特許第6133846号(P6133846)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6133846核燃料集合体のスペーサグリッド用のストリップ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133846
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】核燃料集合体のスペーサグリッド用のストリップ
(51)【国際特許分類】
   G21C 3/34 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   G21C3/34 K
   G21C3/34 F
   G21C3/34 G
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-510763(P2014-510763)
(86)(22)【出願日】2012年5月14日
(65)【公表番号】特表2014-519031(P2014-519031A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】EP2012058904
(87)【国際公開番号】WO2012159913
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2015年4月14日
(31)【優先権主張番号】11305629.5
(32)【優先日】2011年5月20日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509337414
【氏名又は名称】アレバ・エヌペ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・リーブラー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー・メイアー
【審査官】 青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06278759(US,B1)
【文献】 特表平11−508681(JP,A)
【文献】 特開平02−257092(JP,A)
【文献】 特開昭64−065491(JP,A)
【文献】 実開平02−021597(JP,U)
【文献】 特開平01−173898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/30−3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料棒(4)を受けるため、および冷却材の流れ方向(F)の流れを可能にするためのセル(18)の格子を画定する交絡ストリップを構成する、核燃料集合体のスペーサグリッド(14)用のストリップ(16)であって、
前記ストリップ(16)が、
セル(18)の境界を定める壁部分(20)と、
前記ストリップ(16)内に形成されるとともに前記壁部分(20)に設けられ、前記セル(18)を通って延在する前記燃料棒(4)を前記壁部分(20)から離して付勢するばね(22)であって、前記ストリップ(16)内に切り抜かれており、スロット(40)によって境界を定められた、ばね(22)と、
前記ストリップ(16)において前記壁部分(20)に形成されて、前記ばね(22)の過大応力及び塑性変形を回避するために、前記セル(18)内に受けられた前記燃料棒(4)の、前記壁部分(20)に向けた、前記ばね(22)の作用に対抗する運動を制限する運動制限器(34)であって、前記ばね(22)に対向する、前記スロット(40)の縁部(54)に位置付けられ、かつ前記縁部(54)に隆起状部分(56)を画定する、運動制限器(34)と、
を備えるタイプのストリップ(16)であり、
前記運動制限器(34)が剛性であり、
前記ばね(22)および前記ばね(22)に対応する前記運動制限器(34)が前記ストリップ(16)の同一面において突出していることを特徴とする、ストリップ(16)。
【請求項2】
前記運動制限器(34)が、前記壁部分(20)によって境界を定められた前記セル(18)を経由する前記冷却材の流れ方向(F)において、前記ばね(22)の上流に設けられた請求項1に記載のストリップ(16)。
【請求項3】
前記運動制限器(34)が、前記スロット(40)の縁部(54)に向けて、前記燃料棒(4)を受ける前記セル(18)の延在方向に対して横方向に拡大する請求項1または2に記載のストリップ(16)。
【請求項4】
前記運動制限器(34)が、前記スロット(40)の縁部(54)に向けて前記壁部分(20)から隆起する請求項1から3のいずれか一項に記載のストリップ(16)。
【請求項5】
前記運動制限器(34)が、隆起部である請求項1から4のいずれか一項に記載のストリップ(16)。
【請求項6】
前記ばね(22)が、片持ちのタブ(36)を含む請求項1から5のいずれか一項に記載のストリップ(16)。
【請求項7】
前記タブ(36)が、前記ストリップ(16)の上流下部縁部(26)に向けて、片持ち式に下向きに延在する請求項6に記載のストリップ(16)。
【請求項8】
前記スロット(40)が、細長く湾曲したスロット(40)であり、前記タブ(36)が、前記スロット(40)と、前記スロット(40)の2つの対向端(48)を繋ぐ接続線(46)との間において境界を定められた請求項6または7に記載のストリップ(16)。
【請求項9】
前記ばね(22)が、前記タブ(36)内に少なくとも部分的に形成されて、前記セル(18)内に受けられた前記燃料棒(4)に接触する接触部分(38)を含む請求項6から8のいずれか一項に記載のストリップ(16)。
【請求項10】
前記接触部分(38)が、前記流れ方向(F)において細長い請求項9に記載のストリップ(16)。
【請求項11】
スペーサグリッド(14)であって、燃料棒(4)を受けるため、および冷却材の、前記スペーサグリッド(14)を経由した上向きの軸方向の流れを可能にするためのセル(18)の格子を画定する交絡ストリップを備え、前記交絡ストリップのうちの少なくとも1つが、請求項1から10のいずれか一項に記載のストリップ(16)である、スペーサグリッド(14)。
【請求項12】
燃料棒(4)の束と、前記燃料棒(4)を支持する補強材(6)と、を備え、前記補強材(6)が、請求項11に記載の少なくとも1つのスペーサグリッド(14)を備える、核燃料集合体(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料棒を受けるため、および冷却材の流れ方向の流れを可能にするためのセルの格子を画定する交絡ストリップを構成する、核燃料集合体のスペーサグリッド用のストリップに関し、このストリップは、セルの境界を定めるための壁部分と、ストリップ内に形成され、壁部分に設けられて、セルを通って延在する燃料棒を壁部分から離して付勢するばねであって、ストリップ内に切り抜かれ、スロットによって境界を定められたばねと、ストリップにおいて壁部分に形成されて、セル内に受けられた燃料棒の、壁部分に向けた、ばねの作用に対抗する運動を制限する運動制限器と、を備えるタイプのものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、その図5において、核燃料集合体のスペーサグリッド用の周辺ストリップを例示しており、周辺ストリップは、セルの境界を定める壁部分と、各壁部分に、ストリップ内に切り抜かれたタブによって形成されたばねと、タブから距離を置いてストリップ内に型押しされたボス(boss)の対として形成された運動制限器と、を備える。
【0003】
動作の際に、冷却材の流体(たとえば水)は、スペーサグリッドのセルを経由して軸方向に上向きに流れる。各壁部分に設けられたばねおよび運動制限器は、壁部分の平面から、壁部分によって境界を定められた同一のセルの中心に向けて突出し、冷却材の流体のフローチャンネルを部分的に遮断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4879090号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、核燃料集合体のスペーサグリッド用のストリップであって、燃料集合体の全耐用年数にわたって核燃料棒に対する好適な支持と、良好な製造可能性とを実現しつつ、スペーサグリッドの流れ抵抗を制限するストリップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、この目的を達成するために、上述したタイプの核燃料集合体のスペーサグリッド用のストリップ(strip)を提案する。このストリップにおいて、運動制限器(motion limiter)は、ばねに対向する、スロットの縁部に位置付けられ、前記縁部に隆起状部
分を画定する。
【0007】
他の実施形態において、このストリップは、単独でも、または任意の技術的に実現可能な組合せでも採用される、以下の特徴のうちの1つまたはいくつかを備える。
− 運動制限器は、壁部分によって境界を定められたセルを経由する冷却材(coolant)の流れ方向において、ばねの上流に設けられる。
− 運動制限器は、スロットの縁部に向けて拡大する。
− 運動制限器は、スロットの縁部に向けて壁部分から隆起する。
− 運動制限器は、隆起部である。
− ばねは、片持ちのタブを含む。
− タブは、ストリップの上流下部縁部に向けて、片持ち式に下向きに延在する。
− スロットは、細長く湾曲したスロットであり、タブは、スロットと、スロットの2つの対向端を繋ぐ接続線との間において境界を定められている。
− ばねは、タブ内に少なくとも部分的に形成されて、セル内に受けられた燃料棒に接触する接触部分を含む。
− 接触部分は、流れ方向において細長い。
【0008】
本発明はまた、スペーサグリッドにも関し、このスペーサグリッドは、燃料棒を受けるため、および冷却材の、スペーサグリッドを経由した上向きの軸方向の流れを可能にするためのセルの格子を画定する交絡ストリップ(interlaced strip)を備え、交絡ストリップのうちの少なくとも1つは、上記ストリップである。
【0009】
本発明はさらに、燃料棒の束と、燃料棒を支持するための、および上記少なくとも1つのスペーサグリッドを含む、補強材(armature)と、を備える、核燃料集合体に関する。
【0010】
本発明およびその利点は、単に例として提示された以下の説明を読むと、また添付の図面を参照すると、より深く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】交絡ストリップから作られたスペーサグリッドを有する、加圧水型原子炉の核燃料集合体の側面立面図である。
図2】交絡ストリップから作られたスペーサグリッドを有する、沸騰水型原子炉の核燃料集合体の部分断面側面図である。
図3】本発明にかかるスペーサグリッドの部分上面図である。
図4図3のスペーサグリッドのストリップの部分正面図である。
図5図4のストリップのばねと、関連付けられた運動制限器との正面図である。
図6図5のVI−VIに沿った、ばねおよび運動制限器の断面図である。
図7】燃料棒がセルを通って延在しているスペーサグリッドのセルの部分断面図である。
図8】本発明の別の実施形態を示す、図5に対応する図である。
図9】本発明の別の実施形態を示す、図6に対応する図である。
図10】本発明のさらに別の実施形態のストリップの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示す加圧水型原子炉(PWR)の核燃料集合体2は、核燃料棒4の束と、燃料棒4を支持する補強材6と、を備える。PWRの燃料集合体2は、燃料集合体2が原子炉の内側に設置されたときに、鉛直に延在する組立軸Lに沿って細長い。
【0013】
補強材6は、下部ノズル8、上部ノズル10、複数の案内管12、および複数のスペーサグリッド14を備える。
【0014】
案内管12は、組立軸Lに対して平行に延在し、下部ノズル8を上部ノズル10に連結し、ノズル8とノズル10との間で組立軸Lに沿って所定の間隔を維持する。各案内管12は、案内管12内への制御棒の挿入を可能にするために、上部ノズル10を通って上向きに開いている。
【0015】
図2に示す、沸騰水型原子炉(BWR)のための核燃料集合体2もまた、燃料集合体2が原子炉の内側に設置されたときに、鉛直に延材する組立軸Lに沿って細長い。
【0016】
BWRの燃料集合体2は、核燃料棒4の束と、燃料棒4を維持する補強材と、燃料棒4の束を取り囲む管状燃料チャンネル15と、を備える。この補強材は、概して、組立軸Lに沿って間隔を空けて配置された下部ノズルおよび上部ノズルと、燃料棒4の束内に配列された少なくとも1つの水チャンネル13と、燃料棒4の束に沿って配設された複数のスペーサグリッド14と、を備える。
【0017】
燃料棒4、水チャンネル13、および燃料チャンネル15は、下部ノズルと上部ノズルとの間に延在し、水チャンネル13および燃料チャンネル15が、下部ノズルおよび上部ノズルを連結する。
【0018】
水チャンネル13は、燃料棒4に対して平行に延在する。水チャンネル13は、燃料棒4の束から分離して、冷却材/減速材の流れを流通させるように構成されている。
【0019】
燃料チャンネル15は、燃料棒4に対して平行に延在する。燃料チャンネル15は、燃料棒4の束と水チャンネル13とを収容する。燃料チャンネル15は、燃料棒4間および燃料棒4の周りに冷却材/減速材の流れを流通させるように構成されている。
【0020】
PWRおよびBWRのスペーサグリッド14は、燃料棒4に沿って、間隔を空けて配置された関係で配設される。
【0021】
各スペーサグリッド14は、組立軸Lに対して横方向に延在する。
【0022】
各燃料棒4は、管状被覆と、被覆の内側に積み重ねられた核燃料のペレットと、被覆の端を閉鎖する蓋と、を備える。各燃料棒4は、スペーサグリッド14によって組立軸Lに対して横方向および長手方向に支持される状態で、スペーサグリッド14を通って組立軸Lに対して平行に延在する。
【0023】
動作の際に、燃料集合体2は、下部ノズル8が炉の底部プレートに載置し、かつ組立軸Lが実質的に鉛直である状態で、原子炉内に配置される。冷却材は、図1および図2の矢印Fによって示されるように、燃料棒4間、ならびにノズル8、10およびスペーサグリッド14を経由して流れる状態で、燃料集合体2に沿って上向きに流れる。
【0024】
スペーサグリッド14は、互いに類似していることが考えられ、本発明にかかる1つのスペーサグリッド14については、図3図7を参照してさらに説明する。
【0025】
図3に示すように、スペーサグリッド14は、各々が1つの燃料棒4を受けるセル18の格子を画定する複数の交絡金属ストリップ16を備え、図3では、いくつかのセル18のみが示されている。
【0026】
知られている方式では、PWRの燃料集合体用のスペーサグリッドの場合、交絡ストリップ(interlaced strip)16は、PWRの案内管12を受ける複数のセルも画定し、スペーサグリッド14は、たとえば溶接によって、案内管12に取り付けられる。同様に、BWRの燃料集合体用のスペーサグリッドの場合、少なくとも1つのBWRの水チャンネル13は、概して、格子において1つまたはいくつかの燃料棒4に置き換わっており、交絡ストリップ16は、水チャンネル13のための開口を画定し、スペーサグリッド14は、たとえば溶接によって、水チャンネル13に取り付けられる。
【0027】
燃料棒4を受けるセル18のみが図3に示されており、以下において「セル」という用語は、燃料棒4を受けるセル18を指す。
【0028】
各セル18は、管状であり、セル軸Aに沿って延在する。このセル軸Aは、スペーサグリッド14が燃料集合体2において組み立てられたときに(図1および図2)、組立軸Lに対して平行である(図3に対して垂直である)べきである。異なるセル18のセル軸Aは、平行である。各セル18は、2対の交差するストリップ16の4つの壁部分20によって境界を定められており、各対のストリップ16は、互いに対して平行に延在する。
【0029】
セル18の境界を定める、対向する壁部分20の各対の一方の壁部分20は、壁部分20内に形成されて、セル18の中心に向けて自由状態で突出する弾性ばね22を有し、対向する壁部分20の各対の他方の壁部分20は、壁部分20内に形成されて、セル18の中心に向けて突出する剛性窪み24を有する。
【0030】
各セル18の壁部分20に設けられたばね22および窪み24は、セル18を通って延在する燃料棒4が、ばね22によって横方向に、窪み24に接して付勢されるように配列され、セル軸Aに対して横方向および長手方向に燃料棒4を支持する。
【0031】
2つの隣接するセル18(ストリップ16の各側に1つ)の境界を定める各壁部分20は、セル18のうちの一方において、壁部分20の面において突出するばね22と、他方のセル18において壁部分20の対向面において突出する窪み24と、を有する。1つのセル18のみの境界を定める各壁部分20は、ばね22または窪み24のいずれかを有する。
【0032】
図4は、ストリップ16の複数の壁部分20を示し、これらの壁部分20の各々は、ストリップ16の各側に1つが存在する2つのセル18の境界を定めるように適合される。
【0033】
動作の際に、冷却材は、図4において表される流れ方向Fにおいて、ストリップ16の上流下部縁部26から下流上部縁部28に、各セル18を経由して上向きに流れる。流れ方向Fは、セル軸Aに対して平行である。
【0034】
各壁部分20は、下部縁部26から上部縁部28に延在する。壁部分20は、スリット30によって分離されており、スリット30は、下部縁部26に設けられ、かつストリップ16の実質的に半分の高さまで延在しており、上部縁部28に設けられ、かつ交差するストリップ16の実質的に半分の高さまで延在する一連の対応するスリット30と係合するためのものである。
【0035】
ストリップ16は任意に、上部縁部28から上向きに突出するフィン32を備え、各フィン32は、セル18を経由して流れる冷却材の流体に対して螺旋運動を与えて冷却材と燃料棒4との間の熱交換を促進するために、セル軸Aに対して傾斜させてある。
【0036】
ストリップ16は、例示された壁部分20の各々において、各々がストリップ16内に形成され、したがってストリップ16と一体的に一部品である、ばね22と、窪み24と、運動制限器(motion limiter)34と、を備える。
【0037】
各壁部分20に設けられたばね22および運動制限器34は、ストリップ16の同一面において突出するが、その一方で、窪み24は、ストリップ16の対向面において突出する。
【0038】
窪み24は、隣接する壁部分20において、ばね22の下方と上方とに交互に設置される。したがって、交絡ストリップ16は、セル18の境界を定めるストリップ16の壁部分20に設けられたばね22が、セル18の境界を定める別のストリップ16の、対向する壁部分20に設けられた窪み24に対面するように配列され得る。
【0039】
ストリップ16のばね22は、全く同じであり、1つのばね22については、図5図7を参照してさらに説明する。
【0040】
図5に示すばね22は、ストリップ16内に切り抜かれた接触部分38と、片持ちの可撓性タブ36と、を備える。
【0041】
タブ36は、閉じた輪郭を有する、細長く湾曲したスロット40により、ストリップ16において境界を定められている。タブ36は、スロット40と、スロット40の対向端48を繋ぐ接続線46との間で境界を定められる。これらの端48は、局部機械的ピーク応力を制限するために、円形であって拡大されていることが好ましい。線46は、セル軸Aに対して垂直である。タブ36は、線46に沿って壁部分20に連結されている。
【0042】
タブ36は、上流下部縁部26に向けて、片持ち式に下向きに延在しており、壁部分20に連結された上部基部42と、下部自由先端44と、を有する。タブ36は、自由先端44に向けて収束している。スロット40は、分岐枝を有するほぼU形である(または丸みをつけた先端を有するV形である)。
【0043】
ばね22の自由状態において、タブ36は、壁部分20に対して傾斜させてあり、壁部分20によって境界を定められたセル18の中心に向けて、壁部分20から離れて下向きに延在する。タブ36は、タブ36の弾性変形によって弾性的に可撓可能であり、タブ36が、線46に実質的に合致する回転軸の周囲において回転する。タブ36の可撓性は、スロット40の端48の直径を調節することにより、調節することが可能である。
【0044】
接触部分38は、タブ36内にのみ専ら形成され、壁部分20に対向するタブ36から、壁部分20によって境界を定められたセル18の中心に向けて突出する。接触部分38は、タブ36と一体的に一部品である。
【0045】
接触部分38は、タブ36内に切り抜かれた反り橋(arched bridge)の形で設けられている。接触部分38は、セル軸Aの方向に伸長しており、タブ36に連結された接触部分38の2つの端が、セル軸Aの方向にアライメントされている。接触部分38は、セル軸Aの方向に互いに対して実質的に平行に延在する2つの開口部52間において境界を定められた切り曲げ(lancing)50として形成される。
【0046】
ばね22に関連付けられた運動制限器34は、ストリップ16において、タブ36に対向する、スロット40の縁部54に沿って形成される。運動制限器34は、スロット40の縁部54に隆起状部分56を画定する。
【0047】
運動制限器34は、ストリップ16において形成されて、対応するばね22と同一側において壁部分20から突出する隆起部である。
【0048】
運動制限器34は、ばね22の下方に設置され、したがって、壁部分20によって境界を定められたセル18においてばね22の上流に存在する。運動制限器34は、運動制限器34の後流(slipstream)中に設置されるばね22から冷却材を逸らして離すための流体デフレクタを画定するように輪郭形成される。
【0049】
この目的を達成するために、運動制限器34は、壁部分20から隆起し、下流の上向き方向において、縁部54に向けてセル軸Aに対して横方向に拡大するように輪郭形成される。運動制限器34は、たとえば、上流を向き、かつ下流に向けて拡大する端を持ち上げる、下部の先端状突き出し部と、縁部54まで下流方向に突き出し部を延在させる、一定の断面積を有する上部区画と、を備える。
【0050】
図7に示すように、接触部分38は、タブ36が壁部分20に向けて弾性的に変形する状態で、壁部分20によって境界を定められたセル18を通って延在する燃料棒4の外側表面に接触する。したがって、ばね22は、セル18の境界を定める、対向する壁部分20に設けられた窪み24と接触して、燃料棒4を壁部分20から離して(図7の右側に向けて)付勢する。
【0051】
この構成において、タブ36の自由先端44は、実質的に壁部分20の平面内に延在し、壁部分20に対する接触部分38の高さHは、運動制限器34の頂端62の高さhを上回る。頂端62と燃料棒4の外側表面との間に隙間Dが存在する。
【0052】
動作の際に、冷却材は、セル18を経由して、燃料棒4の周囲を上向きに、セル軸Aに対して平行な流れ方向Fに高速で流れる。これにより、セル18の内側において燃料棒4の横方向の振動が生じる。横方向の振動は、燃料集合体2の、製造プラントから発電所への輸送中、および搬送中にも生じ得る。
【0053】
運動制限器34は、剛性であり、燃料棒4の、壁部分20に向けた、ばね22の作用に対抗する運動を制限する。したがって、運動制限器34は、ばね22の過大応力、すなわち、ばね22の塑性変形を回避する。
【0054】
片持ちの可撓性タブ36および剛性接触部分38を有して、ストリップ16内に形成されたばね22は、流れ抵抗を制限しつつ、適正な横方向の力で燃料棒4を付勢することを可能にする。タブ36は、タブ36の自由先端44が壁部分20の平面内に(またはほぼ平面内に)後退したときに付勢力をもたらし、すなわち、この位置において、接触部分38のみが壁部分20から突出する。
【0055】
接触部分38が流れ方向Fにおいて細長いことにより、流れ抵抗をさらに制限すること、およびフレッチングのリスクを制限するための、燃料棒4との伸長した接触区域を提供することが可能になる。
【0056】
ばね22、すなわち接触部分38は、運動制限器34の後流内に存在する。縁部54上の、ばね22に可能な限り最も近い位置に設置され、流体の流れ抵抗を制限するように輪郭形成された運動制限器34は、ストリップ16の流れ抵抗全体を制限することに寄与する。
【0057】
縁部54に設けられた運動制限器34は、限定されたエネルギーを用いて穿孔を行ってストリップ16を変形することにより、得ることができる。したがって、ストリップ16は、良好な製造可能性を有する。
【0058】
タブ36および接触部分38を含むばね22、ならびに運動制限器34は、低コストでストリップ16を製造する一回の穿孔および打刻作業において得ることができる。
【0059】
ばね22の自由状態において(図6)、タブ36は、壁部分20に対するタブ36の自由先端44の高さEが、運動制限器34の頂端62の高さhを下回る状態で、壁部分20に対して傾斜させてある。
【0060】
運動制限器34は、燃料集合体2を組み立てる際に、セル18を通って燃料棒4を上向きに挿入する間の案内として働く。したがって、運動制限器34は、燃料棒4の挿入に際してのばね22および/または燃料棒4の損傷を回避し、燃料集合体2の製造可能性を高める。
【0061】
図8および図9の代替的実施形態は、接触部分38が、タブ36内に部分的に、かつ壁部分20内に部分的に形成されるという特徴により、図5および図6の実施形態とは異なる。接触部分38は、より一層伸長しており、タブ36の境界を定めるスロット40の端48を繋ぐ線46を跨いでいる。
【0062】
これにより、ばね22の剛性が高まる。なぜなら、ばね22を付勢することにより、平行ではあるが異なる2本の軸の周りにおいて、タブ36の上部基部42と、接触部分38の上端との同時変形が生じるためである。
【0063】
図10の代替的実施形態において、ストリップ16の上流下部縁部26は、上流下部縁部26が各壁部分20の中心においては低く、交絡ストリップ16が互いに交差する、壁部分20間の接合部においては高くなるようにジグザグ形である。
【0064】
その結果、スペーサグリッド14は、交絡ストリップ16が、下部の箇所64よりも高いレベルで横断箇所66において横断する状態で形成され得、それにより、冷却材の流体内に存在することが考えられるデブリは、四角形に形作られたセル18の、セル18の内側表面と燃料棒4との間の空間がより大きな角において、横断箇所66に向けて横方向に案内される。したがって、デブリによる燃料棒4の損傷が防止される。
【0065】
代替的実施形態において、ストリップ16の上流下部縁部26は、下部縁部26が、壁部分20間の接合部において交互に高レベルと低レベルとに存在するようにジグザグ形である。
【0066】
その結果、交絡ストリップ16は、千鳥列状に配列された、高レベルにおける横断箇所66と、低レベルにおける横断箇所66とをもたらすように組み立てられ、同一の利点を有する。
【0067】
下部縁部26は、ジグザグ形の代わりに、波形を呈示し得る。
【0068】
本発明は、PWR(加圧水型原子炉)の燃料集合体用のスペーサグリッドに、または例示したBWR(沸騰水型原子炉)の燃料集合体用のスペーサグリッドに適用可能であり、VVER(ロシア型加圧水型原子炉)の燃料集合体用のスペーサグリッドにも適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
A セル軸
D 隙間
E 高さ
F 矢印、流れ方向
H 高さ
L 組立軸
h 高さ
2 核燃料集合体、燃料集合体
4 核燃料棒、燃料棒
6 補強材
8 下部ノズル
10 上部ノズル
12 案内管
13 水チャンネル
14 スペーサグリッド
15 燃料チャンネル
16 交絡ストリップ
18 セル
20 壁部分
22 ばね
24 窪み
26 下部縁部
28 上部縁部
30 スリット
32 フィン
34 運動制限器
36 タブ
38 接触部分
40 スロット
42 上部基部
44 下部自由先端
46 接続線
48 対向端
50 切り曲げ
52 開口部
54 縁部
56 隆起状部分
62 頂端
64 下部の箇所
66 横断箇所
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10