(54)【発明の名称】メチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}メチルカルバメートの調製方法および医薬上活性な化合物として用いるためのその精製方法
【文献】
DISCOVERY OF RIOCIGUAT (BAY 63-2521): A POTENT, ORAL STIMULATOR OF SOLUBLE GUANYLATE 以下備考,CHEMMEDCHEM,2009年 5月,V4 N5,P853-865,CYCLASE FOR THE TREATMENT OF PULMONARY HYPERTENSION
【文献】
SCHWOCH S.,189. 2,3-DIHYDROSPIRO[1H-4- AND 5-AZABENZIMIDAZOLE-2,1'-CYCLOHEXANE] 以下備考,HELVETICA CHIMICA ACTA,スイス,VERLAG HELVETICA CHIMICA ACTA,1994年 1月 1日,V77 N8,P2175-2190,(=SPIRO[CYCLOHEXANE-1,2'(3'H)-1'H-IMIDAZO[4,5-B]PYRIDINE] AND SPIRO[CYCLOHEXANE-1,2'(3'H)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
式(III)で示される化合物の接触水素化
本発明に記載の方法の第1工程は、式(III)で示される化合物の接触水素化から始まる。
【化10】
【0018】
これは、ラネーニッケルまたは産業上慣習的なPt/炭素もしくはPd/炭素触媒の存在下において実施されうる。Pt/炭素およびPd/炭素が優先される。N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)またはN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、好ましくはDMFが、溶媒として機能する。
【0019】
水素化条件は、温度:40〜80℃、好ましくは50〜70℃、水素圧:2〜90bar、好ましくは5〜70bar、水素化時間:1〜72時間、好ましくは3〜36時間である。
【0020】
濾過によって触媒を除去した後、生成物は、C
1−C
4−アルコール、好ましくはメタノールもしくはエタノール、および/または水で沈殿する。メタノール、イソプロパノールまたはエタノールおよび水の混合物が優先される。
【0021】
本発明において、C
1−C
4−アルコールは、1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルコールである。以下のものは、例としておよび選択肢として記載されうる:メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールおよびtert−ブタノール。該定義はまた、下記のC
1−C
4−アルコールに適用する。
【0022】
沈殿前に一部の溶媒を除去することも可能であり、溶媒の0〜80%、好ましくは40〜70%の部分的蒸留除去は、本発明に従う。
【0023】
該方法にて得られた湿潤生成物を減圧下乾燥する:これから、(式(IV)で示される遊離塩基に相当する)式(VIII)で示される生成物を得る。
【0024】
式(VIII)で示される化合物とクロロギ酸メチル(V)との反応
次いで、式(VIII)で示される生成物を、例えば、新規ピリジン・フリー法において式(V)で示されるクロロギ酸メチルと反応させて、式(VI)で示される生成物を得る:
【化11】
【0025】
反応に用いられる溶媒は、C
1−C
4−アルコール、好ましくはエタノール、メタノール、イソプロパノール、特に好ましくはイソプロパノールである。
【0026】
クロロギ酸メチルの量は、用いられる式(VIII)で示される化合物を基にして、1.0〜3.0当量、好ましくは1.0〜2.0当量である。
【0027】
可能な反応温度は、0〜75℃、好ましくは15〜50℃である。
【0028】
反応中、塩化水素が形成され、それは、反応混合物において、式(IX)で示される化合物、すなわち、式(VI)で示される生成物の塩酸塩を形成する。式(IX)で示される該生成物を、HCl含有生成物として単離し、式(VI)で示される生成物に塩基を添加して開裂しうるか、または式(VI)で示される生成物が直接単離されるように、単離前に塩基を添加して開裂しうる。
【化12】
【0029】
本発明によれば、単離前に塩基を添加して式(IX)で示される生成物を開裂し、直接的に式(VI)で示される遊離塩基を単離することが好ましい。
【0030】
本発明によれば、適当な塩基は、式(I)で示される化合物のものより高いpKBを有するあらゆる塩基である。言及されうる例は、以下のものである:アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩およびリン酸塩、含窒素有機塩基、例えば、トリアルキルアミン、グアニジンまたはアミジン。言及されうる例は、以下のものである:水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウムおよび炭酸バリウム、リン酸ナトリウムおよびリン酸カリウム、直鎖、環状または分枝C
1−C
20−アルキルラジカルを有するトリアルキルアミン、ならびに環状または開鎖グアニジンまたはアミジン。本発明によれば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、ジシクロヘキシルエチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、シクロヘキシルジエチルアミン、トリイソオクチルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、トリヘキサデシルアミン、N−メチルモルホリン、DBU、DBN、テトラメチルグアニジンなどが優先される。トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、DBU、DBNが特に優先される。
【0031】
塩基の量は、用いられる式(V)で示されるクロロギ酸メチルを基にして、1.0〜2.0当量、好ましくは1.0〜1.5当量である。
【0032】
塩基との反応のための可能な反応温度は、0〜100℃、好ましくは15〜70℃である。
【0033】
式(VI)で示される生成物は懸濁液中に存在しており、濾過によって単離される。それをC
1−C
4−アルコールで洗浄し、慣習的方法で減圧下乾燥する。
【0034】
式(VIII)で示される化合物と二炭酸ジメチル(X)との反応
本発明に記載のさらなる方法において、式(VIII)で示される生成物を、式(X)で示される二炭酸ジメチルと反応させて、式(VI)で示される生成物を得る。該反応は、任意の塩基、例えば、ピリジンなどを必要としない。
【化13】
【0035】
該反応に用いられる溶媒は、C
1−C
4−アルコール、好ましくはエタノール、メタノール、イソプロパノール、特に好ましくはイソプロパノールである。
【0036】
二炭酸ジメチルの量は、用いられる式(VIII)で示される化合物を基にして、1.0〜3.0当量、好ましくは1.0〜2.0当量である。
【0037】
可能な反応温度は、0〜65℃、好ましくは15〜40℃である。
【0038】
式(VI)で示される生成物は沈殿し、濾過によって単離される。それをC
1−C
4−アルコールで洗浄し、慣習的方法で減圧下乾燥する。
【0039】
二炭酸ジメチルとの反応において、式(VI)で示される生成物は、直接的に得られる。したがって、塩基のさらなる添加を必要としない。
【0040】
両方の方法、すなわち、式(VIII)で示される化合物とクロロギ酸メチルとの反応、次いで、塩基での式(IX)で示される塩酸塩の開裂または式(VIII)で示される化合物と二炭酸ジメチルとの反応は、2つの方法からの式(VI)で示される生成物が同一の手法にて式(I)で示される生成物へのさらなる転換に用いられうるように、同等の品質の式(VI)で示される生成物を得る。
【0041】
本発明によれば、両方の方法が好ましい。
【0042】
式(VI)で示される化合物は、溶媒和物または溶媒含有固形、例えば、メタノール、エタノール、またはイソプロパノール含有固形を形成しうる。したがって、式(IX)で示される塩酸塩が式(VI)で示される生成物に開裂される場合または式(VI)で示される生成物が二炭酸ジメチルと直接的に合成される場合、溶媒として用いられるC
1−C
4−アルコールの溶媒和物を得ることが可能である。溶媒和物は非常に安定でありうるので、式(VI)で示される生成物の乾燥中、完全には分解されず、かつ明らかに、顕著な溶媒残渣、すなわち、例えば、当該C
1−C
4−アルコールの残渣は、その結果、式(VI)で示される生成物中に残存している。一方、高すぎる温度では、副生成物を形成して分解しうるので、式(VI)で示される生成物は熱すぎる温度で乾燥させてはいけない。
【0043】
したがって、本発明によれば、110℃を超えない生成物温度にて、特に好ましくは、100℃を超えない生成物温度にて、塩基との式(IX)で示される塩酸塩の開裂または二炭酸ジメチルとの直接的合成からの式(VI)で示される生成物を乾燥することが好ましい。ここで、式(VI)で示される生成物中に残存し、式(II)で示される中間体または式(I)で示される生成物を調製するための該形態で式(VI)で示される生成物を使用するための溶媒として存在するC
1-C
4−アルコールの任意の残渣が特に好ましい。本発明によれば、特に好ましくは、式(VI)で示される生成物は、0〜13%の範囲の残存溶媒としてイソプロパノールを含有する。
【0044】
式(VI)で示される化合物のメチル化
該手法で得られる式(VI)で示される生成物は、自体公知の手法で、例えば、WO03/0945451またはChemMedChem 2009,4,853-865に記載の1つにしたがって、メチル化剤Me-Xと反応して、多量の式(I)で示される化合物を含有する粗生成物を得る。
【化14】
【0045】
本発明にしたがって用いられるメチル化剤Me−Xは、ヨウ化メチル、硫酸ジメチル、トルエンスルホン酸メチルなどであり、ヨウ化メチルまたは硫酸ジメチルが好ましい。
【0046】
式(I)で示される化合物の粗生成物の精製
本発明によれば、式(I)で示される粗生成物は、医薬上活性な化合物として用いるために精製される。そのために、最初に、中間体として多量の式(II)で示される化合物を含有する混合物が形成される。
【化15】
【0047】
そのために、式(I)で示される粗生成物を、適当な場合、ケトン、エーテル、エステルまたはアルコールの群からの医薬上許容される基本溶媒の存在下において、DMSOに溶解する。言及されうる溶媒の例は、以下のものである:メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、酢酸エチル、酢酸イソプロピルまたは酢酸プロピル、酢酸ブチル、tert−ブチル メチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど。エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが優先される;酢酸エチルが特に優先される。これらの溶媒の混合物を用いることも可能である。
【0048】
DMSOを、用いられる式(I)で示される粗生成物の量を基にして、100〜750重量%、好ましくは150〜500重量%の量で加える。
【0049】
適当な場合、活性炭を、用いられる式(I)で示される粗生成物の量を基にして、0.25〜35重量%、好ましくは0.5〜20重量%の量で該混合物に加えうる。
【0050】
溶液を形成するために、混合物を、40〜120℃、好ましくは50〜100℃に加熱する。
【0051】
式(I)で示される医薬上許容される生成物を形成するために、溶液を濾過しなければならない。活性炭が加えられているか否かに関係なく、濾過を実施しなければならない。
【0052】
DMSOに加えて、式(I)で示される粗生成物の溶液に加えられる、すなわち、濾過前に用いられる、医薬上許容される溶媒の量は、DMSOを基にして、25〜200重量%、好ましくは40〜100重量%である。
【0053】
熱時濾過が行われ、その温度は40〜120℃、好ましくは50〜100℃である。
【0054】
濾過後、医薬上許容される溶媒、好ましくは上記と同一の溶媒を、熱濾液に加える。これは、式(II)で示される生成物の結晶化をもたらす。
【0055】
濾過前および後に加えられる溶媒の全量は、DMSOを基にして、200〜1500重量%、好ましくは400〜1200重量%である。
【0056】
添加温度は、30〜110℃、好ましくは35〜90℃である。
【0057】
沈殿を終了するため、多量の式(II)で示される化合物を含有する固体の単離前に、混合物を0〜35℃の温度範囲、好ましくは例えば、20〜30℃の常温に冷却する。
【0058】
慣習的単離デバイス、例えば、ヌッチェ(Nutsche)フィルターまたは遠心分離機を用いて、単離を行う。母液を除去するために、単離された物質を、単離中、医薬上許容される溶媒、好ましくは上記と同一の溶媒で洗浄する。
【0059】
DMSO再溶解の後、単離された物質は、多量の式(II)で示される生成物を含有する。さらに、少量の式(I)で示される生成物はまた、通常、DMSOと溶媒和物を形成することなく直接沈殿しうる。異なる化学量の溶媒和物の形成または不定の化学量の溶媒付加物の形成も可能にする。さらに、DMSOはまた、接着性残存溶媒として非結合型で存在していてもよい。単離された物質中のDMSOの含量は、通常、10〜25重量%、好ましくは12〜17%である。本発明によれば、特に好ましくは、式(II)で示される生成物は、該混合物の形態で形成され、式(I)で示される精製された生成物を調製するために用いられる。
【0060】
該手法で得られた式(II)で示される生成物は現在、式(I)で示される精製された生成物への転換のために、乾燥されうるか、あるいは、溶媒残渣、すなわち、接着性DMSOおよび沈殿溶媒(複数でも可)を含む湿潤形態で用いられうる。
【0061】
式(II)で示される化合物は新規である。それは、以下の実施例に記載の純粋形態で調製され、分析的に特徴付けられうる。
【0062】
医薬用途のために、DMSOは、式(II)で示される生成物または多量の式(II)で示される化合物を含む混合物から除去されなければならない。
【化16】
【0063】
そのために、式(II)で示される生成物または多量の式(II)で示される生成物を含む単離された混合物を、ケトン、エーテル、エステルまたはアルコールの群からの医薬上許容される溶媒中で煮沸する。言及されうるかかる溶媒の例は、以下のものである:メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、酢酸エチル、酢酸イソプロピルまたは酢酸プロピル、酢酸ブチル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、アセトン、メチルエチルエーテル、メチルイソブチルケトンなど。エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが優先される。これらの溶媒の混合物を用いることも可能である。酢酸エチルまたは酢酸エチルとエタノールとの混合物が特に優先される。
【0064】
当該溶媒の還流温度にてまたは適当な場合、わずかに上昇した圧力にて煮沸が生じる。温度は、50〜150℃、好ましくは80〜120℃である。
【0065】
本発明に記載の方法は、先行技術に比べて顕著な利点をもたらす。式(IV)で示される化合物(三塩酸塩)の中間体形成を伴わない式(VIII)で示される化合物(遊離塩基)の直接的単離が、収率を顕著に増大させ、同時に、工業的操作を顕著により単純にする(プラントの耐酸性部分が存在しない)ことは特に驚くべきものであった。
【0066】
次いで、式(VIII)で示される化合物は、クロロギ酸メチルまたは炭酸ジメチルとの新規ピリジン・フリー法にて式(VI)で示される化合物に転換されうる。これらの新規方法は、非常に単純であり、産業上最小限の費用で実施されうる。反応後、式(VI)で示される生成物は、固体として懸濁状態で存在しており、濾過により、蒸発工程を伴うことなく単離されうる。得られる収率は、非常に高い。
【0067】
さらに、医薬用途のための式(I)で示される粗生成物の精製が、特にDMSO含有溶媒混合物における再溶解によって生じることおよび式(II)で示される新規化合物が、適当な場合、高い比率で混合物中にて該工程における中間体として得られることは驚くべきことである。DMSO含量を単純な煮沸によって除去した後、式(I)で示される高純度固体が残存するように、該工程によって、少量の残存量以外のあらゆる不純物を除去する。該固体は、一般に、無色から極めてわずかな黄色であり、分析的純度(HPLC)は、98重量%を著しく超えており、医薬用途に非常に有益である。
【0068】
方法は、技術的に安全に実施され得、産業規模で生産を可能にする。それは、プラントに存在している装置に柔軟に適応されうる。特に好ましい実施態様において、式(I)で示される粗生成物の精製において、式(II)で示される生成物または高量の式(II)で示される化合物を含む混合物の中間体単離を、ヌッチェフィルター乾燥機中で実施する。次いで、ヌッチェフィルター乾燥機中で中間体として単離される式(II)で示される生成物からのDMSOの除去を、式(II)で示される生成物の中間乾燥の有無に関わらずヌッチェフィルター乾燥機中に溶媒を直接的に加えて実施する。これは、不純物混入のリスクを伴う式(II)で示される生成物の固体のオープン処理を回避する。
【0069】
実験部分
略語および頭字語:
abs. 無水
cat. 触媒
CI (MSにおける)化学イオン化
d 日(複数でも可)
TLC 薄層クロマトグラフィー
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
ee 鏡像体過剰率
EI (MSにおける)電子衝撃イオン化
ent エナンチオマー/鏡像異性的に純粋な
eq 当量(複数でも可)
ESI (MSにおける)エレクトロスプレーイオン化
GC−MS ガスクロマトグラフィー結合質量分析
重量% 重量パーセント
h 時間(複数でも可)
HPLC 高圧高速液体クロマトグラフィー
conc. 濃縮
LC−MS 液体クロマトグラフィー結合質量分析
min 分(複数でも可)
MS 質量分析
NMR 核磁気共鳴分析法
Ph フェニル
R
f (TLCにおける)保持指数
R
t (HPLCにおける)保持時間
RT 室温
v/v (溶液の)容量に対する容量の比率
aq. 水性、水性溶液
【実施例】
【0070】
以下の実施例は本発明を説明するものであるが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0071】
実施例1
2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−4,5,6−ピリミジン-トリアミン(VIII)の調製
圧力オートクレーブ中にて、1100gの式(III)で示される化合物を5.4lのDMFに懸濁した。44gの通常の水湿潤(約50%)の5%Pd/炭素触媒を加え、密封したオートクレーブを、窒素で不活性化し、水素を使用した後に、65barの水素圧および60℃の内部温度にて約18時間水素化した。約25℃に冷却し、通気し、不活性化した後、650mlのDMFでリンスしながら、オートクレーブ含有物を除去した。
【0072】
同一の手法で実施された3つの該反応を組み合わせて、古い触媒を濾去し、濾過ケークを1.1lのDMFでリンスし、濾液を約3分の1の重量に減圧下濃縮した。8.25lのメタノールおよび8.25lの水を続けて、約6.5kgの残渣に計量し、結晶化が完了した。懸濁液を約5℃に冷却し、固体を濾去し、メタノール/水(1:1vol)で洗浄した。生成物を、減圧下50℃にて乾燥した。重量は、理論値の91.8%に相当する、2415gであった。式(VIII)で示される標的生成物(遊離塩基)の含量は、>98面積%または>97重量%であった。最も重大な不純物は、DMF(約0.8重量%)および水(約0.5重量%)であった。
【0073】
実施例2
メチル 4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−ピリミジニルカルバメート(VI)の調製
3063gの式(VIII)で示される化合物および30.7lの工業用グレードのイソプロパノールを、最初に、反応槽に加えた。20〜25℃にて撹拌しながら、1641gの二炭酸ジメチルを計量し、混合物を該温度にて22時間撹拌した。沈殿した生成物を、吸引濾去し、工業用グレードのイソプロパノールで洗浄し、減圧下50℃にて乾燥した。得られた生成物の重量は、3748gまたは理論値の105.9%であった。式(I)で示される生成物は、とりわけ、乾燥により実質上除去され得ない約4.7%のイソプロパノールを含有しており(一部、イソプロパノール溶媒和物が存在していた)、分析的含量は、89.5重量%であった(HPLC)。該含量を基づくと、収率は理論値の94.8%であった。
【0074】
実施例3
2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−4,5,6−ピリミジントリアミン(VIII)の調製
圧力オートクレーブ中にて、最初に、300gの式(III)で示される化合物、1600mlのDMFおよび60gの水湿潤ラネーニッケルを加え、不活化した後、60℃の内部温度および65barの水素圧にて約18時間水素化した。冷却および通気した後、古い触媒を濾去し、100mlのDMFでリンスした。濾液を534.5gに減圧下濃縮し、35〜40℃にて、750mlのメタノールを、次いで、冷却後0〜5℃にて、750mlの水を残渣に計量した。固体を濾去し、減圧下50℃にて乾燥した。重量は、219.7gまたは理論値の91.8%であった。
【0075】
実施例4
メチル 4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−ピリミジニルカルバメート(VI)の調製
反応槽中にて、1.50kgの式(VIII)で示される化合物を、最初に、14.25lのイソプロパノール中に加え、撹拌しながら混合物を35℃に加熱した。531gのクロロギ酸メチルを、750mlのイソプロパノールでリンスしながら、定常速度で30分かけて計量し、混合物を35℃にて16時間撹拌した。次いで、混合物を50℃に加熱し、3.85lのメタノールおよび606gのトリエチルアミンを450mlのメタノールでリンスおよび50℃にて撹拌しながら計量した。次いで、混合物を、50℃にて1時間撹拌し、室温に冷却し、室温にて1時間撹拌した。懸濁した固体を吸引濾去し、いずれの場合も3.0lのイソプロパノール/メタノール(4:1)で2回および3.0lのイソプロパノールで1回洗浄し、吸引乾燥した。湿潤生成物を、真空乾燥キャビネット中で50℃にて1時間、次いで、100℃にて22時間乾燥した。得られた生成物は、1.793kgまたは理論値の103.3%であった。式(VI)で示される生成物は、乾燥により実質上除去され得ない6.45%のイソプロパノールを含有しており(一部、イソプロパノール溶媒和物が存在していた)、分析的含量は、87.9重量%であった(HPLC)。該含量に基づくと、収率は理論値の90.8%であった。
【0076】
比較例5
メチル 4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−ピリミジニル(メチル)カルバメート(I)の調製
(WO03/095451、実施例8第2製法に記載の自体公知の手法のメチル化)
20〜25℃にて、1630gの式(VI)で示される化合物を、16.3lのTHFに懸濁した。懸濁液を−6〜−4℃に冷却し、3480gのビス(トリメチルシリル)ナトリウムアミドの1M溶液を計量した。混合物を撹拌し、596gのヨウ化メチルを計量し、混合物を短時間撹拌し、約5℃にゆっくりと昇温した。反応が終了するまで(約4時間)、混合物を該温度にて撹拌した。反応混合物を、4.1lの15%強塩化アンモニウム溶液で4回洗浄した。残渣が約6.4kgになるまで有機相を蒸発濃縮し、該温度を約25℃に調整した。沈殿した固体を濾去し、全量3lのTHFで洗浄し、減圧下50℃にて乾燥した。1112gの式(I)で示される粗生成物を得た。これは、理論値の75.2%の収率に相当する。
【0077】
実施例6
多量の式(II)で示される生成物を含むメチル 4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−ピリミジニル(メチル)カルバメート(I)およびメチル {4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}メチルカルバメート スルフィニルジメタン(II)からなる混合物の調製
9.0gの、比較例5と同等の手法で調製された式(I)で示される粗生成物を、100℃にて16mlのDMSOに溶解した。(医薬上許容される生成物品質を達成するために該段階で必要とされるであろう濾過による清澄化を、該室内実験中に行った)。次いで、混合物を75℃に冷却し、110mlの酢酸エチルを加え、混合物を約25℃にゆっくりと冷却した。沈殿した固体を濾去し、全量28mlの酢酸エチルで洗浄し、減圧下50℃にて乾燥した。重量は、9.6gまたは理論値の90.0%であった。
【0078】
実施例7
精製されたメチル 4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−ピリミジニル(メチル)カルバメート(I)の調製
上記実施例6で調製された式(II)で示される生成物の全量を、還流温度(約78℃)にて1時間135mlの酢酸エチル中で撹拌し、約25℃に冷却した。固体を吸引濾去し、総量36mlの酢酸エチルで洗浄し、減圧乾燥した。重量は、7.6gまたは理論値の93.8%であった。生成物の含量は、98重量%を著しく超えていた(HPLC)。溶媒として、酢酸エチルは、約0.2%の量で存在していた。DMSO含量は、0.1%以下であった。
【0079】
実施例8
湿潤生成物として多量のメチル {4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}メチルカルバメート スルフィニルジメタン(II)を含む混合物の中間体単離を伴う精製されたメチル 4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]−5−ピリミジニル(メチル)カルバメート(I)の調製
193.5gの、比較例5と同等の手法で調製された式(I)で示される粗生成物を、約96℃にて344mlのDMSOおよび172mlの酢酸エチルに溶解した。次いで、19.4gの活性炭および172mlの酢酸エチルを加え、熱混合物を撹拌した。次いで、熱混合物を、172mlの酢酸エチルでリンスしながら、濾去して、活性炭を除去した。濾液の温度を78℃に調整し、1850mlの酢酸エチルをゆっくりと加えた。約2〜3時間かけて、混合物を約25℃に冷却し、固体を濾去し、全772mlの酢酸エチルで洗浄した。混合物中に多量の式(II)で示される化合物を含有する、湿潤生成物を、2900mlの酢酸エチルに懸濁し、1時間加熱還流し、約25℃に冷却した。固体を吸引濾去し、全774mlの酢酸エチルで洗浄し、減圧下50℃にて乾燥した。得られた重量は、155.1gまたは出発物質の80.2%であった。生成物の含量は、98重量%を著しく超えていた(HPLC)。溶媒として、実質的には酢酸エチルおよびDMSOが少量存在していた。
【0080】
実施例9
メチル {4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}メチルカルバメート スルフィニルジメタン(II)の精製および解析評価
14.8gの、比較例5と同等の手法で調製された式(I)で示される粗生成物を、約94℃にて28.9gのDMSOおよび11.85gの酢酸エチルに溶解した。次いで、1.5gの活性炭Norit A−Supraを、さらに11.85gの酢酸エチルを加え、混合物を還流温度(88〜90℃)にて1時間撹拌し、次いで、熱混合物を濾過して、活性炭を除去した。すでに沈殿していたいくつかの固体を、約78℃に昇温して再溶解し、次いで、溶液をゆっくりと冷却した。沈殿した固体を、室温にて吸引濾去し、それぞれ50mlの酢酸エチルで3回洗浄し、30℃にて18時間乾燥キャビネット中で乾燥した。9.2gまたは理論値の52.5%のわずかに帯黄色の結晶粉末の式(II)で示される化合物を得た。
HPLC:99.90面積%(DMSOを考慮せず)
DMSO(GC):14.7重量%
1H−NMR(DMF−d
7中400MHz):
d=2.59(s,約6H,DMSOの2CH
3),3.13(s,3H,N−CH
3),3.58+3.67(2s,3H,O−CH
3の束縛回転),5.91(s,2H,−CH
2−),6.53(s,4H,2−NH
2),7.05−7.40(m,5H,o−フルオロベンジル置換基の4芳香族Hおよびピリド窒素に対しメタ位にあるピリド環の1H),8.60(dd,1H,ピリド窒素に対しオルト位にあるピリド環の),9.12(dd,1H,ピリド窒素に対しパラ位にあるピリド環の).
元素分析:
実測値 C:52.2% 計算値 C:52.79%
H: 4.9% H: 5.03%
N:22.7% N:22.39%