(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多糖類が、スクロース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、ラクトース、マルトースおよびイヌリンからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、脂質−核酸粒子を調製するための、本明細書に記載の方法の概略図を示す。方法の各ステップの詳細は後述する。
【0021】
【
図2】
図2は、0.05〜0.5mg/mLの最終的なRNA濃度の関数としての、ナノメートル(nm)単位での平均粒子サイズを示す図である。実験の詳細は例1に提供される。
【0022】
【
図3】
図3は、脂質をRNAに混合する間の緩衝液pHの関数としての、nm単位での平均粒子サイズを示す図である。実験の詳細は例2に提供される。
【0023】
【
図4】
図4は、例3に記載したように、例2の方法(NDT−0009)またはSempleの方法を用いて調製した粒子の平均粒子サイズを示す図である。左のバーは混合後のサイズの測定値である。右側のバーは、最終生成物の測定値である(Semple法の生成物については、押出しおよびダイアフィルトレーションの後)。
【0024】
【
図5】
図5は、例3に記載したように、例2の方法(例2の方法)またはSempleの方法を用いて調製した粒子についての、パーセントでの封入効率(EE)を示す図である。左のバーは混合後のサイズの測定値である。右側のバーは、最終生成物の測定値である(Semple法の生成物については、押出しおよびダイアフィルトレーションの後)。
【0025】
【
図6】
図6は、例3に記載したように、例2の方法またはセンプル法を用いて調製した粒子についての、パーセントでのsiRNA回収率を示す図である。
【0026】
例示の態様の詳細な説明
本明細書に提供される説明は、例えば核酸、タンパク質、およびペプチドなどの負に荷電した治療用ポリマーを含む、脂質に封入される治療用分子を作製するための方法に関する。本明細書に提供される説明は、脂質に封入された核酸分子を作製するための方法を含む。この方法は、リポソームに封入された治療用分子からなる粒子の大規模製造に特に適している。この方法は、生成された粒子が0.2未満の多分散性指数(PDI)を有する50〜150nmのサイズ分布であるという、予想外で驚くべき結果を提供する。この方法は、エタノールなどの水混和性有機溶媒に溶解した脂質を、水性溶液中に溶解した負に荷電した治療用ポリマーと混合し、有機溶媒を除去することにより、封入するという手段を提供する。脂質および負に荷電した治療用ポリマーの絶対的および相対的な濃度は、小さな粒子を生成するのに十分である。記載の方法により生成された粒子は、0.2未満のPDIの粒子集団を得るために、例えば押出しなどの機械的処理を必要としない。
【0027】
説明の方法は従来方法に比べて、大容量にスケールアップ可能な容易さならびに、温度、溶質、pH、および処理時間の広い範囲にわたって堅固であることにより、利点を有する。
【0028】
説明の方法は従来方法に比べて、0
.2未満、好ましくは0.1未満のPDIの粒子の集団を、予備形成された小胞を生成するために必要な追加のステップなしで再現性よく生成できることにより、利点を有する。
【0029】
説明の方法は従来方法に比べて、ナノ粒子の均一な集団を、脂質と負に荷電した治療用ポリマーの混合により生成される粒子を機械的に処理するために必要な追加のステップなしで、再現性よく生成できることにより、利点を有する。これらの追加のステップには、例えば、それらのサイズを減少させ、治療上許容される範囲の均一性を達成するための、超音波処理、均質化、または押出しが挙げられる。
【0030】
説明の方法は、ナノ粒子を生成するための追加の処理ステップなしに、従来の方法と同等かまたはより優れた核酸封入効率を達成するという利点を有する。
【0031】
説明の方法の他の利点は、脂質成分および条件に関する明細書の説明においてさらなる詳細が提供されているため、明らかになるであろう。
【0032】
説明の方法で使用される脂質混合物は、少なくとも、負に荷電した治療用ポリマーと複合化するための正に荷電した脂質(カチオン性脂質)、および凝集を防止するためのポリエチレングリコール含有脂質結合体(PEG脂質)を含む。カチオン性脂質は、広範囲のpH条件下での永久カチオン性電荷であるか、低いpH(pH6未満)で荷電し中性pH(pH6.5〜8)において正味の荷電のないイオン化可能なカチオン性脂質であるか、または永久カチオン性脂質とイオン化可能カチオン性脂質の組み合わせであることができる。脂質混合物はまた、標的脂質、ポリマー、ステロイド、リン脂質、または別の脂質グループのメンバーである、脂肪、ワックス、脂溶性ビタミン、モノグリセリドもしくはジグリセリド、脂肪酸アシル、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、サッカロ脂質およびポリケチドなども、含有することができる。この方法はまた、中性または負に荷電した成分のみによるリポソームの形成にも、使用することができる。
【0033】
好ましくは、脂質混合物の成分は以下の群から選択してもよい。
【0034】
カチオン性脂質
本明細書の範囲内であるのは、式Iで表されるカチオン性脂質である:
【化1】
式中、
Z=アルキルリンカー、C
2〜C
4アルキル、
Y=アルキルリンカー、C
1〜C
6アルキル、
R
1およびR
2は、各々独立して、C
10〜C
30アルキル、C
10〜C
30アルケニル、またはC
10〜C
30アルキニル、C
10〜C
30アルキル、C
10〜C
20アルキル、C
12〜C
18アルキル、C
13〜C
17アルキル、C
13アルキル、C
10〜C
30アルケニル、C
10〜C
20アルケニル、C
12〜C
18アルケニル、C
13〜C
17アルケニル、C
17アルケニルであり;R
3およびR
4は、各々独立して、水素、C
1〜C
6アルキル、または−CH
2CH
2OH、C
1〜C
6アルキル、C
1〜C
3アルキルであり;nは1〜6であり;およびXは、任意の窒素対イオンなどの対イオンであり、この用語は、当技術分野において容易に理解される。好ましい窒素対イオンはハロゲンを含み、塩化物および臭化物が特に好ましい。別の好ましい対イオンは、メシレート(−SO
3CH
3)である。
【0035】
式Iの例示の化合物としては、以下を含む:
【化2】
【0036】
生理的pHにおける他のカチオン性荷電脂質としては、限定はされないが、N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド(「DODAC」);N−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(「DOTMA」);N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド(「DDAB」);N−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(「DOTAP」;N−(1,2−ジミリストイルオキシプロプ−3−イル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(「DMRIE」)、3β−(N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル)コレステロール(「DC−Chol」)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミジン(「DOGS」);およびN−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N−(2−(スペルミンカルボキサミド)エチル)−N,N−ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(「DOSPA」)が挙げられる。
【0037】
イオン化可能カチオン性脂質。
本明細書の範囲内であるのは、式II:
【化3】
式中、
Z=アルキルリンカー、C
2〜C
4アルキル、−CH
2SCH
2CH
2−、
Y=アルキルリンカー、C
1〜C
6アルキル、
R
1およびR
2は、各々独立して、C
10〜C
30アルキル、C
10〜C
30アルケニル、またはC
10〜C
30アルキニル、C
10〜C
30アルキル、C
10〜C
20アルキル、C
12〜C
18アルキル、C
13〜C
17アルキル、C
13アルキル、C
10〜C
30アルケニル、C
10〜C
20アルケニル、C
12〜C
18アルケニル、C
13〜C
17アルケニル、C
17アルケニルであり;R
3およびR
4は、各々独立して、水素、C
1〜C
6アルキル、または−CH
2CH
2OH、C
1〜C
6アルキル、C
1〜C
3アルキルである;
で表されるイオン化可能カチオン性脂質である。
【0038】
いくつかの正に荷電した脂質は、生理的pHまたはその付近のpKaを有し、穏やかな酸性条件でカチオン性であり、生理的pHで弱いカチオン性である。かかるイオン化可能なカチオン性脂質としては、限定はされないが、((2−((2−(ジメチルアミノ)エチル)チオ)アセチル)アザンジイル)ビス(エタン−2,1−ジイル)ジテトラデカノエート(「S104」)、(Z)−((3−(ジメチルアミノ)プロパノイル)アザンジイル)ビス(エタン−2,1−ジイル)ジオレエート(「i−Et−DODC」)、N−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)N,N−ジメチルアンモニウムクロリド(「DODMA」)、および1,2−ジオレオイル−3−ジメチルアンモニウム−プロパン(「DODAP」)が挙げられる。
【化4】
【0039】
以下に示すように、イオン化可能な脂質は、医薬品有効成分(API)の結合および/または放出を促進できることが認識されている。
【化5】
【0040】
中性脂質
中性脂質の例としては、限定はされないが、リン脂質、アミノ脂質、およびスフィンゴ脂質が挙げられる。中性脂質は、両親媒性脂質を含む。リン脂質の代表例としては、限定はされないが以下が挙げられる:ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、またはジリノレオイルホスファチジルコリン。リンを欠いている他の化合物、例えばスフィンゴ脂質、スフィンゴ糖脂質ファミリー、ジアシルグリセロールおよび3−アシルオキシ酸なども、両親媒性脂質として指定されたグループに含まれる。さらに、上記の両親媒性脂質は、トリグリセリドおよびステロールなどの他の脂質と混合することができる。
【0041】
PEG脂質
二重層安定化成分は、ポリエチレングリコール(「PEG」)が、ホスファチジルエタノールアミンなどの脂質頭部基に結合したものである。別の二重層安定化成分は、PEGがセラミドに結合したものである。PEGはホスファチジルエタノールアミンあるいはセラミドに、当業者に知られており使用される標準的なカップリング反応を用いてに結合することができる。さらに、予備形成されたPEG−ホスファチジルエタノールアミン結合体(「PEG−PE」)も市販されている。
【0042】
様々な分子量のPEGを用いて、本発明の二重層安定化成分を形成することができる。様々な分子量のPEGは、多くの異なる供給源から市販されているか、あるいは、当業者によく知られた標準的な重合技術を用いて合成することができる。本発明の好適な態様において、ポリエチレングリコールは、200〜10000Da、好ましくは500〜4000Da、最も好ましくは1000〜2000Daの範囲の分子量を有する。一般に、PEGの分子量が増加すると、安定化を達成するために必要な二重層安定化成分の濃度が低下することが見出されている。
【0043】
様々な鎖長および飽和度の種々のアシル鎖基を有するホスファチジルエタノールアミンをPEGに結合して、二重層安定化成分を形成することができる。かかるホスファチジルエタノールアミンは市販されており、または当業者に周知の従来技術を用いて、単離もしくは合成することができる。C20〜C10の範囲の炭素鎖長を有する飽和または不飽和脂肪酸を含有するホスファチジルエタノールアミンが好ましい。モノ−またはジ不飽和脂肪酸および飽和および不飽和脂肪酸の混合物を有するホスファチジルエタノールアミンを、使用することもできる。適切なホスファチジルエタノールアミンとしては、限定されないが、以下が挙げられる:ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、およびジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)。
【0044】
前述の組成物はまた、PEG−リン脂質およびPEG−セラミドなどのそれ自体が当該分野で知られているPEG結合脂質を含むことができ、例えば以下から選択される1または2以上の分子である:PEG2000−DSPE、PEG2000−DPPE、PEG2000−DMPE、PEG2000−DOPE、PEG1000−DSPE、PEG1000−DPPE、PEG1000−DMPE、PEG1000−DOPE、PEG550−DSPE、PEG550−DPPE、PEG−550DMPE、PEG−1000DOPE、PEG−コレステロール、PEG2000−セラミド、PEG1000−セラミド、PEG750−セラミド、およびPEG550−セラミド。
【0045】
さらに、組成物はまた、一般式がmdPEG−リンカー−脂質である単分散(md)PEG脂質も含むことができ、例えば、限定はされないが、例として以下を含むことができる:83−ヒドロキシ−3,6,9,12,15,18,21,24,27,30,33,36,39,42,45,48,51,54,57,60,63,66,69,72,75,78,81−ヘプタコサオキサトリオクタコンチル(2,3−ビス(テトラデシルオキシ)プロピル)カルバメート(「HO−PEG1251−cBTP」)および134−ヒドロキシ−3,6,9,12,15,18,21,24,27,30,33,36,39,42,45,48,51,54,57,60,63,66,69,72,75,78,81,84,87,90,93,96,99,102,105,108,111,114,117,120,123,126,129,132−テトラテトラコンタオキサテトラトリアコンタヘクチル(2,3−ビス(テトラデシルオキシ)プロピル)カルバメート(「HO−PEG2000−cBTP」)。
【化6】
【0046】
ステロイド
ステロイドには、コレスタン(例えば、コレステロール)、コランおよび胆汁酸(例えば、ケノデオキシコラートおよびコラート)、エルゴステロール、ラノステロール、コルチコステロイド(例えば、グルココルチコイド)、プレグナン(例えば、プロゲステロン)、およびフィトステロールが含まれる。これらは、例えばポリエチレングリコールなどの親水性部分との結合体の形態においても、含めることができる。好適なステロイドは、コレステロールである。
【0047】
標的脂質
標的脂質の例は、式(A)の化合物である:
L−X−R A
式中、
・脂質(L)は、DSPE、DOPE、およびDCからなる群から選択され;
・リンカー(X)は、不在、PEG550、PEG2000、PEG−グルタミン酸(−Glu)、Glu、C6、グリシン、およびGluNH、N1,N19−ビス(3−(2−(2−(3−アミノプロポキシ)エトキシ)エトキシ)プロピル)−4,7,10,13,16−ペンタオキサノナデカン−1,19−ジアミドからなる群から選択され;および
・レチノイド(R)は、トレチノイン、アダパレン、レチノール、4−ヒドロキシ(フェニル)レチンアミド(4−HPR)、レチノイン酸(ビタミンA)、9−(2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エン−1−イル)ノナン酸、3,7−ジメチル−9−(2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エン−1−イル)ノナン酸、3,7−ジメチル−9−(2,2,6−トリメチルシクロヘキシル)ノナン酸、および任意の部分的または完全飽和レチノイドまたはその誘導体からなる群から選択される。
【0048】
標的脂質の別の例は、式(B)の化合物である:
R−X−R B
式中、
・リンカー(X)は、N1,N19−ビス(3−(2−(2−(3−アミノプロポキシ)エトキシ)エトキシ)プロピル)−4,7,10,13,16−ペンタオキサノナデカン−1,19−ジアミド(「ビスアミド−PEG」)またはN1,N19−ビス(16,20−ジアミノ−15−オキソ−4,7,10−トリオキサ−14−アザイコシル)−4,7,10,13,16−ペンタオキサノナデカン−1,19−ジアミド(「lys−ビスアミド−PEG−lys」)であり;および
・レチノイド(R)は、トレチノイン、アダパレン、レチノール、4−ヒドロキシ(フェニル)レチンアミド(4−HPR)、およびレチノイン酸(ビタミンA)、9−(2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エン−1−イル)ノナン酸、3,7−ジメチル−9−(2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エン−1−イル)ノナン酸、3,7−ジメチル−9−(2,2,6−トリメチルシクロヘキシル)ノナン酸、および任意の部分的または完全飽和レチノイドまたはその誘導体からなる群から選択される。
【0049】
その他の標的分子も脂質混合物に含めることができ、例えば、葉酸、ビタミンE、ペプチドリガンドおよび/またはモノクローナル抗体である。
【0050】
薬物−脂質粒子の組成物および製剤
本説明は、活性剤を有するか有さない脂質粒子を含有する組成物を含み、ここで活性剤が存在する場合、これは脂質粒子と関連している。特定の態様において、活性剤は治療剤である。特定の態様において、活性剤は、脂質粒子の水性内部内に封入された、負に荷電した治療用ポリマーである。他の態様において、活性剤は、脂質粒子の1または2以上の脂質層内に存在する。他の態様において、活性剤は、脂質粒子の脂質表面外部または内部に結合している。
【0051】
特定の態様において、本発明の脂質粒子は核酸と関連しており、核酸−脂質粒子がもたらされる。特定の態様において、核酸は完全に脂質粒子に封入されている。本明細書で使用する用語「核酸」は、任意のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含むことを意味する。特定の態様において、本発明のオリゴヌクレオチドは、15〜50ヌクレオチドの長さである。
【0052】
用語「ポリヌクレオチド」(PNA)および「オリゴヌクレオチド」は本明細書において、天然に存在する塩基、糖および糖間(骨格)結合からなる、ヌクレオチドまたはヌクレオシドモノマーの、ポリマーまたはオリゴマーを指す。用語「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」はまた、天然に存在しないモノマーを含むポリマーもしくはオリゴマーまたはその一部であって、同様に機能するものを含む。このように修飾または置換されたオリゴヌクレオチドは、多くの場合に天然型よりも好ましく、その理由は、ヌクレアーゼの存在下における細胞取り込みの強化および安定性の増加などの特性による。
【0053】
オリゴヌクレオチドは、オリゴデオキシリボヌクレオチドまたはオリゴリボヌクレオチドとしてであってよい。オリゴデオキシリボヌクレオチドは、この糖の5’および3’炭素においてリン酸に共有結合して負に荷電した非分岐の交互ポリマーを形成する、デオキシリボースから構成される。オリゴリボヌクレオチドは、同様の繰り返し構造であって、各ヌクレオチドがリボース糖基を有するものから構成される。修飾リボース分子が、オリゴリボヌクレオチドに含まれてもよい。
【0054】
本発明による脂質−核酸粒子に存在する核酸としては、任意の形態の知られている核酸を含む。本明細書で用いられる核酸は、一本鎖DNAもしくはRNA、または二本鎖DNAもしくはRNA、またはDNA−RNAハイブリッドまたはRNA−PNAおよび/もしくはDNA−PNAハイブリッドまたはPNA二本鎖とすることができる。二本鎖DNAの例としては、構造遺伝子、制御および終結領域を含む遺伝子、および、ウイルスまたはプラスミドDNAなどの自己複製系が挙げられる。二本鎖RNAの例には、siRNAおよび他のRNA干渉試薬を含む。一本鎖核酸としては、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、マイクロRNA、および三重鎖形成オリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0055】
核酸は、一般に核酸の特定の形態に依存して、様々な長さのものであってよい。例えば、特定の態様において、プラスミドまたは遺伝子は、長さが約1,000〜100,000ヌクレオチド残基であってもよい。特定の態様において、オリゴヌクレオチドは、約10〜100ヌクレオチド長の範囲であってよい。種々の関連する態様において、オリゴヌクレオチドは、一本鎖、二本鎖、および三本鎖に関わらず、長さ約15〜約50ヌクレオチド、約21〜約50ヌクレオチド、約15〜約30ヌクレオチド、約20〜約30ヌクレオチドの範囲であってよい。50ヌクレオチド以下のポリヌクレオチドは、一般に「断片」と呼ばれる。
【0056】
特定の態様において、オリゴヌクレオチド(またはその鎖)は、標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするか、またはこれに相補的であってよい。「特異的にハイブリダイズ可能」および「相補的」とは、DNAまたはRNA標的とオリゴヌクレオチドとの間に安定かつ特異的な結合が生じるような、十分な程度の相補性を示すために使用される用語である。オリゴヌクレオチドは、特異的にハイブリダイズ可能であるために、その標的核酸配列に100%相補的である必要はないことが理解される。オリゴヌクレオチドが特異的にハイブリダイズ可能であるのは、以下の場合である:標的に対するオリゴヌクレオチドの結合が標的分子の正常な機能を妨害して、その有用性または発現の低減または損失を引き起こし、十分な程度の特定の塩基対形成が存在して、特異的結合が望まれる条件下で、すなわち、in vivoアッセイまたは治療的処置の場合には生理的条件下において、またはin vitroアッセイの場合にはアッセイが実施される条件下において、オリゴヌクレオチドの非標的配列への非特異的結合を回避する場合。したがって、他の態様において、このオリゴヌクレオチドは、標的化されるかまたはこれが特異的にハイブリダイズする遺伝子またはmRNA配列の領域と比較して、1、2または3つの塩基置換を含む。
【0057】
特定の態様において、核酸−脂質粒子は、RNA干渉(RNAi)分子と結合することができる。RNAi分子を用いたRNA干渉法を用いて、目的の遺伝子またはポリヌクレオチドの発現を破壊することができる。siRNAは、通常は15〜30ヌクレオチドの長さのRNA二本鎖であって、RNAi誘導性サイレンシング複合体(RISC)として知られている細胞質多タンパク質複合体と結合することができるものである。siRNAを負荷されたRISCは、相同なmRNA転写物の分解を媒介する;したがってsiRNAは、高い特異性でタンパク質発現をノックダウンするように設計可能である。他のアンチセンス技術とは異なり、天然の機構を介したsiRNAの機能は、非コードRNAを介して遺伝子発現を制御するように進化した。これは一般に、それらの活性が、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムのどちらよりも、in vitroおよびin vivoでより強力であることの理由であると考えられる。RNAi試薬は、DNAセンス:RNAアンチセンスハイブリッド、RNAセンス:DNAアンチセンスハイブリッドを含むことができ、およびDNA:DNAハイブリッドは、RNAiを媒介することができる。したがって、これらの異なるタイプの二本鎖分子のいずれかを含むRNAi分子を、使用することができる。さらに、RNAi分子は様々な形態で使用され、細胞に導入され得ることが理解される。したがって、本明細書で使用する場合、RNAi分子は、細胞においてRNAi応答を誘導することができる任意の全ての分子を包含し、これには、限定はされないが以下を含む:2つの別個の鎖、すなわちセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む、二本鎖ポリヌクレオチド、例えば小分子干渉RNA(siRNA);二本鎖領域を形成する相補的配列のヘアピンループを含むポリヌクレオチド、例えばshRNAi分子、および二本鎖ポリヌクレオチドを単独でまたは別のポリヌクレオチドと組み合わせて形成することが可能な1または2以上のポリヌクレオチドを発現する発現ベクター。
【0058】
RNA干渉(RNAi)を用いて、標的ポリヌクレオチドの発現を特異的に阻害することができる。遺伝子および核酸の発現の二本鎖RNA媒介性の抑制は、本発明に従って、dsRNA、siRNAまたはshRNAを細胞または生物に導入することにより、達成することができる。siRNAは、二本鎖RNA、またはRNAとDNAの両方、例えば1つのRNA鎖および1つのDNA鎖を含むハイブリッド分子、またはsisiRNAであってもよい。
【0059】
特定のポリヌクレオチドを標的とするRNAi分子は、当技術分野で周知の手順に従って容易に調製することができる。したがって、当業者は、多種多様の異なるsiRNA分子を用いて、特定の遺伝子または転写物を標的化できることを理解するであろう。特定の態様において、本発明のsiRNA分子は、二本鎖で16〜30または18〜25(数値の間の各整数を含む)ヌクレオチドの長さである。
【0060】
一般的には、siRNA分子は、標的DNA分子の1つの鎖に完全に相補的である。他の態様において、siRNAは、修飾された組成、例えば、2’−デオキシまたは2’−O−メチル修飾を有することができる。しかし好ましい態様において、siRNAの鎖の全体は、2’デオキシまたは2’−O−修飾塩基のいずれかで作られてはいない。
【0061】
一定の態様において、本発明は、核酸が脂質層内に封入された、脂質に封入された核酸粒子を生成するための方法および組成物に関する。siRNAオリゴヌクレオチドを組み込んだかかる核酸−脂質粒子は、以下を含む、種々の生物物理学的パラメータを用いて特徴付けられる:(1)核酸対脂質比;(2)封入効率;および(3)粒子サイズ。高い封入効率、良好なヌクレアーゼ耐性および血清安定性および制御可能な粒子サイズ、一般に200nm未満の直径が望ましい。さらに、核酸ポリマーの性質は重要であるが、その理由は、ヌクレアーゼ耐性を付与する努力において、核酸の修飾は治療薬のコストを増大させ、一方で多くの場合、限られた耐性のみを提供するからである。特に断らない限り、これらの基準は、本明細書で以下のようにして計算される。
【0062】
薬物:脂質比は、規定の製剤体積中の薬物の量を、同じ体積中の脂質の量で除した値である。これは、モル当たりのモル、または重量当たりの重量、またはモル当たりの重量に基づいて表される。最終的な投与レディ製剤については、薬物:脂質比は、透析、クロマトグラフィーおよび/または酵素(例えば、ヌクレアーゼ)消化を用いて、可能な限りの外部薬物を除去した後に算出される。
【0063】
封入
脂質−核酸粒子中に封入されたsiRNAのパーセントで表したsiRNA封入効率(EE)を決定するために、RiboGreenアッセイを次のように利用する。この手順を用いて、溶液中の二本鎖および一本鎖RNAまたはDNAの濃度を決定することができる。
【0064】
装置は、BioTek Instruments, Inc. FLx800、可変ピペット、およびボルテックスミキサーを含む。試薬は、RNaseフリー水(MilliQグレードまたは同等)、20×TE緩衝液「RNaseフリー」(Invitrogen, T11493、または同等)、Quant-iT RiboGreen試薬(Invitrogen, R11491)、および水中10%Triton X-100(Thermo Scientific, 28314、または同等)を含む。
【0065】
1×TE緩衝液の調製は、38mLのRNaseフリー水を、50mLのメスシリンダーを用いて50mLの遠心分離管に移すこと;および2mLの20×TE緩衝液を遠心分離管にピペットし、ボルテクサー(vortexer)を使用して混合することを含む。
【0066】
2%Triton X-100および1%Triton X-100の、1×TE緩衝液中での調製は、それぞれ2mLまたは1mLの10%Triton X-100をRNaseフリーの15mL円錐管にピペットし、それぞれ8mLまたは9mLの1×TE緩衝液を加え、回転させてよく混合することを含む。
【0067】
RiboGreen希釈標準溶液の調製は、RiboGreen試薬の凍結ストックを取り出して室温に温め、TE緩衝液で1:200に希釈することを含む。遠心分離管をアルミホイルで包んで、任意の余分な光が溶液に到達するのを防止する。
【0068】
標準は、TE緩衝液中にRNA溶液を調製し、96ウェルプレートにプレートすることにより調製する。試料は、約80μg/mLのsiRNAの最終濃度に希釈し、
図1に示すように、96ウェルプレートに移す。RiboGreen希釈標準溶液を添加し、各試料および標準と混合する。試料は、分析の前に1〜2分間、暗所でインキュベートする。
【0069】
次にTE緩衝液中の1%Triton X-100を加えて試料を複製し、ついでRiboGreen希釈標準溶液を加える。
【0070】
封入効率は、各試料からの蛍光結果の平均を用いた蛍光測定から、外部試料の平均(RNAの非存在下でのRiboGreen試薬の蛍光)のベースライン測定について補正し、Triton X-100の存在によるシグナル強度の8%低下について補正した後に、決定する。次に封入効率を、以下の式を用いて算出する。
EE=(Triton試料−リポソーム試料)/(Triton試料)
【0071】
すなわち、封入効率は、総RNA値(リポソームを洗剤で溶解した後に測定)と無傷のリポソーム値との差を、総RNA値で除算したものである。無傷のリポソーム試料から得られた蛍光は、溶液中のフリーのRNAに、リポソームの外表面に吸着したRNAをプラスしたものからなる。
【0072】
サイズ
サイズは、形成される粒子のサイズ(直径)を示す。サイズ分布は、Malvern Zetasizer Nano-ZS動的光散乱(DLS)測定器を用いて決定することができる。
【0073】
この手順は、処理中のリポソーム試料の体積平均直径、Z平均直径、および多分散性の測定に適用される。多分散性は、粒子サイズ分布についての数値である。
【0074】
測定は室温で行う。試料および試薬は、室温に平衡化する必要がある。体積加重平均粒子径および多分散性指数が決定される。
【0075】
製造方法
リポソームの調製
脂質混合物は、水混和性有機溶媒、好ましくは無水エタノール中に溶解することができる。多くの態様において、有機溶媒は、それが市販されている形態で使用される。
【0076】
例示的な一態様において、脂質の混合物は、カチオン性アミノ脂質、中性脂質(アミノ脂質以外)、ステロイド(例えば、コレステロール)、およびPEG修飾脂質(例えば、PEG−S−DMG、PEG−C−DOMGまたはPEGDMA)の混合物であり、有機溶媒中に共溶解されている。好ましい態様において、脂質混合物は、カチオン性アミノ脂質、中性脂質、コレステロールおよびPEG修飾脂質から本質的になる。さらに好ましい態様において、脂質混合物は、種々のモル比での、カチオン性脂質、DOPE(または別のヘルパー脂質で、イオン化可能または永久的なカチオン性電荷のいずれか)、コレステロールおよびPEG結合脂質からなる。好ましいモル範囲は、40〜60モル%のカチオン性脂質、10〜30%の中性脂質、20〜40%のコレステロール、および1〜10%のPEG修飾脂質である。
【0077】
標的脂質は、脂質混合物、例えばdiVA−PEG750−diVA(または他のVA結合標的脂質)に、0.1対5(標的脂質:総脂質)のモル比で添加することができる。
【0078】
脂質の総濃度は25mg/ml未満、好ましく5mg/ml未満である。脂質混合物は、例えば0.45または0.2μmフィルターなどの膜を通して濾過される。
【0079】
本発明に従って、脂質混合物を緩衝水性溶液と混合する。緩衝水性溶液は、緩衝液が脂質混合物中のプロトン化脂質のpKa未満のpHを有する溶液であってよい。適切な緩衝液の例としては、シトラート、ホスファート、およびアセタートが挙げられる。特に好ましい緩衝液は、シトラート緩衝液である。好ましい緩衝液は、封入する核酸の化学的性質に依存して、アニオンの1〜1000mMの濃度範囲であり、緩衝液濃度の最適化は、高い負荷レベルを達成するために重要となり得る。例えば、粒子を透析してエタノールを除去し、pHを上昇させ、または薬学的に許容し得る担体もしくは希釈剤と混合する場合に、粒子膜を通る浸透ポテンシャルをバランスさせる抗凍結剤および/または非イオン性溶質を添加することが適切な場合もある。緩衝液中の核酸の量は、約0.08〜 0.8mg/mLである。
【0080】
エタノールの添加時に、水性溶液の温度は25〜45℃、好ましくは30〜40℃である。エタノール溶液の水性溶液への添加は、空気−水界面に狭い流れで噴霧するか、または水性溶液中に浸漬された管を通って送達されるエタノールとの間の液−液界面を介してのいずれかにより、行われる。
【0081】
有機溶液の添加は、重力によって、あるいは制御された速度、好適には一定の速度で有機溶液を水性溶液に送達するポンプによって、行われる。有機溶液の送達は、1分〜100分内、好ましくは1〜25分内で完了することができる。有機溶液は、管またはノズルを通って、またはマルチノズルシステムを通って、単一のスプレーまたは流れを介して添加することができる。有機溶液を水性溶液に添加しながら、得られた溶液を、撹拌、振とう、または再循環することによって混合することができる。添加のステップにより、好ましくは25〜45%エタノール、最も好ましくは35%のエタノールの最終濃度がもたらされる。
【0082】
最終的な溶液は、有機溶媒を除去するために、透析または濾過により、好ましくはダイアフィルトレーションにより、処理される。エタノールを除去しつつ、水性溶液は、中性pH、pH6.8〜pH7.5、好ましくはpH7.2での緩衝液に、例えばリン酸塩またはHEPES緩衝液に変換される。得られた水性溶液は好ましくは、貯蔵または使用の前に、例えば0.22μmのフィルターを通して濾過することにより、滅菌される。
【0083】
負に荷電した治療用ポリマーを封入したリポソーム
本明細書に記載の方法は、例えばRNA分子などの負に荷電した治療用ポリマーを有する脂質粒子を調製するのに有用である。本明細書に記載の方法において、脂質の混合物を、ポリマーの水性溶液と組み合わせる。ポリマーは、得られた脂質粒子に効率的に封入されている。
【0084】
ナノ粒子は、ポリアニオン性活性剤または治療剤、例えば、RNAおよび1、2または3種の生体適合性ポリマーを含むことができる。例示的な治療剤には、核酸、タキサンなどの抗腫瘍薬が挙げられる。
【0085】
負に荷電したポリマーの全電荷は、添加時の脂質混合物中の正電荷の数より少ないか、またはこれと同じでなければならず、好ましくは0.06〜0.16(w:w)である。例えばRNAが使用される場合、封入された核酸は、0.06〜0.16のRNA:脂質の最終比、電荷:電荷(−/+)比は好ましくは1:2.5〜1:1で存在する。
【0086】
脂質の混合物が電荷を有するカチオン性脂質を含む場合、脂質小胞を負に荷電したポリマーの存在下で形成してポリマーを封入し取り込んでもよい。得られた粒子は、培地のpHを生理的pH以上に高めることによって中和することができる。このようにして形成された小胞は、核酸の含有量の高い、均一な小胞サイズの製剤を提供する。
【0087】
いずれの例においても、ポリマーを封入する小胞(ナノ粒子)は、50〜150nmのサイズ範囲を有する。
【0088】
本明細書に記載の方法に従って、脂質混合物を、負に帯電したポリマーを含有してもよい緩衝水性溶液と混合する。緩衝水性溶液は、緩衝液が脂質混合物中のプロトン化脂質のpKa未満のpHを有する溶液であってもよい。適切な緩衝液の例には、シトラート、ホスファート、アセタート、およびMESが挙げられる。特に好ましい緩衝液は、シトラート緩衝液である。好ましい緩衝液は、封入されるポリマーの化学的性質に依存して、アニオンの1〜1000mMの濃度範囲であり、緩衝液濃度の最適化は、高い負荷レベルを達成するために重要となり得る。
【0089】
粒子を透析してエタノールを除去し、pHを上昇させ、または薬学的に許容し得る担体および/もしくは希釈剤と混合する場合に、粒子膜を通る浸透ポテンシャルをバランスさせる抗凍結剤および/または非イオン性溶質を添加することが適切な場合もある。
【0090】
RNAに対して、本明細書に記載の方法の概略図を
図1に示す。溶液の調製を、凍結乾燥材料または固体材料を水中で溶解し、好ましくはpH3.5〜4.5で、例えば50mMのシトラートで緩衝することにより行う。緩衝液中の核酸の量は、0.08〜0.8mg/mLである。エタノールの添加時に、水性溶液の温度は25〜45℃、好ましくは30〜40℃である。一本鎖核酸を使用する場合は、高温で短時間、例えば65℃で1〜2分間加熱することが有用であり得る。
【0091】
エタノール溶液の水性溶液への添加は、空気−水界面に狭い流れで噴霧するか、または、容器に接続された管を通って送達されるエタノールと水性溶液の間の液−液界面を介してのいずれかにより、行われる。
【0092】
有機溶液は、制御された速度、好適には一定の速度で有機溶液を水性溶液に送達することで、添加される。有機溶液の送達は、1分〜100分内、好ましくは1〜25分内で完了することができる。有機溶液は、管またはノズルを通って、またはマルチノズルシステムを通って、単一のスプレーまたは流れを介して添加することができる。有機溶液を水性溶液に添加しながら、得られた溶液を、撹拌、振とう、または再循環することによって混合することができる。添加のステップにより、リポソーム二重層構造を破壊するのに十分な最終濃度、好ましくは25〜45%エタノール、最も好ましくは35%のエタノールの最終濃度がもたらされる。
【0093】
脂質−核酸粒子について、最終的なRNA濃度は0.001〜1mg/ml、好ましくは0.01〜0.5mg/ml、最も好ましくは0.05〜0.5mg/mlである。最終的な薬物/脂質比は、0.06〜0.16w:w(
1:2.5〜1:1の電荷:電荷比)である。
【0094】
最終的な溶液は、有機溶媒を除去するために、透析または濾過により、好ましくはダイアフィルトレーションにより処理される。エタノールを除去しつつ、水性溶液は、中性pH、pH6.8〜pH7.5、好ましくはpH7.2での緩衝液に、例えばリン酸緩衝液に変換される。得られた水性溶液は好ましくは、貯蔵または使用前に、例えば0.22μmのフィルターを通して濾過することにより、滅菌される。
【0095】
最終的な封入効率は、85%より大である。最終的な平均粒子径は、50〜150nmである。多分散性指数PDIは、0.2未満、好ましくは0.1未満である。
【0096】
凍結乾燥
本開示は部分的に、再構成された場合に最小量の大きな凝集体を有する、凍結乾燥された医薬組成物に関する。かかる大きな凝集体は、約0.2μmを超える、または約0.5μmを超える、または約1μmを超えるサイズを有する可能性があり、再構成された溶液中に望ましくない場合がある。凝集体サイズは、参照により本明細書に組み入れられる米国薬局方32<788>に示されたものを含む、様々な技術を用いて測定することができる。試験は、光遮蔽粒子計数試験、顕微鏡的粒子計数試験、レーザー回折、および単一粒子光学検知を含むことができる。一態様において、所与の試料中の粒子サイズは、レーザー回折および/または単一粒子光学検知を用いて測定される。動的光散乱(DLS)を用いて粒子サイズを測定してもよいが、この手法はブラウン運動に依存するため、いくつかの大きな粒子を検出できない可能性がある。レーザー回折は、粒子と懸濁媒体の間の屈折率の差に依存する。この手法は、サブミクロンからミリメートル範囲の粒子を検出することができる。大きな粒子の比較的小さい量(例えば、約1〜5重量%)は、ナノ粒子懸濁液中で決定することができる。単一粒子光学センシング(SPOS)は、希薄懸濁液の光遮蔽を用いて、約0.5pmの個々の粒子をカウントする。測定試料の粒子濃度を知ることにより、凝集体の重量パーセントまたは凝集体濃度(粒子数/mL)を算出することができる。
【0097】
凝集体の形成は、例えば粒子表面の脱水のために、凍結乾燥の凍結および/または乾燥のステップ中に生じる可能性がある。凍結プロセスは、氷が形成されるにつれて粒子間の距離が短縮される、濃縮効果を有する(Alison et al., Biochim Biophys Acta. 2000 Sep 29;1468(1-2):127-38; Armstrong and Anchordoquy, J Pharm Sci. 2004 Nov;93(11):2698-709)。この脱水は、凍結乾燥前の懸濁液に、多糖類などの溶解保護剤(lyoprotectant)を使用することによって回避することができる。適切な多糖類は、スクロース、ラクチュロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、またはセロビオース、コージビオース、ニゲロース、イソマルトース、トレハロース、ソホロース、ラミナリビオース、ゲンチオビオース、ツラノース、マルツロース、パラチノース、ゲンチ
オビウロース(gentiobiulose)、マンノビ
オース(mannobi
ose)、メリビオース、メリビ
ウロース(melibiulose)、ルチノース、ルチヌロース(rutinulose)、およびキシロビオースを含む。一態様において、組成物は、スクロースである多糖類を含む。別の態様において、組成物は、トレハロースである多糖類を含む。出願人らによる結果は、出発懸濁液と比較した場合に、等価のDLSサイズ分布が再構成時に得られることを示している。
【0098】
以前には、ガラス質の賦形剤に高分子を固定化するプロセスであるガラス化は、リポソームの凝集防止に寄与する因子ではなく、糖の高張溶液が必要であると考えられていた(Alison et al.)。本発明者らは、凍結乾燥の凍結および乾燥ステップの結果は、特定の脂質:多糖類比(w:w)に依存することを見出し、これは、リポソームの凝集、リポソーム拡散障壁の破壊、および封入RNAが放出されて核酸リポプレックスを形成することを防止するための手段を提供する。一態様において、組成物は、12〜15%のスクロースおよび5〜20mg/mlの脂質、好ましくは12%のスクロースおよび9mg/mlの脂質を含む。より好ましくは、組成物はさらに、緩衝剤、最も好ましくは中性pHのHEPESを含む。
【0099】
凍結乾燥ステップは、好適なガラス容器、好ましくは10mlの円筒形ガラスバイアル中で行われる。ガラスバイアルは、−40℃未満および室温を超える温度の短時間での急激な変化に耐えなければならず、均一な形状にカットされる。増量剤および核酸を封入したリポソームを含む組成物は、好ましくは3ml容量で、および好ましくは9ml/mlの脂質で、バイアルに加えられる。
【0100】
凍結乾燥ステップは、約−40℃を越えるか、または例えば約−30℃未満の温度で組成物を凍結し、凍結組成物を形成すること;および凍結組成物を乾燥させて、凍結乾燥組成物を形成することを含む。凍結ステップは好ましくは、約6分間にわたって最終温度までの直線的な温度低下、好ましくは1℃/分にて20から−40℃への低下をもたらす。より好ましくは、12〜15%のスクロースを使用することができ、乾燥ステップは、約50〜150mTorrにて、最初は約−15〜−35℃の低温で、その後、室温から約25℃のより高い温度で、3〜7日間で完了される。本開示の別の態様において、トレハロースを使用することができ、乾燥ステップは約50〜100mTorrにて、最初は約0〜−15℃の低温で、その後より高い温度で行われる。
【0101】
別の側面において、本発明は、医薬ナノ粒子組成物中の粒子の実質的凝集を防止する方法であって、凍結乾燥製剤に糖および塩を添加して、凝集およびリポソームの内部からの核酸の放出を防ぐことを含む、前記方法を提供する。
【0102】
医薬組成物
本明細書に開示された脂質粒子は、特に治療薬と関連付けられている場合には、医薬組成物として製剤化してもよく、これは例えば、薬学的に許容し得る希釈剤、賦形剤、または担体、例えば生理食塩水またはリン酸緩衝液などを、投与経路および標準的な医薬の実務に従って選択してさらに含む。当業者によって理解されるように、担体は、以下に説明する投与経路、標的組織の位置、送達される薬物、薬物送達の時間経過などに基づいて選択することができる。
【0103】
本発明の医薬組成物は、患者に対して、経口および非経口経路を含む当分野で周知の任意の手段によって投与することができる。本明細書で使用される用語「患者」は、ヒトならびに非ヒトを指し、例えば、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、および魚類を含む。例えば、非ヒトは哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、霊長類、またはブタ)であってよい。一定の態様においては非経口経路が望ましく、これは、消化管に見出される消化酵素との接触を避けるためである。かかる態様によれば、本発明の組成物は、注入(例えば、静脈内、皮下または筋肉内、腹腔内注入)により、経直腸、経膣、局所的(粉末、クリーム、軟膏、またはドロップによるなど)、または吸入(スプレーによるなど)により、投与することができる。
【0104】
特定の態様において、本発明のナノ粒子は、これを必要とする対象に対して、全身的に、例えば非経口的に、または静脈内注入または注入によって、投与される。
【0105】
特定の態様において、本発明の脂質−核酸粒子を含む医薬組成物は標準技法に従って調製され、薬学的に許容し得る担体をさらに含む。一般に、生理食塩水が、薬学的に許容し得る担体として使用される。他の適切な担体としては、例えば、水、緩衝水、0.9%生理食塩水、0.3%グリシン、糖または多糖類、例えばスクロース、マルトース、トレハロース、カラギーナン、キサンタンガム、マンニトール、フルクタン(例えばイヌリン)、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、またはポリエチレングリコール(PGE)、安定性を高めるための糖タンパク質を含み、例えばアルブミン、リポタンパク質、グロブリンなどが挙げられる。増量剤、抗凍結剤および/または溶解保護剤、ならびにEDTAなどの金属除去剤も、含まれていてもよい。担体を含有する生理食塩水または他の塩を含む組成物において、担体は、好ましくは脂質粒子形成後に添加される。したがって、脂質−核酸組成物が形成された後、組成物は、生理食塩水などの薬学的に許容し得る担体中に希釈することができる。
【0106】
得られた医薬製剤は、従来の周知の滅菌技術により滅菌することができる。次に水性溶液を、使用のために包装し、または無菌条件下で濾過して凍結乾燥することができ、凍結乾燥製剤は投与前に、滅菌水性溶液と合わせられる。組成物は、必要に応じて、生理的条件に近づけるために薬学的に許容し得る補助物質を含有してもよく、例えばpH調整剤および緩衝剤、等張化剤、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、または塩化カルシウムなどである。さらに、脂質懸濁液は、貯蔵時にフリーラジカルおよび脂質過酸化損傷から脂質を保護する、脂質保護剤を含んでいてもよい。親油性フリーラジカルクエンチャー、例えばa−トコフェロールおよびフェリオキサミンなどの水溶性鉄特異的キレート剤が適している。
【0107】
医薬製剤中の脂質粒子または脂質−核酸粒子の濃度は広範に変化することができ、すなわち、約0.01%未満、通常少なくとも約0.05〜5%から、最大で10〜30重量%までであり、選択された特定の投与様式に応じて、主として流体容量、粘度などに応じて選択される。例えば、濃度は、処置に関連する流体負荷を低下させるために、増加させることができる。これは、アテローム性動脈硬化症関連のうっ血性心不全または重度の高血圧を有する患者において、特に望ましい場合がある。あるいは、刺激性の脂質からなる複合体は、投与部位における炎症を軽減するために、低濃度に希釈してもよい。一群の態様において、核酸は、付着された標識を有し、診断に使用される(相補的な核酸の存在を示すことによって)。この場合、投与される複合体の量は、使用される特定の標識、診断される疾患状態、および臨床医の判断に依存するが、一般に、約0.01〜約50mg/体重1kg、好ましくは約0.001〜約5mg/体重1kgである。
【0108】
使用法
本明細書に記載の脂質粒子は、核酸などの負に荷電した治療用ポリマーを、in vitroまたはin vivoで細胞へ送達するために使用することができる。本発明の脂質粒子および関連する医薬組成物を使用する様々な方法の以下の説明は、核酸−脂質粒子に関連する説明によって例示されるが、これらの方法および組成物は、かかる処置により利益を受けるであろう任意の疾患または障害の処置のための、任意の治療剤の送達用に容易に適合され得ることが、理解される。
【0109】
特定の態様において、本発明は、核酸を細胞に導入するための方法を提供する。細胞内への導入のための好ましい核酸は、siRNA、免疫刺激オリゴヌクレオチド、プラスミド、アンチセンスおよびリボザイムである。これらの方法は、本発明の粒子または組成物を、細胞内送達が生じるのに十分な時間、細胞と接触させることにより実施することができる。
【0110】
本発明の組成物は、ほぼ全ての細胞型に吸着可能である。一度吸着すると、核酸−脂質粒子は、細胞の一部によりエンドサイトーシスされるか、脂質を細胞膜と交換するか、または細胞と融合することができる。複合体の核酸部分の転移または取り込みは、これらの経路のいずれかを介して生じることができる。本発明の範囲に関して限定を意図するものではないが、エンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれる粒子の場合、粒子は次にエンドソーム膜と相互作用し、おそらく非二分子層相の形成によってエンドソーム膜の不安定化が生じ、封入された核酸の細胞原形質への導入がもたらされると考えられている。同様に、細胞と細胞原形質膜の直接融合の場合には、融合が生じると、リポソーム膜は細胞膜に組み込まれ、リポソームの内容物は細胞内液と混合される。in vitroで行われる場合、細胞と脂質−核酸組成物の間の接触は、生物学的に適合する培地中で起こる。組成物の濃度は、特定の用途に応じて幅広く変化するが、一般に1μmol〜10mmolの間である。一定の態様において、細胞の脂質−核酸組成物による処理は、一般に、生理的温度(37℃)で1〜24時間、好ましくは2〜8時間行われる。in vitro用途のために、核酸は培養中で増殖する任意の細胞に対して送達することができ、植物または動物起源、脊椎動物または無脊椎動物かどうかに関わらず、任意の組織または型であってよい。好ましい態様において、細胞は、動物細胞、より好ましくは哺乳動物細胞、最も好ましくはヒト細胞である。
【0111】
一群の態様において、脂質−核酸粒子懸濁液を、約10
3〜約10
5細胞/mL、より好ましくは約2×10
4細胞/mLの細胞密度を有する、60〜80%集密のプレートされた細胞に添加する。細胞に添加した懸濁液の濃度は、好ましくは約0.01〜20μg/mL、より好ましくは約1μg/mLである。
【0112】
代表的な用途としては、よく知られている手順を使用して、特定の細胞標的をノックダウンまたはサイレンスさせるためのsiRNAの細胞内送達を提供することを含む。代替的に、用途は、治療的に有用なポリペプチドをコードするDNAまたはmRNA配列の送達を含む。
【0113】
本発明の方法は、in vitro 、ex vivo、またはin vivoで実施してよい。例えば、本発明の組成物はまた、当業者に周知の方法を用いて、in vivoの細胞への核酸の送達のために使用することができる。
【0114】
in vivo投与のために、医薬組成物は好ましくは非経口的に、すなわち、関節内、静脈内、腹腔内、皮下、または筋肉内に投与される。特定の態様において、医薬組成物は、ボーラス注入によって静脈内または腹腔内に投与される。
【0115】
他の方法において、医薬製剤は、製剤を組織へ直接適用することにより、標的組織と接触させることができる。適用は、局所的な「開」または「閉」手順によって行うことができる。「局所的」により、皮膚、中咽頭、外耳道などの環境に曝露された組織への、医薬製剤の直接適用を意味する。「開」の手順は、患者の皮膚を切開し、医薬製剤を適用する下部組織を直接可視化することが含まれるような手順である。これは一般に外科的処置により、例えば肺にアクセスするための開胸術、腹部内臓にアクセスするための開腹術、または標的組織に対する他の直接的な外科的アプローチにより、達成される。「閉」の手順は、内部標的組織は直接には可視化されないが、皮膚の小さな傷を通して挿入した機器を介してアクセスされる、非侵襲的処置である。例えば、製剤は、ニードル洗浄によって腹膜に投与してもよい。同様に、医薬製剤は、腰椎穿刺中に注入し、続いて脊椎麻酔または脊髄のメトリザミドイメージングのために一般に実施されるように患者を適切に位置させることにより、髄膜または脊髄に投与してもよい。あるいは、製剤は、内視鏡装置を介して投与することができる。
【0116】
脂質−核酸組成物はまた、エアロゾルで肺に吸入されるか、または疾患部位へ直接注入することにより、投与することができる。
【0117】
本発明の方法は、種々の対象または宿主において実施することができる。好ましい対象または宿主には、哺乳動物種、例えばヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジなどが挙げられる。特定の態様において、対象は、疾患もしくは障害の処置または予防が必要な、例えば疾患または障害があると診断されたか、そのリスクがあると考えられる、ヒトなどの哺乳動物である。
【0118】
本発明の脂質−治療剤粒子の投与量は、治療剤と脂質の比率、ならびに患者の年齢、体重、および状態に基づく、投与する医師の意見に依存する。
【0119】
一態様において、本発明は、標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を調節する方法を提供する。これらの方法は一般に、細胞を、標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を調節することができる核酸と関連している本発明の脂質粒子と、接触させることを含む。本明細書で使用される「調節」という用語は、標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を変化させることを意味する。別の態様において、調節は、増大もしくは増強を意味することも、または減少もしくは低減を意味することもできる。標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現レベルを測定する方法は当分野で知られおり利用可能であり、例えば、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)および免疫組織化学技法を用いる方法が挙げられる。特定の態様において、標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現のレベルは、適切な対照値と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、または50%を超えて、増加または減少される。
【0120】
例えば、ポリペプチドの発現の増加が望まれる場合には、核酸は、所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターであってもよい。逆に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現の低下が望まれる場合には、この核酸は、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、またはマイクロRNAであって、標的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含むものであり、それにより、標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現が破壊される。あるいは、核酸は、かかるアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、またはマイクロRNAを発現するプラスミドであってもよい。
【0121】
特定の態様において、核酸活性剤または治療剤は、siRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、およびsiRNA、マイクロRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドを発現することができるプラスミドから選択され、ここで前記のsiRNA、マイクロRNA、またはアンチセンスRNAは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに特異的に結合するオリゴヌクレオチド、またはその相補体を、前記ポリペプチドの発現が低減されるような様式で含む。
【0122】
別の態様において、核酸は、ポリペプチドまたはその機能的変異体もしくは断片を、前記ポリペプチドまたはその機能的変異体もしくは断片の発現が増加されるようにコードするプラスミドである。
【0123】
関連する態様において、本発明は、対象における、ポリペプチドの過剰発現を特徴とする疾患または障害を処置する方法を提供し、ここで該方法は以下を含む:対象に対して本発明の医薬組成物を提供すること、ここで、治療剤は、siRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、およびsiRNA、マイクロRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドを発現することができるプラスミドから選択され、ここで前記のsiRNA、マイクロRNA、またはアンチセンスRNAは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに特異的に結合するオリゴヌクレオチド、またはその相補体を含む。
【0124】
別の関連する態様において、本発明は、対象における、ポリペプチドの過少発現を特徴とする疾患または障害を処置する方法を提供し、ここで該方法は以下を含む:対象に対して本発明の医薬組成物を提供すること、ここで、治療剤は、ポリペプチドまたはその機能的変異体もしくは断片をコードするプラスミドである。
【0125】
貯蔵寿命のアッセイ
本明細書において、用語「貯蔵寿命」は、脂質:RNAナノ粒子がその生物学的活性を失う前に貯蔵することができる期間(定義された条件の下、例えば4℃の緩衝液中で)を指すために使用される。本発明における貯蔵寿命を決定するためにアッセイされる生物学的活性は、脂質:RNAナノ粒子の、静脈内投与後にin vivoで哺乳動物細胞をトランスフェクトする能力である。
【0126】
好ましい態様において、貯蔵寿命の決定は、脂質:RNAナノ粒子を様々な期間貯蔵すること、1または2以上の試験動物にナノ粒子を注入し、動物の選択された組織を、上記および例に説明されているようにトランスフェクション(例えばレポーター遺伝子の発現)についてアッセイすること、によって行われる。
【0127】
貯蔵寿命は、絶対的期間、すなわち活性を失う前に組成物を貯蔵することができる時間の長さで表わせることが理解される。代替的に、貯蔵寿命は、異なる組成物を参照することによって、相対的な期間で表現することができる。従って例えば、脂質:RNAナノ粒子が固定された貯蔵期間後にトランスフェクション活性を示し、この活性が、同じ期間の間同様にして貯蔵された異なる複合体の活性よりも大きい場合に、対象の複合体は異なる複合体よりも長い貯蔵寿命を有するとされる。
【0128】
リポソームに封入されたポリアニオン治療薬を含むキット
本発明はまた、本明細書に記載の脂質:RNAナノ粒子を調製するためのキットを提供する。かかるキットは、上述のように、容易に入手可能な材料および試薬から調製することができる。例えば、かかるキットは、以下の材料のいずれかを1または2以上含み得る:リポソーム、核酸(RNA、DNA、一本鎖または二本鎖)、親水性ポリマー、Fab’断片などの標的部分で誘導体化された親水性ポリマー、および指示書。多種多様なキットおよび成分を、本明細書に従い、キットの意図するユーザーおよびのユーザーの特定のニーズに応じて、調製することができる。例えばキットは、上述したように、複合体を特定の細胞型に標的化するための多数の標的部分のいずれか1つを含むことができる。
【0129】
キットは、任意に、脂質:RNAナノ粒子をin vivo、ex vivo、またはin vitroでの細胞のトランスフェクションに使用するための、指示(すなわちプロトコル)を含んだ指示書を含んでよい。典型的には、指示書は、上述したように、脂質:RNAナノ粒子をリポソームおよび核酸から調製するための手順を記載する。指示書はまた、いかにして親水性ポリマーを脂質:RNAナノ粒子と混合するかについて記載する。さらに指示書は、細胞を脂質:RNAナノ粒子でトランスフェクションするための手順を記載することができる。
実施例
【0130】
例1:RNA−脂質の粒子サイズに対する、濃度の効果
この例は、siRNAおよび脂質濃度の、粒子サイズに対する効果を記載する。
【0131】
ナノ粒子を、本明細書に記載の方法により調製する。カチオン性脂質、DOPE、コレステロール、PEG−BML、およびdiVA−PEG750−diVAを、無水エタノールにそれぞれ50:10:38:2:5のモル比で溶解した。siRNAを、pH4.5の50mMのシトラート緩衝液中に溶解した。
【0132】
混合容器内で連続して撹拌しながら、siRNA含有緩衝液を35〜40℃にした。次にエタノール/脂質混合物を、siRNA含有緩衝液の表面にマニホールド/ノズルアレイを用いて噴霧して、siRNA負荷リポソームを自然に形成させた。脂質およびRNA濃度を調節して、0.05〜0.5mg/mLの範囲の最終siRNA濃度、0.08(重量:重量)の薬物:脂質比、および35%のエタノール濃度に到達させた。脂質のsiRNAに対する比率は、試験した全ての条件について一定に保った。
【0133】
siRNA負荷リポソームを〜10%エタノールに希釈して粒子を安定化させ、次に10×容積のPBS(pH7.2)に対してダイアフィルトレーションしてエタノールを除去し、緩衝液を交換した。最終生成物を、バイオバーデン(汚染微生物数)の減少のために、0.22μmの滅菌グレードPESフィルターで濾過した。体積、平均粒子サイズおよび多分散性指数(PDI)は、動的光散乱(DLS)を用いて測定した。結果を表Iおよび
図2に示す。
【表1】
【0134】
結果は、粒子サイズが、siRNA濃度(mg/ml単位)の増加と共に増加することを示す。脂質およびsiRNA濃度を(相対比率を一定に維持しつつ)低下させると粒径が減少し、一方、濃度を増加させると粒径が増加する。0.05〜0.5mg/mLの間の最終siRNA濃度は、96.7〜141.9nmで150nm未満の平均粒子サイズと0.2未満の多分散性指数を有するナノ粒子を、全ケースにおいて生成する。
【0135】
150nm未満の粒径で0.2未満のPDIのものは、本明細書に記載の方法により、予備形成された空の脂質小胞を調製することなく、および/または機械的な処理なしで生成される。
【0136】
例2:プロセスパラメータのRNA−脂質粒子形成に対する効果
この例は、様々なプロセスパラメータの、RNA−脂質粒子形成に対する効果について記載する。いくつかのパラメータをこの実験の間にスクリーニングしたが、それには、温度、エタノール濃度、緩衝液、脂質:siRNA比、および脂質の溶液を分散させるために用いたノズルタイプを含む。
【0137】
HEDC、DOPE、コレステロール、PEG−BML、およびdiVA−PEG750−diVAを、無水エタノールにそれぞれ40:30:25:5:2のモル比で溶解した。混合容器内で連続して撹拌しながら、siRNA含有緩衝液を示す温度にした。次にエタノール/脂質混合物を、siRNA含有緩衝液の表面にノズルを用いて噴霧して、siRNA負荷リポソームを自然に形成させた。脂質をsiRNAと混合して、0.1mg/mLの最終siRNA濃度に、指示された薬物:脂質比および指示された最終エタノールパーセントにて、到達させた。
【0138】
siRNAは、25〜100mMおよびpH3.5〜6.5の強さで変化させたシトラート緩衝液中に溶解した。混合物の温度は25〜45℃で変化させた。最終エタノール濃度は25〜45%で変化させた。薬物:脂質比(重量/重量)は、0.07〜0.11で変化させた。水和ノズルの内径(ID)は、0.005〜0.125インチで変化させた。各条件は、それぞれのプロセスパラメータの効果を比較するための測定として実施した。別の指定がない限り、各条件は、50mMのシトラート緩衝液、pH4.5、35℃、35%の最終エタノール、0.07の薬物:脂質比、0.005インチのノズルIDで実施した。
【0139】
siRNA負荷リポソームを〜10%エタノールに希釈して粒子を安定化させ、次に10×容積のPBS(pH7.2)に対してダイアフィルトレーションしてエタノールを除去し、緩衝液を交換した。最終生成物を、バイオバーデン(汚染微生物数)の減少のために、0.22μmの滅菌グレードPESフィルターで濾過した。
【0140】
表2および
図3は、pHの、脂質−核酸ナノ粒子の平均径およびPDIに対する効果を示す。緩衝液のpHの増加は、平均粒子サイズが150nm未満ではあるが、粒子サイズの増大をもたらした。
【表2】
【0141】
表3は、緩衝液濃度の、種々のパラメータに対する効果を示す。結果は、緩衝液の濃度の増加がsiRNA回収率を低下させることを示した。平均粒子径およびPDIは影響を受けないようであった。最小粒子サイズはpH3.5で観察され、最大のsiRNA回収率は、25mMのシトラート緩衝液で観察された。
【表3】
【0142】
表4は、水和温度の25から45℃への上昇が、粒子サイズを135.7から102.2nmに減少させ、一方で
siRNA回収率を80%から87%に改善することを示す。最終エタノールパーセントの上昇は、siRNA回収率に影響を与ることなく粒子サイズを増加させたが、封入効率を88%に低下させた。
【表4】
【0143】
表5は、薬物:脂質比が減少すると、siRNA回収率が80%から87%へ上昇することを示す。最大回収率は、0.07の薬物:脂質比(w:w)で観察された。その他の測定された特性全ては、薬物:脂質比によって影響を受けなかった。この結果は、MaurerらおよびSempleらの開示を考慮すると驚くべき予想外のものであり、何故ならば両者とも、最適な回収率は、薬物:脂質(w:w)が0.16以上(薬物:脂質(w:w)が6.25以下)の場合であると記載しているからである。本結果は、本明細書に記載の方法を用いて反対の傾向が得られることを示唆する。
【表5】
【0144】
表6は、ノズルIDを25倍増加しても、粒子サイズ、封入効率またはsiRNA回収率に影響はなかったことを示す。エタノール/脂質の緩衝液表面への添加に用いられたノズルのオリフィスは、実質的に柔軟である。この柔軟性が、スケールアップの間に主要な利点を提供した可能性がある。
表6
【表6】
【0145】
例3:記載プロセスの、リポソームのバッチ生産のための参照方法との比較
これらの結果は、本明細書に記載の脂質/核酸粒子を調製するための方法を、Sempleらによる米国特許第6,858,225号に記載の方法(対照方法または対照方法により用いられる対照組成物)と比較した。これらは、例2の組成物に従って、または対照方法を用いて調製した。
【0146】
例2の組成物は、カチオン性脂質、DOPE、コレステロール、PEG複合脂質、および標的脂質を、40:30:25:5:2のモル比(上記の例2を参照のこと)で共溶解したものから構成された。
【0147】
対照組成物は、DODAP、DSPC、コレステロール、およびPEG−CER−14を、25:20:45:10のモル比で共溶解したものから構成された。
【0148】
例2の方法において、脂質は、無水エタノール中4.32mg/mlで溶解し、siRNAは50mMのシトラート中0.163mg/mlにて、pH4.5で溶解した。siRNA溶液を、混合容器内で連続的に撹拌しつつ35〜40℃にした。次にエタノール/脂質混合物を、siRNA含有緩衝液の表面にマニホールド/ノズルアレイを用いて噴霧した。最終エタノール濃度は35%であり、最終脂質/siRNA比は、14:1(重量:重量)であった。得られた粒子を次に10%エタノールに希釈し、続いて10×容積のPBS(pH7.2)に対してダイアフィルトレーションした。
【0149】
対照方法において、脂質は、無水エタノール中25mg/mlで溶解し、siRNAは300mMのシトラート中4.17mg/mlにて、pH4.0で溶解した。siRNA含有緩衝液は、混合容器内で連続的に撹拌しつつ室温に維持した。次にエタノール/脂質混合物を、siRNA含有緩衝液の表面に単一のノズルを用いて噴霧し、siRNA負荷リポソームを自然に形成させた。最終エタノール濃度は40%であり、最終脂質/siRNA比は、6:1(重量:重量)であった。混合後、脂質/siRNAの懸濁液を、2つの100nmのポリカーボネート膜を用いて調製した10mLの押出機に移し、65℃で予め平衡化した。懸濁液を300psiで10回の通過により押出した。得られた粒子を、10×容積のPBS(pH7.2)に対してダイアフィルトレーションした。
【0150】
各方法から得られた粒子を0.22μmフィルターに通した。平均粒子サイズ、PDI、およびEEを、本明細書に記載のようにして測定した。
【0151】
例2の方法は、押出しステップなしで、対照方法よりも小さい脂質ナノ粒子を生成した(
図4)。対照方法により生成された粒子の大きさを、押出し前に測定した。NDT-0009組成物から対照方法を用いて調製された粒子は、250nm粒子よりも大きい平均粒子サイズを有していた。押出しおよびダイアフィルトレーション後に、平均粒子サイズは128nmまで減少した。例2の方法は、押出しなしで、150nm未満の平均粒子サイズの粒子を生成した。同様の傾向は、対照組成物から出発した場合にも観察された。
【0152】
例2の方法は、siRNAを脂質ナノ粒子に封入するのに、対照方法よりも効率的であった(
図5)。例2の方法により調製された粒子の封入効率(EE)は、対照方法によって形成された粒子よりも高い(両方の生成物において、ダイアフィルトレーションの前に測定)。例2の方法により調製された粒子のEEは95%より高く、対照方法によって形成された粒子について見られるものよりも高い。対照方法では、遊離siRNAの多くはダイアフィルトレーション後に除去され、これにより最終生成物のEEの改善がもたらされる。
【0153】
例2の方法は、対照方法よりも高い封入効率のナノ粒子を生成する(
図6)。例2の方法によるsiRNAの最終的な回収率は、両方の生成物においてダイアフィルトレーション後に測定された場合、対照方法で得られる値の2倍以上である。(72%対33%)。これらのデータは、EEの改善並びに例2の方法における押出しステップの欠如を反映している。例2の方法は、より良いsiRNA回収率を提供し、これは、対照方法の余分な押出しステップがリポソームを構造的に改変し、siRNAを粒子から明らかに解離するためである。これらの結果は、本明細書に記載の方法は、プロセスのステップ数を低減しつつ、一方で封入効率および平均粒子サイズが150nm未満のナノ粒子の収率を向上させることにより、対照方法に比べていくつかの利点を提供することを示している。
【0154】
例4:リポソームのバッチ生産のスケールアップ時の変動性の比較
例2に記載したプロセスを、永久荷電(HEDC)カチオン性脂質とイオン化可能(S104)カチオン性脂質分子の組み合わせを含む、異なる脂質組成を用いて実施した。HEDC、S104、DOPE、コレステロール、PEG−BML、およびdiVA−PEG750−diVAを、無水エタノールに20:20:30:25:5:2のモル比で溶解した。スケールアップの間、異なるsiRNA分子、異なるバッチ容積、および異なるsiRNA(薬物)/脂質比を評価した。表7は、条件の範囲から得られたナノ粒子を特徴づける結果をまとめたものである。
【表7】
【0155】
この結果は、本明細書に記載の方法が非常に堅牢であることを示す。類似する粒子サイズおよびPDIが、50倍の範囲にわたるスケールアップの間に得られた。粒子サイズは一定して10nm未満であり、>90%の生成物収率である。多分散指数の値は非常に低い範囲にあり、ほぼ単分散の小胞の集団を示す。
【0156】
例5:スクロース含有製剤についてのリポソームバッチ生産のスケールアップ時の変動性の比較
例2に記載したプロセスを、HEDC、S104、DOPE、コレステロール、PEG−BML、およびdiVA−PEG750−diVAを無水エタノールに20:20:30:25:5:2のモル比で溶解して実施した。スクロースを、本明細書に記載のように、小胞の調製に含めた。異なるバッチ容積を評価し、凍結解凍に供した。表8は、条件の範囲から得られたナノ粒子を特徴づける結果をまとめたものである。
【表8】
【0157】
結果は、凍結解凍が脂質ナノ粒子の特性を変化させなかったことを示す。結果はまた、バッチ間のばらつきが非常に小さく、プロセスが、均一なナノ粒子を再現性よく生成することを示した。
【0158】
凍結乾燥による、薬物:脂質粒子の安定化のための条件が確立されている。例2に従って調製された薬物:脂質粒子は、活性を失うことなく凍結乾燥することができた。薬物:脂質粒子が形成されたスクロースの最終濃度は、8%(w/v)であった。凍結乾燥製剤を、蒸留水を加えることにより再構成し、マウスの肺におけるi.v.注入後のそのトランスフェクション活性を測定した。再構成された製剤の凍結および解凍は、活性に影響しなかった。表9に示す結果は、本明細書に記載の方法で調製した粒子が、凍結乾燥の間にその特性を保持し、したがって安定であることを実証する。具体的には、粒子サイズは安定化され、凍結乾燥の前、間およびその後にも保存される。
【表9】
【0159】
粒子の安定性は、脂質組成物、脂質:RNA(w:w)の値、および製剤に使用される多糖類の選択の関数である。in vivoで高い生物活性を示す脂質:RNA複合体の安定な製剤の生成のための、本明細書に記載の方法論的アプローチは、薬学的に許容し得る製剤を確立するための利点を付与し、したがってリポソームベースのRNAの送達を容易にする。
【0160】
例6:脂質のサブマージ注入(submerged injection)
例2に記載のプロセスを、サブマージ注入を用いて小胞を調製することにより修正して実施した。HEDC、S104、DOPE、コレステロール、PEG−BML、およびdiVA−PEG750−diVAを、無水エタノールに20:20:30:25:5:2のモル比で溶解した。表10は、表面添加処理と比較して、サブマージ添加プロセスから得られたナノ粒子を特徴づける結果をまとめたものである。結果は、脂質をサブマージ注入により水相に添加した場合に、平均粒子サイズが実質的に減少するという、驚くべき予想外の結果を示す。
【表10】
【0161】
同様の処理方法を用いて、緩衝液中にスクロースを含有するリポソームを調製した。表11は、異なる添加時間から得られたナノ粒子を特徴づける結果をまとめたものであり、表12は、サブマージ添加と比べて、表面添加を用いて調製したナノ粒子を特徴づける結果をまとめたものである。
【表11】
【表12】
【0162】
結果は、脂質をサブマージ注入により2分未満の添加時間で水相に添加した場合に、平均粒子サイズが実質的に減少するという、驚くべき予想外の結果を示す。結果はまた、脂質をサブマージ注入により水相に添加した場合に、平均粒子サイズが実質的に減少するという、驚くべき予想外の結果を示す。