【実施例】
【0043】
実施例1
ITRI−54M細胞の構築
LVX−MetLuc(Clonetech社製、 PT4422−5)プラスミドの取扱説明書に従って、LVX−MetLucプラスミドを制限酵素BstB IおよびBamH Iで処理して、CD54プロモーター配列(配列番号:1)をLVX−MetLucプラスミド中にクローニングさせることにより、CD54−promoter mLuc発現系(
図1)を作製した。この発現系において、CD54プロモーター−mLucの配列は配列番号:2の配列である。次いで、作製されたCD54−promoter−mLuc発現系を、Lenti−X(登録商標)Ready−To−Glow(登録商標)Secreted Luciferase Reporter System (Clonetech社製、631746)を用い、293FT細胞中にトランスフェクションして、CD54-mLucを有するLentivirusを生成した。次に、このウィルスをTHP−1細胞に感染させた。THP−1細胞はTHP−1培地で培養した。その成分は、10%FBS(GIBCO社製、10437)、4.5g/L グルコース(Sigma社製、G7021)、10mM HEPES(Sigma社製、H4034)、1×ペニシリンおよびストレプトマイシン (Biowest社製、L0022)、1mMピルビン酸ナトリウム(sodium pyruvate) (Biowest社製、L0642)、0.05mM 2−メルカプトエタノール(2−mercaptoethanol, 2−ME) (GIBCO社製、21985−023)を含んでなるRPMI培地(GIBCO社製、31800)であった。
【0044】
次いで、0.5〜1μg/mLのピューロマイシン(Invivogen社製、ant−pr−1)でTHP−1細胞のスクリーニングを行った。2週間スクリーニングをした後、細胞を含んだ培地100μL(濃度:細胞5個/mL)を96ウェルプレート(Corning社製、COSTAR、3599)に加え、細胞数が増加したら、24ウェルプレート(Corning社製、COSTAR、3516)、6ウェルプレート(Corning社製、COSTAR、3524)およびT25フラスコ(Corning社製、COSTAR、430639) を順次用いて細胞を増幅させた。そして、各細胞株を、既知の感作物質(sensitizer)である1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン(1−chloro−2,4−dinitrobenzene, DNCB)と、非感作物質(non−sensitizer) であるヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(hexadecyltrimethylammonium bromide, CTAB)とを用いて試験し、反応の最も良い細胞株を選んで、ITRI−54Mと命名し、2013年12月4日に中華民国食品工業発展研究所生物資源保存および研究センターに受託番号BCRC No.960475として寄託した。この細胞はまた、国際寄託機関であるドイツ微生物細胞培養収集機関(DSMZ)に国際寄託されている(寄託日:2014年11月12日、受託番号:DSM ACC3257)。
【0045】
実施例2
被験物質が皮膚感作物(または免疫調節物質)であるか否かの決定
本実験における被験物質が皮膚感作物であるか否かの決定の流れは
図2に示すとおりである。
図2と共に以下の詳細な工程の説明を参照されたい。
【0046】
1.被験物のITRI−54M細胞に対する毒性試験
ITRI−54M細胞はTHP−1培地で培養した。その成分は、10%ウシ胎児血清(GIBCO社製、10437)、4.5g/L グルコース(Sigma社製、G7021)、10mM HEPES(Sigma社製、H4034)、1×ペニシリンおよびストレプトマイシン (Biowest社製、L0022)、1mM ピルビン酸ナトリウム (Biowest社製、L0642)、0.05mM 2−メルカプトエタノール(GIBCO社製、21985−023)、ならびに0.5μg/mLピューロマイシンを含んでなるRPMI培地(GIBCO社製、31800)であった。
【0047】
表1に挙げた感作性があることが既知である参考化学物質サンプル、または表2に挙げた化粧品によく用いられるハーブ抽出物を、適した溶媒(DMSOまたは2−MEを含まないTHP−1培地)で溶解し、溶解後にそれをストック溶液(stock solution)とした。次いで、ストック溶液を6〜8回、3倍連続希釈して、異なる希釈倍率のワーキング溶液(working solution)を作った。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
次いで、細胞毒性試験を行った(工程101)。10μL/ウェルのワーキング溶液を96ウェルプレートに添加した。次に、ITRI−54M細胞を、2−MEおよびピューロマイシンを含まないTHP−1培地中に懸濁させてから、細胞5×10
4個/90μL/ウェルの密度で上記96ウェル細胞培養プレートに接種した。続いて、培養プレートをインキュベーター(NUAIR社製、nu−5510)内に置き1日培養した。なお、被験物がDMSO中に溶解している場合、最終的な被験物と細胞の接触時の培地中のDMSO濃度を0.2%に制御する必要がある点に注意すべきである。
【0051】
次いで、10μLの5mg/mL MTTの培地を培養プレート中に加え、CO
2インキュベーターに入れて2時間培養してから、100μLの10%SDSを培養プレートに加え、一晩静置した。そして、紫色の沈殿を溶解させ、連続波長マイクロプレートリーダーシステム(Molecular Devices社製、SPECTRAMAX 5)で波長560nmにおける細胞の吸光値を測定した。
【0052】
対照群の平均吸光値を100%の細胞生存率(%)とし、各種異なる濃度のサンプルを加えた実験群の細胞生存率(%)を算出した。細胞生存率の計算式は、(実験群吸光値/対照群吸光値)×100%である。さらに各濃度の被験物の細胞増殖阻害率を算出した。細胞増殖阻害率の計算式は1−細胞生存率である。
【0053】
次いで、各実験群の細胞増殖阻害率でxy散布図を作成し、ソフトウェアGrafitを用いてIC
50の式により各被験物の50%細胞増殖阻害のサンプル濃度(CC
50)を求めた(工程103)。
【0054】
薬品がMTTの色の判断に影響する場合は、Cell−Glo kitを用いて細胞毒性試験を行った。その工程は以下のとおりである。
【0055】
細胞液35μLを、ルミネッセンス用の96ウェルホワイトプレートに加えてから、その96ウェルホワイトプレートにCell−Glo kit(Promega社製、G7571) 35μLを加え、振とう器に置いて10分間振とうした。次いで、その96ウェルホワイトプレート中に基質を加えたら、直ちにマイクロプレートルミノメーター(Berthold社製、MPL4)で細胞が発したルミネッセンス強度(Rlu/s)を測定し、その回の実験の各濃度の被験物の細胞毒性基準値とした。
【0056】
細胞生存率の計算式は、(実験群ルミネッセンス値/対照群ルミネッセンス値)×100%である。さらに、各濃度の被験物の細胞増殖阻害率を算出した。細胞増殖阻害率の計算式は、(1−細胞生存率)である。
【0057】
各実験群の細胞増殖阻害率でxy散布図を作成し、ソフトウェアGrafitを用いてIC
50の式により各被験物の50%細胞増殖阻害濃度(CC
50)を求めた。
【0058】
後続の実験では、各被験物のCC
50±25%を、ITRI−54M細胞のmLucルシフェラーゼ活性の基準試験開始濃度として選んだ。
【0059】
1回目の実験で精確なCC
50を測定できなかった場合、実験結果を参考に、被験物濃度および希釈倍率を変えた。これにより最適な傾向線を得て、CC
50を求めた。
【0060】
測定して得られた各被験物の50%細胞増殖阻害の濃度は表3に示すとおりである。
【0061】
【表3】
【0062】
2.被験物のITRI−54M細胞のm−Luc活性に対する影響の試験
上述により得られた各被験物のCC
50に基づき、各被験物の試験開始濃度を選択し(約CC
50±25%濃度であるが、精確なCC
50を得ることができない場合は、被験物の最大溶解可能濃度または最終濃度4000μMで試験を行う)、この濃度で被験物のストック溶液を調製した。次いで、その被験物のストック溶液を1.4倍で2回連続希釈して、別の2つの濃度のワーキング溶液を作り、合わせて3つの濃度の溶液を得た(工程105)。
【0063】
10μL/ウェルのワーキング溶液を96ウェルプレートに加えた。次に、ITRI−54M細胞を2−MEおよびピューロマイシンを含まないTHP−1培地中に懸濁させてから、細胞5×10
4個/90μL/ウェルの密度で上記96ウェル細胞培養プレートに接種した。続いて、培養プレートをインキュベーター(NUAIR社製、nu−5510)内に置き1日培養した。50ng/mLのリポ多糖体(lipopolysaccharide, LPS)を陽性対照(positive control)とした。なお、被験物がDMSO中に溶解している場合、最終的な被験物と細胞の接触時の培地中のDMSO濃度を0.2%に制御する必要がある点に注意すべきである。
【0064】
次いで、上記培養プレートから細胞液を10μL取り出し、ルミネッセンス用の96ウェルホワイトプレートに加えた。そのホワイトプレートに、Luciferase Assay試薬(GeneCopoeia社製、SPGA−G100) 40μLを加えたら、直ちにマイクロプレートルミノメーター(Berthold社製、MPL4)で細胞のルミネッセンス強度(Rlu/s)を測定した。(工程107)。
【0065】
対照群のルミネッセンス強度を基準として、各サンプル実験群のCD54プロモーター活性を促進する誘導率(induction rate)を算出した。誘導率の計算式は、(実験群のルミネッセンス値/対照群のルミネッセンス値)である。ある被験物がmLuc発現を促進しているという結果が出た場合、その被験物は感作物質であると決定した(工程109(工程109Aおよび工程109Bを含む))。上記各被験物について測定されたCD54プロモーター活性を促進する誘導率の結果が表4に示されており、各被験物が感作物質であるかを決定した結果が表5に示されている。
【0066】
【表4】
【0067】
【表5】
【0068】
また、細胞液35μLを、ルミネッセンス用の96ウェルホワイトプレートに加えてから、その96ウェルホワイトプレートにCell−Glo kit(Promega社製G7571) 35μLを加え、振とう器に置いて10分間振とうした。次いで、その96ウェルホワイトプレート中に基質を加えたら、直ちにマイクロプレートルミノメーター(Berthold社製、MPL4)で細胞が発したルミネッセンス強度(Rlu/s)を測定し、その回の実験の各濃度の被験物の細胞毒性基準値とした。細胞生存率の計算式は、(実験群のルミネッセンス値/対照群のルミネッセンス値)×100%である。
【0069】
実施例3
被験物質が抗炎症物質(または免疫調節物質)であるか否かの決定
本実験における被験物が抗炎症物質であるか否かを決定する流れは
図3に示すとおりである。
図3と共に以下の詳細な工程の説明を参照されたい。
【0070】
1.被験物のITRI−54M細胞に対する毒性試験
ITRI−54M細胞はTHP−1培地で培養した。その成分は、10%ウシ胎児血清(GIBCO社製、10437)、4.5g/Lグルコース(Sigma社製、G7021)、10mM HEPES(Sigma社製、H4034)、1×ペニシリンおよびストレプトマイシン (Biowest社製、L0022)、1mM ピルビン酸ナトリウム (Biowest社製、L0642)、0.05mM 2−メルカプトエタノール(GIBCO社製、21985−023)、ならびに0.5μg/mLピューロマイシンを含んでなるRPMI培地(GIBCO社製、31800)であった。
【0071】
表6に挙げた抗炎症能力を持つことが既知である被験物を、適した溶媒(DMSOまたは2−MEを含まないTHP−1培地)で溶解し、溶解後にそれをストック溶液(stock solution)とした。次いで、ストック溶液を6〜8回、3倍連続希釈して、異なる希釈倍率のワーキング溶液(working solution)を作った。
【0072】
【表6】
【0073】
次いで、細胞毒性試験を行った(工程201)。10μL/ウェルのワーキング溶液を96ウェルプレートに添加した。次に、ITRI−54M細胞を、2−MEおよびピューロマイシンを含まないTHP−1培地中に懸濁させてから、細胞5×10
4個/90μL/ウェルの密度で上記96ウェル細胞培養プレートに接種した。続いて、培養プレートをインキュベーター(NUAIR社製、nu−5510)内に置き1日培養した。なお、被験物がDMSO中に溶解している場合、最終的な被験物と細胞の接触時の培地中のDMSO濃度を0.2%に制御する必要がある点に注意すべきである。
【0074】
次いで、5mg/mL MTT 10μLの培地を培養プレート中に加え、CO
2インキュベーターに入れて2時間培養してから、10%SDS 100μLを培養プレートに加え、一晩静置した。そして、紫色の沈殿を溶解させ、連続波長マイクロプレートリーダーシステム(Molecular Devices社製、SPECTRAMAX 5)で波長560nmにおける細胞の吸光値を測定した。
【0075】
対照群の平均吸光値を100%の細胞生存率(%)とし、各種異なる濃度のサンプルを加えた実験群の細胞生存率(%)を算出した。細胞生存率の計算式は、(実験群の吸光値/対照群の吸光値)×100%である。さらに各濃度の被験物の細胞増殖阻害率を算出した。細胞増殖阻害率の計算式は、1−細胞生存率である。
【0076】
次いで、各実験群の細胞増殖阻害率でxy散布図を作成し、ソフトウェアGrafitを用いてIC
50の式により各被験物の50%細胞増殖阻害のサンプル濃度(CC
50)を求めた(工程203)。
【0077】
薬品がMTTの色の判断に影響する場合は、Cell−Glo kitを用いて細胞毒性試験を行った。その工程は以下のとおりである。
【0078】
細胞液35μLを、ルミネッセンス用の96ウェルホワイトプレートに加えてから、その96ウェルホワイトプレートにCell−Glo kit(Promega社製、G7571) 35μLを加え、振とう器に置いて10分間振とうした。次いで、その96ウェルホワイトプレート中に基質を加えたら、直ちにマイクロプレートルミノメーター(Berthold社製、MPL4)で細胞が発したルミネッセンス強度(Rlu/s)を測定し、その回の実験の各濃度の被験物の細胞毒性基準値とした。
【0079】
細胞生存率の計算式は、(実験群のルミネセンス値/対照群のルミネッセンス値)×100%とした。さらに、各濃度の被験物の細胞増殖阻害率を算出した。細胞増殖阻害率の計算式は、(1−細胞生存率)である。
【0080】
各実験群の細胞増殖阻害率でxy散布図を作成し、ソフトウェアGrafitを用いてIC
50の式により各被験物の50%細胞増殖阻害濃度(CC
50)を求めた。
【0081】
後続の実験では、各被験物のCC
50±25%を、ITRI−54M細胞のmLucルシフェラーゼ活性の基準試験開始濃度として選んだ。
【0082】
1回目の実験で精確なCC
50を測定できなかった場合、実験結果を参考に、被験物濃度および希釈倍率を変えた。これにより最適な傾向線を得てCC
50を求めた。
【0083】
測定して得られた各被験物の50%細胞増殖阻害の濃度は表7に示すとおりである。
【0084】
【表7】
【0085】
2.被験物の、リポ多糖体(LPS)により誘発されたITRI−54M細胞におけるm−Luc活性に対する影響の試験
上述により得られた各被験物のCC
50に基づき、各被験物の試験開始濃度を選択し(約CC
50±25%濃度であるが、精確なCC
50を得ることができない場合は、被験物の最大溶解可能濃度または最終濃度4000μMで試験を行う)、この濃度で被験物のストック溶液を調製した。次いで、その被験物のストック溶液を2倍で3回連続希釈して、別の3つの濃度のワーキング溶液を作り、合わせて4つの濃度の溶液を得た(工程205)。
【0086】
10μL/ウェルのワーキング溶液および10μLの100ng/mLのリポ多糖体(Sigma社製、L2880)を96ウェルプレートに加えた。次に、ITRI−54M細胞を2−MEおよびピューロマイシンを含まないTHP−1培地中に懸濁させてから、細胞5×10
4個/80μL/ウェルの密度で上記96ウェル細胞培養プレートに接種した。続いて、培養プレートをインキュベーター(NUAIR社製、nu−5510)内に置き1日培養した。なお、被験物がDMSO中に溶解している場合、最終的な被験物と細胞の接触時の培地中のDMSO濃度を0.2%に制御する必要がある点に注意すべきである。
【0087】
次いで、上記培養プレートから細胞液を10μL取り出し、ルミネッセンス用の96ウェルホワイトプレートに加えた。そのホワイトプレートに、Luciferase Assay試薬(GeneCopoeia社製、SPGA−G100) 40μLを加えたら、直ちにマイクロプレートルミノメーター(Berthold社製、MPL4)で細胞のルミネッセンス強度(Rlu/s)を測定した。(工程207)。
【0088】
対照群およびリポ多糖体誘発群のルシフェラーゼ活性を基準として、各サンプル被験物がリポ多糖体により誘発されたCD54プロモーター活性を阻害する阻害率(inhibition rate)を算出した。阻害率の計算式は、(リポ多糖体誘発群のルミネッセンス値−被験物との共処理後のリポ多糖体誘発群のルミネッセンス値)/(リポ多糖体誘発群のルミネセンス値−未処理群のルミネッセンス値)である。阻害率が正の値であれば、その被験物がリポ多糖体により誘発された免疫反応を抑制する能力を有するということである。(工程209(工程209Aおよび工程209Bを含む)。
【0089】
そして、各実験群のCD54プロモーター活性の阻害率でxy散布図を作成し、ソフトウェアGrafitを用い、IC
50の式により、各被験物の、50%の、リポ多糖体により誘発されたmLuc活性を阻害する濃度(IC
50)を求めた。結果は表7に示してある。