特許第6133878号(P6133878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6133878電気自動車用リチウム二次電池用の高エネルギー密度の正極複合素材合成及び電極製造技術
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133878
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】電気自動車用リチウム二次電池用の高エネルギー密度の正極複合素材合成及び電極製造技術
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/505 20100101AFI20170515BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20170515BHJP
   H01M 4/1391 20100101ALI20170515BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20170515BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20170515BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20170515BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   H01M4/505
   H01M4/525
   H01M4/1391
   H01M10/052
   H01M4/36 E
   H01M4/66 A
   C01G53/00 A
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-536992(P2014-536992)
(86)(22)【出願日】2012年10月19日
(65)【公表番号】特表2014-534574(P2014-534574A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】KR2012008613
(87)【国際公開番号】WO2013058604
(87)【国際公開日】20130425
【審査請求日】2014年4月28日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0108159
(32)【優先日】2011年10月21日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0019666
(32)【優先日】2012年2月27日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512323756
【氏名又は名称】コリア インスティテュート オブ インダストリアル テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】キム,ホ ソン
(72)【発明者】
【氏名】カン,ジュ ヒ
(72)【発明者】
【氏名】オー,イック ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ボー,ソン ジャエ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ドン レ
(72)【発明者】
【氏名】キム,テ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】パク,サン イ
(72)【発明者】
【氏名】キム,キョン ワン
【審査官】 光本 美奈子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/040383(WO,A1)
【文献】 特開2011−134670(JP,A)
【文献】 特開2011−034943(JP,A)
【文献】 特開2008−251526(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/060603(WO,A1)
【文献】 特開2010−146900(JP,A)
【文献】 特開2009−259505(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/044881(WO,A1)
【文献】 特開2006−107818(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/155989(WO,A1)
【文献】 特開2006−036620(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/030639(WO,A2)
【文献】 特開2009−009753(JP,A)
【文献】 特開2001−023617(JP,A)
【文献】 特開2007−145695(JP,A)
【文献】 特開2011−082150(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0281212(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0026040(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0040247(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/36〜4/62
H01M 4/13〜4/1399
H01M 10/05〜10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝酸ニッケル溶液、硝酸マンガン溶液、及び硝酸コバルト溶液をNi(NO・6HO:Mn(NO・6HO:Co(NO・6HO=1:4:1のモル比で混合した出発物質溶液に錯化剤としてアンモニア水を0.8モル混合し、リチウム二次電池用正極の製造に用いるLiMnOの複合素材Li(LiNiCoMn)を共沈法で合成することを特徴とするリチウム二次電池用正極物質製造方法。
【請求項2】
前記錯化剤としてアンモニア水を使用し、前記出発物質溶液に前記錯化剤を0.8モルを混合することを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用正極物質製造方法。
【請求項3】
前記出発物質溶液と前記錯化剤の混合溶液のpHを調節するためにNaOH溶液を投入することを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用正極物質製造方法。
【請求項4】
前記複合素材Li(LiNiCoMn)でリチウム(x)は0.02〜0.60であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用正極物質製造方法。
【請求項5】
前記複合素材Li(LiNiCoMn)で前記組成はx=0.05、y=0.16、z=0.18、w=0.66であることを特徴とする請求項4に記載のリチウム二次電池用正極物質製造方法。
【請求項6】
硝酸ニッケル溶液、硝酸マンガン溶液、及び硝酸コバルト溶液をNi(NO・6HO:Mn(NO・6HO:Co(NO・6HO=1:4:1のモル比で混合した出発物質溶液に錯化剤としてアンモニア水を0.8モル混合して共沈法でLiMnOの複合素材Li(LiNiCoMn)を合成するステップと、
前記複合素材Li(LiNiCoMn)に導電剤とバインダーを混合してスラリーを製造するステップと、
前記スラリーを塗布するステップと、
前記塗布されたスラリーを乾燥するステップと、
前記乾燥されたスラリーをプレスするステップと、
電極セルの形態に合うようにパンチングするステップとを含み、
前記スラリーを製造するステップにて、前記LiMnOの複合素材Li(LiNiCoMn)にNMC(LixNiyCozMnwO)を30質量%添加することを特徴とするリチウム二次電池の電極製造方法。
【請求項7】
前記スラリーを製造するステップにて、前記複合素材Li(LiNiCoMn)、導電剤、バインダーの組成比を80:10:10の重量比(wt%)で混合することを特徴とする請求項6に記載のリチウム二次電池の電極製造方法。
【請求項8】
前記プレスステップは、前記スラリーを塗布したステップにおける厚さよりも厚さが20%減少するようにプレスすることを特徴とする請求項6に記載のリチウム二次電池の電極製造方法。
【請求項9】
前記スラリーを塗布するステップは、前記スラリーをアルミホイルに100〜110um厚さで塗布することを特徴とする請求項8に記載のリチウム二次電池の電極製造方法。
【請求項10】
前記スラリーを塗布するステップは、前記スラリーをアルミホイルにプレスするステップで80〜90umの厚さで塗布することを特徴とする請求項8に記載のリチウム二次電池の電極製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い安全性、高容量/高電圧正極素材の合成による高容量化によって高エネルギー密度化が可能なLiMnO複合素材及び固溶体素材の合成技術と前記素材を使用する電極製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池はエネルギーの密度が高いため携帯電話やノート型パソコンなどの小型IT機器用だけではなく、電気自動車及び電力格納などの中大型電池における応用が期待され、特に、電気自動車及び電力格納などの中大型リチウム二次電池に要求される高い安全性の高エネルギー密度の正極素材の開発が求められている。一般的に、リチウム二次電池は、LiCoO系の素材を基本としてより安全で容量の優れる電極素材、すなわち、LiMn(LMO)及び高容量のLiMn1/3Co1/3Ni1/3(NMC)などの素材が検討されてきた。しかし、このような素材は基本的に容量が少ないか安全性の側面で充分ではないため、中大型電池の商用化のために安全で優れた高エネルギー密度の素材探索が要求されている。
【0003】
特に、電気自動車は1回の充電走行距離が極めて重要であり、これは二次電池正極素材のエネルギー密度と関連するため正極素材の高性能化に対する研究開発が必須である。従来におけるLMOまたはNMC、そしてオリビン系正極素材のエネルギー密度は約120〜150mAh/gのレベルで電気自動車の走行距離を画期的に向上させるには充分ではないと言える。
【0004】
LiMnO複合素材は、基本的に理論容量が約460mAh/gのレベルで高く、実際に初期容量は200〜250mAh/gレベルの高容量であり、平均放電電圧も約3.5Vのレベルとして比較的に高いため、高容量化及び高エネルギー密度化の可能な次世代正極素材の候補の1つとして知られ、このような高性能化の可能性が高い正極素材に対する高効率の素材合成技術が検討されている。
【0005】
電気自動車及び電力格納用の中大型リチウム二次電池として要求される特性は、安全性及び高エネルギー密度が優先的に要求されるため、従来には中大型化によるリチウム二次電池の安全性確保のために従来におけるスピネルマンガン系のLMO素材と比較的に高容量のNMC素材を適切な組成で混合製造する工程、または、放電電圧は約3.0Vレベルとして比較的に低いものの、安全性が高くて高容量のオリビン系リン酸鉄(LiFePO)素材の製造工程による研究開発が行われている。
【0006】
しかし、従来のLMO、NMC及びオリビン系LiFePO素材は基本的に電池の容量が低いことから、電気自動車の1回の充電走行距離を向上させるには限界がある。
【0007】
従来の正極素材は基本的にエネルギー密度が約120〜150mAh/gのレベルで充分ではなく、電気自動車などの高エネルギー密度が要求される応用にはその商用化に限界がある。特に、最近注目を浴びているリン酸鉄系の素材は低い電圧と容量増大に限界(3V、150mAh/g)が明らかであるため、より優れた高エネルギー密度の正極素材の開発が至急であると言える。従来の電極素材による電池はほとんど最大2.0〜4.2Vの充電電圧範囲で作動する。
【0008】
従来における正極素材は安全性の側面及びコストの側面、そして、高エネルギー密度の側面において問題を抱えている。特に、容量の優れるニッケル系のLiNiO(LNO)素材は安全性、マンガン系のLMOは容量と耐久性、NMCは安全性とコスト、そして、リン酸鉄系はエネルギー密度とコストなどに十分な性能を発揮できない。
【0009】
特に、安全性の優れる従来技術であるマンガン系は容量が低く耐久性が十分確認されておらず、これに対する研究開発が活発に研究されている。そして、リン酸鉄系の素材もより高容量の電極性能を獲得するための素材のナノ化技術などに対する研究が行われているが、素材のナノ化によるコスト上昇の問題が追加的に発生する。したがって、このような従来の素材に対して素材の特性上に安全性を確保するため、約2.0〜4.2Vの範囲で充放電が行われているため基本的に放電容量の制限が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2010−0068459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、高容量の特性を有して高エネルギー密度特性を有する高い安全性の次世代正極複合素材を開発するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した本発明の実施形態によると、高容量リチウム二次電池用正極物質製造方法は、硝酸ニッケル溶液、硝酸マンガン溶液、及び硝酸コバルト溶液を混合した出発物質溶液に錯化剤を混合し、共沈法でLiMnO複合素材Li(LiNiCoMn)を合成する。
【0013】
一実施形態によると、前記出発物質溶液は、Ni(NO・6HO、Mn(NO・6HO及びCo(NO・6HOをそれぞれ1:4:1モル比で混合して使用する。そして、前記錯化剤としてアンモニア水を使用し、前記出発物質溶液に前記錯化剤を0.8モルを混合する。また、前記出発物質溶液と前記錯化剤の混合溶液のpHを調節するためにNaOH溶液を投入する。
【0014】
一実施形態によると、前記複合素材Li(LiNiCoMn)でリチウム(x)は0.02〜0.60である。そして、詳細には、前記複合素材Li(LiNiCoMn)で前記組成はx=0.05、y=0.16、z=0.18、w=0.66である。
【0015】
一実施形態によると、前記LiMnOにLiMn1/3Co1/3Ni1/3(NMC)を混合して形成してもよい。ここで、前記LiMnOは、水酸化リチウム水溶液とマンガン水溶液を混合及び滴定してLiMnO前駆体を沈殿させるステップと、前記LiMnO前駆体を乾燥させるステップと、前記乾燥されたLiMnOを650℃で12時間第1焼成するステップと、第1焼成が完了した後、850℃で24時間第2焼成して最終のLiMnO粉末を形成するステップとを含んで構成してもよい。そして、前記LiMnOに前記NMCを30%添加して形成してもよい。
【0016】
一方、前述した本発明の他の実施形態によると、高容量リチウム二次電池用正極物質を用いたリチウム二次電池の電極製造方法は、硝酸ニッケル溶液、硝酸マンガン溶液、及び硝酸コバルト溶液を混合した出発物質溶液に錯化剤を混合して共沈法でLiMnO複合素材Li(LiNiCoMn)を合成するステップと、前記複合素材Li(LiNiCoMn)に導電剤とバインダーを混合してスラリーを製造するステップと、前記スラリーを塗布するステップと、前記塗布されたスラリーを乾燥するステップと、前記乾燥されたスラリーをプレスするステップと、電極セルの形態に合うようにパンチングするステップとを含んで構成される。
【0017】
一実施形態によると、前記スラリーは、前記複合素材Li(LiNiCoMn)複合素材、導電剤、バインダーの組成比を80:10:10の重量比(wt%)で混合する。または、前記スラリーは、前記LiMnOに前記NMCを30%添加してもよい。
【0018】
一実施形態によると、前記プレスステップは、前記スラリーを塗布したステップにおける厚さよりも厚さが20%減少するようにプレスする。そして、前記スラリーを塗布するステップは、前記スラリーをアルミホイルに100〜110um厚さで塗布し、厚さ調節のためにプレスする場合80〜90umの厚さで形成される。
【0019】
一方、前述した本発明の他の実施形態によると、リチウム二次電池の充放電方法は、硝酸ニッケル溶液、硝酸マンガン溶液、及び硝酸コバルト溶液を混合した出発物質溶液に錯化剤を混合し、共沈法で合成したLiMnO複合素材Li(LiNiCoMn)を用いて製造した電極セルを2.0〜4.9Vの範囲内で0.1Cの一定の電流密度で充電及び放電を繰り返して行う。
【発明の効果】
【0020】
本発明の実施形態によると、一実施形態によると、前記電極セルは4.5Vで電圧が可逆的に増加し、充放電するとき15サイクルで175mAh/gの高容量を維持することを特徴とする。2.0〜4.9Vの区間で200〜240mAh/gレベルの高容量の性能を有するLiMnO複合素材を製造することができる。
【0021】
また、本発明によって製造される電極は、電極製造の容易性による不良率の抑制、活物質の利用率向上による高出力特性、そして、充電効率の向上による電極の耐久性向上などが期待される。結果的に、LiMnO複合素材を中大型のリチウム二次電池に適用する場合、電極の製造工程及び充電の効率性向上によって原価低減及び品質向上、長寿命による信頼性向上の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】LiMnO複合素材Li(LiNiCoMn)の合成技術を説明するためのフローチャートである。
図2】本発明の一実施形態に係るLiMnO素材の合成工程を説明するためのフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態に係るLiMnO素材の結晶構造を示すグラフである。
図4】LiMnO複合素材Li(LiNiCoMn)の構造を分析したXRDグラフである。
図5図1に示す合成方法で製造されたLiMnO複合素材Li(LiNiCoMn)を用いてリチウム二次電池の電極製造方法を説明するためのフローチャートである。
図6】実施形態1により合成した正極複合素材の充放電特性を示すグラフである。
図7】実施形態1により合成した正極複合素材の酸化/還元特性を示すグラフである。
図8】実施形態2により合成した正極複合素材の充放電特性を示すグラフである。
図9】実施形態2により合成した正極複合素材の酸化/還元特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付する図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明が実施形態によって制限されたり限定されることはない。本発明を説明するにおいて、公知された機能あるいは構成に対して具体的な説明は本発明の要旨を明瞭にするために省略されてもよい。
【0024】
以下、図1図9を参照して本発明の実施形態に係るリチウム二次電池用LiMnO複合素材を用いて電極を製造する工程について詳細に説明する。
図1を参照すると、LiMnO複合素材Li(LiNiCoMn)の合成工程は共沈法を用いる。
【0025】
出発物質Ni(NO・6HO、Mn(NO・6HO、Co(NO・6HOをそれぞれ1:4:1のモル比で測量して蒸留水500mlに溶解させ(S1)、別途に用意された蒸留水500mlに5Nアンモニア水(錯化剤)を溶解させて0.8モルを水溶液として用意し(S2)、NaOH粉末(pH調節)を1モルを溶液、500mlに製造して用意する(S3)。
【0026】
次に、ビーカーに用意されたNaOH溶液500mlを共沈反応器に移動して反応器の温度を55℃、pH11レベルで反応器のインペラの速度を約1000RPMに合わせる。共沈反応が開始すると、出発物質は約10ml/minの速度で滴定し、同時に錯化剤として用意されたアンモニア水を8ml/minの速度で滴定する。また、共沈反応によるpH調節のために別途に用意されたNaOH溶液(1モル)は反応器のpH変化に応じて自動的に滴定するように設ける。
【0027】
共沈反応が終了した状態で24時間の間に同じインペラ撹拌速度と温度条件で共沈生成物の熟成作業を行う(S4)。
【0028】
次に、反応共沈生成物を洗浄し、pH7〜8レベルになるまで洗浄し、洗浄が完了した沈殿物は一般的な乾燥機構の約110℃でオーバーナイト(overnight)乾燥し(S5)、1段階の前駆体粉末を製造する(S6)。
【0029】
上記の前駆体粉末の製造段階で製造された前駆体にリチウムを固溶させるために製造された前駆体とLiOH.HOをモルタルで均一に混合した後、500℃で10時間熱処理(昇温の速度5℃/min)し、加えて1000℃で20時間の間に焼成すれば、黒色の最終高容量の正極複合素材粉末Li(LiNiCoMn)が製造される(S7)。
【0030】
ここで、高容量の正極複合素材粉末Li(LiNiCoMn)でリチウム(x)は0.02〜0.60である。より詳しくは、複合素材Li(LiNiCoMn)でx=0.05、y=0.16、z=0.18、w=0.66である。
【0031】
上記のような条件で合成されたLiMnO複合正極素材はICP分析を通して組成を確認し、XRDを通して合成素材の構造及び形状を確認し、その結果を図4に示した。ここで、図4を参照すると、2thetaの22°の付近でLiMnOの単斜晶(monoclinic)構造の超格子(super lattice)ピークが観察される。
【0032】
一方、本発明の他の実施形態に係る異なるLiMnO素材合成工程について詳細に説明する。ここで、LiMnO素材は共沈法を用いて合成する。詳細に、図2を参照すると、丸いフラスコ1Lの硝子に0.1Mの水酸化リチウム水溶液を製造するために蒸留水100mlとLiOH・HO(Lithium hydroxide monohydrate98%、三田純薬、大韓民国)2.93gを常温で撹拌して用意する(S11)。
【0033】
次に、別途のマンガン水溶液は蒸留水100mlとMn(NO・6HO(Manganess(II)nitrate hexahydrate97%、Alfa aser、Japan)2.93gを撹拌して常温で1.5ml/minの速度で連続的に水酸化リチウム水溶液に滴定する(S12)。
【0034】
ここで、撹拌速度は1000rpm以上に沈殿物が十分撹拌されるように調節する(S13)。初期の水酸化リチウム水溶液は無色のpH12.24の状態でマンガン水溶液(pH3.51)の滴定が行われながら無色の沈殿物が黄色から薄い茶色になり、次第に濃い茶色に色変移が行われ、滴定が完了するときの沈殿物pHは11.5を示す(S14)。
【0035】
上記のように合成されたリチウム−マンガン水酸化物は水洗なしで80℃の恒温槽で撹拌させ、Rotavapor装備を駆動して溶媒を除去し、マイクロスケールのLiMnO前駆体(Precursor)を獲得する(S15)。このように獲得された前駆体粉末は、恒温槽の温度と同一の80℃の一般乾燥機で24時間乾燥した後、5℃/minの昇温速度で加熱した後、650℃で12時間維持して硝酸塩分解とlithiated layer oxideを形成する第1焼成を行う(S16)。そして、第1焼成後に850℃で24時間維持して1次粒子のアニーリングする第2焼成を行い(S17)、濃い赤色の最終粉末を獲得する(S18)。
【0036】
図3を参照すると、本発明の実施形態により合成したLiMnO素材の前駆体のLi/Mn orderingに関連するピークを説明すると、全て焼結温度に大きく依存し、約650℃でピークがブロードに現れ、850℃で極めて理想的なLi/Mn orderingが現れる構造で合成することが分かる。図4を参照すると、XRD構造において、20〜30theta区間で単斜晶(monoclinic)構造を示す超格子(super lattice)ピークが観察されることによって、製造されたLiMnOの複合正極素材は単斜晶(monoclinic)構造と六角形(hexagonal)構造とが混合された形態であることが分かる。
【0037】
次に図5を参照して、上記のように製造されたLiMnO複合正極素材を用いて電極を製造方法について説明する。
【0038】
図1に示す製造方法に基づいて用意されたLiMnO複合素材Li(LiNiCoMn)粉末(S11)と、導電剤(Super P)(S12)を重量比に秤量してモルタルに手動で十分撹拌して備え(S13)、ミキサ器(THINKY、Japan)の容器に移動させてバインダー素材(S14)のポリビニリデンフッ化物(PVDF8wt%)を容器内の混合物に適切比率に滴定する。すなわち、正極活物質LiMnO複合素材、導電剤、バインダーの組成比を80:10:10wt%の重量比で算出し、ミキサ器の条件(2000rpm、30分)によってスラリーを製造する(S15)。
【0039】
ここで、ミキサ器によって撹拌される条件は5分作動、粘度の確認作業を約5〜6回程度繰り返して総30分程度撹拌作業を実施し、粘度調節はNMP滴定によって実施する。
【0040】
ここで、撹拌器の運転による熱発生によって撹拌器内の混合物の粘度または物性が変わらないように最適の条件で維持する方案が求められる。そのため、スラリー混合物の撹拌時間、撹拌器内のボール種類、及び大きさなどの最適化が要求される。好ましくは、ジルコニアボールを用いてボールの大きさも適切に調節される。また、撹拌器内のスラリー混合物の物性(粘度)変化を抑制する方案として、ジルコニアボールの適用時間を最小5分に抑制する。
【0041】
製造されたスラリーは20um厚さのアルミホイル(Al foil)にキャスティング工程によってフィルム形態に製造し、そのとき一定方向及び力で均一に塗布する(S16)。
【0042】
そして、スラリーの塗布された電極は110℃の一般乾燥機で十分に乾燥(overnight)する(S17)。ここで、スラリー塗布段階で十分に乾燥された電極の厚さは約100〜110umになるよう調節し、プレス器(ロールプレス)を用いて最終的に20%程度の厚さが減少して約80〜90umになるようプレス作業を行う(S18)。
【0043】
次に、プレス作業で用意された電極はドライルーム条件の雰囲気で電極セルの大きさに適するようにコインセル形態にパンチングされ(S19)、真空乾燥器で80℃、4時間の間に十分乾燥して(S20)電極製作を完了する。
【0044】
LiMnO複合素材を用いて電極を製造する場合、電極製造の作業性と電池性能を最適化するために電極の厚さを適切に維持することが重要である。すなわち、電極の厚さを増加すると容量を増加させる効果があるものの、電極塗布後のプレス工程で電極活物質スラリーの流動性が低下することで電極集電体に均一な塗布が難しく、集電体と活物質との間の結合性、そして、活物質間の接着性が低下するため素材による適切な厚さで形成する必要がある。本発明の実施形態によると、電極の厚さは約50um〜200umまでが有効であり、好ましくは、80umから150umレベル、そして、約100um前後の厚さで効率的な電極製造及び電極特性が確認された。
【0045】
このように用意された電極の電気化学特性を評価するためにコインセルを製作した。すなわち、コインセルはリチウムメタルを負極にし、PE Separator、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:1)に1モルをLiPF6が溶解された溶液を電解液にして、組立順序に応じて2032規格のコイン型電池を製作した。
【0046】
次に、上記のように製作された電極の性能を実験するために電気化学的な特性を評価した。
【0047】
前記製造工程によって用意された高容量LiMnOの複合素材を正極に適用して電極として製造し、2032規格のコインセルにして製造し電極セルの充放電特性を評価した。電極セルの充放電条件として2.0〜4.5V、または2.0〜4.9Vの電圧範囲で定電流(i=0.1C)に充放電を実施し、その結果を図6図9に示した。また、電極セルの正極素材のリチウムの酸化及び還元挙動を把握するため下記の電位走査法に基づいて充放電電圧範囲2.0〜4.5Vまたは2.0〜4.9V、走査の速度(0.05mv/s)で酸化及び還元挙動を確認した。
【0048】
実施形態1
上述したように、合成されたLiMnO複合素材Li(LiNiCoMn)、導電剤、バインダーの組成比を80:10:10wt%の重量比にしてスラリーを製造する。製作されたスラリーは20um厚さのAl foilにキャスティング工程によってフィルム形態に製造され、このとき、一定の方向及び力で均一に塗布する。そして、塗布されたスラリーは110℃の一般乾燥器で十分乾燥する。十分に乾燥された電極の厚さは約100umになるよう調節され、プレス器(ロールプレス)を用いて最終的に約80um(約20%減少)になるようにプレス作業を行う。プレス作業で用意された電極は、ドライルーム条件の雰囲気でコインセルの大きさに適するようにパンチングされ、真空乾燥器で80℃、4時間の間に十分乾燥する。
【0049】
そして、上記のように製造された電極を正極にし、リチウムメタルを負極にして隔離膜を媒介にエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:1)の1モルをLiPF6溶液を電解液にして2032規格のコイン型電池を製作した。
【0050】
本発明によって製造された電極セルは、約1〜2日ほどのエージング(aging)時間を有する後、室温の条件で2.0〜4.9Vの電圧条件で0.1Cの電流密度で充放電実験及び電位走査法(電圧範囲2.0〜4.9V、Scan rate:0.05mV/s)によって酸化及び還元挙動を評価し、その結果を図6及び図7に示した。
【0051】
実施形態2
LiMnO複合素材Li(LiNiCoMn)及び電極製造工程方法は前記の実施形態1と同一に実施し、電池の性能評価のための充放電条件は実施形態1と異なるようにした。すなわち、室温の条件として2.0〜4.5Vの電圧条件で0.1C電流密度で充放電実験及び電位走査法(電圧範囲2.0〜4.5V、Scan rate:0.05mV/s)によって酸化及び還元挙動を評価し、その結果を図8及び図9に示した。
【0052】
本発明によると、LiMnO複合素材はLiCoO(LCO)またはLiMnO(LMO)などの正極素材とは異なって充放電電圧範囲が4.9Vレベルまで充電でき、その結果として極めて高い高容量電池システムを製造することができる。本発明ではLiMnO複合素材を用いて電極を製造してコインセルタイプで電池を製造し、2.0〜4.9Vの範囲における充放電を行ったり、電池の安全性の側面で安全な2.0〜4.5Vの範囲で電気化学的な特性を評価した結果、2.0〜4.9Vの高電圧範囲の充放電サイクル試験で電池の容量が約200mAh/g以上を示す電気化学的な可逆性を示している。また、2.0〜4.5Vの電圧範囲で初期容量は約120mAh/gレベルの容量特性を示しているが、サイクルに応じて順次容量が増加して15サイクルで175mAh/gの優れた性能を確認することができた。
【0053】
図6〜9を参照すると、本発明によって製造されたLiMnO複合素材電極の容量は図6に示すように2.0〜4.9Vの区間で直接評価する場合、200mAh/g以上の高容量電池性能を確保できることが分かる。このような電池特性は、従来のリチウム二次電池の正極素材を用いた結果、110〜140mAh/gに比べて約2倍以上の高容量特性を示す。さらに、本発明の電極製造工程によって電極のスラリーが集電体ホイール(foil)上に均一に塗布され、活物質が最適の電気化学反応を発揮するように電極の厚さを維持する技術により、電池の性能評価において約200mAh/g以上の高容量を確保することができ、また、図8に示すように、充放電電圧範囲を2.0〜4.5Vの低い電圧範囲にする場合にも15サイクルで約175mAh/gレベルの高容量を確認することができた。
【0054】
特に、電位走査法の実験によって確認された結果、図7に示すように、本発明ではLi2MnO3複合正極素材が2.0〜4.9Vで充放電サイクルを実施する場合、充電電圧(酸化ピーク)は約3.9V、放電電圧(還元ピーク)は約3.2Vと示すが、図9に示すように、2.0〜4.5Vよりも低い領域で充放電を実施する場合は、充電電圧(酸化ピーク)が約4.1V、放電電圧(還元ピーク)が約3.85Vレベルで高く維持することが分かる。したがって、本発明で提示する正極素材は、充放電領域が4.5Vレベルでは平均放電電圧が約3.85Vレベルとして極めて高く維持され、容量が約175mAh/g以上に維持される電池充放電条件を確認することができ、2.0〜4.9Vの高電圧範囲では電位走査法の実験で示すように、約4.5〜4.9Vの範囲で極めて大きい不可逆的な酸化ピークの挙動を確認することができる。このような不可逆的な酸化ピークはLiOが酸化するピークとして確認され、1サイクルでこのようなピークが十分に全て反応する場合、図示するように2サイクルから酸化及び還元ピークの電位が大きく負(−)の方向に移動し、サイクルによる平均放電電圧が減少する特性を確認できる。このように2.0〜4.9Vの高電圧範囲領域における電気化学的な酸化及び還元挙動は現在のリチウム二次電池有機電解液の酸化分解及び正極素材との反応性に起因するものと推定し、本発明では電極セルの可逆的な使用条件と高電圧及び高容量を獲得するためには現在の有機電解液を用いる条件で2.0〜4.5Vの電圧区間で使用することが好ましく、今後、高電圧に適する有機電解液及び固体電解質素材の開発及び適用によって電極セルが製造される場合に2.0〜4.9Vの高電圧範囲で充放電を使用することが好ましい。
【0055】
すなわち、本発明の実施形態によると、LiMnO素材は基本的に電気化学的に非活性素材であるため、NMCを約30%重量比に複合化する場合、LiMnO素材の電気化学的な活性を大きく改善して既存の20mAh/gから120mAh/gレベルに大きく改善する特性を獲得することができる。一方、LiMnO素材とNMC素材の複合において、NMC含量を50%または70%レベルに増加させても大きい効果は発生しない。したがって、本発明の実施形態によると、高容量化による高エネルギーの密度化が可能なLiMnO素材を合成することができ、このように合成された素材を複合化することで高容量化を実現できる。
【0056】
上述したように本発明では、具体的な構成要素などのような特定事項と限定された実施形態及び図面によって説明したが、これは本発明の全般的な理解を助けるために提供されたものである。また、本発明が上述した実施形態に限定されることなく、本発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正及び変形が可能である。したがって、本発明の範囲は、開示された実施形態に限定されて定められるものではなく、特許請求の範囲だけではなく特許請求の範囲と均等なものなどによって定められるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9