吸収性が高められている。この理由としては、乳酸発酵により、ポリフェノール類の配糖体が切断されたり、有機酸が結合したものによると考えられる。また、この乳酸発酵物には、乳酸発酵物の固形分100mg中に、乳酸菌が1×10〜1×1010個含まれていることが好ましい。ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ブレビスは、同発酵物の固形分100mg中に、ラクトバチルス・プランタルムの菌体数が5×10〜5×10個、ラクトバチルス・ブレビスの菌体数が5×10〜5×10個含まれていることが好ましい。
【0025】
そして、上記乳酸発酵物を、60〜80℃で、5〜10分間加熱殺菌し、必要に応じて、ガラクトオリゴ糖、ショ糖などの糖類や、果汁などを加えることで、液状の乳酸発酵物が得られる。
【0026】
また、加熱殺菌後の上記乳酸発酵物を乾燥、粉末化することで、粉末状の乳酸発酵物が得られる。加熱殺菌後の乳酸発酵物の乾燥方法としては、例えば熱風乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥、真空乾燥などが挙げられるが、チロシナーゼ阻害活性やメラニン生成抑制活性を担う成分の破壊が少なく、優れた生理活性を維持し易いという理由から凍結乾燥が好ましい。凍結乾燥は、例えば、発酵物を−60〜−40℃で1〜3時間凍結し、圧力0.1mbr以下、時間24〜48時間、温度20〜30℃の条件で行うことが好ましい。
【0027】
また、上記乳酸発酵物から、抽出溶媒を用いて抽出することで、乳酸発酵物の抽出物が得られる。抽出溶媒としては、前述したように、特に限定は無い。水、メタノールやエタノール等のアルコール系溶媒等が挙げられる。好ましくは、安全性や抽出効率が高いという理由から、エタノールや含水エタノールが適している。抽出方法としては、上記乳酸発酵物を抽出溶媒に懸濁させ、20〜40℃で、2〜48時間振とうする方法等が挙げられる。抽出物は、必要なら固形物を濾過除去したうえで用いてもよく、更に、濃縮あるいは乾燥粉末化したものを用いてもよい。
【0028】
本発明の美白剤は、上記乳酸発酵物及び/又はその抽出物を含有してなるものであり、チロシナーゼ阻害活性やメラニン生成抑制活性の点において優れた効果を示し、これを摂取することにより、日焼けを予防及び/又は回復したり、シミ、ソバカス等色素沈着を抑えたりすることができる。投与形態は、特に制限はないが、経口摂取、あるいは皮膚塗布によることが好ましい。そして、医薬品、化粧料、食品等の各種分野で用いられ、その医薬品の有効成分、化粧料や食品の原料等として使用することができる。
【0029】
例えば、医薬品とする場合には、薬学的に許容される基材や担体と共に製剤化し、医薬組成物として提供することができる。医薬組成物の形態としては、丸剤、散剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、ゼリー剤、トローチ剤等の形態が例示できる。
【0030】
また、化粧料とする場合には、化粧料に許容される基材や担体と共に製剤化し、化粧料の原料として配合することができる。化粧料の形態としては、クリーム剤、ジェル、軟膏剤、化粧液剤、噴霧液剤、泡状製剤、パック、フェイスマスク等の形態が例示できる。
【0031】
また、食品とする場合には、一般の食品の他、特に、機能性表示食品、栄養補助食品、保健用食品等に配合して用いることができる。
【0032】
本発明の美白剤の有効摂取量は、経口的に摂取する場合、成人一日当り、上記有効成分の固形分換算で100mg〜3gが好ましい。また、皮膚に塗布する場合、成人一日当り、適用面積1cm当たり、上記有効成分の固形分換算で50mg〜250gが好ましい。
【実施例】
【0033】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0034】
(実施例1)
甲州種のブドウの種子及び果皮1kgに1Lの水を加え、微粒磨砕機を用いて湿式粉砕し、粒径100μm以下のブドウ粉砕物を得た。このブドウ粉砕物2kgに水1Lを加え、pHを6とし、120℃で20分間加熱殺菌した。この加熱殺菌処理物に、ラクトバチルス・プランタルムの前培養液5mL(菌体数5×10個)と、ラクトバチルス・ブレビスの前培養液5mL(菌体数5×10個)とを加え、温度を33±1℃に維持し、48時間発酵させた。
【0035】
発酵終了後、70℃で10分間加熱殺菌し、−40℃に凍結させた後、圧力0.1mbr以下、24時間、30℃の条件で凍結乾燥処理して、粉末状のブドウの乳酸発酵物を250g得た。このブドウの乳酸発酵物100mg中には、ラクトバチルス・プランタルムの死菌体が5×10個、ラクトバチルス・ブレビスの死菌体が5×10個含まれていた。また、総ポリフェノール含有量は、没食子酸相当量で23mgであり、DPPHラジカル消去活性は、Trolox相当量で242μmolであった。
【0036】
(比較例1)
乳酸菌として、ラクトバチルス・ブレビスを用いずに、ラクトバチルス・プランタルムを菌体数10×10個でブドウ粉砕物に加えて用いた以外は、実施例1と同様にして、ブドウの乳酸発酵物を得た。
【0037】
(比較例2)
乳酸菌として、ラクトバチルス・プランタルムを用いずに、ラクトバチルス・ブレビスを菌体数10×10個でブドウ粉砕物に加えて用いた以外は、実施例1と同様にして、ブドウの乳酸発酵物を得た。
【0038】
(比較例3)
乳酸菌として、ラクトバチルス・プランタルムとラクトバチルス・ブレビスに代えて、ラクトバチルス・カゼイとストレプトコッカス・ラクティスを、それぞれ菌体数5×10個でブドウ粉砕物に加えて用いた以外は、実施例1と同様にして、ブドウの乳酸発酵物を得た。
【0039】
(比較例4)
乳酸菌として、ラクトバチルス・プランタルムとラクトバチルス・ブレビスに代えて、ラクトバチルス・サーモフィルスとエンテロコッカス・フェカリスを、それぞれ菌体数5×10個でブドウ粉砕物に加えて用いた以外は、実施例1と同様にして、ブドウの乳酸発酵物を得た。
【0040】
<試験例1>(チロシナーゼ阻害活性)
実施例1、比較例1〜4のブドウの乳酸発酵物について、チロシナーゼ阻害活性を測定した。阻害活性は、ブドウの乳酸発酵物の代わりに水を添加したときのチロシナーゼ活性と比較することにより求めた。また、参考例として、乳酸発酵物の調製に用いたブドウ粉砕物の加熱殺菌処理物を、そのまま凍結乾燥した非発酵物についても、チロシナーゼ阻害活性を測定した。以下に被検試料をまとめて示す。また、チロシナーゼ阻害活性の測定方法を示す。
【0041】
[被検試料]
A:対照(水)
B:参考例(ブドウの種子及び果皮の非発酵物)
C:実施例1(Lactobacillus plantarum + Lactobacillus brevis)
D:比較例1(Lactobacillus plantarum)
E:比較例2(Lactobacillus brevis)
F:比較例3(Lactobacillus casei + Streptococcus lactis)
G:比較例4(Lactobacillus thermophilus + Enterococcus faecalis)
【0042】
[測定方法]
・試料の調製
発酵物または非発酵物100mgを80%メタノール10mLに懸濁し、3時間振盪しながら抽出した。遠心分離して得られた上清液からメタノールを除去し、再度10mLに調製して、試料とした。
【0043】
・分析方法
上記試料0.3mLを取り、これにクエン酸緩衝液(20mM、pH6.8)3mLを加え、さらにチロシナーゼ溶液(マッシュルーム由来チロシナーゼを400U/mLになるようにクエン酸緩衝液で調製)0.3mLを加えて37℃、10分間インキュベートした。その後、チロシン溶液(1.11μmol/mL)3mLを加えて37℃、20分間反応させた。490nmの吸光度を測定し、上記試料0.3mLの代わりに水0.3mLを用いた場合のチロシナーゼ活性を100としたときの相対活性を求めた。
【0044】
結果を図1に示す。
【0045】
図1に示されるように、非発酵物を用いた参考例では、チロシナーゼ活性は、対照の60%程度であった。ラクトバチルス・プランタルム、又はラクトバチルス・ブレビスを単独で用いて乳酸発酵した比較例1、2では、その乳酸発酵により阻害活性が向上し、ラクトバチルス・プランタルムとラクトバチルス・ブレビスを併用して用いて乳酸発酵した実施例1では、阻害活性が更により一層向上した。それに対して、乳酸菌として、ララクトバチルス・カゼイとストレプトコッカス・ラクティスを併用して用いて乳酸発酵した比較例3や、ラクトバチルス・サーモフィルスとエンテロコッカス・フェカリスを併用して用いて乳酸発酵した比較例4では、非発酵物を用いた参考例と同程度の阻害活性しか得られなかった。
【0046】
<試験例2>(メラニン生成抑制活性)
実施例1、比較例1〜2のブドウの乳酸発酵物について、B16メラノーマ細胞のメラニン生成を抑制する活性を試験した。抑制活性は、ブドウの乳酸発酵物の代わりに水を添加したときのメラニン生成量と比較することにより求めた。また、参考例として、乳酸発酵物の調製に用いたブドウ粉砕物の加熱殺菌処理物を、そのまま凍結乾燥した非発酵物についても、メラニン生成抑制活性を試験した。以下に被検試料をまとめて示す。また、メラニン生成抑制活性の試験方法を示す。
【0047】
[被検試料]
A:対照(水)
B:参考例(ブドウの種子及び果皮の非発酵物)
C:実施例1(Lactobacillus plantarum + Lactobacillus brevis)
D:比較例1(Lactobacillus plantarum)
E:比較例2(Lactobacillus brevis)
【0048】
[試験方法]
・試料の調製
発酵物および非発酵物100mgを蒸留水10mLに懸濁し、3時間振盪しながら抽出した。遠心分離して得られた上清液を凍結乾燥して、試料とした。
【0049】
・B16メラノーマ細胞の培養
B16メラノーマ細胞は、5%牛胎児血清(FBS)含有Doulbecco’s modified Eagle’s Medium(5%FBS含有DMEM)を用いて1.0×10cells/wellの濃度に調製し、6well plateに播種して、37度、5%CO気相下で培養を開始した。24時間培養後、上記試料を5%FBS含有DMEMに0.05%添加した培地を用いて培地交換した。72時間毎に同様の培地交換を行いながら、6日間培養した。なお、対照には、上記試料の代わりに超純水を用いた。
【0050】
・分析方法
培養後、0.25%トリプシン溶液で細胞を剥がし、その溶液を遠心分離して細胞ペレットを作成した。1.5mLのPBS(−)緩衝液にペレットを懸濁させ、0.3mLをタンパク質測定用、1.2mLをメラニン定量用とした。
【0051】
タンパク質測定は次のようにして行った。すなわち、0.3mLの細胞懸濁液を遠心分離して細胞をペレットにし、そのペレットをPBS(−)緩衝液で3回洗浄した。ペレットに0.5%Triton X−100含有PBS(−)緩衝液1mL添加し、20分間ボルテックス処理を行い、細胞タンパク溶解液を得た。得られた細胞タンパク溶解液について、常法に従い、Lowry法でタンパク量を定量した。
【0052】
メラニン定量は次のようにして行った。すなわち、1.2mLの細胞懸濁液を遠心分離して細胞をペレットにし、ペレットをPBS(−)緩衝液、5%トリクロロ酢酸溶液、エタノール/ジエチルエーテル(1:3)溶液でそれぞれ3回ずつ洗浄した後、ジエチルエーテルで1回洗浄した。ペレットを1時間、50℃に加熱して十分乾燥させた後、1M水酸化ナトリウム溶液150μLを添加し、100℃、10分間加熱してメラニンを可溶化した。マイクロプレートリーダーを用いてメラニンの405nmの吸光度を測定し、タンパク量当たりの吸光度でメラニン量を比較した。
【0053】
結果を図2に示す。
【0054】
図2に示されるように、非発酵物を用いた参考例では、メラニン生成活性は、対照の80%程度であった。ラクトバチルス・プランタルム、又はラクトバチルス・ブレビスを単独で用いて乳酸発酵した比較例1、2では、その乳酸発酵によりメラニン生成抑制活性が向上したが、ラクトバチルス・プランタルムとラクトバチルス・ブレビスを併用して用いて乳酸発酵した実施例1では、メラニン生成抑制活性が更により一層向上した。
【0055】
<製造例1>
下記表1の配合にて、常法に従い、実施例1で得られたブドウの乳酸発酵物を含有する錠剤を製造した。
【0056】
【表1】
【0057】
<製造例2>
下記表2の配合にて、常法に従い、実施例1で得られたブドウの乳酸発酵物を含有するドリンク剤を製造した。
【0058】
【表2】
【0059】
<製造例3>
下記表3の配合にて、常法に従い、実施例1で得られたブドウの乳酸発酵物を含有するクリーム剤を製造した。
【0060】
【表3】


図1
図2