(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1,4−β−D−ガラクトース残基、1,5−α−L−アラビノース残基またはその組み合わせの一次分枝オリゴマーを有する散在性α−1,2結合ラムノース残基を有する、1,4−結合ガラクツロン酸(GalA) およびメチルガラクツロネート(MeGalA)残基糖骨格を含む化合物であって、メチルガラクツロネート:ガラクツロン酸の比が2:1〜1:2である、1,4−β−D−ガラクトース残基、1,5−α−L−アラビノース残基またはその組合せのオリゴマーが糖全体のモル含有量の少なくとも10mol%である、1,4−β−D−ガラクトースおよび1,5−α−L−アラビノース残基が2:1〜3:1の比で存在する、化合物。
1,4−結合ガラクツロン酸とメチルガラクツロネート残基骨格が、糖全体のモル含有量の55〜85mol%を示し、交互性のα−1,2結合ラムノースおよびα−1,4−結合GalA残基の分枝ヘテロポリマーが、糖全体のモル含有量の1〜6mol%を示し、一次分枝のオリゴマー1,4−β−D−ガラクトースが、糖全体のモル含有量の6〜15mol%を示し、一次分枝のオリゴマー1,5−α−L−アラビノースが、糖全体のモル含有量の2〜8mol%を示すことがガスクロマトグラフィー/質量分析によって特徴づけられる、請求項1または2記載の化合物。
メチルガラクツロネートとガラクツロン酸を、ガラクトースに対して4:1〜7:1の比で有するか、または、メチルガラクツロネートとガラクツロン酸を、ガラクトースに対して4:1〜8:1の比で有する、請求項1〜6のいずれかに記載の化合物。
微生物エンドトキシン、農業用殺虫剤、農業用除草剤、銅、重金属、蛋白質、窒素性化合物または上記のいずれかの組み合わせを実質的に含まない、請求項1〜7のいずれかに記載の化合物。
ガレクチン−3を産生する、ストレスを受けたLX2不死化ヒト肝臓星状細胞の処理に用いた場合に、ガレクチン−3の発現を低下させるか、またはガレクチン−3の分泌を実質的に低下させることができる、請求項1〜9のいずれかに記載の化合物。
エンドトキシンによりストレスを受けた単球からのサイトカインTNFαの分泌を低下させることができ、がん細胞の増殖またはがん細胞のアポトーシスまたは細胞毒性モデルにおけるアポトーシスを阻害せず;
B6−F10黒色腫細胞、THP−1単球/マクロファージ細胞、初代末梢血単核球(PBMC)またはMRC−5肺線維芽細胞に対して細胞傷害性を示さない、
請求項1〜10のいずれかに記載の化合物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、非経口および経腸用の医薬化合物として使用するための修飾ペクチンおよび修飾ペクチンの製造方法が必要とされている。さらに、これらの化合物は、他の細胞および組織に対する非毒性を維持しながら炎症および線維症を阻害するのに必要な薬理学的な性質を有していることが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の局面は、化合物または、治療剤に用いるための非経口投与または経腸での投与用の、許容される薬学的担体中に化合物を含む組成物に関する。
【0007】
いくつかの態様において、本化合物は、多糖であり、アラビノガラクト−ラムノガラクツロナン化合物(本明細書中では、化合物Gとよぶ)として定義されてよい、選択的に解重合した、骨格が主に1,4−結合ガラクツロン酸 (GalA) とメチルガラクツロネート (MeGalA) 残基からなり、それより少ない骨格組成として、交互性1,4−結合GalAと1,2−結合ラムノース (Rha)からなり、これは、主に1,4−β−D−ガラクトース (Gal)、1,5−α−L−アラビノース(Ara) 残基またはその組み合わせを含む、任意の番号のオリゴマー側鎖に交互に結合している、分枝ヘテロポリマーである。他の側鎖の少量の成分としては、キシロース(Xyl)、グルコース(Glu)、フコース(Fuc) または上記いずれかの組み合わせが挙げられる。
【0008】
いくつかの態様において、本発明のアラビノガラクト−ラムノガラクツロナン化合物(化合物G)は、エンドトキシンでストレスを与えた単球からのTNF−αサイトカインの分泌を低下させることができる。いくつかの態様において、化合物Gは、活性化マクロファージによるTNFαの分泌を少なくとも25%低下させることができる。
【0009】
いくつかの態様において、ガスクロマトグラフィー/質量分析による特徴付けによって、1,4−結合ガラクツロン酸とメチルガラクツロネート残基骨格は、糖全体のモル含有量の55〜85mol%を表していてよく、交互性α−1,2結合ラムノースとα−1,4−結合GalA残基との分枝ヘテロポリマーは、糖全体のモル含有量の1〜6mol%を表していてよく、一次分枝のオリゴマー1,4−β−D−ガラクトースは、糖全体のモル含有量の6〜15mol%を表していてよく、一次分枝のオリゴマー1,5−α−L−アラビノースは、糖全体のモル含有量の2〜8mol%を表していてよい。
【0010】
いくつかの態様において、1,4−β−D−ガラクトース残基、1,5−α−L−アラビノース残基またはその組み合わせのオリゴマーは、全糖モル含有量の少なくとも8mol%を示す。
【0011】
いくつかの態様において、1,4−β−D−ガラクトースおよび1,5−α−L−アラビノース残基は、本発明のアラビノガラクト−ラムノガラクツロナン化合物中に、2:1
〜3:1の比で存在する。
【0012】
いくつかの態様において、本発明の化合物は、最大値の87%に対して、40%〜70%の程度のメトキシ化を有する。
【0013】
いくつかの態様において、本発明の化合物はメチルガラクツロネートを、ガラクツロン酸に対して2:1〜1:2の比で有する。
【0014】
いくつかの態様において、本発明の化合物はメチルガラクツロネートとガラクツロン酸を、ガラクトースに対して4:1〜7:1の比で有する。
【0015】
いくつかの態様において、本発明の化合物中の1,4−β−D−Galおよび1,5−α−L−Ara残基のmol%は、糖全体のモル含有量の10%を超えていてよく、それぞれは約1:1〜3:1の比率であってよい。
【0016】
いくつかの態様において、本化合物は、ガラクトアラビノ−ラムノガラクツロネート (化合物G)として定義される、SEC−RIおよび/またはSEC−MALLS方法による測定によって、2,000〜80,000または20,000〜70,000または5,000〜55,000ダルトンの分布の平均分子量を有する分枝ヘテロポリマーである多糖である。
【0017】
いくつかの態様において、本化合物は、複数の投与経路、非限定的な例としては静脈内、皮下、関節内、吸入および経口による投与用の治療剤に併用しうる程度に、平均分子量が、例えば約2,000〜約80,000Dに低下した溶解度の高い修飾多糖であってよい。
【0018】
いくつかの態様において、本化合物は、微生物エンドトキシン、農業用殺虫剤、農業用除草剤、銅、重金属、蛋白質、窒素性化合物またはその任意の組み合わせを実質的に含まなくてよい。
【0019】
いくつかの態様において、本化合物は、天然の、高度に分枝した、最小限に加工された、高度にメトキシ化されたUSPペクチンであってよく、これは、任意の植物源、例えば非限定的な例としては柑橘類、リンゴまたはテンサイ由来であってよい。
【0020】
いくつかの態様において、本化合物は、天然の、高度に分枝し、最小限に加工され、高度にメトキシ化されたUSPペクチン、例えば8〜12%のペクチンを含有するリンゴ絞りかすから製造されたものから合成されうる。
【0021】
いくつかの態様において、本化合物は、1,4−β−D−Galおよび1,5−α−L−Araに富む側鎖を保存しながら、グリコシド結合したメトキシ化α−1,4−結合GalAの十分に調節された特定の加水分解により合成されうる。1,4−β−D−Galおよび1,5−α−L−Araの量は、GC−MS(ガスクロマトグラフィー−質量分析)法およびAELC−PAD(陰イオン交換液体クロマトグラフィー−バルスアンペロメトリック検出)法により定量的に測定しうる。
【0022】
いくつかの態様において、本化合物は、1〜100mMのCu
++のようなさらなる還元型遷移金属イオンの存在下または非存在下において、アスコルビン酸および/または過酸化物から生じたイオン化OH
−によるグリコシド結合の標的化過酸化開裂による分解による、解重合を含む方法によって製造しうる。Ca
++またはFe
++のような他の遷移金属も、この目的のために使用しうる。
【0023】
いくつかの態様において、解重合された化合物は、最高87%の初期レベルと比較して40〜70%のメトキシ化度を有する解重合化合物を生成するよう、調節され限定された脱メトキシ化を開始するように、2〜60℃の温度で10〜30分間、8〜10のpHに暴露することができ、中程度メトキシ化化合物とよばれる。ガラクツロン酸の完全なメトキシ化は、およそ87%程度であると考えられる。
【0024】
いくつかの態様において、解重合組成物は、残留するエンドトキシン、銅および重金属、農業汚染物ならびに他の不純物の除去のために、高温の酸性アルコール(例えば30〜80℃の範囲の温度)による複数回の洗浄に付すことができる。
【0025】
いくつかの態様において、本化合物は、LX2不死化ヒト肝臓星状細胞を処理するのに用いた場合、生存率の低下を誘導しない。
【0026】
いくつかの態様において、本化合物は、ガレクチン−3を産生するストレスを受けたLX2不死化ヒト肝臓星状細胞を処置するのに用いた場合、細胞表面におけるガレクチン−3の発現を低下させうるかまたはガレクチン−3の培地中の分泌を減少させうる。
【0027】
本発明の局面は、α−1,2結合ラムノースおよびα−1,4−結合GalA残基の交互オリゴマーの分枝ヘテロポリマーに結合する1,4−結合ガラクツロン酸(GalA)およびメチルガラクツロネート(MeGalA) 残基の骨格を含むアラビノガラクト−ラムノガラクツロナン化合物に関し、ここでラムノース残基は、1,4−β−D−ガラクトース残基、1,5−α−L−アラビノース残基またはその組み合わせの一次分枝のオリゴマーを有し、ここで該化合物は、エンドトキシンでストレスを与えた単球からのTNFαサイトカインの分泌を減少させることができ、該化合物はがん細胞アポトーシスまたは細胞傷害性モデルにおいて、がん細胞の増殖を阻害せず、該化合物は単球または活性化単球に対して細胞傷害性を示さない。
【0028】
いくつかの態様において、本化合物は、がん細胞において、がん細胞の増殖を阻害せず、500μg/mlまでの濃度では、単球または活性化単球に対して細胞傷害性を示さない。
【0029】
いくつかの態様において、ガスクロマトグラフィー/質量分析によって、1,4−結合ガラクツロン酸およびメチルガラクツロネート残基骨格は、糖全体のモル含有量の55〜85mol%を示してよく、α−1,2結合ラムノースおよびα−1,4−結合GalA残基の交互分枝ヘテロポリマーは糖全体のモル含有量の1〜3mol%を示してよく、一次分枝のオリゴマー1,4−β−D−ガラクトースは糖全体のモル含有量の6〜15mol%を示してよく、一次分枝の1,5−α−L−アラビノースオリゴマーは、糖全体のモル含有量の2〜8mol%を示してよい。
【0030】
いくつかの態様において、1,4−β−D−ガラクトース残基、1,5−α−L−アラビノース残基またはその組み合わせは、糖全体のモル含有量の少なくとも8mol%を示しうる。
【0031】
いくつかの態様において、1,4−β−D−ガラクトースおよび1,5−α−L−アラビノース残基は、2:1の比で存在しうる。
【0032】
いくつかの態様において、本化合物は、5kDa〜55kDaまたは2kDa〜70kDaの範囲の平均分子量を有しうる。
【0033】
いくつかの態様において、本化合物は、最大87%の範囲のメトキシ化のうち、40〜70%の範囲の程度のメトキシ化を有していてよい。
【0034】
いくつかの態様において、本化合物は、メチルガラクツロネートを、ガラクツロン酸に対して2:1〜1:2の比で有しうる。
【0035】
いくつかの態様において、本化合物は、メチルガラクツロネートとガラクツロン酸を、ガラクトースに対して4:1〜8:1の比で有しうる。
【0036】
いくつかの態様において、本化合物は、LX2不死化ヒト肝臓星状細胞の処置に用いた場合、生存率を低下させない。
【0037】
いくつかの態様において、本化合物は、ガレクチン−3を産生する、ストレスを受けたLX2不死化ヒト肝臓星状細胞の処置に用いた場合、細胞表面におけるガレクチン−3の発現を実質的に低下させるか、ガレクチン−3の培地中への分泌を実質的に低下させうる。
【0038】
本発明の局面は、治療用製剤で使用するための薬学的に許容される担体中に化合物を含む組成物に関する。いくつかの態様において、本組成物は、静脈内、皮下を介して非経口的にまたは経口経路で投与しうる。
【0039】
いくつかの態様において、本組成物はさらに治療剤を含みうる。例えば、該治療剤は、抗酸化化合物、抗炎症剤、ビタミン、機能性補助食品またはそれらの組み合わせでありうる。
【0040】
いくつかの態様において、本組成物は、非アルコール性脂肪性肝炎、線維症、免疫性および自己免疫障害またはがんの腫瘍性症状の処置に用いうる。
【0041】
いくつかの態様において、本組成物は、肝線維症、腎線維症、肺線維症または心線維症の処置に用いうる。
【0042】
いくつかの態様において、本発明は、ガレクチンが少なくとも部分的に病因に関連している炎症性および線維化障害の、非限定的な例としては、臓器、非限定的な例としては肝臓、腎臓、肺および心臓における線維化抑制活性の亢進を含む処置において用いる組成物または化合物または処置方法に関する。
【0043】
いくつかの態様において、本発明は、治療活性を有する組成物または化合物または、非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH) に関連のある病態、および疾患、非限定的な例としては脂肪肝(幹細胞中の脂肪の集積)、肝細胞の気球状変性、肝臓における炎症性浸潤およびコラーゲンの沈着または線維症の活性を低下させる方法に関する。
【0044】
いくつかの態様において、本発明は、ガレクチンが少なくとも部分的に病因に関連している炎症性および自己免疫性障害、非限定的な例としては、関節炎、リウマチ性関節炎、喘息および免疫性腸疾患の処置に用いられる組成物または化合物または処置方法に関する。
【0045】
いくつかの態様において、本発明は、ガレクチンが少なくとも部分的に病因に関連している腫瘍性症状(例えばがん)を、ガレクチンの増加により促進されるプロセス、非限定的な例としては、腫瘍細胞浸潤、転移および新血管新生を阻害することによる処置において用いる組成物または化合物または処置方法に関する。
【0046】
いくつかの態様において、本発明は、腫瘍由来のガレクチン蛋白質の作用により少なくとも部分的に阻害される浸潤性T細胞の、より効果的に腫瘍細胞を特定し、殺す能力を強化することにより腫瘍の進行を遅延化、停止または逆行させる際に使用する組成物もしくは化合物またはT細胞の能力の亢進方法に関する。
【0047】
いくつかの態様において、治療上有効量の解重合した化合物または組成物は、非限定的に、様々な抗炎症薬、ビタミン、他の医薬および機能性食品剤と組み合わせて、併用可能および効果的であり得る。
【0048】
いくつかの態様において、治療上有効量の解重合した化合物および組成物は、治療上有効量の様々な抗酸化化合物、例えばグリチルリジン、アスコルビン酸、L−グルタチオン、システアミンなどまたはその組み合わせと組み合わせて、併用可能および効果的であり得る。
【0049】
いくつかの態様において、治療上有効量の本化合物および本組成物は、培養細胞株、非限定的な例としては、細胞株LX−2または他の星状細胞において、細胞培養培地に添加した場合に、非毒性であり、アポトーシスを誘導しない。
【0050】
いくつかの態様において、治療上有効量の本化合物および本組成物は、細胞培養培地に添加した場合に、哺乳類培養細胞、非限定的な例としては、B16−F10黒色腫細胞、THP−1単球/マクロファージ細胞、初代末梢血単核球(PBMC)およびMRC−5肺線維芽細胞に対して細胞傷害性を示さない。
【0051】
いくつかの態様において、治療上有効量の本化合物または本組成物は、炎症促進性サイトカイン、非限定的な例としてはTNF−αの産生により測定される、細胞株に対する抗炎症性効果を有し得る。
【0052】
いくつかの態様において、本化合物または本組成物の、肝線維症の処置についての有効性は、本化合物または組成物を、動物モデル、例えば非限定的な例としては、化学毒であるチオアセタミドを腹腔内注射したラットに投与することによって決定でき、形態計測的な定量により決定される肝臓コラーゲン含量の、少なくとも5〜25%の減少を引き起こす。
【0053】
他の態様において、本組成物のNASHの処置についての有効性は、本化合物または本組成物をNASHの動物モデル、例えば非限定的な例としては、糖尿病にした、高脂肪食を摂取させたマウスに投与することにより決定でき、肝細胞の脂肪集積の少なくとも5%の低下、気球状変性を示す肝細胞数の少なくとも5%の減少、炎症性細胞の肝臓浸潤の少なくとも5%の減少、および形態計測的な定量により決定される(シリウスレッド染色陽性により評価)、肝臓コラーゲン含量の少なくとも5%の減少を引き起こす。
【0054】
他の態様において、治療上有効量の解重合化合物または組成物を、NASHの動物モデルに投与することにより、生検の標準的な病理組織診断により決定される、線維症の減少、NAFLDグレードによる疾患活性の低下またはα平滑筋アクチン発現細胞数の低下、他の炎症性メディエーターの低下または脂質輸送および代謝酵素、例えば非限定的な例としてはCD36の減少を引き起こしうる。
【0055】
他の態様において、治療上有効量の解重合化合物または組成物を投与することにより、mRNAレベルまたはガラクトース結合蛋白質の発現のいずれかによって測定される、ガレクチン−3の低下を引き起こし得る。
【0056】
他の態様において、治療上有効量の解重合化合物または組成物を投与することにより、動物における、同系または異型腫瘍の、増殖、浸潤、転移の減少または自然免疫系に対する感受性の上昇を引き起こしうる。
【0057】
本発明のこれらの局面および他の局面は、以下の詳細な記述により明らかになる。
【0058】
本発明はさらに、添付の図面によって説明され、ここで、似た構造は、複数の図面を通じて、同じ数字により言及される。本明細書中に示す図は、必ずしも一定の縮尺ではなく、本発明の原理を例示するにあたって協調されていてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明の詳細を本明細書中に記載するが、開示している態様は単に、様々な形態の態様を取り得る本発明を説明するためのものであり、限定するものでないことは理解されるべきである。さらに、本発明の様々な態様に関連する実施例のそれぞれは例示を目的とするものであり、限定を目的とするものではない。さらに、図は必ずしも一定の縮尺である必要はなく、特定の構成要素の詳細を示すようにいくつかの特徴が誇張されていてもよい。さらに、図中に示す任意の測定、特定などは、例示を意図するためのものであって、限定を目的とするものではない。したがって、本明細書に記載の特定の構造的および機能的な詳細は、限定のためのものと解するべきではなく、本発明を様々な形で用いることを当業者に示すための例示としてのみ解するべきである。
【0061】
本明細書での文献の引用は、引用する文献のいずれかが適切な先行技術であることまたは引用する文献が本願請求項の特許性に重要であると考えられることを認めるものではない。
【0062】
特にことわらない限り、本明細書中の全ての%表記は重量/重量をさす。
【0063】
ペクチンは、ポリマー性ガラクツロン酸の骨格と、周期的散在性のラムノース分子および、様々な糖、例えばガラクトース、アラビノース、フコース、グルコースなどの周期的な側鎖からなる、多様化した大きな糖ポリマーからなる。ガラクツロン酸分子は、残基が高い割合(%)で、メトキシ化により天然に修飾される。
【0064】
大きいペクチン糖ポリマーは、その天然の形態(植物から直接抽出された後の形態)およびポリマーを加水分解および化学的に修飾する様々な程度の修飾後の形態において、これまで研究されている。修飾ペクチンは、そのゲル化および様々な食物製品に粘度を与えることのできる性質のために、食物産業において広く使用されているが、医薬化合物としての可能性についても評価されている。
【0065】
植物由来ペクチン素材は、そのままであっても修飾されていても、動物およびヒトに経口投与した場合について広く評価されている。経口投与したそのままのペクチンおよび修飾ペクチンの様々な効果、例えば、満腹、体重減少、腸管運動の変化および腸機能への効果、例えば便秘症および下痢症に対する有益な効果が知られている。経口摂取したペクチン物質は、通常の胃の酵素によって消化されず、腸によって吸収されない。したがって、経口吸収後、血流に吸収されるペクチンは、ほとんど〜全く存在しない。
【0066】
ペクチンおよび修飾ペクチン分子の、動物およびヒトの全身循環および臓器中の効果を評価するために、非経口化合物として用いうる、修飾ペクチンを開発する試みがなされている。柑橘類混合物由来のペクチンは、疾患の細胞培養モデルおよび動物モデル、特にがん細胞および動物のがんモデルにおいて評価が行われている。修飾された柑橘類ペクチンの使用は、動物の細胞株において、細胞傷害およびアポトーシスを引き起こすことが示されている。かかる修飾柑橘類ペクチンは、悪性症状に有用であることが示されている (米国特許第8128966号参照)。
【0067】
ガレクチン
ガレクチン (ガラプチンまたはS−レクチンとしても知られる)は、β−ガラクトシドに結合するレクチンのファミリーである。一般名としてのガレクチンは、動物レクチンのファミリーについて、1994年に提唱された(Barondes, S.H., et al.: Galectins: a family of animal beta-galactoside-binding lectins. Cell 76, 597−598, 1994)。該ファミリーは、β−ガラクトシドに対する親和性を示し、配列要素が共通している、少なくとも1つの特徴的な糖鎖認識ドメイン(CRD)を有することにより定義される。1つのペプチド鎖中に、付加的なアミノ酸を2、3個しか持たないCRDを持つガレクチンもあれば、連結ペプチドによって結合した2つのCRDを有するものもあり、あるガレクチン(ガレクチン−3)は、様々なタイプのドメインに結合する1つのCRDを有する。ガレクチン糖鎖認識ドメイン (CRD) は、約135個のアミノ酸からなるβ−サンドイッチである。2つのシートはわずかに曲がっており、6ストランドで凹面、5ストランドで凸面を形成する。凹面は糖が結合する溝を形成する(Leffler H, Carlsson S, Hedlund M, Qian Y, Poirier F (2004). "Introduction to galectins". Glycoconj. J. 19 (7−9): 433−40)。
【0068】
広範囲の生物学的現象、例えば発生、分化、形態形成、腫瘍転移、アポトーシス、RNAスプライシング等がガレクチンに関連していることが示されている。しかし、ガレクチンがこれらの機能を発揮する機構、特に糖認識の機構についてはほとんど知られていない。
【0069】
一般的に、糖ドメインは、糖蛋白質のガラクトース残基に結合する。少なくとも15の哺乳類ガレクチン蛋白質は、1または2の糖ドメインを直列型で有することが同定されている。
【0070】
ガレクチン蛋白質は、細胞内空間に存在し、そこで複数の機能に割り当てられ、細胞外空間に分泌されることが明らかになっている。細胞外空間において、ガレクチン蛋白質は、機能の低下または亢進を引き起こし得る糖蛋白質との相互作用、または内在性膜糖蛋白質受容体の場合は、細胞シグナルの修飾を引き起こし得る相互作用の促進を含む複数の機能を有し得る(Sato et al 「Galectins as danger signals in host-pathogen and host-tumor interactions: new members of the growing group of Alarmins.」 In 「Galectins」, (Klyosov, et al eds.), John Wiley and Sons, 115-145 , 2008, Liu et al 「Galectins in acute and chronic inflammation」, Ann. N. Y. Acad. Sci. 1253: 80-91, 2012)。細胞外空間において、ガレクチンはさらに、細胞−細胞間および細胞−細胞マトリクス間の相互作用を促進し得る(Wang et al., 「Nuclear and cytoplasmic localization of galectin-1 and galectin-3 and their roles in pre-mRNA splicing.」 In 「Galectins」 (Klyosov et al eds.), John Wiley and Sons, 87-95, 2008)。
【0071】
ガレクチンは、ホモ二量体化を促進するドメインを有することが示されている。したがって、ガレクチンは、糖蛋白質間の「分子糊」として作用しうる。ガレクチンは、複数の細胞コンパートメント、例えば核および細胞質で見られ、細胞外に分泌され、そこで細胞表面および細胞外マトリクス糖蛋白質と相互作用する。分子相互作用の機構は、局在に依存しうる。ガレクチンは、細胞外空間において糖蛋白質と相互作用しうるが、細胞内空間では、ガレクチンと他の蛋白質の相互作用は、蛋白質ドメインを介することが一般的である。細胞外空間では、細胞表面受容体の結合が、受容体シグナルもしくはリガンドとの相互作用能を上昇もしくは減少させうる。ガレクチン蛋白質は、多数の動物およびヒトの疾患状態、例えば非限定的な例としては、炎症、線維症、自己免疫および腫瘍に関連する疾患において著しく増加する。ガレクチンは、疾患の病因に、以下に記述するように直接関連する。例えば、ガレクチンに依存しうる疾患の非限定的な例としては、急性および慢性炎症、アレルギー性障害、喘息、皮膚炎、自己免疫疾患、炎症性および変形性関節症、免疫介在性神経疾患、複数の臓器(肝臓、肺、腎臓、膵臓および心臓が含まれるが、これらに限定されない)の線維症、炎症性腸疾患、アテローム性動脈硬化、心不全、眼性炎症性疾患、多種のがんが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
疾患状態に加え、ガレクチンは、ワクチン接種、外因性病原およびがん細胞に対する免疫細胞の応答の調節において、重要な調節分子である。
【0073】
当業者であれば、ガレクチンに結合しうる化合物および/またはガレクチンの糖蛋白質との親和性を変化、ガレクチン間のヘテロもしくはホモ型の相互作用を低下、またはさもなければ、ガレクチン蛋白質の機能、合成もしくは代謝を変化させうる化合物が、ガレクチン依存性疾患において重要な治療効果を有しうることは理解されるであろう。
【0074】
ガレクチンは、他の有機化合物、例えばラクトース [(β−D−ガラクトシド)−D−グルコース]、N−アセチルラクトサミン、ポリ−N−アセチルラクトサミン、ガラクトマンナン、ペクチン断片ならびに他のガラクトース含有化合物に結合するガラクトース残基に対して親和性を示す。ガラクトースは、それ自体ではガレクチンには結合しないか、または検出できない程度の弱い結合しか示さないことは留意すべきである。
【0075】
ペクチンおよび修飾ペクチンは、おそらく巨大分子に見られるガラクトース残基含有に基づいて、ガレクチン蛋白質に結合することが示されており、この場合、巨大分子は、動物細胞の場合、糖蛋白質よりもむしろ複合多糖である。
【0076】
ガレクチン蛋白質は、炎症、線維症疾患および腫瘍において著しく増加することが示されている(Ito et al. "Galectin-1 as a potent target for cancer therapy: role in the tumor microenvironment", Cancer Metastasis Rev. PMID: 22706847 (2012), Nangia-Makker et al. Galectin-3 binding and metastasis, Methods Mol Biol. 878: 251-266, 2012, Canesin et al. Galectin-3 expression is associated with bladder cancer progression and clinical outcome, Tumour Biol. 31: 277−285, 2010, Wanninger et al."Systemic and hepatic vein galectin-3 are increased in patients with alcoholic liver cirrhosis and negatively correlate with liver function", Cytokine. 55: 435−40, 2011)。さらに、実験により、ガレクチン、特にガレクチン−1およびガレクチン−3は、これらのクラスの疾患の病因に直接関連することが示されている(Toussaint et al., "Galectin-1, a gene preferentially expressed at the tumor margin, promotes glioblastoma cell 9asion.", Mol Cancer. 11:32, 2012, Liu et al 2012, Newlaczyl et al., "Galectin-3 - a jack-of-all-trades in cancer", Cancer Lett. 313: 123-128, 2011, Banh et al., "Tumor galectin-1 mediates tumor growth and metastasis through regulation of T-cell apoptosis", Cancer Res. 71: 4423-31, 2011, Lefranc et al., "Galectin-1 mediated biochemical controls of melanoma and glioma aggressive behavior", World J. Biol. Chem. 2: 193-201, 2011, Forsman et al., "Galectin 3 aggravates joint inflammation and destruction in antigen-induced arthritis", Arthritis Reum. 63: 445-454, 2011, de Boer et al., "Galectin-3 in cardiac remodeling and heart failure", Curr. Heart Fail. Rep. 7, 1-8, 2010, Ueland et al., "Galectin-3 in heart failure: high levels are associated with all-cause mortality", Int J Cardiol. 150: 361-364, 2011, Ohshima et al., "Galectin 3 and its binding protein in rheumatoid arthritis", Arthritis Rheum. 48: 2788−2795, 2003)。
【0077】
したがって、ヒトの障害、例えば炎症性疾患、線維症疾患またはそれらの組み合わせに関連するガレクチンに影響を与え、治療に用いうる程度に信頼性のある安全性プロファイルを有する治療剤を特定する必要がある。
【0078】
化学的に修飾されたペクチンおよび組成物
化学的に修飾された、リンゴペクチン由来のペクチンを含む組成物ならびに、炎症性線維症の細胞アッセイにおいて活性を有する該修飾リンゴペクチンの製造方法は、前に記述されている [米国特許第8236780号参照、参照によりその全体が本明細書中に包含される]。該修飾ペクチンは、細胞の生存率に何の影響も与えずに、肝臓由来の線維形成細胞を減少させることが示されている。
【0079】
本発明の局面は、化学的に修飾されたペクチンまたは修飾ペクチン組成物および抗炎症性および抗線維形成効果を有する、修飾ペクチンまたは修飾ペクチン組成物の製造方法に関する。いくつかの態様において、該修飾ペクチンは、ガラクトアラビノ−ラムノガラクツロネートとして化学的に定義される多糖である。
【0080】
対象への非経口または経腸投与用組成物を、本明細書中に開示する。いくつかの態様において、本組成物は、許容される薬学的担体中に本発明のペクチン誘導体または修飾ペクチン化合物を含みうる。用語「薬学的に許容される担体」は、本発明の化合物とともに対象(例えば患者)に投与しうるものであり、治療量または有効量の、本化合物を送達するのに十分な量で投与した場合に、その薬理学的活性を破壊せず、非細胞傷害性である担体またはアジュバントをさす。
【0081】
「薬学的に許容される担体」は、任意の全ての生理学的に併用し得る溶媒、分散媒、例えばヒトアルブミンまたは架橋ゼラチンポリペプチド、被覆剤、抗菌および抗真菌化合物、等張剤、例えば塩化ナトリウムまたはグルタミン酸ナトリウムおよび吸収遅延化合物等をさす。薬学的に活性な物質のためにかかる媒体および化合物を使用することは当該分野でよく知られていることである。担体は経口、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または硬膜外投与(例えば注入または点滴による投与)に適していることが好ましい。投与経路によって、該有効化合物を不活化し得る酸および他の天然の条件の作用から保護するための物質中に該化合物を被覆していてもよい。
【0082】
いくつかの態様において、修飾ペクチン化合物は、医薬グレードのペクチンより得られる。
【0083】
いくつかの態様において、本発明の修飾ペクチンは、以前のペクチン化合物と比較した場合に、抗炎症性および/または抗線維形成効果が増大していてよい。様々な態様において、本発明の修飾ペクチンは、全身性の炎症に関連する蛋白質であり、急性期応答を刺激するサイトカインのグループの主要なメンバーである、腫瘍壊死因子(TNF−α、カケキシン(cahexin))の分泌を阻害し得る。腫瘍壊死因子は、主に活性化マクロファージにより産生される。様々な態様において、本発明の修飾ペクチンは、細胞毒傷害性を示さない。様々な態様において、本修飾ペクチンまたは修飾ペクチン組成物は、細胞傷害性を示さずに、強い抗炎症正および抗線維症性質を示す。これは、医薬グレードの修飾ペクチンは、ヒト炎症性疾患、線維症疾患、腫瘍性疾患またはそれらの組み合わせの処置において重要な効果を示しうることを示唆する、新規な予期できない効果の組み合わせを示すものである。
【0084】
局面の一において、必要としている対象において、ガレクチンが関連している1以上の疾患、障害または症状を処置する(例えば、制御、軽減、回復または進行を遅延化させる)または予防する(例えば発症を遅延させるかまたは発症の危険性を低下させる)方法を特徴とする。かかる方法には、該対象に有効量の本発明の化合物または本発明の化合物を含む組成物を投与することが含まれる。
【0085】
本明細書中で用いる用語「有効量」は、単独で、または治療剤と組み合わせて、非経口、皮下、吸入、関節内、眼性または経口製剤としてまたはガレクチン依存性の炎症性、線維症または腫瘍性疾患の動物またはヒトに投与した場合に、以下の様々な態様で示すような、疾患の活性低下をもたらす、化合物の量をさす。
【0086】
「投与」は、経口または非経口、例えば静脈内、皮下、局所、経皮、皮内、経粘膜、腹腔内、筋肉内、嚢内、眼窩内、心臓内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注入および点滴をさす。
【0087】
いくつかの態様において、ガラクトアラビノ−ラムノガラクツロネート化合物は、ガレクチン蛋白質に対する主要結合体を構成しうる末端のガラクトース残基を有する。残りの側鎖組成はガレクチン蛋白質との相互作用を安定化または亢進し、それにより該化合物の治療作用を増強し得る。ガレクチンとの相互作用が、化合物Gがその治療作用を発揮する唯一の機構でなくてもよい。推測に束縛されるものではないが、本発明の分枝ガラクトアラビノ−ラムノガラクツロネート化合物は、ガレクチン蛋白質と相互作用し、ガラクトースまたはガラクトースの小分子誘導体には見られない幅広い治療効果を有し得る。
【0088】
いくつかの態様において、本発明の化合物は、ガラクトアラビノ−ラムノガラクツロネート (本明細書中では、「化合物G」ともよぶ)として化学的に定義される、断続的に交互性のα−1,4−結合GalAおよびα−1,2−結合ラムノース (Rha) の短い領域を有する、主にホモポリマーの1,4−結合ガラクツロン酸 (GalA) 分子とメチルガラクツロネート(MeGalA) 残基からなり、ここで該Rhaユニットはさらに側鎖に結合することを特徴とする骨格を有する分枝ヘテロポリマーである。これらの側鎖は、主に1,4−β−D−ガラクトース残基 (Gal)および/または1,5−α−L−アラビノース残基 (Ara)からなる。GalおよびAra側鎖に、他の糖、例えばL−キシロース (Xyl)、D−グルコース (Glu) およびL−フコース (Fuc) 残基が少量存在し得る。本明細書中で、用語「骨格」は、多糖の主要鎖またはαまたはβグリコシド結合により連続的に結合する糖部分を有する、出発多糖の主要鎖由来の鎖をさす。骨格は、連続的な鎖に沿って様々な位置でそこに結合する付加的な単糖を含んでいてよい。
【0089】
いくつかの態様において、化合物Gは、植物多糖の、化学的に制御、修飾された天然の分枝ヘテロポリマーであり、その中には、USPペクチン物質として市販されているものもある。これらの天然ペクチン物質は、40,000ダルトン(D)から、1,000,000を超えるまでの範囲の平均分子量の高い、粗製混合物である。一般的なUSPペクチンは、ほとんどが柑橘類、リンゴおよびテンサイ由来であるが、他も利用可能である。
【0090】
いくつかの態様において、化合物G組成物は、2,000〜80,000Dの平均分子量を有していてよい。いくつかの態様において、化合物Gの平均分子量は20,000〜70,000 Dの範囲であり得る。具体的な例では、ガラクトアラビノ−ラムノガラクツロネートは、5,000〜55,000Dの平均分子量を有し得る。該ガラクトアラビノ−ラムノガラクツロネート化合物は、好ましくは、リンゴペクチンの天然ペクチン物質から、化学的および物理的な処理ならびに精製により得られる。しかし、化合物Gに類似の化合物は、柑橘類、サトウダイコンペクチンおよび他の植物から、適当な抽出および化学的プロセシングにより得られる。
【0091】
態様の一において、分枝ヘテロポリマーである、選択的に解重合したガラクトアラビノ−ラムノガラクツロネート (化合物G)は、2,000〜80,000または20,000〜70,000または5,000〜55,000Dの平均分子量を有していてよく、これはSEC−RIおよびMALLS法により決定される。本明細書中で用いる用語「解重合」は、例えば、多糖を化学的に処理した場合に生じる、多糖骨格の部分的、選択的または完全な加水分解をさし、これにより、元の多糖と比較してサイズの低下した断片が生じる。
【0092】
化合物Gの製造方法
本発明の局面は、選択的に解重合したガラクトアラビノ−ラムノガラクツロネートの製造方法に関する。いくつかの態様において、本発明の方法は、主にガラクトースおよびアラビノースからなる側鎖の構造および/またはβガラクトース特性およびガラクトース結合能を保存し、ガラクトアラビノ−ラムノガラクツロネート化合物中のガラクトース結合部分の割合の上昇を意図した方法を含む。いくつかの態様において、該方法により、複数の投与経路、非限定的な例としては静脈内、皮下、吸入、関節内、眼性または経口経路用の治療用製剤に併用しうるように平均分子量が低下したガラクトアラビノ−ラムノガラクツロネートを製造しうる。
【0093】
いくつかの態様において、本化合物は、柑橘類、リンゴまたはテンサイを包含するがそれらに限定されない任意の植物源に由来しうる、天然の、高度に分枝し、最小限度に加工され、高度にメトキシ化されたUSPペクチンから合成されうる。
【0094】
いくつかの態様において、本化合物は、天然の、高度に分枝し、最小限度に加工され、高度にメトキシ化されたUSPペクチン、例えば8〜12%のペクチンを含有するリンゴ絞りかすから製造されたものから合成されうる。
【0095】
いくつかの態様において、本化合物は、1,4−β−D−Galおよび1,5−α−L−Araに富む側鎖を保存しながら、グリコシド結合したメトキシ化α−1,4−結合GalAの十分に調節された、特定の加水分解により合成されうる。1,4−β−D−Galおよび1,5−α−L−Araの量は、GC−MS(ガスクロマトグラフィー−質量分析)法およびAELC−PAD(陰イオン交換液体クロマトグラフィー−パスルアンペロメトリック検出)法により定量的に測定しうる。
【0096】
いくつかの態様において、該化合物は、還元型の遷移金属イオン、例えば1〜100mMのCu
++の存在下で、アスコルビン酸および/または過酸化物から産生されるOH
ーイオンによるグリコシド結合の標的化過酸化切断(β脱離反応として知られる)により分解される解重合を含む方法により製造し得る。他の遷移金属として、Ca
++またはFe
++もまた、この目的のために使用し得る。
【0097】
いくつかの態様において、解重合した化合物は、2〜60℃の温度にて、10〜30分間、8〜10の範囲のpHに暴露させて、制御された部分的脱メトキシ化を開始させ、最初の約87%のレベルと比較して、メトキシ化が40〜70%程度の選択的に中程度に解重合した化合物を産生し得る。生じた化合物は、中程度メトキシ化化合物とよんでよい。ガラクツロン酸の完全なメトキシ化は約87%程度と考えられる。
【0098】
いくつかの態様において、本発明の選択的に解重合した多糖は、LAL法による評価により、100EU以下または300EU以下のエンドトキシンレベルを有していてよい。
【0099】
いくつかの態様において、本発明の選択的に解重合した多糖は、全窒素量により評価して、0.05%以下の窒素性不純物を含んでいてよい。
【0100】
いくつかの態様において、解重合組成物は、残存エンドトキシン、銅および重金属、農業混入物および他の不純物を取り除くために、熱酸性アルコール(30〜80℃)により複数回洗浄してよい。
【0101】
使用
いくつかの態様において、本発明の化合物の治療活性は、該化合物上に存在する複数のβガラクトースおよびアラビノース部分に由来しうる。かかる部分は、炎症性、線維形成および腫瘍性プロセスにおいて高く発現するガレクチン蛋白質(例えばガラクトース結合蛋白質)に結合する細胞表面の細胞性糖蛋白質および細胞外マトリクスを模倣している。ガレクチン−3の発現は、複数の臓器、例えば非限定的な例としては、肝臓、腎臓、心臓および肺の炎症および線維形成に重大であることが示されている。したがって、その活性を調節することにより、病理学的プロセスの阻害および逆行を引き起こしうる。
【0102】
他の態様において、本発明の選択的解重合多糖は細胞傷害性を示さず、細胞培養系においてアポトーシスを誘導しない。本発明の選択的解重合多糖は、それ自体として、これまでに報告されている、他の修飾ペクチン製剤とは異なる(米国特許第8,128,966号参照)。
【0103】
他の態様において、本発明の選択的解重合多糖は、末梢血単核球(PBMC) および他の炎症性細胞株に対して抗炎症性効果を有していてよい。例えば、化合物Gは、サイトカイン遺伝子もしくは蛋白質、例えば非限定的な例としては、TNF−αの発現または誘導因子に対する応答を低下させうる。炎症および修復のプロセスは、免疫系の細胞および、複雑で相互接続したイベントのカスケード中の、多くの炎症性メディエーターを含む複数の種類の細胞と関連しうる。急性炎症は、終結するかまたは慢性期に進行し得、慢性期には、様々なヒトの臓器、非限定的な例としては肝臓、肺、腎臓、心臓および膵臓で見られる、損傷の後期段階である線維症を引き起こしうる。
【0104】
臓器の慢性炎症は、線維化組織の集積を引き起こすことがしばしばである。実際、複数の原因となる病因による炎症の最終的な結果は通常、線維症および結果としての臓器不全である。これは例えば、肺、心臓、腎臓、膵臓および肝臓において明らかである。複数のエビデンスにおいて、臓器線維症の病因の重大な因子として、ガレクチン蛋白質、特にガレクチン−3が挙げられている。例えば、ガレクチン−3ノックアウトヌルマウスは、肝毒素に対する肝臓の線維化、気管内ブレオマイシンに対する肺線維化に耐性を示し、腎線維症、心線維症および慢性膵炎のモデルとして使用しうる (Henderson et al., 「The regulation of inflammation by galectin-3」, Immunol Rev. 230: 160-171, 2009, Iacobini et al., 「Galectin-3 ablation protects mice from diet-induced NASH: a major scavenging role for galectin-3 in liver」, J. Hepatol. 54: 975-983, 2011, Lopez et al., 「Gene expression profiling in lungs of chronic asthmatic mice treated with galectin-3: downregulation of inflammatory and regulatory genes」, Mediators Inflamm., 823279. Epub 2011, Kolatsi-Joannou et al., 「Modified citrus pectin reduces galectin-3 expression and disease severity in experimental acute kidney injury」, PLoS One. 6(4): e18683, 2011)。
【0105】
「線維症」は、任意の臓器の障害をさし、例えば、硬変、腎線維症、肝線維症、卵巣線維症、肺線維症、消化管系または胃の線維症および類線維腫のような細胞性障害が挙げられるがこれらに限定されない。用語「線維症」は、細胞外マトリクスによる被包により、組織傷害から引き起こされる病理学的プロセスおよび該プロセスの結果である、瘢痕組織の病理学的形成の両方をさす。
【0106】
「硬変」は任意の臓器の障害をさし、例えば、腎硬変、肝硬変、卵巣硬変、肺硬変、消化管系または胃の硬変のような細胞性障害が挙げられるが、これらに限定されない。用語「硬変」は、線維症の進行した段階をさし、被包小結節の存在により定義される。本願明細書および特許請求の範囲の目的のためには、「硬変」は、線維症の1つの型とみなし、本明細書中の用語「線維症」の範囲内に含まれる。
【0107】
本明細書中で、「分子マーカー」、「生化学マーカー」、「バイオマーカー」または「マーカー」という語は、相互交換可能な形で用いられており、生物学的起源の個々の分子をさし、これらは、特定の代謝イベントにおいて、「読み出し情報」としてモニターし得る。これらのイベントは、「マーカー」の形成を伴い、その定量的なレベルは、イベントの進行を示唆するものとして用い得ることがしばしばである。
【0108】
肝臓において、線維症を引き起こす傷害は、様々な慢性障害に対する応答において起こり得、かかる慢性障害の例としては、アルコール乱用、薬物、毒素、脂肪沈着、ウイルス性B型およびC型肝炎、炎症およびコラーゲンの沈着または線維症を引き起こす慢性的および/または持続性のある臓器刺激を引き起こす何らかの代謝性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
肝線維症の進行した段階は硬変であり、広帯域の線維状組織により被包される肝細胞小結節の存在により定義される。線維症は、慢性傷害に対する体系的で同調的な応答であり、まとめて線維化とよばれる一連の同調した分子イベントにより進行する。例えば、線維症は、慢性的な哺乳類肝臓傷害の結果として発症しうる。慢性肝臓傷害の直後に見られる工程は、肝臓の星状細胞の活性化を引き起こし得る。星状細胞の活性化は、増殖、線維形成および硬変を引き起こし得る。星状細胞の活性化イベントは、特定の分子マーカー、例えばコラーゲンI、α1−平滑筋アクチン、βPDGF−受容体(増殖バイオマーカー)、マトリクスメタロプロテイナーゼおよびその阻害因子であるMMP2、MMP9、TIMP1およびTMP2 (マトリクス分解のマーカー)、種々のサイトカイン、例えば非限定的な例としてはTFG−β1 (線維形成のマーカー)によって特定しうる。線維症の進行は、個々のマーカーの定量的レベルにより評価しうる。線維症の低下は、様々な線維症の段階における個々のマーカーのレベルの低下により評価しうる。
【0110】
線維症の病態生理学的なスペクトルは、血清バイオマーカー、例えば非限定的な例としてはヒアルロン酸および他のコラーゲンの分解産物、サイトケラチン−18、および他の細胞骨格細胞蛋白質、メタロプロテアーゼIおよびIIの組織阻害因子、他の肝臓由来コラーゲン、マトリクスプロテアーゼおよびそれらの組み合わせと相関し得る。これらの化合物および/またはバイオマーカーは、免疫アッセイを用いて血清または肝臓組織中において測定でき、そのレベルは疾患の重症度および処置と相関した。
【0111】
線維症の病態生理学的なスペクトルはまた、血清バイオマーカー、例えば、非限定的な例としては、脂質または蛋白質起源の活性酸素産生物、脂質分子または複合物またはそれらの組み合わせに相関しうる。これらのバイオマーカーは、様々な方法、例えば免疫アッセイおよび電気泳動によって測定でき、そのレベルは疾患の重症度および処置と相関した。さらなるバイオマーカーとして、血清または尿蛋白質のプロテオミクス解析における全体的なシフトが挙げられる。
【0112】
線維症の病理学的スペクトルはまた、本願に記載されている、線維症を引き起こす慢性の代謝性炎症障害であるNASHの血清バイオマーカーと相関し得る。これらのバイオマーカーとしては、サイトカイン、例えば非限定的な例としては、TNF−α、TGF−βまたはIL−8、または、NASHの有無または重症度を示す血清成分 (これらには血清および尿マーカーが含まれる)またはその組み合わせの代謝プロファイルが挙げられる。免疫アッセイまたはLCマススペクトルによるプロテオミクス評価による、1以上のサイトカインバイオマーカーのプロファイルは、該疾患および該疾患の治療において経過観察するべきマーカーの評価を提供し得る。
【0113】
肝臓の線維症の病理学的スペクトルは、肝生検による病理組織学的な知見と相関していてよく、これには、コラーゲン沈着(類洞周囲、門脈、中心のコラーゲン沈着またはそれらの組み合わせがあげられるが、これらに限定されない)、門脈から中心への架橋性コラーゲン沈着、正常な構造を歪める肝細胞小結節、悪性形質転換に伴う肝細胞異型またはそれらの組み合わせのエビデンスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0114】
肝臓の線維症の病態生理学的なスペクトルはまた、線維症を引き起こす慢性肝臓疾患の原因と関連する、肝生検における他の病理組織学的知見と関連しうる。かかる知見には、肝細胞の異常(気球状変性; および細胞内ヒアリンおよび大滴性および小滴性脂肪またはそれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない)、内皮細胞、マクロファージまたは胆管細胞の以上および複数の種類の免疫性細胞、例えばリンパ球、単球および/または好中球の浸潤、またはその任意の組み合わせが含まれるがこれらに限定されるものではない。
【0115】
線維症の病態生理学的なスペクトルはまた、NASHの原因となる疾患に関連する、肝生検における病理組織学的知見を含みうる。かかる知見には、肝細胞内の脂肪、肝細胞毒性、非限定的な例としてはヒアリン体、炎症性細胞の浸潤(リンパ球および様々なサブセットのリンパ球および好中球が挙げられるが、これらに限定されない)、胆管細胞の変化、内皮細胞の変化、クッパー細胞マクロファージ数、コラーゲン沈着(類洞周囲、門脈、中心のコラーゲン沈着またはそれらの組み合わせがあげられるが、これらに限定されない)、門脈から中心への架橋性コラーゲン沈着、正常な構造を歪める肝細胞小結節、悪性形質転換に伴う肝細胞異型のエビデンスおよび様々な尺度ならびにNASHの重症度を等級付けするための、様々な知見の組み合わせを組み合わせる方法または上記いずれかの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されるものではない。かかる組織学的評価は、NASH診断の必須条件であってよく、そのため、治療の評価に一体的に関連しうる。
【0116】
線維症の病態生理学的スペクトルはまた、様々な分子の発現もしくは発現の変化および肝臓組織または様々な種類の細胞における局在を調べる、肝生検における組織病理学的知見を含みうる。適当な分子としては、様々なサイトカイン蛋白質が挙げられるがこれに限定されるものではない。関心のあるサイトカイン蛋白質としては、TGF−β、炎症性メディエーター、反応性代謝物スカベンジャー輸送蛋白質、例えば非限定的な例としてはCD36、およびガレクチン蛋白質、例えば非限定的な例としてはガレクチン−3蛋白質または上記いずれかの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0117】
線維症の臨床症状としては、該疾患のステージおよび重症度の臨床試験、該疾患の臨床的な徴候および症候および/または線維症より生じる医学的合併症が挙げられるが、これらに限定されるものではない。肝線維症のステージおよび重症度の臨床試験としては、血液学的試験(例えば、赤血球係数および/または形態、白血球係数および/または分化および/または形態が挙げられるがこれらに限定されない)、血清または血漿脂質、例えば非限定的な例としては、トリグリセリド、コレステロール、脂肪酸、リポ蛋白種および脂質過酸化種、血清または血漿酵素(アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)、アラニントランスアミナーゼ(ALT)、アルカリホスファターゼ(AP)、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ(GGTP)、乳酸脱水素酵素(LDH)およびアイソフォームが挙げられるがこれらに限定されない)、血清または血漿アルブミンおよび肝臓の合成能を示す他の蛋白質、ビリルビンまたは肝臓の代謝性副生成物除去能を示す他の化合物の血清または血漿レベル、血清または血漿電解質(ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、亜リン酸が挙げられるがこれに限定されない)、凝固プロファイル、例えば非限定的な例としては、プロトロンビン時間(PT)、部分トロンボプラスチン時間(PTT)、特定の凝固因子レベル、出血時間および血小板機能が上げられるが、これらに限定されるものではない。臨床試験にはまた、肝臓の構造、構造的な整合性または機能を評価する、非侵襲性および侵襲性の試験、例えば非限定的な例としては、コンピュータ断層撮影(CTスキャン)、超音波(US)、超音波エラストグラフィー(FibroScan) またはそれらの肝組織の弾性の他の測定法、磁気共鳴スキャンまたは分光測定、磁気共鳴エラストグラフィー、経皮もしくは皮膚針または経頸静脈的肝生検および組織学的評価(親和性色素または免疫組織化学を用いた様々な化合物についての染色が挙げられるがこれらに限定されない)、肝臓性門脈楔入圧勾配の測定または肝臓組織の線維症の重症度を評価する他の非侵襲性または侵襲性試験または上記いずれかの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
硬変まで進行した、進行線維症の臨床的徴候および症候としては、疲労、筋肉量の損失、クモ状血管腫、腹部疼痛、腹部膨張、腹水、消化管出血、他の出血性合併症、打撲しやすいことならびに出血斑、末梢性浮腫、肝腫大、結節性の硬い肝臓、傾眠、睡眠障害、錯乱および/または昏睡が挙げられる。線維症の医学的合併症は硬変に関連し、腹水、末梢性浮腫、食道および他の消化管の静脈瘤、消化管出血、他の出血性合併症、るいそうおよび筋消耗、肝腎症候群および肝臓性脳症が挙げられる。硬変に関連するさらなる線維症の合併症は、肝臓移植のリストにのること、または肝臓移植を受けることを確実にする程度に重症な合併症の進行である。
【0119】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD) および非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH)は、米国および欧州で一般的な肝臓疾患である。病理組織学的には、これらの疾患は、アルコール性肝臓疾患に類似しているが、アルコールをほとんどもしくは全く飲まない人々でも発症しうる。肝臓中の病理学的変化は、例えば肝細胞中の脂肪の集積、肝細胞変性、炎症性細胞の浸潤、過剰な線維状組織の沈着、肝細胞性小結節の形成、硬変、肝細胞がんのエビデンスおよびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0120】
NAFLDの主要な特徴は、炎症が最小の状態で肝細胞中に脂肪が集積することである。NAFLDは患者の血清中の肝臓トランスアミナーゼの上昇が軽度であるため、または、非侵襲性試験、例えばコンピュータ断層撮影または超音波では、脂肪肝とされる疑いがあるため、通常、肝生検に基づいて確認される。
【0121】
NAFLDの個人のサブセットは、NASHに罹患していることが明らかになっており、NASHは、炎症性細胞(例えば、好中球またはリンパ球が挙げられるが、これらに限定されない)の小葉、中心静脈および門脈領域への浸潤の進行、肝細胞への損傷、例えば非限定的な例としては、気球状変性のエビデンスをさらに示す脂肪肝である。このNASHの炎症状態は、線維状組織、例えば非限定的な例としてはコラーゲンの沈着を引き起こし、これにより、硬変、小結節形成、および/または肝細胞がんを引き起こし得る。
【0122】
NASHに罹患しているほとんどの人は、自分が健康であると感じ、肝臓に問題があることに気づいていないため、疾患の進行は潜行性である。症候がないにもかかわらず、NASHは重症になり得、肝臓中の線維状物質の沈着を引き起こし、これは、重度の瘢痕および/または硬変を引き起こし得、場合によっては肝細胞がんを引き起こし得る。
【0123】
NASHの肝臓傷害の原因は不明である。複数の論理が、その関連を示唆する実験データとともに提唱されている。これらの中には、インスリンの作用、脂肪細胞および肝臓に損傷を与え、炎症性細胞をさらにリクルートする他の炎症性細胞による炎症性サイトカインの産生および、肝細胞に損傷を与え、炎症を誘導する活性酸素基の産生を伴う肝細胞中の酸化ストレスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0124】
現在のところ、NASHまたは線維症に対する特定の治療法は存在しておらず、患者に対しては、一般的な健康についての勧告がなされるのみである。これらの中には、体重減少、バランスのとれた健康な食事をとること、身体的な活動を増やすことならびにアルコールおよび不必要な薬物を避けることが挙げられる。NASHの患者には、体重減少により、血清肝臓試験が改善し、組織学的な肝臓損傷のエビデンスが改善しうる場合もあるが、重症な肝疾患を逆行させるものではない。さらに、NASHの全ての患者が体重過多ではないことは留意すべきである。
【0125】
様々な実験的アプローチが、NASHまたは線維症の患者において評価されてきたか、または評価されており、これらの中には、抗酸化剤、例えばビタミンE、セレン、ベタインおよび抗糖尿病剤、例えばメトホルミン、ロシグリタゾンおよびピオグリタゾンの投与が挙げられるが、これらに限定されない。現在までの臨床結果は全て期待外れである。いくつかの態様において、本発明の化合物は、NASHまたは線維症の処置に使用しうる。本発明の化合物は、病因および疾患の進行に関連のあるガレクチン蛋白質を操作することにより有効であり得る。
【0126】
いくつかの態様において、本発明の化合物 (すなわち、化合物G) は、線維症に加え、脂肪性肝臓代謝においても臨床的に著しい効果を示し、炎症および線維症に加え、関連する病態についてはより臨床的に顕著な効果を示し得る。
【0127】
いくつかの態様において、本発明の化合物は、化学的毒素であるチオアセトアミド(TAA)によって、線維症、硬変および肝臓がんの発症を高めるアルコールの慢性消費の作用に似た病態を示す、線維症を誘発するラット線維症モデルにおいて、抗線維症作用を示す(
図13−14)。
【0128】
いくつかの態様において、本発明の化合物は、微生物エンドトキシンを用いてストレスを与え、主要なサイトカインであり、バイオマーカーである炎症性蛋白質であるTNF−αを産生するPBMC細胞を用いた試験管内モデルで見られるように、TNF−αの分泌を低下させることにより抗炎症作用を示す(
図16)。
【0129】
この発見に基づき、化合物Gは、単独またはヒトNASHの処置用として上述した他の化合物と組み合わせた、治療法として提唱されている。いくつかの態様において、本発明の化合物は、肝細胞脂肪集積、門脈内および小葉内の炎症性浸潤および/または線維症、例えば非限定的な例としては、類洞周囲空間におけるコラーゲン沈着、硬変の改善または逆行および肝細胞がんの進行の予防に使用し得る。
【0130】
NASHに加えて、線維症を引き起こし、硬変に進行しうる他の慢性肝疾患は複数存在する。慢性肝疾患としては、例えば、ウイルス感染性慢性肝炎(B型、C型およびD型肝炎)、慢性アルコール乱用、胆汁性疾患(例えば、硬化性胆管炎が挙げられるがこれに限定されない)、原発性胆汁性肝硬変、先天性蓄積疾患および金属蓄積疾患(例えば、ヘモクロマトーシスおよびウィルソン病)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0131】
いくつかの態様において、化合物Gは、原因にかかわらず、線維症を引き起こす全ての慢性肝疾患において有効であり得る。
【0132】
いくつかの態様において、化合物Gは、肝臓に特異的な星状細胞以外の種類の細胞によるコラーゲン沈着を引き起こす慢性炎症により起こる、肝臓以外の臓器、例えば、非限定的な例としては、肺、腎臓、心臓および膵臓の線維症の処置に有効であり得る。他の臓器において線維症の原因となる細胞は、前駆細胞、例えば非限定的な例としては組織常在性線維芽細胞、循環線維細胞を有する筋線維芽細胞、またはEMT−上皮間葉転換とよばれるプロセスにより産生される上皮細胞である。
【0133】
肺線維症は、様々な疾患、例えば、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患および慢性感染症における慢性炎症プロセスの結果として発症し得る。
【0134】
肺線維症は、通常、肺組織の硬化を引き起こし、それにより、肺機能の低下、例えば非限定的な例としては、肺の全容量、肺活量、強制呼気量および拡散能の低下を引き起こす。これらの機能の低下は、臨床的症候、例えば非限定的な例としては、息切れ、運動耐容能の低下、血中酸素レベルの低下を引き起こすガス交換の低下を引き起こしうる。最終的な結果は、胚移植が必要となる肺不全であり得る。現在のところ、肺線維症に対する薬理学的治療法は存在しない。
【0135】
腎線維症は、原因となる複数の疾患、例えば非限定的な例としては、糖尿病、尿路閉塞、高血圧、血管疾患および自己免疫疾患の結果として発症し得る。
【0136】
腎線維症は、進行して腎機能を阻害し得、その結果、尿路の排出量が減少し、毒性の代謝物の血流への集積が引き起こされる。腎線維症を伴う腎不全は、透析による外的な補助または腎臓移植を必要とする。腎線維症について、現在知られている薬理学的な治療は存在しない。
【0137】
進行性心不全は、複数の疾患、例えば非限定的な例としては、慢性高血圧、冠動脈疾患、心臓弁膜症および肥大性心疾患を伴う。心不全は、一部には、心筋中の線維状組織の沈着により起こり得、これは、ガレクチン−3の発現増加に原因として関連していることが示されているプロセスである。進行性心不全は、心臓の収縮性の低下、心房の拡大、心臓の拍出量の減少を引き起こし得、その結果として複数の症候、例えば浮腫、息切れ、腎機能低下、精神錯乱などを伴う。最終段階では、心不全は、機械的な心臓補助装置または心臓移植によってのみ処置しうる。
【0138】
膵臓の慢性炎症は、それに限定されるわけではないが、最も多いのは、アルコールの乱用によるものであり、膵臓の線維化および膵外分泌部および膵内分泌部の機能低下を引き起こし得る。外分泌機能の低下は、食物の吸収障害を引き起こし得、内分泌機能の低下は、内分泌障害、例えば糖尿病を引き起こし得る。現在のところ、膵線維症の薬理学的治療法は存在しない。
【0139】
ガレクチン蛋白質は、がん細胞において、複数の機能、例えば、非限定的な例としては、浸潤の亢進、化学療法に対する耐性化、転移の促進、血管新生の亢進および免疫系の回避を可能にすること、などを有することが示されている。
【0140】
大部分のがんは、ガレクチン蛋白質の発現量が増加する。本発明の化合物 (例えば化合物G)の投与によるガレクチンの阻害は、ガレクチンを発現するがん、例えば非限定的な例としては、皮膚がん(扁平上皮および黒色腫)、口腔がん、頭頸部がん、リンパ系のがん、血液細胞がん、消化管(食道、胃、小腸、結腸および直腸)がん、膵臓がん、胆管がん、肝臓がん、肺がん、乳がん、腎臓がん、卵巣がん、精巣がん、子宮頸がん、子宮がんおよび神経系のがんの治療に有効であり得る。
【0141】
本発明の局面は、ガレクチンが病因に関連する炎症性および線維症傷害の処置、例えば非限定的な例としては臓器、例えば非限定的な例としては肝臓、腎臓、肺および心臓における抗線維化活性の亢進に用いうる化合物または該化合物を含む組成物に関する。本発明の他の局面は、ガレクチンが病因に関連する炎症性および線維症障害の処置方法に関する。
【0142】
いくつかの態様において、本発明は、非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH)に関連する病理および疾患活性、例えば非限定的な例としては脂肪肝(肝細胞中の脂肪集積)、肝細胞の気球状変性、肝臓中の炎症性浸潤およびコラーゲンの沈着または線維症を低下させる治療活性を有する化合物、組成物またはその方法に関する。
【0143】
いくつかの態様において、本発明は、ガレクチンが病因に関連する炎症性および自己免疫障害、例えば非限定的な例としては、関節炎、リウマチ性関節炎、喘息および炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎およびクローン病)の処置に用いる化合物または該化合物を含む組成物に関する。
【0144】
いくつかの態様において、本発明は、ガレクチンが病因に関連する腫瘍性症状(例えばがん)を、ガレクチンの増加により促進するプロセス、例えば非限定的な例としては腫瘍細胞浸潤、転移および血管新生を阻害することにより、処置するのに用いる化合物または該化合物を含む組成物に関する。
【0145】
いくつかの態様において、本発明は、腫瘍由来のガレクチン蛋白質の作用に阻害される腫瘍浸潤性T細胞の能力を亢進させ、より効果的に腫瘍細胞を特定して殺すことにより腫瘍の進行を遅延化させるか、停止させるかまたは逆行させるのに使用する化合物または化合物を含む組成物に関する。
【0146】
いくつかの態様において、本発明は、特定の腫瘍抗原に対するワクチンとなり得るかまたは特定の免疫調節分子、非限定的な例としてはCTLA4、OX40、PD−1またはPD−Lを活性化または阻害しうる薬剤となり得る、腫瘍免疫療法と組み合わせて用い得る化合物、該化合物を含む組成物に関する。
【0147】
有効量の本発明の化合物または有効量の該化合物を含む組成物は、様々な経路、例えば繰り返しボーラス注入または持続注入としての静脈内注入、皮内注入、繰り返しボーラス注入または持続注入としての皮下注入、関節内注入を介した非経口投与、適当な製剤中での吸入投与または経口投与により投与しうる。
【0148】
投与量は、化合物の製剤、投与経路等に依存し、一般的には、日常試験において経験的に決定し、標的、宿主、投与経路等によって、必然的に変動し得る。
【0149】
「投与」は、経口または非経口、例えば静脈内、皮下、局所、経皮、皮内、経粘膜、腹腔内、筋肉内、嚢内、眼窩内、心臓内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注入および点滴をさす。
【0150】
本発明の化合物の実験動物への有効な非経口用量は、静脈内では、2mg/体重kg〜200mg/体重kgの範囲内であり得る。本発明の化合物の動物への有効な皮下注入用量は、2mg/kg〜200mg/体重kg、または腹腔内では2mg/kg〜200mg/kgであり、または経口投与では10mg/kgまたは50mg/kgまたは200mg/kgまたは1500mg/kgである。より高い濃度および低い濃度も考慮に入れうる。
【0151】
本発明の化合物のヒト対象に対する有効な非経口用量は、静脈内で0.2mg/kg〜20mg/体重kgの範囲であり得る。本発明の化合物のヒト対象への有効な皮下注入用量は、0.2mg/ kg〜50mg/体重kgの範囲であり、経口投与によれば、10mg/kg〜200mg/体重kgであり得る。上述したものよりも低い用量または高い用量が必要になる場合もある。任意の特定の患者についての特定の用量および処置レジメンは、様々な因子、例えば用いる特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康ステータス、性別、食事、投与時間、排出率、薬剤の組み合わせ、疾患、症状または症候の重症度および経過、患者の該疾患、症状または症候に対する性質、および処置する医師の判断に依存する。
【0152】
有効な非経口用量は、毎日(1回または分割用量で)、1週間に3回、1週間に2回または毎月、静脈内、皮内、皮下または医学専門家によって実施される、薬剤を投与するための他の経路によって投与しうる。
【0153】
本発明の化合物の実験動物またはヒトに対する有効な経口用量は、該化合物の胃および小腸を介する吸収を亢進する様々な賦形剤および添加剤とともに製剤しうる。
【0154】
有効な経口用量は、有効な非経口用量よりも、10倍から最大100倍までの用量であってよい。
【0155】
有効な経口用量は、毎日、1回または分割用量で、または1週間に2、3回または毎月投与しうる。
【0156】
本発明の化合物または本発明の化合物を含む組成物は経口;または静脈内注入;または発症している組織への直接注入、例えば関節に注入することにより投与しうる。いくつかの例において、本化合物または組成物は、局所的、例えば、点眼剤、経鼻スプレーまたは軟膏剤などにより投与しうる。経皮送達システムまたは吸入などの他の技術もまた使用しうる。
【0157】
いくつかの態様において、本明細書中に記載の化合物は、1以上の他の治療剤と共投与しうる。特定の態様において、かかる付加的な薬剤は、複数の投与レジメンの一部として、本発明の化合物とは別々に(例えば連続的に、例えば本発明の化合物の投与スケジュールと重なったスケジュールで)投与し得る。他の態様において、これらの薬剤は、単一の組成物中で、本発明の化合物とともに混合された、単一の剤形の一部であってもよい。さらに他の態様において、これらの薬剤は、本発明の化合物とほぼ同時に、別々の用量で投与してもよい。組成物が本発明の化合物と、1以上の付加的な治療用または予防用薬剤を組み合わせて含む場合、該化合物と付加的薬剤はともに、単剤療法レジメンで通常投与される用量の、約1〜100%、さらに好ましくは約5〜95%のレベルの用量で存在しうる。
【0158】
いくつかの態様において、治療上有効量の解重合化合物または組生物は、米国特許第7078064号に記載するように、治療上有効量の様々な抗酸化化合物(例えばグリチルリジン、アスコルビン酸、L−グルタチオン、システアミン等)と組み合わせて併用可能であり、有効であり得る。
【0159】
NASHおよび肝線維症の動物またはヒト対象に投与する有効量は、単独または他の治療剤と組み合わせて、非経口、皮下、吸入、関節内、眼性または経口製剤として投与した場合に、少なくとも10%の肝細胞の脂肪、気球状変性を示す肝細胞、浸潤した炎症性細胞の減少、NAFLD活性スコアの少なくとも1点の低下または少なくとも10%の、シリウスレッドによる組織学的染色により評価される、肝臓内のコラーゲン沈着の減少または線維状組織の肝臓中の沈着の進行の、少なくとも10%の遅延化を引き起こす、化合物の量をさす。
【0160】
NASHおよび肝線維症のヒト対象に投与する有効量は、NASHと関連する、血清中のバイオマーカーを少なくとも10%低下させるか、超音波またはMRエラストグラフィーにより評価される肝細胞の脂肪含量または肝臓の硬さを少なくとも10%改善させるか、または肝臓における代謝性機能または短絡を測定する肝臓機能試験において少なくとも10%改善させるか、または肝線維症および硬変から生じる臨床的症候および合併症、例えば非限定的な例としては、代謝および除去プロセスの低下(例えばビリルビンが挙げられるがこれに限定されない)、肝臓合成容量の低下(アルブミンおよび凝固蛋白質が挙げられるがこれに限定されない)、門脈圧亢進症および肝性脳症、から生じる症候および合併症を少なくとも10%減少させうる。
【0161】
NASHおよび肝線維症のヒト対象に投与する有効量は、対照である未処置のヒト対象群と比較して、臨床的パラメーターの改善または臨床的パラメーターの進行の低下、非限定的な例としては、NASHと関連する血清バイオマーカーの少なくとも10%の低下、超音波またはMRエラストグラフィーにより評価される肝細胞脂肪含量または肝臓の硬さの少なくとも10%の改善または肝臓における代謝機能または短絡を測定する肝機能試験における少なくとも10%の改善、または肝線維症および硬変から生じる臨床的症候および合併症、非限定的な例としては代謝および除去プロセスの低下(例えばビリルビンが挙げられるがこれに限定されない)、肝臓合成容量の低下(アルブミンおよび凝固蛋白質が挙げられるがこれらに限定されない)、門脈圧亢進症および肝性脳症の少なくとも10%の低下を示す。
【0162】
NASH以外の障害による肝線維症または硬変の動物またはヒト対象に投与する有効量は、単独または他の治療剤と組み合わせて、非経口、皮下、吸入、関節内、眼性または経口製剤として投与した場合に、例えば、シリウスレッドによる組織学的染色により評価される肝臓内のコラーゲン沈着の少なくとも10%の低下または線維状組織の肝臓中の沈着の進行の少なくとも10%の遅延化を引き起こす、化合物の量をさす。
【0163】
NASH以外の障害による肝線維症または硬変のヒト対象に投与する有効量は、単独または他の治療剤と組み合わせて、非経口、皮下、吸入、関節内、眼性または経口製剤として投与した場合に、例えば非限定的な例として、肝線維症と関連する血清バイオマーカーの少なくとも10%の低下または超音波またはMRエラストグラフィーにより評価される肝臓の硬さの少なくとも10%の改善または肝臓における代謝性機能または短絡を測定する肝機能試験における少なくとも10%の改善または肝線維症および硬変から生じる臨床的症候および合併症、例えば非限定的な例としては、代謝および除去プロセスの低下(ビリルビンが挙げられるが、これに限定されない)、肝合成容量の低下(アルブミンおよび凝固蛋白質が挙げられるがこれらに限定されない)、門脈圧亢進症および肝性脳症から生じる臨床的症候および合併症の少なくとも10%の低下を引き起こす、化合物の量をさす。
【0164】
NASH以外の障害による肝線維症または硬変のヒト対象に投与する有効量は、対照である未処置のヒト対象群と比較した場合に、臨床的パラメーターの改善または臨床的パラメーターの進行の低下、例えば非限定的な例としては、線維症に関連する血清バイオマーカーの少なくとも10%の低下または超音波またはMRエラストグラフィーにより評価される肝臓の硬さの少なくとも10%の改善または肝臓における代謝性機能または短絡を測定する肝機能試験における少なくとも10%の改善または肝線維症および硬変から生じる臨床的症候および合併症、非限定的な例としては、代謝および除去プロセスの低下(ビリルビンが挙げられるがこれに限定されない)、肝臓合成容量(アルブミンおよび凝固蛋白質が挙げられるがこれらに限定されない)、門脈圧亢進症および肝臓性脳症により生じる臨床的症候および合併症の少なくとも10%の低下を示す。
【0165】
腎線維症の動物またはヒト対象に投与する有効量は、対照である未処置の動物またはヒト対象群と比較した場合に、臨床的パラメーターの改善または臨床的パラメーターの進行の低下、例えば非限定的な例としては、組織学的に評価される腎線維症の少なくとも10%の低下または蛋白尿症の少なくとも10%の改善、または糸球体濾過率の少なくとも10%の改善または腎不全に関連する臨床的徴候および症候の少なくとも10%の改善を示す。
【0166】
肺線維症の動物またはヒト対象に投与する有効量は、対照である、未処置の動物またはヒト対象の群と比較して、臨床的パラメーターの改善または臨床的パラメーターの進行の低下、例えば非限定的な例としては、組織学的に評価される、肺線維状組織の少なくとも10%の低下、肺体積の少なくとも10%の改善、または呼気体積の少なくとも10%の改善または肺不全に関連する臨床的徴候および症候の少なくとも10%の改善を示す。
【0167】
心線維症の動物またはヒト対象に対する有効量は、対照である未処置の動物またはヒト対象の群と比較して、臨床的パラメーターの改善または臨床的パラメーターの進行の低下、例えば、非限定的な例としては、組織学的に評価される心線維状組織の少なくとも10%の減少、心収縮の10%の改善、または心拍出量の少なくとも10%の改善または心不全に関連する臨床的徴候および症候の少なくとも10%の改善を示す。
【0168】
膵線維症の動物またはヒト対象に対する有効量は、対照である未処置の動物またはヒト対照の群と比較して、臨床的パラメーターの改善または臨床的パラメーターの進行の低下、例えば、非限定的な例としては、組織学的に評価される膵臓線維状組織の少なくとも10%の減少、膵臓外分泌酵素の合成または分泌の5%の改善、または膵臓内分泌酵素、例えば非限定的な例としてはインスリンの少なくとも5%の改善、または膵不全に関連する臨床的な徴候および症候の少なくとも10%の改善を示す。
【0169】
がんの動物またはヒト対象に対する、単剤または他のがん化学療法、免疫療法または腫瘍ワクチンと組み合わせての有効量は、対照である未処置の動物またはヒト対象の群と比較して、臨床的パラメーターの改善または臨床的パラメーターの進行の低下、例えば、非限定的な例としては、腫瘍サイズの少なくとも10%の低下、または、腫瘍転移の数の少なくとも10%の減少またはがん細胞に対する免疫系の活性の少なくとも10%の低下、またはがんに関連する臨床的徴候および症候、例えば非限定的な例としては無増悪生存もしくは全生存率の改善または治療の副作用の低下またはクオリティオブライフの改善において、少なくとも10%の改善を示す。
【0170】
本発明の多くの態様が記載されているが、これらの態様は例示のためにすぎず、限定するものではないこと、ならびに、多くの変更および/または代替となる態様も当業者には明らかであることは理解されるべきである。例えば、工程は、所望の任意の順番で行ってよい(かつ、任意の所望の工程を追加してもよく、および/または任意の所望の工程を削除してもよい)。したがって、以下の特許請求の範囲は、本発明の精神および範囲内にある、かかる全ての変更および態様を網羅することを意図するものであることは理解されるべきである。
【0171】
本発明はさらに、以下の実施例に記載される。これらの実施例は例示のためにすぎず、本発明を限定するものと解されるべきでないことは理解されるべきである。
【実施例】
【0172】
参照として、本発明の選択的解重合生成物(化合物G)は、本明細書中の実施例1にしたがって製造される化合物をさし、化合物Dは、その全体が参照により本願に包含される、米国特許第7,893,252号に記載の方法にしたがって製造される、参照多糖をさす。化合物Hは、高分子解重合ペクチン多糖(90,000〜140,000D)であって、本明細書中の実施例1にしたがって製造されるものではなく、その全体が参照により本願に包含される、米国特許第8,236,780号に記載の方法により製造されるものをさす。化合物Sは、米国特許第8,128,966号に記載の方法により、USP柑橘類ペクチンから製造される、多糖をさす。本発明は、修飾ペクチンの製造方法およびがん処置における使用を提供する。その全体は参照により本明細書に包含される。化合物Tは、Amazon.comで購入する、市販のMCP「Thorne Research Fractionated Pectin Powder 5 OZ」をさす。
【0173】
実施例1: 化合物Gの製造
本発明の選択的解重合精製物を、
図1に示す方法により製造した。
【0174】
リンゴペクチンUSP HM (50kg)を水に溶解させて35〜85℃に加熱した。該溶液のpHをpH5〜7に調整するために、1M HClまたはNaOHを添加し、よく混合した。混合を、35〜85℃の設定温度で2時間続けた。必要ならば、1MNaOHまたはHClを添加して、pHを5〜7に再調整した。溶液を30℃に冷却した。30℃にて、pHを5〜7に調整した。
【0175】
CuSO
4をpH調製したペクチン溶液に添加し、CuSO
4の最終濃度を1 mMにした。1mMCuSO
4溶液を、10℃〜30℃の温度にて30分間混合した。
【0176】
1mM CuSO
4混合工程の30分間の終わりに、アスコルビン酸ナトリウム50gを添加し(所望の分子量を達成するために予め量を調製した)、5〜20分間混合した。溶液のpHを4〜7に維持しながら、H
2O
2を、ペクチン1kgあたり、最初は0.02mol/kgから開始し、最大1.0 mol/kgまで添加し(最初の出発ペクチンの分子量について量を予め調製した)、H
2O
2濃度を4時間維持した (定量試験, Sigma, St−Louisを用いた)。
【0177】
5M NaOHを該溶液に添加し、pH8〜10の溶液を得た。pH調整した溶液を、10〜30分間混合した。その後、濃HClを該pH調整溶液に添加し、該溶液のpHを4〜5に調整した。該溶液は、一度pHを4〜5に調整すると、2℃〜8℃にて2〜24時間混合を続けてよい。
【0178】
その後、溶液を30〜180分間、80℃に加熱し、Filter−Aid (Celite) 1〜5kgを該溶液に添加し、該溶液を添加したセライトとともに30分間撹拌した後、濾過した。濾過により生じた固体を廃棄した。
【0179】
濾液を真空下にて1.5〜3X に濃縮した後、pHを3〜5に調整した。熱エタノールまたはイソプロパノールを50% 重量で添加した。該混合物を1〜2時間撹拌して生成物を沈殿させた後、該混合物を濾過した。濾液を処分し、白色から灰白色の沈殿が残った。
【0180】
冷96% EtOHを該溶液に添加した後、生じたスラリーを30分間撹拌した。該溶液を濾過し、該濾液を処分した。該96%EtOHスラリー工程を繰り返した後、最終の濾過および白色〜灰白色の沈殿の回収を行った。
【0181】
この工程を最終生成物として、以下の実施例2、3、4および5に記載する解析による評価により、
図2に示すような分子構造を一般的に有する組成物を得る。
【0182】
実施例2: MALLSによる平均分子量の解析
ポリマーの平均分子量を独立して予測するZIMMプロットを作製するために、多角度光散乱検出システムを使用し得る。MALLS法の原理は、光が小分子よりも大分子によってより強く散乱することに基づく。光散乱検出器の出力は、巨大分子の濃度と平均分子量の乗算に比例する。したがって、光散乱のピークの形態は非対称である。溶出体積に対する分子量を得、平均分子量および平均分子量分布を算出し得る。
【0183】
以下の表1および
図3A〜Bは、本発明の選択的解重合化合物のMALLSによる平均分子量の決定を示し、EDTA緩衝液中で、8%の標準偏差で平均分子量が約37キロダルトン (kD)であることを示す。
【表1】
【0184】
実施例3: 高速液体クロマトグラフィー (HPLC)による解析
分子ふるいクロマトグラフィー(SEC) は、HPLCを用いた、よく確立されたポリマーの特徴付け用技術である。SECは、屈折率(RI) 検出と組み合わせて、保持時間プロファイルにより、ポリマー性糖の平均分子量の決定に用いられる。
図4aは、標準多糖の溶出時間を示し、
図4bは、化合物Gの分子量プロファイルを示す。
【0185】
この解析および
図4に示されるように、化合物Gの平均分子量は、20〜70kDaの範囲である。
【0186】
実施例4: 化合物Gのグリコシル組成物の決定
グリコシル組成物解析は、試料から酸性メタノール分解により産生される、単糖メチルグリコシドのper−O−トリメチルシリル(TMS) 誘導体の、ガスクロマトグラフィーと、続く質量分析の組み合わせ(GC/MS)により行った。
【0187】
各試料を一定量取り、内部標準としてイノシトール20μgを含むチューブに添加した。その後、80℃にて、3Mメタノール中HClにおけるメタノール分解 (6時間)、その後、メタノール中の、ピリジンおよび無水酢酸により再−N−アセチル化(アミノ糖の検出用)の後、乾燥試料よりメチルグリコシドを製造した。その後、該試料を、Tri−Sil (Pierce)により80℃(0.3時間)にて処理することにより、per−O−トリメチルシリル化した。これらの手法は、Merkle and Poppe (1994) Methods Enzymol. 230: 1-15; York, et al. (1985) Methods Enzymol. 118:3-40に記載されている通りに行った。TMSメチルグリコシドのGC/MS解析は、Supelco EC-1 fused silica capillary column (30mx 0.25 mm ID)を用いて、5975B MSDと接続したAT 6890N GCを用いて行った。
【0188】
組成物解析の結果を以下の表に示す:
【表2】
【0189】
実施例5:グリコシド結合と構造のH1およびC13NMRによる決定
NMR分光測定により、個々の分子署名および結合が明らかになり、複雑な糖分子の解析フィンガープリントのタイプが提供される。二次元NMRスペクトルは、本発明の組成物、化合物Gの分子フィンガープリントを、化合物Sと比較して明らかにするために評価した。
【0190】
NMR分光測定のために、化合物Gおよび化合物Sの試料を、D
2O (99.96 % D) 0.7 mLに溶解させ、5−mm NMRチューブ (Wilmad)に移した。1−D プロトンおよび2−D TOCSY、NOESY、勾配層強COSY (gCOSY)、HSQCおよびgHMBC NMRスペクトルを、Varian Inova−500 MHz spectrometerを用いて343 K (70℃)にて得た。化学シフトを、内部アセトンと比較して測定した(oH=2.225 ppm, oC=31.07 ppm)。
【0191】
以下の表3は、化合物Gの2−D HSQC NMRによる、メチルガラクツロネートのガラクツロン酸に対する近似比、ならびにメチルガラクツロネートとガラクツロン酸の、ガラクトースに対する近似比を示す:
【表3】
【0192】
化合物Gの主要成分は、4−結合型ガラクツロン酸、4−結合型メチルガラクツロネートおよび4−結合型ガラクトースである。ラムノースがHSQCスペクトル中に存在することは明らかである。表4は、化合物GのNMRスペクトルの割当を含む。
【表4】
【0193】
図5aは、化合物Gの二次元NMRスペクトルを示し、
図5bは、化合物Sの二次元NMRスペクトルを示す。
【0194】
異なる試料の修飾ペクチン物質由来の二次元NMRスペクトルの比較は、異なる構造を比較するための強力な方法である。
【0195】
図5cは、化合物Gと化合物Sのスペクトルを重ねたものを示し、これにより、これら2つの化合物の2次元NMRスペクトルの顕著な差異が明らかになる。丸で囲んだ位置は、化合物Sではなく、化合物Gのスペクトルである。これにより、化合物Gと化合物Sの重要な構造的差異が示される。
【0196】
この解析により、異なる製造方法により生じる、化合物Gと化合物Sの間の明確な構造的差異が示される。これらの構造的な差異は、単糖組成物のみを測定する化学組成物解析では、著しい差異が見られない場合、二次元NMR解析により明らかになる。
【0197】
二次元NMRフィンガープリントは、複雑な分子構造の正確な評価として、化合物GのGMPバッチ解析の証明に含んでもよい。
【0198】
実施例6: 化合物Gの培養細胞株に対する細胞傷害性の決定
報告されている(米国特許第8128966号および米国特許第2012/0149658号) 修飾ペクチン化合物の、顕著な特徴の1つは、様々な種類の細胞株における細胞傷害性、例えばアポトーシスの誘導である。例えば、米国特許第8128966号には、がん細胞、例えばB16−F10黒色腫細胞株においてアポトーシスを誘導する修飾ペクチンが記載されている。
【0199】
米国特許第8128966号の結果と異なり、本発明の修飾ペクチンは、様々な細胞株、例えばB16−F10黒色腫細胞において、細胞傷害性を示さないことが示された。
【0200】
ヒト肝臓星状細胞株LX−2は、肝線維症の解析のツールとして通常用いられている。該LX−2細胞は、2% FC血清豊富な培地中で正常に増殖する。しかし、0.1% FC血清中で一度ストレスを受けると、LX−2細胞では、線維化肝臓で確立されているのと同様の病理学的変化が起こる。細胞傷害性は、化合物D、化合物Hおよび化合物Gを用いて評価した。
【0201】
図6aは、トリチウム標識チミジンの増殖LX−2細胞への取り込みを利用した増殖アッセイの結果を示す。1mg/mlの化合物D、化合物Hまたは化合物Gとともに細胞をインキュベートした場合、培養48時間におけるチミジンの取り込みにおいて、対照細胞と差異が見られなかった。
【0202】
図6bは、非生細胞により取り込まれ、生細胞により排除される生体色素を用いた細胞生存率アッセイの結果を示す。1mg/mlの化合物D、化合物Hまたは化合物Gとともに細胞をインキュベートした場合、培養48時間における細胞生存率において、対照細胞と差異が見られなかった。
【0203】
アポトーシスの有無はまた、アネキシンアポトーシスキット(eBioscience)を用いて評価した。アネキシンは、ホスファチジルセリン(PS)に優先的に結合するカルシウム依存性ホスホリン酸結合蛋白質のファミリーである。正常な生理学的条件では、PSは細胞膜の内葉に主として局在する。アポトーシスが開始すると、PSはそのリン脂質二重膜の非対称的な分布を失い、細胞外膜葉に局在が移動し、これは、細胞を貪食の対象とする標識である。PSは、膜の外側の表面に一度表れると、カルシウム依存的に、アネキシンVによって蛍光標識して検出しうる。
【0204】
図6cは、LX−2細胞の、アポトーシスを評価するためのFACS (蛍光活性化セルソーター)解析の結果を示し、化合物Dまたは化合物Gで処理した細胞は、対照細胞(ビヒクル処理)と比較して、アポトーシスが起こっていることが示されなかった。
【0205】
アポトーシスのさらなる試験として、LX−2細胞を、DNA断片化について調べた。
図6dは、化合物D(D1またはD2)、化合物Hまたは化合物Gで処理した細胞において、対照と比較して、DNA断片化が見られないことを示す。
【0206】
マクロファージは、炎症性および線維化プロセスに全体的に関連する。したがって、マクロファージ細胞株THP−1 (ATCC(登録商標)番号: TIB−202
TM) を、
図7に示すように、化合物Gの細胞傷害性に対する効果について評価した。該THP−1細胞株は、急性単球白血病(AML)の患者(ホモ サピエンス)の末梢血から回収した単球細胞株である (Tsuchiya S, et al. Induction of maturation in cultured human monocytic leukemia cells by a phorbol diester. Cancer Res. 42: 1530-1536, 1982参照)。
【0207】
該THP−1細胞を、10%FBS含有アッセイ培地に懸濁した。約25,300個/ウェルの細胞を、100μl/ウェルにて、96ウェルプレートに移した。24時間の時点で、培養培地を新鮮な培地に変え、細胞を一晩インキュベートした。試験化合物を10% FBS含有アッセイ培地中に連続希釈し、100μl/ウェルを、増殖している単球細胞THP−1に移した。最終アッセイ体積は、10% FBS、2X ゲンタマイシンおよび以下の試験物質を含み、200μl/ウェルであった: 本発明の化合物Gおよび化合物D、ガラクトマンナン産生物またはジゴキトキシンの存在下。該細胞を、試験化合物とともに3日間インキュベートした。他の試験のために、上清50μlを取った後、「CellTiter 96(登録商標)Aqueous One Solution」(Promega)15μlを添加し、細胞傷害性/増殖を測定し、生存率を、1〜7.5時間後、吸光度490nmにてモニターした。CellTiter 96(登録商標) AQueous One Solution 細胞増殖アッセイは、増殖、細胞傷害性または化学感受性アッセイにおいて、生細胞の数を決定するための比色定量法である。CellTiter 96(登録商標) AQueous One Solution試薬は、テトラゾリウム化合物[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム、内部塩; MTS]および電子カップリング試薬(フェナジンエトスルファート; PES)を含む。PESは化学安定性を増加させ、これにより、MTSと結合し、試験管内培養培地中の細胞生存率の決定に安定な溶液を形成することができる。
【0208】
図7は、THP−1細胞に適用する化合物Gの量を増やしても、細胞毒性を示さなかったことを示す。
【0209】
黒色腫細胞株B16−F10は、前に修飾ペクチンの活性用アッセイに用いられている。したがって、B16−F10細胞を、化合物Gの細胞傷害性に対する効果について評価した。
【0210】
黒色腫細胞株B16−F10 (ATCC(登録商標)番号: CRL−6475
TM) は、マウス(ムス ムスクルス(Mus musculus)、系統: C57BL/6J (Fidler IJ. Biological behavior of malignant melanoma cells correlated to their survival in vivo. Cancer Res. 35: 218-224, 1975参照)の皮膚黒色腫由来の、紡錘形の細胞と上皮様細胞の混合物である。
【0211】
黒色腫細胞B16−F10を、新鮮な培地(DMEM−10% ウシ胎仔血清(FBS))に移した。約2,900個/ウェル (継代4回)を、100μl/ウェルの量で、96ウェルに移し、一晩インキュベートした。24時間後、培養培地を新鮮な、血清非含有培地に交換し、一晩インキュベートした。試験化合物は、1% FBS含有アッセイ用培地に系列希釈し、ウェルごとに100μlを、増殖している黒色腫細胞に移した。最終アッセイ体積は、1% FBS、2X ゲンタマイシンおよび本発明の化合物G、化合物D、ガラクトマンナン産生物または5−フルオロウラシルを含み、200μl/ウェルであった。細胞を、試験化合物とともに3日間インキュベートした。細胞傷害性 / 増殖を、「CellTiter 96(登録商標) Aqueous One Solution」(Promega) 20μlを96ウェルに添加することで測定し、1時間後、吸光度OD 490nmにて測定した。該CellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Cell Proliferation Assay は、増殖、細胞傷害性または化学感受性試験において細胞数を決定するための比色定量法である。該CellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution試薬は、テトラゾリウム化合物[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム、内部塩; MTS]および電子カップリング試薬(フェナジンエトスルファート; PES)を含む。PESは化学安定性を増加させ、これにより、MTSと結合し、試験管内培養培地中の細胞生存率の決定に安定な溶液を形成することができる。
【0212】
図8は、B16−F10細胞に用いた化合物Gが、量を増加させても細胞傷害性をもたらさなかったことを示す。これは、前に報告されている他の修飾ペクチン化合物とは明らかに異なることを示す。
【0213】
PBMC細胞は、親水性の多糖であるフィコールを用いて、全血液から抽出した初代細胞である。末梢血単核球(PBMC: Peripheral blood mononuclear cell) は、炎症性および線維症のプロセスに一体的に関連する。したがって、PBMCを、化合物Gの細胞傷害性に対する効果について評価した。
【0214】
図9は、3つの異なるロット由来の化合物GをPBMCに適用しても、細胞傷害性が見られなかったことを示す。500μg/mLまでの濃度の化合物Gは、PBMCの増殖に対して何の影響も及ぼさなかった。細胞毒性は、MTS アッセイ (CellTiter 96(登録商標) AQueous One Solution Cell Proliferation Assay (MTS) Promega USA) を用いて測定した。
【0215】
図10は、培養肺線維芽細胞に適用する化合物Gの量を増加させても細胞傷害性をもたらさなかったことを示す。MRC−5細胞株は、ヒト肺組織由来の正常線維芽細胞である(ホモサピエンス (ヒト)男性(ATCC カタログ番号 CCL−171
TM)。以下の試験物質:本発明の化合物G、化合物D、ガラクトマンナン産生物の量を増加させて、CellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Cell Proliferation Assay (MTS)−(Promega USA)を用いて試験した。
図10は、化合物は、最大800μg/mL までは、試験管内の肺線維芽細胞の増殖に対して影響を及ぼさなかったことを示す。
【0216】
これらのデータをまとめると、化合物Gは、細胞に対して細胞傷害性を示さず、アポトーシスを誘導しないと考えられる。これは、報告されている修飾ペクチン物質の他の報告とは対照的である。
【0217】
実施例7: PBMC初代細胞を用いた抗炎症性効果の試験管内アッセイ
化合物Gを、その炎症性症状における生物学的活性についてアッセイした。炎症性プロセスには、複数の細胞が関連しており、活性化している。このプロセスにおける1つの重要な細胞種は、末梢血単核球 (PBMC)であり、試験管内モデルにおいて、抗炎症性として常に用いられる初代細胞であり、炎症性メディエータによって活性化されて炎症部位にリクルートされ、組織マクロファージへと形質転換し、炎症性プロセスを亢進させる。したがって、PBMCを、化合物Gの効果を評価するための試験管内モデルとして用いた。
【0218】
微生物エンドトキシン(微生物リポ多糖)でPBMCにストレスを与え、主要なサイトカインであり、炎症のバイオマーカーであるTNFαの分泌を測定することにより炎症用試験管内アッセイを行った。PBMCを10% FBS (Gibcoロット番号749413)、2X ゲンタマイシンおよびL−グルタミンを含むアッセイ培地に再懸濁した。PBMCを90μl/ウェルにて、アッセイプレートに移した (169,000個/ウェル)。アッセイ培地90μl/ウェルを、総体積180μl/ウェルになるように、約16時間アッセイプレートに添加した。LPS (微生物毒)をアッセイ培地中で連続希釈した。LPS 20μl/ウェルを最終体積が200μl/ウェルになるようにアッセイプレートに添加し、37℃にて7時間インキュベートした。60μl/ウェルを、TNF−α(腫瘍壊死因子α)ELISAアッセイ用に取った。試料60μlを、ELISA希釈液で1:4に希釈し(総体積240μl)、試料100μ/ウェルをELISAプレートに移した。ヒトTNFαをELISAプレートの標準として用いて、ELISA Development Kit (PeproTech、カタログ番号900−K25、ロット番号0509025)でh−TNF−αを解析した。ABTS Liquid Substrate 100μlを各ウェルに添加し、波長650nmにて補正を設定して、 吸光度を405nmにて読み取った。
【0219】
プレートの計画は以下に示す通りである:
【表5】
【0220】
図11は、h−TNFαELISAを行ったプレート364をグラフ化したものを示す。化合物Gは、0.5mg/mLにて、ストレス下のPBMC初代細胞によるTNF−αの分泌を50%減少させた。TNF−αの分泌の減少は、試験標準多糖である化合物Dまたは化合物Sよりも顕著に高かった。
【0221】
化合物D、化合物H、および化合物GのPBMCにおけるTNFα分泌阻害能を、
図12に示すように直接比較した。化合物Hは、米国特許第8236780号に記載されている方法を用いて製造した。化合物Dおよび化合物Hは、PBMCからのTNF−αの分泌を低下させることができなかった。それどころか、化合物HはTNF−αの上昇を示した。対照的に、化合物Gは、TNF−αの分泌を著しく阻害した。
【0222】
化合物Gは、炎症の試験管内モデルの強力な阻害剤であることが示された。かかる活性は、化合物Gとは異なる方法により製造された修飾ペクチン化合物である、化合物Sまたは化合物Hには見られないことが示された。したがって、実施例6および7の結果より、化合物Gは、他の公知のペクチン由来化合物について記載されていない、特有の非細胞傷害性および抗炎症性質を有する修飾ペクチンであることが示された。
【0223】
実施例8:肝臓LX−2星状細胞株における試験管内線維形成誘導
他の実験において、本発明者は、ヒト培養星状細胞株(LX−2)が、培養培地中のFC血清を、2%から0.1%に低下させることによって細胞にストレスを与えた場合、ガレクチン−1およびガレクチン−3を発現し、培地中に分泌することを示した。
【0224】
ヒト肝臓星状細胞株であるLX−2は、肝線維症の解析用ツールとして通常用いられる。LX−2細胞は、2% FC血清豊富培地中で正常に増殖する。しかし、0.1% FC血清中で一度ストレスを受けると、線維化肝臓において確立されているのと同様の病理学的変化が見られる。
【0225】
化合物Gはまた、LX−2星状細胞において、線維形成に関連のある分子またはバイオマーカー、例えば非限定的な例としてはコラーゲンI、II、III、IV、メタロプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ阻害因子およびサイトカインの上昇または低下を調節し得る。
【0226】
化合物Gは、肝臓マクロファージまたはクッパー細胞におけるサイトカインの発現および脂質および活性酸素種を調節し得る。
【0227】
化合物Gはまた、肝細胞遺伝子の発現、脂質および活性酸素種の取り込みおよび代謝を調節し得る。
【0228】
化合物Gの、細胞内および細胞外コンポーネントの両方におけるガレクチン−3の発現に対する化合物Gの影響を、
図13に示すように評価した。血清豊富培地では、ガレクチン−3は、無視できる程度の量しか産生されないのに対し、線維化の試験管内モデルであることが示されたモデルである、LX−2細胞(ヒト星状細胞株)を、ウシ胎仔血清枯渇増殖培地(血清を0.1%しか含まない培地)を用いてストレスを与えた場合、ガレクチン−3は0.1%血清培地の培養の約5〜7日目において発現が最大になる。免疫化学染色技術により、0.1%血清中でのストレス後6日目においてガレクチン−3の発現が上昇すること、化合物Gの添加により、ガレクチン−3の発現が顕著に抑制されることが示された。
【0229】
実施例11: TAA−誘導肝線維症モデルにおける治療の評価
本発明の化合物が、動物の生体において、抗線維症生物学的活性を示すかどうかを決定するために、生体内実現可能試験を行った。週に2回チオアセトアミド(TAA)を投与することによる化学毒性により、重症な肝線維症を誘導した。化合物Gは腹腔内投与で、1週間あたり90mg/kgにて4週間の間投与を行い、化合物Dは、1週間当たり180mg/kgの用量にて4週間投与した。実験デザインは
図14に示す。
【0230】
TAA処理から8週間後、線維化肝臓のシリウスレッド染色(ビヒクル対照)により、線維状組織の浸潤が拡大していることが示された(
図15)。対照的に、化合物Gで処理した動物の肝臓では、線維状物質が顕著に減少しており、いくつかの領域では殆ど消滅していた(
図15)。
【0231】
線維症のグレードとコラーゲンの%の統計学的な解析を、化合物Gおよび化合物Dで処理した動物を用いて行った(
図16)。
【0232】
図16は、動物を化合物Gおよび化合物Dで処理して、ビヒクル対照と比較した場合に、シリウスレッド染色された肝臓領域のデジタル形態計測解析により、線維状領域が統計学的に著しく低下していること、化合物Dと比較して、化合物Gではより顕著な低下が見られることを示す。
【0233】
これらの実験によって、化合物Gの抗線維症活性が示され、これは細胞株において示された抗炎症効果と相関する。
【0234】
実施例12:マウス脂肪肝NASHモデルにおける治療の評価
実験的な脂肪肝疾患およびNASHの治療における、ガレクチン結合糖の効果を調べた。糖尿病を誘導し、高脂肪の食事を与えたSTAMマウスを実験モデルとして用いた。これは、マウスが肝細胞脂肪集積、肝細胞傷害性のエビデンス、門脈および小葉の炎症性浸潤、類洞周囲の線維症、小結節形成を伴う進行した線維症、硬変、および一定の%の動物において、最終的には肝細胞がんを伴うNASHを一貫して発症することが示されているモデルである。NASHマウスは、
図17a〜bに示すように、試験の9〜12週目において、週に2回、静脈注入により処置を行った。
【0235】
STAMマウスは、化合物Gの効果を調べるのに用いた。該試験において、2つの化合物、化合物D(米国特許第7893252号に記載)および化合物Gを、肝臓中のNASHに関連する組織病理学的知見について調べた (
図17)。STAMモデルにおいて、新生児のマウスに、内分泌膵不全および糖尿病を引き起こす、トレプトゾトシンを注入した。4週齢にて、高脂肪食を導入し、これを実験の間続けた。このモデルにより、脂肪肝(FL)、NASH、線維症(Fib)を伴うNASH、小結節形成(N)ならびに、一定の割合(%)の動物において肝細胞がん(HC)を含む疾患の再現がもたらされる。この実験デザインにおいて、薬物療法は、8週において開始し、全部で4週間続けた。化合物Dは、通常生理食塩水に溶解させて、静脈内で、1週間に2回、120mg/kgの用量で投与した。化合物Gは、通常生理食塩水に溶解させて、静脈内で、1週間に2回、60mg/kgの用量で投与した。
【0236】
図18は、全ての群のマウスが、群ごとの差異なく、時間経過に伴って体重が増加したことを示す。この結果は、該動物に対する処置にほとんど毒性がなかったこと、ならびに検出された変化は動物の全体的な健康によるものではないと考えられることを全体的に示唆している。全体として、ビヒクル群では2個体 (2/12、17%)、化合物D処置群では1個体が死に (1/12、8%)、これらは全て肝疾患に関連していることが、獣医による死後検査により判断された。化合物G処置群では死んだ個体はいなかった。このように、マウスにおいて、毒性がないという生体内の活性は、試験管内の実験で見られた、細胞傷害性がないことと相関する。
【0237】
NAFLD活性スコアを用いて、疾患の重症度を評価し、 これは、NASHの病理の3つの局面、脂肪変性(0 (<5%)、1 (5〜33%)、2 (33〜66%)または3 (>66%))、肝細胞膨張(0 (なし)、1(少数)または3 (多数))および小葉炎症(0 (病巣なし)、1 (<2病巣/200x 視野)、2 (2〜4 病巣/200x 視野)、または3 (>4病巣/200x 視野))に点数を付けるものである。この点数の合計数がNAFLD活性スコアである。
【0238】
図19は、3つの実験群におけるNAFLD活性スコアの統計学的な値をグラフにしたものである。化合物Gで処置した動物では、NAFLD活性スコアが改善しており、化合物Dで処置した場合は効果がそれよりも少なかった。
【0239】
図20は、3つの実験群における、コラーゲンの割合(%)の統計学的な値をグラフにしたものである。シリウスレッドはコラーゲン繊維に対する特異的な親和性を有し、赤色に染める組織学的な染料であり、そのため、肝生検において、線維化の程度を評価するための定量ツールとなっている。3つの処置群のそれぞれから、肝臓組織病理学領域のシリウスレッド染色面積を、計算機支援形態計測解析により評価した。化合物Gで処置した場合は、早期および後期処置の群両方で、コラーゲンに比例する面積は顕著に低下した。化合物Dでの処置は、コラーゲン比例面積に対して、ビヒクル対照と化合物Gとの中間の効果を示した。これらの結果により、化合物Gでの処置が、NASHに罹患しているマウスにおける肝線維症を優位に低下させることが示された。
【0240】
NASHマウスにおける結果 (
図17〜20)を拡張し、肝線維症についてTAA処理マウスで見られる結果を確証する。さらに、これらの結果は、化合物Gの、NAFLD活性スコア(脂肪変性、肝細胞膨張および炎症性浸潤)の低下を伴う顕著な抗炎症効果を示す。NASHの動物モデルにおける、これらの抗炎症作用と抗線維症作用の組み合わせは、PBMC細胞培養モデルにおいて示された抗炎症作用と相関する。
【0241】
本明細書中に記載の実施例および態様は、例示目的のみのものであり、その様々な変化、変更は、本願の精神および範囲ならびに特許請求の範囲に含まれるべきである。本明細書で引用する全ての出版物、特許および特許出願は、参照により全ての目的について、その全体が参照により本願に包含される。