(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載のパッチアセンブリにおいて、前記電流源又は前記制御器の少なくとも一方が、前記パッチの前記非組織接触側に結合されるハウジングに位置決めされ、前記ハウジングが十分な可撓性を有することで、前記ハウジングが前記パッチと係合されて前記パッチアセンブリを形成し、且つ前記パッチが前記患者の皮膚上の標的部位に接着されたときに、前記パッチアセンブリが前記患者の皮膚の動きに伴い変形するのに十分な可撓性を有し、従って長期間にわたり前記患者の皮膚に十分に接着されたまま保持されて前記治療剤を経皮送達することを特徴とするパッチアセンブリ。
請求項1に記載のパッチアセンブリにおいて、送達サイクルを開始させるための入力装置であって、前記制御器に作動可能に結合される入力装置をさらに含むことを特徴とするパッチアセンブリ。
請求項1、5、6又は7の何れか1項に記載のパッチアセンブリにおいて、前記制御器が、選択期間に対する治療剤の最大送達用量数を制限するための論理及び/又は不応期間が終わるまで別の送達期間の始動を制御するための論理を含むことを特徴とするパッチアセンブリ。
請求項1に記載のパッチアセンブリにおいて、前記送達期間及び前記送達が制限される期間の少なくとも一方が、前記治療剤の血漿中濃度を治療係数の範囲内に維持するように選択されることを特徴とするパッチアセンブリ。
請求項1に記載のパッチアセンブリにおいて、前記電流源が、電気化学バッテリ、アルカリバッテリ、リチウムバッテリ又はリチウムイオンバッテリを含むことを特徴とするパッチアセンブリ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に記載される様々な実施形態は、様々な薬物及び他の治療剤を経皮イオン泳動送達するための装置、システム及び方法を提供する。多くの実施形態が、オピオイド及び制吐薬などの様々な治療剤を二相性経皮イオン泳動送達するための装置、システム及び方法を提供する。本明細書で使用されるとき、用語の経皮送達は、1つ以上の皮膚層(例えば、表皮、真皮等)を通じた薬物又は他の治療剤などの化合物の送達を指す。ここで
図1を参照すると、皮膚層には、表皮EP、真皮D及び皮下組織SDが含まれる。表皮の最上層には、角質層SC、死んでいる皮膚層(厚さが約10〜40μmある)及び生きている表皮EPが含まれる。経皮送達は、3つの通路のうちの1つによって皮膚の中へと進めることができ、1、汗口SPを介するか、2、毛包HFを介するか、又は表皮EP(角質層から始まる)及び真皮を通る浸透3による。
【0012】
イオントフォレシスは、少量の電荷を使用した反発起電力によって高濃度の荷電物質(活性薬剤として知られる)を経皮的に推進させる非侵襲的方法である。活性薬剤には、薬物又は他の治療剤が含まれ得る。電荷は、皮膚上に配置された活性電極アセンブリに対し電源によって印加され、活性電極アセンブリは、同様に荷電した活性薬剤と、それが溶解される溶媒とを含む。電流は、電極アセンブリから皮膚を通って流れ、次に、同じく皮膚上に配置された戻り電極又は対電極アセンブリを介して戻る。アノードと呼ばれる正電荷の電極アセンブリは、正電荷の活性薬剤、又はアニオンを反発して皮膚に入り込ませる一方、カソードと呼ばれる負電荷の電極アセンブリは、カチオンとして知られる負電荷の活性薬剤を反発して皮膚に入り込ませる。
【0013】
ここで
図2〜
図4bを参照すると、患者の皮膚S上の、送達部位TSとも称される組織部位TS(腕Aなど)に治療剤51を経皮イオン泳動送達するためのシステム5の実施形態は、活性電極アセンブリ20及び戻り電極アセンブリ30を含む少なくとも2つの電極アセンブリ14と、電源供給器100とを含む。活性電極アセンブリ20は、電源供給器100から皮膚に送り込まれる電流によって皮膚Sを通して治療剤を送達するために用いられる。戻り電極アセンブリ30は、電流(例えば電流60)が電源供給器100に戻る経路を提供する。まとめて、活性電極アセンブリ20及び戻り電極アセンブリ30は、本明細書ではパッチ装置10としても記載される経皮イオン泳動送達装置10を含む。交流電流を用いる実施形態では、両方の電極アセンブリ14を、電流の流れる方向に応じて活性電極アセンブリ20及び戻り電極アセンブリ30として構成することができる。便宜上ある場合には、電極アセンブリ14、活性電極アセンブリ20及び/又は戻り電極アセンブリ30は、ときにそれぞれ電極14、活性電極20及び戻り電極30と称されることもある。
【0014】
多くの実施形態において、電極アセンブリ14(例えば、活性アセンブリ20及び戻りアセンブリ30)は、皮膚表面に貼り付けるように構成された1つ以上のパッチ15を含むか、又は別様にしてそのようなパッチ15上に配置される。パッチ15は、望ましくは皮膚表面Sの輪郭CRに形状適合するもので、エラストマー材料又は他の可塑性ポリマー材料の層から作製されてもよい。一部の実施形態では、活性電極アセンブリ20と戻り電極アセンブリ30とを含む2つ以上の電極アセンブリ14が、単一のパッチ15上に置かれる。他の実施形態では、システム5は、電極アセンブリ14用の別個のパッチ15、例えば、活性電極アセンブリ20用の第1のパッチ15’と、戻り電極アセンブリ30用の第2のパッチ15”とを含み得る。他の実施形態では、複数の活性電極アセンブリ20若しくは戻り電極アセンブリ30のいずれか又は両方を有するようにするため、3つ以上のパッチ15を使用することができる。例えば、一実施形態においてシステム5は3つのパッチ15を含むことができ;活性電極アセンブリ20を含む2つのパッチと、戻り電極アセンブリ30を含む第3のパッチ15とを含む。複数のパッチ及び電極アセンブリの他の組み合わせ、例えば、活性電極アセンブリ20用の2つと戻り電極アセンブリ30用の2つとの4つのパッチもまた、企図される。
【0015】
多くの実施形態において、活性電極アセンブリ20は、
図2の実施形態に示されるとおり、治療剤用のリザーバ21、リザーバと流体連通している、組織に接触する多孔質部分24、アセンブリを皮膚に接着させるための接着部分25、及び電極アセンブリ20を電源供給器100に結合するための電気コネクタ26を含み得る。リザーバ21は、送達される治療剤の特定の用量向けのサイズを有し得る。様々な実施形態において、電源供給器100は、病院環境及び野外の双方における医療関係者による使用を促進する様々な特徴を含み得る。例えば、電源供給器は、電極アセンブリ14、パッチ15又は電源供給器100の1つ以上に位置決めされたバーコードを読み取るためのバーコードリーダ(図示せず)を含むか、又はそれに結合するように構成されてもよい。
【0016】
組織接触部分24はまた、活性電極20及び/又は戻り電極30として機能するように、電気的に伝導性(本明細書では導電性)である。これは、組織接触部分24を導電性多孔質材料(例えば、導電性カーボン又は他の導電性繊維)から作製することにより、及び/又は組織接触部分24を導電性溶液54で湿潤した状態にさせることにより(この導電性は、溶液に添加される治療剤51又は様々な電解質によるものである)、実現することができる。コネクタ26は、組織接触部分24と電気的に結合するように、部分24の中まで延在するか、又は別様にしてそれと電気的接触をなすことができる。一部の実施形態では、コネクタ26は、電極アセンブリ14内に位置決めされる導電素子28に結合され、且つ導電性多孔質部分24に結合され得る。導電素子28、導電層34(以下に記載する)並びに側電極40(同様に以下に記載する)の1つ以上が、ステンレス鋼、炭素、塩化銀(AgCl)又は当該技術分野において周知されている他の導電性材料を含めた、様々な導電性材料を含み得る。
【0017】
典型的には、接着部分25は、
図4a及び
図4bの実施形態に示されるとおり多孔質部分24の外周24pを取り囲み得るが、他の構成もまた企図される。様々な実施形態において、多孔質部分24は多孔質層24を含むことができ、次にはそれが、ポリエステル、PET及び同様の材料を含む当該技術分野において公知のポリマー発泡体、ポリマー繊維のメンブレン又は織布を含め、様々な多孔質材料を含む。接着部分25は多孔質層24に取り付けられてもよく、当該技術分野において公知の様々な剥離可能な接着剤を含み得る。接着部分25は、基材層25sに取り付けられた接着剤層25a、例えば1つ以上の剥離可能な接着剤を含むことができ、基材層25sは様々なハイドロゲル、ポリウレタン、シリコーン又は同様のポリマー材料を含み得る。接着部分25のサイズ及び構成は、特定の皮膚位置(例えば、腕と、対する脚、毛量等)及び皮膚のタイプ(例えば、小児と、対する老人等、毛量等)に適合させることができる。
【0018】
典型的には、治療剤51は、治療剤組成物54とも記載される治療剤溶液54に溶解され、この治療剤溶液54は、リザーバ21を充填するために用いられるものである。治療剤51に加え、溶液54は、防腐剤(例えばクエン酸)などの1つ以上の医薬賦形剤52を含み得る。溶液54の粘度は、リザーバ21から多孔質層24へと容易に染み込む溶液となるように調整され得る。溶液54は、工場でリザーバ21に予め装入されてもよく、又は医療関係者が使用前に、
図3bの実施形態に示されるとおりチャネル27を介してリザーバ21に結合されるセルフシールポートなどのポート22(ポートからの液体注入を可能にする)を用いて添加してもよい。好適な治療剤51としては、限定なしに、鉄欠乏性貧血の治療用のピロリン酸第二鉄又は他の鉄含有化合物、糖尿病又は他の血糖調節障害の治療用のインスリン又は様々なグルカゴン様ペプチド、疼痛管理用のフェンタニル又は他のオピオイド化合物、及び癌の治療用の様々な化学療法剤を挙げることができる。
【0019】
戻り電極アセンブリ30は、組織に接触する導電層34、接着剤層35及び電極アセンブリを電源に結合するためのコネクタ26を含む。多くの実施形態において、戻り電極アセンブリ30は、
図3bの実施形態に示されるとおり活性電極アセンブリとして機能するように、活性電極アセンブリ20と実質的に同じ要素構成(例えば、リザーバ21、導電性組織接触層24)を有し得る。
【0020】
多くの実施形態において、パッチ15はまた、側電極40として知られる1対以上の電極も含む。側電極40は、望ましくは多孔質部分24の両側に、
図3a〜
図3b及び
図4a〜
図4bの実施形態に示されるとおり、多孔質部分24の外周24pから選択可能な距離を隔てて置かれる。側電極40は、金属、グラファイト、塩化銀及び他の同様の材料を含め、様々な導電性材料を含み得る。様々な実施形態において、側電極40の全て又は一部は絶縁コーティングを含み、従って容量結合によって電流を皮膚に送り込む容量結合電極とし得る。側電極40はまた、望ましくは電極20及び30と電気的に絶縁され、典型的にはその独自の波形生成回路を備え得る。
【0021】
側電極40は望ましくは、多孔質部分24に対して、部分24の下にある皮膚Sを通り抜け、且つ皮膚と略平行な導電経路104をもたらすように配列される。送達電極20と共に側電極40を用いるパッチ15の実施形態は、2つの電流、第1の電流60と第2の電流70との流れを可能にする。第1の電流60は電極20と30との間を流れ、治療剤51を皮膚Sの中へと層間を横切って推進させるように作用する起電力を提供する働きをする。第2の電流70は、ふるい分け電流70(sieving current)として知られ、治療剤51に対して皮膚Sと平行な方向に作用する起電力を提供し、それにより皮膚Sと平行な方向に治療剤51の振動を生じさせる。この振動は、皮膚において拡散抵抗がより小さい又は最小である経路を通して治療剤をふるい分けするように作用する。第2のパッチ15”が側電極40を含み、且つ治療剤の送達に使用される実施形態では、第2のパッチ15”の側電極から第3の電流70’が送達され、これもまた起電推進力を作り出すため、第2のパッチ15”の下で治療剤が皮膚表面と略平行に振動し得る。ふるい分け電流の生成における側電極40の使用を含めた、側電極40の構成及び使用に関するさらなる説明は、参照により全体として本明細書に援用される2010年2月10日に出願された米国特許出願第12/658,637号明細書に見出される。
【0022】
ここで
図5a〜
図5dを参照して、治療剤のオンデマンド経皮送達に用いられる本発明の様々な実施形態をここで説明する。かかる実施形態は、治療剤51をオンデマンド送達するためのシステム5’及び方法を含む。本明細書で使用されるとき、用語「オンデマンド」は、患者又は他の人(例えば医療提供者)が治療剤の送達を開始できることを指す。これには、以下に記載する治療剤送達期間及び/又は治療剤送達期間サイクルの開始が含まれる。これらのいずれの開始も、押しボタン装置などの患者駆動装置からの信号/入力、及び/又は携帯電話又は他の高周波対応デバイスなどの無線装置から受信する信号であってもよい。かかる「オンデマンド」実施形態は、以下の1つ以上を提供する:i)患者、他の使用者又は制御器/機械が、患者に対する治療剤51の送達を開始できること;及びii)イオン泳動電流がパッチアセンブリ15cpに供給されていない間、治療剤51の受動拡散を止める又は他の方法で制限できること。多くの実施形態において、オンデマンド経皮送達は、二相性経皮イオン泳動送達システム5”の使用により実現され得る(二相性経皮イオン泳動送達については以下に定義及び詳述する)。かかる実施形態は、オピオイド系疼痛療法薬(例えば、フェンタニル及びその類似体)などの、疼痛治療用の(例えば痛みを低減する)治療剤51p(以下、疼痛療法薬51p)の送達に特に有用である。しかしながら、かかるシステム5”の実施形態は、任意の病態を治療するための、本明細書に記載される又は当該技術分野において公知の任意の治療剤51の送達に用い得ることは理解されなければならない。
【0023】
ここで
図5aを参照して、「オンデマンド」経皮送達システム5’の実施形態をここで説明する。このシステムは、患者及び/又は医療提供者による治療剤51のオンデマンド送達用に構成され得る。システム5’はまた、例えば、以下に記載する制御プログラム93pを使用することにより、本明細書に記載される二相性経皮イオン泳動送達システム5”としても構成され得る。システム5’は、パッチ15を含むパッチアセンブリ15cpと、電極14と、治療剤リザーバ21と、患者又は他の使用者が治療剤51の送達を開始することを可能にする使用者駆動式装置91(駆動装置91とも称される)を含む電子モジュール又はセクション90とを含む。電極14は、典型的には、本明細書に記載されるとおり送達又は活性電極20と戻り電極30とを含み得る。活性電極20は、治療剤51の供給材料を貯蔵するための治療剤リザーバ21と流体連通するように構成される。本明細書に記載されるとおり、多くの実施形態で治療剤51は、イオン形態であるように溶液54(リザーバ21に収容される)に溶解され得る。1つ以上の実施形態によれば、治療剤51を含む溶液54はリザーバ21に工場で装入されても、及び/又は薬局で患者が受け取る前に、薬剤師によって装入されてもよい。他の実施形態によれば、治療剤51は固体形態でリザーバ21に貯蔵され、使用直前に、溶液54を含む液体が使用者又は医療提供者によってリザーバに添加される。
【0024】
様々な実施形態において、パッチ15は、例えば
図5aの実施形態に示されるとおりの、側部部分15sとテーパ状の中央部分15cとを有するピーナッツ形又はカッシーニ曲線形の楕円15ocを含め、略楕円形15oであってもよい。活性電極20と戻り電極30とを含む電極14を側部部分15sに位置決めすることができ、電子機器モジュール90を中央部分15cに位置決めすることができる。望ましくは、電極20と30とは、
図5aの実施形態に示されるとおり対向する側部部分15sに位置決めされる;しかしながら、側部部分15sそれぞれに電極20及び30を配置するなど、他の構成もまた企図される。電子機器モジュール90は、制御器530(
図6aに示される)に対応し得る制御器93と、電源570(
図6bに示される)に対応し得る電源97とを備えることができ、且つ電気化学的蓄電池及び1つ又は複数のバッテリのDC(直流)信号をAC(交流)信号に変換する回路を備えることができる。電子機器モジュール90は、所定用量のオピオイド又は他の治療剤51(例えば制吐薬)を送達する薬物送達サイクルを開始するための、押しボタン又はスイッチなどの使用者駆動装置91を備える。当該技術分野において公知の他の電気機械式駆動装置91もまた企図される。典型的には、駆動装置91は制御器93(又は他の制御器)に結合され、それにより装置91により生成される信号91sが、治療剤51の送達期間及び/又は送達サイクルの開始などの機能を開始させる入力を制御器に提供する。しかしながら、追加的又は代替的な実施形態では、駆動装置91は、モジュール90に(例えばワイヤで)電気的に接続され、且つ患者が容易に利用できるように位置決め及び構成される押しボタン装置などの外部接続装置(例えば、患者のベルトに取り付けられるか、又は患者の寝台脇に位置してもよい装置)を含んでもよい。さらに他の実施形態では、駆動装置91は、携帯電話、PDA又は高周波対応通信装置などの、持ち運ぶ、身に着ける、又は患者の至近に配置することのできる無線装置を含んでもよい。装置91のかかる無線の実施形態では、装置91及び/又は制御器93は、誤使用及び/又は他の不正使用を防止する様々なパスワード又は他のコードを備え得る。
【0025】
ここで
図5b〜
図5dを参照して、二相性経皮イオン泳動送達システム5”を用いた「オンデマンド」薬物送達方法の実施形態をここで説明する。この方法の実施形態は、パッチアセンブリ15cp及び500などの本明細書に記載されるパッチ及び電極アセンブリの様々な実施形態で適用可能である。「二相性経皮イオン泳動送達」は、第1相及び第2相の薬物送達を有する経皮イオン泳動送達システムの使用を指す。一部の実施形態では、薬物送達の第1相及び第2相は、送達期間及び非送達期間に対応し得る。次には送達期間が、治療剤を能動的に輸送する期間(例えば、推進電流を使用)に対応してもよく、非送達期間が、かかる輸送を能動的に抑止する期間(例えば、保持電流を使用)に対応してもよい。
図5b〜
図5dに示されるとおり、送達サイクルが(例えば患者、又は他の使用者により)開始される前は、以下に記載する保持電流320によって薬剤がリザーバ21内に保持されているため、薬剤は全く又は最小限しか送達されない。患者が駆動装置91を押すと、それにより信号300が生成され、それが制御器93に送り込まれる。制御器93は、信号300の受信時に薬物送達期間340を始動する制御プログラム又は他の論理93pを備えることができる。次に制御プログラム93pは、薬物送達電流310(本明細書では推進電流310とも称される)として知られる第1の電流の流れにより、薬物送達期間340の始めの部分を開始し、この薬物送達電流310は、治療剤51を反発してリザーバ21から皮膚に入り込ませるように構成される極性及び大きさ又は他の特性を有する(この極性は、イオン形態の治療剤51の極性の電荷と同じ符号(すなわち正又は負)である)。電流310の他の特性としては、限定なしに、電圧、電流310の波形の周波数/周期若しくは形の1つ以上を挙げることができる(これらの特性はまた、保持電流320がその機能を果たすための調整にも用いられる)。
【0026】
制御器93は、
図5dの送達曲線350によって示されるとおり、送達期間340にわたり送達電流310をオンに保ち、選択された用量の治療剤51を皮膚に送り込む(送達期間及び送達電流は制御器93に記憶され、及び/又はプログラム93pにより、例えば伝達関数及び添付の例に記載される他のモデル化手法を用いて決定され得る)。送達期間340の終了時、制御器は送達電流310を停止して、保持電流320を生成することにより非送達期間330(不応期間330としても知られる)を始動する。保持電流320は、薬剤51を静電引力によってリザーバ21内に保持するように構成される極性及び大きさ又は他の特性を有し(例えば、保持電流320の極性が、イオン形態の治療剤の電荷と逆の符号を有する)、それにより治療剤がパッチから皮膚内へと受動拡散することが防止され、又は最小限となる。かかる最小限の拡散は、
図5dの非送達曲線360に示される。他の場合に保持電流320からの引力が存在しなければ、かかる受動拡散が起こり得る。詳細な実施形態において、保持電流320の1つ以上の特性を、溶液54内の治療剤51の濃度及び/又は溶液54の他の特性に対して調整し、それにより保持電流が薬剤51をリザーバ21内に保持するのに十分であることを確実にし得る。例えば、電流320の大きさは、溶液54内の治療剤51の濃度に対して比例させるか、又は他の方法で(例えば幾何学的に)調整することができる。調整は、工場で、医療提供者により、又は制御器93内のソフトウェアを用いて行われ得る。調整はまた、送達サイクルの間に、溶液54内の薬剤51の濃度変化の変化分に対応して動的に行われ得る。詳細な実施形態において、溶液54内の薬剤51の濃度は、センサを用いて、センサの出力が制御器93に入力として送られる範囲内で計測してもよい。関連する実施形態において、同様の調整は、十分な薬剤51がリザーバ21から出て患者の皮膚内へと送達されることを確実にするための、溶液54中の薬剤51の濃度又は溶液54の他の特性に対する電流310の特性における調整であってもよい。
【0027】
また、非送達期間330の間、制御器は別の送達期間の始動をロックアウト又は他の方法で防止し、それにより患者(又は他の人)が自ら反復的に投薬する、ひいては自ら過量投薬することを防止する。ロックアウト期間の後、次に制御器は別の送達サイクルの始動を許容する。制御器はまた、選択された時間内、例えば、12時間、24時間内等に薬剤51の最大投与用量数のみを許容するようにプログラムするか、又はその他構成することができる。オピオイド系治療剤51p、例えばフェンタニル及びその類似体の送達についての詳細な実施形態において、最大用量数は、24、40、48、60、80、98又は100用量に対応し得る。望ましくは、最大用量数は、治療剤の濃度(例えば血漿中濃度)を治療係数(当該技術分野において公知の)の範囲内に抑え、且つ用量が呼吸抑制、低血圧、心拍数の低下及び/又は他の有害な生理学的影響を引き起こす、又は引き起こし始めるであろう最大忍容用量を超えることを防止するように構成される。同様に、最大送達用量数及び/又はロックアウト期間を選択することにより、患者に対する治療剤51の送達速度を、かかる有害な影響を引き起こし得る速度未満に抑え得る。最大用量数及びロックアウト期間は、限定なしに、治療剤、患者の年齢及び体重、患者の状態及び患者が(現在、過去又は将来に)投与を受けている他の治療剤を含む1つ以上のパラメータに基づき決定することができる。
【0028】
ここで
図6a、
図6b、
図6c、
図7a及び
図7bを参照すると、様々な実施形態において、様々な疼痛療法薬51p及び/又は他の治療剤のイオン泳動経皮送達用システム500は、皮膚形状適合パッチ505と、電子機器アセンブリ550とを含み得る。システム500(本明細書ではパッチアセンブリ500としても記載される)は、本明細書に記載されるとおりの「オンデマンド」経皮送達システム5’及び/又は二相性経皮イオン泳動送達システム5”として構成することができる。パッチ505は第1の電極アセンブリ510と第2の電極アセンブリ512とを備え、これらは本明細書に記載される電極アセンブリの1つ以上の実施形態に対応し得る。アセンブリの電極部分の作製に用いられる材料としては、あらゆる目的から全体が参照により本明細書に援用される米国特許出願第12/824,146号明細書及び同第12/824,147号明細書(双方とも2010年6月10日出願)にさらに記載されるグラファイトなどの様々な耐食材料を挙げることができる。また、電極アセンブリ510及び512の一方又は双方が、あらゆる目的から全体が参照により本明細書に援用される米国特許出願第12/832,011号明細書(10年7月7日出願)にさらに記載されるとおり、エッジ効果を低減するため同心状に離間された又はその他の形で配置された一対520の組織接触リング形電極521及び522を備えてもよい。
【0029】
電子機器アセンブリ550は、典型的には、パッチアセンブリ500を形成するようにパッチ505を係合するハウジング560を備える。ハウジング560は底面561と上面562とを備え、底面561が典型的にはパッチ505を係合する接触面であるが、他の配置もまた企図される。詳細な実施形態において、ハウジング560は、1つ以上の着脱要素600を介してパッチ505に着脱可能に結合するように構成することができる。
【0030】
ハウジング560は様々な形状を有し得る。多くの実施形態において、ハウジング560は、パッチアセンブリ500が置かれる標的組織部位TSの皮膚表面SSの輪郭C、例えば、患者の腕、脚又は腹部の(例えば、見た目に分からないように腰囲線より下側を含む腹の前面又は側面の)輪郭などに対応するように構成される曲面状に付形された輪郭564(底面561及び上面562の一方又は両方がこれであってよい)などの、付形された輪郭563を備えてもよい。輪郭563及び564は、i)特定の標的部位TSに対する標準的な輪郭に対応し得る;ii)種々の標的組織部位及び患者のサイズに対して種々のサイズ及び形状があり得る;又はiii)特定の患者及び標的組織部位に対して特別注文で付形され得る。また、ハウジング560は、パッチ505及びハウジング560が置かれる標的組織部位TSにおける皮膚表面SSの輪郭Cに少なくとも部分的に形状適合するように、形状適合性を(患者が静止しているとき、及び患者が動いているために皮膚の屈曲する動き及び他の変形が生じて皮膚表面輪郭が撓曲した輪郭になるときのいずれも)有し得る。従って、様々な実施形態において、ハウジング560の全て又は一部は、様々な弾性ポリマー、例えばシリコーン及びポリウレタンなどの当該技術分野において公知の様々な可塑性ポリマーを含み得る。他の可塑性ポリマーもまた企図される。ハウジングの可撓性/形状適合性はまた、特定の標的組織部位TSの必要性を満たすため、ハウジングの長さにわたり変化するように構成されてもよい。例えば、ハウジング560は、その中央部分560cで最も大きい可撓性を有するように構成することができる(これは一部の実施形態では、ハウジングの中央近傍にクリンプ又は関節式の領域560aを設けることにより達成できる)。また、ハウジング560の可撓特性はパッチ505の形状及び可撓特性に一致させるか又はその他相互に関連付けることができる。例えば、詳細な実施形態において、ハウジングの可撓性/形状適合性は、リング形電極521及び522を有するパッチ505の実施形態用に構成することができる。これらの及び関連する実施形態では、ハウジング560は、リング形電極521及び522(又はその他)とほぼ整列し得る可撓性がより高い(例えば剛性がより低い)範囲566を含む構造を有してもよく、それによりこれらの範囲の上でアセンブリ500の全体的な可撓性が低下することがなくなる。範囲566は形状が電極521及び522(又は他の異形電極)の形状に対応し得るが、範囲のサイズは電極のサイズと異なってもよい。範囲566は、ハウジングの厚さをこれらの範囲で減少させることにより、及び/又は可撓性がより高い材料の使用により、実現することができる。楕円形の範囲566又はさらには凹状の範囲566を有する構造などの、付形された範囲566を含むハウジング560の他の構造も企図される。
【0031】
また様々な実施形態において、ハウジング560は形状適合性であってよいばかりでなく、パッチアセンブリ500全体を使用者が衣服の下に装用することができ、且つ十分に屈曲及び撓曲し得るような形状及びサイズの外形565も有し、従って:i)使用者の衣服からの(服及び/又は皮膚の動きに起因する)圧力又は力によってすぐに剥がれることがなく、使用者の服の下の組織部位に接着したときにパッチアセンブリ500を長時間にわたり付けたままにしておくことができ;及びii)使用者の服の下で目につきにくい。様々な実施形態において、ハウジングの外形565は、患者の腕、脚、腹部又は他の標的組織部位TSの表面の輪郭Cに対応する(上面562及び底面561の一方又は両方の)輪郭564を有し得る。さらに、ハウジング560の実施形態は、パッチアセンブリ500が患者の腹部、腕、脚及び他の標的組織部位に置かれたときに、患者の皮膚の動きに対応するのに十分に屈曲及び撓曲するようにサイズが決められ、付形され、及び他の形で作製され得る。このように、パッチアセンブリ500が服の下に置かれても(又はそうでなくても)、このアセンブリは患者の皮膚に長期間十分に接着したまま/取り付けられたままであり得るため、従って所望の用量の薬物又は他の治療剤51を送達することが可能である。様々な実施形態において、この期間は最長24時間、最長3日間、最長1週間であってよく、さらに長い期間さえも企図される。パッチ505とハウジング560との具体的な組み合わせは、本明細書に記載される1つ以上の因子(例えば可撓性表面積等)を用いて、具体的な所望の取り付け期間向けに構成することができる。元素鉄を含むパッチの実施形態では、かかる構成により、鉄欠乏性貧血治療用の元素鉄の治療用量(例えば1〜100mg、具体的な実施形態では20、30及び50mg)を患者の鉄代謝による取り込み及び利用を促進する速度で送達するのに十分な時間にわたり、パッチが患者の皮膚に十分に接着した状態を保たせることができる。同様の構成及び方法を、本明細書に記載される他の薬物及び治療剤(例えばフェンタニル及びその類似体及び誘導体などのオピオイド)の送達に用いることができる。
【0032】
さらに、ハウジング560のサイズ及び形状(例えば、楕円形、円形、ドッグボーン形等のハウジング底面561の形状)並びに可撓性のうちの1つ以上を、パッチ505のサイズ及び形状(例えば、パッチ表面505sの形状)並びに可撓性のうちの1つ以上に対して選択することで、パッチアセンブリ500が目につくところに又は患者の服の下に装用されるとき、ハウジング560からパッチの下の皮膚表面SSに加わる力(患者の皮膚の動きに起因する)又は衣服からパッチ505の下の皮膚表面に加わる力(衣服又は皮膚の動きに起因する)の大きさを極めて一様にする(例えば、力の集中する範囲を最小限として力の分布を実質的に一様にする)ことができる。使用中、これらの及び関連する実施形態は、かかる力の集中からの高電流密度及び/又は過熱点による皮膚の熱的、電気的な又は他の損傷の大きさを最小限に抑える働きをする。加えて、さらに2つ以上(two more or)の電極アセンブリ(例えば、アセンブリ510及び512)を有するパッチ505の実施形態からの1つ又は複数の治療剤51の送達を用いる実施形態について、力の集中(皮膚の動き等による)を最小限に抑えるかかる構成はまた、第2の電極(又はその他)と比べた第1の電極からの治療剤の送達に対する任意の影響も最小限に抑える働きをする。詳細な実施形態において、これは、第2の電極アセンブリ512(又は他の電極アセンブリ)と比べた第1の電極アセンブリ510からの治療剤の送達速度又は総送達量に対する任意の影響を最小限に抑える働きをし得る。
【0033】
詳細な実施形態において、かかる結果は、ハウジング560とパッチ505の可撓性を一致させる(ほぼ同等か、或いは選択した量、例えば5〜50%だけ高く又は低くする)とともに、パッチ505の表面積がハウジング560の表面積と比べて十分に大きく、それによりスノーシュー様の効果が生じることで、衣服からハウジングに加わる任意の力又は他の加わる力(皮膚の動きに起因する力など)がパッチ505の表面積全体にわたり均等に分布するように構成することによって達成され得る。1:1.5〜1:10(ハウジング表面積対パッチ表面積)の範囲の表面積比が企図され、具体的な実施形態では1:2、1:3、1:5である。
【0034】
さらに他の実施形態では、ハウジング560又はパッチ505は、使用者の服によってハウジング及び/又はパッチに加わる力の大きさを検知する固体ストレインゲージなどの圧力センサ567を備えてもよい。次に圧力センサからの入力を用いることにより、加えられる力に対してパッチに送られる電流を変調する(増加させるか、或いは減少させる)ことができる。電流を下方に変調すると、過剰な圧力からパッチに過熱点が発生するのを防止することができ、又は上方に変調すると、加えられた圧力に起因する皮膚の電気インピーダンスの任意の増加に対応することができる。
【0035】
アセンブリ550は、典型的には電源570(本明細書では電流源570とも称される)と、皮膚に対する薬剤のイオン泳動送達の1つ以上の側面を制御する制御器530(例えば、マイクロプロセッサ又は同様の装置)とを備え得る。制御器530はまた、皮膚への電流の送達を制御する内蔵の又は独立した出力制御器535も備えることができる。制御器530及び535の一方又は両方は、皮膚への電流の送達を制限し又はその他制御するHブリッジ又は他の電流切換/制限装置540に結合することができる。ハウジングはまた、典型的には、シリンダ形のキャビティなどの、電流源570用のキャビティ580を備えてもよく、これはAA又はAAAバッテリなどの標準的なサイズのバッテリ用にサイズが決められ得る。キャビティ580の他の形状もまた企図される。
【0036】
様々な実施形態において、電流源570は、アルカリ、リチウム、リチウムイオン及び同様の化学物質を含む1つ以上の電気化学バッテリを含み得る。議論を簡単にするため、本明細書では電流源570をバッテリ570と称するが、他の電流源も等しく適用可能である。バッテリ570はまた、当該技術分野において公知の充電式バッテリも含み得る。バッテリ570は、皮膚に対して治療剤の経皮送達に十分な電流/電圧を2〜24時間の範囲の又はさらに長い期間にわたり送達する選択された能力を有し得る。電源570はまた、交流電源にも対応し得る。従って、1つ又は複数の電気化学バッテリを含む実施形態において、電源570は、1つ又は複数のバッテリからのDC信号をAC信号に変換する回路を備え得る。種々の蓄積コンデンサ及び圧電式のエネルギー回収装置など、他の電源/電流源570もまた企図される。
【0037】
パッチ505は、典型的には、電子機器アセンブリ550上の導電素子591に電気的に結合するための1つ以上の導電範囲506を備え得る。導電範囲506は、パッチ表面505s上又はパッチ505内に配置された導電トレース590に結合することができる。電子機器アセンブリ550上の導電素子は、制御器530及び電流源570の一方又は両方に結合することができる。
【0038】
着脱要素600はばね荷重式であってもよく、使用者が指を係合するように構成することができる。詳細な実施形態において、着脱要素600は、パッチ505に繋止するための、フックなどの1つ以上の繋止要素601を備え、又はそれと機械的に結合され得る。繋止要素601はまた、パッチ表面505Sを係合するハウジング底面561に配置された接着範囲を含んでもよい。
【0039】
使用中、着脱要素600により、使用者が選択されたパッチ505に電子機器アセンブリ550を取り付けたり、取り外したりすることが可能になる。これにより、複数のパッチに対して電子機器アセンブリ550を再使用することが可能になる。システム500を使用する例示的実施形態において、使用者は、特定のパッチ505を入手し、以下に記載するバーコードリーダ(又は他の表示(indicia)読み取り手段)を使用してパッチに関する情報を走査し、次にパッチ505をアセンブリ550に取り付けることができる。使用者がパッチの使用を完了すると(例えば、所望の量の薬物が送達され終えたときなど)、次に使用者は、パッチ505からアセンブリ550を取り外し、パッチ505を廃棄する。詳細な実施形態において、アセンブリ550は、パッチ505を取り外すタイミングを使用者に知らせるビープ音又は他の警告などの信号を提供するプログラミングを備えることができる。代替例として、パッチ表面505sは、必要な薬剤量が皮膚に送達され終えると色を変化させるか又はその他視認可能な表示508を使用者に提供するインジケータ部分507を備えることができる。一実施形態において、表示508は、治療剤51の量が送達され終えると視認可能になる記号又はマーキング509を含み得る。マーキングの視認性は、パッチ505内の治療剤51の消耗及び/又はパッチ内又はパッチ上での化学的又は電気化学的反応によってもたらされ得る。
【0040】
詳細な実施形態において、電子機器アセンブリ550はまた、パッチ505に関する様々な情報、例えば、パッチに含まれる治療剤51の種類及び量、望ましい送達レジメン、ロット番号(パッチ505及び治療剤51の)、有効期間、使用期限及び関連情報を確認するため、パッチ505上にプリントされたバーコードを読み取るためのバーコードリーダも含み得る。追加的又は代替的な実施形態において、パッチ505は、同様の情報を含む、且つ電子機器アセンブリ550により(例えば制御器530により)可読である記憶装置(例えばEEPROMなど)506を内蔵してもよい。アセンブリ550もまた、情報(上記に記載される)を保存する記憶装置556を内蔵してもよく、これはマイクロ制御器530に結合され得る。記憶装置556に含まれる情報(例えば、治療剤51の種類、用量及びロット番号)は、工場で入力され、及び/又は医師若しくは薬剤師によって入力され得る。また情報入力は、直接行われても、又はネットワーク、例えばインターネット若しくは携帯電話ネットワーク又は他の同様のネットワークを介して行われてもよい。パッチ505に関する情報の他の表示の読み取り/検出用の、他の表示読み取り手段もまた企図される。かかる表示読み取り手段としては、限定なしに、当該技術分野において公知の種々のRFIDチップの使用を挙げることができる。
【0041】
パッチ505とアセンブリ550とを含むシステム500は、腕、脚又は腹部、背中又は他の位置を含めた、患者の皮膚上のあらゆる位置に配置されるようにサイズ及び形状が決められ得る。パッチ505及びハウジング560の詳細な材料特性(例えば、厚さ、弾性係数、屈曲性等)もまた、所望の位置への配置を可能にするように選択され得る。例えば、腹などの、使用者がより大きく屈曲させる皮膚範囲に対するシステム500の配置には、より高い可撓性の材料特性を選択することができる。また、パッチ505とアセンブリ550とは、例えばキット500k(これは使用説明書を備え得る)として共に包装されてもよく、ここでアセンブリ550は、サイズ、電流源、プログラミング機械特性等の点でパッチ505と適合する。さらに、かかる一群のパッチ505又は特定のロット番号のパッチ505に対して所与のアセンブリ550を較正することができる。かかる実施形態では、特定のアセンブリ550と共に複数のパッチ505が含まれ得る。使用時、これにより患者は、数日、数週、又は数ヶ月の期間にわたる特定の治療剤51の送達必要量を満たす全供給分のパッチを入手することが可能となる。さらに、アセンブリ550は、患者がパッチ505の手持ちの供給分がなくなる間近になると、アセンブリが患者にパッチを買い足すようメッセージを出すようにプログラムすることができる。関連する実施形態において、アセンブリ550はインターネット及び/又は携帯電話などの移動通信装置と連動することで、患者の薬局及び/又は医師に対し以下の1つ以上を行うようにメッセージを送るように構成することができる:i)特定の治療剤パッチ505に対する患者の処方箋を更新する;ii)治療剤パッチ505の供給分の注文を、患者が自身の薬局で受け取ることができる状態にする;及び/又はiii)患者の自宅に治療剤パッチ505の注文を出荷する。
【0042】
ここで
図8A〜
図8Fを参照して、様々な波形800又は電流出力変動(経時)及び1つ以上の治療剤51の送達又は保持を促進するために用いることのできるそれらの特性にについての考察を提供する。これらの波形の実施形態は、単一の又は2つ以上の活性電極20を有する本発明の実施形態に用いることができる。本明細書に記載される数多くの実施形態は、所与の極性とゼロとの間を変動する波形800を提供し、ここで当該の極性では、電流(例えば電流310)に治療剤51が反発して皮膚に入る。他の実施形態では、波形800は正極性と負極性とが交互に換わり、かかる波形は本明細書では波形801と称される。
【0043】
正極性と負極性とが交互に換わる波形801を有する実施形態では、波形801は、使用時に各電極アセンブリ(例えばアセンブリ20及び30)に送達される電流が荷電平衡AC電流であるように構成される荷電平衡波形802であってもよい。荷電平衡AC電流とは、所与の持続時間にわたり、各極性において皮膚に送り込まれる電流の量が実質的に均等であることを意味する。本明細書で使用されるとき、実質的に均等とは、1つ又は複数の波形のその期間にわたり2つの値が互いの80%以内、及びより好ましくは90%又は99%以内であることを意味する。荷電平衡の形で交互に替わるように波形を方向付けることにより、皮膚に対する電気的毒性又は他の傷害を低減し、又は最小限に抑えることができる。他の実施形態では、電荷の平衡に向かって方向付けられる交流電流波形が用いられるが、但しいくらかの非対称性が存在し得る。
【0044】
以下に記載する波形800の実施形態は、最小値と最大値との間を変化する。
図8bで記載するものなどの、波形800の一部の実施形態は、電荷値が交互に入れ替わってもよく(すなわち逆極性を含む)、かかる波形は本明細書では交互電荷波形801と称される。かかる実施形態では、電流の送達は、波形801が上記に記載したとおりの荷電平衡波形802となるように電荷が平衡化され得る。
【0045】
図8aは、ある実施形態に係る、持続的な又は長時間の薬物送達期間又は持続時間840(これは、
図5cに示される送達期間340に対応し得る)を含む波形800を示す。一部の実施形態では、皮膚は、所与の持続時間における電流の最大量(最大電流送達)(例えば毎分80ミリアンペア)のみを取り扱うと仮定されてもよい。所与のアンペア数に対して、最大電流送達を超過しないように交流電源(例えば、上記に記載される電源100)の出力の持続時間を設定してもよい。送達持続時間840は、電流出力I
1の期間全体に対する何らかの割合又は比率(例えばn=2に対して50%)に設定され得る。例えば、一部の実施態様では、最大電流送達(I
1)は1分間に80ミリアンペアと仮定される。かかる実施態様では、送達持続時間は4ミリアンペア出力に対して20秒に設定される。電源100の出力は、負極性に切り換わるのでなく、ゼロアンペア出力に換わり得る(極性を切り換えるのでなく)。
図8Aに示される波形800は矩形であるが、波形800の様々な実施形態が代替的な形を有してもよく(例えば正弦波形、台形)、電流送達は曲線下面積に対応する。
図8Aにより示される例では、交流電源100は送達持続時間840を1つの電極(例えば、活性電極20)に対して開始し、送達持続時間は、治療剤の電荷の極性と一致する極性を有する電流により設定される。電流はゼロ出力に換わってもよく、ここでは薬物送達が実質的に止まる。従って、非送達持続時間830は、電流の反転ではなく、ゼロ電流出力に一致する。他の実施形態では、非送達持続時間830は、以下の
図8bの実施形態及び上記の
図5bの実施形態に記載するとおり活性薬剤51の電荷と逆の極性を有する電流(例えば、保持電流320の形態)の使用によって実現される。
【0046】
図8Bは、交流電力信号が対称方形波804などの対称波803を出力する別の実施形態を示す。
図8B(及び本明細書に示される他の波形)は、電荷平衡波形802を使用した電荷平衡交流電流の送達を例示する。例えば、極性対称波形は荷電平衡と見なし得る。適用に応じて、波形802のサイクルの周期Pは長くてもよく(例えば20分)、又は短くてもよい(1/60秒)。送達持続時間840は、波形802の周期Pの半分に相当し得る。示される実施態様では、非送達持続時間830に逆電流が用いられ、それにより皮膚への薬剤送達が能動的に阻止される。
【0047】
図8Cは、交流電力信号が、送達持続時間840と非送達持続時間830とが異なる点で非対称の波805、例えば非対称の方形波806を出力する本発明の別の実施形態を示す。より具体的には、非対称方形波805は、より長い送達持続時間(t
1)と、それに続く短い(より短い)休止持続時間(t
2)とを含み得る。休止持続時間は、ゼロ電流、又は図示されるとおり、逆電流(I
2)の期間に相当し得る。一つの適用では、休止持続時間は、前の持続時間における薬物送達からの皮膚層の回復を可能にする(例えば任意の熱、イオン濃度、又は電流の送達によって生じる他の副産物を散逸させる)。代替例又は変形例として、休止期間は、皮膚層にゼロ電流が印加される期間に続いてもよく、それにより電流印加からの皮膚層の回復が可能となる。
【0048】
図8Dは、交流電力信号が台形波形807を有し、従ってランプ上昇期間808及び/又はランプ下降期間809を含む別の実施形態を示す。図示されるとおり、I
1は、交流電源(例えば電源100)によって生じる最大電流出力である。ランプ上昇期間808は持続時間t
rに及び、これは、使用者が電流の印加及び/又は治療剤51の送達に体を慣らすことができるようにすることを含む理由から選択される。ランプ上昇期間808は長くてもよく、それによりランプ上昇持続時間を有効にすることが可能である。ある実施形態では、ランプ下降期間809が場合により実現されてもよい。
【0049】
図8E及び
図8Fは、高周波振動811が低周波数基本波形810に重畳される複合波形813を含めた、代替的な波形変動を示す。基本波形810は、数秒間又は数分間続く周期P
810を有してもよく、これは最大電流(例えば4mA)からゼロ電流及び/又は逆電流に至る範囲の電極アセンブリに対する出力電流に対応する。高周波振動は、その周期の実現値における小さい電流値変動を反映する。高周波振動811の周期P
811は、基本波形と比べて1マグニチュード(magnitudes)以上短くてもよい。例として、基本波形800が数秒乃至数分の範囲の周期P
810を有してもよく、波形の高周波振動が数ミリ秒〜数秒の範囲の周期を有してもよい。高周波振動811の効果は、治療剤51を受け取る際の皮膚層における容量電荷の効果を低減することである。また、治療剤が皮膚中を通って進むとき治療剤の動きに振動を生じさせることにより、皮膚を通る最小抵抗の経路を探し出せるようにすることで、、高周波振動811を用いて角質層を含む皮膚を通じた治療剤の輸送を促進することもできる。かかる実施形態では、モデリング(例えば薬物動態モデリング)及び/又は患者の年齢、皮膚のタイプ及び皮膚の位置を用いることによって、高周波振動を、この効果を増強するように調整してもよい。
【0050】
基本波形810は、先行する実施形態に記載したような考慮事項に関して選択されてもよい。例えば、
図8Eでは、波形813はランプ上昇期間808を含む。
図8Fでは、波形800は、非送達持続時間830に切り換わる送達持続時間840を有する。
図8Fの実施形態は、高周波振動811を、それが送達持続時間840の間のみ存在するように生じさせ得ることを例示する。
【0051】
フェンタニル適用
ここで、フェンタニル及びその経皮送達に対する本発明の様々な実施形態の使用に関する考察を提供する。かかる実施形態は、本明細書に記載される様々なシステム、パッチ及び電極アセンブリを含むことができる。本発明の様々な実施形態により送達され得るフェンタニルの形態としては、限定なしに、フェンタニル及びその類似体及び誘導体、並びにフェンタニル塩酸塩、フェンタニルクエン酸塩及びフェンタニルパモ酸塩などのフェンタニルの塩が挙げられる。フェンタニル(フェンタニールとしても知られる)は、急激に発現する、且つ作用持続時間が短い強力な合成麻薬性鎮痛薬である。フェンタニルはμ−オピオイド受容体における強力なアゴニストである。フェンタニルは、SUBLIMAZE、ACTIQ、DUROGESIC、DURAGESIC、FENTORA、ONSOLIS、INSTANYL、ABSTRAL及びその他の商標名で製造されている。歴史的には、フェンタニルは慢性突出痛の治療に用いられており、一般に手技前に、ベンゾジアゼピンと組み合わせて麻酔薬として使用される。フェンタニルはモルヒネの約100倍強力であり、鎮痛活性において100マイクログラムのフェンタニルが10mgのモルヒネ及び75mgのペチジン(メペリジン)とほぼ等価である。典型的には、本発明の様々な実施形態により送達されるフェンタニル(その類似体又は誘導体を含む)は、水溶性フェンタニル塩の水溶液を含み得る。一部の実施形態では、この水溶液は、ハイドロゲルマトリックスなどの親水性ポリマーマトリックス内に含まれる。ハイドロゲルマトリックスは、リザーバ21、組織接触層24又は本明細書に記載されるアセンブリ14及び15cpなどの電極/パッチアセンブリの他の部分に収容され得る。フェンタニル(又は類似体若しくは誘導体)塩含有ハイドロゲルは、好適には、親水性ポリマー材料、例えば天然で極性の、従って薬物安定性を増進するものを含むあらゆる材料から作られ得る。ハイドロゲルマトリックスに好適な極性ポリマーは、様々な合成の及び天然に存在するポリマー材料を含む。一実施形態において、ハイドロゲル製剤は、好適な親水性ポリマー、緩衝剤、保湿剤、増粘剤、水及び水溶性フェンタニル又は類似体若しくは誘導体塩を含む。好適な親水性ポリマーは親水性ポリマーマトリックスを含むことができ、これは、1つ又は複数の実施形態において、洗浄され完全に加水分解されたポリビニルアルコール(PVOH)などのポリビニルアルコールに対応し得る。好適な緩衝剤には、酸及び塩の双方の形態の、メタクリル酸とジビニルベンゼンとの共重合体であるイオン交換樹脂が含まれる。かかる緩衝剤の一例は、ポラクリリン(Rohm & Haas,Philadelphia,Pa.から入手可能なメタクリル酸とジビニルベンゼンとの共重合体)とそのカリウム塩との混合物である。酸とカリウム塩形態のポラクリリンとの混合物は、ハイドロゲルのpHを約pH6に調整するポリマー緩衝剤として機能する。ハイドロゲル製剤中における保湿剤の使用は、ハイドロゲルからの水分損失を抑制するのに有益である。好適な保湿剤の例はグアーガムである。増粘剤もまた、ハイドロゲル製剤において有益である。例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのポリビニルアルコール増粘剤は、熱ポリマー溶液がモールド又はキャビティに分注されるときの、そのレオロジーを改良するのに役立つ。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは冷却すると粘度が増加し、冷却されたポリマー溶液がモールド又はキャビティを過充填する傾向を大幅に低減する。一実施形態において、フェンタニル(又は類似体若しくは誘導体)塩含有ハイドロゲル製剤は、約10〜15wt%ポリビニルアルコール、0.1〜0.4wt%樹脂緩衝剤、及び約1〜2wt%フェンタニル(又は類似体若しくは誘導体)塩を含む。残りは水、及び保湿剤、増粘剤等の諸成分である。送達期間にわたる投与に好適なフェンタニル用量としては、例えば、20〜60マイクログラム、又は35〜45マイクログラム、又は40マイクログラムが挙げられる。送達期間は、典型的には最長、例えば20分である。概して、所望の鎮痛効果を実現するために、24時間で10〜100用量のフェンタニルが送達される;例えば、24時間で40、60又は80用量のフェンタニルを送達することができる。結果的に、24時間で送達されるフェンタニルの総用量は、概して0.2〜6.0ミリグラム、又は0.35〜4.5ミリグラム、又は0.4〜4.0ミリグラム、又は3.0ミリグラムの範囲である。
【0052】
好適なフェンタニル類似体としては、限定なしに以下が挙げられる:超短時間作用性(5〜10分間)鎮痛薬であるアルフェンタニル(商標名ALFENTA);特定の手術及び重度のオピオイド耐性/オピオイド依存症患者の手術において用いられる強力な鎮痛薬であるスフェンタニル(商標名SUFENTA);現在最も短時間作用性のオピオイドであるレミフェンタニル(商標名ULTIVA)、長時間注入の後であっても急速に消失するという利益がある;モルヒネの10,000倍の鎮痛効力を有するフェンタニルの類似体であるカーフェンタニル(商標名WILDNIL)、獣医学診療においてゾウなどの特定の大型動物の固定に用いられる;及びカーフェンタニルより僅かに高い効力を有するフェンタニルの類似体であるロフェンタニル。フェンタニル類似体の用量は、個々の効力及び薬物動態を考慮して選択される。例えば、最長20分の典型的な送達期間に対して、スフェンタニールの好適な用量としては、例えば、2.3〜7マイクログラム、又は4〜5.5マイクログラム、又は4.7マイクログラムが挙げられる。様々な実施形態において、所望の鎮痛効果を実現するため、24時間で10〜100用量のスフェンタニールが送達される;例えば、24、30、40、60又は80用量のスフェンタニールを24時間で送達してもよい。結果的に、24時間で送達されるスフェンタニールの総用量は、23〜700マイクログラム、又は40〜550マイクログラム、又は47〜470マイクログラムの範囲であってよい。
【実施例】
【0053】
二相性経皮イオン泳動(iontophoreritic)送達システムの実施形態の使用を詳述する添付の例を参照して、本発明の様々な実施形態をさらに例示する。本例の諸部分はまた、以下の表題の論文にも記載される:Biphasic Transdermal Iontophoretic Drug Delivery Platform(McLaughlin,G.W,et al Conf. Proc.IEEE Eng.Med.Biol.Soc.2011 Aug;2011:1225−8)(これはあらゆる目的から参照により本明細書に援用される)。本例は例示のために提供されるもので、本発明はそのなかの情報又は詳細に限定されないことは理解されなければならない。例えば、提供される例では塩化第一鉄の送達が説明されるが、本発明の様々な実施形態は、例えば様々なオピオイド及び他の鎮痛薬(例えばフェンタニル)、制吐薬(anitemetics)(例えばジメンヒドリナート)及び他の治療剤を含めた、この手法を用いるあらゆる化合物の送達に使用し得ることは理解されなければならない。
【0054】
方法
システム説明:治療剤の送達を試験したシステムの一実施形態には、以下に記載する活性電極、不活性電極、イオントフォレシスシステム及びプログラマが含まれた。
【0055】
活性電極:これは、緩衝剤を除去し、且つ4.0mlの溶液と共に2枚の3Mガーゼを詰めたティーバッグに置き換えた、DuPel モデル番号198809−001(Empi,Inc.,Clear Lake,SD,USA)電極を使用することにより作製した。溶液は、1.2gのFeCl2(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO,USA)及び300mgのポリエチレンオキシド(PEO,Mol wt.100k)を4mlのDI水に溶解することにより調製した。活性電極面積は13.3cm2であった。
【0056】
不活性電極:これは、緩衝剤を除去し、且つ2枚の3Mガーゼ及び300mgのポリエチレンオキシド(PEO)を詰めたティーバッグに置き換えて4mlのDI水を添加した、DuPel モデル番号198809−001電極を使用して作製した。活性電極面積は13.3cm2であった。
【0057】
イオントフォレシスシステム:これは、MSP430F428(Texas Instruments,Dallas,Tx,USA)マイクロ制御器により制御される特注のユニットを含んだ。このマイクロ制御器は、Hブリッジ回路のスイッチ状態間の駆動を可変電流源と連動させて調整した。Hブリッジは、分解能が約650mVステップ及び最大コンプライアンス電圧が80Vのプログラマブル電圧レールを有した。可変電流源は、分解能が約40μ×A、上限が5mAのプログラマブル電流ターゲットを有した。マイクロ制御器は、これらの値を5Hzの速度で更新することが、値の計測及びデータアーカイブを目的としたタイムスタンプ付きの保存と共に可能であった。2つのAAバッテリを使用してシステムに動力を供給した。これらのバッテリは、標準的治療プロファイルに基づき最長40時間の動作を提供する能力を有した。
図1は、このシステムの図を、内部の概略ブロック図と共に示す。
【0058】
プログラマ:これは、USBケーブルを介してイオントフォレシスシステムに連結することが可能なパーソナルコンピュータを含んだ。装置をプログラムするのに用いたアプリケーションコードはTCL/TKで書いた。このプログラムでは、治療パルス持続時間及び電流値の設定が、抑止パルス持続時間及び電流値の設定と共に可能であった。プログラムはまた、総治療持続時間を指定することも可能であった。加えて、このプログラマは、ユニットに保存されたデータを分析のために読み出すことも可能であった。
【0059】
実験セットアップ:ブロックPTFEから10個のインビトロ試験チャンバを作製し、120mlのハンクス緩衝塩溶液(HBSS)を充填した。雄ヨークシャーブタ(35kg)から新しく摘出した腹部皮膚を10片(100mm×175mm)の切片にした。ヨークシャーブタ皮膚を使用したのは、それがヒト皮膚の特性を忠実に模倣することが示されているためであった。皮膚の真皮層の下の皮下脂肪を除去し、角質層、表皮、基底層及び真皮層のみが残るようにした。次に皮膚を剃毛し、輸送を変化させ得る染み又は擦り傷を調べた。各試験チャンバの上部に皮膚片を置いた。皮膚の完全性を損なわないように特別の注意を払った。皮膚を1・1/4”クリップで試験チャンバに固定化した。次に活性電極及び不活性電極をブタ皮膚上に置き、イオントフォレシスシステムに取り付けた。この過程において、皮膚の変則的な点は全て回避された。
【0060】
イオントフォレシスシステムは、6時間の治療セッションを提供するように構成した。治療セッションの最初の1時間は、−3mAの電流値の抑止モードのシステムからなった。治療セッションの2時間目は、3mAの電流値の推進モードであった。3時間目及び4時間目は、システムは−3mAの電流値の抑止モードであった。5時間目は、システムは3mAの電流値の推進モードであり、6時間目は、システムは−3mAの電流値の抑止モードであった。
【0061】
実験チャンバをマグネチックスターラ付き熱板上に置いてHBSS溶液を29℃〜34℃に維持し、これによりブタ皮膚の表面が28℃〜33℃に維持された。1mlの試料を15分毎に、25ゲージ針を使用してリザーバから抜き取った。等価な量のHBBS溶液を補充して、試験チャンバのレベルを維持した。データ分析中、適切な補正係数を用いてこの流体交換を補償した。
【0062】
治療の完了後、炎症及び/又は着色について皮膚試料を目視で調べた。次に試料を撮影した。必要な希釈の後、標準的な比色アッセイを用いて鉄の濃度を定量化した。この試料を、ヒドロキシルアミン、チオ尿素及びFerene(5,5’(3−(2−ピリジル)−1,2,4−トリアジン−5,6−ジイル)−ビス−2−フランスルホン酸,二ナトリウム塩)を含有する酸性緩衝試薬に添加した。緩衝試薬の酸性pHを用いて第二鉄を遊離させた。次にこの第二鉄は、ヒドロキシルアミンによって第一鉄形態に還元される。この第一鉄をFereneと反応させると、着色複合体が生じた。次にこの第一鉄−Ferene複合体の吸収を、分光光度計(Multiscan EX;Thermo Electron Corporation,Vantaa,フィンランド)を使用して595nmで読み取った。この吸収スペクトルは、試料中の鉄濃度の吸収スペクトルとの比例関係を提供した。このアッセイ方法は、50μg/dlの定量下限を提供する。
【0063】
結果
15分の試料期間毎に10試料の平均を取り、平均累積密度データセットを得た。次にこのデータセットを、求めるシステムの出力計測値y(t)として使用した。システムに対する入力は、治療セッションの駆動部分の既知の積分x(t)であった。次にこれらのデータセットを使用して、システム伝達関数h
est(t)を求めた。これをブロック図の形式で
図9に示す。
【0064】
システムに対する入力及び出力信号のフーリエ変換に基づきシステムの伝達関数h
est(t)を推定した。
次に得られた伝達関数の逆フーリエ変換をとった。次にこのデータセットをクロップし、システム伝達関数の記憶を10試料の期間又は2.5時間に制限した。次に既知の入力データをこの伝達関数とコンボリューションして、推定累積システム密度応答を得た。次にこのデータを分析し、出力予測値がどの程度良好に出力計測値と一致するかを決定した。その結果0.912のR2値が得られ、モデルとデータとの間の良好な相関が確認された。
【0065】
次に、計測した累積密度データの微分をとった。データの微分の正確な推定値を得るため、単一の試料ステップに移すデータの各4試料について一次最小二乗平均フィットを実行した。次にこのフィットの傾きを、データの微分の代表値として使用した。次に、累積密度関数データと同じ方法を用いてこのデータを分析した。その結果0.802のR
2値が得られ、
図10a及び
図10bに示すとおり予測モデルが推定パルス性薬物送達モデルと良好に相関したことが確認された。
【0066】
計測結果は、治療サイクルの開始と生理食塩水中のFeCl
2の検出との間に約45分の時間のずれを示す。この時間のずれは、インビトロ試験においては、全ての皮膚層を横断して生理食塩水浴に到達するのに必要な輸送時間に起因すると予想される。インビボ試験では、このずれは、基底層の真下の能動的な微小毛細血管系に起因して実質的により小さいものと予想され、真皮層を通過させる材料の必要性が軽減される。
【0067】
結論
本発明の様々な実施形態の前述の説明は、例示及び説明のために提供されている。本発明を開示される正確な形態に限定することは意図されない。当業者には、多くの改変形態、変形形態及び改良形態が明らかであろう。例えば、イオン泳動パッチは、種々の医学的状態、種々の組織部位向け並びに様々な小児適用向けに、サイズ、形状及び治療剤の用量を改変することができる。加えて、パッチアセンブリ、方法及び制御アルゴリズムもまた、皮膚のタイプ、治療剤用量、並びに様々な小児適用向けに改変することができる。
【0068】
ある実施形態の要素、特性、又は作用を、他の実施形態の1つ以上の要素、特性又は作用と容易に組み合わせ直し、又はそれに置き換えて、本発明の範囲内にある数多くのさらなる実施形態を形成することができる。さらに、他の要素と組み合わされるものとして図示又は説明される要素が、様々な実施形態において独立した要素として存在してもよい。従って、本発明の範囲は説明される実施形態の詳細に限定されるものではなく、むしろ添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。