特許第6133837号(P6133837)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6133837CD54発現レポーターシステムを含む免疫細胞の応用および新規なクローン細胞
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133837
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】CD54発現レポーターシステムを含む免疫細胞の応用および新規なクローン細胞
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20170515BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20170515BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20170515BHJP
【FI】
   C12Q1/02ZNA
   C12N5/10
   !C12N15/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-257422(P2014-257422)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2015-119703(P2015-119703A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2014年12月19日
(31)【優先権主張番号】102147888
(32)【優先日】2013年12月24日
(33)【優先権主張国】TW
【微生物の受託番号】DSMZ  DSM ACC3257
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ライ フエイ‐ミン
(72)【発明者】
【氏名】クオ ゾン‐ケン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ウェン シェン
(72)【発明者】
【氏名】ツェン シャン‐ウェン
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−527637(JP,A)
【文献】 特表2010−538628(JP,A)
【文献】 特表2003−523201(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/002507(WO,A1)
【文献】 特開2006−311858(JP,A)
【文献】 特表2010−504744(JP,A)
【文献】 Clontech, 2010, pLVX-MetLuc Vector Information, PT4422-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)被験物および免疫細胞を準備する工程であって、
前記免疫細胞が、
CD54遺伝子のプロモーターと、
前記CD54遺伝子のプロモーターに接続して前記CD54遺伝子のプロモーターの発現をレポートするレポーター遺伝子と、
を含むCD54発現レポーターシステムを含んでなる、工程、
(b)前記被験物で前記免疫細胞を処理する工程、ならびに
(c)前記被験物で処理した前記免疫細胞により生成された前記レポーター遺伝子生成物の発現を測定して、前記被験物が皮膚感作物質であるか否かを決定する工程、
を含み、
前記CD54遺伝子のプロモーターの配列が配列番号:1の配列を含
前記免疫細胞のソースが、THP−1細胞、U937細胞またはMUTZ−3細胞を含む
皮膚感作物質を確認する方法。
【請求項2】
前記被験物で処理した前記免疫細胞により生成された前記レポーター遺伝子生成物の発現と、前記被験物で処理していない前記免疫細胞の前記レポーター遺伝子生成物の発現とを比較して、前記被験物が皮膚感作物質であるか否かを決定する、請求項に記載の皮膚感作物質を確認する方法。
【請求項3】
前記被験物で処理した前記免疫細胞により生成された前記レポーター遺伝子生成物の発現が、前記被験物で処理していない前記免疫細胞の前記レポーター遺伝子生成物の発現よりも高い場合に、前記被験物が皮膚感作物質であると決定する、請求項に記載の皮膚感作物質を確認する方法。
【請求項4】
前記レポーター遺伝子が、メトリディアルシフェラーゼ遺伝子、ホタルルシフェラーゼ遺伝子、緑色蛍光タンパク質遺伝子またはβ−グルクロニダーゼ遺伝子を含む、請求項に記載の皮膚感作物質を確認する方法。
【請求項5】
前記CD54発現レポーターシステムの配列が配列番号:2である、請求項に記載の皮膚感作物質を確認する方法。
【請求項6】
前記免疫細胞が、2013年12月4日に中華民国食品工業発展研究所生物資源保存および研究センターに受託番号BCRC No.960475として寄託され、2014年11月12日にドイツ微生物細胞培養収集機関に受託番号DSM ACC3257として国際寄託されたTHP−1細胞である、請求項に記載の皮膚感作物質を確認する方法。
【請求項7】
前記被験物が、化粧品、薬品、化学物質または天然物質の抽出物を含む、請求項に記載の皮膚感作物質を確認する方法。
【請求項8】
2013年12月4日に中華民国食品工業発展研究所生物資源保存および研究センターに受託番号BCRC No.960475として寄託され、2014年11月12日にドイツ微生物細胞培養収集機関に受託番号DSM ACC3257として国際寄託された新規なクローン細胞(cloned cell)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCD54発現レポーターシステムを含む免疫細胞の応用に関し、特にこのCD54発現レポーターシステムを含む免疫細胞を、免疫調節物質の確認に用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CD54(分化抗原群54(Cluster of Differentiation 54)(細胞間接着分子−1 (Intercellular Adhesion Molecule 1, ICAM−1)としても知られている)は、ヒトにおいてICAM1遺伝子によりコードされるタンパク質である。この遺伝子は、通常内皮細胞(endothelial cells)および免疫システムの細胞上に発現する表面糖タンパク質(glycoprotein)をコードする。CD54はCD11a/CD18或いはCD11b/CD18のインテグリン(integrins)に結合し、また、ライノウイルス(rhinovirus)にレセプター(receptor)として利用されもする。現在、CD54は、免疫反応、特にアレルギー反応のバイオマーカーであることが既に分かっている。
【0003】
免疫反応は、例えば炎症反応、皮膚アレルギーなどの多くの疾病において重要な役割を果たすものである。よって、免疫システムを調節するための薬品が数多く開発されている。しかし、免疫システムが関与する生体分子および細胞の種類は極めて多いことから、動物生体内実験により評価を行う必要があり、これには多大な時間とコストがかかる。現在、免疫反応調節の試験を行うことのできる数多くの細胞実験モデルが存在するものの、分析の際にELISAまたはフローサイトメーターで実験を行わなくてはならないことが多く、かつ通常の生体実験に比べて複雑である。
【0004】
感作性は、化粧品、各種化学品、農産物、環境毒、工業製品等の発売前の重要な安全性評価項目である。動物実験の倫理的問題およびその減少している傾向を受けて、欧米や日本の各研究機関および関連企業は動物実験に代わる代替的な実験方法の開発に多大なリソースを投じている。しかし、動物実験に代わる代替方式で国際的に公認となっているものは未だ出現していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、ハイスループットの試験での使用に適した、動物実験を要さない免疫調節物質または感作物質を確認する新規な方法を開発することが、目下求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(a)被験物および免疫細胞を準備する工程であって、免疫細胞が、CD54遺伝子のプロモーターと、CD54遺伝子のプロモーターに接続してCD54遺伝子のプロモーターの発現をレポートするレポーター遺伝子と、を含むCD54発現レポーターシステムを含んでなる、工程、(b)被験物で免疫細胞を処理する工程、ならびに(c)被験物で処理した免疫細胞により生成されたレポーター遺伝子生成物の発現を測定して、被験物が免疫調節作用を有するか否かを決定する工程、を含む免疫調節物質を確認する方法を提供する。
【0007】
本発明はまた、(a)被験物および免疫細胞を準備する工程であって、免疫細胞が、CD54遺伝子のプロモーターと、CD54遺伝子のプロモーターに接続してCD54遺伝子のプロモーターの発現をレポートするレポーター遺伝子と、を含むCD54発現レポーターシステムを含んでなる、工程、(b)被験物で免疫細胞を処理する工程、ならびに(c)被験物で処理した免疫細胞により生成されたレポーター遺伝子生成物の発現を測定して、被験物が皮膚感作物質であるか否かを決定する工程、
を含む皮膚感作物質を確認する方法を提供する。
【0008】
本発明はさらに、2013年12月4日に中華民国食品工業発展研究所生物資源保存および研究センター(Bioresource Collection and Research Center:BCRC)に受託番号BCRC No.960475として寄託した新規なクローン細胞(cloned cell)を提供する。この細胞はまた、2014年11月12日に、国際寄託機関であるDSMZ(名称:ドイツ微生物細胞培養収集機関(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)、あて名:Inhoffenstr. 7B D-38124 Braunschweig GERMANY)に受託番号:DSM ACC3257として国際寄託されている。
【0009】
以下に、本発明の基本的な諸特徴および種々の態様を列挙する。
〔1〕(a)被験物および免疫細胞を準備する工程であって、
前記免疫細胞が、
CD54遺伝子のプロモーターと、
前記CD54遺伝子のプロモーターに接続して前記CD54遺伝子のプロモーターの発現をレポートするレポーター遺伝子と、
を含むCD54発現レポーターシステムを含んでなる、工程、
(b)前記被験物で前記免疫細胞を処理する工程、ならびに
(c)前記被験物で処理した前記免疫細胞により生成された前記レポーター遺伝子生成物の発現を測定して、前記被験物が免疫調節作用を有するか否かを決定する工程、
を含む、免疫調節物質を確認する方法。
〔2〕工程(c)において、前記被験物で処理した前記免疫細胞により生成された前記レポーター遺伝子生成物の発現と、前記被験物で処理していない前記免疫細胞の前記レポーター遺伝子生成物の発現とを比較して、前記被験物が免疫調節作用を有するか否かを決定する、〔1〕の免疫調節物質を確認する方法。
〔3〕前記被験物で処理した前記免疫細胞により生成された前記レポーター遺伝子生成物の発現が、前記被験物で処理していない前記免疫細胞の前記レポーター遺伝子生成物の発現よりも高い場合に、前記被験物が免疫調節作用を有し、免疫調節物質であると決定する、〔1〕の免疫調節物質を確認する方法。
〔4〕工程(b)が、免疫誘発物質を添加して前記細胞に免疫反応を生じさせる工程をさらに含む、〔1〕の免疫調節物質を確認する方法。
〔5〕工程(c)において、前記被験物および前記免疫誘発物質で処理した前記免疫細胞が生成する前記レポーター遺伝子生成物の発現と、前記免疫誘発物質のみで処理した前記免疫細胞の前記レポーター遺伝子生成物の発現とを比較して、前記被験物が免疫調節作用を有するか否かを決定する、〔4〕の免疫調節物質を確認する方法。
〔6〕前記被験物および前記免疫誘発物質で処理した前記免疫細胞により生成された前記レポーター遺伝子生成物の発現が、前記免疫誘発物質のみで処理した前記免疫細胞の前記レポーター遺伝子生成物の発現よりも低い場合に、前記被験物が免疫抑制作用を有し、免疫抑制物質であると決定する、〔5〕の免疫調節物質を確認する方法。
〔7〕前記免疫誘発物質が、リポ多糖体(lipopolysaccharide, LPS)、ホルボールミリスタートアセタート(phorbol myristate acetate, PMA)、またはコンカナバリンA (concanavalin A, Con A)を含む、〔4〕の免疫調節物質を確認する方法。
〔8〕工程(c)において、前記被験物が免疫調節作用を有するか否かの決定は、前記被験物が抗炎症作用を有するか否かを決定することにより前記被験物が抗炎症物質であるか否かを決定することを含む、〔7〕の免疫調節物質を確認する方法。
〔9〕前記免疫細胞のソースが、THP−1細胞、U937細胞またはMUTZ−3細胞を含む、〔1〕の免疫調節物質を確認する方法。
〔10〕前記CD54遺伝子のプロモーターの配列が配列番号:1の配列を含む、〔1〕の免疫調節物質を確認する方法。
〔11〕前記レポーター遺伝子が、メトリディアルシフェラーゼ(Metridia luciferase)遺伝子、ホタルルシフェラーゼ(firefly luciferase)遺伝子、緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein, GFP)遺伝子またはβ−グルクロニダーゼ(β−glucuronidase)遺伝子を含む、〔1〕の免疫調節物質を確認する方法。
〔12〕前記CD54発現レポーターシステムの配列が配列番号:2である、〔1〕の免疫調節物質を確認する方法。
〔13〕前記免疫細胞が、2013年12月4日に中華民国食品工業発展研究所生物資源保存および研究センターに受託番号BCRC No.960475として寄託され、2014年11月12日にドイツ微生物細胞培養収集機関に受託番号DSM ACC3257として国際寄託されたTHP−1細胞である、〔12〕の免疫調節物質を確認する方法。
〔14〕前記被験物が、化粧品、薬品、化学物質または天然物質の抽出物を含む、〔1〕の免疫調節物質を確認する方法。
〔15〕(a)被験物および免疫細胞を準備する工程であって、
前記免疫細胞が、
CD54遺伝子のプロモーターと、
前記CD54遺伝子のプロモーターに接続して前記CD54遺伝子のプロモーターの発現をレポートするレポーター遺伝子と、
を含むCD54発現レポーターシステムを含んでなる、工程、
(b)前記被験物で前記免疫細胞を処理する工程、ならびに
(c)前記被験物で処理した前記免疫細胞により生成された前記レポーター遺伝子生成物の発現を測定して、前記被験物が皮膚感作物質であるか否かを決定する工程、
を含む、皮膚感作物質を確認する方法。
〔16〕前記被験物で処理した前記免疫細胞により生成された前記レポーター遺伝子生成物の発現と、前記被験物で処理していない前記免疫細胞の前記レポーター遺伝子生成物の発現とを比較して、前記被験物が皮膚感作物質であるか否かを決定する、〔15〕の皮膚感作物質を確認する方法。
〔17〕前記被験物で処理した前記免疫細胞により生成された前記レポーター遺伝子生成物の発現が、前記被験物で処理していない前記免疫細胞の前記レポーター遺伝子生成物の発現よりも高い場合に、前記被験物が皮膚感作物質であると決定する、〔16〕の皮膚感作物質を確認する方法。
〔18〕前記免疫細胞のソースが、THP−1細胞、U937細胞またはMUTZ−3細胞を含む、〔15〕の皮膚感作物質を確認する方法。
〔19〕前記CD54遺伝子のプロモーターの配列が配列番号:1の配列を含む、〔15〕の皮膚感作物質を確認する方法。
〔20〕前記レポーター遺伝子が、メトリディアルシフェラーゼ遺伝子、ホタルルシフェラーゼ遺伝子、緑色蛍光タンパク質遺伝子またはβ−グルクロニダーゼ遺伝子を含む、〔15〕の皮膚感作物質を確認する方法。
〔21〕前記CD54発現レポーターシステムの配列が配列番号:2である、〔15〕の皮膚感作物質を確認する方法。
〔22〕前記免疫細胞が、2013年12月4日に中華民国食品工業発展研究所生物資源保存および研究センターに受託番号BCRC No.960475として寄託され、2014年11月12日にドイツ微生物細胞培養収集機関に受託番号DSM ACC3257として国際寄託されたTHP−1細胞である、〔21〕の皮膚感作物質を確認する方法。
〔23〕前記被験物が、化粧品、薬品、化学物質または天然物質の抽出物を含む、〔15〕の皮膚感作物質を確認する方法。
〔24〕2013年12月4日に中華民国食品工業発展研究所生物資源保存および研究センターに受託番号BCRC No.960475として寄託され、2014年11月12日にドイツ微生物細胞培養収集機関に受託番号DSM ACC3257として国際寄託された新規なクローン細胞(cloned cell)。
【発明の効果】
【0010】
よって、本発明は、ハイスループットの試験での使用に適した、動物実験を必要としない免疫調節物質または皮膚感作物質を確認する新規な方法を提供し、動物実験に代わる方法を創出した。当該方法は、動物実験の倫理に関する問題およびその減少する傾向に合致している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の1実施形態によるCD54−プロモーターmLuc発現系を示している。
図2】本発明の1実施形態による被験物質が皮膚感作物質であるか否かを決定する流れを示している。
図3】本発明の1実施形態による被験物質が抗炎症物質であるか否かを決定する流れを示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の1実施態様において、本発明は免疫調節物質を確認する方法を提供する。本発明に係る免疫調節物質を確認する方法は、下記の工程を含み得るが、限定はされない。
【0013】
先ず、被験物と、CD54発現レポーターシステムを含む免疫細胞と、を準備する。
【0014】
上記被験物の例としては、例えば化粧品、薬品、化学物質、天然物質の抽出物等が挙げられるが、これらに限定されることはない。上記免疫細胞のソースの例としては、THP−1細胞、U937細胞、MUTZ−3細胞等が挙げられるが、これらに限定されることはない。1実施形態において、上記免疫細胞のソースはTHP−1細胞である。
【0015】
上記免疫細胞のCD54発現レポーターシステムは、限定はされないが、CD54遺伝子のプロモーター(CD54 promoter)とレポーター遺伝子(reporter gene)とを含んでいてよく、このうち上記レポーター遺伝子は上記CD54遺伝子のプロモーターに接続しており、CD54遺伝子のプロモーターの発現をレポートする。
【0016】
1実施形態において、上記CD54遺伝子のプロモーターの配列は、配列番号:1の配列を含み得る。別の実施形態において、上記CD54遺伝子のプロモーターの配列は配列番号:1の配列であってよい。
【0017】
さらに、上記レポーター遺伝子の例としては、メトリディアルシフェラーゼ(Metridia luciferase)遺伝子、ホタルルシフェラーゼ(firefly luciferase)遺伝子、緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein, GFP)遺伝子、β−グルクロニダーゼ(β−glucuronidase)遺伝子等が挙げられるが、これらに限定はされない。1実施形態において、上記レポーター遺伝子はメトリディアルシフェラーゼ遺伝子である。メトリディアルシフェラーゼ遺伝子生成物は細胞によって直接培養液に分泌されるため、その発現(例えば活性)を測定する際に、培地に対し直接ルシフェラーゼアッセイを行うことができ、細胞を破壊する必要がなく、分析時間を短縮できるという利点がある。
【0018】
1実施形態において、上記CD54遺伝子のプロモーターの配列は配列番号:1の配列であり、上記免疫細胞のソースはTHP−1細胞である。別の実施形態では、上記CD54遺伝子のプロモーターの配列は配列番号:1の配列であり、上記レポーター遺伝子はメトリディアルシフェラーゼ遺伝子である。また別の実施形態では、上記CD54遺伝子のプロモーターの配列は配列番号:1の配列であり、上記免疫細胞のソースはTHP−1細胞であり、かつ上記レポーター遺伝子はメトリディアルシフェラーゼ遺伝子である。
【0019】
本発明に係る免疫調節物質を確認する方法の1実施形態において、CD54遺伝子のプロモーターとレポーター遺伝子とを含む前記CD54発現レポーターシステムの配列は、配列番号:2の配列を含み得る。特定の実施形態では、前記CD54発現レポーターシステムの配列は配列番号:2の配列であってよく、つまりCD54発現レポーターシステムは、CD54遺伝子のプロモーター−メトリディアルシフェラーゼ遺伝子(CD54 promoter− Metridia Luc)の形式である。この特定の実施形態で用いるCD54発現レポーターシステムを含む免疫細胞は、配列番号:2の配列を有するウィルスベクターをTHP−1細胞に感染させることによって得られる細胞であってよい。この細胞は、ITRI−54Mと命名し、2013年12月4日に財団法人食品工業発展研究所に受託番号BCRC No. 960475として寄託した細胞(2014年11月12日にドイツ微生物細胞培養収集機関(DSMZ)に受託番号DSM ACC3257として国際寄託した細胞)であり得る。
【0020】
次いで、上記被験物で上記CD54発現レポーターシステムを含む免疫細胞を処理する。1実施形態において、処理時間は約1〜2日であるが、これに限定はされない。また、1実施形態において、上記被験物で上記CD54発現レポーターシステムを含む免疫細胞を処理する前に、先ず被験物のこの免疫細胞に対する細胞毒性分析を行って、この被験物のこの細胞に対する半数阻害濃度を測定し、これにより処理濃度を得ることができる。
【0021】
次いで、上記被験物で上記CD54発現レポーターシステムを含む免疫細胞を処理した後に、上記被験物で処理した上記免疫細胞により生成されたレポーター遺伝子生成物の発現を測定して、上記被験物が免疫調節作用を有するか否かを決定する。
【0022】
本発明に係る免疫調節物質を確認する方法の1実施形態において、上記被験物で処理した免疫細胞により生成されたレポーター遺伝子生成物の発現を測定して上記被験物が免疫調節作用を有するか否かを決定する工程では、被験物で処理した免疫細胞により生成されたレポーター遺伝子生成物の発現と、被験物で処理していない上記免疫細胞のレポーター遺伝子生成物の発現とを比較して、被験物が免疫調節作用を有するか否かを決定する。被験物で処理した免疫細胞により生成されたレポーター遺伝子生成物の発現が、被験物で処理していない免疫細胞のレポーター遺伝子生成物の発現よりも高い場合、その被験物は免疫調節作用を有し、免疫調節物質であると決定する。
【0023】
本発明に係る免疫調節物質を確認する方法の別の1実施形態において、被験物でCD54発現レポーターシステムを含む免疫細胞を処理する工程は、免疫誘発物質を添加して免疫細胞に免疫反応を生じさせる工程をさらに含む。この実施形態において、被験物で処理した免疫細胞により生成されたレポーター遺伝子生成物の発現を測定して上記被験物が免疫調節作用を有するか否かを決定する工程では、被験物および免疫誘発物質で処理した免疫細胞により生成されたレポーター遺伝子生成物の発現と、免疫誘発物質のみで処理した免疫細胞のレポーター遺伝子生成物の発現とを比較して、被験物が免疫調節作用を有するか否かを決定する。被験物および免疫誘発物質で処理した免疫細胞により生成されたレポーター遺伝子生成物の発現が、免疫誘発物質のみで処理した免疫細胞のレポーター遺伝子生成物の発現よりも低い場合、その被験物は免疫抑制作用を有し、免疫抑制物質であると決定する。
【0024】
上記免疫反応誘発物質としては、限定はされないが、例えばリポ多糖体(lipopolysaccharide, LPS)、ホルボールミリスタートアセタート(phorbol myristate acetate, PMA)、コンカナバリンA (concanavalin A, Con A)等のような、免疫反応を引き起こし得るあらゆる物質が挙げられる。
【0025】
1実施形態において、本発明に係る免疫調節物質を確認する方法で使用される免疫反応誘発物質は、リポ多糖体、ホルボールミリスタートアセタートまたはコンカナバリンAであってよく、それらは炎症起因物質である。
【0026】
上記実施形態では、被験物で処理した免疫細胞により生成されたレポーター遺伝子生成物の発現を測定して上記被験物が免疫調節作用を有するか否かを決定する工程において、被験物が免疫調節作用を有するか否かの決定は、被験物が抗炎症作用を有するか否かを決定することによりその被験物が抗炎症物質であるか否かを決定することを含み得る。
【0027】
上記免疫細胞により生成されたレポーター遺伝子生成物の発現を測定する方式は、レポーター遺伝子生成物の性質を基に決定する(例えばその活性を測定することができる)。それぞれ異なるレポーター遺伝子生成物の発現の測定方式は、当業者には良く知られているものである。例えば、メトリディアルシフェラーゼ遺伝子生成物は、細胞によって直接培養液に分泌されるため、細胞を培養している培地に直接ルシフェラーゼアッセイを行ってメトリディアルシフェラーゼ遺伝子生成物の発現を測定することができる。
【0028】
本発明の別の実施態様において、本発明はさらに皮膚感作物質を確認する方法を提供する。本発明に係る皮膚感作物質を確認する方法は、下記の工程を含んでいてよいが、これらに限定はされない。
【0029】
被験物と、CD54発現レポーターシステムを含む免疫細胞とを準備する工程。
【0030】
被験物は任意の物質であってよく、特に限定はない。上記の被験物の例としては、例えば化粧品、薬品、化学物質、天然物質の抽出物等が挙げられるが、これらに限定されることはない。上記免疫細胞のソースの例としては、THP−1細胞、U937細胞、MUTZ−3細胞等が挙げられるが、これらに限定されることはない。1実施形態において、上記免疫細胞のソースはTHP−1細胞である。
【0031】
また、上記免疫細胞に含まれるCD54発現レポーターシステムは、限定はされないが、CD54遺伝子のプロモーターとレポーター遺伝子とを含んでいてよく、このうち上記レポーター遺伝子は上記CD54遺伝子のプロモーターに接続しており、CD54遺伝子のプロモーターの発現をレポートする。
【0032】
1実施形態において、上記CD54遺伝子のプロモーターの配列は、配列番号:1の配列を含み得る。別の実施形態において、上記CD54遺伝子のプロモーターの配列は配列番号:1の配列であってよい。
【0033】
上述した本発明に係る免疫調節物質を確認する方法で用いたレポーター遺伝子に類似して、本発明に係る皮膚感作物質を確認する方法におけるレポーター遺伝子の例としては、メトリディアルシフェラーゼ遺伝子、ホタルルシフェラーゼ遺伝子、緑色蛍光タンパク質遺伝子、β−グルクロニダーゼ遺伝子等が挙げられるが、これらに限定はされない。1実施形態において、上記レポーター遺伝子はメトリディアルシフェラーゼ遺伝子である。メトリディアルシフェラーゼ遺伝子生成物は、細胞によって直接培養液に分泌されるため、その発現(例えば活性)を測定する際に、培地に直接ルシフェラーゼアッセイを行うことができ、細胞を破壊する必要がなく、分析時間を短縮できるという利点がある。
【0034】
1実施形態において、上記CD54遺伝子のプロモーターの配列は配列番号:1の配列であり、上記免疫細胞のソースはTHP−1細胞である。別の実施形態では、上記CD54遺伝子のプロモーターの配列は配列番号:1の配列であり、上記レポーター遺伝子はメトリディアルシフェラーゼ遺伝子である。また別の実施形態では、上記CD54遺伝子のプロモーターの配列は配列番号:1の配列であり、上記免疫細胞のソースはTHP−1細胞であり、かつ上記レポーター遺伝子はメトリディアルシフェラーゼ遺伝子である。
【0035】
本発明に係る皮膚感作物質を確認する方法の1実施形態において、CD54遺伝子のプロモーターとレポーター遺伝子とを含む前記CD54発現レポーターシステムの配列は、配列番号:2の配列を含み得る。特定の実施形態では、前記CD54発現レポーターシステムの配列は配列番号:2の配列であってよい、つまりCD54発現レポーターシステムは、CD54遺伝子のプロモーター−メトリディアルシフェラーゼ遺伝子(CD54 promoter− Metridia Luc)の形式である。この特定の実施形態において用いるCD54発現レポーターシステムを含む免疫細胞は、配列番号:2の配列を有するウィルスベクターをTHP−1細胞に感染させることによって得られる細胞であってよい。この細胞は、ITRI−54Mと命名し、2013年12月4日に財団法人食品工業発展研究所に受託番号BCRC No. 960475として寄託した細胞(2014年11月12日にドイツ微生物細胞培養収集機関(DSMZ)に受託番号DSM ACC3257として国際寄託した細胞)であり得る。
【0036】
次いで、上記被験物で上記CD54発現レポーターシステムを含む免疫細胞を処理する。1実施形態において、処理時間は約1〜2日であるが、これに限定はされない。
【0037】
また、1実施形態において、上記被験物で上記CD54発現レポーターシステムを含む免疫細胞を処理する前に、先ず被験物のこの免疫細胞に対する細胞毒性分析を行って、この被験物のこの細胞に対する半数阻害濃度を測定し、これにより処理濃度を得ることができる。
【0038】
最後に、上記被験物で上記CD54発現レポーターシステムを含む免疫細胞を処理した後に、上記被験物で処理した上記免疫細胞により生成されたレポーター遺伝子生成物の発現を測定して、上記被験物が皮膚感作物質であるか否かを決定する。
【0039】
1実施形態において、上記被験物で処理した上記免疫細胞により生成されたレポーター遺伝子生成物の発現を測定して上記被験物が皮膚感作物質であるか否かを決定する工程では、上記被験物で処理した上記免疫細胞により生成されたレポーター遺伝子生成物の発現と、上記被験物で処理していない免疫細胞のレポーター遺伝子生成物の発現とを比較して、上記被験物が免疫調節作用を有するか否かを決定する。被験物で処理した免疫細胞により生成されたレポーター遺伝子生成物の発現が、被験物で処理していない免疫細胞のレポーター遺伝子生成物の発現よりも高い場合、その被験物は皮膚感作物質であると決定する。
【0040】
上記免疫細胞により生成されたレポーター遺伝子生成物の発現を測定する方式は、レポーター遺伝子生成物の性質を基に決定する(例えばその活性を測定することができる)。それぞれ異なるレポーター遺伝子生成物の発現の測定方式は、当業者には良く知られているものである。例えば、メトリディアルシフェラーゼ遺伝子生成物は、細胞によって直接、培養液に分泌されるため、細胞を培養している培地に直接ルシフェラーゼアッセイを行ってメトリディアルシフェラーゼ遺伝子生成物の発現を測定することができる。
【0041】
また、本発明の別の1実施態様において、本発明はさらに、ITRI−54Mと命名し、2013年12月4日に財団法人食品工業発展研究所に受託番号BCRC No. 960475として寄託した新規なクローン細胞(cloned cell)を提供する。この細胞はまた、国際寄託機関であるドイツ微生物細胞培養収集機関(DSMZ)に国際寄託されている(寄託日:2014年11月12日、受託番号:DSM ACC3257)。
【0042】
この細胞は、CD54遺伝子のプロモーター−メトリディアルシフェラーゼ遺伝子(CD54 promoter− Metridia Luc)の形式のCD54発現レポーターシステムを有し、CD54発現レポーターシステムの配列は配列番号:2の配列である。
【実施例】
【0043】
実施例1
ITRI−54M細胞の構築
LVX−MetLuc(Clonetech社製、 PT4422−5)プラスミドの取扱説明書に従って、LVX−MetLucプラスミドを制限酵素BstB IおよびBamH Iで処理して、CD54プロモーター配列(配列番号:1)をLVX−MetLucプラスミド中にクローニングさせることにより、CD54−promoter mLuc発現系(図1)を作製した。この発現系において、CD54プロモーター−mLucの配列は配列番号:2の配列である。次いで、作製されたCD54−promoter−mLuc発現系を、Lenti−X(登録商標)Ready−To−Glow(登録商標)Secreted Luciferase Reporter System (Clonetech社製、631746)を用い、293FT細胞中にトランスフェクションして、CD54-mLucを有するLentivirusを生成した。次に、このウィルスをTHP−1細胞に感染させた。THP−1細胞はTHP−1培地で培養した。その成分は、10%FBS(GIBCO社製、10437)、4.5g/L グルコース(Sigma社製、G7021)、10mM HEPES(Sigma社製、H4034)、1×ペニシリンおよびストレプトマイシン (Biowest社製、L0022)、1mMピルビン酸ナトリウム(sodium pyruvate) (Biowest社製、L0642)、0.05mM 2−メルカプトエタノール(2−mercaptoethanol, 2−ME) (GIBCO社製、21985−023)を含んでなるRPMI培地(GIBCO社製、31800)であった。
【0044】
次いで、0.5〜1μg/mLのピューロマイシン(Invivogen社製、ant−pr−1)でTHP−1細胞のスクリーニングを行った。2週間スクリーニングをした後、細胞を含んだ培地100μL(濃度:細胞5個/mL)を96ウェルプレート(Corning社製、COSTAR、3599)に加え、細胞数が増加したら、24ウェルプレート(Corning社製、COSTAR、3516)、6ウェルプレート(Corning社製、COSTAR、3524)およびT25フラスコ(Corning社製、COSTAR、430639) を順次用いて細胞を増幅させた。そして、各細胞株を、既知の感作物質(sensitizer)である1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン(1−chloro−2,4−dinitrobenzene, DNCB)と、非感作物質(non−sensitizer) であるヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(hexadecyltrimethylammonium bromide, CTAB)とを用いて試験し、反応の最も良い細胞株を選んで、ITRI−54Mと命名し、2013年12月4日に中華民国食品工業発展研究所生物資源保存および研究センターに受託番号BCRC No.960475として寄託した。この細胞はまた、国際寄託機関であるドイツ微生物細胞培養収集機関(DSMZ)に国際寄託されている(寄託日:2014年11月12日、受託番号:DSM ACC3257)。
【0045】
実施例2
被験物質が皮膚感作物(または免疫調節物質)であるか否かの決定
本実験における被験物質が皮膚感作物であるか否かの決定の流れは図2に示すとおりである。図2と共に以下の詳細な工程の説明を参照されたい。
【0046】
1.被験物のITRI−54M細胞に対する毒性試験
ITRI−54M細胞はTHP−1培地で培養した。その成分は、10%ウシ胎児血清(GIBCO社製、10437)、4.5g/L グルコース(Sigma社製、G7021)、10mM HEPES(Sigma社製、H4034)、1×ペニシリンおよびストレプトマイシン (Biowest社製、L0022)、1mM ピルビン酸ナトリウム (Biowest社製、L0642)、0.05mM 2−メルカプトエタノール(GIBCO社製、21985−023)、ならびに0.5μg/mLピューロマイシンを含んでなるRPMI培地(GIBCO社製、31800)であった。
【0047】
表1に挙げた感作性があることが既知である参考化学物質サンプル、または表2に挙げた化粧品によく用いられるハーブ抽出物を、適した溶媒(DMSOまたは2−MEを含まないTHP−1培地)で溶解し、溶解後にそれをストック溶液(stock solution)とした。次いで、ストック溶液を6〜8回、3倍連続希釈して、異なる希釈倍率のワーキング溶液(working solution)を作った。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
次いで、細胞毒性試験を行った(工程101)。10μL/ウェルのワーキング溶液を96ウェルプレートに添加した。次に、ITRI−54M細胞を、2−MEおよびピューロマイシンを含まないTHP−1培地中に懸濁させてから、細胞5×10個/90μL/ウェルの密度で上記96ウェル細胞培養プレートに接種した。続いて、培養プレートをインキュベーター(NUAIR社製、nu−5510)内に置き1日培養した。なお、被験物がDMSO中に溶解している場合、最終的な被験物と細胞の接触時の培地中のDMSO濃度を0.2%に制御する必要がある点に注意すべきである。
【0051】
次いで、10μLの5mg/mL MTTの培地を培養プレート中に加え、COインキュベーターに入れて2時間培養してから、100μLの10%SDSを培養プレートに加え、一晩静置した。そして、紫色の沈殿を溶解させ、連続波長マイクロプレートリーダーシステム(Molecular Devices社製、SPECTRAMAX 5)で波長560nmにおける細胞の吸光値を測定した。
【0052】
対照群の平均吸光値を100%の細胞生存率(%)とし、各種異なる濃度のサンプルを加えた実験群の細胞生存率(%)を算出した。細胞生存率の計算式は、(実験群吸光値/対照群吸光値)×100%である。さらに各濃度の被験物の細胞増殖阻害率を算出した。細胞増殖阻害率の計算式は1−細胞生存率である。
【0053】
次いで、各実験群の細胞増殖阻害率でxy散布図を作成し、ソフトウェアGrafitを用いてIC50の式により各被験物の50%細胞増殖阻害のサンプル濃度(CC50)を求めた(工程103)。
【0054】
薬品がMTTの色の判断に影響する場合は、Cell−Glo kitを用いて細胞毒性試験を行った。その工程は以下のとおりである。
【0055】
細胞液35μLを、ルミネッセンス用の96ウェルホワイトプレートに加えてから、その96ウェルホワイトプレートにCell−Glo kit(Promega社製、G7571) 35μLを加え、振とう器に置いて10分間振とうした。次いで、その96ウェルホワイトプレート中に基質を加えたら、直ちにマイクロプレートルミノメーター(Berthold社製、MPL4)で細胞が発したルミネッセンス強度(Rlu/s)を測定し、その回の実験の各濃度の被験物の細胞毒性基準値とした。
【0056】
細胞生存率の計算式は、(実験群ルミネッセンス値/対照群ルミネッセンス値)×100%である。さらに、各濃度の被験物の細胞増殖阻害率を算出した。細胞増殖阻害率の計算式は、(1−細胞生存率)である。
【0057】
各実験群の細胞増殖阻害率でxy散布図を作成し、ソフトウェアGrafitを用いてIC50の式により各被験物の50%細胞増殖阻害濃度(CC50)を求めた。
【0058】
後続の実験では、各被験物のCC50±25%を、ITRI−54M細胞のmLucルシフェラーゼ活性の基準試験開始濃度として選んだ。
【0059】
1回目の実験で精確なCC50を測定できなかった場合、実験結果を参考に、被験物濃度および希釈倍率を変えた。これにより最適な傾向線を得て、CC50を求めた。
【0060】
測定して得られた各被験物の50%細胞増殖阻害の濃度は表3に示すとおりである。
【0061】
【表3】
【0062】
2.被験物のITRI−54M細胞のm−Luc活性に対する影響の試験
上述により得られた各被験物のCC50に基づき、各被験物の試験開始濃度を選択し(約CC50±25%濃度であるが、精確なCC50を得ることができない場合は、被験物の最大溶解可能濃度または最終濃度4000μMで試験を行う)、この濃度で被験物のストック溶液を調製した。次いで、その被験物のストック溶液を1.4倍で2回連続希釈して、別の2つの濃度のワーキング溶液を作り、合わせて3つの濃度の溶液を得た(工程105)。
【0063】
10μL/ウェルのワーキング溶液を96ウェルプレートに加えた。次に、ITRI−54M細胞を2−MEおよびピューロマイシンを含まないTHP−1培地中に懸濁させてから、細胞5×10個/90μL/ウェルの密度で上記96ウェル細胞培養プレートに接種した。続いて、培養プレートをインキュベーター(NUAIR社製、nu−5510)内に置き1日培養した。50ng/mLのリポ多糖体(lipopolysaccharide, LPS)を陽性対照(positive control)とした。なお、被験物がDMSO中に溶解している場合、最終的な被験物と細胞の接触時の培地中のDMSO濃度を0.2%に制御する必要がある点に注意すべきである。
【0064】
次いで、上記培養プレートから細胞液を10μL取り出し、ルミネッセンス用の96ウェルホワイトプレートに加えた。そのホワイトプレートに、Luciferase Assay試薬(GeneCopoeia社製、SPGA−G100) 40μLを加えたら、直ちにマイクロプレートルミノメーター(Berthold社製、MPL4)で細胞のルミネッセンス強度(Rlu/s)を測定した。(工程107)。
【0065】
対照群のルミネッセンス強度を基準として、各サンプル実験群のCD54プロモーター活性を促進する誘導率(induction rate)を算出した。誘導率の計算式は、(実験群のルミネッセンス値/対照群のルミネッセンス値)である。ある被験物がmLuc発現を促進しているという結果が出た場合、その被験物は感作物質であると決定した(工程109(工程109Aおよび工程109Bを含む))。上記各被験物について測定されたCD54プロモーター活性を促進する誘導率の結果が表4に示されており、各被験物が感作物質であるかを決定した結果が表5に示されている。
【0066】
【表4】
【0067】
【表5】
【0068】
また、細胞液35μLを、ルミネッセンス用の96ウェルホワイトプレートに加えてから、その96ウェルホワイトプレートにCell−Glo kit(Promega社製G7571) 35μLを加え、振とう器に置いて10分間振とうした。次いで、その96ウェルホワイトプレート中に基質を加えたら、直ちにマイクロプレートルミノメーター(Berthold社製、MPL4)で細胞が発したルミネッセンス強度(Rlu/s)を測定し、その回の実験の各濃度の被験物の細胞毒性基準値とした。細胞生存率の計算式は、(実験群のルミネッセンス値/対照群のルミネッセンス値)×100%である。
【0069】
実施例3
被験物質が抗炎症物質(または免疫調節物質)であるか否かの決定
本実験における被験物が抗炎症物質であるか否かを決定する流れは図3に示すとおりである。図3と共に以下の詳細な工程の説明を参照されたい。
【0070】
1.被験物のITRI−54M細胞に対する毒性試験
ITRI−54M細胞はTHP−1培地で培養した。その成分は、10%ウシ胎児血清(GIBCO社製、10437)、4.5g/Lグルコース(Sigma社製、G7021)、10mM HEPES(Sigma社製、H4034)、1×ペニシリンおよびストレプトマイシン (Biowest社製、L0022)、1mM ピルビン酸ナトリウム (Biowest社製、L0642)、0.05mM 2−メルカプトエタノール(GIBCO社製、21985−023)、ならびに0.5μg/mLピューロマイシンを含んでなるRPMI培地(GIBCO社製、31800)であった。
【0071】
表6に挙げた抗炎症能力を持つことが既知である被験物を、適した溶媒(DMSOまたは2−MEを含まないTHP−1培地)で溶解し、溶解後にそれをストック溶液(stock solution)とした。次いで、ストック溶液を6〜8回、3倍連続希釈して、異なる希釈倍率のワーキング溶液(working solution)を作った。
【0072】
【表6】
【0073】
次いで、細胞毒性試験を行った(工程201)。10μL/ウェルのワーキング溶液を96ウェルプレートに添加した。次に、ITRI−54M細胞を、2−MEおよびピューロマイシンを含まないTHP−1培地中に懸濁させてから、細胞5×10個/90μL/ウェルの密度で上記96ウェル細胞培養プレートに接種した。続いて、培養プレートをインキュベーター(NUAIR社製、nu−5510)内に置き1日培養した。なお、被験物がDMSO中に溶解している場合、最終的な被験物と細胞の接触時の培地中のDMSO濃度を0.2%に制御する必要がある点に注意すべきである。
【0074】
次いで、5mg/mL MTT 10μLの培地を培養プレート中に加え、COインキュベーターに入れて2時間培養してから、10%SDS 100μLを培養プレートに加え、一晩静置した。そして、紫色の沈殿を溶解させ、連続波長マイクロプレートリーダーシステム(Molecular Devices社製、SPECTRAMAX 5)で波長560nmにおける細胞の吸光値を測定した。
【0075】
対照群の平均吸光値を100%の細胞生存率(%)とし、各種異なる濃度のサンプルを加えた実験群の細胞生存率(%)を算出した。細胞生存率の計算式は、(実験群の吸光値/対照群の吸光値)×100%である。さらに各濃度の被験物の細胞増殖阻害率を算出した。細胞増殖阻害率の計算式は、1−細胞生存率である。
【0076】
次いで、各実験群の細胞増殖阻害率でxy散布図を作成し、ソフトウェアGrafitを用いてIC50の式により各被験物の50%細胞増殖阻害のサンプル濃度(CC50)を求めた(工程203)。
【0077】
薬品がMTTの色の判断に影響する場合は、Cell−Glo kitを用いて細胞毒性試験を行った。その工程は以下のとおりである。
【0078】
細胞液35μLを、ルミネッセンス用の96ウェルホワイトプレートに加えてから、その96ウェルホワイトプレートにCell−Glo kit(Promega社製、G7571) 35μLを加え、振とう器に置いて10分間振とうした。次いで、その96ウェルホワイトプレート中に基質を加えたら、直ちにマイクロプレートルミノメーター(Berthold社製、MPL4)で細胞が発したルミネッセンス強度(Rlu/s)を測定し、その回の実験の各濃度の被験物の細胞毒性基準値とした。
【0079】
細胞生存率の計算式は、(実験群のルミネセンス値/対照群のルミネッセンス値)×100%とした。さらに、各濃度の被験物の細胞増殖阻害率を算出した。細胞増殖阻害率の計算式は、(1−細胞生存率)である。
【0080】
各実験群の細胞増殖阻害率でxy散布図を作成し、ソフトウェアGrafitを用いてIC50の式により各被験物の50%細胞増殖阻害濃度(CC50)を求めた。
【0081】
後続の実験では、各被験物のCC50±25%を、ITRI−54M細胞のmLucルシフェラーゼ活性の基準試験開始濃度として選んだ。
【0082】
1回目の実験で精確なCC50を測定できなかった場合、実験結果を参考に、被験物濃度および希釈倍率を変えた。これにより最適な傾向線を得てCC50を求めた。
【0083】
測定して得られた各被験物の50%細胞増殖阻害の濃度は表7に示すとおりである。
【0084】
【表7】
【0085】
2.被験物の、リポ多糖体(LPS)により誘発されたITRI−54M細胞におけるm−Luc活性に対する影響の試験
上述により得られた各被験物のCC50に基づき、各被験物の試験開始濃度を選択し(約CC50±25%濃度であるが、精確なCC50を得ることができない場合は、被験物の最大溶解可能濃度または最終濃度4000μMで試験を行う)、この濃度で被験物のストック溶液を調製した。次いで、その被験物のストック溶液を2倍で3回連続希釈して、別の3つの濃度のワーキング溶液を作り、合わせて4つの濃度の溶液を得た(工程205)。
【0086】
10μL/ウェルのワーキング溶液および10μLの100ng/mLのリポ多糖体(Sigma社製、L2880)を96ウェルプレートに加えた。次に、ITRI−54M細胞を2−MEおよびピューロマイシンを含まないTHP−1培地中に懸濁させてから、細胞5×10個/80μL/ウェルの密度で上記96ウェル細胞培養プレートに接種した。続いて、培養プレートをインキュベーター(NUAIR社製、nu−5510)内に置き1日培養した。なお、被験物がDMSO中に溶解している場合、最終的な被験物と細胞の接触時の培地中のDMSO濃度を0.2%に制御する必要がある点に注意すべきである。
【0087】
次いで、上記培養プレートから細胞液を10μL取り出し、ルミネッセンス用の96ウェルホワイトプレートに加えた。そのホワイトプレートに、Luciferase Assay試薬(GeneCopoeia社製、SPGA−G100) 40μLを加えたら、直ちにマイクロプレートルミノメーター(Berthold社製、MPL4)で細胞のルミネッセンス強度(Rlu/s)を測定した。(工程207)。
【0088】
対照群およびリポ多糖体誘発群のルシフェラーゼ活性を基準として、各サンプル被験物がリポ多糖体により誘発されたCD54プロモーター活性を阻害する阻害率(inhibition rate)を算出した。阻害率の計算式は、(リポ多糖体誘発群のルミネッセンス値−被験物との共処理後のリポ多糖体誘発群のルミネッセンス値)/(リポ多糖体誘発群のルミネセンス値−未処理群のルミネッセンス値)である。阻害率が正の値であれば、その被験物がリポ多糖体により誘発された免疫反応を抑制する能力を有するということである。(工程209(工程209Aおよび工程209Bを含む)。
【0089】
そして、各実験群のCD54プロモーター活性の阻害率でxy散布図を作成し、ソフトウェアGrafitを用い、IC50の式により、各被験物の、50%の、リポ多糖体により誘発されたmLuc活性を阻害する濃度(IC50)を求めた。結果は表7に示してある。
【符号の説明】
【0090】
101、103、105、107、109、109A、109B、201、203、205、207、209、209A、209B...工程
【受託番号】
【0091】
寄託情報

寄託機関の名称およびあて名:
中華民国新竹市食品工業発展研究所生物資源保存および研究センター(Bioresource Collection and Research Center (BCRC), Food Industry Research and Development Institute, Hsinchu, Taiwan)
寄託日:
2013年12月4日
受託番号:
BCRC No. 960475

寄託機関の名称およびあて名:
ドイツ微生物細胞培養収集機関(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)
Inhoffenstr. 7B D-38124 Braunschweig GERMANY
寄託日:
2014年11月12日
受託番号:
DSM ACC3257
図1
図2
図3
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]