(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは本分野での問題に対処し、潤滑油用途のための合成素材としての使用に特に有用なエステルポリオールエステル類(EPE)を生成した。
【0010】
具体的には、本発明は、エステルポリオール類(EP)およびエステルポリオールエステル類(EPE)を生成する独特の方法、およびそれら由来の製品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
具体的には、本発明の態様によれば、脂肪酸の酸化的オゾン分解を介して得ることのできるオゾン酸を、少なくとも1つの一級ポリオール、例えば、トリメチロールプロパン(TMP)、または他の一級ポリオール類でエステル化して、中間体エステルポリオール類(EP)を生じさせる。それから、これらのエステルポリオール類を、少なくとも1つのカルボン酸でエステル化して、潤滑油素材の用途に適した独特の特性を有するエステルポリオールエステル類(EPE)を製造する。
【0012】
したがって、本発明は、少なくとも1つのエステルポリオールエステルを生成する方法を提供し、前記方法は、
−エステルポリオール反応混合物をエステル化して、エステルポリオールを製造するステップ、前記反応混合物は、オゾン酸混合物および少なくとも1つの一級ポリオールを含み、ここで、前記オゾン酸混合物は、少なくとも1つのジカルボン酸および少なくとも1つのモノカルボン酸を含み;および、
−前記のエステルポリオールを、少なくとも1つのカルボン酸キャップでキャップして、エステルポリオールエステルを製造するステップ、を含む。
【0013】
本発明による方法では、
(i)オゾン酸混合物は、(ジカルボン酸のモル)/(モノカルボン酸のモル)の比に対応する、二官能/単官能の比(DMR)を有してよく;エステルポリオールエステルは、オゾン酸混合物のDMRに比例した粘度を有し;および/または、
(ii)前記エステルポリオール反応混合物は、(−OH基のモル)/(−COOH基のモル)の比に対応する、ヒドロキシル/カルボキシル比(HCR)を有してよく、前記のエステルポリオールエステルは、エステルポリオール反応混合物のHCRに反比例した粘度を有する。
【0014】
本発明の特定の一態様では、エステルポリオールエステルを生成する方法が提供され、前記方法は、少なくとも1つのモノカルボン酸および少なくとも1つのジカルボン酸を含むオゾン酸混合物を、少なくとも1つの一級ポリオールの存在下でエステル化するステップを含む。
【0015】
本発明の任意の態様によるオゾン酸混合物は、少なくとも1つの脂肪酸をオゾンと反応させて、その後に酸化することにより生成してよい。酸化は、酸素を用いてよい。
【0016】
本発明の任意の態様では、オゾン酸混合物は、少なくとも1つのジカルボン酸および少なくとも1つの第一のモノカルボン酸を含んでよく;前記方法は、少なくとも1つの追加の第二のモノカルボン酸を、前記オゾン酸混合物に添加するステップを含んでよく、ここで、前記の第一および第二のモノカルボン酸は異なってよい。1つまたは複数の追加の第二のモノカルボン酸の添加は、オゾン酸混合物の二官能/単官能の比(DMR)を減少させ得る。
【0017】
本発明の特定の一態様では、少なくとも1つのカルボン酸キャップ(capping carboxylic acid)は、1つまたは複数のモノカルボン酸であってよい。より具体的には、少なくとも1つのカルボン酸キャップは、酢酸、プロパン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ノナン酸、2−エチルヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸、およびそれらの混合物からなる群より選択してよい。より具体的には、少なくとも1つのカルボン酸キャップは、ノナン酸であってよい。
【0018】
本発明の任意の態様による一級ポリオールは、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ビス(1,2−プロパンジオール)、2−メチル−1,3−プロパンジオール(2−MePG)、トリメチロールプロパン(TMP)、ジ−トリメチロールプロパン(Di−TMP)、ネオペンチルグリコール(NPG)、ペンタエリスリトール(PE)、ジペンタエリスリトール(diPE)およびソルビトールから選択してよい。より具体的には、一級ポリオールは、分岐した多価一級ポリオールであってよい。より具体的には、一級ポリオールは、トリメチロールプロパン(TMP)であってよい。
【0019】
本発明の任意の態様による少なくとも1つの脂肪酸は、少なくとも1つのトリグリセリドを加水分解することにより製造してよい。より具体的には、前記の少なくとも1つのトリグリセリドは、少なくとも1つの植物油および/または少なくとも1つの動物性脂肪を含んでよい。
【0020】
一態様によれば、本発明は、上記方法により得られる、または得ることのできる、エステルポリオールエステルを提供する。
【0021】
一態様によれば、本発明は、上記方法により得られる、または得ることのできる、エステルポリオールエステルを含む、エステルポリオールエステル潤滑油基油を提供する。
【0022】
一態様によれば、本発明は、少なくとも1つのカルボン酸と少なくとも1つのエステルポリオールの反応生成物を含む、エステルポリオールエステル潤滑油基油を提供し、ここで、前記エステルポリオールは、少なくとも1つのエステル基、第一のヒドロキシル基、および、少なくとも第二のヒドロキシル基を有してよい。
【0023】
一態様によれば、本発明は、式Iの化合物を含むエステルポリオールエステル組成物を提供する:
【化1】
ここで、R1は、1つまたは複数のヒドロキシル基で場合により置換された、1〜17個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキル鎖であり、または、
R1は、2〜18個の炭素原子と、式R2−OHのポリオール化合物で場合によりエステル化された末端カルボン酸基とを有する、直鎖アルキルであり;
R2は、ヒドロキシル基に結合される場合、2〜12個の炭素原子を有する直鎖または分岐の一級ポリオールであり、ここで、各アルコール官能基は、式R1−COOHのモノカルボン酸またはジカルボン酸または式R3−COOHのモノカルボン酸で場合によりエステル化されていて;および、
R3は、1つまたは複数のヒドロキシル基で場合により置換された、1〜17個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキル鎖である。
【0024】
一態様によれば、本発明は、式IIの化合物を含むエステルポリオールエステル組成物を提供する:
【化2】
ここで、R4は、酢酸、プロパン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ノナン酸、2−エチルヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸からなる群より選択されるモノカルボン酸のアルキル鎖であり、または、
R4は、式R5−OHのポリオール化合物で場合によりエステル化された末端カルボン酸基を有するC2〜C18の直鎖アルキルであり;
R5は、ヒドロキシル基に結合される場合、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ビス(1,2−プロパンジオール)、2−メチル−1,3−プロパンジオール(2−MePG)、トリメチロールプロパン(TMP)、ジ−トリメチロールプロパン(Di−TMP)、ネオペンチルグリコール(NPG)、ペンタエリスリトール(PE)、ジペンタエリスリトール(diPE)およびソルビトールからなる群より選択される一級ポリオールのアルキル鎖であり、ここで、各アルコール官能基は、式R4−COOHのモノカルボン酸またはジカルボン酸または式R6−COOHのモノカルボン酸で、場合によりエステル化されていて;および、
R6は、酢酸、プロパン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ノナン酸、2−エチルヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸からなる群より選択されるモノカルボン酸のアルキル鎖である。
【0025】
一態様によれば、本発明は、式IIIの化合物を含むエステルポリオールエステル組成物を提供する:
【化3】
ここで、R7、R8およびR9は、独立に:
1つまたは複数のヒドロキシル基で場合により置換された、1〜17個の炭素原子の直鎖または分岐のアルキル鎖;
式R10−OHのポリオール化合物で場合によりエステル化された末端カルボン酸基を有する、C2〜C18の直鎖アルキル;または、
R10であり、ここで、R10は、ヒドロキシル基に結合される場合、2〜12個の炭素原子を有する直鎖または分岐の一級ポリオールであり、R10における各アルコール官能基は2〜18個の炭素原子を有する直鎖または分岐モノカルボン酸、または、3〜9個の炭素原子を有するジカルボン酸で、場合によりエステル化される。
【0026】
一態様によれば、本発明は、式IVの化合物を含むエステルポリオールエステル組成物を提供する:
【化4】
ここで、nは0〜16であり;
R11およびR12は、それぞれヒドロキシル基に結合される場合、独立に、2〜12個の炭素原子を有する直鎖または分岐の一級ポリオールであり、ここで、各アルコール官能基は、式R13−COOHのモノカルボン酸または式R14−COOHのジカルボン酸で、場合によりエステル化されていて;
R13は、1つまたは複数のヒドロキシル基で場合により置換された、1〜17個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキル鎖であり;および、
R14は、式R11−OHまたはR12−OHの一級ポリオール化合物で場合によりエステル化された、末端カルボン酸基を有するC2〜C18の直鎖アルキルである。
【0027】
一態様によれば、本発明は、アゼライン酸エステルポリオールエステルを含むエステルポリオールエステル組成物を提供し、ここで、アゼライン酸は、少なくとも1つの式R15−OHのポリオールでエステル化されて;ここで、各ポリオールR15−OHは、2〜12個の炭素原子を有する直鎖または分岐一級ポリオールであり、少なくとも2つのアルコール官能基を含み、独立に式R16−COOHのカルボン酸で場合によりエステル化され;および、R16は、1つまたは複数のヒドロキシル基で場合により置換された、1〜17個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキル鎖;および、式R15−OHのポリオール化合物で場合によりエステル化された末端カルボン酸基を有するC2〜C18の直鎖アルキル、からなる群より選択される。
【0028】
オゾン酸+追加のモノアシドの、二官能/単官能の比(DMR)は、約0.05〜約0.71であってよい。カルボン酸は、(−OH基のモル)/(−COOH基のモル)の比に対応するヒドロキシル/カルボキシル比(HCR)を有してよく、約1.0〜約2.0である。エステルポリオールエステルは、オゾン酸の二官能/単官能の比(DMR)に比例した粘度を有してよく、および、エステルポリオールエステルの40℃での粘度は、約7.14cSt〜約97.08cStであってよい。エステルポリオールエステルの分子量(GPC)は、約700g/mol〜約2000g/molであってよい。
【0029】
本発明の方法では、オゾン酸をエステル化するステップにおいて、エステルポリオールを製造するために、少なくとも1つの一級ポリオールを過剰に添加する。エステル化は、少なくとも1つのモノアシドを添加してエステルポリオールを製造するステップをさらに含んでよい。
【0030】
特定の態様によれば、本発明の任意の態様による方法は、エステルポリオールをノナン酸でキャップして、エステルポリオールエステルを形成するステップをさらに含んでよく、
ここで、オゾン酸+追加のモノアシドの混合物の二官能/単官能の比(DMR)は約1.25であり、
エステルポリオールエステルの40℃での粘度は、約37.7(cSt)〜約61.6(cSt)であり、および、
エステルポリオールエステルは、約−57.0℃〜約−42.0℃の流動点を有する。
【0031】
本発明で用いられる脂肪酸は、複数の脂肪酸または脂肪酸の混合物の形態であってよい。具体的には、脂肪酸は、分画されたパーム脂肪酸留出物(PFAD)および/またはパーム核脂肪酸留出物の混合物に由来してよい。
【0032】
一級ポリオールは、分岐した多価一級ポリオールであってよい。一級ポリオールは、グリセリン;1,2−プロパンジオール;2−メチル−1,3−プロパンジオール(2−MePG);トリメチロールプロパン(TMP);ジ−トリメチロールプロパン(Di−TMP);ネオペンチルグリコール(NPG);ペンタエリスリトール(PE);ジペンタエリスリトール(diPE);およびソルビトールから選択してよい。具体的には、一級ポリオールはトリメチロールプロパン(TMP)であってよい。
【0033】
少なくとも1つのモノアシドは、ヘキサン酸、ノナン酸、2−エチルヘキサン酸、ヘプタン酸、およびオクタン酸からなる群より選択してよい。
【0034】
選択的なDMRとHCRの比は、潤滑油素材の特性に影響し得る。例えば、DMRの比率の増加は、分子量の増加をもたらし、粘度の増加および揮発度の減少を生じる。HCRの比率の増加は、分子量の減少をもたらし、粘度の減少および揮発度の増加を生じる。
【0035】
本発明の別態様によれば、エステルポリオールエステルを形成するための1ステップ法もまた提供され、少なくとも1つのモノカルボン酸および少なくとも1つのジカルボン酸を含むオゾン酸混合物を、少なくとも1つの一級ポリオールの存在下でエステル化して、エステルポリオールエステルを製造するステップを含む。オゾン酸を少なくとも1つの一級ポリオールでエステル化するステップは、少なくとも1つのモノアシドを添加してエステルポリオールエステル類を製造するステップを含んでよい。
【0036】
本発明の任意の方法により得ることのできる、または得られる、エステルポリオールエステルもまた、提供される。発明によるエステルポリオールエステルを含む、エステルポリオールエステル潤滑油基油もまた提供される。
【0037】
別態様によれば、
少なくとも1つのカルボン酸;および、
少なくとも1つのエステルポリオール、
の反応生成物を含む、エステルポリオールエステル潤滑油基油が提供され、
ここで、前記エステルポリオールは、少なくとも1つのエステル基、第一のヒドロキシル基、および少なくとも第二のヒドロキシル基を有する。
【0038】
本発明の任意の態様によるエステルポリオールエステル潤滑油基油は、−57.0℃から−15.0℃の間の流動点を有する。
【0039】
本発明のエステルポリオールエステル類は、同じ粘度範囲内で、典型的なバイオ系潤滑油素材の流動点よりも低い流動点を有するため、独特である。また、本発明は、かなりより低い揮発度を維持しながら、40℃で15cSt〜200cStの範囲の、より広範囲の動粘度特性を生じるための方法も提供し、良好な熱安定性を間接的に反映する。低い流動点は、流動点降下剤(PPD)の必要性をなくすか、または、減らす可能性があり、一方で、より幅広い粘度特性は、潤滑油の配合において、ポリマー粘度調整剤を添加する必要性を最小限化するか、または、必要性をなくす。これらの利点は、エステルポリオールエステル類の適用性を大いに広げる。
【0040】
また、本発明のエステルポリオールエステル類の構造は、従来のポリオールエステル類とは異なり、この構造の独特性は、性能の利点に活かされている。構造の独自性は、それらの分子構造の非対称の配列に関連づけることができ、エステル化の間に、異なる比率のジアシドおよび/またはモノアシドが、いずれか1つの一級ポリオール類と反応する。生じる構造の多様性は、ポリオールエステル鎖の最密充填を妨げ、したがって、結晶化を阻害する。これは、特に、高融点のパルミチン酸およびステアリン酸を大量に含む、パームまたはココナッツなどの熱帯供給原料から、ポリオール類を生成する場合に、エステルポリオールエステルの流動性を維持することに関する、別の利点である。
【0041】
本明細書に組み込まれて本明細書の一部分を成す添付の図は、本発明の態様を説明し、上述の本発明の一般的記述および後述の詳細な説明とともに、発明を説明するのに役立つ。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本明細書に記載の書誌参照は、参考文献一覧の形で便宜上載せられ、実施例の終わりに追加される。そのような書誌参照の全内容は、本明細書中に参照により援用される。
【0044】
本発明は、オゾン酸から、エステルポリオールエステル類(EPE)を形成する方法に関する。
【0045】
一態様によれば、オゾン酸を、少なくとも1つの一級ポリオールでエステル化して、エステルポリオール類(EP)を製造する第一ステップを含む、2ステップ法が提供される。それから、エステルポリオールは、カルボン酸でさらにエステル化されて、エステルポリオールエステル(EPE)が製造される。
図3は、本発明のエステルポリオールエステル類からなる潤滑油基油への、オゾン酸の2ステップ転換を示す。
【0046】
本発明によるエステルポリオールは、以下の構造を含む。
【化5】
【0047】
本発明の任意の態様によるエステルポリオールエステルは、以下の構造を含む:
【化6】
【0048】
別態様によれば、オゾン酸、少なくとも1つの一級ポリオール、および場合によりモノアシドを同時に添加して、エステルポリオールエステル類(EPE)を形成するステップを含む、1ステップ法が提供される。
図9は、本発明によるエステルポリオールエステル(単数または複数)を製造する、1ステップ合成法を示す簡略化したブロック図である。
【0049】
したがって、本発明は、少なくとも1つのエステルポリオールエステルを生成する方法を提供し、前記方法は、
−エステルポリオール反応混合物をエステル化して、エステルポリオールを製造するステップ、前記反応混合物は、オゾン酸混合物および少なくとも1つの一級ポリオールを含み、ここで、前記オゾン酸混合物は、少なくとも1つのジカルボン酸および少なくとも1つのモノカルボン酸を含み;および、
−前記エステルポリオールを、少なくとも1つのカルボン酸キャップでキャップして、エステルポリオールエステルを製造するステップ、を含む。
【0050】
換言すれば、本発明は、少なくとも1つのエステルポリオールエステルを生成する方法を提供し、前記方法は、
−少なくとも1つの一級ポリオールを、少なくとも1つのジカルボン酸および少なくとも1つのモノカルボン酸でエステル化して、エステルポリオールを製造するステップ;および
−前記エステルポリオールを、少なくとも1つのカルボン酸キャップでキャップして、エステルポリオールエステルを製造するステップ、を含む。
【0051】
本発明の実施形態および態様で使用する場合、用語「オゾン酸混合物」は、少なくとも1つのジカルボン酸および少なくとも1つのモノカルボン酸の混合物を指す。
【0052】
本発明の実施形態および態様で使用する場合、「ポリオール反応混合物」は、少なくとも1つの一級ポリオール、少なくとも1つのジカルボン酸、および、少なくとも1つのモノカルボン酸の混合物を指す。
【0053】
本発明の実施形態および態様で使用する場合、用語「含む」およびその変形は、用語「からなる」およびその変形により置き換えることができ、そして逆も同様である。
【0054】
本発明による方法では、
(i)オゾン酸混合物は、(ジカルボン酸のモル)/(モノカルボン酸のモル)の比に対応する二官能/単官能の比(DMR)を有してよく;エステルポリオールエステルは、オゾン酸混合物のDMRに比例した粘度を有し;および/または、
(ii)エステルポリオール反応混合物は、(−OH基のモル)/(−COOH基のモル)の比に対応する、ヒドロキシル/カルボキシル比(HCR)を有してよく、エステルポリオールエステルは、エステルポリオール反応混合物のHCRに反比例した粘度を有する。
【0055】
本発明の任意の態様によるオゾン酸混合物は、少なくとも1つの脂肪酸をオゾンと反応させて、その後に酸化することにより生成してよい。酸化は、酸素を用いてよい。
【0056】
本発明の任意の態様では、オゾン酸混合物は、少なくとも1つのジカルボン酸および少なくとも1つの第一のモノカルボン酸を含んでよく;前記方法は、少なくとも1つの追加の第二のモノカルボン酸を、前記オゾン酸混合物に添加するステップを含んでよく、ここで、前記の第一および第二のモノカルボン酸は異なってよい。1つまたは複数の追加の第二のモノカルボン酸の添加は、オゾン酸混合物の二官能/単官能の比(DMR)を減少させ得る。
【0057】
本発明の特定の一態様では、オゾン酸混合物の二官能/単官能の比(DMR)は、約0.76から約0.05に減少し得る。
【0058】
本発明の特定の一態様では、エステルポリオール反応混合物は、少なくとも1つの一級ポリオールを、化学量論的に過剰に含んでよい。
【0059】
本発明の特定の一態様では、エステルポリオール反応混合物は、(−OH基のモル)/(−COOH基のモル)の比に対応するヒドロキシル/カルボキシル比(HCR)を有してよく、それは約1.01〜2.0である。
【0060】
本発明の特定の一態様では、エステルポリオールエステルは、オゾン酸混合物の二官能/単官能の比(DMR)に比例した粘度を有してよく、エステルポリオールエステルの40℃での粘度は、約39.1(cS)〜約236(cS)であってよい。
【0061】
本発明の特定の一態様では、少なくとも1つのカルボン酸キャップは、1つまたは複数のモノカルボン酸であってよい。より具体的には、少なくとも1つのカルボン酸キャップは、酢酸、プロパン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ノナン酸、2−エチルヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸、および、それらの混合物からなる群より選択してよい。より具体的には、少なくとも1つのカルボン酸キャップは、ノナン酸であってよい。
【0062】
本発明の特定の一態様では、エステルポリオールエステルは、約−11.0℃〜約−57.0℃の流動点を有してよい。
【0063】
本発明の特定の一態様では、少なくとも1つの脂肪酸は、分画されたパーム脂肪酸留出物(PFAD)に由来してよく;エステルポリオール反応混合物のヒドロキシルカルボキシル比(HCR)は、約1.25であってよく;オゾン酸混合物の二官能/単官能の比(DMR)は、約0.11〜約0.21であってよく;エステルポリオールエステルの40℃での粘度は、約37.7(cS)〜約61.6(cS)であってよく;および/または、エステルポリオールエステルは、約−57.0℃〜約−42.0℃の流動点を有してよい。
【0064】
本発明の特定の一態様では、少なくとも1つの脂肪酸は、パーム核脂肪酸留出物(PFKAD)に由来してよく;オゾン酸混合物の二官能/単官能の比(DMR)は、約0.12であってよく;エステルポリオール反応混合物のヒドロキシルカルボキシル比(HCR)は、約1.25であってよく;および/または、エステルポリオールエステルの40℃での粘度は、約53.7(cS)であってよい。
【0065】
本発明の特定の一態様では、少なくとも1つの脂肪酸は、分画されたパーム脂肪酸留出物(PFAD)およびパーム核脂肪酸留出物(PFKAD)の混合物に由来してよく;オゾン酸混合物の二官能/単官能の比(DMR)は、約0.05〜約0.32であってよく;エステルポリオール反応混合物のヒドロキシルカルボキシル比(HCR)は、約1.25であってよく;および/または、エステルポリオールエステルの粘度は、約28(cS)〜約120(cS)であってよい。
【0066】
本発明の特定の一態様では、少なくとも1つの脂肪酸は、分画された植物性オレイン酸に由来してよく;オゾン酸混合物の二官能/単官能の比(DMR)は、約0.13〜約0.3であってよく;エステルポリオール反応混合物のヒドロキシルカルボキシル比(HCR)は、約1.25であってよく;および/または、エステルポリオールエステルの粘度は、約37.92(cS)〜約96.13(cS)であってよい。
【0067】
本発明の任意の態様による一級ポリオールは、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ビス(1,2−プロパンジオール)、2−メチル−1,3−プロパンジオール(2−MePG)、トリメチロールプロパン(TMP)、ジ−トリメチロールプロパン(Di−TMP)、ネオペンチルグリコール(NPG)、ペンタエリスリトール(PE)、ジペンタエリスリトール(diPE)およびソルビトールから選択してよい。より具体的には、一級ポリオールは、分岐した多価一級ポリオールであってよい。より具体的には、一級ポリオールは、トリメチロールプロパン(TMP)であってよい。
【0068】
本発明の特定の一態様では、エステルポリオールエステルの粘度は、オゾン酸混合物の二官能/単官能の比(DMR)に比例してよい。
【0069】
本発明の特定の一態様では、潤滑油素材は、エステルポリオールエステルから形成されてよく;潤滑油素材は、オゾン酸混合物の二官能/単官能の比(DMR)に反比例してよい揮発度を有する。
【0070】
本発明の特定の一態様では、本方法は、オゾン酸混合物の、増加する二官能/単官能の比(DMR)をさらに含んでよく、それにより、潤滑油素材の揮発度は減少する。
【0071】
本発明の特定の一態様では、本方法は、オゾン酸混合物の、増加する二官能/単官能の比(DMR)をさらに含んでよく、それにより、潤滑油素材の粘度は増加する。
【0072】
本発明の特定の一態様では、エステルポリオールエステルは、オゾン酸混合物の二官能/単官能の比(DMR)に比例した分子量(GPC)を有してよい。
【0073】
本発明の特定の一態様では、本方法は、エステルポリオール反応混合物の、増加するヒドロキシル/カルボキシル比(HCR)をさらに含んでよく、それにより、潤滑油素材の粘度は減少する。
【0074】
本発明の特定の一態様では、1つまたは複数の追加の第二のモノカルボン酸は、酢酸、プロパン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ノナン酸、2−エチルヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸、および、それらの結合からなる群より選択してよい。より具体的には、1つまたは複数の追加の第二のモノカルボン酸は、ヘキサン酸、ノナン酸、2−エチルヘキサン酸、ヘプタン酸、およびオクタン酸からなる群より選択してよい。
【0075】
本発明の任意の態様による少なくとも1つの脂肪酸は、少なくとも1つのトリグリセリドを加水分解することにより製造してよい。具体的には、少なくとも1つのトリグリセリドは、少なくとも1つの植物油および/または少なくとも1つの動物性脂肪を含んでよい。より具体的には、少なくとも1つの植物油は、大豆油、サフラワー油、亜麻仁油、コーン油、ヒマワリ油、オリーブ油、キャノーラ油、ゴマ油、綿実油、カラシ油、カメリナ油、ジャトロファ油、ピーナッツ油、ココナッツ油、ナタネ油、中国牛脂油、キリ油、ヒマシ油、藻類油、小麦胚芽油、大豆油、大麻油、パーム油、およびパーム核油、パームオレイン、および、それらの混合物からなる群より選択してよい。より具体的には、少なくとも1つの植物油は、パーム油を含んでよい。本発明の特定の一態様では、少なくとも1つの植物油は、パームオレインを含んでよい。本発明の特定の一態様では、少なくとも1つの植物油は、パーム核油を含んでよい。本発明の特定の一態様では、少なくとも1つの脂肪酸は、分画されたパーム脂肪酸留出物(PFAD)から得てよい。本発明の特定の一態様では、少なくとも1つの脂肪酸は、分画されたパームオレインから得てよい。本発明の特定の一態様では、少なくとも1つの脂肪酸は、パーム核脂肪酸留出物(PFKAD)から得てよい。本発明の特定の一態様では、少なくとも1つの動物性脂肪は、魚油、牛脂、ダック脂、およびそれらの混合物からなる群より選択してよい。
【0076】
本発明の特定の一態様では、オゾン酸混合物の二官能/単官能の比(DMR)およびエステルポリオール反応混合物のヒドロキシル/カルボキシル比(HCR)の両方を増大させることにより、所望のエステルポリオールエステルの粘度を維持しながら、様々な脂肪酸および一級ポリオール類を用いることができる。
【0077】
本発明の特定の一態様では、キャップするステップは、少なくとも1つのカルボン酸キャップの化学量論的な量未満を用いるステップを含んでよい。具体的には、用いられる少なくとも1つのカルボン酸キャップの量は、エステルポリオールの約62%〜約100%のキャップを達成するのに十分であってよい。より具体的には、用いられる少なくとも1つのカルボン酸キャップは、エステルポリオールの約62%〜約76%のキャップを達成するのに十分である。さらにより具体的には、エステルポリオールは、部分的にキャップされて約62%〜約99%がキャップされた、部分的にキャップされたエステルポリオールエステルが製造されてよい。より具体的には、エステルポリオールは、部分的にキャップされて約62%〜約76%がキャップされた、部分的にキャップされたエステルポリオールエステルが製造されてよい。
【0078】
本発明の特定の一態様では、部分的にキャップされたエステルポリオールエステルは、完全にキャップされた同等のエステルポリオールエステルと比較して、より優れた加水分解的安定性を有し得る。
【0079】
本発明の特定の一態様では、部分的にキャップされたエステルポリオールエステルは、完全にキャップされた同等のエステルポリオールエステルと比較して、同程度の流動点を維持しながら、より優れた粘度を有し得る。
【0080】
本発明の一態様では、エステルポリオールエステルを生成する方法が提供され、本方法は、少なくとも1つのモノカルボン酸および少なくとも1つのジカルボン酸を含むオゾン酸混合物を、少なくとも1つの一級ポリオールの存在下でエステル化するステップを含む。オゾン酸混合物は、少なくとも1つのジカルボン酸および少なくとも1つの第一のモノカルボン酸を含んでよく;本方法は、少なくとも1つの追加の第二のモノカルボン酸をオゾン酸混合物に添加するステップを含んでよく、ここで、前記の第一および第二のモノカルボン酸は異なってよい。モノカルボン酸の合計量は、実質的にキャップされたエステルポリオールエステルを得るのに十分であってよい。少なくとも1つのモノカルボン酸および少なくとも1つの追加の第二のモノカルボン酸は、実質的に完全にエステル化されてよい。少なくとも1つの一級ポリオールの合計量は、化学量論的に過剰であってよい。少なくとも1つの一級ポリオールにおけるヒドロキシル官能基の合計量は、1%〜38%の化学量論的過剰であってよい。一級ポリオールは、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ビス(1,2−プロパンジオール)、2−メチル−1,3−プロパンジオール(2−MePG)、トリメチロールプロパン(TMP)、ジ−トリメチロールプロパン(Di−TMP)、ネオペンチルグリコール(NPG)、ペンタエリスリトール(PE)、ジペンタエリスリトール(diPE)およびソルビトールから選択してよい。エステルポリオールエステルは、約−36℃〜約−51℃の流動点を有してよい。
【0081】
具体的には、本発明の方法は、好ましくは、酸化的オゾン分解プロセスにより製造されるオゾン酸を利用する。より具体的には、脂肪酸(好ましくは植物油および/または動物油由来)は、全ての二重結合が切断されてカルボン酸基に転換されるように、はじめに酸化的切断を受ける。植物油または動物油由来の不飽和脂肪酸の酸化的切断では、ジアシド(アゼライン酸)およびモノアシドの混合物(オゾン酸と呼ばれる混合物)が製造される。
【0082】
本発明の一態様によれば、1つまたは複数の脂肪酸、例えば複数の脂肪酸または脂肪酸の混合物は、オゾンと反応して、オゾン酸の混合物を製造し得る。得られたオゾン酸またはオゾン酸の混合物は、ジアシドおよびモノアシド化合物を含んでよい。具体的には、オゾン酸(の混合物)は、(ジアシドのモル)/(モノアシドのモル)の比に対応する二官能/単官能の比(DMR)を有してよい。それから、オゾン酸を、一級ポリオール類、例えば、制限されないが、ネオペンチルグリコール(NPG)、トリメチロールプロパン(TMP)、ペンタエリスリトール(PE)、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトールなどでエステル化して、エステルポリオール類を形成する。それから、得られるエステルポリオール類を少なくとも1つのカルボン酸でエステル化して、潤滑油素材としての使用に適切な、独特なクラスのエステルポリオールエステル類を生じる。
【0083】
図4は、特定のオゾン酸混合物を製造するための、代表的な脂肪酸の酸化的切断を示す。この図では、オレイン酸はアゼライン酸およびペラルゴン酸(ノナン酸)に転換されて;リノール酸は、アゼライン酸、ヘキサン酸および酢酸に転換されて、そして、リノレン酸は、アゼライン酸、酢酸およびプロパン酸に転換される。酢酸は、組み合わせた酸化的オゾン分解反応条件下での、マロン酸の脱炭酸により形成される。パルミチン酸およびステアリン酸などの飽和脂肪酸は、変わらないままである。
【0084】
トリグリセリド、例えば、パーム油、パーム脂肪酸留出物(PFAD)、およびパーム核脂肪酸留出物(PKFAD)、またはそれらのアルキルエステル類を加水分解して、酸化的オゾン分解の供給原料として働く脂肪酸を製造することができる。
【0085】
トリグリセリドの例は、植物油および動物性脂肪を含む。具体的にはトリグリセリドは、パーム油、オレイン、大豆油、サフラワー油、亜麻仁油、コーン油、ヒマワリ油、オリーブ油、キャノーラ油、ゴマ油、綿実油、カラシ油、カメリナ油、ジャトロファ油、ピーナッツ油、ココナッツ油、ナタネ油、中国牛脂油、キリ油、ヒマシ油、藻類油、小麦胚芽油、大豆油、大麻油、魚油、牛脂、ダック脂など、およびそれらの混合物から選択してよい。
【0086】
脂肪酸源は、パーム脂肪酸留出物、分画されたパーム脂肪酸留出物、パーム核脂肪酸留出物、分画されたパーム核脂肪酸留出物、リン脂質、大豆油脂肪酸エステル類、パーム油脂肪酸エステル類、リン脂質など、またはそれらの混合物またはそれらの画分を含む。
【0087】
図2は、分画された脂肪酸のオゾン分解をしてオゾン酸の混合物を形成することにより、エステルポリオール類を製造する、従来法を示す簡略化したブロック図を示す。脂肪酸は、トリグリセリドまたは脂肪酸エステル供給原料の加水分解により形成される。従来法の2ステップは、過剰の一級ポリオール、典型的にはTMPまたはグリセリンで、オゾン酸をエステル化して、エステルポリオール類の生成物を形成する。
【0088】
図3では、本発明の一態様によれば、オゾン酸と、随意的な単官能カルボン酸(モノアシド)との混合物は、TMPなどの一級ポリオール類でエステル化されて、エステルポリオール類を形成する。「一級ポリオール」により、我々は、様々なプロセスにおいて反応物質として用いることのできる、2以上のヒドロキシル基を有する、ポリオールを意味する。例えば、一級ポリオールは、二級ポリオールの製造での脂肪酸構成要素へのエステル結合の形成において、そのヒドロキシル基の少なくとも1つを使用するオゾン分解プロセスにおける反応物質として、または酸化酸のエステル化プロセスにおける反応物質として、用いることができる。一級ポリオールは、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ビス(1,2−プロパンジオール)、2−メチル−1,3−プロパンジオール(2−MePG);トリメチロールプロパン(TMP);ジ−トリメチロールプロパン(Di−TMP);ネオペンチルグリコール(NPG);ペンタエリスリトール(PE);ジペンタエリスリトール(diPE);およびソルビトールを含んでよい。
【0089】
本発明の一態様によれば、
図3に示すように、エステルポリオール類は、それから、カルボン酸でエステル化またはキャップされて、本発明の2ステップ転換の一部としてエステルポリオールエステルを生じる。本発明におけるエステルポリオールエステル類は、潤滑油素材に幅広く用いることができる。
【0090】
随意的に追加されるモノアシド(第一段階エステル化の間に用いられる)およびモノアシドキャップの例は、酢酸、プロパン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸、およびそれらの混合物を含む。
【0091】
オゾン酸からエステルポリオールエステルへの1ステップ転換もまた、これらの同一のモノアシドを用いる。
【0092】
本発明の一態様によれば、本発明のエステルポリオール類およびエステルポリオールエステル類は、分岐一級ポリオール類を包含し得る。パーム供給原料は相分離を引き起こす大量の飽和脂肪酸を含むので、分岐一級ポリオール類は、炭化水素鎖(特にパーム供給原料由来)での相分離を阻害するのに効果的である。分岐一級ポリオールの例は、以下に示すトリメチロールプロパン(TMP)である。
【化7】
【0093】
分岐一級ポリオール類は、1,2−プロパンジオール;2−メチル−1,3−プロパンジオール(2−MePG);トリメチロールプロパン(TMP);ジ−トリメチロールプロパン(Di−TMP);またはネオペンチルグリコール(NPG)から選択してよい。オゾン酸のエステル化に続いて、エステルポリオール類の生成物をカルボン酸でエステル化して、エステルポリオールエステル類を製造する。
【0094】
具体的には、エステルは、繰り返しの基(RCO
2R’)を有してよく、ここで、Rは、オゾン酸由来の、パルミチン酸、ステアリン酸、ヘキサン酸、ノナン酸(ペラルゴン酸)、プロピオネートおよび(ジ−エステル類としての)アゼライン酸を表す。R’は、一級ポリオール類に由来する。
【0095】
したがって、一実施形態では、エステルポリオールエステル類は直鎖構造であってよい。別の実施形態では、エステルポリオールエステル類は分岐構造であってよい。両方とも、分岐一級ポリオール類を包含してよい。エステル分岐ポリオールエステル類の構造は、炭化水素鎖の最密充填を妨げ、結晶化を阻害する。
【0096】
本発明の特定の態様によれば、潤滑油素材として用いられ得る本発明によるエステルポリオールエステル類を生成するために用いられる方法は、一級ポリオール(好ましくは過剰)と、必要に応じて追加のモノアシドの存在下での、オゾン酸の混合物(二官能アゼライン酸およびモノアシドの混合物)のエステル化による、中間体エステルポリオール類の最初の生成を含む。一級ポリオール類の量は、それらのヒドロキシル/カルボキシル比(HCR)により特徴付けられ、HCRは、(ヒドロキシル基のモル)/(カルボキシル基のモル)の比である。
【0097】
同様に、アゼライン酸/モノアシドの比は、各エステルポリオールを生成するのに用いられる、オゾン酸の二官能/単官能の比(DMR)を定める。それから、ほとんど全てまたは全てのヒドロキシル基がエステル基に転換されてエステルポリオールエステル類を形成するように、第二の反応において、中間体エステルポリオール類を過剰のモノアシドでエステル化、またはキャップする。両方のエステル化反応は、シュウ酸錫または酸化錫触媒により、触媒されてよい。この方法は、
図3に示すように、2つの別々のエステル化反応が用いられるので、2ステップ法と呼ばれる。工業環境では、両方の反応は、好ましくは同一容器内で行われ、そして、第二ステップは、第一ステップの直後に、不必要な熱損失を避けるために、反応混合物を冷却せずに行なわれる。
【0098】
本発明の態様では、潤滑油組成物は、様々な脂肪酸を含む供給原料の酸化的オゾン分解により製造されることが予想される、"合成"オゾン酸混合物から生成される。米国特許第2,813,113号および関連特許により規定される脂肪酸の酸化的オゾン分解は、酸化的切断を受ける前にそれぞれの脂肪酸の二重結合を元々含むそれぞれの2つの炭素原子に、カルボン酸官能基の発生をもたらすことが知られている。選択された個々の脂肪酸の酸化的オゾン分解により製造される個々のオゾン酸の例を、
図3に示す。この知識は、任意の脂肪酸供給原料組成物の酸化的オゾン分解により生じる、特定のパーセンテージのジアシドアゼライン酸および全てのモノアシドを計算および予測するのに役立つ。したがって、本明細書に記載の全ての潤滑油組成物は、様々な脂肪酸を含む供給原料の酸化的オゾン分解により製造されることが予想される、特定のジアシドおよびモノアシドから生成された。異なるオゾン酸組成物は、購入した高純度化合物を用いて、ジアシド(例えばアゼライン酸)およびモノアシドの計算量を共に混合することにより生成された。我々は、これらの「合成」オゾン酸混合物を、模擬的オゾン酸と称す。模擬的オゾン酸の2つの特定のセットが、開発において広範囲にわたって用いられており、これらはPFADおよびEdenor OL−72から得られた。(a)PFADは、パーム油脂肪酸留出物(12%パルミチン酸、1.5%ミリスチン酸、68%オレイン酸、および16%リノール酸)から予想されるオゾン酸を表し、0.71のDMRをもたらす。(b)Edenor OL−72は、精製されて名目上72%オレイン酸を含むオレインから予想されるオゾン酸混合物を表し、模擬された具体的な組成は、75.6%オレイン酸、11.4%リノール酸、4.41%パルミチン酸、2.8%ステアリン酸および4.5%ミリスチン酸を含み、0.762のDMRを有するオゾン酸をもたらした。
【0099】
この方法の利点は、我々は、世界中で利用可能な任意の脂肪酸供給原料から生じることが予想される、特定のオゾン酸組成物を生成することが可能であったことである。一方で、1つのオゾン酸組成物のみが市販されていて、その組成物は、精製された牛脂から得られる特定の脂肪酸混合物の、酸化的オゾン分解により生じる。
【0100】
エステルポリオール類を生成するために用いられる、1つの特定の模擬的オゾン酸混合物は、パーム系脂肪酸の酸化的オゾン分解により得られることが予想される混合物であった。PFAD、分画されたPFAD、パーム核脂肪酸留出物(PKFAD)、および、部分的に精製されたオレイン、例えばEdenor OL−72(Emery Oleochemicalsにより製造される)に由来するオゾン酸混合物から得られる模擬的オゾン酸混合物の組成物は、各供給原料の特定の脂肪酸組成物を識別することが予測された。Edenor OL−72は、約72%のオレイン酸含有量を含む脂肪酸混合物である。高いオレイン含有量を有する任意の適切な脂肪酸混合物を、オゾン酸の供給原料として用いてよい。好ましくは、高いパーセンテージのオレイン酸を有するオゾン酸混合物は、より低いパーセンテージの飽和脂肪酸をもたらすので、用いられる。
【0101】
本発明の潤滑油素材は、改善された物理的特性、例えば、粘度、流動点、および分子量を有する。変化を、性能特性に違いがあるポリオールの構造に関連付ける能力は、本発明の特徴である。様々な組成因子、例えば、オゾン分解の供給原料、一級ポリオール類、余分な添加モノアシド、および潤滑油基油の特性に影響するモノアシドキャップの、量および同一性が存在する。これらの組成因子の特定の組み合わせは、カルボン酸二官能/単官能比(DMR)およびヒドロキシル/カルボキシル比(HCR)として知られる重要なパラメーターを確立し、中間体エステルポリオール類の構造を決定する。定義によれば、中間体エステルポリオール類は、前記中間体を作るのに用いられるポリオール(単数または複数)および酸(単数または複数)において、1.0よりも高いヒドロキシル/カルボキシル比を要する。
【0102】
これらの選択的な比は、潤滑油素材の、低温流動性における優れた性能、熱安定性、および広範な粘度特性の観点から、独特の特性を与えるのに重要な因子である。オゾン酸の二官能/単官能比(DMR)は、所望のポリオールエステル分子量を獲得するのに重要であり、それは、キャップ反応後に、標的のエステルポリオールエステルの粘度および揮発度を獲得する結果となる。また、エステルポリオールエステル類の粘度、揮発度、および分子量は、オゾン酸、および中間体エステルポリオール類の生成中に加える場合がある任意の余分な単官能酸の、DMRに依存することも分かっている。このことは、高性能の潤滑油用途のためのエステルポリオールエステル類の使用の観点から、重要であることが証明される。
【0103】
また、本発明は、ヒドロキシル/カルボキシル比(HCR)の修正が、エステルポリオールエステル粘度の調整に対して効果を有することも示す。
【0104】
本発明の目的は、エステルポリオールエステル類の粘度、流動点、および/または揮発度における変動、および、それらの由来となるエステルポリオール類の組成特性に対するこれらの特性の依存性を示すことである。エステルポリオールおよびエステルポリオールエステルの粘度に影響を及ぼす主な因子は、エステルポリオール類を生成するために用いられるオゾン酸混合物のDMRである。DMRは、オゾン酸または必要に応じて添加されるモノアシドも含み得るオゾン酸混合物における、モノアシドに対するジアシドのモル量の比である。より高いDMRの供給原料の使用は、エステルポリオールおよびエステルポリオールエステルの粘度の増加、および揮発度の減少をもたらす。反対に、DMR供給原料の減少は、エステルポリオール構成要素の分子量の減少をもたらし、エステルポリオール類およびエステルポリオールエステル類の粘度の減少および揮発度の増加をもたらす。
【0105】
図5は、ポリオールエステルTMPトリオレート(上段)、TMPと選択オゾン酸のエステル化反応により形成される、潤滑油エステルポリオール基油前駆体(中段)、および、エステルポリオール潤滑油基油前駆体のエステル化反応により形成される、エステルポリオールエステル(下段)の構造を示す。
図5の中段の構造は、本発明における、一級ポリオールTMPによる、オゾン酸の2ステップ転換の第一ステップ後に形成される、潤滑油基油前駆体である。
図5の下段の構造は、エステルポリオールがモノアシドキャップによりエステル化された後に形成される、本発明の潤滑油基油またはエステルポリオールエステルである。この例では、エステルポリオールのヒドロキシル基は、ノナン酸(ペラルゴン酸とも呼ばれる)によりエステル化される。ノナン酸は、エステルポリオールのエステル化の第二ステップ中に用いられる、典型的なモノアシドキャップである。最後の構造はエステルポリオールエステルであり、潤滑油基油として用いられる。
【0106】
DMRは、潤滑油素材の粘度および揮発度を調節する重要なパラメーターである。不飽和脂肪酸の酸化的オゾン分解により生じる二官能酸はアゼライン酸のみなので、DMR比は、供給原料の不飽和レベルが高くなればなるほど高くなり、供給原料の不飽和レベルが低くなればなるほど低くなることが分かる。分画されたPFADの組成物に基づいて、分画されたPFADの酸化的オゾン分解から生じる、オゾン酸組成物のDMRは、0.71である。比較して、大豆油脂肪酸の酸化的オゾン分解から生じるオゾン酸のDMRは、大豆油では不飽和度が増加するので、1.51の値を有する。潤滑油素材に見合うポリオールの組成範囲に近づくために、任意のオゾン酸組成物のDMRは、モノアシドの添加により必要に応じて下方調節され得る。一般に、DMRの値の増加は、三官能またはより高い官能基の一級ポリオール類の存在下において、より高い分子量の構造、および、より架橋された構造の形成を好む、アゼライン酸の量の増加を示す。これらの分子効果は、より高い粘度、および、より低い揮発度をもたらす。
【0107】
エステルポリオール類では、エステル化後に、利用可能なカルボキシル官能基と比較して増加した量の一級ポリオールヒドロキシル官能基は、HCRの値の増加およびヒドロキシル官能基の増加をもたらす。したがって、HCRの増加により測定されるように、カルボキシル官能基に対する一級ポリオールの量が多くなればなるほど、生じる中間体エステルポリオール類のヒドロキシル価(HV)は高くなる。また、生じるエステルポリオール類およびエステルポリオールエステル類の粘度は、HCRが減少するにつれて、増加することが予想される。これは、HCRの減少が、一級ポリオールのヒドロキシル基の取り込みを増加させて、一級ポリオールが2つのヒドロキシル基を有する場合は分子量の増加をもたらし、一級ポリオールが3つ以上のヒドロキシル基を有する場合は、架橋の増加をもたらすからである。したがって、供給原料DMRの調節は、異なるオゾン酸供給原料の特徴であり、そして、外部(external)モノアシドの添加により容易に減少させることができて、一級ポリオール類のHCRおよび選択は、様々な構造、粘度、および揮発度を有する、広範囲のエステルポリオールエステル類の潤滑油素材を製造するのに用いることができる。
【0108】
モノアシドによる、適切なパーム系エステルポリオール類のエステル化は、適切な範囲の粘度、流動点、および揮発特性を有する潤滑油基油を生じた。そのようなエステルポリオールのエステル化をしなければ、重要な性能特性は、ほとんどの潤滑油用途に関して達成されないであろう。
【0109】
TMPを一級ポリオールとして用いる場合、エステルポリオールエステル類の、40℃においてセンチストーク(cSと省略される)で測定された粘度(ISO粘度)は、中間体エステルポリオール類を生成するために用いられた、オゾン酸供給原料のDMRに強く依存した。この特徴は、より多量の二官能酸が、TMP(分子あたり3つのヒドロキシル基を含む)の間の架橋の増加を引き起こして、より高い潤滑油基油の粘度をもたらすので、分子ベースで理解可能である。反対に、より低いDMRの結果となる単官能酸の量の増加は、1つまたは複数のTMPヒドロキシル基を、モノアシドエステル類で阻害するせいで、TMPが関与する架橋を受けるTMPの相対的能力を阻害し、粘度の減少をもたらす。
【0110】
TMPを一級ポリオールとして用いる場合、潤滑油素材の粘度は、中間体エステルポリオール類を生成するために用いたヒドロキシル/カルボキシル比(HCR)に逆依存した。これは、ポリオールがジアシドとモノアシドの混合物と反応している場合、全ての酸基に比較して過剰のTMPヒドロキシル基が多ければ多いほど、ジアシドと架橋される(TMPのヒドロキシル基の3つ全ての取り込みを要する)TMPのパーセンテージは低くなるためである。架橋の減少は、エステルポリオールおよび得られる潤滑油基油粘度を減らす。反対に、もし、HCRを、ほぼ1(ほぼ同量のTMPヒドロキシル基およびオゾン酸カルボン酸基)に減少させるならば、ジアシドとモノアシドの同一混合物と反応させる場合、TMPの3つのヒドロキシル基の関与の割合がより大きくなり、より高い架橋および増加した粘度をもたらす。
【0111】
一態様によれば、本発明は、上記方法により得られる、または、得ることのできる、エステルポリオールエステルを提供する。
【0112】
一態様によれば、本発明は、上記方法により得られる、または、得ることのできる、エステルポリオールエステルを含むエステルポリオールエステル潤滑油基油を提供する。
【0113】
一態様によれば、本発明は、少なくとも1つのカルボン酸および少なくとも1つのエステルポリオールの反応生成物を含む、エステルポリオールエステル潤滑油基油を提供し、ここで、前記エステルポリオールは、少なくとも1つのエステル基、第一のヒドロキシル基、および少なくとも第二のヒドロキシル基を有してよい。エステルポリオールエステル潤滑油基油は、約700〜1900g/molの分子量(GPC)を有してよい。前記の、少なくとも1つのカルボン酸は、酢酸、プロパン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ノナン酸、2−エチルヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸、およびそれらの混合物からなる群より選択してよい。具体的には、前記の、少なくとも1つのカルボン酸は、ノナン酸であってよい。前記のエステルポリオールエステル潤滑油基油は、約−11.0℃より低い流動点を有してよい。具体的には、前記のエステルポリオールエステル潤滑油基油は、約−57.0℃〜約−11.0℃の間の流動点を有してよい。
【0114】
一態様によれば、本発明は、式Iの化合物を含むエステルポリオールエステル組成物を提供する:
【化8】
ここで、R1は、1つまたは複数のヒドロキシル基で場合により置換された、1〜17個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキル鎖であり、または、
R1は、2〜18個の炭素原子と、式R2−OHのポリオール化合物で場合によりエステル化された末端カルボン酸基とを有する、直鎖アルキルであり;
R2は、ヒドロキシル基に結合される場合、2〜12個の炭素原子を有する直鎖または分岐の一級ポリオールであり、ここで、各アルコール官能基は、式R1−COOHのモノカルボン酸またはジカルボン酸、または式R3−COOHのモノカルボン酸で、場合によりエステル化されて;および、
R3は、1つまたは複数のヒドロキシル基で場合により置換された、1〜17個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキル鎖である。
【0115】
一態様によれば、本発明は、式IIの化合物を含むエステルポリオールエステル組成物を提供する:
【化9】
ここで、R4は、酢酸、プロパン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ノナン酸、2−エチルヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸からなる群より選択されるモノカルボン酸のアルキル鎖であり、または、
R4は、式R5−OHのポリオール化合物で場合によりエステル化された末端カルボン酸基を有する、C2〜C18の直鎖アルキルであり;
R5は、ヒドロキシル基に結合される場合、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ビス(1,2−プロパンジオール)、2−メチル−1,3−プロパンジオール(2−MePG)、トリメチロールプロパン(TMP)、ジ−トリメチロールプロパン(Di−TMP)、ネオペンチルグリコール(NPG)、ペンタエリスリトール(PE)、ジペンタエリスリトール(diPE)、およびソルビトールからなる群より選択される一級ポリオールのアルキル鎖であり、ここで、各アルコール官能基は、式R4−COOHのモノカルボン酸またはジカルボン酸または式R6−COOHのモノカルボン酸で、場合によりエステル化されて;および、
R6は、酢酸、プロパン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ノナン酸、2−エチルヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、およびステアリン酸からなる群より選択されるモノカルボン酸のアルキル鎖である。
【0116】
一態様によれば、本発明は、式IIIの化合物を含むエステルポリオールエステル組成物を提供する:
【化10】
ここで、R7、R8およびR9は、独立に:
1つまたは複数のヒドロキシル基で場合により置換された、1〜17個の炭素原子の直鎖または分岐のアルキル鎖;
式R10−OHのポリオール化合物で場合によりエステル化された末端カルボン酸基を有する、C2〜C18の直鎖アルキル;または、
R10であり、ここでR10は、ヒドロキシル基に結合される場合、2〜12個の炭素原子を有する直鎖または分岐の一級ポリオールであり、および、R10における各アルコール官能基は、2〜18個の炭素原子を有する直鎖または分岐のモノカルボン酸、または、3〜9個の炭素原子を有するジカルボン酸で、場合によりエステル化される。
【0117】
一態様によれば、本発明は、式IVの化合物を含むエステルポリオールエステル組成物を提供し:
【化11】
ここで、nは0〜16であり;
R11およびR12は、それぞれヒドロキシル基に結合される場合、独立に、2〜12個の炭素原子を有する直鎖または分岐の一級ポリオールであり、ここで、各アルコール官能基は、式R13−COOHのモノカルボン酸または式R14−COOHのジカルボン酸で場合によりエステル化され;
R13は、1つまたは複数のヒドロキシル基で場合により置換された、1〜17個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキル鎖であり;および、
R14は、式R11−OHまたはR12−OHの一級ポリオール化合物で場合によりエステル化された末端カルボン酸基を有するC2〜C18の直鎖アルキルである。
【0118】
一態様によれば、本発明は、アゼライン酸エステルポリオールエステルを含むエステルポリオールエステル組成物を提供し、ここで、アゼライン酸は、少なくとも1つの、式R15−OHのポリオールでエステル化され;ここで、各ポリオールR15−OHは、2〜12個の炭素原子を有する直鎖または分岐の一級ポリオールであり、および、少なくとも2つのアルコール官能基を含み、独立に式R16−COOHのカルボン酸で場合によりエステル化され;および、R16は、1つまたは複数のヒドロキシル基で場合により置換された、1〜17個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキル鎖;および、式R15−OHのポリオール化合物で場合によりエステル化された末端カルボン酸基を有するC2〜C18の直鎖アルキル、からなる群より選択される。
【0119】
表Aは、非常に低い流動点を同時に達成しながら、ISOで44〜46cSの粘度範囲の粘度を有する潤滑油基油の候補を得ることに導いた実験の進行を示す。44〜46cSでのISO粘度を有する潤滑油は、油圧油としての高い一般的適用性を有する。本実験では、PFAD(パーム脂肪酸留出物)およびPKFAD(パーム核脂肪酸留出物)から形成されると予想される模擬的オゾン酸の組成物を、TMPでエステル化して、そして、生じたポリオール類をノナン酸でキャップした。流動点を推定するために、結晶化開始温度(COT)をはじめに用いた。
【0120】
【表1】
(a)TMPでエステル化して、ノナン酸でキャップした(b)COT:DSCにより決定された結晶化開始温度(c)C
8およびC
9酸の混合物でキャップした
【0121】
実験番号1では、本来備わっているDMR(0.71)を有するPFADに由来する模擬的オゾン酸の組成物を、比較的低い値のHCR(1.11)と組み合わせて用いた場合、要求されるよりもさらに高いISO粘度が得られた。実験番号2では、予想どおり、HCRは1.25に増加して、ISO粘度の部分的な減少をもたらした。実験1および実験2では、結晶化開始温度(COT)のみが測定された。これらは、これらの混合物の流動点を概算するのに用いることができる。その理由は、COTと流動点の両方とも、表Aの他の実験において決定されて、これらの2つの測定間にかなり良好な一致があるからである。実験番号3では、HCRは維持されたが、DMRは、オゾン酸のPKFAD模擬的組成物を用いた結果として、0.12に減少した。これは、PFAD模擬的オゾン酸と比較した、PKFAD模擬的オゾン酸における、著しく減少した濃度のオレイン酸および増加した量の単官能酸に起因した)。これらの変化は、ISO粘度(53.7cS)のさらなる低下をもたらすことが分かり、所望の範囲に近い。ISO粘度のこの低下は、はじめに形成されるエステルポリオールにおける、0.71から0.12へのDMRのかなりの低下(HCRは同一に維持しながら)に主に起因する。実験3での著しく増加した流動点は、模擬的PKFADオゾン酸は、模擬的PFADオゾン酸よりも、著しく大量の高融点C
12、C
14およびC
16飽和脂肪酸を含むという事実に起因した。
【0122】
表Aに挙げた連続する実験4、実験5、および実験6では、はじめに形成されるエステルポリオール類におけるHCRの値を一定に維持しながら、可変量の単官能ノナン酸を用いてDMRの値を調節しながら、PFAD由来の模擬的オゾン酸の組成物を用いた。本実験の目的は、ISO粘度の値が44〜46cSの範囲内であるエステルポリオールエステルを得ることであったので、44.2cStのISO粘度が、−57℃の流動点と共に達成された実験6で、実験を止めた。低い流動点は、より高い分子量の飽和脂肪酸の置換における、より低い分子量のノナン酸(飽和脂肪酸)の取り込みにより生じる。組み合わせた性能特性は、プレミアム潤滑油基油の特徴である。
【0123】
ノナン酸でキャップされたTMPに基づくエステルポリオール類(エステルポリオールエステル類)の粘度(センチポイズまたはcP)を、HCRを1.25に維持しながら、前駆体エステルポリオール類のDMRに対してプロットした
図6に、表Aに示されるタイプのデータをプロットする。エステルポリオール類は、様々な量のノナン酸が添加されて様々なDMRの値を得ながら、72%のオレイン酸(Emery Oleochemicalsにより製造されるEdenor OL−72)、PFAD、および、PFADとPKFADの混合物を名目上含む、分画されたオレイン酸から製造されることが予想される模擬的オゾン酸のエステル化により生成された。仮想オゾン酸の各タイプは、別々の線を描き、DMRに対する粘度のプロットが比較的直線であることを見ることができる。これらの線の比較的急な傾斜は、潤滑油基油の粘度が、それらのDMRの値に高く依存することを示す。PKFADおよびPFADオゾン酸の混合物の粘度は、任意のDMRの値において、模擬的な高いオレイン酸およびPFADのものよりも高かった。この傾向は、PKFADが、模擬的な高いオレインおよびPFAD自体よりも、より大きな分子量の飽和脂肪酸をより大量に含むという事実に起因する。重要なのは、はじめに製造されたエステルポリオールをノナン酸でキャップした後に、可変量のノナン酸を含むPFADの組成物に対応する模擬的オゾン酸の組成物を用いて、約40cP〜約100cPの範囲の様々な粘度が得られたという事実である。この挙動は、この出発原料から、前駆体エステルポリオール類のDMRを調節するだけで、広範な潤滑油基油の候補を得ることができることを示す。さらに、
図6に示すもののようなプロットは、あるHCRの値で操作するときに、DMRの値を調節するだけで、操作者が所望の粘度に「ダイヤルイン(dial in)」できるようにすることが分かる。
【0125】
DMRを0.11〜0.12に維持したときに得られる、エステルポリオール類のHCRの値に対する、TMPに基づく潤滑油基油の候補の粘度のプロットを、
図7に示す。ノナン酸を添加してDMRを規定値に調節しながら、潤滑油基油の候補を、PFADまたはPKFADから予想される模擬的オゾン酸の組成物から生成した。一定のDMRでの、HCRに対する粘度のプロットは、比較的直線であり(PKFADプロットに基づく)、そして、粘度は、HCRに反比例していることが分かる。また、
図7での線の傾斜は、
図6でのものより著しく小さく、DMR変動は、HCR変動よりも、粘度に対する優れた効果を有することを示す。PKFAD系の粘度は、全てのHCRの値で、PFAD系のものよりも高かった。この傾向は、PKFADが、PFADよりも大きい分子量の飽和脂肪酸を、より多く含むという事実に起因する。ノナン酸でのキャップ後の、約0.12のDMRに対するポリオールエステルの粘度の値を、表Cに挙げる。
【0127】
図6および
図7に基づき、ノナン酸などのモノアシドでのキャップを後に続けた場合、最終基油を生成するのに用いられるポリオールのDMRおよびHCRのいずれかを調節することにより、潤滑油基油の候補者の粘度は、所望の値に調節することができることが分かる。これは、製造者が、非依存性のパラメーターの調節または所望の粘度を得るための互いに協同した調節により、様々な基油ISO粘度を得ることを可能にする。
【0129】
表Dは、エステルポリオールエステル潤滑油基油のISO粘度が、DMRの値の増加に伴って増加し、対応するエステルポリオール類のHCRの値の増加に伴って減少するという傾向を支持する。DMRの増加に起因する予測粘度の増加は、HCRの増加により予測される粘度減少によって、緩和される、または部分的に緩和されるはずなので、これらの2つの傾向の組み合わせは、ほぼ同じISO粘度を有する潤滑油基油に関する、HCRに対するDMRのプロットが、かなり直線的であるはずであると予測する。したがって、
図8において、同一の粘度(49cS〜58cS)を有する、流動性に関するDMRおよびHCRのプロットは、かなり直線的であることが分かる。
【0130】
表Dにおける実験1に対する比較実験2では、模擬的オゾン酸のDMRとHCRの両方の値を同時に上げることにより、同様のISO粘度が得られた。実験2に対する実験3から得られた生成物は、HCRを増加させずにポリオールDMRを増加した場合に、増加したISO粘度が得られることを示し、一方で、実験3に対する実験4は、DMRを増加させずにHCRを増加させた場合に、減少したISO粘度が得られることを示す。実験5〜7で得られた潤滑油基油の候補は、いずれのノナン酸も含有しなかった。したがって、材料のDMRは、修飾無しのオゾン酸の本来備わっているDMRを反映する。実験5〜7でのポリオール類は、最大量の架橋および潜在的なゲル形成を生じる条件下で製造された。組成物がゲル点に近いことの証拠として、透明溶液を得るために濾過が必要なゲルは非常に少量であった。しかしながら、濾過された溶液は、良い挙動を示した。そして、HCRの値に対するISO粘度の逆依存性を再度示す。比較的高いISO粘度の潤滑油基油の候補は、競合する、より高い粘度の潤滑油基油において典型的に見られるよりも、さらに低い流動点を有する。
【0131】
また、適度に高いDMRおよび低いHCRを用いて、236cSのISO粘度を得た場合に、比較的高粘度の材料が得られた実験8も、表Dに示す。この材料は、−30℃の比較的低い流動点を有し、そして、この特性は、その高粘度と組み合わせて、この材料をギア油またはグリース素材の良い候補にさせることができた。上記の結果は、様々な増加したISO粘度のギアおよびグリース素材の候補が、TMPでのオゾン酸のエステル化により製造されるエステルポリオール類の、DMRおよびHCRの値の同時の増加により、製造され得ることを示す。
【0132】
表Dに示すように、DMRおよびHCRの両方を同時に増加させることにより得られる潤滑油基油は、同様のISO粘度を得ながら、材料コストを減少させることができる。材料コストを減少させる主な因子は、最低コストの構成要素であると思われる増加した量の比較的に精製されていないオゾン酸が、これらの条件下で取り込まれることである。この効果の理由は、より少ない量の追加のモノアシド、例えばノナン酸を、増加したオゾン酸のパーセンテージをもたらす模擬的オゾン酸混合物に添加することにより、DMRの値の増加が得られるからである。Dは、上述の反応により製造される一連の潤滑油基油の候補に関するDMRおよびHCRのデータを提供しながら、この傾向を示す。
【0134】
表Eは、エステルポリオール類の部分的キャップの、結果として生じたエステルポリオール類の混合物とエステルポリオールエステル類の特性に対する効果を示す。100%未満のキャップ酸を有するキャップエステルポリオール類は、キャップに必要なモノアシドの量が、より少ないため、より低コストの潤滑油素材をもたらすはずである。表9に示すデータは、部分的にキャップされた、および完全にキャップされた、エステルポリオール類の、選択の物理的特性および性能特性を示す。DMRおよびHCRがそれぞれ0.11および1.25の値であるPFADに由来する模擬的オゾン酸から、エステルポリオール類を生成し、そして当該生成は、全ての必要な試験を行なうのに利用可能な材料が不十分なため、再生成されなければならなかった。以下は、完全にキャップされた、および部分的にキャップされた材料(キャップ(%):62%〜76%)の間の試験特性における少しの違いである。不完全にキャップされた潤滑油の候補は、ASTM D2619により指示される4つの加水分解的安定性試験(酸の数の変動、水の全酸性度、重量銅パネルの溶解(weight copper panel dissolution)、および、40℃での粘度変化(%))において、わずかにより高いISO粘度、わずかにより低い流動点、およびわずかに増加した安定性を有したことが分かる。したがって、不完全なキャップは、完全にキャップされたエステルポリオールエステル類と比べて多少高い加水分解的安定性も与えながら、完全にキャップされたエステルポリオールエステルに匹敵する物理的特性を与えることができることが分かる。したがって、これらの不完全にキャップされたエステルポリオール類は、それらが、完全にキャップされたエステルポリオール類と比較して、水と激しく振ったときに持続的なエマルションを生じるという、かなりより良い傾向を有することを示した。それにもかかわらず、特定の潤滑油用途は、それらの増加した加水分解的安定性からの恩恵も受けながら、これらの素材の減少した材料コストから恩恵を受けることができる。
【0136】
表Fは、エステルポリオールのDMRを減らすため、およびキャップ目的のためにも、異なるモノアシドを用いる場合に、および、選択の追加の一級ポリオール類が用いられる場合に、2ステップ法で得られるエステルポリオールエステルの特性における変動を示す。実験1では、ノナン酸の代わりに酢酸をキャップ酸として使用すると、ほぼ同じISO粘度、およびエステルポリオールエステルの流動点のほんのわずかな減少をもたらすことが分かる。ノナン酸に関する酢酸の置換は、ノナン酸と比較して、それは、さらにより低分子量であるため、好ましい経済的影響を有することができる。実験2では、Emery 1210(市販のC
6〜C
9モノアシドの混合物)でのキャップが、エステルポリオールエステルの粘度および流動点における適度な減少を(前に説明したDMRおよびHCRにおける変動に加えて)与える代替手段を提供する。モノアシドの混合物は、一般に、純粋な酸よりも低価であり、したがって、Emery 1210の使用もまた、経済的利点を提供することが期待される。同様に、実験3のデータは、ノナン酸よりむしろ、ヘキサン酸でのキャップもまた、エステルポリオールエステル類の粘度を減少させるために用いることができることを示す。実験1に対する実験4でのデータの比較は、中間体エステルポリオール類の生成において、ノナン酸に関してEmery 1210モノアシドを代替した場合(ノナン酸でキャップした場合)、エステルポリオールエステルは、ISO粘度が減少することを示す。実験5と実験6の比較は、20モル%の一級ポリオールTMPを、分岐ジオール2−メチル−1,3−プロピレングリコールで置換すると、流動点の小さな減少も示しながら、粘度の非常に大きな減少をもたらすことを示す。この粘度減少は、別の分岐一級ポリオールの導入、および、ジオールによるトリオール(TMPM)の部分的置換(架橋の減少をもたらす)も組み合わせた効果から生じたのであろう。これらの結果は、エステルポリオールエステル類の粘度を減少させる別の手段は、二官能分岐一級ポリオール類による、部分的または完全なTMPの置換によることを示す。
【0137】
ここで、本発明を一般的に記載したが、説明する目的で提供されて本発明を限定することを意図しない以下の実施例を参照することにより、同じものが、より容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0138】
(実施例1)
本実施例は、分画されたPFADの酸化的オゾン分解から予想されるオゾン酸から製造される、代表的なエステルポリオールエステル(LRB 52921−101−21)である。DMRを0.05に調節するために追加のヘキサン酸を添加して、通常の脂肪酸配分の分画されたPFAD由来のこれらの模擬的オゾン酸を、TMPでエステル化した。反応物質を、ガス分散ブロック(冷却コンデンサーおよび蒸留水を回収するための回収フラスコを具備したVigareux蒸留カラム)を具備したガス注入チューブを具備した丸底フラスコ内で混合した。はじめに混合物を、機械的撹拌を用いて、100℃でホモジナイズした。温度を160℃に上げて触媒を活性化した。エステル化プロセスの間に生じた水を、受け取りフラスコ内に集めた。それから数時間、生産される水の割合が低くなるまで温度を210℃に上げた。エステル化を完了付近まで進めるために、不活性ガス(例えばアルゴンまたは窒素)を反応混合物内に、0.5 SCFHの速度で注入した。酸価(AV)が1mg KOH/g未満のときに、反応が完了したと見なした。A.Spyros(J.Appl.Polym.Sci.2002,83,1635)に記載の2−クロロ−4,4,5,5−テトラメチルジオキサホスホランによるヒドロキシル基の最初の誘導体化の後に、エステルポリオールのAVおよびヒドロキシル価(HV)を、リンNMR分光法により同時に決定した。添加されるキャップ酸の必要量は、エステルポリオール類のHVに依存する。
【0139】
それから、エステルポリオール類を、Emery 1210カルボン酸でエステル化、またはキャップして、エステルポリオールエステル類を製造する。実施例1では、粘度は、40℃で18.96cStであり、より高いDMRを用いた実施例よりも著しく低かった。より低いDMRは、エステルポリオールエステル分子量の減少をもたらし、粘度の減少および揮発度の増加をもたらした。
【0140】
(実施例2)牛脂由来のオゾン酸を用いた、2ステップ法
ステップ1
アゼライン酸(Emery 1110):28.54%
ペラルゴン酸(Emery 1202):35.69%
TMP:35.77%
触媒:0.06%
【0141】
ステップ2
ペラルゴン酸(Emery 1202):46.8%
触媒:0.06%
【0142】
反応物質を、ガス分散ブロック(冷却コンデンサーおよび蒸留水を回収するための回収フラスコを具備したVigareux蒸留カラム)を具備したガス注入チューブを具備した丸底フラスコ内で混合した。はじめに混合物を、機械的撹拌を用いて、100℃でホモジナイズした。温度を上げて触媒を活性化した。それから温度を180℃に上げて、続いて210℃に上げた。エステル化を完了間近まで進めるために、不活性ガスを反応混合物内に0.5 SCFHの速度で注入した。酸価(AV)が1mg KOH/g未満のときに反応完了と見なした。それから、エステルポリオール類を、Emery 1202カルボン酸をエステル化またはキャップして、エステルポリオールエステル類を製造する。
【0143】
【表7】
【0144】
<ポリオールエステル類への、オゾン酸の1ステップ転換>
オゾン酸をポリオールエステル類に転換する2ステップ法に対する代替の実施形態は、本発明の1ステップ法である。1ステップ法では、オゾン酸、随意的な追加のモノアシド、および一級ポリオールは、全て一緒に添加されて同時に反応される。1ステップ法を
図9に示す。1ステップ法は、2ステップ法におけるこれらの組成物と同様の組成物および特性を得るために、余分なモノアシドを反応の始めに取り込むことにより、2ステップ法のキャップするステップを回避する。
【0145】
しかしながら、2ステップ法は、生じる基油の組成物および性能においてだけでなく、反応時間の短縮においても、1ステップ転換よりも、重要な優位性を有することができる。2ステップ法では、第一の反応は、過剰のヒドロキシル基と行われてエステルポリオールが生成され、第二のステップは通常、過剰のキャップ酸と行われる。各エステル化ステップはそれぞれ過剰の試薬で行なわれるので(第一ステップではヒドロキシル基、第二ステップではカルボン酸基)、エステル化反応全体は、類似する1ステップ法の合計反応時間よりもさらに急速に完了する。この2ステップ法を用いて、潤滑油基油の組成物が、優れた流動点(−35℃より低い)、および、かなり低い粘度(<ISO 25)から高い粘度(>ISO 100)までの様々な粘度で作られた。潤滑油の試験では、材料は、良好な摩耗特性を有し、一級ポリオール類としてグリセリンおよびTMPの両方から生成された組成物は、完全に生分解性であることが分かった。
【0146】
2つの方法の間の組成の違いは、2ステップ法の第一ステップでは、一級ポリオール(典型的に三官能のTMP)は、反応するジアシドを、モノアシドと比較して著しく(1ステップ法におけるこの比率に比べて)より大量に有する点である。対照的に、1ステップ法におけるTMP分子は、本質的に、反応全体の間に、より高い濃度のモノアシドに曝される。それ故に、1ステップの反応では、TMP分子は、二官能アゼライン酸とTMPの反応に起因する鎖伸長および架橋の減少も受けながら、モノアシドとの反応の増加を受けて、TMPトリ(単官能酸)エステル類[TMP(O
2CR)
3]を形成することが予想される。TMPトリ(単官能酸)エステル類は、その反応で形成される全種の中で、分子量が最も低くて最も揮発性であるので、2ステップ法による生成物は、1ステップ法により製造されるものと比較して、より高い分子量および低い揮発度を有することが予想される。
【0147】
エステル化プロセスの1ステップと2ステップの比較では、DMRが0.21、0.40、および0.50の場合に、DMRが変動した。DMRが0.21でHCRが1.24である実験の比較セットでは、1ステップの生成物は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)に基づいて、より低い分子量の構成要素へシフトした。また、この生成物は、より揮発性の構成要素の存在を示す、17℃さらに低い揮発開始温度(潤滑油の相対的揮発度を決定するためのTGAのスキャンに基づく)を有した。
【0148】
DMRが0.4または0.5のいずれかであった、他の2つの比較では、2ステップの生成物は、わずかに減少した流動点および粘度を有しながら、2ステップおよび1ステップの生成物の特性は同様であった。しかしながら、DMRがより高い場合(2つのプロセスにより得られる生成組成物の間の差別化を生じさせる)は、モノアシドの量が減少するので、上述の反応の検討に基づいて、DMRが増加するにしたがい緩和する2ステップおよび1ステップの間の生成物の違いを予想するであろう。
【0149】
1ステップ法に対して2ステップ法が有利であり得る別の反応特性は、それらの合計反応(エステル化)時間である。表Gに示すように、3つの比較実験を行ない、2ステップ法および1ステップ法の間の違いを、以下のDMRおよびHCRの値の組み合わせで試験した:表Gに示すように、DMR 0.21、HCR 1.24(潤滑油1Aおよび1B);DMR 0.50、HCR 1.25(潤滑油2Aおよび2B);およびDMR 0.40、HCR 2.00(潤滑油3Aおよび3B)。このデータの精査は、潤滑油1Aと1Bおよび2Aと2Bを比較すると、対応する2ステップと1ステップの反応の間の合計エステル化時間にはほとんど差がないことを示される。しかしながら、我々は、これらの条件下でのエステル化速度は、動力学的に、2ステップ法の第一のエステル化ステップでは、より多い過剰のヒドロキシル官能基の存在から恩恵を受けて、また、第二ステップでは、過剰のカルボン酸官能基の存在の恩恵も受けるので、より高いHCR値を用いた場合に、合計エステル化時間における有意な減少が2ステップ法においてより顕著であると信じた。これらの予想のとおりに、表Gにおいて、潤滑油3Aを生成するための合計エステル化時間が、潤滑油3Bを生成するために必要なエステル化時間よりも有意に少なかったことが分かる。所定の2ステップ法において、潤滑油3Aを製造するのに必要な合計エステル化反応時間は、非常に似た反応条件下の1ステップ法で潤滑油3Bを製造するために必要な時間の60%であった。2ステップおよび1ステップのエステル化反応はどちらも、典型的に、シュウ酸錫または酸化錫触媒により触媒され、2ステップ法の最後のエステル化反応で用いられる過剰のモノアシドは、真空蒸留または蒸気脱臭により除去される。第二ステップで用いられる過剰のモノアシドを除去するための蒸留または脱臭は、別々の反応装置内で行われるので、この時間は、反応時間の見積もりに計算されない。この減少した反応時間は、表Dに示すように、高いHCRが好ましい経済的影響を有する条件下での2ステップ法と関連する。したがって、所望の粘度の基油を生成するための好ましい方法は、減少したエステル化反応時間と、増加した経済的利益も獲得するために、組成物のDMRおよびHCRの同時の増加を合わせることである。
【0150】
さらに、潤滑油番号1Aおよび1Bに関する、揮発TGA開始温度およびGPC最高ピークデータの精査は、低いDMR値(0.21)では、1ステップ法と比較して、2ステップ法は、より低い揮発度かつ、より高いMW(これらのTGA開始温度およびGPC最高ピーク値に基づく)を有する基油をもたらすことを示す。相対的揮発度および分子量は、低いDMR値においてはこのような傾向にあるが、より高いDMR値(これらのパラメーターはまだ測定していないが、例えば0.40および0.50)ではそのような傾向はより少ないことが予想される。
【0151】
【表8】
【0152】
図10は、ポリオールエステル類へのオゾン酸の2ステップ転換により得られる改善を図示する。2ステップのポリオールエステルのための合計エステル化時間は、7.25時間であった。この反応でのHCRは2.0であり、エステル化キャップ反応は、カルボキシル/ヒドロキシル比1.2(およびHCR比0.83)を有した。1ステップ法でのHCRは1.005であり、エステル化時間は12.0時間であった。この実施例では、ポリオールエステル類を製造するために必要な2ステップ法の合計反応時間は、1ステップ法を行なうのに必要な時間の40%未満であった。
【0153】
特許請求の範囲に記載される要旨は、任意のデメリットを解決する実施形態または上述したような環境でのみ実施する実施形態に限定されない。むしろ、この背景は、本明細書に記載の一部の実施形態が実施され得る、例示的な技術分野について説明するためにのみ提供される。本明細書に記載の書誌参照は、参考文献一覧の形で便宜上載せられ、実施例の終わりに追加される。そのような書誌参照の全内容は、本明細書中に参照により援用される。
[参考文献]