(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リン化合物がリン酸エステルおよび亜リン酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種の有機リン化合物である、請求項2に記載のポリエステル樹脂組成物。
前記有機リン化合物が、炭素数8〜24の長鎖アルキル基、芳香族環およびペンタエリスリトール骨格からなる群から選択される少なくとも1種の構造を有するものである、請求項3に記載のポリエステル樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0016】
先ず、本発明のポリエステル樹脂組成物について説明する。本発明のポリエステル樹脂組成物は、グリコール酸系樹脂を50質量%以上含むポリエステル樹脂100質量部と、分解促進剤としてカルボン酸無水物0.5〜50質量部とを含有するものである。
【0017】
このような本発明のポリエステル樹脂組成物は、低温(例えば、60℃未満、好ましくは50℃以下)でも優れた分解性を有するものである。具体的には、この樹脂組成物1gを50mlのイオン交換水に浸漬し、40℃で2週間(より好ましくは1週間)保持した場合に、保持後の質量減少率が10%以上(より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上)であることが好ましい。
【0018】
以下、本発明にかかる各成分について説明する。
【0019】
〔ポリエステル樹脂〕
本発明に用いられるポリエステル樹脂は、グリコール酸系樹脂を50質量%以上含むものである。グリコール酸系樹脂の含有量としては、ポリエステル樹脂組成物の分解性が向上するという観点から、55質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
【0020】
(グリコール酸系樹脂)
本発明に用いられるグリコール酸系樹脂は、グリコール酸単位(−OCH
2−CO−)を有する重合体である。このようなグリコール酸系樹脂としては、前記グリコール酸単位のみからなるポリグリコール酸、すなわち、グリコール酸単独重合体、グリコール酸単位および他のモノマー(以下、「コモノマー」という。)に由来する構成単位を有するグリコール酸共重合体が挙げられる。グリコール酸共重合体としては、共重合体を構成する全構成単位100モル%中に前記グリコール酸単位が50モル%以上含まれているものが好ましい。
【0021】
なお、前記グリコール酸単位は、重合により−OCH
2−CO−構造を重合体中に与えるモノマーに由来するものであり、必ずしもグリコール酸に由来するものである必要はなく、本発明においては、例えば、グリコール酸の2分子環状エステルであるグリコリドに由来する重合体も前記グリコール酸系樹脂に含まれる。
【0022】
前記コモノマーとしては、例えば、シュウ酸エチレン(すなわち、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ラクチド類、ラクトン類(例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、β−ピバロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなど)、カーボネート類(例えば、トリメチレンカーボネートなど)、エーテル類(例えば、1,3−ジオキサンなど)、エーテルエステル類(例えば、ジオキサノンなど)、アミド類(ε−カプロラクタムなど)などの環状モノマー;乳酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのグリコール酸以外のヒドロキシカルボン酸またはそのアルキルエステル;エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの脂肪族ジオール類と、こはく酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸類またはそのアルキルエステル類との実質的に等モルの混合物を挙げることができる。これらのコモノマーは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0023】
グリコール酸共重合体としては、ポリエステル樹脂組成物の分解性が向上するという観点から、共重合体を構成する全構成単位100モル%中に前記グリコール酸単位が50モル%以上含まれているものが好ましく、55モル%以上がより好ましく、80モル%以上含まれているものがさらに好ましく、90モル%以上含まれているものが特に好ましい。また、グリコール酸系樹脂としては、前記グリコール酸単位のみからなるグリコール酸単独重合体が好ましい。
【0024】
グリコール酸系樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、10,000〜800,000が好ましく、20,000〜600,000がより好ましく、30,000〜400,000がさらに好ましく、50,000〜300,000が特に好ましい。グリコール酸系樹脂のMwが前記下限未満になると、ポリエステル樹脂組成物から得られる成形体の強度が不足する場合があり、他方、前記上限を超えると、溶融粘度の増加によりポリエステル樹脂組成物の成形性が劣る場合がある。
【0025】
このようなグリコール酸系樹脂の製造方法としては特に限定はなく、従来公知の方法により製造することができる。また、本発明においては、市販のグリコール酸系樹脂を用いてもよい。
【0026】
グリコール酸系樹脂の製造方法としては、以下の方法を例示することができる。
(1)グリコリドおよび必要に応じてコモノマーを用い、開環重合によりグリコール酸系樹脂を得る方法(以下、「グリコール酸系樹脂の製造方法1」とも記す)。
(2)グリコール酸またはグリコール酸アルキルエステルおよび必要に応じてコモノマーを用い、脱水または脱アルコールを伴う重縮合によりプレポリマーを製造し、得られたプレポリマーを、このプレポリマーのガラス転移温度より高くかつ融点より低い温度に加熱して、固相重合させる方法(以下、「グリコール酸系樹脂の製造方法2」とも記す。)。
【0027】
(グリコール酸系樹脂の製造方法1)
グリコール酸系樹脂の製造方法1では、グリコリドおよび必要に応じてコモノマーを用い、開環重合によりグリコール酸系樹脂を得る。グリコリドは、ヒドロキシカルボン酸の1種であるグリコール酸の2分子間環状エステルである。なお、グリコリドの開環重合により、グリコール酸系樹脂を製造する場合であっても、所望により、グリコリド量の20質量%を限度として、グリコール酸をモノマーの一部として用いてもよい。また、モノマーの一部としてコモノマーを用いてもよい。コモノマーを用いる場合には、得られるグリコール酸共重合体が、前述の範囲でグリコール酸単位を有するように、コモノマーの使用量を決定することが好ましい。
【0028】
コモノマーとしては、環状モノマーを用いることが好ましい。環状モノマーとしては、ラクチドなど他のヒドロキシカルボン酸の2分子間環状エステルのほか、ラクトン類(例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、ピバロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等)、トリメチレンカーボネート、1,3−ジオキサンなどの環状モノマーを使用することができる。好ましい環状モノマーは、グリコール酸以外のヒドロキシカルボン酸の2分子間環状エステルであり、ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、L−乳酸、D−乳酸、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸、α−ヒドロキシカプロン酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸、α−ヒドロキシヘプタン酸、α−ヒドロキシオクタン酸、α−ヒドロキシデカン酸、α−ヒドロキシミリスチン酸、α−ヒドロキシステアリン酸、およびこれらのアルキル置換体などを挙げることができる。特に好ましい環状モノマーは、乳酸(L体、D体、ラセミ体、これらの混合物のいずれであってもよい)の2分子間環状エステルであるラクチドである。
【0029】
グリコール酸系樹脂の製造方法1では、グリコリドの開環重合が行われるが、この開環重合は、グリコリドの単独重合でも、グリコリドとコモノマーとの共重合でもよい。このような開環重合は好ましくは、少量の触媒の存在下に行われる。触媒としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化錫(例えば、二塩化錫、四塩化錫など)や有機カルボン酸錫(例えば、2−エチルヘキサン酸錫などのオクタン酸錫)などの錫系化合物;アルコキシチタネートなどのチタン系化合物;アルコキシアルミニウムなどのアルミニウム系化合物;ジルコニウムアセチルアセトンなどのジルコニウム系化合物;ハロゲン化アンチモン、酸化アンチモンなどのアンチモン系化合物;などを用いることができる。触媒の使用量は、環状エステルに対して、質量比で、好ましくは1〜1,000ppm、より好ましくは3〜300ppmである。
【0030】
グリコリドの開環重合は、塊状重合でも、溶液重合でもよいが、塊状重合が好ましい。分子量調節のために、ラウリルアルコールなどの高級アルコールや水などを分子量調節剤として使用してもよい。また、物性改良のために、グリセリンなどの多価アルコールを添加してもよい。塊状重合の重合装置としては、押出機型、パドル翼を持った縦型、ヘリカルリボン翼を持った縦型、押出機型やニーダー型の横型、アンプル型、板状型、管状型など様々な装置の中から、適宜選択することができる。また、溶液重合には、各種反応槽を用いることができる。
【0031】
重合温度は、実質的な重合開始温度である120℃から300℃までの範囲内で適宜設定することができる。重合温度は、好ましくは130〜270℃、より好ましくは140〜260℃、特に好ましくは150〜250℃である。重合温度が低すぎると、生成したグリコール酸系樹脂の分子量分布が広くなりやすい。重合温度が高すぎると、生成したグリコール酸系樹脂が熱分解を受けやすくなる。重合時間は、3分間〜20時間、好ましくは5分間〜18時間の範囲内である。重合時間が短すぎると重合が充分に進行し難く、所定の重量平均分子量を実現することができない。重合時間が長すぎると生成したグリコール酸系樹脂が着色しやすくなる。
【0032】
生成したグリコール酸系樹脂を固体状態とした後、所望により、更に固相重合を行ってもよい。固相重合とは、グリコール酸系樹脂の融点未満の温度で加熱することにより、固体状態を維持したままで熱処理する操作を意味する。この固相重合により、未反応モノマー、オリゴマーなどの低分子量成分が反応する。また、それらの一部が揮発・除去されることもある。固相重合は、通常、(1)窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下、(2)減圧下、または(3)流動パラフィンのような不活性溶媒下で、所定の温度に加熱することにより行われる。固相重合は、好ましくは1〜100時間、より好ましくは2〜50時間、特に好ましくは3〜30時間で行われる。
【0033】
(グリコール酸系樹脂の製造方法2)
グリコール酸系樹脂の製造方法2では、グリコール酸またはグリコール酸アルキルエステルおよび必要に応じてコモノマーを用い、脱水または脱アルコールを伴う重縮合によりプレポリマーを製造し、得られたプレポリマーを、このプレポリマーのガラス転移温度より高くかつ融点より低い温度に加熱して、固相重合させることによりグリコール酸系樹脂を得る。
【0034】
前記グリコール酸アルキルエステルとしては、特に限定されないが、アルキル基の炭素数が1〜4のものが好ましく、その具体例として、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸n−プロピル、グリコール酸イソプロピル、グリコール酸n−ブチル、グリコール酸イソブチル、グリコール酸t−ブチルなどを挙げることができる。グリコール酸アルキルエステルとしては、これらを単独で、あるいは2種以上を組み合せて使用することができる。これらの中でも、グリコール酸メチルやグリコール酸エチルが、脱アルコール性が容易であるため、特に好ましい。また、コモノマーとしては前述のものを用いることができる。
【0035】
前記プレポリマーの重量平均分子量は、通常、5,000以上、150,000未満であり、好ましくは8,000〜100,000の範囲内である。プレポリマーの重量平均分子量が低すぎると、固相重合によって高分子量のグリコール酸系樹脂を得るのに長時間を要し、経済的ではない。一方、グリコール酸またはグリコール酸アルキルエステルの重縮合によって、重量平均分子量が150,000以上のグリコール酸系樹脂を得ることは困難である。
【0036】
前記重縮合を行う際には、触媒の使用は必須ではないが、反応速度を速める目的で触媒を添加することができる。触媒としては、例えば、塩化第一錫、塩化第二錫、硫酸第一錫、酸化第一錫、酸化第二錫、テトラフェニル錫、オクタン酸第一錫、酢酸第一錫、酢酸第二錫などの錫系触媒;四塩化チタン、チタン酸イソプロピオネート、チタン酸ブチルなどのチタン系触媒;金属ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、酸化ゲルマニウムなどのゲルマニウム系触媒;酸化亜鉛、三酸化アンチモン、酸化鉛、酸化アルミニウム、酸化鉄などの金属酸化物系触媒;等が挙げられる。これらの触媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
重縮合の際に触媒を用いる場合は、触媒を、その金属原子を基準として、単量体1モルに対し、好ましくは1×10
−5〜1×10
−2当量、より好ましくは3×10
−5〜5×10
−3当量の割合で添加する。触媒の添加量が少なすぎると、重合時間の短縮効果が小さくなり、工業的にみて経済的でない。触媒の添加量が多すぎると、生成ポリマーが着色する傾向があるため、商品価値を損なうおそれがある。触媒は、そのままで、あるいは適当な液体に溶解ないしは分散して、反応系に添加する。触媒の添加は、一括でも分割でもよい。触媒は、実質的に重縮合反応が完結するまでの間であれば、いずれの時期に反応系に添加してもよい。
【0038】
これらの触媒を使用する場合は、着色防止剤としてリン化合物を添加することができる。リン化合物としては、例えば、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル、ポリリン酸モノエチルエステル、ポリリン酸ジエチルエステル、ピロリン酸、ピロリン酸トリエチル、ピロリン酸ヘキサメチルアミド、亜リン酸、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル等を挙げることができる。これらのリン化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。リン化合物は、リン原子を基準として、触媒の金属原子1当量に対し、好ましくは0.1〜10当量、より好ましくは0.3〜3当量の割合で添加する。リン化合物の添加量が少なすぎると、着色防止効果が小さく、多すぎると、重縮合反応が遅くなることがある。リン化合物は、そのままで、あるいは適当な液体に溶解ないしは分散して反応系に添加する。リン化合物の添加は、一括でも分割でもよい。リン化合物は、実質的に重縮合反応が完結するまでの間であれば、いずれの時期に反応系に添加してもよい。
【0039】
グリコール酸またはグリコール酸アルキルエステルの脱水または脱アルコール重縮合反応は、プレポリマーが所定の分子量に達したときを反応の終点とする。プレポリマーが比較的低分子量の場合は、重縮合反応終了時には液状であり、冷却により結晶固化する。プレポリマーが比較的高分子量の場合は、固化した段階で反応の終点とする。反応の終点後、そのまま固相重合を行っても構わないが、総表面積を拡大させるため、粉砕等の処置により、粒状化させたのち固相重合を行った方が効果的である。
【0040】
グリコール酸系樹脂の製造方法2では、上記のようにして得られたプレポリマーを、このプレポリマーのガラス転移温度より高くかつ融点より低い温度に加熱して、固相重合させることにより、高分子量のグリコール酸系樹脂を製造する。固相重合は、通常、不活性ガス雰囲気下または減圧下または不活性溶媒下に行う。固相重合を行うに当り、プレポリマーの形状は、塊状、ペレット、粒状、粉末等のいずれでもよく、特に限定されない。プレポリマーを、粉砕等により細粒にしておくと、表面積が増え、反応を促進することができるので、好ましい。
【0041】
固相重合は、文字どおりプレポリマーを固体状態に保持して重合反応を行う。したがって、プレポリマーの融点によって、固相重合における反応温度の上限値が決定される。固相重合の反応温度は、通常、プレポリマーの融点よりも5℃以上低い温度、好ましくはプレポリマーの融点よりも10℃以上低い温度である。プレポリマーの融点近くで固相重合を行うと、副反応が起きやすく、分子量低下、ガス発生、着色などの好ましくない現象が生じやすい。プレポリマーの融点以上での反応は、プレポリマーが溶融するため、もはや固相重合とは呼ばれず、副反応が非常に起こりやすく、高分子量化が困難となる。反応速度を高める上で、固相重合の反応温度を好ましくは100〜230℃、より好ましくは150〜220℃の範囲内とすることが望ましい。
【0042】
固相重合反応中、分子量の増加や、アニール効果により融点が上昇する場合、固相重合反応温度を段階的に上げていくことができる。しかし、その場合でも、反応温度は、その時点におけるプレポリマーの融点より低い温度、好ましくはその時点のプレポリマーの融点よりも5℃以上低い温度、より好ましくはその時点のプレポリマーの融点よりも10℃以上低い温度に制御する。
【0043】
固相重合は、通常、(1)窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下、(2)減圧下、または(3)流動パラフィンのような不活性溶媒下で、プレポリマーを所定の温度に加熱することにより行われる。これによって、望ましくない副反応を避けて、高分子量化することが容易となる。
【0044】
固相重合は、触媒なしでも行うことができるが、必要であれば触媒を添加することができる。触媒としては、例えば、塩化第一錫、塩化第二錫、硫酸第一錫、酸化第一錫、酸化第二錫、テトラフェニル錫、オクタン酸第一錫、酢酸第一錫、酢酸第二錫などの錫系触媒;四塩化チタン、チタン酸イソプロピオネート、チタン酸ブチルなどのチタン系触媒;金属ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、酸化ゲルマニウムなどのゲルマニウム系触媒;酸化亜鉛、三酸化アンチモン、酸化鉛、酸化アルミニウム、酸化鉄などの金属酸化物系触媒;等が挙げられる。これらの固相重合触媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
固相重合触媒を用いる際は、触媒を、プレポリマー100重量部に対し、好ましくは0.001〜2重量部、より好ましくは0.005〜0.5重量部の割合で添加する。触媒の添加量が少なすぎると、添加効果が小さく、重合時間を充分に短くすることが難しい。触媒の添加量が多すぎると、生成ポリマーの着色が大きくなり、商品価値を損なうおそれがある。触媒は、そのままで、あるいは適当な液体に溶解ないしは混合して、反応系に添加する。触媒の添加は、一括でも分割でもよい。触媒は、実質的に固相重合反応が完結するまでの間であれば、いずれの時期に反応系に添加してもよい。
【0046】
固相重合触媒を使用する場合は、着色防止剤としてリン化合物を用いることができる。リン化合物としては、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル、ポリリン酸モノエチルエステル、ポリリン酸ジエチルエステル、ピロリン酸、ピロリン酸トリエチル、ピロリン酸ヘキサメチルアミド、亜リン酸、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル等を挙げることができる。これらのリン化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。リン化合物は、リン原子を基準として、触媒の金属原子1当量に対し、好ましくは0.1〜10当量、より好ましくは0.3〜3当量の割合で添加する。この添加量が少なすぎると、着色防止効果が小さく、多すぎると、反応が遅くなる。リン化合物は、そのままで、あるいは適当な液体に溶解ないしは分散して反応系に添加することができる。リン化合物の添加は、一括でも分割でもよい。リン化合物は、実質的に固相重合反応が完結するまでの間であれば、いずれの時期に反応系に添加してもよい。
【0047】
このようなグリコール酸系樹脂の製造方法2としては、特開平11−116666号公報に開示されたポリグリコール酸の製造方法により行うことができる。
【0048】
(その他のポリエステル樹脂)
本発明のポリエステル樹脂組成物においては、前記グリコール酸系樹脂以外のポリエステル樹脂(以下、「その他のポリエステル樹脂」という。)を併用することができる。このようなその他のポリエステル樹脂の含有量は50質量%未満であり、ポリエステル樹脂組成物の分解性が向上するという観点から、45質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
【0049】
前記その他のポリエステル樹脂としては特に制限はないが、乳酸系樹脂、ポリエチレンテレフタレート共重合体、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエートなどの分解性ポリエステル樹脂が挙げられる。これらの分解性ポリエステル樹脂は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。このような分解性ポリエステル樹脂の中でも、ポリエステル樹脂組成物の分解性が向上するという観点から、乳酸系樹脂が好ましい。
【0050】
乳酸系樹脂は、乳酸単位(−OCH(CH
3)−CO−)を有する重合体であり、例えば、前記乳酸単位のみからなるポリ乳酸、乳酸単位および他のモノマー(以下、「コモノマー」という。)に由来する構成単位を有する乳酸共重合体が挙げられる。ポリ乳酸としては、D−乳酸単位のみからなるポリ−D−乳酸(D−乳酸の単独重合体)、L−乳酸単位のみからなるポリ−L−乳酸(L−乳酸の単独重合体)、D−乳酸単位とL−乳酸単位とからなるポリ−DL−乳酸(D−乳酸とL−乳酸の共重合体)が挙げられる。乳酸共重合体としては、共重合体を構成する全構成単位100モル%中に前記乳酸単位が50モル%以上含まれているものが好ましい。また、乳酸共重合体においても、前記乳酸単位は、D−乳酸単位のみであっても、L−乳酸単位のみであっても、D−乳酸単位とL−乳酸単位とが混合したものであってもよい。
【0051】
なお、前記乳酸単位は、重合により−OCH(CH
3)−CO−構造を重合体中に与えるモノマーに由来するものであり、必ずしも乳酸に由来するものである必要はなく、本発明においては、例えば、乳酸の2分子環状エステルであるラクチドに由来する重合体も前記乳酸系樹脂に含まれる。
【0052】
前記コモノマーとしては、グリコール酸共重合体におけるコモノマーとして例示したもの(乳酸およびラクチドを除く。)、グリコール酸およびグリコリドが挙げられる。乳酸共重合体としては、ポリエステル樹脂組成物の分解性が向上するという観点から、共重合体を構成する全構成単位100モル%中に前記乳酸単位が50モル%以上含まれているものが好ましく、55モル%以上がより好ましく、80モル%以上含まれているものがさらに好ましく、90モル%以上含まれているものが特に好ましい。また、乳酸系樹脂としては、前記乳酸単位のみからなる乳酸単独重合体が好ましい。
【0053】
乳酸系樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、10,000〜800,000が好ましく、20,000〜600,000がより好ましく、30,000〜400,000がさらに好ましく、50,000〜300,000が特に好ましい。乳酸系樹脂のMwが前記下限未満になると、ポリエステル樹脂組成物からなる成形体の強度が不足する場合があり、他方、前記上限を超えると、溶融粘度の増加によりポリエステル樹脂組成物の成形性が劣る場合がある。
【0054】
このような乳酸系樹脂の製造方法としては特に限定はなく、従来公知の方法により製造することができる。また、本発明においては、市販の乳酸系樹脂を用いてもよい。
【0055】
〔分解促進剤〕
本発明に用いられる分解促進剤は、カルボン酸無水物であり、必要に応じてリン化合物を併用することができる。分解促進剤としてカルボン酸無水物を添加することによって、低温(例えば、60℃未満、好ましくは50℃以下)でも分解性に優れたポリエステル樹脂組成物を得ることができ、さらに、このポリエステル樹脂組成物は保管性にも優れている。また、リン化合物を併用することによって、分解性が更に向上する傾向にある。
【0056】
(カルボン酸無水物)
本発明に用いられるカルボン酸無水物としては特に制限はないが、本発明のポリエステル樹脂組成物を成形加工する際の温度に耐えうる耐熱性の観点およびポリエステル樹脂組成物との相溶性の観点から、無水ヘキサン酸、無水オクタン酸、無水デカン酸、無水ラウリン酸、無水ミスチリン酸、無水パルミチン酸、無水ステアリン酸などの脂肪族モノカルボン酸無水物(好ましくは、炭素数6〜20のアルキル基を2個有するもの);無水安息香酸などの芳香族モノカルボン酸無水物;無水こはく酸、無水マレイン酸などの脂肪族ジカルボン酸無水物(好ましくは、炭素数2〜20の飽和または不飽和の炭化水素鎖を有するもの);無水フタル酸などの芳香族ジカルボン酸無水物;無水トリメリト酸などの芳香族トリカルボン酸無水物;テトラヒドロ無水フタル酸などの脂環式ジカルボン酸無水物;ブタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物;3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセリンビスアンヒドロトリメリテートモノアセテートなどの芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましく、環構造を有するカルボン酸無水物がより好ましく、芳香族モノカルボン酸無水物、芳香族ジカルボン酸無水物、芳香族トリカルボン酸無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物がさらに好ましく、無水フタル酸、無水トリメリト酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物が特に好ましい。これらのカルボン酸無水物は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0057】
また、このようなカルボン酸無水物のうち、ポリエステル樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)を、グリコール酸系樹脂のTgよりも上昇させることが可能なカルボン酸無水物を用いることが好ましい。このようなカルボン酸無水物としては、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。Tgを上昇させることが可能なカルボン酸無水物を用いると、ポリエステル樹脂組成物を成形加工する際の取り扱い性が向上する傾向にある。例えば、ポリエステル樹脂組成物を用いて繊維を製造する場合には、繊維製造時の膠着が問題となることがあるが、Tgが上昇すると、膠着が起こりづらくなる傾向にある。なお、グリコール酸系樹脂自体のTgは、通常−40〜45℃であり、例えばグリコール酸系樹脂がグリコール酸単独重合体である場合には、Tgは通常35〜45℃であるが、分解促進剤として3,3’4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を用いると、Tgが45〜55℃のポリエステル樹脂組成物を得ることができる。
【0058】
(リン化合物)
本発明に用いられるリン化合物としては特に制限はないが、リン酸エステルおよび亜リン酸エステルなどの有機リン化合物が好ましく、中でも、炭素数8〜24の長鎖アルキル基、芳香族環およびペンタエリスリトール骨格からなる群から選択される少なくとも1種の構造を有する有機リン化合物がより好ましい。これらのリン化合物は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0059】
炭素数8〜24の長鎖アルキル基を有するリン酸エステルとしては、モノ−またはジ−ステアリルアシッドホスフェートあるいはこれらの混合物、ジ−2−エチルヘキシルアシッドホスフェートなどが挙げられる。芳香族環を有する亜リン酸エステルとしては、トリス(ノニルフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。ペンタエリスリトール骨格構造を有する亜リン酸エステルとしては、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイトなどが挙げられる。
【0060】
<ポリエステル樹脂組成物>
本発明のポリエステル樹脂組成物は、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して、分解促進剤であるカルボン酸無水物を0.5〜50質量部含有するものであり、必要に応じてさらにリン化合物を0.01〜10質量部が含有するものである。
【0061】
カルボン酸無水物の含有量が前記下限未満になると、低温(例えば、60℃未満、好ましくは50℃以下)での分解性が十分に発現しない。他方、前記上限を超えると、ポリエステル樹脂組成物の成形加工性が低下する。また、このような観点から、カルボン酸無水物の含有量としては、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、3〜50質量部がより好ましい。
【0062】
また、分解促進剤としてカルボン酸無水物とリン化合物とを併用すると、ポリエステル樹脂組成物の低温での分解性が更に向上する傾向にあるが、リン化合物の含有量が前記上限を超えると、成形加工時の分子量低下や、ブリードアウトにより表面品質を損なう傾向にある。他方、前記下限未満になると、リン化合物の添加効果が十分に得られない傾向にある。また、ポリエステル樹脂組成物の低温での分解性がより向上するという観点から、リン化合物の含有量としては、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部がより好ましく、0.5〜10質量部がさらに好ましい。
【0063】
なお、一般にグリコール酸系樹脂が分解すると、その系中に存在するカルボキシル基の量が増大するため、その系のpHが低下する。グリコール酸系樹脂を含むポリエステル樹脂組成物の分解を促進するための添加剤としては、従来から酸(例えばカルボン酸)、無機物等を用いることが知られている。本発明では、カルボン酸無水物を分解促進剤として用いるため、例えば酸を用いた時よりも、その系の初期のpHを高くすることができる。また、カルボン酸無水物は、従来の分解促進剤(すなわち、カルボン酸無水物およびリン化合物以外の分解促進剤)と比べて、水の存在量が少ない環境下では反応および吸水により樹脂の分解を抑制するため、本発明のポリエステル樹脂組成物は水の存在量が多い環境下では優れた分解性を有するにも関わらず、本発明のポリエステル樹脂組成物の製造時や成形時、さらに成形により得られた成形体を保管している際の水の存在量が少ない環境下ではグリコール酸系樹脂の分解を抑制することが可能となる。
【0064】
本発明のポリエステル樹脂組成物においては、ポリエステル樹脂組成物を成形加工する際の熱劣化を抑制するために、従来公知の熱安定剤を配合してもよい。このような熱安定剤としては、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム等の炭酸金属塩;一般に重合触媒不活性剤として知られる、ビス[2−(2−ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジン]ドデカン酸、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジンなどの−CONHNH−CO−単位を有するヒドラジン系化合物;3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール系化合物;トリアジン系化合物;などが挙げられる。熱安定剤の配合量は、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して、通常3質量部以下であり、好ましくは0.001〜1質量部、より好ましくは0.005〜0.5質量部、特に好ましくは0.01〜0.1質量部(100〜1,000ppm)である。
【0065】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物においては、保存性を向上させるために、従来公知のカルボキシル基末端封止剤または水酸基末端封止剤を配合してもよい。このような末端封止剤は、カルボキシル基末端封止作用および水酸基末端封止作用を有する化合物であれば特に制限はないが、カルボキシル基末端封止剤としては、例えば、N,N−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物;2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2−フェニル−2−オキサゾリン、スチレン・イソプロペニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン化合物;2−メトキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン等のオキサジン化合物;N−グリシジルフタルイミド、シクロへキセンオキシド、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート等のエポキシ化合物;などが挙げられる。これらのカルボキシル基末端封止剤の中でも、カルボジイミド化合物が好ましく、芳香族、脂環族、および脂肪族のいずれのカルボジイミド化合物も用いることができるが、とりわけ、芳香族カルボジイミド化合物が好ましく、特に、純度の高いものが保存性の向上効果に優れている。また、水酸基末端封止剤としては、ジケテン化合物、イソシアネート類などが挙げられる。このような末端封止剤の配合量は、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して、通常0.01〜5質量部であり、好ましくは0.05〜3質量部、より好ましくは0.1〜1質量部である。
【0066】
さらに、本発明のポリエステル樹脂組成物においては、用途に応じて、ポリエステル樹脂以外の樹脂、光安定剤、無機フィラー、有機フィラー、可塑剤、結晶核剤、防湿剤、防水剤、撥水剤、滑剤、離型剤、カップリング剤、酸素吸収剤、顔料、染料等の任意成分をさらに配合してもよい。特に、本発明のポリエステル樹脂組成物からなる成形体を、後述する石油または天然ガスの坑井掘削における破砕流体などの坑井処理流体中の成分として用いる場合には、ポリエステル樹脂組成物には、任意成分として、ポリエステル樹脂以外の樹脂、熱安定剤、光安定剤、無機フィラー、有機フィラー、可塑剤、結晶核剤、防湿剤、防水剤、撥水剤、滑剤が配合されていることが好ましい。
【0067】
前記ポリエステル樹脂以外の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエステルアミド、アクリル樹脂、スチレン系共重合体、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリサッカライド、セルロースエステル樹脂等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体などの軟質ポリオレフィン系ポリマー、各種コアシェル型エラストマー、ポリアミドエラストマー等の軟質熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0068】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物は、通常分解性が求められる分野に用いられる。このため、前記ポリエステル樹脂以外の樹脂も分解性を有することが好ましい。このような樹脂としては、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリサッカライド、ポリビニルアルコールが好ましい。
【0069】
このようなポリエステル樹脂以外の樹脂は、この樹脂と前記ポリエステル樹脂との合計100質量部に対して、前記ポリエステル樹脂に含まれるグリコール酸系樹脂が99〜50質量部、ポリエステル樹脂以外の樹脂が1〜50質量部となるように配合することが好ましい。
【0070】
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法としては特に制限はないが、例えば、グリコール酸系樹脂および必要に応じて前記その他のポリエステル樹脂を含むポリエステル樹脂に、分解促進剤であるカルボン酸無水物および必要に応じてリン化合物と、必要に応じて熱安定剤、末端封止剤、その他の任意成分とを混合した後、グリコール酸系樹脂の融点以上の温度で溶融混練を行う方法が挙げられる。特に、本発明のポリエステル樹脂組成物には、分解促進剤としてカルボン酸無水物が含まれているため、通常のカルボン酸などの従来の分解促進剤(すなわち、カルボン酸無水物およびリン化合物以外の分解促進剤)が含まれている場合に比べて、溶融混練によるグリコール酸系樹脂の分子量の低下が少なくなるという利点がある。
【0071】
<成形体>
本発明の成形体は、前記本発明のポリエステル樹脂組成物からなるものである。本発明のポリエステル樹脂組成物は、優れた分解性を有し、グリコール酸系樹脂が有するガスバリア性、耐熱性、機械的強度にも優れているため、包装材料、工業材料、医療用繊維等の様々な用途に用いることが可能である。また、本発明のポリエステル樹脂組成物は、高温(例えば、60℃以上)だけでなく、低温(例えば、60℃未満、好ましくは50℃以下)でも分解性に優れているため、坑井掘削において使用される各種の液状流体、すなわち、破砕流体などの坑井処理流体の一成分としても用いることができる。
【0072】
本発明の成形体の形状としては、成形体が用いられる用途によって異なるが、例えば、パウダー、ペレット、フィルム、繊維が挙げられる。なお、本発明の成形体を得る方法としては特に限定はないが、例えば、溶融状態の本発明のポリエステル樹脂組成物を直接、所望の形状に成形して本発明の成形体を得る方法や、溶融状態の本発明のポリエステル樹脂組成物からペレットを成形し、このペレットを所望の形状に二次成形して本発明の成形体を得る方法が挙げられる。
【0073】
このような本発明の成形体は、石油または天然ガスの坑井掘削において使用される各種の液状流体、すなわち、破砕流体などの坑井処理流体に使用することができる。特に、掘削流体、フラクチャリング流体、セメンティング流体、一時プラグ流体および仕上げ流体からなる群より選ばれる少なくとも1種の坑井処理流体に使用することができる。
【0074】
<坑井処理流体>
本発明の坑井処理流体は、前記本発明の成形体を含有するものである。このような坑井処理流体は、掘削流体、フラクチャリング流体、セメンティング流体、一時プラグ流体及び仕上げ流体からなる群より選ばれる少なくとも1種の坑井処理流体として使用できる。
【0075】
本発明の坑井処理流体に含まれる成形体の形状としては、特に限定はないが、例えば、パウダー、ペレット、フィルム、繊維が挙げられる。パウダーとしては、長径/短径が1.9以下で、累積50重量%平均径が1〜1000μmであるパウダーが挙げられる。ペレットとしては、長手方向の長さが1〜10mmであり、かつアスペクト比が1以上5未満のペレットが挙げられる。フィルムとしては、面積0.01〜10cm
2、厚さ1〜1000μmのフィルム片が挙げられる。繊維としては、長さ/断面径(アスペクト比)が10〜2000で、短径が5〜95μmの短繊維が挙げられる。
【0076】
本発明の成形体は、例えば、繊維としてフラクチャリング流体に配合する場合は、前記繊維を0.05〜100g/L、好ましくは0.1〜50g/Lの濃度でフラクチャリング流体に含有させることによって、プロパントの分散性を向上させることが可能となる。
【0077】
フラクチャリング流体に配合された繊維は、坑井の製造中および/または完成後には、機能上、不要となることがあるが、その際、前記本発明のポリエステル樹脂組成物からなる繊維を用いると、通常必要とされる回収または廃棄処理が不要または容易となる。すなわち、前記繊維は、生分解性および加水分解性に優れているので、例えば、地中に形成されたフラクチャ等の中に残置しておいても、土壌中に存在する微生物によって生分解され、あるいは土壌中の水分によって加水分解されて短時間で消失するので、回収作業が不要となる。特に、本発明のポリエステル樹脂組成物が、高温(例えば、60℃以上)だけでなく低温(例えば、60℃未満、好ましくは50℃以下)でも優れた分解性を示すため、高温高圧の土壌環境中だけでなく、比較的低温の土壌環境中においても、前記繊維は短時間で消失する。また、条件によっては、前記繊維が残存する地中にアルカリ性溶液を注入し、繊維と接触させることによって、より短時間で加水分解させることもできる。さらに、前記繊維をフラクチャリング流体と一緒に地上に回収した後、容易に(比較的低温で)生分解または加水分解させることもできる。
【0078】
また、本発明の成形体は、高温(例えば、60℃以上)だけでなく低温(例えば、60℃未満、好ましくは50℃以下)でも優れた加水分解性を有することから、機能上、不要となった場合には、地上に回収しても比較的低温で、また、高温高圧の土壌環境中だけでなく、比較的低温の土壌環境中においても、短期間で加水分解させて消失させることができる。なお、前記成形体は酸放出性を有し、坑井製造中において採用されることがある酸処理、すなわち、酸を油層等と接触させる処理を行うことにより、岩石の破砕を容易にしたり、岩石を溶解して油層の浸透率を高めたりする坑井刺激法にとって有効に働く効果を奏させることも可能である。
【0079】
本発明の坑井処理流体には、本発明の成形体のほか、坑井処理流体に通常含有される種々の成分や添加剤を含有させることができる。例えば、水圧破砕(フラクチャリング)において使用されるフラクチャリング流体には、本発明の成形体を含有(例えば0.05〜100g/Lの濃度)させることに加えて、溶剤または分散媒として、水や有機溶剤を主成分として含有(90〜95質量%程度)させ、支持体(プロパント)として、砂、ガラスビーズ、セラミック粒子および樹脂被覆した砂などを含有(9〜5質量%程度)させ、さらに、ゲル化剤、スケール防止剤、岩石等を溶解するための酸、摩擦低減剤などの種々の添加剤を含有(0.5〜1質量%程度)させることができる。前記成形体を含有する坑井処理流体、例えば、上記繊維を0.05〜100g/Lの濃度で含有する坑井処理流体は、掘削流体、フラクチャリング流体、セメンティング流体、一時プラグ流体または仕上げ流体等の坑井処理流体として、優れた特性を有するとともに、使用後の回収や廃棄が極めて容易であるという効果を奏する。
【実施例】
【0080】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。実施例で使用した樹脂や得られたポリエステル樹脂組成物などの特性は以下の方法により測定した。
【0081】
<分子量の測定>
樹脂(ポリグリコール酸およびポリ乳酸など)の分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により下記条件で求めた。
(GPC測定条件)
装置:昭和電工株式会社製「Shodex−104」
カラム:2本のHFIP−606Mとプレカラムとして1本のHFIP−Gと直列に接続
カラム温度:40℃
溶離液:5mMのトリフルオロ酢酸ナトリウムを溶解させたヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)溶液
流速:0.6ml/分
検出器:RI(示差屈折率)検出器
分子量較正:分子量の異なる標準ポリメタクリル酸メチル5種を用いた。
【0082】
<分解性試験(質量減少率の測定)>
試料(ポリエステル樹脂組成物(繊維を含む)、ポリグリコール酸、またはポリ乳酸)1gをガラス容器中の50mlのイオン交換水に浸漬し、40℃の恒温槽中で1週間または2週間保持した。その後、自重による濾過を行い、濾紙上に残った固形成分を室温で1日間放置し、さらに、80℃の窒素雰囲気下で乾燥した。乾燥後の固形成分の質量を測定し、40℃保持前の試料の質量(1g)に対する割合(40℃で1週間および2週間保持後の質量減少率)を求めた。
【0083】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
試料(ポリエステル樹脂組成物、ポリグリコール酸、またはポリ乳酸)10mgを示差走査熱量測定装置(メトラー・トレド株式会社製「DSC−822e」)に装着し、窒素雰囲気中(40ml/min)で0℃から100℃付近まで20℃/分で加熱した場合において、ガラス状態からゴム状態への転移領域に相当する中間点ガラス転移温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0084】
また、繊維は以下の方法により製造した。
<繊維の製造>
試料(ポリエステル樹脂組成物、ポリグリコール酸、またはポリ乳酸)をシリンダー径20mmφの一軸押出機に投入し、215〜250℃で溶融させた。なお、押出機のシリンダー温度は215〜250℃、ヘッド温度、ギアポンプ温度およびスピンパック温度はいずれも250℃に設定した。
【0085】
溶融状態の試料を、ギアポンプを用いて24穴ノズル(孔径0.20mm)から吐出させ、冷却塔で空冷(約5℃)して糸状に固化させて未延伸糸を得た。その後、未延伸糸を延伸温度65℃で3倍延伸し、延伸糸を得た。
【0086】
(実施例1)
ポリグリコール酸(PGA、株式会社クレハ製「Kuredux」、重量平均分子量(Mw):176,000)100質量部に3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)1質量部を配合し、スクリュー部温度を200〜240℃に設定した二軸押出混練機(東洋精機株式会社製「2D25S」)のフィード部に供給して溶融混練を行い、ペレット状のポリグリコール酸樹脂組成物を得た。このポリグリコール酸樹脂組成物について、前記方法に従って分解性試験を行い、40℃で2週間保持後の質量減少率を求めた。その結果を表1に示す。
【0087】
(実施例2〜6)
BTDAの配合量を表1に示す量に変更した以外は実施例1と同様にしてペレット状のポリグリコール酸樹脂組成物を調製した。得られたポリグリコール酸樹脂組成物について、前記方法に従って分解性試験を行い、40℃で1週間(実施例3〜5)および2週間(実施例2〜6)保持後の質量減少率を求めた。その結果を表1に示す。また、実施例3〜5で得られたポリグリコール酸樹脂組成物のガラス転移温度を前記方法に従って測定したところ、それぞれ52℃(実施例3)、52℃(実施例4)、53℃(実施例5)であった。さらに、実施例3で得られたポリグリコール酸樹脂組成物を用いて製造した延伸糸について、前記方法に従って分解性試験を行い、40℃で1週間保持後の質量減少率を求めたところ、15%であった。
【0088】
(実施例7〜8)
BTDAの代わりに無水フタル酸をそれぞれ5質量部または30質量部配合した以外は実施例1と同様にしてペレット状のポリグリコール酸樹脂組成物を調製した。得られたポリグリコール酸樹脂組成物について、前記方法に従って分解性試験を行い、40℃で1週間および2週間保持後の質量減少率を求めた。その結果を表1に示す。
【0089】
(実施例9〜10)
BTDAの代わりに無水トリメリト酸をそれぞれ5質量部または30質量部配合した以外は実施例1と同様にしてペレット状のポリグリコール酸樹脂組成物を調製した。得られたポリグリコール酸樹脂組成物について、前記方法に従って分解性試験を行い、40℃で1週間および2週間保持後の質量減少率を求めた。その結果を表1に示す。
【0090】
(実施例11〜14)
BTDAの代わりにそれぞれ無水安息香酸(実施例11)、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート(TMEG)(実施例12)、ブタンテトラカルボン酸二無水物(BT)(実施例13)またはジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)(実施例14)を10質量部配合した以外は実施例1と同様にしてペレット状のポリグリコール酸樹脂組成物を調製した。得られたポリグリコール酸樹脂組成物について、前記方法に従って分解性試験を行い、40℃で1週間(実施例11)および2週間(実施例11〜14)保持後の質量減少率を求めた。その結果を表1に示す。
【0091】
(実施例15)
PGA100質量部の代わりにPGA90質量部とポリ乳酸(PLA、Nature Works社製「PLA polymer 4032D」、重量平均分子量(Mw):256,000)10質量部を配合した以外は実施例4と同様にしてペレット状のポリグリコール酸系樹脂組成物を調製した。得られたポリグリコール酸系樹脂組成物について、前記方法に従って分解性試験を行い、40℃で2週間保持後の質量減少率を求めた。その結果を表1に示す。
【0092】
(実施例16〜17)
PGAとPLAの配合量を表1に示す量に変更した以外は実施例15と同様にしてペレット状のポリグリコール酸系樹脂組成物を調製した。得られたポリグリコール酸系樹脂組成物について、前記方法に従って分解性試験を行い、40℃で2週間保持後の質量減少率を求めた。その結果を表1に示す。
【0093】
(実施例18〜22)
ジステアリルアシッドホスフェートおよびモノステアリルアシッドホスフェートの混合体(株式会社ADEKA製「アデカスタブAX−71」)0.05質量部をさらに配合した以外はそれぞれ実施例1〜5と同様にしてペレット状のポリグリコール酸樹脂組成物を調製した。得られたポリグリコール酸樹脂組成物について、前記方法に従って分解性試験を行い、40℃で2週間保持後の質量減少率を求めた。その結果を表1に示す。
【0094】
(実施例23〜25)
アデカスタブAX−71の配合量を0.5質量部に変更した以外はそれぞれ実施例18〜20と同様にしてペレット状のポリグリコール酸樹脂組成物を調製した。得られたポリグリコール酸樹脂組成物について、前記方法に従って分解性試験を行い、40℃で2週間保持後の質量減少率を求めた。その結果を表1に示す。
【0095】
(比較例1)
BTDAを配合しなかった以外は実施例1と同様にしてペレット状のポリグリコール酸を調製した。得られたポリグリコール酸について、前記方法に従って分解性試験を行い、40℃で2週間保持後の質量減少率を求めた。その結果を表1に示す。また、得られたポリグリコール酸のガラス転移温度を前記方法に従って測定したところ、43℃であった。
【0096】
さらに、得られたポリグリコール酸を用いて、前記方法に従ってポリグリコール酸からなる繊維を製造し、得られた延伸糸について、前記方法に従って分解性試験を行い、40℃で1週間保持後の質量減少率を求めたところ、5%未満であった。
【0097】
(比較例2)
PGAの代わりにPLAを用いた以外は比較例1と同様にしてペレット状のポリ乳酸を調製した。得られたポリ乳酸について、前記方法に従って分解性試験を行い、40℃で2週間保持後の質量減少率を求めた。その結果を表1に示す。
【0098】
さらに、得られたポリ乳酸を用いて、前記方法に従ってポリ乳酸からなる繊維を製造し、得られた延伸糸について、前記方法に従って分解性試験を行い、40℃で1週間保持後の質量減少率を求めたところ、5%未満であった。
【0099】
(比較例3)
BTDAの代わりにアジピン酸10質量部を配合した以外は実施例1と同様にしてペレット状のポリグリコール酸樹脂組成物を調製した。得られたポリグリコール酸樹脂組成物について、前記方法に従って分解性試験を行い、40℃で2週間保持後の質量減少率を求めた。その結果を表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
表1に示した結果から明らかなように、ポリグリコール酸を50質量%以上含むポリエステル樹脂にカルボン酸無水物を添加した場合(実施例1〜25)には、ポリグリコール酸のみの場合(比較例1)やポリ乳酸のみの場合(比較例2)に比べて、40℃における分解性が向上する(質量減少率が高くなる)ことがわかった。特に、カルボン酸無水物とリン化合物とを併用した場合(実施例18〜25)には、カルボン酸無水物のみを添加した場合(実施例1〜6)に比べて、40℃における分解性が向上する(質量減少率が高くなる)ことがわかった。
【0102】
(実施例26)
無水トリメリト酸の配合量を10質量部に変更した以外は実施例9と同様にしてペレット状のポリグリコール酸樹脂組成物を調製した。このポリグリコール酸樹脂組成物を用いて、前記方法に従ってポリグリコール酸樹脂組成物からなる繊維を製造した。得られた延伸糸の水分量を0.2〜0.3%に調湿した後、延伸糸0.5gをアルミパックに封入し、80℃の恒温槽中で7日間保管して加速保管試験を行なった。
【0103】
試験終了後の延伸糸をHFIP溶液に溶解させ、前記方法に従って重量平均分子量(Mw)を測定し、これを保管試験後の延伸糸の重量平均分子量(Mw)とした。その結果を表2に示す。
【0104】
(実施例27)
BTDAの配合量を3質量部に、アデカスタブAX−71の配合量を0.1質量部に変更した以外は実施例18と同様にしてペレット状のポリグリコール酸樹脂組成物を調製した。このポリグリコール酸樹脂組成物を用いた以外は実施例26と同様にして繊維を製造し、保管試験後の延伸糸の重量平均分子量(Mw)求めた。その結果を表2に示す。
【0105】
(実施例28)
実施例4で調製したポリグリコール酸樹脂組成物を用いた以外は実施例26と同様にして繊維を製造し、保管試験後の延伸糸の重量平均分子量(Mw)求めた。その結果を表2に示す。
【0106】
(比較例4)
比較例1で調製したポリグリコール酸を用いた以外は実施例26と同様にして繊維を製造し、保管試験後の延伸糸の重量平均分子量(Mw)求めた。その結果を表2に示す。
【0107】
(比較例5)
比較例3で調製したポリグリコール酸樹脂組成物を用いた以外は実施例26と同様にして繊維を製造し、保管試験後の延伸糸の重量平均分子量(Mw)求めた。その結果を表2に示す。
【0108】
【表2】
【0109】
表2に示した結果から明らかなように、いずれの実施例および比較例においても、MW=17.6×10
4のPGAを使用して加速保管試験を開始したが、ポリグリコール酸にカルボン酸無水物を添加した本発明のポリエステル樹脂組成物(実施例26〜28)は、ポリグリコール酸のみの場合(比較例4)に比べて、加速保管試験後の重量平均分子量が高く(すなわち、加速保管試験による重量平均分子量の低下の程度が小さく)、保管性に優れていることがわかった。一方、カルボン酸無水物の代わりに酸無水物でないカルボン酸を添加したポリエステル樹脂組成物(比較例5)の保管性は、ポリグリコール酸のみの場合(比較例4)と同等であり、本発明のポリエステル樹脂組成物に比べて劣っていることがわかった。