(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0096】
本発明は、液剤などの物質を患者に注射して、病状に対処する、又は病状を治療するための自動注射装置、その部品及び方法を提供する。一実施形態においては、自動注射装置はペン、すなわち、(本明細書では区別なく使用される)自動注射器ペン又は自動注射ペンである。本発明は、自動注射装置の使用方法を患者に訓練するのに使用することができる実演用又は「トレーナー」自動注射装置も提供する。
【0097】
本発明は、さらに、(本明細書では、医薬品とも称する)物質を投与するための自動注射装置に関し、特に、かかる装置の使用を推奨するための組成物及び方法、並びにかかる装置を使用する際に人々を訓練するための組成物及び方法に関する。本発明は、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))を投与するための自動注射装置をアダリムマブ(HUMIRA(登録商標))を投与するための充填済み注射器と比較した臨床試験結果に少なくともある程度基づく。本明細書の実施例1及び2に詳述する試験によって、本発明の自動注射装置の多数の有利な特徴が明らかになり、装置を使用するようにレシピエントを訓練するときに強調すべき装置使用方法の特別な態様が確認された。
【0098】
I. 定義
本発明をより容易に理解できるように、ある種の用語を以下のように定義する。
【0099】
本明細書では、「自動注射装置」(又は「自動注射器」)は、(本明細書では使用者又は患者とも称する)個体が、液剤などの物質の1回分の投与量を自己投与できるようにする装置を指すものとする。この装置は、機構が始動したときに、注射によって個体に医薬品を自動的に送達する機構を含む点で標準の注射器とは異なる。
【0100】
本明細書では「充填済み注射器」という用語は、個体に医薬品を投与する直前に医薬品が充填された注射器、及び医薬品が充填され、個体に医薬品を投与する前に一定期間、この充填済みの形で貯蔵される注射器を包含するものとする。
【0101】
本明細書では「レシピエント」は、本明細書に記載の本発明の方法及び組成物の推奨メッセージ又は訓練使用説明を受ける任意の人又は個体を指すものとする。好ましいレシピエントとしては、自動注射装置によって投与される医薬品を処方する医師、自動注射装置によって投与される医薬品を使用する患者、その介護者などが挙げられる。
【0102】
本明細書では「レシピエントに伝える」という用語は、本明細書に記載の本発明の方法及び組成物の推奨メッセージ又は訓練使用説明が、レシピエントに連絡される、又は示される、任意の手段を包含するものとする。メッセージ又は使用説明をレシピエントに伝える手段の非限定的例としては、口頭による連絡、書面による連絡、及び視聴覚装置による連絡が挙げられる。
【0103】
本明細書では「装置の最初の使用」という用語は、自動注射装置を用いて物質(例えば、医薬品)を個体に投与する初回を指すものとする。
【0104】
本明細書では「印刷文書」という用語は、書面による連絡がその上に印刷された任意の文書を指すものとする。印刷文書の非限定的例としては、小冊子、ちらし、製品添付文書、ビラ、フリップチャート、テントカード及び包装ラベルが挙げられる。
【0105】
本明細書では「視聴覚装置」という用語は、聴覚及び視覚的形態の情報を連絡することができる任意の装置を指すものとする。視聴覚装置の非限定的例としては、Video Home System(VHS)カセット、デジタルビデオディスク(DVD)、CD−ROM、デジタルビデオカセット、8mm又は35mmフィルム、及びウェブキャストを表示するコンピュータが挙げられる。
【0106】
本明細書では「実演用自動注射装置」、「訓練用装置」又は「トレーナー」という用語は、装置を用いる様子及び感触を含めて、自動注射装置の使用手順を実演するのに使用されるが、物質(例えば、医薬品)の投与に必要な1個以上の部品、及び/又は針がないので、物質(例えば、医薬品)の投与に適切でない、自動注射装置を指すものとする。好ましい実施形態においては、実演用自動注射装置は、自動注射装置に比べると、針及び物質(例えば、医薬品)を欠く。
【0107】
II. 本発明の自動注射装置
本発明を、説明のためのある実施形態に関連して以下に記述する。本発明は、1回分のTNF阻害剤の皮下注射に装置を使用することに関して記述されるが、本発明は、説明のための実施形態に限定されず、注射装置を使用して任意の適切な物質を使用者に注射できることを当業者は理解されたい。また、部品、及び自動注射装置を使用する方法は、説明のための下記実施形態に限定されない。
【0108】
本明細書では「遠位」という用語は、注射のために、又は注射を模倣するために、装置を人に対して保持したときに、使用者の注射部位から最も遠くにある、自動注射装置又は自動注射装置部品の一部又は端部を指す。「近位」という用語は、注射中に使用者の注射部位に最も近い、自動注射装置又は自動注射装置部品の一部又は端部を指す。
【0109】
図1及び2は、本発明の説明のための一実施形態による、1回分の液剤などの物質を患者に皮下注射するのに適切な自動注射装置10の外観を示す。自動注射装置10は、以下に詳述するように、患者に注射する1回分の物質を含む、注射器などの容器を収容する収容部12を含む。収容部12は、好ましくは管状であるが、注射器、又は注射物質の他の容器を収容するために、任意の適切なサイズ、形状及び構成を有し得ることを当業者は理解されたい。本発明は、収容部12に装着された注射器に関して記述するが、自動注射装置10は、物質を貯蔵し、投与するための任意の適切な容器を使用できることを当業者は理解されたい。
【0110】
図2を参照すると、注射器は、以下に詳述するように、好ましくは、収容部12に摺動可能に装着される。非起動位置においては、注射器は、収容部12内に収められ、引き込まれている。装置が作動すると、注射器の針が、収容部12の第1(近位)端部20から突出して、注射器から患者に物質を射出することができる。示したように、収容部の第1の端部20、すなわち、近位端部は、装置10の作動中に注射器の針が突出する開口28を含む。
【0111】
続けて
図1及び2を参照すると、収容部12の第2(遠位)端部30、すなわち、遠位端部は、注射器を作動させて、収容部12内の収納位置から突出位置に移動させ、続いて針から患者に物質を吐出するための起動ボタン32を含む。収容部12は、注射器を移動させる機能、及び注射器から物質を吐出する機能を果たす1個以上の作動器を収容する。
【0112】
図1及び2に示す、説明のための自動注射装置10は、収容部12の第1の端部20を覆って、注射器の針が使用前に露出するのを防止する、第1の着脱可能な蓋24(又は針の蓋)も含み得る。説明のための実施形態においては、第1の蓋24は、使用者が装置10を起動する準備ができるまで、装置10の内部部品を固定する、及び/又は覆う、突起26も含み得る。或いは、第1の蓋24はねじ部を含み得、収容部12の開口28の内面はねじ山を含み得る。本発明の教示に従って、任意の適切な接合機構を使用することができる。
【0113】
第2の着脱可能な蓋34(又は作動器の蓋)は、収容部12の第2の端部30を覆って、起動ボタン32の偶発的な作動を防止することができる。
【0114】
第2の蓋34は、装置の第1の端部20と第2の端部30を識別するために弁別的な色を有し得るが、蓋34及び収容部12は、任意の適切な色、サイズ及び構成を有し得ることを当業者は理解されたい。
【0115】
図1及び2の説明のための実施形態においては、収容部12及び蓋24と34は、自動注射装置10の使用を容易にする絵、記号及び/又は番号を更に含み得る。例えば、説明のための実施形態においては、収容部12は、
図2に示すように、装置の第1の端部20方向を使用説明して、患者に対して装置10を保持すべき(すなわち、第1の端部20を注射部位に隣接させる)仕方を示す矢印125を外面に含む。また、第1の蓋24は、「1」と標識され、使用者が、装置の第1の蓋24を最初に取り外すべきことを示す。第2の蓋は、「2」と標識され、説明のための自動注射装置10を用いた注射の準備中、及び後続の注射中に、第1の蓋24を取り外した後に第2の蓋34を取り外すべきことを示す。自動注射装置10は、取扱い説明を容易にするために、任意の適切な絵、記号及び/又は番号を有し得、又はかかる絵、記号及び/又は番号を省略し得ることを当業者は理解されたい。
【0116】
図2に示すように、収容部12の第1の端部20は、第2の端部30よりも大きい直径を有し得る。段差29は、2つの直径の移行部に形成され、第2の蓋34を調節して、収容部の第2の端部30上の第2の蓋34の着座を容易にすることができる。
【0117】
図1及び2に示すように、収容部12は、以下に詳述するように、好ましくは、収容部12内に収容された注射器の内容物を使用者が見ることができる表示窓130も含む。窓130は、収容部12の側壁に開口を含み、又は収容部12に半透明材料を含み、装置10の内部を見ることができる。
【0118】
収容部12は、プラスチック及び他の公知材料を含めて、ただしこれらだけに限定されない任意の適切な外科用材料で形成し得る。
【0119】
図3−5は、本発明の一実施形態による自動注射装置10の内部部品の略図である。示したように、注射器50、又は物質の他の適切な容器は、収容部12の内部に配置される。説明のための注射器50は、注射する1回分の液体物質を保持する中空円筒部53を含む。説明のための円筒部53は、実質的に円柱形状であるが、任意の適切な形状又は構成を有し得ることを当業者は理解されたい。栓54として示す密封材は、1回分を円筒部53に密封する。注射器50は、円筒部53に接続され、流体が通るように連通した中空針55を更に含み得る。栓54を加圧することによって、中空針55を通して、1回分を射出することができる。中空針55は、円筒部53の第1の近位端部53aから延在する。円筒部53の第2の端部53bは、以下に示すように、123として模式的に示す止め具(stop)に当接して、収容部12内の注射器50の移動を制限するフランジ56又は他の適切な機構を収容部12に含む。本発明は、注射器50の説明のための実施形態に限定されず、注射する1回分の物質を含む任意の適切な容器を本発明の教示に従って使用することができることを当業者は理解されたい。
図3−5の説明のための実施形態においては、針55は、固定された27ゲージ1/2インチの針である。説明のための中空針55の先端は、挿入を容易にするために5個の斜端を有し得る。しかし、針55は、使用者の皮膚に刺して、物質を皮下領域に送達するのに適切な任意の適切なサイズ、形状及び構成を有し得、説明のための実施形態に限定されない。針の適切なタイプは、当分野で周知である。
【0120】
図3−5に示す自動注射装置10は、注射器50を選択的に移動させ、作動させて、注射器50に含まれる1回分を使用者に注射する、プランジャーとして示した注射器作動器70を更に含む。説明のためのプランジャー70は、栓54を選択的に加圧して、1回分を針55から吐出するための、栓54と一体になった、栓54に接続された、又は流体が通るように栓54と連通した、第1の端部71aを有するロッド部分71を含む。プランジャー70は、フランジ付き第2の端部72を含み得る。
【0121】
一実施形態においては、注射器起動器(activator)は、複数の部品を含み、及び/又は別の作動器が本発明の自動注射装置中に存在する。
【0122】
図3−5のプランジャー70は、プランジャー70のフランジ付き第2の端部の周囲又はその上方に配置されたコイルばね88として示した第1の付勢機構によって、装置10の第1の端部20方向に付勢される。
図3−5に示す実施形態においては、コイルばね88の近接端部88aは、プランジャー70のフランジ付き第2の端部72に当接して、プランジャー70を選択的に加圧して、近位に移動させる。或いは、プランジャー70は、ばね88の中央を通って延在する。装置10の使用前に、コイルばね88(又は別の適切な機構)は、プランジャー70と収容部12の間で圧縮されて、エネルギーを貯蔵する。
図1及び2に示す起動ボタン32などの任意の適切な作動手段によって起動される引き金91は、プランジャー70及び第1の付勢機構88を、
図3に示す、引っ込んだ、掛金のかかった位置に保持し、起動ボタン32が起動される。説明のための実施形態においては、引き金91は、プランジャー70のフランジ付き第2の端部72に掛金をかける。使用者が起動ボタン32又は他の作動手段を起動すると、引き金91は、プランジャー70のフランジ付き第2の端部72を開放し、フランジ付き第2の端部72を加圧するコイルばね88が、装置10の第1の端部方向にプランジャー70を前進させる。
【0123】
図3−5でコイルばね89として示した第2の付勢機構は、
図1及び3に示すように、使用前に、注射器50を収容部12内の引っ込んだ位置に保持する。引っ込んだ位置において、針55は、好ましくは、収容部12内に全体が収められる。説明のための注射器コイルばね89は、円筒部53の近位部分の周囲に配置され、収容部内部に形成された棚121に設置することができる。コイルばね89の上端部は、注射器50のフランジ付き第2の端部56に当接する。第2の付勢機構89のばね力によって、注射器50のフランジ付き第2の端部56は、収容部12の第1の端部20から押し離され、それによって起動まで注射器50が引っ込んだ位置に保持される。装置10の他の部品によって、収容部12に対する注射器50の位置を定めることもできる。
【0124】
第1の付勢機構88及び第2の付勢機構89は、装置のある部品の付勢に用いるのに適切な任意の構成及び適切な張力を有し得る。例えば、第1の付勢機構88は、開放されたときに、プランジャー70及び注射器50を前進させるのに適切である任意の適切なサイズ、形状、エネルギー及び諸性質を有する。第2の付勢機構89は、起動前に、注射器50を引っ込ませるのに適切である任意の適切なサイズ、形状、エネルギー及び諸性質を有する。注射器からの移動及び吐出(expulsion)を促進する他の適切な手段も使用することができる。
【0125】
図3−5の説明のための実施形態を更に参照すると、プランジャー70は、圧縮可能な膨張した中央部76を更に含む。説明のための実施形態においては、ロッド71は、中央部が分裂して、圧縮可能な膨張した中央部76を画定する1対の突出した肘状部78を形成する。突出した肘状部78は、成形プランジャー70の一部として前もって形成することができ、又はプランジャー70に別々に取り付けることができる。突出した肘状部78は、圧縮可能であり、半径方向内向きに移動して、ロッドのその部分が、ロッドの残りの部分に類似した外周をとることができる。圧縮可能な膨張した中央部76は、以下に示すように、注射器50を移動させ、続いて2つの実質的に別々の段階で1回分の吐出を容易にすることができる。
【0126】
図4に示すように、起動手段320が引き金91を起動して、プランジャー70を開放すると、コイルばね88のばね力によって、プランジャー70が(近位に)前進する。第1の操作段階中に、プランジャー70が移動して、注射器50を前方に押し出し、針55の先端が収容部12の第1の端部20から突出する。第1のコイルばね88によって与えられる初期の付勢力は、第2のコイルばね89の付勢力に打ち勝ち、第2のコイルばね89の後方の付勢力に逆らって注射器50を移動させるのに十分である。第1の操作段階においては、突出した肘状部78によって形成されるプランジャー70の膨張領域76は、円筒部53の第2の端部56に支えられ、プランジャー70が注射器円筒部53内に移動するのを防止する。このようにして、第1のコイルばね88の全付勢力が加えられて、注射器50を装置10の第1の端部20方向に移動させる。
【0127】
図3−5に示した起動手段320は、プランジャー70の開放、又は装置10の起動に適切である任意の適切なサイズ、形状、構成及び位置を有し得る。例えば、
図2を更に参照すると、起動手段320は、収容部12の遠位端部30上に形成された起動ボタン32であり得、又は掛金、回転起動(twist−activated)スイッチ、当分野で公知の別の装置などの別の適切な装置を含み得る。説明のための起動手段320は、装置10の遠位端部30方向に位置するが、起動手段320は、装置10の任意の適切な場所に位置し得ることを当業者は理解されたい。
【0128】
装置10の近位端部20方向への注射器50の動きは、
図4に示すように、円筒部53のフランジ付き端部56が、収容部12上の突出部、フランジなどの止め具123に当接するまで、コイルばね89の付勢力に逆らって続く。代わりの停止機構又は限定された機構を使用することができ、本発明は、説明のための停止機構に限定されないことを当業者は理解されたい。
【0129】
図4に示すように、第1の操作段階では、針55の先端が装置10の第1の端部20の開口28を通して前進して、針55を患者の皮膚に刺すことができる。この段階中、注射器の円筒部53は、好ましくは、針55を通して物質を吐出せずに、密封されたままである。停止機構56、123によって引き起こされる衝突によって、後続段階中、装置10の近位開口端部28から延在する選択位置に針55が維持される。停止機構56、123が注射器50の移動を停止するまで、プランジャー70の圧縮可能な膨張した中央部76は、円筒部53に対するプランジャー70の移動を阻止する。
【0130】
止め具56、123は、開口した第1の端部20に対して任意の適切な場所に位置して、注射に適切である任意の適切な深さで注射器50が皮膚に貫入することができる。
【0131】
停止機構123後に始まる第2の操作段階においては、
図5に示すように、収容部12は、フランジ付き部分56、又は他の停止機構を捕らえて、円筒部53の更なる移動を停止させ、コイルばね88の連続した付勢力は、収容部12に対してプランジャー70を押し続ける。付勢力によって、プランジャー70の肘状部78は、半径方向内向きに圧縮され、円筒部53の内側に摺動する。部品123と56の衝突によって、(針が露出した)選択位置に円筒部53が保持され、肘状部78がつぶれる段階では、コイルばね88によって、プランジャー70が円筒部内に押し込まれる。肘状部78を圧縮し、円筒部53中に延在させるのに必要な力にプランジャー70が打ち勝った後、プランジャー70は、栓54を加圧して、突出した針55を通して注射器50の内容物を射出させる。第1の操作段階によって針55は皮膚中に移動するので、円筒部53の内容物は、患者の皮下領域に直接注射される。
【0132】
図6を参照すると、本発明の一実施形態においては、自動注射装置10は、2個の連動部品、すなわち装置10の近位部品(例えば、注射筒53、コイルばね89、針55及び他の近位部品)を含む注射器収容部組立品121、及び装置の遠位部品(例えば、注射器を作動させる手段)を含む発射機構組立品122を含み得る。注射器収容部組立品121と発射機構組立品122は、任意の適切な手段によって連結することができる。説明のための実施形態においては、発射機構組立品122の近位端部122aは、注射器収容部組立品121の遠位端部121bに挿入されるサイズであり、挿入されるように構成することができる。また、発射機構組立品122の近位端部122aの(
図7、8A−8C及び9に詳細に示す)1個以上のタブ127は、注射器収容部組立品122の遠位端部121b上の対応する開口126にスナップばめして、2個の組立品121、122及びその中に収容された部品を確実に位置合わせし、連結することができる。
【0133】
図7は、本発明の説明のための一実施形態による発射機構組立品122の分解組立図である。示したように、発射機構組立品122は、説明のための起動ボタン32、説明のための作動器の蓋34、説明のための遠位収容部分12b(発射体)、及びコイルばね88、又は他の付勢機構を含む。説明のための発射機構組立品122は、遠位収容部分12bの近位端部122aから延在し、第1の段階において注射器50を移動させ、第2の時期において注射器50を作動させて、その内容物を吐出する、注射器作動部700として示した注射器作動器を更に含む。
【0134】
図8A−8Cは、遠位収容部分12b、コイルばね88、及び起動ボタン32なしで組み立てたときの注射器作動部700を示す。
図9は、本発明の説明のための実施形態による遠位収容部分12bの斜視図であり、
図10は、注射器作動部700の斜視図である。
【0135】
図1−2及び7−9に示すように、遠位収容部分12bは、実質的管状体を含む。実質的管状体は、使用者が装置10を容易に握ることができるような輪郭128を有することができる。上述したように、段差29を遠位領域30に形成して、作動器の蓋34の着座を容易にすることができる。段差29の前方に、遠位収容部分12bは、注射器収容部121の遠位端部に挿入されるように構成されたサイズ及び形状を有する。タブ127は、2個の収容部分12aと12bの連結及び/又はロックを容易にするように形成される。
図9に示すように、タブ127は、遠位収容部分12bの近接端部表面のくぼみ127aに形成することができる。タブ127は、近接収容部分12aに対するロック位置にタブを導くためのリブ127bも含むことができ、又は代わりに含むことができる。2個の組立品を連結するために任意の適切な手段を使用することができ、本発明は、説明のための連結手段に限定されないことを当業者は理解されたい。
【0136】
図2及び8Cに示すように、遠位収容部分12bは、装置10を作動させる発射機構を遠位収容部分12bに固定するために、遠位収容部分12bの、直径のより小さい遠位端部に連結された固定用蓋12cを含むことができる。固定用蓋12cと遠位収容部分12bの接続部分は、遠位収容部分12bの遠位端部上の起動ボタン32のスナップばめを容易にする溝1234を形成することができ、又は上述した他の適切な接合手段によって接合することができる。
【0137】
図3及び10を参照すると、注射器作動部700は、好ましくは、アセタール系プラスチックなどの任意の適切な材料で形成された一体型部品であるが、他の適切な材料を使用することもできる。注射器作動部700は、以下に示すように、対応する注射器50の栓54を加圧する加圧端部754、プランジャー肘状部78として示した圧縮可能な膨張した中央部を有するプランジャーロッド部分70、及びコイルばね88を注射器作動部700に固定する部品などの他の部品を含む。圧縮可能な膨張した中央部76は、上述したように、突き出した位置への対応する注射器50の移動を容易にし、注射器50の内容物の2段階の吐出を容易にする。或いは、注射器作動器は、注射器50を移動させる、及び/又は注射器50の吐出を促進する、複数の作動器を含み得る。
【0138】
図2及び10の注射器作動部700は、堅いロッド部分70において肘状部78の遠位に表示器190を更に含み得る。装置10の操作中、及び注射終了後、表示器190は、収容部12の窓130と一直線に並び、注射の終了を示すように構成される。
【0139】
表示器190は、好ましくは、注射の終了を表す弁別的な色又は図柄を有する。
【0140】
図2、7、8C及び10に示すように、説明のための注射器作動部700は、作動用コイルばね88を作動まで圧縮位置に保持するための保持用フランジ720を更に含む。保持用フランジ720は、装置10を作動させたときに、好ましくは、注射器作動部700が摺動可能に、かつ容易に収容部12内に移動するサイズ、寸法であり、材料で形成されている。注射器作動部700は、保持用フランジ720の遠位に延在し、作動用コイルばね88の基部788を形成する。基部788は、引き金固定部789で終結する。説明のための基部788は、ばね88が周囲に巻き付いた柔軟な脚部788a、788bを含み得る。引き金固定部789は、基部788から延在し、固定用蓋12c及び/又は遠位収容部分12bに選択的に係合するように構成されたタブ付き足部7891を含み得る。遠位収容部分12bの遠位端部に連結された起動ボタン32は、起動まで、引き金固定部789を保持するように構成される。起動時、起動ボタン32は、引き金固定部789を開放し、上記操作において、コイルばね88によって、注射器作動部700が装置10の近位端部20方向に前進する。
【0141】
(
図3の略図に対応して)
図2、8C及び10に示す引っ込んだ固定位置においては、引き金固定部789は、収容部12と相互作用し、タブ付き足部7891を掛金のかかった位置に保持し、コイルばね88の付勢力に逆らって、注射器作動部700を引っ込んだ位置に維持する。この位置において、フランジ720は、遠位収容部分12bの後方の遠位壁部712に対してばね88を収縮させる。固定用蓋12cの開口713によって、起動ボタン32は、固定部789に接触することができる。引っ込んだ位置において、注射器作動部700の加圧器754は、遠位収容部分12bの近位端部122aの開口228から延在する。遠位収容部分12bを対応する注射器作動機構121に連結すると、加圧器754は、その中に収容された注射器の円筒部中に延在する。加圧器754は、装置10に収容された注射器50の栓54と一体化され得、同じであり得、栓54に接続され得、又は栓54と連通され得る。加圧器754は、栓54を加圧するのに適切である任意の適切なサイズ、形状及び構成を有し得る。一実施形態においては、加圧器754は、円筒部53を実質的に密封するように、対応する注射器50の円筒部53の形状に対応する断面を有する。加圧器754は、円筒部53内を摺動可能に移動して、栓54を加圧し、注射器50を作動させるように構成される。
【0142】
図7−10の説明のための実施形態においては、注射器作動部700は、対応する注射器50、ばね88及び他の部品を固定し、注射器50を作動させて、突き出した位置に移動させ、注射器50の内容物を別々に吐出する、単一の一体型機構を構成する。
【0143】
図11は、
図7−10の発射機構組立品122と連結され、相互作用するように構成された、本発明の説明のための一実施形態の注射器収容部組立品121の分解組立図である。説明のための注射器収容部組立品121は、近位収容部分12a、近接する蓋24、近位の第2の付勢機構89、注射器保持体500、及び組み立てたときに収容部12の近接部分20を形成する段差のある覆い12dを含み、
図2にも示すように、近接開口28を含む。部品12a、12d、89、500及び24は、協働して、注射物質を含む注射器50を収容し、上述した2つの異なる操作段階において、装置10の操作を容易にする。
【0144】
注射器保持体500、段差のある覆い12d、及び近接する蓋24の説明のための実施形態を、それぞれ
図12、13及び14に詳細に示す。
図15a及び15bは、本発明の一実施形態による組立ばね収容部組立品121のそれぞれ透視側面図及び断面側面図である。本発明は、説明のための実施形態に限定されないことを当業者は理解されたい。
【0145】
図1、2、11、12及び15bを参照すると、説明のための実施形態の注射器保持体500は、装置10に使用される注射器50の遠位の半分を覆う。注射器50は、保持体500中に置かれ、どちらも収容部12に含まれる。操作中に、注射器50及び保持体500は、収容部12内を前方に(例えば、近位に)移動する。収容部12は、保持体500の移動を停止させ、制限し、保持体500は、注射器50の移動を停止させ、制限する。説明のための注射器保持体500は、好ましくは収容部12aの窓130と一直線に並び、操作前に注射器50の内容物を使用者が見ることができる、切り抜き窓501を含む実質的に管状構造を有する。注射器保持体500は、注射器50の(
図3及び15bに示す)フランジ付き遠位端部56と接するように構成されたフランジ付き遠位端部562を含み得る。フランジ付き遠位端部562は、注射器50の振れ止めとして役立ち得る。注射器保持体500は、中間フランジ563を更に含み得る。中間フランジ563は、説明のための実施形態においては、近接収容部分12aの(
図15bに示す)内部止め具256と相互作用して、注射器50の前進を制限する注射器50用止め具を形成する。説明のための注射器保持体500は、遠位後方への注射器50の移動を制限する近接固定部503を更に含み得る。説明のための実施形態においては、近接固定部503は、内部止め具256に係合するように構成された径方向の溝を有する。注射器保持体連結器504は、
図15bに示すように、近接固定部503を越えて前方に延在して、注射器保持体500と、ばね89及び段差のある覆い12dの遠位端部との連結を容易にする。一実施形態においては、注射器保持体500は、収容部12内に静止し、注射器50は、注射器保持体500内を注射器保持体500に対して選択的かつ制御可能に摺動する。或いは、注射器保持体500は、収容部12内に摺動可能に配置され、収容部12内に注射器50を選択的に輸送する。注射器保持体500は、注射器50を収容部12内に輸送又は誘導するのに適切である任意の適切な構成及びサイズを有し得る。
【0146】
図13及び15bを参照すると、説明のための段差のある覆い12dは、収容部12の近接端部20を形成する。説明のための段差のある覆い12dは、装置10の近接開口28を画定する近接突起112を含めて、実質的管状体を有する。近接開口28を通して、注射針55は、装置10の操作中に突出する。主管状体部分116からの段差113は、段差のある覆い12dの主管状体部分116よりも直径の小さい近接突起112を形成する。
図15bに示すように、段差113は、ばね89に対して前方止め具を形成して、ばね89を閉じ込め、装置10の近接端部20に向かってばね89が前進するのを防止する。
図15bに示す説明のための実施形態においては、段差のある覆い12dの遠位縁部115は、近位収容部分12aの止め具256の近接側に当接する。
図13を参照すると、遠位アーム114は、段差のある覆い12dから延在して、段差のある覆い12dを固定し、偶発的な針刺しを防止する。
【0147】
図14、15a及び15bを参照すると、説明のための蓋24の内部は、段差のある覆い12d及び近位収容部分12aの突出部分を受ける複数の径方向の溝241、243を有し得る。例えば、
図15bに最適に示されるように、第1の半径方向外側の溝241は、近位収容部分12aの側壁242の近接端部を受ける。第2の半径方向内側の溝243は、突起112の近接端部を受ける。蓋の突起26は、収容部12の内腔1012中に延在し、蓋24を収容部12に連結したときに、その中に装着された注射器50の近位端部を包囲する。一実施形態においては、蓋24の(
図15bに示す)内部針カバー246は、注射針55を覆う。蓋24を取り外すと、注射針55は、収容部12の内腔1012内で露出する。蓋24も、その近位端部248に開口を有し得る。
【0148】
上述したように、また、
図15aに示すように、近位収容部分12aの開口126は、発射機構組立品122のタブ127を受けて、装置10の組立てを容易にする。組立品121に含まれる注射器の内容物を使用者が見ることができる、また、注射終了後に窓130をふさぐ表示器190を使用者が見ることができる上記窓130を、近位収容部分12aに形成することができる。
【0149】
図16A及び16Bは、組立自動注射装置10を示す断面図である(
図16Aと16Bのオフセット角は90度である。)。注射器収容部組立品121と発射機構組立品122は連結され、注射器作動部700の加圧器754は、注射器収容部組立品121に収容された注射器50の円筒部53中に延在し、注射器50の栓54と連通する。
【0150】
示したように、
図16bにおいて、注射器作動部700の引き金固定部789は、起動ボタン32によって収容部12の遠位端部方向に固定される。使用者が起動ボタン32を押すと、起動ボタン32に接続された駆動アーム32aが、引き金固定部789のタブ付き足部7891を圧縮し、注射器作動機構700を解除し、ばね88を開放する。操作前に、注射器作動部700の、肘状部78として示した圧縮可能な膨張した中央部76は、注射器50のフランジ56上に置かれ、開放されたコイルばね88によって押されると、圧縮可能な膨張した中央部76が、注射器の円筒部53を加圧し、作動したときにそれによって収容部12内で注射器50が前進する。上述したように、
図15b及び
図16aに示す近位収容部分12a上の止め具256などの止め具が、注射器を捕らえて、突出した注射器50のそれ以上の前進を停止させると、ばね88に対する連続した付勢力によって、注射器作動部700が前進し続けて、圧縮可能な膨張した中央部76が圧縮され、注射器50の円筒部53中に移動する。円筒部53内を注射器作動部700が前進すると、加圧器754が栓54を加圧して、注射器内容物が注射部位に吐出される。
【0151】
やはり
図16A及び16Bに示すように、作動器の蓋34は、起動ボタン32を通り、注射器作動部700のタブ付き足部7891間を延在して、起動前に装置の部品を安定化する、安定化突出部340を含み得る。
【0152】
図17は、本発明の一実施形態の自動注射装置10の注射器収容部組立品121と発射機構組立品122(
図6及び8a参照)の接続部分の詳細図であり、本発明の一実施形態による注射器作動部700の表示器190を示す。表示器190は、注射が終了したことを使用者に示す弁別的な色及び/又は図柄を有することができる。
図2も参照すると、圧縮可能な膨張した中央部76がつぶれて、円筒部53内を前進して、注射器作動部700が注射を終了し、注射器50の内容物を針55から患者中に完全に又は実質的に完全に吐出した後に、表示器190は、収容部12の窓130と一直線に並ぶように構成される。したがって、装置10の操作前に、注射筒53は、窓130と一直線に並び、内容物をその中に見ることができる。注射後、注射器の円筒部53が装置10の近位端部20方向に移動した状態では、針55は近位端部20から注射部位に突出し、注射器作動部700は注射器の円筒部53内を前進しており、表示器190は窓130と一直線に並んで、注射の終了を示す。したがって、操作の第1段階(針55が突出した露出位置への注射器50の移動)が終了した場合でも、表示器190は、窓130と一直線に並ばず、又は注射器作動部700が注射器50の内容物を注射筒53から押し出すまで注射の終了を示さない。
【0153】
図18−22は、本発明の説明のための一実施形態による組立自動注射装置10’の断面図である。自動注射装置10’の説明のための実施形態は、2個の接合した近位と遠位の収容部分12a、12bを含む。近位と遠位の収容部分12a、12bは、接合して、完全な収容部12を形成する。示したように、近位収容部分12aは、収容部12の近位端部を形成し、遠位収容部分12bの近位端部を受ける。協働する突起部312と溝313、又は協働する複数の突起部312と溝313は、説明のための実施形態において、近位と遠位の収容部分12a、12bの接合を容易にする。或いは、他の適切な接合機構を使用することができる。遠位収容部分12bの外面に形成された棚29は、第2の着脱可能な蓋34に対する止め具を形成し得る。
【0154】
示したように、起動ボタン32’は、遠位収容部分12bの遠位端部を覆う蓋であり得る。説明のための起動ボタン32’は、遠位収容部分12bに対して摺動して、プランジャー70、注射器作動部700などの注射器作動器を作動させる。遠位収容部分12bの遠位端部30近くの遠位収容部分12bの外面に形成された棚/段差138は、
図20及び22に示すように、収容部12に対して起動ボタン32’の移動を可能にし、また、制限する。説明のための起動ボタン32’は、プランジャー70’の柔軟な固定アーム172を解除可能に保持する。起動ボタン32’を押すと、柔軟な固定アーム172が解除され、ばね88’として示した第1の付勢機構によって、装置10’の近位端部方向にプランジャー70’が前進する。
【0155】
図18−22の実施形態においては、プランジャー70’は、圧縮可能な広がった中間部78とプランジャーロッド71’の遠位端部との間に位置するフランジ72’を更に含む。第1の付勢機構88’は、収容部12の内部遠位端部とフランジ72’との間に設置され、収容部12’の近位端部方向にプランジャー70を付勢する。上述したように、起動ボタン34’によって固定アーム172が解除されると、コイルばね88’又は他の適切な付勢機構によって、プランジャー70’が装置10の近位端部20方向に前進する。
【0156】
説明のための実施形態10’は、フランジ72’と柔軟な肘状部78’として示した圧縮可能な広がった部分76との間のプランジャーロッド71’の中間部分に形成された表示器190を更に含む。
【0157】
図18−22の注射器50’は、収容部12’内の注射器の移動の制御を容易にする突出部又は他の適切な部品を含み得る。例えば、
図18に関連して、注射器50’は、収容部12’内の遠位方向の注射器50’の移動を制限する、収容部12’内面に形成された第1の突出部168の近位側に当接する近位突出部158を形成するスリーブ157を含む。スリーブ157は、第1の突出部168の遠位側に当接して、注射器50’が注射中に近位方向に移動するのを制限し得るフランジ159も形成し得る。
【0158】
図18−22の実施形態においては、コイルばね89’として示した第2の付勢機構は、注射器50’の近位部分の周囲に配置される。収容部12’の近位内面に形成された棚169は、コイルばね89’の近位端部を受ける。
図19を参照すると、注射器スリーブ157の近位突出部158、又は別の適切に配置された機構は、コイルばね89’の遠位端部を受ける。上述したように、第2の付勢機構89’は、装置10の起動まで、収容部12’内の引っ込んだ位置で注射器50’を付勢する。
【0159】
図18−22に示すように、自動注射装置10’は、注射器50から1回分が完全に又は実質的に完全に射出されたことを装置10の使用者に知らせる表示器190を内蔵する。説明のための実施形態においては、表示器190は、圧縮可能な膨張した中央部76とフランジ72’の間のプランジャーロッド71’の一部に形成される。操作中にプランジャーロッド71が移動するにつれ、表示器190は前進し、投与によって注射器が空になると窓130と一直線に並ぶ。表示器190は、好ましくは注射物質とは異なる色又はパターンであり、窓130を完全にふさいで、投与量が射出されたことを示す。任意の適切な表示器を使用することができる。
【0160】
装置10から針55を経由して1回分を注射した後、覆い12dの近位端部20によって形成され得る針外筒112は、収容部の近位端部20から延在する露出した針55に沿って自動的に前進して、偶発的な針刺しを防止することができる。
【0161】
図23を参照すると、説明のための収容部12は、使用者が注射器の内容物を見ることができるように、収容部12の側壁を貫いて形成された窓130を含む。
【0162】
説明のための窓130は、好ましくは、鍵穴の形状を有する。例えば、窓130は、実質的に線状である第1の端部132を含み、曲線の内縁132aを含み得る。窓130の第2の端部134は、実質的に半球状であり得、窓130の第1の端部132よりも幅広であり得る。窓130は、注射器内の投与量が適切であることを検証するための充填線(fill line)135を含み得る。
【0163】
本発明の一実施形態によれば、説明のための自動注射装置を使用して、関節炎及び他の疾患の治療に使用されるTNF阻害剤の1回分を送達することができる。一実施形態においては、注射器50又は50’に含まれる溶液は、製剤(TNFα遮断薬又は阻害薬)40ミリグラム、アダリムマブ1mL:アダリムマブ40mg、塩化ナトリウム4.93mg、一塩基性無水リン酸ナトリウム0.69mg、二塩基性無水リン酸ナトリウム1.22mg、クエン酸ナトリウム0.24mg、クエン酸一水和物1.04mg、マンニトール9.6mg、ポリソルベート50 0.8mg及び注射用水を含み、pHを約5.2に調節するのにUSP水酸化ナトリウムが必要に応じて添加される。
【0164】
図24は、本発明の説明のための一実施形態によって、使用者の皮下領域にTNF阻害剤などの物質の投与量を送達するための装置の使用を示す。まず、上記装置10、装置10’などの充填済み自動注射装置が使用者に提供される。次に、使用者は、物質を投与する、皮下領域中の注射部位400を選択し、準備する。例えば、使用者は、アルコール調製物のパッドなどの適切な清浄化装置を用いて注射部位を清潔にすることができる。アルコール調製物のパッドは、本発明の装置10又は10’と一体化させることができる。準備後、使用者は注射の1回分を調製する。例えば、使用者は、窓130を通して溶液を検査して、溶液が適切な色及び粘ちゅう性を有すること、及び液体レベルが適切な投与量を保証する充填線にあることを確実にすることができる。充填済み注射器50中の投与量及び内容物が適切であることを確実にした後、次いで、使用者は、装置10又は10’の第1の蓋24及び第2の蓋34を取り外して、第1の端部20の開口28及び第2の端部30の起動ボタン32を露出させる。次いで、使用者は、自動注射装置10又は10’の開口した第1の端部20を注射部位に隣接又は近接させる。使用者は、この領域の皮膚を圧迫して注射を容易にすることができる。自動注射装置10又は10’は、
図24に示すように、好ましくは、使用者の体に対して約90度の角度で、皮膚と同じ高さに保持される。配置後、使用者は、起動ボタン32を押して、注射を開始する。起動ボタンを押すと、注射開始を示す「カチッという音」などの可聴表示(音)が生じ得る。上述したように、起動ボタン32を押すと、起動ボタンによって注射器作動部700の固定用端部789などの固定部が解除され、付勢ばね88によって注射器作動部700が前進し、したがって、注射器50が装置10又は10’の近位端部20方向に前進する。注射器50が皮膚に刺さった後、又は投与部位に入った後、次いで、注射器作動器機構である注射器50前進止め具又は他の機構が、注射器の栓54を押して、注射器50の内容物を吐出させる。使用者は、自動注射装置10又は10’を
図24に示した位置に所定の期間維持する。自動注射装置10が表示器190を含む場合には、表示器190が窓130をふさぎ、物質の完全な又は実質的に完全な用量が注射されたことを示すまで、使用者は、自動注射装置10を適切な位置に維持する。その後、使用者は、装置100を除去して、針55を皮膚から抜く。針55は、好ましくは、自動的に収められて、偶発的な穿刺を防止する。次いで、使用者は、空の自動注射装置10又は10’を処分することができる。
【0165】
本発明の別の実施形態によれば、自動注射装置10又は10’の使用法を使用者に訓練するために訓練用自動注射装置を提供することができる。説明のための訓練用注射装置は、患者に物質を注射せずに、自動訓練装置10又は10’の機能を模倣したものである。訓練用自動注射装置は、針及び/又は薬物を欠くが、上記自動注射装置10、10’と実質的に類似した部品を有し得る。例えば、訓練用自動注射装置は、起動したときに注射器の円筒部53から吐出される空気を充填することができる。訓練用自動注射装置の操作によって、注射器が前進し、好ましくは使用者の皮膚に刺さずに、空気又は他の無害な物質が吐出される。訓練用自動注射装置は、好ましくは、表示器190などの表示器を含む。訓練用自動注射装置は、貴重な資源を無駄にせずに、使用者を訓練して、自動注射装置の足指取扱い(toe handling)、音、感触、操作、表示器190の使用、及び/又はタイミングに慣れるのに役立ち得る。
【0166】
本発明は、薬物、特にTNFα阻害剤を投与する先行方法よりもかなりの利点を提供する。例えば、自動注射装置は、投与を向上させ、簡便性を高め、痛みが少なく、針が隠れており、「針恐怖症」患者の懸念や不安を多少なりとも解消して、恐怖が要因でなくなるようにする。また、自動注射装置は、安全であり、薬物又は他の物質を効率的に送達する。本発明の自動注射装置は、安全面の利点も提供する。従来の注射器とは異なり、自動注射装置は針が露出しない。自動注射装置は、針を包囲し、使用前後の針刺し傷害から患者を保護する白色の針スリーブを含む。また、自動注射装置の安全蓋は、充填済み注射器で起こり得る偶発的な誤発射を防止する。聞こえる「カチッという音」は、注射の開始を知らせ、検査窓の弁別的な表示器は、全部の用量が完全に投与されたことを患者に示す。
【0167】
本発明の自動注射装置の使用例は、参照によりその全体を本明細書に明示的に組み入れる米国仮特許出願第60/818231号にも詳述されている。自動注射装置の他の例は、参照によりその全体を本明細書に明示的に組み入れるPCT/EP2005/002487に記載されている。参照により本明細書に組み入れる米国意匠特許出願第29/265691号及び同29/265,646号も自動注射装置を記載している。
【0168】
III. 本発明の組成物及び方法に用いられるTNFα阻害剤
本発明は、1回分の液剤などの物質(例えば、TNFα阻害剤)を(本明細書では患者とも称する)使用者に投与するのに使用することができる。一実施形態においては、本発明の自動注射装置によって送達される1回分は、ヒトTNFα抗体若しくはその抗原結合性部分を含む。特に好ましい医薬品はTNFα阻害剤である。
【0169】
本明細書では(hTNFα又は単にhTNFと略記する)「ヒトTNFα」という用語は、17kDの分泌形態及び26kDの膜結合形態として存在するヒトサイトカインを指すものとする。このヒトサイトカインの生物活性形態は、非共有結合した17kD分子の3量体で構成される。hTNFαの構造は、例えば、Pennica, D., et al.(1984) Nature 312:724−729、Davis, J.M., et al.(1987) Biochemistry 26:1322−1326及びJones, E.Y., et al.(1989) Nature 338:225−228に更に詳細に記載されている。ヒトTNFαという用語は、組換えヒトTNFα(rhTNFα)を含むものとする。組換えヒトTNFαは、標準組換え発現方法によって調製することができ、又は市販品(R&D Systems、カタログ番号210−TA、Minneapolis、MN)を購入することができる。TNFαはTNFとも称する。
【0170】
「TNFα阻害剤」という用語は、TNFα活性を妨害する薬剤を指す。この用語は、本明細書並びに米国特許第6,090,382号、同6,258,562号、同6,509,015号、米国特許出願第09/801185号及び同10/302356号に記載された(本明細書ではTNFα抗体と区別なく使用する)抗TNFαヒト抗体及び抗体部分の各々も含む。一実施形態においては、本発明に用いられるTNFα阻害剤は、インフリキシマブ(参照により本明細書に組み入れる米国特許第5,656,272号に記載のRemicade(登録商標)、Johnson and Johnson)、CDP571(ヒト化モノクローナル抗TNFアルファIgG4抗体)、CDP 870(ヒト化モノクローナル抗TNFアルファ抗体断片)、抗TNF dAb(Peptech)、CNTO 148(ゴリムマブ、Medarex and Centocor、国際公開第02/12502号参照)及びアダリムマブ(HUMIRA(登録商標)Abbott Laboratories、米国特許第6,090,382号にD2E7として記載されているヒト抗TNF mAb)を含めて、抗TNFα抗体又はその断片である。本発明に使用することができる追加のTNF抗体は、その各々を参照により本明細書に組み入れる米国特許第6,593,458号、同6,498,237号、同6,451,983号及び同6,448,380号に記載されている。別の実施形態においては、TNFα阻害剤は、TNF融合タンパク質(例えば、エタネルセプト(参照により本明細書に組み入れる国際公開第91/03553号及び同09/406476号に記載されているEnbrel(登録商標)、Amgen))である。別の実施形態においては、TNFα阻害剤は、組換えTNF結合タンパク質(r−TBP−I)(Serono)である。
【0171】
本明細書では「抗体」という用語は、4本のポリペプチド鎖、すなわちジスルフィド結合によって相互に連結された2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖とからなる免疫グロブリン分子を指すものとする。各重鎖は、(HCVR又はVHと略記する)重鎖可変領域と重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3個のドメインCH1、CH2及びCH3からなる。各軽鎖は、(LCVR又はVLと略記する)軽鎖可変領域と軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1個のドメインCLからなる。VH及びVL領域は、枠組み領域(FR)と称するより保存的である領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称する超可変領域に更に細分することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順序、すなわちFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で整列する3個のCDRと4個のFRで構成される。本発明の抗体は、その各々を参照によりその全体を本明細書に組み入れる米国特許第6,090,382号、同6,258,562号及び同6,509,015号に更に詳細に記載されている。
【0172】
本明細書では、抗体の「抗原結合性部分」(又は単に「抗体部分」)という用語は、抗原(例えば、hTNFα)に特異的に結合する能力を保持する1個以上の抗体断片を指す。完全長抗体の断片は、抗体の抗原結合機能を果たし得ることが示された。抗体の「抗原結合性部分」という用語に包含される結合断片の例としては、(i)Fab断片、すなわちVL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価の断片、(ii)F(ab’)
2断片、すなわちヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2個のFab断片を含む二価の断片、(iii)VHとCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一の腕のVLとVHドメインからなるFv断片、(v)VH又はVLドメインからなるdAb断片(Ward et al.(1989) Nature 341:544−546)、(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、及び(vii)二重可変(dual variable)ドメイン(DVD)抗体が挙げられる。また、Fv断片の2個のドメインVLとVHは別々の遺伝子によってコードされるが、VLとVHは、VL領域とVH領域が一対になって一価の分子を形成する単一タンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)として知られる。例えば、Bird et al.(1988) Science 242:423−426及びHuston et al.(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879−5883を参照されたい。)として生成させることができる合成リンカーを用いて組換え方法によって連結することができる。かかる単鎖抗体も、抗体の「抗原結合性部分」という用語に包含される。二重特異性抗体などの単鎖抗体の他の形態も包含される。二重特異性抗体は、VHドメインとVLドメインが単一のポリペプチド鎖上で発現されるが、短かすぎて同じ鎖上の2個のドメインの対形成が不可能であるリンカーを用いることによって、これらのドメインを別の鎖の相補的ドメインと対形成させ、2個の抗原結合部位を生成させた、二価の二重特異的な抗体である(例えば、Holliger et al.(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444−6448、Poljak et al.(1994) Structure 2:1121−1123参照)。本発明の抗体部分は、その各々を参照によりその全体を本明細書に組み入れる米国特許第6,090,382号、同6,258,562号及び同6,509,015号に更に詳細に記載されている。
【0173】
一実施形態においては、本発明の方法及び組成物に用いられるTNF阻害剤としては、TNF融合タンパク質、例えば、エタネルセプト(参照により本明細書に組み入れる国際公開第91/03553号及び同09/406476号に記載のEnbrel(登録商標)、Amgen)、及び組換えTNF結合タンパク質(r−TBP−I)(Serono)が挙げられる。
【0174】
一実施形態においては、本発明の方法及び組成物に用いられるTNF阻害剤としては、高親和性及び低off速度でヒトTNFαに結合し、高い中和能を有する単離ヒト抗体若しくはその抗原結合性部分が挙げられる。好ましくは、本発明のヒト抗体は、組換え中和ヒト抗hTNFα抗体である。本発明の最も好ましい組換え中和抗体は、本明細書ではD2E7と称し、HUMIRA(登録商標)又はアダリムマブとも称する(D2E7 VL領域のアミノ酸配列は米国特許第6,090,382号の配列番号1で示され、D2E7 VH領域のアミノ酸配列は米国特許第6,090,382号の配列番号2で示される。)。D2E7(HUMIRA(登録商標))の諸特性は、各々を参照により本明細書に組み入れる、Salfeld他、米国特許第6,090,382号、同6,258,562号及び同6,509,015号に記載されている。TNFα阻害剤の他の例は、リウマチ様関節炎治療の臨床試験を受けたキメラ及びヒト化ネズミ抗hTNFα抗体である(例えば、Elliott et al.(1994) Lancet 344:1125−1127、Elliot et al.(1994) Lancet 344:1105−1110、Rankin et al.(1995) Br. J. Rheumatol. 34:334−342参照)。別の実施形態においては、本発明に用いられるTNFα阻害剤は、インフリキシマブ(参照により本明細書に組み入れる米国特許第5,656,272号に記載のRemicade(登録商標)、Johnson and Johnson)、CDP571(ヒト化モノクローナル抗TNFアルファIgG4抗体)、CDP 870(ヒト化モノクローナル抗TNFアルファ抗体断片)、抗TNF dAb(Peptech)及びCNTO 148(ゴリムマブ、Medarex and Centocor、国際公開第02/12502号参照)を含む、抗TNFα抗体又はその断片である。
【0175】
本明細書では「組換えヒト抗体」という用語は、(以下に更に記述する)宿主細胞に移入された組換え発現ベクターを用いて発現される抗体、(以下に更に記述する)組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子を導入したトランスジェニック動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylor et al.(1992) Nucl. Acids Res. 20:6287参照)、他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングを含む任意の他の手段によって調製され、発現され、作製され、又は単離された抗体など、組換え手段によって調製され、発現され、作製され、又は単離されたすべてのヒト抗体を含むものとする。かかる組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変及び定常領域を有する。しかし、ある実施形態においては、かかる組換えヒト抗体は、インビトロでの変異誘発(又はヒトIg配列を導入したトランスジェニック動物を使用するときには、インビボでの体細胞変異誘発)を受け、したがって組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VH及びVL配列に由来し、関係するものの、インビボでのヒト抗体生殖系列レパートリーに天然には存在し得ない配列である。
【0176】
かかるキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体及び双特異性抗体は、当分野で公知の組換えDNA技術、例えば、国際出願第PCT/US86/02269号、欧州特許出願第184,187号、同171,496号、同173,494号、国際公開第86/01533号、米国特許第4,816,567号、欧州特許出願第125,023号、Better et al.(1988) Science 240:1041−1043、Liu et al.(1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:3439−3443、Liu et al.(1987) J. Immunol. 139:3521−3526、Sun et al.(1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:214−218、Nishimura et al.(1987) Cancer Res. 47:999−1005、Wood et al.(1985) Nature 314:446−449、Shaw et al.(1988) J. Natl. Cancer Inst. 80:1553−1559)、Morrison(1985) Science 229:1202−1207、Oi et al.(1986) BioTechniques 4:214、米国特許第5,225,539号、Jones et al.(1986) Nature 321:552−525、Verhoeyan et al.(1988) Science 239:1534及びBeidler et al.(1988) J. Immunol. 141:4053−4060、Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:10029−10033(1989)、米国特許第5,530,101号、同5,585,089号、同5,693,761号、同5,693,762号、Selick他、国際公開第90/07861号並びにWinter、米国特許5,225,539号の方法を用いて作製することができる。
【0177】
本明細書では「単離抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すものとする(例えば、hTNFαに特異的に結合する単離抗体は、hTNFα以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない。)。しかし、hTNFαに特異的に結合する単離抗体は、他の種由来のTNFα分子などの他の抗原に対して交差反応性を有し得る。さらに、単離抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まない場合もある。
【0178】
本明細書では「中和抗体」(又は「hTNFα活性を中和した抗体」)は、hTNFαと結合することによってhTNFαの生物活性を抑制する抗体を指すものとする。このhTNFαの生物活性の抑制は、(インビトロ又はインビボで)hTNFαによって誘導される細胞傷害性、hTNFαによって誘導される細胞活性化、hTNFα受容体へのhTNFαの結合など、hTNFα生物活性の1つ以上の指標を測定することによって評価することができる。hTNFα生物活性のこれらの指標は、当分野で公知の幾つかの標準インビトロ又はインビボアッセイの1つ以上によって評価することができる(米国特許第6,090,382号参照)。抗体のhTNFα活性中和能力は、L929細胞のhTNFα誘導性細胞傷害性を阻害することによって評価されることが好ましい。hTNFα活性の追加のパラメータ、又は代わりのパラメータとして、HUVEC上でのELAM−1のhTNFα誘導性発現を阻害する抗体の能力を、hTNFαによって誘導される細胞活性化の尺度として評価することができる。
【0179】
本明細書では「表面プラズモン共鳴」という用語は、例えばBIAcoreシステム(Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、Sweden and Piscataway、NJ)を用いて、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することによって、実時間での生体分子特異的相互作用の分析を可能にする光学現象を指す。更に詳細な説明は、米国特許第6,258,562号の実施例1、並びにJonsson et al.(1993) Ann. Biol. Clin. 51:19、Jonsson et al.(1991) Biotechniques 11:620−627、Johnsson et al.(1995) J. Mol. Recognit. 8:125及びJohnnson et al.(1991) Anal. Biochem. 198:268を参照されたい。
【0180】
本明細書では「K
off」という用語は、抗体/抗原複合体からの抗体の解離のoff速度定数を指すものとする。
【0181】
本明細書では「K
d」という用語は、特定の抗体−抗原相互作用の解離定数を指すものとする。
【0182】
本明細書では「IC
50」という用語は、目的とする生物学的エンドポイントを阻害するのに、例えば細胞傷害活性を中和するのに、必要である阻害剤濃度を指すものとする。
【0183】
本明細書では「用量」という用語は、好ましくは本発明の自動注射装置を用いて、使用者に投与されるTNFα阻害剤などの物質の量を指す。一実施形態においては、用量は、TNFα阻害剤アダリムマブの、例えば、20mg、40mg、80mg及び160mgを含めた有効量を含む。
【0184】
本明細書では「投薬」という用語は、治療目的(例えば、リウマチ様関節炎の治療)を達成するための物質(例えば、抗TNFα抗体)の投与を指す。
【0185】
「投薬計画」は、TNFα阻害剤などの物質の治療スケジュール、例えば、長期間の、及び/又は治療コース全体を通した、治療スケジュール、例えば、1回目のTNFα阻害剤を第0週に投与し、続いて2回目のTNFα阻害剤を隔週投薬計画で投与することを表す。
【0186】
本明細書では「隔週投薬計画」、「隔週投薬」及び「隔週投与」という用語は、例えば治療コース全体を通して、治療目的を達成するために患者に物質(例えば、抗TNFα抗体)を投与する時間経過を指す。隔週投薬計画は、毎週の投薬計画を含むものではない。好ましくは、9から19日ごと、より好ましくは11から17日ごと、更により好ましくは13から15日ごと、最も好ましくは14日ごとに物質を投与する。一実施形態においては、隔週投薬計画は、患者において治療の第0週に開始される。別の実施形態においては、維持量を隔週投薬計画で投与する。一実施形態においては、負荷投与量と維持量の両方を隔週投薬計画に従って投与する。一実施形態においては、隔週投薬は、TNFα阻害剤の用量を第0週に始まって隔週で患者に投与する投薬計画を含む。一実施形態においては、隔週投薬は、TNFα阻害剤の用量を所与の期間(例えば、4週間、8週間、16週間、24週間、26週間、32週間、36週間、42週間、48週間、52週間、56週間など)、患者に隔週で連続的に投与する投薬計画を含む。隔週投薬方法は、参照により本明細書に組み入れる米国特許出願公開第20030235585号にも記載されている。
【0187】
「第2の薬剤と組み合わせた第1の薬剤」という句におけるような「組み合わせ」という用語は、例えば薬学的に許容される同じ担体に溶解又は混合することができる第1の薬剤と第2の薬剤の同時投与、第1の薬剤の投与とそれに続く第2の薬剤の投与、又は第2の薬剤の投与とそれに続く第1の薬剤の投与を含む。
【0188】
「同時治療処置」という句におけるような「同時」という用語は、ある薬剤を第2の薬剤の存在下で投与することを含む。同時治療処置方法は、第1、第2、第3又は更なる物質を同時投与する方法を含む。同時治療処置方法は、第1又は更なる薬剤を第2又は更なる物質の存在下で投与する方法も含み、第2又は更なる薬剤は、例えば、あらかじめ投与することができる。同時治療処置方法は、異なる患者によって段階的に実施することができる。第1の物質(及び追加の物質)が第2の物質(及び追加の物質)の存在下での投与後である限り、例えば、ある対象が第1の薬剤を使用者に投与することができ、第2の対象が第2の物質を使用者に投与することができ、投与段階は、同時に、ほぼ同時に、又は離れた時間で実施することができる。行為者と使用者は、同じ実体(例えば、ヒト)とすることができる。
【0189】
本明細書では「併用療法」という用語は、2種類以上の治療物質(例えば、抗TNFα抗体と別の薬物)との投与を指す。他方の薬物を抗TNFα抗体の投与と同時に、投与前に、又は投与後に投与することができる。
【0190】
本発明では「治療」という用語は、TNFαが有害である障害(例えば、リウマチ様関節炎)などの障害の治療のための、治療処置及び予防的又は抑制的手段を含むものとする。
【0191】
一実施形態においては、本発明は、自動注射装置によって、TNFα阻害剤(例えば、ヒトTNFα抗体若しくはその抗原結合性部分)を用いて、TNFαが有害である障害(例えば、リウマチ様関節炎)を治療するための改善された使用及び組成物を提供する。
【0192】
本発明の自動注射装置によって送達される物質は、TNFα阻害剤であり得る。TNFα阻害剤としては、TNFα活性に干渉する任意の薬剤(又は物質)が挙げられる。好ましい実施形態においては、TNFα阻害剤は、TNFα活性を中和することができ、特に、リウマチ様関節炎、若年性関節リウマチ、強直性脊椎炎、クローン病、乾せん及び乾せん性関節炎を含めて、ただしこれらだけに限定されない、TNFα活性が有害である障害に付随する有害なTNFα活性を中和することができる。
【0193】
一実施形態においては、本発明に用いられるTNFα阻害剤は、キメラ抗体、ヒト化抗体及びヒト抗体を含めて、(本明細書ではTNFα抗体とも称する)抗TNFα抗体若しくはその抗原結合性フラグメントである。本発明に使用することができるTNFα抗体の例としては、インフリキシマブ(参照により本明細書に組み入れる米国特許第5,656,272号に記載のRemicade(登録商標)、Johnson and Johnson)、CDP571(ヒト化モノクローナル抗TNFアルファIgG4抗体)、CDP 870(ヒト化モノクローナル抗TNFアルファ抗体断片)、抗TNF dAb(Peptech)、CNTO 148(ゴリムマブ、Medarex and Centocor、国際公開第02/12502号参照)及びアダリムマブ(HUMIRA(登録商標)Abbott Laboratories、米国特許第6,090,382号にD2E7として記載されているヒト抗TNF mAb)が挙げられるが、これらだけに限定されない。本発明に使用することができる追加のTNF抗体は、その各々を参照により本明細書に組み入れる米国特許第6,593,458号、同6,498,237号、同6,451,983号及び同6,448,380号に記載されている。
【0194】
本発明の方法及び組成物に使用することができるTNFα阻害剤の他の例としては、エタネルセプト(国際公開第91/03553号及び同09/406476号に記載のEnbrel)、可溶性TNF受容体I型、PEG化可溶性TNF受容体I型(PEGsTNF−R1)、p55TNFRIgG(Lenercept)及び組換えTNF結合タンパク質(r−TBP−I)(Serono)が挙げられる。TNFα阻害剤の例としては、インフリキシマブ(Remicade(商標))、CDP 571、CDP 870、抗TNF dAb、ゴリムマブ、アダリムマブ、エタネルセプト(Enbrel(商標))、p55TNFRIgG(Lenercept)及びr−TBP−1が挙げられるが、これらだけに限定されない。特に好ましいTNFα阻害剤は、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))である。
【0195】
一実施形態においては、「TNFα阻害剤」という用語は、インフリキシマブを除外する。一実施形態においては、「TNFα阻害剤」という用語は、アダリムマブを除外する。別の実施形態においては、「TNFα阻害剤」という用語は、アダリムマブ及びインフリキシマブを除外する。
【0196】
一実施形態においては、「TNFα阻害剤」という用語は、エタネルセプトを除外し、場合によっては、アダリムマブ、インフリキシマブ、及びアダリムマブとインフリキシマブを除外する。
【0197】
一実施形態においては、「TNFα抗体」という用語は、インフリキシマブを除外する。一実施形態においては、「TNFα抗体」という用語は、アダリムマブを除外する。別の実施形態においては、「TNFα抗体」という用語は、アダリムマブ及びインフリキシマブを除外する。
【0198】
一実施形態においては、本発明は、リウマチ様関節炎を治療するための、又はリウマチ様関節炎の治療に対するTNFα阻害剤の効力を求めるための、使用及び組成物を特徴とする。TNFα抗体は、高親和性及び低off速度でヒトTNFαに結合し、高い中和能も有する単離ヒト抗体若しくはその抗原結合性部分である。好ましくは、本発明に用いられるヒト抗体は、組換え中和ヒト抗hTNFα抗体である。本発明の最も好ましい組換え中和抗体は、本明細書ではD2E7と称し、HUMIRA(登録商標)又はアダリムマブとも称する(D2E7 VL領域のアミノ酸配列は配列番号1で示され、D2E7 VH領域のアミノ酸配列は配列番号2で示される。)。D2E7(アダリムマブ/HUMIRA(登録商標))の諸特性は、各々を参照により本明細書に組み入れる、Salfeld他、米国特許第6,090,382号、同6,258,562号及び同6,509,015号に記載されている。本発明の方法は、リウマチ様関節炎治療の臨床試験を受けたキメラ及びヒト化ネズミ抗hTNFα抗体を用いて実施することもできる(例えば、Elliott, MJ., et al.(1994) Lancet 344:1125−1127、Elliot, M.J., et al.(1994) Lancet 344:1105−1110、Rankin, E.C., et al.(1995) Br. J. Rheumatol. 34:334−342参照)。
【0199】
一実施形態においては、本発明の方法は、リウマチ様関節炎の治療に対する、アダリムマブ抗体及び抗体部分、アダリムマブ関連抗体及び抗体部分、又は低解離速度及び高中和能でのhTNFαとの高親和性結合などアダリムマブと等価な諸特性を有する他のヒト抗体及び抗体部分の効力を決定することを含む。一実施形態においては、本発明は、表面プラズモン共鳴によって測定して1×10
−8M以下のK
d及び1×10
−3s
−1以下のK
off速度定数でヒトTNFαから解離し、標準インビトロL929アッセイにおいてヒトTNFα細胞傷害性を1×10
−7M以下のIC
50で中和する、単離ヒト抗体若しくはその抗原結合性部分を用いた治療を提供する。より好ましくは、単離ヒト抗体若しくはその抗原結合性部分は、5×10
−4s
−1以下のK
offで、更により好ましくは1×10
−4s
−1以下のK
offでヒトTNFαから解離する。より好ましくは、単離ヒト抗体若しくはその抗原結合性部分は、標準インビトロL929アッセイにおいてヒトTNFα細胞傷害性を1×10
−8M以下のIC
50で、更により好ましくは1×10
−9M以下のIC
50で、更により好ましくは1×10
−10M以下のIC
50で中和する。好ましい実施形態においては、抗体は、単離ヒト組換え抗体若しくはその抗原結合性部分である。
【0200】
抗体重鎖及び軽鎖CDR3ドメインが、抗原に対する抗体の結合特異性/親和性に重要な役割を果たすことは当分野で周知である。したがって、別の態様においては、本発明は、hTNFαとの結合に対して低解離速度を有し、D2E7の軽鎖及び重鎖CDR3ドメインと構造的に同一である、又は構造的に関係する、軽鎖及び重鎖CDR3ドメインを有するヒト抗体を投与することによるクローン病の治療に関する。D2E7 VL CDR3の9位は、K
offに実質的な影響を及ぼさずにAla又はThrが占めることができる。したがって、D2E7 VL CDR3のコンセンサスモチーフは、アミノ酸配列Q−R−Y−N−R−A−P−Y−(T/A)(配列番号3)を含む。また、D2E7 VH CDR3の12位は、K
offに実質的な影響を及ぼさずにTyr又はAsnが占めることができる。したがって、D2E7 VH CDR3のコンセンサスモチーフは、アミノ酸配列V−S−Y−L−S−T−A−S−S−L−D−(Y/N)(配列番号4)を含む。さらに、米国特許第6,090,382号の実施例2に示されるように、D2E7重鎖及び軽鎖のCDR3ドメインは、K
offに実質的な影響を及ぼさずに(VL CDR3内の1、4、5、7若しくは8位、又はVH CDR3内の2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11位において)単一のアラニン残基での置換に適している。さらに、当業者は、D2E7 VL及びVH CDR3ドメインがアラニンによる置換に適していることから、抗体の低off速度定数を依然として保持しつつ、CDR3ドメイン内の他のアミノ酸の置換、特に保存的アミノ酸による置換も可能であることを理解されたい。1から5個以下の保存的アミノ酸置換がD2E7 VL及び/又はVH CDR3ドメイン内でなされることが好ましい。1から3個以下の保存的アミノ酸置換がD2E7 VL及び/又はVH CDR3ドメイン内でなされることがより好ましい。また、保存的アミノ酸置換は、hTNFαとの結合に極めて重要なアミノ酸位置においてなされてはならない。D2E7 VL CDR3の2及び5位、並びにD2E7 VH CDR3の1及び7位は、hTNFαとの相互作用に極めて重要であると考えられ、したがって、保存的アミノ酸置換は、これらの位置において行われないことが好ましい(ただし、上述したように、D2E7 VL CDR3の5位におけるアラニン置換は許容される。)(米国特許第6,090,382号参照)。
【0201】
したがって、別の実施形態においては、抗体若しくはその抗原結合性部分は、好ましくは、以下の特性を有する。
【0202】
a)表面プラズモン共鳴によって測定して1×10
−3s
−1以下のK
off速度定数でヒトTNFαから解離し、
b)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメイン、1、4、5、7若しくは8位における単一のアラニン置換によって配列番号3から改変された軽鎖CDR3ドメイン、又は1、3、4、6、7、8及び/又は9位における1から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号3から改変された軽鎖CDR3ドメインを有し、
c)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメイン、2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11位における単一のアラニン置換によって配列番号4から改変された重鎖CDR3ドメイン、又は2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12位における1から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号4から改変された重鎖CDR3ドメインを有する。
【0203】
より好ましくは、抗体若しくはその抗原結合性部分は、5×10
−4s
−1以下のK
offでヒトTNFαから解離する。更により好ましくは、抗体若しくはその抗原結合性部分は、1×10
−4s
−1以下のK
offでヒトTNFαから解離する。
【0204】
更に別の実施形態においては、抗体若しくはその抗原結合性部分は、好ましくは、配列番号3のアミノ酸配列、又は1、4、5、7若しくは8位における単一のアラニン置換によって配列番号3から改変されたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する軽鎖可変領域(LCVR)と、配列番号4のアミノ酸配列、又は2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11位における単一のアラニン置換によって配列番号4から改変されたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する重鎖可変領域(HCVR)とを含む。好ましくは、LCVRは、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン(すなわち、D2E7 VL CDR2)を更に有し、HCVRは、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン(すなわち、D2E7 VH CDR2)を更に有する。更により好ましくは、LCVRは、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン(すなわち、D2E7 VL CDR1)を更に有し、HCVRは、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン(すなわち、D2E7 VH CDR1)を更に有する。VLの枠組み領域は、好ましくはV
κIヒト生殖系列ファミリー、より好ましくはA20ヒト生殖系列Vk遺伝子、最も好ましくは米国特許第6,090,382号の
図1A及び1Bに示されたD2E7 VL枠組み配列に由来する。VHの枠組み領域は、好ましくはV
H3ヒト生殖系列ファミリー、より好ましくはDP−31ヒト生殖系列VH遺伝子、最も好ましくは米国特許第6,090,382号の
図2A及び2Bに示されたD2E7 VH枠組み配列に由来する。
【0205】
したがって、別の実施形態においては、抗体若しくはその抗原結合性部分は、好ましくは、配列番号1のアミノ酸配列(すなわち、D2E7 VL)を含む軽鎖可変領域(LCVR)と配列番号2のアミノ酸配列(すなわち、D2E7 VH)を含む重鎖可変領域(HCVR)とを含む。ある実施形態においては、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM、IgD定常領域などの重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、IgG1重鎖定常領域又はIgG4重鎖定常領域であることが好ましい。また、抗体は、カッパ軽鎖定常領域又はラムダ軽鎖定常領域の軽鎖定常領域を含み得る。抗体は、カッパ軽鎖定常領域を含むことが好ましい。或いは、抗体部分は、例えば、Fab断片又は単鎖Fv断片であり得る。
【0206】
更に別の実施形態においては、本発明は、D2E7関連VL及びVH CDR3ドメインを含む単離ヒト抗体若しくはその抗原結合性部分の使用を含む。例えば、配列番号3、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25及び配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する軽鎖可変領域(LCVR)、又は配列番号4、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34及び配列番号35からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する重鎖可変領域(HCVR)を有する、抗体若しくはその抗原結合性部分。
【0207】
本発明の方法及び組成物に用いられるTNFα抗体は、リウマチ様関節炎治療を改善するために改変することができる。一部の実施形態においては、TNFα抗体若しくはその抗原結合性フラグメントを化学的に改変して所望の効果を付与する。例えば、本発明の抗体及び抗体断片のPEG化は、例えば以下の参考文献、すなわち、(その各々を参照によりその全体を本明細書に組み入れる)Focus on Growth Factors 3:4−10(1992)、EP 0 154 316及びEP 0 401 384に記載された、当分野で公知のPEG化反応のいずれかによって実施することができる。PEG化は、反応性ポリエチレングリコール分子(又は類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応又はアルキル化反応によって実施することが好ましい。本発明の抗体及び抗体断片のPEG化に好ましい水溶性ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)である。本明細書では「ポリエチレングリコール」は、モノ(C1−C10)アルコキシ−又はアリールオキシ−ポリエチレングリコールなど他のタンパク質を誘導体化するために使用するPEGの形態のいずれをも包含するものとする。
【0208】
本発明のPEG化抗体及び抗体断片を調製する方法は、(a)抗体又は抗体断片が1個以上のPEG基に結合する条件下で、抗体又は抗体断片をPEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体などのポリエチレングリコールと反応させる段階と、(b)反応生成物を得る段階とを一般に含む。既知のパラメータ及び所望の結果に基づいて最適な反応条件又はアシル化反応を選択することは当業者には明らかである。
【0209】
PEG化抗体及び抗体断片は、本明細書に記載のTNFα抗体及び抗体断片を投与することによってリウマチ様関節炎の治療に一般に使用することができる。一般に、PEG化抗体及び抗体断片は、非PEG化抗体及び抗体断片よりも半減期が長い。PEG化抗体及び抗体断片は、単独で、一緒に、又は他の薬剤組成物と組み合わせて使用することができる。
【0210】
本発明の更に別の実施形態においては、TNFα抗体又はその断片を変化させることができ、定常領域によって媒介される少なくとも1つの生物学的エフェクター機能が未改変抗体よりも低下するように抗体の定常領域を改変する。Fc受容体との結合性が低下するように本発明の抗体を改変するために、抗体の免疫グロブリン定常領域セグメントを、Fc受容体(FcR)相互作用に必要な特定の領域において変異させることができる(例えば、Canfield, S.M. and S.L. Morrison(1991) J. Exp. Med. 173:1483−1491及びLund, J. et al.(1991) J. of Immunol. 147:2657−2662を参照されたい。)。抗体のFcR結合能力が低下すると、オプソニン作用、食作用、抗原依存性細胞傷害活性など、FcR相互作用に依拠する他のエフェクター機能も低下し得る。
【0211】
本発明の組成物及び方法に用いられる抗体又は抗体部分は、誘導体化することができ、又は別の機能分子(例えば、別のペプチド又はタンパク質)と連結することができる。したがって、本発明の抗体及び抗体部分は、免疫接着分子を含めて、本明細書に記載したヒト抗hTNFα抗体の誘導体化され、さもなければ改変された形態を含むものとする。例えば、本発明の抗体又は抗体部分を、別の抗体(例えば、二重特異的抗体又は二重特異性抗体)、検出可能薬剤、細胞毒性薬、薬剤、及び/又は抗体若しくは抗体部分と(ストレプトアビジンコア領域、ポリヒスチジンタグなどの)別の分子との結合を媒介し得るタンパク質若しくはペプチドなど、1種類以上の他の分子実体と(化学カップリング、遺伝子融合、非共有結合などによって)機能的に連結させることができる。
【0212】
誘導体化抗体の1タイプは、(例えば二重特異的抗体を作製するために、同じタイプ又は異なるタイプの)2個以上の抗体を架橋することによって生成される。適切な架橋剤としては、適切なスペーサーによって分離された2個の極めて反応性の高い基を有するヘテロ二官能性架橋剤(例えば、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)、ホモ二官能性架橋剤(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)などが挙げられる。かかるリンカーは、Pierce Chemical Company、Rockford、ILから入手可能である。
【0213】
本発明の抗体又は抗体部分を誘導体化し得る有用な検出可能な薬剤としては、蛍光性化合物などが挙げられる。例示的な蛍光性検出可能薬剤としては、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、塩化5−ジメチルアミン−1−ナフタレンスルホニル、フィコエリトリンなどが挙げられる。抗体は、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼなどの検出可能な酵素を用いて誘導体化することもできる。検出可能な酵素で抗体を誘導体化したときには、検出可能な反応生成物を生成するために酵素が使用する追加の試薬を添加することによって抗体を検出する。例えば、検出可能な薬剤の西洋ワサビペルオキシダーゼが存在するときには、過酸化水素及びジアミノベンジジンを添加することによって、検出可能な着色反応生成物がもたらされる。抗体は、ビオチンを用いて誘導体化し、アビジン又はストレプトアビジン結合を間接的に測定することによって検出することもできる。
【0214】
本発明の方法及び組成物に用いられる抗体又は抗体部分は、宿主細胞中での免疫グロブリン軽鎖及び重鎖遺伝子の組換え発現によって調製することができる。抗体を組換え発現させるために、軽鎖及び重鎖が宿主細胞中で発現され、好ましくは、宿主細胞を培養する培地中に分泌され、この培地から抗体を回収することができるように、抗体の免疫グロブリン軽鎖及び重鎖をコードするDNA断片を含む1個以上の組換え発現ベクターを宿主細胞に移入する。Sambrook, Fritsch and Maniatis(eds), Molecular Cloning; A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor, N.Y.,(1989)、Ausubel, F.M. et al.(eds.) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates,(1989)及びBoss他、米国特許第4,816,397号の方法などの標準組換えDNA方法を使用して、抗体重鎖及び軽鎖遺伝子を得、これらの遺伝子を組換え発現ベクターに組み入れ、ベクターを宿主細胞に導入する。
【0215】
アダリムマブ(D2E7)又はアダリムマブ(D2E7)関連抗体を発現させるために、軽鎖及び重鎖可変領域をコードするDNA断片をまず入手する。これらのDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を用いた生殖系列軽鎖及び重鎖の各可変配列の増幅及び改変によって得ることができる。ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖系列DNA配列は当分野で公知である(例えば、「Vbase」ヒト生殖系列配列データベースを参照されたい。Kabat, E.A., et al.(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No.91−3242、Tomlinson, I.M., et al.(1992) ”The Repertoire of Human Germline V
H Sequences Reveals about Fifty Groups of V
H Segments with Different Hypervariable Loops” J. Mol. Biol. 227:776−798及びCox, J.P.L. et al.(1994) ”A Directory of Human Germ−line V
78 Segments Reveals a Strong Bias in their Usage” Eur. J. Immunol. 24:827−836も参照されたい。その各々の内容を参照により本明細書に明示的に組み入れる。)。D2E7又はD2E7関連抗体の重鎖可変領域をコードするDNA断片を得るために、ヒト生殖系列VH遺伝子のV
H3ファミリーのメンバーを標準PCRによって増幅する。最も好ましくは、DP−31 VH生殖系列配列を増幅する。D2E7又はD2E7関連抗体の軽鎖可変領域をコードするDNA断片を得るために、ヒト生殖系列VL遺伝子のV
κIファミリーのメンバーを標準PCRによって増幅する。最も好ましくは、A20 VL生殖系列配列を増幅する。DP−31生殖系列VH配列及びA20生殖系列VL配列の増幅に使用するのに適切なPCRプライマーは、標準方法を用いて、上記参考文献に開示されたヌクレオチド配列に基づいて設計することができる。
【0216】
生殖系列VH及びVL断片を得た後に、これらの配列を変異させて、本明細書に開示するD2E7又はD2E7関連アミノ酸配列をコードすることができる。生殖系列VH及びVL DNA配列によってコードされるアミノ酸配列を、D2E7又はD2E7関連VH及びVL アミノ酸配列とまず比較して、D2E7又はD2E7関連配列中の生殖系列とは異なるアミノ酸残基を特定する。次いで、変化させるべきヌクレオチドを決定する遺伝コードを用いて、変異生殖系列配列がD2E7又はD2E7関連アミノ酸配列をコードするように、生殖系列DNA配列の適切なヌクレオチドを変異させる。(PCR産物が変異を含むように、変異ヌクレオチドがPCRプライマー中に組み入れられた)PCR媒介変異誘発、部位特異的変異誘発などの標準方法によって、生殖系列配列の変異誘発を実施する。
【0217】
さらに、PCR増幅によって得られた「生殖系列」配列が、枠組み領域において真の生殖系列構成とのアミノ酸差(すなわち、例えば、体細胞変異の結果として、真の生殖系列配列と比べた増幅配列の差)をコードする場合には、これらのアミノ酸差を変化させて真の生殖系列配列に戻すこと(すなわち、生殖系列構成への枠組み残基の「復帰変異」)が望ましい場合があることに留意されたい。
【0218】
(上述したように、生殖系列VH及びVL遺伝子の増幅及び変異誘発によって)D2E7又はD2E7関連VH及びVLセグメントをコードするDNA断片を得た後、これらのDNA断片を標準組換えDNA技術によって更に操作して、例えば、可変領域遺伝子を完全長抗体鎖遺伝子に、Fab断片遺伝子に、又はscFv遺伝子に転化することができる。これらの操作においては、VL又はVHをコードするDNA断片を、抗体定常領域、柔軟なリンカーなどの別のタンパク質をコードする別のDNA断片に作用可能に連結する。本明細書では「作用可能に連結する」という用語は、2個のDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がインフレームのままであるように2個のDNA断片を連結することを意味するものとする。
【0219】
VH領域をコードする単離DNAは、重鎖定常領域(CH1、CH2及びCH3)をコードする別のDNA分子に、VHをコードするDNAを作用可能に連結することによって、完全長重鎖遺伝子に転化することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当分野で公知であり(例えば、Kabat, E.A., et al.(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No.91−3242参照)、これらの領域を含むDNA断片は、標準PCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域であり得るが、最も好ましくはIgG1又はIgG4定常領域である。Fab断片重鎖遺伝子の場合、VHをコードするDNAを、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に作用可能に連結することができる。
【0220】
VL領域をコードする単離DNAは、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に、VLをコードするDNAを作用可能に連結することによって、完全長軽鎖遺伝子(及びFab軽鎖遺伝子)に転化することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当分野で公知であり(例えば、Kabat, E.A., et al.(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No.91−3242参照)、これらの領域を含むDNA断片は、標準PCR増幅によって得ることができる。軽鎖定常領域は、カッパ又はラムダ定常領域であり得るが、最も好ましくはカッパ定常領域である。
【0221】
scFv遺伝子を作製するためには、VH及びVL配列が、VL領域とVH領域が柔軟なリンカーで連結された連続単鎖タンパク質として発現され得るように、VH及びVLをコードするDNA断片を、柔軟なリンカーをコードする(例えば、アミノ酸配列(Gly
4−Ser)
3をコードする)別の断片に作用可能に連結する(例えば、Bird et al.(1988) Science 242:423−426、Huston et al.(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879−5883、McCafferty et al., Nature(1990) 348:552−554参照)。
【0222】
本発明に用いられる抗体又は抗体部分を発現させるために、上述したように得られた、部分又は完全長軽鎖及び重鎖をコードするDNAを、遺伝子が転写及び翻訳調節配列に作用可能に連結されるように発現ベクターに挿入する。本明細書では「作用可能に連結する」という用語は、ベクター内の転写及び翻訳調節配列が、抗体遺伝子の転写及び翻訳を調節する所期の機能を果たすように、抗体遺伝子をベクターに連結することを意味するものとする。発現ベクター及び発現制御配列は、使用する発現宿主細胞に適合するように選択される。抗体軽鎖遺伝子と抗体重鎖遺伝子は別個のベクターに挿入することができ、又はより典型的には、両方の遺伝子を同じ発現ベクターに挿入する。抗体遺伝子は、標準方法(例えば、抗体遺伝子断片上とベクター上の各相補的制限酵素切断部位の連結、又は制限酵素切断部位がない場合には平滑末端連結)によって、発現ベクターに挿入される。D2E7又はD2E7関連軽鎖又は重鎖配列を挿入する前に、発現ベクターは抗体定常領域配列を既に含み得る。例えば、D2E7又はD2E7関連VH及びVL配列を完全長抗体遺伝子に転化する一手法は、VHセグメントがベクター内のCHセグメントに作用可能に連結され、VLセグメントがベクター内のCLセグメントに作用可能に連結されるように、それぞれ重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を既にコードする発現ベクターにこれらの配列を挿入することである。それに加えて、又はそれとは別に、組換え発現ベクターは、宿主細胞由来の抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるように、ベクター中にクローン化することができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。
【0223】
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞中で抗体鎖遺伝子の発現を制御する制御配列を有する。「制御配列」という用語は、プロモーター、エンハンサー、及び抗体鎖遺伝子の転写又は翻訳を調節する他の発現調節要素(例えば、ポリアデニレーションシグナル)を含むものとする。かかる制御配列は、例えば、Goeddel; Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA(1990)に記載されている。制御配列の選択を含めて、発現ベクターの設計は、形質転換すべき宿主細胞の選択、所望のタンパク質発現レベルなどの要因によって左右され得ることを当業者は理解されたい。ほ乳動物宿主細胞発現の好ましい制御配列としては、(CMVプロモーター/エンハンサーなどの)サイトメガロウイルス(CMV)、(SV40プロモーター/エンハンサーなどの)シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))及びポリオーマに由来するプロモーター及び/又はエンハンサーなど、ほ乳動物細胞中で高レベルのタンパク質発現を誘導するウイルス要素などが挙げられる。ウイルスの調節エレメント及びその配列の詳細については、例えば、Stinski、米国特許第5,168,062号、Bell他、米国特許第4,510,245号、及びSchaffner他、米国特許第4,968,615号を参照されたい。
【0224】
抗体鎖遺伝子及び制御配列に加えて、本発明に用いられる組換え発現ベクターは、宿主細胞中でベクターの複製を調節する配列(例えば、複製開始点)、選択マーカー遺伝子などの追加の配列を含み得る。選択マーカー遺伝子は、ベクターを導入した宿主細胞の選択を容易にする(例えば、Axel他の米国特許第4,399,216号、同4,634,665号及び同5,179,017号を参照されたい。)。例えば、典型的には、選択マーカー遺伝子は、ベクターを導入した宿主細胞にG418、ハイグロマイシン、メトトレキセートなどの薬物に対する耐性を付与する。好ましい選択マーカー遺伝子としては、(メトトレキセート選択/増幅を用いたdhfr
−宿主細胞用)ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子、(G418選択用)neo遺伝子などが挙げられる。
【0225】
軽鎖及び重鎖の発現の場合、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターを標準技術によって宿主細胞に移入する。「移入」という用語の多様な形態は、外因性DNAを原核生物又は真核生物宿主細胞に導入するのに一般に使用される多種多様な技術(例えば、電気穿孔法、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラン移入など)を包含するものとする。原核生物宿主細胞でも真核生物宿主細胞でも本発明の抗体を発現することは理論的に可能であるが、真核細胞、最も好ましくはほ乳動物宿主細胞における抗体の発現が最も好ましい。というのは、かかる真核細胞、特にほ乳動物細胞は、適切に折り畳まれた免疫学的に活性な抗体を組み立て、分泌する可能性が原核細胞よりも高いからである。抗体遺伝子の原核生物発現は、活性な抗体を高収率で産生するには効果的でないことが報告された(Boss, M.A. and Wood, C.R.(1985) Immunology Today 6:12−13)。
【0226】
本発明の組換え抗体を発現するのに好ましいほ乳動物宿主細胞としては、(例えばR.J. Kaufman and P.A. Sharp (1982) Mol. Biol. 159:601−621に記載の、DHFR選択マーカーと一緒に使用される、Urlaub and Chasin,(1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216−4220に記載のdhfr− CHO細胞を含めた)チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞、SP2細胞などが挙げられる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターをほ乳動物宿主細胞に導入するときには、抗体は、宿主細胞中での抗体の発現に十分な期間、より好ましくは宿主細胞が成長する培地中に抗体を分泌するのに十分な期間、宿主細胞を培養することによって産生される。抗体は、標準タンパク質精製法によって培地から回収することができる。
【0227】
宿主細胞を使用して、Fab断片、scFv分子など、完全抗体の一部を産生することもできる。上記手順を変更した手順も本発明の範囲内であることを理解されたい。例えば、本発明の抗体の軽鎖又は重鎖(ただし、両方ではない。)をコードするDNAを宿主細胞に移入することが望ましい場合もある。組換えDNA技術を使用して、hTNFαとの結合に不要である、軽鎖及び重鎖の一方又は両方をコードするDNAの一部又は全部を除去することができる。かかる切断型DNA分子から発現される分子も本発明の抗体に包含される。また、一方の重鎖と一方の軽鎖が本発明の抗体であり、他方の重鎖と軽鎖がhTNFα以外の抗原に特異的である二官能性抗体は、本発明の抗体を第2の抗体に標準化学架橋法によって架橋することによって生成することができる。
【0228】
本発明の抗体若しくはその抗原結合性部分の組換え発現の好ましい系においては、抗体重鎖と抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターをリン酸カルシウムによる移入によってdhfr−CHO細胞に導入する。組換え発現ベクター内では、抗体重鎖及び軽鎖遺伝子は、高レベルの遺伝子転写をもたらすCMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントに各々作用可能に連結される。組換え発現ベクターは、ベクターが移入されたCHO細胞をメトトレキセート選択/増幅によって選択することができるDHFR遺伝子も含む。選択した形質転換宿主細胞を培養して、抗体重鎖及び軽鎖を発現させ、完全抗体を培地から回収する。標準分子生物学技術を使用して、組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞に移入し、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、抗体を培地から回収する。
【0229】
上記のことを考慮して、本発明に用いられる抗体及び抗体部分の組換え発現に使用することができる核酸、ベクター及び宿主細胞組成物としては、ヒトTNFα抗体アダリムマブ(D2E7)を含む、核酸、前記核酸を含むベクターなどが挙げられる。D2E7軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を配列番号36で示す。LCVRのCDR1ドメインはヌクレオチド70−102を包含し、CDR2ドメインはヌクレオチド148−168を包含し、CDR3ドメインはヌクレオチド265−291を包含する。D2E7重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を配列番号37で示す。HCVRのCDR1ドメインはヌクレオチド91−105を包含し、CDR2ドメインはヌクレオチド148−198を包含し、CDR3ドメインはヌクレオチド295−330を包含する。D2E7関連抗体又はその部分(例えば、CDR3ドメインなどのCDRドメイン)をコードするヌクレオチド配列は、遺伝コード及び標準分子生物学技術を用いて、D2E7 LCVR及びHCVRをコードするヌクレオチド配列から誘導できることを当業者は理解されたい。
【0230】
本明細書に開示するD2E7若しくはその抗原結合性部分又はD2E7関連抗体に加えて、本発明の組換えヒト抗体は、ヒトリンパ球由来のmRNAから調製されたヒトVL及びVH cDNAを用いて調製された、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリ、好ましくはscFvファージディスプレイライブラリのスクリーニングによって単離することができる。かかるライブラリの調製及びスクリーニング方法は当分野で公知である。ファージディスプレイライブラリを作製する市販キット(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System、カタログ番号27−9400−01及びStratagene SurfZAP(登録商標)ファージディスプレイキット、カタログ番号240612)に加えて、抗体ディスプレイライブラリの作製及びスクリーニング用に特に適している方法及び試薬の例は、例えば、Ladner他、米国特許第5,223,409号;Kang他、国際公開第92/18619号;Dower他、国際公開第91/17271号;Winter他、国際公開第92/20791号;Markland他、国際公開第92/15679号;Breitling他、国際公開第93/01288号;McCafferty他、国際公開第92/01047号;Garrard他、国際公開第92/09690号、Fuchs et al.(1991) Bio/Technology 9:1370−1372、Hay et al.(1992) Hum Antibod Hybridomas 3:81−65、Huse et al.(1989) Science 246:1275−1281、McCafferty et al., Nature(1990) 348:552−554、Griffiths et al.(1993) EMBO J 12:725−734、Hawkins et al.(1992) J Mol Biol 226:889−896、Clackson et al.(1991) Nature 352:624−628、Gram et al.(1992) PNAS 89:3576−3580、Garrard et al.(1991) Bio/Technology 9:1373−1377、Hoogenboom et al.(1991) Nuc Acid Res 19:4133−4137及びBarbas et al.(1991) PNAS 88:7978−7982に見出すことができる。
【0231】
好ましい実施形態においては、hTNFαに対して高親和性及び低off速度定数を有するヒト抗体を単離するために、hTNFαに対して高親和性及び低off速度定数を有するネズミ抗hTNFα抗体(例えば、MAK 195、寄託番号ECACC 87 050801のハイブリドーマ)をまず用いて、Hoogenboom他、国際公開第93/06213号に記載のエピトープ刷り込み方法によって、hTNFαに対して類似の結合活性を有するヒト重鎖及び軽鎖配列を選択する。この方法に用いられる抗体ライブラリは、好ましくは、McCafferty他、国際公開第92/01047号、McCafferty et al., Nature (1990) 348:552−554及びGriffiths et al.,(1993) EMBO J 12:725−734に記載のとおりに調製され、スクリーニングされたscFvライブラリである。scFv抗体ライブラリは、好ましくは、組換えヒトTNFαを抗原として用いてスクリーニングされる。
【0232】
最初のヒトVL及びVHセグメントを選択した後、最初に選択したVLセグメントとVHセグメントの異なる対をhTNFα結合についてスクリーニングする「ミックス アンド マッチ(mix and match)」実験を実施して、好ましいVL/VH対の組合せを選択する。また、hTNFα結合に対して親和性を更に改善し、及び/又はoff速度定数を低下させるために、好ましいVL/VH対のVL及びVHセグメントを、自然免疫応答中の抗体の親和性成熟の原因であるインビボ体細胞変異プロセスに類似のプロセスにおいて、好ましくはVH及び/又はVLのCDR3領域内で、無作為に変異させることができる。このインビトロでの親和性成熟は、それぞれVH CDR3又はVL CDR3に好意的な(complimentary)PCRプライマーを用いてVH及びVL領域を増幅することによって実施することができる。これらのプライマーは、得られるPCR産物が、無作為な変異がVH及び/又はVL CDR3領域に導入されたVH及びVLセグメントをコードするように、特定の位置に4個のヌクレオチド塩基の無作為混合物が「加えられて(spiked)」いる。これらの無作為変異VH及びVLセグメントを、hTNFαとの結合について再スクリーニングし、hTNFα結合に対して高親和性及び低off速度を示す配列を選択することができる。
【0233】
本発明のhTNFα抗体を組換え免疫グロブリンディスプレイライブラリからスクリーニングし、単離した後、選択した抗体をコードする核酸をディスプレイパッケージから(例えば、ファージゲノムから)回収することができ、標準組換えDNA技術によって他の発現ベクターにサブクローニングすることができる。必要に応じて、核酸を更に操作して(例えば、追加の定常領域などの追加の免疫グロブリンドメインをコードする核酸に連結された)本発明の他の抗体型形態を作製することができる。コンビナトリアルライブラリのスクリーニングによって単離された組換えヒト抗体を発現させるために、上で詳述したように、抗体をコードするDNAを組換え発現ベクターにクローン化し、ほ乳動物宿主細胞に導入する。
【0234】
hTNFαに対して高親和性及び低off速度定数を有するヒト中和抗体を単離する方法は、その各々を参照により本明細書に組み入れる、米国特許第6,090,382号、同6,258,562号及び同6,509,015号に記載されている。
【0235】
IV. 自動注射装置に用いられる物質
本発明の方法及び組成物は、注射投与に適切である本質的にあらゆる物質又は医薬品を投与する自動注射装置と一緒に使用することができる。典型的には、物質又は医薬品は、流体(例えば、液体)であるが、ゲル又は半固体、スラリー、粒子溶液などの他の形態の医薬品も、自動注射装置がかかる形態の医薬品を投与できるように設計されている場合には、適切に使用することができる。
【0236】
好ましい医薬品は、抗体、サイトカイン、ワクチン、融合タンパク質、成長因子などの生物学的薬剤である。抗体を作製する方法は、上述されている。
【0237】
自動注射装置において医薬品として使用することができる他の生物学的薬剤の非限定的例としては、ヒトサイトカイン又は成長因子(例えば、TNF、LT、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−15、IL−16、IL−18、IL−21、IL−23、インターフェロン、EMAP−II、GM−CSF、FGF及びPDGF)の抗体又は拮抗物質;CD2、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)、CD90、CTLA、又はCD154(gp39又はCD40L)を含めたこれらのリガンドなどの細胞表面分子に対する抗体;TNFα変換酵素(TACE)阻害剤;IL−1阻害剤(インターロイキン1変換酵素阻害剤、IL−1RAなど);インターロイキン11;IL−18抗体若しくは可溶性IL−18受容体又はIL−18結合タンパク質を含めたIL−18拮抗物質;非減少性(non−depleting)抗CD4阻害剤;抗体、可溶性受容体又は拮抗性リガンドを含めた、共刺激経路CD80(B7.1)又はCD86(B7.2)の拮抗物質;TNFα、IL−1などの炎症誘発性サイトカインによるシグナル伝達を妨害する薬剤(例えば、IRAK、NIK、IKK、p38又はMAPキナーゼ阻害剤);IL−1β変換酵素(ICE)阻害剤;キナーゼ阻害剤などのT細胞シグナル伝達阻害剤;メタロプロテイナーゼ阻害剤;アンジオテンシン変換酵素阻害剤;可溶性サイトカイン受容体及びその誘導体(例えば、可溶性p55又はp75 TNF受容体及び誘導体p75TNFRIgG(Enbrel(商標)及びp55TNFRIgG(Lenercept))、sIL−1RI、sIL−1RII、sIL−6R);抗炎症性サイトカイン(例えば、IL−4、IL−10、IL−11、IL−13及びTGFベータ);リツキシマブ;IL−1 TRAP;MRA;CTLA4−Ig;IL−18 BP;抗IL−18;抗IL15;IDEC−CE9.1/SB 210396(非減少性霊長類化抗CD4抗体、IDEC/SmithKline。例えば、Arthritis & Rheumatism(1995) Vol.38, S185参照);DAB 486−IL−2及び/又はDAB 389−IL−2(IL−2融合タンパク質、Seragen。例えば、Arthritis & Rheumatism(1993)Vol. 36, 1223参照);抗Tac(ヒト化抗IL−2Ra;Protein Design Labs/Roche);IL−4(抗炎症性サイトカイン;DNAX/Schering);IL−10(SCH 52000;組換えIL−10、抗炎症性サイトカイン;DNAX/Schering);IL−10及び/又はIL−4作動物質(例えば、作動物質抗体);IL−1RA(IL−1受容体拮抗物質;Synergen/Amgen);アナキンラ(Kineret(登録商標)/Amgen);TNF−bp/s−TNF(可溶性TNF結合タンパク質。例えば、Arthritis & Rheumatism(1996) Vol.39, No.9(補遺), S284;Amer. J. Physiol. − Heart and Circulatory Physiology(1995) Vol.268, pp.37−42);R973401(ホスホジエステラーゼIV型阻害剤。例えば、Arthritis & Rheumatism(1996) Vol.39. No.9(補遺), S282);MK−966(COX−2阻害剤。例えば、Arthritis & Rheumatism(1996) Vol.39, No.9(補遺), S81);イロプロスト(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996) Vol.39, No.9(補遺), S82参照);zap−70及び/又はlck阻害剤(チロシンキナーゼzap−70又はlckの阻害剤);VEGF阻害剤及び/又はVEGF−R阻害剤(血管内皮細胞成長因子又は血管内皮細胞成長因子受容体の阻害剤;血管新生の阻害剤);TNFコンバターゼ阻害剤;抗IL−12抗体;抗IL−18抗体;インターロイキン11(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996) Vol.39, No.9(補遺), S296参照);インターロイキン13(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996) Vol.39, No.9(補遺), S308参照);インターロイキン17阻害剤(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996) Vol.39, No.9(補遺), S120参照);抗胸腺細胞グロブリン;抗CD4抗体;CD5毒素;ICAM−1アンチセンスホスホロチオアートオリゴデオキシヌクレオチド(ISIS 2302;Isis Pharmaceuticals, Inc.);可溶性補体受容体1(TP10;T Cell Sciences, Inc.)並びに抗IL2R抗体が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0238】
薬剤組成物は、使用者に送達するために、本発明の自動注射装置に充填することができる。一実施形態においては、抗体、抗体部分及び他のTNFα阻害剤を、本発明の装置を用いて使用者に投与するのに適切である薬剤組成物に混合することができる。典型的には、薬剤組成物は、抗体、抗体部分又は他のTNFα阻害剤と、薬学的に許容される担体とを含む。本明細書では「薬学的に許容される担体」は、生理学的に適合する、任意及びすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張化剤、吸収遅延剤などを含む。薬学的に許容される担体の例としては、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセリン、エタノールなどの1つ以上、及びこれらの組合せが挙げられる。組成物中に等張化剤(例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、又は塩化ナトリウム)を含むことが好ましい場合が多い。薬学的に許容される担体は、抗体、抗体部分又は他のTNFα阻害剤の品質保持期間又は有効性を向上させる、湿潤剤、乳化剤、防腐剤、緩衝剤などの補助物質の少量を更に含むことができる。
【0239】
本発明の方法及び組成物に用いられる組成物は、本発明の装置による投与に応じて種々の形態、例えば、溶液(例えば、注射液及び注入液)、分散物又は懸濁物であり得る。好ましい実施形態においては、抗体又は他のTNFα阻害剤は、本発明の装置を用いて皮下注射によって投与される。一実施形態においては、使用者は、本発明の装置を用いて、TNFα抗体若しくはその抗原結合性部分を含めて、ただしこれらだけに限定されないTNFα阻害剤を自己投与する。
【0240】
治療用組成物は、一般に、製造及び貯蔵条件下で無菌かつ安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散物、リポソーム、又は高薬物濃度に適切な他の秩序構造(ordered structure)として処方することができる。無菌注射液は、必要量の活性化合物(すなわち、抗体、抗体部分又は他のTNFα阻害剤)を適切な溶媒中で上記成分の1種類又は組合せと混合し、必要に応じて、続いてろ過滅菌して調製することができる。一般に、分散物は、基本分散媒と上記成分から選択される他の必要成分とを含む無菌ビヒクル中に活性化合物を混合することによって調製される。無菌注射液を調製するための無菌散剤の場合、好ましい調製方法は、活性成分と所望の追加成分との粉末を、あらかじめ無菌ろ過したその溶液から生成する、真空乾燥及び凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングによって、分散物の場合には必要な粒径を維持することによって、また、界面活性剤を使用することによって、維持することができる。注射用組成物の吸収は、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチン)を組成物に入れることによって延長することができる。
【0241】
一実施形態においては、本発明は、有効なTNFα阻害剤と薬学的に許容される担体とを含む自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)を含む。したがって、本発明は、TNFα阻害剤を含む充填済み自動注射装置を提供する。
【0242】
一実施形態においては、本発明の方法に用いられる抗体又は抗体部分を、参照により本明細書に組み入れるPCT/IB03/04502及び米国特許出願公開第20040033228号に記載の薬剤に混合する。この製剤は、濃度50mg/mlの抗体D2E7(アダリムマブ)を含み、1本の自動注射器ペンは、皮下注射用抗体40mgを含む。一実施形態においては、本発明の自動注射装置(又はより具体的には、装置の注射器)は、以下の処方、すなわち、アダリムマブ、塩化ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム二水和物、二塩基性リン酸ナトリウム二水和物、クエン酸ナトリウム、クエン酸一水和物、マンニトール、ポリソルベート80及び水(例えば、注射用水)を含む、アダリムマブ製剤を含む。別の実施形態においては、自動注射装置は、アダリムマブ40mg、塩化ナトリウム4.93mg、一塩基性リン酸ナトリウム二水和物0.69mg、二塩基性リン酸ナトリウム二水和物1.22mg、クエン酸ナトリウム0.24mg、クエン酸一水和物1.04mg、マンニトール9.6mg、ポリソルベート80 0.8mg及び水(例えば、注射用水)を含む、ある体積のアダリムマブを含む。一実施形態においては、水酸化ナトリウムを必要に応じて添加して、pHを調節する。
【0243】
自動注射装置中のTNFα阻害剤の用量は、TNFα阻害剤が治療に使用されている障害に応じて変わり得る。一実施形態においては、本発明は、アダリムマブ約20mg、アダリムマブ40mg、アダリムマブ80mg及びアダリムマブ160mgの1回分のアダリムマブを含む自動注射装置を含む。用量範囲を含めて、本明細書に記載の範囲のすべてについて、例えば、アダリムマブ36mg、アダリムマブ48mgなど、列挙する値の中間の全数値が本発明に含まれることに留意されたい。また、前記数値を用いて列挙する範囲(例えば、アダリムマブ40から80mg)も含まれる。本明細書に列挙する数値は、本発明の範囲を限定するものではない。
【0244】
本発明に用いられるTNFα抗体及び阻害剤は、被覆粒子を形成するために重合体担体に封入されたタンパク質結晶の組合せを含むタンパク質結晶製剤の形で投与することもできる。タンパク質結晶製剤の被覆粒子は、球状形態を有し得、直径500マイクロメートル以下のミクロスフェアであり得、又は他の形態を有し得、微粒子であり得る。タンパク質結晶濃度を高くすることによって、本発明の抗体を皮下に送達することができる。一実施形態においては、本発明のTNFα抗体をタンパク質送達系によって送達し、タンパク質結晶製剤又は組成物の1種類以上をTNFα関連障害の使用者に投与する。抗体結晶全体又は抗体断片結晶の組成物、及びその結晶の安定な製剤を調製する方法は、参照により本明細書に組み入れる国際公開第02/072636号にも記載されている。一実施形態においては、参照により本明細書に組み入れるPCT/IB03/04502及び米国特許出願公開第20040033228号に記載の結晶化抗体断片を含む製剤を、本発明の方法によるリウマチ様関節炎の治療に使用する。
【0245】
補充の活性化合物を組成物に混合することもできる。ある実施形態においては、本発明の方法に用いられる抗体又は抗体部分を、リウマチ様関節炎阻害剤又は拮抗物質を含めて、1種類以上の追加の治療薬と同時処方及び/又は同時投与する。例えば、抗hTNFα抗体又は抗体部分は、TNFα関連障害に関連した他の標的に結合する1種類以上の追加の抗体(例えば、他のサイトカインに結合する抗体、又は細胞表面分子に結合する抗体)、1種類以上のサイトカイン、可溶性TNFα受容体(例えば、国際公開第94/06476号参照)、及び/又は(国際公開第93/19751号に記載のシクロヘキサン−イリデン誘導体などの)hTNFαの産生若しくは活性を阻害する1種類以上の化学薬品、又はその任意の組合せと同時処方及び/又は同時投与することができる。また、本発明の1種類以上の抗体を上記治療薬の2種類以上と併用することができる。かかる併用療法は、より少量の投与治療薬を有利に利用することができ、したがって種々の単独療法に付随し得る副作用、合併症、又は患者の低反応レベルを回避することができる。TNFα抗体又は抗体部分と併用し得る追加の薬剤は、その全体を本明細書に組み入れる米国特許出願第11/800531号に記載されている。
【0246】
本発明の自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)は、本発明の抗体又は抗体部分の「治療有効量」又は「予防有効量」を含むことができる。「治療有効量」とは、必要な投与量及び期間で、所望の治療成果を得るのに有効な量を指す。抗体、抗体部分又は他のTNFα阻害剤の治療有効量は、個体の病態、年齢、性別及び体重、並びに抗体、抗体部分、他のTNFα阻害剤が個体において所望の応答を誘発する能力などの要因に応じて変わり得る。治療有効量は、抗体、抗体部分又は他のTNFα阻害剤の任意の毒性効果又は有害効果よりも治療上有益な効果がまさる量でもある。「予防有効量」とは、必要な投与量及び期間で、所望の予防成果を得るのに有効な量を指す。典型的には、予防投与量は疾患前又は初期に患者に使用されるので、予防有効量は治療有効量よりも少ない。
【0247】
V. 本発明の製品
本発明は、本発明の自動注射装置を含む製品又はキットも提供する。本発明の一実施形態においては、キットは、自動注射装置(例えば、HUMIRA(登録商標)ペンなどの自動注射器ペン)と、液剤(例えば、抗体などのTNFα阻害剤)と、液剤の投与使用説明とを含む。一実施形態においては、キットは、自動注射装置を用いて、TNFαが有害である障害(例えば、リウマチ様関節炎)の治療用TNFα阻害剤を送達するための使用説明を含む。使用説明は、TNFα阻害剤の投与量を治療のために患者に投与する方法(例えば、皮下)及び時期(例えば、第0週、2週、4週など)を記載することができる。
【0248】
本明細書ではキットとも称する製品は、本発明の自動注射装置を含むパッケージ製品を指す。キットは、好ましくは、キットの構成品、すなわち、自動注射装置を保持する箱又は容器を含む。一実施形態においては、自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)は、キット又は製品内の投与トレイに収納される。キットは、本発明の自動注射装置を用いて、液剤などの物質(例えば、TNFα抗体)を患者に投与するための使用説明も含むことができる。「添付文書」という用語は、かかる治療製品の使用に関する適応症、用法、投与量、投与、禁忌症及び/又は警告についての情報を含む、液剤を含めた治療製品の市販パッケージに慣習的に含まれる使用説明を指すのに使用する。一実施形態においては、添付文書は、キットによって提供される治療物質のラベルである。
【0249】
キット又は製品は、物質(例えば、TNFα阻害剤)を投与する自動注射装置の使用手順を提供する、ラベル、又は米国食品医薬品局によって認可されたラベルを含み得る。したがって、本発明は、単独で用いられるラベルも含み、又は装置使用法、患者に投与するために装置が保持する物質の種類(例えば、液剤(liquid dose))、投与終了後の装置の処分法などの情報を含めて、自動注射装置に関する情報を患者に提供する製品と組み合わせて用いられるラベルも含む。一実施形態においては、ラベルは添付文書上にある。一実施形態においては、ラベルは、本発明の自動注射装置の使用法に関する情報を患者に提供する患者情報リーフレット(Patient Information Leaflet)を含む添付文書である。
【0250】
本発明のキット又は製品は、キット又は製品内の自動注射装置の同梱方法についての自動注射装置に関する情報を含み得る。キットは、物質(例えば、TNFα阻害剤)を含む本発明の自動注射装置を含む投与トレイを含み得る。一実施形態においては、投与トレイは、薬剤を送達する装置を単一で使用するためのものである。別の例においては、キットは、自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)を各々含む2個以上の投与トレイを含み得る。キット又は製品は、自動注射装置の使用に必要な関連物品、例えば、アルコール調製物、患者情報リーフレットが添付された添付文書、及び/又は患者情報小冊子も示し得る。かかる書面(例えば、患者情報リーフレットが添付された添付文書、及び/又は患者情報小冊子)を使用して、投与技術、一般的有害事象、処分情報などに関する情報をレシピエントに提供することができる。一実施形態においては、本発明のキット又は製品は、キット又は製品が2個の投与トレイ、2個のアルコール調製物、患者情報リーフレットが添付された1冊の添付文書、及び1冊の患者情報小冊子を含むことを、キット又は製品の包装の外側から見ることができるように示す。
【0251】
本発明のキット又は製品は、薬物(例えば、TNFα抗体(アダリムマブ)などのTNFα阻害剤)の液剤を本発明の自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)内に詰める方法に関する情報を、例えばラベル上に、含み得る。例えば、一実施形態においては、本発明のラベルは、アダリムマブが、6個のアルコール調製物と6個の投与トレイを含むカートンとして調剤されることを表示し得る(クローン病スターターパッケージ)。一実施形態においては、ラベルは、各投与トレイが単回使用ペンからなり、各ペンが、固定27ゲージ1/2インチ針を有する1mL充填済みガラス注射器を含み、HUMIRA(登録商標)40mg(0.8mL)を与えることも表示し得る。
【0252】
一実施形態においては、本発明のキット又は製品は、参照により本明細書に組み入れるPCT/IB03/04502及び米国特許出願第10/222140号に記載のように、キット内の自動注射装置がヒト抗体アダリムマブ(アダリムマブ/HUMIRA(登録商標)/D2E7)を含む製剤を含むことを示す情報を含む。
【0253】
一実施形態においては、本発明のキット又は製品は、HUMIRA(登録商標)が皮下投与用にアダリムマブの防腐剤無添加無菌溶液として供給されることを示す情報を、例えばラベル上に、含み得る。ラベルは、製剤が、単回使用の1mL充填済みガラス注射器として、又は単回使用充填済みペン(HUMIRA(登録商標)ペン)として、供給されることを更に記載することができる。本発明のラベルは、単回使用1mL充填済みガラス注射器がペン内に封入されていることを表示することができる。本発明のラベルは、HUMIRA(登録商標)溶液が無色透明でpH約5.2であることを更に表示することができる。ラベルは、HUMIRA(登録商標)(アダリムマブ)が、皮下投与用の防腐剤無添加無菌溶液として、充填済み注射器又は充填済みペンの形で供給されることを表示することもできる。一実施形態においては、ラベルは、アダリムマブを含む本発明の自動注射装置がHUMIRA(登録商標)ペンカートンとして提供され、HUMIRA(登録商標)が、2個のアルコール調製物と2個の投与トレイを含むカートンとして調剤されることを示す。ラベルは、各投与トレイが少なくとも1個の単回使用ペンからなり、固定27ゲージ1/2インチ針を有する1mL充填済みガラス注射器を含み、HUMIRA(登録商標)40mg(0.8mL)を与えることを更に明記することができる。
【0254】
本発明のキット又は製品は、キット中の自動発明装置の外見、及び/又は自動注射装置に含まれる物質(例えば、液剤)の外見に関する情報を提供する情報を、例えばラベル上に、含み得る。かかる情報は、キット及び/又は自動注射装置が不正に改変されていないかどうか、及び/又は物質が投与すべきでないように損なわれていないかどうかを患者が分かるように、患者への物質投与に関する安全性を保証するために提供することができる。一実施形態においては、ラベルは、HUMIRA(登録商標)ペン中の溶液を、皮下投与前に粒子状物質及び変色について視覚的に慎重に点検すべきであることを示す。
【0255】
本発明のキット又は製品は、装置内に保持された物質(例えば、液剤)の投与を含めて、本発明の自動注射装置の使用法に関する使用説明を提供する情報を、例えばラベル上に、含むことができる。一実施形態においては、ラベルは、HUMIRA(登録商標)ペンを使用する患者が、患者情報リーフレットに提供された指導に従って、HUMIRA(登録商標)40mgを与える、注射器の全量(0.8mL)を注射するように使用説明されるべきであることを示す。
【0256】
本発明のキット又は製品は、本発明のペンを使用する準備をするための使用説明を与える情報を、例えばラベル上に、含むことができる。例えば、ラベルは、ペンによる注射を準備するための使用説明を与えることができる。一実施形態においては、本発明は、HUMIRA(登録商標)が充填されたペンを提供し、前記ペンのラベルは、患者が投与ごとに以下の物品、すなわち、1本のHUMIRA(登録商標)ペンと1個のアルコール調製物(消毒綿)を必要とすることを表示することができる。ラベルは、患者が清潔で平坦な作業面を見つけるべきであることを表示することもできる。ラベルは、カートンの上部及び底部の封印が破損又は紛失している場合にはペンを使用すべきでないことを表示することもでき、封印が破損している場合には患者は薬剤師に連絡すべきであることを表示することもできる。ラベルは、例えばHUMIRA(登録商標)ペンを含む、1個の投与トレイを冷蔵庫から取り出すべきであることを患者に示すことができる(物質、例えば液剤が冷蔵を必要とする場合)。さらに、HUMIRA(登録商標)が充填されたペンの使用を表示するラベルは、患者が、凍結したペンを使用すべきでなく、又はペンが直射日光中に放置された場合には使用すべきでないことを表示することができる。ラベルは、患者が注射に必要な部品の全部を持たない場合には、薬剤師に電話すべきであることを表示することもできる。ラベルは、患者が、物質(例えば、HUMIRA(登録商標))が入った箱で提供される物品のみを使用すべきであることを表示することもできる。
【0257】
アダリムマブを含む自動注射器ペンに関する本発明のラベルの場合、ラベルは、HUMIRA(登録商標)の名称が投与トレイ及びペンラベル上に見えることを患者が点検及び確認すべきであり、患者が投与トレイラベル及びペンラベル上の有効期限を点検して、期限が過ぎていないことを確認すべきであり、さらに、期限が過ぎている場合には、患者はペンを使用すべきでなく、使用済みペンを処分するために患者が穿刺防止容器を近くに有するべきであることを表示することができる。
【0258】
キット又は製品は、本明細書に記載の障害を治療するために、パッケージ内で、又は付随的な情報を通して、用いられる材料を含むこともできる。一実施形態においては、包装は、TNFα抗体(例えば、アダリムマブ)によって治療される障害に専用のものである。キット又は製品は、(本明細書に記載の)第2の薬剤を(本明細書に記載の)第1の薬剤と一緒に使用するための使用説明と同梱された、又は該使用説明と同時に導入された、第2の薬剤を更に含むことができる。
【0259】
本発明の自動注射装置の使用法を、以下及び実施例に更に詳細に記述する。さらに、自動注射装置に関して本明細書に記載する方法のいずれも、本発明のラベルに含まれ得る。
【0260】
VI. 自動注射装置を使用するための方法及び組成物
自動注射装置を用いて物質を送達するための方法及び組成物
本発明は、物質(例えば、医薬品、又はTNFα阻害剤などの薬物の液剤)を送達するために、本発明の自動注射装置を使用する方法も提供する。一実施形態においては、自動注射装置は、HUMIRA(登録商標)ペンなどの自動注射器ペンである。
【0261】
方法は、本発明の自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)を使用する準備をするための方法を含む。
【0262】
自動注射装置の使用は、患者が注射部位をまず選択し、準備することを必要とし得る。例えば、HUMIRA(登録商標)ペンなどの自動注射器ペンによる投与の注射部位をまず選択し、準備するための方法は、患者の手をまず十分洗浄することを含む。一般に、自動注射装置の注射をする、患者の体の清潔で健康な部分を選択する。一実施形態においては、部位は、患者の大腿又は腹部の前面で選択される。腹部を選択する場合、患者は、へその周囲2インチの領域を回避すべきである。HUMIRA(登録商標)ペンなどの自動注射器ペンによる注射では、注射を行うごとに異なる部位を選択すべきである。新しい各注射は、以前に使用した部位から少なくとも1インチで投与すべきである。皮膚が弱い、傷ついた、赤い、若しくは硬い領域、又は傷跡若しくは皮膚線条がある領域は、一般に、注射部位として使用すべきでない。患者は、前の注射の位置を記録しておくと役立つことがある。
【0263】
注射部位を選択した後、患者は、一般に、その領域を清潔にする。一実施形態においては、HUMIRA(登録商標)を注射する部位をまずアルコール調製物(消毒綿)を用いて、環状に動かして拭く。清潔にした後、患者が注射する準備ができるまで、注射部位領域を触るべきではない。
【0264】
本発明の方法は、自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)内の注射する1回分の物質の調製も含む。一実施形態においては、自動注射器ペンは、第1の着脱可能な蓋が上方を向いた状態で保持される。患者は、自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)の側の窓を通して、溶液又は物質(例えば、液剤)を検査して、例えば、液体が無色透明であることを確認すべきである。一般に、自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)は、液体が濁っている、若しくは変色している、又は薄片若しくは粒子を含んでいる場合には、使用すべきでない。また、アダリムマブを含む自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)は、凍結している場合には使用すべきでない。
【0265】
自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)が注射用に十分であることを確認した後、第1の着脱可能な蓋を下方に向けて装置を保持することができる。かかる行為は、自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)内の液剤レベルを確認するのに役立ち得る。
【0266】
一実施形態においては、注射前に、自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)内の液量が、窓から見える線に同じか近いことを点検して、確認すべきである。一実施形態においては、線は製品の総量を表す。液体の表面は、曲線であり得る。自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)が、正しい液量を含まない場合には、自動注射器ペンを使用すべきでなく、場合によっては、薬剤師に電話すべきである。
【0267】
本発明の自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)を用いて液剤などの物質を送達する注射方法は、以下を含み得る。自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)を片手で保持する。患者の他方の手で、第1の着脱可能な蓋を取り外し、廃棄する。一実施形態においては、第1の着脱可能な蓋は、まっすぐ引き抜くべきであり、及び/又はねじるべきではない。第1の着脱可能な蓋を取り外した後、患者は、注射器の針外筒が、第1の着脱可能な蓋と一緒に外れていることを点検すべきである。取り外した後、内部針カバーは、蓋中に保持される。注射筒に収納された針には触るべきではない。段差のある覆いの遠位端部は、第1の着脱可能な蓋を取り外した後、露出することになる。第1の着脱可能な蓋は、針が損傷を受けるおそれがあるので、再びかぶせるべきではない。また、患者は、自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)は注射器を含むので、落としたり、押しつけたりしないように注意すべきである。
【0268】
第1の着脱可能な蓋を取り外した後、(安全蓋とも称する)第2の着脱可能な蓋を取り外して、上部の起動ボタンを露出させる。患者は、第2の着脱可能な蓋をまっすぐ取り外すべきである。第2の着脱可能な蓋をねじって外すべきではない。第1及び第2の着脱可能な蓋を取り外すと、自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)の使用準備が整う。患者は、第2の着脱可能な蓋を取り外した後に、自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)を起動すること、また、第2の着脱可能な蓋の下の起動ボタンを押すと、医薬品が放出されることを認識すべきである。患者は、適切な位置が定まるまで、起動ボタンを取り外すべきではないことも認識すべきである。また、この時点で、自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)は、再度蓋をすべきではない。蓋をすると、装置が放出するおそれがあるからである。
【0269】
患者の注射の準備ができた後、窓が見えるところに自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)を配置すべきである。患者の空いている手で、清潔にした皮膚の大きな領域の注射部位を軽く圧迫して、自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)を配置する足場を作製することができる。自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)の近位端部を、皮膚の足場と同じ高さに90度の角度で配置することができる。自動注射装置、例えば、針を患者の指に注射しないように。注射を開始するために、起動ボタンを押す。一実施形態においては、起動ボタンを指(例えば、患者の示指)で押して、注射を開始する。或いは、別の実施形態においては、患者は、親指で起動ボタンを押して注射を開始することもできる。注射中、患者は、窓を覆わないようにすべきである。一実施形態においては、起動ボタンを押すと、可聴表示(例えば、カチッという音)がする。可聴表示(例えば、カチッという音)は、注射の開始を示し得る。一実施形態においては、アダリムマブを含む自動注射器ペンは、起動ボタンを押すと、音を発する。起動ボタンを押した後、圧力を起動ボタンに加え続けるべきである。患者は、プロセスが終了するまで、注射部位に一定の圧力で自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)を保持し続けることができる。一実施形態においては、起動ボタンを押して、注射を完了するプロセスは、最高約10秒かかり得る。注射するために、注射部位において期間全体を通して定圧を維持する。
【0270】
本発明の自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)を用いると、患者は、窓の表示器の全体が現れ、停止したときに注射が終了したことを知ることになる。注射が終了した後、自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)を使用者の皮膚から抜く。覆いは、針の先端の上方に自動的に前進する。患者は、綿球を注射部位に押しつけ、例えば10秒間保持することができる。患者は、注射部位をこするべきではなく、わずかな出血がある場合に慌てるべきではない。注射後、自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)は、患者が針に触れないように、処分すべきである。針スリーブによって、患者が針に触れるのが防止される。
【0271】
本発明の自動注射装置の使用方法に列挙する使用説明のいずれでも、本発明の自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)のラベルに含めることができることに留意されたい。
【0272】
自動注射装置の使用についてレシピエントを訓練するための方法及び組成物
本発明の別の態様は、自動注射装置の使用をレシピエントに訓練するための方法及び組成物に関する。臨床試験における装置の使用経験に基づいて、装置を首尾よく使用するための特定の重要な特徴を今回発見した。これらの特徴は、自動注射装置の使用をレシピエントに訓練するビジネス方法に組み入れることができる。かかる訓練方法、及びかかる方法に用いられる組成物は、装置のエンドユーザーに、又は装置をエンドユーザーに紹介し、処方し、若しくは販売する関係者に、装置を首尾よく使用するための重要な特徴を連絡するのに有益である。
【0273】
さらに、実際の自動注射装置の様子及び感触を模倣するが、物質又は医薬品を投与することができない、実演用自動注射装置又はトレーナー装置の使用は、実際の自動注射装置を首尾よく使用する訓練をレシピエントにする際に特に有用である。というのは、実演用自動注射装置又はトレーナー装置によって、レシピエントは、医薬品を不注意に投与する可能性なしに、装置の取扱い及び制御を経験及び練習することができるからである。
【0274】
したがって、一態様においては、本発明は、自動注射装置が針及び医薬品を含み、方法が、
(a)針と医薬品のない実演用自動注射装置と、
(b)自動注射装置の使用説明と
をレシピエントに提供することを含む、自動注射装置の使用に関してレシピエントを訓練する方法を提供する。
【0275】
別の態様においては、本発明は、自動注射装置が針及び医薬品を含み、キットが、
(a)針と医薬品のない実演用自動注射装置と、
(b)自動注射装置の使用説明と
を含む、自動注射装置の使用に関してレシピエントを訓練するキットを提供する。
【0276】
好ましい実施形態においては、レシピエントは、自動注射装置に含まれる医薬品を処方する医師である。別の実施形態においては、レシピエントは、自動注射装置に含まれる医薬品を使用する患者である。レシピエントの他の例としては、自動注射装置を調剤する薬剤師、医薬品を使用する患者の家族又は他の介護者、及び自動注射装置の使用を医師又は患者に訓練する代表者が挙げられる。
【0277】
本明細書に記載の訓練方法を含めた方法のある実施形態においては、自動注射装置を使用するための使用説明は、レシピエントに口頭で伝えられる。他の好ましい実施形態においては、使用説明は、書面で(例えば、印刷文書によって)、又は視聴覚装置によって、レシピエントに伝えられる。本発明のキットにおいては、自動注射装置の使用説明は、典型的には、印刷文書又は視聴覚装置と一緒に含まれる。好ましい視聴覚装置としては、VHSカセット、DVDなどが挙げられる。
【0278】
実演用自動注射装置は、実際の自動注射装置のような様子及び感触に設計されるが、エンドユーザーが医薬品を首尾よく投与することができるのに必要な少なくとも1個の部品を欠き、最も好ましくは、実演用自動注射装置を使用するときに不注意な針刺しを回避するように少なくとも針を欠く。好ましくは、実演用自動注射装置は、実際の自動注射装置に含まれる針と医薬品の両方を欠く。
【0279】
別の態様においては、本発明は、自動注射装置が起動機構及び医薬品を含み、方法が、
(a)注射部位に自動注射装置を位置決めし、
(b)起動機構を係合させて、医薬品の注射を開始し、
(c)起動機構の係合を所定時間維持して、医薬品の注射を継続し、
(d)所定時間経過後に、自動注射装置を注射部位から除去する
使用説明をレシピエントに伝えることを含む、自動注射装置の使用に関してレシピエントを訓練する方法を提供する。
【0280】
本発明は、自動注射装置が、起動機構及び医薬品を含み、視聴覚装置が、
(a)注射部位に自動注射装置を位置決めし、
(b)起動機構を係合させて、医薬品の注射を開始し、
(c)起動機構の係合を所定時間維持して、医薬品の注射を継続し、
(d)所定時間経過後に、自動注射装置を注射部位から除去する
使用説明をレシピエントに伝える、自動注射装置の使用に関してレシピエントを訓練するための視聴覚装置も提供する。
【0281】
好ましくは、視聴覚装置は、VHSカセット又はDVDである。
【0282】
上記訓練方法及び視聴覚装置においては、使用説明は、起動機構の最初の係合が「カチッという音」などの可聴音を伴うことを更に伝えることができる。可聴音の他の例としては、ベル、ブザー又は呼出し音が挙げられる。
【0283】
上記訓練方法及び視聴覚装置の別の実施形態においては、使用説明は、医薬品注射の終了が終了の可視表示器を伴うことを更に伝えることができ、及び/又は使用説明は、注射部位に自動注射装置を位置決めする前に注射部位を殺菌すべきであることを更に伝えることができる。
【0284】
上記訓練方法及び視聴覚装置において伝えることができる使用説明の他の例を実施例4に更に詳細に記載する。
【0285】
更に別の態様においては、本発明は、自動注射装置が起動機構及び医薬品を含み、方法が、
(a)注射部位に自動注射装置を位置決めし、
(b)起動機構を係合させて、医薬品の注射を開始し、
(c)終了の可視表示器が検出されるまで、起動機構の係合を維持して、医薬品の注射を継続し、
(d)終了の可視表示器が検出された後に、自動注射装置を注射部位から除去する
使用説明をレシピエントに伝えることを含む、自動注射装置の使用に関してレシピエントを訓練する方法を提供する。
【0286】
本発明は、自動注射装置が、起動機構及び医薬品を含み、視聴覚装置が、
(a)注射部位に自動注射装置を位置決めし、
(b)起動機構を係合させて、医薬品の注射を開始し、
(c)終了の可視表示器が検出されるまで、起動機構の係合を維持して、医薬品の注射を継続し、
(d)終了の可視表示器が検出された後に、自動注射装置を注射部位から除去する
使用説明をレシピエントに伝える、自動注射装置の使用に関してレシピエントを訓練するための視聴覚装置も提供する。
【0287】
好ましくは、自動注射装置は表示窓を含み、終了の可視表示器は、表示窓に出現する色表示器を含む。好ましい色表示器は、黄色の色表示器である。適切な色表示器の他の例としては、赤、オレンジ、青、緑、ピンク又は紫の色表示器が挙げられる。終了の可視表示器の他の例としては、注射終了時の表示窓中の記号又は図柄の出現、及び注射終了時の自動注射装置上の「ポップアップ」ボタンの出現が挙げられる。
【0288】
上記訓練方法及び視聴覚装置の別の実施形態においては、使用説明は、起動機構の係合を所定時間維持して、医薬品の注射を継続すべきであることを更に伝えることができ、及び/又は使用説明は、注射部位に自動注射装置を位置決めする前に注射部位を殺菌すべきであることを更に伝えることができる。好ましくは、所定時間は10秒である。別の好ましい所定時間は少なくとも10秒である。種々の別の実施形態においては、所定時間は1秒、2秒、3秒、4秒、5秒、6秒、7秒、8秒、9秒、11秒、12秒、13秒、14秒、15秒、30秒、45秒又は1分である。
【0289】
上記訓練方法及び視聴覚装置の別の実施形態においては、使用説明は、注射部位に自動注射装置を位置決めする前に、自動注射装置が医薬品の適切な投与量及び処方について検査されるべきであることを更に伝える。かかる検査は、例えば、装置中の液剤を見ることができる、自動注射装置の窓を通して医薬品を見ることによって、実施することができる。適切な投与量及び処方の検査の例としては、医薬品が無色透明である(例えば、濁っておらず、粒子状物質を含んでいない)かどうかの検査、及び医薬品レベルが窓から見える「充填線」表示器に同じ又は近いかどうかの検査が挙げられる。
【0290】
上記訓練方法及び視聴覚装置において伝えることができる使用説明の他の例を実施例4に更に詳細に記載する。
【0291】
VII. 自動注射装置の使用を推奨するための方法及び組成物
本発明の一態様は、自動注射装置の使用を推奨するための方法及び組成物に関する。臨床試験の結果に基づいて、自動注射装置の有利な特徴を今回発見した。これらの特徴は、自動注射装置の使用を推奨するビジネス方法に組み入れることができる。かかる推奨方法、及びかかる方法に用いられる組成物は、装置のエンドユーザーに、又は装置をエンドユーザーに紹介し、処方し、若しくは販売する関係者に、装置の有利な特徴を連絡するのに有益である。
【0292】
したがって、一態様においては、本発明は、
(a)自動注射装置は、患者が使用するのに充填済み注射器よりも痛みが少ない、
(b)自動注射装置は、充填済み注射器に比べて、患者による使用に好ましい、
(c)自動注射装置は、充填済み注射器よりも患者による使用が容易である、
(d)自動注射装置は、患者が使用するのに充填済み注射器よりも簡便である、
(e)自動注射装置は、針が装置中に見えないので、充填済み注射器に比べて、針恐怖症の患者の不安を軽減する、また、
(f)自動注射装置は、装置の最初の使用から使用しやすいように設計されている
からなる群から選択される少なくとも1つのメッセージをレシピエントに伝えることを含む、医薬品などの物質を含む自動注射装置をレシピエントに推奨する方法を提供する。
【0293】
好ましい実施形態においては、自動注射装置は患者が使用するのに充填済み注射器よりも痛みが少ないというメッセージがレシピエントに伝えられる。例えば、臨床試験における患者の80%が自動注射装置を充填済み注射器よりも痛みが少ないと評価したというメッセージをレシピエントに伝えることができる。
【0294】
別の好ましい実施形態においては、自動注射装置は充填済み注射器に比べて患者による使用に好ましいというメッセージがレシピエントに伝えられる。例えば、臨床試験における患者の90%が充填済み注射器よりも自動注射装置を好むというメッセージをレシピエントに伝えることができる。
【0295】
自動注射装置の特別な構造上の特徴もレシピエントに伝えることができる。例えば、充填済み注射器の場合の3個の斜端の針に比べて自動注射装置は5個の斜端の針を含むというメッセージをレシピエントに更に伝えることができる。別の例として、針が装置中に見えない(すなわち、装置を使用説明どおりに使用すると、装置使用者に見えない)というメッセージをレシピエントに伝えることができる。
【0296】
好ましい実施形態においては、レシピエントは、自動注射装置に含まれる医薬品を処方する医師である。別の実施形態においては、レシピエントは、自動注射装置に含まれる医薬品を使用する患者である。レシピエントの他の例としては、自動注射装置を調剤する薬剤師、医薬品を使用する患者の家族又はその看護人、及び自動注射装置の使用を医師又は患者に訓練する代表者が挙げられる。
【0297】
好ましい実施形態においては、少なくとも1つの前記メッセージを口頭でレシピエントに伝える。別の好ましい実施形態においては、少なくとも1つの前記メッセージを前記レシピエントに書面で(例えば、添付文書などの印刷文書によって)伝える。更に別の好ましい実施形態においては、少なくとも1つのメッセージをレシピエントに視聴覚装置によって伝える。
【0298】
別の態様においては、本発明は、
(a)自動注射装置は、患者が使用するのに充填済み注射器よりも痛みが少ない、
(b)自動注射装置は、充填済み注射器に比べて、患者による使用に好ましい、
(c)自動注射装置は、充填済み注射器よりも患者による使用が容易である、
(d)自動注射装置は、患者が使用するのに充填済み注射器よりも簡便である、
(e)自動注射装置は、針が装置中に見えないので、充填済み注射器に比べて、針恐怖症の患者の不安を軽減する、また、
(f)自動注射装置は、装置の最初の使用から使用しやすいように設計されている
からなる群から選択される少なくとも1つのメッセージをレシピエントに伝える、医薬品を含む自動注射装置をレシピエントに推奨するための視聴覚装置を提供する。
【0299】
好ましい実施形態においては、視聴覚装置はVideo Home System(VHS)カセットである。別の好ましい実施形態においては、視聴覚装置はデジタルビデオディスク(DVD)である。
【0300】
好ましい実施形態においては、自動注射装置は患者が使用するのに充填済み注射器よりも痛みが少ないというメッセージを視聴覚装置は伝える。例えば、臨床試験における患者の80%が自動注射装置を充填済み注射器よりも痛みが少ないと評価したというメッセージを視聴覚装置は伝えることができる。
【0301】
別の好ましい実施形態においては、自動注射装置は充填済み注射器に比べて患者による使用に好ましいというメッセージを視聴覚装置は伝える。例えば、臨床試験における患者の90%が充填済み注射器よりも自動注射装置を好むというメッセージを視聴覚装置は伝えることができる。
【0302】
視聴覚装置は、自動注射装置の特別な構造上の特徴をレシピエントに伝えることもできる。例えば、充填済み注射器の場合の3個の斜端の針に比べて自動注射装置は5個の斜端の針を含むというメッセージを視聴覚装置は伝えることができる。別の例として、針が装置中に見えない(すなわち、装置を使用説明どおりに使用すると、装置使用者に見えない)というメッセージを視聴覚装置は伝えることができる。
【0303】
更に別の実施形態においては、当分野で以前に記述された自動注射装置を、自動注射装置の訓練及び推奨に関連した本発明の方法及び組成物に使用する。米国特許第3,941,130号、同4,261,358号、同5,085,642号、同5,092,843号、同5,102,393号、同5,267,963号、同6,149,626号、同6,270,479号及び同6,371,939号の装置を含めて、ただしこれらだけに限定されない適切な自動注射装置が当分野で記述されている。
【0304】
VII. 自動注射装置を用いてTNFα阻害剤によって治療することができる、TNFα活性が有害である障害
本発明の自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)は、障害を治療する方法に使用することができ、一実施形態においては、有害なTNF活性に関連した障害に使用することができる。一実施形態においては、自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)を用いて、物質(例えば、TNFα阻害剤)を治療のために患者に送達する。障害としては、(若年性関節炎を含めた)リウマチ様関節炎、クローン病、乾せん、乾せん性関節炎、強直性脊椎炎などが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0305】
本明細書では「TNFα活性が有害である障害」という用語は、この障害に罹患した患者におけるTNFαの存在が、障害の病態生理の原因又は障害の悪化に寄与する要因であることが判明した、又はその疑いがある、疾患及び他の障害を含むものとする。したがって、TNFα活性が有害である障害は、TNFα活性を抑制することによって障害の症候及び/又は進行が軽減されると予想される障害である。かかる障害は、例えば、障害に罹患した患者の体液のTNFα濃度の上昇(例えば、患者の血清、血しょう、滑液などのTNFα濃度の上昇)によって明らかにすることができる。TNFα濃度は、例えば、上述した抗TNFα抗体を用いて検出することができる。TNFα活性が有害である障害の例は多数あり、以下で更に考察する。
【0306】
A. 自己免疫疾患
腫よう壊死因子は、多様な自己免疫疾患の病態生理においてある役割を果たすことに関係している。例えば、TNFαは、リウマチ様関節炎において組織炎症を促進し、関節破壊を起こすことに関係する(例えば、Moeller, A.,et al.(1990) Cytokine 2:162−169;Moeller他、米国特許第5,231,024号;Moeller, A.、欧州特許公報第260 610号B1;Tracey and Cerami、同上;Arend, W.P. and Dayer, J−M.(1995) Arth. Rheum. 38:151−160;Fava, R.A., et al.(1993) Clin. Exp. Immunol. 94:261−266参照)。TNFαは、糖尿病において島細胞死を促進し、インスリン抵抗性を媒介することにも関係する(例えば、Tracey and Cerami、同上;国際公開第94/08609号参照)。TNFαは、多発性硬化症における乏突起膠細胞への細胞傷害性の媒介、及び炎症性プラークの誘発にも関係する(例えば、Tracey and Cerami、同上参照)。TNFαは、多発性硬化症における乏突起膠細胞への細胞傷害性の媒介、及び炎症性プラークの誘発にも関係する(例えば、Tracey and Cerami、同上参照)。キメラ及びヒト化ネズミ抗hTNFα抗体は、リウマチ様関節炎治療の臨床試験を受けた(例えば、Elliott, M.J., et al.(1994) Lancet 344:1125−1127;Elliot, M.J., et al.(1994) Lancet 344:1105−1110;Rankin, E.C., et al.(1995) Br. J. Rheumatol. 34:334−342参照)。
【0307】
アダリムマブなどのTNFα抗体は、自己免疫疾患、特に炎症に関連する自己免疫疾患の治療に使用することができる。かかる自己免疫症状の例としては、リウマチ様関節炎、リウマチ様脊椎炎、骨関節炎及び痛風性関節炎、アレルギー、多発性硬化症、自己免疫性糖尿病、自己免疫性ブドウ膜炎並びにネフローゼ症候群が挙げられる。自己免疫症状の他の例としては、多系統自己免疫疾患及び自己免疫聴覚損失が挙げられる。
【0308】
本発明の一実施形態においては、TNFα阻害剤をループスなどの自己免疫異常の治療に使用する。ループスは、TNF活性に関連することが判明した(Shvidel et al.(2002) Hematol J. 3:32、Studnicka−Benke et al.(1996) Br J Rheumatol. 35:1067)。本明細書では「ループス」という用語は、皮膚、関節及び内臓を含めて多数の臓器系で発症し得るエリテマトーデスと呼ばれる慢性炎症性自己免疫異常を指す。ループスは、全身的ループス、ループス腎炎及びループス脳炎を含めてループスの幾つかの具体的タイプを含む一般用語である。全身的ループス(SLE)においては、体の自然防御が体に反抗し、不良免疫細胞が体の組織を攻撃する。体の血球、器官及び組織に対して反応し得る抗体が産生され得る。この反応は、患部の系を攻撃する免疫細胞をもたらし、慢性疾患を起こす。ループス腎炎は、ループス糸球体疾患とも称され、通常はSLEの合併症である腎臓障害であり、糸球体の損傷及び進行性の腎機能損失を特徴とする。ループス脳炎は、脳及び/又は中枢神経系の炎症である、SLEの別の合併症を指す。
【0309】
TNFα抗体によって治療することができる別の自己免疫疾患はクローン病である。クローン病については、下記腸疾患のセクションにおいてより詳細に記述する。
【0310】
B. 腸疾患
腫よう壊死因子は、クローン病を含めて、炎症性腸疾患の病態生理に関係する(例えば、Tracy et al.(1986) Science 234:470、Sun et al.(1988) J. Clin. Invest. 81:1328、MacDonald et al.(1990) Clin. Exp. Immunol. 81:301参照)。キメラネズミ抗hTNFα抗体は、クローン病治療の臨床試験を受けた(van Dullemen et al.(1995) Gastroenterology 109:129)。本発明は、本発明の方法を用いて得られるTNFα抗体を投与して、ヒト抗体若しくはその抗原結合性フラグメントを用いて、特発性炎症性腸疾患などの腸疾患を治療することを含む、治療を含む。特発性炎症性腸疾患としては、2種類の症候群、すなわちクローン病と潰よう性大腸炎が挙げられる。一実施形態においては、本発明の方法を用いて得られる抗体を、IBD及びクローン病に付随することが多い障害の治療にも使用する。本明細書で区別なく使用する「炎症性腸疾患(IBD)関連障害」又は「クローン病関連障害」という用語は、IBD及びクローン病に一般に付随する症状及び合併症の記述に使用する。
【0311】
本発明は、クローン病を治療するためにTNFα抗体を投与することを含む複数回可変投薬計画も含む。クローン病治療は、疾患の位置、程度及び重症度に基づく。薬理学的介入としては、抗炎症剤(アミノサリチル酸塩及びコルチコステロイド)、免疫調節剤(アザチオプリン及び6−メルカプトプリン[6−MP]、シクロスポリン、メトトレキセート[MTX]、抗生物質及び生物学的薬剤)などが挙げられる。C反応性タンパク質(CRP)及び赤血球沈降速度(ESR)レベルは、非特異的急性期反応を反映する。内視鏡検査は、クローン病を診断する主要な手段である。クローン病の放射線学的特徴は、バリウム試験によって示され、粘膜浮腫、アフタ性及び線状潰よう形成、非対称的な狭小化及び狭窄、並びに腸間膜肥厚化に起因する隣接する腸の離隔を含む。異常は、限局的で非対称である。主要な組織学的病変はアフタ性潰ようである。クローン病の対象は、疾患重症度の標準尺度であるクローン病活動性指数(CDAI)によって評価することができ、スコアが高いほど疾患の活動性が高い。
【0312】
本発明の方法によって治療することができるクローン病関連障害の例としては、ぼうこう、膣及び皮膚のろう孔、腸閉塞症、膿よう、栄養欠乏、コルチコステロイド使用による合併症、関節の炎症、結節性紅斑、壊そ性膿皮症、並びに眼の病変が挙げられる。クローン病に一般に付随する他の障害としては、クローン関連関節痛、ろう孔型クローン、未定型結腸炎、嚢炎などが挙げられる。
【0313】
C. 脊椎関節症
TNFαは、脊椎関節症などの炎症性疾患を含めて、多種多様な障害の病態生理に関係する(例えば、Moeller et al.(1990) Cytokine 2:162、米国特許第5,231,024号、欧州特許公報第260 610号参照)。本発明は、脊椎関節症患者においてTNFα活性を阻害する複数回可変投薬方法を提供する。この方法は、脊椎関節症患者においてTNFα活性を阻害するように、抗体、抗体部分を患者に投与することを含む。
【0314】
本明細書では「脊椎関節症」という用語を、脊椎の接合部で発症する幾つかの疾患のいずれか1つを表すために使用する。かかる疾患は、共通の臨床的、放射線医学的及び組織学的特徴を有する。幾つかの脊椎関節症は、遺伝子特性を共有し、すなわち、HLA−B27対立遺伝子と関連がある。一実施形態においては、脊椎関節症という用語を、強直性脊椎炎を除いて、脊椎の接合部で発症する幾つかの疾患のいずれか1つを表すために使用する。かかる疾患は、共通の臨床的、放射線医学的及び組織学的特徴を有する。脊椎関節症の例としては、強直性脊椎炎、乾せん性関節炎/脊椎炎、腸疾患性関節炎、反応性関節炎又はライター症候群、及び未分化脊椎関節症が挙げられる。脊椎関節症の研究に用いられる動物モデルの例としては、ank/ankトランスジェニックマウス、HLA−B27トランスジェニックラットが挙げられる(Taurog et al.(1998) The Spondylarthritides. Oxford:Oxford University Press参照)。
【0315】
本発明の自動注射装置は、脊椎関節症を発症するリスクのある患者を複数回可変投薬方法によって治療するのに使用することができる。脊椎関節症を発症するリスクのある患者の例としては、関節炎に罹患したヒトが挙げられる。脊椎関節症は、リウマチ様関節炎を含めて、関節炎の他の形態に付随し得る。本発明の一実施形態においては、リウマチ様関節炎に付随する脊椎関節症に罹患した患者を治療する複数回可変投与方法に抗体を使用する。TNFα抗体によって治療することができる脊椎関節症の例を以下に記述する。
【0316】
1. 強直性脊椎炎(AS)
腫よう壊死因子は、強直性脊椎炎の病態生理に関係する(Verjans et al.(1991) Arthritis Rheum. 34:486、Verjans et al.(1994) Clin Exp Immunol. 97:45、Kaijtzel et al.(1999) Hum Immunol. 60:140参照)。強直性脊椎炎(AS)は、1個以上の椎骨の炎症を含む炎症性障害である。ASは、脊椎骨間の関節、仙腸関節、及び脊椎と骨盤の間の関節を含めて、中軸骨格及び/又は末梢関節で発症する慢性炎症性疾患である。ASによって、最終的に、患部椎骨が融着し、又は一緒に成長する。ASを含めて、脊椎関節症は、乾せん性関節炎(PsA)、及び/又は潰よう性大腸炎及びクローン病を含めた炎症性腸疾患(IBD)に付随し得る。
【0317】
ASの初期症状は、CTスキャン及びMRIスキャンを含めて、放射線透過試験によって判定することができる。ASの初期症状は、仙腸骨炎(scroiliitis)を含むことが多く、肋軟骨下(subchrondral)骨の皮質縁部の不鮮明化によって明らかな仙腸関節の変化を含むことが多く、それに続くびらん及び硬化症を含むことが多い。疲労もASの一般的症候として注目される(Duffy et al.(2002) ACR 66th Annual Scientific Meeting Abstract)。したがって、本発明の抗体若しくはその抗原結合性フラグメントを投与することを含む複数回可変投与方法をASの治療に使用することができる。
【0318】
一実施形態においては、本発明の複数回可変投与方法を、ASを含めて、IBDに付随する脊椎関節症の治療に使用する。ASは、アスピリン、インドメタシンなどの非ステロイド抗炎症薬(NSAID)を用いて治療されることが多い。したがって、本発明の複数回可変投与方法に使用するTNFα抗体を、強直性脊椎炎に一般に付随する炎症及びとう痛の軽減に一般に使用される薬剤と組み合わせて投与することもできる。
【0319】
2. 乾せん性関節炎
腫よう壊死因子は、乾せん性関節炎(PsA)の病態生理に関係する(Partsch et al.(1998) Ann Rheum Dis. 57:691、Ritchlin et al.(1998) J Rheumatol. 25:1544)。本明細書では、乾せん性関節炎、又は皮膚に関連した乾せんは、体表面に赤斑を生じる一般的な慢性皮膚症状である乾せんに付随する慢性炎症性関節炎を指す。乾せん患者の約20人に1人は皮膚症状と一緒に関節炎を発症し、症例の約75%において関節炎の前に乾せんが起こる。PsAは軽度から重度の関節炎まで様々であり、指及び脊椎で通常は発症する。脊椎で発症すると、その症候は、上述した強直性脊椎炎の症候に類似している。本発明を用いて得られるTNFα抗体若しくはその抗原結合性フラグメントは、PsAの治療に使用することができる。
【0320】
PsAは破壊性関節炎に付随することがある。破壊性関節炎は、関節を損なう肉眼的びらん性変形をもたらす過剰な骨びらんを特徴とする障害を指す。一実施形態においては、本発明の方法によって得られる抗体を破壊性関節炎の治療に使用する。
【0321】
3. 反応性関節炎/ライター症候群
腫よう壊死因子は、ライター症候群とも称される反応性関節炎の病態生理に関係する(Braun et al.(1999) Arthritis Rheum. 42(10):2039)。反応性関節炎(ReA)は、腸管感染症又は泌尿生殖器感染症に続くことが多い、体内の他の場所での感染症を併発する関節炎を指す。ReAは、関節の炎症(関節炎)、尿道炎、結膜炎、並びに皮膚及び粘膜の病変を含めて、ある種の臨床症状を特徴とすることが多い。また、ReAは、クラミジア(chlamydia)、カンピロバクター(campylobacter)、サルモネラ(salmonella)又はエルシニア(yersinia)を含めて、性感染症又は赤痢感染に続いて起こり得る。したがって、本発明の方法によって得られる抗体は、ReAの治療に使用することができる。
【0322】
4. 未分化脊椎関節症
一実施形態においては、本発明の方法によって得られる抗体を未分化脊椎関節症患者の治療に使用する(Zeidler et al.(1992) Rheum Dis Clin North Am. 18:187参照)。未分化脊椎関節症の記述に用いられる他の用語としては、血清陰性オリゴ関節炎、未分化オリゴ関節炎などが挙げられる。本明細書では未分化脊椎関節症は、患者が脊椎関節症に関連した症候の一部しか示さない障害を指す。この症状は、IBD、乾せん、又はAS若しくはライター症候群の古典的症状を示さない若年成人において通常は認められる。未分化脊椎関節症は、ASの初期徴候である場合もある。一実施形態においては、本発明は、特許請求の範囲の方法によって得られるTNFα抗体若しくはその抗原結合性フラグメントを投与して、未分化脊椎関節症を治療することを含む。
【0323】
D. 皮膚及び爪の障害
腫よう壊死因子は、皮膚及び爪の障害の病態生理に関係する。本明細書では区別なく使用する「皮膚疾患」又は「皮膚病」という用語は、炎症状態を誘発した皮膚の、傷害以外の異常を指す。一実施形態においては、本発明の皮膚疾患は、皮膚が毛細管拡張、白血球浸潤、発赤、熱及び/又はとう痛を特徴とする炎症性皮膚疾患である。皮膚疾患の例としては、乾せん、尋常性天ぽうそう、強皮症、アトピー性皮膚炎、サルコイドーシス、結節性紅斑、化膿性汗腺炎、へん平苔せん、スウィート症候群及び白斑症が挙げられるが、これらだけに限定されない。本明細書では「TNFα活性が有害である皮膚及び爪の障害」という用語は、この障害に罹患した患者におけるTNFαの存在が、障害(例えば、乾せん)の病態生理の原因、又は障害の悪化に寄与する要因であることが判明した、又はその疑いがある、皮膚及び/又は爪の障害及び他の障害を含むものとする。したがって、TNFα活性が有害である皮膚及び爪の障害は、TNFα活性の抑制が障害の症候及び/又は進行を軽減すると予想される障害である。具体的な皮膚及び爪の障害の治療における本発明の抗体、抗体部分及び他のTNFα阻害剤の使用を以下でさらに考察する。ある実施形態においては、以下に記述するように、本発明の治療方法を別の治療薬と組み合わせて実施する。一実施形態においては、別の治療薬と組み合わせてTNFα抗体を投与することを含む本発明の方法によって得られる抗体を、乾せんの治療、及び関節炎に付随する乾せんの治療に使用する。
【0324】
1. 乾せん
腫よう壊死因子は、乾せんの病態生理に関係する(Takematsu et al.(1989) Arch Dermatol Res. 281:398、Victor and Gottlieb(2002) J Drugs Dermatol. 1:264)。本明細書では「乾せん」という用語は、表皮過形成に関連する皮膚疾患を指す。乾せんの例としては、慢性プラーク乾せん、滴状乾せん、逆性乾せん(inverse psoriasis)、膿ほう性乾せん、尋常性乾せん及び紅皮症乾せんが挙げられるが、これらだけに限定されない。乾せんは、炎症性腸疾患(IBD)及びリウマチ様関節炎(RA)を含めて、他の炎症性障害にも付随し得る。
【0325】
乾せんは、皮膚上の発赤、掻よう感、及び乾燥した銀白色の厚い鱗屑の頻繁な出現を特徴とする皮膚炎症(過敏及び発赤)として記述される。特に、表皮増殖の原発性及び続発性変化、皮膚の炎症反応、並びにリンホカイン、炎症因子などの調節性分子の発現を伴う病変部が形成される。乾せん皮膚は、基本細胞周期の増加をもたらす、表皮細胞の代謝回転の増加、厚い表皮、異常な角質化、表皮中への炎症細胞浸潤、並びに表皮層への多形核白血球及びリンパ球の浸潤を形態学的特徴とする。乾せんは、爪を含むことが多く、くぼみ、爪の分離、肥厚化及び変色が頻繁に起こる。乾せんは、他の炎症性障害(例えば、リウマチ様関節炎を含めた関節炎、炎症性腸疾患(IBD)、及びクローン病)に付随することが多い。乾せん患者の約1/3は、上述したように、硬直、関節の腫脹、とう痛、及び可動域の減少を起こす乾せん性関節炎(PsA)も有する(Greaves et al.(1995) N. Eng. J. Med. 332:581)。
【0326】
乾せんの証拠は、体幹、肘、膝、頭皮、皮膚のしわ、又は爪に最も一般的に見られるが、皮膚の任意又はすべての部分で発症し得る。通常、新しい皮膚細胞が下層から表面に移動するのには約1か月かかる。乾せんでは、このプロセスがほんの数日しかかからず、死んだ皮膚細胞が堆積し、厚い鱗を形成する。乾せんの症候としては、乾燥した又は赤い、銀白色の鱗で覆われ、皮膚の斑点を生じ、縁部が赤く、割れて有痛性となり得る、通常は肘、膝、体幹、頭皮及び手にできる皮膚斑点;膿ほう、皮膚のひび割れ、及び皮膚の発赤を含めた、皮膚病変部;関節炎(例えば、乾せん性関節炎)に付随し得る関節痛又はうずきなどが挙げられる。
【0327】
乾せんの治療は、局所的コルチコステロイド、ビタミンDアナログ、及び局所的若しくは経口レチノイド、又はこれらの組合せを含むことが多い。一実施形態においては、本発明のTNFα抗体を、これらの一般的治療の1つと組み合わせて、又はその存在下で、投与する。乾せん治療に、本発明の方法によって得られるTNFα抗体と組み合わせることができる追加の治療薬については、より詳細に後述する。
【0328】
乾せんの診断は、通常、皮膚の外観に基づく。さらに、皮膚生検、又は皮膚斑点の擦過標本及び培養物が、他の皮膚疾患を除外するために必要になり得る。関節痛があり、持続する場合には、x線を使用して、乾せん性関節炎を検査することができる。
【0329】
患者における乾せんの改善は、患者の乾せん面積及び重症度指数スコア(Psoriasis Area and Severity Index Score)(PASI)によって監視することができる。PASIを決定する方法は、Fredriksson and Pettersson(1978) Dermatologica 157:238及びMarks et al.(1989) Arch Dermatol 125:235に記載されている。手短に述べると、この指数は、頭部、上肢、体幹及び下肢を含めた4箇所の解剖部位の紅斑、硬結及び落屑についての5段階評価(0=無症候、1=軽微、2=中度、3=顕著、4=極めて顕著)による評価に基づく。所与の解剖部位における病変部の程度に基づいて、患部に数値を割り当てる(0=0、1=<10%、2=10−29%、3=30−49%、4=50−69%、5=70=89%、6=90−100%)。次いで、PASIスコアを計算する。PASIスコアの可能な範囲は0.0から72.0であり、最高スコアは、最も重度の完全な紅皮症を表す。
【0330】
本発明の一実施形態においては、慢性プラーク乾せん、滴状乾せん、逆性乾せん、膿ほう性乾せん、尋常性天ぽうそう、紅皮症乾せん、炎症性腸疾患(IBD)に付随する乾せん、及びリウマチ様関節炎(RA)に付随する乾せんを含めて、乾せんの治療にTNFα抗体を使用する。別の実施形態においては、アダリムマブなどのTNFα抗体を、PsAと一緒に乾せんを有する患者の治療に使用する。本発明の治療方法に含まれる乾せんの具体的タイプを以下に詳細に記述する。
【0331】
a. 慢性プラーク乾せん
腫よう壊死因子は、慢性プラーク乾せんの病態生理に関係する(Asadullah et al.(1999) Br J Dermatol. 141:94)。(尋常性乾せんとも称される)慢性プラーク乾せんは、乾せんの最も一般的な形態である。慢性プラーク乾せんは、硬貨の大きさからはるかに大きなものまでの膨れた赤い皮膚斑点を特徴とする。慢性プラーク乾せんにおいては、プラークは、単一の場合も複数の場合もあり、数ミリメートルから数センチメートルまで大きさが変動し得る。プラークは、通常、赤い鱗状表面であり、軽くひっかくと光を反射し、「銀白色」効果を示す。慢性プラーク乾せん由来の(対称的であることが多い)病変部は、体全面に生じるが、膝、肘、腰仙部、頭皮及び爪を含めて伸側面に好発する。慢性プラーク乾せんは、時折、陰茎、外陰部及び弯曲部に発生し得るが、鱗は通常ない。慢性プラーク乾せん患者の診断は、通常、臨床上の上記特徴に基づく。特に、慢性プラーク乾せんの病変部の分布、色及び典型的な銀白色の鱗屑は、慢性プラーク乾せんに特徴的である。
【0332】
b. 滴状乾せん
滴状乾せんとは、特徴的な水滴形状の鱗状プラークを有する乾せんの一形態を指す。滴状乾せんの発赤は、一般に、感染、最も顕著には連鎖球菌性咽頭感染後に起こる。滴状乾せんの診断は、通常、皮膚の外観、及び最近の咽頭炎の病歴がある場合が多いという事実に基づく。
【0333】
c. 逆性乾せん
逆性乾せんは、患者が、赤く炎症を起こした滑らかで通常は湿った皮膚領域を有する乾せんの一形態であり、プラーク乾せんに付随する鱗とは異なる。逆性乾せんは、間擦性(intertiginous)乾せん又は間擦疹型乾せんとも称される。逆性乾せんは、大部分がえきか、鼠径部、乳房の下、並びに生殖器及びでん部周囲の他の皮膚のしわに発生し、その発生場所の結果として、こすること及び発汗は患部を刺激する。
【0334】
d. 膿ほう性乾せん
膿ほう性乾せんは、手掌足底乾せん(palmar plantar psoriasis)とも称され、大きさや位置は異なるが、手や足に発生することが多い膿ほうを生じる乾せんの一形態である。ほう疹は、局所的である場合もあれば、体の大きな領域に広がる場合もある。膿ほう性乾せんは、圧痛があり、有痛性であり、発熱し得る。
【0335】
e. 他の乾せん障害
本発明の方法によって送達されるTNFα抗体を用いて治療することができる乾せん障害の他の例としては、紅皮症乾せん、尋常性、IBDに付随する乾せん、及びリウマチ様関節炎を含めた関節炎に付随する乾せんが挙げられる。
【0336】
2. 尋常性天ぽうそう
尋常性天ぽうそうは、口腔粘膜及び皮膚で発症することが多い重度の自己免疫性全身性皮膚疾患である。尋常性天ぽうそうの原因は、皮膚及び口腔粘膜接着斑をもたらす自己免疫性プロセスであると考えられる。結果として、細胞は互いに接着しない。この障害は、体液で満たされた破裂しやすい大きな水ほうとして現れ、特有の組織外観を有する。抗炎症剤は、死亡率の高いこの疾患の唯一の有効な療法である。尋常性天ぽうそう患者が発症する合併症は、難治性とう痛、栄養摂取及び体液喪失の妨害、並びに感染症である。
【0337】
3. アトピー性皮膚炎/湿疹
(湿疹とも称される)アトピー性皮膚炎は、掻よう感のある鱗状のプラークによって分類される慢性皮膚疾患である。湿疹を有する人は、ぜん息、枯草熱又は湿疹のようなアレルギー性症状の家族歴を有することが多い。アトピー性皮膚炎は、皮膚で生じる(アレルギーに類似した)過敏性反応であり、慢性炎症を引き起こす。この炎症は、皮膚に掻よう感を生じ、皮膚を鱗状にする。慢性刺激及び引っ掻きによって、皮膚が肥厚化し、革のような肌理になり得る。環境刺激物への暴露は、皮膚の乾燥、水への暴露、温度変化、及びストレスと同様に、症候を悪化し得る。
【0338】
アトピー性皮膚炎患者は、激しい掻よう感、しん出及びか皮形成を伴うほう疹、ほう疹周囲の皮膚の発赤又は炎症、発疹、乾燥、革のような皮膚領域、引っ掻きによって皮膚のむけた領域、並びに耳漏/出血を含むことが多い、特定の症候によって確認することができる。
【0339】
4. サルコイドーシス
サルコイドーシスは、肉芽腫性炎症がリンパ節、肺、肝臓、眼、皮膚及び/又は他の組織に発生する疾患である。サルコイドーシスとしては、皮膚サルコイドーシス(皮膚のサルコイドーシス)、結節性サルコイドーシス(リンパ節のサルコイドーシス)などが挙げられる。サルコイドーシス患者は、全般的不快感、不安又は悪感情、発熱、皮膚病変部を含むことが多い症候によって確認することができる。
【0340】
5. 結節性紅斑
結節性紅斑とは、典型的には前側下腿の、皮膚の下の圧痛がある赤い小結節を特徴とする炎症性障害を指す。結節性紅斑に関連する病変部は、へん平だが堅く熱い赤い有痛性の塊(直径約1インチ)として始まることが多い。数日以内に病変部は紫がかり、次いで数週間で退色して茶色がかったへん平斑点になり得る。
【0341】
結節性紅斑は、ストレプトコッカス(Streptococcus)、コクシジウム症、結核、B型肝炎、梅毒、ネコ引っ掻き病、野兎病、エルシニア、レプトスピラ症 オウム病、ヒストプラスマ症、単核球症(EBV)を含めた感染症に付随し得る。結節性紅斑は、経口避妊薬、ペニシリン、スルホンアミド、スルホン、バルビツール酸塩、ヒダントイン、フェナセチン、サリチル酸塩、ヨウ化物及びプロゲスチンを含めて、ある種の薬物療法に対する感受性に関連し得る。結節性紅斑は、白血病、サルコイドーシス、リウマチ熱及び潰よう性大腸炎を含めて、他の障害に付随することが多い。
【0342】
結節性紅斑の症候は、通常はすねに出現するが、病変部は、でん部、ふくらはぎ、足首、大腿及び上肢を含めて、体の他の領域でも発生し得る。結節性紅斑患者における他の症候としては、熱、倦怠感などが挙げられる。
【0343】
6. 化膿性汗腺炎
化膿性汗腺炎とは、腫脹した有痛性の炎症性病変部又は塊が、鼠径部並びに時折腕の下及び乳房の下に発生する、皮膚疾患を指す。化膿性汗腺炎は、アポクリン腺出口が発汗によって遮断されたとき、又は通常は腺の不完全な発達のために、排膿できないときに起こる。腺中に閉じ込められた分泌物は、汗及び細菌を周囲の組織に押し込め、皮下硬結、炎症及び感染を引き起こす。化膿性汗腺炎は、アポクリン腺を含む体の領域に限られる。これらの領域は、えきか、乳輪、鼠径部、会陰、肛門周囲及びへそ周囲領域である。
【0344】
7. へん平苔せん
腫よう壊死因子は、へん平苔せんの病態生理に関係する(Sklavounou et al.(2000) J Oral Pathol Med. 29:370)。へん平苔せんとは、炎症、掻よう感及び特有の皮膚病変部をもたらす、皮膚及び粘膜の障害を指す。へん平苔せんは、C型肝炎又はある種の薬物療法に付随し得る。
【0345】
8. スウィート症候群
腫よう壊死因子を含めて、炎症性サイトカインは、スウィート症候群の病態生理に関係する(Reuss−Borst et al.(1993) Br J Haematol. 84:356)。スウィート症候群は、R.D.Sweetによって1964年に記述され、突然の発熱、白血球増多症、及び皮疹を特徴とする。皮疹は、顕微鏡的に高密度の好中球浸潤を示す、圧痛があり、紅斑性で境界の明瞭な丘疹及びプラークからなる。病変部はどこにでも出現し得るが、顔を含めた上体に多い。個々の病変部は、偽性小胞(pseudovesicular)又は偽性膿ほう(pseudopustular)として記述されることが多いが、率直には、膿ほう、水ほう又は潰よう性であり得る。口腔及び眼の関与(結膜炎又は上強膜炎)もスウィート症候群患者では頻繁に報告されている。白血病もスウィート症候群に付随し得る。
【0346】
9. 白斑症
白斑症とは、皮膚領域から色素が失われ、正常な皮膚の肌理を有する不規則な白斑が生じる皮膚症状を指す。白斑症に特徴的な病変部は、へん平脱色領域として出現する。病変部の縁部は、鋭く画定されているが不規則である。白斑患者に多い患部としては、顔、肘及び膝、手足、生殖器などが挙げられる。
【0347】
10. 強皮症
腫よう壊死因子は、強皮症の病態生理に関係する(Tutuncu et al.(2002) Clin Exp Rheumatol. 20(6 Suppl 28):S146、Mackiewicz et al.(2003) Clin Exp Rheumatol. 21:41、Murota et al.(2003) Arthritis Rheum. 48:1117)。強皮症とは、皮膚、血管、骨格筋及び内臓の変化を特徴とするびまん性結合組織病を指す。強皮症は、CREST症候群又は進行性全身性硬化症とも称され、通常、30から50歳の人が発症する。女性は男性よりも発症しやすい。
【0348】
強皮症の原因は不明である。この疾患は、局所的又は全身的症候を生じ得る。疾患の経過及び重症度は患者によって広範に変わる。過剰のコラーゲンが皮膚に堆積し、他の器官が症候を生じる。皮膚内及び患部器官内の微小血管の損傷も起こる。皮膚においては、潰よう形成、石灰化、及び色素沈着の変化が起こり得る。全身的特徴としては、線維症、心臓、肺、腎臓及び消化管の変性などが挙げられる。
【0349】
強皮症患者は、熱及び寒さ(レイノー現象)に応じた指及びつま先の白化、青味又は発赤、指及び関節のとう痛、硬直及び腫脹、皮膚の肥厚化、光沢のある手及び前腕、食道逆流又は胸やけ、えん下障害、並びに呼吸促迫を含めて、特定の臨床上の特徴を示す。強皮症の診断に用いられる他の臨床症状としては、高い赤血球沈降速度(ESR)、高いリウマチ因子(RF)、陽性の抗核抗体試験、タンパク質及び微視的な血液を示す尿検査、線維症を示し得る胸部X線、拘束性肺疾患を示す肺機能試験などが挙げられる。
【0350】
11. 爪の障害
爪の障害としては、爪のあらゆる異常が挙げられる。本明細書では「爪の障害」又は「爪の疾患」という用語は、指の爪又は足指爪が異常な色、形、肌理又は厚さである症状を指す。具体的な爪の障害としては、くぼみ、匙状爪、ボー線、スプーン状爪、爪甲剥離症、黄色爪、(へん平苔せんにおいて見られる)表皮爪膜、爪甲白斑などが挙げられるが、これらだけに限定されない。くぼみは、爪表面の小さいくぼみの存在を特徴とする。隆線又は線状隆起が爪に沿って発生し、「長手方向」又は「横方向」に生じる。ボー線は、指の爪の「横方向」(横断方向)に生じる線状のくぼみである。爪甲白斑は、爪の上の白色の筋又は点である。匙状爪は、爪が盛り上がった隆線を有し、薄い凹状である、指の爪の異常形状である。匙状爪は、鉄欠乏に関連することが多い。
【0351】
本発明のTNFα抗体によって治療することができる爪の障害としては、乾せん爪も挙げられる。乾せん爪は、乾せんに起因し得る爪の変化を含む。乾せんは、爪のみに生じ、体の他の部分には生じないことがある。乾せんによる爪の変化は、軽度から重度にわたり、爪体、爪母基、すなわちそこから爪が成長する組織、爪床、すなわち爪の下の組織、及び爪の基部の皮膚が乾せんに関与する程度を一般に反映する。膿ほう型乾せんによる爪床の損傷は、爪の損失をもたらし得る。乾せんにおける爪の変化は、単独で起こり得る、又はすべて一緒に起こり得る、一般的カテゴリーに分類される。乾せん爪の1カテゴリーにおいては、恐らくは乾せんに起因する爪の成長の欠陥のために、爪体が深くくぼむ。別のカテゴリーにおいては、恐らくは爪床に乾せんが関与するために、爪は黄色から黄−淡紅色に変色する。乾せん爪の第3のサブタイプは、爪体の下に出現する白色領域を特徴とする。この白色領域は、実際には、爪体が爪床から剥離した点を示す気泡である。爪の周囲には赤くなった皮膚が存在し得る。第4のカテゴリーは、恐らくは爪母基に乾せんが関与するために、黄色がかった断片に崩壊した爪体、すなわち、爪ジストロフィーによって示される。第5のカテゴリーは、爪母基及び爪床に乾せんが関与することによる爪全体の損失を特徴とする。
【0352】
本発明の方法によって得られる抗体は、へん平苔せんに付随することが多い爪の障害の治療にも使用することができる。へん平苔せん患者の爪は、長軸方向の隆線又は表皮爪膜を有する爪体の薄化及び表面荒れを示すことが多い。
【0353】
本発明によって得られる抗体は、本明細書に記載の障害などの爪の障害の治療に使用することができる。爪の障害は、皮膚疾患に付随することが多い。一実施形態においては、本発明は、本発明のTNFα抗体、方法及び組成物を用いた爪の障害の治療を含む。別の実施形態においては、爪の障害は、乾せんなどの皮膚疾患を含めて、別の障害に付随する。別の実施形態においては、爪の障害に付随する障害は、乾せん性関節炎を含めた関節炎である。
【0354】
12. 他の皮膚及び爪の障害
本発明の方法によって得られる抗体は、慢性光線性皮膚炎、水ほう性類天ほうそう、円形脱毛症などの他の皮膚及び爪の障害の治療に使用することができる。慢性光線性皮膚炎(CAD)は、光過敏性皮膚炎/光線性類細網症症候群(PD/AR)とも称される。CADは、皮膚が、特に太陽光又は人工光に曝された領域において、炎症を起こす症状である。一般に、CAD患者は、皮膚と接触するある種の物質、特に種々の花、木、香料、日焼け止め及びゴム化合物に対してアレルギーを有する。水ほう性類天ほうそうとは、体幹及び四肢表面の大きなほう疹の形成を特徴とする皮膚疾患を指す。円形脱毛症とは、頭皮又は髭における完全にはげた円形部分を特徴とする脱毛を指す。
【0355】
E. 他のTNFα関連障害
一実施形態においては、本発明は、TNFα活性が有害であるTNFα関連障害が治療されるように、TNFα抗体を患者に投与することを含む、TNFα関連障害を治療する複数回可変投薬方法を特徴とする。TNFα活性が有害であるTNFα関連障害の例を以下で更に考察する。
【0356】
1. 若年性関節炎
腫よう壊死因子は、若年性関節リウマチを含めて、若年性関節炎の病態生理に関係する(Grom et al.(1996) Arthritis Rheum. 39:1703、Mangge et al.(1995) Arthritis Rheum. 8:211)。一実施形態においては、本発明の方法及び組成物を用いた若年性関節リウマチの治療にTNFα抗体を使用する。
【0357】
本明細書では「若年性関節リウマチ」又は「JRA」という用語は、関節又は結合組織に損傷を与え得る、16歳未満で発症する慢性炎症性疾患を指す。JRAは、若年性慢性多発性関節炎及びスティル病とも称される。
【0358】
JRAは、16歳以下の子供において6週間を超える関節の炎症及び硬直を引き起こす。炎症は、関節における発赤、腫脹、ほてり及び痛みを引き起こす。あらゆる関節で発症する可能性があり、炎症は患部関節の移動度を制限し得る。JRAの1タイプは、内臓でも発症し得る。
【0359】
JRAは、関与する関節数、症候、及び血液検査によって見られるある種の抗体の有無によって、3タイプに分類されることが多い。これらの分類は、疾患の進行の仕方、及び内臓又は皮膚が発症しているかどうかを医師が決定するのに役立つ。JRAの分類は以下を含む。
【0360】
a. 4個以下の関節が発症する、少関節性JRA。少関節性は、JRAの最も一般的な形態であり、膝などの大きい関節が一般に発症する。
【0361】
b. 5個以上の関節が発症する、多関節性HRA。手足の関節などの小関節が最も一般的には関与するが、この疾患は大きい関節でも発症し得る。
【0362】
c. 全身的JRAは、関節腫脹、発熱、光による皮疹(light skin rash)を特徴とし、心臓、肝臓、ひ臓、リンパ節などの内臓でも発症し得る。全身的JRAはスティル病とも称されるこれらの子供のうちわずかな割合が、多数の関節における関節炎を発症し、成人期まで続く重篤な関節炎を有し得る。
【0363】
2. 子宮内膜症
子宮内膜症の女性は腹膜のTNFレベルが上昇するので、腫よう壊死因子は子宮内膜症の病態生理に関係する(Eisermann et al.(1988) Fertil Steril 50:573、Halme(1989) Am J Obstet Gynecol 161:1718、Mori et al.(1991) Am J Reprod Immunol 26:62、Taketani et al.(1992) Am J Obstet Gynecol 167:265、Overton et al.(1996) Hum Reprod 1996;11:380)。一実施形態においては、TNFα抗体を子宮内膜症の治療に使用することができる。本明細書では「子宮内膜症」という用語は、通常は子宮を覆う組織(子宮内膜)が体の他の領域において成長し、とう痛、不規則な出血を引き起こし、しばしば不妊を引き起こす症状を指す。
【0364】
3. 前立腺炎
慢性前立腺炎及び慢性骨盤痛の男性は、対照よりも精液中のTNF及びIL−1レベルがかなり高いので、腫よう壊死因子は前立腺炎の病態生理に関係する(Alexander et al.(1998) Urology 52:744、Nadler et al.(2000) J Urol 164:214、Orhan et al.(2001) Int J Urol 8:495)。また、前立腺炎のラットモデルにおいても、TNFレベルが対照よりも増加した(Asakawa et al.(2001) Hinyokika Kiyo 47:459、Harris et al.(2000) Prostate 44:25)。一実施形態においては、本発明のTNFα抗体を前立腺炎の治療に使用する。
【0365】
本明細書では「前立腺炎」という用語は、前立腺の炎症を指す。前立腺炎は、骨盤痛症候群とも称される。前立腺炎は、非細菌性前立腺炎、急性前立腺炎、細菌性前立腺炎及び急性前立腺炎を含めて、多様な形態で出現する。急性前立腺炎とは、突然発症する前立腺の炎症を指す。急性前立腺炎は、通常、前立腺の細菌感染によって引き起こされる。慢性前立腺炎は、徐々に発達し、長期間続き、一般にわずかな症候しか示さない前立腺炎症である。慢性前立腺炎も、通常、細菌感染によって引き起こされる。
【0366】
4. 脈絡膜新血管新生
腫よう壊死因子は、脈絡膜新血管新生の病態生理に関係する。例えば、外科的に切除された脈絡膜新生血管膜においては、新生血管はTNFとIL−1の両方で陽性染色された(Oh H et al.(1999) Invest Ophthalmol Vis Sci 40:1891)。一実施形態においては、TNFα抗体を脈絡膜新血管新生の治療に使用する。本明細書では「脈絡膜新血管新生」という用語は、脈絡膜からブルッフ膜の裂け目を通って網膜下色素上皮(sub−RPE)又は網膜下腔中に生じる、新血管の成長を指す。脈絡膜新血管新生(CNV)は、その症状を有する患者における視力喪失の主原因である。
【0367】
5. 坐骨神経症
腫よう壊死因子は、坐骨神経症の病態生理に関係する(Ozaktay et al.(2002) Eur Spine J. 11:467、Brisby et al.(2002) Eur Spine J. 11:62)。一実施形態においては、本発明のTNFα抗体を坐骨神経症の治療に使用する。本明細書では「坐骨神経症」という用語は、坐骨神経の損傷によって引き起こされる、脚の運動障害及び/又は感覚障害を含む症状を指す。坐骨神経症は、一般に、坐骨神経の神経障害、及び坐骨神経機能不全とも称される。坐骨神経症は、末梢神経障害の一形態である。坐骨神経症は、脚の背面にある坐骨神経が損傷を受けたときに起こる。坐骨神経は、膝及び下腿の背面の筋肉を制御し、大腿の背面、下腿の一部、及び足底に感覚を与える。坐骨神経症は、腰部椎間板ヘルニア、脊髄狭窄、変性円板疾患、峡部脊椎すべり症(isthmic spondyloisthesis)及び梨状筋症候群(piniformis syndrome)を含めて、別の障害の徴候であり得る。
【0368】
6. シェーグレン症候群
腫よう壊死因子は、シェーグレン症候群の病態生理に関係する(Koski et al.(2001) Clin Exp Rheumatol. 19:131)。一実施形態においては、本発明のTNFα抗体をシェーグレン症候群の治療に使用する。本明細書では「シェーグレン症候群」という用語は、口内乾燥、流涙の減少、及び他の乾燥粘膜を特徴とする全身性炎症性障害を指し、リウマチ様関節炎などの自己免疫性リウマチ性障害に付随することが多い。眼及び口の乾燥は、この症候群の最も一般的な症候である。これらの症候は、単独で起こる場合もあれば、リウマチ様関節炎又は他の結合組織病に付随した症候と一緒に起こる場合もある。唾液腺の腫脹を伴うこともある。他の器官も発症し得る。この症候群は、リウマチ様関節炎、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎及び他の疾患に付随し得る。
【0369】
7. ブドウ膜炎
腫よう壊死因子は、ブドウ膜炎の病態生理に関係する(Wakefield and Lloyd(1992) Cytokine 4:1、Woon et al.(1998) Curr Eye Res. 17:955)。一実施形態においては、本発明のTNFα抗体をブドウ膜炎の治療に使用する。本明細書では「ブドウ膜炎」という用語は、ブドウ膜の炎症を指す。ブドウ膜は、強膜と網膜の間の層であり、虹彩、毛様体及び脈絡膜を含む。ブドウ膜炎は、虹彩炎、扁平部炎、脈絡膜炎(chroiditis)、脈絡網膜炎、前部ブドウ膜炎及び後部ブドウ膜炎とも一般に称される。ブドウ膜炎の最も一般的な形態は、前部ブドウ膜炎である。前部ブドウ膜炎は、眼の前部における炎症を含み、通常、虹彩に特異的である。この症状は、虹彩炎と呼ばれることが多い。一実施形態においては、ブドウ膜炎という用語は、ブドウ膜の炎症を指し、自己免疫疾患に付随する炎症、すなわち、自己免疫性ブドウ膜炎を含まない。
【0370】
8. 湿性黄斑変性症
腫よう壊死因子は、湿性黄斑変性症の病態生理に関係する。一実施形態においては、本発明のTNFα抗体を湿性黄斑変性症の治療に使用する。本明細書では「湿性黄斑変性症」という用語は、網膜黄斑(眼の網膜の中心部)で発症する障害を指し、視力を低下させ、中心視覚の喪失をもたらし得る。湿性黄斑変性症患者では、出血、腫脹及びはん痕組織をもたらす新しい血管が網膜下に発生する。
【0371】
9. 骨粗しょう症
腫よう壊死因子は、骨粗しょう症の病態生理に関係する(Tsutsumimoto et al.(1999) J Bone Miner Res. 14:1751)。骨粗しょう症は、骨密度の漸進的な低下、及び骨組織の薄化を特徴とする障害を指すのに使用される。骨粗しょう症は、体が新しい骨を十分に形成しないとき、又は過剰の古い骨が体に再吸収されるとき、又はこれら両方のときに起こる。本発明のTNFα抗体若しくはその抗原結合性フラグメントは、骨粗しょう症の治療に使用することができる。
【0372】
10. 骨関節炎
腫よう壊死因子は、骨関節炎の病態生理に関係する(Venn et al.(1993) Arthritis Rheum. 36:819、Westacott et al.(1994) J Rheumatol. 21:1710)。骨関節炎(OA)は、肥厚性骨関節炎、骨関節症及び変形性関節症とも称される。OAは、骨格関節の慢性変性疾患であり、すべての年齢の成人において、特定の関節、一般には膝、腰部、手関節及び脊椎で発症する。OAは、「潰よう」又はクレーターの発生を伴う関節軟骨の変性及び薄化、骨増殖体形成、縁部の骨の肥厚化、滑膜の変化、並びに患部関節の腫脹を含めて、幾つかの以下の徴候を特徴とする。また、骨関節炎は、特に長期間の活動後のとう痛及び硬直を伴う。本発明の抗体若しくはその抗原結合性フラグメントは、骨関節炎の治療に使用することができる。骨関節炎のX線写真の特徴としては、関節腔の狭小化、軟骨下硬化、骨増殖症、肋軟骨下嚢胞形成、関節遊離体(loose osseous body)(又は「関節マウス」)などが挙げられる。
【0373】
骨関節炎の治療に使用される薬物療法としては、種々の非ステロイド性抗炎症性薬物(NSAID)などが挙げられる。また、Celebrex、Vioxx、Bextra及びエトリコキシブを含めて、COX 2阻害剤もOAの治療に使用される。関節に直接注射するステロイドも、炎症及びとう痛の軽減に使用することができる。本発明の一実施形態においては、本発明のTNFα抗体をNSAID、COX2阻害剤及び/又はステロイドと組み合わせて投与する。
【0374】
11. その他
本発明の方法は、TNFα活性が有害である種々の他の障害の治療に使用することもできる。TNFα活性が病態生理に関係し、したがって本発明の抗体又は抗体部分を用いて治療することができる、他の疾患及び障害の例としては、炎症性骨障害、骨吸収疾患、凝固障害、火傷、再かん流傷害、ケロイド形成、はん痕組織形成、発熱、歯周病、肥満、放射毒性、年齢関連性悪液質、アルツハイマー病、脳浮腫、炎症性脳傷害、癌、慢性疲労症候群、皮膚筋炎、スティーブンス ジョンソン症候群、ヤリッシュ ヘルクスハイマー反応などの薬物反応、脊髄中及び/又は脊髄周囲の浮腫、家族性周期熱、フェルティ症候群、線維症、糸球体腎炎(glomerulonephritides)(例えば、溶連菌感染後糸球体腎炎又はIgA腎症)、プロテーゼのゆるみ、顕微鏡的多発性血管炎、混合性結合組織病、多発性骨髄腫、癌及び悪液質、多臓器障害、骨髄異形成症候群、睾丸炎骨溶解(orchitism osteolysis)、急性、慢性及びすい膿ようを含めたすい炎、多発性筋炎、進行性腎不全、偽痛風、壊そ性膿皮症、再発性多発性軟骨炎、リウマチ性心疾患、サルコイドーシス、硬化性胆管炎、発作、胸腹部大動脈りゅう修復(TAAA)、TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)、黄熱病ワクチン接種に関係する症候、耳に関連する炎症性疾患、耳の慢性炎症、胆脂腫のある慢性中耳炎又は胆脂腫のない慢性中耳炎、小児の耳の炎症、筋炎(myotosis)、卵巣癌、結腸直腸癌、誘発された炎症性症候群(例えば、IL−2投与後の症候群)に関連する治療、並びに再かん流傷害に関連する障害が挙げられる。
【0375】
本発明の方法は、以下の疾患の治療にも使用することができる:後天性免疫不全症候群、後天性免疫不全関連疾患、後天性悪性貧血、急性冠動脈症候群、急性及び慢性痛(とう痛の種々の形態)、急性特発性多発性神経炎、臓器移植に付随する急性免疫疾患、臓器移植に付随する急性又は慢性免疫疾患、急性炎症性脱髄性多発神経根筋障害、急性虚血、急性肝疾患、急性リウマチ熱、急性横断性脊髄炎、アジソン病、成人(急性)呼吸窮迫症候群、成人スティル病、アルコール性肝硬変、アルコール誘発性肝障害、アレルギー疾患、アレルギー、脱毛症、円形脱毛症、アルツハイマー病、アナフィラキシー、強直性脊椎炎、強直性脊椎炎関連肺疾患、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、動脈硬化症、関節症、ぜん息、アテローム性疾患/動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、アトピー性アレルギー、アトピー性湿疹、アトピー性皮膚炎、萎縮性自己免疫性甲状腺機能低下症、自己免疫性水ほう症、自己免疫性皮膚炎、自己免疫性糖尿病、ストレプトコッカス感染に付随する自己免疫異常、自己免疫性腸疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性聴覚損失、自己免疫性リンパ球増殖性症候群(ALPS)、自己免疫性低血糖症、自己免疫性心筋炎、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性早期卵巣機能不全、自己免疫性血小板減少症(AITP)、自己免疫性甲状腺疾患、自己免疫性ブドウ膜炎、閉塞性細気管支炎、ベーチェット病、眼けん炎、気管支拡張症、水ほう性類天ほうそう、悪液質、循環器疾患、破局的な抗リン脂質抗体症候群、セリアック病、頚椎症、クラミジア、胆汁うっ滞(choleosatatis)、慢性活動性肝炎、慢性好酸球性肺炎、慢性疲労症候群、臓器移植に付随する慢性免疫疾患、慢性虚血、慢性肝疾患、慢性粘膜皮膚カンジダ症、はん痕性類天ほうそう、多発性硬化症のリスクがある最初のエピソードからなる症候群(clinically isolated syndrome)(CIS)、分類不能型免疫不全症(分類不能型低ガンマグロブリン血症)、結合組織病関連間質性肺疾患、結膜炎、クームス陽性溶血性貧血、小児期発症精神障害、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、クローン病、原因不明性自己免疫性肝炎、特発性線維化肺胞炎、涙嚢炎、うつ病、皮膚炎 強皮症、皮膚筋炎、皮膚筋炎/多発性筋炎関連肺疾患、糖尿病性網膜症、真性糖尿病、拡張型心筋症、円板状エリテマトーデス、椎間板ヘルニア、椎間板脱出症、播種性血管内凝固、薬物性肝炎、薬物性間質性肺疾患、薬剤性免疫性溶血性貧血、心内膜炎、子宮内膜症、眼内炎、腸疾患性滑膜炎、上強膜炎、多形性紅斑、重症多形性紅斑、女性不妊症、線維症、線維性肺疾患、妊娠性類天ほうそう、巨細胞性動脈炎(GCA)、糸球体腎炎、甲状腺腫性自己免疫性甲状腺機能低下症(橋本病)、グッドパスチャー症候群、痛風性関節炎、移植片対宿主病(GVHD)、グレーブス病、B群レンサ球菌(GBS)感染、ギラン バレー症候群(GBS)、ヘモシデローシス関連肺疾患、枯草熱、心不全、溶血性貧血、へノッホ シェーンライン紫斑病、B型肝炎、C型肝炎、ヒューズ症候群、ハンチントン舞踏病、甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症、特発性白血球減少症、特発性、血小板減少症、特発性パーキンソン病、特発性間質性肺炎、特異体質性肝疾患、IgE媒介性アレルギー、免疫溶血性貧血、封入体筋炎、感染症、感染性眼球炎症性疾患、炎症性腸疾患、炎症性脱髄疾患、炎症性心疾患、炎症性腎疾患、インスリン依存性糖尿病、間質性肺炎、IPF/UIP、虹彩炎、若年性慢性関節炎、若年性悪性貧血、若年性関節リウマチ、川崎病、角膜炎、乾性角結膜炎(Keratojuntivitis sicca)、クスマウル病又はクスマウル−マイアー病、ランドリー麻ひ、ランゲルハンス細胞組織球増殖症、線状IgA病、網状皮斑、ライム関節炎、リンパ性浸潤性肺疾患、黄斑変性症、特発性又は特定不能(NOS)の男性不妊症、悪性腫よう、腎臓の顕微鏡的血管炎、顕微鏡的多発性血管炎、混合性結合組織病関連肺疾患、Bechterev病、運動ニューロン障害、粘膜類天ほうそう、多発性硬化症(全サブタイプ:一次性進行型、二次性進行型、再発寛解型など)、多臓器不全、筋痛性脳炎/ロイヤルフリー病、重症筋無力症、骨髄異形成症候群、心筋梗塞、心筋炎、ネフローゼ症候群、神経根障害、神経障害、非アルコール性脂肪性肝炎、非A型非B型肝炎、視神経炎、臓器移植拒絶、骨関節炎、骨溶解、卵巣癌、卵巣機能不全、すい炎、寄生虫症、パーキンソン病、少関節性JRA、類天ほうそう、落葉状天ほうそう、尋常性天ぽうそう、末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)、末梢血管疾患(PVD)、末梢動脈疾患(PAD)、水晶体原性ブドウ膜炎、静脈炎、結節性多発性動脈炎(又は結節性動脈周囲炎)、多発性軟骨炎、リウマチ性多発筋痛、白毛症、多関節性JRA、多内分泌腺機能低下症候群、多発性筋炎、多内分泌腺機能低下I型及び多内分泌腺機能低下II型、リウマチ性多発筋痛(PMR)、感染後間質性肺疾患、炎症後間質性肺疾患、潅流後症候群、早期卵巣機能不全、原発性胆汁性肝硬変、原発性粘液水腫、原発性パーキンソン症、原発性硬化性胆管炎、原発性硬化性肝炎、原発性血管炎、前立腺癌、直腸癌及び造血器悪性腫よう(白血病及びリンパ腫)、前立腺炎、乾せん、1型乾せん、2型乾せん、乾せん性関節炎、乾せん性関節症、結合組織病に続発する肺高血圧症、結節性多発性動脈炎の肺症状、赤芽球ろう、原発性副腎不全、放射線線維症、反応性関節炎、ライター病、再発性視神経脊髄炎、特定不能の腎疾患、再狭窄、リウマチ様関節炎、リウマチ様関節炎関連間質性肺疾患、リウマチ性心疾患、SAPHO(滑膜炎、アクネ、膿ほう症、骨過形成及び骨髄炎)、サルコイドーシス、統合失調症、シュミット症候群、強皮症、続発性アミロイドーシス、ショック肺、強膜炎、坐骨神経症、続発性副腎不全、敗血症症候群、敗血症性関節炎、敗血症ショック、血清陰性関節症、シリコーン関連結合組織病、シェーグレン病関連肺疾患、シェーグレン症候群、スネドン−ウィルキンソン皮膚疾患、精子自己免疫、脊椎関節症、強直性脊椎炎、散発性、スティーブンス ジョンソン症候群(SJS)、スティル病、発作、交感性眼炎、全身性炎症反応症候群、全身性エリテマトーデス、全身性エリテマトーデス関連肺疾患、全身性硬化症、全身性硬化症関連間質性肺疾患、高安病/動脈炎、側頭動脈炎、Th2型及びTh1型媒介性疾患、甲状腺炎、毒素性ショック症候群、トキソプラスマ性網膜炎、中毒性表皮壊死症、横断性脊髄炎、TRAPS(腫よう壊死因子受容体、黒色表皮腫に伴うB型インスリン抵抗性、1型アレルギー反応、1型自己免疫性肝炎(古典的な自己免疫又はルポイド肝炎)、2型自己免疫性肝炎(抗LKM抗体肝炎)、II型糖尿病、潰よう性結腸炎性関節症、潰よう性大腸炎、じんま疹、通常型間質性肺炎(UIP)、ブドウ膜炎、血管炎性びまん性肺疾患、血管炎、春季カタル、ウイルス性網膜炎、白斑、フォークト−小柳−原田症候群(VKH症候群)、ウェゲナー肉芽腫症、湿性黄斑変性症、創傷治癒、エルシニア及びサルモネラ関連関節症。
【0376】
本発明の方法及び組成物において使用することができる障害の他の例は、米国公開番号第2004−0126372に記載されている。
【0377】
上記TNFα関連障害のすべては、必要に応じて、疾患の成人型と若年型の両方を含むと理解される。上記障害のすべては、疾患の慢性型と急性型の両方を含むとも理解される。また、本発明の複数回可変投与方法は、上記TNFα関連障害の各々の治療に単独で、又は互いに組み合わせて、例えばブドウ膜炎とループスの患者に、使用することができる。
【0378】
本発明は、包装材料と、アダリムマブなどのTNFα阻害剤が充填された注射器を含む自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)と、リウマチ様関節炎の治療に本発明の自動注射装置を用いたTNFα阻害剤の試験において、最も一般的な有害事象(AE)が気管支炎、過敏症、関節炎痛、咳及び鼻炎であったことを示す、包装材料に含まれるラベル又は添付文書とを含む製品も含む。
【0379】
本発明の自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)を用いて使用者に投与することができる生物学的薬剤の他の例としては、ヒトサイトカイン又は成長因子、例えば、TNF、LT、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−15、IL−16、IL−18、IL−21、IL−23、インターフェロン、EMAP−II、GM−CSF、FGF及びPDGFの抗体又は拮抗物質;CD2、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)、CD90、CTLA、又はCD154(gp39又はCD40L)を含めたこれらのリガンドなどの細胞表面分子に対する抗体;インターロイキン6(IL−6)受容体に対するActemra(トシリズマブ)ヒト化MAb;TNFα変換酵素(TACE)阻害剤;IL−1阻害剤(インターロイキン1変換酵素阻害剤、IL−1RAなど);インターロイキン11;IL−18抗体若しくは可溶性IL−18受容体又はIL−18結合タンパク質を含めたIL−18拮抗物質;非減少性抗CD4阻害剤;抗体、可溶性受容体又は拮抗性リガンドを含めた、共刺激経路CD80(B7.1)又はCD86(B7.2)の拮抗物質;TNFα、IL−1などの炎症誘発性サイトカインによるシグナル伝達を妨害する薬剤(例えば、IRAK、NIK、IKK、p38又はMAPキナーゼ阻害剤);IL−1β変換酵素(ICE)阻害剤;キナーゼ阻害剤などのT細胞シグナル伝達阻害剤;メタロプロテイナーゼ阻害剤;アンジオテンシン変換酵素阻害剤;可溶性サイトカイン受容体及びその誘導体(例えば、可溶性p55又はp75 TNF受容体及び誘導体p75TNFRIgG(Enbrel(商標)及びp55TNFRIgG(Lenercept))、sIL−1RI、sIL−1RII、sIL−6R);抗炎症性サイトカイン(例えば、IL−4、IL−10、IL−11、IL−13及びTGFb);リツキシマブ;IL−1 TRAP;MRA;CTLA4−Ig;IL−18 BP;抗IL−18;抗IL15;IDEC−CE9.1/SB 210396(非減少性霊長類化抗CD4抗体、IDEC/SmithKline。例えば、Arthritis & Rheumatism(1995) Vol.38, S185参照);DAB 486−IL−2及び/又はDAB 389−IL−2(IL−2融合タンパク質、Seragen。例えば、Arthritis & Rheumatism(1993) Vol. 36, 1223参照);抗Tac(ヒト化抗IL−2Ra;Protein Design Labs/Roche);IL−4(抗炎症性サイトカイン;DNAX/Schering);IL−10(SCH 52000;組換えIL−10、抗炎症性サイトカイン;DNAX/Schering);IL−10及び/又はIL−4作動物質(例えば、作動物質抗体);IL−1RA(IL−1受容体拮抗物質;Synergen/Amgen);アナキンラ(Kineret(登録商標)/Amgen);TNF−bp/s−TNF(可溶性TNF結合タンパク質。例えば、Arthritis & Rheumatism(1996) Vol.39, No.9(補遺), S284;Amer. J. Physiol. − Heart and Circulatory Physiology(1995) Vol.268, pp.37−42);R973401(ホスホジエステラーゼIV型阻害剤。例えば、Arthritis & Rheumatism(1996) Vol.39, No.9(補遺), S282);MK−966(COX−2阻害剤。例えば、Arthritis & Rheumatism(1996) Vol.39, No.9(補遺), S81);イロプロスト(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996) Vol.39, No.9(補遺), S82参照);zap−70及び/又はlck阻害剤(チロシンキナーゼzap−70又はlckの阻害剤);VEGF阻害剤及び/又はVEGF−R阻害剤(血管内皮細胞成長因子又は血管内皮細胞成長因子受容体の阻害剤;血管新生の阻害剤);TNFコンバターゼ阻害剤;抗IL−12抗体;抗IL−18抗体;インターロイキン11(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996) Vol.39, No.9(補遺), S296参照);インターロイキン13(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996) Vol.39, No.9(補遺), S308参照);インターロイキン17阻害剤(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996) Vol.39, No.9(補遺), S120参照);抗胸腺細胞グロブリン;抗CD4抗体;CD5毒素;ICAM−1アンチセンスホスホロチオアートオリゴデオキシヌクレオチド(ISIS 2302;Isis Pharmaceuticals, Inc.);可溶性補体受容体1(TP10;T Cell Sciences, Inc.)、エファリツマブ、及び抗IL12抗体(ABT 874)を含めた抗IL2R抗体、;抗IL18抗体(ABT 325);LCKの小分子阻害剤;COTの小分子阻害剤;抗IL1抗体;MK2の小分子阻害剤;抗CD19抗体;CXCR3の小分子阻害剤;CCR5の小分子阻害剤;CCR11抗E/Lセレクチン抗体の小分子阻害剤;P2X7の小分子阻害剤;IRAK−4の小分子阻害剤;グルココルチコイド受容体の小分子作動物質;抗C5a受容体抗体;C5a受容体の小分子阻害剤;抗CD32抗体;並びに治療タンパク質としてのCD32が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0380】
本願の自動注射装置(例えば、自動注射器ペン)を用いて、使用者に投与することができる生物学的薬剤の他の例としては、KDR(ABT−123)の小分子阻害剤、Tie−2の小分子阻害剤;メトトレキサート;プレドニゾン;セレコキシブ;葉酸;硫酸ヒドロキシクロロキン;ロフェコキシブ;エタネルセプト;インフリキシマブ;アナキンラ(Kineret(登録商標)/Amgen);レフルノミド;ナプロキセン;バルデコキシブ;スルファサラジン;イブプロフェン;メチルプレドニゾロン;メロキシカム;酢酸メチルプレドニゾロン;金チオリンゴ酸ナトリウム;アスピリン;アザチオプリン;トリアムシノロンアセトニド;ナプシル酸プロポキシフェン/apap;葉酸塩;ナブメトン;ジクロフェナク;ピロキシカム;エトドラク;ジクロフェナクナトリウム;オキサプロジン;オキシコドンhcl;ヒドロコドン酒石酸水素塩/apap;ジクロフェナクナトリウム/ミソプロストール;フェンタニル;アナキンラ、ヒト組換え;トラマドールhcl;サルサラート;スリンダク;シアノコバラミン/fa/ピリドキシン;アセトアミノフェン;アレンドロン酸ナトリウム;プレドニゾロン;硫酸モルヒネ;塩酸リドカイン;インドメタシン;硫酸グルコサミン/コンドロイチン;シクロスポリン;スルファジアジン;アミトリプチリンhcl;オキシコドンhcl/アセトアミノフェン;オロパタジンhcl;ミソプロストール;ナプロキセンナトリウム;オメプラゾール;ミコフェノール酸モフェチル;シクロホスファミド;リツキシマブ;IL−1 TRAP;MRA;CTLA4−IG;IL−18 BP;ABT−874;ABT−325(抗IL 18);抗IL 15;BIRB−796;SCIO−469;VX−702;AMG−548;VX−740;ロフルミラスト;IC−485;CDC−801;並びにメソプラム、クラリスロマイシン(Biaxin(登録商標))、シプロフロキサシン(Cipro(登録商標))及びメトロニダゾール(Flagyl(登録商標))を含めた抗生物質、メサラミン、プレドニゾン、アザチオプリン、メルカプトプリン、インフリキシマブ、ブデソニド、スルファサラジン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、ジフェノキシラート/atrop sulf、塩酸ロペラミド、メトトレキサート、オメプラゾール、葉酸塩、シプロフロキサシン/デキストロース−水、ヒドロコドン酒石酸水素塩/apap、テトラサイクリン塩酸塩、フルオシノニド、メトロニダゾール、チメロサール/ホウ酸、硫酸ヒヨスチアミン、コレスチラミン/スクロース、塩酸シプロフロキサシン、塩酸メペリジン、塩酸ミダゾラム、オキシコドンhcl/アセトアミノフェン、塩酸プロメタジン、リン酸ナトリウム、スルファメトキサゾール/トリメトプリム、セレコキシブ、ポリカルボフィル、ナプシル酸プロポキシフェン、ヒドロコルチゾン、マルチビタミン剤、バルサラジド二ナトリウム、リン酸コデイン/apap、コレセベラムhcl、シアノコバラミン、葉酸、レボフロキサシン、ナタリズマブ、メチルプレドニゾロン、インターフェロンガンマ、サルグラモスチム(GM−CSF)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、Celebrex(登録商標)、Vioxx(登録商標)及びBextra(登録商標)を含めたCOX 2阻害剤、エトリコキシブ、イブプロフェン、ジクロフェナク及びミソプロストール、ナプロキセン、メロキシカム、インドメタシン、ジクロフェナク、セレコキシブ、ロフェコキシブ、スルファサラジン、プレドニゾン、メトトレキサート、アザチオプリン、ミノサイクリン、プレドニゾン、エタネルセプト及びインフリキシマブ;ロフェコキシブ;セレコキシブ;葉酸;スルファサラジン;ナプロキセン;レフルノミド;酢酸メチルプレドニゾロン;インドメタシン;硫酸ヒドロキシクロロキン;スリンダク;プレドニゾン;増強ジプロピオン酸ベタメタゾン;インフリキシマブ;メトトレキサート;葉酸塩;トリアムシノロンアセトニド;ジクロフェナク;ジメチルスルホキシド;ピロキシカム;ジクロフェナクナトリウム;ケトプロフェン;メロキシカム;プレドニゾン;メチルプレドニゾロン;ナブメトン;トルメチンナトリウム;カルシポトリエン;シクロスポリン;ジクロフェナク;ナトリウム/ミソプロストール;フルオシノニド;硫酸グルコサミン;金チオリンゴ酸ナトリウム;ヒドロコドン;酒石酸水素塩/apap;イブプロフェン;リセドロナートナトリウム;スルファジアジン;チオグアニン;バルデコキシブ;アレファセプト;RAPTIVA(登録商標)(エファリツマブ)、KDR(ABT−123)の小分子阻害剤、Tie−2の小分子阻害剤、カルシポトリエン、プロピオン酸クロベタゾール、トリアムシノロンアセトニド、プロピオン酸ハロベタゾール、タザロテン、メトトレキサート、フルオシノニド、増強ジプロピオン酸ベタメタゾン、フルオシノロン、アセトニド、アシトレチン、タールシャンプー、吉草酸ベタメタゾン、フランカルボン酸モメタゾン、ケトコナゾール、プラモキシン/フルオシノロン、吉草酸ヒドロコルチゾン、フルランドレノリド、尿素、ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール/emoll、プロピオン酸フルチカゾン、アジスロマイシン、ヒドロコルチゾン、保湿処方(moisturizing formula)、葉酸、デソニド、コールタール、酢酸ジフロラゾン、エタネルセプト、葉酸塩、乳酸、メトキサレン、hc/次没食子酸ビスマス/znox/resor、酢酸メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、日焼け止め、サリチル酸、ハルシノニド、アントラリン、ピバル酸クロコルトロン、石炭抽出物、コールタール/サリチル酸、コールタール/サリチル酸/硫黄、デスオキシメタゾン、ジアゼパム、皮膚軟化薬、ピメクロリムス皮膚軟化薬、フルオシノニド/皮膚軟化薬、鉱油/ヒマシ油/na lact、鉱油/落花生油、石油/ミリスチン酸イソプロピル、ソラレン、サリチル酸、石けん/トリブロムサラン、チメロサール/ホウ酸、セレコキシブ、アレファセプト、RAPTIVA(登録商標)(エファリツマブ)、タクロリムス、ピメクロリムス、PUVA、並びにスルファサラジンが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0381】
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、これらの実施例を限定的なものと解釈すべきではない。本願を通して引用するすべての参考文献、特許及び特許出願公報の内容を参照により本明細書に組み入れる。
【0382】
以下の実施例は、本発明の例示的な自動注射装置(例えば、自動注射器又は自動注射ペン)を用いた試験を記述する。以下の実施例に記載の例示的な自動注射器ペンは、ヒトTNFα抗体(例えば、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標)))を含み、以下ではしばしば「HUMIRA(登録商標)ペン」と称する。
【実施例1】
【0383】
TNFα阻害剤を投与する自動注射装置の使用
試験の概要/要約
アダリムマブは、生物学的に同等な2つの単回使用注射装置、すなわち、すぐに使用できる充填済み注射器と一体型使い捨て送達系の自動注射ペンによる皮下投与用の治療用モノクローナル抗体である。ペンは、医薬品の長期皮下投与を要する患者によって注射器よりも好まれることが判明したが、慢性炎症性疾患患者における生物学的製剤の使用において好み及び痛みに関するデータはない。したがって、以下の試験(TOUCH試験)の目的は、アダリムマブの2つの送達系の注射部位の痛み、安全性、及び患者の好みを評価することであった。
【0384】
TOUCH試験(臨床現場におけるHUMIRA自動注射器対充填済み注射器の有用性試験(Trial Of Usability in Clinical settings of HUMIRA Autoinjector vs. Prefilled Syringe))の目的は、既に使用しているHUMIRA充填済み注射器、又は新しいHUMIRAペンのどちらの送達方法をリウマチ様関節炎患者が好むかを評価することであった。
【0385】
手短に述べると、リウマチ様関節炎(RA)患者を第二相多施設非盲検シングルアーム逐次試験に登録した。患者は、3回のモニターされた来診、すなわち、来診1(注射器)、来診2及び3(ペン)の各々において、標準用量のアダリムマブを隔週で皮下に自己投与した。各来診時に、患者は、2つの時点で痛みを採点して、各送達系に対する印象及び好みを報告した。試験全体及び最終試験投与後70日にわたって安全性を評価した。
【0386】
全体で52名の患者が試験に登録し、全3回の来診を終了した。40名の患者(76.9%)はペンの方が注射器よりも痛みが少ないと報告し、4名の患者(7.7%)は注射器の方が痛みが少ないとし、8名の患者(15.4%)は好みがなかった。来診2及び3においては、患者は、注射直後(それぞれ−1.4及び−1.6、p<0.01)及び注射後15−30分間(両方の時点で−0.6、p<0.01)の注射部位の痛みが平均してかなり減少した。患者の約90%は、ペンの方が使用が簡便で容易であるとした。患者は、来診1から来診2及び来診1から来診3で注射痛スコアが統計的に有意に減少した。注射器による注射後の2週間と2回のペン注射後の4週間とのAEのタイプ及び累積度数は同等であった。5名の患者(9.6%)は、注射器注射後に気管支炎、過敏症、関節炎痛、咳及び鼻炎を含めたAEを報告した。ペン注射後は、8名(15.4%)であった。中止につながるAEはなかった。したがって、両方の送達系は安全であり、有害事象の有意差は、どちらの送達系でも報告されなかった。また、46名の患者(88.5%)はペンを好み、3名(5.8%)は注射器を好み、3名(5.8%)は好みがなかった。全体的に見て、患者は、ペンの方が、使用が容易であり、より簡便であり、注射に要する時間が短く、より安全であると評価した。
【0387】
結論として、患者は、ペンによってアダリムマブを少ない痛みで自己投与し、注射器よりも好んだ。更に、患者は、ペンが容易に使用でき、より簡便であることを認めた。2つの生物学的に同等な送達系では、安全性事象の差は報告されなかった。
【0388】
詳細な試験
以下の試験を実施して、(アダリムマブとも称される)HUMIRA(登録商標)充填済み注射器(PFS)又は新しいHUMIRA(登録商標)ペンのどちらの送達方法を(本明細書では使用者とも称する)患者が好むかを評価した。以下の試験を実施して、2つの送達系の注射部位の痛みレベルを含めて、2つの投与方式も比較した。
【0389】
試験設計は、充填済み注射器を用いてアダリムマブを投与した経験を有する患者を含む、第二相多施設非盲検試験を含んだ。18歳を超え、1987年改訂の米国リウマチ学会(American College of Rheumatology)の判定基準に従ってRAと診断され、充填済み注射器を用いてアダリムマブ40mgを少なくとも3か月間隔週で皮下に自己投与した患者は、登録する資格があった。主要な除外基準としては、悪性腫ようの病歴を有する患者、免疫無防備状態である、又はヒト免疫不全症ウイルス、脱髄疾患、若しくは十分管理されていない慢性疾患の病歴を有する患者、治療を要する活動性の感染を有する患者、活動性の結核を有する、又は最近6か月以内に精製ツベルクリン検査が陽性であった患者、30日以内又は5半減期以内に生の(live)治験薬を投与された患者、皮下注射によって投与された、アダリムマブを除く任意の医薬品を定期的に用いている患者、及び妊娠中又は授乳中の女性が挙げられた。この試験における患者は、標準抗リウマチ薬療法の試験前投与量を続けた。
【0390】
患者(n=52)は、HUMIRA(登録商標)充填済み注射器を用いて第0週に自己注射し、続いてHUMIRA(登録商標)ペンを第2週及び第4週に注射し、全3時点において質問表を完成した。患者は、全般的好み、使いやすさ、簡便性、注射終了時間、感覚的安全性及び痛みを含めて、幾つかの特質について注射の好みを評価した。
【0391】
試験は、患者によるアダリムマブの自己投与のための隔週3回の試験来診を含んだ。各注射は、来診ごとに医療専門家の監督下で投与された。来診1では、患者は、皮膚に対して45度の角度で保持された充填済み注射器を用いてアダリムマブ40mgを皮下に自己投与した。来診2では、患者は、ペンを用いたアダリムマブの適切な投与について、また、注射前に薬液を見るための窓、及び注射完了を示す黄色の帯、偶発的な誤発射を防止するための安全蓋の逐次的な開口、並びに装置の適切な位置決め、把持、及びワンタッチの起動を含めたペンの特徴について(
図25)、試験員による指導を受けた。来診2及び3では、患者は、皮膚に対して90度の角度で保持されたペンによってアダリムマブを自己投与した。患者は、来診1において、大腿又は腹部を選択して自己注射した。来診2及び3において、各注射を以前の注射部位から少なくとも2インチ保ちつつ、体の同じ注射場所を確実に用いるように監視した。
【0392】
患者は、以下の手順に従ってペンを使用した。すなわち、まず、ペン注射前に使用説明ビデオを見て、5段階の小冊子を読むことによって、患者をペンに習熟させた。患者は、ペン注射前に実演用ペンを用いて、装置の使用も練習した。HUMIRA(登録商標)ペンを用いる段階は、ペンの準備を含み、ペンを箱から取り出し、15−20分間放置して室温にした。次いで、患者は、注射前にアルコール消毒綿で体を拭いた。注射部位を選択し、準備した。患者が起動ボタンを押すように、ペンを用いてHUMIRA(登録商標)を注射した。「カチッという音」が聞こえると、注射が始まり、約10秒続いた。10秒後、又は黄色の帯が窓中で停止すると、注射が終了した。
【0393】
試験の基準人口統計値は、HUMIRA(登録商標)PFSを3−32か月、平均15.4か月使用している患者を含んだ。患者は、PFSによる自己注射が1分未満から5分、平均1分未満であると報告した。基準評価は、アダリムマブ治療期間、アダリムマブ自己投与期間、通常の注射部位、注射時間、及び注射器によるアダリムマブ投与の全般的印象を含んだ。注射部位の痛みを、注射後2つの時点、すなわち、注射直後と注射後15−30分において、0(無痛)から10(最悪の痛み)までの11点数値評価尺度に基づいて採点した(Huskisson Lancet. 1974;304:1127−1131及びJorgensen et al. Annals of Pharmacotherapy. 1996;30:729−732)。各注射後、患者は、注射器とペンの全般的印象も「極めて好ましくない」、「好ましくない」、「中間」、「好ましい」又は「極めて好ましい」として評価した。
【0394】
第0週では、患者は、以下の情報、すなわち、HUMIRA(登録商標)を常用している時間、典型的な注射部位、典型的な注射時間、及び注射器の全般的印象の質問を受けた。最も一般的な注射部位は、腹部(25/52)及び大腿(22/52)であった。
【0395】
患者のし好調査を、最終来診後、又は試験の早期終了後に行った。調査では、患者に全般的好み(注射器、ペン又は好みなし)の評価を依頼し、好みの理論的根拠を質問した。患者の好み(注射器、ペン又は好みなし)を以下のカテゴリー、すなわち、使いやすさ、簡便性、注射投与時間、安全性、及び痛みの減少の各々についても評価した。患者は、同じ価格で利用可能な場合にペンに切り換える見込み(「極めて見込みがない」、「見込みがない」、「中間」、「見込みがある」又は「極めて見込みがある」)、及びアダリムマブを服用する別の患者にペンを勧める見込み(上記と同じ評点)も評価するように依頼された。
【0396】
1回目及び3回目の注射(第2週及び第4週)においては、患者は、ペンを用いた即時の痛み(0−10段階、0=無痛及び10=最悪の痛み)、15−30分における痛みの量(0−10段階)、全般的印象、注射部位、湿式又は通常の注射を受けたことがあるかどうか、ペンの使用説明の遵守、及び追加のコメントを評価するように依頼された。
【0397】
試験の最後に、患者は、以下の特質、すなわち、全般的好み及び理由、使いやすさ、簡便性、注射時間、安全性、痛みの減少に関する特定の好み、患者がPFDからペンに切り換える見込みがあるかどうか、並びに患者が、アダリムマブを使用する他の患者にペンを勧める見込みがあるかどうかを判定する最終し好質問を受けた。
【0398】
安全性を、(基準用)ベースラインにおいて、また、試験全体を通して、臨床検査室データ及び理学的検査の知見を用いて評価した。患者は、試験治療下で発現した有害事象(AE)報告について、患者又は研究者によって自発的に報告されたかどうか、評定された。重篤なAEは、Medical Dictionary for Regulatory Activities(MedDRA version 9.0)に従って、致命的若しくは生命にかかわるAE、入院患者の入院の延長が必要なAE、永続的能力障害、重大な能力障害、先天性異常、出生時欠損、流産若しくは人工妊娠中絶をもたらすAE、又は別の重篤な予後を防止するために医学的/外科的介入が必要なAEとして定義された。AEを有する試験患者の数及び割合を、最後の試験来診後最高70日(アダリムマブの推定半減期の5倍)まで、署名入りのインフォームドコンセントから報告した。薬物安全性及び耐容性の評価も、注射器及びペンの投与後、それぞれ2及び4週間を比較した。定常的な血液学的試験、血清化学的試験、血清学的試験及び尿検査試験を、認定された臨床検査室によって実施した。検査室基準範囲を試験開始前に入手し、研究者によってスクリーニング目的で再検討した。
【0399】
充填済み注射器とペンの投与後の注射部位の痛みスコアの同等性を、同等性限界±5、(差の)標準偏差1.25、及び片側、第1種の過誤率0.025を仮定して、80%の統計的検出力で実証するために、約50名の患者の標本サイズが必要であった。好み及び注射部位の痛みの評価は、注射器による1回の注射とペンによる少なくとも1回の注射を受けた全参加者を網羅した。基準特性、好み、及び他の分類上のデータを平均及び百分率によって要約した。「正確な」95%CIを計算して、ペンを好む患者又は好みのない患者と充填済み注射器を好む患者とを比較した。注射部位の痛みの基準からの変化を、対応スチューデントt検定及び95%CIの計算によって分析した。安全性分析は、少なくとも1回の注射を受けた全患者を網羅した。各装置を用いたAE率をマクネマー検定によって比較した。すべての統計的検定を統計的有意性0.05レベルで実施した。UNIX(登録商標) Version 11.0オペレーティングシステムを用いたSAS(登録商標)、Release 8.2(SAS Institute, Inc、Cary、North Carolina)によって統計解析を実施した。
【0400】
中間試験結果
中間試験1
中間試験によって、17名の患者(11名は全3回来診し、6名は2回来診した。)から得られた情報の統計学的及び記述的解析を検討した。試験によって、別の7名の患者の基準及び来診1のデータも検討した。
【0401】
概して優れた結果によれば、ペンは注射器よりも好ましい。注射の痛みは、ペン又は注射器で同等であったが、注射後の部位の痛みは差があり、大部分はペンが有利であった。
【0402】
− 大部分の患者は、両方の装置による注射中に、全く、又はわずかしか痛みがなかった。
【0403】
− 大多数は、注射後の部位の痛みは、注射器よりもペンの方が少ないと報告した(0−10段階の平均値:3.6(注射器)、2.4(ペン1)、1.9(ペン2))。
【0404】
好み:実際に、全患者が、全般的好み、痛みの減少、使いやすさ、簡便性、安全性などの全評価特質について、ペンの方が優れているとした。ペンは、66の回答(11名の患者に対して好みに関する6つの質問)のうち63で好まれた。
【0405】
全11名の患者は、ペンに切り換え、ペンを他者に勧める見込みがある(4)又は極めて見込みがある(7)と考えた。
【0406】
中間試験1の更なる詳細は、以下のとおりである。
【0407】
痛みのデータ(17名の患者ペン1、11名の患者ペン2)を下記表1.1に示す。注射の痛み(0−10段階、平均値) − ペンは注射器よりも痛みが「常に」同等又は少ない。
【0408】
【表1】
【0409】
下記表1.2は、表1.1に記載の異なる患者集団に基づく試験1の詳細である。注射後の部位の痛み(0−10段階、平均値) − 11名の患者は、ペンを用いた痛みが類似又は少ないと報告し、6名の患者においては、ペンは痛みが1から3−5に増加した。
【0410】
【表2】
【0411】
好みのデータ(EF 極めて好ましい、F 好ましい、N 中間、U 好ましくない、EU 極めて好ましくない)
ペン1:全般的印象は、大部分がEF(7)又はF(6)であった。
ペン2:大部分がEF(6)又はF(4)であった。患者904は、ペン2がEUであったが、ペン1はEFであった。しかし、切り換え、勧める「極めて見込みがあった」。
【0412】
中間試験2
(中間試験1後の)中間試験は、3回の注射を受けた19名の患者を調べた。中間試験1の要約は、31名の患者(19名は全3回来診し、5名は2回来診し、7名は1回しか来診しなかった。)から得られた記述的解析に基づいて、専ら好ましい結果を含んだ。
【0413】
概して優れた結果によれば、ペンは注射器よりも明らかに好ましいことが確認された。実際に、全患者が、全般的好み、痛みの減少、使いやすさ、簡便性、安全性などの全評価特質について、ペンの方が優れているとした。ペンは、114の回答(19名の患者に対して好みに関する6つの質問)のうち106で好まれた。
【0414】
19名の患者のうち18名が、ペンを好み、ペンに切り換え、ペンを他者に勧める極めて見込みがある又は見込みがある、と考えた。1名の患者は、注射器を好み、切り換える見込みがないと考え、推奨に関しては中間であった。更なる詳細は以下のとおりであった。
【0415】
注射器に対する対象の印象:
n=31
極めて好ましい=2(6.5%)
好ましい=8(26%)
中間=11(35%)
好ましくない=8(26%)
極めて好ましくない=2(6.5%)
【0416】
来診2の後の対象の印象 − 1回目のペン注射
n=24
極めて好ましい=12(50%)
好ましい=8(33.3%)
中間=2(8.3%)
好ましくない=1(4.2%)
極めて好ましくない=1(4.2%)
【0417】
来診3の後の対象の印象 − 2回目のペン注射
n=19
極めて好ましい=11(57.9%)
好ましい=6(31.6%)
中間=1(5.3%)
極めて好ましくない=1(5.3%)
【0418】
来診3の後の好みの評価 − 2回目のペン注射
n=19
HUMIRA(登録商標)注射器とペンを用いたあなたの経験に基づいて、全体的に見て、どちらを好むか?19名の対象のうち18名は、ペンを好んだ。1名の対象は、注射器を好んだ。
【0419】
HUMIRA(登録商標)を注射するどちらの方法が、以下の点で好ましいかを質問したとき:
使いやすさ − 全19名の対象がペンを好んだ。
【0420】
簡便性 − 18名の対象はペンを好み、1名の対象は好みなしと報告した。
【0421】
注射を終了するのに要する時間 − 19名の対象のうち17名はペンを好み、2名の対象は好みがなかった。
【0422】
安全性 − 19名の対象のうち17名はペンを好み、2名の対象は好みがなかった。
【0423】
痛みの減少 − 19名の対象のうち16名はペンを好み、1名の対象は注射器を好み、2名の対象は好みがなかった。
【0424】
「注射器と同じ価格でペンが利用可能な場合にペンを使用する見込みはあるか?」と質問したとき、12名の対象は「極めて見込みがある」と報告し、6名の対象は「見込みがある」と報告し、1名の対象は「見込みがない」と報告した。
【0425】
「別のHUMIRA(登録商標)使用者にペンを勧める見込みはあるか?」と質問したとき、11名の使用者は「極めて見込みがある」と報告し、7名の使用者は「見込みがある」と報告し、1名の使用者は「中間」と報告した。
【0426】
好みをペンとした使用者によって報告された幾つかのコメント:
「容易であり、痛みが少なく、早い。」
「投与が安全で、早く、容易であり、不安要因がない。」
「実際に見える針が嫌いなので」
「持ちやすく、投与しやすい。」
「痛みが少なく、早く、容易である。」
「すべてのことをしてくれる。」
「自分でタブを付ける必要がなく、手に負えない注射を制御する。また、さほど痛みを感じなかった。」
「さほど痛みがない。」
「簡便」
「痛みが少なく、比較的短時間でなくなる。」
【0427】
注射器を好まなかった理由に関して、使用者によって報告された幾つかのコメント:
「痛い」
「準備に、物理的にも、精神的にも時間がかかる。」
「注射器は時間がかかり、工程も多い。」
「使用が難しい。」
「時間がかかり、痛みも多い。」
「持ちにくく、投与しにくい。」
「針で刺される感じがあり、痛みも多い。」
「注射器は、終了まで押し下げなければならないが、ペンは、1回押し下げ、黄色のタブが停止するまで見る。」
「私には、ペンは容易であり、自分が間違うおそれが少ない。」
「ペンは使用が容易であり、注射後はさほど痛くない:
「注射時間が長く、痛みが多い。」
「注射が遅く、痛む。」
【0428】
注射器を好む対象からの情報:
使いやすさに関して、ペンを好んだ。簡便性に関して、ペンを好んだ。注射を終了するのに要する時間に関して、ペン。安全性に関して、ペン。痛みの減少に関して、注射器。ペンを使用する見込みに関して、見込みがない。ペンを勧める見込みに関して、中間。
【0429】
コメント:「注射針の方がうまく制御できると思う。2回目の注射は、注射器よりも痛みを感じた。」
中間試験3
中間試験3では、35名の患者の調査で以下の回答を得た。
【0430】
・注射を終了するのに要する時間の点で、HUMIRA(登録商標)を注射するどちらの方法を好むか? ペン(n=29)、注射器(n=2)、好みなし(n=4)。
【0431】
・安全性の点で、HUMIRA(登録商標)を注射するどちらの方法を好むか? ペン(n=31)、注射器(n=0)、好みなし(n=4)。
【0432】
全試験の結果
患者の配分及び基準特性
合計52名の患者が試験に登録し、全3回の試験来診を終了した。試験中、治療を中止した患者はいなかった。基準人口統計値及び基準調査結果を表1.3に示す。試験に登録した患者は、15.4か月の平均治療期間、アダリムマブによる治療を受け、治療期間(平均自己投与期間は14.9か月であった。)の大部分を注射器を用いてアダリムマブを自己投与した。また、約655名の患者は同時にメトトレキサートを投与され、35%は同時にステロイド療法を受けた。患者は、少数が注射部位を交互にしたものの、アダリムマブを腹部に通常注射するか、大腿に通常注射するかに関して適切に等分された。試験中、29名の患者(55.8%)は腹部を注射部位として選択し、23名の患者(44.2%)は大腿を注射部位として選択した。
【0433】
【表3】
【0434】
注射部位の痛み
注射部位の痛みの評点を表2に示す。注射器注射直後の来診1においては、注射部位の痛みの平均評点は3.7であった。痛みの平均評点は、来診2において37%減少して2.3になり、ペン注射直後の来診3において46%減少して2.0になった。来診2(ペン)及び来診3(ペン)における注射直後の注射部位の痛みの平均グループ内変化は、来診1(注射器)から統計的に有意に減少した(それぞれ、P=0.002及びP<0.001)(表2)。注射後15−30分の痛みの平均評点は、来診1においては0.8、来診2においては0.2、来診3においては0.2であった。同様に、来診2(ペン)及び来診3(ペン)における注射後15−30分の注射部位の痛みの平均グループ内変化は、来診1(注射器)から統計的に有意に減少した(それぞれ、P=0.004及びP=0.001)(表2)。
【0435】
【表4】
【0436】
全般的印象
来診1においては、患者は、1回目の注射器注射の全般的印象の採点において等分された。患者の約1/3は、注射器注射の全般的印象を「好ましい」又は「極めて好ましい」とし、約1/3は「中間」であり、約1/3は「好ましくない」又は「極めて好ましくない」とした(表3)。ペンの使用後、80%を超える患者は、来診2(86.5%)及び来診3(88.5%)においてペンの全般的印象を「好ましい」又は「極めて好ましい」とした。
【0437】
【表5】
【0438】
患者の好み
来診3後に実施した最終の患者し好調査によれば、全体として、患者の88.5%(95%CI 84.1、98.8)はペンを好み、5.8%(95%CI 1.2、15.9)は注射器を好み、5.8%は好みがなかった(
図26)。患者は、好みの理由を幾つか列挙するように依頼された。ペンを好ましい送達系として選択した患者の大多数は、注射器よりも使用が容易であり、痛みが少ないとした。患者がペンを好んだ他の理由としては、注射部位に紫斑がない、投与時間が速い、準備時間が短く、従う工程が少ない、装置をうまく制御できる、必要な力が少ない、針を皮膚に刺すのに注射器を押す必要がない、針が見えない、針の貯蔵及び処分の心配が少ない、血液を確認するのに注射器を引く必要がないなどが挙げられる。注射器を好ましい送達系として選択した患者は、以下の理由を挙げた:注射器に慣れており、変える必要がない、ペンの蓋を外すのが困難である、注射針の制御が良好である、ペンよりも痛みが少ない。
【0439】
患者は、好みの具体的理由を挙げるように依頼されると、以下の理由で注射器よりもペンを好んだ(割合の高い方から低い方に):使いやすさ、簡便性、全般的安全性と全般的特質(同率)、注射終了時間が短い、痛みが少ない(
図2)。94%を超える患者は、注射器と同じ価格でペンが利用可能な場合にペンを使用する見込みがある、又は極めて見込みがあるとした(
図27)。同様に、94%を超える患者は、アダリムマブを使用する別の患者にペンを勧めるとした(
図27)。
【0440】
療法の遵守
各来診時に、患者は、患者の注射技術を医療専門家によって評価してもらい、訓練手順の有効性の判定に役立てた。全体的に見て、患者の準備及び注射技術は、評価した各構成要素(すなわち、注射部位をアルコールで処理し、薬物のレベル及び品質を点検し、蓋を順次取り外し、皮膚に平坦部を用意し、注射中に皮膚の平坦部を維持し、ペンの位置を正確に決定し、ペンを正確に始動し、引き戻さずに定圧を維持し、終了まで注射を保持し、注射が終了したときに窓に黄色のストッパーを観察した。)について、(来診1回につき)98−100%の遵守率であった。患者の約90%は、医療専門家によって用いられた使用説明装置(ビデオ又は小冊子)が適切な訓練を提供したと記述した。
【0441】
安全性評価
この試験中に新しい安全性の徴候は認められなかった。アダリムマブは、注射器送達でも、ペン送達でも、一般に安全であり、忍容性が良好であることが実証された。AE全体の点で、又は個々のMedDRAの好ましい条項によって、注射器使用中とペン使用中に報告されたAEに統計的有意差は認められなかった。合計13名の患者が、試験治療下で発現したAEを報告し、5名は充填済み注射器使用中であり(9.6%)、10名(19.2%)は、2回のペン注射後であった。2名の患者は、注射器使用中とペン使用中の両方でAEを報告した。大部分のAEは、軽度から中度であり、気管支炎、過敏症、関節炎痛、咳及び鼻炎を含んだ。3名の感染及び1名の薬物過敏反応が報告された。2名の患者は、ペン使用中に重篤なAEを示した。これらのうち、高血圧、及び3回のバイパス心臓手術につながる冠動脈疾患の病歴を有する69歳の白人男性は、うっ血性心不全の増悪のために入院が必要であった。診断は、1989年に最初に確定された。この患者は、安定し、回復した後、ペンによる2回目のアダリムマブの投与を受けた。もう一方の患者は、51歳の白人男性であり、試験治療開始から約71日後に肺炎治療のために入院が必要であった。悪性腫よう、(多発性硬化症を含めた)脱髄性事象、又はループス様反応を含めて、対象となる他のTNF拮抗物質事象は、この試験中に報告されなかった。試験治療下で発現したAEを受けて試験を中止した患者はなく、装置の故障も報告されなかった。
【0442】
試験の最終結果によれば、52名の患者のうち46名はペンを好み(88.5%)、5.8%(n=3)は好みがなく、5.8%はPFSを好んだ(n=3)。また、52名の患者のうち40名は、ペンの方が痛みが少ない(76.9%)と思い、15.4%は好みがなかった。わずかに7.7%は、PFSの方が痛みが少ないと思った。また、患者の応答によれば、ペンは使用が容易であり、52名の患者のうち49名はペンの方が使用が容易であると思った(94.2%)。最後に、ペンはより簡便であると考えられ、52名の患者のうち48名はペンの方がより簡便であると思った(92.3%)。患者の61.5%(n=32)は、ペンを別のHUMIRA(登録商標)使用者に勧める見込みがあると述べ、32.7%(n=17)は勧める見込みがあると述べ、5.8%(n=3)はこの問題に関して中間であった。試験の別の結果を下記表4−6に示す。
【0443】
【表6】
【0444】
【表7】
【0445】
【表8】
【0446】
注射器による注射後の2週間と2回のペン注射後の4週間との有害事象(AE)のタイプ及び累積度数は同等であった。5名の患者(9.6%)は、注射器注射後に気管支炎、過敏症、関節炎痛、咳及び鼻炎を含めたAEを報告した。ペン注射後は、8名(15.4%)であった。中止につながるAEはなかった。
【0447】
ペンは、より大きな簡便性を患者にもたらすように設計されているが、痛みの減少など、どの特質が、患者の好みをもたらすかは不明であった。この試験によれば、個々の特質、すなわち、注射の痛みの少なさ、安全性、使いやすさ、簡便性、及び注射終了時間はすべて、ペンの方が注射器よりも有利であった。この試験では、ペンは、注射の痛みに関して、統計的に有意な優位性を示し、注射の痛みは、注射直後に46%減少し、注射後15−30分で75%減少した。
【0448】
好みに関しては、患者は、注射器の全般的印象について、事前に指定された5つのカテゴリー(すなわち、「極めて好ましい」、「好ましい」、「中間」、「好ましくない」及び「極めて好ましくない」)を基準にして等分された。しかし、ペンに切り換えた後、患者の全般的印象の評点は、「好ましい」又は「極めて好ましい」にかなり移動した。さらに、ペンによるわずか2回の注射の後、患者の大多数は、ペンに切り換え、アダリムマブによる治療を受けている別の患者にペンを勧める「見込みがある」又は「極めて見込みがある」と述べ、患者が素早くペンとその特徴を受け入れたことを明確に示している。
【0449】
これらの結果は、長期のTNF阻害剤又は他の生物学的療法を必要とする患者に対して治療上重要な意味を有し得る。患者の好みと療法の遵守との関係のために(Schwartzman et al. Arthritis Research & Therapy. 2004;6(Suppl 2):S19−S23)、具体的投与経路に対する患者の好みは、医師が生物学的療法を選択する際の重要な要因であり得る。さらに、療法の遵守は、TNF拮抗物質療法の長期利点を維持する際の最も重要な要因の一つであると考えられ、したがって、遵守の欠如は、治療の有効性を極度に損なうおそれがある(Schwartzman et al.(2004))。
【0450】
要約すると、ペンは、患者によって、充填済み注射器よりも使用が容易であると判定された。また、患者は、ペンが注射器よりも簡便であり、充填済み注射器よりも痛みが少ないことが分かった。患者は、全評価特質にわたってHUMIRA(登録商標)PFSよりもHUMIRA(登録商標)ペンを好んだ。患者の約90%は、充填済み注射器よりもペンを全般的に好むと報告した。さらに、10名の患者のうち8名は、アダリムマブを使用する他の患者にペンを勧めるであろう。最後に、患者の80%は、ペンがPFSよりも痛みが少ないとした。
【0451】
この試験によれば、患者は、アダリムマブペンが、従来の充填済み注射器よりも痛みがかなり少ないと考えた。また、アダリムマブを経験したRA患者は、充填済み注射器による注射よりも自動注射ペンによるアダリムマブの皮下注射を好んだ。患者は、ペンの方が使用が容易であり、簡便であり、安全であり、注射時間が短いと考えた。安全性プロファイルに関しては、2つの送達系で明白な差は認められなかった。自動注射ペン装置に対する患者の全般的好みは、療法の遵守を高め、自己投与生物学的療法による長期療法中の臨床成績を改善し得る。
【実施例2】
【0452】
自動注射器ペン及び充填済み注射器によって投与された単一用量のアダリムマブの相対的バイオアベイラビリティ、安全性及び耐容性の評価
リウマチ様関節炎(RA)は、安全で効果的である長期療法を要する慢性消耗性疾患である。生物学的薬物送達の現行器具である充填済み注射器は、痛く、厄介である。以下の実施例に記載するペンのような充填済み使い捨て自動注射器ペンは、より簡便な投薬が可能である。
【0453】
以下の実施例の目的は、自動注射器ペンと充填済み注射器によって皮下投与されたアダリムマブの生物学的利用能、安全性及び耐容性を比較することであった。
【0454】
試験設計
この第I相非盲検並行群多施設試験において、アダリムマブをペン又は充填済み注射器によって健康な成人ボランティアの腹部又は大腿に投与した。投薬計画Aは、自動注射器ペンによるアダリムマブ40mgの皮下投与を含み、投薬計画Bは、充填済み注射器によるアダリムマブ40mgの皮下投与を含んだ。
【0455】
血液試料を、投薬前(0時間)、投薬後4、12、24、36、48、60、72、84、96、108、120、132、144、168、192、240、288、336及び360時間、並びに第3、4、5、6、7及び8週に静脈穿刺によって収集した。アダリムマブの血清中濃度を、有効な二重抗原免疫測定法によって測定した。二重抗原免疫測定法の定量下限は、希釈血清中3.125ng/mLであった。
【0456】
主要選択基準は18−55歳を含み、患者は一般に良好な健康状態であった。主要除外基準は、妊娠、及び陽性PPD皮膚試験の病歴を含んだ。
【0457】
薬物動態解析は、ノンコンパートメント法によって推定した薬物動態(PK)パラメータの解析を含んだ。PKパラメータは、実測最高血清中濃度(Cmax)、Cmaxまでの時間(Tmax)、時間0−360の血清中濃度−時間曲線下面積(AUC)(AUC0−360)、及び時間0−1344のAUC(AUC0−1344)を含んだ。
【0458】
以下の考慮事項を用いて統計解析を実施した。投薬計画、注射部位、試験施設、及び性別を因子として用いて、Tmax、並びにAUC及びCmaxの対数に対して、四方向(four−way)共分散分析(ANCOVA)を実施した。体重を共変量とした。投薬計画の生物学的同等性を評価するために、投薬計画代表値の比に対する90%信頼区間のAUC及びCmaxについて、2片側検定手順を実施した。投薬計画代表値の比は、ANCOVAモデルにおける投薬計画主作用の差に対応する。
【0459】
有害事象(AE)、理学的検査、生命徴候及び臨床検査の評価に基づいて、安全性を評価した。
【0460】
合計295名の男性及び女性の健康なボランティアが試験に登録された。これらのボランティアのうち、146名のボランティアにアダリムマブ40mgを自動注射器ペンによって投与し、149名の対象に、アダリムマブ40mgを充填済み注射器によって投与した。表7は、人口統計パラメータの要約統計量である。
【0461】
【表9】
【0462】
平均血清アダリムマブ濃度−時間プロファイルは、2つの投薬計画において類似していた。ペンと充填済み注射器の薬物動態プロファイルも、2つの注射部位、すなわち、大腿と腹部で同等であった。
【0463】
2つの投薬計画の各々の投与後のアダリムマブの薬物動態パラメータは類似していた(表8)。ペンのTmax、対数変換Cmax、AUC0−360及びAUC0−1344代表値は、充填済み注射器のそれらと統計的有意差はなかった(表8)。
【0464】
【表10】
【0465】
対数変換AUC0−360、AUC0−1344及びCmaxの90%信頼区間は、0.80から1.25の範囲に含まれ、自動注射器試験投薬計画Aが、両方の皮下位置、すなわち大腿と腹部において、充填済み注射器基準投薬計画Bと生物学的に同等であった(表9)。
【0466】
【表11】
【0467】
自動注射器は、この試験において忍容性が良好であり、安全性プロファイルは、充填済み注射器のそれと同等であった(表10)。
【0468】
【表12】
【0469】
試験中に有害事象による死も中止もなかった。1名のボランティアが、試験20日目に、手術及び入院を要する虫垂炎の重篤な有害事象を報告した。この対象は、退院後、試験に参加し続けることを要求し、徹底した医学的評価の後、継続することができた。試験治療下で発現した有害事象の大多数は、試験薬に関連せず、又は関連している可能性がなく、重症度が軽度であると研究者によって評価された。
【0470】
結論として、自動注射器ペンは、充填済み注射器と生物学的に同等であった。2つの投薬計画は、各注射部位、すなわち腹部と大腿においても、生物学的に同等であった。ペンの安全性プロファイルは、充填済み注射器の安全性プロファイルと同等であった。
【実施例3】
【0471】
HUMIRA(登録商標)送達用充填済み注射器と比較したHUMIRA(登録商標)自動注射装置の導入
HUMIRA(登録商標)の代表者は、HUMIRA(登録商標)PFSを患者に以前に処方した医師を訪問する。代表者は、医師に口頭で説明し、TOUCH試験及びその結果を医師に説明する(TOUCH試験については、例えば、上記実施例1参照)。特に、代表者は、患者の90%がPFSよりもHUMIRA(登録商標)ペンを全般的に好むと報告し、10名中8名が他のHUMIRA(登録商標)患者にペンを勧め、患者の80%がペンの方がPFSよりも痛みが少ないとしたことを医師に伝える。さらに、代表者は、TOUCH試験を説明するフリップチャート及びDVDを医師に提供し、患者の90%がPFSよりもHUMIRA(登録商標)ペンを全般的に好むと報告し、10名中8名が他のHUMIRA(登録商標)患者にペンを勧め、患者の80%がペンの方がPFSよりも痛みが少ないとしたことを医師に伝える。
【実施例4】
【0472】
HUMIRA(登録商標)自動注射装置を使用するための訓練方法
HUMIRA(登録商標)の代表者は、HUMIRA(登録商標)PFSを患者に以前に処方した医師を訪問する。代表者は、HUMIRA(登録商標)ペンを用いて1回分のHUMIRA(登録商標)を患者に送達する方法を医師に口頭で説明する。この説明は、以下の段階を実施する使用説明を含む。
【0473】
(i)注射の15から20分前に、HUMIRA(登録商標)ペンを冷蔵庫から取り出す。
【0474】
(ii)大腿又は胃の注射部位(部位は、前の注射部位から少なくとも1インチ、かつへそから少なくとも2インチにすべきである。)を選択し、注射部位をアルコール消毒綿で拭く。
【0475】
(iii)HUMIRA(登録商標)ペン中のHUMIRA(登録商標)溶液をペンの窓から点検して、液体が無色透明であることを確認する。また、針の末端が下を向くようにペンを保持し、(適切な投与量が存在することを確実にするために)液体レベルが窓から見える線と同じ、又はそれに近いことを確認する。
【0476】
(iv)ペンの針の末端及び起動ボタン端部から蓋を取り外す。清潔にした皮膚のかなり大きい領域を軽く圧迫し、皮膚と同じ高さに90度の角度でペンを配置する。起動ボタンを押し、ペンを皮膚に対してしっかりと維持し、「カチッという音」を聞く。起動ボタンを押し続け、10秒数える。表示窓に黄色の表示器全体が現れ、停止することを確認する。
【0477】
(v)ペンを適切な容器(例えば、Sharps容器)に処分する。
【0478】
さらに、代表者は、上記段階(i)から(v)を実施する使用説明を伝えるフリップチャート及びDVDを医師に提供する。さらに、代表者は、医師に訓練用キットを提供する。キットは、(1)HUMIRA(登録商標)ペンを模倣するが、針がなく、HUMIRA(登録商標)を投与しない実演用自動注射装置、(2)上記段階(i)から(v)を実施するための使用説明を伝える小冊子、及び(3)上記段階(i)から(v)を実施するための使用説明を伝える視聴覚装置(VHSカセット又はDVD)を含む。
【0479】
均等形態
当業者は、本明細書に記載した本発明の具体的実施形態の多数の均等形態を定常的な実験法によって認識し、又は確認することができる。かかる均等形態は、以下の特許請求の範囲に包含される。本願を通して引用するすべての参考文献、特許、特許出願及び特許出願公報の内容を参照により本明細書に組み入れる。