(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133844
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】回転式流体ばねを有する波エネルギー変換器
(51)【国際特許分類】
F03B 13/22 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
F03B13/22
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-502667(P2014-502667)
(86)(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公表番号】特表2014-509715(P2014-509715A)
(43)【公表日】2014年4月21日
(86)【国際出願番号】US2012030630
(87)【国際公開番号】WO2012135154
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年2月13日
(31)【優先権主張番号】61/516,003
(32)【優先日】2011年3月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/516,025
(32)【優先日】2011年3月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/516,004
(32)【優先日】2011年3月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501063427
【氏名又は名称】オーシャン パワー テクノロジーズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】スチュワート,デヴィッド,ビー.
【審査官】
山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−518568(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/067341(WO,A2)
【文献】
特表2007−518024(JP,A)
【文献】
特表2010−511821(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/117415(WO,A1)
【文献】
国際公開第2005/040603(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0085357(US,A1)
【文献】
米国特許第04912995(US,A)
【文献】
米国特許第06226989(US,B1)
【文献】
欧州特許出願公開第02128430(EP,A1)
【文献】
特開2002−285946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/00−13/26
F03B 17/00−17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波エネルギー変換器(WEC)システムであって、
水塊の表面に沿って延在するとともに前記水塊において波の動きに応答するように設計されたコンテナーと、
前記コンテナー内に設置且つ全体的に内包されている波エネルギー変換器(WEC)デバイスであって、該WECデバイスは、前記コンテナー内に位置し、且つ前記波の動きに応答して概ね上下動するように構成された反動質量体を備える波エネルギー変換器(WEC)デバイスと、
回転式液圧ポンプ/モーター及び蓄圧器を備える回転式流体ばねであって、前記回転式液圧ポンプ/モーターは、前記反動質量体に回転可能に連結されて、前記反動質量体の振動及び位置の少なくとも一方を制御する、回転式流体ばねと、
を備える、波エネルギー変換器(WEC)システム。
【請求項2】
前記WECデバイスは、ラック及びピニオンギアの機構を備え、該ラックは、前記反動質量体によって上下に駆動され、前記ラックは、前記ピニオンギアの回転を引き起こし、前記ピニオンギアは、前記回転式液圧ポンプ/モーターに連結されたシャフトを有する、請求項1に記載のWECシステム。
【請求項3】
前記反動質量体は、該反動質量体の上下動に応じて回転するドラムにレバーアームを介して連結され、前記ドラムは、シャフトを介して前記回転式液圧ポンプ/モーターに連結されている、請求項1に記載のWECシステム。
【請求項4】
前記WECデバイスは、前記反動質量体に連結されたベルト及びプーリーのシステムを備え、前記ベルトは、前記反動質量体の移動に応じて移動し、前記ベルトは、該ベルトの移動に応答して回転するシャフトに連結され、該シャフトは、前記回転式液圧ポンプ/モーターに連結されている、請求項1に記載のWECシステム。
【請求項5】
前記WECデバイスは、前記反動質量体に連結されたボール及びねじの機構を備え、前記ねじは、前記反動質量体の前記移動に応答して回転し、前記回転するねじは、前記回転式液圧ポンプ/モーターに連結されている、請求項1に記載のWECシステム。
【請求項6】
前記回転式流体ばねは、液体を貯蔵するための貯蔵器を備え、前記回転式液圧ポンプ/モーターは、第1の流体フローラインを介して前記貯蔵器に連結され、第2の流体フローラインを介して前記蓄圧器に連結され、気体が該蓄圧器に含まれている、請求項1に記載のWECシステム。
【請求項7】
前記反動質量体は、上部点と底部点との間を移動し、前記回転式液圧ポンプ/モーターは、前記反動質量体がその底部位置に移動するとき、ポンプとして機能して、前記蓄圧器内の圧力を増大させ、前記回転式液圧ポンプ/モーターは、前記反動質量体がその上部位置に移動するか又は駆動されるとき、前記蓄圧器内の圧力を減少させるモーターとして機能する、請求項6に記載のWECシステム。
【請求項8】
動力取出装置が前記反動質量体に連結されて、その移動を有用なエネルギーに変換する、請求項6に記載のWECシステム。
【請求項9】
前記蓄圧器は、N個のサブ蓄圧器を含み、各サブ蓄圧器は、前記蓄圧器がそれぞれのサブ蓄圧器を含めることを有効又は無効にする関連付けられた制御可能な弁を有する、請求項6に記載のWECシステム。
【請求項10】
前記弁は、電気信号によって制御可能である、請求項9に記載のWECシステム。
【請求項11】
前記蓄圧器は、N個のサブ蓄圧器を含み、各サブ蓄圧器は、前記蓄圧器がそれぞれのサブ蓄圧器を含めることを有効又は無効にする関連付けられた弁を有し、前記WECデバイスは、選択された信号に応答して、これらの信号を処理するとともに選択された信号を前記弁のうちの選択されたものに印加し、それによって、前記回転式流体ばねのばね反応性を制御するプロセッサを備える、請求項6に記載のWECシステム。
【請求項12】
前記回転式流体ばねは、可変ばねであり、そのばね反応性は、前記蓄圧器に追加の蓄圧器を選択的に加えるか又は取り除くことによって変更される、請求項1に記載のWECシステム。
【請求項13】
波エネルギー変換器(WEC)システムであって、
水塊の表面に沿って延在するとともに前記水塊において波の動きに応答するように設計されたコンテナーと、
前記コンテナー内に設置されて、前記波の動きに応答して概ね上下動するように構成された反動質量体を備える波エネルギー変換器(WEC)デバイスと、
(a)前記反動質量体に回転可能に連結された回転式液圧ポンプ/モーターと、(b)N個の蓄圧器及びN個の制御可能な弁であって、蓄圧器当たり1つの弁があり、各蓄圧器は、そのそれぞれの制御可能な弁を介して、前記回転式液圧ポンプ/モーターに連結された流体フローラインに連結されている、N個の蓄圧器及びN個の制御可能な弁と、を備える、可変回転式流体ばねと、
前記N個の制御可能な弁に連結されて該弁を選択的に開閉する手段と、
を備える、波エネルギー変換器システム。
【請求項14】
前記反動質量体は、回転シャフトを介して前記回転式液圧ポンプ/モーターに連結されている、請求項13に記載のWECシステム。
【請求項15】
前記回転式流体ばねは、前記液圧ポンプによって前記蓄圧器内又は前記蓄圧器外へポンプ圧送される液体を収容する貯蔵器を備え、前記反動質量体に連結されて、前記反動質量体の動きを電気エネルギーに変換する動力取出装置を更に備える、請求項13に記載のWECシステム。
【請求項16】
前記N個の制御可能な弁に連結されて該弁を選択的に開閉する前記手段は、
前記反動質量体の移動によって生成される信号に応答して、選択された弁の前記開閉を制御するプロセッサと、
前記反動質量体に連結され、N個の弁を介してN個の蓄圧器に連結された液圧ポンプを備える流体ばねと、
を備え、
Nは1以上であり、
前記手段は、
前記液圧ポンプに連結された前記反動質量体の前記移動に応答して、前記液圧ポンプを駆動する回転運動を生み出す手段、
を備える、請求項13に記載のWECシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械(すなわち、物理)ばね及び/又は線形流体ばねの代わりに用いることができる回転式流体ばねに関する。
【0002】
本発明は、その教示を引用することにより本明細書の一部をなす以下の仮特許出願:(a)2011年3月28日に出願の「PITCH DRIVEN WAVE ENERGY CONVERTER (PDWEC)」と題する米国仮特許出願第61/516,004号、(b)2011年3月28日に出願の「MULTI-MODE WAVE ENERGY CONVERTER SYSTEM」と題する米国仮特許出願第61/516,003号、及び(c)2011年3月28日に出願の「HYDRAULIC SPRING」と題する米国仮特許出願第61/516,025号に基づいて優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
ばねが必要とされる多くの用途がある。機械(すなわち、物理)ばねの使用は、サイズの制限、応答時間の制限及び信頼性の検討事項のために問題となることが多い。これは、機械ばねが非常に大きな重量(例えば、数千キログラム)を取り扱うことができなければならない場合に特にそうである。加圧液体及び加圧気体を用いた線形流体ばねが、代替物として提案されてきた。しかしながら、以下で議論するように、線形流体ばねは、それらの使用を制限する重大な欠点を有する。
【0004】
本発明は、波エネルギーの利用で用いるために例示される。しかしながら、本発明は、一般の適用可能性を有し、物理ばねの代わりになるものとして多くの異なる用途で用いることができることが理解されるべきである。
【0005】
機械(物理)ばねの使用に関する問題は、Stewart他(Stewartは本出願人である)に発行された米国特許第7,443,046号において議論されている。この米国特許の教示及び米国特許第8,067,849号の教示は、引用することにより本明細書の一部を成すものとする。これらの引用された米国特許において議論されているように、(a)波の作用を受ける「フロート」又はコンテナーと、(b)全体がフロート内に収容される「反動」質量体と、(c)物理ばねと、(d)反動質量体及びフロートに連結された動力取出装置(Power Take Off device:PTO)と、を備える波エネルギー変換器(Wave Energy Converter:WEC)ブイを形成することができる。このタイプのシステムでは、反動質量体(M)は、物理ばねから懸架されるか又は物理ばねによって支持され、この物理ばねは、フロートに接続され、その力定数(k)は、WECの所望の自然周期に与えるように調節されている。
【0006】
従来技術の
図1は、米国特許第7,443,046号の
図5に対応するものであり、機械(物理)ばねを用いて、密閉封止されたブイシェル内にばね上質量体(Mass-On-Spring:MOS)振動子を形成するMOS波エネルギー変換器(WEC)を示している。
【0007】
従来技術の
図2は、同様に米国特許第7,443,046号に教示(又は提案)されているような流体ばねの使用を示す非常に単純化された図面である。ブイシェル100内には、流体フローラインを介して蓄圧器に連結された液圧シリンダーが封入されている。反動質量体が、波がブイシェルに衝撃を与えることに応答してシリンダー内を(上下に)移動するピストンヘッドを有するピストンに取り付けられている。この反動質量体は、当該反動質量体の動きに応答して動力を生み出す動力取出装置(PTO)に機械的に連結されている。
図2では、液圧シリンダーの下側部分と流体蓄圧器との間を、流体フローラインを介して流れることができる流体が設けられている。この流体は、この場合、蓄圧器に挿入された気体の圧力を変化させるのに用いられる。すなわち、この流体は、反動質量体が液圧シリンダー内でピストンを下方に押下したとき、気体を圧縮することができる。他方では、(蓄圧器内の)圧縮された気体は、圧力下に置かれると、押し戻すことに寄与し、流体及びピストン並びに反動質量体をシリンダー内において垂直上方に移動させることに寄与する。
【0008】
図2の流体ばねの動作が、
図3A、
図3B及び
図3Cに示されている。これらの図は、米国特許第7,443,046号に開示されているように、線形流体蓄圧器に連結された線形液圧シリンダーを用いて機械(物理)ばねの機能を実行することができることを実証している。反動質量体が、液圧シリンダー内に配置されたピストンヘッドで終端しているピストンに取り付けられ、反動質量体/ピストン/ピストンヘッドは、シリンダーに沿って上下に移動することができる。液圧シリンダーは、フローラインを介して蓄圧器に接続され、シリンダー内の流体が、このフローラインを介して液圧シリンダーと流体蓄圧器との間を前後に流れることができるようになっている。
図3A、
図3B及び
図3Cは、3つの異なる位置にある反動質量体を示している。反動質量体が、
図3Aに示すように上側位置にある(ピストンヘッドがシリンダーの上部の近くにある)とき、蓄圧器内の気体圧力は、その最低圧力にあり、反動質量体は、行程の中心に向けて降下することが可能になる。反動質量体が、
図3Cに示すように下側位置にある(ピストンヘッドがシリンダーの底部の近くにある)とき、蓄圧器内の気体圧力は、その最高圧力にあり、反動質量体を行程の中心に向けて戻すように駆動することに寄与する。反動質量体が、
図3Bに示すように中央(中心)位置にあるとき、蓄圧器内の気体圧力は、反動質量体に対する重力の影響を打ち消すのに十分な力をシリンダーロッドに対して提供する。この状態は、液圧シリンダーによって提供される所望の打ち消し力を提供するように選択される「事前充填」圧力の設定を反映している。
【0009】
図2及び
図3の「線形」流体ばねに関する重大な問題は、ピストン及びロッドのシールが破損する前に、液圧シリンダーが線形移動量(例えば10000kmの移動量)に関して寿命を有限にすることに寄与するということである。
図3B(縁部のマーキングを参照)に示すように、ピストン及びピストンヘッドの外周部における絶え間ない摩擦によって、ロッドシール及びピストンシールが摩滅又は破損する。線形液圧シリンダーに関するもう1つの課題は、それらの長さ(線形液圧シリンダーは、ストローク距離の少なくとも2倍程度の長さがなければならない)であり、線形液圧シリンダーは、精密なガイドを必要とする。これらの問題は、本発明を具現化するシステムにおいて克服される。
【発明の概要】
【0010】
本発明によれば、反動質量体の概ねの上下動が回転運動に転換され、この回転運動が、「ばね」機能を生み出すように組み合わされた回転式液圧ポンプ/モーターと蓄圧器とで構成された回転式流体ばねを駆動するのに用いられる。本発明を具現化する回転式流体ばねは、長い耐用寿命を有することが知られている回転式液圧ポンプ/モーターを備える。この長い耐用寿命によって、回転式液圧ポンプ/モーターは、前に開示した線形液圧シリンダーの魅力的な代替物となっている。本発明は、特に、反動質量体を有する波エネルギー変換器(WEC)に適用可能である。この反動質量体は、その振動を確保するとともに当該反動質量体をその行程の中心付近に配置させるように、ばねに連結する必要がある。本発明によれば、反動質量体は、直線/回転変換器を介して、モーターに連結された回転式液圧ポンプ/モーターに連結されて、この反動質量体にばね作用が提供されるとともにその振動が確保される。本発明に従って形成された回転式流体ばねは、物理機械ばね又は線形液圧シリンダーばねの代わりに用いることができる。
【0011】
添付の図面(縮尺通りに描かれていない)において、類似の参照符号は類似の構成要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】物理ばねを用いた従来技術のばね上質量体WECの図面である。
【
図2】線形シリンダーばねを有する従来技術のばね上質量体WECの図面である。
【
図3A】
図2の線形シリンダーばねの3つの異なる位置のうちの1つ及びそれに関連した問題を示す図である。
【
図3B】
図2の線形シリンダーばねの3つの異なる位置のうちの1つ及びそれに関連した問題を示す図である。
【
図3C】
図2の線形シリンダーばねの3つの異なる位置のうちの1つ及びそれに関連した問題を示す図である。
【
図4】本発明による、線形上下運動を有する反動質量体を有するとともに回転式流体ばねを備えるWECデバイスの非常に単純化された断面図である。
【
図5A】
図4のシステムの3つの異なる位置のうちの1つを示す図である。
【
図5B】
図4のシステムの3つの異なる位置のうちの1つを示す図である。
【
図5C】
図4のシステムの3つの異なる位置のうちの1つを示す図である。
【
図6】本発明による、回転式流体ばねに連結された回転反動質量体を有するWECデバイスの非常に単純化された断面図である。
【
図7】回転運動を生み出して、複数の蓄圧器に連結された液圧ポンプ/モーターを駆動するプーリーに連結された線形上下運動を有する反動質量体の非常に単純化された断面図である。
【
図8】本発明を具現化する、回転式流体ばねを有するベルト/ケーブル駆動システムを用いたWECデバイスの単純化された断面図である。
【
図9】本発明による、反動質量体がボール及びねじの機構を駆動するとともに回転式流体ばねがばね機能を提供するのに用いられるWECデバイスの単純化された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図4を参照すると、波エネルギー変換器(WEC)デバイス200が配置されているコンテナー又はシェル100が示されている。WECデバイス200は、(a)シェルの上部と底部との間に設置された線形ガイド(126a、126b)に沿って上下動することができる反動質量体M1、(b)反動質量体に従って、シェル100を移動させる波動に応答して反動質量体とともに上下動する歯付きラック42、(c)その歯がラックと噛み合うとともにラックの上下動に対応して回転されるピニオンギア44を備え、(d)ピニオンギア44は、当該ピニオンギアの回転に応じて回転するシャフト46に取り付けられ、(e)次いで、シャフト46は、蓄圧器52(ガスポケットを有する)内に押し込まれるか又は蓄圧器52から引き出される、流体貯蔵器50からの流体の量の増減を引き起こし、それによって、蓄圧器内の気体の圧力を制御することができる回転式液圧ポンプ/モーター48を駆動し、(f)反動質量体は、動力取出装置(PTO)に機械的にリンクされて、動力を生み出す。
図4では、PTOは、ピニオンギア54を備え、このピニオンギアは、その歯がラック42と噛み合い、(ピニオンギア44と同様に)ラックの上下動に対応して回転される。ピニオンギア54は、発電機58を、直接又はギア機構(図示せず)を介して駆動するシャフト56に取り付けられている。
【0014】
反動質量体及びこの反動質量体に取り付けられたラックの、波動に応答した移動に応じたWECデバイス200の動作が
図5A、
図5B及び
図5Cに示されている。反動質量体が上下動すると、シャフト46は、時計方向又は反時計方向に回転されて、より多くの流体が蓄圧器52内に流入して気体を圧縮するように、又は流体の一部が蓄圧器52から流出して、気体が流体に及ぼす圧力を減少させるように、液圧ポンプ/モーターを制御する。反動質量体が、
図5Aに示すように上側位置にあるとき、蓄圧器内の気体圧力は、その最低圧力にあり、反動質量体は、行程の中心に容易に向かうことが可能になる。反動質量体が、
図5Cに示すように下側位置にあるとき、蓄圧器内の気体圧力は、その最高圧力にあり、反動質量体を行程の中心に向けて戻すように駆動することに寄与する。反動質量体が、
図5Bに示すように中央(中心)位置にあるとき、蓄圧器内の気体圧力は、反動質量体に対する重力の影響を打ち消すのに十分な力をシャフト46及びピニオンギア44に対して提供する。この状態は、システムによって提供される所望の打ち消し力を提供するように選択される「事前充填」圧力の設定を反映している。したがって、回転式液圧ポンプ/モーター及び蓄圧器は、線形液圧シリンダーも物理ばねも必要とすることなく「ばね」機能を提供する。
【0015】
蓄圧器の容積は、システムの所望の「ばね反応性」を提供するように選択される。同じ量の気体の場合、蓄圧器が物理的に大きいほど、「より柔らかい」ばねが提供される一方、蓄圧器が物理的に小さいほど、「より硬い」堅固なばねが提供される。
【0016】
回転式液圧ポンプ/モーターを用いることができるのは、反動質量体及びそのラックの直線運動を回転運動に変換して回転式液圧ポンプ/モーターを駆動することと、その逆に、回転式液圧ポンプ/モーターのシャフトの回転を反動質量体の直線運動に変換することとに基づいている。
【0017】
図4では、発電機は、それ自体のシャフトを有するように示されている。しかしながら、回転式発電機は、回転式液圧ポンプ/モーターと同じシャフトを用いることができることが理解されるべきである。
図4は、ラックアンドピニオンの使用も示している。このラックアンドピニオンの構成は、本明細書に示すように他の任意の好適な機械又は電気機械装置に置き換えることができることが認識されるべきである。シェル100内に2つ以上のWECデバイスが存在することができ、それらのWECデバイスは、本明細書に示すものと異なるタイプのものであってもよい。
【0018】
図6は、回転式液圧ポンプ−モーターばねの発明を、回転反動質量体を有するWECデバイスとともに用いることができることを示している。
図6には、シェル/コンテナー100内に位置決めされた2つの同様のWECデバイスが示されている。
図6は、本発明を具現化する、回転反動質量体WECデバイスの理想化された断面図である。WECデバイスは、シャフト64に回転可能に設置された一定半径の円形ドラム62を備える。シャフト64は、コンテナー100の側部に取り付けられているか又はコンテナー100の底部に基礎を置く1つ又は複数の支柱(図示せず)によって支持されている。反動質量体M1は、固定長の剛性レバーアーム66の一方の端部に取り付けられている。レバーアーム66の他方の端部は、ドラム62の外側表面に取り付けられている。シャフト68は、一方の端部がドラム62に取り付けられ、その他方の端部が液圧ポンプ/モーター48に取り付けられている。液圧ポンプ/モーター48は、貯蔵器50及び蓄圧器52と組み合わさって、シャフト66にばね作用を提供し、このシャフトから反動質量体にばね作用を提供する。反動質量体の移動によって、シャフト66は、時計方向又は反時計方向に回転する。シャフト66の動きは、
図5A、
図5B及び
図5Cに示すように、液圧ポンプ/モーター48に流体を流させるのに十分なものである。したがって、液圧ポンプ/モーター48は、回転反動質量体WECデバイスが、あたかも物理ばねがドラムに取り付けられているように動作することを可能にするのに必要とされるばね機能を提供する。その後、反動質量体の移動は、PTO58によって有用なエネルギー(例えば、電気エネルギー)に変換される。
【0019】
図7は、本発明の別の適用例を示している。この実施形態では、反動質量体M1は、ピボット76の回りを回転するプーリー74に巻装されたケーブル72によって支持されている。このプーリーは、シャフト78に取り付けられ、シャフト78は、回転式液圧ポンプ/モーター48のシャフトに更に取り付けられている。液圧ポンプ/モーター48は、貯蔵器50とポンプ48との間に連結された流体フローライン55と、ポンプ48と蓄圧器52との間に連結された流体フローライン53とによって、貯蔵器50と蓄圧器52との間で液体をポンプ圧送することができる。
図7では、蓄圧器52は、4つのサブ蓄圧器52a、52b、52c、52dを有するように示されている。各サブ蓄圧器は、そのそれぞれの弁(V1、V2、V3、及びV4)によって、蓄圧器52とポンプ/モーター48との間に延在する流体フローライン53に連結されている。これらの弁は、(電気的又は機械的に)制御可能な任意の弁とすることができる。この実施形態は、1つの大きな蓄圧器の代わりに、それよりも小さな幾つかの蓄圧器を用いることができることを示している。より重要なことは、図示されているものが、複数の蓄圧器を有することによって、サブ蓄圧器のうちの選択されたものを接続又は接続解除するように弁を開閉することが可能であるということである。全てのサブ蓄圧器が回転式液圧ポンプ−モーターに接続されているとき、システムの「ばね反応性」は「柔らかい」。サブ蓄圧器のうちの1つ又は2つしかポンプ−モーターに接続されていないとき、システムのばね反応性は「硬い」。ブイのオペレーターは、波からのエネルギーの取り込みを最大にするために、質量体ばね振動子を所望の周波数で共振させるようにばね剛性を調節することができる。代替的に、弁(V1、V2、V3、及びV4)の開閉は、弁制御回路702を駆動して任意の所望のばね類似の機能を達成するプロセッサ700(プログラムすることができる)によって(自動的に)制御することができる。このプロセッサは、システムの応答をプログラムして制御するのに用いることができることに留意されたい。
【0020】
本発明の回転式流体ばねの重要な利点は、線形構成要素が存在せず、この回転式流体ばねが高速の液圧モーターもポンプも何ら必要とせず、非常に効率的かつ低コストの構成要素及び単純な回路類を用いるということである。
【0021】
図8は、波エネルギー変換器(WEC)デバイス600が設置されているコンテナーの単純化された断面図である。WECデバイス600は、(a)コンテナー100の前部若しくは後部に又は一般的には外周部に沿って配置されたときに、ピッチ、ヒーブ、及び/又はロールの動き及び力に効率的に応答することができ、(b)概ねコンテナー100の中心の回りに配置された場合には、ヒーブの動き及び力に効率的に応答することができる。
【0022】
図8は、反動質量体M1を示し、反動質量体M1は、上側取り付け端子22a及び底側取り付け端子22bを有し、ガイドレール24aと24bとの間を上下に進むことができる。ベルト/ケーブル26は、上部端子22aにしっかりと取り付けられ、端子22aから延びて、上部プーリー/ローラー28aの周囲に巻装される。ケーブル26は、その後、プーリー/ローラー30aの周囲に延び、プーリー32の周囲に巻装される。プーリー32は、シャフト34を介して発電機140(すなわち、PTO)を駆動する。発電機140もコントローラー150によって制御される。ケーブル26は、プーリー/ローラー30bの周囲に延び、次いで、プーリー36の周囲を進み、次いで、底部プーリー/ローラー28bの周囲に延び、次いで、このケーブルがしっかりと取り付けられている端子点22bに延びる。ローラー/プーリー36は、流体ライン53を介した蓄圧器52内への流体フローを制御する回転式液圧ポンプ/モーター48に連結されたシャフト37を駆動する。流体貯蔵器50は、流体ライン55を介してポンプ/モーター48に連結されている。ポンプ/モーター48、蓄圧器52及び貯蔵器50は、主要なばね機能を提供して、反動質量体を振動させるとともにその上下行程の中間点に駆動する。
【0023】
コンテナー100は、このコンテナーが配置される水塊において波に応答して移動し、上側ローラー28aと下側ローラー28bとの間で反動質量体M1を上下に移動させる。停止部(図示せず)を用いて、反動質量体がローラーに衝突することを防止することができる。反動質量体が移動すると、ケーブル26は、シャフト34及び37を時計方向又は反時計方向に回転させる。シャフト34は、回転すると、発電機140を駆動するか、又はモーターとして機能する発電機140によって駆動される。同様に、シャフト37は、回転すると、ポンプ/モーター48を駆動する(蓄圧器内の圧力を増大させる)か、又はシャフト37は、(蓄圧器内の圧力に応答して)ポンプ/モーター48によって駆動される。
【0024】
コントローラー150及び発電機/モーター140は、反動質量体の位置及び速度を示す信号に応答して行程の中心に向けて反動質量体を進めることに寄与するように用いることもできる。発電機は、ばね類似の機能を提供するようにプログラム(制御)することができる。コントローラーが、ベルトに力を印加して反動質量体の中心配置を維持するように発電機の電流を制御するとき、発電機はばねのように振舞う。この力は、機械ばねが、変位が増加するにつれて力を増大させるのと同様に、反動質量体が中間点から遠く離れるにつれて増大される。
【0025】
図9は、ばね機能が回転式流体ばねを含む、コンテナー100内に設置されたボール及びねじ駆動型WECデバイスを示している。反動質量体M1は、コンテナー100をヒーブ(又はピッチ)させる波動に応答して上下動する。M1は、上下動すると、ボールねじ91を時計方向又は反時計方向に回転させる。このボールねじのシャフトは、流体貯蔵器50と蓄圧器52との間の流体の流れを制御する回転式液圧ポンプ/モーター48のシャフトに接続されている。一方の状態(反動質量体が上部にあるか又は上部に近くにあるとき)の場合、蓄圧器内の流体の量は最小(最低レベル)であり、気体が及ぼす圧力は最小である。その逆の状態(反動質量体が底部にあるか又は底部の近くにあるとき)の場合、蓄圧器内の流体の量は最大であり、気体が及ぼす圧力は最大である。したがって、回転式液圧ポンプ/モーター48は、必要とされるばね機能を提供して、WECデバイスが、あたかも物理ばねが反動ドラムに連結されているように動作することを可能にする。
【0026】
示す実施形態が、例証のためのものであること、また、多くの異なるタイプのWECデバイスを、本発明を実施するために使用することができることが上記の議論から明らかであるべきである。