特許第6133902号(P6133902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6133902原油の直接処理のための溶剤脱歴および蒸気熱分解統合プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133902
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】原油の直接処理のための溶剤脱歴および蒸気熱分解統合プロセス
(51)【国際特許分類】
   C10G 55/04 20060101AFI20170515BHJP
   C10G 53/04 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   C10G55/04
   C10G53/04
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-554901(P2014-554901)
(86)(22)【出願日】2013年1月27日
(65)【公表番号】特表2015-508830(P2015-508830A)
(43)【公表日】2015年3月23日
(86)【国際出願番号】US2013023333
(87)【国際公開番号】WO2013112966
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2016年1月27日
(31)【優先権主張番号】61/591,783
(32)【優先日】2012年1月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511304464
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100197572
【弁理士】
【氏名又は名称】尼崎 匡
(72)【発明者】
【氏名】アブデヌール・ブラーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ラヒール・シャフィ
(72)【発明者】
【氏名】エッサム・サイード
(72)【発明者】
【氏名】イブラヒム・エイ・アバ
(72)【発明者】
【氏名】アブドゥル・ラーマン・ザフェール・アクラ
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−163996(JP,A)
【文献】 特開昭58−098387(JP,A)
【文献】 特開2005−200631(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/073226(WO,A1)
【文献】 特開昭52−023004(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0090020(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0095032(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0247500(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原油を直接処理してオレフィンおよび芳香族石油化学製品を生産するための溶剤脱歴および蒸気熱分解統合プロセスであって、
a.前記原油供給原料を補充用溶剤および任意選択で新しい溶剤と混合するステップ、
b.前記混合物を一次脱アスファルトおよび脱金属油相ならびに一次アスファルト相が形成される一次沈降タンクに移すステップ、
c.前記一次脱アスファルトおよび脱金属油相を、二次脱アスファルトおよび脱金属油相ならびに二次アスファルト相が形成される二次沈降タンクに移すステップ、
d.前記二次アスファルト相を前記一次沈降タンクに再利用し、追加の脱アスファルトおよび脱金属油を回収するステップ、
e.前記二次脱アスファルトおよび脱金属油相を、脱アスファルトおよび脱金属油分離ゾーンに送り、再利用溶剤流、ならびに実質的に溶剤不含の脱アスファルトおよび脱金属油流を得るステップ、
f.追加の再利用溶剤流および底部アスファルト相のフラッシュ分離のために、前記一次アスファルト相を分離器に送るステップ、
.蒸気の存在下で、前記実質的に溶剤不含の脱アスファルトおよび脱金属油流を熱分解して混合生成物流を生成するステップ、
.前記熱分解された混合生成物流を分離するステップ、
.前記分離された混合生成物流からオレフィンおよび芳香族化合物を回収するステップ、ならびに
.前記分離された混合生成物流から熱分解燃料油を回収するステップ、
を含む、前記統合プロセス。
【請求項2】
ステップ()が、
前記熱分解混合生成物流を複数の圧縮段階で圧縮するステップ、
前記圧縮された熱分解混合生成物流を苛性処理して、硫化水素および二酸化炭素の含量が低減した熱分解混合生成物流を生成するステップ、
硫化水素および二酸化炭素の含量が低減した前記熱分解混合生成物流を圧縮するステップ、
硫化水素および二酸化炭素の含量が低減した前記圧縮された熱分解混合生成物流を脱水するステップ、
硫化水素および二酸化炭素の含量が低減した前記脱水された圧縮熱分解混合生成物流から水素を回収するステップ、および
硫化水素および二酸化炭素の含量が低減した前記脱水された圧縮熱分解混合生成物流の残部から、ステップ()のようにオレフィンおよび芳香族化合物を得てかつ、ステップ()のように熱分解燃料油を得るステップ
を含む請求項1に記載の溶剤脱歴および蒸気熱分解統合プロセス。
【請求項3】
前記熱分解ステップのバーナーおよび/またはヒーター用の燃料として使用するために、硫化水素および二酸化炭素の含量が低減した前記脱水された圧縮熱分解混合生成物流からメタンを別に回収するステップをさらに含む、請求項2に記載の溶剤脱歴および蒸気熱分解統合プロセス。
【請求項4】
前記熱分解ステップが、蒸気熱分解ゾーンの対流部で脱アスファルトおよび脱金属油流を加熱するステップ、前記加熱された脱アスファルトおよび脱金属油流を蒸気留分および液体留分に分離するステップ、前記蒸気留分を蒸気熱分解ゾーンの熱分解部に送るステップ、および前記液体留分を排出するステップを含む、請求項1に記載の溶剤脱歴および蒸気熱分解統合プロセス。
【請求項5】
前記排出された液体留分が、ステップ()で回収された熱分解燃料油とブレンドされる、請求項4に記載の溶剤脱歴および蒸気熱分解統合プロセス。
【請求項6】
前記加熱された脱アスファルトおよび脱金属油流を蒸気留分と液体留分に分離するステップが、物理的および機械的分離に基づく気液分離装置を使って行われる、請求項4に記載の溶剤脱歴および蒸気熱分解統合プロセス。
【請求項7】
前記気液分離装置が、
入口部および移行部を有する予備回転要素であって、前記入口部が、流動流体混合物を受け入れる入口および曲線形導管を有する前記予備回転要素、
制御されたサイクロン型部であって、
前記曲線形導管および前記サイクロン型部を融合して前記予備回転要素に接合された入口、
前記サイクロン型部材の上端に配置された蒸気が通過する上昇管部、
を有する前記サイクロン型部、
ならびに液体が通過する液体収集器/沈降部
を含む、請求項6に記載の溶剤脱歴および蒸気熱分解統合プロセス。
【請求項8】
前記底部アスファルト相が、ステップ()で回収された熱分解燃料油とブレンドされる、請求項に記載の溶剤脱歴および蒸気熱分解統合プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2012年1月27日出願の米国特許仮出願第61/591,783号の利益を主張する。この開示は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、原油の直接処理によりオレフィンや芳香族化合物などの石油化学製品を生産するための溶剤脱歴および蒸気熱分解統合プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
低級オレフィン(すなわち、エチレン、プロピレン、ブチレン及びブタジエン)および芳香族化合物(すなわち、ベンゼン、トルエンおよびキシレン)は、石油化学製品および化学工業において広く使用される基本的な中間体である。熱分解、または蒸気熱分解は、典型的な例では、蒸気の存在下で、かつ、酸素非存在下におけるこれらの物質の形成のための主要なタイプのプロセスである。蒸気熱分解用の供給原料には、石油ガス、およびナフサ、ケロシンおよびガス油などの留出物を含むことができる。通常、これらの供給原料の入手可能性は、限られており、原油製油所において高価で、エネルギー大量消費型プロセスステップが必要となる。
【0004】
蒸気熱分解反応装置用の供給原料として重質炭化水素を使って調査を行った。従来の主要な重質炭化水素熱分解操作の主な欠点は、コークス形成である。例えば、重質液体炭化水素の水蒸気分解プロセスは、米国特許第4,217,204号で開示されている。この特許では、コークス形成を最小限にするために、溶融塩のミストが水蒸気分解反応ゾーン中に導入される。一例では、3.1重量%のコンラドソン残留炭素分を有するアラビア軽質原油を使って、溶融塩の存在下で、624時間にわたり熱分解装置の操作を継続できた。溶融塩の添加のない比較例では、水蒸気分解反応装置は、反応装置中でのコークス形成が原因で管が詰まり、たった5時間後には運転不能となった。
【0005】
さらに、蒸気熱分解反応装置用の供給原料として重質炭化水素を使ったオレフィンおよび芳香族化合物の収量と分布は、軽質炭化水素供給原料を使った場合とは異なる。重質炭化水素は、より高い鉱山局相関インデックス(BMCI)により示されるように、軽質炭化水素より芳香族化合物含量が多い。BMCIは、供給原料の芳香族性の測定値であり、以下のように計算される。
BMCI=87552/VAPB+473.5(sp.gr.)−456.8(1)
式中、
VAPB=容積平均沸点(ランキン目盛)、
sp.gr.=供給原料の比重。
【0006】
BMCIが小さくなると、エチレンの収量は、増加することが期待される。従って、蒸気熱分解でより高い収量で目的のオレフィンを得る一方で、反応装置のコイル部中でのより多くの望ましくない生成物およびコークスの形成を避けるために、通常、高パラフィン系または低芳香族系の原料の供給が好ましい。
【0007】
蒸気分解装置中での絶対コークス形成速度が、Cai et al.、「Coke Formation in Steam Crackers for Ethylene Production」、 Chem. Eng. & Proc.、 vol.41、 (2002)、 199−214、で報告されている。一般的には、絶対コークス形成速度は、昇順で、オレフィン>芳香族化合物>パラフィン類の順である(オレフィンは、重質オレフィンを表す)。
【0008】
これらの石油化学製品に対する増大する需要に対応できるようにするために、粗原油(raw crude oil)などの他のタイプの大量に入手可能な供給原料が、生産者にとって魅力的になっている。原油供給原料の使用は、精油所がこれらの石油化学製品生産のボトルネックになる可能性を最小化するか、または除くことができるであろう。
【0009】
蒸気熱分解プロセスは、よく発達し、その意図された目的に対しては適切であるが、供給原料の選択は、極めて限定されてきた。
【発明の概要】
【0010】
本明細書に記載のシステムとプロセスは、原油供給原料の直接処理を可能としてオレフィンおよび芳香族化合物を含む石油化学製品を生産するための、溶剤脱歴ゾーンと統合された蒸気熱分解ゾーンを提供する。
【0011】
原油の直接処理によりオレフィンおよび芳香族石油化学製品を生産するための溶剤脱歴および蒸気熱分解統合プロセスは、脱アスファルトおよび脱金属油流ならびに底部アスファルト相を生産するのに効果的な量の溶剤と共に原油の溶剤脱歴ゾーンへの装填、蒸気の存在下で脱アスファルトおよび脱金属油流の熱分解による混合生成物流の生成、混合生成物流の分離、オレフィンおよび分離された混合生成物流からの芳香族化合物の回収、および分離された混合生成物流からの熱分解燃料油の回収を含む。
【0012】
本明細書で使われる用語の「原油」は、従来の供給源からの全原油、いくつかの前処理を受けた原油を含むと理解されるべきである。また、原油という用語は、水−油分離;および/またはガス−油分離、および/または脱塩、および/または安定化の処理を受けているものを含むと理解されたい。
【0013】
本発明のプロセスの他の態様、実施形態、および利点は、以下で詳細に考察される。さらに、前出の情報および以下の詳細説明の両方は、単に、種々の態様および実施形態の例示的実施例であり、請求された特徴および実施形態の本質および特性の理解のために概要またはフレームワークを提供することを意図していることは理解されよう。付随する図は、例示であり、本発明のプロセスの種々の態様と実施形態のさらなる理解を得るために提供される。本発明は、添付図に言及しながら、以下でさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本明細書記載の統合プロセスの実施形態のプロセスフローを示す図である。
図2図2A〜2C。本明細書記載の統合プロセスにおける特定の蒸気熱分解ユニットの実施形態で使われる気液分離装置の斜視、上面、および側面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
溶剤脱歴および蒸気熱分解統合プロセスならびにシステムを含むフロー図を図1に示す。統合システムは、溶剤脱歴ゾーン、蒸気熱分解ゾーン30および生成物分離ゾーンを含む。
【0016】
通常、溶剤脱歴ゾーンは、一次沈降タンク14、二次沈降タンク17、脱アスファルト/脱金属油(DA/DMO)分離ゾーン20、および分離器ゾーン23を含む。
【0017】
一次沈降タンク14は、供給原料流1および溶剤を含む混合流13を受け入れる入口を含み、この溶剤は、新しい溶剤29、再利用溶剤12、再利用溶剤24であっても、またはこれらの溶剤源の1種または複数種の組み合わせであってもよい。また、一次沈降タンク14は、一次DA/DMO相15の排出用出口および一次アスファルト相16の排出用のいくつかの管出口を含む。二次沈降タンク17は、一次DA/DMO相15を受け入れるための両端部の、二次DA/DMO相19の排出用出口、および二次アスファルト相18の排出用出口に位置する2つのT字型分配器を含む。DA/DMO分離ゾーン20は、二次DA/DMO相19を受け入れるための入口、溶剤流12排出用出口および蒸気熱分解ゾーン供給原料として使用するための溶剤不含DA/DMO流21の排出用出口を含む。分離器23は、一次アスファルト相16を受け入れるための入口、溶剤流24の排出用出口、および底部アスファルト相25の排出用の出口を含む。
【0018】
通常、蒸気熱分解ゾーン30は、対流部32、および当技術分野で既知の蒸気熱分解単位操作、すなわち、蒸気の存在下で熱分解供給原料を対流部へ装填すること、に基づいて操作できる熱分解部34を含む。さらに、任意選択の特定の本明細書記載の実施形態(図1の点線で示す)では、気液分離部36は、部分32と部分34との間に収容される。対流部32からの加熱水蒸気分解供給原料が通過する気液分離部36は、蒸気と液体の物理的または機械的分離に基づく分離装置であってよい。
【0019】
一実施形態では、気液分離装置は、図2A〜2Cにより図示され、また、これらに基づき説明される。また、気液分離装置の類似の配置が米国特許公開第2011/0247500号に記載されている。この特許は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。この装置では、蒸気と液体がサイクロン型構造中を通過し、それにより、装置は、等温的に、かつ、極めて短い滞留時間で動作する。一般に、蒸気は、円形パターンで旋回されて力を生じ、そこでは、より重い滴および液体が捕捉されて、低硫黄燃料油38として液体出口まで向かわされ、例えば、熱分解燃料油ブレンドに付加され、蒸気は、蒸気出口を通って装填物37として熱分解部34へ向かわされる。気化温度および流体速度を変えて、大凡の温度カットオフポイントを、例えば、特定の実施形態では、残留燃料油ブレンドに適合する、例えば、約540℃に調節する。
【0020】
急冷ゾーン40は、蒸気熱分解ゾーン30の出口と流体連通している入口、急冷溶液42を受け入れるための入口、急冷混合生成物流44を排出する出口および急冷溶液46を排出する出口を含む。
【0021】
通常、中間体急冷混合生成物流44は、中間体生成物流65および水素62に変換される。通常、中間体生成物流65は、分離ゾーン70中で最終産物と残油に分留される。この分離ゾーンは、例えば、当業者には既知の、脱エタン塔、脱プロパン塔および脱ブタン塔を含む複数の分留塔などのひとつまたは複数の分離ユニットであってよい。例えば、適切な装置は、「エチレン」、ウルマン工業化学百科事典、12巻、531−581ページ、特に、図24図25および図26に記載されている。この文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
通常、生成物分離ゾーン70は、生成物流65流体と連通している入口、および複数の生成物出口73〜78を含む。これらの出口には、メタン排出用の出口78、エチレン排出用の出口77、プロピレン排出用の出口76、ブタジエン排出用の出口75、混合ブチレン排出用の出口74、および熱分解ガソリン排出用の出口73が含まれる。さらに、熱分解燃料油71排出用出口が備えられる。分離器23からの底部アスファルト相25および任意選択で、気液分離部36から排出された部分38は、熱分解燃料油71と組み合わされ、この混合流は、熱分解燃料油ブレンド72、例えば、低硫黄燃料油ブレンドとして取り出され、敷地外の精油所でさらに処理できる。6つの生成物出口が示されているが、例えば、採用される分離ユニットの配置および収量や分布要件に応じて、さらに少ない、またはさらに多い出口を備えてもよいことに留意されたい。
【0023】
図1の配置を採用するプロセスの実施形態では、原油供給原料1は、供給原料29、12および24の1種または複数種からの溶剤と混合される。その後、得られた混合物13は、一次沈降タンク14に移される。混合と沈降により、一次沈降タンク14中に2つの相:一次DA/DMO相15および一次アスファルト相16が形成される。一次沈降タンク14の温度は、充分に低く、供給原料から全てのDA/DMOを回収できる。例えば、n−ブタンを使ったシステムでは、適切な温度範囲は、約60℃〜150℃であり、適切な圧力は、動作温度で溶剤を液相で保持するためのn−ブタンの蒸気圧より高い圧力、例えば、約15〜25barである。n−ペンタンを使うシステムでは、適切な温度範囲は、約60℃〜約180℃であり、この場合も、適切な圧力範囲は、動作温度で溶剤を液相で保持するためのn−ペンタンの蒸気圧より高い圧力、例えば、約10〜25barである。通常、二次沈降タンク中の温度は、一次沈降タンクの温度より高い。
【0024】
大量の溶剤ならびにDA/DMOおよび少量のアスファルトを含む一次DA/DMO相15は、一次沈降タンク14の頂部の出口、および収集管(図示せず)を介して排出される。溶剤の体積の40〜50体積%を含む一次アスファルト相16は、一次沈降タンク14の底部のいくつかの管出口を経由して排出される。
【0025】
一次DA/DMO相15は、二次沈降タンク17の両端部の、最終抽出段階として機能する2つのT字型分配器に入る。少量の溶剤およびDA/DMOを含む二次アスファルト相18は、二次沈降タンク17から排出され、一次沈降タンク14に戻されてDA/DMOが回収される。二次DA/DMO相19が得られ、DA/DMO分離ゾーン20に送られて溶剤流12および溶剤不含DA/DMO流21が得られる。沈降タンクに装填された溶剤の90wt%超がDA/DMO分離ゾーン20に入り、これは、迅速で効率的な溶剤のDA/DMOからのフラッシュ分離を可能とするために必要な量である。一次アスファルト相16は、溶剤流24および底部アスファルト相25のフラッシュ分離のために分離器23に搬送される。溶剤流12と24を一次沈降タンク14用の溶剤として使用でき、従って、新しい溶剤29の必要性を最小限にできる。
【0026】
溶剤脱歴ゾーンで使われる溶剤には、プロパン、ブタンおよびペンタン、ならびにそれらの混合物などの純粋な液体炭化水素が含まれる。溶剤の選択は、DAOの要件、ならびに最終生成物の質と量に依存する。溶剤脱歴ゾーンの動作条件には、溶剤の臨界点、またはそれ未満の温度、2:1〜50:1の範囲の溶剤/油比率、および溶剤/供給原料混合物を沈降タンク中で液体状態に維持するのに効果的な範囲の圧力、が含まれる。
【0027】
実質的に溶剤不含DA/DMO流21は、任意選択で、水蒸気蒸留(図示せず)により全ての残っている溶剤が除去され、例えば、蒸気入口(図示せず)を介して導入された有効量の蒸気の存在下で、対流部32に送られる熱分解供給原料流となる。対流部32では、混合物は、例えば、1つまたは複数の廃棄熱流または他の適切な加熱配置を使って所定の温度に加熱される。加熱された軽質留分および蒸気流の混合物は、任意選択で、気液分離部36に送られ、そこで、部分38は熱分解燃料油71とのブレンドに適する燃料油成分に使用可能という理由で排出される。残りの炭化水素部分は、熱分解部34に送られ、熱分解された混合生成物流39を生成する。
【0028】
蒸気熱分解ゾーン30は、DA/DMO流21をエチレン、プロピレン、ブタジエン、混合ブテンおよび熱分解ガソリンなどの目的の生成物にするのに効果的なパラメータ下で動作する。特定の実施形態では、水蒸気分解が次の条件下で行われる:対流部および熱分解部で400℃〜900℃の範囲の温度、範囲の対流部での0.3:1〜2:1の蒸気/炭化水素比率;および対流部および熱分解部での0.05秒〜2秒の範囲の滞留時間。
【0029】
特定の実施形態では、気液分離部36は、図2A〜2Cに示すような1つまたは複数の気液分離装置80を含む。気液分離装置80は経済的に動作し、かつ、電力または薬品供給の必要がないためメンテナンスフリーである。通常、装置80は、気液混合物の受け入れ用入口ポート、分離された蒸気および液体をそれぞれ排出および収集するための蒸気出口ポートおよび液体出口ポート、などの3つのポートを含む。装置80は、球状流(global flow)予備回転部(予備回転部)による流入混合物の線形速度から回転速度への変換、蒸気を液体(残油)から予備分離するための制御された遠心効果、および液体(残油)から蒸気の分離を促進するサイクロン効果、を含む現象の組み合わせに基づいて動作する。これらの効果を達成するために、装置80は、予備回転部88、制御されたサイクロン型垂直部90および液体収集/沈降分離部92を含む。
【0030】
図2Bに示すように、予備回転部88は、断面(S1)と断面(S2)との間に、制御された予備回転要素、および断面(S2)と断面(S3)との間に配置され、制御されたサイクロン型垂直部90への連結要素を含む。直径(D1)である入口82から来る気液混合物は、断面(S1)で接線方向に装置に入る。流入流のための入口断面(S1)の面積は、下式に従う入口82の面積の少なくとも10%である:
【数1】
【0031】
予備回転要素88は、曲線流路を規定し、入口断面S1から出口断面S2まで連続的に減少するか、または増加する断面により特徴付けられる。特定の実施形態では、制御された予備回転要素の出口断面(S2)と入口断面(S1)との間の比率(S2/S1)は、0.7〜1.4の範囲にある。
【0032】
混合物の回転速度は、予備回転要素38の中心線の曲率半径(R1)に依存し、中心線は、予備回転要素88の連続的に変化する断面の中心点を結ぶ曲線として定義される。特定の実施形態では、150°〜250°の開角(αR1)範囲で、曲率半径(R1)は、R1/D1として2〜6の範囲である。
【0033】
入口断面S1の断面形状は、ほぼ正方形として示したが、矩形、丸みを帯びた矩形、円、楕円、または他の直線構成形状、曲線形状または前述の形状の組み合わせであってよい。特定の実施形態では、流体が通過する予備回転要素38の曲線形流路に沿った断面形状は、例えば、ほぼ正方形から長方形へと連続的に変化する。長方形へと連続的に変化する要素88の断面は、好都合にも、開口面積を最大化し、従って、早期の段階での液体混合物からガスの分離および均一速度プロファイルの達成、ならびに流体流中の剪断応力の最小化を可能とする。
【0034】
制御された予備回転要素88の断面(S2)からの流体流は、部分(S3)から連結要素を経由して制御されたサイクロン型垂直部40へ送られる。連結要素は、開口領域を含み、この領域は制御されたサイクロン型垂直部90の入口に向かって開かれて連結されるか、またはこの入口と一体化している。流体流は制御されたサイクロン型垂直部90に高回転速度で入り、サイクロン効果を作り出す。特定の実施形態では、連結要素の出口断面(S3)と入口断面(S2)との比率(S3/S1)は、2〜5の範囲にある。
【0035】
高回転速度の混合物は、サイクロン型垂直部90に入る。動力学的エネルギーは減少し、蒸気が、サイクロン効果により液体から分離する。サイクロンは、サイクロン型垂直部90に上位レベル90aおよび下位レベル90bを形成する。上位レベル90aでは、混合物は高濃度の蒸気を特徴とし、一方、低位レベル90bでは、混合物は高濃度の液体を特徴とする。
【0036】
特定の実施形態では、サイクロン型垂直部90の内径D2は、D2/D1として2〜5の範囲であり、その高さに方向に一定であってよく、上部90aの長さ(LU)は、LU/D2として1.2〜3の範囲であり、低部90bの長さ(LL)は、LL/D2として2〜5の範囲である。
【0037】
蒸気出口34に近接するサイクロン型垂直部90の端部は、蒸気熱分解ユニットの熱分解部に連結された部分的開口放出上昇管に連結される。特定の実施形態では、部分的開口放出管の直径(DV)は、DV/D2として、0.05〜0.4の範囲である。
【0038】
従って、特定の実施形態では、また、流入混合物の性質に応じて、その中の大容積分率の蒸気が装置80の出口84から直径DVの部分的開口放出管を通って出て行く。低蒸気濃度の、または蒸気を含まない液相(例えば、残油)が断面積S4のサイクロン型垂直部90の底部分を通って出て行き、液体収集器および沈降管92中に集められる。
【0039】
特定の実施形態では、サイクロン型垂直部90と、液体収集器および沈降管92との間の連結領域は、90の角度である。特定の実施形態では、液体収集器と沈降管92の内径は、D3/D1として2〜4の範囲であり、管長さ全体にわたり一定で、液体収集器と沈降管92の長さ(LH)は、LH/D3として、1.2〜5の範囲である。低蒸気体積分率の液体は、直径DLの管86を通って装置から取り出される。特定の実施形態では、管86は、DL/D3として、0.05〜0.4の範囲であり、沈降管の底部または底部の近くに配置される。
【0040】
種々の部材が別々に、また、別々の部分と一緒に記載されているが、装置80は、例えば、鋳造または型成形された一体化構造として形成でき、または、例えば、本明細書記載の部材および部分に正確に対応しても、そうでなくてもよい別々の部品を溶接または他の方法で一緒に結合させて、組み立てることができることは当業者には理解されよう。
【0041】
種々の寸法が直径として記述されているが、これらの値は、構成部品が円筒形でない場合の実施形態における等価な有効径であってもよいことは理解されよう。
【0042】
混合生成物流39は、別の入口を介して導入される急冷溶液42(例えば、水および/または熱分解燃料油)と共に急冷ゾーン40の入口に送られ、例えば、約300の低下した温度の急冷混合生成物流44を生成し、消費された急冷溶液46が排出される。
【0043】
典型的な例では、分解装置からのガス混合物流出物39は、水素、メタン、炭化水素、二酸化炭素および硫化水素の混合物である。水またはオイル急冷により冷却後、混合物44は、通常、4〜6段の多段コンプレッサーゾーン51で圧縮され、圧縮ガス混合物52を生成する。圧縮ガス混合物52は、苛性処理ユニット53で処理され、硫化水素および二酸化炭素不含のガス混合物54が生成される。ガス混合物54は、コンプレッサーゾーン55でさらに圧縮され、得られた熱分解ガス56は、通常、ユニット57中で極低温処理を受けて脱水され、モレキュラーシーブを使ってさらに乾燥される。
【0044】
ユニット57からの低温分解ガス流58は、脱メタン塔59に送られ、そこから、分解ガス流由来の水素とメタンを含む塔頂流60が生成される。その後、脱メタン塔59からの塔底流65は、さらなる処理のために、脱エタン塔、脱プロパン塔および脱ブタン塔などの分留塔を含む生成物分離ゾーン70に送られる。脱メタン塔、脱エタン塔、脱プロパン塔および脱ブタン塔の異なる配置を含むプロセス構成も採用可能である。
【0045】
本明細書に記載のプロセスでは、脱メタン塔59でのメタンの分離およびユニット61中の水素回収後、通常、80〜95vol%の純度の水素62が得られ,これは、精油所で必要に応じさらに精製されるか、または他の排ガスと組み合わせることができる。さらに、蒸気62からの一部の水素をアセチレン、メチルアセチレンおよびプロパジエンの水素添加反応に利用できる(図示せず)。さらに、本明細書に記載のプロセスでは、メタン流63は、任意選択で、蒸気分解装置に再利用して、バーナーおよび/またはヒーター用の燃料として使用できる。
【0046】
脱メタン塔59からの塔底流65は、生成物分離ゾーン70の入口に運ばれ、それぞれ、出口78、77、76、75、74および73、を経由して排出されるメタン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、混合ブチレンおよび熱分解ガソリン生成物流に分離される。通常、熱分解ガソリンは、C5〜C9炭化水素を含み、ベンゼン、トルエンおよびキシレンがこの留分から抽出できる。任意選択で、底部アスファルト相25と気液分離部36からの未蒸発重質液体留分38の片方または両方が、熱分解燃料油71(例えば、最低沸点のC10化合物(「C10+」流とし知られる)より高い沸点の物質)と組み合わせて、この混合流を、例えば、敷地外の精油所(図示せず)でさらに処理される熱分解燃料油ブレンド16として取り出すことができる。特定の実施形態では、底部アスファルト相25は、アスファルトストリッパー(図示せず)に送り、そこで全ての残余溶剤を、例えば、蒸気で除去できる。
【0047】
溶剤脱歴は、独特な分離プロセスであり、このプロセスでは、残油は、真空蒸留プロセスの場合のような沸点によってではなく、分子量(密度)によって分離される。従って、溶剤脱歴プロセスは、最初の供給原料または水素化処理供給原料に比べて、パラフィン型分子に富む低混入物脱アスファルト油(DAO)を生成し、結果的にBMCIを低減させる。
【0048】
通常、溶剤脱歴は、3〜7の範囲、特定の実施形態では、4〜5の範囲の炭素数のパラフィン流と共に、また、溶剤の臨界条件より低い条件で行われる。表1に、溶剤脱歴によく使われる溶剤の性質を挙げる。
【表1】
【0049】
供給原料は、炭素数3〜7の範囲の軽質パラフィン系溶剤と混合され、脱アスファルト油が溶剤中に可溶化される。不溶性ピッチは、抽出器中で混合溶液から析出し、DAO相(溶剤−DAO混合物)から分離される。
【0050】
溶剤脱歴は、液相で行われ、従って、温度と圧力は、それに合うように設定される。溶剤脱歴における相分離には2つの段階がある。第1の分離段階では、温度は、大部分のアスファルテンを分離するために第2段階の温度より低く維持される。第2段階の温度は、脱アスファルト/脱金属油(DA/DMO)の質と量を制御するために維持される。温度は、DA/DMOの質と量に対し大きな影響を与える。抽出温度の増加は、脱アスファルト/脱金属油収量の低下を生じ、このことは、DA/DMOがより軽質で、より低粘性であり、さらにより少ない金属、アスファルテン、硫黄、および窒素を含むと想定されることを意味する。温度の低下は、逆の影響を与えるであろう。通常、抽出システムの温度を上げることにより、より高い品質のDA/DMOの収量が低下し、抽出システムの温度を下げることにより、より低い品質のDA/DMOの収量が増加する。
【0051】
溶剤の組成は、重要なプロセス変数である。溶剤の溶解度は、通常、C3<iC4<nC4<iC5の順に臨界温度の増加と共に増加する。溶剤の臨界温度の増加は、DA/DMO収量を高める。しかし、より低い臨界温度を有する溶剤は、より低いDA/DMO品質を生ずる選択性が低いことに留意されたい。
【0052】
溶剤脱歴単位装填量に対する溶剤の体積比は、選択性に影響を与え、また、それほど大きくはないにせよ、DA/DMO収量に影響を与える。DA/DMO収量を固定した場合、より高い溶剤/油比率は、より高い品質のDA/DMOを生じる。より良好な選択性のために、より高い溶剤/油比率が望ましいが、操作コストが上昇する場合があり、その結果、溶剤/油比率が狭い範囲に制限されることが多い。また、溶剤の組成は、必要な溶剤/油比率を得るのを容易にするであろう。臨界溶剤温度が増加するに伴い、必要な溶剤/油比率は減少する。従って、溶剤/油比率は、所望の選択性、操作コスト、および溶剤組成の関数である。
【0053】
本明細書記載の方法とシステムは、既知の蒸気熱分解プロセスに対し改善できる:
オレフィンおよび芳香族化合物などの石油化学製品の生産のための供給原料として原油の使用;
オレフィンの高収率のために、蒸気熱分解ゾーンへの供給原料の水素含量が富化される;
特定の実施形態では、コークス前駆体は、最初の全原油からかなり除去され、これにより、ラジアンとコイル中でのコークス形成の低減が可能となる;さらに
特定の実施形態では、金属、硫黄、および窒素化合物などのさらなる不純物もまた、出発供給原料からかなり除去され、これにより、最終生成物の後処理が不要となる。
【0054】
本発明の方法とシステムが、上記および添付図で説明されてきたが、当業者なら変更は明白であり、発明の保護の範囲は、以下の請求項により規定されるべきものである。
図1
図2