(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、無線中継器により提供される無線ネットワークに、ステーションを追加する際の処理を容易にするために、ステーションにアクセスポイントの機能をもたせるようにした構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された構成では、先ず、無線ネットワークに接続されるステーション(プリンタ)をアクセスポイントとして作動させることにより、既に無線ネットワークに接続されていたパーソナルコンピュータの接続先を、無線中継器からプリンタに切り替えて、パーソナルコンピュータとプリンタ間の無線通信を確立している。
【0004】
そして、パーソナルコンピュータからプリンタに対して無線中継器の識別子を送信することによって、プリンタがこの識別子を用いて無線ネットワークに接続できるようにしている。
【0005】
また、特許文献1には、無線中継器により提供される無線ネットワークに既に1台のプリンタが接続された状態で、さらに別のプリンタを追加する場合に、追加するプリンタのアクセスポイント用の識別子を既に接続されたプリンタと同一に設定しておくことにより、プリンタ同士の無線通信を確立して、接続済みのプリンタから追加するプリンタに無線中継器の識別子を送信する構成が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、給湯器のリモコンに無線ネットワークへの接続機能を持たせて、リモコンと携帯端末を共通の無線ネットワークに接続することが考えられる。このようにして、リモコンと携帯端末間で無線通信を行うことにより、携帯端末に給湯器の作動状態を表示させることや、携帯端末の操作によって給湯器の運転条件を変更することが可能となる。
【0008】
そして、本願発明者らは、リモコンを無線ネットワークに接続する場合に、特許文献1に記載された構成のように、複数のリモコンに対してアクセスポイントとして作動する際の識別子を予め共通に設定しておくと、以下の不都合があることを知見した。
【0009】
すなわち、例えば、集合住宅の一室で、給湯器のリモコンを自室の無線ネットワークに接続するために、リモコンをアクセスポイントとして作動させて、携帯端末との間で無線通信を確立する作業をしているときに、隣室においても、他の給湯器のリモコンについて、同様にして隣室の無線ネットワークへの接続をしているときには、携帯端末が自室及び隣室のリモコンから送信されるビーコン信号の両方を受信する場合がある。
【0010】
そして、このように、携帯端末が2台のリモコンからのビーコン信号を受信したときには、自室ではなく隣室のリモコンとの間で誤って無線通信が確立されてしまうおそれがある。
【0011】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、誤った無線ネットワークに接続されることを防止したリモコンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のリモコンは、
被操作機器を遠隔操作する遠隔操作部と、通信端末として作動する端末モード又は通信中継器として作動する中継器モードにより無線通信を行う無線通信部とを有し、
無線中継器により提供され、第1中継識別子により通信対象がグループ化された第1無線ネットワークに接続されることによって、該第1無線ネットワークに接続された携帯端末との間で無線通信を確立するリモコンであって、
前記無線通信部に割り当てられた固有アドレスを保持した第1記憶部と、
所定コードを保持した第2記憶部と、
前記固有アドレスと前記所定コードとを組み合わせた第2中継識別子を生成する第2中継識別子生成部と、
所定のネットワーク接続指示に応じて、前記無線通信部を前記中継器モードで作動させて前記第2中継識別子を含むビーコン信号を出力して、前記第1無線ネットワークに接続された携帯端末に該ビーコン信号を受信させて該携帯端末の表示部に前記第2中継識別子を表示させ、該携帯端末における前記第2中継識別子の選択操作に応じて、前記第2中継識別子に基づく第2無線ネットワークを介した前記リモコンと前記携帯端末間の無線通信を確立して、前記携帯端末から前記第1中継識別子を受信する第1中継識別子取得部と、
前記無線通信部を前記端末モードで作動させて、前記第1中継識別子を用いて前記第1無線ネットワークに接続することにより、前記第1無線ネットワークを介した前記リモコンと前記携帯端末間の無線通信を確立する携帯通信確立部と
を備え
ており、
前記第1中継識別子取得部は、前記ネットワーク接続指示に応じて、少なくとも前記固有アドレスを含む情報を前記リモコンの表示部に表示させることを特徴とする。
【0013】
かかる本発明によれば、前記第2中継識別子生成部により、前記第1記憶部に保持された前記無線通信部の固有アドレスと、前記第2記憶部に保持された前記所定コードとを組み合わせた前記第2中継識別子が生成される。前記第2中継識別子は、前記固有アドレスを含んでいるため、前記リモコンに固有の識別子となる。
【0014】
そして、前記第1中継識別子取得部は、前記ネットワーク接続指示に応じて、前記無線通信部を前記中継器モードで作動させて前記第2中継識別子を含むビーコン信号を出力することによって、前記携帯端末の表示部に前記第2中継識別子を表示させる。これにより、前記リモコンを前記第1無線ネットワークに接続しようとする使用者は、前記携帯端末の表示部に表示される前記第2中継識別子(前記固有アドレスが含まれる)に基づいて、前記第1無線ネットワークに接続するリモコンを確認することができる。
【0015】
そのため、他のリモコンを無線ネットワークに接続する処理が同じタイミングで実施されている場合でも、異なる前記第2中継識別子が表示されることになり、使用者が、他のリモコンを誤って選択して前記第1無線ネットワークに接続してしまうことを防止することができる
。
また、前記第1中継識別子取得部は、前記ネットワーク接続指示に応じて、少なくとも前記固有アドレスを含む情報を前記リモコンの表示部に表示させるので、使用者は、前記リモコンの表示部に表示される前記固有アドレスと、前記携帯端末の表示部に表示される前記第2中継識別子(前記固有アドレスが含まれる)とを照らし合わせて、前記第1無線ネットワークに接続するリモコンを正確に把握することができる。
【0016】
また、前記無線通信部に割り当てられた固有アドレスは、MAC(Media Access Control)アドレスであることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、ネットワーク上で、各ノードを識別するために通信機器に一意に割り当てられたMACアドレスを利用して、前記無線通信部に固有なアドレスを容易に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】リモコン、スマートフォン(携帯端末)、及び無線LANルーター(無線中継器)の構成図。
【
図2】リモコンの作動モードの説明図であり、
図2AはSTAモード(端末モード)での作動状態を示し、
図2BはAPモード(中継器モード)での作動状態を示す。
【
図3】無線通信モジュールのメモリに保持されたデータの説明図。
【
図4】無線LANルーターが提供する無線ネットワークにリモコンを接続する処理の説明図。
【
図5】スマートフォン及びリモコンの表示画面の説明図であり、
図5Aは無線ネットワークにリモコンを接続する処理を開始する際のスマートフォンの表示画面を示し、
図5Bはリモコンとスマートフォン間の無線通信を確立する際のリモコン及びスマートフォンの表示画面を示す。
【
図6】無線LANルーターのSSID及びKEYをスマートフォンからリモコンに送信する処理の説明図であり、
図6Aはスマートフォンにおける無線LANルーターのSSID及びKEYの入力画面を示し、
図6Bはスマートフォンからリモコンに対して、無線LANルーターのSSID及びKEYを送信する状態を示す。
【
図7】無線LANルーターが提供する無線ネットワークに、リモコン及びスマートフォンを接続する処理の説明図であり、
図7Aはリモコンを無線ネットワークに接続する処理を示し、
図7Bはスマートフォンを無線ネットワークに接続する処理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、
図1〜
図7を参照して説明する。
図1を参照して、本実施形態のリモコン10は、給湯器1(本発明の被操作機器に相当する)用のリモコンであり、給湯器1と通信ケーブル5により接続されて給湯器1を遠隔操作する。
【0022】
リモコン10は、給湯器1の運転状態等を示す表示部11、使用者による操作を受け付ける操作スイッチ12、及び周囲の通信端末(本実施形態ではスマートフォン40(本発明の携帯端末に相当する)及び無線LANルーター30(本発明の無線中継器に相当する))との間で無線通信を行うための無線通信モジュール20(本発明の無線通信部に相当する)を備えている。本実施形態において、リモコン10は、台所に設置されている。
【0023】
また、リモコン10は、図示しないCPU、メモリ、各種インターフェース回路等を備えており、メモリに保持されたリモコン10の制御用プログラムをCPUで実行することによって、遠隔操作部15、第2中継識別子生成部16、第1中継識別子取得部17、及び携帯通信確立部18として機能する。
【0024】
遠隔操作部15は、使用者によるスイッチ12の操作に応じて、給湯器1に各種制御データ(目標給湯温度、目標湯張り温度等を示す)を送信し、これにより給湯器1が遠隔操作される。第2中継識別子生成部16、第1中継識別子取得部17、及び携帯通信確立部18の動作については後述する。
【0025】
リモコン10は、無線通信モジュール20により、無線LANルーター30が提供する第1無線ネットワークN1に接続されてグループ化されることによって、第1無線ネットワークN1に接続されたスマートフォン40との間の無線通信を確立する。
【0026】
そして、遠隔操作部15は、第1無線ネットワークN1を介して、スマートフォン40に給湯器1の作動状態を示すデータを送信することによって、スマートフォン40の表示部41に、リモコン10の作動状態を示す画面を表示する。また、遠隔操作部15は、第1無線ネットワークN1を介して、スマートフォン40から給湯器1の遠隔操作を指示するデータを受信したときに、このデータに従って給湯器1を遠隔操作する。
【0027】
次に、
図2A及び
図2Bを参照して、STAモード(ステーションモード、端末モード)及びAPモード(アクセスポイントモード、中継器モード)によるリモコン10の動作について説明する。
【0028】
図2Aを参照して、リモコン10は、無線通信モジュール20をSTAモードで作動させることにより通信端末として機能して、無線LANルーター30が提供する第1無線ネットワークN1への接続を可能とする。
【0029】
また、
図2Bを参照して、リモコン10は、無線通信モジュール20をAPモードで作動させることにより、通信中継器として機能して、第2無線ネットワークN2を提供する。この場合、第2無線ネットワークN2により、リモコン10とスマートフォン40を直接接続することが可能となる。
【0030】
次に、
図3を参照して、無線通信モジュール20に備えられたメモリ21には、各種設定値が保持された設定値記憶部21a(本発明の第1記憶部に相当する)と、無線通信モジュール20の作動プログラムが保持されたプログラムコード部21b(本発明の第2記憶部に相当する)が含まれている。
【0031】
設定値記憶部21aには、無線通信モジュール20に対して設定されたMAC(Media Access Control)アドレス、後述する第1無線ネットワークへの接続処理によって、スマートフォン40から受信した無線LANルーター30のSSID(Service Set Identifier、ここではsmart1を例示、本発明の第1中継識別子に相当する)とKEY(ここではAC20311を例示)、起動時に無線モジュールのモード(STAモード又はAPモード)を指定するための起動モードフラグ(BT_f)等が保持される。
【0032】
また、プログラムコード部21bには、無線通信モジュール20の作動プログラムのコードデータが保持されている。第2中継識別子生成部16は、プログラムコード部21bに保持されたプログラムを実行することによって、APモードで起動するときに、以下の式(1)によりAPモード用のSSID(本発明の第2中継識別子に相当する)を生成する。
【0033】
ssid = ‘RinnaiAPController’ + ‘WLCMAC’ ・・・・・ (1)
但し、ssid:APモードにおける無線通信モジュール20のSSID、’RinnaiAPController’:予め設定されたコード(本発明の所定コードに相当する)、’WLCMAC’:無線通信モジュールのMACアドレス。
【0034】
ここで、MACアドレスは、ネットワーク機器のハードウェアに一意に割り当てられる物理アドレスであり、イーサネットの場合は48ビットの符号であるが、ここでは説明の便宜上、’WLCMAC’で示している。
【0035】
無線通信モジュール20の固有アドレスであるため、MACアドレスと所定コードを組み合わせて生成される無線通信モジュール20のSSIDも、無線通信モジュール20及びリモコン10に固有なものとなる。
【0036】
次に、
図4に示した工程表に従って、リモコン10を第1無線ネットワークN1に接続することによって、第1無線ネットワークN1を介したリモコン10とスマートフォン40間の無線通信を確立する一連の処理について説明する。
図4の工程表の左側はリモコン10側(無線通信モジュール20側)の処理を示し、右側はスマートフォン40側の処理を示している。
【0037】
先ず、工程ST1において、使用者がスマートフォン40によりリモコン10を接続するためのアプリケーションを起動する。このアプリケーションの起動により、スマートフォン40の表示部41に、
図5Aに示した画面Aが表示される。表示部41は、タッチ入力が可能なタッチパネル表示器である。
【0038】
画面Aの表示に従って、使用者は、スマートフォン40を持ってリモコン10の設置場所に行き、リモコン10を操作して「メニュー」→「無線・通信」→「ルーター接続」→「手動接続」と順に選択する(工程ST2)。この選択操作は、本発明の所定のネットワーク接続指示に相当する。
【0039】
使用者は、工程ST2の操作に応じて、リモコン10の表示部11に「接続待機中です。」と表示されたことを確認して、画面Aの「はい」ボタン42を押す(工程ST3)。
【0040】
工程ST4は第1中継識別子取得部17による処理である。第1中継識別子取得部17は、無線通信モジュール20のメモリ21の設定値記憶部21aの起動モードフラグBT_fに「1」をセットする(APモード設定)。そして、第1中継識別子取得部17は、無線通信モジュール20を再起動(リブート)し、これにより、無線通信モジュール20は、APモードで作動を開始する。
【0041】
続く工程ST5で、第2中継識別子生成部16は、無線通信モジュール20のAPモード用のSSID(第2無線ネットワークN2のSSID、‘RinnaiAPController_WLCMAC’)を上記式(1)によって生成する。また、第1中継識別子取得部17は、無線通信モジュール20のAPモード用のSSIDを含むビーコン信号の出力を開始すると共に、
図5Bに示したように、リモコン10の表示部11に無線通信モジュール20のMACアドレス(‘WLCMAC’)を表示する。
【0042】
次の工程ST6で、使用者は、スマートフォン40の表示部41に、
図5Bに示したように、WiFi設定用の画面Bを表示させる。画面Bには、リモコン10から出力されてスマートフォン40により受信されているビーコン信号に含まれる無線通信モジュール20のAPモード用のSSID(’RinnaiAPController_WLCMAC’)が表示される。
【0043】
工程ST6で、使用者は、リモコン10の表示部11に表示されているMACアドレス(’WLCMAC’)と、スマートフォン40の表示部41に表示されているネットワークのSSIDを照らし合わせて、MACアドレス(’WLCMAC’)が含まれる第2無線ネットワークN2のSSID(’RinnaiAPController_WLCMAC’)を選択する。これにより、第2無線ネットワークN2によるリモコン10とスマートフォン40間の無線通信が確立する(工程ST7)。
【0044】
このように、使用者は、第1無線ネットワークN1に接続するリモコン10を確認して選択することができるため、例えば、隣室や隣家に設置された給湯器のリモコンに対して、同じタイミングで隣室や隣家の無線ネットワークに接続する操作が行われて、他のリモコンから送信されているビーコン信号をスマートフォン40が受信している場合に、他のリモコンが誤って選択されることを防止することができる。
【0045】
工程ST8で、第1中継識別子取得部17は、APモードのIP(Internet Protocol)アドレス(’192.168.0.1’を例示)と、HTTP(Hypertext Transfer Protocol)のURL(Uniform Resource Locator)(’setting.html’)を設定する。
【0046】
続く工程ST9で、使用者は、スマートフォン40のブラウザによりリモコンのアドレス(’http://192.168.0.1/setting.html’)にアクセスする。このアクセスにより、表示部41には、
図6Aに示したように画面Cが表示される。使用者は、画面Cの表示に従って、無線LANルーター30のSSIDとKEY(Password)を入力し、設定ボタン43を操作する。これにより、スマートフォン40からリモコン10に対して、無線LANルーター30のSSIDとKEYが送信される(
図6B)。
【0047】
工程ST10で、第1中継識別子取得部17は、スマートフォン40から受信した無線LANルーター30のSSIDとKEYを、無線通信モジュール20のメモリ21に保持する。また、携帯通信確立部18は、無線通信モジュール20のメモリ21の設定値記憶部21aの起動モードフラグBT_fに「0」をセットする(STAモード設定)。
【0048】
続く工程ST11で、携帯通信確立部18は、無線通信モジュール20を再起動(リブート)し、これにより、無線通信モジュール20は、APモードで作動を開始する。携帯通信確立部18は、無線通信モジュール20のメモリ21に保持された無線LANルーター30のSSIDとKEYを用いて、リモコン10を第1無線ネットワークN1に接続する(
図7A)。
【0049】
工程ST12で、使用者は、スマートフォン40の表示部41に、WiFi設定用の画面B(
図5B参照)を表示させる。そして、使用者は、画面Bに表示される無線LANルーター30のSSIDを選択すると共に、無線LANルーター30のKEYを入力して、WiFiによる接続先をリモコン10から無線LANルーター30に切り替える。
【0050】
これにより、工程ST13で、第1無線ネットワークN1を介したリモコン10とスマートフォン40間の無線通信が確立される(
図7B)。
【0051】
なお、本実施形態では、本発明のリモコンとして給湯器1を遠隔操作するリモコン10を示したが、空調装置等の他の種類の被操作装置を遠隔操作するリモコンに対しても、本発明の適用が可能である。
【0052】
また、本実施形態では、無線通信モジュールに割り当てられた固有アドレスとして、無線通信モジュールの既存のMACアドレスを用いたが、他の固有アドレスを設定するようにしてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、本発明の携帯端末としてスマートフォン40を示したが、携帯電話、タブレットコンピュータ等の他の種類の携帯端末を用いてもよい。
【0054】
また、本実施形態では、
図5Bに示したように、第1中継識別子取得部17によって、リモコン10の表示部11に無線通信モジュール20のMACアドレスを表示したが、この表示を行わずに、スマートフォン40の表示部41に表示された無線通信モジュール20のAPモードのSSIDに基づいて、第1無線ネットワークN1に接続するリモコンを確認するようにしてもよい。